JP3010155B2 - 電子管用陰極の製造方法 - Google Patents
電子管用陰極の製造方法Info
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はテレビ用ブラウン
管などに用いられる電子管用陰極の改良に関するもの
で、特に電子放射物質層に希土類金属酸化物を含んだ電
子管用陰極に関するものである。
管などに用いられる電子管用陰極の改良に関するもの
で、特に電子放射物質層に希土類金属酸化物を含んだ電
子管用陰極に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図9は、例えば特公昭64−5417号
公報に開示されているような、テレビ用ブラウン管や撮
像管に用いられている電子管用陰極を示すものであり、
図において111はシリコン(Si)、マグネシウム(M
g)などの還元性元素を微量含む、主成分がニッケルか
らなる基体、112はニクロムなどで構成された陰極スリ
ーブ、115はこの基体111の上面に被着され、少なくとも
バリウムを含み、他にストロンチウムあるいは/及びカ
ルシウムを含むアルカリ土類金属酸化物121を主成分と
し、0.1〜20重量%の酸化スカンジウムなどの希土
類金属酸化物122を含んだ電子放射物質層、113は上記基
体111内に配設されたヒータで、加熱により上記電子放
射物質層115から熱電子を放出させるものである。
公報に開示されているような、テレビ用ブラウン管や撮
像管に用いられている電子管用陰極を示すものであり、
図において111はシリコン(Si)、マグネシウム(M
g)などの還元性元素を微量含む、主成分がニッケルか
らなる基体、112はニクロムなどで構成された陰極スリ
ーブ、115はこの基体111の上面に被着され、少なくとも
バリウムを含み、他にストロンチウムあるいは/及びカ
ルシウムを含むアルカリ土類金属酸化物121を主成分と
し、0.1〜20重量%の酸化スカンジウムなどの希土
類金属酸化物122を含んだ電子放射物質層、113は上記基
体111内に配設されたヒータで、加熱により上記電子放
射物質層115から熱電子を放出させるものである。
【0003】次に、このように構成された電子管用陰極
において、基体111への電子放射物質層115の被着方法に
ついて説明すると、まずバリウム、ストロンチウム、カ
ルシウムの三元炭素塩と所定量の酸化スカンジウムをバ
インダー及び溶剤とともに混合して、懸濁液を作成す
る。この懸濁液を基体111上にスプレイ法により約80
μmの厚みで塗布し、その後、ブラウン管の真空排気工
程中にヒータ113によって加熱する。この時、アルカリ
土類金属の炭酸塩はアルカリ土類金属酸化物に変わる。
その後、アルカリ土類金属酸化物の一部を還元して半導
体的性質を有するように活性化を行なうことにより、基
体111上にアルカリ土類金属酸化物121と希土類金属酸化
物122との混合物からなる電子放射物質層115を被着せし
めているものである。
において、基体111への電子放射物質層115の被着方法に
ついて説明すると、まずバリウム、ストロンチウム、カ
ルシウムの三元炭素塩と所定量の酸化スカンジウムをバ
インダー及び溶剤とともに混合して、懸濁液を作成す
る。この懸濁液を基体111上にスプレイ法により約80
μmの厚みで塗布し、その後、ブラウン管の真空排気工
程中にヒータ113によって加熱する。この時、アルカリ
土類金属の炭酸塩はアルカリ土類金属酸化物に変わる。
その後、アルカリ土類金属酸化物の一部を還元して半導
体的性質を有するように活性化を行なうことにより、基
体111上にアルカリ土類金属酸化物121と希土類金属酸化
物122との混合物からなる電子放射物質層115を被着せし
めているものである。
【0004】この活性化工程において、アルカリ土類金
属酸化物の一部は次の様に反応しているものである。つ
まり基体111中に含有されたシリコン、マグネシウム等
の還元性元素は拡散によりアルカリ土類金属酸化物121
と基体111の界面に移動して、アルカリ土類金属酸化物
と反応する。例えば、アルカリ土類金属化合物として酸
化バリウム(BaO)であれば次式(1)、(2)の様
に反応するものである。 2BaO+1/2Si = Ba+1/2Ba2SiO4 ・・・・(1) BaO+Mg = Ba+MgO ・・・・(2) これらの反応の結果、基体111上に被着形成されたアル
カリ土類金属酸化物121の一部が還元されて、酸素欠乏
型の半導体となり、電子放射が容易になる。電子放射物
質層に希土類金属酸化物が含まれない場合で、陰極温度
700〜800℃の動作温度で0.5〜0.8A/cm
2の電流密度動作が可能であり、電子放射物質層中に希
土類酸化物が含まれた場合で、1.32〜2.64A/
cm2の電流密度動作が可能になる。
属酸化物の一部は次の様に反応しているものである。つ
まり基体111中に含有されたシリコン、マグネシウム等
の還元性元素は拡散によりアルカリ土類金属酸化物121
と基体111の界面に移動して、アルカリ土類金属酸化物
と反応する。例えば、アルカリ土類金属化合物として酸
化バリウム(BaO)であれば次式(1)、(2)の様
に反応するものである。 2BaO+1/2Si = Ba+1/2Ba2SiO4 ・・・・(1) BaO+Mg = Ba+MgO ・・・・(2) これらの反応の結果、基体111上に被着形成されたアル
カリ土類金属酸化物121の一部が還元されて、酸素欠乏
型の半導体となり、電子放射が容易になる。電子放射物
質層に希土類金属酸化物が含まれない場合で、陰極温度
700〜800℃の動作温度で0.5〜0.8A/cm
2の電流密度動作が可能であり、電子放射物質層中に希
土類酸化物が含まれた場合で、1.32〜2.64A/
cm2の電流密度動作が可能になる。
【0005】一般に酸化物陰極の電子放射能力は酸化物
