JPH1036285A - 新規な性腺刺激ホルモン及びその製造方法 - Google Patents

新規な性腺刺激ホルモン及びその製造方法

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JPH1036285A
JPH1036285A JP8193232A JP19323296A JPH1036285A JP H1036285 A JPH1036285 A JP H1036285A JP 8193232 A JP8193232 A JP 8193232A JP 19323296 A JP19323296 A JP 19323296A JP H1036285 A JPH1036285 A JP H1036285A
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JP
Japan
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subunit
amino acid
xaa
gonadotropin
mutant
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JP8193232A
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English (en)
Inventor
Tomoya Ogawa
智也 小川
Kunio Shioda
邦郎 塩田
Kanshiyoku Bin
觀植 閔
Masahisa Ikemi
昌久 池見
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Denka Co Ltd
Original Assignee
Denki Kagaku Kogyo KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、卵胞膿腫の原因と考えられるLH
活性を実質的に含まない医薬品を製造し、ヒト及び動物
を対象とするより安全で適用範囲の広い排卵誘発剤・卵
巣疾患治療剤を提供すること。 【解決手段】 eCGのαサブユニット及びβサブユニ
ットから構成され、αサブユニットにアミノ酸置換変異
を導入して56番目のアミノ酸への糖鎖の結合を阻害す
ることにより、LH活性を実質的に除去した新規な性腺
刺激ホルモンを構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ウマ絨毛性ゴナド
トロピン(eCG)を構成するサブユニットの遺伝子を
部位特異的に改変し、その変異型遺伝子を発現ベクター
に組み込み、ほ乳動物細胞などの糖蛋白の製造に適した
宿主に導入することにより、FSH/LH活性を制御し
た新規な組換え型eCG変異体、その遺伝子及び組換え
型eCG変異体の製造方法を提供する。
【0002】
【従来の技術】eCGは妊馬の内膜杯で合成され絨毛膜
から分泌される性腺刺激ホルモンで、ヒトや動物の受胎
促進や過剰排卵誘起に用いられる。他の性腺刺激ホルモ
ンに比べて分子量が大きく、腎臓のろ過装置を通過でき
ないために、血清中にのみ認められる。eCGの現行製
造方法としては、妊馬の血清を原料として、eCGを分
泌している時期の血清を採取し、エタノール沈澱法など
により分離精製する方法が一般的に用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】eCGは卵胞刺激ホル
モン(FSH)様活性と黄体形成ホルモン(LH)様活
性の両方の活性を有するが、妊娠初期から中期にかけて
血清中に分泌されるeCGでは、両活性およびその活性
比の変動が大きい。そのために、製剤化の過程でロット
間に活性比のばらつきが生じ、これが薬効のばらつきや
副作用が生じる原因となっている。特に、受胎促進や過
剰排卵誘起用に医薬品として用いる場合には、eCGが
有するLH様活性は、卵胞嚢腫などの副作用を生ずる原
因と考えられているので、その活性の制御や低減が強く
望まれている。また、eCGの様な性腺刺激ホルモンで
は、投与する対象や疾患によって要求される特性が異な
るので、FSHやLHの活性やその比率、それぞれの活
性半減期など、天然eCGの有する固有の性質を改良又
は制御することができれば、より幅広い医薬品としての
応用が可能になると期待される。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、eCGを構成
するサブユニットの遺伝子に変異を導入し、その変異型
遺伝子を組み込んでなる発現ベクターをほ乳動物細胞な
どの糖タンパク質の製造に適した宿主に導入し、eCG
変異体を製造することにより、FSH/LH活性を制御
した新規な組換え型eCG変異体を作製することができ
るという発見に基づく。
【0005】一般に、性腺刺激ホルモンは、非共有結合
で結合したα及びβ−サブユニットからなるヘテロ2量
体の糖蛋白ホルモンである。ウマ絨毛性ゴナドトロピン
(eCG)も同様なヘテロ2量体からなる糖蛋白ホルモ
ンである。α−サブユニットはウマ由来の他の性腺刺激
ホルモンと共通であるが、β−サブユニットがホルモン
間で異なり、これが生物活性の相違の構造的基礎をなし
ている。α−サブユニットは96アミノ酸残基からな
り、56番目と82番目のAsn残基に糖鎖が結合して
いる。一方、β−サブユニットは、149アミノ酸残基
からなり、13番目のAsn残基に1本、C末端領域の
Thr/Ser残基に4〜10本の糖鎖が結合してい
る。eCGは、ほ乳動物の下垂体及び胎盤由来の糖蛋白
の中で最も高度にグリコシル化されており、その分子量
の約45%が糖部分に由来する。また、eCGは、ウマ
以外の種では、LHレセプターだけでなくFSHレセプ
ターにも結合し、FSH及びLH様の生物活性を示す。
eCGとウマLHは、アミノ酸配列は同一であるが、そ
の生物学的作用は異なり、糖鎖構造の違いが生物活性を
規定する典型的な例と考えられている。糖鎖構造が機能
発現に大きく影響する例は数多く知られているが、機能
発現と糖鎖構造の相関あるいはその分子論的基礎に関し
てはほとんど知見は蓄積されていない。また、eCGが
eLHあるいはhCGと極めて構造的に類似しているに
もかかわらず、ウマ以外の種においてFSHとLHの両
方のホルモン様活性を発現する機構については全く解明
されていなかった。ましてや、その活性および活性比を
制御できるかどうかについては全く知られていなかっ
た。特に、α−サブユニットの56番目のAsnに結合
している糖鎖は、他の性腺刺激ホルモンとの関係から、
eCGのFSH活性の発現に必須と考えられていた。
【0006】絨毛性ゴナドトロピン(CG)の生物活性
と糖鎖の関係については、ヒトCGに関して研究が進展
している。ヒトCGでは、N結合型の糖鎖は、レセプタ
ーへの結合親和性には影響しないものの、αサブユニッ
