JPH1064405A - 電子管用陰極 - Google Patents

電子管用陰極

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JPH1064405A
JPH1064405A JP21865196A JP21865196A JPH1064405A JP H1064405 A JPH1064405 A JP H1064405A JP 21865196 A JP21865196 A JP 21865196A JP 21865196 A JP21865196 A JP 21865196A JP H1064405 A JPH1064405 A JP H1064405A
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JP
Japan
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base metal
metal
cathode
electron tube
electron
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JP21865196A
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English (en)
Inventor
Kinjiro Sano
金治郎 佐野
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Mitsubishi Electric Corp
Original Assignee
Mitsubishi Electric Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高電流密度の動作を可能とする電子管用陰極
において、長時間の動作時における基体金属の変形を防
止し、カットオフ電圧の変動を抑制することができる電
子管用陰極を得る。 【解決手段】 主成分がニッケルからなり、少なくとも
一種の還元剤を含有してなる基体金属1と、この基体金
属1に含有された還元剤のうちの少なくとも一種と還元
性が同等または小さく、かつニッケルより還元性が大き
い金属を主成分とし、基体金属1の表面に形成された金
属層4と、この金属層4上へ被着形成され、少なくとも
バリウムを含むアルカリ土類金属酸化物51と希土類金
属酸化物52とからな電子放射物質層5を備えた電子管
用陰極において、基体金属1の裏面に基体金属1の外形
より小さい外形で一体に形成され、平面形状が十文字状
の肉厚部からなる補強手段を設けた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ブラウン管等に
使用される電子管用陰極に関し、特に長期間の動作中の
カットオフ電圧の変動を抑制するための技術に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】図9は、例えば特開平3−257735
号公報に開示されているようなテレビジョン受像機用ブ
ラウン管に用いられている従来の電子管用陰極を示す要
部断面図である。図において、1はシリコン(Si)や
マグネシウム(Mg)等の還元性元素を微量含有し、主
成分がニッケル(Ni)からなる円板状の基体金属であ
り、円筒状を呈したスリーブ2の一端に圧入後、抵抗溶
接またはレーザ溶接で固定されている。3はスリーブ2
内に配設されたヒータ、4は基体金属1のヒータ3とは
反対側の面上に全面にわたって形成された金属層であ
り、基体金属1に含有されている還元性元素の少なくと
も一種と還元性が同等または小さく、かつ基体金属1の
主成分であるニッケルより還元性が大きい金属(例え
ば、タングステン(W)など)からなる。5は金属層4
上に被覆形成された電子放射物質層であって、少なくと
もバリウム(Ba)を含み、他にストロンチウム(S
r)あるいは/及びカルシウム(Ca)を含む三元のア
ルカリ土類金属酸化物51を主成分とし、0.1〜20
