JPH10199397A - 電子管用陰極 - Google Patents

電子管用陰極

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JPH10199397A
JPH10199397A JP8397A JP8397A JPH10199397A JP H10199397 A JPH10199397 A JP H10199397A JP 8397 A JP8397 A JP 8397A JP 8397 A JP8397 A JP 8397A JP H10199397 A JPH10199397 A JP H10199397A
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metal
cathode
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electron
metal layer
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JP8397A
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Hiroshi Yamaguchi
博 山口
Takashi Shinjo
孝 新庄
Masato Saito
正人 斉藤
Hiroyuki Teramoto
浩行 寺本
Takuya Ohira
卓也 大平
Riichi Kondo
利一 近藤
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Mitsubishi Electric Corp
Original Assignee
Mitsubishi Electric Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 基体の上に金属層を形成し、この金属層上に
電子放射物質層を形成した電子管用陰極において長時間
の使用における基体の変形を抑制する。 【解決手段】 主成分がニッケルからなり、少なくとも
一種の還元剤を含有してなる基体1の上に、還元性を有
するレニウムを代表金属とする金属群の中の何れか一
種、又は前記金属群の中の何れか複数種類を用いて金属
層21を形成し、この金属層21の上に少なくともバリ
ウムを含むアルカリ土類金属酸化物と希土類金属酸化物
とを含有してなる電子放射物質層3を被着形成したもの
である。また、前記金属層に変えて、前記金属群の中の
何れか一種の粉末、又は前記金属群の中の何れか複数種
類の金属の粉末を用いて金属粉末層22を形成したもの
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はブラウン管などに使
用される電子管用陰極に関し、特に長時間の使用におけ
る基体の変形を抑制することにより、例えばブラウン管
のカットオフ電圧の変動を少なくできる電子管用陰極に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】図8は例えば特開平3−257735号
公報に開示されている電子管用陰極を示すものであり、
テレビ用ブラウン管や撮像管等に使用されているもので
ある。図において1は基体で、シリコン(Si)、マグ
ネシウム(Mg)等の還元性元素を微量含み、また主成
分がニッケル(Ni)からなる金属体である。2は基体
1上に形成された金属層で、タングステン(W)等の還
元性元素を主成分とするものである。3は金属層2上に
形成された電子放射物質層で、少なくともバリウム(B
a)を含み、他にストロンチウム(Sr)あるいは/及
びカルシウム(Ca)を含むアルカリ土類金属酸化物3
1を主成分とし、0.1〜20重量%の酸化スカンジウ
ム(Sc2O3) 等の希土類金属酸化物32を含んだ電子放射
物質層である。4はニクロム等で構成された陰極スリー
ブである。5は陰極スリーブ4内に配設されたヒータ
で、加熱により電子放射物質層3から熱電子を放出させ
るものである。なお、ヒータ5は断面せずに図示してあ
る。
【0003】次に、この電子管用陰極がブラウン管に組
み入れられ、電子放射可能となるまでの工程を説明す
る。まず、基体1をスリーブ4の一端に溶接により固定
した後、洗浄し、更に真空中で基体1の表面に、金属層
2の蒸着を行う。次いで、水素雰囲気中で略1000°