トの52番目のAsn残基に結合したN結合型の糖鎖を
除去すると、ステロイドの放出活性とcAMP産生の両
方を著しく低下させた(例えば、M.M.Matzuk, et al.,
J. Biol. Chem., 254, 2409 (1989))。一方、ヒトCG
と構造的に類似したヒト卵胞刺激ホルモン(FSH)で
は、糖鎖の除去がレセプターへの結合親和性を強めるも
のの、αサブユニットの52番目のAsn残基の糖鎖を
除去するとFSHのシグナル伝達は著しく減少した(例
えば、M.R.Flack, et al., J. Biol. Chem.,268 , 1401
5 (1994))。この様に、αサブユニットの52番目のA
snに結合した糖鎖がヒトCGやヒトFSHの生物活性
の発現に必須であることから、eCGのαサブユニット
の56番目のAsn残基に結合した糖鎖に関しても、e
CGの生物活性の発現、特にFSH様活性の発現に必須
であると考えるのが妥当である。ましてやLH活性との
関係に関しては全く推論できる根拠は示されていなかっ
た。
【0007】本発明者らは、鋭意研究を行った結果、驚
くべきことに、eCGを構成するサブユニットの遺伝子
に変異を導入することにより、FSH/LH活性を制御
した新規な組換え型eCG変異体が得られることを見い
だした。すなわち、eCGを構成するαサブユニットの
56番目のAsn残基あるいは結合に影響を与える周囲
のアミノ酸を他のアミノ酸に置換して56番目のアミノ
酸への糖鎖の結合を阻害することにより、FSH活性を
維持し、LH活性を除去した新規な性腺刺激ホルモンを
作製することができるということを見いだし本発明を完
成させるに至った。
【0008】
【発明の実施の形態】eCGは、αとβの2つのサブユ
ニットからなるヘテロ二量体である。その生産に利用す
るα及びβの各サブユニットをコードする遺伝子は、既
知の配列を利用して一般的な方法、例えば、PCRやサ
ザンハイブリダイゼーションにより遺伝子ライブラリー
からクローニングすることができる(Fiddes, J. & Goo
dman,H. M., Nature, 281:351-356 (1979).; Godine,
J. E., et al., J. Biol. Chem., 257:8368-8371 (198
2).; Golos, T. G., et al., DNA and Cell Biology, 1
0:367-380 (1991).; Stewart, F., et al., J. Endocri
nol., 115:341-346 (1987).; Sherman, G. B., et al.,
Mol. Endocrinol., 6:951-959 (1992)) 。
【0009】遺伝子ライブラリーは、常法に従って妊馬
の胎盤組織から抽出したmRNAから逆転写酵素を用い
て作製したcDNAライブラリーを用いてもよいし、市
販のcDNAライブラリーを購入して用いてもよい。サ
ブユニットをコードする遺伝子への変異の導入は、要
は、目的のアミノ酸配列へ変換されれば特に方法にはよ
らないが、ミスマッチプライマーを用い、カッセト変異
法、DNAポリメラーゼ修復法やPCR増幅法により部
位特異的に変異を導入する方法が好適に用いられる。
【0010】また、変異の導入は、アミノ酸置換により
α−サブユニットの56番目のアミノ酸へのN結合型の
糖鎖の結合を阻害することを目的としているので、遺伝
子レベルで導入された変異がどのようなものであっても
よい。要はα−サブユニットの56番目のアミノ酸をA
sn以外のアミノ酸に置換できればよい。変異の結果A
snの代わりに導入されるアミノ酸は、糖鎖の結合が阻
害されるものであれば他の19種類、即ち、Gly、A
la、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、As
p、Glu、Gln、Lys、Arg、Cys、Me
t、Phe、Tyr、Trp、His、Proのいずれ
でもよいが、好ましくは、Glnへの置換が用いられ
る。また、たとえAsn56以外の変異であっても、5
6番目のアミノ酸への糖鎖の結合を阻害し、実質的にL
H活性を除去せしめる変異であれば同等なものとして用
いることができる。その好ましい例としては、56番目
のアミノ酸がAsnであっても58番目のアミノ酸がT
hr及びSer以外のアミノ酸であれば同等の効果を得
ることができる。さらに、これ以外の変異であっても、
糖鎖の結合を阻害し、実質的にLH活性を除去せしめる
変異であれば同等なものとして用いることができる。
【0011】遺伝子を効率的に発現させてタンパク質を
生産させるためには、宿主細胞内で機能するプロモータ
ーの支配下に目的遺伝子を連結すればよい。遺伝子の発
現に用いるプロモーターは、実質的に細胞内で発現可能
なものであれば、特に制約なく用いることができるが、
高い生産量を得るためには、強力な活性を有するプロモ
ーターを利用することが望ましい。
【0012】好ましいプロモーターの例としては、サイ
トメガロウィルス主要IE遺伝子プロモーターやラウス
肉腫ウィルスLTRプロモーター、SV40E遺伝子プ
ロモーター、単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ遺
伝子プロモーター、マウスホスホグリセリン酸キナーゼ
遺伝子プロモーター、ヒトβ−アクチン遺伝子プロモー
ター、メタロチオネインプロモーター、熱ショックタン
パク質プロモーター、マウス乳がんウィルスプロモータ
ー、フィブロネクチンプロモーターなどを挙げることが
できる。これらのプロモーターは、それぞれ単独で用い
てもよいし、また異なるプロモーターを2種並べて用い
たり、2種のプロモーターを融合させて用いてもよい。
【0013】eCGを生産するために用いる宿主として
は、要は糖鎖が結合し、かつゴナドトロピン活性を有す
るeCGを安定に生産する能力を有するものであれば、
特に制約なく用いることができるが、好適な細胞株とし
ては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、新
生仔ハムスター腎細胞(BHK)、マウス乳がん細胞
(C−127)、マウス線維芽細胞(L及びNIH3T
3)、アフリカミドリザル腎細胞(CV−1)、ヒト子
宮頸部がん由来細胞(HeLa)、マウス骨髄腫細胞
(Sp2/0)、ヒトBリンパ芽球様細胞(Namal
wa)、ラット下垂体腫瘍細胞(GH3)などを挙げる
ことができる。
【0014】遺伝子の導入に用いるベクターとしては、
目的の遺伝子の発現に必要なプロモーター、エンハンサ
ー、ポリAシグナル、選択マーカーなどを備えているも
のであれば制約なく用いることができるが、市販のベク
ターをそのままあるいは改良して用いることもできる。
特に好ましいベクターとしては、pCMV(Pharminge
