JPH1045927A - 防曇膜及びその製造方法 - Google Patents

防曇膜及びその製造方法

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JPH1045927A
JPH1045927A JP8209800A JP20980096A JPH1045927A JP H1045927 A JPH1045927 A JP H1045927A JP 8209800 A JP8209800 A JP 8209800A JP 20980096 A JP20980096 A JP 20980096A JP H1045927 A JPH1045927 A JP H1045927A
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雅巳 奥尾
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博 大村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ガラスやプラスチックなどの基材に効果的に
防曇性能を付与できるとともに、その性能が長期間持続
する防曇膜及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 防曇膜は、基材側の疎水性重合体セグメ
ント(I)と、その上の親水性重合体セグメント(II)
の2層構造からなる膜である。表面側の親水性重合体セ
グメント(II)は、疎水性重合体セグメント(I)に光
開始基断片を介して結合している。疎水性重合体セグメ
ント(I)は光開始基を有する疎水性単量体より形成さ
れ、親水性重合体セグメント(II)はアミド基を有する
単量体などより形成される。この防曇膜は、光開始基を
有する疎水性重合体からなる層に、親水性単量体を接触
させ、活性エネルギー線を照射することにより製造され
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ガラスやプラス
チック成形材料、フィルムの様な透明な材料よりなるレ
ンズ、鏡などの基材表面の結露による曇りや水滴の付着
を防止する防曇膜及びその製造方法に関するものであ
る。更に詳細には、基材に対して効果的に防曇性能を付
与でき、かつその性能を長期間にわたって持続できる防
曇膜及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、透明な基材は、露点以下の温度
になると表面に結露を生じて透明度が低下する。このよ
うな透明基材の曇りを防止する方法として、従来から幾
つかの提案がなされている。
【0003】例えば、界面活性剤、親水性ポリマーなど
の親水性物質を基材表面に塗布する方法、界面活性剤を
含有する塗膜を基材表面に形成する方法、親水性フィル
ムを基材にラミネートする方法(特開昭62−1825
3号公報)、親水性の硬化性樹脂を基材に塗布して硬化
させる方法(特開昭63−251401号公報)などが
ある。また、特公昭56−5416号公報には、三重項
増感剤を含有する親水性組成物に光照射して基材表面を
親水化処理する方法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、防曇性が付
与された各種基材は、防曇膜に水が接触するような条件
下で使用される場合が多いことから、界面活性剤や親水
性ポリマーを基材表面に塗布する方法では防曇膜が水に
溶解して基材表面から流れ落ち、防曇持続性に欠けると
いう問題があった。
【0005】また、親水性樹脂の硬化物や親水性フィル
ムを防曇膜として使用する方法では、吸湿により塗膜の
硬度が低下して傷が付いたり、塗膜が剥離したりして耐
久性に劣るという問題があった。しかも、防曇膜が吸湿
により白化するという問題があった。
【0006】加えて、前記の特公昭56−5416号公
報に基づく方法では、防曇持続性はあるが、光開始剤が
基材から水素を引き抜いて重合を開始させるという機構
のため、使用可能な基材が限られるという問題があっ
た。
【0007】この発明は、上記のような従来技術に存在
する問題に着目してなされたものである。その目的とす
るところは、長期間にわたって防曇性能を維持でき、透
明性が良く、しかも実用的な塗膜強度を有し、かつ防曇
性を付与しようとする基材との密着性が良好である防曇
膜及びその製造方法を提供することにある。その他の目
的とするところは、使用可能な基材に制限を受けるおそ
れを防止できるとともに、容易に製造できる防曇膜及び
その製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記のような目的を達成
するために、本発明者らは鋭意研究した結果、この発明
を完成した。
【0009】すなわち、第1の発明の防曇膜は、基材上
に形成される防曇膜であって、疎水性単量体から形成さ
れる疎水性重合体セグメント(I)が基材側に位置し、
下記親水性単量体からなる群より選ばれる少なくとも1
種の単量体より形成される親水性重合体セグメント(I
I)が前記疎水性重合体セグメント(I)上で光開始基
断片を介して疎水性重合体セグメント(I)に結合して
いる重合体より構成されている。
【0010】親水性単量体:カルボキシル基、水酸基、
スルホン酸基、リン酸基、これらのアルカリ金属塩又は
アンモニウム塩、アルキレンオキシド基、アミノ基、ア
ミド基、シアノ基、酸無水物基及び4級アンモニウム塩
基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有
する単量体。
【0011】第2の発明の防曇膜は、第1の発明におい
て、前記疎水性重合体セグメント(I)が光開始基を有
する単量体より形成され、かつ光開始基断片が下記に示
す基を含むとともに、親水性重合体セグメント(II)が
アミド基を有する親水性単量体より形成されるものであ
る。
【0012】
【化4】
【0013】第3の発明の防曇膜の製造方法は、基材上
に形成された光開始基を有する疎水性重合体の層上に、
前記親水性単量体からなる群より選ばれる少なくとも1
種を接触させて活性エネルギー線を照射するものであ
る。
【0014】第4の発明の防曇膜の製造方法は、第3の
発明において、光開始基を有する疎水性重合体が下記に
示される光開始基の群から選ばれる少なくとも1種を有
する単量体より形成される重合体セグメントであり、親
水性単量体がアミド基を有する単量体である。
【0015】
【化5】
【0016】(式中、Aは
【0017】
【化6】
【0018】を表し、R1 、R2 は炭素数1〜4のアル
キル基又はR1 、R2 とR1 、R2 間の炭素により形成
される炭素数5〜7のシクロアルキル基、R3 は水酸基
又はアミノ基、R4 、R5 は炭素数1〜4のアルキル基
を表す。)
【0019】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態につい
て詳細に説明する。防曇膜は、その構造に特徴を有し、
基材上に形成された疎水性重合体セグメント(I)と、
その上に形成された親水性重合体セグメント(II)が光
開始基断片を介して化学的に結合されて構成されてい
