JPH1036945A - ねじ込み性に優れた高耐銹性マルテンサイト系ステンレス製ドリリングタッピンねじ及びその焼入方法 - Google Patents

ねじ込み性に優れた高耐銹性マルテンサイト系ステンレス製ドリリングタッピンねじ及びその焼入方法

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JPH1036945A
JPH1036945A JP8191209A JP19120996A JPH1036945A JP H1036945 A JPH1036945 A JP H1036945A JP 8191209 A JP8191209 A JP 8191209A JP 19120996 A JP19120996 A JP 19120996A JP H1036945 A JPH1036945 A JP H1036945A
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stainless steel
drilling tapping
martensitic stainless
tapping screw
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Koji Takano
光司 高野
Takashi Matsui
孝至 松井
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 焼入時の熱処理による表層の軟化を抑えて、
ねじ込み性に優れた高耐銹性マルテンサイト系ステンレ
ス製のドリリングタッピンねじを安定して提供すること
を目的とする。 【解決方法】 重量%で、C:0.13〜0.30%、
Ni:3.0%以下、Cr:11.0〜15.0%、M
o:0.5〜3.0%、N:0.13%以下、Mn:
2.0%以下、Cu:2.0%以下を含有し、また、必
要に応じて、B:0.001〜0.010%を含有し、
かつ(1)式で表されるMの値が0(%)以上、(2)
式で表されるFの値が0(%)以上、(3)式で表され
るAIの値が16(%)以上で残部がFe及び不可避的
不純物からなり、表層の残留オーステナイト量が10%
未満である冷間成形されたドリリングタッピンねじを、
1000℃〜1250℃の真空または不活性ガス雰囲気
で保定後、冷却する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明に属する技術分野】本発明は高硬度・高耐銹性の
マルテンサイト系ステンレス鋼製品の焼入方法に関わ
り、さらに詳しくはねじ込み性に優れた高耐銹性マルテ
ンサイト系ステンレス製ドリリングタッピンねじ及びそ
の製品の焼入方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、炭素鋼製品や表面処理鋼板及びス
テンレス鋼板のねじ止め加工においては、作業効率向上
やコスト低減のため、図1に示すように下穴や中穴加工
を実施せずに鋼板表面から直接ねじ込み加工できるドリ
リングタッピンねじが使用されてきた。
【0003】ねじ込み性確保のためにねじ刃先の硬さが
Hvで500以上の高硬度が必要とされる。そのため、
ステンレス鋼では代表的なものとして、素材に焼入強化
して用いるマルテンサイト系ステンレス鋼のSUS41
0が使用されてきた。この種の製品は、窒素雰囲気中で
加熱し、表層のみ窒素濃度を約0.2〜0.3%前後と
高くし、その後、焼入を行い、表層の刃先硬さをHvで
600から650にし、ねじ込み性を確保している。
【0004】また、最近、さらに高耐銹性化のため、特
開平6−264194号公報に開示されているように、
SUS410をベースにMo,Ni,C等の合金元素を
添加し、耐銹性と硬さを向上させたマルテンサイト系ス
テンレス製のドリリングタッピンねじが提案されてい
る。
【0005】
【発明が解決すべき課題】しかしながら、SUS410
をベースに合金元素を添加した鋼は図2に示すようにマ