n, USA)、pABWN(Niwa, H., et al., Gene, 108:1
93-200 (1991).)などを挙げることができる。また、遺
伝子の細胞内への導入法については特に制約はなく、一
般的な方法、例えば、リン酸カルシウムゲル共役沈澱法
やリポソーム法などを用いることができる。
【0015】導入した遺伝子を増幅することにより、遺
伝子のコピー数を増大させた高発現株を得ることができ
る。一般的には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHF
R)を薬剤増幅マーカーとして、段階的にDHFRに対
する阻害剤であるメトトレキセート(MTX)濃度を増
大させることにより、遺伝子を増幅することができる
が、グルタミンシンテターゼ遺伝子を増幅マーカーとし
て、メチオニンスルホキシミン(MSX)で増幅する方
法や、ウシパピローマウィルスゲノムの69%からなる
DNAが細胞中で環状の二本鎖DNAのエピソームとし
て安定に存在することを利用して、薬剤耐性マーカー遺
伝子(例えば、弱いプロモーター制御下の変異型ネオマ
イシンホスフォトランスフェラーゼ遺伝子)とともにベ
クターを導入することにより、宿主染色体へ組み込んで
増幅する方法などを用いることもできる。
【0016】また、目的物質の生産性を高めるために、
制御遺伝子やがん遺伝子を導入して、プロモーターやエ
ンハンサーを活性化する方法を利用することもできる。
また、α及びβの各サブユニット遺伝子は同一の発現ベ
クター上にコードされていてもよいし、異なる発現ベク
ター上にコードされていてもよい。異なる発現ベクター
に各サブユニット遺伝子がコードされている場合は、両
組換えプラスミドを同時に宿主に導入してもよいし、別
々の細胞に導入後得られた各サブユニットからヘテロダ
イマーを再構成してもよい。
【0017】培養方法や培養条件には特に制約はなく、
要は宿主細胞が増殖し、導入した遺伝子が発現し、所定
の位置に糖鎖が結合し、かつ生物学的に活性な変異型e
CGが得られればよい。培養するための培地としては、
有血清培地、無血清培地又はそれらを適宜組み合わせて
用いることができる。
【0018】培養液からの単離精製は、eCG又は他の
性腺刺激ホルモンの精製に用いる通常の方法を用いるこ
とができる。例えば、硫安沈澱、吸着沈澱、エタノール
沈澱などの沈澱法、ゲルろ過、陰イオン又は陽イオン交
換クロマト、逆相クロマト、疎水クロマトなどの各種ク
ロマト工程を適宜組み合わせて用いることができる。
【0019】
【実施例】以下、実施例により、本発明をさらに具体的
に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるもの
でない。 参考例1.PCRによるECG遺伝子のクローニング 1.プライマーの設計と合成 ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用してeCG遺伝
子をクローニングするために、反応に用いるプライマー
の遺伝子配列を以下のように設計し、DNA Oligo-100
0 synthesizer(Beckman Instruments, Inc., USA)を用
いて化学合成した。
【0020】eCGα−サブユニット遺伝子に対するプ
ライマーは以下のように設計した。ヒト、ラット、ベン
ガルザル(Fiddes, J. & Goodman, H. M., Nature, 28
1:351-356 (1979).; Godine, J. E., et al., J. Biol.
Chem., 257:8368-8371 (1982).; Golos, T. G., et a
l., DNA and Cell Biology, 10:367-380 (1991).)のプ
レ−α−サブユニットの遺伝子配列情報を基に、4残基
のシグナル配列を含むeCGα−サブユニットに対する
N末端側(+鎖)混合プライマー:5'-AGGAG(C
/A)GC(T/C)ATGGATT(G/A)CTA
C- 3' (配列番号:3)(開始コドンの9塩基上流か
ら12塩基下流)を合成した。また、C末端付近の配列
情報(Stewart, F., et al., J. Endocrinol., 115:341
-346 (1987).)を基に、C末端側(−鎖)プライマー:
5'-CACTTGGTGAAACCTTTAAAT-
3' (配列番号:4)(終始コドンの18塩基下流から
3塩基上流)を合成した。
【0021】一方、eCGβ−サブユニット遺伝子に対
しては、既知の配列情報(Sherman,G. B., et al., Mo
l. Endocrinol., 6:951-959 (1992).)を基に、N末端側
(+鎖)プライマー:5'-GCACCGAGGATGG
AGACGCTCCAG- 3' (配列番号:5)(開始
コドンの9塩基上流から15塩基下流)とC末端側(−
鎖)プライマー:5'-GTAGTTCAAGAAGTC
TTTATTGG- 3' (配列番号:6)(終始コドン
の8塩基下流から15塩基上流)を合成した。
【0022】2.ウマ胎盤組織からのmRNAの抽出 妊娠70日の北海道野生馬(3才)を全身麻酔下で開腹
し、胎盤組織から内膜杯(endometrical cup)を摘出し
た。冷凍庫で凍結保存した後、Sambrookらの方法(Samb
rook, J., et al., Molecular Cloning. A Laboratory
Manual, 2nd ed, Cold Spring Harbor Press, Cold Spr
ing Harbor. (1989).)に従って内膜杯からRNAを抽出
し、CsCl密度勾配遠心法を用いて精製した。
【0023】3.cDNAの合成 cDNAの合成は、M−MuLV(Moloney Murine Leu
kemia Virus)由来の逆転写酵素を利用したFirst-strand
cDNA synthesis kit (Pharmacia LKB Biotechnology,
Uppsala, Sweden)を用いて行った。5μgのRNAを
含む溶液を65℃で加熱した後、氷中で急冷した。熱変
性RNAにcDNA反応液11μl、DTT1μl、M
−MuLVプライマー1μlを加え、37℃で1時間保
温した。得られた反応混合物をPCR増幅にそのまま用
いた。
【0024】4.PCRによる遺伝子クローニング PCR(Quick Thermo−II、Nippon Genetics 、Tokyo)
による遺伝子断片の増幅は2.5unitのpfuポリメラ
ーゼ(Stratagene, CA, USA)を用いて、変性(91℃、
1分)、アニール(37℃、1分)、伸長(72℃、2
分)のサイクルを30回繰り返して行った。PCRで増
幅した各DNA断片を、1mMEDTAを含む40mM
Tris-酢酸緩衝液を用いたアガロースゲル(1%)電気
