JP2878634B2 - 電子管用陰極 - Google Patents

電子管用陰極

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JP2878634B2
JP2878634B2 JP164296A JP164296A JP2878634B2 JP 2878634 B2 JP2878634 B2 JP 2878634B2 JP 164296 A JP164296 A JP 164296A JP 164296 A JP164296 A JP 164296A JP 2878634 B2 JP2878634 B2 JP 2878634B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はブラウン管などに使
用される電子管用陰極に関し、特に、長期間のブラウン
管動作中におけるカットオフ電圧の変動を抑制するため
の技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図11は、例えば、特開平3−2577
35号公報に開示されているようなテレビ用ブラウン管
や撮像管等に使用されている従来の電子管用陰極を示す
ものである。図において、1はシリコン(Si)やマグ
ネシウム(Mg)などの還元性元素を微量含み、主成分
がニッケルからなっている円盤状の基体、2はニクロム
等で構成された陰極スリーブ、3は陰極スリーブ2内に
配設されたヒータ、4は基体1と同程度の直径を有し、
基体1のヒータ3とは反対側の面上の全面にわたって円
形状に形成された金属層であって、基体1に含有される
還元性元素の少なくとも一種と還元性が同等または小さ
く、かつニッケルより還元性の大きい還元性元素(例え
ば、タングステン(W)など)を主成分としている。ま
た、5は金属層4の上に被着して形成された電子放射物
質層であって、少なくともバリウム(Ba)を含み、他
にストロンチウム(Sr)あるいは/及びカルシウム
(Ca)を含むアルカリ土類金属酸化物を主成分とし、
0.1〜20重量%の酸化スカンジウム(Sc23)等
の希土類金属酸化物を含んでいる。電子放射物質層5
は、陰極スリーブ2内に配設されたヒータ3の加熱によ
り熱電子を放出する。
【0003】このように構成された電子管用陰極におい
て、基体1への金属層4の形成及び金属層4の表面への
電子放射物質層5の被着方法について説明する。まず、
タングステンのような還元性を有する金属を真空蒸着等
の方法で膜厚が1μm程度になるように基体1の制御電
極との対向面側(即ち、ヒータ3とは反対側)の全面に
被着形成し、非酸化性雰囲気中で熱処理により金属層4
の焼結、再結晶、基体中への拡散を行わせる。次に、バ
リウム、ストロンチウム、カルシウムの三元炭酸塩と所
定量の酸化スカンジウムをバインダーおよび溶剤と共に
混合した懸濁液をスプレー法等により金属層4の上に約
100μm程度の厚さで塗布し、電子放射物質層5を形
成する。
【0004】次に、この電子管用陰極がブラウン管に組
み入れられ、電子放射が可能となるまでの工程を説明す
る。まず、電子管用陰極は、陰極加熱のためのヒータ3
とともに電子銃に組み込まれ、更に、ブラウン管に取り
付けられた後、真空排気工程中のヒータ3による加熱に
より、三元アルカリ土類金属炭酸塩をその酸化物に分解
させる。その後、活性化工程中に電子放射物質層5中の
アルカリ土類金属酸化物は、基体1中の還元剤によって
一部が還元され、酸素欠乏型の半導体となって熱電子の
放射可能な状態となる。
【0005】このような電子管用陰極を使用したブラウ
ン管は、電子放射物質層5に酸化スカンジウムを含んで
いない電子管陰極、あるいは金属層4を形成していない
電子管用陰極に比べて高電流密度動作が可能であり、平
均で3.0A/cm2 を長期間にわたって取り出すことが
できる。ちなみに、電子放射物質層5に酸化スカンジウ
ムを含まず、かつ金属層4の形成されていない電子管用
陰極では0.5A/cm2 、電子放射物質層5に酸化スカ
ンジウムは有するが金属層4の形成されていない電子管
用陰極では2.0A/cm2 の電流密度動作であった。
【0006】次に、一般的なブラウン管の電子銃につい
て説明する。図12は、一般的なブラウン管の電子銃の