ルテンサイトがSUS410に比べより不安定な領域に
ある。そのため、従来のマルテンサイト系ステンレス鋼
製品に対するように窒素雰囲気中で熱処理を施すと、窒
素はオ−ステナイト安定化元素であるため、表層に残留
オーステナイトが残存し、表層の硬さが低下する。その
結果、ドリリングタッピンねじのねじ込み性が劣化して
しまう可能性があった。本発明の目的は、焼入時の熱処
理による表層の軟化を抑えて、ねじ込み性に優れた高耐
銹性マルテンサイト系ステンレス製のドリリングタッピ
ンねじを安定して提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために種々検討した結果、SUS410をベ
ースに合金元素を添加したマルテンサイト系ステンレス
鋼のドリリングタッピンねじにおいて、残留γがでない
範囲に成分を限定し、さらに熱処理雰囲気を制御するこ
とでドリリングタッピンねじの表層の硬さの低下を抑
え、ねじ込み性に優れた高耐銹性マルテンサイト系ステ
ンレス製のドリリングタッピンねじを得ることができる
ことを見いだした。本発明は、この知見に基づいてなさ
れた。
【0007】すなわち本発明は、重量%で、 C :0.13〜0.30%、 Ni:3.0%以下、 Cr:11.0〜15.0%、 Mo:0.5〜3.0%、 N :0.13%以下、 Mn:2.0%以下、 Cu:2.0%以下を含有し、 また、必要に応じて、B:0.001〜0.010%を
含有し、かつ(1)式で表されるMの値が0(%)以
上、(2)式で表されるFの値が0(%)以上、(3)
式で表されるAIの値が16(%)以上で残部がFe及
び不可避的不純物からなり、表層の残留オーステナイト
量が10%未満であることを特徴とするねじ込み性に優
れた高耐銹性マルテンサイト系ステンレス製ドリリング
タッピンねじである。 M=33.8−1.4Creq−Nieq …(1) F=Nieq−1.25Creq+13 …(2) AI=Cr+2.4Mo …(3) 但し、 Nieq=Ni+0.5Mn+0.44Cu+30C+1
8N Creq=Cr+1.5Si+1.4Mo
【0008】さらに、本発明は、上記記載の成分の冷間
成形されたドリリングタッピンねじを1000℃〜12
50℃の真空または不活性ガス雰囲気で保定後、冷却ガ
ス等の吹き込みにて冷却することを特徴とするねじ込み
性に優れた高耐銹性マルテンサイト系ステンレス製ドリ
リングタッピンねじの焼入方法である。
【0009】さらに、本発明は、上記成分を含有し、か
つ後述の熱処理時の窒素ガス圧力Patm で、(4)式で
表されるM2の値が0(%)以上となる成分の冷間成形
されたドリリングタッピンねじを、1000〜1250
℃、Patm 以下の窒素ガス雰囲気中で保定後、冷却ガス
等の吹き込みにて冷却することを特徴とするねじ込み性
に優れた高耐銹性マルテンサイト系ステンレス製ドリリ
ングタッピンねじの焼入方法である。 M2=33.8−1.4Creq−Nieq−18(√P/3.3−N)…(4) 但し、√P/3.3−N<0の場合、√P/3.3−N
=0とする。
【0010】さらに、本発明は、上記成分を含有し、か
つ後述の熱処理時の窒素ガス圧力Patm で、(4)式で
表されるM2の値が0(%)以上となる成分の冷間成形
されたドリリングタッピンねじを、1000〜1250
℃の真空または不活性ガス雰囲気で加熱中、途中からP
atm 以下の窒素ガスを挿入して保定後、冷却することを
特徴とするねじ込み性に優れた高耐銹性マルテンサイト
系ステンレス性ドリリングタッピンねじの焼入方法であ
る。なお、本発明において、ドリリングタッピンねじと
は切り刃先、とがり先形状のドリリングタッピンねじを
総称するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】先ず、本発明のマルテンサイト系
ステンレス鋼の成分範囲について述べる。Cはマルテン
サイト系ステンレス鋼のビッカース硬さで500以上に
