【発明の詳細な説明】
コンパクトなケプラー望遠鏡発明の分野および背景
この発明は、視力を拡大するための光学装置および手段に関し、更に詳しくは
、望遠鏡、双眼鏡、望遠拡大鏡(近距離に焦点が合わせられ、収束する双眼鏡)
等に関する。ケプラー望遠鏡には、以後“対物レンズ”と称する、正の対物レン
ズグループ、および以後“接眼レンズ”と称する、正の接眼レンズグループがあ
る。典型的望遠鏡では、この対物レンズグループおよび接眼レンズグループが倒
立像を作り、それを正立像にするためには、付加的手段が必要である。この像を
正立させるための手段は、通常鏡、プリズム、または両者の組合わせのシステム
を含んでいる。像正立系は、二つの垂直軸の各々に奇数回の反射を含むべきであ
ることが当業者にはよく知られている。双眼鏡の分野で使われる、最も普通の像
正立系は、ポッロプリズムまたは米国特許明細書第4,488,790号に記載
されている、その軽量鏡同等物を使用する。上記両ポッロプリズムシステムには
、機械的左右対称性が無く、対称性を望み、典型的に対称面に偶数の平面反射鏡
を含む、この技術で知られる幾つかのプリズムシステムの一つを望むときは、通
常単一屋根型反射鏡を使用する。典型的な例は、第1a図に示すヘンスオルトプ
リズム、および第1b図に示すシュミットプリズムである。シュミットプリズム
を使用する望遠鏡が米国特許明細書第4,795,235号に記載されている。
そのような望遠鏡は比較的コンパクトであるが、しかし、シュミットプリズムに
中空同等物が無いので、それは、与えられた対物レンズ直径に対して比較的重い
。この種の望遠鏡のもう一つの主な欠点は、接眼レンズと対物レンズがそれらの
間の相対角約40°で取付けられるという事実である。更なる欠点は、対物レン
ズの焦点距離が与えられた対物レンズ口径に対して厳しく制限され、Fナンバ(
レンズの焦点距離と直径の間の比率)が比較的小さくなる。この技術分野では、
与えられたシステムパラメータの組に対し、与えられたレベルの像収差補正を達
成するために必要な光学設計の複雑さがFナンバに非常に強く依存することがよ
く知
られている。その結果、小さいFナンバの対物レンズおよび接眼レンズに対し必
要な光学素子の数は、益々大きくなり、それがコンパクトさを損ねる。
ケプラー望遠鏡の対物レンズから出る光束を、特にそのFナンバが3に近いと
き、それをヘンスオルトプリズムのそれに類似する方法で折返すことによって、
円錐形にするのが有利であることが分った。本質的に中実で、内部全反射に依存
するシュミットプリズムと対照的に、このレイアウトは、この装置の全重量を減
らすために、鏡だけによって実施することができる。その上、接眼レンズと対物
レンズの間の角度は、任意である。この光学構造を含むケプラー望遠鏡は、どの
性能パラメータをも妥協せずに、与えられた対物レンズ直径に対して可能な究極
のコンパクトさを達成すると思われる。この望遠鏡は、コンパクトな単眼鏡、双
眼鏡および、特に、頭に取付ける双眼鏡および望遠拡大鏡に使うことができる。
この発明の目的は、既存の従来技術の望遠鏡の大きさと重さの限界を、代替の
新規な、コンパクトで軽量の望遠鏡構造を提供することによって克服することで
ある。
この発明の他の目的は、これらの望遠鏡をある新しい用途に使えるようにし、
他の既存の用途で、望遠鏡を容易且つより便利に使えるようにすることである。
この発明の他の目的は、どの性能要件をも妥協することなく、大きさをコンパ
クトにし、重さを軽くすることである。
この発明の他の目的は、望遠鏡、単眼鏡、双眼鏡、および、頭に取付ける望遠
拡大鏡に対する上記適合を提供することである。発明の概要
この発明の好適実施例による像拡大用望遠鏡装置は、光学部品を適当な位置関
係に含み且つ支持するためのハウジングで、接眼レンズ開口および対物レンズ開
口、並びに折返し光路を含むための空間を有するハウジング、第1光軸に沿って
配置された接眼レンズグループ、第1軸に関してわずかに変位した第2光軸に沿
って配置された対物レンズグループ、ならびに第1平面鏡、第2平面鏡、および
屋根型反射鏡を含む像正立系、を含む。
この発明の好適実施例による装置は、第1光軸が第2光軸と平行である。この
発明の他の実施例によれば、この装置は、拡大視界と自然視界を同時に見るため
に、第2光軸が第1光軸に関して約20°傾斜している。
この発明の他の好適実施例によれば、これらの光学部品およびこの装置のハウ
ジングが軽量材料で作られ、頭に取付けるのに適合している。
この発明のどの実施例によっても、これらの光学部品が回折素子を含み、この