概略構成を示す概念図である。図において、6は制御電
極、7は加速電極、8は集束電極、9は、赤、緑、青を
発色する蛍光体が塗布された表示用パネルと一体になっ
ている高圧電極、10は、基体1、陰極スリーブ2、ヒ
ータ3、金属層4、電子放射物質層5などで構成された
図11に示したような電子管用の陰極である。また、各
電極には電子ビーム通過孔が赤、緑、青に対応して設け
られており、このような電子銃が組み込まれたブラウン
管を用いた通常のテレビジョン装置においては、制御電
極6、加速電極7、集束電極8、高圧電極9に印加され
る電圧は固定され、陰極10から流れ出る電流は陰極自
身に印加される電圧を変調することによって制御され
る。
【0007】例えば、制御電極6の電圧を基準とした場
合を考えると、陰極10には0〜カットオフ電圧が、ま
た、加速電極7には+数百V(ボルト)の電圧が印加さ
れており、陰極10の電圧を変調して制御電極6の電圧
に近づけることによって制御電極6の電子ビーム通過孔
を通して加速電極7からの電界が浸透し、電子が放出さ
れる。ここで、カットオフ電圧とは、陰極10以外の各
電極の印加電圧を一定にした状態で、陰極10から電子
放射電流(電子ビームとも云う)が流れ始める時の陰極
電圧と定義する。なお、集束電極8および高圧電極9
は、陰極10から放出された電子放射電流を集束、加速
させるために配設されている。
【0008】ところで、ブラウン管の特性を決める要素
の1つにカットオフ電圧があるが、このカットオフ電圧
は一般的には陰極10、制御電極6、加速電極7の3要
素で決定され、これらの各電極間の距離、電極厚さ、電
子ビーム通過孔の形状に依存し、電子銃の種類によって
適正なカットオフ電圧範囲に入るように設定されてい
る。しかし、前述した金属層4を形成した電子管用陰極
を用いた場合には、ブラウン管の長期間の動作中に基体
1が徐々に変形し、金属層4の上に形成された電子放射
物質層5と制御電極6あるいは加速電極7との間の距離
が変動するため、初期に設定した適正なカットオフ状態
が維持できなくなる。
【0009】次に基体1が変形する原因について説明す
る。基体1には前述したように金属層4が接合して形成
されているため、長期間の動作中に基体1を構成する金
属と金属層4中の金属の相互拡散が発生し、接合部界面
において合金層が生成される。そして、生成された合金
層は、その熱膨張率が基体1の金属のものとは異なるた
め、応力緩和によって基体1の変形を引き起こすことに
なる。なお、一般的に異種の金属を接合させ、1000
℃程度の高温で熱処理を施した場合、接している金属同
志が相互拡散をし、接触面を中心に合金層が形成され
る。
【0010】さらに、通常、生成した合金の体積は元の
金属の結晶形と異なり、膨張もしくは収縮を起こし、タ
ングステンとニッケルの合金では膨張となるため、図1
3に示したように、下地のニッケルとの作用で基体1の
全体が金属層4側に凸状に湾曲する。この現象は、生成
された合金層の形成された面積が大きい程顕著になる。
従って、図11のように基体1の全面を金属層が覆って
いるとその変形量は大きくなる。このような合金層の膨
張による基体および金属層の変形によって、結果的には
基体1上の金属層4に塗布されている電子放射物質層5
と制御電極6との距離が接近するように変化すると考え
られている。このため、制御電極6の電子ビーム通過孔
を通して浸透した加速電極7からの電界を受けやすくな
り、ブラウン管の動作の初期段階で設定した陰極電圧で
はカットオフ状態にならなくなってしまう。従って、カ
ットオフ状態になるべき時にも、陰極10より電流が流
れ、蛍光面が発光してしまう場合がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来の構
成による高密度電流での動作を可能とした電子管用陰極
を用いたブラウン管においては、その長期間の動作中に
基体1が変形を起こし、カットオフ電圧が初期の状態か
ら大きく変化する。このため、赤、緑、青の電子ビーム
に対する所定の適正なカットオフ特性が得られなくな
り、発色のアンバランスまたは輝度の変動が発生し、長
期間にわたって高品位な画像を維持できないという課題
があった。この発明は、このような課題を解決するため
になされたもので、高電流密度の動作を可能とする電子
