JP3730386B2 - 体液処理用吸着体、体液処理方法及び体液処理器 - Google Patents

体液処理用吸着体、体液処理方法及び体液処理器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、体液処理用吸着体、体液処理方法及び体液処理器に関し、より詳細には、体液との接触において、体液中のプラスマキニンの発生が低減されたアニオン性基を有する体液処理用吸着体並びに処理体液中のプラスマキニンの発生を抑止する体液処理方法及び体液処理器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、体外循環による血液浄化療法の目覚ましい発展により、さまざまな素材からなる透析膜や吸着体等が医療用具に活用されている。これら医療用具の中で、特に血液と接触する部位にアニオン性に富んだ素材を使用したものの場合、処理した血液中のプラスマキニン濃度が著しく上昇することが明らかになってきた[シー・ティエルマンスら(C.Tielemans et al.)、Kidney Int.,38,982 1990年]。
【0003】
プラスマキニンの1種であるブラジキニンは、血中半減期が約15秒と非常に短いため、通常では早期に分解され血中濃度は低下するが、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(以下ACE阻害剤と略す)服用の場合、血中ブラジキニンの分解は抑制され、高濃度状態が維持される。
プラスマキニンは、強力な血管拡張作用、血管透過性亢進作用等を有していることが知られている(日本臨床、48巻、広範囲血液・尿化学検査、免疫学的検査(下巻)1990年増刊)。このため、プラスマキニンの血中濃度が高くなると急激な血圧低下やめまい等の症状を引き起こすことが予想される。実際、ACE阻害剤服用時にアニオン性の透析膜を使用すると、患者は急激な血圧低下やめまい等のアナフィラキシー様のショック症状を示すことが報告されている[ルク・ベレセンら、ランチェット(Luc Verresen et al.,LANCET)、DEC 1、336巻、1360、1990年]。
【0004】
現在、透析膜や吸着体等の血液との接触部にアニオン又はポリアニオンを保持したままで処理血中のプラスマキニンの発生を抑止する方法としては、抗凝固剤であるメシル酸ナファモスタット(フサン(鳥居薬品社製))を患者の血液中に直接注入する方法等による回避策が取られている。
しかしながら、フサンの適応疾患の範囲が限定されていることや、フサンがアニオン又はポリアニオンを有する吸着体に吸着しやすいこと、更には、使用説明書等によりすでにフサンの使用禁止となっている吸着体も存在する(秋滓忠男ら著、臨床透析、15:1855、1989年;幾高敏晴ら著、医薬の門、30(3):161〜165、1990年;大村誠ら著、薬理と臨床、5(7)、1059〜1062、1995年)こと等から、血中プラスマキニン発生に関する回避策としては不充分であった。
【0005】
また、他の回避策として医療用具素材のアニオン又はポリアニオンの固定化量を規定することにより、処理血液中のブラジキニンの発生を抑制する方法も考えられるが、しかし、静電的な相互作用を活用し病因物質を吸着する吸着体の場合、吸着性能が不充分となり実用に耐えない。従って、現在までに吸着性能を発揮するのに必要な充分量のアニオン又はポリアニオンを有しつつ、処理体液中のプラスマキニンの発生を抑止することができる体液処理用吸着体はなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、吸着性能を発揮するのに必要な充分量のアニオン性基を有する体液処理用吸着体であって、吸着処理した体液中におけるプラスマキニンの発生を抑止することができる吸着体、それを用いた体液処理方法、体液処理器を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アニオン性基を有する水不溶性担体からなる体液処理用吸着体であって、排除限界分子量が、50000未満である体液処理用吸着体、及び、体液処理用吸着体と体液とを接触させて上記体液を処理する体液処理方法である。