中の過剰Baの存在量に依存するので、希土類金属酸化
物が含まれない場合には高電流動作に必要な十分の過剰
Baの供給が得られず、動作可能な電流密度が小さい。
すなわち、上記した反応時に生成される副生成物であっ
て中間層と呼ばれている酸化マグネシウム(MgO)や
バリウムシリケイト(Ba2SiO4)が基体111のニッ
ケルの結晶粒界や基体111と電子放射物質層115との界面
に集中的に形成されるため、上式(1)および(2)の
反応がこれら中間層中のマグネシウムおよびシリコンの
拡散速度に律速され、過剰Baの供給が不足するためで
ある。電子放射物質層中に希土類金属酸化物が含まれる
場合は、酸化スカンジウム(Sc2O3)を例にとり説明
すると、陰極動作時の基体111と電子放射物質層115との
界面では基体111中を拡散移動してきた還元剤の一部と
酸化スカンジウム(Sc2O3)が次の(3)式の様に反
応して少量の金属状のスカンジウムが生成され、金属状
のスカンジウムの一部は基体111のニッケル中に固溶
し、一部は上記界面に存在する。 1/2Sc2O3 +3/2Mg = Sc+3/2MgO ・・・・(3) (3)式の様に反応して形成された金属状のスカンジウ
ムは基体111上あるいは基体111のニッケルの粒界に形成
された上記中間層を次の(4)式の様に分解する作用を
有するので、過剰Baの供給が改善され、さらに電子放
射物質層内で希土類金属酸化物は過剰Baの蒸発を抑制
する効果を有するので、希土類金属化合物が含まれない
場合よりも高電流密度動作が可能になると考えられてい
る。 1/2Ba2SiO4 +4/3Sc = Ba+1/2Si+2/3Sc2O3 ・・・・(4)
中の過剰Baの存在量に依存するので、希土類金属酸化
物が含まれない場合には高電流動作に必要な十分の過剰
Baの供給が得られず、動作可能な電流密度が小さい。
すなわち、上記した反応時に生成される副生成物であっ
て中間層と呼ばれている酸化マグネシウム(MgO)や
バリウムシリケイト(Ba2SiO4)が基体111のニッ
ケルの結晶粒界や基体111と電子放射物質層115との界面
に集中的に形成されるため、上式(1)および(2)の
反応がこれら中間層中のマグネシウムおよびシリコンの
拡散速度に律速され、過剰Baの供給が不足するためで
ある。電子放射物質層中に希土類金属酸化物が含まれる
場合は、酸化スカンジウム(Sc2O3)を例にとり説明
すると、陰極動作時の基体111と電子放射物質層115との
界面では基体111中を拡散移動してきた還元剤の一部と
酸化スカンジウム(Sc2O3)が次の(3)式の様に反
応して少量の金属状のスカンジウムが生成され、金属状
のスカンジウムの一部は基体111のニッケル中に固溶
し、一部は上記界面に存在する。 1/2Sc2O3 +3/2Mg = Sc+3/2MgO ・・・・(3) (3)式の様に反応して形成された金属状のスカンジウ
ムは基体111上あるいは基体111のニッケルの粒界に形成
された上記中間層を次の(4)式の様に分解する作用を
有するので、過剰Baの供給が改善され、さらに電子放
射物質層内で希土類金属酸化物は過剰Baの蒸発を抑制
する効果を有するので、希土類金属化合物が含まれない
場合よりも高電流密度動作が可能になると考えられてい
る。 1/2Ba2SiO4 +4/3Sc = Ba+1/2Si+2/3Sc2O3 ・・・・(4)
【0006】また、特開昭52−91358号公報には
機械的強度を増大するW、Moなどの高融点金属とM
g、Al、Si、Zrなどの還元剤とを含有するNi合
金からなる基体上で、電子放射物質層が被着される面に
Ni−W、Ni−Moなどの合金層をコーティングする
直熱型の陰極技術が開示されている。
機械的強度を増大するW、Moなどの高融点金属とM
g、Al、Si、Zrなどの還元剤とを含有するNi合
金からなる基体上で、電子放射物質層が被着される面に
Ni−W、Ni−Moなどの合金層をコーティングする
直熱型の陰極技術が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記の製造方法により
形成された電子管用陰極においては、希土類金属酸化物
が過剰Baの供給を改善するものの、過剰Baの供給速
度は基体のニッケル中の還元剤の拡散速度に律速され、
2A/cm2以上の高電流密度動作での寿命特性は著し
く低くなるという課題を有していた。
形成された電子管用陰極においては、希土類金属酸化物
が過剰Baの供給を改善するものの、過剰Baの供給速
度は基体のニッケル中の還元剤の拡散速度に律速され、
2A/cm2以上の高電流密度動作での寿命特性は著し
く低くなるという課題を有していた。
【0008】また、後者に示したものにおいては、基体
自身に電流を流しその発熱を利用して電子放射物質層か
ら熱電子を放射させる直熱型陰極固有の問題点である基
体の熱変形を、Ni−W,Ni−Moなどの合金層を基
体上にコーティングすることにより、改善するものであ
り、高電流密度動作を可能にすることができなかった。
自身に電流を流しその発熱を利用して電子放射物質層か
ら熱電子を放射させる直熱型陰極固有の問題点である基
体の熱変形を、Ni−W,Ni−Moなどの合金層を基
体上にコーティングすることにより、改善するものであ
り、高電流密度動作を可能にすることができなかった。
【0009】これらの課題に対し、出願人は既に特願平
2−56855号(特開平3−257735号)におい
て、基体と電子放射物質層との間に金属層を設けこれを
基体中へ拡散させることで、2A/cm2以上の高電流
密度動作での寿命特性を向上させることができることを
開示している。図10はその構造を示したものである。
2−56855号(特開平3−257735号)におい
て、基体と電子放射物質層との間に金属層を設けこれを
基体中へ拡散させることで、2A/cm2以上の高電流
