JPH1036199A - 化合物基板および化合物半導体ならびにそれらの製造方法 - Google Patents

化合物基板および化合物半導体ならびにそれらの製造方法

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JPH1036199A
JPH1036199A JP21327396A JP21327396A JPH1036199A JP H1036199 A JPH1036199 A JP H1036199A JP 21327396 A JP21327396 A JP 21327396A JP 21327396 A JP21327396 A JP 21327396A JP H1036199 A JPH1036199 A JP H1036199A
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substrate
group
compound semiconductor
substance
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JP21327396A
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Atsushi Yoshida
篤至 吉田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 II-VI族化合物基板については、加熱による
昇華を利用した表層部表面の化合物膜の除去は困難であ
り、そのため、基板表面の清浄化は十分に行えなかっ
た。その結果、II-VI族化合物基板の表面上に形成した
化合物半導体結晶は良好な特性を示さなかった。 【解決手段】 II-VI族化合物基板の表層部と該表層部
表面に形成されている化合物膜との間に、400℃におけ
る蒸気圧が1.3×10-4Pa以上である物質を含む層を形成
する。その後、400℃以下の適温で該基板を加熱し、該
層を昇華させ、該化合物膜を剥離することにより、該基
板の表面を清浄化する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体レーザー、
発光ダイオード等の化合物半導体素子およびこれらに用
いる化合物半導体、ならびにII-VI族化合物からなる基
板の清浄処理方法さらには化合物半導体の結晶形成方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体材料を結晶成長させる場合、その
前処理としての基板表面の清浄化が重要になる。その理
由は、基板表面の状態が結晶成長に大きく影響するから
であり、基板表面が清浄化されてはじめて、良好な特性
を示すエピタキシー層の形成が可能となる。但し、ここ
でいう良好な特性とは、伝導型の制御が容易でかつ結晶
格子中の結晶欠陥が非常に少ないことを意味する。半導
体レーザーを例にとって具体的に述べれば、各層をp型
あるいはn型にするためのドーピング量の制御が容易
で、活性層の発光効率が高く、しきい値電流密度すなわ
ちレーザー発振のための駆動電流密度が小さいものであ
る。
【0003】ところで、従来の技術における基板表面の
清浄化については、例えば、III-V族化合物半導体材料
のひとつであるGaAsを基板材料として用いた場合につい
て、次のような報告がAppl. Phys. Lett. vol. 59(16),
14 October 1991にある。GaAs基板の表面にはGaAsの
自然酸化膜であるGa2O3、As2O3が存在するが、これらに
は580℃で昇華するという特徴があり、この特徴を利用
して、該自然酸化膜の除去すなわち基板表面の清浄化が
行える。つまり、GaAs基板を580℃に加熱し、該自然酸
化膜であるGa2O3、As2O3を昇華させればよい。
【0004】このように、III-V族化合物からなる基板
については、その清浄化が比較的容易に行える。そし
て、清浄化された基板上に、分子線エピタキシー法など
の結晶成長法を用いて半導体結晶を成長させることによ
り、良好な特性の化合物半導体を形成することができ
る。これらの化合物半導体からつくられる半導体レーザ
ー、発光ダイオード等の化合物半導体素子は、実用化デ
バイスとして十分な成功を収めている。
【0005】それに対して、II-VI族化合物からなる基
板を用いる場合については、その清浄化がIII-V族化合
物の場合のように容易ではない。そのため、II-VI族化
合物からなる基板を用いた場合、十分に良好な特性を示
すような化合物半導体結晶を成長させることが困難であ
る。その理由を以下に説明する。
【0006】II-VI族化合物からなる基板表面には、自
