JP2003313637A - 加工性、めっき性および靱性に優れた微細組織を有する高強度鋼板及びその製造方法 - Google Patents
加工性、めっき性および靱性に優れた微細組織を有する高強度鋼板及びその製造方法Info
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Abstract
つつ微細結晶粒を形成させ、強度−延性バランス、溶接
性、靱性、めっき性が良好で、かつめっきや溶接に伴う
温度上昇によっても微細結晶粒が維持されることで利用
時の特性も良好な高強度鋼板を製造する。 【解決手段】 Cr、Niの含有を必須とせず、Nを
0.05〜4.0%含有させ、Mnを10.0%以下、
Si、Alを4.0%以下に制御し、窒化物の生成を制
御するためTi、Nb、Bなどを必要に応じて添加する
ことで金属組織中のフェライト相の結晶粒径を5.0μ
m以下に調整した、加工性および靱性に優れた高強度鋼
板およびその製造方法。
Description
部材、電気機器部品、容器等として用いられる鋼板及び
その製造法に関し、これらの利用時に必要とされる強
度、加工性、溶接性、靱性に優れ、また、これらの特性
を損なうことなく良好なめっきや塗装などの密着性を付
与することが可能な鋼板及びその製法に関するものであ
る。
られる鋼板においては、構造部材としての強度と部材を
形成するための加工性、他の部材との接合時および接合
部の強度としての溶接性、使用中の靱性、さらには耐食
性を付与するため表面処理を行う場合の塗装、またはめ
っきの密着性などさまざまな特性が求められる。強度と
加工性については、一般に材料の加工性は強度上昇に伴
い劣化するので、加工性と強度を両立する鋼板が求めら
れている。高強度化の方法には転位強化、固溶体強化、
組織強化などが適用されるが、現状の技術では以下に述
べるようにそれぞれの方法の短所を解消するには到って
いない。
より組織中に大量の転位を導入したものであるが、一般
に延性そのものが転位密度が上昇する過程で発現するも
のであるため、加工開始時にすでに大量の転位が存在す
る転位強化材では延性が顕著に劣化する。また、温度の
上昇により転位が急速に消滅するため溶接部での軟化が
大きく溶接強度が低いなどの欠点がある。Si、Mn、
Pなどによる固溶体硬化は強度−延性バランスについて
は比較的良好であるが酸化物形成による表面欠陥が発生
しやすいことや塗装、めっきの密着性が劣るという欠点
がある。
細化し結晶粒界により強化する、いわゆる細粒化強化
と、第二相を活用するものがある。このうち、細粒化を
利用するものではフェライト鋼では析出物を活用した技
術が(社)日本鉄鋼協会「鉄と鋼」85巻691ページ
(非特許文献1)等に開示されているが、従来の技術で
実用的に到達できる結晶粒径はせいぜい数μmで、これ
以上の微細化には熱間での温度と加工を厳格に制御する
必要があり実用が困難である。また、析出物が破壊の起
点になることから固溶体強化に比較して延性が低いこと
や、溶接等の熱影響により析出物が溶解、または粗大化
しやすく、溶接部位の結晶粒が粗大化してしまう問題点
がある。
微細組織を安定的に得る技術(社)日本鉄鋼協会「材料
とプロセス」15巻450ページ(非特許文献2)に開
示されているが多量のCrやメカニカルアロイング処
理、さらには1000℃を超える高温での熱処理が必要
でありコストが高くなる。近年、フェライト鋼で1μm
より小さい結晶粒径を形成させる技術開発が産学協同で
進められ(社)日本鉄鋼協会「材料とプロセス」14巻
502ページ(非特許文献3)や、特開2000−73
034号公報(特許文献1)、特開2000−9613
7号公報(特許文献2)等に開示されているが、その手
法はメカニカルミリング等により非常に高い歪を付与す
るものであり熱的には不安定で、溶接を伴う用途への適
用においては問題が出る可能性が高い。
としては、鋼板に残存させたオーステナイト相が加工に
より硬質なマルテンサイトに変態する加工誘起変態を活
用した鋼板が開発されている。これは高価な合金元素を
含まずに、0.07〜0.4%程度のCと0.3〜2.
