JPH105330A - 細胞由来放出因子の吸着体、それを用いる吸着除去装置および吸着除去方法 - Google Patents

細胞由来放出因子の吸着体、それを用いる吸着除去装置および吸着除去方法

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JPH105330A
JPH105330A JP8161924A JP16192496A JPH105330A JP H105330 A JPH105330 A JP H105330A JP 8161924 A JP8161924 A JP 8161924A JP 16192496 A JP16192496 A JP 16192496A JP H105330 A JPH105330 A JP H105330A
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JP
Japan
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blood
adsorbent
cells
release factor
particle size
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JP8161924A
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English (en)
Inventor
Akira Kobayashi
明 小林
Satoru Takada
覚 高田
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 血球細胞および血管構成細胞由来の放出因子
を効率よく吸着除去しうる吸着体、それを用いる吸着除
去装置ならびに吸着除去方法を提供する。 【解決手段】 血球細胞および血管構成細胞が活性化さ
れたときに放出される放出因子を含む血液を、ポリアニ
オン性化合物を固定化した水不溶性担体に直接接触させ
ることにより吸着除去することを特徴とする吸着体、そ
れを用いる吸着除去装置および吸着除去方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は血球細胞および/ま
たは血管構成細胞由来の放出因子を、血漿分離すること
なしに、直接血液と接触させることにより吸着除去する
ための吸着体、それを用いる吸着除去装置ならびに吸着
除去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
[動脈硬化と細胞由来の放出因子] アテローム性動脈硬化の成因として、 1−a)LDLレセプターの遺伝的欠損(ブラウン、エ
ム エス(Brown, M. S.)およびゴールドステイン、ジ
ェイ エル(Goldstein, J. L.)、サイエンス(Scienc
e)、232(4746)、34〜47頁、1986)
および1−b)LDLレセプターに異常がないばあいで
も食事などにより動物性脂肪成分が過剰になりLDLレ
セプターの発現が抑制されること(ゴールドステイン、
ジェイ エルおよびブラウン、エム エス、ホスピタル
・プラクティス・オフ(Hosp. Pract. Off.)、20
(11)、35〜41頁、1985)、 2)酸化や糖化された変性LDLをマクロファージが大
量に取り込み泡沫細胞に変化していくこと(マツモト、
エー(Matsumoto, A.)ら、プロシーディング・オブ・
ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ
・ユナイティッド・ステート・オブ・アメリカ(Proc.
Natl. Acad. Sci. USA)、87(23)、9133〜9
137頁、1990、フリーマン、エム(Freeman,
M.)ら、プロシーディング・オブ・ナショナル・アカデ
ミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ユナイティッド・
ステート・オブ・アメリカ、88(11)、4931〜
4935頁、1991)、ならびに 3)種々の障害により内皮細胞が変性、剥離し、内皮下
組織に血小板が粘着・凝集を起こし、血小板のα顆粒か
ら平滑筋細胞の増殖を促進する血小板由来の増殖因子
(以下、PDGFという)が放出され(ロス、アール
(Ross, R.)、レインス、イー ダブリュー(Raines,
E. W.)、ボウエン ポープ デー エフ(Bowen Pope
D. F.)、セル(Cell)、46、155〜169頁、1
986)、平滑筋細胞の増殖が起こり、内膜の肥厚化、
アテローム性の硬化巣が形成される(ロス、アール、ニ
ューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン(N.
Engl. J. Med.)、314、488〜500頁、198
6)ことなど動脈硬化形成のメカニズムが明らかにされ
てきた。
【0003】現在ではアテローム性動脈硬化の形成を抑
制する方法として、血液中のLDL濃度を低下させるこ
とが効果的であることが明らかにされており(リピッド
・リサーチ・クリニックス・プログラム、ジェイ・エー
・エム・エー(Lipid Research Clinics Program, J.
A. M. A.)、261、365頁、1984、ダブリュー
ビー カンネル(W. B. Kannel)、ダブリュー ピー
カステリ(W. P. Castelli)、ティー ゴードン(T.
Gordon)およびピー エム マクナマラ(P.M. Mcnama
ra)、アナルス・オブ・インターナル・メディシン(An
n. Intern. Med.)、74、1頁、1971)、すでに
HMG−CoA還元酵素阻害剤、LDL変性抑制剤、A
CAT阻害剤などの薬剤やLDLと親和性が高いリガン
ドを固定化した吸着体を用いた体外循環療法(ヨコヤ
マ、エス(Yokoyama, S.)ら、アーテリオスクレローシ
ス(Arteriosclerosis.)、、613頁、1985)
などにより血液中LDL濃度を低下させる試みが臨床的
にも広く活用されている。しかしながら薬剤を用いたば
あい、患者のタイプにより適応範囲が制限され全く薬効
を発現しないばあいもある。体外循環療法による治療の
ばあい、患者のタイプによる適応制限を受けず、確実に
血液中LDL濃度を低下させるが、長期的にみると動脈
硬化の発症予防や進展抑制という面では不完全性を有し
ている。
【0004】そこで本発明では、前記したアテローム性
動脈硬化の成因の1つと考えられている血小板の粘着・
凝集反応や平滑筋細胞との相互作用に着目した。動脈硬
化の成因3)の機構を抑制するためには、とくに血小板
由来の放出因子を積極的に吸着除去することが効果的で
あると以下の反応機構から判断した。血小板は、動脈硬
化に由来した血管壁異常により血管内壁がむき出しにな
ると、露出した血管内皮下組織のコラーゲン、ラミニ
ン、ビトロネクチン、フィブロネクチンやフォンビィル
ブラント因子(以下、vWfという)と速やかに結合す
る。この結合には、血小板膜上に存在する数種の糖タン
パク質が関与しており、血管内皮下組織との結合にはG
P160−IIIa、GPIa−IIa、GPIc−IIa
が、vWfとの結合にはGPIb−IX複合体が関与して
いる(クルメトソン、ケー ジェー(Clemetson, K.
