JPH10505507A - gas6による受容体活性化 - Google Patents

gas6による受容体活性化

Info

Publication number
JPH10505507A
JPH10505507A JP8527698A JP52769896A JPH10505507A JP H10505507 A JPH10505507 A JP H10505507A JP 8527698 A JP8527698 A JP 8527698A JP 52769896 A JP52769896 A JP 52769896A JP H10505507 A JPH10505507 A JP H10505507A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gas6
cells
rse
cell
human
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP8527698A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3342873B2 (ja
Inventor
チェン,ジエン
ハモンズ,アール・グレン
ゴドウスキー,ポール・ジェイ
マーク,メラニー・アール
マザー,ジェニー・ピー
リ,ロンガオ
Original Assignee
ジェネンテク・インコーポレイテッド
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority claimed from US08/402,253 external-priority patent/US6211142B1/en
Application filed by ジェネンテク・インコーポレイテッド filed Critical ジェネンテク・インコーポレイテッド
Publication of JPH10505507A publication Critical patent/JPH10505507A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3342873B2 publication Critical patent/JP3342873B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/745Blood coagulation or fibrinolysis factors
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P3/00Drugs for disorders of the metabolism
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P5/00Drugs for disorders of the endocrine system
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides

Abstract

(57)【要約】 Rse及びMer受容体タンパク質チロシンキナーゼの活性化因子を同定した。この活性化因子は成長阻止特異的遺伝子6(gas6)によってコードされている。したがって、本発明は、gas6ポリペプチドを用いてRse又はMer受容体を活性化する方法を提供する。さらに本発明は、Rse又はMer受容体(これはそれを含む細胞をgas6ポリペプチドに関係させる)をその細胞膜に組込んでいる細胞の生存、増殖又は分化を増進する方法をも提供する。本発明の方法に従って処理できる細胞のタイプには、単核細胞や、シュワン細胞などの膠細胞が含まれる。gas6ポリペプチドを含むキット及び製品も提供する。本発明はさらにgas6変種に関する。

