JPH10326695A - 圧力勾配型電子ビーム励起プラズマ発生装置 - Google Patents

圧力勾配型電子ビーム励起プラズマ発生装置

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JPH10326695A
JPH10326695A JP10082751A JP8275198A JPH10326695A JP H10326695 A JPH10326695 A JP H10326695A JP 10082751 A JP10082751 A JP 10082751A JP 8275198 A JP8275198 A JP 8275198A JP H10326695 A JPH10326695 A JP H10326695A
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真 龍治
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猛 長谷川
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電子ビームの電流とエネルギの独立制御が可
能で多様な仕様に適合できる経済的な圧力勾配型電子ビ
ーム励起プラズマ発生装置を提供する。 【解決手段】 カソード室7と放電室8と加速電極20
を備えたプロセス室2とをこの順に配置し、カソード室
7に放電用ガスを流入させてカソード4と放電陽極6の
間に通電して放電プラズマを生成し、放電陽極6と加速
電極20の間に通電して電子を引き出し加速しプロセス
室2に導入しプロセス室内の原料ガスを電離解離させ
る。中間電極5に設けた細孔13によりカソード室7か
らプロセス室2まで圧力勾配を生じさせて放電用ガスを
プロセス室から排気するようにする。また、加速電極2
0を放電陽極6の対向位置に配置することが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放電部の各室の圧
力が階段状に推移するように構成された圧力勾配型電子
ビーム励起プラズマ発生装置の技術分野に関する。また
特に、ダイヤモンド状炭素(DLC)膜を形成するため
に使用できる圧力勾配型電子ビーム励起プラズマ発生装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】プラズマプロセシング装置、すなわちプ
ラズマイオンプレーティング装置、プラズマCVD装
置、プラズマスパッタリング装置、プラズマエッチング
装置等に用いるプラズマガンとして各種の電子ビーム励
起プラズマ発生装置が開発されている。
【0003】図18は、本発明の特許出願人が先に出願
した特開平8−27577号公報に開示されたもので、
電子ビーム励起プラズマ発生装置の1例を示す原理図で
ある。この電子ビーム励起プラズマ発生装置は、電子ビ
ームを発生する電子ビーム発生装置とその電子ビームで
励起してプラズマを発生させ各種の反応を起こさせるプ
ラズマプロセス室とを備える。
【0004】電子ビーム発生装置は、円筒状の真空容器
内に、カソードと補助電極と放電電極と加速電極とを備
える。カソードと補助電極の間にはカソード領域が形成
され、補助電極と放電電極の間には放電領域が形成さ
れ、放電電極と加速電極の間には加速領域が形成され
る。補助電極、放電電極および加速電極は軸方向に対し
て垂直な円板形状をなし、各電極の中央部には隣接領域
を連通するための連通孔が設けられている。
【0005】カソードの両端には電源が接続され、カソ
ードのフィラメントに通電すると周囲に熱電子を放出す
る。カソードの一端と放電電極の間には放電用電源が接
続され、カソードと放電電極の間に放電させることによ
りプラズマが発生する。放電電極と加速電極の間には加
速電源が接続され、加速電極に放電電極に対して正の電
位を印加することによって、プラズマから電子を引き出
して加速し、電子ビームが形成される。電子ビームは電
子ビーム発生装置に連設されるプラズマプロセス室に供
給される。
【0006】真空容器にはガスの供給ポートが設けられ
ていて、カソード領域にアルゴン等の不活性ガスがプラ
ズマ種として所定流量で供給される。カソード領域に供
給された不活性ガスは、補助電極の連通孔を通って放電
領域に流入し、さらに放電電極の連通孔を通って加速領
域に流入し、最後に加速領域に形成された排気ポートを
介して外部の排気装置へ排出される。典型的な動作ガス
圧は、カソード領域で1Torr弱、放電領域で10-2〜1
-1Torr、加速領域で10-4Torrである。
【0007】また、プラズマプロセス室は、例えば円筒
状の真空容器であって、ガスを導入する供給ポートと排
気する排気ポートを備え、目的とするプロセスにより決
まる原料ガスを導入し、電子ビーム発生装置から供給さ
れる電子ビームを当ててプラズマ化し、エッチングや化
学的気相成長等のプラズマ反応を行わせる。
【0008】プラズマプロセス室における真空度は目的
とするプロセスにより異なるが1mTorr弱から数10m
Torrが適当とされ、電子ビーム発生装置の加速領域にお
ける真空度より低いため、プラズマプロセス室で発生し
たイオンやプラズマの一部は加速領域に流入し、加速領
域の排気ポートから排出される。プロセス室より流入す
るイオンおよび加速空間で生成するイオンのため加速領
域における電子自身の空間電荷が中和されることによっ
て、大電流電子ビームがより容易に引き出されプラズマ
プロセス室に流入する効果がある。
【0009】このような差動排気型電子ビーム励起プラ
ズマ発生装置により、放電部分と加速部分を独立に制御
することができるので、プラズマ室に打ち込む電子ビー
ムの電流とエネルギを互いに独立に自由に調整し原料ガ