然酸化膜としてZn、Mg等の第II族原子と酸素O2との化合
物であるZnOやMgO等が存在する。これらの酸化物は、図
4に示すように蒸気圧が大変低い。そのため、昇華が起
こりにくく、GaAs基板等のIII-V族化合物基板のように
は、結晶成長直前の基板表面処理が容易に行えない。
【0007】また、II-VI族化合物基板を加熱すると、
基板表面から第II族原子と第VI族原子が解離し、基板表
面が荒れるという問題もある。
【0008】したがって、従来、II-VI族化合物基板に
ついては、特公平3-52438に報告されているように、第I
I族分子線と第VI族分子線を基板表面に照射し、基板表
面からの該第II族原子および第VI族原子の解離を抑制し
ながら、基板表面の清浄化を行っていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、II-VI
族化合物基板についての結晶成長直前の基板表面の清浄
化は、上述した方法、すなわち、第II族原子と第VI族原
子の基板からの解離を抑制するために、第II族分子線と
第VI族分子線を基板表面に照射するという方法だけで
は、十分な解決にはなっていない。その理由を以下に説
明する。
【0010】第1には、加熱処理を行ったとしても、400
℃以下という温度範囲では、基板表面に存在する自然酸
化膜が全て昇華するわけではないため、自然酸化膜を完
全に除去することができない。したがって、加熱処理後
においても、自然酸化膜は残存してしまう。それは、上
述した通り、II-VI族化合物基板表面の自然酸化膜であ
るMgO、ZnO等の蒸気圧が低いことに起因している。第2
には、該酸化膜を十分に昇華させようとして、400℃を
越える温度にまで該基板を加熱すると、VI族原子の基板
からの解離が激しくなり、基板表面が荒れてしまう。そ
のため、その後の結晶成長が上手く進まなくなってしま
う。
【0011】このような理由から、これまで、II-VI族
化合物基板についての加熱による昇華を利用した自然酸
化物の完全な除去は困難であり、基板表面の清浄化は十
分に行えなかった。そのため、II-VI族化合物基板の表
面上に成長させた化合物半導体結晶が良好な特性を示さ
ないという課題があった。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述の課題を
解決するために考案されたものであり、400℃においてI
I-VI族化合物基板の表面清浄化を行い、続いて、清浄化
されたII-VI族化合物基板上に化合物半導体の結晶を成
長させるものである。そのために、本発明は、下記の方
法によって遂行される。
【0013】II-VI族化合物基板の表層部と該表層部表
面に形成された化合物膜との間に、400℃における蒸気
圧が1.3×10-4Pa以上である物質を含む層が存在するこ
とを特徴とするII-VI族化合物基板である。
【0014】前記表層部表面に形成された化合物膜が自
然酸化膜であることを特徴とするII-VI族化合物基板で
ある。
【0015】前記II-VI族化合物基板がII-VI族化合物半
導体基板であることを特徴とするII-VI族化合物基板で
ある。
【0016】前記400℃における蒸気圧が1.3×10-4Pa以
上である物質が第II族原子と第VII族原子の化合物であ
ることを特徴とするII-VI族化合物基板である。
【0017】前記第II族原子と第VII族原子の化合物がZ
nCl2であることを特徴とするII-VI族化合物基板であ
る。
【0018】前記400℃における蒸気圧が1.3×10-4Pa以
上である物質を、固体中へ原子を混入することにより形
成することを特徴とするII-VI族化合物基板の製造方法
である。
【0019】前記固体中へ原子を混入する方法がイオン
・インプランテーション法であることを特徴とするII-V
I族化合物基板の製造方法である。
【0020】前記固体中へ原子を混入する方法が拡散法
であることを特徴とするII-VI族化合物基板の製造方法
である。
【0021】前記の400℃における蒸気圧が1.3×10-4Pa
以上である物質を含む層を有するII-VI族化合物基板
を、400℃以下の適温まで加熱し、該物質を昇華させる
ことで、該物質からなる層の上層にある前記表層部表面
に形成された化合物膜を剥離処理することを特徴とする
上層膜の剥離処理方法である。
【0022】前記の剥離処理方法を用いて、II-VI族化
合物基板の前記表層部表面に形成された化合物膜を剥離
することにより、該II-VI族化合物基板表面を清浄化す
ることを特徴するII-VI族化合物基板の清浄処理方法で
ある。
【0023】前記の清浄処理方法を用いて、清浄化され
た基板表面に、化合物半導体を結晶成長法によって形成