Cの熱処理を行う。次に、バリウム(Ba)、ストロン
チウム(Sr)、カルシウム(Ca)の三元炭酸塩と所
定量の酸化スカンジウム(Sc2O3) をバインダー及び溶剤
とともに混合して、懸濁液を作成する。この懸濁液を基
体1上にスプレイ法により所定の厚みで塗布する。その
後、陰極加熱のためのヒータ5とともに電子銃に組み込
まれ、更に、ブラウン管に装着後、真空排気工程中のヒ
ータ5による加熱により、三元アルカリ土類金属炭酸塩
をその酸化物に分解させる。その後、活性化工程中にア
ルカリ土類金属酸化物は基体1中の還元剤によって一部
還元され、酸素欠乏型の半導体となって熱電子の放射可
能な状態となる。
【0004】ここで、電子放射物質層3に含まれる酸化
スカンジウム(Sc2O3) と金属層2の作用について補足す
る。酸化スカンジウム(Sc2O3) は中間層を分解する作用
を有する。即ち、活性化工程において、基体1中のS
i、Mg等の還元性元素は、アルカリ土類金属酸化物例
えばBaOと反応する。この反応によりアルカリ土類金
属酸化物は一部還元され、酸素欠乏型の半導体となり、
電子放射が容易になる。しかし、この反応時に、副生成
物であって中間層と呼ばれている酸化マグネシウム(Mg
O) やバリウムシリケイト(Ba2SiO4) が形成されるた
め、反応がこれら中間層のマグネシウム及びシリコンの
拡散速度に律速され、過剰Baの供給が阻害される。電
子放射物質層3に酸化スカンジウムが含まれていると、
この酸化スカンジウムと基体1中の還元剤例えばMgの
一部とが反応して少量の金属状のスカンジウムが生成さ
れる。この金属状のスカンジウムの一部は基体1のニッ
ケル中に固溶し、基体1上あるいは基体1のニッケルの
粒界に形成された中間層を分解する作用を有するので、
過剰Baの供給が改善される。
【0005】次に、金属層2は膜厚の薄い層として形成
され、動作時において金属層2は基体1のニッケル結晶
粒上にのみ分布し、このニッケルの結晶粒界は電子放射
物質層3側に露出しているので、基体1中の還元剤は金
属層2の影響を受けず電子放射物質層3のアルカリ土類
金属酸化物と還元反応を起こし過剰Baを供給する。そ
れに加えて、金属層2を形成するタングステンは(1)
式の様に電子放射物質層3の還元による過剰Baの生成
にも寄与する。 2BaO+1/3W=Ba+1/3Ba3 WO6 ・・・(1) さらに、タングステン(W)は基体1の中の還元剤であ
るシリコン(Si)、マグネシウム(Mg)よりも還元
性が小さいが、基体1のNi粒子上に分布しているので
電子放射物質層3内の酸化スカンジウムとの反応が比較
的容易に起こり、中間層分解の効果をもたらすScの生
成にも寄与する。
【0006】このような電子管用陰極を使用したブラウ
ン管は、酸化スカンジウムあるいは/及び金属層を含ま
ない電子管用陰極を使用したものに比べ高電流密度動作
が可能であり、平均3.0A/cm2を長期間にわたって取り出
すことが出来る。ちなみに、酸化スカンジウム及び金属
層の無い陰極では0.5A/cm2、酸化スカンジウムは有する
が金属層の無い陰極では2.0A/cm2の電流密度動作であっ
た。
【0007】次に、一般的なブラウン管の電子銃につい
て説明する。図9に電子銃の構成を示したが、6は制御
電極、7は加速電極、8は集束電極である。9は高圧電
極であり赤、緑、青を発色する蛍光体が塗布された表示
用パネルと一体になっている。10は図8の1、2、
3、4及び5からなる陰極で、本図では簡略化して示し
てある。また、各電極には電子ビーム通過孔が赤、緑、
青に対応して開けられており、通常のテレビセットでは
6〜9に印加される電圧は固定され、陰極10から放出
される電子は陰極自身に印加される電圧を変調すること
によって制御される。ちなみに、制御電極6を基準とし
た場合、陰極10には0〜カットオフ電圧、加速電極7
には+数百Vが印加され、陰極10の電圧を変調して制
御電極6の電圧に近づけることによって制御電極6の電
子ビーム通過孔を通して加速電極7からの電界が浸透
し、電子が放出される。ここで、カットオフ電圧とは、
陰極以外の電極の印加電圧を一定にした状態で、電子放
射電流が流れ始める境界の陰極電圧と定義する。なお、
集束電極8及び高圧電極9は陰極から放出された電子を
集束及び加速させるために配設されている。
【0008】ところで、ブラウン管の特性を決める要素