Description

【発明の詳細な説明】 gas6による受容体活性化発明の背景 発明の分野 本発明は、概してRse又はMerチロシンキナーゼ受容体を活性化する方法に関す る。より具体的には、本発明は、Rse受容体を含む細胞(神経膠細胞など)又はM er受容体(例えば単球)の生存、増殖及び/又は分化を、gas6を用いて増進する 方法に関する。また本発明は、gas6変種、具体的には自然界から単離されるgas6 よりもγ-カルボキシル化されていないgas6変種に関する。関連技術の説明 発生中の細胞と成人組織の細胞の成長と分化を制御する特定のシグナルは、し ばしば、固有のチロシンキナーゼ活性を含有する細胞表面受容体に結合し、それ を活性化することによってその効力を発揮する。Markらは、最近、成体の脳内に 選択的に発現する受容体チロシンキナーゼRseのヒトとネズミの相補DNAについて 記述している(Markら,J.Biol.Chem.269:10720[1994])。Rse受容体の細胞外 ドメインは、2つの免疫グロブリン様(Ig-L)反復と、それに続く2つのフィブ ロネクチンタイプIII反復から構成される。ヒトRse(Ohashiら,Oncogene 9:699 [1994])及びネズミRse(Laiら,Oncogene 9:2567[1994])と同一のタンパク 質をコードする相補DNA配列は独立して報告されており、これらはSky及びTyro3 と呼ばれている。brtと呼ばれるRseのネズミ等価体に関するFujmimoto及びYamam oto,Oncogene 9:693(1994)と、tifと呼ばれるヒト分子に関するDaiら,Oncogene9 :975(1994)をも参照のこと。 Rseの発現は種々の組織で研究されている。Laiら(上記)は、成体の脳内で、 Rse mRNAが新皮質、小脳及び海馬のニューロン内に局在することを発見した。Sc hulzらは同様に、Rseが大脳皮質、外側中隔、海馬、嗅球及び小脳内で高レベル に発現することを発見した。脳内で最も高レベルのRse発現は、ニューロンに関 係することがわかった(Schulzら,Molec.Brain Res.28:273-280[1995])。マ ウスの中枢神経系(CNS)では、皮質ニューロンと海馬ニューロン中のシナプ ス回路構成の確立及び維持と時を同じくして、後期胚段階中と出生後に、Rseの 発現が最も高いレベルで検出される(Laiら,上記及びSchneiderら,Cell 54:787- 793[1988])。この過程は、互いに直接接触しているか、若しくは近くに位置 する細胞によって、局所的に制御されると考えられる。Markら(上記)は、ノー ザンブロット分析によって、脳と腎臓から得たRNAの試料に、高レベルのRse mRN Aが存在することを発見した。Daiら(上記)は、Rseがヒトの卵巣と精巣に高度 に発現することを発見した。Markら(上記)は、種々のヒト細胞系におけるRse の発現も分析した。単球細胞系THP-1又はリンパ芽球様RAJI細胞から得たmRNA試 料のノーザンブロッティングでは、Rse mRNAはほとんど若しくは全く検出されな かった。しかし、骨髄の細胞(すなわ骨髄性白血病系K562と骨髄単球U937細胞) と巨核球白血病系DAMI及びCMK11-5並びにヒト乳癌細胞系MCF-7を含むいくつかの 造血細胞系では、Rse転写物が検出された。調べられた細胞系のなかでは、Hep3B 細胞(ヒト肝癌細胞系)で最も高いレベルの発現が観測された。 RseはAxl(Ufo又はArkとしても知られる)に構造的に関係し、このチロシンキ ナーゼ受容体と43%の全アミノ酸配列同一性を共有する。Axlについては、O'Bry anら,Mol.Cell.Biol.11:5016(1991)、Janssenら,Oncogene 6:2113(1991)、Re scignoら,Oncogene 5:1909(1991)及びBellostaら,15:614(1995)を参照のこと。Rs eとAxlは、Mer(Grahamら,Cell Growth Differ.5:647[1994])と共に、細胞外ドメイ ンが神経細胞認識及び接着分子(Ruitishauser,U.,Current Opin.Neurobiology 3 :709[1993]とBrummendorf及びRathjen,J.Neurochemisty 61:1207[1993]に概 説されている)に似る一群の受容体チロシンキナーゼを規定する。Rseと同様に 、Axlも神経系で発現するが、Rseよりも広く末梢組織に発現する。 Mer mRNAは、末梢血液単核細胞、骨髄単核細胞及び単球中に検出されるが、顆 粒球には検出されない。Mer mRNAは、それが新生物B及びT細胞系に発現すると いう事実にも関わらず、正常なB又はTリンパ球には検出されない(Grahamら,C ell Growth Differ.5:647[1994])。Merはヒト組織に広く発 現するが、最も高レベルのMer mRNAは精巣、卵巣、前立腺、肺及び腎臓で検出さ れる(Grahamら,Cell Growth Differ.5:647[1994])。 Mer、Rse及びAxlの無秩序な発現は、細胞のトランスフォーメションに関係す る。例えば、Axlは、慢性骨髄性白血病の患者(O'Bryanら,上記)と慢性骨髄増 殖障害の患者(Janssenら,上記)のDNAから、トランスフェクション/腫瘍形成性 試験を用いて単離された。Merは新生物B細胞系からクローン化されており、数 多くのトランスフォームしたT急性リンパ球白血病細胞系で発現する(Grahamら ,上記)。RseとAxlは、繊維芽細胞で過剰発現すると、細胞のトランスフォーメ ションを誘導する(O'Bryanら,上記;Ohashiら,Oncogene 9:669[1994];Taylor ら,J.Biol.Chem.270:6872-6880[1995];McCloskeyら,Cell Growth and Diff.5: 1105-1117[1994])。RseのmRNAとタンパク質は、wnt-1又はfgf-3癌遺伝子を過 剰発現させる形質転換動物に由来する乳腫瘍でも過剰発現する(Taylorら,J.Bio l.Chem.270:6872-6880[1994])。 Rse受容体とAxl受容体の推定リガンドは既に報告されている。Varnumら,Natu re 373:623(1995)とStittら,Cell 80:661-670(1995)は、最近、gas6(成長 阻止特異的遺伝子6)がAxlのリガンドであることを報告した。gas6は、NIH 3T3 細胞で血清飢餓中に高度に発現する一組のネズミ遺伝子に属する(Schneiderら,C ell 54:787-793[1988])。これらの遺伝子は、その発現が成長誘導中に負に調 節されるので、成長阻止特異的遺伝子(growth arrest-specific gene)と命名 された。ネズミgas6のヒト相同体も、Manifiolettiら,Molec.Cell.Biol.13(8):4 976-4985(1993)によってクローン化され、配列決定された。彼らは、gas6はビ タミンK依存性タンパク質であると結論し、成長調節に関係するプロテアーゼカ スケードの調節に役割を果たしているのであろうと推測した。gas6は、脳を含む 種々の組織で発現する。gas6については、Colomboら,Genome 2:130-134(1992) とFerreroら,J.Cellular Physiol.158:263-269(1994)をも参照のこと。 さらにStittら(上記)は、プロテインSがTyro3のリガンドであることを報告 した。プロテインSは、活性化プロテインCによる因子Va及びVIIIaのタン パク質加水分解的不活化を刺激する補因子として作用することにより抗凝固因子 として機能する、ビタミンK依存性血漿タンパク質である。これについては、Ea smonら,Aterioscler.Thromb.12:135(1992)に概説されている。したがって、プ ロテインSは血液凝固カスケードの重要な負の調節因子である。Walkerら,J.Bio l.Chem.255:5521-5524(1980)、Walkerら,J.Biol.Chem.256:11128-11131(1981 )、Walkerら,Arch.Biochem.Biophys 252:322-328(1991)、Griffinら,Blood 79: 3203(1990)及びEasmon.D.,Aterioscler.Thromb.12:135(1992)を参照のこと。 ヒト血漿中のプロテインSの約半分がC4BPに結合しているという発見は、プロテ インSがこの補体カスケードに関与するという概念をさらに裏付ける。Dahlback ら,PNAS(USA)78:2512-2516(1981)。平滑筋細胞の有糸分裂促進物質としてのプ ロテインSの役割も報告されている。Gasicら,PNAS(USA)89:2317-2320(1992)。 プロテインSは4つのドメインに分割することができる(本願の図1A、1C及び 1Dを参照のこと)。残基1-52(領域A)は、負に荷電したリン脂質に対するプロ テインSのCa2+依存的結合を媒介するγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)が豊富 である(Walker,J.Biol.Chem.259:10335[1984])。領域Bはトロンビン感受性 ループを含む。領域Cは4つの上皮細胞増殖因子(EGF)様反復を含有する。領 域Dはステロイドホルモン結合性グロブリン(SHBG)タンパク質と相同である( Hammondら,FEBS Lett.215:100[1987])。JosephとBaker(FASEB J.6:2477[19 94])によって議論されているように、この領域は、ラミニン(23%同一)とメ ロシン(merosin)(22%同一)のA鎖中のドメイン及びDrosophilaクラムス(c rums)中のドメイン(19%)に相同である。 ネズミとヒトのgas6 cDNAは、ヒトプロテインSに対してそれぞれ43%及び44 %のアミノ酸配列同一性を持つタンパク質をコードする。発明の概要 上述の発明は、本質的にγカルボキシル化されていないgas6変種、若しくはこ の分子の内在性供給源に由来するgas6よりもγカルボキシル化量が本質的に少な いgas6変種に関する。上記変種の例としては、通常はγカルボキシル化さ れるgas6のAドメインから1又はそれ以上のグルタミン酸残基を欠くgas6変種、 Aドメインを欠くgas6の断片、及び実質上gas6のDドメイン(又はgas6のGドメ イン断片)からなる断片が挙げられる。 本発明はさらに、Rse又はMer受容体を含む細胞(好ましくはヒト細胞)を、Rs e又はMer受容体を活性化するのに有効な量の外因性gas6にさらすことによって、 Rse又はMer受容体を活性化する方法をも提供する。そのRse又はMer受容体は通常 は細胞結合型であり、gas6はヒトgas6であることが好ましい。本発明は、Rse又 はMer受容体をその細胞膜に組込んでいる細胞の生存、増殖及び/又は分化を増進 する方法であって、その細胞をその細胞の生存、増殖及び/又は分化を増進する のに有効な量のgas6にさらすことによる方法をも提供する。その細胞はニューロ ンであってもよいし、膠細胞(シュワン細胞など)であってもよく、また単球( 例えばマクロファージ)であってもよい。その細胞は細胞培養中に存在してもよ いし、神経学的な疾患又は障害に罹っている哺乳動物(例えばヒト)中に存在し てもよい。gas6は、しばしば、生理学的に許容できる担体に入れて提供される。 本発明は、gas6ポリペプチドを含むキット及び製品をも提供する。通常、この 製品は、gas6を試験管内培養に使用するための使用説明書又はgas6を哺乳動物に 投与するための使用説明書を含む。図面の簡単な説明 図1A〜1Dは、プロテインSとgas6の構造(図1A)、ヒトgas6(図1B)とプロテ インSのウシ型(b)及びヒト型(h)とのアミノ酸相同性の比較(それぞれ図1C 及び1D)を表す概略図である。h gas6については、枠は、Gla領域(すなわちA ドメイン)、ループ領域(すなわちBドメイン)、Cドメインを形成する4つの EGF様反復(C1〜C4と表記)及び性ホルモン結合性グロブリンに相同な領域(す なわちDドメイン;この領域はラミニンA鎖とメロシンのGドメイン及びDrosph iliaクラムスタンパク質にも関係する)を表す。h gas6とbプロテインS又はh プロテインSの間で共有されるアミノ酸同一性率を対応する枠内に示す。各領域 の境界にあるアミノ酸を枠上に示す。 図2は、ネズミgas6(m gas6)[配列番号1]、h gas6[配列番号2]及びh プロテインS[配列番号3]のアミノ酸配列の比較を表す。「プレ」配列と「プ ロ」配列の残基を示す(矢印は各前駆体配列の最後の残基を示す)。A〜Dドメ インとDドメイン中に存在する2つのGドメイン(すなわちGドメイン1とGド メイン2)を詳述する。 図3A〜3Dは、ウシ胎児血清(FBS)中のRse-Lの特長づけを表すグラフである。 図3Aは、125I-Rse-IgGの結合を、FBS濃度の関数として示す。結合、つまり添加 した全カウントに対する膜結合カウントの百分率(100×B/T(すなわち結合/全 量))を、FBS濃度の関数としてプロットする。そのデータを4変数モデルにあ てはめて、0.58%v/vのEC50を得た。図3Bは、125I-Rse-IgGの結合を、一定FBS濃 度の下に、Ca2+濃度の関数として表す。結合は、10%のダイアフィルトレーショ ンしたFBSの存在下又は不在下に、種々の濃度のCa2+を添加して、図3Aと同様に 行なった。このデータに対する4変数フィッティングによって判断したCa2+のEC50 は0.18nMである。図3Cは、FBSによって媒介されるCMK11-5膜に対する125I-Rse -IgG結合のスキャッチャード分析である。非標識Rse-IgGの濃度を増大させなが ら、1濃度の125I-Rse-IgG、FBS及びCa2+を用い、非特異的結合について補正し た後、結合分と遊離分の比(B/F)に対して結合をプロットした。1%FBS(Kd=0 .82nM)で行なった実験と10%FBS(Kd=2.2nM)で行なった実験の両方を示す。 図3Dは、FBSのQ-セファロース濃縮(QSE)画分によるRseリン酸化の用量依存的 活性化のKIRA分析である。この挿入図は、Rse-IgGと共にインキュベートするこ とによって、Rse-L活性が特異的に中和されたことを示している。Rseリン酸化は 、血清飢餓細胞(−)、又はIgGタンパク質を添加せずにQSE画分で処理した細胞 (QSE)、又は表示の通りRse-IgG又はCD4-IgGと共にインキュベートしたQSEで処 理した細胞に認められる。 図4は、実施例4に記載のRse受容体に関するKIRA ELISAを示すフローチャー ト/模式図である。 図5は、非標識Rse-IgGによるgas6に対する125I-Rse-IgGの結合の阻害を示す 。125I-Rse-IgGとgas6を一定にして、チューブに加える非標識Rse-IgGの量 を増大させた。1種類の部位を用いたデータに対する非線型最小二乗法によって 、平衡解離定数は0.46±0.04nMと見積もられた。この挿入図は、非特異的結合に ついて補正した後の、結合(B)対結合/遊離(B/F)のスキャッチャードプロッ トを示す。 図6A〜6Cは、星状細胞培養におけるRse-L活性を示す。星状細胞がRseリガンド を分泌するかどうかを決定するために、3日間条件付けした血清非含有培地をセ ントリコン-10遠心限外ろ過装置で10倍濃縮し、検定チューブに直接加えて、表 記の最終濃度とした。図6Aでは、星状細胞ならし培地(ACM)の添加によって、1 25 I-Rse-IgGをCMK11-5膜に結合させたところ、13%v/vACMで半最大効果に達した 。図6BはACMによるRseのリン酸化のKIRA分析である。図6Cは、ACMによるRseのリ ン酸化が、Rse-IgGと共にインキュベートすることによって阻害されるが、CD4-I gGでは阻害されないことを示す。中和は図3の説明文に記載のように行なった。 図7に示すように、gas6の欠失分析によって、試験管内でのRseに対する結合 には、Gドメインだけでも十分であることが示された。基本的に実施例6に記載 の手法に従って、エピトープで標識した(gD)gas6又はプロテインS、若しくは gas6のN-末端欠失変種(表記の残基を含む)を構築し、293細胞で一時的に発現 させた。正しい分子量を持つタンパク質は、そのエピトープ標識に対する抗体を 用いて、未分画の(投入)細胞上清中に検出できた。プロテインSとは対照的に 、gas6誘導体はRse-IgGによって細胞上清から沈降した。タンパク質は対照ヒトF cでは沈降しなかったので、この結合はRseの細胞外ドメインに特異的である。定 量化のため、未分画(投入)レーンは沈降に用いた物質の20%に相当する。 図8は、gas6がP45ラットシュワン細胞の増殖を用量応答的に誘導することを 示している。24ウェルプレート中の10μg/mlインスリン及びトランスフェリンと 5μglmlビタミンEを含むF12/DME焙地で、表示の濃度の組換えヒトgas6と共に 細胞を培養した。48時間後、コールターカウンターで細胞数を数えた。各処置に つき6ウェルの平均と標準偏差を示す。 図9は、gas6によって誘導されるp45ラットシュワン細胞の増殖がRse-IgGによ って中和されることを表す。細胞は、図8の説明文のように培養した。対照細胞 にはさらなる添加を行なわなかった。他の細胞は全て、2種類のgas6精製物(す なわちロット番号15とロット番号9)及び10μg/mlのRse-IgG(標識Rse)又はCD 4-IgG(標識CD4Fc)で処理した。 図10は、実施例10に記載のKIRA検定におけるRseリン酸化の活性化に関する服 量応答曲線を示す。 図11は、ヒト組換えgas6を発現させる細胞によって条件付けした培地のイオン 交換クロマトグラフィーを表す。培地(700ml)を緩衝液A(50mM Tris-HCl pH7 .5,5mM ベンズアミジン)に対して透析し、0.1%CHAPSに調節し、6ml Resource -Qカラム(Pharmacia)に10ml/分で充填した。そのカラムを緩衝液Aで洗浄し、 緩衝液A中の0から0.4M NaClに至る70mlの直線的勾配(流速1.0ml/分)で溶出さ せ、2.0mlずつ集めた。その画分を、実施例6に記載の塩化バリウム結合法と実 施例4に記載のKIRA検定法を用いて、Rseを結合し活性化するそれらの能力につ いて分析した。結合活性は、塩化バリウムで沈殿した放射活性の添加した全放射 活性に対する百分率として表す。KIRA活性は標品に関する単位/mlとして表す。 図12A〜12Cは、ヒトシュワン細胞の成長とDNA合成に対するgas6と他の増殖因 子の効果を表す。全てのデータを平均±標準誤差(n=4)として表した。図12Aは 、異なる条件下におけるgas6に対するヒトシュワン細胞の用量応答曲線を示す。 表示の濃度のgas6と共に84時間培養した後、細胞数をコールターカウンターで数 えた。図12Bは、異なる濃度のgas6の存在下に図12Aのように培養したシュワン細 胞におけるチミジン取り込みを、gas6が増大させたことを示している。3H-[メチ ル]-チミジン(0.5μCi/ml)を培養の48時間時点で加えた。培養の96時間時点で 細胞を収集し、DNA中に取り込まれた放射活性を測定するために処理した。図12C は、8Fの存在下におけるシュワン細胞の成長に対する増殖因子類の影響を示す。 8F中で、PDGF(10ng/ml)、塩基性FGF(20ng/ml)、IL-1α(1ng/ml)、TGF-β1 (1ng/ml)及びgas6(30ng/ml)と共に(若しくは これらを伴わずに)、シュワン細胞を培養した。108時間後に細胞数を数えた。 図13は、培養中のヒトシュワン細胞の成長の時間経過を表す。8Fを補足した24 ウェルマルチプレート中のF12/DME(1:1)中で、gas6又は10%のダイアフィルト レーションしたウシ胎児血清(FBS)と共に(若しくはこれらを伴わないで)2×104 細胞/ウェルのヒトシュワン細胞を培養した。各群から4ウェルの培養物を取り 出し、24時間毎に細胞数を数えた。表示のデータは平均±標準誤差(n=4)である。 図14は、gas6が誘導するRseリン酸化の受容体-Fc融合タンパク質による中和を KIRA検定法で測定した図である。表示の濃度の受容体融合タンパク質の存在下に 精製gas6で処理したCHO Rse.gD細胞中で観測されるRseリン酸化の、gas6だけで 処理した細胞中で観測されるものに対する百分率を示す。 図15A〜15Dは、Mer-Fcに対するリガンド結合の速度論的分析を示す。Mer-Fcを 、BIAcoreTMバイオセンサー表面のカルボキシルメチル化デキストラン層にカッ プリングした。160秒時点で、精製gas6(図15A、B及びC)又はプロテインS(図 15D)を100nM(破線)又は140nM(実線)の濃度でバイオセンサーの表面に注入 した。340秒時点で、注入ループを緩衝液に切り替えて、解離を追跡した。チッ プ上のMer-Fcに対するgas6の結合は、可溶性Mer-Fcと共に予備インキュベートす ることによって遮断されたが(図15B)、CD4-Fcでは遮断されなかった(図15C) 。Mer-Fcに対するプロテインSの結合は観測されなかった(図15D)。好ましい態様の詳細な説明 1.定義 本明細書において「gas6」及び「gas6ポリペプチド」という用語は、(特に示 さない限り)Rse受容体又はMer受容体を活性化できるポリペプチドを意味し、自 然界の供給源から精製したgas6ポリペプチド若しくは化学合成又は組換え生産さ れたgas6ポリペプチドの成熟型、プレ型、プレプロ型及びプロ型を包含する。こ の定義には、特に、Manfiolettiら,Mol.Cell.Biol.13(8):4976.4985(1993)に公表 されたアミノ酸配列(EMBL/GenBank/DDBJから受入番号X59846の下 に入手可能)からなる「ヒト」gas6ポリペプチド及び他の哺乳類gas6ポリペプチ ド(ネズミgas6、Manfiolettiら,上記を参照のこと)が含まれる。gas6ポリペプ チドが自然界に認められるgas6ポリペプチドのアミノ酸配列を持つ場合は、それ がどのような方法で生産されたかにかかわらず(例えばその分子の内在性供給源 から単離することもできるし、合成法によって生産することもできる)、本明細 書ではそれを「天然」又は「天然配列」ポリペプチドと呼ぶ。 gas6は、図1A〜B及び図2に詳述した種々のアミノ酸「領域」又は「ドメイン 」を持つ。このポリペプチドのアミノ末端にある「Aドメイン」又は「Gla領域 」は、細胞膜中の負に荷電したリン脂質に対するgas6のカルシウム依存的結合を 媒介すると思われるγ-カルボキシグルタミン酸(Gla残基)が豊富な残基を持つ。 Aドメインは、ネズミgas6のほぼ残基46-48と、ヒトgas6のほぼ残基49-89に広 がっている。これに続く「Bドメイン」は、トロンビン感受性「ループ」を含有 し、ネズミgas6のほぼ残基87-114と、ヒトgas6のほぼ残基90-117に広がっている 。本明細書で「Cドメイン」と呼ぶ第3のドメインは、4つの上皮細胞増殖因子 (EGF)様反復(図1BのC1〜C4)を持つ。このCドメインは、ネズミgas6のほぼ 残基115-275と、ヒトgas6のほぼ残基118-278に広がっている。残りの「Dドメイ ン」はステロイドホルモン結合性グロブリン(SHBG)タンパク質と相同であり、 ネズミgas6のほぼ残基276-673と、ヒトgas6の残基279-678を含む。Dドメインは、「 Gドメイン1」(ネズミgas6についてはほぼ残基311-468、ヒトgas6についてはほ ぼ残基314-471)及び「Gドメイン2」(ネズミgas6についてはほぼ残基500-666、 ヒトgas6についてはほぼ残基503-671)と呼ばれる一対の「Gドメイン」を含む 。 「gas6」及び「gas6ポリペプチド」という用語は、天然gas6の「変種」及び「 突然変異体」をも包含する。上記変種には、ヒトgas6配列の断片、ヒトgas6配列 のN-又はC-末端若しくはその内部に1又はそれ以上のアミノ酸残基が加えられた ポリペプチド、1又はそれ以上のアミノ酸残基が欠失し、任意に1又はそれ以上 のアミノ酸で置換されていてもよいポリペプチド、アミノ酸残基が共有結合的に 修飾されて非天然アミノ酸になっている上記タンパク質、ポリペプチド又 はその断片の誘導体が含まれる。gas6変種は、例えば部位特異的突然変異誘発法 やPCR突然変異導入法によって合成的に製造することもできるし、Manfiolettiら に記載の翻訳されたアミノ酸配列の対立遺伝子型その他の天然変種(その他の動 物種に存在しうるもの)のように、天然に存在するものであってもよい。 gas6変種は、それが機能的に活性である限り、本発明の範囲に包含される。本 明細書において、gas6に関して「機能的に活性」及び「機能的活性」とは、その gas6がRse受容体及び/又はMer受容体を活性化し、かつ/または、Rse受容体又はM er受容体を含む細胞(ニューロン、膠細胞、単球細胞など)の増殖、生存及び/ 又は分化を増進できることを意味する。「膠細胞」は中枢及び末梢神経系に由来 し、寡突起膠細胞、星状細胞、上衣細胞、微小膠(microglial)細胞並びに神経 節の随伴細胞及び末梢神経繊維の周囲のシュワン細胞又は神経線維鞘細胞から選 択できる。「単球細胞」はマクロファージなどの単核白血球である。 gas6変種は、例えばNeedlemanら,J.Mol.Biol.48:443-453(1970)に記載のア ルゴリズムのFitchら,PNAS(USA)80:1382-1386(1983)版によって決定される最 大の相同性を与えるように配列を整合させると、しばしば、成熟gas6をコードす る翻訳されたアミノ酸配列又はその断片に対して、少なくとも約75%(好ましく は80%以上、より好ましくは90%以上)の配列同一性を持つだろう。機能的に活 性なgas6変種をスクリーニングするには、変種を、次に挙げる機能的活性試験/ 検定の1又はそれ以上にかけることができる。 (a)受容体チロシンキナーゼ活性の下方調節又は活性化を測定する受容体活性 化検定(例えばその変種がRse受容体又はMer受容体を活性化できるかどうかを決 定するための抗ホスホチロシン抗体によるウエスタンブロッティング、本明細書 の実施例3を参照のこと)。 (b)その変種のRse又はMer受容体活性化能を下記実施例4に記述の如く決定す るKIRA ELISA。 (c)その変種が細胞培養中のシュワン細胞の増殖を増進できるかどうかを確認 するシュワン細胞増殖検定。本明細書の実施例9を参照のこと。 gas6のアミノ酸配列変種は、適当なヌクレオチド変化をgas6DNAに導入した 後、得られた修飾DNAを宿主細胞中で発現させるか、試験管内合成法で発現させ ることによって製造できる。このような変種は、例えば、Manfiolettiらに記載 のgas6アミノ酸配列内のアミノ酸残基の欠失、挿入又は置換を含む。生成する変 種が本明細書に記載の所望の特長を保持する限り、欠失、挿入及び置換を自由に 組み合わせて、gas6のアミノ酸配列変種を作ることができる。gas6のアミノ酸配 列変種を得るためにアミノ酸配列に施す変化は、例えばグリコシル化部位を導入 又は移動させるような変化のために、宿主細胞中でそれが発現するときにgas6の さらなる修飾をもたらすものであってもよい。 gas6のアミノ酸配列変種の構築には、主な変数が2つある。すなわち、突然変 異部位の位置と突然変異の性質である。これらはヒトgas6アミノ酸配列からの変 種であって、gas6の天然の対立遺伝子型であってもよいし、gas6 DNAを突然変異 させて対立遺伝子若しくは自然界に認められない変種にすることによって作成し たgas6の予定の突然変異型であってもよい。一般に、選択した突然変異の位置と 性質は、変更しようとするgas6の特長に依存するだろう。 例えば、ヌクレオチドコーディング配列の縮重性ゆえに、コードされるgas6の アミノ酸配列に影響を与えることなく、ヒトgas6ヌクレオチド配列に突然変異を 作成することができる。Manfiolletiらに記載のアミノ酸配列とは異なるアミノ 酸配列を持つが、機能的には活性なgas6をもたらす他の突然変異を作成すること もできる。このように機能的に活性なgas6のアミノ酸配列変種は、例えば、ヒト gas6アミノ酸配列中の1又はそれ以上のアミノ酸残基を、類似の若しくは異なる 極性又は電荷を持つ他のアミノ酸残基に置換することによって選択される。 有用な方法の一つは「アラニンスキャニング突然変異導入法」と呼ばれる。この 方法では、アミノ酸残基又は標的残基群(例えばarg、asp、his、lys及びgluの ような荷電残基)を同定し、組換えDNA技術を用いて、それらを中性又は負に荷 電したアミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアラニン)に置換することに よって、細胞内外の水性環境とそれらアミノ酸との相互作用に影響を与える。Cu nninghamら,Science 244:1081-1085(1989)。次に、これらの置換に対して機能 的感受性を示すドメインを、さらなる変異又は他の変異をそれらの置換部 位に導入することによって、詳細に調べる。 したがって、アミノ酸配列変異を導入する位置は予め決定されるが、突然変異 の性質そのものを予め決定する必要はない。例えば、ある部位における突然変異 の効果を最適化するには、標的コドン又は標的領域に対してalaスキャニング又 はランダム突然変異導入を行なって、発現したgas6変種を上述のように機能的活 性についてスクリーニングする。 アミノ酸配列の欠失は一般に約1残基から30残基、より好ましくは約1残基か ら10残基の範囲であり、通常は連続的である。例えば、他のチロシンキナーゼ受 容体リガンドと実質的に相同な領域からの欠失は、gas6の機能的活性に影響を与 える可能性が高い。一般に、連続的欠失の数は、変異を施したドメインにおける gas6の三次構造(例えばβ-プリーツシート又はα-ヘリックス)が保存されるよ うに選択されるだろう。好ましい欠失変異体としては、gas6のAドメイン内の1 又はそれ以上のグルタミン酸残基(すなわち図2に示すgas6のAドメイン中のE 残基)を欠くものや、Aドメイン全体を欠くものが挙げられる。gas6の好ましい 欠失変異体は、gas6のDドメイン若しくはそのGドメインの一つである。 アミノ酸配列挿入には、1アミノ酸残基から100残基以上を含有するポリペプ チドまでにわたる長さのアミノ-及び/又はカルボキシル-末端融合と、1アミノ 酸残基又は複数アミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。配列内挿入(すなわち、 ヒトgas6アミノ酸配列内に施した挿入)は、一般的には約1〜10残基、より好ま しくは1〜5、最も好ましくは1〜3の範囲であろう。末端挿入の例としては、N-末 端メチオニル残基を持つgas6(これは組換え細胞培養におけるgas6の直接発現に よって生じうる)や、gas6の組換え宿主細胞からの分泌を改善するために異種N- 末端シグナル配列を持つgas6が挙げられる。その他の挿入としては、PCT公開番 号WO89/02922(1989年4月16日公開)に記述されているように、gas6のN-又はC- 末端に対する免疫原性ポリペプチド(例えば大腸菌trp遺伝子座によってコード される酵素やβ-ラクタマーゼのような細菌性ポリペブチド又は酵母タンパク質 )の融合や、長い半減期を持つタンパク質(免疫グロブリン定常領 域、アルブミン又はフェリチンなど)とのC-末端融合が挙げられる。 変種の第3のグループは、gas6アミノ酸配列中の少なくとも1アミノ酸残基(好 ましくは1つのみ)が除去され、そこに異なる残基が挿入されているものである 。このような置換を施すのに最も興味深い部位は、他のチロシンキナーゼ受容体 リガンドと最大の相同性を持つgas6アミノ酸配列の領域内である。これらの部位 は、gas6の機能的活性にとって重要であるかもしれない。したがって、機能的活 性を保持するには、これらの部位(特に、少なくとも3つの他の等しく保存され た部位の配列内に含まれるもの)を比較的保存的に置換する。このような保存的 置換を「好ましい置換」という標題で表1に示す。このような置換が機能的活性 に変化をもたらさないならば、より本質的な変化(表1で「典型的置換」と呼ぶ ものか、アミノ酸の種類に関して更に後述するもの)を導入して、得られる変異 gas6を機能的活性について分析してもよい。 gas6の安定性を改善するために、gas6アミノ酸配列中に挿入、欠失及び置換変 異を作成することもできる。例えば、トリプシン又は他のプロテアーゼ切断部位 は、コードされたアミノ酸配列をアルギニル残基又はリジニル残基について調べ ることによって同定される。その残基を別の残基(好ましくはグルタミンのよう な塩基性残基か、セリンのような疎水性残基)で置換するか、その残基を欠失さ せるか、若しくはその残基の直後にプロリル残基を挿入すると、これらはプロテ アーゼに対して不活性になる。また、機能的活性にとって適正なgas6のコンフォ メーションを維持するのに関与しないシステイン残基を、一般的にはセリンで置 換して、その分子の酸化的安定性を改善し、異常な架橋を防止することもできる 。 gas6のアミノ酸配列変種をコードするDNAは、当該技術分野で知られる種々の 方法によって調製される。これらの方法には、自然界からの単離(gas6の天然ア ミノ酸配列変種の場合)や、gas6の変種又は非変種型をコードする先に調製した DNAに対する部位特異的(又はオリゴヌクレオチド媒介)突然変異誘発法、PCR突 然変異導入法及びカセット突然変異導入法による調製が含まれるが、これらに限 られるわけではない。 部位特異的突然変異誘発法は、gas6 DNAの置換、欠失及び挿入変種の調製に好 ましい方法である。この技術は当該技術分野で良く知られており(例えばZoller ら,Meth.Enz.100:4668-500[1983];Zollerら,Meth.Enz.154:329.350[1987] ;Carter,Meth.Enz.154:382-403[1987];Horwitzら,Meth.Enz.185:599-611[1 990]を参照のこと)、例えば、トリプシンやT4リゾチームのアミノ酸配列変種 (これらの変種は特定の望ましい機能的性質を持つ)を生産するために使用され ている。Perryら,Science 226:555-557(1984)及びCraikら,Science 228:291- 297(1985)。 簡単に述べると、gas6 DNAの部位特異的突然変異導入を行なう際には、まず、 所望の突然変異をコードするオリゴヌクレオチドをgas6 DNAの一本鎖にハイブリ ッド形成させることによって、そのgas6 DNAを改変する。ハイブリッド形成の後 、ハイブリッド形成したそのオリゴヌクレオチドをプライマーとし、gas6 DNAの 一本鎖を鋳型として、DNAポリメラーゼを用いて完全な第2鎖を合成する。した がって、得られる二本鎖DNAには、所望の突然変異をコードする上記オリゴヌク レオチドが組込まれる。 PCR突然変異導入法も、gas6のアミノ酸配列変種を作成するのに適している。H iguchi,PCR Protocols,177-183頁(Academic Press,1990)とValletteら,Nuc.Acid s Res.17:723-733(1989)を参照のこと。簡単に述べると、少量の鋳型DNAをPCR の出発物質として使用する場合は、鋳型DNA中の対応する領域と配列がわずかに 異なるプライマーを使用することによって、そのプライマーとその鋳型の相違点 のみが鋳型配列とは異なる特定のDNA断片を比較的大量に作成することができる 。 変種を調製するもう1つの方法、すなわちカセット突然変異導入法は、Wellら ,Gene 34:315-323(1985)に記述された技術に基づく。出発物質は、変異させよ うとするgas6 DNAを含有するプラスミド(又は他のベクター)である。変異させ ようとするgas6 DNA中のコドンを同定する。同定した突然変異部位の両側には、 ユニークな制限エンドヌクレアーゼ部位がなければならない。そのような制限部 位が存在しない場合は、それらをgas6 DNA中の適当な位置に導入するための上記 オリゴヌクレオチド媒介突然変異法を用いて、それらを作成することができる。 このプラスミドDNAをこれらの部位で切断して、それを直鎖化する。 上記制限部位間のDNA配列をコードするが、所望の突然変異を含有する二本鎖オ リゴヌクレオチドは、そのオリゴヌクレオチドの2つの鎖を別個に合成した後、 それらを標準的な技術で互いにハイブリッド形成させるという標準的手法で、合 成される。この二本鎖オリゴヌクレオチドはカセットと呼ばれる。このカセット は、直鎖化した上記プラスミドの末端と適合する5'及び3'末端を持つように設計 されるので、そのプラスミドに直接連結することができる。これによって、この プラスミドは突然変異したgas6 DNA配列を含有するようになる。 gas6分子の共有結合的修飾も、本発明の範囲に包含される。例えば、共有結合 的修飾は、gas6の標的アミノ酸残基を、選択したアミノ酸側鎖又はN-若しくはC- 末端残基と反応しうる有機誘導体化試薬と反応させることによって、gas6中に導 入される。 システイニル残基は、クロロ酢酸やクロロアヤタミドのようなα-ハロ酢酸( 及び対応するアミン)と反応させて、カルボキシメチル又はカルボキシアミドメ チル誘導体を得るのが、最も一般的である。システイニル残基の誘導体化は、ブ ロモトリフルオロアセトン、α-ブロモ-β-(5-イミドゾイル)プロピオン酸、ク ロロアセチルリン酸、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィ ド、メチル2-ピリジルジスルフィド、p-クロロメルクリベンゾエート、2-クロロ メルクリ-4-ニトロフェノール又はクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾ ールとの反応によっても行われる。 ヒスチジル残基は、pH5.5〜7.0で、ジエチルピロカーボネートとの反応によっ て誘導体化される。この試薬はヒスチジル側鎖に比較的特異的だからである。臭 化p-ブロモフェナシルも有用であり、その反応はpH6.0の0.1Mカコジル酸ナトリ ウム中で行なうことが好ましい。 リジニル残基とアミノ末端残基は、コハク酸無水物又は他のカルボン酸無水物 と反応させる。これらの試薬による誘導体化は、リジニル残基の電荷を反転させ るという効果を持つ。α-アミノ含有残基の誘導体化に適した他の試薬としては 、ピコリンイミド酸メチルのようなイミドエステル、ピリドキサルリン酸、ピリ ドキサル、クロロボロヒドリド、トリニトロベンゼンスルホン酸、O-メチルイソ 尿 素、2,4-ペンタンジオン及びグリオキシレートとのトランスアミナーゼ触媒反応 が挙げられる。 アルギニル残基は1又は数種の従来試薬との反応によって修飾され、それら試 薬としては、とりわけ、フェニルグリオキサル、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロ ヘキサンジオン及びニンヒドリンが挙げられる。