スのイオン化やラジカル化に最適な運動エネルギーを与
えて、プラズマプロセス室で高密度でしかも均一なプラ
ズマを発生させるようにすることができる。また、原料
ガスの圧力を電子ビーム発生装置と独立に決めることが
できる。
【0010】しかし、このようなカソード領域からプラ
ズマプロセス室までの経路の途中に最も高い真空排気を
設けて電子ビーム発生部とプロセス部相互の影響を断つ
ようにした差動排気型電子ビーム励起プラズマ発生装置
では、高真空用の差動排気用のポンプが必要であり、装
置が複雑で高価になる。
【0011】一方、加速領域を持たず、したがって高価
な高真空用排気装置を用いずにカソード領域からプラズ
マプロセス室まで順次圧力が低下するようにした圧力勾
配型電子ビーム励起プラズマ発生装置も知られている。
例えば、実開平6−88044号明細書には、動作ガス
が導入される筒体部分に環状の陰極を有するカソードを
設け、下流側に環状のアノードを設け、さらにその下流
側の処理室内にカソードとの間で生じるアーク放電によ
りプラズマを発生させる対向電極を設けたプラズマ発生
装置が記載されている。このプラズマ発生装置は、アー
ク放電の発生を安定化するため、アノードの穴径を小さ
くして筒体中の動作ガスの圧力を高めている。アノード
の穴から漏れた動作ガスは処理室につながった排気装置
で余剰の原料ガスと共に排気される。
【0012】しかし、上記の圧力勾配型電子ビーム励起
プラズマ発生装置では、電子ビームの電流とエネルギー
が相互に影響を与えるため独立的に制御できず、電子ビ
ームにより発生する原料ガスのプラズマを適宜の状態に
制御することが難しい。さらに、放電電流がある値以上
ないと放電状態を安定に維持することが容易でなく、ま
たプロセス室の圧力を高くするとブレークダウンして電
子の加速が十分でなくなるという問題があった。
【0013】また、反応室内に放電陽極に対応する陽極
を設置するため、構造が複雑になるほか、反応プロセス
の種類によっては、反応室内に設置する陽極に絶縁膜が
付着して放電が妨げられ、電子ビームの不安定化さらに
は停止現象が生ずる。
【0014】特に、ダイヤモンド状炭素(DLC)は絶
縁性であるので、DLC薄膜を形成するために使用する
場合は、絶縁性膜がプロセス室内の電極表面などに堆積
してプロセスに悪影響を与え、高品質膜を高速で成膜す
るという要求に応えることができなかった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の解決
しようとする課題は、電子ビームの電流とエネルギの独
立制御が可能で多様な仕様に適合できる経済的な圧力勾
配型電子ビーム励起プラズマ発生装置を提供することに
ある。また、長期的に使用しても安定した電子ビームが
得られるような圧力勾配型電子ビーム励起プラズマ発生
装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の圧力勾配型電子ビーム励起プラズマ発生装
置は、カソードと中間電極と放電陽極とを設け中間電極
によりカソード室と放電室に区分できる放電部と加速電
極を設けたプロセス室とを備え、カソード室、放電室、
プロセス室の順に配置し、カソードと放電陽極の間に放
電用直流電源を接続し、放電陽極と加速電極の間に電子
加速用直流電源を接続した圧力勾配型電子ビーム励起プ
ラズマ発生装置である。
【0017】このプラズマ発生装置では、カソード室に
放電用ガスを流入させてカソードと放電陽極の間に通電
して放電プラズマを生成し、放電陽極と加速電極の間に
通電して放電部から電子を引き出し加速してプロセス室
に導入しプロセス室内の原料ガスを電離解離させる。
【0018】また、カソード室と放電室の仕切となって
いる中間電極に設けた細孔によりカソード室からプロセ
ス室まで圧力勾配を生じさせて放電用ガスをプロセス室
に流入させて排気するようにしたことを特徴とする。な
お、中間電極の細孔の穴径は3mm以上5mm以下が、
また穴長は5mm以上20mm以下であることが好まし
い。
【0019】さらに、プロセス室内に設ける加速電極と
してプロセス室の壁を用いることができる。また、加速
電極はプロセス室内に設置された中空のトーラス状にな
っていてもよい。中空トーラス型加速電極の円環内径
は、放電部から電子を引き出す穴の径より大きくかつ引
き出し穴を通る磁力線の最外部に含まれる大きさである
ことが好ましい。また、中空トーラス型加速電極に複数
の穴が明いていて、外部からガスを導入しプロセス室に
噴出できるように構成することができる。
【0020】なお、プロセス室内の加速電極は放電部に
対向する端位置に設置するようにしてもよい。また、プ
ラズマ反応により薄膜を堆積させる試料はプロセス室内
の放電電極と加速電極を結ぶ線から離して配置すること
が好ましい。特に、試料の試料面を放電電極と加速電極
を結ぶ線に対して平行になるように配置すると顕著な効
果が見られる。
【0021】さらに絶縁性材料の堆積に用いるときは、
加速電極が放電プラズマから引き出した電子の流入によ
り加熱するようにして表面付着した材料を炭化させるこ
とが好ましい。材料の炭化を促進し確実にするため、加
速電極に加熱機構を備えるようにしてもよい。なおダイ
ヤモンド状炭素(DLC)薄膜を生成するために使用す
る装置は、加速電極が400℃以上に加熱できるように
なっていることが好ましい。
【0022】また、同じ構成をした追加放電部をプロセ
ス室に備え、追加放電部に対向する位置に追加の加速電
極を備えるようにすることができる。
【0023】本発明の圧力勾配型電子ビーム励起プラズ
マ発生装置では、放電用ガスを導入して1Torr弱の圧力
に保持するカソード室と、原料ガスに合わせて1mTorr
弱から数10mTorrの真空を維持するように真空装置に
より排気するプロセス室との間に、ガスが通過する放電
