JPH10301310A - 電子写真感光体およびその製造方法 - Google Patents

電子写真感光体およびその製造方法

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JPH10301310A
JPH10301310A JP12466997A JP12466997A JPH10301310A JP H10301310 A JPH10301310 A JP H10301310A JP 12466997 A JP12466997 A JP 12466997A JP 12466997 A JP12466997 A JP 12466997A JP H10301310 A JPH10301310 A JP H10301310A
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fluorine
photosensitive member
electrophotographic photosensitive
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JP12466997A
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Inventor
Makoto Aoki
誠 青木
Shigenori Ueda
重教 植田
Junichiro Hashizume
淳一郎 橋爪
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Original Assignee
Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 いかなる環境下においても、電子写真感光体
の加温手段を設けることなく画像ボケや画像流れのない
高品質な画像が得られ、かつその特性を維持するに足る
高耐久性を有し、転写効率が高く、クリーニング部材の
簡素化に有利であるばかりか、クリーニング不良や融着
が生じず、高品位な画像が経時的に変化することなく安
定的に得られる電子写真感光体と、その製造方法を提供
することにある。 【構成】 導電性基体と、該基体上に少なくともシリコ
ン原子を母体とする非単結晶材料の光導電層と、該光導
電層の上に、少なくともフッ素原子を含む非単結晶炭素
の表面層とを有し、該表面層を、フッ素を含むガスを高
周波電力により分解したプラズマによって、エッチング
速度0.1〜50Å/secで少なくとも20Å以上エ
ッチングすることにより、該表面層の膜厚を100〜1
0000Åとし、フッ素原子が該表面層の表面を覆うよ
うに存在していることを特徴とする電子写真感光体とそ
の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電子写真プロセスにおい
て、いかなる環境下においても電子写真感光体用の加温
手段を使用することなくして、画像ボケや画像流れのな
い高品質な画像が得られ、かつその特性を維持するに足
る高耐久性を有し、転写効率が高く、融着が起こらず、
高品位な画像が安定して得られる電子写真感光体および
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】水素及び/又はハロゲン(たとえばフッ
素、塩素など)でダングリングボンドが補償されたアモ
ルファスシリコン(a−Si)などのアモルファス堆積
膜からなる、高性能、高耐久、無公害な感光体が提案さ
れ、実用化されている。なかでもa−Siからなる感光
体(以下、a−Si感光体という)は表面硬度が高く、
半導体レーザー(770nm〜800nm)などの長波
長光に高い感度を示し、しかも繰り返し使用による劣化
もほとんど認められないなどの利点を有し、高速複写機
やLBP(レーザービームプリンター)などの電子写真
用感光体として広く使用されている。こうしたアモルフ
ァス堆積膜の形成法として従来、スパッタリング法、熱
CVD法、光CVD法、プラズマCVD法など、多数知
られている。なかでもプラズマCVD法、すなわち原料
ガスを直流または高周波(RF,VHF)、あるいはマ
イクロ波によってグロー放電を生じさせて分解し、ガラ
ス、石英、耐熱性合成樹脂フィルム、ステンレス、アル
ミニウムなどの基体上に薄膜状の堆積膜を形成する方法
は、電子写真用アモルファスシリコン堆積膜の形成方法
などにおいて現在、実用化が非常に進んでおり、そのた
めの装置も各種提案されている。また、より一層の高画
質化のために様々な提案がなされている。特に高周波電
力を用いたプラズマCVDプロセスは、放電の安定性が
高く酸化膜や窒化膜などの絶縁性材料の形成にも使用で
きるなど様々な利点を有することから繁用されている。
【0003】平行平板型のプラズマCVD装置を用いて
50MHz以上の高周波電源を用いたプラズマCVD法
の報告があり(Plasma Chemistry a
ndPlasma Processing,Vol.