重量%の酸化スカンジウム(Sc23)等の希土類金属
酸化物52を分散したものである。このような構成の電
子管用陰極は、ヒータ3を加熱することによって基体金
属1と金属層4が加熱され、電子放射物質層5から熱電
子が放出される。
【0003】次に、このように構成された電子管用陰極
の製造方法について説明する。まず、基体金属1の表面
に真空蒸着等の方法でタングステンを0.2〜2μmの
厚さで被着し、金属層4を形成する。次に、バリウム、
ストロンチウム、カルシウムの三元炭酸塩と所定量の酸
化スカンジウムをニトロセルロースからなるバインダー
および酢酸ブチルアルコールからなる有機溶剤と共に混
合して作成した懸濁液を、金属層4の上にスプレイ法等
により80μm程度の厚さで塗布し、電子放射物質層5
を形成する。次に、この陰極は電子銃に組み込まれ、更
にブラウン管に組み込まれた後、ブラウン管の排気工程
中にヒータ3によって加熱される。この際、三元炭酸塩
は熱分解によりアルカリ土類金属酸化物51に変化す
る。この排気工程の後、更に高温加熱されて活性化が行
なわれる。この際、アルカリ土類金属酸化物51の一部
が還元されて電子放射物質層5が半導体的性質を有する
ようになり、金属層4上にアルカリ土類金属酸化物51
と希土類金属酸化物52との混合物からなる電子放射物
質層5が形成される。
【0004】この活性化工程において、アルカリ土類金
属酸化物51の一部は次のように反応する。すなわち、
基体金属1中に含有されたシリコン、マグネシウム等の
還元性元素は拡散によって金属層4と電子放射物質層5
との界面に移動し、アルカリ土類金属酸化物51と反応
する。例えば、アルカリ土類金属酸化物51として酸化
バリウム(BaO)を例にすると、次式(1)、(2)
のように反応するものである。 4BaO+Si=2Ba+Ba2SiO4 ・・・(1) BaO+Mg=Ba+MgO ・・・(2) この反応の結果、金属層4上に被着形成された電子放射
物質層5のアルカリ土類金属酸化物51の一部が還元さ
れて酸素欠乏型の半導体となり、電子放射が容易とな
る。また、金属層4の成分であるタングステンとは次式
(3)のように反応し同様に、酸素欠乏型の半導体とな
る。 2BaO+1/3W=Ba+1/3Ba3WO6 ・・・(3)
【0005】一般に、酸化物陰極の場合、上述した反応
時に生成される副生成物で中間層と呼ばれるバリウムシ
リケイト(Ba2SiO4)、酸化マグネシウム(Mg
O)やバリウムタングステート(Ba3WO6)が金属層
4と電子放射物質層5との界面に集中的に形成されるた
め、この中間層の影響によりマグネシウム、シリコンお
よびタングステンの拡散速度が抑制され、その結果過剰
Baの供給不足が生じて高電流密度動作を制限する。一
方、電子放射物質層5に希土類金属酸化物52が含有さ
れる場合は、酸化スカンジウムの場合を例に取ると、陰
極動作時の金属層4と電子放射物質層5との界面では、
基体金属1中および金属層4を拡散移動してきた還元剤
の一部と酸化スカンジウムとが次式(4)のよう反応し
て少量の金属状のスカンジウムが生成され、この金属状
のスカンジウムの一部は基体金属1のニッケル中に固溶
し、一部は上記界面に存在する。 1/2Sc23+3/2Mg=Sc+3/2MgO ・・・(4)
【0006】この金属状のスカンジュウムは金属層4上
に形成された中間層、例えばBa2SiO4を次式(5)
のように分解する作用を有するので、過剰Baの供給が
改善され、希土類金属酸化物52が含まれない場合より
も高電流密度動作が可能となると考えられている。 1/2Ba2SiO4+4/3Sc=Ba+1/2Si+2/3Sc23 ・・・(5)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように基体金属1
上に金属層4を形成した電子管用陰極は、遊離バリウム
の生成が豊富で、高電流密度動作が可能であるという長
所がある反面、長時間の動作中にカットオフ電圧が変動
して、ブラウン管の画面の明るさが徐々に変動したり、