の一つにカットオフ電圧があるが、カットオフ電圧は一
般的には陰極、制御電極、加速電極の三要素で決定さ
れ、当該各電極の距離、電極厚さ、電子ビーム通過孔の
形状に依存し、電子銃の種類によって適正なカットオフ
電圧範囲に入るように設定されている。しかしながら、
金属層2を有する電子管用陰極を用いた場合には、長期
動作中に基体1が徐々に変形し、初期で設定した陰極電
圧のままではカットオフ状態が維持できなくなる。つま
り、図10に示すように陰極10が制御電極に接近する
方向に変形し、制御電極の電子ビーム通過孔を通して浸
透した加速電極からの電界を受けやすくなるため、初期
段階で設定した陰極電圧ではカットオフ状態にならず、
電流が流れて蛍光面が発光してしまう場合がある。
【0009】次に、基体1の変形について説明する。基
体は前記のように金属層2と接合されているため、長期
間の動作中に基体金属と金属層中の金属の相互拡散が発
生し、接合部界面において、両金属を含む金属間化合物
が生成される。また、生成された金属間化合物は、その
熱膨張率が基体金属のものとは異なるため、応力緩和に
よって基体1の変形を起こす。それ故、結果的には基体
1上に塗布されている電子放射物質層3と制御電極6と
の距離が変化すると考えられている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の電
子管用陰極、即ち、基体1上にタングステンからなる金
属層2を設置した電子管用陰極では、長期動作中に基体
が徐々に変形することにより、例えばブラウン管のカッ
トオフ電圧の変動が生ずるという問題点があった。本発
明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、
金属層2の形成に用いる金属を選定することにより基体
の変形を抑制した電子管用陰極を得ることを目的とす
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係る電子管用陰
極においては、主成分がニッケルからなり、少なくとも
一種の還元剤を含有してなる基体の上に、還元性を有す
るレニウム(Re)、ニオブ(Nb)、バナジウム
(V)、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、ア
ルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、錫(S
n)、ビスマス(Bi)及びインジウム(In)からな
る金属群の中の何れか一種、又は前記金属群の中の何れ
か複数種類を用いて金属層を形成し、この金属層の上に
少なくともバリウムを含むアルカリ土類金属酸化物と希
土類金属酸化物とを含有してなる電子放射物質層を被着
形成したものである。また、金属層の厚みを5.0μm
以下としたものである。さらに、金属層形成後の熱処理
温度を800〜1200°Cとしたものである。
【0012】また、主成分がニッケルからなり、少なく
とも一種の還元剤を含有してなる基体の上に、還元性を
有するレニウム(Re)、ニオブ(Nb)、バナジウム
(V)、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、ア
ルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、錫(S
n)、ビスマス(Bi)及びインジウム(In)からな
る金属群の中の何れか一種の粉末、又は前記金属群の中
の何れか複数種類の金属の粉末を用いて金属粉末層を形
成し、この金属粉末層の上に少なくともバリウムを含む
アルカリ土類金属酸化物と希土類金属酸化物とを含有し
てなる電子放射物質層を被着形成したものである。ま
た、金属粉末層の厚みを5.0μm以下としたものであ
る。さらに、金属粉末層を形成した後の熱処理温度を8
00〜1200°Cとしたものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.図1(a)は本発明の実施の形態1を示
す断面図であり、図において1は基体で、従来例と同様
にシリコン(Si)、マグネシウム(Mg)等の還元性
元素を微量含み、また主成分がニッケル(Ni)からな
る金属体であり、略円筒状のニクロムからなるスリーブ
4の一端に固定されている。21は金属層で、レニウム
(Re)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、マンガ
