JPH1053519A - ヨウ素含有高吸水性繊維 - Google Patents

ヨウ素含有高吸水性繊維

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JPH1053519A
JPH1053519A JP9156111A JP15611197A JPH1053519A JP H1053519 A JPH1053519 A JP H1053519A JP 9156111 A JP9156111 A JP 9156111A JP 15611197 A JP15611197 A JP 15611197A JP H1053519 A JPH1053519 A JP H1053519A
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康一 大島
Sumie Seki
澄江 関
Chiho Eda
知穂 江田
Masaharu Nakano
正晴 中野
Tadanori Morikawa
忠則 森川
Kazuaki Nakabashi
和明 中橋
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 揮発性の薬物でも安定的に保持でき、皮膚刺
激性が無く、徐放性が良好で、柔軟性があり長期間の使
用が可能で、取扱いが簡単で、製品の構造などが簡単で
その製造コストが比較的安価である高吸水性繊維の中に
薬物を含有する組成物を提供する。 【解決手段】 高吸水性材料として繊維を用いると共に
該高吸水性繊維として親水性を有する外層部と該繊維に
おいて背骨構造あるいは芯構造を構成する内層部とから
構成されるものを用い、該繊維の親水性領域中に(特異
的に)薬物(例えば、ヨウ素)を保持せしめ、高吸水性
繊維外の薬物を実質的に取り除いた組成物は、優れた特
性及び性状を持つ。特には医療用の殺菌薬及び/又は消
毒薬として、さらに創傷予防及び/又は治療薬として有
用であり、例えば切傷、すり傷、さし傷、かき傷、手術
創、褥瘡(床ずれ)、熱傷、凍傷、火傷等に見られる皮
膚潰瘍、感染創のような液体滲出性皮膚創傷、化膿性皮
膚疾患に対する治療や、感染による悪化の防止、あるい
は高齢者などの褥瘡様潰瘍の発症を防ぐ薬剤として有用
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高吸水性繊維の中に
薬物を含有する組成物に関する。特には、本発明は高吸
水性繊維の親水性架橋重合体中に特異的に薬物を含有せ
しめることにより、安定で、良好な薬物放出能を有し、
加えて吸水性、保水能に優れた組成物及びそれを用いた
殺菌及び/又は消毒性医薬、特には創傷予防及び/又は
治療薬、そして殺菌及び/又は消毒性物品に関する。
【0002】
【従来の技術】医療技術の発達や有効な医薬品の開発の
お蔭で寿命が延びるなど最近の医学の進歩はめざましい
ものがあるが、それにともない最近では長期間病院での
治療を受けるとか、老齢者などの介護を含めた治療の機
会も増大してきている。また日本などでは人口に占める
高齢者の割合もますます増加することが予測され、老人
医療技術の発達も求められている。こうした状況下、病
院などの場で治療のため長時間ベッドなどに寝ていると
か、寝たきりになったりしてベッドや車椅子など特定の
場所や位置に限定されるような場合も増えてきている
が、こうした場合床ずれや皮膚潰瘍などの問題が発生す
る。これは患者などの身体とベッドや車椅子などが長時
間接触することにより、皮膚刺激と摩擦を生じたり、血
管機能不全が局所的に起こり組織虚血を一因として潰瘍
が生じるためと考えられている。このような皮膚の箇所
では疼痛性のびらんなども惹起される。このような皮膚
潰瘍は液体滲出性であり、ひとたび形成されると容易に
治癒させることができないという問題がある。さらに非
常に疼痛を伴うなど本来の疾患や病気などの治療にも障
害となる。またこうした床ずれや皮膚潰瘍などは一時的
に治癒したとしても、再発し易く、したがってこうした
目的のためには長期間にわたり適用・使用ができかつ簡
単に行えるような治療技術や治療薬でなければならな
い。
【0003】皮膚潰瘍のような液体滲出性皮膚創傷の治
療を目的とする場合、患部での感染を防ぎながら一方で
患部から滲出してくる液体成分の吸収除去をなし、患部
以外を比較的乾燥した状態に保持することがその治療に
おいて重要と考えられている。そこで液体滲出性皮膚創
傷の治療を目的とした体液吸収性の組成物の開発が試み
られており、今日まで様々な材質のものが開発されてき
ている。そうしたものとして、吸水性ポリマーを利用し
た製剤の研究開発も行われており、例えば、造膜性高分
子化合物(ナイロン樹脂を除く)に吸水性高分子物質と
生理活性を有する薬物を配合した組成物(特開昭58−
105915)、吸水性高分子物質と生理活性を有する
薬物を配合したゲル状組成物(特開平3−14122
9)、高吸水性ポリマーに薬物を保持した局所用製剤
(特開平5−246841)等が知られている。
【0004】さらにまた、しばしば皮膚潰瘍のような液
体滲出性皮膚創傷の治療を目的とする場合、長期間にわ
たり創傷などの患部に医薬を接触せしめる必要も生ずる
ので、患部を必要以上に押圧するなどして皮膚刺激と摩
擦を生じたり、血管機能不全により局所的に組織虚血を
引き起こすものは好ましくない。吸水性材料は一般的に
は浸出液、体液などの液体を吸収するとその体積が増大
して患部を必要以上に押圧する可能性があることから、
こうした問題の解決は液体滲出性皮膚創傷の治療の上で
重要視されている。さらに普通の正常な皮膚などが柔ら
かい繊維製品などで外気から保護されているように、創
傷などの患部はある程度の通気性を保持しながら柔軟な
材質のもので保護されていることがその創傷などの治癒
のためには好ましいと考えられている。床ずれや皮膚潰
瘍などは一時的に治癒したとしても、再発し易く、長期
間にわたりかつ簡単な方法で治療を行わなければならな
いが、このためには、例えば患部を被覆する製剤からの
薬物は長期間にわたりその薬効などの作用効果を発揮で
きるものでなければならないし、その被覆する製剤もき
わめてその適用や使用が容易になしうるものでかつ安価
なものでなければならない。さらに創傷などの患部から
役目を終えた被覆製剤を、例えば、浸出液、体液などの
液体を吸収してゲル化したものを残すこと無く、そして
患部に悪影響を与えること無く容易に除くことができる
ような構造のものである必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
従来の製剤は、単に吸水性ポリマーと薬物とを配合した
だけのものであったり、あるいは単に薬物水溶液を吸水
性ポリマーと混合した後薬物含有水溶液を吸収した吸水
性ポリマーを凍結乾燥することにより得られたもので、
吸水性ポリマーに薬物を保持せしめただけのものであ
り、(1)揮発性の薬物を安定的に保持できないとか、
(2)薬物が直接使用部位に触れることになり、皮膚刺
激性を有するとか、(3)吸収する水分量によっては初
期放出量が高くなり、徐放性に欠けるとか、(4)柔軟
性に欠けるなど長期間の使用に問題があるとか、(5)
取扱いが煩雑であるとか、(6)患部への適用や患部か
らの除去に特別な注意を払う必要があるとか、(7)製
品の構造などが複雑でその製造コストが比較的高価につ
くとか等の問題を有していた。従来は創傷と接触する部
分のゲル化物質は、浸出液、体液などの液体を吸収して
ゲル化するので、このゲル化した物質は創傷や新たに形
成された組織部位から除去しなければならなかった。し
かし、生理食塩水溶液などで洗うことにより効果的にそ
のゲル化した物質を除去することは困難な作業を一般的
に要求する。特に生理食塩水溶液などで洗う場合、創傷
や新たに形成された組織部位を傷めること無く、おだや
かに且つ慎重に行わなければならないが、それは患者の
体力など様々な問題の関係で時間のかかる大変なことで
あった。つまり簡単に患部に使用することができ、なお
かつその交換の必要な時には容易にその取替えができる
ものが求められていた。また長期間使用しかつ大量に消
費することができるためには安価にかつ簡単に製造でき
るものでなければならない。
【0006】
【課題を解決するための手段】かかる実情において、本
発明者らは鋭意研究を行った結果、高吸水性材料として
繊維を用いると共に該高吸水性繊維として親水性を有す
る外層部と該繊維において背骨構造あるいは芯構造を構
成する内層部とから構成されるものを用い、該繊維の親
水性領域中に(特異的に)薬物を保持せしめ、高吸水性
繊維外の薬物を実質的に取り除いた組成物が、揮発性の
薬物を安定に保持し得ること、皮膚刺激性の低減と良好
な放出性を得ることができること、さらに繊維状である
ことから取扱い易く、さらに皮膚潰瘍のような液体滲出
性創傷に用いた場合吸収された浸出液、分泌液、体液な
どを吸収しても十分にその繊維としての性状を保持して
いることから通気性が確保できる、交換が容易などの優
れた特性を持つこと、そして構造が簡単なため製造にあ
たりその効率性が高く、コスト的にも安価に製造可能で
あることを見出し、本発明に至った。
【0007】すなわち、本発明は(1)高吸水性繊維の
中にヨウ素を含有することを特徴とする組成物、(2)
高吸水性繊維が外層部と内層部とから成るものであるこ
とを特徴とする上記(1)記載の組成物、(3)高吸水
性繊維が親水性架橋重合体からなる外層部とアクリロニ
トリル系重合体及び/又は他の重合体からなる内層部と
を有することを特徴とする上記(2)記載の組成物、
(4)外層部に特異的にヨウ素を含有することを特徴と
する上記(2)または(3)記載の組成物、(5)高吸
水性繊維に重量の0.1〜15%のヨウ素を含有するこ
とを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか一記載の
組成物、(6)高吸水性繊維にヨウ素を吸着させた後、
繊維外のヨウ素を除去して製造したことを特徴とする上
記(1)〜(5)のいずれか一記載の組成物、(7)水