し、ねじ込み性を確保するために重量%で0.13%以
上(以下全て重量%)添加する。しかし、0.30%を
超えて添加するとM及びM2の値が0(%)未満とな
り、焼入時に残留オーステナイトを生成し、逆にねじ込
み性を劣化させることから、上限を0.30%に限定し
た。
【0012】Niはマルテンサイト組織の生成のため、
また、マルテンサイト組織の靱性を高めるために添加す
る。しかし、3.0%を超えて添加するとM及びM2の
値が0(%)未満となり、焼入時に残留オーステナイト
を生成し、ねじ込み性を劣化させることから、上限を
3.0%に限定した。
【0013】CrはCの値を大きくし、耐銹性を確保す
るために11.0%以上添加する。しかし、15.0%
を超えて添加するとFの値が0(%)未満になり、耐銹
性が逆に劣化するばかりか、M及びM2の値が0(%)
未満になり残留オーステナイトを生成し、ねじ込み性を
劣化させることから、上限を15.0%に限定した。M
oはCの値を大きくし、耐銹性確保のため0.5%以上
添加する。しかし、3.0%を超えて添加するとFの値
が0(%)未満になり耐銹性が逆に劣化するばかりか、
M及びM2の値が0(%)未満になり残留オーステナイ
トを生成し、ねじ込み性を劣化させることから、上限を
3.0%に限定した。
【0014】Nは焼入硬さを上昇させ、ねじ込み性を向
上されるため添加する。しかし、0.13%を超えて添
加すると鋼中への固溶量を超えて気泡を生成することか
ら上限を0.13%に限定した。Mnは脱酸及びマルテ
ンサイト組織生成のため添加する。しかし、2.0%を
超えて添加すると、M及びM2の値が0(%)未満とな
り、焼入時に残留オーステナイトを生成し、ねじ込み性
を劣化させることから、上限を2.0%に限定した。
【0015】Cuは耐銹性及びマルテンサイト組織生成
のため添加する。しかし、2.0%を超えて添加する
と、M及びM2の値が0(%)未満となり、焼入時に残
留オーステナイトを生成し、ねじ込み性を劣化させるこ
とから、上限を2.0%に限定した。Bは必要に応じ、
焼入性及び靱性確保のため、0.001%以上添加す
る。しかし、0.01%を超えて添加するとホウ化物を
生成し、耐銹性が劣化することから、上限を0.01%
に限定した。
【0016】次に本発明で特定した(1)〜(4)の各
式について説明する。Mの式は母材中のマルテンサイト
組織量に対する各種元素の影響を調査した結果得られた
もので、マルテンサイト組織量に対し効果のある元素と
その影響度を示すものである。Mの値が0%未満になる
と焼入組織中に残留オーステナイトが10%以上存在
し、ねじ込み性を劣化させるため0%以上に限定した。
【0017】Fの式は母材中のδフェライト量に対する
各種元素の影響を調査した結果得られたもので、δフェ
ライト量に対し効果のある元素とその影響度を示すもの
である。Fの値が0%未満になるとδフェライトが存在
し、焼入時にδフェライト界面に炭窒化物を析出させ、
耐銹性を著しく低下させるため0%以上に限定した。A
Iの式は母材の耐銹性に対する各種元素の影響を調査し
た結果得られたもので、耐銹性に対し効果のある元素と
その影響度を示すものである。AIの値が16%未満に
なると母材の耐銹性が劣化することから、16%以上に
限定した。
【0018】M2の式は、Patm の窒素ガス分圧中で熱
処理し、冷却した後の表層のマルテンサイト組織量に対
する各種元素の影響を調査した結果得られたもので、マ
ルテンサイト組織量に対し、効果のある元素とその影響
度を示すものである。M2の値が0%未満になると表層
の焼入組織中に残留オーステナイトが10%以上存在
し、ねじ込み性を劣化させることから、0%以上に限定
した。
【0019】次に上記成分のマルテンサイト系ステンレ
ス製のドリリングタッピンねじの焼入方法について説明
する。製品形状に加工されたねじは1000℃〜125
0℃の真空または不活性ガス雰囲気中で加熱し、続いて
冷却ガス等の吹き込みにて冷却して焼入を行う。この
