JPH106036A - 液相拡散接合による管の接合方法 - Google Patents

液相拡散接合による管の接合方法

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JPH106036A
JPH106036A JP16350796A JP16350796A JPH106036A JP H106036 A JPH106036 A JP H106036A JP 16350796 A JP16350796 A JP 16350796A JP 16350796 A JP16350796 A JP 16350796A JP H106036 A JPH106036 A JP H106036A
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泰士 長谷川
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、管を液相拡散接合方法により接合
する場合に、目違いや段差、軸心のずれの発生を簡易な
手段で調心して極力最小化して、強固な接合部を容易に
安定確保できる、液相拡散接合による管の接合方法を提
供する。 【解決手段】 接合対象の相対する管端面間に非晶質金
属を介在させ、加熱するとともに非晶質金属を管端面で
押圧する管の液相拡散接合方法において、管の外径より
大径のスリーブを用い、このスリーブ内に、相対する管
の管端部をスリーブ内面に接触させながら挿入して突き
合わせ、加熱すると同時に管端面を介して非晶質金属を
押圧し、管端面と非晶質金属を密着させることによっ
て、調心性を高めながら相対する管端面を液相拡散接合
する。管端部を加熱してからスリーブ内に挿入して、非
晶質金属を液相拡散させるための温度を確保してもよ
い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、接合対象の相対す
る金属管の端面間に非晶質金属を介在させて突き合わ
せ、加熱するとともに非晶質金属を管端面で押圧するこ
とによって、相対する管を拡散接合する液相拡散接合に
よる管の接合方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば一般鋼管の接合方法としては、従
来、各種の溶接方法が一般に適用されているが、近年、
溶接方法に代わって液相拡散接合方法の適用が検討され
ている。この液相拡散接合方法は、接合しようとする材
料の間に箔、粉末、あるいはメッキ等の形態で被接合材
よりも融点の低い共晶組成を有する合金を介在させて加
圧し、挿入合金の液相線直上の温度に接合部を加熱する
ことによってこの合金を溶融、等温凝固させる接合法で
あり、固相接合法の1種と考えられている。
【0003】この液相拡散接合方法は、比較的低い加圧
力で短時間で強固な接合部が得られるものであり、従来
からステンレス鋼、高ニッケル鋼等の合金鋼の接合、あ
るいはこれらの合金鋼と炭素鋼の接合に広く用いられて
いるものであるが、最近では、一般鋼を対象とした接合
方法としても適用が試みられており、中でも各種の鋼管
の接合方法として注目されてきている。
【0004】この液相拡散接合方法は、接合材層が接合
対象の管外周面より外方に盛り上がらない接合を可能と
するため、例えば、地中に打ち込まれる鋼管杭を得るた
めの接合方法としても好適である。この液相拡散接合方
法においては、接合材として非晶質金属(箔)が用いら
れており、液相拡散接合に際しては突き合わせ端面を隙
間なく接触させ、軸心が平行で一致するように調心する
必要がある。
【0005】これら管端面の調心は、一般の溶接方法の
場合に比較してはるかに高い精度で行われる必要があ
る。(参考技術 日本機機械学会 第1回材料、材料加
工技術講演会講演論文 509 「アモルファス接合シ
ステム」1993年11月19日 P329)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来、上記のような要
請に応えられる調心手段がなく、調心作業負担が大き
く、また、図10に示すような接合対象の管PaとPb
の管端の突き合わせ面において、目違いaや図11に示
すような管PaとPbの管端の突き合わせ面において、
軸心ずれbが生じ、切り欠き効果により、調心精度が十