J.)ら、プレートレッツ・イン・バイオロジィー・アン
ド・パソロジィーIII(Platelets in Biology and Path
ology III)、1〜36頁、エルセビア、アムステルダ
ム(Elsevier, Amsterdam)、1987)。
【0005】とくにvWfとの結合のシグナルは速やか
に血小板内へ情報伝達され、血小板は活性化される。そ
の結果、活性化された血小板の濃染顆粒からATP、A
DP、セロトニンおよび/またはカルシウムなどの放出
因子が放出される。GPIb−IX複合体との結合や濃染
顆粒からの放出因子に反応し、さらにGPIIb−IIIa
の高次構造変化が起こり、これまでは血液中では結合で
きなかったフィブリノーゲンや液相中に存在するフィブ
ロネクチン、ビトロネクチンやvWfと結合可能にな
り、これらタンパク質を介して血小板同士が結合する。
さらに血小板のα顆粒からは、血小板第4因子(以下、
PF4という)、βトロンボグロブリン(以下、βTG
という)、血小板由来増殖因子、トロンボスポンジン、
フィブロネクチン、フィブリノーゲン、第V因子、vW
fなどが放出され、血小板同士の結合を強め血小板凝集
へと移行することが明らかになっている(スズキ、エイ
チ(Suzuki, H.)ら、ヒストケミストリー(Histochemi
stry)、94、337および344頁、1990、スズ
キ、エイチら、ブラッド(Blood)、71、1310〜
1320頁、1988)。
【0006】実際、虚血性心疾患、虚血性脳疾患、閉塞
性動脈硬化症にて血小板機能が亢進していることが報告
され、虚血性心疾患のばあい、血小板凝集能の亢進やβ
TGの血液中濃度の上昇が認められ、また虚血性脳疾患
のばあい、血小板粘着能や凝集能の亢進、βTGやPF
4の血液中濃度の上昇が報告されている(フィッシャ
ー、エム(Fisher, M.)ら、アーチブス・オブ・ニュー
ロロジィ(Arch. Neurol.)、39、692〜695
頁、1982)。また閉塞性動脈硬化症においても血小
板凝集能の亢進(オルコット、シー IV(Olcott, C. I
V)ら、ジャーナル・オブ・サージカル・リサーチ(J.
Surg. Res.)、24、343〜346頁、1978)や
βTGの血液中濃度の上昇が報告されている(ボッゼン
タ、エー(Bodzenta, A.)ら、ホリア・ヘマトル・レイ
プジック(Folia Haematol. Leipzig.)、115、47
9〜482頁、1988)。そこで本発明者らは、とく
に血球細胞および血管構成細胞由来の放出因子を効率的
に吸着除去することの重要性に着目した。ところが現状
ではβTGやPF4は、これまでに血小板活性化の指標
としては種々の評価が行なわれているが、前記したよう
に放出因子と動脈硬化症の関係に着目し、放出因子を積
極的に直接血液中から吸着除去しようとする試みは行な
われていない。
【0007】[多臓器障害と顆粒球エラスターゼ]外傷
後の多臓器障害の発症と白血球からの放出因子である顆
粒球エラスターゼとの関係が注目されている(ニュイチ
ンク、ジェー ケー エス(Nuytinck, J.k. s.)ら、
アーチブス・オブ・サージェリー(Arch. Surg.)、
21、886〜890頁、1986)。顆粒球から放出
される顆粒球エラスターゼは、白血球が持つアズール顆
粒中の分子量30000〜38000の中性プロテアー
ゼの一種である。本酵素の基質にはエラスチン(ジャノ
フ、エー(Janoff, A.)ら、ジャーナル・オブ・エクス
ペリメンタル・メディシン(J. Exp. Med.)、128
1137頁、1968)、コラーゲン(ガデック、ジェ
ー イー(Gadek, J.E.)ら、バイオケミカル・アンド
・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ
(Biochem. Biophys. Res. Commun.)、95、1815
頁、1980)、プロテオグリカン(スターキィ、ピー
(Starkey, P.)ら、バイオケミカル・バイオフィジカ
ル・アクタ(Biochem. Biophys. Acta.)、483、3
86頁、1977)、フィブロネクチン(マクドナル
ド、ジェー エー(McDonald, J. A.)ら、ジャーナル
・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Che
m.)、255、8848頁、1980)、補体、免疫グ
ロブリン(ホールズ、ジェーディ(Folds, J. D.)ら、
ラボラトリー・インベスティゲーション(Lab. Inves
t.)、39、313頁、1978)、血液凝固因子(ジ
ョクム、エム(Jochum, M.)ら、フィジオロジカル・ケ
ミストリー(Physiol. Chem.)、362、103頁、1
981)などがあり、これらのタンパク質の分解、不活
化を行っている。補体に関しては活性化と同時に、アナ
フィラトキシンとして知られているC3aおよびC5a
を分解することにより炎症部位への白血球の遊走を抑制
している(ブロンザ、ジェー ピー(Bronza, J. P.)