密度動作での寿命特性を向上させることができることを
開示している。図10はその構造を示したものである。
【0010】この発明は、電子管用陰極製造中の残留応
力を緩和することで歪発生を抑制し、CRTの動作中に
カソードからの電子放射電流量を規定する特性である、
カットオフ電圧がCRTの寿命中に大きく変動する現象
を抑制することを目的とする。
力を緩和することで歪発生を抑制し、CRTの動作中に
カソードからの電子放射電流量を規定する特性である、
カットオフ電圧がCRTの寿命中に大きく変動する現象
を抑制することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係る電子管用陰
極の製造方法は、主成分がニッケルからなり、少なくと
も一種類の還元剤を含有してなる基体上にマスクを用い
て前記基体の有底上表面積の12〜80%の領域にタン
グステン、モリブデン、タンタルから選ばれた少なくと
も1種以上の金属を含む金属層を0.3〜0.9μmの
厚さでパターニングし、その後水素雰囲気中で加熱処理
し前記基体の表層において該基体と前記金属層とによ
り、合金層を形成し、該合金層上を含む前記基体上に少
なくともバリウムを含むアルカリ土類金属の酸化物と
0.01〜25重量%の希土類金属酸化物とを含有して
なる電子放射物質層とを被着形成する工程を備えたもの
である。
極の製造方法は、主成分がニッケルからなり、少なくと
も一種類の還元剤を含有してなる基体上にマスクを用い
て前記基体の有底上表面積の12〜80%の領域にタン
グステン、モリブデン、タンタルから選ばれた少なくと
も1種以上の金属を含む金属層を0.3〜0.9μmの
厚さでパターニングし、その後水素雰囲気中で加熱処理
し前記基体の表層において該基体と前記金属層とによ
り、合金層を形成し、該合金層上を含む前記基体上に少
なくともバリウムを含むアルカリ土類金属の酸化物と
0.01〜25重量%の希土類金属酸化物とを含有して
なる電子放射物質層とを被着形成する工程を備えたもの
である。
【0012】
【0013】
【0014】
実施の形態1.以下に、この発明の一実施の形態を図1
に基づいて説明する。図において、4は基体1の上面に
構成された例えばタングステン、モリブデン、タンタル
から選ばれた少なくとも1種以上の金属とニッケルとを
含む合金層、5はこの合金層4上に被着され、少なくと
もバリウムを含み、他にストロンチウムあるいは/及び
カルシウムを含むアルカリ土類金属酸化物6を主成分と
し、0.01〜25重量%の酸化スカンジウム、酸化イ
ットリウム、酸化ユーロピウムなどの希土類金属酸化物
7を含む電子放射物質層である。
に基づいて説明する。図において、4は基体1の上面に
構成された例えばタングステン、モリブデン、タンタル
から選ばれた少なくとも1種以上の金属とニッケルとを
含む合金層、5はこの合金層4上に被着され、少なくと
もバリウムを含み、他にストロンチウムあるいは/及び
カルシウムを含むアルカリ土類金属酸化物6を主成分と
し、0.01〜25重量%の酸化スカンジウム、酸化イ
ットリウム、酸化ユーロピウムなどの希土類金属酸化物
7を含む電子放射物質層である。
【0015】次に、この様に構成される電子管用陰極の
製造方法を一例を挙げて説明する。まず少量のSi、M
gを含有するNi基体1を陰極スリーブ2に溶接した
後、この陰極基体部を例えば電子ビーム蒸着装置内に配
設し、10ー5〜10ー8Torr程度の真空雰囲気で例え
ばWを電子ビームで加熱蒸着する。その後、この陰極基
体部を例えば水素雰囲気中で800〜1100℃で加熱
処理をするが、これは上記形成されたW金属層内部ある
いは表面に残存する酸素などの不純物を除去し、またこ
の金属層を焼結あるいは再結晶化あるいは基体1中への
拡散をさせるためである。この様な方法で合金層4が形
成された陰極基体部上に従来と同様に電子放射物質層5
を被着形成するものである。
製造方法を一例を挙げて説明する。まず少量のSi、M
gを含有するNi基体1を陰極スリーブ2に溶接した
後、この陰極基体部を例えば電子ビーム蒸着装置内に配
設し、10ー5〜10ー8Torr程度の真空雰囲気で例え
ばWを電子ビームで加熱蒸着する。その後、この陰極基
体部を例えば水素雰囲気中で800〜1100℃で加熱
処理をするが、これは上記形成されたW金属層内部ある
いは表面に残存する酸素などの不純物を除去し、またこ
の金属層を焼結あるいは再結晶化あるいは基体1中への
拡散をさせるためである。この様な方法で合金層4が形
成された陰極基体部上に従来と同様に電子放射物質層5
を被着形成するものである。
【0016】図2はこの様な方法で作成した本発明を実
施してなる電子管用陰極を通常のテレビジョン装置用ブ
ラウン管に装着し、通常の排気工程をへて完成したブラ
ウン管を電流密度2〜4A/cm2の条件で動作させた
時の寿命特性を、従来例と比較して示したものである。
ここで、膜厚0.7μmのW膜を形成し、水素雰囲気中
で1000℃で加熱処理を施した。なお、電子放射物質
層5としては、比較のため本実施の形態および従来例と
もに、5重量%の酸化スカンジウムを含むアルカリ土類
金属酸化物6を用いた。この図2から明らかなように、
本実施の形態のものは従来例のものに比べ寿命中のエミ
ッション劣化が著しく少ないことがわかる。
施してなる電子管用陰極を通常のテレビジョン装置用ブ
ラウン管に装着し、通常の排気工程をへて完成したブラ
ウン管を電流密度2〜4A/cm2の条件で動作させた
時の寿命特性を、従来例と比較して示したものである。
ここで、膜厚0.7μmのW膜を形成し、水素雰囲気中
で1000℃で加熱処理を施した。なお、電子放射物質
層5としては、比較のため本実施の形態および従来例と
もに、5重量%の酸化スカンジウムを含むアルカリ土類
金属酸化物6を用いた。この図2から明らかなように、
本実施の形態のものは従来例のものに比べ寿命中のエミ