グアニジン官能基はpKaが高い ので、アルギニン残基を誘導体化するには、その反応をアルカリ条件下で行なう 必要がある。また、これらの試薬は、リジンの基及びアルギニンのε-アミノ基 とも反応できる。 チロシル残基の特異的修飾は、芳香族ジアゾニウム化合物又はテトラニトロメ タンとの反応によって、チロシル残基にスペクトル的標識を導入するという特別 な目的をもって行なうことができる。最も一般的には、N-アセチルイミジゾール とテトラニトロメタンを用いて、それぞれO-アセチルチロシル種と3-ニトロ誘導 体を得る。ラジオイムノアッセイに用いる標識タンパク質を調製するには、125I 又は131Iを用いてチロシル残基をヨウ素化する。上述のクロラミンT法が好適で ある。 カルボキシル側鎖(アルパルチル又はグルタミル)は、1-シクロヘキシル-3-( 2-モルホリニル-4-エチル)カルボジイミドや1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメ チルペンチル)カルボジイミドなどのカルボジイミド(R'-N=C=N-R';ここにRとR 'は異なるアルキル基を表す)との反応によって、選択的に修飾される。また、 アルパルチル残基とグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によって、 アスパラギニル残基とグルタミニル残基に変換される。 二官能性試薬による誘導体化は、gas6を診断及び/又は治療用の水不溶性支持 基盤又は表面に架橋するのに有用である。一般的に使用される架橋剤としては、 例えば1,1.ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N- ヒドロキシスクシンイミドエステル(例えば4-アジド-サリチル酸とのエステル) 、ホモ二官能性イミドエステル(3,3'-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネ ート)のようなジスクシンイミジルエステルを含む)及び二官能性マレイミド( ビス-N-マレイミド-1,8-オクタンなど)が挙げられる。メチル-3-[(p-アジドフェ ニル) ジチオ]プロピオイミデートのような誘導体化剤は、光の存在下に架橋を形成で きる光活性化中間体を与える。また、米国特許第3,969,287号、同3,691,016号、 同4,195,128号、同4,247,642号、同4,229,537号、同4,330,440号に記載の臭化シ アン活性化炭水化物のような反応性水不溶基盤とその反応性基質も、タンパク質 の固定化に使用される。 グルタミニル残基とアスパラギニル残基は、しばしば、対応するグルタミル残 基とアルパルチル残基に、それぞれ脱アミド化される。また、これらの残基は温 和な酸性条件下に脱アミド化される。これら残基のどちらの形態も本発明の範囲 に含まれる。 その他の修飾としては、プロリンとリジンのヒドロキシル化、セリル又はスレ オニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン及びヒスチジン側 鎖のα-アミノ基のメチル化、N-末端アミンのアセチル化、C-末端カルボキシル 基のアミド化が挙げられる。Creighton,Proteins:Structure and Molecular Pro perties,79.86(W.H.Freman & Co.,1983)。gas6は、米国特許第4,179,337号、 同4,301,144号、同4,496,689号、同4,640,835号、同4,670,417号又は同4,791,19 2号に記載の方法で、非タンパク質性ポリマー(例えばポリエチレングリコール 、ポリプロピレングリコール、ポリアルキレンなど)にも共有結合される。 好ましいgas6は「ヒトにおいて非免疫原性」のものである。これは、医薬的に 許容できる担体中の治療的有効量のそのポリペプチドを、ヒトの適当な組織と接 触させたときに、適当な潜伏期間(例えば8〜14日)後にそのポリペプチドを再 び投与しても、そのポリペプチドに対する刺激反応状態や抵抗状態が明示されな いことを意味する。 好ましいgas6変種は、本質的に「γカルボキシル化」されていないもの、若し くはその分子の内在性供給源(例えば血清)に由来する「天然」gas6や、gas6の γカルボキシル化を促進する(例えばビタミンKが培養培地に存在する)条件下 に培養された組換え細胞によって生産される天然gas6よりも、カルボキシル化の 程度が少ないものである。ビタミンKはカルボキシラーゼ酵素の補因子であ る。天然gas6のAドメインは数個のグルタミン酸残基を持ち、それらは通常、γ カルボキシル化される(上記Manfiolettiらを参照のこと)。したがって、gas6 の非γ-カルボキシル化変種gas6を作成する便利な方法は、天然gas6のAドメイ ンのE残基(図2参照)の1又はそれ以上を欠くgas6変種若しくはこのドメイン を欠く他のgas6断片を作成することである。γカルボキシル化の程度は、アミノ 酸配列分析か、実施例11に記載の塩化バリウム検定法によって測定できる。 「gas6拮抗薬」又は「拮抗薬(アンタゴニスト)」は、gas6の機能的活性に対 抗又は干渉する物質を意味する。gas6拮抗薬の例としては、中和抗体、Rse-IgG、Rs e細胞外ドメイン(Rse ECD)、Axl-IgG、Axl ECD、Mer-IgG及びMer ECDが挙げら れる。 「抗体」という用語は最も広義に使用され、特に、単一の抗gas6モノクローナ ル抗体(作用薬抗体及び拮抗薬抗体を含む)と、ポリエピトープ特異性を持つ抗 gas6抗体組成物を包含する。 本明細書で使用する「モノクローナル抗体」という用語は、実質上均一な抗体 の集団(すなわちその集団を構成する個々の抗体は、微量に存在すると考えられ る天然の突然変異以外は、同一である)から得られる抗体を意味する。モノクロ ーナル抗体は高度に特異的で、単一の抗原部位を指向する。また、通常は異なる 決定基(エピトープ)を指向する異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗 体調製物とは対照的に、各モノクローナルはその抗原上の単一の決定基を指向す る。 抗gas6抗体の可変ドメイン(超可変ドメインを含む)を定常ドメインと接合す ることによって(例えば「擬人化」抗体)、若しくは軽鎖を重鎖と接合すること によって、若しくはある種に由来する鎖を別の種に由来する鎖と接合することに よって生産されるハイブリッド及び組換え抗体、若しくは異種タンパク質との融 合物、並びに抗体断片(例えばFab、F(ab')2及びFv)も、起源の種や免疫グロブ リンクラス又はサブクラス名にかかわらず、それらが所望の生物学的活性を示す 限り、本明細書におけるモノクローナル抗体に含まれる(例えば、米国特許 第4,816,567号とMage及びLamoyi,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,79-97頁(Marcel Dekker,Inc.,ニューヨーク[1987])を参 照のこと)。 したがって、「モノクローナル」という修飾詞は、その抗体が実質上均一な抗 体集団から得られるという特徴を示すのであって、特定の方法によるその抗体の 生産を必要とするのだと解釈してはならない。例えば、本発明に従って使用され るモノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein,Nature 256:495(1975)に初め て記述されたハイブリドーマ法で作成してもよいし、組換えDNA法(米国特許第4 ,816,567号)によって作成してもよい。「モノクローナル抗体」は、例えばMcCa ffertyら,Nature 348:552-554(1990)に記載の技術を用いて作成されるファー ジライブラリーから単離することもできる。 非ヒト(例えばネズミ)抗体の「擬人化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来 する最小配列を含有する特殊なキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はそ れらの断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2若しくは抗体の他の抗原結合性部分 配列)である。擬人化抗体の大部分はヒト免疫グロブリン(受容抗体)であって 、その受容抗体の相補性決定領域(CDR)が、所望の特異性、親和性及び容量を 持つマウス、ラット、ヤギなどのヒト以外の種のCDR(供与抗体)に由来する残 基で置換されている。ある場合は、ヒト免疫グロブリンのFv枠組み構造領域(FR )残基が対応する非ヒト残基で置換される。また、擬人化抗体は、受容抗体にも 、輸入されるCDR又は枠組み構造配列にも存在しない残基を含んでもよい。これ らの修飾は、抗体の性能をさらに精密にし、最適化するために施される。一般に 、擬人化抗体は、少なくとも1つ、通常は2つの可変ドメイン(このうち、CDR 領域の全て又は実質上全てが非ヒト免疫グロブリンの当該領域に対応し、FR領域 の全て又は実質上全てがヒト免疫グロブリン共通配列の当該領域である)の実質 上すべてを含有するだろう。最適な擬人化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc )(通常はヒト免疫グロブリンの当該領域)の少なくとも一部をも含有するだろ う。 本明細書で用いる「中和抗体」という用語は、gas6に特異的に結合でき、かつ 、 gas6の機能的活性を生体内及び/又は試験管内で本質的に阻害又は排除できる抗 体を意味する。典型的には、中和抗体は、例えばKIRA ELISA(下記実施例4を参 照のこと)によって決定されるgas6の機能的活性を少なくとも約50%、好ましく は80%以上阻害するだろう。 gas6に対するポリクローナル抗体は、gas6とアジュバントを皮下又は腹腔内に 複数回注射することによって、動物中に生じる。gas6やそのペプチド断片を、免 疫しようとする種において免疫原性を持つ担体タンパク質(キーホールリムペッ トヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、大豆トリプシン阻害因 子など)に、二官能性試薬又は誘導体化試薬、例えばマレイミドベンゾイルスル ホスクシンイミドエステル(システイン残基を介する結合)、N-ヒドロキシスク シンイミド(リジン残基を介する結合)、グルタルアルデヒド、コハク酸無水物 、SOCl2又はR1N=C=NR(RとR1は異なるアルキル基を表す)などを用いて、結合する ことも有益であろう。 動物は、上記gas6-担体タンパク質複合体を用いて、複合体1mg又は1μg(それ ぞれウサギ又はラットの場合)を3体積のフロインド完全アジュバントと混合し 、その溶液を皮内の複数箇所に注射することによって免疫される。1ヶ月後、最 初の複合体量の1/5〜1/10量をフロインド完全アジュバントに混合して、それを 複数個所に皮下注射することによって、動物を追加抗原刺激する。7〜14日後に 動物から採血し、その血清を抗gas6抗体力価について検定する。抗体力価が平坦 になるまで、動物に追加抗原刺激する。好ましくは、同じgas6の異なる担体タン パク質との複合体及び/又は異なる架橋剤による複合体を注射することによって 、動物を追加抗原刺激する。gas6の複合体と適当な担体タンパク質は、組換え細 胞培養中で融合タンパク質として生産することもできる。また、免疫応答を増進 するには、明礬のような凝集剤が用いられる。 gas6に対するモノクローナル抗体は、培養中の連続的継代細胞系によって抗体 を生産する任意の方法を用いて生産される。モノクローナル抗体を生産するのに 適した方法の例としては、Kohlerら,Nature 256:495-497(1975)の最初のハイ ブリドーマ法や、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor,J.,Immunol 133:3001 (1984);Brodeurら,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applic ations,51-63(Marcel Dekker,Inc.,ニューヨーク,1987))が挙げられる。 非ヒト抗体を擬人化する方法は、当該技術分野で良く知られている。一般に、 擬人化抗体は、ヒト以外の供給源から導入された1又はそれ以上のアミノ酸残基 を含む。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「輸入(import)」残基と 呼ばれ、通常は「輸入」可変ドメインに由来する。擬人化は当該技術分野で知ら れる方法(Jonesら,Nature,321:522-525[1986];Riechmannら,Nature,332:323 .327[1988];Verhoeyenら,Science 239:1534-1536[1988])に従って、齧歯 動物の相補性決定領域(CDR)でヒト抗体の対応する領域を置換することによっ て、行なうことができる。 別法として、現在では、免疫化した時に、内因性免疫グロブリンを生産するこ となく、ヒト抗体のすべて(full repertoire)を生産することのできる形質転 換動物(例えばマウス)を作出することもできる。例えば、キメラ及び生殖細胞 系突然変異マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合欠失は、内 因性抗体生産の完全な阻害をもたらすことが既に記述されている。この生殖細胞 系突然変異マウスにヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイを移入すると、 抗原投与時にヒト抗体の生産が起こるだろう。例えば、Jakobovitsら,PNAS 90:2 551-2555(1993);Jakobovitsら,Nature 362:255-258(1993);Bruggermannら,Year in Immuno.7:33(1993)を参照のこと。ヒト抗体は、ファージ-ディスプレーラ イブラリーで生産することもできる。Hoogenboomら,J.Mol.Biol.227:381(1991 )及びMarksら,J.Mol.Biol.222:581(1991)。 「イムノアドヘシン(immunoadhesin)」という用語は、「gas6-免疫グロブリ ンキメラ」(「gas6-Ig」)、「Rse-免疫グロブリンキメラ」(「Rse-Ig」)及 び「Mer-免疫グロブリンキメラ」(「Mer-Ig」)という表現と交換可能で、機能 的に活性なgas6(例えばそのDドメイン)、Rse又はMer(例えばそれらのECD)が免疫 グロブリン配列と結合しているキメラ分子を意味する。その免疫グロブリン配列 は免疫グロブリン定常ドメインであることが好ましいが、必ずしもそうでなくて もよい。本発明キメラの免疫グロブリン部分は、IgG1、IgG2、IgG3又は IgG4サブタイブ、IgA、IgE、IgD又はIgMから得ることができるが、IgG1又はIgG3 が好ましい。 適当な免疫グロブリン定常ドメイン配列に結合したタンパク質配列(例えばRs e又はMer受容体ECD)から構築されるキメラ(イムノアドヘシン)は当該技術分 野で知られている。文献に報告されたイムノアドヘシンには、T細胞受容体(Gas coigneら,PNAS(USA)84:2936-2940[1987])、CD4(Caponら,Nature 337:525-531[1 989];Trauneckerら,Nature 339:68-70[1989];Zettmeisslら,DNA Cell Biol .USA 9:347-353[1990];Byrnら,Nature 344:667-670[1990])、L-セレクチン(Wat sonら,J.Cell.Biol.110:2221.2229[1990];Watsonら,Nature 349:164-167[1 991])、CD44(Aruffoら,Cell 61:1303-1313[1990])、CD28及びB7(Linsley ら,J.Exp.Med.173:721-730[1991])、CTLA-4(Lisleyら,J.Exp.Med.174:561-569 [1991])、CD22(Stamenkovicら,Cell 66:1133-1144[1991])及びTNF受容体 (Ashkenaziら,PNAS(USA)88:10535-10539[1991])の融合物が含まれる。 最も単純で最も簡単なイムノアドヘシン設計では、「アドヘシン(adhesin) 」タンパク質の機能的に活性な領域を、免疫グロブリン重鎖のヒンジ及びFc領域 に結合する。本発明のgas6-、Mer-又はRse-免疫グロブリンキメラを製造する場 合、通常は、Rse又はMer受容体の細胞外ドメイン若しくはgas6(又はその断片) をコードする核酸を、免疫グロブリン定常ドメインのN-末端をコードする核酸に C-末端融合するが、N-末端融合も可能である。 通常、上記融合物では、コードされるキメラポリペプチドが、少なくとも免疫 グロブリン重鎖の機能的に活性なヒンジ、CH2及びCH3ドメインを保持するだろう 。融合は、定常ドメインのFc部分のC-末端、若しくは重鎖のCH1又は軽鎖の対応 する領域のすぐN-末端側に対しても行われる。 融合を行なう正確な位置は重大な問題ではない。特定の部位は良く知られてお り、Rse-、Mer-又はgas6-免疫グロブリンキメラの生物学的活性、分泌又は結合 特性を最適化するために選択することができる。 いくつかの態様では、本質的にWO91/08298に記述されているように、Rse-、 Mer-又はgas6-免疫グロブリンキメラが単量体、ヘテロ-又はホモ-多量体(特に 二量体又は四量体)に会合する。 好ましい態様として、gas6配列、Rse又はMer受容体細胞外ドメイン配列を免疫 グロブリンG1(IgG1)のFcドメインのN-末端に融合する。全重鎖定常領域をgas6 、Mer又はRse受容体配列に融合することもできるが、より好ましくは、IgG Fcを 化学的に規定するパパイン切断部位(すなわち、重鎖定常領域の最初の残基を11 4として、残基216)又は他の免疫グロブリンの類似の部位のすぐ上流のヒンジ領 域中に始まる配列を融合物に用いる。特に好ましい態様として、Rse又はMer受容 体又はgas6アミノ酸配列を、IgG1、IgG2又はIgG3重鎖の(a)ヒンジ領域とCH2及 びCH3、若しくは(b)CH1、ヒンジ、CH2及びCH3ドメインに融合する。融合を行 なう正確な部位を重大な問題ではなく、日常的な実験で最適な部位を決定するこ とができる。 いくつかの態様では、Rse-、Mer-又はgas6-免疫グロブリンキメラが多量体(特に ホモ二量体又は四量体)に会合する。一般に、これらの会合免疫グロブリンは、 既知の単位構造を持つだろう。基本的な四鎖構造単位は、IgG、IgD及びIgEがと る形態である。より高分子量の免疫グロブリンでは四鎖単位が繰り返される。Ig Mは一般に、ジスルフィド結合で互いに結合した四基本単位の五量体として存在 する。IgAグロブリンと、時にはIgGグロブリンも、血清中で多量体型で存在する 。多量体の場合は、四単位のそれぞれが同じ場合もあるし、異なる場合もある。 また、Rse、Mer又はgas6配列を、キメラ重鎖を含有する免疫グロブリンが得ら れるように、免疫グロブリンの重鎖配列と軽鎖配列の間に挿入してもよい。この 態様では、Rse、Mer又はgas6配列を、免疫グロブリンの各アーム中の免疫グロブ リン重鎖の3'末端に、ヒンジとCH2ドメインの間か、CH2ドメインとCH3ドメイン の間で融合する。同様の構築は、Hoogenboomら,Mol.Immunol.28:1027-1037(199 1)に報告されている。 免疫グロブリン軽鎖の存在は本発明のイムノアドヘシンには必要でないが、免 疫グロブリン軽鎖が、Rse、Mer又はgas6-免疫グロブリン重鎖融合ポリペプチド に共有結合して存在するか、Rse又はMer受容体又はgas6に直接融合して存在する かもしれない。前者の場合は、通常、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、R se-、Mer-又はgas6-免疫グロブリン重鎖融合タンパク質をコードするDNAと同時 に発現させる。分泌時に、重鎖と軽鎖は共有結合して、ジスルフィド結合した2 つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対を含む免疫グロブリン様構造をとるだろう。こ のような構造の調製に適した方法は、例えば米国特許第4,816,567号に開示され ている。 好ましい態様では、本発明イムノアドヘシンの構築に使用する免疫グロブリン 配列がIgG免疫グロブリン重鎖定常ドメインに由来する。ヒトイムノアドヘシン については、ヒトIgG1及びIgG3免疫グロブリン配列の使用が好ましい。IgG1を用 いる主な利点は、IgG1イムノアドヘシンを固定化プロテインAで効率よく精製で きるということである。これに対して、IgG3の精製にはプロテインGが必要であ り、これはかなり汎用性の低い媒体である。しかし、特定の免疫アドヘシン構築 についてIg融合パートナーを選択する際には、免疫グロブリンの他の構造的特徴 と機能的特徴も考慮すべきである。例えば、IgG3ヒンジはかなり長く、柔軟なの で、IgG1に融合すると正しく折りたたまないか、正しく機能しないかもしれない 大きな「アドヘシン」ドメインを適合させることもできる。考慮すべきもう1つ の問題は結合価だろう。IgG免疫グロブリンは二価のホモ二量体であるが、IgAや IgMのようなIgサブタイプは、基本Igホモ二量体単位のそれぞれ二量体又は五量 体を生じうる。生体内で応用するために設計されるRse-、Mer-又はgas6-イムノ アドヘシンについては、Fc領域によって特定されるエフェクター機能と薬物動力 学的性質も重要である。IgG1、IgG2及びIgG4は、いずれも21日間の生体内半減期 を持つが、補体系を活性化する時のそれらの相対効力は異なる。IgG4は補体を活 性化せず、IgG2は補体活性化がIgG1よりかなり弱い。また、IgG1とは異なり、Ig G2は単核細胞又は好中球上のFc受容体に結合しない。IgG3は補体活性化には最適 であるが、その生体内半減期は他のIgGイソタイプの3分の1程度である。ヒト の治療薬として使用するために設計されるイムノアドヘシンにとって重要なもう 1つの問題は、特定のイソタイプのアロタイプ変種の数である。一般 に、血清学的に定義されるアロタイプが少ないIgGイソタイプほど好ましい。例 えば、IgG1は血清学的に定義されるアロタイプ部位を4つしか持たず、そのうち の2つ(G1m及び2)がFc領域に位置する。これらの部位のうちの一つ(G1m1)は非免 疫原性である。これに対して、IgG3には血清学的に定義されるアロタイプが12あ って、これらは全てFc領域内にあり、非免疫原性のアロタイプを持つのは、これ らの部位のうちの3つ(G3m5、11及び12)に過ぎない。したがって、γ3イムノ アドヘシンの潜在的免疫原性は、γ1イムノアドヘシンより大きい。 gas6、Mer及びRseイムノアドヘシンを構築する最も便利な方法は、gas6、Mer 又はRse部分をコードするcDNA配列を、Ig cDNA配列に、枠を合わせて(in frame )融合することである。しかし、ゲノムIg断片への融合も使用できる(例えばGa scoigneら,上記;Aruffoら,Cell 61:1303-1313[1990];Stamenkovicら,Cell 66:11 33-1144[1991]を参照のこと)。後者のタイプの融合物は、発現にIg調節配列 の存在を必要とする。IgG重鎖定常領域をコードするcDNAは、脾臓又は末梢血液 リンパ球由来のcDNAライブラリーから、公表された配列に基づいて、ハイブリッ ド形成又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術で単離することができる。「アド ヘシン」をコードするcDNAとイムノアドヘシンのIg部分をコードするcDNAを、選 択した宿主細胞内で効率のよい発現を指令するプラスミドベクターに、縦一列に 挿入する。哺乳動物細胞内での発現には、pRK5系ベクター(Schallら,Cell 61:36 1-370[1990])とCDM8系ベクター(Seed,Nature 329:840[1989])が有用である。 正確な接合部は、計画した接合コドン間の余分な配列を、オリゴヌクレオチド特 異的欠失突然変異導入法(Zoller及びSmith,Nucleic Acids Res.10:6487[1982 ];Caponら,Nature 337:525-531[1989])で除去することによって作成できる 。各半分が所望の接合部の両側の配列に相補的な合成オリゴヌクレオチドを用い ることができる。理想的には、これらは36〜48マーである。別法として、PCR技 術を用いて、この分子の2つの部分を適当なベクターに枠を合わせて結合させる こともできる。 イムノアドヘシン発現用の宿主細胞の選択は、主として発現ベクターに依存す る。考慮すべきもう1つの問題は、必要とされるタンパク質量である。ミリグラ ム量は、しばしば、一過性トランスフェクションによって生産できる。例えば、 アデノウイルスEIA形質転換293ヒト胚腎臓細胞系は、リン酸カルシウム法の変法 によって、pRK-5系ベクターで一時的にトランスフェクションされて、十分なイ ムノアドヘシンを発現させる。CDM8系ベクターは、DEAE-デキストラン法によるC OS細胞のトランスフェクションに使用できる(Aruffoら,Cell 61:1303-1313[19 90];Zettmeisslら,DNA Cell Biol.(US)9:347-353[1990])。より大量のタン パク質を望むのであれば、宿主細胞系の安定なトランスフェクション後に、イム ノアドヘシンを発現させることができる。例えば、pRK5系ベクターは、ジヒドロ 葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードしG418に対する耐性を付与する追加プラスミ ドと共に、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に導入できる。G418耐性ク ローンを培養から選択できる。これらのクローンを、DHFR阻害因子メトトレキセ ートのレベルを増大させつつ生育し、DHFR配列とイムノアドヘシン配列をコード する遺伝子コピーの数が同時に増幅するクローンを選択する。イムノアドヘシン が疎水性のリーダー配列をそのN-末端に含有するならば、それはトランスフェク ションされた細胞によってプロセシングされ、分泌されるかもしれない。より複 雑な構造を持つイムノアドヘシンの発現には、特に適合させた宿主細胞が必要か もしれない。例えば、軽鎖やJ鎖のような成分は、ある種の骨髄腫又はハイブリ ドーマ宿主細胞によって供給されうる(Gascoigneら,上記;Martinら,J.Virol.6 7:3561.3568[1993])。 イムノアドヘシンは、アフィニティークロマトグラフィーによって便利に精製 できる。アフィニティーリガンドとしてプロテインAが適当であるかどうかは、 そのキメラに使用される免疫グロブリンFcドメインのイソタイプと種に依存する 。プロテインAは、ヒトγ1、γ2又はγ4重鎖に基づくイムノアドヘシンの精 製に使用できる(Lindmarkら,J.Immunol.Meth.62:1-13[1983])。プロテイン Gは、全てのマウスイソタイプとヒトγ3に推奨される(Gussら,EMBO J.5:1567 1575[1986])。アフィニティーリガンドを結合させる基盤は、たいていアガロ ースであるが、他の基盤も利用できる。制御多孔質ガラス(controlled poregla ss)やポリ(スチレンジビニル)ベンゼンのように機械的に安定な基盤を使 用すれば、アガロースの場合よりも速い流速と短い処理時間が可能になる。プロ テインA又はGアフィニティーカラムにイムノアドヘシンを結合させる条件は、 もっぱら、そのFcドメインの特徴(つまりその種とイソタイプ)によって決まる 。一般に、適切なリガンドを選択すれば、無調節の培養液から直接的に、効率の 良い結合が起こる。イムノアドヘシンのきわだった特徴の一つは、ヒトγ1分子 の場合、プロテインAに関する結合能が、同じFcタイプの抗体よりもいくらか減 少するということである。結合したイムノアドヘシンは、酸性pH(3.0か、それ 以上)か、温和なカオトロピック塩を含有する中性pH緩衝液で、効率よく溶出さ せることができる。このアフィニティークロマトグラフィー操作によって、>95 %純粋なイムノアドヘシン調製物を得ることができる。 本明細書で使用する「Rse細胞外ドメイン」又は「Rse ECD」という表現は、Rs e受容体の細胞外ドメインのリガンド結合機能を分担するポリペプチド配列を意 味する。「リガンド結合機能」とは、gas6のようなRseリガンドを結合するその ポリペプチドの能力を意味する。したがって、必ずしも全細胞外ドメインを含む 必要がないことも多い。より小さい断片でもリガンド結合には十分であることが 一般に認められるからである。ECDという用語は、Rse受容体の細胞質ドメインと 疎水性膜貫通配列(さらに膜貫通ドメインのアミノ末端側の1〜20アミノ酸を含 んでもよい)が欠失しているポリペプチド配列を包含する。一般に、Rse受容体 のECDは、Markら(上記)に開示されている成熟Rse受容体のほぼ1から428まで のアミノ酸残基を含む。 本明細書で使用する「Mer細胞外ドメイン」又は「Mer ECD」という表現は、Me r受容体の細胞外ドメインのリガンド結合機能を分担するポリペプチド配列を意 味する。「リガンド結合機能」とは、gas6のようなMerリガンドを結合するその ポリペプチドの能力を意味する。したがって、必ずしも全細胞外ドメインを含む 必要はない。より小さい断片でもリガンド結合には十分であることが一般に認め られるからである。ECDという用語は、Mer受容体の細胞質ドメインと疎水性膜貫 通配列(さらに膜貫通ドメインのアミノ末端側の1〜20アミノ酸を含んでもよい )が欠失しているポリペプチド配列を包含する。一般に、Mer受容体の ECDは、GenBankデータベース(受入番号U08023)に開示されている成熟ヒトMer 受容体のほぼ1から499までのアミノ酸残基を含む。 本明細書で使用する「エピトープ標識(した)」という用語は、「標識(tag )ポリペプチド」に融合した機能的に活性なgas6を含むキメラポリペプチドを意 味する。その標識ポリペプチドは、それに対する抗体を作りうるエピトープを提 供するに足るだけの残基を持つと共に、gas6の機能的活性を妨害しない程度に短 い。また、標識ポリペプチドは、それに対する抗体が他のエピトープと実質的に 交差反応しないように、かなり独特(ユニーク)であることが好ましい。好適な 標識ポリペプチドは一般に少なくとも6アミノ酸残基を持ち、通常は約8〜50ア ミノ酸残基(好ましくは約9〜30残基)である。エピトープ標識は一般にgas6の アミノ末端かカルボキシル末端で分析される。このようなエピトープ標識型のga s6が望ましい。その存在を、その標識ポリペプチドに対する標識(labeled)抗 体を用いることによって検出できるからである。また、エピトープ標識を与える と、抗標識抗体を用いるアフィニティー精製によって、そのgas6を容易に精製で きるようにもなる。 標識ポリペプチドとその抗体は当該技術分野で良く知られている。その例とし ては、flu HA標識ポリペプチドとその抗体12CA5(Fieldら,Mol.Cell.Biol.8:215 9-2165[1988]);c-myc標識とそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10 抗体(Evanら,Molecular and Cellular Biology5(12):3610-3616[1985]);単純 疱疹ウイルス糖タンパク質D(gD)標識及びその抗体(Paborskyら,Protein Engine ering 3(6):547-553[1990])が挙げられる。他の標識ポリペプチドも開示され ている。フラッグ(Flag)-ペプチド(Hoppら,Bio Technology 6:1204-1210[1988])、 KT3エピトープペプチド(Martinら,Science 255:192-194[1992])、α-チュー ブリンエピトープペプチド(Skinnerら,J.Biol.Chem.266:15163-15166[1991] )及びT7遺伝子10タンパク質ペプチド標識(Lutz-Freyermuthら,Proc.Natl.Acad .Sci.USA 87:6393-6397[1990])などがその例である。標識ポリペプチドを選 択したら、それに対する抗体は、本明細書に開示する技術で生成させることがで きる。 gas6-標識ポリペプチド融合物の最も便利な構築法は、gas6部分をコードするc DNA配列を標識ポリペプチドDNAに枠を合わせて融合し、得られたDNA融合構築物 を適当な宿主細胞で発現させることである。本発明のgas6-標識ポリペプチドキ メラを製造する際には、通常は、gas6(又はその断片)をコードする核酸を、そ の3'末端で、標識ポリペプチドのN-末端をコードする核酸に融合するが、5'融合 も可能である。 エピトープ標識gas6は、抗標識抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィ ーによって便利に精製できる。このアフィニティー抗体を結合する基盤は、ほと んどの場合、アガロースであるが、他の基盤も利用できる[例えば制御多孔質ガ ラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン]。エピトープ標識gas6は、例えば緩衝 液のpHやイオン強度を変えたり、カオトロピック試薬を加えることなどによって 、アフィニティーカラムから溶出させることができる。 「外因性」化合物とは、その化合物で処置される細胞及び/又は哺乳動物にと って外来性である化合物、若しくはその細胞又は哺乳動物中に認められる化合物 に相同ではあるが、その細胞又は哺乳動物の外部で生産されたものを意味するも のとする。 本明細書に開示する種々のタンパク質の説明に「単離(された)」という表現 を使用する場合、それは、同定され、かつ、その自然環境の一成分から分離及び /又は回収されているタンパク質を意味する。その自然環境の汚染成分とは、そ のタンパク質の診断的又は治療的使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモンそ の他のタンパク質性溶質若しくは非タンパク質性溶質などが含まれる。好ましい 態様では、タンパク質を、(1)スピンニングカップシークエネーターを用いて 、N-末端アミノ酸配列又は内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得ることがで きる程度に精製するか、(2)クーマシーブルーか、好ましくは銀染色を用いて 、非還元条件又は還元条件下にSDS-PAGEで均一になるまで精製する。 「本質的に純粋な」タンパク質とは、その組成物の全重量に対して少なくとも 約99重量%、好ましくは少なくとも約95%のタンパク質を含有する組成物を意味 する。「本質的に均一な」タンパク質とは、その組成物の全重量に対して少な くとも約90重量%のタンパク質を含有する組成物を意味する。 哺乳類「Rse受容体」又は「Rse受容体プロテインチロシンキナーゼ」(すなわ ち「rPTK」)は、Markら,J.Biol.Chem.269:10720(1994)に記述されている。本 願で使用する場合、「Rse受容体」という表現は、興味ある細胞中に存在する内 因性Rse受容体と、例えば細胞がRse受容体をコードする核酸で形質転換されてい るために、その細胞中に存在するRse受容体とを意味する。したがって、Rse受容 体は、「機能的に活性」である(すなわち、gas6のようなRseリガンドで活性化 されうる)限り、Markらが記述した天然Rse受容体の一つのアミノ酸変種又は共 有結合的変種(covalent variant)であってもよい。好ましいRse受容体は、ヒ ト細胞の細胞膜に存在する内因性ヒトRse受容体である。 「Rse受容体を活性化する」という表現は、Rse受容体の細胞内キナーゼドメイ ンに基質ポリペプチド中のチロシン残基をリン酸化させる操作を意味する。その チロシン残基は、そのRse受容体に固有のものであることも多い(すなわち、「 基質」にはRse受容体の細胞内ドメインも含まれる)。したがって、活性化の程 度は、Rse受容体「自己リン酸化」と相関する。Rse受容体自己リン酸化は、抗ホ スホチロシン抗体を用いるウェスタンブロッティング(実施例3参照)か、KIRA ELISA(実施例4参照)によって検出できる。しかし、Rse受容体の活性化は、R se受容体以外の基質のリン酸化とも相関しうる(例えばそのRse受容体の近傍に 存在するチロシンキナーゼ)。これは、その基質のチロシンリン酸化を(例えば ウェスタンブロッティングで)測定することによって検出できる。 哺乳類「Mer受容体」は、Grahamら,Cell Growth Differ.5:647(1994)(正し いヒトMer配列についてはGenBankデータベース受入番号U08023を参照のこと)と Grahamら,Oncogene 10(12):2349-2359(1995)に記述されている。本願で使用す る場合、「Mer受容体」という表現は、興味ある細胞中に存在する内因性Mer受容 体と、例えば細胞がMer受容体をコードする核酸で形質転換されているために、 その細胞中に存在するMer受容体とを意味する。好ましいMer受容体は、ヒト細胞 中に存在する内因性ヒトMer受容体である。 「Mer受容体を活性化する」という表現は、Mer受容体の細胞内キナーゼドメ インに基質ポリペプチド中のチロシン残基をリン酸化させる操作を意味する。そ のチロシン残基は、そのMer受容体に固有のものであることも多い(すなわち、 「基質」にはMer受容体の細胞内ドメインも含まれる)。したがって、活性化の 程度は、Mer受容体「自己リン酸化」と相関する。Mer受容体自己リン酸化は、抗 ホスホチロシン抗体を用いるウェスタンブロッティングか、KIRA ELISA(下記参 照)によって検出できる。しかし、Mer受容体の活性化は、Mer受容体以外の基質 のリン酸化とも相関しうる(例えばそのMer受容体の近傍に存在するチロシンキ ナーゼ)。これは、その基質のチロシンリン酸化を(例えばウェスタンブロッテ ィングで)測定することによって検出できる。 「細胞の生存を増進する」という表現は、試験管内又は生体内における細胞の 存在期間を、gas6にさらしていない無処置の細胞よりも増大させる作用を意味す る。 「細胞の増殖を増進する」という表現は、試験管内又は生体内におけるその細 胞の成長及び/又は再生の程度を、無処置の細胞よりも増大させる操作を包含す る。細胞培養中の細胞増殖の増大は、gas6にさらす前とgas6にさらした後に、細 胞数を数えることによって検出できる(本明細書の実施例9を参照のこと)。増 殖の程度は、集密(コンフルエンシー)の程度を顕微鏡で調べることによって、 定量化できる。細胞増殖は、その細胞による3H取り込みを測定することによって も定量化できる。 