することを特徴とする化合物半導体の結晶形成方法であ
る。
【0024】前記化合物半導体がII-VI族化合物半導体
であることを特徴とする化合物半導体の結晶形成方法で
ある。
【0025】前記II-VI族化合物半導体がZnSeであるこ
とを特徴とする化合物半導体の結晶形成方法である。
【0026】前記化合物半導体がIII-V族化合物半導体
であることを特徴とする化合物半導体の結晶形成方法で
ある。
【0027】前記III-V族化合物半導体がGaAsであるこ
とを特徴とする化合物半導体の結晶形成方法である。
【0028】前記結晶成長法が分子線エピタキシー法で
あることを特徴とする化合物半導体の結晶形成方法であ
る。
【0029】前記の結晶形成方法によって形成したこと
を特徴とする化合物半導体である。
【0030】前記の化合物半導体からなることを特徴と
する化合物半導体素子である。
【0031】前記化合物半導体素子が半導体レーザーで
あることを特徴する化合物半導体素子である。
【0032】
【発明の実施の形態】ZnO等の自然酸化膜に代表される
基板の表層部表面に形成された化合物膜を該表層部表面
から除去し、清浄化された基板上に結晶成長法を用いて
形成した化合物半導体を得るためには、以下に示すよう
な実施の形態をとればよい。
【0033】まず、該化合物膜が形成されている表層部
表面と基板の表層部の間に、比較的低温で昇華するよう
な蒸気圧の高い物質を形成する。それは、固体中へ原子
を混入することによって実現でき、具体的には、イオン
・プランテーション法や拡散法等を用いればよい。ここ
で、イオン・プランテーション法とは、放電によりイオ
ン化した原子に電場をかけて加速し、固体中に混入する
方法である。また、拡散法とは、気相または固相に固体
を接触させ、該気相または固相に含まれる原子を拡散に
よって該固体中に混入する方法である。
【0034】次に、該蒸気圧の高い物質が昇華する温度
まで基板を加熱する。これによって、該蒸気圧の高い物
質が昇華し、基板から離脱する。同時に、該蒸気圧の高
い物質の上部に形成されている化合物膜を剥離し、除去
することができる。それは次にあげる2つの効果によ
る。
【0035】ひとつは、蒸気圧の高い物質を形成してい
る分子による化合物膜を形成している分子の弾き出し効
果である。つまり、該蒸気圧の高い物質を形成している
分子が基板から離脱する際に、該蒸気圧の高い物質が該
化合物膜を形成している分子に衝突し、該分子が基板の
表層部表面から弾き出される。これにより、結果とし
て、該化合物膜が剥離される。また、もうひとつは、剥
離促進効果である。つまり、該化合物膜と該基板との間
に形成された該蒸気圧の高い物質が除去されることによ
り、結果として、該化合物膜と該基板との結合部分が減
少し、該酸化膜と該基板との結合力が弱くなる。これに
よって、該化合物膜を形成している分子の基板からの離
脱が促進されるため、結果として、該化合物膜自体の剥
離が促進される。
【0036】なお、本発明においては、該蒸気圧の高い
物質の蒸気圧値としては、400℃において1.3×10-4Pa
(=10-6Torr)以上であることが必要である。400℃にお
ける蒸気圧値が1.3×10-4Paよりも小さい場合には、基
板の表層部表面から該化合物膜を除去する効果が顕著に
は現れない。
【0037】以上の基板の清浄化工程に続いて、該工程
によって清浄化された基板表面に、従来より用いられて
いる分子線エピタキシー法やMOCVD法などの結晶成長法
を用いて、化合物半導体結晶を形成する。ここで、分子
線エピタキシー法とは、いわゆるMBE(Molecular Beam
Epitaxy)法のことであり、超高真空中において、狭い
出口を有する坩堝中に充填した固体を加熱・蒸発させ、
一定方向に噴出する該固体の分子線を基板に照射するこ
とにより、結晶を成長させる方法である。また、MOCVD
法とは、Metal Organic Chemical Vapor Depositionす
なわち有機金属気相成長法のことであり、アルキル基と
結合した金属を気相中で熱分解し、アルキル基を分離し
た金属原子を基板上に堆積させることにより結晶を成長
させる方法である。
【0038】すなわち、本発明においては、該蒸気圧の
高い物質を用いた剥離処理による基板の清浄化工程と該
化合物半導体結晶の形成工程を連続して行うことによ
り、該化合物半導体結晶からなる化合物半導体を製造す
る。
【0039】
【実施例】本実施例では、II-VI族化合物基板の表層部
表面に形成された化合物膜が自然酸化膜であり、400℃
における蒸気圧が1.3×10-4Pa以上である物質をイオン
・インプランテーション法を適用して形成した場合を示
す。
【0040】なお、図2は本発明に係る結晶形成方法の