泳動で解析した。得られたDNA断片が、塩基配列から
予想される泳動位置(α−サブユニット遺伝子:387
bp;β−サブユニット遺伝子:524bp)に検出さ
れることを確認した。
【0025】5.PCR断片のサブクローニングと塩基
配列の決定 PCR断片をpUC119(宝酒造、京都)のSmaIサ
イトに挿入し、大腸菌XL1−blue株(Stratagen
e, CA, USA)に導入した。得られた形質転換体から組換
えプラスミドを抽出し、QIA prep-spin plasmid kit
(QIAGEN, Chatsworth, USA)で精製した。eCGα及び
β−サブユニットをコードする組換えプラスミドを、そ
れぞれ、pUCeCGα1及びpUCeCGβ1と命名
した。各組換えプラスミドの挿入断片の塩基配列をジデ
オキシ・チェイン・ターミネーション法で解析し、所定
の配列を有することを確認した。
【0026】実施例1.変異型eCG発現ベクターの構
築と細胞への導入 1.各サブユニット遺伝子の5’末端へのXhoIサイト
の導入 eCGのα及びβ−サブユニット遺伝子断片の5’末端
にPCR増幅法により制限酵素XhoI切断部位を付加し
た。pUCeCGα1を鋳型として、XhoIサイトと K
ozakサイト(Kozak, M., Cell, 44:283 (1986).)を含む
5’側プライマー(eCGαXho):5'-GTACT
CGAGCCACCATGGATTACTACAGA-
3' (配列番号:7)とM13逆鎖プライマー:5'-C
AGGAAACAGCTATGAC- 3' (配列番号:
8)を用いてαサブユニット遺伝子を増幅し、5’末端
にXhoIサイトと Kozakサイトを導入した。
【0027】同様に、pUCeCGβ1を鋳型として、
XhoIサイトと Kozakサイトを含む5’側プライマー
(eCGβXho):5'-TCGCTCGAGCCAC
CATGGAGACGCTCCAG- 3' (配列番号:
9)とM13逆鎖プライマー:5'-CAGGAAACA
GCTATGAC- 3' (配列番号:8)を用いてβサ
ブユニット遺伝子を増幅し、5’末端にXhoIサイトと
Kozakサイトを導入した。PCRフラグメントをpUC
119のSmaIサイト連結した。挿入断片のPCR増幅
で生じたpUC119ベクターの重複部分をPstIで切
断し連結することにより欠失させた。2種類の生成プラ
スミド(pUCeCGαXho、pUCeCGβXh
o)の挿入断片を解析し、eCGα及びβサブユニット
の5’末端にXhoIサイトが存在することを確認した。
【0028】2.eCGα−サブユニト遺伝子への変異
の導入 3種類のプライマーを用いた一段階PCR法(Young-Sh
arp, D., et al., J.Methods Cell Mol. Biol., 2:155-
162 (1990).)によって、eCGα−サブユニットcD
NAの56番目のAsnをGlnへ置換するための部位
特異的変異を導入した。すなわち、α−サブユニットの
56番目のAsn(AAC)をGln(CAG)へ置換
するために設計したプライマー(α56プライマー):
5'-ATGTTGGTCCCAAAGCAGATCAC
CTCA- 3' (配列番号:10)、M13順鎖プライ
マー:5'-GTTTTCCCAGTCACGAC- 3'
(配列番号:11)、及びM13逆鎖プライマー:5'-
CAGGAAACAGCTATGAC- 3' (配列番
号:8)を用い、pUCeCGαXhoを鋳型としてP
CRを行った。PCRで増幅したDNA断片をEcoRI
とPstIで切断し、pUC119に挿入した。得られた
プラスミドをpUCeCGα56と命名した。pUCe
CGα56の塩基配列を解析し、所定の変異が導入され
たことを確認した。
【0029】3.発現ベクターの構築 ほ乳動物系発現ベクターpABWN(11kb)は、β
−アクチンプロモーターに基づく強力なプロモーター、
ウシパピローマウイルス(BPV)ゲノムの69%のサ
ブ領域、及び弱いプロモータに支配される変異型ネオマ
イシンホスフォトランスフェラーゼII遺伝子からなり、
ネオマイシンアナログG418への耐性を付与する(Mi
yazaki, J. I., et al., Gene, 79:269-277 (1989).; N
iwa, H.,et al., Gene, 108:193-200 (1991).)。pA
BWNのBPVフラグメントをHind III で欠失させ、
T4DNAポリメラーゼで平滑化し、NotIリンカーを
挿入してpAB2を作製した。pUCeCGαXhoか
らeCGα−サブユニットを含むXhoI/SalI断片を
切り出し、pAB2のXhoIサイトに導入してpAB2
eCGαを作製した。
【0030】一方、pABWNのネオマイシン耐性遺伝
子をSalIで欠失させ、NotIリンカーを挿入してpA
B3を作製した。pUCeCGβXhoからeCGβ−
サブユニットを含むXhoI/SalI断片をpAB3のX
hoIサイトに挿入してpAB3eCGβを作製した。p
AB2eCGαとpAB3eCGβをPvuIとNotIで
切断し、eCGα−サブユニットcDNAを含む断片
(4.2kb)とβ−サブユニットcDNAを含む断片
(10.2kb)を結合し、両サブユニットの同時発現
ベクターを作製し、pABeCGα/β(14.4k
b)と命名した。
【0031】pUCeCGα56から変異型eCGα−
サブユニットを含むXhoI/SalI断片を切り出し、p
AB2のXhoIサイトに導入してpAB2eCGα56
を作製した。pAB2eCGα56とpAB3eCGβ
をPvuIとNotIで切断し、変異型eCGα−サブユニ
ットcDNAを含む断片(4.2kb)とβ−サブユニ
ットcDNA(10.2kb)を含む断片を結合し、両
サブユニットの同時発現ベクターを作製し、pABeC
Gα56/β(14.4kb)と命名した。
【0032】4.組換えプラスミドの細胞への導入 チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO−K1細胞(Ja
panese Cancer Research Resources Bank, Tokyo)は、
ペニシリン(50U/ml)、ストレプトマイシン(5
0μg/ml)、グルタミン(2mM)を補い、10%
(v/v)FCSを含むHam'sF12培地(Gibco BRL, Gai
thersburg, MD, USA)で加湿5%CO2インキュベータ
中37℃で培養した。これらの細胞に、リポフェクトア
ミン法によりpABeCGα56/βを導入した。
【0033】6×105 個のCHO−K1細胞を含む4
ml培養液を60mmシャーレに採取し、50−80%
コンフルエントになるまでCO2 インキュベータ中37
℃で24時間培養した。感染の日に6μgのDNAと3
00μlのOpti−MEMI(Gibco BRL, USA)に懸