7,No3(1987)p267−273参照)、放電
周波数を従来の13.56MHzより高くすることで堆
積膜の性能を落とさずに堆積速度を向上させることがで
きる可能性が示されており、注目されている。また、こ
の放電周波数を高くする報告はスパッタリングなどでも
なされ、広くその検討がされている。
【0004】ところで、上述した成膜方法で作製された
a−Si感光体を電子写真装置に応用する際、電子写真
感光体の帯電および、除電手段としては、ほとんどの場
合コロナ帯電器(コロトロン、スコロトロン)が使用さ
れている。その際、コロナ放電に伴いオゾン(O3)が
発生し、オゾンは空気中の窒素を酸化して窒素酸化物
(NOx)などのコロナ放電生成物を生じさせることが
あり、そして生成するそうした窒素酸化物などは空気中
の水分と反応して硝酸などを生じさせることがある。ま
た、これらの窒素酸化物、硝酸などのコロナ放電生成物
は電子写真感光体や周辺の機器に付着堆積して、それら
の表面を汚損することがある。当該コロナ放電生成物は
吸湿すると低抵抗になるため、これが付着した電子写真
感光体の電荷保持能力は、全面的にあるいは部分的に低
下してしまうことがある。以上の要因により画像ボケや
画像流れ(感光体表面電荷が面方向にリークして静電荷
潜像パターンが崩れるあるいは形成されない)と称され
る画像欠陥が生じることがある。また、コロナ帯電器の
シールド板内面に付着したコロナ放電生成物は電子写真
装置の稼働中のみならず夜間などの装置の休止中にも揮
発遊離し、それが該帯電器の放電開口に対応した電子写
真感光体表面に付着してさらに吸湿し、その電子写真感
光体表面を低抵抗化させることがある。そのため、装置
休止後の装置再稼働時に最初に出力される一枚目、ある
いは数枚のコピーについて、上記の装置休止中の帯電器
開口に対応する領域に画像ボケ、画像流れが生じ易い。
このような画像流れを、帯電器の跡のようにみえること
から帯電器跡流れと呼んでいる。特にコロナ帯電器がA
Cコロナ帯電器である場合に、この帯電器跡流れが生じ
易い。またa−Si感光体の場合は、表面硬度が他の電
子写真感光体に比べて高いことから、該感光体表面に付
着したコロナ放電生成物がいつまでも残留し易い。
【0005】上述した画像ボケや画像流れ現象を防止す
る方法として、以下の2つの方法が知られている。その
一つは、電子写真感光体に該感光体を加温するためのヒ
ーターを内蔵したり、温風送風装置により温風を電子写
真感光体に送風したりして該感光体表面を加温(30〜
50℃)することにより相対湿度を低下させる方法であ
る。この方法は電子写真感光体表面に付着しているコロ
ナ放電生成物や水分を揮発させ、電子写真感光体表面の
実質的な低抵抗化を抑えるものであり、実用化されてい
る。他の方法は、電子写真感光体の表面の撥水性を向上
させることにより、初めからコロナ放電生成物を付着し
にくくし、それによって画像流れを防止する方法であ
る。具体的には、特開昭61−289354号公報に
は、表面をフッ素を含んだガスでプラズマ処理したa−
C表面層が開示されている。また、米国特許第4,55
9,289号明細書には、炭素およびハロゲン原子を含
む非晶質材料からなる表面層が開示されている。
【0006】また、電子写真装置においては、電子写真
感光体で形成された潜像を現像剤(トナー)にて現像
し、紙などの被転写材に転写、定着させて複写画像を得
るが、転写されずに電子写真感光体上に残留したトナー
をクリーニング工程で除去する必要がある。これに用い
られるクリーニング部材としては、クリーニング能力の
高いブレード式クリーニング方式と、マグローラー(磁
気ブラシによるクリーニングローラー)などを併用する
ことが広く用いられている。これらのクリーニング部材
によって、被転写材に転写されず残留したトナーを電子
写真感光体表面から除去し、廃トナーとして系外に排出
する。このクリーニング工程において残留トナーを除去
する際、適切な条件を選ばないと電子写真感光体表面に
トナーの成分が強固に付着する現象が生じてしまう場合
がある。これをトナーの融着と呼んでいる。このトナー
融着のメカニズムは全てが明らかになったわけではない