ン(Mn)、テクネチウム(Tc)、アルミニウム(A
l)、ジルコニウム(Zr)、錫(Sn)、ビスマス
(Bi)及びインジウム(In)からなる金属群の中の
何れか一種からなり、円盤状の基体1上に形成されてい
る。3は金属層21を覆うように形成された電子放射物
質層である。この電子放射物質層3は、従来例と略同様
に少なくともバリウム(Ba)を含み、他にストロンチ
ウム(Sr)及びカルシウム(Ca)を含むアルカリ土
類金属酸化物31の中に希土類金属酸化物例えば酸化ス
カンジウム32を分散した構成である。なお、上記のレ
ニウム(Re)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、
マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、アルミニウ
ム(Al)、ジルコニウム(Zr)、錫(Sn)、ビス
マス(Bi)及びインジウム(In)からなる金属群を
以下「レニウムを代表金属とする金属群」と称すること
にする。また、以下単に「前記金属群」と略記する。ま
た、図1(a)においてヒータ5は断面せずに図示して
ある。
【0014】次に、このように構成された電子管用陰極
の製造方法の一例について説明する。まず、基体1をス
リーブ4の一端に溶接により固定した後、洗浄し、更に
真空中で基体1の表面に、金属層21の蒸着を行う。こ
こでは、基体1の直径は1.5mm、金属層の厚さは約
1μmとした。次いで、水素雰囲気中で約1000°C
の熱処理を行った。
【0015】次に、希土類金属酸化物である酸化スカン
ジウムを、バリウム、ストロンチウム、カルシウムを含
むアルカリ土類金属酸化物の炭酸塩に重量比で約3%混
合し、ニトロセルロース及び酢酸ブチルアルコールから
なる溶剤に混ぜた懸濁液を作成し、金属層21の上面を
覆うようにスプレイ法で厚さ約80μmに電子放射物質
層を形成した。
【0016】次に、図9を用いて電子銃の構成及び電子
管製造方法を説明する。まず、実施の形態1の陰極のス
リーブ4内に加熱用のヒータ5を設置し、制御電極6と
加速電極7と集束電極8と高圧電極9とが絶縁保持材に
より一体的に組み立てられた電子銃を製作する。ここで
制御電極6の電子ビーム通過孔の直径は0.5mmとし
た。その後、この電子銃をブラウン管に装着し、排気工
程でヒータ5の加熱により電子放射物質中のアルカリ土
類金属炭酸塩の分解を行い、アルカリ土類金属酸化物に
変える。さらに、活性化工程中に基体金属及び金属層の
還元性元素により、このアルカリ土類金属酸化物は一部
が還元されてアルカリ土類金属となり、電子放射源とな
る。
【0017】図2及び図3は寿命試験結果で、前記金属
群の各金属一種類毎に、上記製法にて金属層を形成して
陰極を作り、この陰極を搭載したブラウン管を10種類
製作し、寿命試験した結果である。寿命試験条件はヒー
タ電圧を定格の6.3Vとし、ヒータへの通電は2.5
時間ON、0.5時間OFFの間欠条件とした。また、
試験開始時の陰極からの取り出し電流密度は2A/cm
2 とし、取り出し電流の劣化状況とカットオフ電圧の変
動状況を、従来陰極を搭載したブラウン管と比較して調
査した。図2において、横軸は寿命試験時間、縦軸はカ
ットオフ電圧であり初期値を100とした相対値で示し
ている。また図3において、横軸は寿命試験時間、縦軸
は陰極からの取り出し電流であり初期値を100とした
相対値で示している。また、図2及び図3の各寿命試験
結果は前記金属群の各金属それぞれについて12個の陰
極を用意し、この陰極をブラウン管1本当り3個ずつ用
いて、前記金属群の各金属一種類毎にブラウン管を4本
作成し、それらのブラウン管をすべて寿命試験に用い評
価した。また、これらのブラウン管の電子銃は、カラー
管用のインラインタイプで、赤、緑、青の蛍光体を発光
させるため3個の陰極が設置されている。
【0018】なお、寿命試験にて比較のために用いた特
開平3−257735号公報に開示されている従来陰極
(単に従来陰極と略記する)は、金属層の構成物質がタ
ングステンであることを除き、本発明の実施の形態1の
寿命試験に用いた陰極と細部に至るまで同様の構造と材
質にて構成されたものを用意して用いた。また、寿命試
験に際し、比較用の従来陰極を搭載したブラウン管を構
成する電子銃などの各部品も、実施の形態1の陰極を搭