時、(4)式のM2の値が0%以上になるような窒素ガ
ス気圧(Patm 以下)で加熱することもできる。加熱温
度については特開平6−264194号公報に開示して
あるように耐銹性及び靱性確保の理由のため1000〜
1250℃に限定する必要がある。
【0020】また、上記成分のマルテンサイト系ステン
レス製のドリリングタッピンねじは成分的にマルテンサ
イトが不安定な領域にあり、そのため、従来のように窒
素雰囲気中で熱処理を行うと表面に窒素が進入し、表層
のみが残留オーステナイトが生成し、ねじ込み性を劣化
させてしまい、そのため、窒素が進入しないように雰囲
気を真空または不活性ガスに限定する必要があった。
【0021】一方、本発明では、(4)式のM2の値が
0以上になるような窒素ガス分圧(Patm 以下)で加熱
することもできる。この場合、表層に窒素が濃化し、表
層の焼入硬さをさらに向上させ、ねじ込み性を向上させ
る。しかし、Patm を超える窒素ガス雰囲気で加熱保定
すると表層に残留γ量が生成し、表層の硬さを低下さ
せ、ねじ込み性を劣化させるため、Patm 以下に限定し
た。以上のように本発明によれば所望の特性を有するセ
ルフドリルスクリューを得ることが可能となる。
【0022】
【実施例】以下、本発明を実施例によってさらに具体的
に説明する。表1−1に本発明鋼No.1〜12の成分
を、表1−2に比較鋼No.13〜23の成分を示す。本
発明鋼No.1〜3と比較鋼No.13〜15は0.3Mn
−1.6Ni−13.1Cr−2Mo−0.2Cuを基
本成分として焼入強化に寄与するC量(%)及びN量
(%)を変化させたものである。本発明鋼No.1,4〜
8と比較鋼No.16〜18は0.16C−13.1Cr
−2Mo−0.1Nを基本成分としてオ−ステナイト生
成元素であるMn量(%)及びNi量(%),Cu量
(%)を変化させたものである。本発明鋼No.1,9,
10と比較鋼No.19〜22は0.16C−0.4Mn
−1.6Ni−0.3Cu−0.1Nを基本成分として
フェライト生成元素であるCr量(%)及びMo量
(%)を変化させたものである。本発明鋼No.1,1
1,12と比較鋼No.23は0.16C−0.4Mn−
1.6Ni−13Cr−2Mo−0.3Cu−0.1N
を基本成分として靱性に寄与するB量(%)を変化させ
たものである。
【0023】以上の本発明鋼及び比較鋼を通常のステン
レス鋼線材の製造工程で、溶製し、熱間で線材圧延を行
い、1000℃で圧延を終了した。得られた線材に軟化
焼鈍を施し、減面率で約30%の冷間伸線加工を施し、
引き続き軟化焼鈍を施し、φ5.1mmの線にした。その
後、ドリリングタッピンねじに冷間成形した後、真空雰
囲気で1150℃まで加熱し、その後、窒素ガスを吹き
込み平均3℃/sの冷却速度により焼入を行い、さらに
200℃に加熱し、30分間保持の焼戻し処理を施し
た。
【0024】次に該製品のねじ込み性、耐銹性及び靱性
を得るための試験を行った。ねじ込み性はJIS B
1125に準じ、10本のねじを厚さで5.5mmの鋼板
へねじ込みを行い、その時のねじ込み可能・不可能で評
価した。10本全てねじ込み可能な場合を○、そうでな
い場合を×とした。本発明例のねじ込み性のランクは○
であることにした。耐銹性評価試験はJIS Z 23
71によりねじを刃先より発砲スチロールに20°傾け
て差し込み、240時間の塩水噴霧試験実施後評価し
た。ねじ頭部が発銹していない場合を○、発銹している
場合を×とした。本発明例の耐銹性のランクは○である
ことにした。
【0025】以上の試験結果を表2−1(本発明例)、
表2−2(比較例)に示す。各表から明らかなように、
本発明例は全て上記の特性ランクを満足しているのに対
し、比較例No.13はC量(%)が低いためねじ込み
性に劣っており、また、Fの値が0%未満であり、耐銹
性に劣っていた。比較例No.14はC量(%)が高く
Mの値が0%未満であり、残留γが発生し、ねじ込み性
に劣っていた。比較例No.15はN量(%)が高いた