ッション劣化が著しく少ないことがわかる。
【0017】また、図3は電流密度2A/cm2の条件
で動作させた時の寿命特性を示したもので、形成される
Wの膜厚を変化させて作成した陰極をブラウン管に装着
し調べた結果を示す。この結果より、膜厚0.1〜1.6
μmのW膜を形成した場合に従来よりも寿命特性が改善
され、特に0.3〜1.1μmのW膜を形成した場合にそ
の効果が顕著であった。これは、この膜厚であれば、ニ
ッケルータングステン合金層の最適組成が実現し、合金
層の細粒化により上記効果が安定して得られるからであ
る。
で動作させた時の寿命特性を示したもので、形成される
Wの膜厚を変化させて作成した陰極をブラウン管に装着
し調べた結果を示す。この結果より、膜厚0.1〜1.6
μmのW膜を形成した場合に従来よりも寿命特性が改善
され、特に0.3〜1.1μmのW膜を形成した場合にそ
の効果が顕著であった。これは、この膜厚であれば、ニ
ッケルータングステン合金層の最適組成が実現し、合金
層の細粒化により上記効果が安定して得られるからであ
る。
【0018】図4は上記W膜厚0.7μmの陰極の40
00時間動作後の断面の構造を示した模式図とその時の
基体へのタングステンの分布状態を示したX線マイクロ
アナライザによるタングステンの強度パターンである。
図中合金層の厚さdはタングステンの強度が最高強度の
5%以上の分布の深さを示している。図中では簡略的に
合金層の厚さdと合金層の細粒層の深さが一致して示し
てあるが、実際には合金層の厚さdよりも浅いところに
合金層の細粒層が分布し、深さ方向に対し徐々に合金層
の粒径がニッケル基体の粒径に近づく分布をなす場合が
多い。このdが1μm以上の時、上記図3のように従来
と比べて著しく寿命が向上した。また、dの厚さの領域
はニッケルとタングステンとの合金層で、固溶体、共晶
(共有混合物)、化合物(金属間化合物)あるいはそれ
らの少なくとも1種以上が共存する状態を含む。
00時間動作後の断面の構造を示した模式図とその時の
基体へのタングステンの分布状態を示したX線マイクロ
アナライザによるタングステンの強度パターンである。
図中合金層の厚さdはタングステンの強度が最高強度の
5%以上の分布の深さを示している。図中では簡略的に
合金層の厚さdと合金層の細粒層の深さが一致して示し
てあるが、実際には合金層の厚さdよりも浅いところに
合金層の細粒層が分布し、深さ方向に対し徐々に合金層
の粒径がニッケル基体の粒径に近づく分布をなす場合が
多い。このdが1μm以上の時、上記図3のように従来
と比べて著しく寿命が向上した。また、dの厚さの領域
はニッケルとタングステンとの合金層で、固溶体、共晶
(共有混合物)、化合物(金属間化合物)あるいはそれ
らの少なくとも1種以上が共存する状態を含む。
【0019】また、図5は金属層を形成した直後の陰極
(a)と熱処理工程を経た陰極(b)との断面構造を比
較した図で、顕微鏡観察により得た構造を表した模式図
である。熱処理後、図4に示したdの深さまで、ニッケ
ルとタングステンとの合金層が存在するが、この層を構
成する粒子は基体を構成する粒子よりその平均粒径が小
さい、すなわち粒子が細かいことがわかる。
(a)と熱処理工程を経た陰極(b)との断面構造を比
較した図で、顕微鏡観察により得た構造を表した模式図
である。熱処理後、図4に示したdの深さまで、ニッケ
ルとタングステンとの合金層が存在するが、この層を構
成する粒子は基体を構成する粒子よりその平均粒径が小
さい、すなわち粒子が細かいことがわかる。
【0020】次に、さらに図2のようにブラウン管に装
着して寿命試験をおこなった陰極の断面構造を図6に模
式的に示す。図6において、図中(a)は図5の(b)
に相当する陰極、すなわち熱処理工程後の陰極、図中
(b)は図2の試験を経た陰極、すなわち(a)よりも
さらに熱サイクルが進んだ陰極を示している。熱サイク
ルが進んだことにより、タングステンはさらに深さ方向
へ分布し、また、それに応じて、ニッケルとタングステ
ンとの合金層による細かい粒子の層の厚さが増加したこ
とがわかる(d1<d2)。この時、タングステンの分布
する厚さは10〜20μmに達し、この分布の状態であ
れば、寿命特性が著しく向上することがわかった。ま
た、d1として1μm未満では十分な寿命特性の改善が
認められなかった。
着して寿命試験をおこなった陰極の断面構造を図6に模
式的に示す。図6において、図中(a)は図5の(b)
に相当する陰極、すなわち熱処理工程後の陰極、図中
(b)は図2の試験を経た陰極、すなわち(a)よりも
さらに熱サイクルが進んだ陰極を示している。熱サイク
ルが進んだことにより、タングステンはさらに深さ方向
へ分布し、また、それに応じて、ニッケルとタングステ
ンとの合金層による細かい粒子の層の厚さが増加したこ
とがわかる(d1<d2)。この時、タングステンの分布
する厚さは10〜20μmに達し、この分布の状態であ
れば、寿命特性が著しく向上することがわかった。ま
た、d1として1μm未満では十分な寿命特性の改善が
認められなかった。
【0021】以上のような、タングステンの分布状態あ
るいはニッケルとタングステンとの合金層との粒子が細
かいことが以下のような働きを呈することで、寿命特性
の向上が達成できる。
るいはニッケルとタングステンとの合金層との粒子が細
かいことが以下のような働きを呈することで、寿命特性
の向上が達成できる。
【0022】以下、原理について、詳細説明する。この
発明を実施してなる陰極は、上記細粒化した合金層がニ
ッケル基体の表面上または表面層として形成されている
ので、還元剤であるMg,Siは合金層の粒界を拡散し
て合金層と電子放射物質の界面で例えばBaOと反応し
て過剰Baを生成する。また、合金層中のWの一部は下
記の式(5)のように過剰Baの生成にも寄与する。従
って、還元剤であるMg,Siの拡散が不十分な活性化