または水蒸気の存在下にヨウ素を高吸水性繊維に吸着さ
せることを特徴とする上記(6)記載の組成物、(8)
高吸水性繊維単独または高吸水性繊維と他の繊維と組み
合わせて構成されていることを特徴とする上記(1)〜
(7)のいずれか一記載の組成物、(9)上記(1)〜
(8)のいずれか一記載の組成物からなることを特徴と
する殺菌及び/又は消毒性医薬。(10)上記(1)〜
(8)のいずれか一記載の組成物からなることを特徴と
する殺菌及び/又は消毒性物品、(11)織物状、不織
布状、紐状、脱脂綿状、ガーゼ状、シート状又は袋状に
成形してなり且つ医療用のものであることを特徴とする
上記(10)記載の物品、(12)上記(1)〜(8)
のいずれか一記載の組成物からなることを特徴とする創
傷予防及び/又は治療薬、及び(13)高吸水性繊維の
中に薬物を含有することを特徴とする組成物を提供す
る。
【0008】さらには、本発明は(14)上記(1)〜
(8)のいずれか一記載の組成物からなる医療用物品、
(15)高吸水性繊維が親水性架橋重合体からなる外層
部とアクリロニトリル系重合体及び/又は他の重合体か
らなる内層部とで構成され、かつ3〜300cc/gの
水膨潤度を有するものであることを特徴とする上記
(1)〜(8)のいずれか一記載の組成物、(16)高
吸水性繊維が5〜200cc/gの水膨潤度を有するも
のであることを特徴とする上記(15)記載の組成物、
(17)高吸水性繊維がカルボキシル基を含有するもの
であることを特徴とする上記(1)〜(8)、(15)
及び(16)のいずれか一記載の組成物、(18)カル
ボキシル基を0.5〜4.0mmol/g含有するもの
であることを特徴とする上記(17)記載の組成物、
(19)カルボキシル基を0.5〜3.5mmol/g
含有するものであることを特徴とする上記(17)記載
の組成物、(20)親水性架橋重合体からなる外層部が
繊維全体積に対して55%以下の範囲にあるものである
ことを特徴とする上記(1)〜(8)及び(15)〜
(19)のいずれか一記載の組成物、(21)親水性架
橋重合体からなる外層部が繊維全体積に対して5〜50
%以下の範囲にあるものであることを特徴とする上記
(20)記載の組成物、
【0009】(22)高吸水性繊維をヨウ素含有液で処
理し、次に乾燥処理して該繊維にヨウ素を吸着せしめた
ものであることを特徴とする上記(1)〜(8)及び
(15)〜(21)のいずれか一記載の組成物、(2
3)高吸水性繊維に水または水蒸気の存在下でヨウ素を
吸着させた後、繊維外のヨウ素を除去することを特徴と
する上記(1)〜(8)及び(15)〜(22)のいず
れか一記載の組成物の製造方法、(24)高吸水性繊維
をヨウ素含有液で処理し、次に乾燥処理して該繊維にヨ
ウ素を吸着せしめることを特徴とする上記(1)〜
(8)及び(15)〜(22)のいずれか一記載の組成
物の製造方法、(25)高吸水性繊維を高湿度のヨウ素
含有雰囲気で処理し、次に乾燥処理して該繊維にヨウ素
を吸着せしめたものであることを特徴とする上記(1)
〜(8)及び(15)〜(22)のいずれか一記載の組
成物、(26)高吸水性繊維を高湿度のヨウ素含有雰囲
気で処理し、次に乾燥処理して該繊維にヨウ素を吸着せ
しめることを特徴とする上記(1)〜(8)及び(1
5)〜(22)のいずれか一記載の組成物の製造方法、
(27)上記(15)〜(22)のいずれか一記載の組
成物からなり、液体滲出性皮膚創傷用の医薬製剤、及び
(28)上記(15)〜(22)のいずれか一記載の組
成物からなる局所被覆用医薬製剤を提供する。
【0010】さらには、本発明は(29)上記(1)〜
(8)及び(15)〜(22)のいずれか一記載の組成
物を使用していることを特徴とする殺菌及び/又は消毒
作用を有する物品、(30)絨毯やフロアー・マットな
どの敷物、床・天井又は壁の被覆材、建築物用パネル、
シート、フローリング材、スクリーン、抗菌性フィルタ
ー、間仕切り、衛生施設用材料、建築構造物用の製品、
布帛や衣類などの繊維製品、紙製品、運送及び運輸車両
(例えば自動車、飛行機、鉄道、船舶両など)のための
部品あるいは付属具、家畜、ペット用衛生施設具、農園
芸用土壌改良剤、及び育苗用シートからなる群から選ば
れたものであることを特徴とする上記(29)の物品、
(31)上記(1)〜(8)及び(15)〜(22)の
いずれか一記載の組成物を使用しており、切傷、すり
傷、さし傷、かき傷、手術創、褥瘡(床ずれ)、熱傷、
凍傷、火傷等に見られる皮膚潰瘍、感染創のような液体
滲出性皮膚潰瘍、化膿性皮膚疾患に対する治療、糖尿病
性壊疸又は下腿潰瘍、放射線潰瘍等難治性皮膚潰瘍に対
する治療、術前、術中、術後の患部の殺菌又は消毒、術
中の床ずれ予防、血管又は輸管カテーテル又はドレーン
処置時の感染予防及び消毒、感染による悪化の防止、あ
るいは身体を動かすことが不可能な時、特に高齢者にお
いて、仙骨や踵のような体重のかかりやすい部位の褥瘡
様潰瘍の発症を防ぐことからなる群から選ばれたことを
目的とする薬剤であることを特徴とする医薬品、(3
2)高吸水性繊維の親水性架橋重合体中に特異的にヨウ
素を含有し、揮発性であるヨウ素が安定に保持され、皮
膚刺激性が低く、放出能、吸水能・保水能に優れた組成
物、(33)遊離のヨウ素がすぐに患部などに接触して
作用したり、該組成物から放出されて皮膚など患部に強
い刺激を与えるということがないか、あるいはそうした
ことが低減されたものであることを特徴とする上記
(1)〜(8)及び(15)〜(22)のいずれか一記
載の組成物、(34)浸出液、分泌液、体液等を吸収し
て患部を清潔に保つと共に、当該吸収された浸出液、分
泌液、体液等により組成物中からヨウ素が徐々に放出さ
れ、長時間に亘り抗菌性を示し、細菌感染を抑えるもの
であることを特徴とする上記(1)〜(8)及び(1
5)〜(22)のいずれか一記載の組成物、及び(3
5)繊維状であり、身体のどのような部位にもよく適合
し、創傷面に対する刺激圧を発生することが少なく、た
とえ吸水しても体積増加による患部の圧迫などをするこ
とが少なく、そして肌触りがよく、クッション性、保温
性を有するものであることを特徴とする上記(1)〜
(8)及び(15)〜(22)のいずれか一記載の組成
物を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明は高吸水性繊維の中に薬物
を含有する組成物に関する。特には、本発明は高吸水性
繊維の親水性架橋重合体中に特異的に薬物を含有せしめ
ることにより、安定で、良好な薬物放出能を有し、加え
て吸水性、保水能に優れた組成物及びそれを用いた殺菌
及び/又は消毒性医薬、特には創傷予防及び/又は治療
薬、そして殺菌及び/又は消毒性物品に関する。本発明
におけるヨウ素含有高吸水性繊維とは、高吸水性繊維の
親水性外層部に特異的にヨウ素を含有し、好ましくは繊
維外のヨウ素を除去したものである。本発明における高
吸水性繊維とは、その繊維が外層部と内層部とから構成
されるものである。該繊維の外層部は親水性領域部から
なることを特徴とし、その内層部は高度に吸水した状態
であっても十分にその繊維性状を保持することができる
に足る強度を有する背骨構造あるいは芯構造を有するも
のである。この高吸水性繊維では、親水性架橋重合体か
らなる外層部とアクリロニトリル系重合体及び/又は他
の重合体からなる内層部とから構成されているものが挙
げられる。こうした高吸水性繊維は、例えばアクリロニ
トリル系重合体からなる繊維の外層部のみを選択的に親
水性化(ヒドロゲル形成能保持領域化)することにより
得られる。
【0012】本発明に係るアクリロニトリル系重合体と
しては、アクリロニトリルを共重合成分として含有する
重合体の総称であり、アクリロニトリル単独重合体又は
アクリロニトリルと他の1種もしくは2種以上のエチレ
ン系不飽和化合物との共重合体、あるいはアクリロニト
リルと他の重合体、例えば澱粉、ポリビニルアルコール
等のグラフト共重合体、アクリロニトリル系重合体と他
の重合体、例えばポリ塩化ビニル系、ポリアミド系、ポ
リオレフィン系、ポリスチレン系、ポリビニルアルコー
ル系、セルロース系等の混合重合体等を挙げることがで
きる。アクリロニトリル系重合体におけるアクリロニト
リルの含有率は、好ましくは30重量%以上、より好ま
しくは50重量%以上である。アクリロニトリル系重合
体の共重合成分である上記エチレン系不飽和化合物の種
類あるいは該重合体の分子量等の重合体組成面では特に
制約は認められず、最終製品の要求性能、単量体の共重
合性等に応じて任意に選択することができる。これらの
重合体の製造方法及び該重合体より繊維を形成させる方
法などについても、例えば単一成分紡糸、鞘−芯複合紡
糸など公知の方法から任意に選択して用いることができ
る。
【0013】アクリロニトリル系重合体の少なくとも一
部が繊維表面に露出した断面構造を有するものであれ
ば、高吸水性繊維を製造するための出発物質であるアク
リロニトリル系繊維として使用することができる。例え
ば二成分乃至三成分以上の重合体をランダムに複合紡糸
してなる繊維、海島型複合繊維、二成分貼り合わせ型複
合繊維、サンドイッチ型複合繊維等の特殊紡糸繊維も高
吸水性繊維を製造するための出発物質として使用するこ
とができる。こうして作成される繊維は、短繊維、長繊
維、繊維トウ、糸、編織物、不織布等の如何なる形態の
ものも高吸水性繊維を製造するための出発物質として使
用することができる。
【0014】こうしたアクリロニトリル系繊維を出発物
質として高吸水性繊維を製造する場合、好適にはアクリ
ロニトリル系繊維の外層部のみを選択的に親水性化し
(ヒドロゲル形成能を持つようにし)、該親水性化した
外層とアクリロニトリル系重合体及び/又は他の重合体
からなる内層との多層構造を有する繊維とされる。本発
明に係る高吸水性繊維は、二層構造あるいは多層構造を
有する繊維で、好ましくは3〜300cc/gの範囲に
ある水膨潤度を有するもの、更に好ましくは5〜200
cc/gの範囲にある水膨潤度を有するものが挙げられ