また、本発明は、上記体液処理用吸着体を収納した吸着体収納部、体液を吸着体収納部に流入させるための体液流入部及び吸着体収納部に流入した体液を吸着体収納部外に流出させるための体液流出部からなる体液処理器でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、アニオン性化合物又はポリアニオン性化合物よりなる種々の排除限界分子量を有した多孔質担体からなる吸着体を作製し、血液と接触させたときの血中ブラジキニン濃度を調べた。その結果、多孔質担体の排除限界分子量を50000未満にすることにより、かかる吸着体に血液が接触しても血中ブラジキニン濃度の上昇を大幅に削減しうることを見出した。
即ち、本発明の体液処理用吸着体は、アニオン性基を有する水不溶性担体からなり、排除限界分子量が、50000未満のものである。
【0009】
本明細書中、排除限界分子量とは、例えば、「実験高速液体クロマトグラフィ」(波多野博行、花井俊彦著、化学同人発行)等の成書に記載されているように、ゲル浸透クロマトグラフィにおいて細孔内に侵入できない分子、即ち、排除される分子のうち最も小さい分子量を有するものの分子量をいう。
現象的には、排除限界分子量以上の分子は、移動相体積V0 近傍に溶出されることから、種々の分子量の化合物を用いて溶出体積との関係を調べれば、排除限界分子量を求めることができる。
【0010】
上記排除限界分子量は、対象とする化合物の種類により異なることが知られており、一般に、球状タンパク質、デキストラン、ポリエチレングリコール等についてよく調べられているが、対象とする被吸着物質ともっとも類似しているタンパク質を用いるのが適当である。
【0011】
本発明の体液処理用吸着体の排除限界分子量が50000を超えると、プラスマキニン発生の引きがねになる血液凝固に関わる蛋白質の吸着体内への侵入を抑制できなくなるため、上記範囲に限定される。好ましくは、プラスマキニンの前駆物質である高分子キニノーゲンが吸着体内部へ侵入するのを抑制することができるので、45000未満であり、より好ましくは、低分子キニノーゲンの侵入をも抑制することができるので、40000以下である。
【0012】
本発明の体液処理用吸着体は、アニオン性基を有する水不溶性担体からなる。上記アニオン性基としては、体液処理時にアニオン化する官能基であれば特に限定されず、アニオン性基であってもポリアニオン性基であってもよく、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、硫酸エステル基、リン酸基等が挙げられる。
上記アニオン性基を有する水不溶性担体は、上記アニオン性基を有するアニオン性化合物又はポリアニオン性化合物自体を構成素材としてなるものであってもよい。このようなものとしては、例えば、架橋されたビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、架橋されたスチレン−無水マレイン酸共重合体等からなる合成高分子化合物やデキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、セルロース硫酸、アガロース硫酸、キトサン硫酸等の硫酸化多糖類の架橋体等を挙げることができる。
【0013】
また、上記アニオン性基を有するアニオン性化合物又はポリアニオン性化合物を水不溶性担体に固定化してなるものであってもよい。
【0014】
上記アニオン性基を有する化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマー等であってよく、例えば、リン酸基、スルフォン基、硫酸基、カルボキシル基等のアニオン性官能基を有する合成高分子材料やデキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、コンドロイチンポリ硫酸、ヘパラン硫酸、ケタラン硫酸、キチン硫酸、キトサン硫酸、セルロース硫酸、アガロース硫酸等の硫酸化多糖類、ポリビニルアルコール硫酸、ポリリン酸等を挙げることができる。
【0015】