「細胞の分化を増進する」とは、もとの細胞とは異なる特徴又は機能を1つ以 上獲得又は保持する程度(すなわち細胞分化)を増大させる作用をいう。これは 、その細胞の表現型の変化についてスクリーニングする(例えばその細胞の形態 変化を同定する;下記実施例9参照)ことによって検出できる。 「生理学的に許容できる」担体、賦形剤又は安定化剤とは、それらにさらされ る細胞又は哺乳動物にとって、使用する用量及び濃度で毒性を示さない物をいう 。生理学的に許容できる担体はpH緩衝水溶液であることが多い。生理学的に許容 できる担体の例としては、リン酸、クエン酸その他の有機酸などといった緩衝剤 ;アスコルビン酸などの抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド; 血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロ リドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニ ン又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、デキストリンなどを含 む単糖類、二糖類その他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールや ソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩形成対イオン;及び /又はTween、Pluronic又はポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン界 面活性剤が挙げられる。 「処置(処理、治療)する」、「処置(処理、治療)」及び「治療(療法)」 という用語は、治療、予防及び防止を意味する。 「哺乳動物」という用語は、哺乳類に分類される任意の哺乳動物を意味し、ヒ ト、牛、馬、犬及び猫などが含まれる。本発明の好ましい態様では、その哺乳動 物はヒトである。 「制御配列」という表現は、特定の宿主生物における作動可能に連結したコー ディング配列の発現に必要なDNA配列を意味する。原核生物に適した制御配列に は、例えば、プロモーター、任意にオペレーター配列、リボソーム結合部位、あ るいはまだよくわかっていないその他の配列が含まれる。真核細胞は、プロモー ター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを使用することが知られている 。 核酸がもう1つの核酸配列と機能的な関係に置かれるとき、その核酸は「作動 可能に連結(operably linked)」されるという。例えば、プレ配列又は分泌リ ーダーのDNAは、それがあるポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質とし て発現するならば、そのポリペプチドのDNAに作動可能に連結しており、プロモ ーターやエンハンサーは、それがあるコーディング配列の転写に影響を与えるな らば、そのコーディング配列に作動可能に連結しており、また、リボソーム結合 部位は、それが翻訳を促進するように位置するならば、コーディング配列に作動 可能に連結している。一般に、「作動可能に連結」とは、連結されるDNA配列が 連続的であり、分泌リーダーの場合は、連続的かつ解読相が一致していることを 意味する。しかし、エンハンサーは連続していなくてもよい。連結(linking) は、便利な制限部位でのライゲーション(連結)によって達成される。そのよう な部位が存在しない場合は、従来通り、合成オリゴヌクレオチドアダプター又は リンカーを使用する。 2.gas6 生産 天然gas6又はgas6変種の生産に適した技術は当該技術分野で良く知られており 、このポリペプチドの内在性供給源(例えば血清)からのgas6の単離、ペブチド 合成(ペブチド合成装置によるもの)及び組換え技術(又はこれら技術の組み合 わせ)が含まれる。天然gas6又はgas6変種の生産に好ましい技術は、組換え技術 である。好ましいgas6変種は、本質的にγカルボキシル化されていないものであ る。これは、いくつかの方法で達成できるが、最も便利な方法では、通常はγカ ルボキシル化される天然gas6のAドメイン中のグルタミン酸残基の1又はそれ以 上を欠く分子を作成する。任意に、全Aドメインを酵素的切断によって天然分子 から除去してもよいが、通常は、所望の断片(例えばそのDドメイン又はGドメ イン)をコードする核酸分子を単離するだろう。この核酸分子は天然のgas6核酸 から得ることができる。 天然gas6をコードする核酸は、そのポリペプチドmRNAを保持し、かつ、それを 検出できるレベルで発現させると考えられる組織(例えば脳組織;下記実施例6 参照)から調製したcDNAライブラリーから単離することができる。ライブラリー は、gas6遺伝子又はそれによってコードされるタンパク質を同定するために設計 されたブローブ(抗体や約20〜80塩基のオリゴヌクレオチドなど)を用いてスク リーニングされる。選択したブローブによるcDNAライブラリー又はゲノムライブ ラリーのスクリーニングは、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manu al(ニューヨーク:Cold Spring Harbor Press,1989)の10〜12章に記述されて いるような標準的手法で行なうことができる。 野生型核酸の改変によってgas6突然変異体を作成する技術については上述した 。天然gas6又はgas6変種をコードする核酸(例えばcDNAやゲノムDNA)を、さら なるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために、複製可能ベクターに挿入す る。多くのベクターを利用できる。ベクター成分は一般に、次に挙げ る成分の1又はそれ以上を含むが、これらに限られるわけではない:シグナル配 列、複製起点、1又はそれ以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモー ター及び転写終結配列。 gas6ポリペプチドは、シグナル配列若しくは成熟タンパク質又はポリペプチド のN-末端に特異的切断部位を持つ他のポリペプチドとの融合ポリペプチドとして 生産できる。一般に、シグナル配列は、そのベクターの一成分であってもよいし 、そのベクターに挿入するDNAの一部であってもよい。その宿主細胞によって認 識されプロセシングされる(すなわちシグナルペプチダーゼによって切断される )異種シグナル配列を選択することが好ましい。原核宿主細胞の場合は、そのシ グナル配列を、例えばアルカリ性ホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp又は熱 安定性エンテロトキシンIIリーダーからなる群より選択される原核シグナル配列 で置換することができる。酵母分泌の場合は、天然のシグナル配列を、例えば酵 母インベルターゼリーダー、α因子リーダー(サッカロミセスのα因子リーダー 及びKluyveromycesのα因子リーダー(これは1991年4月23日発行の米国特許第5 ,010,182号に記載されている)を含む)、酸性ホスファターゼリーダー、C.alab icansグルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日に公開されたEP362,179)、又 は1990年11月15日に公開されたWO90/13646に記載のシグナルなどに置換すること ができる。哺乳類細胞発現の場合は、天然のgas6シグナル配列でも十分であるが、 他の哺乳類シグナル配列やウイルス分泌リーダー(例えばヘルペスシンプレック スgDシグナル)も好適でありうる。このような前駆体領域のDNAは、天然gas6/gas 6変種をコードするDNAに読み枠を合わせて連結される。 発現ベクターとクローニングベクターは共に、選択した1又はそれ以上の宿主 細胞におけるそのベクターの複製を可能にする核酸配列を含有する。一般にクロ ーニングベクターでは、この配列は、そのベクターをその宿主染色体DNAとは独 立に複製させるものであり、複製起点又は自律的に複製する配列を含む。そのよ うな配列は種々の細菌、酵母及びウイルスについて良く知られている。プラスミ ドpBR322由来の複製起点はほとんどのグラム陰性菌に適し、2μプラスミド起 点は酵母に適し、種々のウイルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VS V又はBPV)は哺乳類細胞中のクローニングベクターに有用である。一般に、複製 起点成分は哺乳類発現ベクターには必要ない(通常はSV40起点が使用されるが、 それはSV40起点が初期プロモーターを含有するからに過ぎない)。 発現ベクターとクローニングベクターは、選択遺伝子(選択可能マーカーとも 呼ばれる)を含有すべきである。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質その他 の毒素(例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート、テトラサイク リンなど)に対する耐性を付与するタンパク質、(b)自主栄養欠損を補うタン パク質、若しくは(c)複合培地からは利用できない不安定な(critical)栄養 分を供給するタンパク質(例えばバチルス用のD-アラニンラセマーゼをコードす る遺伝子)をコードする。選択法の一例では、宿主細胞の成長を阻止する薬物を 使用する。異種遺伝子で首尾よく形質転換された細胞は、薬物耐性を付与するタ ンパク質を生産するので、この選択法を生き延びることができる。このような優 勢選択の例では、薬物ネオマイシン(Southernら,J.Molec.Appl.Genet.1:327[1 982])、ミコフェノール酸(Mulliganら,Science 209:1422[1980])又はハイ グロマイシン(Sugdenら,Mol.Cell.Biol.5:410-413[1985])を使用する。上記 3種類の例では、真核制御下にある細菌遺伝子を用いて、適当な薬物(それぞれ G418若しくはネオマイシン(ゲネチシン)、xgpt(ミコフェノール酸)又はハイ グロマイシン)に対する耐性を伝達する。 哺乳類細胞に適した選択可能マーカーのもう1つの例は、gas6核酸を取り込む 能力を持つ細胞の同定を可能にするもの(DHFRやチミジンキナーゼなど)である 。哺乳類細胞形質転換体を、その形質転換体のみが(上記マーカーを取り込んで いるために)唯一順応して生存できる選択圧下に置く。選択剤の濃度が連続的に 変化する条件下で形質転換体を培養することによって選択圧をかけると、選択遺 伝子とgas6変種をコードするDNAの両方が増幅する。増幅したDNAから増大した量 のgas6が合成される。増幅可能遺伝子のその他の例としては、メタロチオネイン -I及び-II(好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子)、アデノシンデアミナ ーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなどが挙げられる。 例えば、まず、形質転換体のすべてをDHFRの競争的拮抗薬であるメトトレキセ ート(Mtx)の入った培養培地で培養することによって、DHFR選択遺伝子で形質 転換された細胞を同定する。野生型DHFRを使用する場合に適当な宿主細胞は、Url aub及びChasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980)に記述されているよう に調製、増殖される、DHFR活性を欠くチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞 系である。次に、形質転換された細胞を、さらに高レベルのメトトレキセートに さらす。これはDHFR遺伝子の多重コピーの合成をもたらすと共に、発現ベクター を構成する他のDNA(gas6をコードするDNAなど)の多重コピーの合成をももたら す。例えばMtxに高度に耐性な突然変異DHFR遺伝子を使用する場合(EP117,060) は、内因性DHFRが存在しても、この増幅技術を、その他の点では好適な宿主(例 えばATCC No.CCL61 CHO-K1)に使用することができる。 また、gas6、野生型DHFRタンパク質及びもう1つの選択可能マーカー(アミノ グリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)など)をコードするDNA配列で 形質転換又は同時形質転換された宿主細胞(特に内因性DHFRを含有する野生型宿 主)は、アミノグリコシド抗生物質(例えばカナマイシン、ネオマイシン又はG41 8)のような選択可能マーカー用の選択剤を含有する培地での細胞成長によって 選択できる。米国特許第4,965,199号を参照のこと。 酵母での使用に適した選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7中に存在するtrp1遺 伝子である(Stinchcombら,Nature 282:39[1979];Kingsmanら,Gene 7:141[1979 ];又はTschemperら,Gene 10:157[1980])。trp1遺伝子は、トリプトファン 中で成長する能力を欠く酵母の突然変異株(例えばATCC No.44076又はPEP4-1(J ones,Genetics 85:12[1977]))に選択マーカーを提供する。酵母宿主細胞ゲ ノムにおけるtrp1損傷の存在は、トリプトファン不在下での成長によって形質転 換を検出するのに効果的な環境を提供する。同様に、Leu2欠損酵母株(ATCC 20, 622又は38,626)は、Leu2遺伝子を保持する既知のプラスミドによって補完され る。 また、1.6μm環状プラスミドpKD1に由来するベクターは、Kluyveromyces 酵母の形質転換に使用できる。Bianchiら,Curr.Genet.12:185(1987)。さらに 最近になって、組換えウシキモシンの大規模生産用の発現系がK.lactisについて 報告されている。Van den Berg,Bio/Technology 8:135(1990)。Kluyveromycesの工 業用株による成熟組換えヒト血清アルブミン分泌用の安定なマルチコピー発現ベ クターも開示されている。Fleerら,Bio/Technology 9:968-975(1991)。 発現ベクターとクローニングベクターは、通常、その宿主生物によって認識さ れ、かつ、gas6核酸に作動可能に連結されるプロモーターを含有する。種々の潜 在的宿主細胞に認識される多数のプロモーターが、良く知られている。これらの プロモーターは、その供給源DNAから制限酵素消化によってそのプロモーターを 取り出し、その単離したプロモーター配列をベクター中に挿入することによって 、gas6をコードするDNAに作動可能に連結される。 原核宿主での使用に適したプロモーターとしては、β-ラクタマーゼ及びラク トースプロモーター系(Changら,Nature 275:615[1978];Goeddelら,Nature 2 81:544[1979])、アルカリ性ホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモ ーター系(Goeddel,Nucleic Acids Res.8:4057[1980]及びEP36,776)及びtac プロモーターなどのハイブリッドプロモーター(deBoerら,Proc.Natl.Acad.Sci.8 0:21-25[1983])が挙げられる。ただし、他の既知の細菌プロモーターも好適で ある。これらのヌクレオチド配列は公表されているので、その配列を利用すれば 、当業者は、リンカーやアダプターを用いて必要な制限部位を供給することによ って、gas6をコードするDNAにそれらを作動可能に連結することができる(Siebe nlistら,Cell 20:269[1980])。細菌系で使用するプロモーターは、gas6をコ ードするDNAに作動可能に連結したシャイン・ダルガノ(S.D.)配列をも含有す るだろう。 真核生物用のプロモーター配列も知られている。基本的に全ての真核遺伝子は 、転写が開始する部位から約25〜30塩基上流に、高AT含有領域を持つ。多くの遺 伝子の転写開始点から70〜80塩基上流に認められるもう1つの配列はCXCAAT領域 (Xはどのヌクレオチドでもよい)である。ほとんどの真核遺伝子の3'末端には AATAAA配列があり、この配列はコーディング配列の3'末端にポ リAテイルを加えるためのシグナルであろう。これらの配列はすべて、真核発現 ベクターへの挿入に適している。 酵母宿主での使用に適した促進配列の例としては、3-ホスホグリセリン酸キナ ーゼ(Hitzemanら,J.Biol.Chem.255:2073[1980])や他の解糖系酵素(Hessら, J.Adv.Enzyme Reg.7:149[1968]及びHolland,Biochemistry 17:4900[1978]) (例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソ キナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコー ス-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナー ゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ及びグルコ キナーゼなど)のプロモーターが挙げられる。 生育条件によって転写を制御できるという付加的な利点を有する誘導性プロモ ーターであるその他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イ ソチトクロームC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関係する分解酵素、メタロ チオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース とガラクトースの資化をもたらす酵素のプロモーター領域である。酵母発現での 使用に適したベクターとプロモーターは、Hitzmanら,EP73,657Aに、さらに記述 されている。酵母エンハンサーも酵母プロモーターと共に使用すると有利である 。 哺乳類宿主細胞におけるベクターからのgas6転写は、例えば、ポリオーマウイ ルス、鶏痘ウイルス(1989年7月5日公開のUK2,211,504)、アデノウイルス( アデノウイルス2など)、ウシ乳頭腫ウイルス、鳥類肉腫ウイルス、サイトメガ ロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、最も好ましくはシミアンウイ ルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるプロモーター、アクチンプ ロモーターや免疫グロブリンプロモーターなどの異種哺乳類プロモーターから得 られるプロモーター、又は熱ショックプロモーターから得られるプロモーターな どによって制御される。 SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点をも含むS V40制限断片として便利に得られる。Fiersら,Nature 273:113(1978);Mulliga n及びBerg,Science 209:1422.1427(1980);Palvakisら,Proc.Natl. Acad.Sci.USA 78:7398-7402(1981)。ヒトサイトメガロウイルスの即時型初期 プロモーターは、HindIII制限断片として便利に得られる。Greenaway,Gene 18:3 55-360(1982)。ウシ乳頭腫ウイルスをベクターにして哺乳類宿主中でDNAを発 現させるための系は、米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の変法 は、米国特許第4,601,978号に記述されている。免疫インターフェロンをコード するcDNAのサル細胞での発現に関するGrayら,Nature 295:503-508(1982);単 純疱疹ウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの制御下におけるヒトβ- インターフェロンcDNAのマウス細胞での発現に関するReyesら,Nature 297:598- 601(1982);培養マウス及びウサギ細胞におけるヒトインターフェロンβ1の発 現に関するCanaaci及びBerg,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:5166-5170(1982); ラウス肉腫ウイルス長末端反復をプロモーターとして利用する、CV-1サル腎臓細 胞、ニワトリ胚繊維芽細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞及びNI H-3T3細胞での細菌CAT配列の発現に関するGormanら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79 :6777-6781(1982)をも参照のこと。 高等真核生物によるgas6をコードするDNAの転写は、しばしば、そのベクター にエンハンサー配列を挿入することによって増やされる。エンハンサーは方向と 位置には比較的無関係であり、転写単位の5'側(Laimins,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:993[1981])及び3'側(Luskyら,Mol.Cell.Biol 3:1108[1983」)、イント ロン内(Banerjiら,Cell 33:729[1983])並びにコーディング配列自体の中(O sborneら,Mol.Cell.Bio.4:1293[1984])に見つかっている。現在では、哺乳類 遺伝子(グロビン、エステラーゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びイン スリン)に由来する多くのエンハンサー配列が知られているが、通常は、真核細 胞ウイルス由来のエンハンサーが使用されるだろう。複製起点の後期側(bp100- 270)にあるSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハ ンサー、複製起点の後期側にあるポリオーマエンハンサー及びアデノウイルスエ ンハンサーなどがその例である。真核プロモーター活性化用の増強要素について はYaniv,Nature 297:17-18(1982)をも参照のこと。エンハンサーをベクターに 接合する場合は、gas6をコードする配列に対して5'に接合してもよ いし、3'側に接合してもよいが、エンハンサーがプロモーターの5'側に位置する ことが好ましい。 真核宿主細胞(酵母、カビ、昆虫、植物、動物、ヒト又は他の多細胞生物に由 来する有核細胞)で使用する発現ベクターは、転写の終結に必要な配列とmRNAの 安定化に必要な配列をも含有するだろう。そのような配列は、一般に、真核細胞 又はウイルスのDNA又はcDNAの5'非翻訳領域と、時には3'非翻訳領域から入手で きる。これらの領域は、ポリアデニル化された断片としてgas6をコードするmRNA の非翻訳部分に転写されるヌクレオチド区域を含有する。 上に挙げた成分の1又はそれ以上を含有する好適なベクターの構築には、標準 的な連結技術を使用する。単離したプラスミド又はDNA断片を切断し、加工し、 望ましい形に再連結することにより、必要なプラスミドを作成する。 構築したプラスミド中の正しい配列を確認するための分析には、連結(ライゲ ーション)混合物を用いて大腸菌K12 294株(ATCC31,446)を形質転換し、妥当 ならばアンピシリン又はテトラサイクリン耐性によって、成功した形質転換体を 選択する。その形質転換体のプラスミドを調製し、制限エンドヌクレアーゼ消化 によって分析し、かつ/または、Messingら,Nucleic Acids Res.9:309(1981)の 方法若しくはMaxamら,Methods in Enzymology 65:499(1980)の方法で配列決定 する。 gas6をコードするDNAの哺乳類細胞における一過性発現を提供する発現ベクタ ーは、本発明の実施に特に有用である。一般に、一過性発現では宿主細胞内で効 率よく複製できる発現ベクターを使用するので、宿主細胞はその発現ベクターの コピーを数多く蓄積し、次いで、その発現ベクターによってコードされる所望の ポリペプチドを高レベルに合成することになる。上記Sambrookら,16.17-16.22頁 。適当な発現ベクターと宿主細胞からなる一過性発現系は、クローン化したDNA によってコードされるポリペプチドの便利な陽性同定と、所望の結合特異性/親 和性を持つgas6変種の迅速なスクリーニングを可能にする。 組換え脊椎動物細胞培養におけるgas6の合成に適合する他の方法、ベクター及 び宿主細胞は、Gethingら,Nature 293:620-625(1981);ManteiらNature 281:40-46(1979);Levinsonら,EP 117,060;及びEP 117,058に記述されている 。gas6の哺乳類細胞培養発現に特に有用なプラスミドは、pRK5(EP 307,247)又 はpSV16B(1991年6月13日公開のPCT公開番号WO91/08291)である。 gas6発現用の宿主細胞系の選択は、主として発現ベクターに依存する。本質的 にγカルボキシル化されていないgas6変種を作成したい場合は、γカルボキシラ ーゼ酵素を持たない宿主細胞を選択することが望ましいだろう。このことは、ga s6をコードする核酸がそのAドメインをもコードする場合には、特にそうである 。この目的に有用な宿主は非哺乳類細胞(例えばこの酵素を欠くことが知られて いる原核細胞)であることが多い。また、この酵素を欠損させた哺乳類細胞系を 使用することもできる。 本明細書に記載のベクターのクローニング又は発現に適した宿主細胞は、原核 細胞、酵母細胞又は上述の高等真核細胞である。この目的に適した原核生物とし ては、グラム陰性生物やグラム陽性生物などのユーバクテリア、例えば腸内細菌 (例:大腸菌などのエシェリヒア、エンテロバクター、エルウィニア、クレブシ エラ、プロテウス、サルモネラ(ネズミチフス菌など)、セラチア(Serratia m arcescansなど)、シガエラなど)、バチルス(例えば枯草菌、B.licheniformis (1989年4月12日公開のDD266,710に開示されているB.licheniformis 41Pなど) )、シュードモナス(緑膿菌など)及びストレプトミセスなどが挙げられる。好 ましい大腸菌クローニング宿主の一つは大腸菌294(ATCC 31,446)であるが、大 腸菌Bや大腸菌X1776(ATCC 31,537)、大腸菌W3110(ATCC 27,325)などといっ たその他の株も好適である。これらの例は限定的なものではなく、単なる例示で ある。W3110株は、組換えDNA産物醗酵用の一般的な宿主株であるので、特に好ま しい宿主又は親宿主である。好ましくは、宿主細胞が分泌するタンパク質加水分 解酵素は極小量でなければならない。例えば、W3110株を改変して、タンパク質 をコードする遺伝子中の遺伝的突然変異をもたらしてもよい。そのような宿主の 例としては、大腸菌W3110 27C7株がある。27C7の完全な遺伝子型はtonAΔptr3ph oAΔE15Δ(argF-lac)169ompTΔdegP41kanrである。27C7株は、American Type Cu lture Collectionに、ATCC No.55,244として、 1991年10月30日に寄託された。また、米国特許第4,946,783号(1990年8月7日 発行)に記載の突然変異周辺腔プロテアーゼを持つ大腸菌株も使用できる。また、 PCRその他の核酸ポリメラーゼ反応のようなクローニング法も好適である。 原核生物に加えて、糸状菌や酵母のような真核微生物も、gas6-をコードするベ クターに適したクローニング宿主又は発現宿主である。サッカロミセス・セレビシ ェ又は一般的なパン酵母は、下等真核宿主微生物の中では最も一般的に使用され る。しかし、次に挙げるようないくつかの他の属、種及び株も一般に利用でき、 本発明に有用である:Schizosaccharomyces pombe(Beach及びNurse,Nature 290 :140[1981];1985年5月2日公開のEP139,383);Kluyveromyces宿主(米国特 許第4,943,529号;Fleerら,上記)、例えばK.lactis(MW98-8C、CBS683、CBS4574;Lo uvencourtら,J.Bacteriol.,737[1983])、K.fragilis(ATCC 12,424)、K.bulgaric us(ATCC 16,045)、K.wickeramii(ATCC 24,178)、K.waltii(ATCC 56,500)、K.dro sophilarum(ATCC 36,906;Van den Bergら,上記)、K.183,070:Sreekrishnaら, J.Basic Microbiol.28:265-278[1988]);カンジダ;Trichoderma reesia(EP2 44,234);ニューロスポラ・クラッサ(Caseら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:5259-52 63[1979]);Schwanniomyces、例えばSchwanniomyces occidentalis(1990年10 月31日公開のEP394,538);ニューロスポラ、ペニシリウム、Tolypocladium(1991 年1月10日公開のWO91/00357)、アスペルギルス宿主(A.nidulans(Ballanceら, Biochem.Biophys,Res.Commun.112;284-289[1983];Tiburnら,Gene 26:205-22 1[1983];Yeltonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1470-1474[1984])及びA.n iger(Kelly及びHynes,EMBO J.4:475-479[1985])など)などの糸状菌。 グリコシル化gas6の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物に由来する。このよ うな宿主細胞は、複雑なプロセシング活性とグリコシル化活性を持つ。原則的に 、高等真核細胞培養は、脊椎動物培養に由来するか、無脊椎動物培養に由来する かにかかわらず、いずれも使用できる。無脊椎動物細胞の例として、植物細胞と 昆虫細胞が挙げられる。数多くのバクロウイルス株とその変種並びに対応する 許容昆虫宿主細胞が、Spodoptera frugiperda(イモムシ)、Ades aegypti(蚊 )、Bombyx moriなどの宿主から同定されている。例えばLuckowら,Bio/Technol ogy 6:47-55(1988);Millerら,Genetic Engineering Setlowら編,第8巻(Ple num Publishing,1986),277-279頁;Maedaら,Nature 315:592-594(1985)を参照 のこと。種々のトランスフェクション用ウイルス株が公に入手でき(例えばAutog rapha californica NPVのL-1変種やBombyx mori NPVのBm-5株)、これらのウイル スは、本発明に従って本明細書におけるウイルスとして(具体的にはSpodoptera frugipera細胞のトランスフェクションに)使用できる。 綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト及びタバコの植物 細胞培養も宿主として使用できる。典型的には、gas6 DNAを含有するように予め 操作しておいた細菌Agrobacterium tumefaciensのある株と共に培養することに よって、植物培養をトランスフェクションする。植物細胞培養をA.tumefaciensと 共に培養する間に、gas6をコードするDNAが植物細胞宿主に移されて感染し、適 切な条件下にgas6DNAを発現させることになる。また、ノパリン(nopalin)シン ターゼプロモーターやポリアデニル化シグナル配列など、植物細胞に適合する調 節及びシグナル配列も利用できる。Depickerら,J.Mol.Appl.Gen.1:561(1982) 。さらに、T-DNA780遺伝子の上流領域から単離されるDNA区域は、組換えDNA含有 植物組織中の植物発現可能遺伝子の転写レベルを活性化又は増大させる能力を持 つ。EP321,196(1989年6月21日公開)。 培養(組織培養)中の脊椎動物細胞の増殖は、近年では、ありきたりの手法に なっている(Tissue Culture,Academic Press,Kruse及びPatterson編[1973])。有 用な哺乳類宿主細胞系の例は、SV40で形質転換されたサル腎臓CV-1系(COS-7,AT CC CRL 1651);ヒト胚腎臓系(293細胞若しくは懸濁培養で生育するためにサブ クローニングされた293細胞;Grahamら,J.Gen.Virol.36:59[1977]);ベビー ハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-D HFR(CHO,Urlaub及びChasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216[1980]);マウ スセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod. 23:243-251[1980]);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);ミドリザル腎臓細 胞(VERO-76,ATCC CRL-1587);ヒト頸管癌細胞(HELA,ATCC CCL2);イヌ腎臓 細胞(MDCK,ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A,ATCC CRL 144 2);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(HepG2,HB 8065);マウス 乳腫瘍(MMT 060562,ATCC CCL51);TR1細胞(Matherら,Annals N.Y.Acad.Sci.383:4 4-68[1982]);MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌系(Hep G2)である。 宿主細胞を上述の本発明発現ベクター又はクローニングベクターでトランスフ ェクションし、プロモーターの誘導、形質転換体の選択又は所望の配列をコード する遺伝子の増幅に適した改良を施した従来の栄養培地中で焙養する。使用する 宿主細胞に応じて、トランスフェクションは、その細胞に適した標準的技術で行 われる。原核生物や強固な細胞壁障害を含有するその他の細胞には、一般に、塩 化カルシウムを用いるカルシウム処理(Sambrookら(上記)の1.82章に記載)や エレクトロポレーションが用いられる。Agrobacterium tumefaciensによる感染 は、Shawら,Gene 23:315(1983)とWO89/05859(1989年6月29日公開)に記述さ れているように、ある種の植物細胞の形質転換に使用される。また、植物細胞は 、WO91/00358(1991年1月10日公開)に記述されているように、超音波処理を用 いてトランスフェクションすることもできる。 そのような細胞壁を持たない哺乳類細胞には、Graham及びvan der Eb,Virolog y 52:456.457(1978)のリン酸カルシウム沈降法が好ましい。哺乳類細胞宿主系 形質転換の一般的な側面は、Axelが米国特許第4,399,216号(1983年8月16日発行 )に記述している。酵母の形質転換は、通常、Van Solingenら,J.Bact.130:946(197 7)とHsiaoら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)76:3829(1979)の方法に従って行われ る。しかし、細胞にDNAを挿入するその他の方法(例えば核微量注入法、エレク トロポレーション、無傷の細胞との細菌プロトプラスト融合、ポリカチオン(例 えばポリブレン、ポリオルニチンなど)など)も使用できる。哺乳類細胞を形質 転換するための種々の技術については、Keownら,Methods in Enzymology(1989)、 Keownら,Methods in Enzymology 185:527-537(1990) 及びMansourら,Nature 336:348-352(1988)を参照のこと。 本発明のgas6ポリペプチドの生産に使用される原核細胞は、Sambrookら(上記 )に概論されているように、適当な培地で培養される。 本発明のgas6の生産に使用される哺乳類宿主細胞は、種々の培地で培養するこ とができる。ハムF10(Sigma)、最小必須培地([MEM],Sigma)、RPMI-1640(Si gma)及びダルベッコ改良イーグル培地([DMEM],Sigma)などの市販の培地は、上 記宿主細胞の培養に好適である。さらに、Ham及びWallace,Meth.Enz.58:44(1979 )、Barnes及びSato,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号、 同4,657,866号、同4,927,762号、同4,560,655号、WO90/03430、米国特許Re.30,9 85、米国特許第5,122,469号(これらの文献の開示はすべて参考文献として本明 細書の一部を構成する)に記載の培地はいずれも、上記宿主細胞の培養培地とし て使用できる。これらの培地にはいずれも、必要に応じて、ホルモン及び/又は 他の成長因子(インスリン、トランスフェリン又は上皮細胞増殖因子など)、塩 類(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リン酸塩など)、緩衝剤(HE PESなど)、ヌクレオシド(アデノシンやチミジンなど)、抗生物質(ゲンタマ イシン(GentamycinTM)薬など)、微量元素(通常、μM範囲の最終濃度で存在 する無機化合物と定義される)及びグルコースや等価なエネルギー源を補足する ことができる。その他の必要な添加物はいずれも、当業者が知る適切な濃度で含 めることができる。 いくつかの態様では、形質転換した宿主細胞をビタミンKの不在下に培養する ことが望ましい。これによって、gas6ポリペプチドのAドメインのγカルボキシ ル化を減少させることができるからである。別法として、形質転換した宿主細胞 を、ワルファリンのようなカルボキシラーゼ阻害剤の存在下に培養してもよい。 温度、pHなどの培養条件は、発現用に選択した宿主細胞について過去に使用さ れたものであり、当業者には明らかだろう。