め、ブローホールを発生し、製造不可であった。比較例
No.16はMn量(%)が高く、Mの値が0%未満で
あり、残留γが発生し、ねじ込み性に劣っていた。比較
例No.17はNi量(%)が高く、Mの値が0%未満
であり、残留γが発生し、ねじ込み性に劣っていた。N
o.18はCu量(%)が高く、Mの値が0%未満であ
り、残留γが発生し、ねじ込み性に劣っていた。
【0026】比較例No.19はCr量(%)が低く、
AIの値が16%未満であり、耐銹性に劣っていた。比
較例No.20はCr量(%)が高く、Fの値が0%未
満であり、δフェライトが存在し、耐銹性に劣ってい
た。比較例No.21はMo量(%)が低く、AIの値
が16%未満であり、耐銹性に劣っていた。比較例N
o.22はMo量(%)が高く、Fの値が0%未満であ
り、耐銹性に劣っていた。比較例No.23はB量
(%)が高く、耐銹性に劣っていた。以上の実施例から
分かるように本発明鋼の優位性が明らかである。
【0027】表3の左欄にねじに冷間成形した後の焼入
時の雰囲気及び窒素分圧について本発明例及び比較例を
比較した実施例を示す。本発明例No.24〜27と比
較例No.35,36は本発明鋼No.1のものを使用
し雰囲気と窒素分圧を変化させたものである。本発明例
No.28〜30と比較例No.37,38は本発明鋼
No.3のものを使用し雰囲気と窒素分圧を変化させた
ものである。本発明例No.31〜34は本発明鋼N
o.4のものを使用し、雰囲気と窒素分圧を変化させた
ものである。
【0028】これらの実施例は表1−1記載の本発明鋼
No.1,3,4の成分の冷間成形されたドリリングタ
ッピンねじを1150℃の表3に示すような雰囲気、窒
素分圧下で加熱保定後、窒素ガスを吹きかけて冷却を行
い、焼入を行った。その後、200℃で焼戻しを行っ
た。但し、本発明例No.34は1150℃の真空中で
加熱保定後、途中から1atm の窒素ガスを挿入し、引き
続き1050℃で加熱保定後、冷却し焼入を行い、その
後、200℃で焼戻しを行った場合である。加熱時の雰
囲気、窒素分圧はねじ込み性に影響を及ぼすことから、
次に該製品のねじ込み性を先と同様な手法で試験を行
い、評価した。本発明例のねじ込み性のランクは○であ
ることにした。以上の試験結果を表3の右欄に示す。
【0029】比較例No.35,37は通常のマルテン
サイト系ステンレス鋼のドリリングタッピンねじで行わ
れているように約1atm の窒素雰囲気中で加熱を行い、
窒素を表層から入れたものである。M2の値が0%未満
であり、表層に残留γが生成し、ねじ込み性に劣る。ま
た、比較例No.36,38は0.8atm と窒素分圧を
低くした雰囲気中で加熱を行ったものである。しかし、
M2の値が0%未満であり、表層に残留γが生成し、ね
じ込み性に劣る。
【0030】これに対し、本発明例No.24,25,
28,29,31,32は真空及びAr雰囲気中で加熱
を行ったものである。M2の値が0%以上であり、表層
に残留γが生成せず、ねじ込み性に優れている。また、
本発明例No.26,27,30はM2の値を0%以上
になるまで窒素分圧を低くし、熱処理を行ったものであ
る。これらの製品では表層に残留γが生成せず、ねじ込
み性に優れている。本発明例No.33は1atm の窒素
分圧中で熱処理を行ったものである。M2の値が0%以
上であり、表層に残留γが生成せず、ねじ込み性に優れ
ている。
【0031】比較例No.34は熱処理中に真空の雰囲
気から1atm の窒素分圧の雰囲気に変えて熱処理を行っ
たものである。この場合もM2の値が0%以上であり、
表層に残留γが生成せず、ねじ込み性に優れている。以
上の実施例から分かるように焼入時の雰囲気をコントロ
ールした本発明焼入方法の優位性が明らかである。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
【発明の効果】本発明のねじ込み性に優れた高耐銹性マ