管用陰極において、さらに長期間にわたってカットオフ
特性の変動しない電子管用陰極を提供することを目的と
する。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明に係る電子管用
陰極は、主成分がニッケルからなり、少なくとも一種の
還元剤を含有してなる基体と、この基体に含有された還
元剤のうちの少なくとも一種の還元剤と還元性が同等か
または小さく、かつニッケルより還元性が大きい金属を
主成分とし、基体の表面上に形成される金属層と、この
金属層の上にバリウムを含むアルカリ土類金属酸化物を
被着して形成される電子放射物質層とを備え、電子放射
物質層を制御電極に対向させて配設される電子管用陰極
において、金属層は基体表面の所定の一部領域のみを覆
い、基体の所定の一部領域との合金層を形成すると共
に、電子放射物質層は金属層および金属層で覆われてい
ない基体の制御電極側の表面全体を覆うように形成され
るものである。
【0013】また、この発明に係る電子管用陰極の金属
層は、基体表面の略中央部に形成したものである。ま
た、この発明に係る電子管用陰極の金属層は、基体表面
上に複数個分散させて形成したものである。また、この
発明に係る電子管用陰極の金属層は、基体に含有された
還元剤のうちの少なくとも一種の還元剤と還元性が同等
または小さく、かつニッケルより還元性が大きい金属
を主成分とした粉末状の金属を用いたものである。ま
た、この発明に係る電子管用陰極の金属層は、基体に形
成された後に800℃乃至1200℃の温度範囲で熱処
理が施されたものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.以下にこの発明の一実施の形態を図面に
基づいて説明する。尚、図に於いて従来と同一符号は従
来のものと同一または相当のものを表わす。図1は、こ
の発明の実施の形態1による電子管用陰極の概略の構成
を示す図である。図において、1はシリコン(Si)、
マグネシウム(Mg)などの還元性元素を微量含み、主
成分がニッケルからなる円盤状の基体、2は略円筒状の
ニクロム等で構成され、その一端に基体1が固定して設
けられた陰極スリーブ、3は陰極スリーブ2内に配設さ
れたヒータである。
【0015】また、40は、円盤状の基体1のヒータ3
とは反対側の面上の中心部において基体1の直径よりも
小さい直径を有して円形状に形成された金属層であっ
て、この金属層40は基体1に含有される還元性元素の
少なくとも一種と還元性が同等または小さく、かつニッ
ケルより還元性の大きい還元性元素(例えば、タングス
テン(W)など)を主成分としている。さらに、50は
金属層40の表面およびその外周部にある基体1の表面
全体を覆うように被着して形成された電子放射物質層で
あって、少なくともバリウム(Ba)を含み、他にスト
ロンチウム(Sr)あるいは/及びカルシウム(Ca)
を含むアルカリ土類金属酸化物を主成分とし、0.1〜
20重量%の酸化スカンジウム(Sc23)等の希土類
金属酸化物を含んでいる。電子放射物質層50は、陰極
スリーブ2内に配設されたヒータ3の加熱により熱電子
を放出する。
【0016】次に、このように構成された電子管用陰極
の製造方法の一例について説明する。 まず、円盤状の
金属で構成された基体1をニクロム製の陰極スリーブ2
の一端に溶接により固定した後に洗浄し、更に真空中で
この基体1の金属表面に、基体1と同心で、かつ、基体
1の直径よりも小さい円形状にタングステンなどの還元
性元素を主成分とする金属の蒸着を行い、金属層40を
形成する。次に、水素雰囲気中において、例えば約10
00℃の温度で熱処理を行う。尚、一例として、基体1
の直径は1.5mm、金属層40の直径は制御電極6の
電子ビーム通過孔と同じ0.5mmとし、金属層40の
蒸着厚さは1μmとした。
【0017】次に、希土類金属酸化物である酸化スカン
ジウムを、バリウム、ストロンチウム、カルシウムを含
むアルカリ土類金属の炭酸塩に重量比で約3%混合し、
ニトロセルロース及び酢酸ブチルアルコールからなる溶
剤に混ぜた懸濁液を作成し、前述した金属層40の表面
および金属層40の外周部周辺の基体1の表面全体を覆
うようにスプレイ法で厚さ約100μm程度に電子放射
物質層50を形成した。