室を配置するので、それぞれの室を仕切る電極に適当な
細孔を設けてガスの流通を調整することにより、カソー
ド室、放電室、プロセス室の順に圧力勾配を生起させ、
それぞれの室を望む圧力状態にすることができる。
【0024】本発明の圧力勾配型電子ビーム励起プラズ
マ発生装置では、さらに、加速電極をプロセス室内に配
置するようにしたので、カソードと放電陽極の間に流れ
る放電電流と放電部のガス圧力により電子ビーム電流を
調整し、放電陽極と加速電極の間に印加する電子加速電
位により電子に与えるエネルギを調整するから、電子ビ
ームの電流とエネルギを独立的に決定することができ
る。
【0025】通常は、カソード室ガス圧が1Torr弱で、
プロセス室における真空度は1mTorr弱から数10mTo
rrで運転されるが、この範囲では中間電極の細孔の穴径
を3mm以上5mm以下、また穴長を5mm以上20m
m以下とすれば、カソード領域に安定したプラズマが発
生し、所定の印加電圧に応じた電子ビームを安定にプロ
セス室に導入して、プロセス室内に原料ガスのプラズマ
を発生させることができる。
【0026】従来装置ではカソード領域のプラズマとプ
ロセス室のプラズマがつながってしまって電子ビームに
印加する電位の調整が困難になる現象が観察されるが、
上記条件ではこのような現象も生じないことが確認でき
た。また、放電開始電圧、すなわちカソードと放電陽極
間に着火して放電が開始するための初期電圧と、カソー
ドと中間電極間の電圧も小さいことが確認された。
【0027】さらに、プロセス室内に設ける加速電極と
して周囲と絶縁したプロセス室の壁を用いることができ
る。このようにすると、特に加速電極を設置しなくても
すむため構造が簡単で経済的である。また、プロセス室
内に単純なトーラス状電極を置くようにしても比較的経
済的に加速電極を形成することができる。
【0028】中空トーラス型加速電極の円環内径を、放
電部開口の径より大きく開口を通る磁力線の最外部に含
まれる大きさにすると、加速が容易に起こり、小さい加
速電圧でもプロセス室内で安定してプラズマを生成する
ことが可能である。
【0029】また、中空トーラス型加速電極にアルゴン
Ar、ヘリウムHe等の希ガスや、水素H2等のガスを
導入し複数の穴からプロセス室内に噴出させるようにす
れば、絶縁性の膜を成膜する場合にも加速電極に膜が付
着することを防止することができ、またプラズマが安定
する効果がある。さらに経時変化が少なくプロセスの再
現性に優れる。なお、中空の加速電極を用いると、中に
冷却水を流して過熱を防ぐようにすることも可能であ
る。
【0030】さらに、加速電極として中空トーラス状電
極とプロセス室内壁を併用して、加速前に両者を電気的
に接続して電圧を印加し、プロセス室内にプラズマが生
成した段階でプロセス室内壁を電源から切り離してトー
ラス状電極だけで運転するようにすることができる。こ
のようにすることにより、容易に加速ができ、小さい加
速電圧で安定したプラズマ生成が可能となる。
【0031】なお、本発明の圧力勾配型電子ビーム励起
プラズマ発生装置によれば放電を維持させる放電陽極の
下流に加速電極が設けられたプロセス室が配設されるの
で、放電陽極には絶縁物が堆積しにくく放電が安定する
利点がある。また、複数の電子ビーム発生装置を共通の
プロセス室に配設して、条件毎に異なる印加電圧を設定
することにより異なるプラズマプロセスを起こさせるよ
うにすることができる。このような設備は多元素薄膜成
膜装置として使用することができる。
【0032】なお、プロセス室内の加速電極を放電部に
対向する端位置に設置するようにした場合は、放電部と
加速電極の間に生成する強い電子ビームを中心としてプ
ロセスプラズマの密度、電子温度に分布状態が生ずるの
で、試料を配置する位置や姿勢を調整することにより要
求される製品仕様に従った薄膜の生成が可能となる。
【0033】また、薄膜を堆積させる試料はプロセス室
内の放電電極と加速電極を結ぶ線から離して配置した場
合は、中心軸部分から離れたプロセスプラズマの電子温
度が低い部分でプラズマ中の活性種が試料表面に堆積す
るため、高品質の薄膜生成が可能となる。特に、試料面
を放電電極と加速電極を結ぶ線に対して平行になるよう
に配置すると、堆積速度のむらが小さくなってより高品
質な薄膜を得ることができる。
【0034】さらにダイヤモンド状炭素など炭素系の絶
縁性材料の堆積に用いるときは、加速電極が放電プラズ
マからの電子が流入して加熱するに任せることにより、
電極の表面に付着した材料を炭化させるようにすること
が好ましい。電極表面に絶縁性物質が堆積しても炭化に
より電極の導電性を維持することができれば安定した加
速を長時間持続することができる。
【0035】なお、加速電極に加熱機構を備えるように
すれば、プラズマ密度が低くプラズマからの電子の流入
量が小さいため加速電極の温度が十分上昇しない場合に
も、堆積物質を確実に炭化させて電極の導電性を確保す
ることができる。加熱機構として、電熱ヒータ、高温熱
媒、さらにこれらの組み合わせ等が利用できる。また、
温度制御することにより加速電極の過熱を抑え膜中への
コンタミネーションの原因となる物質が電極表面から放
出しないように管理することができる。特に、ダイヤモ
ンド状炭素(DLC)薄膜を生成するために使用する装
置は、加速電極を400℃以上に加熱すれば、炭化によ
りグラファイト化して導電性を維持できる。
【0036】さらに、プロセス室に複数の放電部とこれ
に対向する加速電極を備えるようにしたものは、装置軸
方向のプラズマ密度の均一性が向上し、大面積成膜が可
能となる。
【0037】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る圧力勾配型電
子ビーム励起プラズマ発生装置を、図面を用い実施例に