ら、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲー
ション(J. Clin. Invest.)、60、1280頁、19
77)。さらに顆粒球エラスターゼは、PF4によりそ
の機能がさらに増幅されることが明らかにされている
(レイリー、シー エフ(Reilly, C. F.)ら、フィジ
オロジカル・ケミストリー(Physiol. Chem.)、36
、1131頁、1984)。
【0008】前記のように顆粒球エラスターゼは多岐に
渡る機能発現を有しているために、血液中濃度の上昇に
より種々の生体反応が助長される。一方で、プロテアー
ゼインヒビターを使用し顆粒球エラスターゼ活性を抑制
することにより、多臓器障害への移行を抑制する可能性
を示した報告がなされ(添田耕司ら、外科治療、58
No.4、475〜476頁、1988)、高濃度に上昇
した血液中顆粒球エラスターゼを除去し、血液中濃度を
低下させることにより多臓器障害への移行を抑制する試
みも行なわれている。このように血液中の顆粒球エラス
ターゼを除去することの重要性がクローズアップされる
ようになってきたが、吸着体を用いて直接血液中から積
極的に吸着除去する試みは行なわれていない。
【0009】[異物接触と血球細胞由来の放出因子]近
年、人工血管、人工心臓、カテーテル、人工肺、血液浄
化膜、吸着体、血液回路などに代表される種々の合成高
分子材料を用いた医療用具が開発され臨床応用されてい
る。このような医療用具は、血液と直接接触するため、
程度の差はあるものの、材質や形状などにより、タンパ
ク質の吸着、血液凝固系、血球細胞(白血球、血小板)
系、補体や線溶系などの活性化や不活化などの様々な生
体反応を引き起こす。
【0010】とくに血球細胞の活性化にともなう放出因
子は、血液が医療用具と接触することにより血中に放出
され、種々の生体反応を引き起こすことが知られてい
る。放出因子の血中濃度が上昇することは決して好まし
くなく、さらに濃度が高い状態で体内に再び返血するこ
とは避けるべきである。
【0011】活性化にともない放出因子を放出する細胞
としては、血小板や白血球が代表的であり、とくに血小
板はその活性化の段階に応じ、種々の放出因子を放出し
粘着から凝集反応へと移行する。このような血小板の粘
着や凝集反応は、主に外傷などにより出血した際におけ
る止血のための反応であり、体外循環による治療時など
異物接触が原因で高濃度の放出因子が放出されると、血
小板はそれに反応し血栓形成や血液凝固系の活性化など
を伴い、安定した体外循環による治療を困難にしたり、
通常濃度では存在しない放出因子が体内に入ることによ
り副反応を誘発する。
【0012】一方、白血球が活性化されると種々のサイ
トカインの産生や顆粒球エラスターゼなどの放出因子が
放出される。前記したように、顆粒球エラスターゼは、
種々の生体反応を引き起こす白血球由来の放出因子とし
て着目され始めた中性プロテアーゼの一種であり、白血
球が持つアズール顆粒中の分子量30000〜3800
0の中性プロテアーゼの一種である。このような放出因
子が、前記した医療用具との接触により活性化された白
血球より放出され、通常濃度では存在しない放出因子が
体内に入ることによりさまざまな副反応を誘発する。さ
らに血小板由来の放出因子との相乗効果により、その効
果はさらに増幅される。
【0013】このように血小板や白血球が、医療用具な
どの異物との接触により活性化され放出される種々の放
出因子は、止血反応の亢進や種々の生理活性を発現する
ことから体外循環時に血中濃度が上昇することは好まし
くない。また血中の放出因子濃度が高い状態で体外循環
処理を持続することは、局所的な血液の凝固や詰まりな
どを発生させる可能性が高く、所定時間安定的な体外循
環による血液処理を困難にしたり、各種生体反応を誘発
する高濃度の放出因子が再び体内に流入することなど安
全面からも避ける必要がある。
【0014】現在、血液と直接接触する医療用具のばあ
い、素材自体の抗血栓性や血液との接触部位に抗血栓性
を有した合成ポリマーの被覆やヘパリンなどの抗凝固剤
を固定化する方法など、血球細胞の付着や血液凝固系を
活性化しないという血液適合性を重視した研究開発は行
なわれているが、高い血液適合性を有した医療用具の開
発は不充分であり今後の開発に期待が寄せられている。
このように血球細胞を活性化させない研究開発は活発に
行なわれているが、異物との接触により活性化された血
球細胞由来の放出因子を積極的に吸着除去することによ
り、高濃度の放出因子が体内へ流入することを抑制した
り、体外循環を安定的に実施することを目的とした吸着
体、吸着除去装置および吸着除去方法は現時点では開発
されていない。
【0015】一方で血液を血漿分離したのちに血漿成分
のみを吸着体に接触させ、血中の放出因子を吸着する報
告がある(人工臓器、18(1)、331〜334頁、
1989)。この報告はデキストラン硫酸を固定化した
担体を充填した吸着体と血漿分離後の血漿を接触させた
結果であり、血漿を対象とした処理に限定されており、
血球細胞が全く接触しない条件での検討である。さらに
この報告は平均粒径が約70μmの担体を使用している
が、該粒径では血球細胞を含まない血漿成分のみを通過
させることは可能であるが、全血を通過させることは、
溶血や血小板の付着、活性化などを誘発することから更
に解決すべき問題を残している。しかもこの方法は分離
した血漿を血球細胞成分が多量に存在する血液成分と混
合したのちに、患者に返血しているため、最終的に血中