る。さらに具体的には、防曇膜は疎水性重合体セグメン
ト(I)と親水性重合体セグメント(II)からなるグラ
フト共重合体により構成され、親水性重合体セグメント
(II)は基材上の疎水性重合体セグメント(I)(主
鎖)に光開始基断片を介して結合しているグラフト共重
合体のグラフト重合鎖(側鎖)である。なお、疎水性重
合体と親水性重合体は、それぞれ疎水性重合体セグメン
ト(I)又は親水性重合体セグメント(II)として互い
に結合しない単独重合体などを含有していてもよい。す
なわち、グラフト率が低い場合であっても所期の目的を
達成できればよい。ちなみに、疎水性重合体はその膜厚
が薄いほどグラフト率が高く、親水性重合体は単独重合
体や未反応単量体を除去することによりグラフト率が高
くなる。
【0020】疎水性重合体セグメント(I)とは、光開
始基を有する単量体を重合して得られる重合体におい
て、この光開始基が開裂した構造を有する重合体であ
る。ここで、光開始基を有する単量体とは、活性エネル
ギー線の照射によりラジカルを発生させる基、すなわち
光開始基と、重合性不飽和二重結合を1分子中にそれぞ
れ1個以上有するものをいう。
【0021】光開始基を有する単量体を具体的に示す
と、S- (メタ)アクリロイル- O-メチルキサンテー
ト、S- (メタ)アクリロイル- O- エチルキサンテー
ト、S- (メタ)アクリロイル- O- プロピルキサンテ
ートなどのキサンテート類、2,2’−アゾビス[2−
(アクリロイルオキシメチル)プロピオニトリル]、
2,2’−アゾビス[2−(メタクリロイルオキシメチ
ル)プロピオニトリル]などのアゾ化合物、及び、下記
の化学式化7で示されるケトン化合物などが例示され
る。
【0022】
【化7】
【0023】〔式中、R1
【0024】
【化8】
【0025】を表し、R2 は水素、R6 又はZであり、
3 は水素又はR13であり、R4 、R 5 は各々独立して
水素、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12の
アルコキシ基、フェニル基、又はR4 、R5 とその間の
炭素により形成される炭素数5〜7のシクロアルキル基
であり、R6 はO- R15、S- R15、N( R16)2、ピペ
リジノ基、モルホリノ基、SO2 16、又はZであり、
7 はそれぞれハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基又
は炭素数1〜6のアルコキシ基により置換されていても
よい、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、ベンゾ
イル基であり、R 8 、R9 は水素、水酸基、炭素数1〜
6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキル基、又はZで
あり、R10は水素又はZであり、R11は炭素数1〜3の
アルキル基又はフェニル基であり、R12はアルキル基、
アシル基又はZを表し、R13は水素、
【0026】
【化9】
【0027】又は、R3 と一緒になってオルト位につい
た- O- 又は- S- であり、R14は水素、Z又はR13
あり、R15は水素、炭素数1〜6のアルキル基又はZで
あり、R16、R17は水素又は炭素数1〜6のアルキル基
であり、R18は炭素数4〜10の三級アルキル又はアラ
ルキル基を表す。Zは
【0028】
【化10】
【0029】を表し、A、B、Dは各々独立して、単結
合、
【0030】
【化11】
【0031】であり、X、Yは無置換又は水酸基が置換
した炭素数1〜4のアルキレン基を表し、p、qは0又
は1〜10の整数であり、Wは、
【0032】
【化12】
【0033】を表し、R19は水素又はメチル基、R20
炭素数1〜20のアルキル基、R21は水素、炭素数1〜
6のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシ置換アル
キル基を表し、Wが二価の場合は同じ構造の基が2つ結
合していることを表す。かつ、R1 〜R3 の中にZ基が
1つ以上含まれる。〕 前記化学式化7で示される光開始基を有する単量体の例
を具体的に示すと、1−(4−ビニルフェニル)−2−
ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4
−イソプロペニルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メ
チルプロパン−1−オン、1−(4−アリルオキシベン
ゾイル)−1−ヒドロキシシクロヘキサン、1−{4−
(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル}−2−
ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−[4
−{2−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプ
ロピルオキシ)エトキシ}フェニル]−2−ヒドロキシ
−2−メチルプロパン−1−オン、1−{4−(2−メ
タクリロイルオキシエトキシ)フェニル}−2−ヒドロ
キシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−[4−{2
−(2−(メタクリロイルオキシ)エトキシカルボニル
オキシ)エトキシ}フェニル]−2−ヒドロキシ−2−
メチルプロパン−1−オン、2−アクリロイルオキシ−
1−フェニル−2−メチルプロパン−1−オン、1−
{4−(2−アクリロイルオキシエチルチオ)フェニ
ル}−2−モルホリノ−2−メチルプロパン−1−オ
ン、メチル[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチル
−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]マレー
ト、イソプロピル[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−
メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]フ
マレート、ブチル[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−
メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]イ
タコネート、オクチル[2−{4−(2−ヒドロキシ−
2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチ
ル]メサコネート、ビス[2−{4−(2−ヒドロキシ
−2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチ
ル]フマレート、ビス[2−{4−(2−ヒドロキシ−
2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチ
ル]イタコネート、ビス[2−{4−(2−ヒドロキシ
−2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチ
ル]メサコネート、1−{4−(2−メタクリロイルエ
トキシ)フェニル}−2,2−ジメトキシ−2−フェニ
ルエタン−1−オン、2−{4−(2−アクリロイルブ
トキシ)フェニル}−2,2−ジメトキシ−2−フェニ
ルエタン−1−オン、1,2−ビス{4−(2−アクリ
ロイルエトキシ)フェニル}−2,2−ジメトキシ−2
−フェニルエタン、2,2−ビス(2−メタクリロイル
オキシエトキシ)−1,2−ジフェニルエタン−1−オ
ン、2−アリル−2−イソプロピルオキシ−1,2−ジ
フェニルエタン−1−オン、2−アクリロイルオキシメ
チル−2−メトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−
オン、2−アクリロイルオキシ−1,2−ジフェニルエ
タン−1−オン、1,2−ジフェニル−1,2−エタン
ジオン−2−O−アクリロイルオキシム、4−ビニルベ
ンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、4−ビニ
ル−4’−(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾ
フェノン、3,3' −ビス(2−メタクリロイルオキシ
エトキシカルボニル)−4,4'−ビス(t−ブチルペ
ルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−(3
−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキ
シカルボニル)−3,3'−ビス(t−ヘキシルペルオ
キシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3' −ビス(メ
タクリロイルオキシエトキシカルボニル)−4,4' −
ビス(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノ
ン、4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、
4−{2−(アクリロイルオキシ)エトキシ}ベンゾフ
ェノン、4−スチリルメトキシベンゾフェノン、4−
(メタ)アクリロイルオキシチオキサントンなどが挙げ
られる。
【0034】疎水性重合体セグメント(I)には、光開
始基を有する単量体の他に、光開始基を有しない単量体
の1種又は2種以上を併用して形成されたものであって
も良い。そのような光開始基を有しない単量体は特に限
定されず、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、
ブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)ア
クリレート類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ
ート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートな
どの水酸基含有(メタ)アクリレート類、N,N−ジメ
チル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルア
ミド類、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)ア
クリレート、フマル酸エステル類、グリシジル(メタ)
アクリレート、マレイン酸エステル類、イタコン酸エス
テル類、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、スチレ
ン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピ
ルジン、フッ素含有単量体、ケイ素含有単量体、リン含
有単量体などが挙げられる。
【0035】この光開始基を有しない単量体の配合量
は、光照射による親水性単量体の重合効率を維持するた
め、95重量%以下であることが好ましい。前記光開始
基断片とは、前述した疎水性重合体セグメント(I)に
結合している光開始基がラジカル開裂して生じ、疎水性
重合体セグメント(I)に結合している基をいう。この
光開始基断片としては、次の式で表わされる基を含むも
のが好ましい。
【0036】
【化13】
【0037】次に、前記親水性重合体セグメント(II)
とは、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸
基、これらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、アル
キレンオキシド基、アミノ基、アミド基、シアノ基、酸
無水物基及び4級アンモニウム塩基からなる群より選ば
れる少なくとも1種の官能基を有する親水性単量体より
選ばれる少なくとも1種の単量体から形成される重合体
セグメントである。
【0038】この親水性単量体を具体的に示すと、下記
の (1)〜(15)の単量体が挙げられ、これらの単量体の中
から適宜その1種を単独で又は2種以上を混合して使用
することができる。 (1) (メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタ
コン酸、メサコン酸、シトラコン酸、β−(メタ)アク
リロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネートなど
の不飽和カルボン酸類。 (2) マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン
酸無水物、4−メタクリロキシエチルトリメリット酸無
水物などの不飽和カルボン酸無水物類。 (3) ヒドロキシフェノキシエチル(メタ)アクリレー
ト、エチレンオキサイドの付加モル数が2〜90のヒド
ロキシフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アク
リレート、プロピレンオキサイドの付加モル数が2〜9
0のヒドロキフェノキシポリプロピレングリコール(メ
タ)アクリレート、ビニルフェノール、ヒドロキシフェ
ニルマレイミドなどのフェノール基含有単量体類。 (4) スルホキシエチル(メタ)アクリレート、スチレン
スルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、
(メタ)アリルスルホン酸などのスルホン酸基含有単量
体類。 (5) モノ2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッ
ドホスフェートなどのリン酸基含有単量体類。 (6) N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N
−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル
(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、
N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミ
ド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)
アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類。 (7) N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレー
ト、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレー
トなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート類。 (8) 2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−
ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジ
ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロ
キシアルキル(メタ)アクリレート類。 (9) エチレンオキサイドの付加モル数が2〜98のポリ
エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレ
ンオキサイドの付加モル数が2〜98のメトキシポリエ
チレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレン
オキサイド付加モル数が2〜98のフェノキシポリエチ
レングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオ
キサイド付加モル数が1〜4のノニルフェノールモノエ
トキシレート(メタ)アクリレート、メトキシエチルア
クリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)ア
クリレートなどのポリオキシエチレンのモノ(メタ)ア
クリレート類。 (10)(メタ)アクリル酸のナトリウム塩、スチレンスル
ホン酸ナトリウム、スルホン酸ナトリウムエトキシ(メ
タ)アクリレート、アクリルアミド−t−ブチルスルホ
ン酸のナトリウム塩などの酸基含有単量体のアルカリ金
属塩類。 (11)(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルトリメチルア
ンモニウムクロライド、(メタ)アクリル酸ヒドロキシ
プロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどの四級
アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート類。 (12)アリルグリコール、エチレンオキサイド付加モル数
が3〜32のポリエチレングリコールモノ(メタ)アリ
ルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノアリ
ルエーテルなどの(メタ)アリル化合物類。 (13)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム
などの環状複素環含有化合物類。 (14)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化
ビニリデンなどのシアン化ビニル類。 (15)下記に示す化学式(1)〜(7)で例示される反応
性乳化剤。
【0039】
【化14】
【0040】但し、Фは芳香環、(OA)m,(OA)n はホ゜リオキシ
アルキレン基(m, nはそれぞれ1〜20である)、R,R'は
炭素数1〜20のアルキル基である。
【0041】
【化15】
【0042】但し、Rは炭素数1〜20のアルキル基で
ある。
【0043】
【化16】
【0044】
【化17】
【0045】
【化18】
【0046】但し、Φは芳香環である。
【0047】
【化19】
【0048】但し、Φは芳香環である。
【0049】
【化20】
【0050】但し、Φは芳香環である。この親水性単量
体としては、具体的には、日本油脂(株)製の商品名ラ
ピゾールAIS−112およびAIS−212、花王
(株)製の商品名ラテムルS−180、180−A、日
本乳化剤(株)製の商品名Antox−MS−2N、A
ntox−MS−60、RA−4211、三洋化成
(株)製の商品名エレミノールJS−2、RS−30、
第一工業製薬(株)製の商品名アクアロンHS−20、
HS−10、HS−5、ニューフロンテアA−229
E、旭電化工業(株)製の商品名SE−10Nなどが挙
げられる。
【0051】これらの中では、防曇膜の性能及びその持
続性が特に良好である点でアミド基を有する単量体が好
ましく、具体的には、(メタ)アクリルアミド、N,N
−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル
モルモリン、(メタ)アクリルアミド−t−ブチルスル
ホン酸およびその塩などが挙げられる。
【0052】親水性重合体セグメント(II)を形成する
単量体として、親水性単量体の他に、親水性を有しない
単量体を配合することができる。そのような単量体とし
ては、ラジカル重合可能なものであれば特に限定されな
いが、具体的には(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フ
マル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸のアルキル
又はグリシジルエステル類、スチレン、アクリレート
類、アクリル酸のビニルエステル類、フッ素含有単量
体、ケイ素含有単量体などが挙げられる。その配合量は
親水性重合体としての性質を失わない範囲であることが
必要であり、50重量%以下が好ましい。
【0053】次に、防曇膜の製造方法について説明す
る。防曇膜の製造方法は、基材上に形成された光開始基
を有する疎水性重合体からなる層上に、親水性単量体を
接触させて活性エネルギー線を照射することにより、基
材表面に光グラフト重合を起こさせて防曇膜を得るもの
である。
【0054】疎水性重合体に結合した光開始基は活性エ
ネルギー線照射によりラジカルを発生し、ここで生じた
光開始基断片のラジカルから親水性単量体がグラフト重
合することにより親水性重合体セグメント(II)の層が
形成される。従って、得られる防曇膜は、疎水性重合体
セグメント(I)の層上に光開始基断片を介して結合し
た親水性単量体のグラフト重合鎖からなる親水性重合体
セグメント(II)の層が形成された2層構造をもつこと
になる。
【0055】図1は、このような防曇膜の製造方法を概
念的に示したものである。図1において、実線は光開始
基を有する重合体の主鎖、−CDは光開始基、−C・は
光開始基が開裂した光開始基断片ラジカル、−C−は光
開始基断片、破線はは親水性単量体が重合した親水性重
合体のグラフト重合鎖を表す。
【0056】次に、防曇膜の具体的な製造方法及びそれ
に使用される各成分について説明する。まず、光開始基
を有する疎水性重合体からなる層について説明する。こ
の重合体からなる層は、下記の各方法で得ることができ
る。 (i) 光開始基を有する単量体の単独重合体若しくは共重
合体の単独又は双方を含有する組成物を基材に塗布して
層を形成する方法。 (ii)光開始基を有する単量体を含有する組成物を基材上
に塗布後、熱又は光により重合することによって形成す
る方法。 (iii) 光開始基を有さず、かつ官能基を有する重合体の
表面に、化学反応によって光開始基を導入して形成する
方法。具体的には、ヨーロピアン・ポリマー・ジャーナ
ル(Eur.Polym.J.),29巻,63頁,1
993年、及び、ポリマー・マテリアル・サイエンス・
アンド・エンジニアリング(Polym.Mater.
Sci.Eng.),60巻,1頁,1989年などに
記載の方法である。すなわち、例えば水酸基を有する基
材に、アルコキシシリル基を有する光重合開始剤を反応
させる方法である。
【0057】このなかでは、(i) の方法が簡便であるた
め好ましい。塗布する際には、必要に応じて組成物を溶
剤で希釈して用いてもよい。光開始基を有する単量体
は、前述したものであり、それらの中では、光開始効率
が良いこと及び製造が容易な点から、下記式で示される
光開始基を有する単量体が好ましい。
【0058】
【化21】
【0059】〔式中、Aは
【0060】
【化22】
【0061】を表し、R1 、R2 は炭素数1〜4のアル
キル基又はR1 ,R2 とその間の炭素により形成される
炭素数5〜7のシクロアルキル基、R3 は水酸基又はア
ミノ基、R4 、R5 は炭素数1〜4のアルキル基を表
す〕 光開始基を有する単量体として、具体的には、1−{4
−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニ
ル}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オ
ン、{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキ
シ)フェニル}(1−ヒドロキシシクロヘキシル)ケト
ン、1−{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエト
キシ)フェニル}−2−モルホリノ−2−メチルプロパ
ン−1−オン、1−{4−(2−(メタ)アクリロイル
オキシエトキシ)フェニル}−2−ジメチルアミノ−2
−メチルプロパン−1−オン、1−[4−{2−(2−
((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシカルボニルオ
キシ)エトキシ}フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メ
チルプロパン−1−オン、1−{4−(2−(メタ)ア
クリロイルエトキシ)フェニル}−2,2−ジメトキシ
−2−フェニルエタン−1−オンなどが好ましい。
【0062】この光開始基を有する重合体は、通常のラ
ジカル重合開始剤を用いて重合することによって得られ
る。この場合の重合体は、光開始基を有する単量体の1
種又は2種以上を単独で重合して、又は前述した光開始
基を持たない他の単量体の1種又は2種以上と共重合し
て得られる。
【0063】光開始基を有する重合体中の光開始基を有
する単量体成分の量は5〜100重量%が好ましく、5
重量%未満では光照射による親水性単量体の重合の効率
が悪くなる。
【0064】光開始基を有する重合体からなる層中に
は、光開始基を有する重合体の他に、未反応の光開始基
を有する単量体、及び通常の塗膜を形成する際に用いら
れる添加剤を含有していてもよい。そのような添加剤と
しては、例えば、他の単官能又は多官能単量体及びそれ
らの重合体、光重合開始剤、硬化剤、紫外線吸収剤、レ
ベリング剤、界面活性剤や、コロイダルシリカなどの無
機フィラー等が挙げられる。また、基材との密着性を向
上させるために、通常用いられるシランカップリング
剤、チタネートカップリング剤等を添加してもよい。
【0065】次に、親水性単量体より形成される親水性
重合体セグメント(II)の層について説明する。この重
合体セグメント(II)の層を形成するための親水性単量
体は、親水性単量体単独又は他の溶剤や添加剤を含有す
るものである。この親水性単量体を含有する組成物中の
親水性単量体の濃度は、100%でも使用できるが、親
水性単量体が溶解し、かつ光開始基を有する重合体の層
が溶解しないような溶媒で希釈して用いてもよい。溶媒
としては特に限定されないが、水、メタノール、アセト
ン、メチルエチルケトン等の極性溶媒が好ましい。ま
た、親水性単量体中には、他の単官能及び多官能単量体
や、界面活性剤、増粘剤等の添加剤を含有していても良
い。
【0066】親水性単量体を光開始基を有する重合体セ
グメント(I)に接触させる際に、光開始基を有する重
合体セグメント(I)の層が、親水性単量体に溶解して
しまうと、弊害が生じるおそがある。すなわち、得られ
る防曇膜の外観が白化等により悪くなったり、表面層が
親水性重合体の均一な層にならないため、防曇性能が悪
くなったりするおそがある。このため、親水性単量体と
しては、光開始基を有する重合体を溶解しないものが好
ましい。
【0067】親水性単量体を光開始基を有する重合体セ
グメント(I)に接触させる方法としては、光開始基を
有する重合体セグメント(I)からなる層の上に親水性
単量体を塗布してもよく、また光開始基を有する重合体
セグメント(I)の層を表面に有する基材を親水性単量
体中に浸漬してもよい。さらに、酸素による障害を防ぐ
ために、親水性単量体の上を、活性エネルギー線を透過
する材質、例えばガラス、石英、透明プラスチック製の
板、フィルム等で覆ってもよい。
【0068】この親水性単量体は、前述のように、カル
ボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基、これら
のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、アルキレンオキ
シド基、アミノ基、アミド基、シアノ基、酸無水物基及
び4級アンモニウム塩基のいずれかの官能基を少なくと
も1種有する単量体である。
【0069】具体的には、前述した親水性単量体が挙げ
られ、これらの単量体の中から適宜その1種を単独で又
は2種以上が混合して使用される。これらの中では、防
曇膜の性能及びその持続性が特に良好である点でアミド
基を有する単量体が好ましく、具体的には、(メタ)ア
クリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミ
ド、(メタ)アクリルモルモリン、(メタ)アクリルア
ミド−t−ブチルスルホン酸及びその塩などが挙げられ
る。
【0070】防曇膜の製造方法において、活性エネルギ
ー線を照射後に未反応の親水性単量体や親水性単量体の
単独重合体がある場合は、必要に応じて水などによって
洗浄することが好ましい。
【0071】活性エネルギー線としては、用いる光開始
基が吸収する波長であれば特に限定はされないが、具体
的には200〜800nm、好ましくは、300〜60
0nmの紫外線及び可視光線が望ましい。光源として
は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、ハロゲンランプ、キセノ
ンランプ、エキシマレーザ、色素レーザ、YAGレー
ザ、太陽光等が挙げられる。
【0072】基材としては、ガラスやプラスチック成形
材料、フィルムの様な透明な材料が用いられる。そし
て、表面に防曇膜が形成された基材は、レンズ、鏡、プ
リズムなどの光学部品あるいは車輌、船舶、家屋などの
窓ガラス、スキーゴーグル、水中メガネ、ヘルメットシ
ールド、計器カバー、農園芸用フィルムなどの用途に好
適に用いられる。
【0073】以上のように、この実施形態によれば、次
のような効果が発揮される。 (1) 防曇膜の表面には親水性重合体セグメント(I
I)が配向されていることから、基材表面の防曇膜は優
れた防曇性を発揮できる。 (2) 親水性重合体セグメント(II)は光開始基断片
を介して疎水性重合体セグメント(I)に結合されてい
るとともに、その疎水性重合体セグメント(I)は基材
に密着していることから、防曇性能を長期間にわたって
維持できる。 (3) 親水性重合体セグメント(II)により形成され
る膜は均一性が良いため、薄い膜で性能を発現でき、透
明性に優れている。 (4) しかも、防曇膜は膨潤しにくく、傷付いたり、
剥離したりするおそれがなく、実用的な塗膜強度を有す
る。 (5) 基材側には疎水性重合体セグメント(I)が配
向しており、疎水性重合体セグメント(I)と基材との
結合力がよいため、防曇性を付与しようとする基材との
密着性が良好である。 (6) 重合を開始させる機構は、光開始剤が基材から
水素を引き抜いて重合を開始させるという機構ではない
ことから、使用可能な基材に制限を受けるおそれを抑制
できる。 (7) 基材表面に疎水性重合体セグメント(I)の層
を形成し、その上に親水性単量体を塗布した後、活性エ
ネルギーを照射することにより、基材表面に形成される
防曇膜を容易に製造できる。
【0074】
【実施例】次に、実施例、比較例及び参考例により、こ
の発明をさらに具体的に説明するが、この発明はこれら
により限定されるものではない。なお、本文及び表中の
%は重量%を表す。また、分子量はゲルパーミエーショ
ンクロマトグラフ(GPC)によりテトラヒドロフラン
を展開溶剤として使用して測定した値である。
【0075】本文及び表中の略号は以下の通りである。 PI1:1−[4−{2−(2−(メタクリロイルオキ
シ)エトキシカルボニルオキシ)エトキシ}フェニル]
−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン PI2:メチル[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−メ
チル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]フマ
レート PI3:ビス[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチ
ル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]イタコ
ネート PI4:1−{4−(2−メタクリロイルエトキシ)フ
ェニル}−2,2−ジメトキシ−2−フェニルエタン−
1−オン PI5:1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオン−
2−O−アクリロイルオキシム PI6:3,3' −ビス(メタクリロイルオキシエトキ
シカルボニル)−4,4' −ビス(t−ブチルペルオキ
シカルボニル)ベンゾフェノン MMA:メチルメタクリレート BMA:ブチルメタクリレート LMA:ラウリルメタクリレート ST:スチレン DBF:ジブチルフマレート GMA:グリシジルメタクリレート NMAAm:N−メチロールアクリルアミド MAA:メタクリル酸 HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート KBM503:トリメトキシシリルプロピルメタクリレ
ート(信越化学工業社製「KBM−503」) PPZ:ホスファゼン系6官能メタクリレート(出光石
油化学社製「出光PPZ」) 3002A:2官能エポキシアクリレート(共栄社化学
社製「エポライト3002A」) NVP:N−ビニル−2−ピロリドン DMAEMA:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリ
レート DMAAm:N,N−ジメチルアクリルアミド AAm:アクリルアミド ACMO:アクリロイルモルホリン PE350:ポリエチレングリコールモノメタクリレー
ト(日本油脂社製「ブレンマーPE−350」) ATBS:アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸(東
亜合成社製「ATBS」) QA:メタクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアン
モニウムクロリド(日本油脂社製「ブレンマーQA」) MS2N:スルホエチルメタクリレートNa塩(日本乳
化剤社社製「AntoxMS−2N」) DQ100:メタクリロイルオキシエチルトリメチルア
ンモニウムクロライド(共栄社化学製「ライトエステル
DQ−100」) PDE400:ポリエチレングリコールジメタクリレー
ト(日本油脂社製「ブレンマーPDE400」) MEK:メチルエチルケトン PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル THF:テトラヒドロフラン PVA:ケン化ポリ酢酸ビニル(日本合成化学工業社製
「ゴーセノールKH−17」) OP80:ノニオン系界面活性剤(日本油脂社製「ノニ
オンOP−80」) TTA:トリエチレンテトラミン(味の素社製「アミキ
ュア」) ACS:コロイダルシリカ(日産化学社製「スノーテッ
クスO」)をトリメトキシシリルプロピルメタクリレー
ト(信越化学工業社製「KBM−503」)で処理した
アクリル変性コイダルシリカの20%MEK溶液 LPO:ラウロイルペルオキシド(日本油脂社製「パー
ロイルL」) (参考例1) (光開始基含有重合体の製造)撹拌機、温度計、パージ
ガス導入口、水冷コンデンサーを備えた1リットルの反
応容器に、MEK50gを仕込み、窒素ガス通気下、8
0℃に加熱した。その後、撹拌しながら、メチルメタク
リレート90g、PI1 10g、MEK50g、及び
LPO 5gの混合物を2時間かけて滴下した。滴下終
了後、そのまま4時間撹拌を続け、重合を完結した。得
られた溶液を石油エーテル中に注入してポリマーを析出
させた後、乾燥して光開始基含有重合体aを得た。その
重量平均分子量(Mw)は21000であった。また、
紫外線(UV)吸収スペクトルから、仕込み量と同量の
光開始基が重合体中に導入されていることを確認した。 (参考例2〜12)単量体を表1及び2の種類及び量に
変える以外は参考例1と同様に重合を行い、光開始基含
有重合体b〜lを得た。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】(実施例1) (塗膜の製造)塗布液(イ)として参考例1で得た重合
体aの20%MEK溶液を用い、10cm×10cm、
厚さ2mmのアクリル板に、乾燥膜厚が5μmになるよ
うにバーコーターを用いて塗布し、60℃で10分間乾
燥した。得られた塗膜上に単量体溶液(ロ)として20
%ATBS水溶液を塗布した後、1kW高圧水銀灯によ
り1分間光照射した。このときの光照射量は5J/cm
2 であった。光照射後、水洗、乾燥することにより、無
色透明な防曇膜を得た。
【0079】次に、得られた防曇膜について下記に示す
評価方法により物性を評価した。 (1) グラフト膜厚 グラフト重合前後の厚さをデジタル膜厚計(Sheen
Instruments社製)で測定し、増加量をグ
ラフト膜厚(μm)として表した。 (2) 塗膜硬度 JIS K−5400に準じた鉛筆引っかき試験を行
い、塗膜硬度を鉛筆の硬さで表した。 (3) 密着性 JIS K−5400の碁盤目テープ法に準じて、塗膜
をカッターナイフで縦横方向に切断して基材に達するよ
うな100個のクロスカット(切断片)を作り、セロハ
ン粘着テープ〔ニチバン(株)製〕を貼り付け、接着面
と垂直方向に剥離し、剥がれずに残ったクロスカットの
数を次のような記号で表した。
【0080】○:100/100、△:80/100以
上、×:80/100未満 (4) 防曇性 (a)呼気試験 20℃、相対湿度50%の恒温室内で塗膜に息を吹きか
け、曇りの状態を目視によって次の基準にて判定した。
【0081】○:全く曇らない、△:やや曇りが見られ
る、×:全面が曇る (b)蒸気試験 60℃の恒温水槽上の水面から1cmの位置に試験板を
固定し、10分後の曇りの状態を目視によって次の基準
にて判定した。
【0082】◎:水滴が全くない、○:直径5mm以下
の水滴がない、△:直径5mm以下の水滴が部分的にあ
る、×:全面に5mm以下の水滴がある (5) 持続性 試験板を水中に1カ月間浸漬した後、乾燥し、上記の呼
気試験、蒸気試験及び下記の塗膜外観試験を行った。
【0083】塗膜外観試験(ヘイズ値) 直読式ヘイズメータ(東洋精機製作所製)にてヘイズ値
を測定した。なお、この値は一般的には1.0以下が良
く、1.0を越えると外観不良と判定される。その結果
を表4に示した。 (実施例2〜10)塗布液(イ)として表3に記載した
ものを用いる以外は、実施例1に記載した方法で防曇膜
を作り、実施例1と同様に物性を評価した。その評価結
果を表5に示した。 (実施例11〜20)モノマー溶液(ロ)として表4に
記載したものを用いる以外は、実施例1に記載した方法
で防曇膜を作り、実施例1と同様に物性を評価した。そ
の評価結果を表6に示した。
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】
【0088】(実施例21)重合体溶液k20g、TT
A5g、PGM30gの混合物を、ポリカーボネート板
に乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、120℃で1
時間加熱した。次いで、20%ATBS水溶液を塗布
後、実施例1と同様に光照射、水洗、乾燥し、実施例1
と同様に物性を評価した。その評価結果を表7に示し
た。 (実施例22)重合体溶液l20g、MEK20gの混
合物を、ガラス板に乾燥膜厚が2μmになるように塗布
し、80℃で30分加熱した。次いで、20%AAm水
溶液を塗布後、実施例1と同様に光照射、水洗、乾燥
し、実施例1と同様に物性を評価した。その評価結果を
表7に示した。 (実施例23)重合体溶液a20g、MEK20gの混
合物を、PETフィルム(帝人社製「テトロンHP
7」、膜厚100μm)に乾燥膜厚が2μmになるよう
に塗布し、80℃で30分加熱した。次いで、20%A
CMO水溶液を塗布後、実施例1と同様に光照射、水
洗、乾燥し、実施例1と同様に物性を評価した。その評
価結果を表7に示した。 (実施例24)PI6 10g、PPZ10g、300
2A 5g、MEK25gの混合物を、アクリル板に乾
燥膜厚が5μmになるように塗布し、60℃で10分乾
燥後、1kW高圧水銀灯により5秒間光照射した。次い
で、20%ATBS水溶液を塗布後、実施例1と同様に
光照射、水洗、乾燥し、実施例1と同様に物性を評価し
た。その評価結果を表7に示した。 (実施例25)重合体溶液b20g、MEK20gの混
合物を、アクリル板に乾燥膜厚が5μmになるように塗
布し、60℃で10分乾燥した。これを20%ATBS
水溶液中に入れ、塗布面側から1kW高圧水銀灯により
1分間光照射した。光照射後、水洗、乾燥し、実施例1
と同様に物性を評価した。その評価結果を表7に示し
た。 (実施例26)重合体溶液a20g、MEK20gの混
合物を、アクリル板に乾燥膜厚が5μmになるように塗
布し、60℃で10分乾燥した。次いで、20%AAm
水溶液を塗布し、その上にガラス板を直接置いた後、実
施例1と同様に光照射、水洗、乾燥し、実施例1と同様
に物性を評価した。評価結果を表7に示した。
【0089】
【表7】
【0090】(比較例1)アクリル板に界面活性剤OP
80を塗布し、実施例1と同様に物性を評価した。その
評価結果を表8に示した。 (比較例2)MMA/DMAAm(重量比80/20)
共重合体20g、PME400 5g、AAm5g、光
開始剤(チバガイギー社製「Darocure117
3」)1g、MEK30gの混合物をアクリル板に乾燥
膜厚が5μmになるように塗布、乾燥後、1kW高圧水
銀灯で1分間光照射した。これを、実施例1と同様に物
性を評価した。その結果を表8に示した。 (比較例3)MMA/HEMA(重量比65/35)共
重合体300g、HEMA100g、ジエチレングリコ
ールジメタクリレート10g、界面活性剤(花王社製
「エマルゲン106」)5g、メチルセルソルブ300
gの混合物をアクリル板に塗布し、乾燥後、電子線を照
射した。これを、実施例1と同様に物性を評価した。そ
の結果を表8に示した。 (比較例4)アセチルセルロースフィルムを水酸化ナト
リウムでケン化した後、アクリル板に貼った。これにつ
いて、実施例1と同様に物性を評価した。その結果を表
8に示した。
【0091】
【表8】
【0092】表5〜8に示したように、各実施例及び比
較例の結果から次のことがわかる。すなわち、比較例1
の界面活性剤を塗布したもの及び比較例3の界面活性剤
を含有する硬化物は、初期の性能は良いが、耐水性がな
く、容易に性能が低下してしまう。比較例2の親水性成
分を含有する共重合体を塗布、硬化したものは初期性能
が不十分であり、さらに長期間にわたって水に接触する
と白化してしまう。比較例4のセルロースフィルムは耐
水性はあるが、防曇性能が不十分である。
【0093】これに対して、実施例1〜26の防曇膜
は、初期の防曇性能に優れ、かつその性能は水中に浸漬
した後も持続しており、公知の防曇膜に比べて防曇性
能、持続性共に優れていることは明かである。 (実施例27)塗布液(イ)として重合体aの20%M
EK溶液、単量体溶液(ロ)として20%AAm水溶液
を用いる以外は、実施例1に記載した方法で防曇膜を得
た。得られた防曇膜の表面から約10μmを削り取った
重合物0.1gをTHFに溶解後、水とTHFを用い
て、「高分子溶液」(高分子学会高分子実験学編集委員
会編、共立出版)に記載された分別沈澱法により分離し
たところ、水/THF=2〜5(重量比)で沈澱した成
分0.06gが得られた。
【0094】核磁気共鳴スペクトル分析(NMR)及び
赤外線吸収スペクトル分析(IR)により、重合体aの
MMA成分とATBS成分とが確認され、グラフト重合
体であることを確認した。このグラフト重合体は、NM
Rの7.0〜8.1ppmにフェニル基の吸収、及びI
Rの1660cm-1に芳香族カルボニル基の吸収があ
り、また、重合体a単独の場合に存在する3400cm
-1付近の水酸基の吸収が消失していた。
【0095】更に、UV吸収スペクトルを測定したとこ
ろ、光開始基の340nm以上の吸収が減少し、325
nmにアルキルフェノンの極大吸収が現れた。これらの
ことから、得られたグラフト共重合体は光開始基が開裂
した芳香族ケトン基を介して結合したグラフト共重合体
であることがわかった。 (実施例28)実施例1で得た防曇膜をXPS〔X線光
電子分光分析装置ESCAー850型(島津製作所
製)〕で分析した。Nの吸収が7.5%(理論値7.7
%)、Sの吸収が7.3%(理論値7.7%)であっ
た。このことから、防曇膜の表面はATBSのグラフト
鎖であることがわかった。
【0096】前記実施例27及び実施例28の結果よ
り、各実施例の防曇膜は光開始基断片を介して結合した
親水性グラフト鎖が表面を覆っていることがわかる。こ
のため、防曇膜は防曇性能に優れ、かつ水に長期間接触
しても親水性が低下することなく、性能を持続すること
ができた。
【0097】なお、前記実施の形態より把握される技術
的思想について以下に記載する。 (1) 前記重合体は、疎水性重合体セグメント(I)
を主鎖とし、親水性重合体セグメント(II)を側鎖とす
るグラフト共重合体である請求項1又は2に記載の防曇
膜。
【0098】このように構成した場合、基材に対する防
曇膜の密着性、防曇膜の防曇性能、その持続性、透明
性、被膜強度などの性能を確実に発揮させることができ
る。 (2) 前記疎水性重合体セグメント(I)は、光開始
基を有する単量体と光開始基を有しない単量体とから形
成されたものである請求項2に記載の防曇膜。
【0099】このように構成した場合、基材に対する防
曇膜の密着性や防曇膜のその他の性能を調整して、各性
能をバランス良く発揮させることができる。 (3) 光開始基を有する重合体を基材表面に塗布し、
次いでその表面に親水性単量体を塗布するか、又は親水
性単量体中に基材を浸漬した後、活性エネルギー線を照
射する請求項3又は4に記載の防曇膜の製造方法。
【0100】このように構成すれば、簡易な操作により
防曇膜を容易に製造することができる。
【0101】
【発明の効果】以上詳述したように、この発明によれ
ば、次のような優れた効果を奏する。第1の発明の防曇
膜は、基材側の疎水性重合体セグメント(I)上に、そ
の疎水性重合体に化学的に結合した親水性重合体セグメ
ント(II)の層が形成された構造よりなる膜である。こ
の膜の表面側は親水性重合体セグメント(II)で構成さ
れており、かつこれが基材側の疎水性重合体セグメント
(I)に化学的に結合している。従って、表面の親水性
膜により、水滴の付着による基材表面の曇りを防止する
ことができ、かつ多量の水滴が基材表面に付着しても親
水性膜が脱落するおそれがなく、長期間にわたって防曇
性能を維持することができる。
【0102】更に、防曇膜の表面は親水性重合体セグメ
ント(II)の均一性の良い膜であるため、薄い膜で充分
に性能を発現させることができ、防曇膜の吸水量を少な
くすることができる。従って、吸水による性能の低下が
抑制され、防曇膜の膨潤によってその硬度が低下して防
曇膜が傷ついたり、剥離したりするおそれがない。しか
も、透明性が良く、実用的な塗膜強度を有しているとと
もに、基材との密着性も良好である。
【0103】加えて、重合開始機構は光開始剤が基材か
ら水素を引き抜いて重合を開始させるという機構ではな
いため、適用できる基材に制限を受けるおそれを抑制す
ることができる。
【0104】このように、防曇膜は、ガラスやプラスチ
ックのような透明材料よりなる光学部品や成形品の表面
に好適に適用でき、産業上有用である。第2の発明の防
曇膜によれば、防曇性、その持続性、透明性、被膜強度
などの防曇膜の性能に優れるとともに、第1の発明の効
果をより高めることができる。
【0105】第3の発明の防曇膜の製造方法によれば、
第1の発明の優れた性能を有する防曇膜を容易に製造す
ることができる。第4の発明の防曇膜の製造方法によれ
ば、より性能の優れた防曇膜を容易に製造することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 基材上に形成される防曇膜の製造法を概念的
に示した説明図。
フロントページの続き (72)発明者 須山 修治 愛知県知多郡武豊町字楠4丁目132番地

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材上に形成される防曇膜であって、 疎水性単量体から形成される疎水性重合体セグメント
    (I)が基材側に位置し、下記親水性単量体からなる群
    より選ばれる少なくとも1種の単量体より形成される親
    水性重合体セグメント(II)が前記疎水性重合体セグメ
    ント(I)上で光開始基断片を介して疎水性重合体セグ
    メント(I)に結合している重合体より構成されている
    防曇膜。 親水性単量体:カルボキシル基、水酸基、スルホン酸
    基、リン酸基、これらのアルカリ金属塩又はアンモニウ
    ム塩、アルキレンオキシド基、アミノ基、アミド基、シ
    アノ基、酸無水物基及び4級アンモニウム塩基からなる
    群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量
    体。
  2. 【請求項2】 前記疎水性重合体セグメント(I)が光
    開始基を有する単量体より形成され、かつ光開始基断片
    が下記に示す基を含むとともに、親水性重合体セグメン
    ト(II)がアミド基を有する親水性単量体より形成され
    る請求項1に記載の防曇膜。 【化1】
  3. 【請求項3】 基材上に形成された光開始基を有する疎
    水性重合体の層上に、前記親水性単量体からなる群より
    選ばれる少なくとも1種を接触させて活性エネルギー線
    を照射する請求項1に記載の防曇膜の製造方法。
  4. 【請求項4】 光開始基を有する疎水性重合体が下記に
    示される光開始基の群から選ばれる少なくとも1種を有
    する単量体より形成される重合体セグメントであり、親
    水性単量体がアミド基を有する単量体である請求項3に
    記載の防曇膜の製造方法。 【化2】 (式中、Aは 【化3】 を表し、R1 、R2 は炭素数1〜4のアルキル基又はR
    1 、R2 とR1 、R2 間の炭素により形成される炭素数
    5〜7のシクロアルキル基、R3 は水酸基又はアミノ
    基、R4 、R5 は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
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