初期では、電子放射物質側にあるWの還元作用が寄与
し、Mg,Siが合金層と電子放射物質の界面に十分に
拡散した活性化後においては、還元能力の高いMg,S
iが過剰Baを主に生成する。従って、中間層の形成は
上記合金層の細かい粒界の最表面近傍に形成されるが、
合金層が細粒化されているのでMg,Siの拡散は例え
中間層が形成されても律速されない。また、中間層の一
部は従来の例えば酸化スカンジウム等の希土類金属酸化
物の効果により、分解される。一方、従来の希土類金属
酸化物を電子放射物質層に分散混合しただけでは、その
中間層分解の効果は酸化スカンジウムと還元剤との反応
に端を発しているため、固層反応の限界で中間層分解の
効果は限定され、その動作電流密度が2A/cm2以下
にとどまった。一方、この発明に於いては、過剰Baの
供給が十分に確保されるので、導電率の向上による高電
流密度下の電子放射物質層の消耗抑制と、さらには電子
放射物質層内の例えば酸化スカンジウム等の希土類金属
酸化物の過剰Baの蒸発を抑制する効果も相乗され、3
A/cm2以上の高電流密度動作が可能になる。 2BaO+1/3W = Ba+1/3Ba2WO3 ・・・・(5) さらに、Wは基体1の還元剤であるSi、Mgよりも還
元性が小さいが、基体1のNi粒子上または粒子内に分
布しているので、電子放射物質層5内の酸化スカンジウ
ムとの反応が比較的容易に起こり、中間層分解の効果を
有するScの生成にも寄与する。
発明を実施してなる陰極は、上記細粒化した合金層がニ
ッケル基体の表面上または表面層として形成されている
ので、還元剤であるMg,Siは合金層の粒界を拡散し
て合金層と電子放射物質の界面で例えばBaOと反応し
て過剰Baを生成する。また、合金層中のWの一部は下
記の式(5)のように過剰Baの生成にも寄与する。従
って、還元剤であるMg,Siの拡散が不十分な活性化
初期では、電子放射物質側にあるWの還元作用が寄与
し、Mg,Siが合金層と電子放射物質の界面に十分に
拡散した活性化後においては、還元能力の高いMg,S
iが過剰Baを主に生成する。従って、中間層の形成は
上記合金層の細かい粒界の最表面近傍に形成されるが、
合金層が細粒化されているのでMg,Siの拡散は例え
中間層が形成されても律速されない。また、中間層の一
部は従来の例えば酸化スカンジウム等の希土類金属酸化
物の効果により、分解される。一方、従来の希土類金属
酸化物を電子放射物質層に分散混合しただけでは、その
中間層分解の効果は酸化スカンジウムと還元剤との反応
に端を発しているため、固層反応の限界で中間層分解の
効果は限定され、その動作電流密度が2A/cm2以下
にとどまった。一方、この発明に於いては、過剰Baの
供給が十分に確保されるので、導電率の向上による高電
流密度下の電子放射物質層の消耗抑制と、さらには電子
放射物質層内の例えば酸化スカンジウム等の希土類金属
酸化物の過剰Baの蒸発を抑制する効果も相乗され、3
A/cm2以上の高電流密度動作が可能になる。 2BaO+1/3W = Ba+1/3Ba2WO3 ・・・・(5) さらに、Wは基体1の還元剤であるSi、Mgよりも還
元性が小さいが、基体1のNi粒子上または粒子内に分
布しているので、電子放射物質層5内の酸化スカンジウ
ムとの反応が比較的容易に起こり、中間層分解の効果を
有するScの生成にも寄与する。
【0023】上記実施の形態においては、金属層として
Wを用いた場合を例にとり説明したが、金属層4は基体
1中の還元剤の少なくとも一つの還元剤よりも還元性が
同等または小さく、Niより還元性が大きいことが望ま
しい。その理由は、金属層の還元性がNiよりも小さい
と過剰Baの供給効果が少なく、基体1中の還元剤の還
元性より大きいと過剰Baの主たる供給反応は金属層と
電子放射物質層5との界面で起こり、基体1中の還元剤
の過剰Ba供給効果が小さくなり、上述した酸化スカン
ジウムの中間層分解効果の特性への寄与が小さくなるか
らである。
Wを用いた場合を例にとり説明したが、金属層4は基体
1中の還元剤の少なくとも一つの還元剤よりも還元性が
同等または小さく、Niより還元性が大きいことが望ま
しい。その理由は、金属層の還元性がNiよりも小さい
と過剰Baの供給効果が少なく、基体1中の還元剤の還
元性より大きいと過剰Baの主たる供給反応は金属層と
電子放射物質層5との界面で起こり、基体1中の還元剤
の過剰Ba供給効果が小さくなり、上述した酸化スカン
ジウムの中間層分解効果の特性への寄与が小さくなるか
らである。
【0024】上記金属層としては基体1中の還元剤の構
成に依存するが、W、Mo、Taなどの少なくとも一種
の金属を選択すれば良い。また、上記金属層は基体1中
の還元剤の少なくとも一つの還元剤よりも還元性が同等
または小さくNiより還元性が大きい金属、例えばW、
Mo、Taに、Niの還元性以下の金属、例えばNiを
加えた合金層で構成しても良い。この場合も、Wで例示
したような膜厚であれば細粒化した合金層を形成するこ
とが可能で、ほぼ同様な作用効果が得られる。
成に依存するが、W、Mo、Taなどの少なくとも一種
の金属を選択すれば良い。また、上記金属層は基体1中
の還元剤の少なくとも一つの還元剤よりも還元性が同等
または小さくNiより還元性が大きい金属、例えばW、
Mo、Taに、Niの還元性以下の金属、例えばNiを
加えた合金層で構成しても良い。この場合も、Wで例示
したような膜厚であれば細粒化した合金層を形成するこ
とが可能で、ほぼ同様な作用効果が得られる。
【0025】Wのような金属層の形成された基体1は真
空中または還元雰囲気中で最高温度が800〜1100
℃で加熱処理を施すが、この加熱処理により、金属層を
主に基体1のNi粒子上または粒子内に分布するように
制御することが可能になり、基体1中の還元元素の電子
放射物質層5への拡散が適正に維持できる。