装置の接眼レンズが実質的に矩形をしていてもよい。更に、合焦手段を備えても
よい。上記合焦手段が少なくとも一つの横に動く反射鏡を含んでもよい。更に、
この合焦手段が気密密封されている。
この発明の更に他の好適実施例は、偶然の像ジッタを補償するための手段を含
んでもよく、その手段は、少なくとも一つの平面鏡用のピボット機構、この望遠
鏡の外被に取付けた少なくとも一つの角慣性センサ、および上記慣性センサから
受けたデータに従ってこの平面鏡を調整するためのサーボシステムを含み、上記
サーボシステムが、二つの電磁アクチュエータ、および二つの容量型撓み検知手
段を含む。図面の簡単な説明
- 第1a図は、従来技術の像成立系の典型であるヘンスオルトプリズムを示し
;
- 第1b図は、従来技術の像成立系のもう一つの典型であるシュミットプリズ
ムを示し;
- 第2図は、この発明による望遠鏡の断面側面図を示し;
- 第2a図は、この発明による望遠鏡のもう一つの断面側面図を示し;
- 第3図および第3a図は、接眼レンズが傾斜した、この発明の好適実施例の
二つの横断面図を示し;
- 第4a図は、第3図の発明の好適実施例用にふさわしい合焦機構の二つの横
断面図を示し;
- 第4b図は、この合焦機構の部分底面図を示し;
- 第5a図は、像安定化用に改作した、この発明の好適実施例を示し;
- 第5b図は、鏡2の底面図を示し;および
- 第6図は、この発明の代替好適実施例である。発明の詳細な説明
第1a図および第1b図は、ヘンスオルト型プリズムおよびシュミットプリズ
ム型の二つの従来技術の正立系の構造を示す。上記プリズムは、必要に応じて偶
数回の反射を行うが、典型的には大きさが大きく、比較的重い。
この発明の好適実施例による望遠鏡を第2図に示す。この望遠鏡は、接眼レン
ズ6、対物レンズ7および像正立系を含み、その成立系は、平面鏡1および2、
並びに、断面をこの図の右に示す屋根型反射鏡3を含む。この像正立系は、視野
絞り開口5のある像面に正立像を作る。屋根型反射鏡3は、“中空プリズム”型
で、二つの垂直な平面鏡を含む。もし望むなら、素子1と3を交換してもよい。
この屋根型反射器が中空でも、即ち平面鏡を含んでも、または中実で、これらの
反射平面がプリズムの全反射面であってもよいことは、当業者によく知られてい
る。この屋根型反射器は、また、対称形のアミチ型で、二つの反射面が開口を対
等に共有しても、その代りに、二つの連続する反射面を含んでもよく、後者の場
合は、一つのプリズムと一つの平面反射鏡を組合わせることができる。この対象
形屋根型反射鏡は、よりコンパクトであるが、二重像を無くするためには、その
反射面が互いに非常に正確に垂直でなければならないこともよく知られている。
光束を折返して同じ空間を3回利用するので、この望遠鏡の対物レンズの光軸に
沿った全長が非常に短く、その体積が最小になることは明らかである。
第2図〜第2a図に示す望遠鏡は、対物レンズおよび接眼レンズに対し、従来
の平行な光軸を有する。第3図〜第3a図に、この発明のもう一つに実施例を示
し、そこでは接眼レンズの光軸が対物レンズの光軸に対して傾斜していて、これ
と同じ出願人が1994年10月27日に出願したイスラエル国特許出願明細書
第111429号に記載されているように、拡大した像により自然像を掩蔽する
ことを無くし、その明細書をここに参考までに援用する。
この発明の望遠鏡は、従来のガラス素子を使うことができるが、眼鏡枠に取付
けた双眼鏡のように、重量に敏感な用途では、典型的に2倍だけ軽いプラスチッ
クレンズが好ましい。更に重量を軽減するためには、トーマスW.ストーン、“
ハイブリッド回折・屈折望遠鏡”、SPIE第1212巻実用的ホログラフィー
IV(1990)、pp.257〜266に記載されているようなハイブリッド
屈折・回折光学素子を使ってもよい。この技術では、レンズの色補正を色消しダ
ブレットに頼らずに、従って薄いレンズで得る。例えば、この発明による単眼
望遠鏡にガラスの光学素子を使用し、倍率がX6、対物レンズの直径が25mm
であるとき、この装置の全重量は約50gである。ガラス素子をプラスチック素
子で置換えたとき、重量は約30gに落ち、プラスチックの屈折・回折素子では
、重量が20gに落ち、それはほぼガラスの処方レンズ1枚の重さである。
ケプラー望遠鏡の視界は、像面の視野絞り開口5によって決り、それは従来円
形である。ほぼ全ての実際的用途に対し、この発明による望遠鏡は、視界が円形
ではなく、横長四角であれが、幾つかの利点が増すことが分った:
1- 視界の水平の広がりは、通常垂直の広がりより重要であり;
2- 拡大した視界の審美的魅力がより強く;