放出因子の吸着除去効果はほとんどえられていない。こ
の問題を解決するためには、放出因子の吸着能を有する
と同時に直接血液灌流にて血液を処理することが必要で
ある。しかしながら、その条件を同時に満たす吸着体の
開発は行なわれていない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明者らは、
前記した課題を解決するために、細胞、とくに血球細胞
および血管構成細胞、あるいはタンパク質の活性化や不
活性化などの過剰反応を引き起こしている放出因子(通
常、血液などの体液中にはほとんど存在していない)に
関して鋭意研究を重ねた結果、かかる疾病由来で非生理
的濃度にまで上昇している血球細胞および血管構成細胞
由来の放出因子、また異物接触により活性化され血球細
胞から放出されたかかる放出因子を直接血液灌流にて血
液中から効率よく急速に除去しうる吸着体、それを用い
る吸着除去装置および吸着除去方法をはじめて見出し、
本発明を完成するに至った。
【0017】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は血球
細胞および/または血管構成細胞由来の放出因子、とく
に、異物接触により活性化された血球細胞由来の放出因
子を含む血液を、ポリアニオン性化合物を固定化した水
不溶性担体に直接接触させて効率的に吸着除去すること
を特徴とする吸着体、該吸着体を収納した吸着部、血液
を該吸着部に流入させるための血液流入部、および該吸
着部に流入された血液を該吸着部外に流出させるための
血液流出部からなる、血球細胞および/または血管構成
細胞由来の放出因子の吸着除去装置、ならびに血球細胞
および/または血管構成細胞由来の放出因子を含む血液
を、前記吸着体に血漿分離することなく直接接触させ
て、血液中から前記放出因子を選択的に吸着除去するこ
とを特徴とする前記放出因子の吸着除去方法に関する。
【0018】前記吸着体において、前記放出因子が血球
細胞由来であるばあい、前記放出因子が、血球細胞が異
物接触により活性化され放出した血球細胞由来の放出因
子であるばあい、ポリアニオン性化合物が硫酸化多糖類
であるばあい、水不溶性担体が多孔質体であるばあい、
ポリアニオン性化合物の固定化量が水不溶性担体1ml
あたり0.02mg以上200mg以下であるばあい、
水不溶性担体が平均粒径80μm以上5000μm以下
の粒子状の担体であるばあい、水不溶性担体の80容量
%以上の粒子の粒径が平均粒径の±75%以内に分布し
ているばあい、水不溶性担体が平均粒径80μm以上5
000μm以下の粒子状の担体であって、該担体の80
容量%以上の粒子の粒径が平均粒径の±75%以内に分
布しているばあいが好ましい。
【0019】前記吸着除去方法において、該装置を他の
血液処理用具の血液出口側に設置し、該装置の血液出口
側から患者の返血部までの間には、他の血液処理用具を
設置しないことを特徴とする方法であるばあいが好まし
い。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明に用いるのに適した水不溶
性担体は、1)耐圧性であること、2)比較的大きな径
の細孔を有することが必要であることから、ポリマーハ
ードゲルが好ましい。
【0021】ここでいうハードゲルとは、デキストラ
ン、アガロース、アクリルアミドなどのソフトゲルに比
較し、溶媒による膨潤が少なく、また圧力により容易に
変形しにくいゲルのことをいう。ハードゲルとソフトゲ
ルは以下の方法により区別することができる。すなわち
ゲルを両端に孔径15μmのフィルターを装着したガラ
ス製円筒状カラム(内径9mm、カラム長150mm)
に均一に充填し、水性液体を流した際の圧力損失と流量
の関係が、ハードゲルではほぼ直線となるのに対し、ソ
フトゲルでは圧力がある点を超えるとゲルが変形し圧密
化して流量が増加しなくなる。本発明では、前記したカ
ラムを用いたばあい、少なくとも0.3kg/cm2
で前記直線関係のあるものをハードゲルと称する。
【0022】つぎに要求される性質は比較的大きな径の
細孔を有することである。細孔径の測定法には種々あ
り、水銀圧入法が最もよく用いられているが、ポリマー
ハードゲルのばあいには適用できないことがある。した
がって細孔径の目安として排除限界分子量を用いるのが
適当である。排除限界分子量とは成書(たとえば波多野
博行ら、実験高速クロマトグラフ、化学同人)などに述
べられているごとく、ゲル浸透クロマトグラフィーにお
いて細孔内に侵入できない(排除される)分子のうち最
も小さい分子量をもつものの分子量をいう。現象的に
は、排除限界分子量以上の分子は移動相体積V0近傍に
溶出されることから、種々の分子量の化合物を用いて溶
出体積との関係を調べれば排除限界分子量を求めること
ができる。排除限界分子量は対象とする化合物の種類に
より異なることが知られており、一般に球状タンパク
質、デキストラン、ポリエチレングリコールなどについ
てよく調べられているが、種々の放出因子についてはほ
とんど調べられていない。したがって最も類似している
球状タンパク質(ビールスを含む)を用いてえられた値
を用いるのが適当である。
【0023】本発明に用いる担体の好ましい排除限界分
子量は1万以上であり、最も好ましくは3万以上であ
る。
【0024】担体の多孔構造については表面多孔性より
も全多孔性が好ましく、空孔容積率が20%以上である
ことが好ましい。担体の形状は、粒状、繊維状、膜状、
ホローファイバー状など任意の形状を選ぶことができ
る。粒子状の担体を用いるばあい、下限平均粒径が80