る。また本発明に係る高吸水性繊維は、カルボキシル基
を含有するものが好ましく、例えば該高吸水性繊維中に
0.5〜4.0mmol/gの範囲のカルボキシル基を
含有するもの、さらに好ましくは該高吸水性繊維中に
0.5〜3.5mmol/gの範囲のカルボキシル基を
含有するものが挙げられる。ここでカルボキシル基は親
水性(ヒドロゲル形成能を持つもの)であれば如何なる
形態であってもよいが、好ましくは塩型カルボキシル基
の形態のものが挙げられる。塩型カルボキシル基の種類
としては、例えばアルカリ金属又はアンモニウムとの塩
が挙げられるが、リチウム、カリウム、ナトリウムなど
のアルカリ金属又はアンモニウムのいずれか1種又は2
種以上の混合型の塩のいずれであってもよい。
【0015】本発明に係る高吸水性繊維は、高度な吸水
性を有するとともに一方では十分な繊維物性を保持する
ものが好ましく、例えば乾燥時における該繊維の全体積
を基準として親水性化し(ヒドロゲル形成能を持つよう
にし)た外層部の割合が好ましくは55%以下、さらに
好ましくは5〜50%の範囲である。本発明に係る高吸
水性繊維は、例えば親水性架橋重合体からなる外層部と
アクリロニトリル系重合体及び/又は他の重合体からな
る内層部とで構成され、かつカルボキシル基を0.5〜
4.0mmol/g、好ましくは0.5〜3.5mmo
l/gの範囲含有すると共に3〜300cc/g、好ま
しくは5〜200cc/gの範囲の水膨潤度を有するも
のである。
【0016】本発明に係る高吸水性繊維は、例えばアク
リロニトリル系繊維に、アルカリ金属水酸化物水性溶液
を作用せしめて該繊維の外層部のみを選択的に親水架橋
化する(例えば該繊維の外層部のみにカルボキシル基を
導入する)ことにより、親水性架橋重合体からなる外層
部とアクリロニトリル系重合体及び/又は他の重合体か
らなる内層部とで構成される繊維を形成することにより
製造される。例えば、3〜300cc/gの水膨潤度及
び高物性を有する高吸水性繊維を製造するためには、ア
クリロニトリル系重合体からなる繊維に、6.0mol
/1000g溶液以上の高濃度アルカリ金属水酸化物水
性溶液、又は0.5mol/1000g溶液以上の濃度
の電解質塩類を共存せしめた低濃度アルカリ金属水酸化
物水性溶液を作用せしめて該繊維の外層部を親水架橋化
することにより−COOX(X:アルカリ金属又はNH
4 )で示される塩型カルボキシル基を0.5〜4.0m
mol/g導入し、親水性架橋重合体からなる外層部と
アクリロニトリル系重合体及び/又は他の重合体からな
る内層部とで構成される繊維に形成する方法が挙げられ
る。
【0017】こうした製造法において、アクリロニトリ
ル系繊維としては、アクリロニトリル系重合体単一成分
からなる繊維を使用するのが工業上好ましいが、アルカ
リ金属水酸化物水性溶液処理(加水分解処理)条件下に
おいて、加水分解されやすいアクリロニトリル系重合体
を鞘成分とし、加水分解されにくいアクリロニトリル系
重合体を芯成分としたもの、あるいは加水分解されやす
いアクリロニトリル系重合体を鞘成分とし、他の重合体
(例えばポリアミド系、ポリオレフィン系などの重合
体)を芯成分としたもの等の鞘−芯紡糸繊維を挙げるこ
とができる。アクリロニトリル系繊維を加水分解する方
法としては、最終的にヒドロゲル形成外層とアクリロニ
トリル系重合体などからなる内層とで構成される吸水性
繊維が得られるものなら特に限定されるものではない
が、アクリロニトリル系繊維の外層部のみを選択的に親
水性化する(ヒドロゲル形成能を持つようにする)と共
に該外層部の割合を制御するのを容易に行うことのでき
る一段加水分解方法、架橋処理方法としては、具体的に
は次のような方法を挙げることができる。
【0018】その方法は、まず前記アクリロニトリル系
繊維に、6.0mol/1000g溶液以上の高濃度ア
ルカリ金属水酸化物水性溶液を作用せしめる(以下A法
と略称する)か、又は0.5mol/1000g溶液以
上の濃度の電解質塩類を共存せしめた低濃度アルカリ金
属水酸化物水性溶液を作用せしめる(以下B法と略称す
る)かのいずれかの方法を採用するものである。また、
6.25〜8.85mol/1000g溶液、更に6.
25〜8.50mol/1000g溶液の濃度範囲のア
ルカリ水性溶液を使用することにより、より効果的に高
吸水性繊維を製造することが達成できる。また、1.0
mol/1000g溶液以上の塩濃度、又は該塩濃度及
び0.25〜6.0mol/1000g溶液、更に好ま
しくは0.5〜5.0mol/1000g溶液のアルカ
リ金属水酸化物濃度のアルカリ水性溶液を使用すること
により、より工業的有利に高吸水性繊維の製造方法を実
施することができる。
【0019】ここにおいて、その高吸水性繊維の製造方
法で使用するアルカリ金属水酸化物としては、Na、
K、Li等のアルカリ金属類の水酸化物もしくはそれ等
の混合物を挙げることができ、また、電解質塩類として
は、アルカリ処理条件下に安定である限りいかなる塩を
も採用することができ、該塩を構成する陽イオン成分
が、例えばNa、K、Li等のアルカリ金属類;Be、
Mg、Ca、Ba等のアルカリ土類金属類;Cu、Z
n、Al、Mn、Fe、Co、Ni等の他の金属類;N
4 等であり、また陰イオン成分が、例えば塩酸、硫
酸、硝酸、炭酸、クロム酸、重クロム酸、塩素酸、次亜
塩素酸、有酸カルボン酸、有機スルホン酸等の酸根等で
構成される塩の1種もしくは2種以上の混合物を挙げる
ことができる。尚、上記陽イオン成分が2価以上の元素
である電解質塩類を用いる場合には、生成するヒドロゲ
ル外層部が凝集・合体し易く、また膨潤度が低下するた
め、アルカリ金属類又はNH4 を陽イオン成分とする塩
を使用する方が好ましい。更に、水に代わる溶媒とし
て、被処理アクリロニトリル系繊維を溶解せしめない限
り、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メト
キシエタノール、2−エトキシエタノール、ジメチルホ
ルムアミド、ジメチルスルホキシド等の水混和性有機溶
媒と水との水性混合溶媒を使用することができ、更に必
要に応じて他の無機系物質あるいは有機系物質を共存せ
しめることも可能である。
【0020】尚、上記の如きアルカリ水性溶液を作用せ
しめる際の温度条件あるいは処理時間等反応条件として
は、重合体の形態、結晶性等重合体の微細構造あるいは
アルカリ濃度等により好適条件範囲が異なるため、一義
的に規定することは不可能であるが、一般には高温下に
作用させる程反応速度は増大し処理効果を有利に達成し
得ることから好ましくは、50℃以上、更に好ましくは
80℃以上の温度条件を使用することにより、効果的に
高吸水性繊維の製造方法を実施することができる。ま
た、アクリロニトリル系繊維に対するアルカリ水性溶液
の処理量としても、厳密な制限は認められないが、該繊
維1重量部に対して該水性溶液を少なくとも3重量部、
好ましくは4重量部以上使用することが望ましく、かか
る条件において繊維と水性溶液との接触を容易ならし
め、親水化反応ならびに架橋反応を効果的に進行せしめ
ることができる。
【0021】更に、アクリロニトリル系繊維にアルカリ
水性溶液を作用せしめる方法としては、任意の繊維長に
切断された短繊維を水性溶液に懸濁せしめ、スクリュー
型撹拌装置、ミキサー等の剪断装置あるいはニーダー等
の混練装置等を使用して撹拌乃至混練する方法、長繊
維、繊維トウ、糸、編繊物、不織布等の連続した繊維を
該水性溶液中にて緊張下もしくは無緊張下に走行させる
方法、あるいは前記短繊維、長繊維等を網状容器中に充
填して、水性溶液中に振盪する方法等公知の不均一処理
方法から広く選択することができる。かくして得られた
高吸水性繊維は、水洗処理等により該繊維中に残留する
アルカリ金属水酸化物を除去した後、必要ならば公知の
方法により塩型カルボキシル基をアルカリ金属又はアン
モニウムの塩に変える等の処理を施し、次いで所望によ
り乾燥処理に付して乾燥生成物に形成せしめられる。高
吸水性繊維は上記したもの、あるいは上記した製造法で
得られたもの、さらには市販のものを用いることができ
る。例えば、アクリル酸メチル、酢酸ビニルなどを含む
アクリロニトリル系繊維をアルカリ加水分解して得られ
たものを用いることができる。アクリロニトリルとアク
リル酸メチル又は酢酸ビニルとの割合は、8〜9:2〜
1が好ましい。このようにして得られた高吸水性繊維に
おいては、デニールは1〜10D、好ましくは2〜5D
のものが良く、強度は1g/D以上、結節強度は0.5
g/D以上、内層の比率が30〜90%のものが良く、
こうした高吸水性繊維は吸水後の強度、形態安定性を出
すことができる。またアクリロニトリル繊維を原料とし
ない、アクリル酸塩重合体をそのまま繊維化したもので
も用いることができる。高吸水性繊維としては、例え
ば、ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株))等を
使用することが好ましい。
【0022】(1)水膨潤度 試料繊維約0.1gを純水中に浸漬し25℃に保ち24
時間後、ナイロン濾布(200メッシュ)に包み、遠心
脱水機(3G/30分、Gは重力加速度)により繊維間
の水を除去する。このようにして調製した試料の重量を
測定する(W1g)。次に該試料を80℃の真空乾燥機中
で恒量になるまで乾燥した後試料の重量を測定する(W2
g)。以上の測定結果から、次式によって算出した。し
たがって、本明細書中水膨潤度とは、繊維の自重の何倍
の水を吸収保持するかを示す数値である。
【0023】
【数1】
【0024】(2)カルボキシル基量(mmol/g) 充分乾燥した繊維試料約1gを精秤し(Xg)、これに
200mlの水を加えた後、50℃に加温しながら1N
塩酸水溶液を添加してpH2とし、ついで0.1N水酸
化ナトリウム水溶液で常法に従って滴定曲線を求める。
該滴定曲線からカルボキシル基に消費された水酸化ナト
リウム水溶液の消費量(Ycc)を求めた。以上の測定
結果から、次式によって算出した。
【0025】
【数2】
