JPH10303507A - 半導体発光素子 - Google Patents

半導体発光素子

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JPH10303507A
JPH10303507A JP10925397A JP10925397A JPH10303507A JP H10303507 A JPH10303507 A JP H10303507A JP 10925397 A JP10925397 A JP 10925397A JP 10925397 A JP10925397 A JP 10925397A JP H10303507 A JPH10303507 A JP H10303507A
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emitting device
light emitting
znsse
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JP10925397A
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Seiji Shiraishi
誠司 白石
Akira Ishibashi
晃 石橋
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Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 通電時の動作電圧の増加を抑制することによ
り、素子の長寿命化および信頼性の向上を図ることがで
きるII−VI族化合物半導体を用いた半導体発光素子
を提供する。 【解決手段】 ZnCdSe層を活性層、ZnSSe層
を光導波層、ZnMgSSe層をクラッド層とするSC
H構造の半導体レーザにおいて、n型ZnMgSSeク
ラッド層4,6の間に、n型ZnMgSSeクラッド層
4,6のバンドギャップよりも小さいバンドギャップを
有するn型ZnSSe光吸収層5を挿入する。n型Zn
SSe光吸収層5はZnCdSe活性層6の中心からの
距離が500nm以下、好適には100nm以上400
nmの位置に挿入し、n型ZnSSe光吸収層5の厚さ
は300nm以下、好適には100nm以上300nm
以下、より好適には100nm以上250nm以下とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、半導体発光素子
に関し、特にII−VI族化合物半導体を用いた半導体
発光素子、例えば半導体レーザや発光ダイオードに適用
して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】Zn、Hg、Cd、Mg、Be、Mnな
どのII族元素とS、Se、TeなどのVI族元素とか
らなるII−VI族化合物半導体を用いた半導体発光素
子は、青色ないし緑色で発光が可能であり、このII−
VI族化合物半導体からなる半導体発光素子を光ディス
ク装置の光源として用いた場合、赤色で発光可能なAl
GaInP系の半導体発光素子を用いた場合に比べて、
光ディスクへの高密度記録が可能なことから、その実現
が期待されている。
【0003】従来、このII−VI族化合物半導体を用
いた半導体発光素子、特にクラッド層にZnMgSSe
層を用いた半導体発光素子は、n型GaAs基板上にバ
ッファ層を介してn型ZnMgSSeクラッド層、活性
層、p型ZnMgSSeクラッド層、p型ZnSeコン
タクト層などを分子線エピタキシー(MBE)法により
順次成長させた後、このp型ZnSeコンタクト層上に
p側電極を形成するとともに、n型GaAs基板の裏面
にn側電極を形成することにより製造するのが一般的で
あった。しかしながら、このような半導体発光素子にお
いては、p型ZnSeコンタクト層のキャリア濃度を高
くすることが難しいことなどにより、このp型ZnSe
コンタクト層上にp側電極をオーミックコンタクトさせ
ることは困難であった。
【0004】そこで、この問題を解決するために、p型
ZnSeコンタクト層上にp型ZnSe/ZnTe多重
量子井戸(MQW)層を成長させ、さらにその上に高キ
ャリア濃度のものが容易に得られるp型ZnTeコンタ
クト層を成長させ、その上にp側電極、特にPd/Pt
/Au構造のp側電極を形成することによりオーミック
コンタクト特性の向上を図る技術が提案された。そし
て、ZnCdSe層を活性層、ZnSSe層を光導波
層、ZnMgSSe層をクラッド層とするZnCdSe
/ZnSSe/ZnMgSSe SCH(Separate Con
finement Heterostructure)構造の半導体レーザにおい
て、このp側電極コンタクト構造を採用したもので、す
でに室温連続発振が達成されている(例えば、Jpn. J.
Appl. Phys.33(1994)L938およびElectron. Lett. Vol.3
2 No.6(1996)552)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、本発明
者の知見によれば、上述のようなp側電極コンタクト構
造を用いた従来の半導体レーザにおいては、通電を行う
と、時間の経過とともに動作電圧の増加が発生すること
が確認されている。この通電時の動作電圧の増加は、素
子の寿命を制限し、実用化のための信頼性の向上を妨げ
ている一因である。
【0006】したがって、この発明の目的は、通電時の
動作電圧の増加を抑制することにより、素子の長寿命化
および信頼性の向上を図ることができるII−VI族化
合物半導体を用いた半導体発光素子を提供することにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上述の課題
を解決するために鋭意検討を行った結果、通電時の動作
電圧の増加の一因は、活性層からp型クラッド層側に光
場の漏れが生じ、その漏れ出た光により生成された電子
および正孔が、p側電極コンタクト部のp型ZnSe/
ZnTeMQW層に存在する結晶欠陥の位置で非発光再
結合する際にエネルギーを発生し、そのエネルギーが結
晶欠陥を増殖し、ついにはp型ZnSe/ZnTeMQ
W層を破壊し、p側電極コンタクト部の劣化をもたらす
ことにあることを見い出した。そして、この通電時の動
作電圧の増加を防止するためには、活性層からp型クラ
ッド層側に漏れ出る光を低減するのが有効であるという
結論に至り、この発明を案出するに至ったものである。
【0008】すなわち、上記目的を達成するために、こ
の発明は、活性層をn型クラッド層とp型クラッド層と
によりはさんだ構造を有し、活性層、n型クラッド層お
よびp型クラッド層は、Zn、Mg、Hg、Cd、Be
およびMnからなる群より選ばれた少なくとも一種類の
II族元素と、S、SeおよびTeからなる群より選ば
れた少なくとも一種類のVI元素とにより構成されたI
I−VI族化合物半導体からなる半導体発光素子におい
て、n型クラッド層中にn型クラッド層のバンドギャッ
プよりも小さいバンドギャップを有する光吸収層が少な
くとも一層挿入されていることを特徴とするものであ
る。
【0009】この発明の典型的な実施形態において、光
吸収層は、Zn、Mg、Hg、Cd、BeおよびMnか
らなる群より選ばれた少なくとも一種類のII族元素
と、S、SeおよびTeからなる群より選ばれた少なく
とも一種類のVI元素とにより構成されたII−VI族
化合物半導体からなる。具体的には、例えば、n型クラ
ッド層としてZnMgSSe層が用いられる場合は、光
吸収層としてZnSe層やZnSSe層などが用いられ
る。なお、この光吸収層は、活性層のバンドギャップよ
りも大きいバンドギャップを有するものである。
【0010】この発明の一実施形態において、光吸収層
は、半導体発光装置の特性を悪化させることなく、活性
層からp型クラッド層側に漏れ出る光を効果的に抑制す
る観点から、活性層の中心(この場合、活性層の厚さ方
向の中心)からの距離が500nm以下、好適には10
0nm以上400nm以下の位置に挿入され、同様の観
点から、光吸収層の厚さは、300nm以下、好適には
100nm以上300nm以下、より好適には100n
m以上250nm以下に選ばれる。
【0011】この発明の他の実施形態においては、p側
電極コンタクト部にp型ZnSe層とp型ZnTe層と
が少なくとも一層ずつ積層された多層膜からなるp型コ
ンタクト層を有する。この発明のさらに他の実施形態に
おいては、p側電極コンタクト部にII族元素として少
なくともBeを含むII−VI族化合物半導体からなる
p型コンタクト層を有する。
【0012】上述のように構成されたこの発明によれ
ば、n型クラッド層中に、このn型クラッド層のバンド
ギャップよりも小さいバンドギャップを有する光吸収層
が少なくとも一層挿入されていることにより、接合と垂
直な方向における実効的な屈折率が、n型クラッド層側
とp型クラッド層側とで互いに異なったものとなる。こ
のため、半導体発光素子に通電したときに生じる光場の
接合と垂直な方向における分布が、活性層の中心に対し
て非対称となるので、具体的には、通電したときに生じ
る光場が全体的にn型クラッド層側にシフトするので、
活性層からp型クラッド層側に漏れ出る光が少なくな
る。このため、p側電極コンタクト部にp型コンタクト
層を有する場合、活性層からp型クラッド層側に漏れ出
た光がp型コンタクト層に到達することを抑制すること
ができ、ひいては、p型コンタクト層中の結晶欠陥での
電子および正孔の非発光再結合が抑制されることによ
り、p型コンタクト層の破壊を防止することができる。
これにより、通電時におけるp側電極コンタクト部の劣
化を防止することができ、動作電圧の増加を抑えること
ができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態につい
て図面を参照しながら説明する。図1は、この発明の一
実施形態によるII−VI族化合物半導体を用いた半導
体レーザを示す断面図である。このII−VI族化合物
半導体を用いた半導体レーザは、SCH構造を有するも
のである。
【0014】図1に示すように、この半導体レーザにお
いては、n型GaAs基板1上に、例えばドナー不純物
としてSiがドープされたn型GaAsバッファ層2、
例えばドナー不純物としてClがドープされたn型Zn
Seバッファ層3、例えばドナー不純物としてClがド
ープされたn型ZnMgSSeクラッド層4、例えばド
ナー不純物としてClがドープされたn型ZnSSe光
吸収層5、例えばドナー不純物としてClがドープされ
たn型ZnMgSSeクラッド層6、例えばドナー不純
物としてClがドープされたn型ZnSSe光導波層
7、ZnCdSe活性層8、例えばアクセプタ不純物と
してNがドープされたp型ZnSSe光導波層9、例え
ばアクセプタ不純物としてNがドープされたp型ZnM
gSSeクラッド層10、例えばアクセプタ不純物とし
てNがドープされたp型ZnSSe層11、例えばアク
セプタ不純物としてNがドープされたp型ZnSeコン
タクト層12、例えばアクセプタ不純物としてNがそれ
ぞれドープされたp型ZnTeからなる量子井戸層とp
型ZnSeからなる障壁層とが交互に積層されたp型Z
nSe/ZnTe多重量子井戸(MQW)層13および
例えばアクセプタ不純物としてNがドープされたp型Z
nTeコンタクト層14が順次積層されている。
【0015】ここで、p型ZnSSe層11の上層部、
p型ZnSeコンタクト層12、p型ZnSe/ZnT
eMQW層13およびp型ZnTeコンタクト層14
は、一方向に延びるストライプ形状を有する。
【0016】このストライプ部以外の部分のp型ZnS
Se層11上には、例えばアルミナ(Al2 3 )膜か
らなる絶縁層15が設けられている。そして、ストライ
プ形状のp型ZnTeコンタクト層14および絶縁層1
5上に、例えば、Pd/Pt/Au電極のようなp側電
極16が設けられている。一方、n型GaAs基板1の
裏面には、例えばIn電極のようなn側電極17が設け
られている。
【0017】この半導体レーザを構成する各半導体層の
厚さの一例を挙げると、n型GaAsバッファ層2は2
00nm、n型ZnSeバッファ層3は200nm、n
型ZnMgSSeクラッド層4およびp型ZnMgSS
eクラッド層10はそれぞれ1000nm、n型ZnM
gSSeクラッド層6は300nm、n型ZnSSe光
導波層7およびp型ZnSSe光導波層9はそれぞれ1
00nm、ZnCdSe活性層8は6nm、p型ZnS
Se層11は500nm、p型ZnSeコンタクト層1
2は150nmである。
【0018】図2は、この半導体レーザのn型ZnMg
SSeクラッド層4とp型ZnMgSSeクラッド層1
0との間の部分のエネルギーバンド図である。図2にお
いて、Ec は伝導帯の下端、Ev は価電子帯の上端を示
す。
【0019】図2に示すように、n型ZnMgSSeク
ラッド層4およびn型ZnMgSSeクラッド層6の間
に挿入されたn型ZnSSe光吸収層5は、n型ZnM
gSSeクラッド層4,6のバンドギャップよりも小さ
いバンドギャップを有し、ZnCdSe活性層8のバン
ドギャップよりも大きいバンドギャップを有する。ま
た、この場合、n型ZnMgSSeクラッド層4,6お
よびn型ZnSSe光吸収層5は、互いに異なる屈折率
を有する。
【0020】この半導体レーザにおいては、このような
n型ZnSSe光吸収層5が、n型ZnMgSSeクラ
ッド層4,6の間に挿入されていることにより、ZnC
dSe活性層8を挟むクラッド層(光導波層を含む)全
体の実効的な屈折率が、n型ZnMgSSeクラッド層
4,6側とp型ZnMgSSeクラッド層10側とで互
いに異なっている。すなわち、n型ZnMgSSeクラ
ッド層4,6の間にn型ZnSSe光吸収層5が挿入さ
れていることにより、n型ZnMgSSeクラッド層
4,6側の実効的な屈折率が変調されている。これによ
って、通電したときに生じる光場を全体的にn型ZnM
gSSeクラッド層4,6側にシフトさせ、この光場の
接合と垂直な方向の分布を、ZnCdSe活性層8の中
心に対して非対称にすることが可能である。このとき、
n型ZnSSe光吸収層5の挿入位置(n型ZnSSe
光吸収層5とZnCdSe活性層8の中心との距離)
や、n型ZnSSe光吸収層5の厚さを適切に設計する
ことにより、レーザ発振のしきい値電流などの特性を悪
化させることなく、通電したときに生じる光場を効果的
にn型ZnMgSSeクラッド層4,6側にシフトさせ
ることが可能である。
【0021】ここでは、一例として、n型ZnSSe光
吸収層5を、n型ZnMgSSeクラッド層6とn型Z
nSSe光吸収層7との界面からの距離が300nmの
位置に挿入し(すなわち、n型ZnSSe光吸収層5と
n型ZnSSe光導波層7との間のn型ZnMgSSe
クラッド層6の厚さが300nm。この場合、ZnCd
Se活性層8の中心からの距離はほぼ400nmであ
る)、n型ZnSSe光吸収層5の厚さを250nmと
した場合に、半導体レーザに通電したときに生じる光場
の接合と垂直な方向における分布を、コンピュータシミ
ュレーションにより解析した。その結果を図3に示す。
図3において、横軸はn型GaAs基板1の表面からの
距離(μm)、すなわち、n型GaAs基板1とn型G
aAsバッファ層2との界面からの距離を示し、縦軸は
光場の強度を示す。また、図3中、光場の分布の右側の
ピークはZnCdSe活性層8付近の光場に対応し、左
側のピークはn型ZnSSe光吸収層5付近の光場に対
応している。
【0022】図3に示すように、この半導体レーザにお
いては、n型ZnMgSSeクラッド層4,6の間にn
型ZnSSe光吸収層5が挿入されていることにより、
この半導体レーザに通電したときに生じる光場が、Zn
CdSe活性層8付近のほかにn型ZnSSe光吸収層
5付近でも強くなり、全体的にn型ZnMgSSeクラ
ッド層4,6側にシフトしている。
【0023】また、n型ZnSSe光吸収層5の挿入位
置をn型ZnMgSSeクラッド層6とn型ZnSSe
光吸収層7との界面からの距離が300nmの位置に固
定し、n型ZnSSe光吸収層5の厚さを変化させた場
合に、ZnCdSe活性層8付近の光場やレーザ発振の
しきい値電流がどのように変化するかについても、併せ
てコンピュータシミュレーションで解析した。その結果
を図4〜図7に示す。
【0024】図4は、n型ZnSSe光吸収層5の厚さ
と、ZnCdSe活性層8の中心に対するZnCdSe
活性層8付近の光場の中心(ピーク位置)のずれとの関
係を示す。図4において、横軸はn型ZnSSe光吸収
層5の厚さ(nm)を示し、縦軸はZnCdSe活性層
8の中心に対するZnCdSe活性層8付近の光場の中
心のずれ(μm)を示す。ここでは、ZnCdSe活性
層8の構造上の中心を原点とし、この中心からp型Zn
MgSSeクラッド層10に向かう方向を正の方向とす
る一次元座標系を定め、ZnCdSe活性層8の中心に
対するZnCdSe活性層8付近の光場の中心のずれ
を、この一次元座標系におけるZnCdSe活性層8付
近の光場の中心の座標に対応させて示している。
【0025】図5は、n型ZnSSe光吸収層5の厚さ
を変化させた場合のZnCdSe活性層8付近の光場の
p側(ZnCdSe活性層8の中心からみてp型ZnM
gSSeクラッド層10側)への広がり量の変化を示
す。図5において、横軸はn型ZnSSe光吸収層5の
厚さ(nm)を示し、縦軸はZnCdSe活性層8付近
の光場のp側への広がり量(μm)を示す。ここで、Z
nCdSe活性層8付近の光場のp側への広がり量は、
この光場において中心よりもp側に分布する部分の長さ
に対応している。また、図6は、n型ZnSSe光吸収
層5の厚さを変化させた場合のZnCdSe活性層8付
近の光場のp側の部分の総和の変化のシミュレーション
結果を示すグラフである。図6において、横軸はn型Z
nSSe光吸収層5の厚さ(nm)を示し、縦軸はZn
CdSe活性層8付近の光場のp側の部分の総和(任意
単位)を示す。ここで、ZnCdSe活性層8付近の光
場のp側の部分の総和は、この光場において中心よりも
p側に分布する部分の積分強度に対応している。
【0026】図4〜図6に示すZnCdSe活性層8付
近の光場の変化のコンピュータシミュレーションの結果
から、n型ZnSSe光吸収層5の厚さが大きくなる
と、ZnCdSe活性層8付近の光場の中心が、ZnC
dSe活性層8の構造上の中心からn型ZnMgSSe
クラッド層4,6側にシフトする傾向が強まり(図4参
照)、これに伴って、ZnCdSe活性層8の中心より
もp型ZnMgSSeクラッド層10側に分布する光場
が減少する(図5および図6参照)ことがわかる。すな
わち、通電したときに生じる光場を全体的にn型ZnM
gSSeクラッド層4,6側にシフトさせ、ZnCdS
e活性層8からp型ZnMgSSeクラッド層10側へ
の光の漏れを抑制し、p型ZnSe/ZnTeMQW層
13に到達する光を減少させるという観点からは、n型
ZnSSe光吸収層5の厚さを大きくするのが有効であ
ることがいえる。
【0027】一方、図7は、n型ZnSSe光吸収層5
の厚さを変化させた場合のレーザ発振のしきい値電流の
変化のコンピュータシミュレーション結果を示す。図7
において、横軸はn型ZnSSe光吸収層5の厚さ(n
m)を示し、縦軸はしきい値電流(mA)を示す。図7
に示すしきい値電流の変化のコンピュータシミュレーシ
ョンの結果から、n型ZnSSe光吸収5の厚さが大き
くなる程、レーザ発振のしきい値電流が上昇する傾向に
あることがわかる。この場合、n型ZnSSe光吸収層
5の厚さが300nmを越えて大きくなると、しきい値
電流が高く実用的とはいえない。したがって、しきい値
電流の増大を抑え、素子特性を良好にするという観点か
らは、n型ZnSSe光吸収層5の厚さをむやみに大き
くすることは有効ではないといえる。
【0028】以上の結果より、n型ZnMgSSeクラ
ッド層6とn型ZnSSe光吸収層7との界面からの距
離が300nm(ZnCdSe活性層8の中心からの距
離がほぼ400nm)の位置にn型ZnSSe光吸収層
5を挿入した場合は、n型ZnSSe光吸収層5の厚さ
を100nm以上300nm以下、好適には100nm
以上250nm以下とすることにより、素子特性を悪化
させることなくp型ZnMgSSeクラッド層10側へ
の光の漏れを抑制することができることがわかる。
【0029】次に、この半導体レーザの製造方法につい
て説明する。すなわち、この半導体レーザを製造するに
は、まず、図示省略したMBE装置の超高真空に排気さ
れた真空容器内の基板ホルダーにn型GaAs基板1を
装着する。次に、このn型GaAs基板1を所定のエピ
タキシャル成長温度に加熱した後、このn型GaAs基
板1上にMBE法によりn型GaAsバッファ層2をエ
ピタキシャル成長させる。この場合、ドナー不純物であ
るSiのドーピングは、Siの分子線源(Kセル)を用
いて行う。なお、このn型GaAsバッファ層2のエピ
タキシャル成長は、n型GaAs基板1を例えば580
℃付近の温度に加熱してその表面をサーマルエッチング
することにより表面酸化膜などを除去して表面清浄化を
行った後に行ってもよい。
【0030】次に、このようにしてn型GaAsバッフ
ァ層2がエピタキシャル成長されたn型GaAs基板1
を、図示省略した真空搬送路を介して、上述のMBE装
置から図8に示す別のMBE装置に搬送する。そして、
この図8に示すMBE装置において、レーザ構造を形成
する各II−VI族化合物半導体層のエピタキシャル成
長を行う。この場合、n型GaAsバッファ層2の表面
は、そのエピタキシャル成長が行われてから図8に示す
MBE装置に搬送される間に大気にさらされないので、
清浄のまま保たれる。
【0031】図8に示すように、このMBE装置におい
ては、図示省略した超高真空排気装置により超高真空に
排気されたチェンバー21内に基板ホルダー22が設け
られ、この基板ホルダー22にエピタキシャル成長を行
う基板が保持される。このエピタキシャル成長を行う基
板は、ゲートバルブ23を介してチェンバー21に取り
付けられた予備室24からチェンバー21内に導入され
る。チェンバー21には、基板ホルダー22に対向して
複数の分子線源(Kセル)25が取り付けられている。
この場合、分子線源25としては、Zn、Se、Mg、
ZnS、TeおよびCdの各分子線源が用意されてい
る。チェンバー21にはさらに、電子サイクロトロン共
鳴(ECR)プラズマセル26が基板ホルダー22に対
向して取り付けられている。このECRプラズマセル2
6には、マグネット27、マイクロ波導入端子28、窒
素ガス導入管29およびプラズマ導出口30が設けられ
ている。なお、このECRプラズマセル26は、高周波
(RF)プラズマセルに置き換えることができる。
【0032】さて、n型GaAsバッファ層2上にレー
ザ構造を構成する各II−VI族化合物半導体層をエピ
タキシャル成長させるためには、図8に示すMBE装置
のチェンバー21内の基板ホルダー22に、このn型G
aAsバッファ層2がエピタキシャル成長されたn型G
aAs基板1を装着する。次に、このn型GaAs基板
1を所定のエピタキシャル成長温度、好ましくは250
〜300℃の範囲内の温度、具体的には例えば280℃
に下げてMBE法によるエピタキシャル成長を開始す
る。すなわち、n型GaAsバッファ層2上に、n型Z
nSSeバッファ層3、n型ZnMgSSeクラッド層
4、n型ZnSSe光吸収層5、n型ZnMgSSeク
ラッド層6、n型ZnSSe光導波層7、ZnCdSe
活性層8、p型ZnSSe光導波層9、p型ZnMgS
Seクラッド層10、p型ZnSSe層11、p型Zn
Seコンタクト層12、p型ZnSe/ZnTeMQW
層13およびp型ZnTeコンタクト層14を順次エピ
タキシャル成長させる。
【0033】ここで、n型ZnSeバッファ層3、n型
ZnMgSSeクラッド層4,6、n型ZnSSe光吸
収層5およびn型ZnSSe光導波層7のドナー不純物
としてのClのドーピングは、例えば、純度99.99
99%のZnCl2 をドーパントとして用いて行う。一
方、p型ZnSSe光導波層9、p型ZnMgSSeク
ラッド層10、p型ZnSSe層11、p型ZnSeコ
ンタクト層12、p型ZnSe/ZnTeMQW層13
およびp型ZnTeコンタクト層14のアクセプタ不純
物としてのNのドーピングは、図8に示すMBE装置の
ECRプラズマセル26において、マグネット27によ
る磁界の印加およびマイクロ波導入端子28からのマイ
クロ波の導入によって、窒素ガス導入管29から導入さ
れるN2ガスのプラズマ化を行い、これにより発生され
たN2 プラズマを基板表面に照射することにより行う。
【0034】次に、p型ZnTeコンタクト層14上に
一方向に延びる所定幅のストライプ形状のレジストパタ
ーン(図示せず)をリソグラフィーにより形成した後、
このレジストパターンをマスクとして、p型ZnSSe
層11の厚さ方向の途中の深さまでウエットエッチング
法によりエッチングする。これによって、p型ZnSS
e層11の上層部、p型ZnSeコンタクト層12、p
型ZnSe/ZnTeMQW層13およびp型ZnTe
コンタクト層14がストライプ形状にパターニングされ
る。
【0035】次に、上述のエッチングに用いたレジスト
パターンを残したまま全面にAl23 膜を真空蒸着し
た後、このレジストパターンを、その上に形成されたA
23 膜とともに除去する(リフトオフ)。これによ
って、ストライプ部以外の部分のp型ZnSSe層11
上にのみAl2 3 膜からなる絶縁層15が形成され
る。この絶縁層15は電流狭窄を行うためのものであ
る。
【0036】次に、ストライプ状のp型ZnTeコンタ
クト層14および絶縁層15の全面にPd膜、Pt膜お
よびAu膜を順次真空蒸着してPd/Pt/Au電極か
らなるp側電極16を形成し、その後必要に応じて熱処
理を行って、このp側電極16をp型ZnTeコンタク
ト層14にオーム性接触させる。一方、n型GaAs基
板1の裏面にはIn電極のようなn側電極17を形成す
る。以上により、目的とする半導体レーザが製造され
る。
【0037】上述のように構成されたこのII−VI族
化合物半導体を用いた半導体レーザによれば、n型Zn
MgSSeクラッド層4,6の間にn型ZnSSe光吸
収層5が挿入されていることにより、この半導体レーザ
に通電したときに生じる光場の接合と垂直な方向におけ
る分布を、全体的にn型ZnMgSSeクラッド層4,
6側にシフトさせることが可能である。これにより、Z
nCdSe活性層8からp型ZnMgSSeクラッド層
10側への光の漏れを少なくし、ひいては、漏れ出た光
がp型ZnSe/ZnTeMQW層13に到達すること
を抑制することができるので、このp型ZnSe/Zn
TeMQW層13の破壊を伴う非発光再結合過程が抑制
される。これにより、この半導体レーザの通電時にp側
電極コンタクト部の劣化を防止することができ、通電時
の動作電圧の上昇が抑えることができるので、この半導
体レーザの長寿命化を図ることができるとともに、信頼
性の向上を図ることができる。
【0038】以上この発明の実施形態について具体的に
説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定される
ものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変
形が可能である。例えば、実施形態において挙げた数
値、材料、構造などはあくまで例にすぎず、これに限定
されるものではない。具体的には、例えば、上述の一実
施形態においては、n型ZnMgSSeクラッド層4,
6の間に挿入される光吸収層として、n型ZnSSe光
吸収層5に代えてn型ZnSe光吸収層を用いてもよ
い。
【0039】また、例えば、上述の一実施形態におい
て、p型ZnSe/ZnTeMQW層13のp型ZnT
e層の代わりにp型BeTe層を用い、p型ZnTeコ
ンタクト層14の代わりにp型BeTeコンタクト層を
用い、n型ZnSSe光導波層7およびp型ZnSSe
光導波層9の代わりにそれぞれn型BeZnSe光導波
層およびp型BeZnSe光導波層を用い、n型ZnM
gSSeクラッド層4,6およびp型ZnMgSSeク
ラッド層10の代わりにそれぞれn型BeMgZnSe
クラッド層およびp型BeMgZnSeクラッド層を用
いてもよい。
【0040】また、例えば、上述の一実施形態において
は、この発明をSCH構造を有するII−VI族化合物
半導体を用いた半導体レーザに適用した場合について説
明したが、この発明は、DH(Double Heterostructur
e)構造を有するII−VI族化合物半導体を用いた半
導体レーザに適用することも可能である。
【0041】また、例えば、上述の一実施形態において
は、この発明をII−VI族化合物半導体を用いた半導
体レーザに適用した場合について説明したが、この発明
は、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体
レーザ、AlGaInP系半導体レーザ、AlGaAs
系半導体レーザなどに適用することも可能である。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、n型クラッド層中に、このn型クラッド層のバンド
ギャップよりも小さいバンドギャップを有する光吸収層
が少なくとも一層挿入されていることにより、半導体発
光素子に通電したときに生じる光場を全体としてn型ク
ラッド層側にシフトさせることができるので、活性層か
らp型クラッド層側への光の漏れを抑制することができ
る。このため、p側電極コンタクト部にp型コンタクト
層を有する場合、この半導体発光素子への通電時に、p
型コンタクト層の破壊を防止し、p側電極コンタクト部
の劣化を防止することができるので、動作電流の増加を
抑制することができる。これによって、半導体発光素子
の長寿命化が可能であるとともに、信頼性の向上を図る
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態によるII−VI族化
合物半導体を用いた半導体レーザを示す断面図である。
【図2】 この発明の一実施形態によるII−VI族化
合物半導体を用いた半導体レーザのエネルギーバンド図
である。
【図3】 この発明の一実施形態によるII−VI族化
合物半導体を用いた半導体レーザに通電したときに生じ
る光場の接合と垂直な方向における分布を、コンピュー
タシミュレーションにより解析した結果を示す略線図で
ある。
【図4】 この発明の一実施形態によるII−VI族化
合物半導体を用いた半導体レーザにおいて、n型ZnS
Se光吸収層の厚さと、ZnCdSe活性層の中心に対
するZnCdSe活性層付近の光場の中心のずれとの関
係をコンピュータシミュレーションにより解析した結果
を示す略線図である。
【図5】 この発明の一実施形態によるII−VI族化
合物半導体を用いた半導体レーザにおいて、n型ZnS
Se光吸収層の厚さを変化させたときのZnCdSe活
性層付近の光場のp側への広がり量の変化をコンピュー
タシミュレーションにより解析した結果を示す略線図で
ある。
【図6】 この発明の一実施形態によるII−VI族化
合物半導体を用いた半導体レーザにおいて、n型ZnS
Se光吸収層の厚さを変化させたときのZnCdSe活
性層付近の光場のp側の部分の総和の変化をコンピュー
タシミュレーションにより解析した結果を示す略線図で
ある。
【図7】 この発明の一実施形態によるII−VI族化
合物半導体を用いた半導体レーザにおいて、n型ZnS
Se光吸収層の厚さを変化させたときのレーザ発振のし
きい値電流の変化をコンピュータシミュレーションによ
り解析した結果を示す略線図である。
【図8】 この発明の一実施形態によるII−VI族化
合物半導体を用いた半導体レーザの製造に用いられるM
BE装置の構成の一例を示す略線図である。
【符号の説明】
1・・・n型GaAs基板、4,6・・・n型ZnMg
SSeクラッド層、5・・・n型ZnSSe光吸収層、
7・・・n型ZnSSe光導波層、8・・・ZnCdS
e活性層、9・・・p型ZnSSe光導波層、10・・
・p型ZnMgSSeクラッド層、11・・・p型Zn
SSe層、12・・・p型ZnSeコンタクト層、13
・・・p型ZnSe/ZnTeMQW層、14・・・p
型ZnTeコンタクト層、15・・・絶縁層、16・・
・p側電極、17・・・n側電極

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 活性層をn型クラッド層とp型クラッド
    層とによりはさんだ構造を有し、 上記活性層、上記n型クラッド層および上記p型クラッ
    ド層は、Zn、Mg、Hg、Cd、BeおよびMnから
    なる群より選ばれた少なくとも一種類のII族元素と、
    S、SeおよびTeからなる群より選ばれた少なくとも
    一種類のVI元素とにより構成されたII−VI族化合
    物半導体からなる半導体発光素子において、 上記n型クラッド層中に上記n型クラッド層のバンドギ
    ャップよりも小さいバンドギャップを有する光吸収層が
    少なくとも一層挿入されていることを特徴とする半導体
    発光素子。
  2. 【請求項2】 上記光吸収層は上記II−VI族化合物
    半導体からなることを特徴とする請求項1記載の半導体
    発光素子。
  3. 【請求項3】 上記n型クラッド層はZnMgSSe層
    からなり、上記光吸収層はZnSSe層からなることを
    特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
  4. 【請求項4】 上記n型クラッド層はZnMgSSe層
    からなり、上記光吸収層はZnSe層からなることを特
    徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
  5. 【請求項5】 上記光吸収層は上記活性層の中心からの
    距離が500nm以下の位置に挿入されていることを特
    徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
  6. 【請求項6】 上記光吸収層は上記活性層の中心からの
    距離が100nm以上400nm以下の位置に挿入され
    ていることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素
    子。
  7. 【請求項7】 上記光吸収層の厚さは300nm以下で
    あることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
  8. 【請求項8】 上記光吸収層の厚さは100nm以上3
    00nm以下であることを特徴とする請求項1記載の半
    導体発光素子。
  9. 【請求項9】 上記光吸収層の厚さは100nm以上2
    50nm以下であることを特徴とする請求項1記載の半
    導体発光素子。
  10. 【請求項10】 p側電極コンタクト部にp型ZnSe
    層とp型ZnTe層とが少なくとも一層ずつ積層された
    多層膜からなるp型コンタクト層を有することを特徴と
    する請求項1記載の半導体発光素子。
  11. 【請求項11】 p側電極コンタクト部にII族元素と
    して少なくともBeを含む上記II−VI族化合物半導
    体からなるp型コンタクト層を有することを特徴とする
    請求項1記載の半導体発光素子。
  12. 【請求項12】 上記活性層と上記n型クラッド層との
    間および上記活性層と上記p型クラッド層との間にそれ
    ぞれ光導波層を有することを特徴とする請求項1記載の
    半導体発光素子。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100385755B1 (ko) * 1998-11-30 2003-05-28 샤프 가부시키가이샤 발광 다이오드
US9118167B2 (en) 2012-03-02 2015-08-25 Murata Manufacturing Co., Ltd. Vertical cavity surface emitting laser
KR20220058927A (ko) * 2019-10-15 2022-05-10 미쓰비시덴키 가부시키가이샤 반도체 장치

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US9118167B2 (en) 2012-03-02 2015-08-25 Murata Manufacturing Co., Ltd. Vertical cavity surface emitting laser
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