【0018】次に、電子銃の構成およびその製造方法に
ついて説明する。まず、前述の電子管用陰極の陰極スリ
ーブ2内に加熱用のヒータ3を配設し、制御電極6と加
速電極7と集束電極8と高圧電極9とが絶縁保持材によ
り絶縁性を保って一体的に組み立てられた電子銃を製作
する。ここで制御電極6の電子ビーム通過孔の直径は
0.5mmとした。その後、この電子銃をブラウン管に
封止し、排気工程でヒータ3の加熱により電子放射物質
層50中のアルカリ土類金属炭酸塩の分解を行い、アル
カリ土類金属酸化物に変える。更に、この活性化工程中
に基体1の金属および金属層40の還元性元素により、
このアルカリ土類金属酸化物は一部が還元されてアルカ
リ土類金属となり、電子放射源となる。
【0019】図2は、本実施の形態1による電子管用陰
極を用いて製造されたブラウン管の寿命試験の結果であ
る。寿命試験の条件は、ヒータ電圧を定格の6.3Vと
し、ヒータへの通電は2.5時間通電し、0.5時間は
通電を行わない間欠通電とした。また、陰極からの取り
出し電流密度は2A/cm2 とした。この図2において、
横軸は寿命試験時間、縦軸はカットオフ電圧であり初期
値のカットオフ電圧を100とした相対値で示してい
る。カットオフ電圧の変動は20%程度以内(即ち、初
期値を100とした時、80以上)であれば実用上支障
はなく、この図から明かなように、本実施の形態1によ
る電子管用陰極を用いたブラウン管によれば、長期間動
作させた時のカットオフ電圧の経時変化は、従来の構成
のものと比較して非常に改善されていることが判る。な
お、従来の陰極は本実施の形態とは基本的には同様の構
成であるが、基体1上に形成した金属層4の直径を基体
1の径と等しい1.5mmとした。
【0020】次に、このような本実施の形態1による改
善効果の理由について説明する。前述したように、一般
的に異種の金属を接合させ、1000℃程度の高温で熱
処理を施した場合、接している金属同志が相互拡散を
し、接触面を中心に合金層が形成される。また、通常、
生成した合金の体積は元の金属の結晶形と異なり、膨張
もしくは収縮を起こし、金属層40の主成分であるタン
グステン等の還元性元素の金属と基体1の主成分である
ニッケルとの合金では膨張を起すため、下地のニッケル
との作用で基体の全体が金属層側に凸状に湾曲する。
【0021】本実施の形態でも従来と同様に、基体1の
金属と金属層40の界面で合金層が形成されるが、金属
層40は基体1表面の中央部の一部領域のみを覆い、上
記基体の一部領域との合金層を形成するようにしている
ので、従来例に比べて合金層の形成される面積が少ない
ため、図3に示すように基体1の変形量は従来の場合に
比べて少なくなる。それ故に、金属層40の上に形成さ
れた電子放射物質層50と制御電極6との間隔が従来例
よりも変動しにくく、結果としてカットオフ電圧の経時
的な変動の少ない電子管用陰極の実現が可能となる。
【0022】実施の形態2.図4は、この発明の実施の
形態2による電子管用陰極の構成を示す図である。基本
的な構成および製造工程は前述した実施の形態1とほぼ
同じである。図4において、1はシリコン(Si)、マ
グネシウム(Mg)などの還元性元素を微量含み、主成
分がニッケルからなる円盤状の基体、2は略円筒状のニ
クロム等で構成され、その一端に基体1が固定して設け
られた陰極スリーブ、3は陰極スリーブ2内に配設され
たヒータである。また、41は、円盤状の基体1のヒー
タ3とは反対側の面上においてメッシュによりマスキン
グをした基体1の表面全体に渡って真空蒸着によって分
散的に形成された複数個の金属層であって、この金属層
41は基体1に含有される還元性元素の少なくとも一種
と還元性が同等または小さく、かつニッケルより還元性
の大きい還元性元素(例えば、タングステン(W)な
ど)を主成分としている。ここで、蒸着により形成され
た金属層41の蒸着厚さは約1μm、マスキングのため
のメッシュは100meshのものを使用している。
【0023】更に、51は上述した編目状の金属層41
および金属層41の形成されていない基体1の表面全体
を覆うように被着して形成された電子放射物質層であっ
て、少なくともバリウム(Ba)を含み、他にストロン
チウム(Sr)あるいは/及びカルシウム(Ca)を含