【0026】なお、多価カチオンが含まれる場合には、
常法によりこれらのカチオンの量を求め、上記の式を補
正する必要がある。 (3)親水性(ヒドロゲル形成能保有)外層部の体積比
率(V%) 吸水して膨潤した繊維試料20本を100〜1000倍
に拡大(Z倍)して顕微鏡写真を撮り、芯部(アクリロ
ニトリル系重合体及び/又は他の重合体内層部)の直径
を測定した平均値(L1mm)を求め、以上の測定結果か
ら、次式によって算出した。L は被処理アクリロニトリ
ル系繊維の直径(μ)
【0027】
【数3】
【0028】本発明において用いられているヨウ素は低
濃度で強いかつ速やかな殺菌作用と広い抗菌スペクトル
を有し、古くより外用殺菌消毒に繁用されている。ヨウ
素は植物性及び動物性微生物やウイルスに対して致死性
の作用を示すが、皮膚に対する刺激性があることから、
時としてそれに対する過敏症を呈する問題がある。ヨウ
素は水には極めて溶けにくいが、エタノールにはやや溶
けやすいことが知られている。本発明の組成物において
は、ヨウ素は高吸水性繊維の親水性外層部の中に選択的
に吸着せしめられ、該繊維外に遊離の状態で存在するヨ
ウ素は除去して置くことが好ましい。該繊維外に遊離の
状態で存在するヨウ素は浸出液、体液などの水分と接触
した場合にすぐに患部などに接触して作用したり、該組
成物からの薬物放出に直ぐさま寄与するなどして好まし
くない。特にヨウ素は皮膚に対する刺激性があることか
らも、必要に応じ作用するような徐放性化することが求
められる。
【0029】こうした本発明の組成物の製造方法として
は、高吸水性繊維にヨウ素を接触させた後、得られたも
のを必要に応じ乾燥してヨウ素を該繊維に吸着させる方
法が挙げられる。本発明の組成物の好ましい製造方法と
しては、水の実質的な存在下高吸水性繊維にヨウ素を接
触させた後、得られたものを必要に応じ乾燥してヨウ素
を該繊維に吸着させる方法が挙げられる。さらに、本発
明の組成物の代表的な製造方法としては、例えば高吸水
性繊維にヨウ素を吸着させた後、繊維外のヨウ素を除去
して製造する方法が挙げられる。ヨウ素の吸着は種々の
方法でなされうるが、例えば(1)ヨウ素を水、含水有
機溶媒あるいは有機溶媒で溶解した溶液を高吸水性繊維
に含浸させるか、(2)ヨウ素を有機溶媒で溶解した溶
液を高吸水性繊維に含浸させた後、溶媒を除去し、該繊
維を高湿度雰囲気下に置くか、(3)高吸水性繊維をヨ
ウ素雰囲気下に置いた後、高湿度雰囲気下に置くか、
(4)高吸水性繊維を高湿度ヨウ素雰囲気下に置くか、
あるいは(5)高吸水性繊維を高湿度雰囲気下に置いた
後、ヨウ素雰囲気下に置く方法を用いることができる。
これらの方法は、それを単独で行ったり、繰り返しその
方法を適用することにより行ったり、あるいは任意に複
数の方法を適宜組み合わせて行うことができる。ヨウ素
を高吸水性繊維に吸着させる場合、出発物質としての高
吸水性繊維は実質的に乾燥されたものが好ましく用いら
れるが、幾分か水分を含有するものも用いることができ
るし、場合によっては充分に吸水させたものを用いるこ
ともできる。ヨウ素を高吸水性繊維に吸着させる場合、
出発物質としての高吸水性繊維は充分に乾燥されたもの
が好ましく用いられる。
【0030】高吸水性繊維にヨウ素を接触させる場合、
水の実質的な存在下で行うと、該繊維の親水性領域、特
には該繊維の外層部中にヨウ素(水には極めて溶けにく
いという性質をもつ)が意外にも吸着する。また幾分か
水分を吸収して膨潤した高吸水性繊維にヨウ素を接触さ
せると、これまた水には極めて溶けにくいヨウ素が該繊
維の親水性領域、特には該繊維の外層部中に予想外にも
吸着される。さらにまた、有機溶媒、好ましくはエタノ
ールに溶解したヨウ素を接触させる方法によっても、ヨ
ウ素が該繊維の親水性領域、特には該繊維の外層部中に
吸着される。こうして得られたヨウ素を含有する高吸水
性繊維はそれを乾燥処理にかけると、これまた驚くこと
にヨウ素を依然として該外層部中に含有したまま乾燥し
て高い吸水性を持った生成物となる。高吸水性繊維にヨ
ウ素を接触させる場合のそこに存在せしめる水として
は、例えば、上記充分に乾燥された出発物質としての高
吸水性繊維の親水性領域、特には該繊維の外層部が膨潤
する程度存在するものであればよく、含水有機溶媒とし
て存在する水や高湿度雰囲気として気体中に存在する水
が挙げられる。含水有機溶媒の場合、例えば0.01〜
60容量%の含水率、好ましくは0.1〜40容量%の
含水率、より好ましくは0.5〜35容量%の含水率、
さらに好ましくは10〜30容量%の含水率が挙げられ
る。また、水、含水有機溶媒あるいは有機溶媒中のヨウ
素濃度は、0.2〜30mg/mlでよく、目的とする
組成物中のヨウ素含有量に応じて適宜設定できる。
【0031】有機溶媒としては炭化水素系、芳香族系、
ハロゲン系、アルコール系、アルデヒド系、エステル
系、ケトン系などの溶媒が挙げられ、そのうちメタノー
ル、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコー
ル溶媒が好ましく、特にエタノール、イソプロピルアル
コールが好ましい。例えば、10〜20mg/mlの濃
度のヨウ素を含有する60〜100%のエタノールの溶
液などが高吸水性繊維にヨウ素を吸着せしめるのに好ま
しく用いられる。また、高湿度雰囲気とは、例えば相対
湿度50〜100%を指し、好ましくは90〜100%
がよい。ヨウ素雰囲気は、上記高吸水性繊維の親水性領
域、特には該繊維の外層部中にヨウ素を含有せしめるよ
うにするに充分な程度存在するものであればよく、例え
ばヨウ素ガス濃度10〜500ppmが挙げられる。
【0032】高湿度ヨウ素雰囲気(高湿度ヨウ素ガス)
は、(a)高湿度下に固体のヨウ素を共存させるか、
(b)ヨウ素溶液あるいはヨウ化カリウム溶液をバブリ
ングするか、(c)ヨウ素溶液あるいはヨウ化カリウム
溶液をエジェクターを介して循環させる等の方法で発生
させることができる。高湿度ヨウ素雰囲気下とは、例え
ば相対湿度50〜100%、好ましくは90〜100%
で、ヨウ素ガス濃度10〜5000ppmのものが挙げ
られる。ヨウ素の高吸水性繊維の外層部中への吸着処理
は、低温下でも行うことができるが、通常は常温(10
〜30℃)下、または加温(30〜50℃)下に行うこ
とができ、また該吸着処理は、減圧下でも行うことがで
きるが、通常は常圧または、加圧下に行うことができ
る。高湿度ヨウ素雰囲気下での吸着温度は、0〜50℃
が好ましい。溶媒や水分の除去は、常温(10〜30
℃)または、加温(30〜50℃)下に、常圧または、
減圧(5〜100mmHg)下に0.5〜48時間乾燥
などの処理をすることにより行うことができる。
【0033】繊維外のヨウ素の除去には、有機溶媒を用
い、高吸水性繊維を洗浄することにより行うことができ
る。驚いたことに高吸水性繊維の外層部中に一旦吸着さ
れたヨウ素はこの洗浄処理を行っても、充分に実用上有
効な量が該高吸水性繊維の外層部中に保持せしめられた
ままでいる。例えば、ヨウ素はエタノールにはやや溶け
やすいという性質を持つにもかかわらず、洗浄溶媒とし
てエタノールを用いても繊維外のヨウ素を除去すること
はできるが、高吸水性繊維の外層部中に一旦吸着された
ヨウ素は充分に実質的に有効な量がそこに残ったままな
のである。この洗浄処理は、高吸水性繊維の親水性領
域、特には該繊維の外層部中にヨウ素を含有せしめた
後、該繊維を乾燥処理(脱水処理)してから行うことが
好ましくできる。ここでいう有機溶媒としては炭化水素
系、芳香族系、ハロゲン系、アルコール系、アルデヒド
系、エステル系、ケトン系などの溶媒が挙げられ、その
うちメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール
等のアルコール溶媒が好ましく、特にエタノール、イソ
プロピルアルコールが好ましい。尚、本発明の組成物の
ヨウ素含有率は、溶液含浸処理における溶液中ヨウ素濃
度、含浸溶液量、ヨウ素雰囲気下吸着におけるヨウ素ガ
ス濃度、吸着時間、吸着温度を変えることにより任意に
設定できるが、好ましくは0.1〜15%(W/W)の
範囲において任意に設定できる。
【0034】本発明の組成物は、構成する高吸水性繊維
単独で、又は既知の一般的な天然、半合成もしくは合成
繊維等と組み合わせて用いることが可能であるが、組合
わせた場合混率を自由に設定することで、吸水性を持ち
ながらその用途・適用に応じた組成物が得られる。天然
繊維としては、綿、羊毛、絹等を使用することができ、
半合成繊維としては、アセテート等を使用することがで
き、合成繊維としてはポリエステル、アクリル、ナイロ
ン、レーヨン等を使用することができる。それら一般的
な天然、半合成もしくは合成繊維などはそれぞれを単独
であるいは複数を任意に組み合わせて上記高吸水性繊維
と共に使用することができる。また上記に示した方法に
おいて、ヨウ素吸着時における温度や吸着時間により本
発明の組成物のうちのヨウ素含有量は任意に設定できる
し、さらに既知の一般的な天然、半合成もしくは合成繊
維等との混率や目付により本発明の組成物のうちのヨウ
素含有量は任意に設定することは可能である。本発明に
おける組成物のヨウ素含有量は、好ましくは高吸水性繊
維の重量の0.1〜15%であるが、その用途・適用に
応じて適宜増減することができる。
【0035】本発明の組成物は使用目的、使用部位に応
じて不織布状、紐状、綿状、テープ状、フィルム状、シ
ート状、袋状とすることができる。本発明の組成物は、
フィラメントであっても糸であってもよく、さらに撚り
糸であっても巻縮した繊維であってもよく、またその繊
維からなる糸を作成し、適宜その糸を縦糸及び横糸とし
て平織などして布としてあることもできるし、織物とす
ることもできるし、あるいはその繊維をニードリングに
よりまたは流体を用いて絡合させて不織布とされていて
よいし、接着などによる積層体や不織布などにされてい
てもよい。本発明の組成物は、大きな伸縮性があるよう
にすることもできるし、非伸縮性の形態にすることもで