一般に、哺乳類細胞培養の生産性を 最大化するための原理、実験手順及び実施技術は、Mammalian Cell Biotechnolo gy:a Practical Approach,M.Butler編,IL Press,1991に認められる。この開示で いう宿主細胞は、培養中の細胞と、宿主動物内にある細胞とを包 含する。 gas6は、分泌されたポリペプチドとして培養培地から回収されることが好まし いが、宿主細胞溶解液から回収されてもよい。 gas6をヒト由来でない組換え細胞中で生産する場合、そのgas6は、ヒト起源の タンパク質やポリペプチドを全く含まない。しかし、gas6に関して実質上均一な 調製物を得るには、細胞タンパク質又はポリペプチドからgas6を精製する必要が ある。第1段階として、粒状残渣(宿主細胞又は溶解断片)を、例えば遠心分離 や限外ろ過によって除去する(任意にタンパク質を市販のタンパク質濃縮フィル ターで濃縮してもよい)。次に、ヘパリンセファロースクロマトグラフィー、イ ムノアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー(例え ばDEAE若しくはカルボキシルメチル又はスルホプロピル基を含有する基盤上で行 なうもの)、ブルー-セファロース、CMブルー-セファロース、MONO-Q、MONO-S、 ヒラマメ(lentil)レクチン-セファロース、WGA-セファロース、ConA-セファロ ース、エーテルトヨパール、ブチルトヨパール、フェニルトヨパール又はプロテ インAセファロースでのクロマトグラフィー、SDS-PAGEクロマトグラフィー、シ リカクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、逆相HPLC(例えば脂肪族基 を追加したシリカゲル)、例えばセファデックスモレキュラーシーブなどを用い るゲルろ過若しくはサイズ排除クロマトグラフィー、gas6を選択的に結合するカ ラムでのクロマトグラフィー、エタノール沈殿又は硫酸アンモニウム沈殿から選 択される1又はそれ以上の段階によって、gas6を他の不純物から分離する。タン パク質加水分解を阻害するために、上述のどの段階にでもプロテアーゼ阻害剤を 含めることができる。外来汚染物質の増加を防ぐために、抗生物質を含めてもよ い。好適なプロテアーゼ阻害剤の例としては、フェニルメチルスルホニルフルオ リド(PMSF)、ロイペプチン、ペプスタチン、アプロチニン、4-(2-アミノエチ ル)-ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩-ベスタチン、キモスタチン及びベン ズアミジンが挙げられる。 残基が欠失、挿入又は置換されているgas6変種は、その変異によって引き起こ される性質の実質的な変化を考慮して、天然gas6と同じ方法で回収される。 例えば、「エピトープ標識」gas6を調製すれば、その抗原に対する抗体を含有す るイムノアフィニティーカラムでその融合ポリペプチドを吸着することによって 、精製が容易になる。ウサギポリクローナル抗gas6カラムのようなイムノアフィ ニティーカラムを使用すると、少なくとも1つの残存免疫エピトープにそれを結 合させることによって、gas6変種を吸着することができる。組換え細胞培養中で 生産した時のgas6又はその変種の特徴上の変化を説明するには、天然gas6に適し た精製法が、修正を必要とするかもしれないことは、当業者に理解されるだろう 。 3.gas6 に関する試験管内及び生体内利用法 本発明は、gas6を用いて、Rse受容体又はMer受容体を活性化する方法及び/又 はRse又はMer受容体を含む細胞の生存、増殖又は分化を増進する方法を提供する 。本発明の実施に有用なgas6は、上述したいくつかの方法で調製できる(下記実 施例6をも参照のこと)。 gas6は、ヒトに由来するものであってもよいし、ヒト以外の種に由来するもの であってもよい。例えば、ある哺乳動物を異なる哺乳類種のgas6で処置すること ができる(例えばマウスをヒトgas6で処置できる)。ネズミgas6とヒトgas6の間 にはかなりの相同性(約81%アミノ酸同一)があるので、異なる哺乳類種由来の gas6を使用できると予想される。しかし、好ましくは、その哺乳動物中でgas6が 免疫原性を持つ可能性を避けるために、哺乳動物を同一源のgas6で処置する(例 えばヒトをヒトgas6で処置する)。 本発明は、生体内及び試験管内でRse又はMer受容体を活性化し、かつ/または 、Rse又はMer受容体を含む細胞の生存、増殖又は分化を増進する方法を包含する 。通常は、細胞をgas6ポリペプチドで処理する。しかし、当該技術分野では遺伝 子療法的アプローチも記述されており、本発明はこのアプローチをも包含する。 これらの技術では、アデノウイルス、単純疱疹1ウイルス又はアデノ関連ウイル ス並びに脂質系送達系(例えばリポソーム)を用いて、細胞に遺伝子を送達する 。レトロウイルスは生体外遺伝子療法に有用である。したがって、gas6をコード する核酸を投与することによって、その患者又は組織培養におけるgas6 ポリペプチドの発現をもたらすことができる。代表的な遺伝子療法技術について は、WO93/25673とそこに引用されている文献を参照のこと。 本発明の試験管内法では、Rse又はMer受容体を含む細胞を準備し、それを細胞 培養培地に入れる。Rse受容体含有細胞の例としては、神経細胞(例えば新皮質 、小脳及び海馬のニューロンなどといった脳細胞);膠細胞(例えばシュワン細 胞や星状細胞);腎臓又は胸部由来の細胞;卵巣又は精巣から得られる細胞;繊 維芽細胞(マウス3T3細胞など);造血系に由来する細胞(CMK11-5など)が挙げ られる。Mer受容体含有細胞の例としては、末梢血液単核細胞、骨髄単核細胞、 単球、一次(primary)造血細胞、精巣、卵巣、前立腺、肺、腎臓、脾臓、末梢 血液白血球、胎盤、胸腺、小腸、結腸又は肝臓から得られる細胞が挙げられる。 gas6を用いて培養される代表的な細胞系としては、Tリンパ球白血病細胞系(例 えばCCRF-HSB-2、ジャーカット、HPB-ALL及びPeer);K-562細胞系;単球性白血 病/リンパ腫細胞系(U-937など);巨核芽細胞性白血病細胞系(例えばUT-7)及 びGrahamら,Cell Growth Differ.5:647(1994)に記述されているようなMer受容 体を発現するその他の細胞系が挙げられる。 好適な組織培養培地は当業者に良く知られており、例えば最小必須培地(MEM )、RPMI-1640、ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)が挙げられるが、これら に限るわけではない。これらの組織培養培地はSigma Chemical Company(ミズー リ州セントルイス)とGIBCO(ニューヨーク州グランドアイランド)から販売さ れている。次に、細胞が有効量のgas6の存在下に生存及び成長を維持できるよう な条件下に、細胞培地中で細胞を培養する。細胞は、凝塊(clot)培養、寒天培 養又は液体培養を含む種々の方法で培養できる。 細胞は、生理学的に許容できる温度(例えば37℃)で、有効量のgas6の存在下 に培養される。gas6の量は変えることができるが、約10ng/ml〜約1mg/mlの範囲 にあることが好ましい。gas6は、もちろん、当業者が過度の実験を行なわずに実 験的に決定する用量で、培養に加えることができる。培養中のgas6の濃度は、細 胞とgas6を培養する条件などといった種々の因子に依存する。特定の培養温度と 培養時間並びに他の培養条件は、例えばgas6の濃度や細胞と培地の種 類などといった因子に応じて変えることができる。当業者は、過度の実験を行な うことなく、有効で最適な培養条件を決定できるだろう。培養中の細胞(例えば ニューロン又は単核細胞)の増殖、分化及び/又は生存は、上述のように、当該 技術分野で知られる種々の検定法によって決定できる。 試験管内で、gas6を用いて細胞の生存、成長及び/又は分化を増進することは 、様々な点で有用であろうと考えられる。例えば、gas6の存在下に試験管内で培 養した神経細胞を、その細胞のレベルが減少している哺乳動物に注入することが できる。別の態様として、gas6を用いて造血細胞(単球/マクロファージなど) を生体外で培養し、それをこれらの血液細胞のレベルが減少している患者(例え ば化学療法や放射線療法を受けた患者)に投与することもできる。安定な試験管 内培養は、細胞特異的因子の単離や、その細胞内の内因性タンパク質若しくはそ の細胞に組換え法で導入されたタンパク質の発現にも使用できる。gas6は、細胞 培養中の他の細胞(例えば骨髄非付着細胞を支持するストロマ細胞)の成長及び /又は分化を支持する細胞の生存、増殖及び/又は分化を増進するためにも使用で きる。この方法で、シュワン細胞は細胞培養中のニューロンの生存を促進できる 。 gas6は、シュワン細胞を生体外で生育するのに特に有用であると考えられる。 細胞特異的因子(例えばシュワン細胞特異的マーカーであるP75NGFR)を単離す るには、細胞培養中のこのような細胞集団を持つことが望ましい。そのような因 子は診断手段として有用であり、また、P75NGFRの場合は、診断用の抗体を作成 するための抗原として使用できる。また、これらの細胞に関する他の有糸分裂促 進因子と成長阻害剤の特徴づけを容易にするには、細胞培養中の安定なシュワン 細胞集団を持つことが望ましい。 本発明は、gas6の生体内使用法をも提供する。膠細胞の増殖を促進するという gas6の能力(実施例9参照)に基づくと、この分子は、膠細胞の喪失、損傷又は 脱髄を伴う疾患(例えば多発性硬化症)の処置に特に有用だろうと考えられる。 gas6は、中枢(脳及び脊髄)、末梢(交感神経、副交感神経、知覚神経及び腸 神経)及び運動ニューロンを含む生体内のニューロンの発生、維持及び/又は再生 の促進にも有用だと考えられる。したがって、gas6は、哺乳動物(ヒトなど)の 神経系に作用する種々の「神経学的疾患又は障害」の診断及び/又は処置法に使 用できる。 上記の疾患又は障害は、例えば外傷、手術、発作、虚血、感染、代謝性疾患、 栄養不足、悪性腫瘍又は毒物によって神経系に損傷を受けた患者で起こりうる。 薬剤は、ニューロンの生存又は成長を促進するように設計される。例えば、gas6 は、外傷や手術によって傷ついた運動ニューロンの生存又は成長を促進するため に使用できる。また、gas6は、運動ニューロン障害(例えば筋萎縮性側索硬化症 (ルーゲーリック病)、ベル麻痺、脊髄性筋萎縮又は麻痺が関与する種々の状態 )を治療するためにも使用できる。gas6は、ヒトの「神経組織変性障害」(アル ツハイマー病、パーキンソン病、癲癇、多発性硬化症、ハンチントン舞踏病、ダ ウン症候群、神経難聴及びメニエール病など)の治療にも使用できる。 さらに、gas6は、神経障害(特に末梢神経障害)の治療にも使用できる。「末 梢神経障害」とは、末梢神経系を冒す疾患をいい、ほとんどの場合、運動機能不 全、知覚機能不全、知覚運動機能不全又は自律神経機能不全の1つ又は組み合わ せとして現れる。末梢神経障害が示す極めて多数の形態は、同じく多数の原因に 、それぞれ一つずつ帰することができる。例えば、末梢神経障害は遺伝的に獲得 されることもあるし、全身性疾患に起因するものあるし、毒物によって誘発され る場合もある。末端知覚運動神経障害や自律神経障害(胃腸路の自律運動性の減 少や膀胱の無緊張症など)がその例であるが、これらに限られるわけではない。 全身性疾患に関係する神経障害の例としては、ポリオ後症候群が挙げられる。遺 伝的神経障害の例としては、シャルコー・マリー・ツース病、レフスム病、無β- リポ蛋白血症、タンジェール病、クラッベ病、異染性大脳白質萎縮症、ファブリ 病及びデジェリン-ソッタス症候群が挙げられる。毒物によって引き起こされる 神経障害の例としては、ビンクリスチン、シスプラチン、メトトレキセート又は 3'-アジド-3'-デオキシチミジンのような化学療法剤による治療が引き起こすも のが挙げられる。 造血細胞でのRse受容体とMer受容体の発現を仮定すれば、gas6は、化学療法、 放射線療法若しくは骨髄移植治療を受けた患者における成熟血液細胞系の再分布 (repopulation)を増進するためにも使用できる。gas6は造血細胞(例えば単球 及び巨核細胞)の増殖及び/又は分化の増進を介して作用すると考えられる。ま た、gas6は、血液細胞の減少を特徴とする疾患の処置にも有用である。これらの 疾患の例としては、貧血(大赤血球性貧血と無形成性貧血を含む);血小板減少 症;単球減少症;発育不全;免疫(自己免疫)性血小板溶解性紫斑(ITP);HIV 誘発性ITPが挙げられる。gas6は、これらの受容体のいずれか、若しくは両方を 発現させる組織(例えば精巣、卵巣、前立腺、肺又は腎臓)の成長及び/又は修 復を促進するためにも使用できる。また、精巣及び卵巣におけるMer受容体の高 レベル発現を仮定すれば、gas6は、生殖機能の改善にも使用できる。 Merが単核細胞上に発現する場合、gas6は、これらの細胞の増殖及び/又は分化 が望ましい状態の処置に使用できる。例えば、gas6は、単球(例えばマクロファ ージ)レベルの増大を必要とする(若しくはそれが望まれる)患者において、そ の単球レベルを増大させるために使用できる。 別の態様として、gas6は、Mer又はRse受容体を保持する細胞の機能を調節する ためにも使用できる。例えば、gas6は、単球/マクロファージを活性化すること が望まれる状況において、単球/マクロファージを活性化するため(例えば感染 症の治療)に使用できる。 本発明のもう1つの態様として、gas6の過剰生産及び/又はgas6によるRse又はM er受容体の過剰な活性化を特徴とする疾患又は障害(例えば神経学的疾患又は障 害)に冒されている患者に、gas6拮抗薬(特に抗gas6抗体)を投与することがで きる。gas6拮抗薬は、手術後に起こりうるような知覚ニューロンの異常な再生の 防止や、例えば慢性痛み症候群(chronic pain syndrome)の治療などにおける 知覚ニューロンの選択的切断に使用できる。gas6拮抗薬は、Rse又はMer受容体の 過剰な活性化を特徴とする単球増加症又は悪性腫瘍(リンパ性悪性腫瘍など)の治 療や、単球/マクロファージが媒介する炎症の処置にも使用できる。 gas6とgas6拮抗薬の治療用製剤は、所望の純度を持つgas6又はgas6拮抗薬を医 薬的に許容できる周知の担体、賦形剤又は安定化剤と混合することによって、調 製される。許容できる担体、賦形剤又は安定化剤は、使用する用量と濃度でその 患者にとって非毒性であり、リン酸、クエン酸その他の有機酸のような緩衝剤; アスコルビン酸などの抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血 清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリ ドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン 、リジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、デキストリンなどの単糖類 、二糖類その他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールやソルビトー ルなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又はTween、Pl uronic、ポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン界面活性剤が挙げられ る。 gas6をシラスティック膜のような膜に吸着させて、それを損傷した神経組織の 近傍に埋め込むか、若しくはgas6をリポソームに組込むことも望ましいだろう。 PCT公開番号WO91/04014(1991年4月4日公開)。もう1つの態様では、治療効果を ねらって使用するgas6が、免疫グロブリンドメインのようなもう1つのタンパク 質に共有結合したgas6(例えばgas6-IgG)である。 所望の治療効果を得るために、gas6を他の神経向性因子と併用若しくは同時に 投与してもよい。例えば、gas6を、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン (neurotrophin)(NT-3)、骨由来神経因子(bone derived nerve factor;BDNF )、ニューロトロフィン-4及び-5(NT-4/5)、インスリン様成長因子(IGF-1又はIG F-2)又は他の神経向性因子と共に使用することによって、知覚ニューロンの成長 に対する共同作用的な刺激効果を得ることができる。ここに「共同作用的」とは 、gas6と第2物質との併用の効果が、それぞれの物質を個別に使用して得られる 効果よりも大きいことを意味する。 造血での使用には、gas6を1又はそれ以上のサイトカインと同時に投与するこ とができる。サイトカインに含まれるものとしては、成長ホルモン、インスリン 様成長因子、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、ウシ成長ホル モン、副甲状腺ホルモン、チロキシン、インスリン、プロインスリン、リラキシ ン、プロリラキシン、糖タンパク質ホルモン(胸腺刺激ホルモン(TSH)、黄体 形成ホルモン(LH)及び濾胞刺激ホルモン(FSH)など)、造血性増殖因子、 肝増殖因子、繊維芽細胞増殖因子、プロラクチン、胎盤ラクトゲン、腫瘍壊死因 子-α及び-β、ミュラー阻害物質(mullerian-inhibiting substance)、マウス 性腺刺激ホルモン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮増殖因子、 インテグリン、トロンボポエチン、神経成長因子(NGF-βなど)、血小板増殖因 子、トランスフォーミング増殖因子(TGF)(TGF-α及びTGF-βなど)、インス リン様成長因子-I及び-II、エリスロポエチン(EPO)、骨誘導性因子(osteoind uctive factor)、インターフェロン(インターフェロン-α、-β及び-γなど) 、コロニー刺激因子(CSF)(マクロファージ-CSF(M-CSF)、顆粒球-マクロフ ァージ-CSF(GM-CSF)及び顆粒球-CSF(G-CSF)など)、インターロイキン(IL )(IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11 、IL-12など)並びにLIF、SCF及びキット-リガンド(kit-ligand)を含むその他 のポリペプチド因子がある。本明細書で使用する場合、上述の用語は、天然の供 給源又は組換え細胞培養から得られるタンパク質を包含するものとする。また、 この用語は、生物学的に活性な等価物(例えばアミノ酸配列が1残基以上異なる もの又はグリコシル化の種類又は程度が異なるものなど)をも包含するものとす る。 生体内投与に使用するgas6とgas6拮抗薬は、滅菌状態でなければならない。こ れは、gas6又はgas6拮抗薬の溶液を滅菌ろ過膜を通してろ過することによって、 容易に達成される。その後、ろ過した溶液を滅菌アクセスポートを持つ容器(例 えば静脈内溶液バッグ又は皮下注射針を突き刺せるストッパーを持つバイアル) に入れることができる。ろ過溶液を凍結乾燥して、粉末状の滅菌gas6又はgas6拮 抗薬を製造してもよい。 gas6とgas6拮抗薬を生体内に投与する方法としては、静脈内、腹腔内、大脳内 、髄腔内、筋肉内、眼内、動脈内又は病変内経路による注射又は注入、徐放性製 剤による投与が挙げられる。 徐放性製剤は一般に、gas6又はgas6拮抗薬と、gas6又はgas6拮抗薬をある期間 にわたって放出する基盤とからなる。好適な基盤としては、膜、繊維又はマイク ロカプセルなどの成型品の形態の半透過性基盤が挙げられる。徐放性製剤基盤は 、 ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド、米国特許第3,773,919号、L-グルタ ミン酸とγ-エチル-L-グルタメートのコポリマー、Sidmanら,Biopolymers 22:54 7-556(1983)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)又はエチレンビニル アセテート、Langerら,J.Biomed.Mater.Res.15:167-277(1981)及びLanger,Che m.Tech.12:98-105(1982)からなってもよい。 本発明の一態様では、治療用製剤が、リポソームに封入又はリボソームと錯化 したgas6又はgas6拮抗薬からなる。例えば、グリコホスファチジルイノシトール 部分に共有結合したgas6を用いて、gas6を含むリポソームを形成させることがで きる。さらなる態様では、治療用製剤が、gas6又はgas6拮抗薬を活発に生産する 細胞からなる。このような細胞は、患者の組織に直接導入することもできるし、 多孔性膜に封入して、それを患者に埋め込んでもよい。いずれの場合も、gas6の 濃度を増大又は減少させる必要のあるその患者の体内の領域に、gas6又はgas6拮 抗薬が送達されることになる。別法として、gas6 DNAを含有する発現ベクターを 、患者の細胞の生体内形質転換に用いて、同じ結果を得ることもできる。 治療的に使用されるgas6又はgas6拮抗薬の有効量は、例えば治療対象、投与経 路、患者の状態などに依存するだろう。したがって、治療専門家は、最適な治療 効果を得るために、用量を滴定し、必要に応じて投与経路を改良する必要がある 。典型的な日用量は、上述の因子によって、約1μg/kg〜100mg/kg又はそれ以上 となるかもしれない。可能であれば、まず、例えば当該技術分野で知られる細胞 の生存又は成長に関する検定法などを用いて、試験管内で適正な用量範囲を決定 し、次に、適当な動物モデルで適正な用量範囲を決定することが望ましい。人間 の患者に対する用量範囲は、そこから外挿することができる。本発明の特定の態 様として、ニューロンの生存又は成長を促進する効力を持つ医薬組成物は、約0. 1〜10ng/mlの生体内局所gas6濃度を与えるだろう。 さらに本発明は、Rse又はMer受容体の活性化、若しくはRse又はMer受容体を含 む細胞の生存、増殖又は分化の増進に有用な物質を含有する製品及びキットをも 提供する。この製品は、ラベルを貼った容器を含む。好適な容器としては、例え ば瓶、バイアル及び試験管などが挙げられる。容器は、ガラスやプラスチック など種々の材料で作ることができる。容器は、Rse又はMer受容体を活性化し、か つ/または、問題の受容体を持つ細胞の生存、増殖及び/又は分化を増進する効力 を持つ組成物を保持する。その組成物中の活性剤はgas6である。容器上のラベル は、その組成物がRse又はMer受容体を活性化するため及び/又はこの受容体を持 つ細胞の生存、増殖及び/又は分化を増進するために使用されることを示すと共に 、上述のような生体内使用又は試験管内使用に関する指示を示してもよい。 本発明のキットは、上述の容器と緩衝液を含む第2の容器とを含む。さらに、 商業的観点及び使用者の観点から望ましい他の物(他の緩衝剤、希釈剤、フィル ター、針、注射器及び使用説明書など)を含んでもよい。 本発明は、次の実施例を参照することによって、より良く理解されるだろう。 ただし、これらの実施例が本発明の範囲を限定すると見なしてはならない。本明 細書で引用する全ての文献は、参考文献として本明細書の一部を構成する。 実施例1Rse-IgG 融合タンパク質の生産 Rseリガンド(Rse-L)の供給源を同定するために、ヒトRseの細胞外ドメイン とそれに続くヒトIgGのFc部分とを含有する融合タンパク質(Rse-IgG)をプロー ブとし、フローサイトメトリーを用いて、表面結合型Rse-Lに関して細胞をスク リーニングした(下記実施例2参照)。ヒトRse(Markら,Journal of Biological Chemistry 269(14):10720-10728[1994])の細胞外ドメイン(アミノ酸1-428 )をコードする配列を、BstEIIリンカー(アミノ酸ValとThrを付加する)を介し て、ヒトIgGγlのアミノ酸216-443に融合することにより、Rse-IgGを構築した。 上記リンカーは、次のプライマーを用いるPCRによってRse配列に加えた: Rse-IgGをコードするcDNAをSV40系発現ベクターに移し、エレクトロポレーショ ン(250ボルト,960μF)によってDHFR-CHO細胞に導入した。DHFR+細胞を選択し 、各クローンにおけるRse-IgG発現を、ヒトFc特異的ELISAを用いて測定した。Rs e-IgGをプロテインA-セファロースカラム(Pharmacia)で精製した。 実施例2結合分析 Rse-IgGを用いる蛍光活性化細胞選別(FACS)分析を、Goodwinら,Cell 73:447( 1993)に記述されているように行なった。巨核細胞性白血病系CMK11-5細胞(Ada chiら,Exp.Hematol.19:923[1991])は、Rse-IgGを特異的に結合したが、同じF cドメインを含有する対照融合タンパク質[例えばHGFr-IgG(Markら,J.Biol.Che m.267:26166[1992])やCD4-IgG(Caponら,Nature 337:525[1989])]を結合 しなかった。Rse-IgGの結合は、Ca2+の添加によって増大し、2mM EDTAによる処 理で完全に破壊された。 次に、125I-Rse-IgGの推定細胞表面結合型Rse-Lとの相互作用を特徴づけるた めに、試験管内結合検定法を確立した。CMK11-5細胞を10mM TrisCl,pH7.5中に懸 濁し、氷上に10分間置いた後、超音波処理とせん断を併用して溶解し、遠心分離 によって全膜を集め、50mM TrisCl,pH7.5、20%グリセロール中、−80℃で保存 した。0.1〜0.12mlの総体積中で、200,000細胞に相当する膜を、ウシ胎児血清( FBS)又はカラム画分、競争剤及び125I-Rse-IgGと混合した。室温で30分間イン キュベートした後、1mlの氷冷検定緩衝液を各チューブに加えた。次に、膜に結 合した放射活性を遠心分離(15000gで4分間)によって集め、上清液を吸引する ことによって未結合の放射活性から分離し、γカウンターでカウントした。検定 緩衝液は、50mM TrisCl、0.05%Tween-20、0.1%BSA、5mM CaCl2とした。 フローサイトメトリー分析は血清の存在下で行なったので、膜結合検定におけ るFBSの効果を決定した。結合は、FBS濃度に完全に依存することがわかった:FB Sの不在下では置換しうる結合は認められず、0.58%FBSで半最大結合が観測され た(図3A)。 結合はCa2+依存性でもあった:半最大結合は0.18mM Ca2+で得られた(図3B) 。Rse-IgGに関する見かけ上の結合部位はFBSの濃度に依存したが、親和性は大き くは変化しなかった[1%FBSでKdが0.82nMであるのに対して、10%FBSで2.2nM]( 図3C)。結合は特異的であった:他の組換えIgG融合タンパク質(CD4-IgGなど)は、 結合に関して125I-Rse-IgGと競争しなかった。 実施例3エピトープ標識Rse受容体及びその活性化 Rse-Lをさらに特徴づけるために、単純疱疹ウイルスタイプI(HSV-1)C-末端糖 タンパク質D(gD)標識(flag)(Paborskyら,Protein Engineering3(6):547-553[19 90])を持つタイプのRse受容体を発現させるチャイニーズハムスター卵巣(CHO )細胞を作成した。 合成二本鎖オリゴヌクレオチドを用いて、ヒトRseのC-末端の10アミノ酸(880 -890)に関するコーディング配列を再構成し、抗体5B6(Paborksyら,上記)に対 するgDエピトープを含有する追加の21アミノ酸と停止コドンを加えた。この融合 遺伝子の合成部分の最後の配列は次の通りである: コーディング鎖: 非コーディング鎖: 公表されたヒトRse cDNA配列(Markら,Journal of Biological Chemistry 269 (14):10720-10728[1994])のヌクレオチド2644に始まるPstI部位と、ベクター pRK(Suvaら,Science 237:893-896[1987])に由来する発現ベクターpSVI7.ID. LL(PCT/US94/13329参照)のポリリンカー中のHindIII部位で、上記合成DNAをヒ トRseのアミノ酸1-880をコードするcDNAと連結することにより、発現プラスミド pSV.ID.Rse.gDを作成した。簡単に述べると、この発現ベクターは、5'スプライス 供与及び3'スプライス受容イントロンスプライス部位に挟まれたDHFRをコードす る配列と、それに続くRse.gDコード配列とを含有する2シストロン性一次転写物 を含む。完全長(スプライスされていない)メッセージは、第1読み取り枠とし てDHFRを含有するので、DHFRタンパク質が生成し、安定な形 質転換体の選択を可能にする。 dp12.CHO細胞(1989年3月15日公開のEP307,247)を、pSV.ID.Rse.gD(そのプ ラスミド骨格中のユニークなNotI部位で直鎖化しておいたもの)でエレクトロポ レートした。DNAをフェノール/クロロホルム抽出した後、エタノール沈殿し、10 μlの10/1 Tris/EDTAに再懸濁した。次に、1mlのPBS中、氷上で、20μgのDNAを1 07個のCHO.dp12細胞と共に10分間インキュベートした後、350ボルトと330μfで エレクトロポレーションした。細胞を氷上に戻して10分間置いた後、非選択培地 に接種した。24時間後、細胞をヌクレオチシド非含有培地に接種して、安定なDH FR+クローンを選択した。 Rse.gD核酸を発現させる細胞系を同定するために、Rseの細胞外ドメイン中の エピトープを認識するポリクローナル抗血清19Bを用いるFACS分析によって、候 補クローンをスクリーニングした。このFACS検定法で陽性と記録されたクローン が完全長Rse.gD核酸を発現させることを確認するために、細胞溶解液を調製し( Lokkerら,EMBO J.11:2503-2510[1992])、可溶化したRse.gDを19B抗血清で免 疫沈降させた。免疫沈降したタンパク質を7%PAGEを用いて還元条件下に分画し 、ニトロセルロース上にブロットした後、抗gD 5B6抗体(Paborskyら,上記)で プローブし、それを西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG抗体で検出し た。 細胞クローン中のRse.gDが、20%FBS、Rse受容体結合活性を含有するFBSの部 分精製画分(すなわち下記実施例5で得られるQSE画分の1:10希釈液)又は対照( すなわち添加物なし)に応答して自己リン酸化を受ける能力を、ウェスタンブロ ッティングによって決定した。簡単に述べると、上述のRse.gD核酸で形質転換し た5×105個のdp12.CHO細胞を、血清の存在下に60mm皿に6時間接種した。次に、 細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、16時間、血清飢餓状態にした。次に 、その血清飢餓細胞を10分間、試料にさらした。抗gD 5B6モノクローナル抗体を 用いて、Rse.gDタンパク質をCHO細胞溶解液から免疫沈降させた。タンパク質を7 %SDS-PAGEで還元条件下に分画し、ニトロセルロースに転写した。Rseのリン酸 化を標識抗ホスホチロシン抗体4G10(UBI(ニューヨーク)から購入) で検出した。 20%FBS又はRse-IgG結合活性を含有するFBSの部分精製画分を、Rse-gDを発現 させる血清飢餓細胞に添加すると、140kDa Rse受容体のチロシン残基でリン酸化 が起こった。対照はRse受容体を活性化しなかった。 実施例4KIRA ELISA Rse.gDを活性化したFBS中の活性を、ELISAに基づく「KIRA」(Kinase Recepto r Activation(キナーゼ受容体活性化)の略)検定法を用いて、さらに特徴づけた 。この検定法は潜在的Rse-L供給源の高処理量分析を可能にする。この検定法の 図解については図4を参照のこと。 実施例3に記述したように生産したRse.gD形質転換dp12.CHO細胞を、平底96ウ ェル培養プレートのウェル中の100μlの培地に接種(5×104個/ウェル)し、5% CO2中、37℃で終夜培養した。翌朝、ウェルの上清をデカンテーションし、プレ ートをペーパータオル上で軽くタンピングした。次に、下記実施例5に記述する ようにして得たQSE画分を含有する培地50μl又は対照(すなわち培地のみ)を各 ウェルに加えた。中和実験については、潜在的リガンド供給源をRse-IgG又はCD4 -IgG(100μg/ml)で30分間(室温)処理した後、細胞に加えた。細胞を37℃で3 0分間刺激し、ウェルの上清をデカンテーションし、プレートを再びペーパータ オル上で軽くタンピングした。細胞を溶解し、受容体を可溶化するために、100μl の溶解緩衝液を各ウェルに加えた。この溶解緩衝液は、50mM HEPES(Gibco)、0 .5%Triton-X 100(Gibco)、0.01%チメロサール、30KIU/mlアプロチニン(ICN Biochemicals,オハイオ州オローラ)、1mM 4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスルホ ニルフルオリド塩酸塩(AEBSF;ICN Biochemicals)、50μMロイペプチン(ICN B iochemicals)及び2mMオルトバナジウム酸ナトリウム(Na3VO4;Sigma Chemical Co.,ミズーリ州セントルイス),pH7.5を含有する150mM NaClからなる。次に、 そのプレートをプレート振とう器(Bellco Instruments,ニュージャージー州ヴ ィンランド)で穏やかに室温で60分間振とうした。 細胞を可溶化している間に、5B6モノクローナル抗gD抗体(0.5μg/ml,50mM 炭酸緩衝液,pH9.6中,100μl/ウェル)を用いて4℃で終夜コーティングしたELISA マイクロタイタープレート(Nunc Maxisorp,Inter Med,デンマーク)をデカンテ ーションし、ペーパータオル上でタンピングし、室温で穏やかに攪拌しながら15 0μl/ウェルの遮断緩衝液(0.5%BSA[Intergen Company,ニューヨーク州パーチ ェイス]と0.01%チメロサールを含有するPBS)で60分間遮断した。60分後、自 動プレート洗浄器(Scan Washer 300,Skatron Instruments,Inc.,バージニア州 スターリング)を用いて、その抗gD 5B6被覆プレートを洗浄緩衝液(0.05%Twee n-20と0.01%チメロサールを含有するPBS)で6回洗浄した。 細胞培養マイクロタイターウェルから得た可溶化Rse.gDを含有する溶解液を抗 gD 5B6被覆及び遮断ELISAウェルに移し(85μl/ウェル)、穏やかに攪拌しなが ら室温で2時間インキュベートした。洗浄緩衝液で洗浄することによって未結合 のRse.gDを除去し、緩衝液(0.5%BSA、0.05%Tween-20、5mM EDTA及び0.01%チメ ロサールを含有するPBS)中0.15μg/mlのビオチニル化4D10(抗ホスホチロシン )100μlを各ウェルに加えた。室温で2時間インキュベートした後、プレートを 洗浄し、希釈緩衝液で1:6×104に希釈したHRPO結合ストレプタビジン(Zymed La boratories,カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)100μlを各ウェルに加 えた。そのプレートを穏やかに攪拌しながら室温で30分間インキュベートした。 遊離のアビジン複合体を洗浄除去し、新たに調製した基質溶液(テトラメチルベ ンジジン[TMB];2-成分基質キット(2-component substrate kit);Kirkegard and Perry,メリーランド州ガイサースブルグ)100μlを各ウェルに加えた。反応 を10分間進行させた後、100μl/ウェルの1.0M H3PO4を添加することによって、 発色を停止した。Macintosh Centris 650(Apple Computers,カリフォルニア州 キューパーチーノ)とDeltaSoftソフトウェア(BioMetallics,Inc,ニュージャー ジー州プリンストン)で制御したvmaxプレートリーダー(Molecular Devices,カ リフォルニア州パロアルト)を用いて、参照波長650nmで450nmの吸光度(ABS450 /650 )を読み取った。 Rse.gDのリン酸化は用量依存的に刺激され、この活性はRse-IgGによって中和 されたが、対照CD4-IgGでは中和されなかった(図3D)。これらのデータは、 Rseを活性化できるリガンドがFBS中に存在することを示している。 実施例5Rse リガンドの特徴づけ Rse-Lを、イオン交換クロマトグラフィーとRseアフィニティークロマトグラフ ィーによってFBSから精製した(下記表2参照)。 ウシ胎児血清(FBS)を50mM Tris HCl pH7.5に対して透析(分子量カットオフ6 000Da)し、滅菌ろ過(0.22μ硝酸セルロース,Corning)した後、緩衝液A(10mM Tri s HCl,pH7.5)で平衡化したQ-セファロースカラムにかけた。緩衝液Bは1M NaClを 含む緩衝液Aである。このカラムを、0%Bから18%Bへの1カラム体積の勾配で溶 出した後、18%Bから60%Bへの10カラム体積の勾配で溶出した。0.4M NaCl近く に溶出する活性画分を集め、50mM Tris HCl pH7.5、5mMベンズアミジンに対して 透析した。このQ-セファロース濃縮画分(QSE)をRse-IgGアフィニティーカラム にかけた。このカラムを50mM Tris HCl,pH7.5、5mMベンズアミジンで洗浄し、4M 尿素、0.1M Tris HCl,pH7.5、5mMベンズアミジンで溶出した。溶出液を、遠心分 離限外ろ過(Centricon10)によって濃縮、透析した。Rse-IgGカラムは、Emphas e樹脂1mlにつき2mgのRse-IgGを用いて、供給者の指示(Pierce)に従って調製し た。表中の量は、FBS出発物質100mlに関する量である。結合活性1単位は、上記 実施例2に記載の試験管内活性化検定で1%v/vのEC50を持つ試料1ml中に存在する 量と定義される。 アフィニティー精製したRse-L調製物のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリル アミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)は、非還元試料では60kDaに中心を持つ幅広い バンドを示し、還元すると、これが65kDaから68kDaまでの接近した数本のバンド に分離する。画分を試料緩衝液中、90℃で10分間加熱し、4-20%SDSポリアクリ ルアミドゲル(Novex)で分離し、銀染色によって可視化した。電気泳動に先立 って、Rse-IgGアフィニティー精製したRse-Lの溶出液を25mM DTTで還元した。 