濁した40μgのリポフェクトアミン(Gibco BRL, US
A)を12×75mm滅菌試験管で混合し、室温で30
分反応させDNA/脂質複合体を形成させた。この間、
細胞を4ml無血清Opti−MEMI培地で1回洗浄
した。複合体を含む各試験管に1.8mlのOpti−
MEMI培地を加えて穏やかに混合し、洗浄した細胞に
重層してCO2 インキュベータ中で37℃で5時間培養
した。その後、2倍濃度のFCSを含む2.4ml生育
培地を、感染混合物を除去せずに加えた。感染24時間
後と72時間後に、培養液の1/30量を新鮮な生育培
地に移し継代培養した。
【0034】5.感染クローンの選択とスクリーニング (1)G418選択 800μg/mlのネオマイシンアナログG418(Gi
bco BRL, USA)を含む生育培地で感染後2週間培養する
ことにより、安定なCHO−K1細胞感染体を選択し
た。大きくて生育の良好なコロニーをクローニングシリ
ンダでピックアップし、800μg/mlのG418を
含む生育培地で4週間培養した。 (2)導入細胞のRT−PCR解析 得られたプラスミド導入細胞をRT−PCRで解析し
た。上澄みを除去して細胞を回収し、Chomczynski の抽
出法(Chomczynski, P., Bio Techniques, 15:532-536
(1993).)を用いてtotal RNAを調製した。
【0035】5μgのRNAを用い、逆転写酵素により
cDNAを合成し、下記のプライマーを用いてPCRで
増幅した(Min, K. S., et al., J. Reprod. Dev., 40:
301-305(1994).)。αサブユニットに対しては、順鎖プ
ライマー(eCGαXho):5'-GTACTCGAG
CCACCATGGATTACTACAGA- 3' (配
列番号:7)と逆鎖プライマー(eCGα):5'-CA
CTTGGTGAAACCTTTAAAT- 3' (配列
番号:4)を用いた。また、βサブユニットに対して
は、順鎖プライマー(eCGβXho):5'-TCGC
TCGAGCCACCATGGAGACGCTCCAG
- 3' (配列番号:9)と逆鎖プライマー(eCG
β):5'-GTAGTTCAAGAAGTCTTTAT
TGG- 3' (配列番号:6)を用いた。PCR産物を
アガロースゲル電気泳動で解析し、α及びβサブユニッ
ト遺伝子に対するプライマーによってDNA断片が増幅
され、所定の分子量を有することを確認した。
【0036】(3)導入細胞のノーザンブロット解析 次に、20μgのRNAを用いてノーザンブロット解析
を行った。ノーザンブロットのプローブとして、eCG
αとeCGβ遺伝子のEcoRI−PstI断片(それぞれ
0.38kbと0.52kb)を3,000Ci/mm
olの[ α-32P] dCTP(New England Nuclear, Bo
ston, MA, USA)でラベルした。20μgのRNAを、
50%ホルムアミドと6.5%ホルムアルデヒドを含む
電気泳動用緩衝液(20mMMOPS(pH7.0)、
5mM酢酸ナトリウム、1mMEDTA)に懸濁し、6
5℃で15分間加熱した。RNAをホルムアミドを含む
1%アガロースゲルで電気泳動し、ナイロン膜、Hybon
d-N(Amersham, UK)に転写した。
【0037】50%ホルムアミド、0.02%SDS、
0.1%ラウロイルサルコシンを含む5×SSC中で1
%のブロッキング試薬(Boehringer Mannheim Yamanouc
hi、Tokyo)を用いて42℃で4時間プレハイブリダイゼ
ーション後、[ α-32 P] dCTPでラベルした各プロ
ーブを用いて一晩42℃でハイブリダイズした。反応終
了後、0.1%SDSを含む1×SSCを用いて25℃
で5分間、0.1%SDSを含む0.2×SSCを用い
て60℃で20分間洗浄した(Sambrook, J.,et al., M
olecular Cloning. A Laboratory Manual, 2nd ed, Col
d Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor. (198
9).)。X線フィルムを−80℃で24時間膜に対して密
着させて感光させた。それぞれ所定の位置にハイブリバ
ンドが得られることから、α及びβ−サブユニット遺伝
子が発現していることを確認した。
【0038】実施例2.変異型eCGの生産と解析 1.変異型eCGの生産 安定な細胞(1×106 細胞)を75cm2 培養フラス
コ中でpreconfluencyまで生育させ、G418を含まず
ペニシリン(50U/ml)とストレプトマイシン(5
0μg/ml)を添加した5mlの無血清CHO−S−
SFMII培地(Gibco BRL, USA)で1回洗浄した。20
mlのCHO−S−SFM中37℃で48時間培養した
後、培養培地を集め、100,000×g、4℃で60
分間遠心分離し、細胞を除去した。得られた上澄みを、
膜濃縮装置 Amicon centriplus(Amicon, USA)を用い
て、5,000rpm、4℃、60分の条件で7倍に濃
縮し、ラジオイムノアッセイとバイオアッセイに供し
た。
【0039】2.変異型組換えeCGのラジオイムノア
ッセイによる定量 得られたeCGをポリクローナル抗体A540/R1H
(UCB-Bioproducts, SA, USA)を用いたラジオイムノア
ッセイ(RIA)で定量した。200μlの0.02M
リン酸緩衝液(0.017MNa2HPO4 ・12H
2 O,0.003MKH2 PO4 、0.9%(w/v)Na
Cl、0.5%(w/v)BSA、0.2%(w/v)Na
3)、100μlの標準eCG(6.25、12.5、
25,50,100,200,400ng)又は所定量
のサンプル、100μlのウサギ抗eCG抗血清(7μ
g/ml)とCloramin T法(Katayama, Y., et al.,
J. Biochem., 108:37-41 (1990).)により125Iでラベル
した100μlのeCG(20,000cpm/100
μl)を各試験管に加えた。
【0040】4℃で一晩インキュベートした後、500
μlの抗ウサギ沈降抗体を各試験管に加え、30分間イ
ンキュベートし、2mlのリン酸緩衝液を加え、3,0
00回転で15分間遠心し、上澄みを吸引除去し、放射
活性をカウントした。得られた結果を、妊馬血清から精
製した天然型eCG及び野生型組換えeCGと比較した
ところ、変異型eCGは用いた抗体に対して天然型eC
Gと全く同様の結合性を示した。また、各アッセイのプ
ロットから天然型eCG換算で変異型eCGの濃度を定
量し、表1に示した。
【0041】3.組換えeCGの糖鎖結合の解析 得られたeCGの糖鎖の結合の有無を解析した。0.5
%SDS、50mM2−ME、50mM Tris ・ HCl (pH7.