きる。こうした形態のものは、医療用物品として一般的
に知られたものを包含している。例えば、不織布などの
布、紐、テープ、シート、リボン、包帯、被覆用などの
バンド、医療用フィルター、糸、ガーゼ様医療材料、脱
脂綿様医療材料、創傷被覆材、創傷カバー材、傷用のテ
ープなどが挙げられる。
【0036】本発明の組成物は微視的に上記したような
繊維形態を保っていれば、医療用物品としては短繊維、
極小短繊維、粉末など適宜任意にその形態をとって製品
にされうる。最終医療用物品の形態に様々な形で加工で
きるようにされたものであることもできる。またこうし
た本発明の組成物を他の構造材と配合して各種医療用物
品や衛生用製品(例えばタンポンなど)にすることもで
きる。本発明に従えば、上記不織布などの布、フェル
ト、紐、テープ、シート、包帯、被覆バンド、糸、ガー
ゼ様医療材料、脱脂綿様医療材料、創傷被覆材、創傷カ
バー材、傷用のテープなどとして成形された医療用物品
を加工して、そこに含まれる高吸水性繊維の親水性外層
部の中にヨウ素を選択的に吸着せしめ、該繊維外に遊離
の状態で存在するヨウ素を実質的に除去して得られたも
のを、例えばさらに支持体に展延させたりあるいは塗布
するなどの処理をすることなく、その成形物をそのまま
直接患部に張り付けるなどして簡単に用いることができ
る。
【0037】本発明の組成物には癒着防止、保湿性、柔
軟性、皮膚浸透性、安定性の向上等の目的に種々の添加
剤を配合することができる。添加剤としては、ポリビニ
ルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピ
ロリドン、メチルセルロース等の水溶性高分子、ソルビ
トール、グリセリン、シクロデキストリン、エチレング
リコール等の多価アルコール類、ラノリン等の油類、ロ
ウ類、高級アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステ
ル、界面活性剤等が挙げられる。本発明の組成物は、特
に医療用の殺菌薬及び/又は消毒薬として、さらに創傷
予防及び/又は治療薬として有用である。本発明におけ
る創傷予防及び/又は治療薬としては、例えば切傷、す
り傷、さし傷、かき傷、手術創、褥瘡(床ずれ)、熱
傷、凍傷、火傷等に見られる皮膚潰瘍、感染創のような
液体滲出性皮膚潰瘍、化膿性皮膚疾患に対する治療、糖
尿病性壊疸又は下腿潰瘍、放射線潰瘍等難治性皮膚潰瘍
に対する治療、術前、術中、術後の患部の殺菌又は消
毒、術中の床ずれ予防、血管又は輸管カテーテル又はド
レーン処置時の感染予防及び消毒、感染による悪化の防
止、あるいは身体を動かすことが不可能な時、特に高齢
者において、仙骨や踵のような体重のかかりやすい部位
の褥瘡様潰瘍の発症を防ぐことを目的とする薬剤などが
挙げられる。その創傷予防及び/又は治療薬の使用方法
としては不織布状あるいはシート状の製剤を、さらに支
持体に展延させたり、あるいは塗布して使用するなどと
いうことは全く必要なく、それを直接患部に張り付ける
などして用いることができる。本発明の組成物は、獣医
用にも用いることができる。
【0038】本発明の組成物からなる不織布状あるいは
シート状の製剤は、そのままで又は用時適当な大きさに
切って、創傷患部に直接または間接に当て、サージカル
テープ等で固定するか、ハイドロコロイド・ドレッシン
グ材、フィルムドレッシング材等で被覆・固定するなど
して用いることができる。また、紐状、綿状の製剤は、
用時適当な大きさで潰瘍部に充填し、ハイドロコロイド
・ドレッシング材、フィルムドレッシング材等で被覆・
固定するなどして用いることができる。さらに他の軟膏
剤等と併用することも可能である。かくして得られた本
発明の組成物は、高吸水性繊維の親水性架橋重合体中に
特異的にヨウ素を含有し、揮発性であるヨウ素が安定に
保持され、皮膚刺激性が低く、放出能、吸水能・保水能
に優れた組成物である。また遊離のヨウ素がすぐに患部
などに接触して作用したり、該組成物から放出されて皮
膚など患部に強い刺激を与えるということもない。本発
明の組成物は、浸出液、分泌液、体液等を吸収して患部
を清潔に保つと共に、当該吸収された浸出液、分泌液、
体液等により組成物中からヨウ素が徐々に放出され、長
時間に亘り抗菌性を示し、細菌感染を抑える。
【0039】本発明の組成物は、創傷面を湿潤状態に保
つ一方、吸収した水分の側方への浸透がないため正常皮
膚を乾燥状態に保つことができる。本発明の組成物は、
保水性に優れていることから浸出液の遺漏を防止し、外
部からの細菌感染を防ぐと共に、患部周囲の汚濁を防ぐ
ので、患者が寝たきりの状態でも衣類・シーツ等を汚さ
ないし、滲出液漏出による不快臭の発生などという問題
もない。本発明の組成物は、繊維状であることから身体
のどのような部位にもよく適合するし、創傷面に対する
刺激圧を発生することがなく、たとえ吸水しても体積増
加による患部の圧迫などをすることがない。そして肌触
りがよく、クッション性、保温性を有することから創傷
面の保護効果に優れる。本発明の組成物は、吸水後もそ
の繊維構造自体の繊維としての特性を損なわないことか
ら、膨張圧などに対して緩衝作用を示し、創傷面を長い
時間被覆して置いても創傷及びその周辺の皮膚の部位を
刺激することが少なく、さらに製剤使用後の除去及び患
部の洗浄で患部を傷つけることがほとんどなく、そうし
た処置が容易に行え、看護側の作業負担を軽減できる。
その患部からの除去においても繊維構造であることか
ら、ゲル化物質が創傷部あるいは再生組織部位などに残
ることがなく、被覆物を一体的に除去ができる。
【0040】本発明の組成物は、その殺菌薬及び/又は
消毒薬としての優れた性状・作用・効果、さらにはその
特性を生かして、絨毯やフロアー・マットなどの敷物、
床・天井又は壁の被覆材、建築物用パネル、シート、フ
ローリング材、スクリーン、抗菌性フィルター、間仕切
り、衛生施設用材料などの殺菌及び/又は消毒作用を有
する建築構造物用の製品とすることができる。本発明の
組成物は、さらにその繊維としての性状・特性を利用
し、布帛や衣類などの繊維製品、紙製品など、運送及び
運輸車両(例えば自動車、飛行機、鉄道、船舶両など)
のための部品あるいは付属具など、家畜、ペット用衛生
施設具さらには農園芸用土壌改良剤、育苗用シートなど
とすることができる。上記では、ヨウ素を薬物、特には
揮発性薬物の代表的な例として本発明の組成物、その製
造法、その用途について説明したが、本発明はその薬物
に限定されること無く様々な態様が含まれることは理解
されるべきである。また本発明の高吸水性繊維の中に薬
物を含有する組成物としての特性を利用し、その特性を
損なわないかぎり、例えば財団法人 日本公定書協会監
修「日本薬局方解説書」株式会社 廣川書店、平成3年
7月29日発行の「第十二改正日本薬局方解説書」など
に記載の様々な製剤形態としたり、様々な活性成分に応
用したり、様々な活性成分や配合添加剤などと組み合わ
せて利用できる。
【0041】
【実施例】以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明
するが、本発明は実施例に限定されること無く様々な態
様が含まれることは理解されるべきである。尚、各組成
物中のヨウ素量の定量はデンプンを指示薬としてチオ硫
酸ナトリウムによる酸化還元滴定にて行った。%(W/
W)は重量%を表す。実施例中使用しているエタノール
は特に明記されていない場合には無水エタノールあるい
は実質的に無水のエタノールを示す。 実施例1 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株))からなる
目付:300g/m2、厚み:6mmの不織布を直径1
6mmの円形に裁断し、それにヨウ素16mg/mlを
含有するエタノール溶液を1.0ml含浸した。20m
mHgにて6時間減圧乾燥した後、エタノール20ml
にて洗浄し、ヨウ素含有率0.93%(W/W)の組成
物を得た。
【0042】実施例2 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株))からなる
目付:300g/m2、厚み:6mmの不織布を直径1
6mmの円形に裁断し、それにヨウ素16mg/mlを
含有するエタノール溶液を1.0ml含浸した。20m
mHgにて6時間減圧乾燥した後、20℃相対湿度95
%の湿箱中に24時間置き、さらに、エタノール20m
lにて洗浄し、ヨウ素含有率0.84%(W/W)の組
成物を得た。
【0043】実施例3 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株)):ポリエ
ステル=70:30の混率からなる目付:150g/m
2 、厚み:3mmの不織布を直径16mmの円形に裁断
し、それにヨウ素16mg/mlを含有する70%(V
/V)エタノール溶液を0.5ml含浸した。20mm
Hgにて15時間乾燥した後、エタノール20mlにて
洗浄し、ヨウ素含有率3.2%(W/W)の組成物を得
た。
【0044】実施例4 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株)):ポリエ
ステル=70:30の混率からなる目付:150g/m
2 、厚み:3mmの不織布を直径16mmの円形に裁断
し、それにヨウ素1.6mg/mlを含有する90%
(V/V)エタノール溶液を0.5ml含浸した。常温
常圧にて16時間乾燥した後、エタノール20mlにて
洗浄し、ヨウ素含有率0.37%(W/W)の組成物を
得た。
【0045】実施例5 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株)):ポリエ
ステル=70:30の混率からなる目付:150g/m
2 、厚み:3mmの不織布を直径16mmの円形に裁断
し、それにヨウ素5mg/mlを含有する90%(V/
V)エタノール溶液を0.5ml含浸した。常温常圧に
て16時間乾燥した後、エタノール20mlにて洗浄
し、ヨウ素含有率1.2%(W/W)の組成物を得た。