が、この問題は、トナーの有機材料の成分、クリーニン
グブレードの硬度や弾性、マグローラーの研磨力などを
適切に選べば防止することができる。ところが、このマ
グローラーを併用するクリーニング部材は、クリーニン
グ能力が高い反面、複写機内に占める体積が大きくなる
ため、大型の複写機に搭載されることが多かった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】画像流れの問題は、ド
ラムの加温装置によって解消できるが、省エネルギーや
エコロジーという観点からさらに低消費電力を推し進め
ることが望ましい。この目的のためには、複写機を使わ
ない夜間やアイドルタイムにおけるドラムヒーターによ
る加熱を行わないですむようにすることが望ましい。こ
れとは別に、高速化のための低融点トナーを用いる場合
や、a−Si感光体をフルカラー複写機に搭載させる場
合に、加温によってこれらの低融点トナーが感光体表面
に融着する可能性が高くなることがある。こうしたこと
から、加温しなくても、画像ボケや画像流れ、特に長時
間休止後の帯電器跡流れが発生しない電子写真感光体の
開発が求められている。なお、前述した特開昭61−2
89354号公報は、電子写真感光体表面についてその
撥水性向上に係る技術を開示してはいるものの、実際の
複写機に搭載して評価したという記述はない。また同様
に上述した米国特許第4,559,289号明細書では
複写機での評価が記載されているが、大量枚数の通紙耐
久を行った後の画像流れ評価や、最も厳しい評価である
帯電器跡流れ評価に関しては記述がない。
【0008】また、上述したマグローラーを用いたクリ
ーニング部材は複雑であるところ、これをクリーニング
ブレードのみの簡素な構成にすることができれば、装置
の小型化、低コスト化に関して非常に有利である。ま
た、トナー融着はクリーニング工程で発生すると考えら
れているが、廃トナーの発生をできるだけ少なくするこ
とができれば、簡素なクリーニング部材を用いた場合で
もトナー融着の発生頻度を低下させることが可能とな
る。加えて、環境に配慮した複写機の用件として、廃棄
物を出さないことが重要であり、そのためには、廃トナ
ーがなるべく出ないような複写プロセスが望ましい。こ
れらのことから、転写効率をできるだけ高くし、転写さ
れずに電子写真感光体表面に残留するトナー、すなわち
廃トナーがほとんど発生しないような、離型性の高い電
子写真感光体の提供が望まれている。すなわち、加温手
段を用いなくても画像ボケ、画像流れを起こさないよう
に高撥水性の非単結晶炭素表面層をもち、かつその高撥
水性が長期間、大量枚数の複写操作によっても劣化せ
ず、かつ転写効率が高いためにクリーニング部材を簡素
化することができ、かつクリーニング不良や融着が生じ
ない電子写真感光体の提供が望まれている。
【0009】
【発明の目的】本発明の目的は、いかなる環境下におい
ても、電子写真感光体用の加温手段を使用することなく
して画像ボケや画像流れのない高品質な画像が得られ、
かつその特性を維持するに足る高耐久性を有する電子写
真感光体とその製造方法を提供することにある。本発明
の他の目的は、電子写真感光体用の加温手段を用いるこ
となくして、カラートナーなどの低融点トナーの融着防
止を実現することにある。本発明の他の目的は、転写効
率が高いためにクリーニング部材を簡素化することがで
き、かつクリーニング不良や融着が生じず、高品位な画
像が経時的に変化することなく安定的に得られる電子写
真感光体とその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、従来の電子写
真感光体における上述した課題を解決し、上記目的を達
成するものであり、以下に述べる構成の電子写真感光体
およびその製造方法を包含する。すなわち、本発明の電
子写真感光体は、導電性基体と、該基体上に少なくとも
シリコン原子を母体とする非単結晶材料の光導電層と、
該光導電層の上に、少なくともフッ素原子を含む非単結
晶炭素の表面層とを有し、該表面層を、フッ素を含むガ
スを高周波電力により分解したプラズマによって、エッ