一実施例で用いられる分子線エピタキシー装置の模式図
であり、同図において、1はZnSe基板を、2はヒーター
を、31、32はシャッターを、41はSe分子線源を、42はZn
分子線源を、5は真空チャンバーをそれぞれ表してい
る。
【0041】まず、II-VI族化合物基板の材料としてZnS
eを用いる。この場合、表層部表面に生じる自然酸化膜
はZnOである。なお、II-VI族化合物基板としてMgSeを用
いた場合にはMgOが、CdSeを用いた場合にはCdOが自然酸
化膜として、表層部表面にそれぞれ形成される。
【0042】ここで、ZnOとMgOの蒸気圧について図4を
用いて説明する。図4はZnOとMgOとに関する温度-蒸気圧
曲線である。同図においては、横軸に温度[℃]を、縦軸
に蒸気圧[Pa]をとっている。
【0043】図4によれば、ZnOの蒸気圧は、700℃とい
う高温においてでさえ、1.3×10-5Pa(=10-7Torr)程度
である。さらに、400℃においては、該ZnOの蒸気圧は微
小な値であり、データを取ることが困難になる。すなわ
ち、400℃においてはZnOはほとんど昇華しない。したが
って、ZnOからなる自然酸化膜を除去するために、基板
を400℃に加熱したとしても、そのままの状態では該自
然酸化膜を除去することは、ほとんどできない。なお、
MgOについては、蒸気圧がZnOよりもさらに低いので、よ
り昇華しにくいことが同図よりわかる。
【0044】そこで、表層部表面のZnOからなる自然酸
化膜を400℃において剥離処理するために、本発明によ
る400℃における蒸気圧が1.3×10-4Pa以上である物質を
含む層が必要になる。該400℃における蒸気圧が1.3×10
-4Pa以上である物質を含む層は、該ZnOからなる自然酸
化膜11の下部層に、塩素Cl2を混入することに得られ
る。
【0045】本実施例の場合、イオン・プランテーショ
ン法を用いてCl2を混入することにより、該400℃におけ
る蒸気圧が1.3×10-4Pa以上である物質としてZnCl2を形
成した。ここで、ZnCl2を含む層12の形成の手順を図2を
用いて説明する。
【0046】イオン化した塩素原子に電場をかけて加速
し、ZnSe基板1の表面下近傍に打ち込む。その結果、ZnS
e基板中の亜鉛Znと塩素原子Clが結合し、ZnCl2を含む層
12が形成される。このときの塩素ガスのドーズ量は、10
19atoms/cm2〜1021atoms/cm2がよい。但し、ドーズ量と
は単位面積あたりに混入された原子数のことである。
【0047】ここで、ドーズ量として上記の範囲が適当
である理由を説明する。まず、ドーズ量が上記の最小値
1019atoms/cm2よりも少ない場合には、生成されるZnCl2
が少なくなるため、ZnCl2が昇華する際にMgO、ZnOなど
の酸化物を除去する効果が小さくなるからである。ま
た、逆に、ドーズ量が上記の最大値1021atoms/cm2より
も多い場合には、ドーズに要する時間が長くなり、コス
トがかってしまうからである。
【0048】なお、混入に用いる元素をClとすると、II
-VI族化合物基板としてMgSeを用いた場合にはMgCl2が、
CdSeを用いた場合にはCdCl2が同様に形成される。ま
た、混入に用いる元素は、Clの他にF、Br等の第VII族原
子でよい。
【0049】以上、基板の表層部に形成された膜あるい
は層の関係を模式的に表したものが図1である。図1にお
いて、11は表層部表面に形成されたZnOからなる自然酸
化膜、12は該自然酸化膜と該基板の表層部との間に形成
されたZnCl2を含む層、13は該ZnOからなる自然酸化膜11
および該ZnCl2を含む層12を除いた結晶成長に用いられ
るZnSe基板すなわち清浄化されたZnSe基板である。
【0050】続いて、形成した該ZnCl2を含む層12を昇
華させる。これによって、該ZnCl2を含む層12の上部のZ
nOからなる自然酸化膜11が同時に剥離・除去される。
【0051】そのためには、ZnSe基板1をヒーター2を用
いて加熱する。このときの昇温速度は10℃/min程度がよ
い。該昇温速度を保ち、400℃まで加熱する。次に、ZnS
e基板1の温度が400℃に到達した後、3分間、基板の温度
を400℃に保持しながら加熱を続ける。この工程によ
り、該ZnCl2を含む層12の上部のZnOからなる自然酸化膜
11が除去される。
【0052】該自然酸化膜11の除去を確認するために、
高速反射電子線を3分間程ZnSe基板1へ照射し、その回折
像の変化を観察した。ZnSe基板1の温度が400℃に到達し
た時点での回折像が図5であり、その3分後の回折像が図
6である。図5からわかるように、ZnSe基板1の温度が400
℃に到達した時点での回折像はスポッティである。しか