【0046】実施例6 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株)):ポリエ
ステル=70:30の混率からなる目付:150g/m
2 、厚み:3mmの不織布を直径16mmの円形に裁断
し、それにヨウ素16mg/mlを含有する90%(V
/V)エタノール溶液を0.5ml含浸した。常温常圧
にて16時間乾燥した後、エタノール20mlにて洗浄
し、ヨウ素含有率1.9%(W/W)の組成物を得た。
【0047】実施例7 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株)):ポリエ
ステル=70:30の混率からなる目付:150g/m
2 、厚み:3mmの不織布を直径16mmの円形に裁断
し、それにヨウ素16mg/mlを含有する70%(V
/V)エタノール溶液を0.5ml含浸した。20mm
Hgにて15時間乾燥した後、エタノール20mlにて
洗浄した後、さらに、それにグリセリン0.8mg/m
lを含有するEtOH溶液0.5mlを含浸した後、常
温常圧にて16時間乾燥しヨウ素含有率1.9%(W/
W)、グリセリン含有率1%(W/W)の組成物を得
た。
【0048】実施例8 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株)):ポリエ
ステル=70:30の混率からなる目付:150g/m
2 、厚み:3mmの不織布を直径16mmの円形に裁断
し、次に固体のヨウ素を共存させた20℃のデシケータ
中に24時間置いた後、エタノール20mlにて洗浄
し、ヨウ素含有率0.17%(W/W)の組成物を得
た。
【0049】実施例9 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株)):ポリエ
ステル=70:30の混率からなる目付:150g/m
2 、厚み:3mmの不織布を直径16mmの円形に裁断
し、次に固体のヨウ素を共存させた20℃のデシケータ
中に24時間置いた後、さらに、20℃相対湿度95%
の湿箱中に24時間置いた。エタノール20mlにて洗
浄し、ヨウ素含有率1.4%(W/W)の組成物を得
た。
【0050】実施例10 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株)):ポリエ
ステル=70:30の混率からなる目付:150g/m
2 、厚み:3mmの不織布を直径16mmの円形に裁断
し、次に固体のヨウ素を共存させた20℃相対湿度95
%の湿箱中に24時間置いた後、エタノール20mlに
て洗浄し、ヨウ素含有率1.6%(W/W)の組成物を
得た。
【0051】実施例11 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株)):ポリエ
ステル=70:30の混率からなる目付:150g/m
2 、厚み:3mmの不織布を直径16mmの円形に裁断
し、次に固体のヨウ素を共存させた40℃相対湿度95
%の湿箱中に24時間置いた後、エタノール20mlに
て洗浄し、ヨウ素含有率2.4%(W/W)の組成物を
得た。
【0052】実施例12 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株)):ポリエ
ステル=70:30の混率からなる目付:150g/m
2 、厚み:3mmの不織布を直径16mmの円形に裁断
し、次に20℃相対湿度95%の湿箱中に24時間置い
た後、さらに、固体のヨウ素を共存させた20℃のデシ
ケータ中に24時間置いた。エタノール20mlにて洗
浄し、ヨウ素含有率1.1%(W/W)の組成物を得
た。
【0053】実施例13 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株))からなる
目付:300g/m2、厚み:6mmの不織布を直径1
6mmの円形に裁断し、次に40℃過飽和ヨウ素水溶液
200mlを0.6ml/minのガス流量にてバブリ
ングして発生させた高湿度ヨウ素ガスを循環した10L
の湿箱中に24時間置いた後、エタノール20mlにて
洗浄し、ヨウ素含有率1.8%(W/W)の組成物を得
た。
【0054】実施例14 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株))からなる
目付:300g/m2、厚み:6mmの不織布を直径1
6mmの円形に裁断し、次に40℃ヨウ素10g、ヨウ
化カリウム10gを溶解した水溶液200mlを0.6
ml/minのガス流量にてバブリングして発生させた
高湿度ヨウ素ガスを循環した10Lの湿箱中に24時間
置いた後、エタノール20mlにて洗浄し、ヨウ素含有
率1.5%(W/W)の組成物を得た。
【0055】実施例15 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株))からなる
目付:300g/m2、厚み:6mmの不織布を直径1
6mmの円形に裁断し、次に10℃過飽和ヨウ素水溶液
をエジェクターを介して循環して発生させた高湿度ヨウ
素ガスを2ml/minのガス流量にて循環した10L
の湿箱中に8時間置いた後、エタノール20mlにて洗
浄し、さらに、40℃にて24時間乾燥し、ヨウ素含有
率0.30%(W/W)の組成物を得た。
【0056】実施例16 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株))からなる
目付:300g/m2、厚み:6mmの不織布を直径1
6mm、あるいは直径30mmの円形に裁断し、次に4
0℃過飽和ヨウ素水溶液をエジェクターを介して循環さ
せてなる高湿度ヨウ素ガスを2ml/minのガス流量
にて循環させた10Lの湿箱中に24時間置いた後、エ
タノール20mlにて洗浄し、さらに、40℃にて24
時間乾燥し、ヨウ素含有率2.9%(W/W)の組成物
を得た。
【0057】実施例17 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株))からなる
目付:300g/m2、厚み:6mmの不織布を10c
m×12cmの長方形に裁断し、次に40℃過飽和ヨウ
素水溶液をエジェクターを介して循環させてなる高湿度
ヨウ素ガスを150L/minのガス流量にて循環させ
た1m3 の湿箱中に6時間置いた後、エタノール1.6
Lにて洗浄し、さらに、40℃にて24時間乾燥し、ヨ
ウ素含有率4.4%(W/W)の組成物を得た。
【0058】実施例18 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株))からなる
目付:300g/m2、厚み:6mmの不織布を10c
m×12cmの長方形に裁断し、次に50℃過飽和ヨウ
素水溶液をエジェクターを介して循環させてなる高湿度
ヨウ素ガスを150L/minのガス流量にて循環させ
た1m3 の湿箱中に6時間置いた後、エタノール1.6
Lにて洗浄し、さらに、40℃にて24時間乾燥し、ヨ
ウ素含有率5.5%(W/W)の組成物を得た。
【0059】実施例19 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株))からなる
目付:300g/m2、厚み:6mmの不織布を10c
m×12cmの長方形に裁断し、48℃過飽和ヨウ素水
溶液をエジェクターを介して循環させてなる高湿度ヨウ
素ガスを150〜210L/minのガス流量にて、3
5℃に加温した吸着筒に9時間循環させた後、冷風(6
℃)を24時間カラムに通した後、カラムからヨウ素を
吸着した不織布を取り出し、1枚あたりエタノール75
0mlにて洗浄し、さらに80℃にて22時間乾燥し、
ヨウ素含有率5.1%(w/w)の組成物を得た。
【0060】実施例20 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株))からなる
目付:300g/m2、厚み:4mmの不織布を10c
m×12cmの長方形に裁断し、40℃過飽和ヨウ素水
溶液をエジェクターを介して循環させてなる高湿度ヨウ
素ガスを135〜210L/minのガス流量にて、3
5℃に加温した吸着筒に9時間循環させた後、カラムを
9℃で14時間冷却し、冷風(14℃)を24時間カラ
ムに通した後、カラムからヨウ素を吸着した不織布を取
り出し、コニカル乾燥機(80L)で1枚あたりエタノ
ール400mlにて洗浄し、さらに80℃、30mmH
gにて9時間減圧乾燥し、ヨウ素含有率4.0%(w/
w)の組成物を得た。
【0061】実施例21 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株))からなる
目付:300g/m2、厚み:4mmの不織布を50℃
過飽和ヨウ素水溶液をエジェクターを介して循環させて
なる高湿度ヨウ素ガスを9L/minのガス流量にて、
45℃に加温した吸着筒に6時間循環させた後、カラム
からヨウ素を吸着した不織布を取り出し、24℃、8〜
11mmHgにて8時間減圧乾燥した後、1m2 あたり
エタノール50リットルにて洗浄し、さらに40℃にて
24時間乾燥し、直径13cmの円形に裁断し、ヨウ素
含有率7.3%(w/w)の組成物を得た。
【0062】実施例22 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株))からなる
目付:300g/m2、厚み:3mmの不織布を10c
m×12cmの長方形に裁断し、40℃過飽和ヨウ素水
溶液をエジェクターを介して循環させてなる高湿度ヨウ
素ガスを150〜180L/minのガス流量にて、3
5℃に加温した吸着筒に9時間循環させた後、カラムを
10℃で14時間冷却し、冷風(14℃)を24時間カ
ラムに通し、カラムからヨウ素を吸着した不織布を取り
出し、1枚あたり含水エタノール(H2 O 150g/
L EtOH)400mlにて洗浄し、さらに80℃、
10mmHgにて6時間減圧乾燥し、ヨウ素含有率0.
