JP3708686B2 - 真空アーク蒸着装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空アーク放電を利用してカソードを構成する金属を基材の表面に蒸着する真空アーク蒸着装置に関するもので、特に、長尺のカソード上のアークスポットの位置を検出し、アークスポットの位置を制御する真空アーク蒸着装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
真空アーク蒸着装置は、真空チャンバー内に設置したカソードとアノードとの間に真空アーク放電させ、アークの高エネルギーにより、カソードを構成する金属を蒸発させイオン化して、基材の表面に蒸着する装置である。蒸発源をカソードとする真空アーク蒸着装置として、例えば、図8に示す特開平5−106025号公報に記載のものが知られている。この従来のものは、真空チャンバー1内の中央に棒状のカソード2が配置され、真空チャンバー1がアノードとして用いられている。アーク電源13の陰極が前記カソード2の両端と接続され、アーク電源の陽極が真空チャンバー1と接続されている。
【0003】
本従来例では、アーク電源13からカソード2の両端に投入するアーク電流のバランスを変化させることにより、アークスポットを制御している。カソードの両端部のセンサー15はアークスポットがカソード2の端部に到達したときに信号を出して、アーク電流のバランスを自動的に調節して、アークスポットをカソード2の他端に押し返して、カソード上のアークスポットを、上下方向にくまなく走査させるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来例では、アークスポットがカソードの端部に到達したときのみ、アークスポットの位置を検知できるものである。このため、一端から他端へ移動中のアークスポットの位置が検知できず不明となり、所望の膜厚を有する蒸着膜形成に必要なアーク電流バランスの調節が困難であった。特に、長尺(例えば、300mm以上)の棒状カソードを用いる真空アーク蒸着装置では、カソード上のアークスポットの移動速度が一定でなく、アークスポットが偏在する確率が高くなる。このため、長尺のカソードでは、アークスポット位置の不明な領域が長くなるため、アーク電流のバランスの調節がさらに困難となり、基材の表面に所望の膜厚分布の蒸着膜を形成することができない場合がある。
【0005】
そこで本発明は、カソード上の全域にわたってアークスポットの位置を検知して、カソード上のアークスポットの位置を任意に制御することにより、基材の表面に所望の膜厚の蒸着膜を形成することができる真空アーク蒸着装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、請求項1の発明は、アノードとカソードを有し、このカソードを構成する金属を基材の表面に蒸着する真空アーク蒸着装置において、前記カソード面に正対し、カソード面から等距離に、かつ、カソードの長辺又は長径方向に、複数個(二個を除く)のアークスポット検出用センサーを設け、該アークスポット検出用センサーの検出信号を基に基材表面の成膜状況に応じてアークスポットの位置を任意に制御することを特徴とするものである。複数個(二個を除く)のアークスポット検出用センサーを、カソード面に正対し、かつ、カソード面から等距離に設けることによって、カソード上のアークスポットの位置を検知することができる。カソード上のアークスポットから飛び出した金属イオンを複数個のアークスポット検出用センサーにより検出して、この検出した金属イオン量が最大となるアークスポット検出用センサーの近傍に、アークスポットが存在することになる。
【0007】
前記アークスポット検出用センサーは、カソードの上のアークスポットから飛び出した金属イオンからの電荷を検出するものであればよく、例えば、イオンセンサーを用いることができる。
【0008】
特に、請求項1記載の発明は、カソードの長辺又は長径が100mm以上、好ましくは300mm以上である真空アーク蒸着装置に適用することが望ましい。カソードの長辺又は長径が100mm以上になるとカソード上のアークスポットが偏在しやすくなり、長辺又は長径が300mm以上ではアークスポットの偏在の傾向が著しくなる。このため、カソード上のアークスポット位置を的確に知り、所望の膜厚分布になるように、真空アーク蒸着装置を制御する必要性が高くなるからである。