あるいはカラーブラウン管の場合は色調が変動するとい
う問題点を有していた。この理由としては、次のように
推定される。すなわち、ニッケルからなる基体金属1上
に形成された金属層4のタングステンが、動作中に徐々
に基体金属1の表層部に拡散し、ニッケルとタングステ
ンとの金属間化合物が形成される。従って、基体金属1
と金属層4の積層体は電子放射物質層5側の表面から順
に、純タングステン層、ニッケルとタングステンとの金
属間化合物層、ニッケル金属層の三層構造となる。その
結果、特に基体金属1の表面近傍に形成されるニッケル
とタングステンとの金属間化合物層は他の層に比較して
密度が小さいため、基体金属1の片面に集中した熱応力
により基体金属1が変形し、第1グリッド6と陰極すな
わち電子放射物質層5表面との間隔が変動するため、カ
ットオフ電圧が変動するものと推定される。
【0008】この発明は、このような問題点を解消する
ためになされたもので、高電流密度の動作を可能とする
電子管用陰極において、長時間の動作時における基体金
属の熱応力による変形を防止し、カットオフ電圧の変動
を抑制することができる電子管用陰極を得ることを目的
とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明に係る電子管用
陰極は、主成分がニッケルからなり、少なくとも一種の
還元剤を含有してなる基体金属と、この基体金属に含有
された還元剤のうちの少なくとも一種と還元性が同等ま
たは小さく、かつニッケルより還元性が大きい金属を主
成分とし、基体金属の表面に形成された金属層と、この
金属層上へ被着形成され、少なくともバリウムを含むア
ルカリ土類金属酸化物を主成分とする電子放射物質層を
備えた電子管用陰極において、基体金属の裏面にこの基
体金属の変形を防止する補強手段を設けたものである。
【0010】また、この発明に係る電子管用陰極の補強
手段は、基体金属の裏面に部分的に一体成形された肉厚
部であるものである。また、この発明に係る電子管用陰
極の肉厚部は、基体金属の裏面の中央部から放射状に延
在する少なくとも3本の線状であるものである。また、
この発明に係る電子管用陰極は、基体金属が円板状であ
り、肉厚部は、基体金属の外径より小さい外径で基体金
属と略同心の円形状であるものである。
【0011】さらに、この発明に係る電子管用陰極の補
強手段は、基体金属の裏面に部分的に固着された金属片
であるものである。また、この発明に係る電子管用陰極
は、基体金属が円板状であり、金属片は、基体金属の外
径より小さい外径で基体金属と略同心の円形状であるも
のである。また、この発明に係る電子管用陰極の金属片
は、基体金属の裏面の中央部から放射状に延在する少な
くとも3本の線状であるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.図1は、この発明の実施の形態1による
電子管用陰極を示す要部断面図、図2は、その基体金属
の裏面図である。図において、1はシリコン(Si)や
マグネシウム(Mg)等の還元性元素を微量含有し、主
成分がニッケル(Ni)からなる円板状の基体金属であ
り、ニクロム製の円筒状のスリーブ2の一端に固定され
ている。3はスリーブ2内に配設されたヒータ、4は基
体金属1の表面すなわちヒータ3とは反対側の面上に全
面にわたって形成された金属層であり、基体金属1に含
有されている還元性元素の少なくとも一種と還元性が同
等または小さく、かつ基体金属1の主成分であるニッケ
ルより還元性が大きい還元性元素(例えば、タングステ
ン(W)など)を主成分としている。5は金属層4上に
被覆形成された電子放射物質層であって、少なくともバ
リウム(Ba)を含み、他にストロンチウム(Sr)あ
るいは/及びカルシウム(Ca)を含む三元のアルカリ
土類金属酸化物51を主成分とし、0.1〜20重量%
の酸化スカンジウム(Sc23)等の希土類金属酸化物
52を分散したものである。11は基体金属1の裏面す
なわちヒータ3側の面の中央部に基体金属1の外形より