載したものと同じものを用いた。さらに、ブラウン管の
排気工程における炭酸塩の分解や活性化などの諸条件も
全く同様にした。このように実施の形態1における電子
管用陰極と従来陰極との比較寿命試験が同じ条件下にて
厳密に行われたことをここに明記しておく。
【0019】さて、図2からは、実施の形態1の電子管
用陰極におけるカットオフ電圧の経時的な変動は、従来
のものと比較して明らかに少ないことが判る。また図3
からは、実施の形態1の電子管用陰極からも従来と同程
度の取り出し電流が得られることが判る。
【0020】このように、実施の形態1の電子管用陰極
を搭載したブラウン管におけるカットオフ電圧の変動
が、従来陰極を搭載したブラウン管よりも少ないこと
は、以下のように説明される。
【0021】カットオフ電圧の変動と陰極基体の変形と
の関係は先に述べた。本寿命試験において陰極は動作中
には約800°Cに昇温されている。このような高温下
では基体金属と金属層中の金属の相互拡散が原子レベル
で進行し、接合部近傍では、両金属を含む金属間化合物
が生成される。金属層21がレニウムの場合、代表的な
ものとして以下の金属間化合物が考えられる。 4Ni+Re→Ni4 Re 3Ni+2Re→Ni3 Re2 2Ni+3Re→Ni2 Re3 Ni+4Re→NiRe4 また、金属層がタングステンの場合は、上記の式のRe
をWに置換した金属間化合物が考えられる。生成される
金属間化合物は、その熱膨張率が基体金属のものとは異
なるため、接合部近傍で応力が発生し応力を緩和させる
方向に基体の変形を起こす。Ni4Wの膨張係数はNiつま
り基体金属よりも大きいことが分かっており、基体の応
力緩和による変形は図10のように凸の方向に起こるこ
とが予想される。
【0022】通常温度制御などに用いられるバイメタル
では陰極のような高温域で使用されることもなく、応力
緩和による変形は弾性的なもので応力が発生しない温度
に戻せば変形もなくなる。しかし、陰極の動作温度のよ
うな800°Cの高温下では金属原子は活発に拡散し、
結晶中では常に原子の再配向が活発になさている。一般
的に結晶中の原子の再配向は結晶格子の歪みを取り除く
方向に進むことが分かっている。また、ミクロには結晶
格子の歪みを取り除く再配向は、マクロには塑性変形と
して観測される。
【0023】陰極を冷状態から動作状態にした場合、基
体は一旦熱膨張率の違いにより応力が発生し弾性変形を
するが、直ちに結晶中で再配向が進むことで塑性変形を
起こす。したがって、陰極を動作状態にした直後の応力
緩和による変形量が大きいほど、再配向による塑性変形
の量が大きくなると言える。今回の寿命試験の場合、2.
5 時間ON、0.5 時間OFF のヒートサイクルで実施したの
で、ON-OFFを繰り返すたびに基体1において次第に塑性
変形が進行したと考えている。
【0024】さて、寿命試験の結果に基づき、従来陰極
よりも実施の形態1の陰極の方が、カットオフ電圧の変
動が少ない事実を述べた。そこで寿命試験後のブラウン
管を分解し各陰極を取り出して観察したところ、従来陰
極と比較して実施の形態1の陰極の凸型変形量が三分の
一程度に押さえられていたことを報告しておく。これ
は、基体1と金属層21の接合部において前記金属群の
各金属と基体のニッケルとの相互拡散により生成される
金属間化合物の膨張率が、基体のニッケルより大きい
が、従来陰極におけるタングステンと基体のニッケルと
の相互拡散により生成される金属間化合物の膨張率より
小さいために、塑性変形量がタングステンを使用した場
合に比べ少ないためと考えている。
【0025】次に、寿命試験において、実施の形態1の
陰極が従来陰極と同程度の電子放射能力を持つことにつ
いて説明する。実施の形態1の電子管用陰極は、従来陰
極のタングステン金属層を、前記金属群の各金属即ちレ
ニウム等により形成される金属層に置き換えた場合に相
当し、一般にレニウム等がタングステンと似通った性質
を持つ元素であるため、陰極動作中にタングステン金属
層の場合と同様の化学変化がレニウム等の場合にも起き
ていると考えられるからである。
【0026】即ち、実施の形態1の金属層21は膜厚の
薄い層として形成され、動作時において金属層は基体1
のニッケル結晶粒上にのみ分布し、このニッケルの結晶
粒界は電子放射物質層側に露出しているので、基体中の
還元剤は金属層21の影響を受けず電子放射物質層のア