0)の組成のバッファー中に2mg/mlとなるようにe
CGを溶解し、5分間煮沸した。この溶液を10μlと
り、5μlの7.5%界面活性剤ノニデットP40及び
0.3単位のN−グリコシダーゼ(Genzyme 、USA)、1
0ミリ単位のO−グリコシダーゼ(Genzyme 、USA)、1
0ミリ単位のノイラミニダーゼ(Boehringer Mannheim)
と蒸留水を加えて30μlとした。37℃で18時間イ
ンキュベートした後、SDS−PAGE用サンプルバッ
ファー(×4)(250mM Tris ・ HCl(pH6.8)、40%
(W/V)グリセロール、20%2−ME、10%SDS、
0.005%BPB)を加え、反応を停止させた。
【0042】糖鎖分解処理サンプルを未処理サンプルと
比較して、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
(PAGE)で分離し、抗αサブユニット抗体及び抗β
サブユニット抗体を用いたウェスタンブロッティングを
行った。未処理の組換え型eCGの各サブユニットは、
いずれも、アミノ酸配列より予想される分子量より高分
子側に泳動し、糖鎖分解酵素で処理することにより分子
量が低下し、泳動位置はアミノ酸配列より予想される位
置とほぼ一致した。これより、得られた組換え型eCG
のα及びβサブユニットに糖鎖が結合していることを確
認した。
【0043】実施例3.変異型eCGの生物活性 1.Leydig細胞を用いたLH様活性の定量 組換え型eCGのLH様活性を、ラットLeydig細
胞を用いた in vitro培養系(Dufau, M. L., et al.,
J. Clin. Endocrinol. Metab., 39:610-613 (1974).)で
定量した。4匹の60日齢SpragueDawley (SD)ラ
ットからこう丸を摘出し、注意深くdecapsulate した。
細胞を0.25mg/mlのコラゲナーゼと1mg/m
lのBSAを含む199培地(Gibco BRL, USA)に懸濁
し、34℃で30分間150サイクル/分で振とうし
た。
【0044】tubuleの分散が完了するや否や、試験管を
室温で5分間垂直におき、tubuleフラクションを沈降さ
せた。上澄みをナイロンガーゼで濾過し、600×gで
14分間遠心し、沈降したinterstitial cell を199
培地に再懸濁した。24ウェルプレートの各ウェルに1
×106 個の細胞を含む0.5mlの培地と0.1ml
の天然eCG(2〜128ng)又はRIAで定量した
組換えサンプル(2〜128ng)を加えた。34℃で
4時間振とうしながらインキュベートした後、2,50
0rpmで10分間遠心し、テストステロンを含む培養
上清を得た。
【0045】培地中に分泌したテストステロンの濃度
は、塩田らの方法(Shiota, K., et al., Endocrine.
J., 38:541-549 (1991).)に従い、RIA法で測定し
た。培養上清を2回ジエチルエーテルで抽出し、1ml
のアセトンで希釈し、混合物を二つに分割した。それぞ
れを試験管に入れ、500μlのアッセイ用緩衝液
(0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)、0.9%(w/
v)NaCl、0.05%(w/v)NaN3 、0.1%(w/
v)ゼラチン)、1,500倍希釈した100μlの抗テ
ストステロン抗血清と100μlの 3H−テストステロ
ン(10,000cpm)を加えた。4℃で一晩インキ
ュベート後、200μlの活性炭溶液(0.625%
(w/v)Norita A、アッセイ用緩衝液に溶解した0.0
625%(w/v)デキストランT−70)を加え、4℃で
20分間インキュベートした。
【0046】3,000rpm、4℃で20分間遠心し
た後、上澄みをバイアルにデカンテーションで移し、そ
れに3mlのシンチレータ(トルエンに溶解した4.2
%(v/v)のLiquifluor TM)を加え、放射活性を液体
シンチレータでカウントした。組換えeCGの相対刺激
活性は、テストステロンの分泌を刺激する half-maxima
l の濃度(ED50)から求めた。得られた結果を、野
生型eCGと比較した。変異型eCGα56/βは、野
生型eCGと異なり、テストステロンの放出をほとんど
刺激しなかった。変異型eCGの相対活性を算出し、表
1に示した。
【0047】2.Granulosa 細胞を用いたFSH様活性
のバイオアッセイ in vitro バイオアッセイは、Dahlらの方法(Dahl, K.