小さい外形で一体に形成された平面形状が十文字状の肉
厚部、すなわち基体金属1の裏面の中央部から放射状に
90°間隔で延在する4本の線状の肉厚部であり、基体
金属1の変形を防止する補強手段を構成する。
【0013】次に、このように構成された電子管用陰極
の製造方法について説明する。まず、直径が1.5mm
の円板状の基体金属1をプレス加工により打ち抜き成形
する。この打抜工程の際に、基体金属1の片面に肉厚部
11を形成する。肉厚部11の板厚は0.11mmと
し、そのほかの部分の板厚は0.07mmとした。次い
で、基体金属1を洗浄後、肉厚部11が形成された面が
スリーブ2の内側に位置するように基体金属1をスリー
ブ2に圧入し、基体金属1の側壁部とスリーブ2とをレ
ーザ溶接で固定する。次に、酢酸ブチルアルコール等の
有機溶剤で洗浄した後、水素雰囲気中で約1000℃の
熱処理を10分間行う。次いで、真空中で基体金属1の
表面すなわち肉厚部11が形成されていない面にタング
ステンを1μmの厚さに蒸着し、金属層4を形成する。
【0014】次に、バリウム、ストロンチウム、カルシ
ウムを含むアルカリ土類金属の炭酸塩に希土類金属酸化
物である酸化スカンジウムを重量比で約3%混合し、こ
れをニトロセルロースおよび酢酸ブチルアルコールから
なる溶剤に混ぜて作成した懸濁液を、金属層4の表面を
覆うようにスプレイ法により約80μm程度の厚さで塗
布し、電子放射物質層5を形成する。次に従来例と同様
に、この陰極は電子銃に組み込まれ、更にブラウン管に
組み込まれた後、ブラウン管の排気工程中のヒータ3に
よる加熱、および排気工程後の活性化が行なわれ、金属
層4上にアルカリ土類金属酸化物51と希土類金属酸化
物52との混合物からなる電子放射物質層5が形成され
る。
【0015】このような構成の電子管用陰極は、ヒータ
3を加熱することによって基体金属1と金属層4が加熱
され、電子放射物質層5から熱電子が放出される。図3
は、このように構成された電子管用陰極を第1グリッド
6の孔径が0.4mmのブラウン管用電子銃に組み込
み、14吋のデイスプレイ用ブラウン管で寿命試験を実
施した結果を示す図である。寿命試験条件としてはヒー
タ電圧を定格の6.3Vとし、2.5時間ON、0.5
時間OFFの間欠通電条件とし、また陰極からの取り出
し電流密度は2A/cm2とした。図3において、横軸
は寿命試験時間、縦軸はカットオフ電圧を示し、初期値
を100とした相対値で示している。カットオフ電圧の
変動は20%程度以内(すなわち、初期値を100とし
た時、80以上)であれば実用上での支障はなく、図3
から明らかなように、本実施の形態1による電子管用陰
極によれば、カットオフ電圧の変動が従来例のものと比
較して少なく、長時間動作させても実用上支障ない範囲
内にあって、著しく改善されていることが判る。
【0016】次に、このような構成の本実施の形態1に
よる改善効果の理由について説明する。前述の従来例と
同様に、本実施の形態1においてもニッケルとタングス
テンの金属間化合物層が形成され、両側の純タングステ
ン層とニッケル金属層との三層構造となり、ニッケルと
タングステンの金属間化合物層が他の層に比較して密度
が小さいことによって起こる応力により基体金属1が変
形しようとするが、基体金属1の裏面に形成された十文
字状の肉厚部11が変形応力に対して補強の役割をし、
基体金属1全体の変形が防止される。従って、金属層4
の上に形成された電子放射物質層5と第1グリッド6と
の間隔が従来例に比較して変動しにくく、その結果とし
てカットオフ電圧の経時的な変動の少ない電子管用陰極
の実現が可能となる。
【0017】また、変形防止のためには基体金属1全体
の厚さを増すことでも解決可能であるが、基体金属1全
体の厚さを増すとその熱容量が大きくなるため、基体金
属1がヒータ3で加熱されて電子放射物質層5から熱電
子が放出されるまでの時間、すなわち陰極の立ち上がり
時間が遅くなってしまう。これに対して本実施の形態1
は、肉厚部11を部分的に設けるものであるので、陰極
の立ち上がり時間を遅くすることなく基体金属1の変形