【0009】
また請求項2の発明は、請求項1記載の真空アーク蒸着装置において、前記カソードが棒状であり、この棒状のカソードの軸方向に平行に、前記複数個(二個を除く)のアークスポット検出用センサーを設けてなることを特徴とするものである。複数個(二個を除く)のアークスポット検出用センサーを軸方向に平行に設けたことによって、棒状のカソード上のアークスポットの位置を検知することができる。なお、棒状のカソードの長さに応じて、アークスポット検出用センサーを設けることが好ましい。例えば、カソードの長さ:約100mm(50から150mm)当たり、アークスポット検出用センサーを1個設けることが好ましい。150mmを越えると、アークスポット検出用センサーの金属イオンの検出範囲を越えることとなり、アークスポット位置を求めることができない場合がある。アークスポットから飛び出す金属イオンは広がりを持っているので、50mm未満では、隣同士のアークスポット検出用センサーが金属イオンを大部分重複して検出するので、不必要なアークスポット検出用センサーが生じる。
【0010】
また請求項3の発明は、請求項1又は2記載の真空アーク蒸着装置において、アークスポット検出用センサーを基材位置のカソードと反対側の離れた位置に設けたことを特徴とするものである。アークスポット検出用センサーを基材位置のカソードと反対側の離れた位置に設けたのは、アークスポット検出用センサーによる基材への蒸着の阻害、および、アークスポット検出用センサーの蒸着によるセンサー機能の劣化を防止するためである。
【0011】
また請求項4の発明は、請求項12又は3記載の真空アーク蒸着装置において、前記各アークスポット検出用センサーが検出した金属イオン量の積分値等しくなるように制御可能としたアーク電源装置を設けてなることを特徴とするものである。各アークスポットの電流の積分値を等しくなるように制御可能な電源装置を設けることより、基材の表面に所望の膜厚の蒸着膜を形成することができる。
【0012】
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の真空アーク蒸着装置において前記各アークスポット検出用センサーの金属イオン量を受信する受信手段と、所定の蒸着条件を記憶する記憶手段と、受信した各金属イオン量の積分値を演算する演算手段と、各金属イオン量の積分値が等しくなるようにアノード又はカソードに流すアーク電流を制御する制御手段とを備えてなることを特徴とするものである。成膜状況に応じて、アークスポットの位置を自動制御することができ、基材の表面に、所望の膜厚の蒸着膜の形成をすることができる。
【0013】
また請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の真空アーク蒸着装置において、前記金属イオンと反応させるプロセスガスの吹出口を前記基材の近傍(例えば、10〜100mm離れた距離)に配設し、この吹出口の位置を、前記アークスポット検出用センサーが検出したアークスポット位置に合わせて、移動させる吹出口移動機構を設けてなることを特徴とするものである。プロセスガスの吹出口を、アークスポット検出用センサーが検出したアークスポット位置に合わせて移動させることにより、金属イオンとプロセスガスの成分比を一定の保つとともに、金属イオンとプロセスガスの反応を迅速に行うことができる。この結果、基材表面の蒸着膜の中のガス成分濃度を一定に保つことにより、蒸着膜の品質を向上でき、さらに真空蒸着の生産性を飛躍的に高めることができる。
【0014】