0%程度のSi及び0.2〜2.5%程度のMnを基本
的な合金元素とし、高温二相域でオーステナイトを生成
させた後、400℃程度でベイナイト変態を行うことで
室温でも金属組織中にオーステナイトが残留するように
した鋼板で、一般に「残留オーステナイト鋼」、「TR
IP鋼」などと呼ばれている。その技術は例えば、特開
平1−230715号公報(特許文献3)や特開平1−
79345号公報(特許文献4)、特開平9−2417
88号公報(特許文献5)等に開示されている。
ベイナイト変態を活用しオーステナイトを残留させてい
るため、熱処理条件(温度、時間)を厳格に制御しない
と意図する金属組織とならず、良好な強度や伸びの保証
や製造時の歩留向上を妨げる原因となっている。さら
に、0.3〜2.0%の多量のSi含有が必要であるこ
とから亜鉛めっき等においてはめっきの付着性が悪く、
溶融めっきではめっき時の熱履歴のため好ましい金属組
織が破壊される場合もあり広範な工業的利用が妨げられ
ている。
−134596号公報(特許文献6)、特開2000−
129401号公報(特許文献7)等において、高Nス
テンレス鋼が知られている。しかし、これらはいわゆる
通常のステンレス鋼であり、多量のCr、Niの含有が
必須であり、高強度における加工性や靱性等の劣化を考
慮した材質制御がなされたものではなく、ましてや結晶
組織の超微細化による特性の向上を図ったものではな
い。
34号公報) (2)特許文献2(特開2000−96137号公報) (3)特許文献3(特開平1−230715号公報) (4)特許文献4(特開平1−79345号公報) (5)特許文献5(特開平9−241788号公報) (6)特許文献6(特開平8−134596号公報) (7)特許文献7(特開2000−129401号公
報) (8)非特許文献1((社)日本鉄鋼協会「鉄と鋼」8
5巻691ページ) (9)非特許文献2((社)日本鉄鋼協会「材料とプロ
セス」15巻450ページ) (10)非特許文献3((社)日本鉄鋼協会「材料とプ
ロセス」14巻502ページ)
元素を使用せず、より簡易かつ生産性の高い熱処理によ
り熱的に安定な微細結晶組織を形成することで、延性を
それほど劣化させずに高強度化、高靱化を図り、溶接や
溶融めっきなどの熱履歴を経てもその特性を失うことな
く、使用条件において初期特性を維持し、めっきの付着
性が良好なため高耐食性表面処理鋼板への適用も可能な
高強度鋼板およびその製造方法を提供するものである。
を達成できる高強度鋼板を提供すべく、結晶粒径および
その安定性と鋼成分との関係について鋭意検討を行い、
本発明を完成させたものである。その趣旨は以下のとお
りである。従来よりNはオーステナイト相を安定化させ
る元素として知られているが、従来の製造法のように溶
鋼段階で高濃度のNを含有させる方法では精錬が困難で
あり、また、鋳造時に鋼片中にガスが発生し凝固後に気
泡が残存し良好な鋼板を得ることができない。このため
本発明鋼が対象とするような高N鋼板の加工性、靱性、
耐食性などを含めた広い範囲での特性は検討されておら
ず、未知であった。
るまでに含有させる方法を検討し、Nを多量に含有させ
た後、特定の熱履歴を経ることで非常に微細な結晶組織
を得ることが可能で、この微細組織は熱的に非常に安定
で、この組織を有する鋼板は高強度であるにもかかわら
ず非常に良好な加工性を示すことを見出した。本発明は
この知見をもとにさらにSi、Mn、C、Al等の元素
およびTi、Bなどの微量元素の影響および窒化条件お
よび目的とする金属組織に制御するための熱履歴などを
検討し達成されたものである。
御する。 (3)窒化物を形成するSi、Al、B、Tiなどの含
有量を適当な範囲に制御する。 (4)金属組織を形成する各相の強度を調整し、鋼板と
しての強度と伸びを調整するためC、Si、Mn、Pな
どの強化元素量を制御する。 (5)複合組織を活用する場合には、オーステナイト、
マルテンサイト、ベイナイトなどの存在量を調整するよ
うに熱履歴を制御することにある。
を以下に詳細に説明する。Nは、本発明の最も重要な元
素である。本発明の特徴である微細組織を得るには従来
鋼以上に多量のNが必要である。そのメカニズムは必ず
しも明確ではないが、Nはオーステナイト生成元素であ
り、後述のMnの影響も考慮するとフェライト−オース
テナイトの変態が本発明の特徴である超微細粒生成に寄
与しているものと考えられる。N濃度が0.05%未満
ではその効果が見出せないか、効果を得るために高濃度
の合金添加または厳格な熱処理が必要となるので下限を
0.05%とする。通常、自動車部品等に用いられる、
いわゆる加工用普通鋼をベースとする場合においては
0.3%程度は必要となる。
が長くなるとともに、過剰なN含有は鋼中に多量のFe
窒化物を形成し易くなり、延性を損ねる場合があるので
上限を4.0%とする。通常、自動車部品等に用いられ
る、いわゆる加工用普通鋼をベースとし、通常の1分程
度の連続焼鈍ラインを用いてN含有量を高める場合は、
大体2%程度まで含有量を高めることができる。下限に
ついては、好ましくは0.10%、さらに好ましくは
0.20%、さらに好ましくは0.30%、さらに好ま
しくは0.35%とする。上限については、好ましくは
2.0%、さらに好ましくは1.0%、さらに好ましく
は0.80%、さらに好ましくは0.60%とする。
にオーステナイト安定化元素であることから前述の変態
挙動に影響を及ぼし超微細粒生成に寄与していると考え
られる。N量が十分に高く、また、C、Ni等の他のオ
ーステナイト安定化元素の効果を活用できる場合にはM
n量はそれほど高くする必要がない場合もある。鉄鋼原
料等から不可避的に含有されることもあり、あえてコス
トをかけてまで低減する必要はない。下限は0.01%
とする。一方、Ni等をそれほど含まない、いわゆる普
通鋼においては、Mnは結晶粒の微細化効果を効率的に
発現させるため非常に有効な元素である。
さいか、あるいは所定の効果を得るには高濃度の合金添
加または厳格な熱処理が必要となる。このため0.8%
以上が望ましく、さらに好ましくは1.0%以上、さら
に好ましくは1.2%以上、さらに好ましくは1.5%
以上とする。通常、自動車部品等に用いられる、いわゆ
る加工用普通鋼をベースとする場合においては1.7%
程度は必要となる。上限は特に限定する必要はないが、
過剰な添加はコストの上昇を招くばかりでなく表面欠陥
または表面処理上の問題が出る傾向であり、オーステナ
イトを過剰に安定化させ最終的に常温まで多量のオース
テナイト相を残存させ主としてフェライト相からなる結
晶粒の微細化効果を損ねる場合もあるため10%を上限
とする。より好ましくは6.0%、さらに好ましくは
4.0%、さらに好ましくは3.0%、さらに好ましく
は2.5%である。
のために添加される元素であるが、冷間圧延を経て製造
する場合には冷間圧延性が劣化するため、過剰な添加は
通常の工程での鋼板の製造が困難となる。また、本発明
鋼のような高N含有鋼では過剰に添加すると窒化物を形
成し、延性を低下させるとともにNによる組織微細化効
果を低減させるため、過剰な添加は好ましくない。一
方、適当な量であれば延性をそれほど劣化させず高強度
化を達成するには有効な元素であり、0.001〜4.