基づいて詳細に説明する。
【0038】
【実施例1】図1は本発明の圧力勾配型電子ビーム励起
プラズマ発生装置の第1実施例の原理を説明するブロッ
ク図である。本発明の電子ビーム励起プラズマ発生装置
は、電子ビーム発生装置1とプラズマプロセス室2とを
備える。電子ビーム発生装置1は、円筒状の真空容器3
内に、カソード4と中間電極5と放電陽極6とを備え
る。真空容器3は中間電極5によって仕切られ、カソー
ド4の存在するカソード室7と、中間電極5と放電陽極
6で挟まれた放電室8に分けられる。中間電極5と放電
陽極6は電子ビーム発生装置の軸方向に対して垂直な円
板形状をなし、各電極の中央部には連通孔が設けられて
いる。
【0039】カソード4にはフィラメント9が内蔵され
フィラメント9には加熱用電源10が接続されている。
カソード4は6硼化ランタンLaB6やタングステンW
など適当な材料からなる図示しないディスクを備え、放
電用の直流高圧電源11の陰極に接続されている。ま
た、中間電極5は抵抗器を介し、放電電極6は直接的
に、放電用電源11の陽極に接続されている。真空容器
3にはガスの供給ポート12が設けられていて、カソー
ド室7にアルゴン等の不活性ガスがプラズマ種として所
定流量で供給される。
【0040】フィラメント9に加熱用電源10からの電
流が流れると周囲に熱電子を放出する。カソード室7に
不活性ガスを所定流量導入し、フィラメント9と放電陽
極6の間に放電電源11により電圧を印加すると、フィ
ラメント9と中間電極5との間で初期放電が始まる。こ
のとき中間電極5につながった抵抗に発生する電圧降下
分の電圧が中間電極5と放電陽極6の間に生じるため、
瞬時に放電が放電陽極6まで延びる。
【0041】フィラメント9とアーク放電の熱でカソー
ド4が暖められて十分な熱電子が供給されるようになる
とフィラメント9の通電を停止する。その後はフィラメ
ント9の加熱が無くてもカソード4と放電陽極6の間に
継続的にプラズマが生成される。なお、カソード4と放
電陽極6の間には中間電極5が存在するが、抵抗器のた
め中間電極5の電位の方が放電陽極6の電位より低くな
るので、カソード4からの電流の大部分が放電陽極6ま
で達する。
【0042】安定したプラズマ発生を実現するためには
カソード室7の圧力を、たとえば0.8Torrなど、ある
程度高い水準で安定に維持することが必要である。カソ
ード室7の圧力を維持するため、中間電極5の中央の連
通孔13は径dが3〜5mm、長さLが5〜20mmの
細孔として形成することが好ましい。連通孔13はあま
り細すぎるとカソード4と放電陽極6の間の放電に障害
となり、初期放電に大電圧を必要とする。また、連通孔
13が太すぎれば圧力の維持が困難になりプラズマの発
生の障害になり、カソード4と中間電極5の間の電圧が
大きくなるため、プラズマ中のイオンが大きなエネルギ
を持ってカソードに衝突してカソードの損耗が著しくな
る。
【0043】なお、圧力維持のため不活性ガスを多量に
導入すると、プロセス室内のガス圧力が上昇して不具合
を生ずるという問題が生じる。また、大きな加速電圧を
印加する際に放電電圧が若干低下する現象もしばしば観
察される。電極穴径が大きすぎまたは長さが短すぎる
と、この放電電圧低下の際、放電が不安定になりついに
は突然消滅してしまうことがある。電極長さについても
同様の傾向が観察された。
【0044】図4は、中間電極5の連通孔13の径dと
加速電圧Vaを変化させて放電状態を観察した結果を表
すグラフである。横軸に穴径、縦軸に加速電圧をプロッ
トしてある。連通孔の長さLを15mmに固定し、カソ
ード室4に流入するアルゴンガスの流量を3sccm、
放電電流Idを10Aとして試験した。グラフにおいて
○印が放電が安定していた条件、×印が不安定だったケ
ースである。穴径が大きすぎると僅かな加速電圧を印加
しても放電が不安定になることが分かる。
【0045】図5は、中間電極5の穴径dと放電開始電
圧および放電中のカソードと中間電極間の電圧の関係を
示すグラフである。横軸に穴径、縦軸に放電開始電圧と
カソードと中間電極間の電圧をプロットしてある。縦軸
目盛りは左が放電開始電圧、右がカソードと中間電極間
の電圧を表す。中間電極5の穴径が小さいと放電開始時
に高い電圧を印加する必要があり、大きいと放電中のカ
ソード・中間電極間電圧が高くなってカソードがイオン
で打たれて損耗しやすくなるので、中間的な3mmから
6mmのあたりに最適な口径があることが分かる。
【0046】カソード室7に供給された不活性ガスは、
中間電極5の細孔13を通って放電室8に流入し、さら
に放電陽極6の細孔14を通ってプラズマプロセス室2
に流入する。プラズマプロセス室2にはガスの供給ポー
ト15が設けられていて、プラズマプロセス室2にプラ
ズマプロセスに必要な原料ガスが所定流量で供給され
る。プラズマプロセス室2にはまた排気ポート16が設
けられていて図外の真空装置に接続されており、余剰の
原料ガスと流入してくる放電ガスを排気して、プラズマ
プロセス室2内の真空を所定の水準に保持している。
【0047】通常のプラズマプロセスでよく用いられる
プロセス圧力は0.数mTorrから数10mTorrであり、
カソード室4における真空水準と大きな差がある。この
ため、上記の範囲の連通孔形状を選ぶことにより、カソ
ード室4とプラズマプロセス室2の圧力差に基づいて連
通孔を通過する動作ガスの流速変動が抑制され、実用
上、カソード室4内の圧力を所望の水準に保持すること
ができる。
【0048】プラズマプロセス室2の壁17は絶縁体1
8により電子ビーム発生装置1と電気的に絶縁されてい
て、電子ビーム発生装置1の放電陽極6との間に加速用
電源19が介在するようにされている。壁17に加速電
圧を印加することにより、放電陽極6の連通孔からプラ