上記固定化方法としては特に限定されず、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、物理的吸着法、イオン結合法、共有結合法、酸やアルカリ等で化学的処理を行う方法、熱処理、加水分解、放射線やプラズマ処理によりグラフト鎖を導入する方法等が挙げられる。
【0016】
上記アニオン性基を有するアニオン性化合物又はポリアニオン性化合物は、水不溶性担体に直接結合して固定化されていてもよいし、スペーサー等を介して結合して固定化されていてもよい。
【0017】
本発明においては、上記ポリアニオン性化合物は、分子量が500〜100万で、イオン交換容量が0.5〜1000μeq/mlのものであることが好ましい。分子量が500未満であると、被吸着物質の選択性や吸着容量の低下が起こり、また100万を超えると、導入量や結合の安定性の低下につながる。
また、イオン交換容量が0.5μeq/ml未満であると、ブラジキニンの発生は低くなるが、同時に被吸着物質の吸着量が低下し、1000μeq/mlを超えると、血中のカルシウムイオンやマグネシウムイオン等の陽イオンの吸着が著しくなる。より好ましくは、被吸着物質との親和性の向上及び過剰のブラジキニン産生を抑止する点から、ポリアニオン性化合物は、分子量が800〜50万で、イオン交換容量が0.5〜800μeq/mlのものであり、更に好ましくは、ポリアニオン性化合物の導入量を増加させ、かつ、被吸着物質の選択性(非特異吸着を抑止する)を発現し、充分なブラジキニン抑止効果を発現する点から、ポリアニオン性化合物は、分子量が1000〜5万でイオン交換容量が0.5〜600μeq/mlのものである。
【0018】
上記アニオン性化合物を担体に固定化する場合のアニオン性化合物のイオン交換容量は、0.1〜1000μeq/mlのものであることが好ましい。0.1μeq/ml未満であると、ブラジキニン産生は低くなるが被吸着物質の吸着量が低下し、1000μeq/mlを超えると、血中陽イオンの吸着や吸着体表面との接触により産生されるブラジキニン量が著しく高くなる。より好ましくは、過剰のブラジキニン産生を抑止する点から、0.1〜800μeq/mlのものであり、更に好ましくは、血液成分の非特異吸着等を抑止する点から、0.1〜600μeq/mlのものである。
【0019】
上記水不溶性担体としては特に限定されず、例えば、無機担体;合成高分子又は多糖類からなる有機担体;有機担体及び無機担体のうち少なくとも1種からなる複合担体等が挙げられるが、タンパク質等の生体成分の非特異吸着が少ないものが好ましい。また、上記アニオン性基を有するアニオン性化合物又はポリアニオン性化合物を固定化するためには、水不溶性担体表面に、固定化反応に用いることのできる官能基又は容易に活性化しうる官能基が存在しているものが好ましい。このような官能基としては、例えば、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、チオール基、アルデヒド基、ハロゲン基、酸無水物基、サクシニルイミド基、アミド基、エステル基、エポキシ基及びシラノール基等が挙げられる。
【0020】
上記水不溶性担体としては、具体的には、例えば、架橋アガロース、架橋デキストラン、架橋セルロース、結晶性セルロース、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、架橋キチン、架橋キトサン等の多糖類からなる水不溶性担体;スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリアクリレート、架橋ポリアミド、ポリメチルメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン等の合成高分子化合物からなる水不溶性担体;ガラスビーズ、シリカゲル等の無機担体;ガラスビーズ等の無機担体表面を多糖類又は高分子化合物で被覆した有機−無機複合担体;合成高分子化合物からなる有機担体表面を多糖類で被覆した有機−無機複合担体等が挙げられる。
【0021】
本発明においては、上記水不溶性担体の微細構造は、多孔質又は非多孔質のいずれであってもよいが、単位体積あたりの高い吸着能を得るためには、比表面積が大きいこと、即ち、多孔質、特に全多孔質であることが好ましい。