0%とする。窒化物の形成を抑制するには、3.0%以
下、好ましくは2.0%以下とする。めっき性や表面性
状も考慮すると1.0%以下とすることが好ましく、さ
らに好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.2
%以下である。
が、Si以上に強い窒化物形成元素であるため、上述の
Siと同様に過剰な添加は好ましくない。また、Alを
多量に含有する溶鋼は鋳造時にノズルの閉塞等を起こし
易く生産性を阻害する。さらに鋼板表面の疵の原因とも
なるため4.0%以下とする。好ましい範囲は2.5%
以下、さらに好ましくは1.5%以下、さらに好ましく
は0.5%以下である。
元素であり、過剰な添加は好ましくない。しかし、適当
量存在した場合、非常に微細な窒化物を形成し結晶粒の
超微細化効果を補う効果を有し、延性の劣化を補って余
りあるほど顕著に高強度化させることも可能であるため
必要に応じて利用することも有効である。TiおよびN
bについては、各々0.2%以下、さらに好ましくは
0.1%以下とし、Bについては、0.02%以下、好
ましくは0.005%以下とする。
成し延性を劣化させる場合があるだけでなく、セメンタ
イトの形成およびそれに起因する複雑な変態挙動を制御
するために厳格な熱履歴の制御が必要となるので、あえ
て添加する必要はない。一方、オーステナイト安定化元
素であるため適当な量であれば本発明の機構による結晶
粒微細化効果に好ましい影響を与え、発明効果を得るた
めのN下限を緩和し窒化等によるN含有量を増加させる
際の負荷を軽減する。脱炭コストを考えると下限は0.
0005%程度であるが、本発明においては窒化の進行
とともに脱炭が効果的に起き、通常では達成し難い超極
低炭素化が図られる場合もある。このため下限を0.0
001%とする。上限はオーステナイト安定化効果とセ
メンタイト形成を考慮し0.2%とする。好ましは0.
1%以下、通常、自動車部品等に用いられる、いわゆる
加工用普通鋼程度の0.05%以下でも全く問題はな
い。
意味を有する。従来より、NiおよびCrを多量に含有
する、いわゆるステンレス鋼において0.1%程度以上
のNを含有する鋼が製造されている。一般に、本発明鋼
が対象としているような自動車部品等に使用されるC
r、Ni等を多量には含有しない、いわゆる普通鋼では
Nの含有量は0.03%程度が限度である。これは通
常、鋼の成分調整が行われる溶鋼段階でのNの溶解量に
は熱力学的に限界があるとともに、鋳造における凝固時
の温度低下にともない鋼中のN固溶可能量が大きく低下
しガス化するためブローホールの発生が顕著になり鋼板
表面の性状が著しく劣化してしまうことからの規制であ
る。
0%含有する、いわゆるステンレス鋼では溶鋼を含む鋼
中へのN溶解の許容量が熱力学的に格段に大きくなるた
め多量のN含有鋼の製造が可能となっている。しかし、
ステンレス鋼においても通常の製法ではN量の上限はせ
いぜい0.3%程度である。このような、従来の高Nス
テンレス鋼でもNの多くはCr窒化物を形成してしまう
ため、また、様々な窒化物、炭化物の形成およびそれら
にも影響を受ける変態挙動を考慮した制御がなされてい
ないため、本発明の重大な進歩性の一つである超微細粒
化効果を全く活用していない状況である。本発明鋼では
凝固移行にN添加を行なうため上記のような熱力学に起
因した原理的な制限がなくなり、Cr、Ni等を高濃度
に含有せずとも高いNの含有が可能となっている。とは
言え、本発明鋼で例えば耐食性を付与する等の本発明以
外の目的でCr、Niを添加することは可能である。
剰な添加は好ましくない。耐食性等への効果と添加コス
トを考え、好ましい範囲を20%以下とする。好ましく
は10%以下、さらに好ましくは5%以下、また、3%
以下であれば窒化物形成の影響は大幅に軽減される。N
iはオーステナイト安定化元素であり、本発明の効果に
好ましい影響を与える。添加コストを考え10%以下と
する。しかし、過剰な添加はオーステナイトを過剰に安
定化させ最終的に常温まで多量のオーステナイト相を残
存させ主としてフェライト相からなる結晶粒の微細化効
果を損ねる場合がある。変態を介した超微細化効果につ
いてはNiとほぼ同等の効果を有するMnを活用した方
がコスト的に大幅に有利であるためNi量は好ましくは
5%以下、さらに好ましくは2%以下とする。
様、適量な量であれば延性をそれほど劣化させず高強度
化を達成するには有効な元素であり、また、Nb等と同
様に元々結晶粒の微細化効果を有し、本発明による超微