を防止することができる。
【0018】なお、上述の実施の形態1では、基体金属
1の裏面の中央部から放射状に延在する線状の肉厚部1
1の数が4本で全体の平面形状が十文字状のものを示し
たが、この肉厚部11の数は少なくとも3本あれば基体
金属1全体の変形を防止することが可能であり、いわゆ
る車輪の輻のように等角度で配置することが望ましい。
肉厚部11の本数や幅、長さ、厚み等は、上述の陰極の
立ち上がり時間や基体金属1の変形防止効果を考慮して
適宜決定することができる。また、上述の実施の形態1
では、線状の肉厚部11が基体金属1の周縁まで達して
いないものを示したが、肉厚部11が線状であれば周縁
まで延ばすことも可能であり、この場合は基体金属1の
変形防止効果をさらに向上させることができる。
【0019】実施の形態2.図4は、この発明の実施の
形態2による電子管用陰極を示す要部断面図、図5は、
その基体金属の裏面図であり、補強用肉厚部の平面形状
以外の基本的な構成および製造方法は前述した実施の形
態1とほぼ同じである。図4および図5において、12
は基体金属1の裏面すなわちヒータ3側の面に基体金属
1の直径1.5mmより小さい直径0.8mmで基体金
属1と同心で一体に形成された円形状の肉厚部であり、
基体金属1の変形を防止する補強手段を構成する。な
お、図1および図2と同一または相当部分には同一符号
を付し、説明を省略する。
【0020】図6は、このように構成された電子管用陰
極を第1グリッド6の孔径が0.4mmのブラウン管用
電子銃に組み込み、14吋のデイスプレイ用ブラウン管
で寿命試験を実施した結果を示す図である。寿命試験条
件としてはヒータ電圧を定格の6.3Vとし、2.5時
間ON、0.5時間OFFの間欠通電条件とし、また陰
極からの取り出し電流密度は2A/cm2とした。図6
から明らかなように、本実施の形態2による電子管用陰
極によれば実施の形態1と同様、カットオフ電圧の変動
が従来例のものと比較して少なく、長時間動作させても
実用上支障ない範囲内にあって、著しく改善されている
ことが判る。
【0021】本実施の形態2においても実施の形態1と
同様、基体金属1の裏面に形成された円形状の肉厚部1
2が、基体金属1の変形応力に対して補強の役割をし、
基体金属1全体の変形が防止される。従って、金属層4
の上に形成された電子放射物質層5と第1グリッド6と
の間隔が従来例に比較して変動しにくく、その結果とし
てカットオフ電圧の経時的な変動の少ない電子管用陰極
の実現が可能となる。
【0022】なお、上述の実施の形態2では、肉厚部1
2の平面形状が円形状のものを示したが、円形状に限ら
れるものではなく、上述の陰極の立ち上がり時間や基体
金属1の変形防止効果を考慮して適宜選定することがで
きる。
【0023】実施の形態3.図7は、この発明の実施の
形態3による電子管用陰極を示す要部断面図であり、補
強手段以外の基本的な構成および製造方法は前述した実
施の形態1および実施の形態2とほぼ同じである。図7
において、7は基体金属1の裏面すなわちヒータ3側の
面に基体金属1の外径より小さい外径で基体金属1と同
心に固着された円板状の金属片であり、基体金属1の変
形を防止する補強手段を構成する。なお、図1、図2、
図4および図5と同一または相当部分には同一符号を付
し、説明を省略する。
【0024】次に、このように構成された電子管用陰極
の製造方法について説明する。まず、板厚が0.07m
mで直径が1.5mmの円板状の基体金属1をプレス加
工により打ち抜き成形する。次いで、基体金属1を洗浄
してスリーブ2の一端開口に圧入し、基体金属1の側壁
部とスリーブ2とをレーザ溶接で固定する。次いで、補
強手段として別途準備した板厚が0.04mmで直径が
0.8mmの円板状の金属片7をスリーブ2の他端開口
から挿入し、基体金属1の裏面に同心に溶接して固着す
る。なお、金属片7の材料としては、基体金属1と成分
が同一のニッケルを用いた。次に、酢酸ブチルアルコー
ル等の有機溶剤で洗浄した後、水素雰囲気中で約100