ズマプロセス室2内に電子ビームを引き出して、所定の
エネルギに加速することができる。加速された電子ビー
ムが原料ガスの分子に衝突しイオン化あるいはラジカル
化してプラズマを生成する。このプラズマを利用して各
種反応を行うことができる。
【0049】本発明の圧力勾配型電子ビーム励起プラズ
マ発生装置では、放電用電源11によりカソード4と放
電陽極6の間に流れる放電電流を調整しカソード室7に
供給する不活性ガスの流量を調整することにより放電部
のガス圧を調整して、電子ビーム電流を制御することが
できると共に、この電流と独立して放電陽極6とプラズ
マプロセス室2の壁17の間に印加する加速用電源19
の電圧により電子に与えるエネルギを調整することがで
きる。
【0050】図3は、放電電流をパラメータとして加速
電圧と加速電流の関係を表したグラフである。加速電流
は電子ビームの電流であり、加速電圧は電子ビームのエ
ネルギに対応する。グラフは、カソード室に流入するア
ルゴンガスの量を3sccmとし、プロセス室のガス圧
力すなわちアルゴンプラズマ圧力を1mTorrとして実験
により求めた値である。図3から、放電電流Idを調整
することにより加速電流Iaを変え、また放電電流Id
と別に加速電圧Vaを調整することにより加速電流Ia
を変えることができるから、電子ビームの電流とエネル
ギを独立に制御できることが分かる。
【0051】このように、電子ビームの電流とエネルギ
を独立的に決定することができるため、各種のプラズマ
プロセスに対応することができる。さらに、プラズマプ
ロセス室に複数の電子ビーム発生部を併設して必要とす
るプロセス条件に合わせて放電電流と加速電圧を調整す
るようにしたものは、たとえば本発明の出願人が特許出
願した特開平8−27577号公報に開示されたような
多元素薄膜成膜装置として使用することができる。
【0052】
【実施例2】図2は、本発明の第2の実施例を説明する
原理図である。本実施例が上に説明した実施例と異なる
のは、プラズマプロセス室の壁を加速電極として利用す
る代わりに、プラズマプロセス室内に別にトーラス状の
加速電極を設けるところであるので、先の実施例と異な
る部分だけを説明する。なお、図中、図1と同じ機能を
有する要素については同じ参照番号を付すことにより説
明を省略する。
【0053】プラズマプロセス室2の中に円環状の加速
電極20が電子ビーム発生装置1と軸を同じくして設置
されている。加速電極20は電圧可変の加速用電源19
の陽極端子に接続されていて、陰極端子と接続された放
電電極6との間に印加される加速電位差を調整できるよ
うになっている。プラズマプロセス室2に打ち込まれた
高エネルギ電子はプロセス室内で原料ガスに衝突してプ
ラズマを発生する。その後、電子はエネルギを失った状
態で最終的に加速電極に流入する。本実施例の圧力勾配
型電子ビーム励起プラズマ発生装置は、閉じこめ効果に
より図1の実施例と比べて電子の滞在時間とパスが長く
なるので、さらに密度の高いプラズマの生成が可能であ
る。
【0054】図6は、本実施例の第2の態様を説明する
構成図である。中間電極と放電陽極の連通孔部分には電
子ビームが通過しやすいように収束用空芯コイル31’
が設けられている。本実施例における加速電極の内径I
Dが、放電室からプラズマプロセス室2への隘路となっ
ている放電陽極6の連通孔の口径より大きく、かつこの
隘路の最外部を通過した磁力線30の内側になるような
値とされることが好ましい。上記構成により、電子ビー
ムの加速が円滑に行われて、低い加速電圧を印加しただ
けでプロセス室内で安定なプラズマが生成されるように
なる。
【0055】図7は、本実施例の第3の態様を説明する
部分図である。この態様においては、プラズマプロセス
室2内に設置された中空トーラス状の加速電極20が、
多数の穴21を有し、その中空部分を外部からの配管に
接続されている。配管からはアルゴンAr、ヘリウムH
e、窒素N2等の不活性ガスや水素ガスH2などが供給さ
れ、上記の穴21からプラズマプロセス室2に噴出する
ようになっている。
【0056】このような構造によれば、絶縁膜の生成工
程に使用する場合にも、加速電極20の周囲が噴出する
ガスで保護されて電極への膜付着が起きにくく、経時変
化が少なくなるプロセスの再現性がよいという利点があ
る。また、ガスの分布がより均質化するためプラズマが
安定する効果がある。
【0057】
【実施例3】図8は、本発明の第3の実施例を説明する
原理図である。本実施例が上記の実施例と異なるのは、
電子ビーム発生装置1と絶縁されたプラズマプロセス室
の内壁17とプラズマプロセス室2内に設置された中空
トーラス電極20を加速電極として併用するところ及び
電子ビームガン部の空芯コイルの代わりに大口径のコイ
ル31”を備えるところであるので、先の実施例と異な
る部分だけを説明する。なお、図中、図1と同じ機能を
有する要素については同じ参照番号を付すことにより説
明を省略する。
【0058】プラズマプロセス室の内壁17は電子ビー
ム発生装置1と電気的に絶縁されて、加速用電源19と
スイッチ22を介して接続されている。一方トーラス状
の電極20はプラズマプロセス室2内に設置され、内壁
17と絶縁されて、加速用電源19に接続されている。
プラズマ発生装置を稼働させるときは、電子ビームに加
速をかける前にスイッチ22を閉成してトーラス電極2
0と内壁17を同一の加速電圧にし、プラズマプロセス
室2内にプラズマ生成した段階でスイッチ22を切断し
てトーラス電極20のみを加速電極とする構成になって
いる。このように、内壁17を加速時のトリガとして利
用することにより、加速が容易に起こり、低い加速電圧
によっても安定なプラズマ生成を実現することができ
る。なお、空芯コイルは大口径化コイル31に代えるこ