細化効果を補う効果を発揮し延性の劣化を補って余りあ
るほど顕著に高強度化させることも可能であるため必要
に応じて利用することも有効である。脱Pコストと過剰
添加による延性劣化を考慮し、0.001〜0.5%と
する。
要はなく、MnSを形成し本発明が必要とするMnの効
果を減じる害があるため低い方が好ましい。従って、
0.0001〜0.1%とする。また、深絞り、張出
し、めっき、耐食、溶接、靱性に限らず、耐磨耗性やデ
ント性など様々な使用特性を向上させる目的で、さらに
は鋳造性、圧延性など製造上の課題を改善する目的でS
n、Sb、Bi、Mo、V、W、Ta、Se等の各種元
素を適当量添加することは本発明の効果を何ら損なうも
のではない。
常に微細なことである。通常の高強度鋼板が数μm〜1
0μm程度の粒径を有することから本発明鋼の結晶粒の
直径を5.0μm以下と限定する。望ましくは2.0μ
m以下、さらに好ましくは1.0μm以下であり、組織
の微細化に関しては条件を制御することにより0.5μ
mおよび0.1μm以下、さらなる微細化も可能であ
る。粒径が微細であるほど特性上の特徴も明確になる。
また、組織の微細化により、従来知見より向上が期待さ
れる特性、例えば、耐摩耗性や疲労特性などについて
も、好ましい効果を得ることができる。
としているが、オーステナイト安定元素であるN、Mn
を比較的多量に含有し、結晶組織の微細化に変態が関与
していることが予想されることから、その組織中にオー
ステナイトが残留する場合がある。残留オーステナイト
は強度−延性バランスの改善に有効であることから体積
率が相当量になっても微細組織に起因する良好な特性が
顕著に阻害されることはない。
0%を超すような材料に極度に厳しい成形を施した場
合、加工中に歪に誘起された変態により生成するマルテ
ンサイト相が応力の集中を招き延性が低下する場合があ
ることや、プレス成形した状態で存在する多量のマルテ
ンサイト相が二次加工性や衝撃性の低下を引き起こすこ
とがあるので、残留オーステナイトの体積率を20%以
下とすることが好ましい。オーステナイト相以外にもマ
ルテンサイト相やベイナイト相などFeを主体とした
相、さらにはFeまたは添加元素による窒化物や炭化物
など多様な相の存在を勘案すると、好ましい範囲はフェ
ライト相の体積率で50%以上である。
する。本発明の特徴は従来の加工用鋼板では考えられな
かったほどの高濃度のNを含有させることである。従来
鋼のように溶鋼段階で成分調整し多くのNを含有させる
ことは困難であるが鋼片または鋼板への窒化を適用する
と比較的容易に高濃度のNを含有させることが可能にな
る。この窒化の方法はガスによるもの液体中で行うも
の、さらには固体との接触やイオンやプラズマ照射など
によるものが考えられる。いずれも窒化処理において含
有N量を0.05%以下から、例えばNを0.05%以
上増加させることが可能なものである。
窒化が実用的である。ガスによる窒化の場合は板温55
0℃以上でアンモニアを2%以上含む雰囲気中で1秒以
上保持、または550〜800℃のアンモニアを2%以
上含む雰囲気中で1秒以上保持する。窒化は主として高
温の金属表面に雰囲気が接触し雰囲気が分解する際に生
じるN原子が金属中に侵入することで生じるので窒化反
応が起きる際の温度の制御が重要である。後述するよう
に温度がこの範囲を外れると窒化効率が低下し、必要量
のN化に長時間を要する。また、低温側に外れた場合は
多量の鉄窒化物を形成しそのままでは本発明鋼で必要と
する結晶粒の微細化において好ましくNを活用すること
ができない場合もある。好ましい温度域の下限は590
℃、さらに好ましくは620℃である。高温側の温度は
板温度のみが雰囲気温度に対して高温である場合と、雰
囲気温度そのものが高温に保持される場合で事情が多少
異なる。
なっている場合について説明する。これは、例えば雰囲
気は特別に加熱することなく、高温に加熱された鋼板
を、鋼板温度より低い雰囲気内に挿入する場合であり、
例えば連続炉の前半部で通常の窒化が殆ど起きない雰囲
気で鋼板を加熱しておき、連続炉の後半部は加熱しない
窒化雰囲気にしておき、この中を通板させることで窒化
を行なうような設備が想定できる。または連続ラインの
途中で通電加熱等で鋼板を加熱し高温のまま室温程度の
窒化雰囲気で満たされた槽内を通過させることで窒化す
るような設備が想定できる。この場合は高温の金属表
面、すなわち加熱された鋼板表面で雰囲気の分解が起
き、Nが鋼中に侵入し鋼板の窒化が進行する。