むアルカリ土類金属酸化物を主成分とし、0.1〜20
重量%の酸化スカンジウム(Sc23)等の希土類金属
酸化物を含んでいる。電子放射物質層51は、陰極スリ
ーブ2内に配設されたヒータ3の加熱により熱電子を放
出する。
【0024】図5は、本実施の形態2による電子管用陰
極を用いて製造されたブラウン管の寿命試験の結果であ
る。寿命試験の条件は、ヒータ電圧を定格の6.3Vと
し、ヒータへの通電は2.5時間通電し、0.5時間は
通電を行わない間欠通電とした。また、陰極からの取り
出し電流密度は2A/cm2 とした。図2と同様に、この
図5においても、横軸は寿命試験時間、縦軸はカットオ
フ電圧であり初期値のカットオフ電圧を100とした相
対値で示している。図5から明らかなように、本実施の
形態2による電子管用陰極を用いたブラウン管によって
も、長期間動作させた時のカットオフ電圧の経時変化
は、従来の構成のものと比較して非常に改善されている
ことが判る。なお、従来の陰極は本実施の形態とは基本
的には同様の構成であり、基体1上に形成した金属層4
の直径を基体1の径と等しい1.5mmとした。
【0025】次に、本実施の形態2による電子管用陰極
を用いたブラウン管のカットオフ電圧の経時変動が従来
例に比べて少なくなる理由を説明する。図6は、寿命試
験後の基体1および金属層41の断面の概略図である
が、従来例のように基体1の全面に金属層を形成するの
ではなく、金属層41を複数個分散させたため、実施の
形態1の場合と同様に金属層41の主成分であるタング
ステン等の還元性金属と基体1の主成分であるニッケル
の合金化による合金層の面積が小さくなり、従って合金
化によって引き起こされる基体1の彎曲の度合いが抑制
され、結果としてカットオフ電圧の変動が少なくなるも
のと考えられる。
【0026】実施の形態3.図7は、この発明の実施の
形態3による電子管用陰極の構成を示す図である。基本
的な構成および製造工程は前述した実施の形態1あるい
は2とほぼ同様である。図7において、1はシリコン
(Si)、マグネシウム(Mg)などの還元性元素を微
量含み、主成分がニッケルからなる円盤状の基体、2は
略円筒状のニクロム等で構成され、その一端に基体1が
固定して設けられた陰極スリーブ、3は陰極スリーブ2
内に配設されたヒータである。また、42は、円盤状の
基体1のヒータ3とは反対側の面上の中心部において基
体1の直径よりも小さい直径を有して円形状に形成され
た金属粉末層であって、この金属粉末層42は基体1に
含有される還元性元素の少なくとも一種と還元性が同等
または小さく、かつニッケルより還元性の大きい還元性
元素(例えば、タングステン(W)など)を主成分とし
ている。なお、この金属粉末層42に用いられる金属粉
末は、例えば平均粒径約1μmのタングステンである。
【0027】また、金属粉末層42は、その厚さを約2
μmとし、基体1上の中心部に直径約0.5mmの円形
状にスプレイ法により塗布されている。本実施の形態3
は、前述した実施の形態1における金属層40の部位を
金属粉末層42に置き換えたことを特徴とする。更に、
52は上述した金属粉末層42および基体1の表面全体
を覆うように被着して形成された電子放射物質層であっ
て、少なくともバリウム(Ba)を含み、他にストロン
チウム(Sr)あるいは/及びカルシウム(Ca)を含
むアルカリ土類金属酸化物を主成分とし、0.1〜20
重量%の酸化スカンジウム(Sc23)等の希土類金属
酸化物を含んでいる。電子放射物質層52は、陰極スリ
ーブ2内に配設されたヒータ3の加熱により熱電子を放
出する。
【0028】図8は、本実施の形態3による電子管用陰
極を用いて製造されたブラウン管の寿命試験の結果であ
る。寿命試験の条件は、ヒータ電圧を定格の6.3Vと
し、ヒータへの通電は2.5時間通電し、0.5時間は
通電を行わない間欠通電とした。また、陰極からの取り
出し電流密度は2A/cm2 とした。図2あるいは図5と
同様に、この図8においても、横軸は寿命試験時間、縦
軸はカットオフ電圧であり初期値を100とした相対値
で示している。図8から明かなように、本実施の形態3
による電子管用陰極を用いたブラウン管によっても、長
期間動作させた時のカットオフ電圧の経時変化は、従来
の構成のものと比較して非常に改善されていることが判