ルカリ土類金属酸化物と還元反応を起こし過剰Baを供
給する。それに加えて、金属層を形成するレニウム(R
e)は(2)式の様に電子放射物質層の還元による過剰
Baの生成にも寄与する。 2BaO+1/3Re=Ba+1/3Ba3 ReO6 ・・・(2) さらに、レニウム(Re)は基体1の中の還元剤である
シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)よりも還元性
が小さいが、基体1のNi粒子上に分布しているので電
子放射物質層内の酸化スカンジウムとの反応が比較的容
易に起こり、中間層分解の効果をもたらすScの生成に
も寄与する。従って、過剰Baの供給が改善される。以
上の理由により、実施の形態1の陰極は、従来陰極と同
程度の電子放射能力を持つと考えられる。なお、Re以
外のNb等を用いた金属層の場合も、同様のことが言え
る。
【0027】また、金属層の厚みは5.0μm以下であ
ることが望ましい。これは金属層の厚みが5.0μm以
上では基体中の還元元素の電子放射物質層への拡散が、
金属層により律速され、還元元素によるバリウム供給が
不足し、金属層の厚みが5.0μm以下の場合と比較し
て、電子放射物質の活性化が不十分になり、熱電子が放
出されにくくなるためである。図4は先ほどと同様の条
件にて寿命試験を行った結果であり、この事実を示すも
のである。
【0028】また、金属層形成後の加熱処理は、真空中
又は還元雰囲気中にて800〜1200°Cで行うこと
が望ましい。この加熱処理は、金属層内部又は表面に残
存する酸素などの不純物を除去し、金属層を主に基体の
ニッケル粒子上に焼結あるいは再結晶化あるいは基体1
の中へ拡散させるためである。この作業を陰極に施すこ
とで金属層を均一に分布するように制御することが可能
になり、基体中の還元元素の電子放射物質層への拡散が
適正に維持できる。上限を1200°Cとしたのは、そ
れ以上の温度では金属層と基体との相互拡散が急速に進
行して金属層と基体が均一化し、金属層が本来の役割を
果たせなくなるからである。また、下限を800°Cと
したのは、それ以下では、不純物の除去が不完全にな
り、金属層の焼結、再結晶化、拡散も不完全に終わって
しまうからである。
【0029】図5は金属層21を膜厚約1μmに形成し
た後、還元雰囲気中で1000°Cにて加熱処理を施
し、電子放射物質を被着形成した場合と、加熱処理をせ
ずに電子放射物質を被着形成した場合とを比較した寿命
試験結果である。この寿命試験も先ほどと同様の条件に
て行われた。この結果からは加熱処理の有効性が明らか
に認められる。なお、図4及び図5は金属層21をRe
を用いて形成したものの結果であるが、前記金属群中の
各金属は似通った性質を持つ元素であるから、Re以外
のNb等を用いた場合もReと略同じ結果が得られると
考えられる。
【0030】上記実施の形態1は、Reを代表金属とす
る金属群の中の何れか一種を用いて金属層21を形成し
たものであるが、前記金属群の中の何れか複数種類を用
いても同様の効果が得られる。これは複数種類を用いて
も個々の金属が呈する作用は変化しないからである。
【0031】実施の形態2.図1(b)は本発明の実施
の形態2を示す断面図である。実施の形態2は、実施の
形態1の金属層21を金属粉末層22に変更した以外、
基体1と電子放射物質層3とスリーブ4の構成物質や構
造は実施の形態1と同じである。金属粉末層22は実施
の形態1の金属層の場合と同様に、円盤状の基体1上に
形成されているが、実施の形態2ではレニウム(R
e)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、マンガン
(Mn)、テクネチウム(Tc)、アルミニウム(A
l)、ジルコニウム(Zr)、錫(Sn)、ビスマス
(Bi)及びインジウム(In)からなる金属群、即ち
レニウムを代表金属とする金属群の中の何れか一種の粉
末を用いて形成されている。なお、図1(b)において
ヒータの図示は省略してある。
【0032】次に、このように構成された電子管用陰極
の製造方法の一例について説明する。先ず、ニクロム製
のスリーブ4の一端に基体1を溶接により固定した後、
洗浄する。次に金属粉末層用のレニウム微細粉末をニト
ロセルロース及び酢酸ブチルアルコールからなる溶剤に
混ぜて懸濁液を作成し、基体1を覆うようにスプレー法