D., et al., Methodsin Enzymology, 168:414-422 (198
9).)に従い、21〜22日齢ラット由来のGranulosa 細
胞を用いて行った。FSHで誘導される細胞中のアロマ
ターゼ活性によって19−ヒドロキシアンドロステンジオ
ンから生成するエストラジオールの量を測定した。約1
0mgのDESを含むsilastic capsules (10mm)をS
Dラットに移植し、Granulosa 細胞の増殖を刺激した。
4日後、動物を頚部脱臼で犠牲にし、卵巣を切開し、de
capsulate した。 卵胞を27ゲージ注射針で穿刺し、
granulosa 細胞を注意深くMcCoy's5a培地(Gibc
o BRL, USA)に絞りだした。細胞を800rpmで5分
間遠心し、上澄みを除去し、細胞を新鮮な培地で洗浄
し、再度遠心した。
【0048】細胞を同じ培地に再懸濁し、最終濃度を5
〜8×104 生細胞/60μlに調整した。400μl
のGABアッセイ培地(100U/mlペニシリン、1
00μg/mlストレプトマイシン、2mML−グルタ
ミン、1μMアンドロステンジオン、10-7MDES、
30ng/mlhCG、1μg/μlインシュリン、
0.125mMMix in McCoy's5a培地)を2
4ウェルプレートの各ウェルに加え、40μlのサンプ
ル(2〜64ngの天然eCG又はRIAで定量した組
換え型サンプル)と60μlの細胞懸濁液を加えた。細
胞は湿潤95%エアーと5%CO2 雰囲気下で3日間培
養した。培養終了後、1,000rpmで3分間遠心
し、エストラジオールを含む培養上清を得た。
【0049】培地中に放出されたエストラジオール濃度
はテストステロンと同様RIA法で測定した。すなわ
ち、培地を2回ジエチルエーテルで抽出し、1mlのア
セトンで希釈し、混合物を二つに分割した。それぞれを
試験管に入れ、500μlのアッセイ用緩衝液(0.1
Mリン酸緩衝液(pH7.0)、0.9%(w/v)NaC
l、0.05%(w/v)NaN3 、0.1%(w/v)ゼラチ
ン)、4,500倍希釈した100μlの抗エストラジ
オール抗血清と100μlの 3H−エストラジオール
(10,000cpm)を加えた。4℃で一晩インキュ
ベート後、200μlの活性炭溶液(0.625%(w/
v)Norita A、アッセイ用緩衝液に溶解した0.062
5%(w/v)デキストランT−70)を加え、4℃で20
分間インキュベートした。
【0050】3,000rpm、4℃で20分間遠心し
た後、上澄みをバイアルにデカンテーションで移し、そ
れに3mlのシンチレータ(トルエンに溶解した4.2
%(v/v)Liquifluor TM)を加え、放射活性を液体シ
ンチレータでカウントした。組換えeCGの相対刺激活
性は、エストラジオールの分泌を刺激する half-maxima
l の濃度(ED50)から求めた。得られた結果を、野
生型eCGと比較した。変異型eCGに関しても、培地
に添加したeCG濃度に依存してエストラジオール濃度
が増加した。変異型eCGの比活性を算出し、表1に示
した。
【0051】
【表1】
【0052】
【発明の効果】eCGを構成するα及びβ−サブユニッ
トのうち、α−サブユニットの56番目のAsn残基を
他のアミノ酸に置換して糖鎖の結合を阻害することによ
り、LH活性を実質的に除去した新規な性腺刺激ホルモ
ンを作製した。これにより、卵胞膿腫の原因と考えられ
るLH活性を実質的に含まない医薬品を提供することが
可能となり、ヒト及び動物を対象とするより安全で適用
範囲の広い排卵誘発剤・卵巣疾患治療剤を提供すること
が可能となった。
【0053】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:120 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド ハイポセティカル配列:No 起源: ・生物名:ウマ(Equidea) ・組織の種類:胎盤 直接の起源: ・ライブラリー名:cDNA ・クローン名:CHO−K1(pABeCGα56/
β) 配列の特徴: ・特徴を表す記号:sig peptide ・存在位置:-24..-1 ・特徴を決定した方法:E 配列の特徴: ・特徴を表す記号:Xaa ・存在位置:56 ・特徴を決定した方法:E ・他の情報:56番目のXaa がAsn のときは58番目のXaa
はThr 及びSer 以外のアミノ酸であり、56番目のXaa が
Asn 以外のアミノ酸のときは58番目のXaa はThr 又はSe
r 。 配列の特徴: ・特徴を表す記号:Xaa ・存在位置:58 ・特徴を決定した方法:E ・他の情報:56番目のXaa がAsn のときは58番目のXaa
はThr 及びSer 以外のアミノ酸であり、56番目のXaa が
Asn 以外のアミノ酸のときは58番目のXaa はThr 又はSe
r 。 Met Asp Tyr Tyr Arg Lys His Ala Ala Val Ile Leu Ala Thr Leu Ser -24 -20 -15 -10 Val Phe Leu His Ile Leu His Ser Phe Pro Asp Gly Glu Phe Thr Thr -5 1 5 Gln Asp Cys Pro Glu Cys Lys Leu Arg Glu Asn Lys Tyr Phe Phe Lys 10 15 20 Leu Gly Val Pro Ile Tyr Gln Cys Lys Gly Cys Cys Phe Ser Arg Ala 25 30 35 40 Tyr Pro Thr Pro Ala Arg Ser Arg Lys Thr Met Leu Val Pro Lys Xaa 45 50 55 Ile Xaa Ser Glu Ser Thr Cys Cys Val Ala Lys Ala Phe Ile Arg Val 60 65 70 Thr Val Met Gly Asn Ile Lys Leu Glu Asn His Thr Gln Cys Tyr Cys 75 80 85 Ser Thr Cys Tyr His His Lys Ile 90 95
【0054】配列番号:2 配列の長さ:169 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド ハイポセティカル配列:No 起源: ・生物名:ウマ(Equidea) ・組織の種類:胎盤 直接の起源: ・ライブラリー名:cDNA ・クローン名:CHO−K1(pABeCGα56/
β) 配列の特徴: ・特徴を表す記号:sig peptide ・存在位置:-20..-1 ・特徴を決定した方法:E Met Glu Thr Leu Gln Gly Leu Leu Leu Trp Met Leu Leu Ser Val Gly -20 -15 -10 -5 Gly Val Trp Ala Ser Arg Gly Pro Leu Arg Pro Leu Cys Arg Pro Ile 1 5 10 Asn Ala Thr Leu Ala Ala Glu Lys Glu Ala Cys Pro Ile Cys Ile Thr 15 20 25 Phe Thr Thr Ser Ile Cys Ala Gly Tyr Cys Pro Ser Met Val Arg Val 30 35 40 Met Pro Ala Ala Leu Pro Ala Ile Pro Gln Pro Val Cys Thr Tyr Arg 45 50 55 60 Glu Leu Arg Phe Ala Ser Ile Arg Leu Pro Gly Cys Pro Pro Gly Val 65 70 75 Asp Pro Met Val Ser Phe Pro Val Ala Leu Ser Cys His Cys Gly Pro 80 85 90 Cys Gln Ile Lys Thr Thr Asp Cys Gly Val Phe Arg Asp Gln Pro Leu 95 100 105 Ala Cys Ala Pro Gln Ala Ser Ser Ser Ser Lys Asp Pro Pro Ser Gln 110 115 120 Pro Leu Thr Ser Thr Ser Thr Pro Thr Pro Gly Ala Ser Arg Arg Ser 125 130 135 140 Ser His Pro Leu Pro Ile Lys Thr Ser 145 149