また請求項7の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の真空アーク蒸着装置において、前記金属イオンと反応させるプロセスガスの吹出口を前記基材の近傍(例えば、10〜100mm離れた距離)に複数個配設し、前記アークスポット検出用センサーが検出したアークスポット位置に近い前記吹出口からプロセスガスを吹出す機構を設けてなることを特徴とするものである。アークスポット検出用センサーが検出したアークスポット位置に近い前記吹出口からプロセスガスを吹出すことにより、同様に、基材表面の蒸着膜の中のガス成分濃度を一定に保つことにより、蒸着膜の品質を向上でき、さらに真空蒸着の生産性を飛躍的に高めることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の実施の形態の構成を示す図であり、図2は本発明の実施の形態のアークスポット検出用センサーの取付状態を示す図であり、図3は本発明の実施の形態のアークスポット検出用センサーからの信号を示す図である。
図1に示すように、本実施の形態の真空アーク蒸着装置は、真空チャンバー1の内部に棒状のカソード2(長さは600mm)が配置されている。なお、カソードを冷却するために中空となっている。
【0016】
このカソード2の外周に、棒状アノード9が配設され、この棒状アノード9は、上部リング状アノード3と下部リング状アノード4により固定されている。
【0017】
基材8は前記棒状のカソード2の外周側に配設され、前記基材8は図示しない回転機構により、カソード2の外周を公転するとともに自転する構成になっている。これは、基材の全面を蒸着させるためである。
【0018】
さらに、前記右側の基材8の外周側にカソードの軸方向に平行に等間隔で6ヶ所にイオンセンサー5A(アークスポット検出用センサー)を設けたアークスポット検出用センサー群5が配設されている。アークスポット検出用センサー群の詳細な取付状態を図2に示す。
【0019】
アークスポット検出用センサーに用いたイオンセンサーは長さ100mmの金属パイプの上下端を絶縁して6個連結したものである。この金属パイプの表面で、アークスポットから飛び出した金属イオンを補足するものである。
【0020】
前記イオンセンサー5Aは、図1に示すように、電流計6と直流電源7に接続されており、アース20により接地されている。イオンセンサー5Aが真空アーク放電により蒸発した金属イオンを捕捉し、その金属イオン量を電流計6で読み取った電流量の大小によって判断する。この検出した金属イオン量が最大となるイオンセンサー、すなわち、アークスポット検出用センサーに正対する位置のカソードの上に、アークスポットが存在することになる。
このとき、予め、カソード上のアークスポットの位置変化を、複数個のアークスポット検出用センサーが検出する金属イオン量の差異に基づいて測定しておき、この測定結果を基に、カソード上のアークスポット位置を求めることができる。
【0021】
アーク電源10は第1アーク電源10Aと第2アーク電源10Bとからなり、上部のリング状アノード3は第1アーク電源10Aの陽極に接続し、前記下部のリング状アノード4は第2アーク電源10Bの陽極に接続されている。
また、前記カソード2の上端部は第1アーク電源10Aの陰極に接続され、前記カソード2の下端部は第2アーク電源10Bの陰極に接続されている。前記各アーク電源10は、制御装置11によりその出力電流値を独立して制御され、真空容器1とは絶縁されている。
【0022】
本実施の形態の真空アーク蒸着装置の作動について説明する。前記基材8の表面に蒸着膜を形成させるには、前記カソード2から真空アーク放電を発生させ、カソードを構成する金属を蒸発させて、イオン化させるものである。真空アーク放電の発生は、図示されていない真空ポンプにより真空チャンバー1内を排気して所定圧の真空状態を保ち、その後、図示しないストライカ(点火装置)によりカソードに真空アーク放電を発生させるものである。カソードの表面にアーク電流が集中したアークスポットが現れ、カソードを構成する金属を蒸発させ、イオン化させることとなる。この時、アークスポットはカソード上を移動する。
【0023】
前記金属イオンは、真空チャンバー1内に設置した基材8に向かって移動し、前記基材8の表面に蒸着膜を形成する。基材8には、必要に応じて図示しない電源によって負の電圧(バイアス電圧)が印加し、前記金属イオンを加速しながら蒸着膜形成をすることができる。
【0024】
基材8の蒸着膜形成に関与しなかった金属イオンの一部は、前記基材8の後方にあるアークスポット検出用センサー群5に達し、各イオンセンサーに捕捉され、各イオンセンサーは電流値より捕捉したイオン量を計測する。