0℃の熱処理を10分間行う。以下、金属層4の形成以
降の工程は、前述した実施の形態1および実施の形態2
と同様である。
【0025】図8は、このように構成された電子管用陰
極を第1グリッド6の孔径が0.4mmのブラウン管用
電子銃に組み込み、14吋のデイスプレイ用ブラウン管
で寿命試験を実施した結果を示す図である。寿命試験条
件としてはヒータ電圧を定格の6.3Vとし、2.5時
間ON、0.5時間OFFの間欠通電条件とし、また陰
極からの取り出し電流密度は2A/cm2とした。図8
から明らかなように、本実施の形態3による電子管用陰
極によれば実施の形態1および実施の形態2と同様、カ
ットオフ電圧の変動が従来例のものと比較して少なく、
長時間動作させても実用上支障ない範囲内にあって、著
しく改善されていることが判る。
【0026】本実施の形態3においても実施の形態1お
よび実施の形態2と同様、基体金属1の裏面に固着され
た円板状の金属片7が、基体金属1の変形応力に対して
補強の役割をし、基体金属1全体の変形が防止される。
従って、金属層4の上に形成された電子放射物質層5と
第1グリッド6との間隔が従来例に比較して変動しにく
く、その結果としてカットオフ電圧の経時的な変動の少
ない電子管用陰極の実現が可能となる。さらに、実施の
形態1や実施の形態2のように補強手段としての肉厚部
11、12を基体金属1と一体成形する場合は、プレス
加工における生産性が悪く、また基体金属1をスリーブ
2に圧入して固定する際に基体金属1の表裏を確認する
作業が必要であるのに対して、本実施の形態3の場合
は、補強手段としての金属片7を別個に準備するもので
あるためプレス加工における生産性が良く、また基体金
属1への金属片7の固着を、まず基体金属1だけをスリ
ーブ2に圧入して固定した後にスリーブ2の他端開口か
ら金属片7を挿入して基体金属1へ溶接固着することに
より、基体金属1の表裏確認の作業を不要とすることが
できる利点がある。
【0027】なお、実施の形態3では金属片7として、
平面形状が円形状のものを用いたが、円形状に限られる
ものではなく、また実施の形態1の肉厚部11のような
線状のものを用いてもよいことは言うまでもない。ま
た、基体金属1へ金属片7を予め溶接固着し、この金属
片7が固着された基体金属1を洗浄後、金属片7が固着
された面がスリーブ2の内側に位置するようにスリーブ
2に圧入して、基体金属1の側壁部とスリーブ2とをレ
ーザー溶接で固定するようにしてもよい。
【0028】
【発明の効果】以上のように、この発明に係る電子管用
陰極によれば、主成分がニッケルからなり、少なくとも
一種の還元剤を含有してなる基体金属と、この基体金属
に含有された還元剤のうちの少なくとも一種と還元性が
同等または小さく、かつニッケルより還元性が大きい金
属を主成分とし、基体金属の表面に形成された金属層
と、この金属層上へ被着形成され、少なくともバリウム
を含むアルカリ土類金属酸化物を主成分とする電子放射
物質層を備えた電子管用陰極において、基体金属の裏面
にこの基体金属の変形を防止する補強手段を設けること
により、陰極の立ち上がり時間を遅くすることなく基体
金属ならびに基体金属の上部に形成された電子放射物質
層の経時的な変形に起因するブラウン管等の電子管のカ
ットオフ電圧の変動を抑制できるので、長期間にわたっ
て色調のアンバランスや輝度の変動の発生しない高品位
な電子管用陰極を提供できるという効果がある。
【0029】また、この発明に係る電子管用陰極の補強
手段は、基体金属の裏面に部分的に一体成形された肉厚
部であるので、補強手段を別途に取り付ける必要がない
という効果がある。
【0030】また、この発明に係る電子管用陰極の肉厚
部は、基体金属の裏面の中央部から放射状に延在する少
なくとも3本の線状であるので、基体金属の周縁まで延
ばして変形防止効果をさらに向上させることができると
いう効果がある。
【0031】また、この発明に係る電子管用陰極は、基
体金属が円板状であり、肉厚部は、基体金属の外径より
小さい外径で基体金属と略同心の円形状であるので、プ