る。
【0029】次に、本実施の形態3による電子管用陰極
を用いたブラウン管のカットオフ電圧の経時変動が従来
例に比べて少なくなる理由を説明する。図9は、寿命試
験後の基体1および金属粉末層42の断面概略図である
が、従来例のように基体の全面に金属層を形成するので
はなく、金属粉末層42を基体1中心部の直径0.5m
m程度の範囲としたため、前述したような金属粉末層の
主成分であるタングステンと基体1の主成分であるニッ
ケルとの合金化によって引き起こされる基体1の湾曲の
面積が小さくなり、従って合金化によって引き起こされ
る基体1の湾曲の度合いが抑制され、結果としてブラウ
ン管の長期間動作におけるカットオフ電圧の変動が少な
くなるものと考えられる。
【0030】実施の形態4.図10は、金属層を基体の
上に形成後に行う熱処理の温度を変えてブラウン管の寿
命試験後(6000Hr経過後)におけるカットオフ電
圧の変動の度合を初期値を100として示したものであ
る。ここで陰極の構成、工程および試験条件は、実施の
形態1と同様であるが、熱処理温度を水素雰囲気中にて
それぞれ600℃から1300℃とした。図10に示し
た試験結果より、カットオフ電圧の変動は熱処理温度が
800℃から1200℃の範囲では実用上問題ない程度
に小さく、1000℃から1200℃の範囲では更に変
動が小さいことが判った。また、実施の形態2および3
においても同様の効果のあることが確認できた。
【0031】次に、この理由について説明する。異なる
金属層を接合し、ブラウン管動作時のような熱を当該金
属層に与えた場合、前述したようにその接合面近傍で合
金層を生じ、結晶構造が変わるため、膨張・収縮により
変形を引き起こす。しかしながら、合金層による変形
を、ブラウン管の動作時ではなく、予め電子銃に組み込
む前の陰極の段階で熱処理により発生させ、その後のブ
ラウン管組み込み後の変形が問題とならない程度まで安
定化させたためカットオフ変化が従来よりも小さくなっ
たと考えられる。なお、この安定化は金属層形成後の熱
処理を高温にすることで達成させることができる。ま
た、1200℃を超える熱処理温度で特性の劣化を引き
起こすのは、基体金属の主成分としてニッケルを使用し
ているため、温度による熱変形が発生したためである。
【0032】
【発明の効果】以上のように、この発明に係る電子管用
陰極によれば、主成分がニッケルからなり、少なくとも
一種の還元剤を含有してなる基体と、この基体に含有さ
れた還元剤のうちの少なくとも一種の還元剤と還元性が
同等かまたは小さく、かつニッケルより還元性が大きい
金属を主成分とし、基体の表面上に形成される金属層
と、この金属層の上にバリウムを含むアルカリ土類金属
酸化物を被着して形成される電子放射物質層とを備え
電子放射物質層を制御電極に対向させて配設される電子
管用陰極において、金属層は基体表面の所定の一部領域
のみを覆い、基体の所定の一部領域との合金層を形成す
ると共に、電子放射物質層は金属層および金属層で覆わ
れていない基体の制御電極側の表面全体を覆うように形
成されるものであるため、基体ならびに基体の上部に形
成された電子放射物質層の経時的な変形に起因するブラ
ウン管等の電子管のカットオフ特性の変動を抑制できる
ので、長期間にわたって発色のアンバランスや輝度の変
動の発生しない高品位な電子管用陰極を提供できるとい
う効果がある。
【0033】また、この発明に係る電子管用陰極の金属
層は、基体の表面に形成された後に800℃乃至120
0℃の温度範囲で熱処理が施されるので、基体と金属層
の接合部の合金層による変形を、電子管の動作時ではな
く、予め電子銃に組み込む前の陰極製造の段階で熱処理
により発生させているので、その後の電子管の長期間の
動作におけるカットオフ電圧の変化をより安定した状態
に改善できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1による電子管用陰極の
構造を示す図である。
【図2】 本発明の実施の形態1による電子管用陰極の
寿命試験中のカットオフ電圧の変動を示す図
【図3】 本発明の実施の形態1による電子管用陰極の
寿命試験後の陰極の断面を示す図である
【図4】 本発明の実施の形態2による電子管用陰極の
構造を示す図である。