この場合は、棒状のカソードの軸方向の各位置での平均的なイオン量を計測することになる。通常、アークスポットは棒状のカソードの円周方向で回転しながら軸方向に移動するので、ある一定時間をとれば円周方向のアークスポットの存在確率がほぼ等しくなると考えることができるため棒状のカソードの軸方向の各位置での平均的なイオン量を計測することになるものである。
【0025】
各イオンセンサー電流値の測定結果を図3に示す。(1)から(6)までの信号が、図2の6つのイオンセンサー5Aからの信号であり、横軸は時間軸であり、縦軸は電流値を示す。各信号の波の高い部分が金属イオンをより多く捕捉したことを示し、同じ時間軸で最大の電流量を示している位置がアークスポットが存在する位置となる。(1)から(6)までの信号の波が交互に大きくなっているのは、アークスポットがカソード上を動いていることを示しているものである。
【0026】
これらイオンセンサーからの信号を基に、真空アーク放電のアーク電流の制御することにより、基体の表面の成膜状況に応じてアークスポットの位置を任意に制御できる。例えば、イオンセンサーの各信号の積分値を制御パラメータとして、積分値が一定になるようにアークスポット位置を制御することにより、基体の表面に所望の膜厚分布の蒸着膜を形成する。
【0027】
アークスポットの位置の制御による所望の膜厚の蒸着膜の形成方法について、図5に基づきさらに説明する。(ステップ1)において、所定の蒸着条件を記憶手段記憶する。蒸着条件として、例えば、アークスポットの電流の積分設定値を入力手段により前記記憶手段に入力して記憶させるものである。このアークスポットの電流の積分の設定値は予め、実験等により求めておく。
【0028】
(ステップ2)において、各イオンセンサーのアークスポット信号を受信手段により受信する。この各アークスポット信号を(ステップ3)の演算手段により、各アークスポット信号の電流の積分値を演算する。
次に、(ステップ4)の制御手段により、各アークスポット信号の電流の積分値を比較して、各アークスポット検出用センサーのアークスポットの電流の積分値が等しくなるようにアーク電流を制御をする。
【0029】
さらに、(ステップ4)の判断手段により、前記蒸着条件(アークスポットの電流の積分設定値)と前記各アークスポット信号の電流の積分値の差異を判断し、前記各アークスポット信号の電流の積分値が小さい場合は、(ステップ2)にもどり、引き続き真空蒸着を行う。
前記各アークスポット信号の電流の積分値が大きくなった場合は、真空蒸着を完了する(ステップ6)。
【0030】
このときの真空アーク放電のアーク電流の制御について説明する。真空アーク放電のアーク電流の制御には、アノードに流すアーク電流を調整する方法と、カソードに流すアーク電流を調整する方法がある。アークスポット位置制御は、アノードに流すアーク電流を調整する方法を用いることにより、より効果的に制御することができる。この調整方法を図1により説明する。なお、制御電源12は制御装置11により、その極性及び制御電流の大きさを変えることができる構成になっている。
【0031】
上下のアーク電源10A、10Bからは、等しいアーク電流Iを投入し、制御電源12から制御電流Ixを上部リング状アノード3に向かって投入すれば、上部リング状アノード3にはI+Ixのアーク電流が流れ、下部リング状アノード4にはI−Ixのアーク電流が流れることになる。すなわち、制御装置11により制御電流Ixの極性および大きさを変化させることにより、アノードに流すアーク電流を変えることができる。
【0032】
このアノードに流すアーク電流を調整することにより、アークスポットの位置を制御できる。例えば、上部リング状アノードへのアーク電流を下部リング状アノードへのアーク電流の比率を
▲1▼ 上部リング状アノード/下部リング状アノード比= 3/1
▲2▼ 13/12
▲3▼ 12/13
▲4▼ 1/3
に変えた場合の基体の成膜速度分布量を図4に示す。このように、アノードに流すアーク電流を調整することにより、アークスポットの位置を制御するものである。図4において、各ピークの位置がアークスポットの存在確率が高い領域となり、成膜量が多い。