本明細書中、多孔質とは、細孔容積がみかけの水不溶性担体の容積の20%以上で、比表面積が3m2 /g以上であることを意味する。これらの条件を満たさないものは、吸着容量が小さく実用に耐えない。
【0022】
このような多孔質水不溶性担体としては特に限定されず、例えば、多孔質セルロース担体、多孔質キトサン担体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、架橋ポリアクリレート、架橋ポリビニルアルコール等からなるビニル系多孔質体及びガラス、シリカ、アルミナなどからなる無機多孔質体等が挙げられる。
【0023】
本発明の体液処理用吸着体の形状としては特に限定されず、例えば、粒状、粒子の集合体、繊維状、膜状、フォローファイバー状等が挙げられる。
【0024】
本発明の体液処理方法は、上記吸着体と体液とを接触させて上記体液を処理するものである。
本発明においては、ポリアニオン性化合物よりなる多孔質水不溶性担体からなる吸着体の排除限界分子量を、50000未満にすることによって、又は、アニオン性化合物又はポリアニオン性化合物を固定化してなる多孔質水不溶性担体からなる吸着体の排除限界分子量を、50000未満にすることによって、上記吸着体で処理した体液中のプラスマキニンの発生を抑止することができる。
【0025】
本発明の体液処理用吸着体は、血液、血清、血漿及びそれらの希釈液、これらの液に血球除去や血清蛋白質除去等の前処理を施した溶液等の体液に接触させて、病因物質を除去するために用いることができる。具体的には、血球細胞由来の放出因子であるセロトニン、ヒスタミン等の生理活性アミン;血小板第4因子(PF4)、βトロンボグロブリン(βTG)、血小板由来増殖因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)等の塩基性ポリペプチド;トロンボスポンジン、EGF(上皮細胞増殖因子)等のヘパリンと親和性を有するタンパク質;顆粒球エラスターゼ等の中性プロテアーゼ、インターロイキン1α、インターロイキン1β、インターロイキン2、インターロイキン6、インターロイキン8、癌細胞壊死因子(TNF−α)等の各種サイトカイン類;C3a、C4a、C5a等の活性化補体成分;エンドトキシン等の成分を吸着除去する治療用の体液処理用吸着体として用いることができる。また、これらの体液の分析用の体液処理用吸着体として用いることもできる。
【0026】
本発明の体液処理用吸着体を治療に用いるには種々の方法がある。最も簡便な方法としては、患者の血液を体外に導き出して血液バッグ等に貯め、これに本発明の体液処理用吸着体を混合して病因物質を除去したのち、フィルターを通して上記吸着体を除去して血液を患者に戻す方法がある。この方法は、複雑な装置を必要としないが、1回の処理量が少なく治療に時間を要し、操作が煩雑になるという欠点を有している。
【0027】
他の方法としては、本発明の体液処理用吸着体をカラム等に充填し、体外循環回路に組み込み、オンラインで血液処理を行う方法がある。処理方法には全血を直接灌流する方法と、血液から血漿を分離した後に処理する方法がある。
上記全血を直接灌流する方法としては、直接血液灌流方式の体液処理器を用いる場合や透析用の膜に上述のアニオン性化合物又はポリアニオン性化合物を固定化し、透析と同時に吸着も行えるようにする場合等にも用いることができる。
また、上記血液から血漿を分離した後に処理する方法としては、血漿分離膜にて血漿を分離した後に血漿成分を吸着体に通過させる体液処理器等が挙げられるが、本発明の体液処理用吸着体及びそれを用いた体液処理器は、いずれの方法にも用いることができる。
【0028】
本発明の体液処理器は、本発明の体液処理用吸着体を収納した吸着体収納部、体液を吸着体収納部に流入させるための体液流入部及び吸着体収納部に流入された体液を吸着体収納部外に流出させるための体液流出部からなる。