分ではなく、引張軸力、あるいは曲げ負荷時の接合部強
度が低下するという問題や、接合面に間隙を生じ、十分
な接合材による液相の浸透が接合面全体に対して十分に
得られず、強固な接合部が得られないという問題を生じ
ることがあり、液相拡散接合の長所を十分に享受できな
いことが多かった。
【0007】本発明は、金属管を液相拡散接合方法によ
り接合する場合に、目違いや段差、軸心のずれの発生を
簡易な調心手段で極力最小化して、強固な接合部を容易
に安定確保できる、液相拡散接合による管の接合方法を
提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の第一の発明は、
接合対象の相対する管端面間に非晶質金属を介在させ、
加熱するとともに非晶質金属を管端面で押圧する管の液
相拡散接合方法において、管の外径より大径のスリーブ
を用い、このスリーブ内に、相対する管の管端部をスリ
ーブ内面に接触させながら挿入して突き合わせ、加熱す
ると同時に管端面を介して非晶質金属を押圧し、管端面
と非晶質金属を密着させることによって、調心性を高め
ながら相対する管端面を液相拡散接合することを特徴と
する液相拡散接合による管の接合方法。
【0009】第二の発明は、接合対象の相対する管端面
間に非晶質金属を介在させ、加熱するとともに非晶質金
属を管端面で押圧する管の液相拡散接合方法において、
管の外径より大径のスリーブを用い、このスリーブ内
に、予め加熱した相対する管の管端部をスリーブ内面に
接触させながら挿入して突き合わせ、同時に管端面を介
して非晶質金属を押圧し、管端面と非晶質金属を密着さ
せることによって、調心性を高めながら相対する管端面
を液相拡散接合することを特徴とする液相拡散接合によ
る管の接合方法。
【0010】第三の発明は、第一の発明において、用い
るスリーブが、管の熱膨張係数より小さい熱膨張係数を
有するものであることを特徴とする液相拡散接合による
管の接合方法。第四の発明は、第一の発明または第三の
発明において、用いるスリーブが、熱膨張を吸収しスリ
ーブ内径の拡張を抑制するスリットを有するものである
ことを特徴とする液相拡散接合による管の接合方法。
【0011】第五の発明は、第一の発明〜第四の発明に
おいて、接合対象の管をスリーブ内に挿入した状態で管
端部を加熱して圧縮力を付与し、該管端部を増肉してス
リーブ内面に密に接触させて液相拡散接合することを特
徴とする液相拡散接合による管の接合方法。第六の発明
は、第一の発明〜第5の発明において、用いるスリーブ
が円周方向で分割されており、接合対象の管に対して着
脱自在なものであることを特徴とする液相拡散接合によ
る管の接合方法。
【0012】第七の発明は、第一の発明〜第六の発明に
おいて、用いるスリーブが、両端側から中央部側に縮径
されたものであり、このスリーブの両端側から接合対象
の管端部を圧入し、管端面に面圧を付与することを特徴
とする液相拡散接合による管の接合方法。第八の発明
は、第一の発明〜第七の発明において、用いるスリーブ
が、溶融した非晶質金属と接触しないように内面の円周
方向に凹状溝を形成したものであることを特徴とする液
相拡散接合による管の接合方法。
【0013】第九の発明は、第一の発明〜第七の発明に
おいて、用いるスリーブ内面と接合部外表面間に、溶融
した非晶質金属を接着しない材料を介在させて液相拡散
接合することを特徴とする液相拡散接合による管の接合
方法。第十の発明は、第一の発明〜第九の発明におい
て、用いるスリーブが加熱装置を内蔵したものであるこ
とを特徴とする液相拡散接合による管の接合方法であ
る。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明は、金属管を液相拡散接合
方法により接合する場合に、目違いや段差、軸心のずれ
の発生を極力最小化して、強固な接合部を安定確保する
ために、接合対象の管より大径のスリーブを用い、この
スリーブ内に、相対する管端部を挿入して調心(目違い
や段差、軸心のずれを修正することを総称して以下「調
心」と称する。)しながら突き合わせることができるよ
うにしたことを特徴とするものである。すなわち、接合
対象の管端部を、スリーブ内にその内面をガイド面とし
て作用させながら挿入して突き合わせ、液相拡散接合の
際に軸方向の圧縮応力または加熱により、半径方向に膨
張してスリーブ内面に密に接触することにより、接合対