μm未満では個体差により、直接血液灌流が困難になる
ばあいが生じる。また吸着除去の対象としている放出因
子は活性化に伴い前記した各種生体反応を引き起こすレ
ベルまで上昇しても、その血中濃度は比較的低いために
粒径はさほど小さくなくてもよい。そこでその平均粒径
は80μm以上5000μm以下が好ましく、安定した
直接血液灌流の実施および吸着性能面から100μm以
上1000μm以下がより好ましい。とくに好ましくは
120μm以上800μm以下である。また直接血液灌
流を安定的に行ない、かつ不用意に血球細胞を活性化し
放出因子を放出させないという意味からも、粒子の平均
粒径分布を限定することは本発明のばあい重要である。
平均粒径分布は広すぎると血球細胞の付着や活性化など
を誘発し、分布が狭いと乱流などによる物理的な付着や
活性化は抑制傾向を示す。そこで本発明では80容量%
以上の粒子の粒径が平均粒径の±75%以内に分布して
いることが好ましく、さらに該吸着装置自体による血球
細胞の活性化を抑制し、血中の血球細胞および/または
血管構成細胞由来の放出因子を効率的に吸着除去するた
めには、±50%以内に分布していることがより好まし
い。とくに好ましくは±25%以内に分布している。
【0025】さらに担体表面には固定化反応に用いうる
官能基あるいは容易に活性化しうる官能基が存在してい
ることが望ましい。これらの官能基の代表例としては、
アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール
基、酸無水物基、サクシニルイミド基、塩素原子、アル
デヒド基、アミド基、エポキシ基などがあげられる。
【0026】本発明に適した担体はアガロース、デキス
トラン、ポリアクリルアミドなどの軟質担体を用いても
よいが、より好ましくはポリマーハードゲルである。ポ
リマーハードゲルの代表例としては、ポリメチルメタク
リレート、ポリビニルアルコール、スチレン−ジビニル
ベンゼン共重合体、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポ
リアクリレート、架橋されたビニルエーテル−無水マレ
イン酸共重合体、架橋されたスチレン−無水マレイン酸
共重合体、架橋ポリアミドなどの合成高分子化合物やセ
ルロースなどの天然高分子化合物を原料とする硬質多孔
体、多孔質ガラス、多孔質シリカゲルなどの無機多孔質
体およびこれらの表面に多糖類、合成高分子などをコー
ティングしたものなどがあげられる。これらのポリマー
ハードゲルは単独で用いてもよいし2種類以上混合して
用いてもよい。しかしながら、本発明はこれらのみに限
定されるものではない。
【0027】本発明に用いるポリアニオン性化合物と
は、化合物1分子内に複数のアニオン性官能基を有する
ものを意味し、本発明に用いるのに適した硫酸化多糖類
の代表例としてはヘパリン、デキストラン硫酸、コンド
ロイチン硫酸、コンドロイチンポリ硫酸、ヘパラン硫
酸、ケラタン硫酸、ヘパリチン硫酸、キシラン硫酸、カ
ロニン硫酸、キチン硫酸、キトサン硫酸、セルロース硫
酸、アガロース硫酸、アガロペクチン硫酸、ペクチン硫
酸、イヌリン硫酸、アルギン酸硫酸、グリコーゲン硫
酸、ポリラクトース硫酸、カラゲニン硫酸、デンプン硫
酸、ポリグルコース硫酸、ラミナリン硫酸、ガラクタン
硫酸、レバン硫酸、メペサルフェートなどの硫酸化多糖
類、ポリビニルアルコール硫酸、ポリリン酸などがあげ
られる。また、これらのカリウム塩、ナトリウム塩も使
用できる。最も好ましい例としては、ヘパリン、デキス
トラン硫酸およびコンドロイチンポリ硫酸があげられ
る。しかしながら、本発明はこれらのみに限定されるも
のではない。
【0028】硫酸化多糖類を担体に固定化する方法とし
ては既知の種々の方法を用いることができる。すなわち
物理的吸着法、イオン結合法、共有結合法などである。
本発明による吸着体または吸着除去装置を治療に用いる
ばあいには、滅菌時あるいは治療中にリガンドが脱離し
ないことが重要であるので、結合の強固な共有結合法が
望ましく、イオン結合法を用いるにしてもリガンドを共
有結合的に架橋しておくことが望ましい。また必要によ
りスペーサーを担体とリガンドの間に導入してもよい。
【0029】リガンドの固定化量は、リガンドの性状、
活性により異なるが、水不溶性担体1m1あたり0.0
2mg〜200mgが好ましく、0.1〜100mgが
より好ましい。とくに好ましくは水不溶性担体1m1あ
たり0.5〜40mgである。
【0030】本明細書でいう放出因子とは、セロトニ
ン、ヒスタミンなどの生理活性アミンや血小板第4因子
(PF4)、βトロンボグロブリン(βTG)、血小板
由来増殖因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子
(bFGF)などの塩基性ポリペプチド、およびトロン
ボスポンジン、フィブロネクチン、EGF(上皮細胞増
殖因子)などヘパリンと親和性を有するタンパク質、顆
粒球エラスターゼなどの中性プロテアーゼを指し、好ま
しくはPF4、βTGおよび顆粒球エラスターゼを指す
が、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0031】さらに、本明細書でいう血球細胞が異物接
触により活性化され放出した血球細胞由来の放出因子と
は、セロトニン、ヒスタミンなどの生理活性アミンや血
小板第4因子(PF4)、βトロンボグロブリン(βT
G)などの塩基性ポリペプチドおよびトロンボスポンジ
ン、フィブロネクチンなどヘパリンと親和性を有するタ