にて塗布する。ここで、基体の直径は1.5mm、金属
粉末層の厚さは約2μmとした。次いで、水素雰囲気中
で約1000°Cの熱処理を行った。その後、電子放射
物質層を実施の形態1の場合と同様にスプレー法にて被
着形成した。
【0033】このように作成された電子管用陰極を実施
の形態1と同様にブラウン管に実装し、実施の形態1と
同じ条件にて寿命試験を行った結果を図6、図7に示
す。図6において、横軸は寿命試験時間、縦軸はカット
オフ電圧であり初期値を100とした相対値で示してい
る。また図7において、横軸は寿命試験時間、縦軸は陰
極からの取り出し電流であり初期値を100とした相対
値で示している。この図からも判るように、実施の形態
2の陰極を搭載したブラウン管のカットオフ電圧変動が
従来陰極と比較して明らかに少ないことが判る。また、
従来電極と同程度の電子放射能力を持っていることが判
る。
【0034】なお、寿命試験にて比較のために用いた従
来陰極は、実施の形態2の金属粉末層がタングステンの
金属粉末層になっている点を除き、実施の形態2の陰極
と細部に至るまで同様の構造と材質にて構成されたもの
を用意して用いた。即ち、実施の形態2の陰極と従来陰
極との比較寿命試験が同じ条件下にて厳密に行われたこ
とをここに明記しておく。
【0035】このように、実施の形態2による陰極の優
れた特性は、実施の形態1の場合と同様にして説明され
る。なぜならば、実施の形態2における電子管用陰極で
は、厚さ約2μmの極薄い金属粉末層を形成するので、
金属粉末層形成後に行われる水素雰囲気中での約100
0°Cの加熱処理の際に、レニウム粉末の懸濁液に含ま
れたニトロセルロースや酢酸ブチルアルコールは熱分解
されて完全に除去され、レニウム粉末中のレニウム原子
は熱拡散によりニッケル基体上に満遍なく行き渡り再結
晶化するために、金属粉末層の微細な構造が実施の形態
1での加熱処理後の金属層と同じ状態になると考えられ
るからである。なお、図6及び図7は金属粉末層22を
Re粉末を用いて形成したものの結果であるが、上述の
理由により実施の形態1と同じようにNb,V,Mn,
Tc,Al,Zr,Sn,Bi又はInの粉末を用いた
場合もRe粉末と略同じ結果が得られると考えられる。
【0036】また、金属粉末層の厚みは5.0μm以下
であることが望ましい。さらに、金属粉末層形成後の加
熱処理は、真空中または還元雰囲気中にて800〜12
00°Cで行うことが望ましい。その理由は、上述のよ
うに加熱処理後は、金属粉末層の微細な構造が実施の形
態1での加熱処理後の金属層と同じ状態になると考えら
れるので、実施の形態1と同様に説明される。すなわ
ち、実施の形態1のこの件に関する説明の中の金属層を
金属粉末層と読み換えればよい。また、上記実施の形態
2は、Reを代表金属とする金属群の中の何れか一種の
粉末を用いて金属粉末層22を形成したものであるが、
前記金属群の中の何れか複数種類の金属の粉末を用いて
も同様の効果が得られる。これは複数種類の金属の粉末
を用いても個々の金属粉末が呈する作用は変化しないか
らである。
【0037】
【発明の効果】本発明は以上説明したとおり、電子管用
陰極において、主成分がニッケルからなり、少なくとも
一種の還元剤を含有してなる基体の上に、還元性を有す
るレニウムを代表金属とする金属群の中の何れか一種、
又は前記金属群の中の何れか複数種類を用いて金属層を
形成し、この金属層の上に少なくともバリウムを含むア
ルカリ土類金属酸化物と希土類金属酸化物とを含有して
なる電子放射物質層を被着形成したから、従来陰極と比
較して基体の変形を顕著に抑制でき、例えばブラウン管
に搭載した場合、従来陰極を搭載したものよりカットオ
フ電圧の変動を少なくすることが出来る。
【0038】また、主成分がニッケルからなり、少なく
とも一種の還元剤を含有してなる基体の上に、還元性を
有するレニウムを代表金属とする金属群の中の何れか一
種の粉末、又は前記金属群の中の何れか複数種類の金属
の粉末を用いて金属粉末層を形成し、この金属粉末層の
上に少なくともバリウムを含むアルカリ土類金属酸化物
と希土類金属酸化物とを含有してなる電子放射物質層を
被着形成したから、従来陰極と比較して基体の変形を顕
著に抑制でき、例えばブラウン管に搭載した場合、従来
陰極を搭載したものよりカットオフ電圧の変動を少なく
することが出来る。
【0039】また、金属層又は金属粉末層の厚みを5.