N拡散をより活性化するため板温度は高温であるほど好
ましい。鋼板の加熱のための効率やコスト等を考えると
通常1000℃以下とする。好ましくは900℃以下で
800℃以下でも窒化効率は実用的に十分なものであ
る。ただし、連続炉を想定した場合、低温雰囲気中への
高温鋼板の連続的な挿入により、窒化炉内に新たな雰囲
気を持続して導入しているとしても、窒化炉内への連続
的な熱の持込により窒化雰囲気の温度は多少なりとも上
昇する可能性がある。窒化雰囲気の温度があまりに上昇
すると後述するように炉材として使用されている金属部
での雰囲気の分解が起きるようになり鋼板への窒化効率
が低下する場合があるので低温雰囲気中へ高温鋼板を挿
入しての窒化を行なう場合には熱の移動および雰囲気温
度の管理が重要である。
を窒化が起きる程度の高温に保持しておき、その中に雰
囲気と同程度まで加熱された鋼板を挿入する場合につい
て説明する。これは、例えば通常の連続焼鈍ラインにお
いて、通常高温雰囲気が満たされている加熱炉および保
熱炉の炉内に雰囲気のガス成分のみを窒化ガス成分に変
更し、通常と同様に鋼板を通板するような工程が想定で
きる。この工程で再結晶も同時に行なう場合は再結晶前
半部で鋼板が窒化してしまうと鋼板の再結晶温度が上昇
し、熱処理後に鋼板に未再結晶部が残存し加工性を劣化
させる場合があるので、加工性等に好ましくない場合に
は注意が必要である。
囲気成分を制御し、再結晶と窒化の時期を適当に制御
し、再結晶が十分に起きた後に窒化が進行するようにす
る必要がある。この工程においては雰囲気温度が高すぎ
ると鋼板の通板とは無関係に炉材の一部として使用され
る、例えば炉体そのものや各種の通板ガイドロール、加
熱のためのバーナーなどの金属部分での雰囲気の分解が
頻繁に起きるとともに雰囲気自体でも分解・反応が進行
し、雰囲気の窒化能を低下させるため鋼板の窒化効率が
低下する。また、炉体や各種部品が窒化してしまうため
炉そのものの機能を低下させる場合もある。このため、
好ましい雰囲気温度を800℃以下とする。好ましくは
750℃以下である。
なアンモニアの濃度を窒化効率の観点から0.5%以上
とする。窒化自体はアンモニアが0%でも雰囲気中に窒
素が存在するば起きる可能性があるものであり、鋼板が
非常に薄く必要なN含有量にするためのN化量も小さい
場合には希薄アンモニア雰囲気の適用も可能である。通
常の加工用鋼板を想定すればアンモニア濃度は2%以
上、好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以
上、さらに好ましくは20%以上とする。窒化雰囲気の
濃度は窒化が起きることで雰囲気そのものの組成が変化
するため一義的には確定できないし、厳格に窒化が進行
している鋼板極表面での雰囲気組成を確定することは困
難である。
内に連続的にガスが導入されている場合はそのガスの体
積分率を用いることとする。また、炉内に導入している
雰囲気と窒化が進行している炉内の雰囲気が異なること
が想定される場合には通常の環境測定等で用いられる程
度の手法を用い窒化炉内の適当な場所で雰囲気を採取し
その体積分率を測定するものとする。アンモニア以外の
雰囲気が主としてN2とH2 である場合は窒化効率の観
点からはN2 濃度を高くする方が有利である。
本発明の雰囲気中での保持時間は必要な鋼中N量との兼
ね合いで決定される。連続焼鈍の場合にはせいぜい30
分が限度であるが、箱焼鈍などを用いることで数時間以
上、数日の処理も可能となる。板厚にもよるがN量の確
保の観点から1秒以上は必要である。上限は操業性や生
産性などを考慮し20日以内が望ましい。通常の連続焼
鈍ラインを用いて窒化を行なう場合に生産性も考慮すれ
ば300秒以下が好ましい。
でも可能であるが、窒化では表面から鋼内部へのNの拡
散を利用しているため板厚は薄いほど高濃度のN化が容
易となる。通常は最終製品に近い形状に加工された後に
窒化することが有利となる。鋼板の場合は熱間仕上げ圧
延以降の工程で行うことが好ましく、通常の冷延鋼板の
製造においては最結晶焼鈍工程中で焼鈍炉の一部または
全部を発明雰囲気にすることでN化を行うことが生産上
は都合がよい。
後の高温処理または適当な温度での保定により結晶粒の
微細化に都合の良い熱履歴を付与する工程も可能である
し、焼鈍工程の最高温度への到達により再結晶および適
当な延性を付与した後にN化を行うような工程も可能で
ある。また、これらを組合わせたり、高温再結晶の後、
発明範囲内の低温で窒化を行い、その後再び高温に昇温