この場合、上記水不溶性担体は、硬質であるものが好ましい。本明細書中、硬質とは、上記水不溶性担体からなる体液処理用吸着体を円筒状カラム等に均一に充填し、血液、血清、血漿及びそれらの希釈液、これらの液に血球除去や血清蛋白質除去等の前処理を施した溶液等の体液を流した際に、担体の変形等により圧密が起こらない程度の堅さをいう。本発明の体液処理用吸着体をカラムに充填し、体外循環回路に組み込み、オンラインで治療する際に吸着体の圧密化が生じると、充分な体液流量が得られなくなり治療時間が延長され、更には、治療続行不可能となりうるので吸着体の圧密化を防ぐためには、充分な機械的強度を有する吸着体であること、即ち、上記水不溶性担体が硬質であることが好ましい。
また、処理器には、本発明の体液処理用吸着体は通過できないフィルターを有していてもよい。
【0029】
【実施例】
以下に本発明の実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0030】
実施例1
表面にスキン(緻密)層を有する多孔質セルロース担体(鐘淵化学工業社製、平均粒径450μm、排除限界分子量 約2.2×104 )を沈降体積で20ml分取し、20mlの逆浸透水(RO水、ヤマト ピュア ライン アールオー21(Yamato Pure Line RO 21)、ヤマト科学社製)を加え、内温を40℃に昇温した。そこに2M NaOHを11ml添加し、40℃にて30分間振盪した。つぎにエピクロルヒドリン3.6mlを添加し、40℃にて2時間反応させた。反応終了後、約2Lの逆浸透水にて担体の洗浄を行いエポキシ化担体を得た。導入されたエポキシ基の量は30.6μmol/gであった。
【0031】
エポキシ化担体を沈降体積で15ml分取し、デキストラン硫酸(分子量約2000)10.5gを逆浸透水19mlに溶解して得られた溶液を添加し攪拌を行った。つぎに2NのNaOHでpHを10に調整した後に、45℃にて8時間反応を行い、デキストラン硫酸の固定化を行った。
モノエタノールアミン115μlに逆浸透水を添加し、全量を3.3mlにした。得られたデキストラン硫酸固定化吸着体(沈降体積15ml)に本溶液を添加し、更に、23mlの逆浸透水を加えた。45℃にて2時間反応を行うことにより未反応のエポキシ基の開環反応(封止反応)を行いデキストラン硫酸固定化吸着体を得た。この吸着体のデキストラン硫酸の固定化量は、4.4mg/ml(吸着体沈降体積)であった(イオン交換容量は、15μeq/ml)。得られた吸着体について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0032】
ブラジキニン発生量の評価
上記吸着体をヘパリン加生理食塩水(ヘパリンの最終濃度が7U/mlになるように調整)で洗浄してヘパリンの平衡化を行った。吸着体の脱泡を行なった後、沈降体積で1mlの上記吸着体をポリプロピレン製ミニカラム(内径9mm、高さ16mm、テルモ社製)に充填した。カラム入口側にポリ塩化ビニル製のチューブ(内径1mm、外径3mm、長さ1m)を装着し、血液回路付きミニカラムを作製した。
【0033】
血液は抗凝固剤としてヘパリンを用い、健康人から18Gの注射針を用いて注意深く採血した。採取した血液を引き続きテフロン製三角フラスコ(内容量100ml、サンワ社製)内に入れ、37℃の恒温槽内にてスターラーチップを用いて溶血しないよう低速で回転を行った。つぎにペリスタルポンプを介して流速0.5ml/minで、各種カラム内に同時に通血を行った。
【0034】
血液がミニカラムの出口側から流出してきた時点を通血開始時とし、2.5分後から12.5分後まで連続的にブラジキニンの分解を阻害する阻害剤入りの専用容器[トラジロール(6000KIU/ml)、トリプシン(2mg/ml)、硫酸プロタミン(10mg/ml)、EDTA−2Na(20mg/ml)]に血液を採取した。つぎに容器内の阻害剤と血液を充分に混和し、4℃に保温した遠心器にて3000rpm、15分間遠心分離を行い、血漿のみを分取した。分取した血漿中のブラジキニン濃度は、下記の方法にて測定した。
【0035】
ブラジキニン濃度の定量