このようにして、棒状のカソードの軸方向のアークスポットの位置を制御することができる。前述したように、ある一定時間をとれば円周方向のアークスポットの存在確率ほぼ等しくなると考えることができるために、棒状のカソードの円周方向の制御を考慮する必要性はすくない。
【0033】
さらに、真空チャンバー1には窒素、酸素、炭化水素等のプロセスガスを導入し、前記カソードを構成する金属との化合物(窒化物、酸化物、炭化物またはこれらの複合化合物)の蒸着膜を形成する別実施の形態を図6、図7に基づきさらに説明する。
本実施の形態は、前述の実施の形態の真空アーク蒸着装置に、反応性ガスの導入口を設けたものである。図6は、アクチュエータにより上下に動く構造のプロセスガス導入管を設けた真空アーク蒸着装置を示す図であり、図7は、複数本のプロセスガス導入管を設けた図である。
【0034】
まず、図6により説明する。プロセスガスの吹出口を基材の外周側の外側10〜100mmに設ける。このプロセスガスの吹出口22はプロセスガス導入管21により真空チャンバー1の外の窒素、酸素、炭化水素等のプロセスガスの供給機構と連結されている。このプロセスガス導入管21は真空チャンバー1上に配設されたアクチュエータ23により上下に動く構造になっている。このアクチュエータ23は、アークスポット検出用センサー5より得られるカソード2上のアークスポット位置に合わせて、プロセスガス導入管を移動させてプロセスガスの吹出口を、カソード上のアークスポット位置に正対させる。
例えば、図6において、カソード上のアークスポット位置がAの場合は、プロセスガスの吹出口をA’に、カソード上のアークスポット位置がBの場合は、プロセスガスの吹出口をB’にするものである。
【0035】
このように、アークスポット位置にあわせて、プロセスガスの吹出口を移動させるので、基材表面に蒸着される反応生成物中のガス成分濃度を一定に保つことができる。このため、従来のプロセスガスの吹出口が固定されている場合に比べ、蒸着膜のガス成分のバラツキが少なくなり、蒸着膜の品質を飛躍的に向上させる。さらに、金属イオンとプロセスガスの反応をより迅速に行うことができ、蒸着の生産性が向上する。
【0036】
次に、図7について説明する。図7は、金属イオンと反応させるプロセスガスの吹出口22を基板8から基板の外周方向に10〜100mmの位置に、100mm毎にアークスポット検出用センサー5のそれぞれに正対する位置に6個配設したものである。カソード2上のアークスポット位置と対応するアークスポット検出用センサーに正対するプロセスガスの吹出口22からフロセスガスを吹出し機構24によりプロセスガスを吹き出させて金属イオンと反応させるものである。
前述の図5の実施の形態と同様に、蒸着膜のガス成分のバラツキが少なくなり、蒸着膜の品質を飛躍的に向上させる。さらに、金属イオンとプロセスガスの反応をより迅速に行うことができ、蒸着の生産性が向上する。
【0037】
以上、本実施の形態は、アークスポット検出用センサー群が有するイオンセンサーの数が6個で、アークスポット検出用センサー群の設置は1か所の例を示したが、本実施の態様に限定されるものでない。アークスポット検出用センサー群の配設位置や設置個数、およびアークスポット検出用センサー群が有するイオンセンサーの数は、蒸着条件により変えることができる。
本実施の形態では、基材8はカソード2の外周を公転するので、イオンセンサー群は、1ヶ所あればばよい。なお、基材8はカソード2の外周を公転しない場合は、イオンセンサー群を複数ヶ所設ける必要がある。
【0038】
本実施の形態は、長尺で棒状のカソードであるが、長方形や楕円状の平板のカソードも本発明の技術的範囲に入る。平板のカソードの長辺又は長径方向に、アークスポット検出用センサーを配設することにより、棒状のカソードの場合と同様にアークスポット位置を検出でき、所望の膜厚分布を有する蒸着膜を得ることができる。
【0039】
【発明の効果】
そこで本発明は、カソード上の全域にわたってアークスポットの位置を検知して、カソード上のアークスポットの位置を任意に制御することにより、基材の表面に所望の膜厚分布の蒸着膜を形成することを可能となる。
