JPH1045796A - タンパク質の部位特異的断片化方法 - Google Patents

タンパク質の部位特異的断片化方法

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JPH1045796A
JPH1045796A JP8203712A JP20371296A JPH1045796A JP H1045796 A JPH1045796 A JP H1045796A JP 8203712 A JP8203712 A JP 8203712A JP 20371296 A JP20371296 A JP 20371296A JP H1045796 A JPH1045796 A JP H1045796A
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辰行 竹縄
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吉哉 小田
Yasushi Ishihama
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、効率的なタンパク質の部位特異的
断片化方法を提供することを課題とする。 【解決手段】 ペプチド内に、リジン−システイン残基
を導入し、ついでシステインをシアノ化した。次いで、
該ペプチドを弱アルカリで処理すると、リジンのε−ア
ミノ基が求核基として、リジンとシアノシステインによ
るペプチド結合上のカルボニル炭素を攻撃し、リジン−
シアノシステインのペプチド結合の切断が効率的に引き
起こされた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、タンパク質工学の
分野、特にタンパク質の断片化の効率化に属する。
【0002】
【従来の技術】ペプチド及びタンパク質を成長の速い生
物細胞の中で生産させること、即ち、遺伝子工学技術を
用いて異種生物で目的遺伝子を発現させることは生産効
率の上で非常に効果的であり、近年盛んになってきてい
る(K.Itakura, T.Hirose, Drea, R. A. Riggs, H.L.He
yneker, F.Bolivar, H.W.Boyer, Science, 198,1056-1
063 (1977))。その中でも、「アフィニティーハンド
ル」技術は、異種細胞での発現が困難であったり、目的
タンパク質及びペプチドを精製することが困難な場合、
非常に有効である(M.Iwakura, K.Furusawa, T.Kokubu,
S.Ohashi, Y.Tanaka, Y.ahimura, K.Tsuda, J.Biochem
istry, 111, 37-45(199))。アフィニティーハンドル技
術は、「ハンドルタンパク質」と目的タンパク質又はペ
プチドを含む融合タンパク質を作製し、融合タンパク質
の発現およびそれに引き続く高度精製を行った後、目的
のタンパク質もしくはペプチドを切り出すことにより達
成できる。融合タンパク質から目的物を切り出す方法と
しては、配列特異的な切断方法が要求される。現在、配
列特異的な切断をするためにトリプシン(M.Iwakura,
K.Furusawa, T.Kokubu, S.Ohashi, Y.Tanaka, Y.ahimur
a, K.Tsuda, J.Biochemistry, 111, 37-45(199)、コラ
ゲナーゼ(J.Germino、D.Bastia, Proc.Natl.Acad.Sci.
USA 81, 4692-4696(1984))、リジンエンドペプチダー
ゼ(G.Allen, C.A.Paynter, M.D.Winter, J.Cell.Sci.
3,29-38(1985))、血液凝固因子Xa(K.Nagai, H.C.Th
ogersen, Nature, 309,810-812(1984))などのタンパク
質分解酵素の利用、ブロムシアンによるメチオニン部位
での切断(K.Itakura, T.Hirose, Drea, R. A. Riggs,
H.L.Heyneker, F.Bolivar, H.W.Boyer, Science, 198,
1056-1063 (1977))、などが利用されている。しかし、
タンパク質分解酵素を利用する場合は、用いる酵素によ
っては反応効率に問題があり、さらにコストの面でも問
題があった。また、化学的手段を用いる場合は、その反
応条件として特殊な有機溶媒を用いたり、また時間がか
かることや、副反応が無視できないことなどに問題があ
った。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、切断部
位の特異性の高さおよび反応条件として水溶液を利用で
きることなどから、シアノシステインを介して切断する
方法(G.R.Jacobson, M.H.Schaffer, G.R.Stark, T.C.V
anaman, J.Biological Chemistry, 248, 6583-6591(197
3))に着目した。この方法は、切断カ所としてシステイ
ン部位に特定できること、弱アルカリ性条件の水溶液中
で室温で効果的に行うことができることから、目的タン
パク質もしくはペプチドに損傷を与えることなく分離で
きることに利点がある。この方法は、また、特異的にタ
ンパク質の断片化を行うことも可能にし、その断片化ペ
プチドの効果的な利用も考えられ、タンパク質の断片化
方法としては非常に興味深い方法である。しかしなが
ら、シアノシステインを介する方法は、副反応として、
シアノシステイン自体がβ−脱離反応によりデヒドロア
ラニンに転換することが知られており(Y.Degani, A.Pa
tchornik, Biochemistry, 13, 1-11(1974))、これによ
り切断反応の効率低下が起こることが問題であった。本
発明は、シアノシステインを介する切断方法に含まれる
副反応を解消し、効率的なタンパク質の部位特異的断片
化方法を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】シアノシステインを介し
て切断する方法は、弱アルカリ条件下において、水酸基
が求核試薬として作用し、シアノシステイン残基が環化
することにより、シアノシステインのアミノ末端側でペ
プチドの切断を引き起こさせる方法である(図1反応
1)。
【0005】しかし、該方法には、水酸化物イオンが塩
基としても作用し、β−脱離反応によってシアノシステ
インがデヒドロアラニンに転換することによりペプチド
の切断効率の低下が起きるという問題点が存在していた
(図1、反応2)。そこで、本発明者らは、この副反応
を抑制して切断効率の向上を図るべく鋭意研究を行っ
た。
【0006】反応1は、水酸基が、シアノシステイン残
基の一つ前のアミノ酸に由来するカルボニル炭素を求核
的に攻撃することによりおこるペプチド鎖の切断反応で
あり、反応2は、水酸基が酸・塩基触媒として働くこと
により、チオシアノ基が脱離するβ−脱離反応で、シア
ノシステイン残基がデヒドロアラニンに転換する反応で
ある。そこで、本発明者等は、反応1において、N末端
側においてシアノシステイン残基に隣接するアミノ酸の
側鎖に水酸基より求核性が強い反応基を導入する事を考
えた。即ち、リジンのε−アミノ基は、一級アミンであ
り、アルカリ性条件下に強い求核性を有することから、
発明者らは、シアノシステインの前にリジン残基を挿入
することを想到した。そして、リジン−シアノシステイ
ン配列を有するペプチドを実際に製造し、この配列を有
するペプチドは、反応2のβ−脱離反応が著しく低下
し、切断反応が選択的に起こることを見出し、本発明を
完成した。
【0007】本発明においては、N末端側においてシア
ノシステイン残基に隣接してリジン残基を配し、リジン
のε−アミノ基を求核基として作用させ、ペプチドの切
断反応を行なわせることに特徴を有する。「リジンのε
−アミノ基によるリジン−シアノシステイン配列のペプ
チド結合を構成するカルボニル炭素原子への分子内求核
攻撃」が、「水酸基による分子間の求核攻撃」(図1、
反応1)及び「酸塩基触媒反応」(図1、反応2)より
も優先的に起こることにより、切断が効率よく行われ
る。
【0008】即ち、本発明は、「ペプチド内のリジン−
システイン配列におけるシステインをシアノ化する過程
を含むペプチドの切断方法」に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明は、タンパク質遺伝子の設
計により、目的とする切断部位としてタンパク質中に
「リジン−システイン配列」を導入し、導入したリジン
のε−アミノ基を求核基として利用し、β−脱離反応を
抑制することにより、効率的なタンパク質の断片化方法
を提供するものである。本発明において、「リジン−シ
ステイン配列」をタンパク質中に導入する方法として
は、該配列の導入後のタンパク質に対応する合成遺伝子
を作製する方法、部位特異的変異技術を利用する方法
(T.A.Kunkel, T.D.Robert, R.A.Zarkour, Methods in
Enzymology vol.154, 367-382(1987))等、当業者に周
知の方法が挙げられる。「リジン−システイン配列」の
導入位置には、特に制限はなく、タンパク質を切断すべ
き所望の位置に導入することが可能である。
【0010】「リジン−システイン配列」が導入された
タンパク質を生産するためには、上記合成遺伝子を適当
な発現ベクターに組み込み、大腸菌、枯草菌、酵母、放
線菌、動物細胞、植物細胞などの宿主に導入して、該宿
主内で発現させる方法が挙げられる。ここで、用いられ
る発現ベクターには、特に制限はないが、pBR322
由来のプラスミド、pUC由来のプラスミド、ラムダフ
ァージ由来のプラスミドなどのベクターを用いると好適
である。また、宿主に、該ベクターを導入する方法とし
ては、形質転換法、リポソーム法、レトロウイルスを利
用する方法、電気浸透法などが挙げられる。
【0011】宿主に発現させたタンパク質の精製は、フ
レンチプレス、ホモジェナイザー、超音波細胞破砕など
による可溶化処理、各種塩基を含んだ緩衝液による抽出
処理、酸またはアルカリによる可溶化もしくは沈殿処
理、更には有機溶媒による抽出もしくは沈殿処理、硫安
などによる塩析、透析、メンブレンフィルターなどを用
いた限外濾過、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交
換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、向流
分配クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィ
ー、等電点電気泳動もしくはゲル電気泳動などを適宜組
み合わせて行うことが可能である。
【0012】精製したタンパク質中のシステインのスル
フヒドリル基のシアノ化は、文献(J.Wood, & N. Catsi
mpoolas, J. biological Chemistry, 233, 2887(1963))
記載の方法に従い, スルフヒドリル基のシアンによる直
接的酸化、スルフヒドリル基の2−ニトロ−5−チオシ
アノ安息香酸 (NTCB)による直接的修飾反応(Y.Degani,
A.Patchornik, Biochemistry, 13, 1-11(1974))な
ど、当業者に周知の方法によって行うことができる。NT
CBを用いたシステインのスルフヒドリル基のシアノ化
は、pH7〜9の間で効率よく行うことができ、且つ、
遊離するが、チオニトロ安息香酸(thionitrobenzoat
e)の412nmの吸光度の増加(分子吸光係数=1
3,600)でシアノ化の反応効率を調べることができ
る。
【0013】切断反応は、アルカリ条件下(pH8〜1
0)に、室温で行うことができる。
【0014】切断反応の追跡は、高速液体クロマトグラ
フィーを連結した質量分析装置を用いて、生成物を質量
数で同定・帰属し、定量することにより行うことができ
る。実施例における生成物の同定・帰属・定量は、「L
C10A型高速液体クロマトグラフィー」(島津製作所
製)を連結した「PE Sciex API III質量分析装置」(パ
ーキンエルマー社製)を用いて行ったが、生成物を正確
に同定・帰属・定量できる方法であればどのような方法
で行ってもよく、本発明が反応の追跡方法に制限される
ことはないことは明らかである。
【0015】
【実施例】
[実施例1] N-アセチル-L-アラニン-L-アラニン-グ
リシン-(S-シアノ)L-システイン-L-アラニン(以
下,「acA-A-K-cC-A」と略す。質量=530)の
切断反応。
【0016】リジン−シアノシステイン配列を含むペプ
チドとして、「acA-A-K-cC-A」を用いて、切断反
応を行った。0.05Mリン酸と0.1Mホウ酸からなる緩衝
液(pHは、7〜10まで変動させた)に、終濃度1mg
/mlとなるように「acA-A-K-cC-A」を加え、室温
で3時間反応させた。本反応の場合、N末端側において
シアノシステインに隣接するアミノ酸がリジンであるた
め、図1の反応3が生じる。反応1、反応2及び反応3
の反応生成物(それぞれ生成物1、生成物2、生成物
3)の質量数は、それぞれ、331、471及び313
である。この結果を表1にそれぞれ示す。
【0017】
【表1】 acA-A-K-cC-Aの切断反応の結果 ──────────────────────────────────── 反応生成物の割合 ──────────────────────────────────── pH acA-A-K-cC-A 反応1の 反応2の 反応3の (未反応物) 生成物1 生成物2 生成物2 (質量数 530 331 471 313) ──────────────────────────────────── 7 〜100(%) 〜0(%) 〜0(%) 〜0(%) 8 87.0 0.2 1.2 11.6 9 43.9 1.1 4.1 50.9 10 0.1 1.6 5.4 92.9 ──────────────────────────────────── リジン−シアノシステインの配列により、切断反応の効
率が顕著に上昇し、かつ副反応であるペプチドの切断が
生じない反応2、即ちβ-脱離反応の生成が顕著に抑制
された。
【0018】[比較例1] N-アセチル-L-チロシン−
L-アラニン-L-アラニン-グリシン-(S-シアノ)L-
システイン-L-アラニン(以下、「acY-A-A-G-cC
-A」と略す。質量=622)の切断反応 対照実験として、リジン−シアノシステインを含まない
ペプチドを用いて、切断反応を行った。0.05Mリン酸と
0.1Mホウ酸からなる緩衝液(pHは、7〜10まで変
動させた)に、終濃度1mg/mlとなるように「acY-A-
A-G-cC-A」を加え、室温で3時間反応させた。本
反応の場合、N末端側においてシアノシステインに隣接
するアミノ酸がグリシンであるため、図1の反応3は、
起こり得ない。即ち、反応経路は、図1で示される反応
1及び反応2のみである。また、それぞれの反応生成物
(生成物1、生成物2)の質量数は、423及び563
である。この結果を表2にそれぞれ示す。
【0019】
【表2】 acY-A-A-G-cC-Aの切断反応の結果 ──────────────────────────────────── 反応生成物の割合 ──────────────────────────────────── pH acY-A-A-G-cC-A 反応1の 反応2の (未反応物) 生成物1 生成物2 (質量数 622 423 563 ) ──────────────────────────────────── 7 〜100(%) 〜0(%) 〜0(%) 8 89.6 9.2 1.2 9 65.2 32.0 2.8 10 32.1 53.0 14.9 ──────────────────────────────────── 表2から明らかなように、塩基性条件における水酸基
が、ペプチド結合上のカルボニル炭素に対して求核攻撃
を行う、反応1が主反応となって、ペプチドの切断が起
こり、acY-A-A-G(質量数=423)と2-イミノチ
アゾリジン-4-カルボキシル-アラニン(2-iminothiazol
idine-4-carboxylyl-alanine)が生成した。また、水酸
基が塩基として作用しβ-脱離反応が起こる結果、ペプ
チドの切断が生じない反応2が副反応となり、N-アセ
チル-L-アラニン-L-アラニン-グリシン-L-デヒドロ
アラニン−L-アラニン(以下、「acY-A-A-G-dA-
A」と略す。質量数=563)が生成した。
【0020】[実施例2] ジヒドロ葉酸還元酵素の部位
特異的切断 システインを含まないジヒドロ葉酸還元酵素(AS−D
HFRと略す)の77番目のセリンもしくは111番目
のチロシンをそれぞれシステイン残基に転換した酵素タ
ンパク質(S77C−DHFR及びY111C−DHF
Rと略す)を用いて部位特異的切断を行った。
【0021】AS−DHFRのアミノ酸配列を配列番
号:1に示す。
【0022】配列番号:1より明らかなように、S77
C−DHFR及びY111C−DHFRのうち、システ
イン残基に転換されたアミノ酸残基のN末端側に隣接す
るアミノ酸残基はそれぞれリジンおよびロイシン残基で
ある。このことから、S77C−DHFR及びY111
C−DHFRのシステイン残基のスルフヒドリル基をシ
アノ化して得られるタンパク質(それぞれ、「S77c
C−DHFR」及び「Y111cC−DHFR」と略
す)においては、S77cC−DHFRは「リジン−シ
アノシステイン」配列を含むが、Y111cC−DHF
RRにおいては、「リジン−シアノシステイン」配列を
含まない。そこで、S77cC−DHFR及びY111
cC−DHFRを作製して、その切断効率を比較した。
【0023】S77C−DHFR及びY111C−DH
FRの作製は、遺伝子工学的に行った。すでに、AS−
DHFRの遺伝子が既知であり(M.Iwakura, B.E.Jones,
J.Luo, C.R.Matthews, J.Biochemistry 117, 480-488
(1995)に記載)、該遺伝子の塩基配列を配列番号:2に
示す。なお、AS−DHFRの遺伝子は、「pTZDH
FR20」と名付けられたプラスミドに組み込まれてい
る(M.Iwakura, B.E.Jones, J.Luo, C.R.Matthews, J.Bi
ochemistry 117, 480-488(1995)に記載。)。
【0024】この遺伝子の塩基配列をもとに77番目の
アミノ酸であるセリンをシステインに変換できるように
2本のDNA、5'-GTTACCTGGGTTAAATGCG-3'(配列番
号:3:配列番号:2の塩基配列の214〜231番目に対応
するが、229〜231番目に対応する配列はシステインに対
応する塩基配列に置換してある)及び5'-TCGACGCATTTAA
CCCAG-3'(配列番号:4:配列番号2の塩基配列の219
〜236番目に対応するアンチセンスであるが、229〜231
番目に対応する配列はシステインに対応する塩基配列に
置換してある)を合成して、「pTZDHFR20」中
のAS−DHFRの遺伝子部分のBstEIIとSalI制限酵素
部位の間の配列と置き換えた。置き換えることより生成
した遺伝子は、S77C−DHFRをコードし、また、
このことにより生成した組換えプラスミドを大腸菌に導
入することにより、S77C−DHFRを大腸菌菌体中
に大量発現できた。この大腸菌を、3リッターの培地
(15gの食塩、15gの酵母エキス、24グラムのト
リプトン、30mgのアンピシリンナトリウムを含んで
いる)で、37度で一晩培養し、湿重量6グラムの菌体
を得た。この菌体の無細胞抽出液に、ストレプトマイシ
ン硫酸処理、硫安分画、メソトレキセートアフィニティ
ークロマトグラフィー及びDEAEトヨパールカラムクロマ
トグラフィーにより、均一にまで酵素タンパク質を精製
し、約100mgの均一なS77C−DHFRが得られ
た。
【0025】同様にして、111番目のアミノ酸である
チロシンをシステインに変換するために2本のDNA、
5'-AGCTTTGCCTGACGCATAT-3'(配列番号:5:配列番号
2の塩基配列の326〜344番目に対応するが、331〜333番
目に対応する配列はシステインに対応する塩基配列に置
換してある)及び5'-CGATATGCGTCAGGCAA-3'(配列番
号:6:配列番号2の塩基配列の329〜346番目に対応す
るアンチセンスであるが、331〜333番目に対応する配列
はシステインに対応する塩基配列に置換してある)を合
成して、「pTZDHFR20」中のAS−DHFRの
遺伝子部分のHindIIIとClaI制限酵素部位の間の配列と
置き換えた。置き換えることより生成した遺伝子は、Y
111C−DHFRをコードし、また、このことにより
生成した組換えプラスミドを大腸菌に導入することによ
り、Y111C−DHFRを大腸菌菌体中に大量発現で
きた。上記、S77C−DHFRの精製と全く同様の手
法で酵素精製を行うことにより、約50mgの均一なY
111C−DHFRが得られた。
【0026】得られたS77C−DHFRとY111C
−DHFRのシステイン残基のスルフヒドリル基のシア
ノ化反応は、6Mの塩酸グアニジンと5mMのエチレン
ジアミン4酢酸を含むTris−塩酸緩衝液、pH7.
4中で、室温で4時間反応させることにより行った。反
応生成物を、逆相高速液体クロマトグラフィー装置(ウ
オーターズ社製HPLC装置)を用いて、「YMCD−
ODS−5」(20mmx250mm)カラムを用いて
10%のアセトニトリルの直線濃度勾配を用いて溶出す
ることによりシアノ化されたタンパク質を分離・精製し
た。シアノ化の収率は、S77cC−DHFRとY11
1cC−DHFRそれぞれで、67%および75%であ
った。
【0027】得られたS77cC−DHFRとY111
cC−DHFRの切断反応は、6Mの塩酸グアニジンと
5mMのエチレンジアミン4酢酸を含むTris−塩酸
緩衝液(pH9.4)中で、室温で一晩行った。切断反
応生成物を、「LC10A型高速液体クロマトグラフィ
ー」(島津製作所製)を連結した「PE Sciex API III質
量分析装置」(パーキンエルマー社製)を用いて解析し
た。その結果、表3及び表4に示す結果が得られた。
【0028】
【表3】 S77cC−DHFRの切断反応の結果 ──────────────────────────────────── 反応生成物の割合 ──────────────────────────────────── pH 反応1の 反応2の 反応3の (未反応物) 生成物1 生成物2 生成物3 (質量数 17,993 8,566 17,936 8,548 ) ──────────────────────────────────── 9.4 〜0(%) 4(%) 6(%) 90(%) ────────────────────────────────────
【0029】
【表4】 Y111cC−DHFRの切断反応の結果 ──────────────────────────────────── 反応生成物の割合 ──────────────────────────────────── pH 反応1の 反応2の (未反応物) 生成物1 生成物2 (質量数 17,915 12,121 17,851 ──────────────────────────────────── 9.4 〜0(%) 30(%) 70% ──────────────────────────────────── 即ち、「リジン−シアノシステイン」配列を含まないタ
ンパク質であるY111cC−DHFRでは、70%の
生成物がβ-脱離反応(反応2)の生成物(表4、生成
物2)であったのに対して、「リジン−シアノシステイ
ン」配列を含ませることにより、β-脱離反応の生成物
(表3、生成物2)を6%にまで抑えることができた。
この結果は、分子内に「リジン−シアノシステイン」配
列が存在することにより、非常に効率の良い切断が起こ
ることを示している。
【0030】
【発明の効果】本発明により、効率的なタンパク質の部
位特異的断片化方法が提供された。本発明によるタンパ
ク質の断片化は、タンパク質の機能単位の分離、ひいて
は抗体作製のためのエピトープの分離など幅広い応用が
可能である。従って、本発明は、発酵工業、医薬品工業
などの分野において有効利用が期待される。
【0031】
【配列表】
配列番号 : 1 配列の長さ: 159 配列の型: アミノ酸 トポロジー: 直鎖状 配列の種類: ペプチド 配 列 Met Ile Ser Leu Ile Ala Ala Leu Ala Val Asp Arg Val Ile Gly Met 1 5 10 15 Glu Asn Ala Met Pro Trp Asn Leu Pro Ala Asp Leu Ala Trp Phe Lys 20 25 30 Arg Asn Thr Leu Asn Lys Pro Val Ile Met Gly Arg His Thr Trp Glu 35 40 45 Ser Ile Gly Arg Pro Leu Pro Gly Arg Lys Asn Ile Ile Leu Ser Ser 50 55 60 Gln Pro Gly Thr Asp Asp Arg Val Thr Trp Val Lys Ser Val Asp Glu 65 70 75 80 Ala Ile Ala Ala Ala Gly Asp Val Pro Glu Ile Met Val Ile Gly Gly 85 90 95 Gly Arg Val Tyr Glu Gln Phe Leu Pro Lys Ala Gln Lys Leu Tyr Leu 100 105 110 Thr His Ile Asp Ala Glu Val Glu Gly Asp Thr His Phe Pro Asp Tyr 115 120 125 Glu Pro Asp Asp Trp Glu Ser Val Phe Ser Glu Phe His Asp Ala Asp 130 135 140 Ala Gln Asn Ser His Ser Tyr Ser Phe Glu Ile Leu Glu Arg Arg 145 150 155 配列番号 : 2 配列の長さ : 500 配列の型 : 核酸 鎖の数 : 二本鎖 トポロジー : 直鎖状 配列の種類 : cDNA to mRNA 配 列 ATGATCAGTC TGATTGCGGC GCTAGCGGTA GATCGCGTTA TCGGCATGGA AAACGCCATG 60 CCATGGAACC TGCCTGCCGA TCTCGCCTGG TTTAAACGCA ACACCTTAAA TAAACCCGTG 120 ATTATGGGGC GCCATACCTG GGAATCAATC GGTAGGCCTT TGCCCGGCCG CAAAAATATT 180 ATCCTCAGCA GTCAACCCGG GACCGATGAT CGGGTTACCT GGGTTAAATC GGTCGACGAA 240 GCCATCGCGG CCGCAGGTGA CGTACCAGAA ATCATGGTGA TTGGCGGCGG ACGCGTTTAT 300 GAACAGTTCT TGCCAAAAGC GCAAAAGCTT TATCTGACGC ATATCGATGC AGAAGTGGAA 360 GGCGACACCC ATTTTCCGGA TTACGAGCCG GATGACTGGG AATCGGTATT CAGCGAATTC 420 CACGATGCTG ATGCGCAGAA CTCGCATAGC TATTCGTTCG AAATCCTCGA GCGTCGTTAA 480 GGATCCTAAT TAATTAATTC 500 配列番号: 3 配列の長さ: 19 配列の型: 核酸 鎖の数: 二本鎖 トポロジー: 直鎖状 配列の種類: 他の核酸 合成DNA 配列 GTTACCTGGG TTAAATGCG 19 配列番号: 4 配列の長さ: 18 配列の型: 核酸 鎖の数: 二本鎖 トポロジー: 直鎖状 配列の種類: 他の核酸 合成DNA 配列 TCGACGCATT TAACCCAG 18 配列番号: 5 配列の長さ: 19 配列の型: 核酸 鎖の数: 二本鎖 トポロジー: 直鎖状 配列の種類: 他の核酸 合成DNA 配列 AGCTTTGCCT GACGCATAT 19 配列番号: 6 配列の長さ: 17 配列の型: 核酸 鎖の数: 二本鎖 トポロジー: 直鎖状 配列の種類: 他の核酸 合成DNA 配列 CGATATGCGT CAGGCAA 17
【図面の簡単な説明】
【図1】シアノシステイン残基を介したペプチド切断反
応の模式図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C12N 1/21 C12R 1:19) (C12P 21/02 C12R 1:19) (72)発明者 竹縄 辰行 茨城県つくば市東1丁目1番3 工業技術 院生命工学工業技術研究所内 (72)発明者 小田 吉哉 茨城県つくば市二の宮4丁目8−1 (72)発明者 石濱 泰 茨城県つくば市春日3丁目5−1−101

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ペプチド内のリジン−システイン配列に
    おけるシステインをシアノ化する過程を含むペプチドの
    切断方法。
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