標準曲線用試験管に標準溶液100μl及び緩衝液200μlを入れた。また検体用試験管には前処理検体200μl及び緩衝液100μlを入れた。各試験管に標識抗原200μlを添加した後、抗ブラジキニン抗体200μlを各試験管に添加し、更に不溶化ウサギIgG抗体をスターラーで攪拌しながらその200μlを各試験管に添加した。つぎに各試験管をミキサーで攪拌後、恒温槽(37±1℃)中で30分間静置した。所定時間後、恒温槽に入れたまま各試験管に塩化ナトリウム溶液(0.9%w/v)4mlを添加した。上記試験管を3000rpmで10分間遠心分離を行い、遠心終了後試験管を傾けて上清液を捨てた。各試験管に希釈用緩衝液500μlを入れ、ミキサーで攪拌して、沈殿を完全に分散させた。前試験管を恒温槽に入れ、37±1℃で約3分間予熱後、各試験管に基質溶液(発色性酵素基質、2−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド)100μlを添加し、混和後37±1℃で30分間静置した。所定時間後、恒温槽に入れたまま各試験管を直ちに反応停止液2.5mlを順次添加し、恒温槽より取り出しミキサーで攪拌した。各試験管を3000rpmで10分間遠心分離を行った後に、上清をキュベットに移し、波長410nmで吸光度測定を行った。また、得られた標準曲線から血中ブラジキニン濃度を求めた。
以上の測定は、キニン定量用キット「マーキットAブラジキニン」(大日本製薬社製)を用いて測定した。
【0036】
β−TGの測定方法
抗β−TG抗体を固定化したマルチプレート(固定化量0.6μg/ウエル、ベーリンガー・マンハイム社製)に、検体血漿200μlを添加し室温で1時間放置した。上清を除去し洗浄を行った後に抗β−TG酵素標識抗体(抗β−TGペルオキシダーゼ、濃度5.0μg/ml、ベーリンガー・マンハイム社製)を200μl添加し室温で1時間放置した。次に上清を除去し洗浄後、基質(オルトフェニレンジアミン、濃度500μg/ml)を200μl添加し、室温で約3分間発色反応を行い、その吸光度を492nmでプレートリーダー(ER8000、三光純薬社製)にて測定を行った。同時に測定した標準品(アセラクロムβ−TG(ベーリンガー・マンハイム社製))により検量線を作成し試料中のβ−TG濃度を求めた。
なお、β−TGの吸着率は、下式にて求めた。
【0037】
【数1】
Figure 0003730386
【0038】
顆粒球エラスターゼの測定方法
抗ヒト顆粒球エラスターゼ抗体(固相抗体)を結合した96穴プレートに、検体血漿を50μl添加し室温で1時間静置した。1時間後、検体を除去し専用洗浄液300μlで3回洗浄を行った後、酵素標識抗体液を50μl添加した。室温で1時間静置後、洗浄を行い基質液を100μl添加し、室温で15分間酵素反応を行った。15分後、反応停止液を100μl添加し、波長490nmにて吸光度測定(マイクロフロー分光光度計、CL−750、島津製作所社製)を行った。つぎに顆粒球エラスターゼの標準物質(3.2ng/ml)を専用希釈液にて順次倍数希釈を行うことにより検量線を作成し、顆粒球エラスターゼ濃度を求めた。
以上の測定は、血漿中顆粒球エラスターゼ測定用キット(顆粒球エラスターゼEIA(三和化学研究所社製))を用いて測定した。
なお、顆粒球エラスターゼの吸着率は、下式にて求めた。
【0039】
【数2】
Figure 0003730386
【0040】
比較例1
排除限界分子量が、約5.0×107 である多孔質セルロース担体(チッソ社製、平均粒径400μm)を用い下記の反応を行うことによりデキストラン硫酸の固定化を行った。
実施例1に記載した方法に準じ、担体のエポキシ化を行った。導入されたエポキシ基の量は、12mol/gであった。
【0041】
エポキシ化担体を沈降体積で15ml分取し、デキストラン硫酸(分子量約2000)10.5gを逆浸透水19mlに溶解して得られた溶液を添加し、攪拌を行った。つぎに2NのNaOHでpHを10に調整した後に、45℃にて24時間反応を行い、デキストラン硫酸の固定化を行った。
モノエタノールアミン115μlに逆浸透水を添加し、全量を3.3mlにした。本溶液をさきで得られたデキストラン硫酸固定化吸着体(沈降体積15ml)に添加し、更に23mlの逆浸透水を加えた。45℃にて2時間反応を行うことにより未反応のエポキシ基の開環反応(封止反応)を行い吸着体を得た。この吸着体のデキストラン硫酸の固定化量は、2.1mg/ml(吸着体沈降体積)であった(イオン交換容量は、10μeq/ml)。