空中または還元雰囲気中で最高温度が800〜1100
℃で加熱処理を施すが、この加熱処理により、金属層を
主に基体1のNi粒子上または粒子内に分布するように
制御することが可能になり、基体1中の還元元素の電子
放射物質層5への拡散が適正に維持できる。
【0026】以上のように、基体表面のニッケルとタン
グステンとの共存層の分布、すなわち、タングステンを
少なくとも1μm以上分布させること、共存層の粒子を
基体より細かくすることにより、3A/cm2以上の高
電流密度動作で且つ寿命特性の向上を実現することがで
きた。
グステンとの共存層の分布、すなわち、タングステンを
少なくとも1μm以上分布させること、共存層の粒子を
基体より細かくすることにより、3A/cm2以上の高
電流密度動作で且つ寿命特性の向上を実現することがで
きた。
【0027】実施の形態2.上記実施の形態1において
は、金属層であるタングステンを電子ビームを用いた蒸
着法で形成した例について示したが、タングステン、モ
リブデン、タンタルの少なくとも1種類以上の金属層が
形成できれば、他の形成方法、例えば、スパッタ、イオ
ンビーム蒸着、CVD、メッキ、イオン打ち込み等の方
法を用いてもよい。
は、金属層であるタングステンを電子ビームを用いた蒸
着法で形成した例について示したが、タングステン、モ
リブデン、タンタルの少なくとも1種類以上の金属層が
形成できれば、他の形成方法、例えば、スパッタ、イオ
ンビーム蒸着、CVD、メッキ、イオン打ち込み等の方
法を用いてもよい。
【0028】実施の形態3.上記実施の形態としては、
基体上に金属層を形成する方法を述べたが、該基体上に
タングステン、モリブデン、タンタルから選ばれた少な
くとも1種以上の金属とニッケルとを含む混合成膜層、
または該1種以上の金属の単独成膜層とニッケル単独成
膜層とを含む多層成膜層を、上記実施の形態1や2で記
載された方法で形成してもよく、この場合、残留応力を
緩和する点で効果が大きい。そのため、陰極製造中の歪
発生が抑制され、精度が向上する。
基体上に金属層を形成する方法を述べたが、該基体上に
タングステン、モリブデン、タンタルから選ばれた少な
くとも1種以上の金属とニッケルとを含む混合成膜層、
または該1種以上の金属の単独成膜層とニッケル単独成
膜層とを含む多層成膜層を、上記実施の形態1や2で記
載された方法で形成してもよく、この場合、残留応力を
緩和する点で効果が大きい。そのため、陰極製造中の歪
発生が抑制され、精度が向上する。
【0029】実施の形態4.上記実施の形態において
は、基体と電子放射物質層との間に配設される金属層で
あるタングステンを単に蒸着する方法について述べた
が、これは基体表面に一様に形成する必要はない。熱処
理により、上記実施の形態1で規定されたタングステン
の分布が実現できれば、初期の形成状態は基体表面の一
部に形成されたものがよい。この場合、実施の形態1、
2に記載された蒸着方法等を用いればよい。例えば、形
成時にマスク等を用いれば、図7のようにパターニング
されたものを形成できる。この場合、一様に形成した時
よりも、タングステン層の残留応力を少なくすることが
でき、歪みのない精度の高い陰極を形成することができ
る。特に第1グリッド(陰極の上方に離間して配設した
陰極の電子放出面積を限定する機能をもつ。通常は円形
の開口部を有する金属板形状を有する。図示せず。) の円形孔直経(長方形の短辺形の長さ)が0.5mm以
下の場合には、前述のカットオフ変動が上記残留応力に
起因してブラウン管の輝度特性、色バランスの低下の原
因となる。
は、基体と電子放射物質層との間に配設される金属層で
あるタングステンを単に蒸着する方法について述べた
が、これは基体表面に一様に形成する必要はない。熱処
理により、上記実施の形態1で規定されたタングステン
の分布が実現できれば、初期の形成状態は基体表面の一
部に形成されたものがよい。この場合、実施の形態1、
2に記載された蒸着方法等を用いればよい。例えば、形
成時にマスク等を用いれば、図7のようにパターニング
されたものを形成できる。この場合、一様に形成した時
よりも、タングステン層の残留応力を少なくすることが
でき、歪みのない精度の高い陰極を形成することができ
る。特に第1グリッド(陰極の上方に離間して配設した
陰極の電子放出面積を限定する機能をもつ。通常は円形
の開口部を有する金属板形状を有する。図示せず。) の円形孔直経(長方形の短辺形の長さ)が0.5mm以
下の場合には、前述のカットオフ変動が上記残留応力に
起因してブラウン管の輝度特性、色バランスの低下の原
因となる。
【0030】図8は上記したパターニング成膜の効果を
現すもので、図中主流とあるのは電子放射物質層中に酸
化スカンジウムを5%分散させた従来の陰極、全面とあ
るのは基体表面全面にWを膜厚0.7μm成膜した陰
極、アイランドとあるのは図7のパターン(b)(成膜
部が200μm×200μm、ピッチ400μm)でW
を膜厚0.5μm成膜した陰極を表す。上記残留応力低
減の効果が顕著である。特に、基体の略中央部に(中央
寄りに)、基体の表面積(第7図(d)で示す基体直径
部とした有底の上表面の表面積)の12〜80%であれ
ば上記残留応力低減の効果が実現できる。また、成膜部
の膜厚は0.1〜1.8μmであれば、応力緩和に効果
がある。特に0.3〜0.9μmの範囲では応力緩和、
寿命特性の双方が顕著に良好であった。
現すもので、図中主流とあるのは電子放射物質層中に酸
化スカンジウムを5%分散させた従来の陰極、全面とあ
るのは基体表面全面にWを膜厚0.7μm成膜した陰
極、アイランドとあるのは図7のパターン(b)(成膜
部が200μm×200μm、ピッチ400μm)でW
を膜厚0.5μm成膜した陰極を表す。上記残留応力低
減の効果が顕著である。特に、基体の略中央部に(中央
寄りに)、基体の表面積(第7図(d)で示す基体直径