また、プロセスガスの吹出口を、アークスポット位置にあわせて移動することにより、蒸着膜のガス成分のバラツキが少なくでき、蒸着膜の品質を飛躍的に向上させる。さらに、金属イオンとプロセスガスの反応をより迅速に行うことができ、蒸着の生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態のアークスポット検出用センサーの取付状態を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態のアークスポット検出用センサーからの信号を示す図である。
【図4】アーク電流バランスと成膜速度分布の関係を示す図である。
【図5】アークスポットの位置の制御による基体の表面への均一な蒸着膜および所望の膜厚の蒸着膜の形成方法を示す図である。
【図6】本発明の他の実施の形態の構成を示す図である。
【図7】本発明の別の実施の形態の構成を示す図である。
【図8】従来の真空アーク蒸着装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 真空チャンバー
2 カソード
3 上部リング状アノード
4 下部リング状アノード
5 アークスポット検出用センサー群
5A イオンセンサー(アークスポット検出用センサー)
6 電流計
7 直流電源
8 基材
9 棒状アノード
10 アーク電源
10A 第1アーク電源
10B 第2アーク電源
11 制御装置
12 制御電源
13 アーク電源
14 制御回路
15 センサー
16 コイル電源
17 電磁コイル
18 ストライカ
19 絶縁器
20 アース
21 プロセスガス導入管
22 プロセスガスの吹出口
23 アクチュエータ
24 吹出し機構

Claims (7)

  1. アノードとカソードを有し、このカソードを構成する金属を基材の表面に蒸着する真空アーク蒸着装置において、
    前記カソード面に正対し、カソード面から等距離に、かつ、カソードの長辺又は長径方向に、複数個(二個を除く)のアークスポット検出用センサーを設け、該アークスポット検出用センサーの検出信号を基に基材表面の成膜状況に応じてアークスポットの位置を任意に制御することを特徴とする真空アーク蒸着装置。
  2. 前記カソードが棒状であり、この棒状のカソードの軸方向に平行に、前記複数個(二個を除く)のアークスポット検出用センサーを設けてなることを特徴とする請求項1記載の真空アーク蒸着装置。
  3. 前記アークスポット検出用センサーを基材位置のカソードの反対側の離れた位置に設けてなる請求項1又は2記載の真空アーク蒸着装置。
  4. 前記各アークスポット検出用センサーが検出した金属イオン量の積分値等しくなるように制御可能としたアーク電源装置を設けてなることを特徴とする請求項12又は3記載の真空アーク蒸着装置。
  5. 前記各アークスポット検出用センサーの金属イオン量を受信する受信手段と、所定の蒸着条件を記憶する記憶手段と、受信した各金属イオン量の積分値を演算する演算手段と、各金属イオン量の積分値が等しくなるようにアノード又はカソードに流すアーク電流を制御する制御手段とを備えてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の真空アーク蒸着装置。
  6. 前記金属イオンと反応させるプロセスガスの吹出口を前記基材の近傍に配設し、この吹出口の位置を、前記アークスポット検出用センサーが検出したアークスポット位置に合わせて、移動させる吹出口移動機構を設けてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の真空アーク蒸着装置。
  7. 前記金属イオンと反応させるプロセスガスの吹出口を前記基材の近傍に複数個配設し、前記アークスポット検出用センサーが検出したアークスポット位置に近い前記吹出口からプロセスガスを吹出す機構を設けてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の真空アーク蒸着装置。
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