象の管の端面間において、調心が簡易にかつ精度よく実
現できるようにしたものである。
【0015】管と管とを液相拡散接合により接合する際
の施工上の重要課題は、前記したように相対する管の端
面間に目違いや段差、軸心のずれがない状態で、非晶質
金属を介在させた接合面に間隙がなく、面圧を負荷して
管端面と非晶質金属の密着性を十分に確保することであ
る。したがって、接合対象の相対する管の外径を、接合
面でできるだけ限り一致させ、目違いや段差をなくすと
ともに軸心が平行で一致するようにすることが望まし
い。第一の発明では、これらの条件を満足させるための
基本構成を要件とするものである。
【0016】図1(a)は、第一の発明による管の液相
拡散接合例の基本形を概念的に示したもので、ここに
は、接合対象の管1aと1bの管端部をスリーブ2内に
挿入し、管1aと管1bの管端を、非晶質金属(箔)3
を介してスリーブ2内で突き合わせた状態を示してお
り、この状態で、スリーブの外側に配設した加熱装置4
により接合部を900〜1200℃に加熱しながらクラ
ンプ機構5cと圧縮応力付与機構5pを備えた押圧装置
5で矢印方向に圧縮応力を付与して、非晶質金属3を溶
融して管1aと1bを接合するように構成されたものが
示されている。
【0017】加熱装置(手段)4としては、各種考えら
れるが、接合部を簡易に均一加熱できる誘導加熱装置、
通電加熱装置、電熱ヒーター等の電気加熱装置が適性が
高く、スリーブ2の外周に配設するのが一般的と言える
が、スリーブ2に内蔵させたり、スリーブ自体を発熱体
として用いてもよい。加熱温度は、非晶質金属3が溶融
し、接合対象の管の特性が低下しない範囲で、管の材
質、非晶質金属の種類、接合部に要求される特性等を考
慮して選択するが、通常の場合は900〜1200℃で
ある。接合部での圧縮応力負荷は通常の場合1〜100
MPa(メガパスカル)で十分であり、そのための押圧
装置5は、クランプ機構5cと圧縮応力付与機構5pを
備えた簡易な構造のものを用いて十分である。
【0018】スリーブ2は、金属、セラミックス、ある
いはサーメット等で、上記加熱温度、圧縮応力負荷領域
で容易に変形、破壊しないものが適性がある。接合完了
後、スリーブは、そのまま補強材として使うことも可能
であるし、コスト削減、外面平坦化を目的に除去しても
よい。
【0019】第二の発明では、図1(b)に示すよう
に、スリーブ内に挿入前に接合端面を含む管端部を予め
900〜1200℃に加熱しておき、スリーブ内に挿入
し、非晶質金属、および母材(管端部)を液相拡散に十
分な温度に保ったまま、接合面を加圧することにより、
調心された状態で接合が完了する。かかる接合方法にお
いては、加熱部を冷却後、熱収縮により比較的容易にス
リーブを除去することもできる。管端部のみの加熱によ
り、加熱装置、加熱方法の選択肢が広がるメリットがあ
る。
【0020】第三の発明では、スリーブ2の熱膨張係数
を管1a,1bの熱膨張係数より小さく選択することに
より、圧縮応力負荷による接合部(突き合わせ管端部を
指し以下「接合部」という。)の半径方向の拡径に加
え、管とスリーブの半径方向熱膨張差により、接合部
(管端部)の外周面がスリーブ2内面に接触しやすく、
大きな圧縮応力を負荷することなく調心を可能とする。
この場合、スリーブ2の熱膨張係数は、接合部の熱膨張
係数より小さければよい。
【0021】第四の発明では、図2に示すように、例え
ば接合対象の管と同系の材質からなるスリーブ2を用い
る場合、スリット2s付きスリーブを用いることによ
り、スリーブの温度の上昇を接合部の温度の上昇より小
さくして、接合部とスリーブ2の半径方向熱膨張差によ
り、接合部外周面がスリーブ2内面に接触しやすく、大
きな圧縮応力を負荷することなく調心を可能とする。ス
リット2sは、円周方向、軸方向何れの方向に形成して
もよい。このスリットによるトータル空間はスリーブ2
に要求される強度と材質を考慮して接合対象の管の熱膨
張係数、加熱温度等、圧縮応力等の条件を考慮して決め
ることができる。
【0022】第五の発明では、図4に示すように、非晶
質金属3を液相拡散させるために900〜1200℃の
温度領域で、加熱装置5により加熱した際、圧縮応力負
荷を大きめにして非晶質金属3を接合端面に密着させ、
管1a,1bの端部の熱間据え込み成形を行うことで管