ンパク質、顆粒球エラスターゼなどの中性プロテアーゼ
を指し、好ましくはPF4、βTGおよび顆粒球エラス
ターゼを指すが、これらのみに限定されるものではな
い。
【0032】また血球細胞の代表例としては、赤血球、
白血球および血小板などの血液中に存在する血球細胞が
あげられる。また血管構成細胞とは血管内皮細胞、平滑
筋細胞、線維芽細胞などがあげられるが、本発明はこれ
らのみに限定されるものではない。
【0033】本発明による吸着体または吸着除去装置を
治療に用いるには種々の方法がある。最も簡便な方法と
しては患者の血液を体外に導出して血液バッグなどに貯
め、これに本発明の吸着体を混合して放出因子を除去
し、フィルターを通して吸着体を除去し血液を患者に戻
す方法がある。この方法は複雑な装置を必要としない
が、1回の処理量が少なく治療に時間を要し、操作が煩
雑になるという欠点を有する。また血球細胞および血管
構成細胞の活性化にともなう放出因子を含む血液を本発
明による吸着体と接触させることにより該血液より放出
因子を吸着除去することができる。つぎの方法は吸着体
をカラムに充填し、体外循環回路に組み込みオンライン
で吸着除去を行なうものである。体外循環により血液中
の放出因子を取り除くばあいには、該吸着体を血液の入
口と出口を有する容器に充填し、体外循環回路に組み込
んで該容器に血液を流通させる方法が操作性、除去効率
の面で好ましい。処理方法には全血を直接灌流する方法
と、血液から血漿を分離したのち、血漿をカラムに通す
方法がある。本発明による吸着体または吸着除去装置
は、何れの方法にも用いることができるが、オンライン
処理に最も適している。さらに本発明の吸着除去装置の
設置場所は、他の血液処理用具の血液出口側に設定し、
本発明の吸着除去装置の血液出口側から患者の返血部ま
での間には、他の血液処理用具を設置しない方法が最も
適している。
【0034】以下に実施例にもとづいて本発明の血球細
胞および血管構成細胞からの放出因子の除去方法をさら
に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定
されるものではない。
【0035】実施例1 多孔質セルロースゲル(チッソ(株)製、平均粒径20
0μm、80容量%以上の粒子が平均粒径の±20%以
内のもの、排除限界分子量1.0×107)を沈降体積
で20ml分取し、20mlの逆浸透水(RO水、ヤマ
ト ピュア ライン アールオー 21(Yamato
Pure Line RO 21)、ヤマト科学
(株)製)を加え内温を40℃に昇温した。そこに2M
NaOHを11ml添加し、40℃にて30分間振盪
した。つぎにエピクロルヒドリン3.6mlを添加し、
40℃にて2時間反応させた。反応終了後、約2LのR
O水にてゲルの洗浄を行ないエポキシ化ゲルをえた。導
入されたエポキシ基の量は13μmol/gであった。
【0036】エポキシ化ゲルを沈降体積で15ml分取
し、そこにデキストラン硫酸(分子量約2,000)1
0.5gを逆浸透水19mlに溶解してえられた溶液を
添加し撹拌を行なった。つぎに2NのNaOHでpHを
10に合わせたのちに、45℃にて24時間反応を行な
い、デキストラン硫酸の固定化を行なった。
【0037】モノエタノールアミン115μlにRO水
を添加し、全量を3.3mlにした。本溶液をさきでえ
られたデキストラン硫酸固定化ゲル(沈降体積15m
l)に添加し、さらに23mlのRO水を加えた。45
℃にて2時間反応を行なうことにより未反応のエポキシ
基の開環反応を行ない吸着体をえた。なおデキストラン
硫酸の固定化量は、2.60mg/ml(ゲル沈降体
積)であった。
【0038】実施例2 [吸着実験]実施例1で作製したデキストラン硫酸固定
化ゲルを生理食塩水で洗浄、平衡化した。ゲルの脱泡を
行なったのち、沈降体積で1mlの前記ゲルをポリプロ
ピレン製ミニカラム(内径9mm、高さ16mm:テル
モ社製)に充填した。カラム入口側にポリ塩化ビニル製
のチューブ(内径1mm、外径3mm、長さ1m)を装
着し、血液回路付きミニカラムをえた。
【0039】血液は抗凝固剤としてヘパリンを用い、健
常人より18Gの注射針を用い注意深く採血した。採取
した血液100mlを引き続きテフロン製三角フラスコ
(内容量100ml、サンワ(株)製)内に入れ、37
℃の恒温槽内にてスターラーチップにて低速で回転さ
せ、流速0.5ml/minでカラム内に通血を開始し
た。カラム出口側の血液を所定時間後一定量採取し、カ
ラム入口濃度と比較することにより吸着性能を評価し
た。
【0040】カラム通過後のPF4およびβTGの血中
濃度は、吸着体の出口側から血液が出てきた時点を通血
開始時点とし、通血開始後5分〜9分(以下、この時間
帯に採取した血液中の放出因子濃度を「7分値」とい
う)まで、および15分〜19分(以下、この時間帯に
採取した血液中の放出因子濃度を「17分値」という)
まで血液を連続的に採取したのち、高橋芳右らの方法
(血液と脈管、18(4)、326頁、1987)にし
たがい酵素免疫法にて求めた。また顆粒球エラスターゼ
に関しては、通血開始後11分〜13分(以下、この時
間帯に採取した血液中の放出因子濃度を「12分値」と
いう)まで、および21分〜23分(以下、この時間帯
に採取した血液中の放出因子濃度を「22分値」とい
う)まで血液を連続的に採取したのち、櫻林 郁之介ら
の方法(臨床病理、33(10)、1113頁 198
5)にしたがい酵素免疫法にて求めた。以下にそれぞれ
の測定に用いた方法を記載する。
【0041】[PF4の測定方法]抗PF4ウサギ抗体