0μm以下としたので、電子放射物質の活性化が十分と
なり、熱電子の放出能力が向上する。
【0040】また、金属層又は金属粉末層形成後の熱処
理温度を800〜1200°としたので、金属層を均一
に分布するように制御することが可能になり、基体中の
還元元素の電子放射物質層への拡散が適正に維持でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1及び実施の形態2を示
す断面図である。
【図2】 本発明の実施の形態1を用いて製作したブラ
ウン管のカットオフ電圧変動特性を示す線図である。
【図3】 本発明の実施の形態1を用いて製作したブラ
ウン管の電子放射特性を示す線図である。
【図4】 本発明の実施の形態1において金属層の厚さ
指定の効果を明示する電子放射特性を示す線図である。
【図5】 本発明の実施の形態1において金属層成型後
の熱処理温度指定の効果を明示する電子放射特性を示す
線図である。
【図6】 本発明の実施の形態2を用いて製作したブラ
ウン管のカットオフ電圧変動特性を示す線図である。
【図7】 本発明の実施の形態2を用いて製作したブラ
ウン管の電子放射特性を示す線図である。
【図8】 従来の電子管用陰極を示す断面図である。
【図9】 一般的なブラウン管の電子銃の構成を示す説
明図である。
【図10】 基体の上に金属層を形成した陰極における
基体の変形を説明する説明図である。
【符号の説明】
1 基体、2,21 金属層、3 電子放射物質層、4
スリーブ、5 ヒータ、6 制御電極、7 加速電
極、8 集束電極、9 高圧電極、10 陰極、22
金属粉末層。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 寺本 浩行 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 (72)発明者 大平 卓也 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 (72)発明者 近藤 利一 富山県富山市晴海台8番5号 菱北電子株 式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主成分がニッケルからなり、少なくとも
    一種の還元剤を含有してなる基体と、 還元性を有するレニウム(Re)、ニオブ(Nb)、バ
    ナジウム(V)、マンガン(Mn)、テクネチウム(T
    c)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、
    錫(Sn)、ビスマス(Bi)及びインジウム(In)
    からなる金属群の中の何れか一種、又は前記金属群の中
    の何れか複数種類を用いて前記基体の上に形成された金
    属層と、 この金属層の上に被着形成され、少なくともバリウムを
    含むアルカリ土類金属酸化物と希土類金属酸化物とを含
    有してなる電子放射物質層とを備えたことを特徴とする
    電子管用陰極。
  2. 【請求項2】 金属層の厚みが5.0μm以下であるこ
    とを特徴とする請求項1記載の電子管用陰極。
  3. 【請求項3】 金属層形成後の熱処理温度を800〜1
    200°Cとしたことを特徴とする請求項1記載の電子
    管用陰極。
  4. 【請求項4】 主成分がニッケルからなり、少なくとも
    一種の還元剤を含有してなる基体と、 還元性を有するレニウム(Re)、ニオブ(Nb)、バ
    ナジウム(V)、マンガン(Mn)、テクネチウム(T
    c)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、
    錫(Sn)、ビスマス(Bi)及びインジウム(In)
    からなる金属群の中の何れか一種の粉末、又は前記金属
    群の中の何れか複数種類の金属の粉末を用いて前記基体
    の上に形成された金属粉末層と、 この金属粉末層の上に被着形成され、少なくともバリウ
    ムを含むアルカリ土類金属酸化物と希土類金属酸化物と
    を含有してなる電子放射物質層とを備えたことを特徴と
    する電子管用陰極。
  5. 【請求項5】 金属粉末層の厚みが5.0μm以下であ
    ることを特徴とする請求項4記載の電子管用陰極。
  6. 【請求項6】 金属粉末層形成後の熱処理温度を800
    〜1200°Cとしたことを特徴とする請求項4記載の
    電子管用陰極。
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