端部を増肉し、この増肉部1zの外周面をスリーブ2の
内面に密に接触させることにより、調心を可能とする。
【0023】第六の発明では、図3に示すように、スリ
ーブ2を周方向に2aと2bに分割して接合部に対して
着脱自在とし、液相拡散接合終了後、スリーブ2を接合
部から取り外す作業を容易にする。また、スリーブ2を
分割し、このスリーブの内径を調節自在にすることによ
って圧縮応力負荷を調節することもでき、相対する管端
面を突き合わせてからスリーブを装着することにより、
管端部を一体スリーブに挿入する場合より、圧縮応力負
荷を大幅に小さくすることができる。また、接合される
管端部にスリーブを嵌合後、管端面を密着させることに
より自動調心効果が得られる。ここでは、スリーブを2
分割した場合を示しているが、3〜4分割してもよい。
【0024】第七の発明では、第一の発明〜第六の発明
において、図5(a)に示すように、用いるスリーブ2
が、両端側から中央部側に縮径したものを用いるもので
あり、このスリーブの両端側から接合対象の管1a,1
bの端部を矢印方向から圧入して、図6(a)に示すよ
うに管端部を縮径させ、管端面に面圧を付与して加熱す
ることにより、スリーブ2内面に沿った形状に成形する
ことができ、真円度によらず、目違いを著しく軽減し
(調心)、加熱して非晶質金属3による液相拡散接合を
行うことができる。
【0025】中央部を縮径していないスリーブを用いた
場合よりさらに調心性を高めることができる。縮径によ
る残留応力は、接合時の加熱によって解放することがで
きる。なお、管の特性を損なわないための縮径量は、管
の外径に対して0〜2.5%、より好ましくは0%〜
0.5%の範囲である。
【0026】また、図5(b)、図6(b)に示すよう
に、第2の発明を適用して、予め加熱され膨張した相対
する管の管端部1pを中央部が縮径されたスリーブの両
側から圧入して、熱間状態で据え込みを行うようにして
もよい。この場合には、管端部1pを膨張した状態で圧
入することになるが、熱間状態であるため、管端部1p
が容易に縮径されるので、圧入荷重を軽減することがで
きる。
【0027】中央部で縮径していないスリーブを用いる
場合は、スリーブの内径を管の外径より大きくしている
ため、前記図1(b)の場合では、接合が完了後の接合
部の外径は、冷却後においても管の外径より大きくなる
場合が多い。しかし、中央部が縮径しているスリーブを
用いることにより、接合部の外径の拡大を考慮した縮径
量を選択すれば、管の外径に近い外径の接合部を容易に
得ることができる。管端部を予め加熱しておく場合の液
相拡散接合では、拡散温度には管端部1pの潜熱を利用
するため、加熱幅は十分確保しておく必要がある。非晶
質金属は加熱時から接合面に付着させておく方法もある
が、加熱により非晶質金属自身が酸化し、十分な拡散接
合が行われないため、例えば図5(b)に示すように、
スリーブ2の中央部に非晶質金属3を挟み込んで両側か
ら加熱した管端部の接合面を密着させる方法が有効であ
る。
【0028】第八の発明では、第一の発明〜第七の発明
において、図7に示すように、用いるスリーブ2が溶融
状態の非晶質金属3と接着する懸念がある材料で形成さ
れている場合に、接合部近傍の内面に凹状の溝6を形成
して、スリーブ2と溶融状態の非晶質金属3が接触して
接着するのを防止する。
【0029】第九の発明は、第一の発明〜第七の発明に
おいて、図8に示すように、用いるスリーブ2内面と接
合部外表面間に溶融した非晶質金属3を接着しない材料
7(例えばセラミックス等)を介在させて、スリーブ2
と溶融状態の非晶質金属3が接着するのを防止する。こ
の場合の介在とは、溶融した非晶質金属を接着させない
材料をスリーブに被覆(含む塗装、接着)したり、固体
状にして嵌め込む等を意味する。この材料7は、溶融し
た非晶質金属3を接着させない材料の外側に加熱装置5
として誘導加熱装置を配設する場合は、加熱特性を阻害
しない導電性のあるものが好ましい。
【0030】第十の発明は、第一の発明〜第九の発明に
おいて、図9に示すように、例えば電気加熱装置8を内
蔵したスリーブを用い、構造を簡易にするものである。
この第十の発明を第二の発明で適用する場合は、加熱さ
れてからスリーブに挿入した管端部の温度が液相拡散接
合のための最適温度以下にならないように、保温または
昇温のために有効である。