3- 望遠鏡の全長が短くすらあり;
4- 接眼レンズの輪郭を拡大した視界に適合させれば、接眼レンズによって掩
蔽される自然視界が最小になる。これは、接眼レンズの光軸が第3図〜第3a図
の装置に示すように、傾斜しているとき、有意義である。
この発明による望遠鏡は、典型的には、ねじ機構により接眼レンズ組立体6ま
たはその一部をその光軸に沿って変位することによって焦点合せをすることがで
きる。矩形接眼レンズに対しては、別の機構が望ましい。好適な合焦機構は、第
4図〜第4a図に示すように反射鏡3を、その屋根角を2等分し、中点でその頂
点線に垂直な軸4に沿って変位することに基づく。反射鏡3をfだけ並進するこ
とは、像面をほぼ2fだけ軸方向に移動するだろうが、軸4が光軸に平行ではな
いので、像の望ましくない横移動も生ずるだろう。そのような移動は、反射鏡3
に与えられる角並進成分によって補償することができる。必要な複合運動は、原
理的には、反射鏡3を非実用的にはこの望遠鏡の包被の外部に位置するピボット
軸に取付けることによって得ることができる。しかし、このピボットは、第4図
、第4a図、第4b図に示すように望遠鏡の包被内でシミュレートすることがで
き、合焦反射鏡3は、ばね常数が異なるように適切に選択した2対の板ばね7お
よび10によって構成される弾性取付装置に載っている。従って、軸4に沿って
この反射鏡の中心に力を加えると、これらのばねが異なって撓み、角度変位と直
線変位の組合わせが生ずる。この発明の好適実施例では、この力を柔軟な封止膜
9を介してねじ込みノブ8によって加える。この種の合焦機構は、屋根型反射鏡
が軸
斜交傾斜と無関係に光を反射することが知られているので、板ばねの公差から生
ずるかも知れない、中空屋根の横傾斜に鈍感である。
第5a図〜第5b図に示す、この発明の更に他の実施例では、鏡2が、この反
射平面の中心近くに位置する2軸ピボット機構11に取付けられている。この望
遠鏡ハウジングに対する鏡2の角度位置は、この望遠鏡ハウジングに固定された
半導体式ジャイロのような、二つの角度慣性センサ(図示せず)から得た指令信
号によって制御する。上記慣性センサは、慣性視線に対するこの望遠鏡の偶然の
角運動を、2軸位置サーボシステムを構成する電磁アクチュエータ12および1
3並びに容量型振れ検知手段14および15と協力して検出し、そのサーボシス
テムは、もしそれがなければ生ずるであろう像の偶然のジッタを補償するような
方法で鏡の微少振れを制御する。更なる詳細は、イッシャイ・ネッザー、“視線
の操縦と安定化”、オプティカルエンジニヤリング、1992年1月/2月、p
p.96〜104にあるだろう。
この望遠鏡を、医療用のような、立体式の頭に取付ける拡大鏡に使用し、接眼
レンズを第3図のように傾斜するとき、個々の像のそれぞれに像の回転が生じ、
それがそれらの融合を困難にし、観察者を緊張させることが分った。この像の回
転の理由は、接眼レンズ光軸の傾斜角と対物レンズ光軸の収束角の複合効果であ
ることにたどり着いた。像回転の補正は、第3図で屋根型反射鏡3を軸4の周り
に回転することによって達成でき、ある角度の1/2だけの機械的回転で、その
角度の像回転が生じ、その大きさおよび方向を所望する補償に従って選択する。
第6図は、第2図の光学的レイアウトの変形を示し、そこでは、反射鏡1が中
実屋根型プリズムで置換えられ、反射鏡2は、開口を有し、光軸が反射鏡3に垂
直である。この垂直性が反射鏡3を、図示のように、凸形に作ることを可能にし
、バーロー素子として作用するようにする。
第6図の鏡2の開口部は、その入射開口(対物レンズ)の口径に対して効果的
に掩蔽となる。この掩蔽は、この望遠鏡によってその射出瞳上に結像され、もし
その像がこの射出瞳領域のかなりの部分に亘るなら、問題を起すことがある。し
かし、この開口部が光束の断面が最小である像面近くにあるので、その程度は最
小限である。幾何光学の基本的操作をすると、上の前提で、射出瞳での掩蔽の直
径が大体2Fに等しいことが分る。但し、Fおよびは、それぞれ、接眼レンズの
焦点距離、およびこの望遠鏡の視界である。この様に掩蔽は、比較的小さく、本
質的に観察者の瞳が望遠鏡の射出瞳に位置するので、それに辛うじて気づく程で
ある。
この様にして、単眼鏡には勿論、携帯用および眼鏡に取付けた双眼鏡に理想的
に適合可能な、極端にコンパクトな望遠鏡が得られる
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フロントページの続き
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