ルテンサイト系ステンレス製ドリリングタッピンねじの
焼入方法によれば、焼入時の加熱保定の雰囲気を真空、
不活性ガスにするか、窒素分圧を規定よりも下げること
により、窒化による表層の残留γの生成を防止でき、ね
じ込み性に優れたマルテンサイト系ステンレス製高耐銹
性ドリリングタッピンねじを安定して得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】ドリリングタッピンねじを示す正面図。
【図2】マルテンサイト系ステンレス鋼の1100℃付
近からの焼入後の組織図。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 F16B 25/10 F16B 25/10 Z

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.13〜0.30%、 Ni:3.0%以下、 Cr:11.0〜15.0%、 Mo:0.5〜3.0%、 N :0.13%以下、 Mn:2.0%以下、 Cu:2.0%以下を含有し、かつ(1)式で表される
    Mの値が0(%)以上、(2)式で表されるFの値が0
    (%)以上、(3)式で表されるAIの値が16(%)
    以上で残部がFe及び不可避的不純物からなり、表層の
    残留オーステナイト量が10%未満であることを特徴と
    するねじ込み性に優れた高耐銹性マルテンサイト系ステ
    ンレス製ドリリングタッピンねじ。 M=33.8−1.4Creq−Nieq …(1) F=Nieq−1.25Creq+13 …(2) AI=Cr+2.4Mo …(3) 但し、 Nieq=Ni+0.5Mn+0.44Cu+30C+1
    8N Creq=Cr+1.5Si+1.4Mo
  2. 【請求項2】 請求項1のねじ成分に、さらに重量%
    で、B:0.001〜0.010%を含有させたことを
    特徴とするねじ込み性に優れた高耐銹性マルテンサイト
    系ステンレス製ドリリングタッピンねじ。
  3. 【請求項3】 請求項1あるいは2記載の成分の冷間成
    形されたドリリングタッピンねじを1000℃〜125
    0℃の真空または不活性ガス雰囲気で保定後、冷却する
    ことを特徴とするねじ込み性に優れた高耐銹性マルテン
    サイト系ステンレス製ドリリングタッピンねじの焼入方
    法。
  4. 【請求項4】 請求項1あるいは2記載の成分を含有
    し、かつ後述の熱処理時の窒素ガス圧力Patm で、
    (4)式で表されるM2の値が0(%)以上となる成分
    の冷間成形されたドリリングタッピンねじを、1000
    〜1250℃、Patm 以下の窒素ガス雰囲気中で保定
    後、冷却することを特徴とするねじ込み性に優れた高耐
    銹性マルテンサイト系ステンレス製ドリリングタッピン
    ねじの焼入方法。 M2=33.8−1.4Creq−Nieq−18(√P/3.3−N)…(4) 但し、√P/3.3−N<0の場合、√P/3.3−N
    =0とする。
  5. 【請求項5】 請求項1あるいは2記載の成分を含有
    し、かつ後述の熱処理時の窒素ガス圧力Patm で、
    (4)式で表されるM2の値が0(%)以上となる冷間
    成形されたドリリングタッピンねじを、1000〜12
    50℃の真空または不活性ガス雰囲気で加熱中、途中か
    らPatm 以下の窒素ガスを挿入して保定後、冷却するこ
    とを特徴とするねじ込み性に優れた高耐銹性マルテンサ
    イト系ステンレス性ドリリングタッピンねじの焼入方
    法。
JP8191209A 1996-07-19 1996-07-19 ねじ込み性に優れた高耐銹性マルテンサイト系ステンレス製ドリリングタッピンねじ及びその焼入方法 Pending JPH1036945A (ja)

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