【0031】なお、本発明でいう液相拡散接合とは、接
合面において50%以上が液相拡散接合であることを意
味し、拡散ろう付け接合をも含むものである。また、本
発明は、各種の金属管を接合対象とし、接合材として主
として非晶質金属箔を用いるものであるが、箔を積層し
て用いることもあり、その種類、形状や、管端面の接合
面(開先)形状を特定するものではない。
【0032】
【実施例】本発明の各発明の実施例について以下に説明
する。実施条件および実施結果を表1および表2に示し
た。ここでは、実施結果の評価は接合部の引張破断強度
(kN)で表す。なお、この各実施例では、加熱装置とし
て誘導加熱装置を用いた。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】表1において、No.1〜4は、第一の発明
の実施例である。特に慎重な調心を行わないで接合した
場合では、接合部の引張破断強度は2600〜3200
kNにばらついたが、第一の発明の実施例では接合部の引
張破断強度を3080〜3250kNと、高位で安定させ
ることができた。
【0036】No.5,6は第三の発明の実施例である。
ここではスリーブ材として9%Cr鋼を用いて、接合対
象の管の熱膨張係数差を−2×10-6にしており、12
00℃の加熱によって直径で0.5mmの間隙を埋める効
果があり、圧入荷重(圧縮応力負荷)をかなり小さくし
ても接合部の外周面とスリーブ内面に接触させることが
でき、調心性を高めて接合部の引張破断強度を3150
〜3190kNと高位で安定させることができた。
【0037】No.7,8は第四の発明の実施例である。
ここでは、スリーブにスリットを設けて、加熱した場合
のスリーブの温度上昇を小さくして、接合部の熱膨張よ
り小さくすることができ、圧入荷重(圧縮応力負荷)を
かなり小さくしても接合部の外周面とスリーブ内面に接
触させることができ、調心性を高めて接合部の引張破断
強度を3130〜3300kNと高位で安定させることが
できた。
【0038】No.9〜10は、第六の発明の実施例であ
り、No.9では管を突き合わせ後にスリーブを装着する
ことができ、圧入の際の管とスリーブ管の間の摩擦抵抗
を軽減することができ、一体スリーブの場合よりかなり
小さい圧入荷重で調心し接合することができ、接合部の
引張破断強度も3100kNと高位で安定させることがで
きた。
【0039】また、No.10ではスリーブを管端部に嵌
合後、接合面(管端面)を密着させた例であるが、同じ
く接合部の引張破断強度は3120kNと高位で安定させ
ることができた。なお、No.9〜10では、スリーブを
円周方向に2分割し、管端部に対して容易に着脱自在と
しており、一体スリーブの場合に比し、接合終了後にス
リーブを管端部から容易に取り外すことができた。
【0040】No.11,12は第五の発明の実施例であ
る。ここでは、接合対象の管端部をスリーブ内で高めの
加熱温度にするとともに圧入荷重を大きくして接合部を
6mm増肉して、スリーブ内での調心性を確保し、あわせ
て接合部の引張破断強度を4210〜4250kNと大幅
に高めることができた。
【0041】No.13〜22は第七の発明の実施例であ
る。No.13〜19はスリーブ中央部での最大縮径量x
を0.2〜0.5%の範囲にした場合で、管の特性を損
なうことなく比較的小さい圧入荷重で調心して液相拡散
接合することができ、接合部の引張破断強度を3050
〜3450kNと高位で安定させることができた。
【0042】しかし、スリーブ中央部での最大縮径量を
1.2%にしたNo.20〜22の場合では、圧入荷重に
依存するが、接合部の引張破断強度は低下する傾向があ
った。これは、据え込みにより、接合される管端面が傾
くため、非晶質金属による接合面の全域にわたって、十
分な接触が得られなかったためである。
【0043】なお、上記の実施例においては、スリーブ
と接合材である非晶質金属との接触があり、接合強度の
低下には直結しない程度であるが、接触部分でスリーブ
と非晶質金属間で軽度の接着が認められた。
【0044】そこで、上記各実施例(No.1〜22)に
おいて、第八の発明を適用し、スリーブを、溶融状態の
非晶質金属部分が位置する部分に円周方向に連続する凹
状溝を形成したスリーブで代替して液相拡散接合を実施
した。その結果、引張破断強度にはほとんど変化がな