しながら、図6からわかるように、その3分後の回折像は
ストリーキィに変化している。
【0053】ここで、スポッテイとストリーキィについ
て説明する。まず、スポッテイとは、回折像が点状であ
ることをいい、基板表面に凹凸があるため平坦ではな
く、該酸化物が基板表面から十分に除去されていない状
態に対応している。それに対して、ストリーキィとは、
回折像が線状であることをいい、基板表面に凹凸がなく
平坦であり、該酸化物が基板表面から十分に除去された
状態に対応している。
【0054】したがって、図5は基板の表層部表面に形
成されたZnOからなる自然酸化膜を除去する前の反射高
速電子線回折像になっており、図6は該自然酸化膜を除
去した後の反射高速電子線回折像になっていることがわ
かる。
【0055】さらに、該ZnOからなる自然酸化膜の除去
後、清浄化されたZn基板13の表面に分子線エピタキシー
法によりZnSe半導体結晶を形成した。その際には、基板
温度を275℃に下げ、シャッター31、32を開け、Se分子
線源41、Zn分子線源42からそれぞれZn分子線、Se分子線
をZnSe基板1に照射し、ZnSe基板1上にZnSeの結晶成長を
行った。
【0056】上述の方法によって形成したZnSe半導体結
晶は、図7に示すような電気的特性を示した。ここで、
図7は、本発明の結晶形成方法によって作製したZnSe半
導体結晶の伝導型、キャリア濃度およびホール移動度を
表す図表である。
【0057】また、該ZnSe半導体結晶からなる薄膜の光
学的特性を示しているのが図3である。ここで、図3は、
本発明の結晶形成方法によって作製したZnSe半導体薄膜
の15Kにおけるフォト・ルミネセンスであり、以下、同
図について説明する。
【0058】フォト・ルミネセンスとは、照射した光の
エネルギーに対する発光スペクトルを表したものであ
り、半導体の場合、スペクトルのピークを与える照射光
エネルギーが、その半導体の持つバンドギャップに相当
する。なお、図3においては、横軸に光子エネルギーPho
ton Energy [eV]を、縦軸にフォト・ルミネセンス強度P
L Intensity [10-3a.u.]をとっている。但し、a.u.はar
bitary unitすなわち任意単位を意味する。
【0059】図3は、波長325nmのレーザー光を照射した
ときに得たフォト・ルミネセンスであるが、同図におい
ては、光子エネルギーが2.8eV付近に極めて大きなピー
クが認められる。このピークは、ZnSe半導体固有のバン
ドギャップに相当している。さらに、光子エネルギーが
2.8eV以下の領域では、大きなピークは認められないた
め、結晶欠陥に起因するピークは存在していないことが
わかる。したがって、図3は、ZnSe半導体固有のバンド
ギャップからの発光のみを表していることがわかる。す
なわち、本実施例のZnSe半導体結晶は、光学的にも良好
な半導体結晶であることがわかる。
【0060】さらに、該ZnSe半導体結晶を用いて半導体
レーザー素子を作製したところ、図8に示すように、従
来例に比べて、しきい値電流密度の値が下がっている。
【0061】ここで、図8は、基板表面の洗浄処理方法
による発振波長およびしきい値電流密度の相違を表す図
表である。但し、従来例とは、上記の従来の技術におい
て述べた基板の清浄処理方法にしたがって清浄化した基
板表面上に形成したZnSe半導体結晶を用いた半導体レー
ザー素子のことである。
【0062】また、清浄化されたZn基板13の表面に、II
I-V族半導体であるGaAs半導体結晶を形成したところ、
欠陥密度が2.1×102cm-2となり、従来におけるGaAs半導
体結晶の欠陥密度5.3×104cm-2に比べて、2桁程度減少
していた。但し、従来におけるGaAs半導体結晶とは、上
記の従来の技術において述べた基板の清浄処理方法にし
たがって清浄化した基板表面上に形成したGaAs半導体結
晶のことである。
【0063】このように、本発明によれば、II-VI族化
合物基板の表面に形成された自然酸化膜に代表される不
要な化合物を剥離処理することにより、該基板表面を除
去・清浄化し、平坦な表面を有する基板を得ることが容
易にできる。さらに、本発明の剥離処理方法を用いた清
浄処理方法によって清浄化された基板表面において結晶
成長させた化合物半導体は、良好の特性を示した。
【0064】また、本発明は本実施例にあげた自然酸化
膜に限らず、ZnS(MgSe基板の場合にはMgS)等の他の化
合物膜あるいは表面形状の荒れた表層膜を剥離処理し除
去することに用いることもできる。さらには、基板表面
のコンタミネーションさえも表層部を剥離処理すること
によって除去することができる。ここで、コンタミネー
ションとは、基板表面に付着した、基板を構成する原子