レス加工が容易であると共に基体金属の中央部全域を均
等に変形防止することができる。
【0032】さらに、この発明に係る電子管用陰極の補
強手段は、基体金属の裏面に部分的に固着された金属片
としたので、補強手段を基体金属と一体成形された肉厚
部とした場合に比べて生産性が優れているという効果が
ある。
【0033】また、この発明に係る電子管用陰極は、基
体金属が円板状であり、金属片は、基体金属の外径より
小さい外径で基体金属と略同心の円形状であるので、生
産性が優れているとともに、基体金属の中央部全域を均
等に変形防止することができるという効果がある。
【0034】また、この発明に係る電子管用陰極の金属
片は、基体金属の裏面の中央部から放射状に延在する少
なくとも3本の線状であるので、生産性が優れていると
ともに、変形防止効果をさらに向上させることができる
という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による電子管用陰極
を示す要部断面図である。
【図2】 この発明の実施の形態1による電子管用陰極
の基体金属の裏面図である。
【図3】 この発明の実施の形態1による電子管用陰極
の寿命試験中のカットオフ電圧の変動を示す図である。
【図4】 この発明の実施の形態2による電子管用陰極
を示す要部断面図である。
【図5】 この発明の実施の形態2による電子管用陰極
の基体金属の裏面図である。
【図6】 この発明の実施の形態2による電子管用陰極
の寿命試験中のカットオフ電圧の変動を示す図である。
【図7】 この発明の実施の形態3による電子管用陰極
を示す要部断面図である。
【図8】 この発明の実施の形態3による電子管用陰極
の寿命試験中のカットオフ電圧の変動を示す図である。
【図9】 従来の電子管用陰極を示す要部断面図であ
る。
【符号の説明】
1 基体金属 4 金属層 5 電
子放射物質層 7 金属片 11、12 肉厚部 51アル
カリ土類金属酸化物 52 希土類金属酸化物

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主成分がニッケルからなり、少なくとも
    一種の還元剤を含有してなる基体金属と、この基体金属
    に含有された還元剤のうちの少なくとも一種と還元性が
    同等または小さく、かつニッケルより還元性が大きい金
    属を主成分とし、上記基体金属の表面に形成された金属
    層と、この金属層上へ被着形成され、少なくともバリウ
    ムを含むアルカリ土類金属酸化物を主成分とする電子放
    射物質層を備えた電子管用陰極において、上記基体金属
    の裏面にこの基体金属の変形を防止する補強手段を設け
    たことを特徴とする電子管用陰極。
  2. 【請求項2】 補強手段は、基体金属の裏面に部分的に
    一体成形された肉厚部であることを特徴とする請求項1
    記載の電子管用陰極。
  3. 【請求項3】 肉厚部は、基体金属の裏面の中央部から
    放射状に延在する少なくとも3本の線状であることを特
    徴とする請求項2記載の電子管用陰極。
  4. 【請求項4】 基体金属が円板状であり、肉厚部は、基
    体金属の外径より小さい外径で基体金属と略同心の円形
    状であることを特徴とする請求項2記載の電子管用陰
    極。
  5. 【請求項5】 補強手段は、基体金属の裏面に部分的に
    固着された金属片であることを特徴とする請求項1記載
    の電子管用陰極。
  6. 【請求項6】 基体金属が円板状であり、金属片は、基
    体金属の外径より小さい外径で基体金属と略同心の円形
    状であることを特徴とする請求項5記載の電子管用陰
    極。
  7. 【請求項7】 金属片は、基体金属の裏面の中央部から
    放射状に延在する少なくとも3本の線状であることを特
    徴とする請求項5記載の電子管用陰極。
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