部とした有底の上表面の表面積)の12〜80%であれ
ば上記残留応力低減の効果が実現できる。また、成膜部
の膜厚は0.1〜1.8μmであれば、応力緩和に効果
がある。特に0.3〜0.9μmの範囲では応力緩和、
寿命特性の双方が顕著に良好であった。
【0031】上記実施の形態においては、基体表面の一
部にWを形成する例について示したが、タングステン、
モリブデン、タンタルの少なくとも1種類以上の金属層
であればよい。また、実施の形態3で例示したように、
タングステン、モリブデン、タンタルから選ばれた少な
くとも1種以上の金属とニッケルとを含む混合成膜層、
または該1種以上の金属の単独成膜層とニッケル単独成
膜層とを含む多層成膜層を基体表面の一部に形成しても
よい。
部にWを形成する例について示したが、タングステン、
モリブデン、タンタルの少なくとも1種類以上の金属層
であればよい。また、実施の形態3で例示したように、
タングステン、モリブデン、タンタルから選ばれた少な
くとも1種以上の金属とニッケルとを含む混合成膜層、
または該1種以上の金属の単独成膜層とニッケル単独成
膜層とを含む多層成膜層を基体表面の一部に形成しても
よい。
【0032】実施の形態5.上記実施の形態において
は、電子放射物質層内に希土類金属酸化物を分散させる
場合について説明したが、希土類金属酸化物を用いず
に、少なくともバリウムを含むアルカリ土類金属の酸化
物と、0.01〜20重量%のアルミニウム、チタン、
シリコン、マグネシウム、クロム、ジルコニウム、ハフ
ニウム、インジウム、スズの酸化物の少なくとも1種以
上の酸化物を含有してなる電子放射物質層とを備えた陰
極でも、上述した合金層の効果により、希土類金属酸化
物を用いた場合よりも効果はやや小さいが、高電流密度
を実現する。コスト面での有利さがはかれる。
は、電子放射物質層内に希土類金属酸化物を分散させる
場合について説明したが、希土類金属酸化物を用いず
に、少なくともバリウムを含むアルカリ土類金属の酸化
物と、0.01〜20重量%のアルミニウム、チタン、
シリコン、マグネシウム、クロム、ジルコニウム、ハフ
ニウム、インジウム、スズの酸化物の少なくとも1種以
上の酸化物を含有してなる電子放射物質層とを備えた陰
極でも、上述した合金層の効果により、希土類金属酸化
物を用いた場合よりも効果はやや小さいが、高電流密度
を実現する。コスト面での有利さがはかれる。
【0033】上記のように、この発明を実施してなる電
子管用陰極はテレビ用ブラウン管や撮像管に適用可能で
あるが、投射型テレビあるいは大型テレビなどのブラウ
ン管に適用して高電流で動作することにより、高輝度化
が実現できる。特にハイビジョンテレビ用ブラウン管の
高輝度化に有効である。また、ディスプレイモニタ用ブ
ラウン管に高電流密度で適用すること、即ち電流取出し
面積を従来より小さくして適用することにより、従来よ
りも高精細のブラウン管が実現できる。
子管用陰極はテレビ用ブラウン管や撮像管に適用可能で
あるが、投射型テレビあるいは大型テレビなどのブラウ
ン管に適用して高電流で動作することにより、高輝度化
が実現できる。特にハイビジョンテレビ用ブラウン管の
高輝度化に有効である。また、ディスプレイモニタ用ブ
ラウン管に高電流密度で適用すること、即ち電流取出し
面積を従来より小さくして適用することにより、従来よ
りも高精細のブラウン管が実現できる。
【0034】
【発明の効果】この発明によれば、電子管用陰極の製造
方法において、主成分がニッケルからなり、少なくとも
一種類の還元剤を含有してなる基体上にマスクを用いて
前記基体の有底上表面積の12〜80%の領域にタング
ステン、モリブデン、タンタルから選ばれた少なくとも
1種以上の金属を含む金属層を0.3〜0.9μmの厚
さでパターニングし、その後水素雰囲気中で加熱処理し
前記基体の表層において該基体と前記金属層とにより、
合金層を形成し、該合金層上を含む前記基体上に少なく
ともバリウムを含むアルカリ土類金属の酸化物と0.0
1〜25重量%の希土類金属酸化物とを含有してなる電
子放射物質層とを被着形成する工程を備えたので、基体
中の還元剤に加え、合金層が過剰Baの供給に寄与する
とともに、界面でこの合金層が安定して還元剤の供給を
確保するように作用する。さらに、残留応力が緩和さ
れ、信頼性も向上する。これにより、従来の酸化物陰極
では適用困難であった少なくとも3A/cm2以上の高
電流密度動作が可能な電子管用陰極を提供できるように
なり、従来では困難であった高輝度、高精細のブラウン
管を実現するという効果を有する。
方法において、主成分がニッケルからなり、少なくとも
一種類の還元剤を含有してなる基体上にマスクを用いて
前記基体の有底上表面積の12〜80%の領域にタング
ステン、モリブデン、タンタルから選ばれた少なくとも
1種以上の金属を含む金属層を0.3〜0.9μmの厚
さでパターニングし、その後水素雰囲気中で加熱処理し
前記基体の表層において該基体と前記金属層とにより、
合金層を形成し、該合金層上を含む前記基体上に少なく
ともバリウムを含むアルカリ土類金属の酸化物と0.0
1〜25重量%の希土類金属酸化物とを含有してなる電
子放射物質層とを被着形成する工程を備えたので、基体
中の還元剤に加え、合金層が過剰Baの供給に寄与する
とともに、界面でこの合金層が安定して還元剤の供給を
確保するように作用する。さらに、残留応力が緩和さ
れ、信頼性も向上する。これにより、従来の酸化物陰極
では適用困難であった少なくとも3A/cm2以上の高
電流密度動作が可能な電子管用陰極を提供できるように
なり、従来では困難であった高輝度、高精細のブラウン
管を実現するという効果を有する。
【0035】また、従来と比べて、合金層としてタング
ステン等の金属層を形成する工程が増加する程度であ
り、かつ残留応力を抑制するように層を形成したので、
簡便に且つ安価で、精度の高い電子管用陰極を提供でき