以外の原子からなる化合物のことである。
【0065】さらに、本発明は化合物の形状にも特に制
限はなく、任意の形状の化合物に適用できる。
【0066】なお、本実施例では、400℃における蒸気
圧が1.3×10-4Pa以上である物質を含む層を形成するた
めにイオン・インプランテーション法を用いたが、拡散
法を用いても同様の効果が得られる。また、結晶成長法
についても、分子線エピタキシー法の代わりにMOCVD法
を用いてもよい。
【0067】
【発明の効果】本発明の結晶成長方法によって形成した
ZnSe半導体結晶は、次のような良好な特性を示した。
【0068】まず、電気的特性としては、図7に示した
ように、キャリア濃度が2.2×1014cm-3と低い。そのた
め、伝導型の制御が容易である。なお、該ZnSe半導体結
晶の伝導型はn型である。
【0069】また、光学的特性としては、図3に示した
フォト・ルミネセンスのスペクトルからわかるように、
不純物準位の発光がほとんどなく、ZnSe半導体固有のバ
ンドギャップからの発光が支配的である。
【0070】このような特性を示す化合物半導体結晶
は、発光効率の高く、半導体レーザー、発光ダイオード
などの発光デバイスに対して特に有用である。
【0071】実際に、該ZnSe結晶を用いた半導体レーザ
ー素子は、発振波長518nm、しきい値電流密度1.1kA/cm2
において動作し、実用上十分な特性を示した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のII-VI族化合物半導体の構造模式図であ
る。
【図2】本発明の一実施例で用いられる分子線エピタキ
シー装置を示す概略図である。
【図3】本発明の結晶形成方法によって作製したZnSe半
導体薄膜の15Kにおけるフォト・ルミネッセンスであ
る。
【図4】ZnOとMgOに関する温度-蒸気圧曲線である。
【図5】基板の表層部表面に形成されたZnOからなる自然
酸化膜を除去する前の反射高速電子線回折像写真であ
る。
【図6】基板の表層部表面に形成されたZnOからなる自然
酸化膜を除去した後の反射高速電子線回折像写真であ
る。
【図7】本発明の結晶形成方法によって作製したZnSe半
導体結晶の伝導型、キャリア濃度およびホール移動度を
表す図表である。
【図8】基板表面の洗浄処理方法による発振波長および
しきい値電流密度の相違を表す図表である。
【符号の説明】
1 ZnSe基板 11 表層部表面に形成されたZnOからなる自然酸化
膜 12 ZnCl2を含む層 13 自然酸化膜11および該ZnCl2を含む層12を除い
た結晶成長に用いられるZnSe基板 2 ヒーター 31、32 シャッター 41 Se分子線源 42 Zn分子線源 5 真空チャンバー
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年9月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のII-VI族化合物半導体の構造模式図であ
る。
【図2】本発明の一実施例で用いられる分子線エピタキ
シー装置を示す概略図である。
【図3】本発明の結晶形成方法によって作製したZnSe半
導体薄膜の15Kにおけるフォト・ルミネッセンスであ
る。
【図4】ZnOとMgOに関する温度-蒸気圧曲線である。
【図5】基板の表層部表面に形成されたZnOからなる自然
酸化膜を除去する前の基板表面の結晶構造を表す図面代
用写真であって、反射高速電子線回折像を表す図であ
る。
【図6】基板の表層部表面に形成されたZnOからなる自然
酸化膜を除去した後の基板表面の結晶構造を表す図面代
用写真であって、反射高速電子線回折像を表す図であ
る。
【図7】本発明の結晶形成方法によって作製したZnSe半
導体結晶の伝導型、キャリア濃度およびホール移動度を
表す図表である。
【図8】基板表面の洗浄処理方法による発振波長および
しきい値電流密度の相違を表す図表である。
【符号の説明】 1 ZnSe基板 11 表層部表面に形成されたZnOからなる自然酸化
膜 12 ZnCl2を含む層 13 自然酸化膜11および該ZnCl2を含む層12を除い
た結晶成長に用いられるZnSe基板 2 ヒーター 31、32 シャッター 41 Se分子線源 42 Zn分子線源 5 真空チャンバー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01L 21/203 H01L 21/203 M 21/363 21/363 21/365 21/365 33/00 33/00 D H01S 3/18 H01S 3/18

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 II-VI族化合物基板の表層部と該表層部