し組織制御を行うような工程によっても本発明の効果は
何ら損なわれるものではない。
履歴を制御することでより容易に達成できる。この熱処
理は窒化処理と連続している必要はなく、いったん常温
まで冷却した後、またはめっき処理や何らかの加工など
を行った後に行っても構わない。また、特に鋼板表面か
ら窒化した場合にはN濃度の鋼板板厚方向での偏析が考
えられるが、高温保持によるNの拡散によりこれを解消
する場合には必要な温度と時間を制御する。熱処理条件
としては最高到達温度の制御が重要で、800℃以上に
到達させるのが望ましい。好ましくは850℃以上、さ
らに好ましくは900℃以上である。保持時間は数秒で
十分であるが、必要により数分または数時間以上保持し
ても構わない。
中間温度で保持することで強度延性のバランスをさらに
向上させることが可能である。これは鋼中の固溶Nおよ
びFe窒化物の形態が好ましく変化させるためと考えら
れる。保持温度は50〜550℃とする。この範囲でも
高温域での保持はFe窒化物の生成を過剰に促進させ延
性が極端に劣化することがあるので上限は好ましくは5
00℃、さらに好ましくは450℃とする。低温域では
好ましい窒化物の形態変化に長時間を要するため下限は
好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上
とする。
物はFe比率が高いのに対し、350〜450℃近傍の
高温で生成するFe窒化物は低温で生成するものよりF
e比率が低めで、温度によりFe窒化物の組成および形
態が異なることからそれぞれ向上させる特性も異なるこ
とが予想されるので用途に応じた温度範囲を選定するこ
とが重要である。この温度域での滞在時間は低温ほど長
時間とする必要が生ずるのは言うまでもないが、明確な
効果を得るには10秒以上が必要である。
顕著にするにはその直前に行われた650℃以上に到達
した熱処理において650℃以上の温度から400℃以
下の温度まで10℃/秒以上の冷却速度で冷却しておく
ことが効果的である。好ましくは50℃/秒以上であ
る。ただし、過度に急速な冷却は鋼成分や冷却終了温度
にもよるが、鋼中にマルテンサイト相を生成させ延性を
劣化させる場合があるので注意が必要である。上に述べ
た中間温度域での熱処理により鋼組成を好ましく制御し
た後は、この組織を保持するため550℃を超える温度
への加熱は避けるのが望ましい。550℃を超える温度
への加熱を行なうと上記の中間温度での保持による特性
向上効果のかなりの部分が消失する。580℃以上では
中間温度での保持による特性向上効果は殆どみられなく
なる。
ては鋼板の全ての部分が微細である必要はなく、耐摩耗
性や疲労性の向上には表層のみが微細化されていればか
なりの効果を得ることができる。また、部分的に組織が
異なることで、強度や靱性など微細粒が有利な特性と、
延性など粗大粒が有利な特性を組み合わせた複合機能を
持たせることも可能となる。部分的に組織を変化させる
方法としては、例えば成分を不均一にすることが考えら
れ、本発明のように窒化を行うものでは鋼板表面から中
心へNの濃度勾配を付与し、他の元素は実質的に均一と
する方法が考えられる。
N以外のMn等の成分の影響が見られる。従って、Mn
濃度が場所的に異なる鋼を一般に知られている爆着や圧
着などの方法を用いて複層鋼として製造しこれを窒化す
るという方法も有効である。また、窒化後に行う調質熱
処理において部分的に温度を変化させることでも組織を
制御できる。本発明鋼の用途はその形状などにより何ら
限定されるものではなく、鋼板として自動車、容器、建
材など一般的に鋼板が使用されている用途に適用し本発
明の効果を得ることができる。また、微細粒を形成した
後に何らかの加工を施して強度調整、形状調整を行って
も発明の効果が失われるものではない。
鋼片を通常の条件で熱延、冷延し得られた厚さ0.6m
mの冷延鋼板について、鋼A−Eは800℃、1分の再
結晶焼鈍、650〜700℃、5〜10分の窒化処理、
900℃、2分の調質熱処理を行い、鋼F−Iは800
℃、1分の再結晶焼鈍の後、すべて0.6%で調質圧延
し各種特性を調査した。成分を表1に示すが、鋼A−E
においてはアンモニアガスを含む高温雰囲気で保持する
ことによりN化を行い高濃度にNを含有させており、表
1中のN量は最終製品での値である。鋼中N量は窒化処
理での上記の範囲の温度、時間および表1に示すアンモ
ニアガス濃度で調整した。特性の評価結果を表2に示
す。一般に強度レベルが異なると成分等も異なり各種特
性も大きく異なる場合があるため本実施例では強度レベ