を固定化したマルチプレート(固定化量0.6μg/ウ
エル、ベーリンガー・マンハイム(株)製)に、検体血
漿200μlを添加し室温で1時間静置することにより
検体中のPF4を結合させた。上清を除去し洗浄を行な
ったのちに抗PF4酵素標識抗体(抗PF4ペルオキシ
ダーゼ、濃度7.5μg/ml、ベーリンガー・マンハ
イム(株)製)を200μl添加し室温で1時間静置し
た。つぎに上清を除去し洗浄後、基質(オルトフェニレ
ンジアミン、濃度500μg/ml)を200μl添加
し、室温で約3分間発色反応を行ない、その吸光度を4
92nmでプレートリーダー(ER8000、三光純薬
製)にて測定を行なった。同時に測定した標準品(アセ
ラクロム PF4(ベーリンガー・マンハイム(株)
製))により検量線を作成し試料中のPF4濃度を求め
た。
【0042】[βTGの測定方法]抗βTG抗体を固定
化したマルチプレート(固定化量0.6μg/ウエル、
ベーリンガー・マンハイム(株)製)に、検体血漿20
0μlを添加し室温で1時間静置することにより検体中
のβTGを結合させた。上清を除去し洗浄を行なったの
ちに抗βTG酵素標識抗体(抗βTGペルオキシダー
ゼ、濃度5.0μg/ml、ベーリンガー・マンハイム
(株)製)を200μl添加し室温で1時間静置した。
つぎに上清を除去し洗浄後、基質(オルトフェニレンジ
アミン、濃度500μg/ml)を200μl添加し、
室温で約3分間発色反応を行ない、その吸光度を492
nmでプレートリーダー(ER8000、三光純薬製)
にて測定を行なった。同時に測定した標準品(アセラク
ロム βTG(ベーリンガー・マンハイム(株)製))
により検量線を作成し試料中のβTG濃度を求めた。
【0043】[顆粒球エラスターゼの測定方法]抗ヒト
顆粒球エラスターゼ抗体(固相抗体)を結合した96穴
プレートに、検体血漿を50μl添加し室温で1時間静
置した。1時間後、検体を除去し専用洗浄液300μl
で3回洗浄を行なったのち、酵素標識抗体液を50μl
添加した。室温で1時間静置後、洗浄を行ない基質液を
100μl添加し、室温で15分間酵素反応を行なっ
た。15分後反応停止液を100μl添加し、波長49
0nmにて吸光度測定(マイクロフロー分光光度計、C
L−750、島津製作所製)を行ない、顆粒球エラスタ
ーゼの標準物質(顆粒球エラスターゼの初期濃度3.2
ng/mlを専用希釈液にて順次倍数希釈を行ない調整
した溶液にて作成した検量線より検体中の顆粒球エラス
ターゼ濃度を求めた。
【0044】以上の測定は、血漿中顆粒球エラスターゼ
測定用キット 顆粒球エラスターゼEIA(三和化学研
究所(株)製)を用いて測定した。
【0045】参考例 カラムを結合しないポリ塩化ビニル製のチューブ(内径
1mm、外径3mm、長さ1m)のみを用い、実施例2
に記載した実験方法に準じ実施例1のカラム入口側の血
中濃度に相当する血中PF4、βTGおよび顆粒球エラ
スターゼ濃度を求めた。
【0046】[結果]検体(n=2)について測定した
結果を以下に示す。
【0047】PF4について 実施例1のカラム入口側の血中濃度に相当する参考例の
PF4濃度は、7分値で260ng/ml、17分値で
358ng/mlであったのに対し、実施例1の吸着体
通過後では、7分値で95ng/ml、17分値で11
3ng/mlにまで減少していた。表1にカラム入口側
および出口側のPF4濃度を示す。
【0048】βTGについて カラム入口側の血中濃度に相当する参考例のβTG濃度
は、7分値で288ng/ml、17分値で788ng
/mlであったのに対し、実施例1の吸着体通過後で
は、7分値で140ng/ml、17分値で151ng
/mlにまで減少していた。表2にカラム入口側および
出口側のβTG濃度を示す。
【0049】顆粒球エラスターゼについて カラム入口側の血中濃度に相当する参考例の顆粒球エラ
スターゼ濃度は、12分値で449ng/ml、22分
値で638ng/mlであったのに対し、実施例1の吸
着体通過後では、12分値で142ng/ml、22分
値で489ng/mlにまで減少していた。表3にカラ
ム入口側および出口側の顆粒球エラスターゼ濃度を示
す。
【0050】比較例1 放出因子の吸着に及ぼすリガンド(デキストラン硫酸)
の効果を検討するために、実施例1で作製した吸着体の
かわりに、リガンド未固定の多孔質セルロースゲル(チ
ッソ(株)製、平均粒径200μm、80容量%以上の
粒子が平均粒径の±20%以内、排除限界分子量1.0
×107)を沈降体積で1ml用いたこと以外は、実施
例2に記載した実験方法に準じ、ミニカラムを調製しカ
ラム出口側の血中PF4、βTGおよび顆粒球エラスタ
ーゼ濃度を求めた。
【0051】[結果]比較例1の吸着体通過後では、血
液中のPF4は、7分値で288ng/ml、17分値
で354ng/mlであった(表1参照)。βTG濃度
は、7分値で282ng/ml、17分値で678ng
/mlであった(表2参照)。また、顆粒球エラスター
ゼ濃度は、12分値で399ng/ml、22分値で6
45ng/ml(表3参照)であり、何れも実施例1の
吸着体通過後の値と比較し高値を示した。
【0052】比較例2 デキストラン硫酸固定化ゲルのかわりにポリヒドロキシ
エチルメタクリレートをコートした活性炭ゲル(クラレ
(株)製)を用いたこと以外は、実施例2に記載した実
験方法に準じ、ミニカラムを調製しカラム出口側の血中
PF4、βTGおよび顆粒球エラスターゼ濃度を求め
た。
【0053】[結果]比較例2の吸着体通過後では、血
液中のPF4濃度は、7分値で377ng/ml、17