【0042】
実施例1と同時に通血実験を行い、カラム出口側の血中ブラジキニン濃度を求め、その結果を表1に示した。
比較例1により得られた排除限界分子量が大きい吸着体を充填したカラム通過後の血中ブラジキニン濃度は、18300(pg/ml)であり、リガンド導入量が実施例1の約1/2であるにもかかわらず、ブラジキニン濃度は2倍以上の高値を示した。
【0043】
参考例1
実施例1でデキストラン硫酸の固定化に用いた担体についても、実施例1と同時に通血実験を行い、カラム出口側の血中ブラジキニン濃度、β−TG濃度、顆粒球エラスターゼの吸着率を実施例1に記した方法に準じて評価し、その結果を表1に記した。
デキストラン硫酸未固定の担体に対する血中ブラジキニン濃度及びβ−TG、顆粒球エラスターゼの吸着率は低値を示した。
【0044】
参考例2
比較例1でデキストラン硫酸の固定化に用いた担体についても、実施例1と同時に通血実験を行い、カラム出口側の血中ブラジキニン濃度、β−TG濃度、顆粒球エラスターゼの吸着率を実施例1に記した方法に準じて評価し、その結果を表1に記した。
デキストラン硫酸未固定の担体に対する血中ブラジキニン濃度及びβ−TG、顆粒球エラスターゼの吸着率は低値を示した。
【0045】
参考例3(カラム入口に相当)
カラムを結合しない系(回路のみ)についても、実施例1に記載した方法に準じて評価を行い、ブラジキニン、β−TG、顆粒球エラスターゼの血中濃度を求め、吸着率の計算に用いた。
【0046】
以上の結果からアニオンあるいはポリアニオンを有した体液処理器の排除限界分子量を制御することにより、血中の特定のタンパク質に対する吸着率は低下させずに、ブラジキニンの発生を大幅に抑止することが可能であることがわかった。
【0047】
【表1】
Figure 0003730386
【0048】
【発明の効果】
本発明の体液処理用吸着体は、上述の構成よりなるので、吸着体と体液とを接触させて処理したときに、従来の吸着体に見られたような血液中のプラスマキニン濃度の上昇を抑止することができる。

Claims (8)

  1. アニオン性基を有する水不溶性担体からなる体液処理用吸着体であって、排除限界分子量が、50000未満であることを特徴とするβトロンボグロブリン及び/又は顆粒球エラスターゼ除去用の体液処理用吸着体。
  2. アニオン性基を有する水不溶性担体は、アニオン性化合物又はポリアニオン性化合物からなる多孔質のものである請求項1記載の体液処理用吸着体。
  3. ポリアニオン性化合物からなり、前記ポリアニオン性化合物は、分子量が500〜100万で、イオン交換容量が0.5〜1000μeq/mlのものである請求項2記載の体液処理用吸着体。
  4. アニオン性化合物からなり、前記アニオン性化合物は、イオン交換容量が0.1〜1000μeq/mlのものである請求項2記載の体液処理用吸着体。
  5. アニオン性基を有する水不溶性担体は、アニオン性化合物又はポリアニオン性化合物を水不溶性担体に固定化してなる多孔質のものである請求項1記載の体液処理用吸着体。
  6. ポリアニオン性化合物を水不溶性担体に固定化してなる多孔質のものであり、前記ポリアニオン性化合物は、分子量が500〜100万で、イオン交換容量が0.5〜1000μeq/mlのものである請求項5記載の体液処理用吸着体。
  7. アニオン性化合物を水不溶性担体に固定化してなる多孔質のものであり、前記アニオン性化合物は、イオン交換容量が0.1〜1000μeq/mlのものである請求項5記載の体液処理用吸着体。
  8. 請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の体液処理用吸着体を収納した吸着体収納部、体液を前記吸着体収納部に流入させるための体液流入部及び前記吸着体収納部に流入した体液を前記吸着体収納部外に流出させるための体液流出部からなることを特徴とする体液処理器。
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