ルを550〜650MPaの範囲のものについて比較す
る。
れに対し、比較鋼では合金成分のためめっき性が低いも
のや、溶接やめっき処理などを行った後には何らかの特
性が劣化してしまう。加工性はJIS5号引張試験片に
よるゲージ長さ50mm、引張速度10mm/minの
常温引張試験で評価した。結晶粒径は通常行われる断面
組織観察において、特定面積内に観察される結晶粒の数
から結晶粒1個あたりの断面積を求め、さらにこの結晶
粒の断面形状を円とした場合の直径として求めた。
二つの熱履歴に対し、熱履歴前後の結晶粒径を上述の方
法で求め顕著な組織粗大化が起きていないものを合格と
した。熱履歴の一つは溶接前後の変化を検討した。具体
的には実用的な溶接条件でスポット溶接を行った場合の
熱影響部の組織を観察した。もう一つは溶融めっき工程
など比較的高温の熱処理を想定したもので、700℃、
2分の熱処理後の組織を観察した。 ○:変化なし △:変化小 ×:変化大
して、実用的な条件で合金化溶融亜鉛めっきを行った鋼
板についてJIS5号引張試験片によるゲージ長さ50
mm、引張速度10mm/minの常温引張試験で強度
と伸びを評価し、めっき前の特性と強度−延性バランス
の変化を比較した。 ○:変化なし ×:軟化、延性劣化の一方または両方
めっきを行った鋼板について不めっき発生とめっき密着
性について行い、不めっきは目視で有無を判定し、めっ
き密着性はめっき鋼板の60度V曲げ試験を実施後テー
プテストを行い、テープテスト黒化度が20%未満であ
れば合格とした。靱性はJISに準じた方法で評価し
た。鋼板中の残留オーステナイトの体積率はMoKα線
を用いたX線回折の5ピーク法で測定した。
る鋼片を通常の条件で熱延、冷延し得られた厚さ0.8
mmの冷延鋼板について、鋼A−Eは800℃、1分の
再結晶焼鈍、650〜700℃、5〜10分の窒化処
理、900℃、2分の調質熱処理を行い、鋼F−Iは8
00℃、1分の再結晶焼鈍の後、すべて0.6%で調質
圧延し各種特性を調査した。成分を表3に示すが、鋼A
−Eにおいてはアンモニアガスを含む高温雰囲気で保持
することによりN化を行い高濃度にNを含有させてお
り、表3中のN量は最終製品での値である。鋼中N量は
窒化処理での上記の範囲の温度、時間および表3に示す
アンモニアガス濃度で調整した。
レベルが異なると成分等も異なり各種特性も大きく異な
る場合があるため本実施例では強度レベルを900〜1
100MPaの範囲のものについて比較する。尚、加工
性等の評価方法は実施例1と同じ方法とした。本発明鋼
はいずれも特性が良好である。これに対し、比較鋼では
合金成分のためめっき性が低いものや、溶接やめっき処
理などを行った後には何らかの特性が劣化してしまう。
る鋼片を通常の条件で熱延、冷延し得られた厚さ0.4
mmの冷延鋼板について、800℃、1分の再結晶焼
鈍、650〜700℃、1〜5分の窒化処理、900
℃、30秒の調質熱処理の後、すべて0.6%で調質圧
延し各種特性を調査した。成分を表5に示すが、全ての
鋼はアンモニアガスを含む高温雰囲気で保持することに
よりN化を行い高濃度にNを含有させており、表5中の
N量は最終製品での値である。鋼中N量は窒化処理での
上記の範囲の温度、時間および表5に示すアンモニアガ
ス濃度で調整した。本実施例は鋼A−CでMnの効果、
鋼D−GでSiの効果、鋼H−JでNbの効果を見るた
めに行なったものである。なお、加工性等の評価方法は
実施例1と同じ方法とした。特性の評価結果を表6に示
す。
り過剰なMn添加がオーステナイトを過度に安定化し多
量に残存させ延性にとって不都合な混相・混粒組織を形
成し材質が劣化することがわかる。また、鋼D−Gの比
較より過剰なSi添加により混粒組織が発生し延性が低
下することがわかる。鋼Gでは鋼中に多量のSi窒化物
が生成しており、主として固溶Nによると考えられる熱
的に安定な微細結晶粒の生成効果が低下していると推測
される。さらに、鋼H−Jの比較よりNb添加による結
晶粒微細化効果の増長がわかる。なお、データは省略す
るが、本発明でMnと同様の効果を有すると考えている
NiについてはMnと同様の傾向を示す結果を、本発明
でSiと同様の効果を有すると考えているAlについて
はSiと同様の傾向を示す結果を、本発明でNbと同様
の効果を有すると考えているTiおよびBについてはN
bと同様の傾向を示す結果をそれぞれ得ている。
0.02%、Mn:2.4%、P:0.01%、S:
0.01%、Al:0.04%、CrおよびNi:0.