【図5】 本発明の実施の形態2による電子管用陰極の
寿命試験中のカットオフ電圧の変動を示す図である。
【図6】 本発明の実施の形態2による電子管用陰極の
寿命試験後の陰極の断面を示す図である。
【図7】 本発明の実施の形態3による電子管用陰極の
構造を示す図である。
【図8】 本発明の実施の形態3による電子管用陰極の
寿命試験中のカットオフ電圧の変動を示す図である。
【図9】 本発明の実施の形態3による電子管用陰極の
寿命試験後の陰極の断面を示す図である。
【図10】 本発明の実施の形態4による熱処理温度に
対する寿命試験後のカットオフ変化を示す図
【図11】 従来の電子管用陰極の構造を示す図であ
る。
【図12】 ブラウン管の電子銃を説明するための概念
図である。
【図13】 従来の電子管用陰極の寿命試験後の陰極の
断面を示す図である。
【符号の説明】
1 基体 2 陰極スリーブ 3
ヒータ 4、40、41、42 金属層 5、50、51、52 電子放射物質層 6 制御電極 7 加速電極 8
集束電極 9 高圧電極 10
陰極
フロントページの続き (72)発明者 大平 卓也 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三菱電機株式会社内 (72)発明者 寺本 浩行 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三菱電機株式会社内 (72)発明者 佐野 金治郎 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三菱電機株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−257735(JP,A) 特開 平3−22320(JP,A) 実開 昭56−9658(JP,U) 実開 昭56−9660(JP,U) 特公 昭63−43862(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01J 1/14,1/15,1/20 H01J 1/26,9/04,29/04

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主成分がニッケルからなり、少なくとも
    一種の還元剤を含有してなる基体と、 上記基体に含有された還元剤のうちの少なくとも一種の
    還元剤と還元性が同等かまたは小さく、かつニッケルよ
    り還元性が大きい金属を主成分とし、上記基体の表面上
    に形成される金属層と、 上記金属層の上にバリウムを含むアルカリ土類金属酸化
    物を被着して形成される電子放射物質層とを備え、上記
    電子放射物質層を制御電極に対向させて配設される電子
    管用陰極において、 上記金属層は上記基体表面の所定の一部領域のみを覆
    い、上記基体の所定の一部領域との合金層を形成すると
    共に、上記電子放射物質層は上記金属層および上記金属
    層で覆われていない上記基体の上記制御電極側の表面全
    体を覆うように形成されることを特徴とする電子管用陰
    極。
  2. 【請求項2】 金属層は、基体表面の略中央部に形成さ
    れることを特徴とする請求項1に記載の電子管用陰極。
  3. 【請求項3】 金属層は、基体表面上に複数個分散させ
    て形成されることを特徴とする請求項1に記載の電子管
    用陰極
  4. 【請求項4】 金属層は、基体に含有された還元剤のう
    ちの少なくとも一種の還元剤と還元性が同等または小
    さく、かつニッケルより還元性が大きい金属を主成分と
    した粉末状の金属を用いて形成されることを特徴とする
    請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子管用陰極。
  5. 【請求項5】 金属層は、基体に形成された後に800
    ℃乃至1200℃の温度範囲で熱処理が施されることを
    特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子
    管用陰極。
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