るという効果を得ることがきる。
ステン等の金属層を形成する工程が増加する程度であ
り、かつ残留応力を抑制するように層を形成したので、
簡便に且つ安価で、精度の高い電子管用陰極を提供でき
るという効果を得ることがきる。
【図1】 この発明の実施の形態1による電子管用陰極
の断面図である。
の断面図である。
【図2】 この発明を実施してなる電子管用陰極を装着
したブラウン管の寿命試験時間とエミッション電流比を
示す特性図である。
したブラウン管の寿命試験時間とエミッション電流比を
示す特性図である。
【図3】 この発明の実施の形態1による電子管用陰極
におけるタングステンの膜厚と寿命特性の関係を示した
図である。
におけるタングステンの膜厚と寿命特性の関係を示した
図である。
【図4】 この発明の実施の形態1による電子管用陰極
におけるタングステンの分布状態を示した断面模式図で
ある。
におけるタングステンの分布状態を示した断面模式図で
ある。
【図5】 この発明の実施の形態1による電子管用陰極
の断面模式図で、それぞれの層を構成する粒子の状態を
示した図である。
の断面模式図で、それぞれの層を構成する粒子の状態を
示した図である。
【図6】 この発明の実施の形態1による電子管用陰極
の断面模式図で、それぞれの層を構成する粒子の状態を
示した図で、熱処理の進行による比較を示したものであ
る。
の断面模式図で、それぞれの層を構成する粒子の状態を
示した図で、熱処理の進行による比較を示したものであ
る。
【図7】 この発明の実施の形態3による電子管陰極製
造時のタングステン形成のパターンを示した図である。
造時のタングステン形成のパターンを示した図である。
【図8】 この発明の実施の形態5の効果を示すカット
オフ変動特性図である。
オフ変動特性図である。
【図9】 従来の電子管用陰極の構造を示す断面図であ
る。
る。
【図10】 従来の電子管用陰極の構造を示す別の断面
図である。
図である。
【符号の説明】 1 基体、 2 陰極スリーブ、 3 ヒータ、 4
合金層、5 電子放射物質層、 6 アルカリ土類金
属酸化物、7 希土類金属酸化物。
合金層、5 電子放射物質層、 6 アルカリ土類金
属酸化物、7 希土類金属酸化物。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−257735(JP,A) 特開 平3−22320(JP,A) 特開 平3−173032(JP,A) 実開 昭56−9658(JP,U) 特許2878634(JP,B2) 特許2876591(JP,B2) 特公 昭63−43862(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 1/26,9/04,29/04
Claims (1)
- 【請求項1】 主成分がニッケルからなり、少なくとも
一種類の還元剤を含有してなる基体上にマスクを用いて
前記基体の有底上表面積の12〜80%の領域にタング
ステン、モリブデン、タンタルから選ばれた少なくとも
1種以上の金属を含む金属層を0.3〜0.9μmの厚
さでパターニングし、その後水素雰囲気中で加熱処理し
前記基体の表層において該基体と前記金属層とにより、
合金層を形成し、該合金層上を含む前記基体上に少なく
ともバリウムを含むアルカリ土類金属の酸化物と0.0
1〜25重量%の希土類金属酸化物とを含有してなる電
子放射物質層とを被着形成する工程を備えた電子管用陰
極の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP15453998A JP3010155B2 (ja) | 1998-06-03 | 1998-06-03 | 電子管用陰極の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP15453998A JP3010155B2 (ja) | 1998-06-03 | 1998-06-03 | 電子管用陰極の製造方法 |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP31974896A Division JP2876591B2 (ja) | 1996-11-29 | 1996-11-29 | 電子管用陰極 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10340665A JPH10340665A (ja) | 1998-12-22 |
JP3010155B2 true JP3010155B2 (ja) | 2000-02-14 |
Family
ID=15586479
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP15453998A Expired - Fee Related JP3010155B2 (ja) | 1998-06-03 | 1998-06-03 | 電子管用陰極の製造方法 |
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Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3010155B2 (ja) |
-
1998
- 1998-06-03 JP JP15453998A patent/JP3010155B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
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---|---|
JPH10340665A (ja) | 1998-12-22 |
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