く、スリーブと非晶質金属との接着は全く認められず、
接合終了後のスリーブ除去作業負担を軽減することがで
きた。
【0045】また、上記の各実施例(No.1〜22)に
おいて、第九の発明を適用し、スリーブを、溶融状態の
非晶質金属との接触部に、窒化珪素系のスリーブを嵌め
込んで形成したスリーブで代替し液相拡散接合を実施し
た。その結果、引張破断強度には殆ど変化がなく、スリ
ーブと非晶質金属との接着は全く認められず、接合終了
後のスリーブ除去作業負担を軽減することができた。
【0046】No.23,24は第二の発明の実施例で、
管端部を1250℃に加熱後、スリーブに挿入し、圧縮
力による半径方向の拡管によりスリーブ内面に管端部外
面を押し付け調心したもので、接合部の破断強度が高位
に確保できている。No.25,26は第二の発明を適用
した第七の発明の実施例で、管端部を1250℃に加熱
後、テーパースリーブに圧入したものである。ここで最
大縮径量のマイナス表示は常温の管の外径より大きいこ
とを意味する。加熱により管端部は熱膨張しており、縮
径量−1.0%は実際の縮径量で0.4%に相当する。
何れも接合部の破断強度を高位に確保できている。
【0047】なお、No.11〜No.22、No.25、N
o.26の場合でも、No.9〜10の場合と同様、スリ
ーブを円周方向に2分割し、管端部に対して容易に着脱
自在としており、一体スリーブの場合に比し、接合終了
後にスリーブを管端部から容易に取り外すことができ
た。上記のように、本発明を適用した場合には、調心性
を十分に確保することができ、接合部の引張破断強度高
位で安定確保することができる。
【0048】なお、本発明は、上記の実施例に限定され
るものではなく、炭素鋼の他、ステンレス鋼、その他の
合金鋼からなる金属管を接合対象とする液相拡散接合に
適用できるものであり、液相拡散接合条件(加熱温度、
圧縮応力負荷、接合面形状等)、スリーブ、加熱装置、
押圧装置等の接合装置構成等については、接合対象管の
材質および特性、非晶質金属の材質、要求される接合部
特性等に応じて、本発明の範囲内で変更されるものであ
る。
【0049】
【発明の効果】本発明においては、管を液相拡散接合方
法により接合する場合に、接合対象の管端部を、その外
径より大径のスリーブ内に挿入して、このスリーブ内で
接合面に非晶質金属を介在させて加熱、加圧するもので
あり、その際、相対する管の端部外面をスリーブ内面に
密に接触させることで、容易に調心することがができ、
目違いや段差、軸心のずれの発生を極力最小化して、強
固で、形状性の良好な接合部を容易に安定確保すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)図は本発明を実施するための液相拡散接
合例を概念的に示す側断面説明図、(b)図は本発明を
の実施例するための他の液相拡散接合例(加熱方法例)
を概念的に示す側断面説明図。
【図2】本発明の実施に用いられるスリーブのスリット
構造例を概念的に示す平面説明図。
【図3】本発明の実施に用いられるスリーブの構造例
(分割スリーブ例)を概念的に示す説明図で、(a)図
は側面説明図、(b)図は正面説明図。
【図4】本発明の実施例で、スリーブ内で管端部を増肉
する調心例を概念的に示す側断面説明図。
【図5】(a)図は本発明の実施例で、中央部縮径スリ
ーブによる調心方法例を概念的に示す側断面説明図、
(b)図は中央部縮径スリーブによる他の調心方法例
(加熱方法例)を概念的に示す側断面説明図。
【図6】(a)図は図5(a)図の中央縮径スリーブを
用いた管端部の縮径による調心方法による調心状態例を
概念的に示す側断面説明図、(b)図は図5(b)図の
中央縮径スリーブを用いた管端部縮径による調心方法に
よる調心状態例を概念的に示す側断面説明図。
【図7】本発明の実施に用いられるスリーブでの非晶質
金属との接着防止構造例(凹状溝形成)を概念的に示す
側断面説明図。
【図8】本発明の実施に用いられるスリーブでの非晶質
金属との接着防止構造例(被接着性材料を介在)を概念
的に示す側断面説明図。
【図9】本発明の実施に用いられるスリーブの構造例
(ヒーター内蔵)を概念的に示す側断面説明図。
【図10】管と管の接合面における目違いの状態を示す
側断面説明図。
【図11】管と管の接合面における軸心ずれの状態を示
す側断面説明図。
【符号の説明】
1a,1b 管 2 スリーブ 2s スリット 2a,2b 分割スリーブ 3 非晶質金属 4 加熱装置 5 押圧装置 5c クランプ機構 5p 圧縮応力付与機構 6 凹状溝 7 非接着性材料 8 電気加熱装置 1p 加熱した管端部 1z 増肉部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B23K 101:06 (72)発明者 尾崎 茂克 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 接合対象の相対する管端面間に非晶質金
    属を介在させ、加熱するとともに非晶質金属を管端面で
    押圧する管の液相拡散接合方法において、管の外径より
    大径のスリーブを用い、このスリーブ内に、相対する管
    の管端部をスリーブ内面に接触させながら挿入して突き
    合わせ、加熱すると同時に管端面を介して非晶質金属を
    押圧し、管端面と非晶質金属を密着させることによっ
    て、調心性を高めながら相対する管端面を液相拡散接合
    することを特徴とする液相拡散接合による管の接合方
    法。
  2. 【請求項2】 接合対象の相対する管端面間に非晶質金
    属を介在させ、加熱するとともに非晶質金属を管端面で
    押圧する管の液相拡散接合方法において、管の外径より
    大径のスリーブを用い、このスリーブ内に、予め加熱し
    た相対する管の管端部をスリーブ内面に接触させながら
    挿入して突き合わせ、同時に管端面を介して非晶質金属
    を押圧し、管端面と非晶質金属を密着させることによっ
    て、調心性を高めながら相対する管端面を液相拡散接合
    することを特徴とする液相拡散接合による管の接合方
    法。
  3. 【請求項3】 スリーブが、管の熱膨張係数より小さい
    熱膨張係数を有するものであることを特徴とする請求項
    1記載の液相拡散接合による管の接合方法。
  4. 【請求項4】 スリーブが、熱膨張を吸収しスリーブ内
    径の拡張を抑制するスリットを有するものであることを
    特徴とする請求項1または3に記載の液相拡散接合によ
    る管の接合方法。
  5. 【請求項5】 接合対象の管をスリーブ内に挿入した状
    態で管端部を加熱して圧縮力を付与し、該管端部を増肉
    してスリーブ内面に密に接触させて液相拡散接合するこ
    とを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の液相拡
    散接合による管の接合方法。
  6. 【請求項6】 用いるスリーブが円周方向で分割されて
    おり、接合対象の管に対して着脱自在なものであること
    を特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の液相拡散
    接合による管の接合方法。
  7. 【請求項7】 スリーブが、両端側から中央部側に縮径
    されたものであり、このスリーブの両端側から接合対象
    の管端部を圧入し、管端面に面圧を付与することを特徴
    とする請求項1乃至6の何れかに記載の液相拡散接合に
    よる管の接合方法。
  8. 【請求項8】 スリーブが、溶融した非晶質金属と接触
    しないように内面の円周方向に凹状溝を形成したもので
    あることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の
    液相拡散接合による管の接合方法。
  9. 【請求項9】 スリーブ内面と接合部外表面間に、溶融
    した非晶質金属を接着しない材料を介在させて液相拡散
    接合することを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記
    載の液相拡散接合による管の接合方法。
  10. 【請求項10】 スリーブが加熱装置を内蔵したもので
    あることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の
    液相拡散接合による管の接合方法。
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