【0055】配列番号:3 配列の長さ:21 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 AGGAGMGCYA TGGATTRCTA C
【0056】配列番号:4 配列の長さ:21 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 CACTTGGTGA AACCTTTAAA T
【0057】配列番号:5 配列の長さ:24 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 GCACCGAGGA TGGAGACGCT CCAG
【0058】配列番号:6 配列の長さ:23 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 GTAGTTCAAG AAGTCTTTAT TGG
【0059】配列番号:7 配列の長さ:29 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 GTACTCGAGC CACCATGGAT TACTACAGA
【0060】配列番号:8 配列の長さ:17 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 CAGGAAACAG CTATGAC
【0061】配列番号:9 配列の長さ:29 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 TCGCTCGAGC CACCATGGAG ACGCTCCAG
【0062】配列番号:10 配列の長さ:27 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 ATGTTGGTCC CAAAGCAGAT CACCTCA
【0063】配列番号:11 配列の長さ:17 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 GTTTTCCCAG TCACGAC
【図面の簡単な説明】
【図1】α及びβサブユニット遺伝子のサブクローニン
グによるpUCeCGα1及びpUCeCGβ1の構築
を示す図である。
【図2】各サブユニット遺伝子の5’末端へのXhoI
サイトの導入によるpUCeCGαXho及びpUCe
CGβXhoの構築を示す図である。
【図3】αサブユニットの部位特異的変異とpUCeC
Gα56の作製を示す図である。
【図4】pABWNからのpAB2eCGαとpAB2
eCGα56の作製を示す図である。
【図5】pAB3eCGβの構築を示す図である。
【図6】発現転移ベクターpABeCGα/βの構築を
示す図である。
【図7】変異発現ベクターpABeCGα56/βの構
築を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 //(C12P 21/02 C12R 1:91)

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 eCGのαサブユニット及びβサブユニ
    ットから構成され、αサブユニットにアミノ酸置換変異
    を導入して56番目のアミノ酸への糖鎖の結合を阻害す
    ることにより、LH活性を実質的に除去した新規な性腺
    刺激ホルモン。
  2. 【請求項2】 αサブユニットが配列表の配列番号1記
    載のアミノ酸番号1〜96のアミノ酸配列を有すること
    を特徴とする請求項1記載の新規な性腺刺激ホルモン。
    但し、配列中56番目のXaaがAsnの場合は、58
    番目のXaaはThr及びSer以外のアミノ酸であ
    り、56番目のXaaがAsn以外のアミノ酸の場合
    は、58番目のXaaはThr又はSerである。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の変異型αサブユニットの
    56番目のXaaがGlnで58番目のXaaがThr
    であることを特徴とする請求項1記載の新規な性腺刺激
    ホルモン。
  4. 【請求項4】 βサブユニットが配列表の配列番号2記
    載のアミノ酸番号1〜149のアミノ酸配列を有するこ
    とを特徴とする請求項1記載の新規な性腺刺激ホルモ
    ン。
  5. 【請求項5】 請求項2又は3記載のアミノ酸配列を有
    する変異型αサブユニットをコードするDNA。
  6. 【請求項6】 αサブユニット及びβサブユニットのヘ
    テロダイマーからなる請求項1記載の変異型性腺刺激ホ
    ルモンの製造方法であって、αサブユニットが請求項2
    又は3記載のアミノ酸配列を有し、上記各サブユニット
    をコードするDNAを、同一又は別々の発現ベクターに
    挿入し、該同一又は別々のベクターで宿主の真核細胞を
    形質転換し、該組換え細胞を該性腺刺激ホルモンが発現
    する条件で培養し、発現したホルモンを採取することを
    特徴とする、56番目以外の糖鎖結合部位に糖鎖が結合
    し、かつ生物学的活性を有する新規な変異型性腺刺激ホ
    ルモンの製造方法。
  7. 【請求項7】 αサブユニットをコードするDNAが配
    列表の配列番号1記載の分泌に必要なリーダー配列を含
    むアミノ酸番号−24〜96のアミノ酸配列をコードす
    るDNAであることを特徴とする請求項6記載の新規な
    変異型性腺刺激ホルモンの製造方法。
  8. 【請求項8】 βサブユニットをコードするDNAが配
    列表の配列番号2記載の分泌に必要なリーダー配列を含
    むアミノ酸番号−20〜149のアミノ酸配列をコード
    するDNAであることを特徴とする請求項6記載の新規
    な変異型性腺刺激ホルモンの製造方法。
  9. 【請求項9】 発現ベクターがαサブユニットをコード
    する請求項7記載のDNAとβサブユニットをコードす
    る請求項8記載のDNAを同時に組み込んでなる自律複
    製可能な発現ベクターであることを特徴とする請求項6
    記載の新規な変異型性腺刺激ホルモンの製造方法。
  10. 【請求項10】 宿主がほ乳動物由来の培養可能な細胞
    であることを特徴とする請求項6記載の新規な変異型性
    腺刺激ホルモンの製造方法。
  11. 【請求項11】 前記ほ乳動物由来の培養可能な細胞が
    チャイニーズハムスター卵巣細胞である請求項6記載の
    新規な変異型性腺刺激ホルモンの製造方法。
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WO2001044475A1 (en) * 1999-12-17 2001-06-21 Takeda Chemical Industries, Ltd. Novel polypeptide and dna thereof
WO2020172728A1 (pt) * 2019-02-28 2020-09-03 Ouro Fino Saúde Animal Participações S.A. Gonadotrofina coriônica equina recombinante (recg) biologicamente ativa e processo para obtenção da mesma, composição veterinária e uso

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