上記Rse-L調製物を還元条件下にSDS-PAGEで分離し、エレクトロブロッティン グし、配列決定した。Millipore Immobilon PSQ膜へのエレクトロブロッティン グは、記述されているように(P.Matsudaira,J Biol.Chem.292:10035[1987]) 、Bioradトランスブロットトランスファーセル中、250mAの定電流で1時間行なっ た。その膜を、50%メタノール中の0.1%クーマシーブルーR.250で30秒間染色し 、50%メタノール中の10%酢酸で2〜3分間脱色した。蒸留水で十分に洗浄し、乾 燥し、4℃に保存した。自動タンパク質配列決定は、オンラインPTH分析装置を装 着したモデル473A及び490A Applied Biosystems Sequencerで行なった。ピーク は、Nelson Analatytical 760インターフェースを用いて、Justice Innovation ソフトウェアで積分した。配列解釈は記述されているように行なった(Henzelら ,J.Chromatogr.404:41[1987])。 この調製物は、ウシプロテインSのアミノ末端配列に一致するXQVLIRRXRA-NTL [配列番号8]というアミノ末端配列を与えた。プロテインS配列は、いくつか の独立したRse-L調製物から得られた。SDS-PAGE後、いくつかの調製物は、ウシ プロテインSに関して過去に報告されているANTL[配列番号9]というN-末端配 列を持つ14kDa種と、ウシプロテインSのトロンビン感受性ループ領域内の切断 に対応する配列を持つ60〜70kDa種の存在を特徴とした。配列決定フィルターのC nBr切断後、同定可能な全残基の>99%が、プロテインS CnBr断片の混合物によ って占められた。また、Ca2+存在下の陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオ ンクロマトグラフィー、疎水相互作用クロマトグラフィー、ブルーセファロース クロマトグラフィー又は非変性ゲル電気泳動によってRse-L活性をプロテインS から分離することはできなかった。FBSと精製画分中に存在するRse-L活性 は、プロテインSポリクローナル抗血清によって中和することができた。 ヒト血清や、293細胞で生産された組換えヒトプロテインSは、KIRA又はRse-I gG結合検定で低い活性を示した。ヒト血清はPierceと地元の血液バンクから入手 した。ヒトプロテインS(Calbiochem,Enzyme Research Labs.又はCelsuslabs) は、膜結合検定法で、>250nMのEC50を持った。これに対し、精製したウシプロ テインSは、この検定法で、1.2nMのEC50を持った。KIRA検定法では、150nM濃度 のヒトプロテインSでも、Rseのリン酸化は弱かった。上記Markら(1992)に記 述されているように、ヒト胎児肝臓cDNA(Clontech)1μgを鋳型とし、Pfu DNA ポリメラーゼ(Stratagene)を用いて、PCRによって、ヒトプロテインS cDNAを 得た。ヒトgas6について後述する方法と全く同様にして、2μg/mlビタミンKの 存在下に生育した293細胞中でヒトプロテインSを発現させ、培養の代謝標識及 び/又はポリクローナル抗プロテインS抗血清を用いるウェスタンブロッティン グによって発現を立証した。精製ヒトプロテインSは125I-Rse-IgGを結合したが 、その親和性は精製ウシプロテインSより〜200倍低かった。 プロテインSの相同体の方が有効かもしれないという仮説を立てた。 GENBANKデータベースの検索により、ヒトプロテインSとヒト成長阻止特異的遺 伝子(gas6)の予想産物のアミノ酸配列の間にかなりの類似性(44%アミノ酸同 一で、類似のドメイン構造)が明らかになった(Manfiolettiら,上記)。 実施例6gas6 の組換え生産 ヒトgas6がRseのリガンドであるかどうかを決定した。逆転写したヒト脳cDNA から、ポリメラーゼ連鎖反応クローニング法によって、gas6 cDNAを得た。アミ ノ酸1-318をコードするcDNAと319-678をコードするcDNAを連結することによって 、完全長ヒトgas6クローンを構築した。gas6 cDNAは、記述されているように(M arkら,J.Biol.Chem.267:26166[1992])、1μgのヒト胎児脳cDNA(Clontech) を鋳型とし、Pfu DNAポリメラーゼを用いて、PCRによって得た。hgas6の5'部分 と3'部分を得るために設計したフォワードプライマーとリバースプライマーはそ れぞれ次の通りである: ヒト胎児腎臓293細胞を、Markら,J.Biol.Chem.267:26166(1992)に記述され ているように、一時的にトランスフェクションした。4時間培養した後、培地を 、抗生物質と2μg/mlビタミンKを含む成長培地に変えた。35S-Cysと35S-Metに よる代謝標識の条件は、Markらに記述されている通りとした。IgG-融合タンパク 質による沈降のために、放射線で標識された上清を、まずパンソルビン(pansor bin;Calbiochem)を用いて室温で30分間予備浄化した後、10μgのIgG融合タン パク質と共に4℃で4時間インキュベートした。融合タンパク質を20μlのパンソ ルビンで沈殿させ、その錯体を遠心分離(14,000×gで1分間)によって集めた後 、0.1%Triton-X 100を含むPBSで3回洗浄した。沈殿物を還元条件下にSDS-PAGE で分析した(Caponら,Nature 337:525[1989])。乾燥したゲル中の放射活性を 、Fujiホスホイメージャーで分析した。 gas6発現ベクターでトランスフェクションした後、代謝的に標識した細胞から 得たならし培地は、Rse-IgG融合タンパク質によって選択的に沈殿させることが できるが、対照融合タンパク質CD4-IgGでは沈殿しない70kDaタンパク質を含有し た。非標識トランスフェクションから得たならし培地は、膜に対する125I-Rse-I gGの結合を増進し、CHO細胞中で発現したRse受容体のリン酸化を誘導した。これ らのデータは、組換えヒトgas6がヒトRse受容体に結合し、それを活性化するこ とを示した。 組換えgas6を、ならし培地から、アフィニティークロマトグラフィーによって 精製した。ヒト胎児腎臓293細胞を、上記Markら(1992)に記述されているよう に、一時的にトランスフェクションした。4時間インキュベートした後、培地を 、抗生物質と2μg/mlビタミンKを含む成長培地に置換した。トランスフェクシ ョンの2日後と4日後にならし培地を集めた。トランスフェクションされた細胞の ならし培地は125I-Rse-IgGの結合を活性化したが、トランスフェクションされな かっ た293細胞や擬似トランスフェクションされた293細胞のならし培地は125I-Rse-I gGの結合を活性化しなかった。集めたならし培地1リットルを遠心分離によって 清浄化し、1体積の緩衝液A(50mM Tris HCl,pH7.5,0.1%CHAPS,5mMベンズアミジ ン)で希釈し、予め緩衝液Aで平衡化しておいた6mlのResource Qカラム(Pharma cia)にかけた。そのカラムを、緩衝液A中の0M NaClから0.4M NaClへの12カラム 体積の勾配で溶出させた。活性画分を集め、1体積の緩衝液Aで希釈し、Rse-IgG アフィニティーカラムにかけて、それを記述したように洗浄、展開した(上記実 施例5参照)。 組換えgas6の同定は、アミノ末端配列によって立証した。組換え物質の配列は 、49AFQVFEEA56[配列番号14]という配列で始まる。この配列中のグルタミン酸 残基からのシグナルは弱く、γカルボキシル化と一致する。 Gla含有タンパク質の良く知られている特徴は、それらが不溶性バリウム塩と 共沈することである(Dahlbeck,Biochem.J.209:837[1983];Discipio及びDavie,Bi ochemistry 18:899[1979])。この性質に基づく検定法によって、125I-Rse-IgGに 対する精製gas6の結合を、細胞膜の不在下に分析することができた。25mM HEPES pH7.2、0.1%BSA及び0.05%Tween-20で希釈したRse-Lを含有する種々の試料を 、同じ緩衝液で希釈した125I-Rse-IgGと、100〜120mlの総体積中で混合した。室 温で45分間インキュベートした後、新たに調製したBaCl2の氷冷懸濁液(リン酸 緩衝食塩水中,10mM)1mlを各チューブに加え、沈殿しうる放射活性を遠心分離 と上清液の吸引によって集めた。この検定法で測定したRse-IgGとgas6の解離定 数は0.46nMであった(図5)。 精製したgas6は、Rseのリン酸化を用量依存的に刺激した。経時変化実験によ って、Rseのリン酸化が、精製gas6の添加後2分以内に誘導されることがわかった 。gas6によるRseリン酸化の活性化はRse-IgGによって中和されたが、CD4-IgGで は中和されなかった。 実施例7gas6 の発現と特徴づけ 成人脳組織におけるgas6とRse受容体の発現を調べた。ヒト脳組織由来のポリ アデニル化RNA(Clontech)2μgを含有するブロットを、Rseのアミノ酸1-420又 はgas6のアミノ酸358-605に対応するランダムプライムド標識プローブとハイブ リッド形成させた。その組織は、小脳扁桃、尾状核、脳梁、海馬、視床下部、黒 質、視床下核及び視床である。 gas6がRseのリガンドであるかもしれないという仮説と一致して、gas6とRseの mRNAが、これらの成人脳組織のそれぞれで同時発現することがわかった。 星状細胞は、ニューロンの成長と生存を支持する神経向性因子を合成すると報 告れている。Morettoら,J.Neuropath & Exp Neuro.53:78(1994)及びLinら,Sc ience 260:1130(1993)。培養したラット星状細胞もRseのリガンドを合成する かどうかを決定した。E18ラット胚から調製した生後1日の星状細胞又は海馬ニュ ーロン由来のポリアデニルRNA 1μgを含むノーザンブロットを調製した。星状細 胞は、記述されているように調製した後(Banker及びGoslin,Culturing Nerve C ells[MIT Press,ケンブリッジ,1991],260-261頁)、血清非含有培地中で1日、3 日又は5日間培養した。海馬ニューロンは、血清非含有規定培地中で0日、3日又 は4日間培養した。そのブロットを、ネズミgas6のアミノ酸1-460に対応する32P- 標識プローブとハイブリッド形成させた。そのブロットをはがした後、32P-標識 アクチンプローブとハイブリッド形成させてRNA試料の完全性を確認した。 gas6 mRNAは、生後1日のラットから調製した培養1型星状細胞中に検出された が、E18海馬ニューロンでは検出できなかった。 本研究その他で得られたgas6とRseに関する発現データを次の表に要約する。 培養ラット星状細胞がRse受容体のリガンドをも合成できることを調べた。図6 A〜6Cの説明文を参照のこと。星状細胞ならし培地は、125I-Rse-IgGを結合する 因子を含有し(図6A)、Rseのチロシンリン酸化を刺激した(図6B)。この活性 はRse-IgGによって中和されたが、CD4-IgGでは中和されなかった(図6C)。 実施例8gas6 変種 gas6の細胞膜及びRseとの相互作用をさらに特徴づけるため、エピトープ標識 を含有する一連のN-末端欠失変種を構築した。 gDシグナル配列とエピトープ標識のコーディング配列(Markら[1992]上記) を、成熟gas6(gD.gas6;フォワードプライマー5'-AGCTGCTCGAGGCGCTG-TTGCCGGC GC[配列番号15])又はプロテインS(gD.プロテインS;フォワー ドプライマー5'-AGCTGCTCGAGGCAAATTCTTTACTTGAA[配列番号16])の最初のアミ ノ酸若しくはgas6のアミノ酸118(gD.gss6.118-C;フォワードプライマー5'-AGC TGCTCGAGGACCAGTGCACGCCCAACC[配列番号17])及び279(gD.gas6.279-C;フォ ワードプライマー5'-GCTGCTCGAGGACATCTTG-CCGTGCGTG[配列番号18])の直前の コーディング配列に、PCRによって加えたXhoI部位を介して融合した。gD.gas6と gD.gas6.118-C用のリバースブライマーは、5'-CATGGATCCTACCGGAAGTCAAACTCAGCT A[配列番号11]であった。gD.gas6.279-CとgD.プロテインS用のリバースプラ イマーは、それぞれ、5'-GTCGGATCCGACAGAGACTGAGAAGCC[配列番号13]と5'-CAT TCATTTATGTCAAATTCA[配列番号19]であった。gas6.gDは、gas6のコーディング 配列を、プライマー5'-ATGGAGATCAAGGTCTG[配列番号20]と5'-CATCTTGAGGCTAGC GGCTGCGGCGGGCTCCAC[配列番号21]を用いてPCRによって付加したNheI部位を介 して、Rse.gDに用いたC-末端gD標識に融合することによって構築した。これらの ポリペプチドを、本質的に実施例6で完全長gas6について記述した手法を用いて 、293細胞で発現させた。 それぞれEGF反復とDドメイン内の縦列Gドメイン若しくはGドメインのみを 含有するgD.gas6.118-CとgD.gas6.279-Cは、Rse-IgGによって、細胞培養上清か ら沈殿した(図7)。ヒトプロテインSはこの検定法では沈殿しなかった。この ことは、ヒトプロテインSがヒトgas6より低い親和性でRseを結合するという上 述の観測結果と合致する。Glaドメイン(すなわちAドメイン)が削除されたgas 6のこれら誘導体は、Ca2+的に膜に会合することもできない。 このデータは、gas6がGドメインを介してRseに結合すること及び膜結合活性 とRse結合活性を分離できることを示しており、また、細胞膜とのCa2+依存的会 合にはGlaドメインが必要であることを示唆している。 この実施例に記述するgas6変種は機能的に活性である。具体的に述べると、gD .gas6.118-CとgD.gas6.279-Cは、実施例4に記載のKIRA検定で、完全長gD標識gas 6と同じぐらい効率よく、Rseリン酸化を活性化した(図7参照)。 実施例9シュワン細胞増殖検定 Rse mRNAは、ラットE14後根神経節に由来するラットシュワン細胞系rhESCにも 検出されたが、gas6 mRNAは検出されなかった。これらの細胞に精製したgas6を 添加すると、〜0.3nMのEC50で用量依存的に細胞数が増大(48時間時点で50%増 大)した(図8)。gas6処理はこれらの細胞の形態をも変化させた。無処理細胞 は多極性で分岐した突起を多数持ったが、gas6で処理した細胞は主要な平滑突起 を2つ持つ紡錘状になり、互いに平行に整列した。また、gas6が誘導する増殖はR se-IgGによって中和されるが、CD4-IgGでは中和されないこともわかった。図9を 参照のこと。 Rse-及びAxl-特異的抗体を用いると、Rse及びAxl受容体チロシンキナーゼがヒ トシュワン細胞にも検出された。ヒトシュワン細胞の増殖を増進するgas6の能力 を測定した。 既に記述されているように(Leviら,J.Neuroscience 15(2):1329-1340[1995]) 、適切な患者の同意を得て、University of Miami School of Medicineで末梢神 経組織を入手した。末梢神経繊維の断片をベルザー(Belzer's)UW溶液に入れ、 カリフォルニアに輸送した。受け取ると同時に、その神経繊維を新しいF12/DME( 1:1)で洗浄し、1%コラーゲナーゼ/ジスバーゼ(dispase)溶液(Boehringer) と共に37℃で30分間培養した。次に、組織を新しい組織培養培地に移すことによ って、静かに3回洗浄した。その繊維を、次に挙げるラットシュワン細胞用の処 方を補足した100mmペトリ皿中の血清非含有培地に接種した:インスリン(10μg /ml)、トランスフェリン(10μg/ml)、α-トコフェロール(5μg/ml)、Holmes ら,Science256:1205-1210(1992)に記述されているように生産した組換えヒト ヘレグリン(heregulin)-β1177-244(10nmol/L)、フォルスコリン(5μM) 、プロゲステロン(3×10-8M)、ウシ下垂体抽出物(BPE)(3μl/ml)を補足し たF12/DME(1:1)。シュワン細胞を48時間懸濁培養することによって、部分的に 脱髄させた。次に、1000rpmで5分間の遠心分離によって神経繊維を集め、静かに ピペッティングすることによって再懸濁、分散させた。 分散したシュワン細胞をラミニン(Gibco BRL)被覆組織培養48ウェルマルチ プレート中の規定培地に8×103細胞/ウェルの密度で再接種すると共に、アプロチ ニン(25μg/ml)と50μL/mlの化学的に規定された脂質(Sigmaカタログ番号119 05-015;Gibco BRL)を添加した。これらの培養を「一次培養」と名づけた。5日 毎に培地を換えた。純粋なシュワン細胞の集密培養が2週間以内に得られた。第1 継代時と第2継代時に、コラーゲナーゼ/ジスパーゼ(Boehringer Mannheim)を 用いて細胞をプレートから取り出し、3%BSAを含む培地で洗浄し、上述のように プレートに接種した。使用した培地は「6F」培地である:インスリン(10μg/ml)、 トランスフェリン(10μg/ml)、α-トコフェロール(5μg/ml)、プロゲステロ ン(3×10-8M)、アプロチニン(25μg/ml)及び化学的に規定された脂質(Sigm aカタログ番号11905-015)を補足したF12/DME(1:1)。「8F」培地は、6F培地の 添加物と共に組換えヒトヘレグリン-β1177-244(10nmol/L)とフォルスコリン (5μM)を含有する。これらの培養培地のいずれかにgas6を加えることにより、 シュワン細胞の生存と増殖に対するgas6の効果を研究した。 gas6はヒトシュワン細胞の成長を用量依存的に刺激し(図12A)、有意な効果 は1ng/ml(14pM)で観測され、最大効果は10ng/mlを超える容量で観測される。g as6は単独で、シュワン細胞数を対照培地より有意に増大させる。cAMP活性化因 子フォルスコリンの存在下では、gas6による全細胞数の増加が、より著しくなる 。共同作用的効果は、gas6とヘレグリンの間にも観測される。gas6は、好ましい 濃度のフォルスコリンとヘレグリンが両方とも存在する場合にも、細胞数とチミ ジン取り込みの両方を増大させた(図12B)。 好ましい濃度のヘレグリンとフォルスコリンが両方とも存在する場合、シュワ ン細胞の成長を刺激すると過去に報告されている他の増殖因子は、効果を持たな い(PDGF、FGF-β)か、若しくは細胞数を減少させる(IL-1α及びTGF-β1)( 図12C)。10ng〜5μgのヒト又はウシプロテインSを添加しても、培養5日後のシ ュワン細胞数は増加しなかった。これに対し、30μg/mlのgas6は、最も効果的に 細胞数を増大させた。gas6とフォルスコリン及びヘレグリンの併用は、6F+フオ ルスコリン+ヘレグリン+5%FBSを併用した場合と同等に、5日間にわたって最 大細胞成長をもたらす。 6F+ヘレグリン、6F+ヘレグリン+gas6、8F+gas6、8F+10%ウシ胎児血清中 で生育したヒトシュワン細胞を位相差顕微鏡で観察したところ、gas6が細胞の形 態に対して著しい効果を持つことがわかった。顕微鏡写真は培養96時間後に撮影 した。gas6の存在下に生育したシュワン細胞は、ヘレグリン又はヘレグリンとフ ォルスコリンの存在下に生育した細胞に認められるものよりはるかに長い突起を 持つ。また、8F+gas6培養では、完全に発達したシュワン細胞紡錘状形態を持つ 細胞にさえ、有糸分裂像が明りょうに認められる。8F培養に血清を添加すると、 細胞の形態が変化し、細胞が平坦になり、横に広がり、ついには空胞になる。 シュワン細胞マーカーGFAPとS100タンパク質に関する免疫蛍光検査法によって 、細胞を染色した。簡単に述べると、8F+gas6で生育した第4継代シュワン細胞 をラミニン被覆チャンバースライド上で24時間培養し、PBS中の10%ホルマリン で固定した。固定した細胞を10%ヤギ血清で遮断し、配給業者の推奨する希釈率 のウサギ抗GFAP(ICN)及び抗S-100タンパク質(ICN)と共にインキュベートし た。一次抗体の特異的結合をヤギ抗IgG(Fab')2-FITC複合体で染色した。細胞を 、DNA色素ヨウ化プロピジウムで対比染色した。陰性対照試験を、負に染色され るWI-38細胞で行なった。生育した細胞は、4継代後に、シュワン細胞マーカーGF AP及びS100タンパク質について、100%の免疫蛍光染色を示した。 チロシンキナーゼ受容体のAxl-Rseファミリーを介してヒトシュワン細胞の増 殖を刺激するgas6の能力を調べた。ヒトシュワン細胞を、0、0.01、0.1又は1μg/ml のヒトgas6(hgas6)を用いて、37℃の培養器で15分間刺激した。細胞溶解液を 調製し、ウサギ抗hRseFc融合タンパク質抗体とウサギ抗hAxl抗体で免疫沈降させ た。hRse及びhAxl受容体のチロシンリン酸化を4G10抗リン酸化抗体で検出した。 106個のシュワン細胞を規定培地(8F+gas6)中でコンフルエント近くまで生育 し、実験の24時間前に6Fに換えた。細胞を、37℃の培養器中、精製組換えhgas6 で15分間処理し、1mlの溶解緩衝液(20mM HEPES,pH7.4,135mM NaCl,50mM NaF,1m Mバナジウム酸ナトリウム及び1mMモリブデン酸酸トリウム,2mM EDTA及び2mM EG TA,10%グリセロール,1% NP40,1μMオカダ酸(okadaic acid),1mM PMSF,1mM A EBSF)を用いて氷上で溶解した。細胞溶 解液を、14000×g、4℃で10分間の遠心分離によって清浄化した。1μgのウサギ 抗hRseFc融合タンパク質抗体か、hAxlのCOOH-末端の10アミノ酸に対して生じさ せたウサギ抗hAxl抗血清2μlを用いて、4℃で2時間の免疫沈降を行なった。免疫 錯体を10μlのプロテインAセファロースCL-Bビーズで集めた。タンパク質をNove x 4.12%勾配ゲルで分離し、ニトロセルロース膜に転写した。4G10マウス抗ホス ホチロシン抗体(UBI)、ヤギ抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ複合体及びE CL発色キット(Amersham)を用いて、抗ホスホチロシン免疫ブロットを行なった 。ヒトgas6をヒトシュワン細胞に添加すると、Axl受容体とRse受容体のチロシン 残基が共に自己リン酸化される。AxlとRseの活性化は、1.4〜14μM gas6で検出 できた。AxlとRseのこのようなリン酸化は、ヘレグリンで刺激した培養には観測 されない。培養ラットシュワン細胞におけるgas6発現は、ノーザンブロットによ って検出されなかった。さらに、ラットシュワン細胞ならし培地には、gas6活性 が認められなかった。一つの理論に拘束されるわけではないが、gas6は成長しつ つある軸策によって生産されるか、若しくは近傍繊維芽細胞(gas6は最初はこの 細胞からクローン化された)によって生産されるのかもしれない。他のチロシン キナーゼ受容体(PDGFやFGFなど)を介して作用することが知られている増殖因 子はヒトシュワン細胞の増殖をこれらの規定条件下に増大させないので、シュワ ン細胞上のAxl-Rse受容体のgas6によるこの活性化は、高度に特異的である。erb B受容体ファミリーを介して独立に作用するシュワン細胞増殖因子GGF/ヘレグリ ンは、本研究のgas6と共同作用する。 中断した中枢軸策の再生に影響を与える努力として脊髄の損傷領域に移植する ための細胞プロテーゼとして使用するため、末梢神経損傷の修復を補助するため 、そして複合的自己移植片の代替物として哺乳類シュワン細胞(好ましくはヒト シュワン細胞)の集団を持つことは有益である。Leviら,J.Neuroscience 143(3) :1309-1319(1994)を参照のこと。細胞培養技術を使用して小さな生検から自己 移植材料の豊富な供給源を得ることは、既に、広範囲の火傷を覆うためのヒト表 皮細胞を供給することに、臨床的に成功している(Gallicoら,N.Eng.J.Med.311: 338-451[1984])。さらに、ヒト異種移植片のシュワン細胞が、免疫 反応を抑制したマウスの末梢軸策を有髄化、再生できることも、既に示されてい る(Aguayoら,Nature268:753-755[1977]及びAguayoら,Soc.Neurosci.Symp.4:361 -383[1979])。したがって、上述の方法はヒトを含む哺乳動物で成功するだろ うと予想される。 実施例10gas6 イムノアドヘシン gD.gas6.279-C(実施例8参照)のコーディング配列を、BstEIIリンカー(アミ ノ酸ValとThrを付加する)を介して、ヒトIgGγ1のアミノ酸216-443に融合する ことによって、gD.gas6.279-C.IgGを構築した。このリンカーは、プライマー5'- ATGGAGATCAAGGTCTG[配列番号20]と5'-GTCGGTGACCGCTGCTGCG-GGCTCCAC[配列番 号22]を用いるPCRによって、gD.gas6.279-C配列に加えた。 このようにして作成したgas6イムノアドヘシンを、上記実施例4に記載のKIRA 検定にかけた。簡単に述べると、gD.gas6.279-C.IgGを一時的に発現させる細胞 から得たならし培地の種々の希釈液を、KIRA検定法で試験した。出発物質は、〜 230ng/mlのgD.gas6.279-C.IgG濃度を持った。活性化のEC50は約0.4nMであった。 図10を参照のこと。一時的にトランスフェクションされた対照細胞系から得たな らし培地には、活性が観測されなかった。 実施例11非γカルボキシル化gas6によるRseの活性化 ヒトgas6(hgas6.17)でトランスフェクションした293細胞で3日間条件付けし た培地(700ml)を、50mM Tris-HCl pH7.5,5mMベンズアミジン(緩衝液A)2× 8Lに対して透析した。その透析液を0.1% CHAPSに調節し、10ml/分の流速で、6m lのResource-Qカラム(Pharmacia)に充填した。そのカラムを緩衝液Aで洗浄し 、緩衝液A中、0M NaClから0.4M NaClに至る70mlの直線的勾配(流速1.0ml/分)で 溶出し、2.0mlずつ集めた。 実施例6に記載の塩化バリウム結合法と実施例4に記載のKIRA検定法を用いて、 Rseを結合、活性化する能力について、その画分を分析した。KIRA検定法が全て のRse活性化因子に反応するのに対して、塩化バリウム検定法はGla含有Rseリガ ンドの結合のみを検出できる。結合活性の中心は第31画分にあったが、KIRAによ ると、第24画分にも早く溶出するピークの中心があった。 第20〜44画分の一部(10μl)を8%アクリルアミド(Novex)SDSゲルで分析し 、銀染色によってタンパク質を可視化した。これらの画分では、75kDバンドが標 品hgas6と同時移動した。75kDバンドの積分強度を、レーザースキャン(Molecul ar Dynamics)と画像解析(NIH Image)によって測定した。ピーク強度は、KIRA 活性の上記2領域に対応する第24画分と第31画分に認められた。染色強度とタン パク質負荷量の間に直線的な関係があると仮定して、同じゲルに流した既知量( 0.34μg)のhgas6標品調製物の染色強度から、各画分中のhgas6の量を見積もっ た。 第24画分と第31画分から得た75kDバンドの配列分析を、SDS-PAGEとPVDF膜への 電気泳動的転写の後に行なった。両バンドのアミノ末端配列は、hgas6のアミノ 末端配列(AFQVF)であると明りょうに同定されたが、これら2つは、その後のサ イクルに修飾グルタミン酸残基が存在するかしないかで、識別できた。第31画分 から得た配列は、サイクル6、7、14及び16にグルタミン酸からのシグナルを欠き 、これら残基のγ-カルボキシル修飾と合致した。第24画分から得た配列は、こ れら全ての位置の非修飾グルタミン酸と合致した。 初期溶出型のhgas6の配列分析と結合挙動は、グルタミン酸の特徴的なγ-カル ボキシル修飾を欠く非修飾型としての同定と合致する。ここに発見された第2の 組換えhgas6は、記述された第1のGla含有型よりも活性であるように思われる。 図11のKIRAデータとhgas6の密度測定法による定量から、これら2つの型の比活性 を計算した。第31画分(1型)の比活性が1170KIRA単位/mgPであるのに対し、第2 4画分(2型)の比活性は3158であった。これは、Gla修飾を欠く2型がGlaを含有 する1型より強力にRseを活性化することを示している。 実施例12gas6 によるMer受容体の活性化 次に挙げるオリゴヌクレオチドプローブを用いて、ラムダDR2(Clontech,カリ フォルニア州パロアルト)中に調製したヒト精巣cDNAライブラリーをスクリーニ ングすることにより、ヒトMerをコードするcDNAを得た: 陽性ファージを精製し、挿入物のサイズを決定した。3種類の重複クローンhMe r.cl4、hMer.cl25及びhMer.cl6(それぞれ公表された配列のnt1-561、nt223-202 5及びnt1902-3608に対応する)を合わせて、ヒトMerの全読み取り枠をコードす るcDNAを作成した。 ヒトMerのアミノ酸1-499をコードする配列を、NarI-BstEIIリンカー(5'-GCGC CTGGCAACGCG-3'[配列番号26]、5'-GTGACCGCGTTGCCAG-3'[配列番号27])(ア ミノ酸グリシンとヒスチジンを付加する)を介して、ヒトIgGγlのアミノ酸216- 443に融合することによって、Mer-Fcを構築した。Mer-Fcを発現させるヒト胚腎 臓(HEK)293細胞を、ヒトFc特異的ELISAを用いてスクリーニングした。Mer-Fc をプロテインA-セファロースカラム(Pharmacia)で精製した。 単純疱疹ウイルス1型(HSVI)糖タンパク質D(gD)のアミノ酸1-53のコーディ ング配列を、ヒトMerのアミノ酸36-961をコードする配列に融合することによっ て、エピトープ標識gD.Merを構築した。上記実施例3を参照のこと。オリゴ(5'- CGAATTCCTCGAGCCGGGACCTTTTCCAGGGAGC-3'[配列番号28]及び5'-CCAACTGTGTGTTT GAAGGCAAGAGGCGG-3'[配列番号29])を用いて、PCRによって、ヒトMer cDNAにX hoI部位を加えた。そのgD.Mer cDNAをCMV系発現ベクターに挿入し、HEK293細胞 をトランスフェクションし、実施例3に記述したように、ウェスタンブロッティ ングと蛍光活性化細胞選別法によって選択、スクリーニングした。 組換えヒトgas6及びプロテインSを、Godowskiら,Cell82:355-358(1995)に 記述されているように発現させた。35S-Cys及び35S-Metによる培養の代謝標識( Markら,J.Biol.Chem.267:26166[1992])及び/又はウサギポリクローナル 抗gas6又は抗プロテインS抗血清(Sigma)を用いるウェスタンブロッティング によって、発現を立証した。プロテインS又はgas6のN-末端標識型を、上記God owskiらに記述されているように構築した。 抗ホスホチロシン抗体によるウェスタンブロッティングとKIRA ELISAを用いて Rseリン酸化を検出する方法については、上記実施例3及び4に記述した。中和実 験については、潜在的リガンド供給源を表記のFc融合タンパク質で室温で30分間 処理した後、細胞に添加した。gD.Merのリン酸化を誘導する潜在的リガンドの能 力を分析するために、60mm皿に500,000細胞を接種し、血清の存在下に6時間培養 した。次に、細胞をPBSで2回洗浄し、16時間血清飢餓状態に置いた。潜在的リガ ンドをその細胞に加え、5B6を用いて溶解液からgD.Merを免疫沈降させ、SDS-PAG Eで還元条件下に分析し、抗ホスホチロシン抗体(4G10)でブロッティングした 。 Rse-Fc、Axl-Fc及びMer-Fcに対する結合については、5〜10nMのgas6又はプロ テインSを含有するならし培地を、プロテインA-セファロース(Calbiochem) を用いて、室温で30分間予備浄化した後、5μgの受容体Fc融合タンパク質と共に 4℃で4時間インキュベートした。20μlのプロテインAセファロースを用いて融 合タンパク質を免疫沈降させ、その錯体を14,000×gで1分間の遠心分離によって 集めた後、0.1%Triton X-100を含有するPBSで3回洗浄した。沈殿物を還元条件 下にSDS-PAGEで分析した。そのSDS-PAGEゲルのウェスタンブロットを抗体5B6で プローブした。 BIAcoreTM装置によるタンパク質相互作用分析を、精製gas6及びプロテインS を用いて、BIAcoreCM5センサーチップに結合したMer-Fcで行なった。中和実験に ついては、5μgのMer-Fc又はCD4-Fcをgas6と室温で30分間混合した後、チップ上 に注入した。センサー図(sensorgram)を、Pharmacia Biosensor ABのBIAエバ ルエーション2.1ソフトウェアで分析した。センサー図をA+B=ABタイプIフィッテ ィングで評価することにより、見かけ上の解離速度定数(kd)と会合速度定数( ka)を得た。平衡解離定数Kdを、kd/kaとして計算した。 結果 ELISAに基づくKIRA検定においてgas6によって誘導されるRseのリン酸化を中和 するMer-Fcの能力を調べた。gas6によるRseの活性化は、Rse-Fc及びMer-Fcによ って用量依存的に遮断された(図14)。この検定法で対照タンパク質CD4-Fcは阻 害活性を示さなかったので、中和は、Rse-Fc及びMer-Fcに特異的であった。Rse- FcはMer-Fcよりもいくらか強力にgas6を中和した。これらのデータは、Mer-Fcが 、Rse-Fcと同様に、gas6に対する結合によって、Rseの活性化を遮断することを 示唆している。 gas6に直接結合するAxl-Fc、Rse-Fc及びMer-Fcの能力を、共沈検定法を用いて 測定した。プロテインSを結合するこれら受容体の能力も測定した。結合特性に ついてより定量的な比較を行なうために、エピトープ標識を含有するタイプのga s6とプロテインSを使用した。gas6又はプロテインSを発現させる細胞から得た ならし培地を、各受容体融合タンパク質と共にインキュベートした。Fc融合タン パク質とそれらに結合したタンパク質をプロテインAで回収し、十分に洗浄した 。Fc融合タンパク質に結合した標識タンパク質を、ウェスタンブロッティングと エピトープ標識に対する抗体による検出によって、明らかにした。Axl-FcとRse- Fcは共に、標識gas6を結合したが、プロテインSを結合しなかった。同じ結果が Mer-Fcでも観察された。gas6とプロテインSはどちらも対照CD-Fcを結合しなか ったので、結合は特異的だった。 gas6とMer及びRseの細胞外ドメインとの相互作用の速度を、BIAcore装置を用 いて比較した。Mer-Fcをバイオセンサーチップに固定化し、そのチップ上に種々 の濃度のgas6を通した。このような実験から得た代表的なセンサー図を図15Aに 示す。プロテインSに対する結合は観測されず、チップに固定化したMer-Fcに対 するgas6の結合は可溶性Mer-Fcによって遮断されたが、CD4-Fcでは遮断されなか った(図15)。gas6のMer-Fcとの相互作用に関する解離定数(Kd)は6nMだった 。Rse-Fcに対するgas6の結合に関するKdは4.2nMだった。 HEK293細胞を、アミノ末端エピトープ標識を含有するタイプのMerをコードす る発現ベクターでトランスフェクションした。gD.Merを発現させる候補細胞系( 293.gD.Merと呼ぶ)を、このエピトープ標識を認識するモノクローナル抗体 5B6を用いる蛍光活性化細胞選別法によって同定した。これらの細胞を抗体5B6と 共にインキュベートすると、対照非トランスフェクションHEK293細胞には存在し ない約180kDaと200kDaの新規タンパク質の迅速なリン酸化が起こった。細胞を対 照抗体と共にインキュベートした場合は、受容体リン酸化は観測されなかった。 これらの結果は、Merが機能的なチロシンキナーゼをコードすることを示してい る。 Merのキナーゼ活性を活性化するヒトgas6とプロテインSの能力を調べた。こ れらの細胞をプロテインSで処理した場合は、Merがリン酸化されなかった。しか し、gas6で処理した細胞には、受容体リン酸化が検出された。経時変化実験によ り、gas6の添加後数分以内にMerがリン酸化されることがわかった。リン酸化は1 〜3nM濃度のgas6で細胞を刺激した後に検出できた。 gas6が内因的に発現したMerのリン酸化を誘導できることを決定した。逆転写P CRによって、Mer mRNAが単球性白血病細胞系THP-1に検出された。Merの細胞外ド メインに対するポリクローナル抗体を用いて、THP-1細胞の表面上のMerの発現を 確認した。これらの細胞をgas6で処理すると、Merに対する抗体で免疫沈降する1 80kDaタンパク質の迅速なリン酸化が誘導された。これらの観察結果は、gas6がM erの機能的リガンドであることを示している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI A61K 38/00 AEE A61K 37/02 ADD C07K 14/745 AEE (C12P 21/02 C12R 1:91) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD ,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CZ, DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE,HU,I S,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LK,LR ,LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW, MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,S E,SG,SI,SK,TJ,TM,TR,TT,UA ,US,UZ,VN (72)発明者 ゴドウスキー,ポール・ジェイ アメリカ合衆国94010カリフォルニア州 バーリンゲイム、イーストン・ドライブ 2627番 (72)発明者 マーク,メラニー・アール アメリカ合衆国94010カリフォルニア州 バーリンゲイム、チュラ・ビスタ・アベニ ュー 958ビー番 (72)発明者 マザー,ジェニー・ピー アメリカ合衆国94030カリフォルニア州 ミルブレイ、ラ・プレンダ・ドライブ269 番 (72)発明者 リ,ロンガオ アメリカ合衆国94030カリフォルニア州 ミルブレイ、リチャードソン・ドライブ・ ナンバー203、401番