9%(w/w)の組成物を得た。
【0063】実施例23 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株))からなる
目付:300g/m2、厚み:3mmの不織布を10c
m×12cmの長方形に裁断し、40℃過飽和ヨウ素水
溶液をエジェクターを介して循環させてなる高湿度ヨウ
素ガスを150〜180L/minのガス流量にて、3
5℃に加温した吸着筒に9時間循環させた後、カラムを
10℃で14時間冷却し、冷風(14℃)を24時間カ
ラムに通した後、カラムからヨウ素を吸着した不織布を
取り出し、1枚あたりメタノール含有エタノール(Me
OH 150g/L EtOH)400mlにて洗浄
し、さらに80℃、10mmHgにて6時間減圧乾燥
し、ヨウ素含有率3.8%(w/w)の組成物を得た。
【0064】実施例24 実施例23で得られた組成物(10cm×12cmの長
方形)をアルミラミネート袋に1枚ずつ入れ密封し、皮
膚潰瘍治療剤とする。
【0065】比較例1 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株))からなる
目付:300g/m2、厚み:6mmの不織布を直径1
6mmの円形に裁断し、ヨウ素16mg/mlを含有す
るエタノール溶液を1.0ml含浸した後、20mmH
gにて6時間減圧乾燥し、ヨウ素含有率4.3%(W/
W)の組成物を得た。
【0066】比較例2 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株)):ポリエ
ステル=70:30の混率からなる目付:150g/m
2 、厚み:3mmの不織布を直径16mmの円形に裁断
し、固体のヨウ素を共存させた20℃、相対湿度95%
の湿箱中に24時間置き、ヨウ素含有率2.7%(W/
W)の組成物を得た。
【0067】比較例3 ランシール(商標名)−F(東洋紡績(株))からなる
目付:300g/m2、厚み:6mmの不織布を直径1
6mmの円形に裁断し、40℃過飽和ヨウ素水溶液をエ
ジェクターを介して循環して発生させた高湿度ヨウ素ガ
ス2ml/minのガス流量にて循環した10Lの湿箱
中に24時間置いた後、40℃にて24時間乾燥し、ヨ
ウ素含有率4.2%(W/W)の組成物を得た。
【0068】試験例1 実施例3において得られた組成物について、繊維を抜き
出し、顕微鏡下にて水あるいはエタノールを滴下し、そ
れらの吸収及びヨウ素放出動態の観察をした。結果、該
組成物は水滴下後、その繊維は速やかに膨潤し、以後、
徐々にヨウ素の褐色が退色して行き、滴下10〜20分
後までにほぼ無色となった(図1〜図8)。一方、エタ
ノール滴下したものでは20分後までには該組成物の繊
維の変化は認められなかった(図9〜図16)。即ち、
本組成物は、水を吸収・膨潤することにより繊維内のヨ
ウ素を徐々に放出する一方、エタノールを滴下した場合
は、エタノールを吸収せず、繊維内のヨウ素も放出しな
いことが見いだされた。これはヨウ素は水に溶け難いの
に対して、エタノールにはやや溶けやすいことを考える
と、繊維の親水性架橋重合体からなる部位に特異的にヨ
ウ素が吸着され保持されていることを支持していると考
えられる。また水分と繊維が接触して繊維が吸水するこ
とによりヨウ素を放出するという特性は、傷口などの浸
出液、分泌液等が存在する湿った環境でヨウ素という薬
物を放出して薬効を示すが、正常な皮膚表面のような比
較的乾燥した部位では何ら薬物を出さないという優れた
性状であることを示すものである。この性状は、例えば
切傷、すり傷、さし傷、かき傷、手術創、褥瘡、熱傷、
凍傷、火傷等に見られる皮膚潰瘍、感染創のような液体
滲出性皮膚創傷、化膿性皮膚疾患に対する治療、糖尿病
性壊疸又は下腿潰瘍、放射線潰瘍等難治性皮膚潰瘍に対
する治療、術前、術中、術後の患部の殺菌又は消毒、術
中の床ずれ予防、血管又は輸管カテーテル又はドレーン
処置時の感染予防及び消毒、感染による悪化の防止、あ
るいは身体を動かすことが不可能な時、特に高齢者にお
いて、仙骨や踵のような体重のかかりやすい部位の褥瘡
様潰瘍の発症を防ぐための薬剤の性状として適したもの
である。
【0069】試験例2 実施例16および比較例1において得られた組成物につ
いて、パラフィン包埋後薄切し、顕微鏡下で観察した。
結果、実施例16において得られた繊維の断面像とし
て、ヨウ素は吸水性繊維の親水性架橋重合体からなる外
層部に認められ、アクリルニトリル系重合体等からなる
内層部およびパラフィン層には認められなかった(図1
7〜図18)。比較例1において得られた繊維の断面像
として、ヨウ素は吸水性繊維の親水架橋重合体からなる
外層部だけでなくパラフィン層にも認められ、アクリル
ニトリル系重合体等からなる内層部には認められなかっ
た。パラフィン層に認められたヨウ素は繊維外に付着し
たヨウ素が包埋時に溶出したものと考えられた(図19
〜図20)。ヨウ素(水には極めて溶けにくいという性
質をもつ)が意外にも繊維の親水性部位(親水性架橋重
合体からなる外層部)に特異的に吸着され保持されてい
ることが認められた。さらにヨウ素はエタノールにはや
や溶けやすいことが知られているけれども、驚いたこと
に一旦吸水性繊維の親水性部位(親水性架橋重合体から
なる外層部)に特異的に吸着されるとそのエタノールな
どによってはそれは患部には放出されず、おまけに繊維
外の不要なヨウ素のみを簡単な処理で実質的に除くこと
ができるという予想外の結果を示している。
【0070】試験例3 実施例10、実施例16、比較例1、そして比較例2に
おいてそれぞれ得られた直径16mmの組成物、並びに
実施例19、そして実施例20においてそれぞれ得られ
た10cm×12cmの組成物について、安定性試験を
行った。 <試験法>実施例10、実施例16、比較例1、そして
比較例2においては直径16mmの組成物をアルミラミ
ネート袋中に封入後40℃にて保存し、有効ヨウ素量を
定量した。定量は日本薬局方(日局)のヨウ素滴定法を
準用し、0.05% KI溶液に組成物を入れ10分間
ソニケーション後、0.02Nチオ硫酸ナトリウムで滴
定した。実施例19、そして実施例20においてそれぞ
れ得られた10cm×12cmの組成物においては、1
0cm×12cmの組成物をアルミラミネート袋中に封
入後40℃にて保存し、直径20mmに裁断した組成物
について有効ヨウ素量を定量した。定量は日局のヨウ素
滴定法を準用し、0.05% KI溶液に組成物を入
れ、10分間ソニケーション後、0.005Nチオ硫酸
ナトリウムで測定した。
【0071】
【表1】
【0072】製法においてヨウ素吸着後エタノール洗浄
による繊維外ヨウ素の除去を施した実施例10、16、
19及び20のそれぞれの組成物は、エタノール洗浄に
よる繊維外ヨウ素の除去を施していない比較例1、2と
比較して、ヨウ素残存率が高く、エタノール洗浄による
繊維外ヨウ素の除去が安定性の向上に有効であることが
見いだされた。医薬品では、その薬効成分がたとえ揮発
性のものであっても目的の作用効果を得るためにはその
含有量が決められた範囲になければならず、さらにその
量が変化するものであってはならない。薬効成分の含有
量が安定に保持されるということは、特に長時間保存し
たり使用する場合には大切な性状である。本発明の組成
物では、そこに含有されている薬効成分のヨウ素の含有
量が安定して保持されていることがわかる。
【0073】試験例4 実施例16において得られた組成物(直径16mm)に
ついて、放出性試験を行った。 <試験法>金属ネットおよびメンブランフィルターを敷
いた内径16mmのガラス製カラムに本発明の組成物を
置き、カラム上部より0.1ml/minの速度にて生
理食塩水を滴下した。カラム下部より流出するヨウ素量
を滴下開始270min後まで経時的にサンプリング
し、有効ヨウ素量を定量、累積放出量を算出した。
【0074】
【表2】
【0075】本発明の組成物は、長時間に亘り徐々にヨ
ウ素を放出することが見いだされた。床ずれや皮膚潰瘍
など液体滲出性皮膚創傷の治療に長時間にわたり用いて
も、薬効の持続性が優れているので、頻繁にその医薬製
剤を患部から交換のため取り除いたりする必要がない。
【0076】試験例5 実施例16において得られた組成物(直径30mm)に
ついて、吸水能を試験した。 <試験法>水50mlに30分間浸漬、または、ウサギ
血液(ウサギ日本白色種より頚動脈採血)15mlに3
0分間浸漬した後、20分間濾過し、重量を測定し、組
成物1gあたりの吸収量を算出した。
【0077】
【表3】 本発明の組成物は、水や血液に対する吸収性が高いこと
が見いだされた。
【0078】試験例6 実施例6において得られた組成物について、ラット熱傷
潰瘍モデルにおける治療効果を試験した。 <試験法>200℃に調整した先端径7mmのはんだご
てを用い、ぺントバルビタール麻酔下にwistar系
雄性ラット背部皮膚に熱傷創を作製し、緑膿菌1×10
7CFU/mlを接種した。熱傷創作製2日後より1日
1回検体を投与し、治癒完了までの日数を比較した。
尚、各検体の投与は、検体を創傷部に密着させ、伸縮性
粘着包帯(ハイラテックス:イワツキ株式会社)で固定
した。
【0079】
【表4】
【0080】本発明の組成物は、創傷の治療に有効であ
ることが見出された。本発明の組成物は、繊維状である
ことから身体部位によく適合し、創傷面に対する刺激圧
を発生することが少なく、肌触りがよくて、クッション
性、保温性を有し、創傷面の保護及び治癒効果に優れ
る。
【0081】試験例7 実施例16において得られた組成物について、ウサギに
おける皮膚刺激性試験を行った。 <試験法>ウサギ(日本白色種)の背部皮膚に注射針で
かき傷を作製し、7日間1日1回検体を投与し、製剤交
換時に皮膚に対する刺激性を観察した。尚、各検体の投
与は、検体を創傷部に密着させ、プロテクターフィルム
(興和)で被覆し、伸縮性粘着包帯(ハイラテックス:
イワツキ株式会社)で固定した。 <結果>紅斑および浮腫等の異常は認められず、皮膚刺
激性は無かった。本発明の組成物は、吸水後もその繊維
構造自体の繊維としての特性を損なわず、膨張圧などに
対して緩衝作用を示し、創傷面を長い時間被覆して置い
ても創傷及びその周辺の皮膚の部位を刺激することが少
なく、さらに製剤使用後の除去及び患部の洗浄が患部を
傷つけることがほとんどなく、容易に行え、看護側の作
業負担を軽減できる。その患部からの除去においても繊
維構造であることから、ゲル化物質が創傷部あるいは再
生組織部位などに残ることがなく、被覆物を一体的に除
去ができる。高吸水性繊維の親水性架橋重合体中に特異
的にヨウ素を含有し、揮発性であるヨウ素が安定に保持
され、皮膚刺激性が低く、放出能、吸水能・保水能に優
れている。また遊離のヨウ素がすぐに患部などに接触し
て作用したり、該組成物から放出されて皮膚など患部に
強い刺激を与えるということもない。
【0082】
【発明の効果】本発明に従えば、体液の漏出を防止する
という機能に加え、創傷面での菌の増殖を積極的に抑止
すると共に薬物が徐々に放出され長時間にわたる利用が
可能であるので、生体の持つ本来の創傷治癒能力を最大
限に発揮させることのできる環境を提供できる。本発明
の組成物は、その繊維としての特性を生かして弾力性が
豊かな製品とすることができ、また長時間にわたって安
心して且つ安全に使用することができるので、従来の薬
物あるいは製剤のように創傷面などの患部において頻繁
に交換を繰り返す等という必要を大幅に減じることがで
き、例えば一人の患者に医療従事者が絶えず付き添って
世話をするなどという必要がなくなる。本発明の組成物
は、揮発性の薬物を安定に保持し得るし、皮膚刺激性の
低減と良好な放出性を得ることができ、さらに繊維状で
あることから取扱い易く、皮膚潰瘍のような液体滲出性
創傷に用いた場合吸収された浸出液、分泌液、体液など
を吸収しても十分にその繊維としての性状を保持してい
ることから通気性が確保できる、交換が容易などの優れ
た特性を持つ。そして構造が簡単なため製造にあたりそ
の効率性が高く、コスト的にも安価に製造可能である。
本発明の組成物は、特に医療用の殺菌薬及び/又は消毒
薬として、さらに創傷予防及び/又は治療薬として有用
である。また本発明における創傷予防及び/又は治療薬
は、例えば切傷、すり傷、さし傷、かき傷、手術創、褥
瘡(床ずれ)、熱傷、凍傷、火傷等に見られる皮膚潰
瘍、感染創のような液体滲出性皮膚潰瘍、化膿性皮膚疾
患に対する治療、糖尿病性壊疸又は下腿潰瘍、放射線潰
瘍等難治性皮膚潰瘍に対する治療、術前、術中、術後の
患部の殺菌又は消毒、術中の床ずれ予防、血管又は輸管
カテーテル又はドレーン処置時の感染予防及び消毒、感
染による悪化の防止、あるいは身体を動かすことが不可
能な時、特に高齢者において、仙骨や踵のような体重の
かかりやすい部位の褥瘡様潰瘍の発症を防ぐことを目的
とする薬剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3に水を滴下する前の繊維の形状を示す
顕微鏡写真である。
【図2】図1の顕微鏡写真を模式的に描いて示した図で
ある。 A:ポリエステル繊維 B:ヨウ素含有ランシール(商
標名) 繊維 C:空気 D:アクリロニトリル系内層
部 E:親水性架橋重合体外層部 F:水
【図3】実施例3に水を滴下して1分後の繊維の形状を
示す顕微鏡写真である。
【図4】図3の顕微鏡写真を模式的に描いて示した図で
ある。記号は図2と同義。
【図5】実施例3に水を滴下して5分後の繊維の形状を
示す顕微鏡写真である。
【図6】図5の顕微鏡写真を模式的に描いて示した図で
ある。記号は図2と同義。
【図7】実施例3に水を滴下して10分後の繊維の形状
を示す顕微鏡写真である。
【図8】図7の顕微鏡写真を模式的に描いて示した図で
ある。記号は図2と同義。
【図9】実施例3にEtOHを滴下する前の繊維の形状
を示す顕微鏡写真である。
【図10】図9の顕微鏡写真を模式的に描いて示したた
図である。A:ポリエステル繊維B:ヨウ素含有ランシ
ール(商標名) 繊維 C:空気 D:EtOH
【図11】実施例3にEtOHを滴下して1分後の繊維
の形状を示す顕微鏡写真である。
【図12】図11の顕微鏡写真を模式的に描いて示した
図である。記号は図10と同義。
【図13】実施例3にEtOHを滴下して5分後の繊維
の形状を示す顕微鏡写真である。
【図14】図13の顕微鏡写真を模式的に描いて示した
図である。記号は図10と同義。
【図15】実施例3にEtOHを滴下して10分後の繊
維の形状を示す顕微鏡写真である。
【図16】図15の顕微鏡写真を模式的に描いて示した
図である。記号は図10と同義。
【図17】実施例16のパラフィン包埋切片の繊維の形
状を示す顕微鏡写真である。
【図18】図17の顕微鏡写真を模式的に描いて示した
図である。 A:ヨウ素含有ランシール(商標名)
維 B:親水性架橋重合体外層部 C:アクリロニトリ
ル系内層部 D:パラフィン E:気泡
【図19】比較例1のパラフィン包埋切片の繊維の形状
を示す顕微鏡写真である。
【図20】図19の顕微鏡写真を模式的に描いて示した
図である。 A:ヨウ素含有ランシール(商標名)
維 B:親水性架橋重合体外層部 C:アクリロニトリ
ル系内層部 D:パラフィン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 江田 知穂 富山県高岡市長慶寺530番地 富士薬品工 業株式会社内 (72)発明者 中野 正晴 富山県高岡市長慶寺530番地 富士薬品工 業株式会社内 (72)発明者 森川 忠則 富山県高岡市長慶寺530番地 富士薬品工 業株式会社内 (72)発明者 中橋 和明 富山県高岡市長慶寺530番地 富士薬品工 業株式会社内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高吸水性繊維の中にヨウ素を含有するこ
    とを特徴とする組成物。
  2. 【請求項2】 高吸水性繊維が、外層部と内層部から成
    ることを特徴とする請求項1記載の組成物。
  3. 【請求項3】 高吸水性繊維が親水性架橋重合体からな
    る外層部とアクリロニトリル系重合体及び/又は他の重
    合体からなる内層部とを有することを特徴とする請求項
    2の組成物。
  4. 【請求項4】 外層部に特異的にヨウ素を含有すること
    を特徴とする請求項2または3記載の組成物。
  5. 【請求項5】 高吸水性繊維に重量の0.1〜15%の
    ヨウ素を含有することを特徴とする請求項1〜4のいず
    れか一記載の組成物。
  6. 【請求項6】 高吸水性繊維にヨウ素を吸着させた後、
    繊維外のヨウ素を除去して製造したことを特徴とする請
    求項1〜5のいずれか一記載の組成物。
  7. 【請求項7】 水または水蒸気の存在下にヨウ素を高吸
    水性繊維に吸着させることを特徴とする請求項6記載の
    組成物。
  8. 【請求項8】 高吸水性繊維単独又は高吸水性繊維と他
    の繊維と組み合わせて構成されていることを特徴とする
    請求項1〜7のいずれか一記載の組成物。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8のいずれか一記載の組成物
    からなることを特徴とする殺菌及び/又は消毒性医薬。
  10. 【請求項10】 請求項1〜8のいずれか一記載の組成
    物からなることを特徴とする殺菌及び/又は消毒性物
    品。
  11. 【請求項11】 織物状、不織布状、紐状、脱脂綿状、
    ガーゼ状、シート状又は袋状に成形してなり且つ医療用
    のものであることを特徴とする請求項10記載の物品。
  12. 【請求項12】 請求項1〜8のいずれか一記載の組成
    物からなることを特徴とする創傷予防及び/又は治療
    薬。
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