分値で610ng/mlであった(表1参照)。βTG
濃度は、7分値で563ng/ml、17分値で717
ng/mlであった(表2参照)。また、顆粒球エラス
ターゼ濃度は、12分値で489ng/ml、22分値
で815ng/ml(表3参照)であり、何れも実施例
1の吸着体通過後の値と比較し高値を示した。
【0054】比較例3 実施例1と同様の方法で平均粒径70μmの多孔質セル
ロースゲル(チッソ(株)製)にデキストラン硫酸の固
定化を行なった。なおデキストラン硫酸の固定化量は
2.3mg/ml(ゲル沈降体積)であった。
【0055】実施例3および比較例4 [通血実験]実施例1で作製した平均粒径200μmの
多孔質セルロースゲルおよび比較例3で作製した平均粒
径70μmの多孔質セルロースゲルをそれぞれ充填した
ミニカラムを作製し、実施例2に記した実験系および実
験方法に準じ血小板の通過率を評価した(実験回数n=
2)。
【0056】血液がミニカラム出口側から流出してきた
時点を通血開始時とし、以降5分ごとにカラム出口側の
血液を所定量採取し、血液中の血小板数を血球カウンタ
ー(マイクロセル・カウンター(Microcell
Counter)CC−180、シスメックス(株)
製)にて測定し、以下の式にしたがい通過率を算出し
た。
【0057】
【数1】
【0058】その結果、平均粒径70μmの多孔質セル
ロースゲルを充填したミニカラムに対する血小板の通過
率は通血終了時の30分まで終始30%以下と低値を示
した。これに対し、平均粒径200μmの多孔質セルロ
ースゲルを充填したミニカラムに対する血小板の通過率
は、通血開始5分後に約60%であったがその後上昇
し、評価終了時の30分まで80%以上の通過率を示し
た。表4に各種吸着体に対する血小板の通過率を示す。
とくに後半20分以降では血小板の通過率は90%以上
の値を示した(表4参照)。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
【発明の効果】本発明の吸着体を用いれば、血球細胞お
よび血管構成細胞由来の放出因子を効率よくかつ迅速に
除去することができる。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリアニオン性化合物を固定化した水不
    溶性担体からなり、直接血液中から血球細胞および/ま
    たは血管構成細胞由来の放出因子を吸着除去することを
    特徴とする吸着体。
  2. 【請求項2】 前記放出因子が血球細胞由来である請求
    項1記載の吸着体。
  3. 【請求項3】 前記放出因子が、血球細胞が異物接触に
    より活性化され放出した血球細胞由来の放出因子である
    請求項1または2記載の吸着体。
  4. 【請求項4】 ポリアニオン性化合物が硫酸化多糖類で
    ある請求項1、2または3記載の吸着体。
  5. 【請求項5】 水不溶性担体が多孔質体である請求項
    1、2、3または4記載の吸着体。
  6. 【請求項6】 ポリアニオン性化合物の固定化量が水不
    溶性担体1mlあたり0.02mg以上200mg以下
    である請求項1、2、3、4または5記載の吸着体。
  7. 【請求項7】 水不溶性担体が平均粒径80μm以上5
    000μm以下の粒子状の担体である、請求項1、2、
    3、4、5または6記載の吸着体。
  8. 【請求項8】 水不溶性担体の80容量%以上の粒子の
    粒径が平均粒径の±75%以内に分布している請求項
    1、2、3、4、5、6または7記載の吸着体。
  9. 【請求項9】 水不溶性担体が平均粒径80μm以上5
    000μm以下の粒子状の担体であって、該担体の80
    容量%以上の粒子の粒径が平均粒径の±75%以内に分
    布している請求項1、2、3、4、5または6記載の吸
    着体。
  10. 【請求項10】 請求項1記載の吸着体を収納した吸着
    部、血液を該吸着部に流入させるための血液流入部、お
    よび該吸着部に流入された血液を該吸着部外に流出させ
    るための血液流出部からなる、血球細胞および/または
    血管構成細胞由来の放出因子の吸着除去装置。
  11. 【請求項11】 血球細胞および/または血管構成細胞
    由来の放出因子を含む血液を、請求項1記載の吸着体に
    血漿分離することなく直接接触させて、血液中から前記
    放出因子を選択的に吸着除去することを特徴とする前記
    放出因子の吸着除去方法。
  12. 【請求項12】 該装置を他の血液処理用具の血液出口
    側に設置し、該装置の血液出口側から患者の返血部まで
    の間には、他の血液処理用具を設置しないことを特徴と
    する請求項11記載の吸着除去方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004283604A (ja) * 1998-05-22 2004-10-14 M Rigdon Lentz 癌の治療のための方法および組成物
JP2006230459A (ja) * 2005-02-22 2006-09-07 Toyobo Co Ltd ポリスルホン系選択透過性中空糸膜束および血液浄化器
JP2010260052A (ja) * 2010-07-27 2010-11-18 Kuraray Medical Inc 血液成分回収用吸着材

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