1%以下、N:0.003%を含有する鋼片を通常の条
件で熱延、冷延し得られた厚さ0.2mmの冷延鋼板に
ついて、800℃、1分の再結晶焼鈍の後、通電加熱で
790℃に加熱した鋼板の両表面に40%のアンモニア
ガスを含む室温のガスを吹き付けることで5分間の窒化
処理を行い、その後空冷で室温まで冷却したNを0.4
%含む鋼板を用いて、その後の熱処理の影響を示す。こ
の窒化後の熱処理として請求項10に関連する熱処理と
して900℃、2分の熱処理を行い、その後の冷却速度
を請求項12との関連で変化させ、その後さらに請求項
11および12に関連する熱処理として450℃または
100℃での保持、さらに引続き同じく請求項11およ
び12に関連する550℃を超える温度に保持する熱処
理として650℃、30秒の熱処理を行った。
温程度まで冷却することなく連続的に施すことも可能で
あるが、本実施例においては各熱処理の影響を見るため
各熱処理終了時点での材質を評価する必要があるため、
各熱処理後は室温まで冷却し、次の熱処理のための加熱
を行なうように独立して行なった。熱処理条件および特
性の評価結果を表7に示す。表7中の熱処理2および熱
処理3における冷却は空冷とした。本実施例においては
鋼成分が同一であり、かつ全ての材料が実用的に十分な
本発明内となる熱的に安定な超微細粒組織になっている
ことを確認しており、溶接等による熱的な安定性につい
ての評価結果は省略する。本実施例においては主として
強度延性バランスの変化および靱性の評価に重点を起き
評価を行なった。全ての材料が本発明鋼となるため評価
は特性をランク付けることで以下のように行なった。 A:最高レベル B:著しく良好 C:良好(従来鋼以上) この結果からわかるように窒化処理後の熱処理を適当に
行なうことで特性のさらなる向上が可能となる。
化、高靱性を図り、溶接や溶融めっきなどの熱履歴を経
てもその特性を失うことなく、使用条件においても初期
特性を維持し、めっき付着性が良好なため高耐食性表面
処理鋼板への適用も可能な高強度鋼板およびその製造方
法を提供することが出来る。
Claims (12)
- 【請求項1】 質量%で、 C:0.0001〜0.2%、 Si:4.0%以下、 Mn:0.01〜10.0%、 P:0.001〜0.5%、 S:0.0001〜0.1%、 Al:4.0%以下、 N:0.05〜4.0% を含有し、結晶粒径が平均で5.0μm以下であること
を特徴とする加工性、めっき性および靱性に優れた微細
組織を有する高強度鋼板。 - 【請求項2】 Cr:20.0%以下を含有することを
特徴とする請求項1に記載の加工性、めっき性および靱
性に優れた微細組織を有する高強度鋼板。 - 【請求項3】 Ni:10.0%以下を含有することを
特徴とする請求項1または2に記載の加工性、めっき性
および靱性に優れた微細組織を有する高強度鋼板。 - 【請求項4】 さらに、Ti:0.2%以下、Nb:
0.2%以下、B:0.02%以下の1種以上を含有す
ることを特徴とする請求項1〜3に記載の加工性、めっ
き性および靱性に優れた微細組織を有する高強度鋼板。 - 【請求項5】 N以外の元素についての鋼材内の濃度が
実質的に均一であることを特徴とする請求項1〜4に記
載の加工性、めっき性および靱性に優れた微細組織を有
する高強度鋼板。 - 【請求項6】 実質的にフェライト相の体積率が50%
以上、オーステナイト相の体積率が20%以下であるこ
とを特徴とする請求項1〜5に記載の加工性、めっき性
および靱性に優れた微細組織を有する高強度鋼板。 - 【請求項7】 請求項1〜6の鋼板を製造するに際し、
鋼板を窒化することによりN含有量を0.03%以上増
加させ、0.05%以上とすることを特徴とする加工
性、めっき性および靱性に優れた微細組織を有する高強
度鋼板の製造方法。 - 【請求項8】 アンモニアを0.5%以上含む雰囲気中
に鋼板温度550℃以上、1秒以上保持することでN含
有量を0.03%以上増加させ、0.05%以上のNを
含有させることを特徴とする請求項7に記載の加工性、
めっき性および靱性に優れた微細組織を有する高強度鋼
板の製造方法。 - 【請求項9】 アンモニアを0.5%以上含む550〜
800℃の雰囲気中に1秒以上保持することでN含有量
を0.03%以上増加させ、0.05%以上のNを含有
させることを特徴とする請求項8に記載の加工性、めっ
き性および靱性に優れた微細組織を有する高強度鋼板の
製造方法。 - 【請求項10】 窒化処理によりN含有量を0.05%
以上とした後、800℃以上の温度で熱処理を施し、結
晶粒径を5.0μm以下とすることを特徴とする請求項
7〜9記載の加工性、めっき性および靱性に優れた微細
組織を有する高強度鋼板の製造方法。 - 【請求項11】 窒化処理によりN含有量を0.05%
以上とした後、50〜550℃の温度域で10秒以上滞
在させ、その後550℃を超える温度に保持することな
く使用することを特徴とする請求項7〜10記載の加工
性、めっき性および靱性に優れた微細組織を有する高強
度鋼板の製造方法。 - 【請求項12】 窒化処理によりN含有量を0.05%
以上とした後、650℃以上の温度から冷却速度10℃
/秒以上で400℃以下まで冷却し、さらに50〜55
0℃の温度域で10秒以上滞在させ、その後550℃を
超える温度に保持することなく使用することを特徴とす
る請求項7〜11記載の加工性、めっき性および靱性に
優れた微細組織を有する高強度鋼板の製造方法。
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