とにより1個にすることができる。
【0059】
【実施例4】図9は、本発明の第4の実施例を説明する
原理図である。本実施例が上記各実施例と異なるのは、
加速電極をプラズマプロセス室内の電子ビーム発生装置
と対向する反対側の壁際に設置したところであるので、
先の実施例と異なる部分だけを説明する。ただし、図に
は薄膜を堆積させる基板の取付部分についても記載し
た。なお、図中、図2と同じ機能を有する要素について
は同じ参照番号を付すことにより説明を省略する。
【0060】プラズマプロセス室2の中に円板状の加速
電極20が電子ビーム発生装置1と軸を同じくして設置
されている。加速電極20は加速用可変電源19の陽極
端子に接続されていて、放電電極6との間の加速電位差
を調整することができる。プラズマプロセス室の壁17
は安全のため接地されている。なお、プラズマ室外に配
置された電子ビーム収束用の空芯コイル31の作用によ
り、プロセスプラズマ32は図中細線で表示したように
装置の軸上に収束する。
【0061】基板ホルダ34は放電電極6と加速電極2
0を結ぶ線から離れて設置されている。薄膜が堆積する
基板33は放電電極6と加速電極20を結ぶ線に平行な
姿勢を取るように基板ホルダ34で支持される。基板ホ
ルダ34の内部に冷却空洞35が設けられていて、冷水
が循環して基板ホルダ34を冷却し、プラズマにさらさ
れている試料の温度上昇を抑制する。基板ホルダ34に
は高周波(RF)電源36から整合器37を介して高周
波が供給され、試料表面に衝突するイオンのエネルギの
大きさを制御することができる。
【0062】プロセスガスとしてメタン、エタン等の炭
化水素系ガスを供給してプラズマプロセスを行うとダイ
ヤモンド状炭素(DLC)膜が生成する。基板33は、
電子温度が高くプラズマ密度の濃いプラズマ32の中心
軸から離れ電子温度が低い位置に設置されているので、
高品質の薄膜を成膜することが可能となる。また、基板
33を中心軸に平行に配置しているため、基板表面にお
けるプラズマ濃度が変化せず、大きな面積にわたって均
質な膜を生成することができる。
【0063】なお、従来のプラズマ発生装置を用いてD
LC薄膜を形成する場合は、加速電極の表面に成膜する
DLC薄膜のため電極が絶縁されて加速が維持できず、
加速が不安定になる問題がある。本発明の第2実施例で
は電極に多数の孔を設けてこの孔から不活性ガスを噴出
させることによりDLC膜の堆積を防止して運転期間を
延ばす工夫をした。しかし、この第2実施例の装置はD
LC膜の堆積を防ぐため用いる不活性ガスがプロセスガ
スに混入するため、大容量の真空ポンプが必要となり製
作コストや運転コストが過大になる傾向がある。
【0064】本実施例の圧力勾配型電子ビーム励起プラ
ズマ発生装置では、放電電極6から出た電子が加速電極
20に流入し加速電極20が自己発熱するように構成さ
れている。絶縁性のDLC薄膜は400℃以上で導電性
のグラファイトに変質するから、加速電極20を高温に
維持して加速電極20に付着するDLC薄膜をグラファ
イトに変質させることにより、加速電極20の機能を長
時間持続させるようにしている。
【0065】なお、プラズマ密度が低くプラズマからの
電子の流入量が小さいときには加速電極の温度が十分上
昇しないため、加速電極20に付着したDLC膜がグラ
ファイト化しない場合が生じる。加速電極20に加熱機
構を備えて、電子の流入では温度が上がらない場合に外
部からエネルギーを与えて加熱するようにすれば、表面
に堆積した物質を確実に炭化させて加速電極20の導電
性を確保することができる。
【0066】DLC膜をグラファイト化するためには加
速電極の表面温度を400℃以上に保持すればよい。加
熱機構として、電熱ヒータ、高温熱媒、さらにこれらの
組み合わせ等が利用できる。ただし、加速電極の温度を
過剰に上昇させると、電極表面から不要な物質が放出さ
れ、プロセスガスに混入して製品品質が劣化する。この
ため、加速電極20の過熱を抑え常時適当な温度に管理
するような構成を有することが好ましい。
【0067】図10から図16は、加熱機構を備えた加
速電極20の各種態様を示す図面である。図10は、円
盤状の加速電極20の中にヒータ41を埋め込んだもの
である。ヒータ41は加熱用電源42に接続されてい
て、プラズマ密度が低くプラズマからの電子の流入が少
なくて加速電極20の温度が上がらないときに電極表面
温度が400℃以上になるように熱を供給する。加速電
極20には加速用電源19から加速電圧が供給される。
【0068】図11は、プラズマプロセス室内に設置す
る加速電極20をステンレスやモリブデン等の耐熱性材
料で形成したパイプを加工して作製し、その中空部分に
熱媒循環配管を接続し、熱媒流量と温度により電極表面
温度を調整するようにした態様を表す。図11(a)は
加熱電極20をトーラス状に形成したものを示し、図1
1(b)は電極面積を増やすため渦巻き状に形成したも
のを示す。
【0069】図12は、図11のパイプ加工加速電極2
0に電熱ヒータを付加することにより温度制御をさらに
容易にした形態を表したものである。図12(a)は加
熱電極20の外側にシースヒータ43を巻き付けて電源
44で温度調整するようにしたものを示し、図12
(b)は加熱電極20のパイプ内部にヒータ45を仕込
んだものを示す。
【0070】図13から図15は温度制御系を用いて温
度を管理するようにした加速電極20を表したものであ
る。図13は、内部にヒータ41とジャケット35およ
び熱電対46が埋め込まれている加速電極20を表す。
ヒータ41は外部信号により出力調整できる電源装置4
8に接続されている。熱電対46は温度制御器47に測
定信号を入力し、温度制御器47は測定温度に基づい
て、電源装置48の出力を調節する。過熱すると加速電