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.天然gas6のAドメインの1又はそれ以上のグルタミン酸残基を欠く変種gas 6ポリペプチド。 2.天然gas6のAドメインを欠く請求項1の変種gas6。 3.gas6のDドメインである請求項2の変種gas6。 4.gas6のGドメインである請求項2の変種gas6。 5.ヒトgas6に由来する請求項1の変種gas6。 6.請求項1の変種gas6と生理学的に許容できる担体とを含む組成物。 7.請求項1のgas6変種をコードする核酸。 8.請求項7の核酸を含むベクター。 9.請求項7の核酸を含む宿主細胞。 10.請求項9の宿主細胞をその核酸が発現するように培養し、その細胞培養か らgas6変種を回収することからなる変種gas6ポリペプチドの生産法。 11.(a)gas6をコードする核酸を含有する宿主細胞を、その核酸が発現し、 かつ、そのようにして生産されるgas6ポリペプチドが本質的にγ-カルボキシル 化されないような条件下に培養し、 (b)そのgas6変種をその細胞培養から回収する、 ことからなる変種gas6の生産法。 12.培養をビタミンKの不在下に行なう請求項11の方法。 13.宿主細胞がγ-カルボキシラーゼ酵素を欠く請求項11の方法。 14.宿主細胞が哺乳類細胞でない請求項11の方法。 15.Rse受容体を含有する細胞を、Rse受容体を活性化するのに有効な量の外因 性gas6ポリペプチドにさらす処置を含む、Rse受容体の活性化法。 16.該gas6がヒトgas6からなる請求項15の方法。 17.該gas6が本質的にγ-カルボキシル化されていない変種gas6からなる請求 項15の方法。 18.該gas6がイムノアドヘシンからなる請求項15の方法。 19.該細胞が膠細胞である請求項15の方法。 20.該膠細胞がシュワン細胞である請求項19の方法。 21.Rse受容体を含有する細胞の生存、増殖又は分化を増進する方法であって 、その細胞を、その細胞の生存、増殖又は分化を増進するのに有効な量の外因性 gas6ポリペプチドにさらす処置を含む方法。 22.該gas6がヒトgas6である請求項21の方法。 23.該細胞がヒト細胞である請求項22の方法。 24.該細胞の増殖を増進することからなる請求項21の方法。 25.容器、該容器上のラベル、該容器に含まれる組成物からなる製品であって 、該組成物がRse受容体を含む細胞の生存、分化又は増殖を増進するのに有効で あり、該容器上のラベルが該細胞の生存、分化又は増殖を増進するためにその組 成物を使用できることを示し、該組成物中の活性剤がgas6ポリペプチドを含む製 品。 26.Mer受容体を含有する細胞を、Mer受容体を活性化するのに有効な量の外因 性gas6ポリペプチドにさらす処置を含む、Mer受容体の活性化法。 27.該gas6がヒトgas6からなる請求項26の方法。 28.該細胞が単核細胞である請求項26の方法。 29.Mer受容体を含む細胞の生存、増殖又は分化を増進する方法であって、そ の細胞を、その細胞の生存、増殖又は分化を増進するのに有効な量の外因性gas6 ポリペプチドにさらす処置を含む方法。
JP52769896A 1995-03-10 1996-03-05 gas6による受容体活性化 Expired - Fee Related JP3342873B2 (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US08/402,253 1995-03-10
US08/402,253 US6211142B1 (en) 1995-03-10 1995-03-10 Compositions comprising gas6 polypeptides and articles of manufacture comprising the same
US43886195A 1995-05-10 1995-05-10
US08/438,861 1995-05-10
PCT/US1996/003031 WO1996028548A1 (en) 1995-03-10 1996-03-05 Receptor activation by gas6