    表面に形成された化合物膜との間に、400℃における蒸
    気圧が1.3×10-4Pa以上である物質を含む層が存在する
    ことを特徴とするII-VI族化合物基板。
  2. 【請求項2】 前記表層部表面に形成された化合物膜が
    自然酸化膜であることを特徴とする請求項1記載のII-VI
    族化合物基板。
  3. 【請求項3】 前記II-VI族化合物基板がII-VI族化合物
    半導体基板であることを特徴とする請求項1または2記載
    のII-VI族化合物基板。
  4. 【請求項4】 前記400℃における蒸気圧が1.3×10-4Pa
    以上である物質が第II族原子と第VII族原子の化合物で
    あることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のI
    I-VI族化合物基板。
  5. 【請求項5】 前記第II族原子と第VII族原子の化合物
    がZnCl2であることを特徴とする請求項4記載のII-VI族
    化合物基板。
  6. 【請求項6】 前記400℃における蒸気圧が1.3×10-4Pa
    以上である物質を、固体中へ原子を混入することにより
    形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記
    載のII-VI族化合物基板の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記固体中へ原子を混入する方法がイオ
    ン・インプランテーション法であることを特徴とする請
    求項6記載のII-VI族化合物基板の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記固体中へ原子を混入する方法が拡散
    法であることを特徴とする請求項6記載のII-VI族化合物
    基板の製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項1〜5のいずれか1項記載の400℃に
    おける蒸気圧が1.3×10-4Pa以上である物質を含む層を
    有するII-VI族化合物基板を、400℃以下の適温まで加熱
    し、該物質を昇華させることで、該物質からなる層の上
    層にある前記表層部表面に形成された化合物膜を剥離処
    理することを特徴とする上層膜の剥離処理方法。
  10. 【請求項10】 請求項9記載の剥離処理方法を用い
    て、上記請求項1〜8のいずれか1項記載のII-VI族化合物
    基板の前記表層部表面に形成された化合物膜を剥離する
    ことにより、該II-VI族化合物基板表面を清浄化するこ
    とを特徴するII-VI族化合物基板の清浄処理方法。
  11. 【請求項11】 請求項10記載の清浄処理方法を用い
    て、清浄化された基板表面に、化合物半導体を結晶成長
    法によって形成することを特徴とする化合物半導体の結
    晶形成方法。
  12. 【請求項12】 前記化合物半導体がII-VI族化合物半
    導体であることを特徴とする請求項11記載の化合物半導
    体の結晶形成方法。
  13. 【請求項13】 前記II-VI族化合物半導体がZnSeであ
    ることを特徴とする請求項11または12記載の化合物半導
    体の結晶形成方法。
  14. 【請求項14】 前記化合物半導体がIII-V族化合物半
    導体であることを特徴とする請求項11記載の化合物半導
    体の結晶形成方法。
  15. 【請求項15】 前記III-V族化合物半導体がGaAsであ
    ることを特徴とする請求項11または14記載の化合物半導
    体の結晶形成方法。
  16. 【請求項16】 前記結晶成長法が分子線エピタキシー
    法であることを特徴とする請求項11〜15のいずれか1項
    記載の化合物半導体の結晶形成方法。
  17. 【請求項17】 請求項11〜16のいずれか1項記載の結
    晶形成方法によって形成したことを特徴とする化合物半
    導体。
  18. 【請求項18】 請求項17記載の化合物半導体からなる
    ことを特徴とする化合物半導体素子。
  19. 【請求項19】 前記化合物半導体素子が半導体レーザ
    ーであることを特徴する請求項18記載の化合物半導体素
    子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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