極20の表面が蒸発し成膜中に混入して膜質を劣化させ
るので、必要以上に温度を上げないようにする必要があ
る。ジャケット35にはシリコンオイル等の熱媒体ある
いは冷却水などを流すことが可能で、電極20が過熱し
たときに冷却することができる。
【0071】図14は、加速電極20の温度を測定する
温度検出端46を備え、温度制御器47が温度検出端4
6からの測定信号を受けて流量制御装置49に制御信号
を与えると、加速電極20の中を流通する熱媒の流量制
御を行って、加速電極20の温度制御をするシステムを
示すものである。流量制御装置49には各種の制御弁が
用いられる。温度検出端46は熱電対や抵抗式温度検出
素子などを使用して加速電極20の管の内側に設置する
こともできる。
【0072】図15は、加速電極20の外側に巻き付け
たシースヒータ43に外部信号により出力調整できる加
熱用電源48を接続し、温度制御器47から与えられる
制御信号に従って加速電極20の温度制御をするシステ
ムを示すものである。電熱ヒータが加速電極20の管の
中に設置されている場合も同様に温度制御が可能であ
る。
【0073】図16は、加速電極20が過熱する場合
に、余剰の熱を利用するシステムを表した図面である。
トーラス型のパイプ加工品である加熱電極20の管中に
窒素ガスやシリコンオイルなどの熱媒体を循環させる。
気体の熱媒体を循環するためにはファン50を使用し、
液体にはポンプが用いられる。加速電極20が受け入れ
る熱は熱交換器51を介して外部の冷熱源と熱交換し、
別途有効に再利用する。
【0074】
【実施例5】図17は、本発明の第5の実施例を説明す
る原理図である。本実施例の圧力勾配型電子ビーム励起
プラズマ発生装置は、プロセス室2の両端にそれぞれ電
子ビーム発生装置1、1’を備え、それぞれ対向する位
置に加速電極20、20’を設置したものである。基板
ホルダ34はプロセス室2の中央の電子ビーム発生装置
1、1’の中心軸より十分高い位置に配置される。一方
の電子ビーム発生装置から放出される電子ビームは殆ど
が対向する加速電極に流入し一部が装置に近い方の加速
電極に戻ってきて流入する。この構成では、プロセス室
2の中に形成されるプロセスプラズマ32’の密度分布
がより均質になり、大面積の基板33上により均質な薄
膜を形成させることが可能となる。
【0075】
【実施例6】図18は、本発明の第6の実施例を説明す
る原理図である。本実施例の圧力勾配型電子ビーム励起
プラズマ発生装置は、プロセス室2の上方に電子ビーム
発生装置1を備え、下方の放電陽極6に対向する位置に
加速電極20を設置してこれに加速用電源19の電圧を
印加し、電子ビーム発生装置1から放射される電子ビー
ムを受入する。プロセスガスはガス供給口15に接続さ
れるシャワーリングから放出され、プラズマ化する。回
転する基板ホルダ34の公転軸から離れた位置に複数の
基板回転台38が設けられていて試料33を搭載して自
転している。試料33はプロセスガスプラズマの電子温
度が低い部分にあって、公自転しているため、表層に極
めて均質に薄膜材料が堆積し、質の高い製品を得ること
ができる。
【0076】なお、上記各実施例においては、試料面が
下向きあるいは上向きになっているものとして説明した
が、垂直横向きなど他の形態でもその作用効果は全く変
わらない。また、プラズマ閉じ込め用マルチポール磁石
はどの圧力勾配型電子ビーム励起プラズマ発生装置にお
いても使用することができる。さらに、基板を回転する
機構を設けて成膜の均一性を向上させることも可能であ
る。また、ディスク型のカソードを用いずにフィラメン
トそのものをカソードとして使用することも可能であ
る。電子ビームガン各電極の連通孔を電子ビームが通過
しやすいようにするため設置する空芯コイルは電極の内
部にあっても外部にあってもよい。空芯コイルは永久磁
石で代用しても良い。
【0077】
【発明の効果】以上詳細に説明した通り、本発明の圧力
勾配型電子ビーム励起プラズマ発生装置は、簡単で経済
的に構成できるにもかかわらず、電子ビームの電流とエ
ネルギの独立制御が可能であり、多様なプラズマプロセ
スの要求に対応できる。また、長期的な使用によっても
劣化する部分が少ないため、安定した性能を発揮させる
ことができる。特に、ダイヤモンド状炭素膜を形成させ
るときに使用すると大きな効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧力勾配型電子ビーム励起プラズマ発
生装置の第1実施例の原理図である。
【図2】本発明の第2実施例を表す原理図である。
【図3】本発明における加速電圧と加速電流の関係を表
すグラフである。
【図4】本発明における中間電極の連通孔の径と加速電
圧を変化させたときの放電安定性を表すグラフである。
【図5】本発明における中間電極の連通孔の径と放電開
始電圧等の関係を表すグラフである。
【図6】本発明の第2実施例の別の態様を表す構成図で
ある。
【図7】本実施例のさらに別の態様における部分を表す
図面である。
【図8】本発明の第3実施例を表す原理図である。
【図9】本発明の第4実施例を表す原理図である。
【図10】本実施例で使用する加速電極の例を表す図面
である。
【図11】本実施例で使用する加速電極の別の例を表す
図面である。
【図12】本実施例で使用する加速電極のさらに別の例
を表す図面である。
【図13】本実施例における加速電極の温度制御システ
ムの例を表す図面である。
【図14】本実施例における加速電極の温度制御システ
ムの別の例を表す図面である。
【図15】本実施例における加速電極の温度制御システ
ムのさらに別の例を表す図面である。
【図16】本実施例における加速電極の熱再利用システ
ムを表す原理図である。
【図17】本発明の第5実施例を表す原理図である。
【図18】本発明の第6実施例を表す原理図である。