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH10505507A true JPH10505507A (ja) 1998-06-02
JP3342873B2 JP3342873B2 (ja) 2002-11-11

Family

ID=27017784

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP52769896A Expired - Fee Related JP3342873B2 (ja) 1995-03-10 1996-03-05 gas6による受容体活性化

Country Status (11)

Country Link
US (1) US6169070B1 (ja)
EP (1) EP0815224B1 (ja)
JP (1) JP3342873B2 (ja)
AT (1) ATE271606T1 (ja)
AU (1) AU712585B2 (ja)
CA (1) CA2214629C (ja)
DE (1) DE69632949T2 (ja)
ES (1) ES2225874T3 (ja)
IL (1) IL117425A0 (ja)
MX (1) MX9706827A (ja)
WO (1) WO1996028548A1 (ja)

Families Citing this family (45)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1999029732A2 (en) 1997-12-08 1999-06-17 Lexigen Pharmaceuticals Corporation Heterodimeric fusion proteins useful for targeted immune therapy and general immune stimulation
US20030105294A1 (en) * 1998-02-25 2003-06-05 Stephen Gillies Enhancing the circulating half life of antibody-based fusion proteins
WO1999049894A1 (en) * 1998-04-01 1999-10-07 Genentech, Inc. Antagonists to growth arrest specific gene 6 to treat insulin-resistant disorders
DE69931908T2 (de) * 1998-04-15 2007-01-11 Lexigen Pharmaceuticals Corp., Lexington Steigerung der antikörper-zytokin-fusionsproteinmediierten immunantwort durch mitverabreichung mit einem angiogeneseinhibitor
AUPP785098A0 (en) * 1998-12-21 1999-01-21 Victor Chang Cardiac Research Institute, The Treatment of heart disease
PT1914244E (pt) * 1999-04-09 2013-07-26 Kyowa Hakko Kirin Co Ltd Processo para regular a actividade de moléculas funcionais sob o ponto de vista imunológico
US6635249B1 (en) * 1999-04-23 2003-10-21 Cenes Pharmaceuticals, Inc. Methods for treating congestive heart failure
DK1187852T3 (da) * 1999-05-19 2007-11-26 Merck Patent Gmbh Ekspression og eksport af interferon-alpha-proteiner som Fc-fusionsproteiner
SK782002A3 (en) 1999-07-21 2003-08-05 Lexigen Pharm Corp FC fusion proteins for enhancing the immunogenicity of protein and peptide antigens
US7067110B1 (en) 1999-07-21 2006-06-27 Emd Lexigen Research Center Corp. Fc fusion proteins for enhancing the immunogenicity of protein and peptide antigens
MXPA02001417A (es) * 1999-08-09 2002-08-12 Lexigen Pharm Corp Complejos multiples de citosina-anticuerpo.
JP2003514552A (ja) 1999-11-12 2003-04-22 メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング 改善された性質を有するエリトロポエチンの形態
US20050202538A1 (en) * 1999-11-12 2005-09-15 Merck Patent Gmbh Fc-erythropoietin fusion protein with improved pharmacokinetics
EP1252192B1 (en) 2000-02-11 2006-08-16 MERCK PATENT GmbH Enhancing the circulating half-life of antibody-based fusion proteins
EP1199081A1 (en) * 2000-10-20 2002-04-24 Vlaams Interuniversitair Instituut voor Biotechnologie Use of inhibition of a growth arrest-specific gene (gas6) function or of a gas6 receptor for preventing and treating a thromboembolic disease
AU2001260214A1 (en) * 2000-04-13 2001-10-30 D. Collen Research Foudation Vzw Use of inhibition of a gas6 function or of a gas6 receptor for preventing and treating a cardiovascular disease
RU2272644C2 (ru) * 2000-06-29 2006-03-27 Мерк Патент Гмбх Усиление иммунной реакции, медиатором которой является слитый протеин антитело-цитокин, при помощи комбинированного лечения агентами, увеличивающими поглощение иммуноцитокина
US6946292B2 (en) * 2000-10-06 2005-09-20 Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd. Cells producing antibody compositions with increased antibody dependent cytotoxic activity
DK1366067T3 (da) * 2001-03-07 2012-10-22 Merck Patent Gmbh Ekspressionsteknologi for proteiner indeholdende en hybrid isotype-antistof-enhed
US6992174B2 (en) * 2001-03-30 2006-01-31 Emd Lexigen Research Center Corp. Reducing the immunogenicity of fusion proteins
BR0209177A (pt) * 2001-05-03 2004-10-05 Merck Patent Gmbh Anticorpo especìfico a tumor recombinante e uso do mesmo
GB2378899A (en) * 2001-08-25 2003-02-26 Thromb X N V Treatment of anemia
PT1454138E (pt) * 2001-12-04 2012-03-28 Merck Patent Gmbh Imunocitoquinas com seletividade modulada
US7691568B2 (en) 2002-04-09 2010-04-06 Kyowa Hakko Kirin Co., Ltd Antibody composition-containing medicament
WO2003099320A1 (en) * 2002-05-24 2003-12-04 Zensun (Shanghai) Sci-Tech.Ltd Neuregulin based methods and compositions for treating viral myocarditis and dilated cardiomyopathy
WO2004108748A2 (en) * 2002-09-24 2004-12-16 Dow, Kenneth, Centocor, Inc. Growth arrest specific gene 6 peptides, antibodies, compositions, methods and uses
AU2003276958A1 (en) * 2002-09-24 2004-04-19 Centocor, Inc. Epitope-tagged recombinant growth arrest specific gene 6 protein
CA2510180C (en) * 2002-12-17 2012-09-11 Merck Patent Gesellschaft Mit Beschraenkter Haftung Humanized antibody (h14.18) of the mouse 14.18 antibody binding to gd2 and its fusion with il-2
US20060183671A1 (en) * 2003-07-17 2006-08-17 Anne Angelillo-Scherrer Treatment of anemia
US8496930B2 (en) * 2003-10-01 2013-07-30 Kyowa Hakko Kirin Co., Ltd Method of stabilizing antibody and stabilized solution-type antibody preparation
EP1699822B1 (en) 2003-12-30 2008-04-23 MERCK PATENT GmbH Il-7 fusion proteins with antibody portions, their preparation and their use
ES2387028T3 (es) * 2003-12-31 2012-09-12 Merck Patent Gmbh Proteína de fusión de Fc-eritropoyetina con farmacocinética mejorada
EA011859B9 (ru) * 2004-01-05 2013-07-30 Емд Лексиген Ресерч Сентер Корп. Соединения для адресной доставки препарата к ткани или органу-мишени
US7670595B2 (en) * 2004-06-28 2010-03-02 Merck Patent Gmbh Fc-interferon-beta fusion proteins
CN101072793B (zh) * 2004-12-09 2012-06-20 默克专利有限公司 具有降低的免疫原性的il-7变体
US20070104689A1 (en) * 2005-09-27 2007-05-10 Merck Patent Gmbh Compositions and methods for treating tumors presenting survivin antigens
US20070213264A1 (en) 2005-12-02 2007-09-13 Mingdong Zhou Neuregulin variants and methods of screening and using thereof
CA2841386A1 (en) * 2005-12-30 2007-07-12 Zensun (Shanghai) Science & Technology Limited Extended release of neuregulin for improved cardiac function
US8168415B2 (en) 2007-02-07 2012-05-01 The Regents Of The University Of Colorado Axl fusion proteins as Axl tyrosine kinase inhibitors
WO2009062112A2 (en) * 2007-11-09 2009-05-14 The Salk Institute For Biological Studies Use of tam receptor inhibitors as antimicrobials
WO2010014755A1 (en) * 2008-07-29 2010-02-04 The Regents Of The University Of Colorado Methods and compounds for enhancing anti-cancer therapy
CA2759333A1 (en) * 2009-04-22 2010-10-28 Merck Patent Gmbh Antibody fusion proteins with modified fcrn binding sites
WO2012149018A1 (en) * 2011-04-25 2012-11-01 The Regents Of The University Of Colorado Mer tyrosine kinase inhibitors and methods of making and using the same
WO2013053076A1 (en) 2011-10-10 2013-04-18 Zensun (Shanghai)Science & Technology Limited Compositions and methods for treating heart failure
WO2023212664A1 (en) * 2022-04-27 2023-11-02 Arizona Board Of Regents On Behalf Of The University Of Arizona Synapse surgery tools and associated methods for neural circuit-specific synapse ablation and modification

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5585269A (en) * 1994-06-02 1996-12-17 The University Of North Carolina At Chapel Hill Isolated DNA encoding c-mer protooncogene
US5538861A (en) * 1994-07-29 1996-07-23 Amgen Inc. DNA encoding a stimulating factor for the axl receptor
US6211142B1 (en) * 1995-03-10 2001-04-03 Genentech, Inc. Compositions comprising gas6 polypeptides and articles of manufacture comprising the same
US5721139A (en) * 1995-05-10 1998-02-24 Genentech, Inc. Isolating and culturing schwann cells

Also Published As

Publication number Publication date
IL117425A0 (en) 1996-07-23
MX9706827A (es) 1997-11-29
DE69632949D1 (de) 2004-08-26
AU5183696A (en) 1996-10-02
AU712585B2 (en) 1999-11-11
JP3342873B2 (ja) 2002-11-11
EP0815224A1 (en) 1998-01-07
WO1996028548A1 (en) 1996-09-19
ATE271606T1 (de) 2004-08-15
CA2214629C (en) 2001-07-10
EP0815224B1 (en) 2004-07-21
DE69632949T2 (de) 2005-07-28
ES2225874T3 (es) 2005-03-16
US6169070B1 (en) 2001-01-02
CA2214629A1 (en) 1996-09-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3342873B2 (ja) gas6による受容体活性化
JP4252111B2 (ja) Al−1神経栄養因子、eph関連チロシンキナーゼレセプターのためのリガンド
CN111164100B (zh) 白介素-21突变蛋白和治疗方法
CN103649114B (zh) 新的免疫缀合物
US5667780A (en) Antibodies to SMDF
EP0773997B1 (en) Htk ligand
AU716924B2 (en) AL-1 neurotrophic factor, a ligand for an EPH related tyrosine kinase receptor
EP0826035B1 (en) Isolating and culturing schwann cells
US20070128259A1 (en) AL-2 neurotrophic factor
US5955420A (en) Rse receptor activation
US5721139A (en) Isolating and culturing schwann cells
JP2022517029A (ja) 変異したインターロイキン-34(il-34)ポリペプチドおよび治療におけるその使用
US6610296B2 (en) Methods of enhancing cognitive function using an AL-1 neurotrophic factor immunoadhesin
KR20220003562A (ko) 항-cd38 항체 및 제형
KR20010072564A (ko) 루푸스 및 관련된 신장 질환의 치료 및/또는 반전에사용되는 안티 gp39 항체의 용도
JP2001520884A (ja) ウイルスがコードするセマフォリンタンパク質受容体dnaおよびポリペプチド

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080823

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080823

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090823

Year of fee payment: 7

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees