JPH10306217A - 増粘性成形組成物の製造法 - Google Patents

増粘性成形組成物の製造法

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JPH10306217A JP10021906A JP2190698A JPH10306217A JP H10306217 A JPH10306217 A JP H10306217A JP 10021906 A JP10021906 A JP 10021906A JP 2190698 A JP2190698 A JP 2190698A JP H10306217 A JPH10306217 A JP H10306217A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 増粘剤と収縮抑制剤としての機能を有する添
加樹脂を含有する増粘性成形組成物の製造を提供する。 【解決手段】 不飽和モノマーを溶媒とする架橋性基剤
樹脂の熱溶液および該基材樹脂に対して不完全な相溶性
を示す結晶性飽和添加樹脂の溶融物を混合して得られる
熱混合物を、該添加樹脂の融点(Tm)よりも高く該基材
樹脂の架橋温度よりも低い温度からTmよりも低い温度
まで冷却させる工程を含む増粘性成形組成物の製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、成形用途、特に、
シート状成形材料(SMC)および粒状成形材料(GM
C)の配合成分として有用な増粘性成形組成物の製造法
に関する。
【0002】
【従来の技術】SMCは多くの用途に用いられており、
一般に個々のモールドに適合するように比較的堅くてド
レープ性のある架橋性ポリマー組成物(必要に応じて充
填剤、細断ガラス繊維およびその他の配合剤を含んでい
る)から得られる革様シートを含んでいる。該シート状
材料は圧縮後、加熱されて成形品に成形される。通常、
該組成物の基材ポリマーは遊離の−COOH基を含む不
飽和ポリエステルである。
【0003】以下の表−1に示す代表的な配合処方によ
って調製されるSMCに対して要求される基本的な特性
は次のとおりである。 (1)個々のモールドに適合させるために、容易に裁断す
ることができるように室温で取扱い易くなければならな
い。即ち、比較的剥離性が高く、不粘着性でなければな
らない。 (2)所定の成形圧力と成形温度下において、シート状材
料の全構成成分が、表−1に示す配合成分の分離を伴う
ことなく、モールド内を均一に充填するような流動性を
有していなければならない。 (3)所定の温度下において、成形材料がモールドの隅々
まで行き渡った後、不飽和樹脂成分が架橋して一定形態
の成形品を形成しなければならない。表−1の配合物に
おいては、スチレンによって不飽和ポリエステルは架橋
される。 表−1:SMCの一般的な配合処方 配合成分 配合量(重量%) *スチレンモノマーに溶解させた 不飽和ポリエステル 25 *収縮抑制剤 5 *触媒 0.3−0.5 *充填剤(例えば、白墨) 40−50 *剥離剤 0.4−0.5 増粘剤 0.2−0.4 ガラス(25mm) 25 *印を付した配合成分は、高剪断ミキサーを用いて最初に混合される。
【0004】表−1に示したガラス補強剤不含配合物は
室温で約200ポアズ(20Pas)の粘度を有している
が、上記の要件(1)を満たすためには、実用上は、室温
で約10000ポアズ(1kPas)の粘度が要求される。
しかしながらこの粘度は上記の要件(2)に対しては高す
ぎる。したがって、これらの要件(1)および(2)の両方
を満たすためには、次の2つの工程が必要となる: (i)不飽和樹脂は取扱いやすい所望の粘度を得るために
室温で増粘しなければならない。 (ii)圧力が加えられる時に流動し易くするために、モー
ルド内に装填された後、粘度は急激に減少しなければな
らない。 最初の段階はSMCの「予備増粘」として知られており、
この増粘工程は、通常は不飽和ポリエステル樹脂中に残
存するカルボン酸基とII族金属の酸化物または水酸化物
(代表的にはMgO)との化学反応を利用しておこなう。
【0005】表−1に示された組成物を原料とするSM
Cは、次の4つの基本的な工程に従って製造される: (a)粒状充填剤と金属の酸化物または水酸化物とを樹脂
に高剪断混合する。 (b)得られたペーストをコンベヤー上をシート状態で移
動させ、該ペースト上にロービングから現場細断される
ガラス繊維を散布する。 (c)得られた繊維強化樹脂シートを固めて、混入する空
気を押し出す。 (d)成形に先立って予備増粘反応を緩慢に進行させるこ
とによってシートの粘度を増加させる。 一般的には、シートは数日間貯蔵して熟成させる。一般
にシートの粘度は予備増粘の開始から約2日後に所望の
値に達する。
【0006】この化学反応の効果は、金属錯塩によるポ
リエステル鎖の架橋によって不安定な網状構造を形成す
ることである。この反応の架橋度は、樹脂中のカルボン
酸基の濃度によって左右されるので、これのために予備
増粘工程は注意深く監視しなければならない。実際上
は、粘度の増加速度および最終粘度は予備増粘剤の粒径
と樹脂中含水量に影響される。混合工程(a)の間の粘度
の増加は、(b)工程において、樹脂による繊維の湿潤化
が不十分になる程度にすべきではない。同時に、条件お
よび濃度は熟成が上述したように適正な時間に達成され
るようにしなければならない。普通の増粘過程の欠点
は、それが可逆的でないことである。もし予備増粘ペー
ストが(b)工程において、ガラス繊維へ十分にすばやく
添加されなければ、これらの繊維を十分に湿潤させるに
は粘度が高くなりすぎるので、バッチ全体が無駄にな
る。
【0007】SMCの成形工程においては、不飽和モノ
マーは触媒の存在下で該モノマー自体およびポリマーの
不飽和結合と反応して、ポリマー鎖が数モノマー単位の
長さの架橋を通して結合した、永久的な共有結合性網状
構造が形成される。一般にこの架橋反応は100℃以上
でおこなわなければならず、これによってII族金属とポ
リエステル樹脂との間に形成された結合は切断される。
この永久的な架橋反応工程においては、樹脂の体積は1
0%まで収縮する。この収縮を抑制しない場合には、成
形材料がモールドの寸法通りの成形体を形成しないだけ
でなく、成形材料の表面に補強繊維が浮き出して成形体
の美観が損われる。
【0008】従来、ポリエステル−スチレンのSMCに
おける成形収縮の抑制は、SMC配合物へ、熱可塑性樹
脂のスチレン溶液を加えることによってなされていた。
通常、この溶液は約30重量%の熱可塑性樹脂を含有す
る。適当な熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ポリ
酢酸ビニル、ポリカプロラクトンおよびポリメタクリル
酸メチル等が使用されており、比較的最近になって、あ
る種のポリブタジエンも使用されるようになっている。
熱可塑性樹脂溶液に対する不飽和ポリエステル樹脂の一
般的な使用量は、重量比で90:10〜60:40であ
る。
【0009】SMC配合物の予備増粘に用いるII族金属
の酸化物または水酸化物の代替物としては、結晶性ポリ
エステル増粘剤が知られている(スコット・ベーダーに
よる英国特許出願A−21111513号明細書参
照)。このようなポリエステルの使用には、熟成が不要
で、配合材料を冷却後、すぐに使用できるなどの利点が
ある。該英国特許出願によると、結晶性ポリエステル
は、硬化中にビニルモノマー(例えば、スチレン)との架
橋反応にも関与できるように、不飽和であることが好ま
しい。しかしながら、取扱い易さの観点からは、結晶性
ポリエステルを芳香族ビニルモノマー(例えば、スチレ
ン)に溶解した溶液としてSMC配合材料中に混合する
のが好ましく、この場合、該ビニルモノマーも架橋反応
に関与する。
【0010】該英国特許出願明細書に開示されている結
晶性ポリエステルを用いることによって、長い熟成時間
は不要となるが、成形中の収縮を減少または防ぐため
に、熱可塑性樹脂を加えることが必要である。さらに芳
香族ビニルモノマーへの結晶性ポリエステルの溶解は、
付加的な工程をもたらし、また、該ビニルモノマーの架
橋反応への関与によってポリマー鎖間のモノマー架橋の
望ましくない増加をもたらす。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
の問題を解決することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】即ちこの発明は、下記の
工程(1)〜(5)を含む、不飽和モノマー中に溶解された
架橋性基材樹脂を含有する増粘性成形組成物の製造法に
関する: (1) 架橋性基材樹脂と不飽和モノマーとの混合物を形
成させ、(2)(i)室温で結晶性であって、融点(Tm)が
基材樹脂の架橋温度(Tc)よりも低い飽和樹脂であり、
(ii)下記の熱混合物中においてTmよりも高温で液体と
して分散され、(iii)下記の工程(5)において熱混合物
をTbからTmよりも低い温度まで冷却したときに成形
組成物中に分散された状態の微結晶ドメインを形成する
ような不完全な基材樹脂に対する相溶性を有し、および
(iv)室温で成形組成物を増粘させるが、成形温度におい
ては溶融状態を維持して成形収縮を抑制するという性状
を有する添加樹脂をTmよりも高い温度まで加熱して溶
融させ、(3)架橋性基材樹脂と不飽和モノマーとの混合
物をTmよりも高い温度まで加熱して不飽和モノマーを
溶媒とする基材樹脂の熱溶液を形成させ、(4)不飽和モ
ノマーを溶媒とする基材樹脂の熱溶液と溶融添加樹脂を
Tmよりも高くTcよりも低い温度(Tb)で混合するこ
とによって基材樹脂、不飽和モノマーおよび添加樹脂の
熱混合物を形成させ、次いで、(5)熱混合物をTbから
Tmよりも低い温度まで冷却することによって成形組成
物を増粘させる。
【0013】本発明によれば、架橋性基材樹脂、該基材
樹脂を溶解する不飽和モノマー、および室温で結晶性の
固体であって、該基材樹脂の架橋反応が有意な速度で進
行する温度(Tc)以下の融点(Tm)を有する飽和添加樹脂
を含有するポリマー組成物であって、該組成物をTmと
Tc間の温度から、Tmと室温間の温度まで冷却すると、
該添加樹脂が、該基材樹脂鎖の間を縫うように通り抜け
る該添加樹脂鎖によって連結された分配微結晶ドメイン
を形成することによって増粘網状構造が形成され、該増
粘網状構造がTc以下の温度まで加熱されると元の添加
樹脂分子に可逆的に破壊され、該添加樹脂分子が、成形
中の該架橋反応によって形成される永久的な基材樹脂網
状構造を膨張させ、これによって成形後収縮に対する耐
性が付与されることを特徴とするポリマー組成物が得ら
れる。
【0014】本発明による上記製造法は、要するに、飽
和添加樹脂をその融点(Tm)以上の温度まで加熱し、該
溶融樹脂を、Tm以上の温度であって、基材樹脂の架橋
反応が有意な速度で進行する温度(Tc)以下の温度に保
持した不飽和基材樹脂と不飽和モノマーとの混合物と混
和し、該混和物をTm以下の温度まで冷却する工程を含
み、該混和物がTm以下に冷却されると、該添加樹脂
が、該基材樹脂鎖の間を縫うように通り抜ける該添加樹
脂鎖によって連結された微結晶ドメインを形成すること
によって増粘網状構造が形成され、該増粘網状構造がT
c以下の温度まで加熱されると元の添加樹脂分子に可逆
的に破壊され、該基材樹脂の架橋反応によって形成され
る基材樹脂網状構造が、該添加樹脂によって該架橋反応
中に膨張され、これによって成形後収縮に対する耐性が
付与されることを特徴とするものである。
【0015】本発明には、上記組成物を加熱して基材樹
脂の架橋をおこなうことを含む、成形品の製造方法も包
含される。
【0016】本発明は、ポリマー組成物を増粘させると
共に成形後の収縮を付加的な収縮抑制剤を添加すること
なく防止または軽減するという二つの機能を有する飽和
添加樹脂を配合したポリマー組成物の製造方法を提供す
るものである。本発明によるポリマー組成物は補強剤を
含んでいてもよく、従ってシート状成形材料の配合材料
として特に有用である。しかしながら、本発明による組
成物は、予備増粘や耐収縮特性が要求される他の成形用
途においても有用である。一つの例は、本発明による組
成物は耐収縮特性を有するので、成形品のモールド壁か
らの離反を防ぐために必要な高圧力を使用しない射出成
形である。他の例は、粒状成形材料(GMC)製造のため
の引抜成形技術におけるものである。この場合、連続的
繊維をダイから引抜き、これをポリマー組成物を用いて
被覆するが、該組成物は増粘されているので、該繊維か
らたれることはない。引抜成形物またはそれから製造さ
れるレースは粒状体に切断されて貯蔵され、次いでモー
ルド内へ注入または移送され、該モールド内で架橋して
成形品を形成する。本発明の組成物はドウ成形材料とし
ても使用することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明を添付図に基づいてさらに
説明する。図1は、増粘樹脂組成物の分子構造を示す模
式図である。図2は、架橋組成物の分子構造を示す模式
図である。増粘効果が発揮されるためには、基材樹脂お
よび添加樹脂は相互に部分的な相溶性を有していなけれ
ばならない。即ち、一方ではそれらは真の溶液を形成せ
ず、他方ではこれらの2種の樹脂には相互にほとんど完
全な分離が起こらない程度の不溶性がなければならな
い。樹脂間に特別な水素結合が存在しない樹脂対の場合
には、0.5〜3.5MPa1/2の溶解度パラメーターの差
(△δ)に相当する半相溶性が好ましい。最適な効果をも
たらすより好ましい△δは1.0〜2.5MPa1/2であ
る。
【0018】ポリマーに対する溶解度パラメーター(δ)
はグループ寄与法(group contribution method)に基づ
く計算法、例えばスモールによって提案された方法(ピ
ー・エイ・スモール;ポリマーの溶解度に影響を及ぼす
いくつかの要因、ジャーナル・オブ・アプライド・ケミ
ストリー、第3巻、第61頁、1953年)によって決
定することができる。ポリマー鎖の種々の部分に対する
“モル引力定数(molar attraction constants) ”(F2)
の値を合計することによって、ポリマー分子の溶解度パ
ラメーター(δ)の値を決定することができる。
【0019】Fiの値は、表から知ることができ、式
(1)によって溶解度パラメーターδと関係づけられる。
【数1】 式中、V=ΣViであり、Vはポリマーの全体積を示
し、Viは各グループの寄与体積を示す。違う著者によ
って報告されているグループの寄与の値は著者によって
異なっているので(ディー・ダブリュー・ファン・クレ
ベレンおよびピー・ジェイ・ホフチャー共著「ポリマー
の特性」、第2版、第8章、エルセビヤー、アムステル
ダム、1976年)、異なった物質を比較するときに
は、自己矛盾のないセット値を用いることが必要であ
る。
【0020】基材樹脂が異なった官能基を併有する場合
には、基材樹脂の溶解度パラメーターとしては個々の官
能基の値の加重平均値を採用し、この値に応じて添加樹
脂の種類を選択する。しかしながら、基材樹脂が、平均
オリゴマー鎖長の事実的な部分を構成する異なった官能
基のブロックを含むときには、本発明においては、基材
樹脂の各々長いブロックの種類に対応する複数の添加樹
脂を使用する。
【0021】基材樹脂が添加樹脂と特別な相互作用する
基を含む場合には、溶解度パラメーターの基準は、特別
な相互作用のない場合に対して定義される溶解度パラメ
ーターの差(△δ)によって限定される値に相当する基材
樹脂と添加樹脂との間の部分的相溶性を必要とする溶解
度パラメーターが基準とされる。溶解度パラメーターの
差によって表される部分的相溶性に関する基準要件によ
って次のことが保証される。即ち、Tm(添加剤結晶の融
点)以上の温度から冷却したときに、Tmにおいて生じ始
める添加樹脂の結晶化は、基材樹脂の分子鎖の存在によ
って妨げられて抑制されるので、図1に示すように、添
加樹脂は(i)一部分においてのみ、(ii)微結晶でない添
加樹脂の分子鎖(2)によって結合された分配微結晶ドメ
イン(1)の形態で結晶化する。この場合、添加樹脂の分
子鎖(2)は基材樹脂の分子鎖(3)を縫うように通り抜け
ている。この微結晶が主に形成される温度は室温とTm
の間、典型的にはTmより8−15℃以下である。
【0022】このようにして達成される基材樹脂の増粘
度は、(a)添加樹脂の使用量、(b)不溶性の程度、(c)
Tm以上の温度からの組成物の冷却速度による。一般
に、(a)および(b)を増加させると、組成物中の2種の
樹脂の有意な分離が得られる限界まで長期の結晶化度を
増加することによって達成される増粘度が増加する。一
般に冷却速度を高めると、短期の増粘度が低下し、これ
によって長期の結晶化度はわずかな影響を受けるだけで
ある。また、これによって、増粘組成物の長期の取扱適
性に影響を与えることなく、強化繊維を効率よく湿潤さ
せることができる。前述のように、網状構造は、微結晶
網状構造の結節(nodes)が冷却により生成する温度より
もいくらか高い温度まで組成物を加熱することによって
可逆的に形成させることができ、これによって、従来の
増粘組成物においては関係しなかった過程をさらに抑制
することができる。
【0023】本発明は、増粘組成物が最終製品へ成形さ
れる段階、即ち、造形ダイもしくはモールド内において
増粘組成物を基材樹脂の架橋温度Tcまで圧縮加熱した
後で基材樹脂の分子鎖およびモノマー分子が結合して永
久的な網状構造を形成する段階において、重要な利点を
もたらす。この網状構造を図2に示す。この場合、基材
樹脂の分子鎖(3)は不飽和モノマーから誘導されるブリ
ッジ(4)を介して架橋される。添加樹脂は基材樹脂と部
分的な相溶性しかなく、このために飽和は架橋反応中に
は起こらないので前者は後者を含む網状構造に自動的な
膨潤圧を及ぼす(図2参照)。この膨潤圧によって、特別
な収縮抑制剤が加えられる従来の配合組成物(表I)にお
いて問題となる架橋基材樹脂の冷却による収縮は防止さ
れる。本発明によってもたらされる収縮抑制度は、基材
樹脂の分子鎖(3)の間にブリッジ(4)を形成するモノマ
ーの量および組成物中の添加樹脂の含有量によって調整
することができる。添加樹脂の割合は本発明組成物に要
求される増粘特性によってもある程度左右されるが、本
発明は所望の収縮抑制を達成するために十分な制御パラ
メーターを提供する。さらに、架橋反応は、不飽和ポリ
エステル樹脂がII族金属の酸化物または水酸化物を用い
て増粘される場合よりも低い温度でおこなうことができ
る。
【0024】上述のように、本発明においては、基材樹
脂のほかに添加樹脂を必要とする。この場合、増粘網状
構造(図1)が十分に形成されるためには一定の最小平均
鎖長ユニットが必要であり、また、Tmにおける溶融後
に基材樹脂と容易に混合できるためには一定の最大平均
鎖長ユニットが必要である。添加樹脂の典型的な最小鎖
長ユニット数は8〜20であり、典型的な最大鎖長ユニ
ット数は20〜40であるが、本発明においてはこの範
囲外でも用いることができる。
【0025】使用してもよい基材樹脂の例としては、不
飽和な酸無水物もしくは二塩基酸(例えば、無水マレイ
ン酸またはフマル酸)とジオール(例えば、エチレングリ
コールまたはジエチレングリコール)との縮合生成物か
ら誘導される不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。こ
のような樹脂に用いられる不飽和溶媒としては、ビニル
モノマー、例えばスチレンが挙げられる。基材樹脂とし
ては常套の不飽和ポリエステル−スチレン樹脂を使用し
てもよく、該基材樹脂は、エステル基およびウレタン基
を有しかつ次式(I)で示される末端基を有しているオリ
ゴマーを含有していてもよい:
【化1】 式中、RはHまたはCH3であり、xは10より小さい
整数、好ましくは1〜3の整数である。
【0026】オリゴマーの好ましい数平均分子量は15
00−3000である。オリゴマーはビス−フェノール
および酸化アルキレンから誘導される主鎖(backbone)を
有していてもよい。主鎖は次の構造(II)を有していても
よい。
【化2】 上記の型のオリゴマーは、本発明の組成物中に配合する
場合には、不飽和モノマー(例えば、メタクリル酸メチ
ルのようなアクリル酸エステル)中に溶解してもよい。
この種の一般的な基材樹脂の例としては、インペリアル
・ケミカル・インダストリーズ社から「MODAR」の商
品名で販売されているものが挙げられる。オリゴマーは
常套のフリーラジカル触媒を用いて架橋してもよい。
【0027】このようなウレタンアクリレート基材樹脂
を使用することによって、不飽和ポリエステル樹脂を基
材とする配合物の場合に比べて、耐薬品性、最終用途温
度、耐火特性(fire performance)および成形サイクル数
を改善することができる。さらに、不飽和ポリエステル
に比べウラクリレート(uracrylate)の粘度が低いので、
配合物中の強化ガラス繊維とのぬれ接触がより効果的に
おこなわれ、力学的特性が改良される。ウラクリレート
は末端カルボン酸残基もペンダント状のカルボン酸残基
も有していないので、金属酸化物を用いる常套法によっ
ては予備増粘することができず、従来はSMCの製造原
料としては利用されていなかった。
【0028】上記オリゴマーと不飽和ポリエステルと併
用する好ましい添加樹脂としては、飽和ポリエステル、
例えば数平均分子量1500−3000、例えば約20
00、を有するポリエチレンアジペート(PEA)および
ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)が例示され
る。両者は比較的低価格であることから、増粘樹脂とし
て特に適している。
【0029】本発明の組成物に用いられる基材樹脂に対
する添加樹脂の配合量は要求される増粘度によって左右
され、添加樹脂の量が多いほどより大きな増粘度が得ら
れる。添加樹脂の適当な配合量は、例えば、基材樹脂の
20−40重量%である。
【0030】本発明の組成物は、添加樹脂を溶融させた
後、該溶融樹脂を、基材樹脂をそのモノマー溶媒に溶解
させた溶液と混合することによって調製してもよい。こ
の場合、該基材樹脂溶液の温度は、添加樹脂の融点(T
m)以上にする。該組成物はTm以下に冷却すると増粘す
るのでポリマー組成物用補強剤は、該組成物による十分
なぬれを保証するために、該組成物がTm以下に冷却さ
れる前に混ぜるべきである。
【0031】添加樹脂を溶融物として基材樹脂と混合す
ることの利点は、添加樹脂の溶解段階が不要となる点で
ある。さらに、添加樹脂用の不飽和溶媒が不要となるの
で、最終硬化製品における基材樹脂の分子鎖間の架橋結
合の長さは不利に長くならない。
【0032】前述のように、本発明の組成物は、(i)常
套の添加剤、即ち、充填剤やガラス繊維等と混合した
後、加熱増粘させることによって、常用されるシート状
材料を製造するためのSMC、および(ii)引抜成形レー
ス(pultruded lace)のような繊維物質(例えば、ガラス
繊維)の1またはそれ以上の連続ストランドと混合した
後、短い長さのグラニュール(granule)に切断される粒
状成形組成物(GMC)の配合材料として特に適してい
る。
【0033】本発明はSMCに関して、従来から常用さ
れている樹脂に比べていくつかの利点をもたらす。例え
ば、従来から常用されているポリエステル樹脂は、II族
金属の酸化物と反応して増粘効果をもたらす遊離の−C
OOH基を有していなければならず、これらの樹脂はこ
のような構造を有する樹脂として製造しなければならな
い。これに対して、本発明においては添加樹脂の使用に
よって増粘効果を発揮させるので、基材樹脂には遊離の
カルボキシル基は不要となり、基材樹脂の製法は特に限
定的ではない。このため、成形品の最終特性に有利な影
響を及ぼすヒドロキシル価の高い基材樹脂の使用が可能
となるが、II族金属によって増粘する樹脂の場合には高
ヒドロキシル価の樹脂は使用できない。該増粘反応は、
従来法の増粘反応に2日またはそれ以上の時間を必要と
したことに比較すれば事実上瞬間的であり、さらに可逆
的である。
【0034】この可逆性に起因して、繊維が樹脂組成物
によって十分にぬらされない場合には、微結晶の一部ま
たは全部が溶融するまで組成物を再加熱した後、冷却し
さえすればよい。本発明によって得られる組成物はほと
んど瞬間的に増粘されて、架橋後は収縮せず、このよう
な特性はグラニュールの製造およびモールド中における
該グラニュールの成形にとって特に有利である。この増
粘特性に起因して、グラニュールを最初の場所において
引抜成形したレースをグラニュールに切断することが可
能となる。一方、成形品の非収縮特性に起因して、低圧
力下での成形を安価なモールドを用いておこなうことが
可能となる。
【0035】
【実施例】本発明を以下の実施例によって説明する。実施例1 基材樹脂としてアクリレート残基を末端基とするウレタ
ン樹脂(以下、ウラクリレート樹脂と略記する)(即ち、
上記式(I)の末端基を有するオリゴマー)を使用し、添
加樹脂として飽和ポリエステルを用いることによってS
MC配合物を調製した。飽和ポリエステルとしては数平
均分子量2000の市販のポリエチレンアジペート(P
EA)を用いた。SMCの配合処方を以下の表−2に示
す。 表−2:ポリエチレンアジペート含有SMCの配合処方 配合成分 配合量(重量%) (a) (b) (c) メタクリル酸メチルモノマー 29.4 25.7 22.0 に溶解したウラクリレート樹脂 充填剤 36.4 36.4 36.4 (炭化水素) トリゴノックス(TRIGONOX) 0.8 0.8 0.8 (触媒) ステアリン酸亜鉛 1.1 1.1 1.1 (離型剤) ポリエチレンアジペート 7.3 11.0 14.7 ガラスマット 25.0 25.0 25.0 PEAは融点が約50℃で、室温で固体であるので、溶
融した後、ウラクリレート樹脂/充填剤混合物と混和
し、得られた混合物をホットテーブルを用いてこの温度
に保持された適量の細断ストランドガラスマット上へ塗
布した。このようにして製造されたSMCはポリテンシ
ートとセロファンシートの間において室温まで冷却し
た。PEAを選択した理由は、その溶解度パラメーター
[20(MPa)1/2]とウラクリレートの溶解度パラメータ
ー[20.7(MPa)1/2]の差が規定の範囲内にあること
である。
【0036】PEAをウラクリレート樹脂に添加するこ
とによって、約1ポアズ(0.1Pas)の粘度を有する該
樹脂は、室温で100000ポアズ(10kPas)の粘度
を有する順応性のある粘着性シートに変化した。予期し
たとおり、添加剤の使用量を変化させた場合、樹脂への
添加剤の割合が多いほど、より堅いシートが得られた。
検討したいずれの場合においても、十分な予備増粘効果
が得られた。PEAよりも幾分小さな溶解度パラメータ
ーを有するために、基材樹脂に対する非相溶性がより高
いポリヘキサメチレンアジペート添加樹脂でPEAを置
き換えた場合、前述のように、増粘効果が高まるか、ま
たは添加樹脂の量をより少なくすると同程度の増粘効果
が得られた。一般に、増粘されたシートの粘着性は、非
相溶性を本発明に規定する限度まで高めてゆくにつれて
減少することも判明した。
【0037】ウラクリレート樹脂へのPEAの添加によ
って、架橋樹脂網状構造の形成の間の収縮が防止され
る。これは、PEAとウラクリレートとの溶解度パラメ
ーターが類似しているので、溶融したPEAが反応温度
(約140℃)において網状構造を膨張させることに起因
する。室温まで冷却してゆくと、網状構造はPEAの結
晶化を妨害するので、膨張圧が保持され、これによって
収縮圧が相殺される。このような現象は実際に確認され
ており、例えば、表−2の配合処方において、小さな正
味の膨張が冷却に際して見られた。
【0038】実施例2 さらに本発明の基本的な概念を検討するために、PEA
またはPHMAを、SMCの製造に通常用いられている
標準的な不飽和ポリエステルに一定の割合で加えた(表
−3参照)。不飽和ポリエステルとPEAまたはPHM
Aの溶解度パラメーターの差はそれぞれ2および2.3
であり、これらの差は、本発明で規定される好ましい範
囲内にあるが、実施例1の場合よりも大きい。表−3 配合成分 配合量(重量%) ポリエステル−スチレン 32 充填剤(炭化水素) 30 トリゴノックス 0.8 ステアリン酸亜鉛 2.2 PEAまたはPHMA 10 ガラスマット 25 得られたシートは、(a)実施例1(ウラクリレート樹脂)
よりも非常に堅く、(b)期待されたとおり、PHMAを
配合した場合は、PEAを配合した場合に比べて、剛性
が高く、粘着性は低かった。従って、本発明はシート成
形材料(SMC)の製造において特定の利点をもたらす新
規な一群の増粘性成形組成物を提供する。しかしなが
ら、本発明はこの一群の組成物に限定されるものではな
く、可逆的増粘段階および/または硬化後収縮に対する
耐性を必要とする他の方法および組成物にも適用でき
る。
【0039】実施例3 基材樹脂として実施例1において用いたウラクリレート
樹脂を用い、基材樹脂の溶解度パラメーター(δ=20.
7)に対して好ましい範囲の限界にある溶解度パラメー
ター(δ)24MPa1/2を有する飽和ポリアミドワックス
(PAW)を添加樹脂として用いてSMC配合物を製造し
た。表−4にその配合処方を示す。 表 4 配合処方 配合量(重量%) ウラクリレート-メタクリル酸メチル 22 充填剤(炭化水素) 36 トリゴノックス 0 .8 ステアリン酸亜鉛 1.2 PAW 15 ガラスマット 25 得られたシートは、添加樹脂の量が全く同じである表−
2(実施例1)の(c)欄に挙げた組成物から生成されたも
のに一般的に類似した力学的特性を示した。実施例1お
よび3を考慮するならば、本発明は好ましい溶解度パラ
メーターの範囲(△δ)の上下限においても有効であるこ
とが明らかである。
【0040】
【発明の効果】この発明によれば、増粘と成形後の収縮
が特定の性状を有する結晶性添加樹脂によって同時に制
御できるという顕著な作用効果をもたらす増粘性成形組
成物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 増粘樹脂組成物の分子構造を示す模式図であ
る。
【図2】 架橋組成物の分子構造を示す模式図である。
【符号の説明】
1 微結晶ドメイン 2 添加樹脂の分子鎖 3 基材樹脂の分子鎖 4 ブリッジ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ジェームズ・エム・メスベン イギリス国 ウィラール エル・46 6・ イー・エックス、モアートン、ウーラー・ クローズ 23番 (72)発明者 デビッド・ロバート・ブラックバーン イギリス国 マンチェスター エム・20 8・エフ・イー、ウィッシングトン、メル ザム アベニュー 85番

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の工程(1)〜(5)を含む、不飽和モ
    ノマー中に溶解された架橋性基材樹脂を含有する増粘性
    成形組成物の製造法: (1) 架橋性基材樹脂と不飽和モノマーとの混合物を形
    成させ、 (2)(i)室温で結晶性であって、融点(Tm)が基材樹脂
    の架橋温度(Tc)よりも低い飽和樹脂であり、(ii)下記
    の熱混合物中においてTmよりも高温で液体として分散
    され、(iii)下記の工程(5)において熱混合物をTbか
    らTmよりも低い温度まで冷却したときに成形組成物中
    に分散された状態の微結晶ドメインを形成するような不
    完全な基材樹脂に対する相溶性を有し、および(iv)室温
    で成形組成物を増粘させるが、成形温度においては溶融
    状態を維持して成形収縮を抑制するという性状を有する
    添加樹脂をTmよりも高い温度まで加熱して溶融させ、 (3)架橋性基材樹脂と不飽和モノマーとの混合物をTm
    よりも高い温度まで加熱して不飽和モノマーを溶媒とす
    る基材樹脂の熱溶液を形成させ、 (4)不飽和モノマーを溶媒とする基材樹脂の熱溶液と溶
    融添加樹脂をTmよりも高くTcよりも低い温度(Tb)
    で混合することによって基材樹脂、不飽和モノマーおよ
    び添加樹脂の熱混合物を形成させ、次いで、 (5)熱混合物をTbからTmよりも低い温度まで冷却す
    ることによって成形組成物を増粘させる。
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