【図19】従来の電子ビーム励起プラズマ発生装置の原
理図である。
【符号の説明】
1 電子ビーム発生装置 2、2’ プラズマプロセス室 3 真空容器 4 カソード 5 中間電極 6 放電陽極 7 カソード室 8 放電室 9 フィラメント 10 加熱用電源 11 放電用直流高圧電源 12 ガス供給ポート 13、14 連通孔 15 ガス供給ポート 16 排気ポート 17 壁 18 絶縁体 19 加速用電源 20、20’ 加速電極 22 スイッチ 31、31’、31” 空芯コイル 32、32’ プロセスプラズマ 33 基板 34 基板ホルダ 35 冷却空洞 36 高周波(RF)電源 37 整合器 38 基板回転台 41、43、45 ヒータ 42、44、48 加熱用電源 46 熱電対 47 温度制御器 49 流量制御装置 50 ファン 51 熱交換器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H01L 21/302 C23C 14/30 B // C23C 14/30 H01L 21/302 Z (72)発明者 伴 雅人 千葉県野田市二ツ塚118番地 川崎重工業 株式会社野田工場内 (72)発明者 森 幸隆 千葉県野田市二ツ塚118番地 川崎重工業 株式会社野田工場内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カソードと中間電極と放電陽極とを設け
    該中間電極によりカソード室と放電室に区分した放電部
    と加速電極を設けたプロセス室とを備え、カソード室、
    放電室、プロセス室の順に配置して、前記カソードと前
    記放電陽極の間に放電用直流電源を接続し、前記放電陽
    極と前記加速電極の間に電子加速用直流電源を接続した
    圧力勾配型電子ビーム励起プラズマ発生装置であって、
    前記カソード室に放電用ガスを流入させ、前記カソード
    と前記放電陽極の間に放電プラズマを生成し、前記放電
    部から電子を引き出し加速して前記プロセス室に導入す
    ることにより該プロセス室内において供給される原料ガ
    スを電離解離させると共に、前記中間電極に細孔を設け
    ることにより前記カソード室から前記プロセス室まで圧
    力勾配を生じさせて前記放電用ガスを前記プロセス室に
    流入させて排気するようにしたことを特徴とする圧力勾
    配型電子ビーム励起プラズマ発生装置。
  2. 【請求項2】 前記中間電極の細孔の穴径が3mm以上
    5mm以下であり穴長が5mm以上20mm以下である
    ことを特徴とする請求項1記載の圧力勾配型電子ビーム
    励起プラズマ発生装置。
  3. 【請求項3】 前記加速電極が前記プロセス室の壁で構
    成されることを特徴とする請求項1または2記載の圧力
    勾配型電子ビーム励起プラズマ発生装置。
  4. 【請求項4】 前記加速電極が前記プロセス室内に設置
    された中空のトーラスであることを特徴とする請求項1
    または2記載の圧力勾配型電子ビーム励起プラズマ発生
    装置。
  5. 【請求項5】 前記中空トーラス型加速電極の円環内径
    が前記放電部から電子を引き出す穴の径より大きくかつ
    放電部の引き出し穴の最外部を通る磁力線に含まれる大
    きさであることを特徴とする請求項4記載の圧力勾配型
    電子ビーム励起プラズマ発生装置。
  6. 【請求項6】 前記中空トーラス型加速電極に複数の穴
    が明いていて、外部からガスを導入しプロセス室に噴出
    できるように構成されていることを特徴とする請求項4
    または5記載の圧力勾配型電子ビーム励起プラズマ発生
    装置。
  7. 【請求項7】 前記加速電極が前記プロセス室内の前記
    放電部に対向する端位置に設置されていることを特徴と
    する請求項1または2記載の圧力勾配型電子ビーム励起
    プラズマ発生装置。
  8. 【請求項8】 前記プロセス室内であって前記放電電極
    と前記加速電極を結ぶ線から離れた位置に試料を配置す
    ることを特徴とする請求項7記載の圧力勾配型電子ビー
    ム励起プラズマ発生装置。
  9. 【請求項9】 前記プロセス室内であって前記放電電極
    と前記加速電極を結ぶ線に対して試料面が平行になるよ
    うに試料を配置することを特徴とする請求項7または8
    記載の圧力勾配型電子ビーム励起プラズマ発生装置。
  10. 【請求項10】 前記加速電極が前記放電プラズマから
    引き出した電子の流入により加熱されるようにすること
    を特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の圧力勾
    配型電子ビーム励起プラズマ発生装置。
  11. 【請求項11】 前記加速電極に加熱機構を備えること
    を特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の圧力
    勾配型電子ビーム励起プラズマ発生装置。
  12. 【請求項12】 前記加速電極が400℃以上に加熱で
    きるようになっていることを特徴とする請求項10また
    は11記載の圧力勾配型電子ビーム励起プラズマ発生装
    置。
  13. 【請求項13】 前記放電部と同じ構成の追加の放電部
    をさらに備え、該追加放電部に対向する追加の加速電極
    を前記プロセス室内にさらに備えることを特徴とする請
    求項1から12のいずれかに記載の圧力勾配型電子ビー
    ム励起プラズマ発生装置。
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