チング速度0.1〜50Å/secで少なくとも20Å
以上エッチングすることにより、該表面層の膜厚を10
0〜10000Åとし、フッ素原子が該表面層の表面を
覆うように存在していることを特徴とする。また、本発
明の電子写真感光体の製造方法は、排気手段と原料ガス
供給手段を備えた真空気密可能な堆積室内に導電性の基
体を設置し、少なくともシリコン原子を含んだ原料ガス
を高周波電力により分解し、該基体上に少なくともシリ
コン原子を母材とする非結晶質材料からなる光導電層を
形成し、該光導電層の上に、少なくとも炭素とフッ素を
含む原料ガスを高周波電力により分解し、フッ素原子を
含む非単結晶炭素からなる表面層を形成し、さらに、該
表面層を、フッ素を含むガスを高周波電力により分解し
たプラズマを用いてエッチング速度0.1〜50Å/s
ecで少なくとも20Å以上エッチングすることによ
り、該表面層の膜厚を100〜10000Åとし、フッ
素原子で該表面層の表面を被覆することを特徴とする。
【0011】本発明は、本発明者らが実験を介しての検
討の結果得られた、以下に述べる知見に基づいて完成に
至ったものである。すなわち、本発明者らは、a−Si
膜を用いた電子写真感光体について、高温・高湿環境下
における画像流れの問題を解決するためには、根本的に
電子写真感光体の加温手段をなくすことが必要であると
判断した。そこで、従来の電子写真感光体から加温手段
をなくした場合の耐環境性についてまず調べた。その結
果、従来、電子写真感光体の表面層として使われてきた
アモルファス炭化珪素やアモルファスチッ化珪素やアモ
ルファス酸化珪素といった材料では、電子写真プロセス
に供している間にコロナ帯電から発生するオゾンによっ
て表面が酸化され、より親水性の酸化珪素が形成されて
いき、撥水性が損なわれていくことが判った(撥水性と
は純水の水滴を評価サンプルにのせたときの接触角で評
価し、この接触角が大きいほど高い撥水性を示す)。
【0012】ところで、電子写真感光体の表面の撥水性
が低下すると、よりオゾン生成物、水蒸気を吸着しやす
くなり、結果として高湿環境で画像流れが発生しやすく
なることが知られている。また、材料としての撥水性が
高く、オゾンによって酸化されにくく、また、電子写真
感光体の表面層としての要件、つまり透明性、高硬度、
高抵抗という条件を満たしていると報告されているa−
C膜を、光導電層がa−Siからなる電子写真感光体の
最表面に堆積し、実際に電子写真装置に組み込んで加温
手段なしに高温・高湿環境で耐久試験を行った。しか
し、この公知のa−C膜は、高温・高湿環境下の耐久性
では確かに従来のアモルファス炭化珪素やアモルファス
チッ化珪素やアモルファス酸化珪素といった表面層に比
べて向上しているが、良好な画像が得られるのは高々5
万枚程度であり、さらに耐久試験が進むにつれて画像ボ
ケが発生しはじめ、そのボケの程度は耐久が進むにつれ
て悪化していくことが分かった。このため加温手段なし
で製品として用いるには必ずしも満足できるレベルでは
ないことが判明した。
【0013】さらにa−C膜を高撥水性にし、高湿環境
での耐久性を増す手段として、特開昭61−28935
4号公報に開示されているように、a−Si光導電層の
上にRFプラズマCVD法にてa−C膜を堆積した後
に、さらに13.56MHzの高周波を用いてフッ素を
含んだガスでプラズマ放電処理を行い、電子写真感光体
を作製し、得られた電子写真感光体を評価した。その結
果、当該感光体は、オゾンの照射時間に対する撥水性の
低下の速度は非常に遅くなっていることが判った。しか
し、当該感光体を実際に電子写真装置に組み込み、加温
手段なしで高温・高湿環境下において通紙耐久を行った
ところ、耐久が進むにつれて徐々に画像レベルが悪化し
ていき、やはり5万枚程度で画像流れが発生してしまう
ことを確認した。よって加温手段なしで製品として用い
るには必ずしも満足できるレベルのものではないことが
判明した。この電子写真感光体の耐久後の表面をXPS
(ESCA)分析により、表面層の最表面の原子構造を
分析したところ、フッ素原子がほとんど観測されず、代
わりに炭素と酸素が検出された。すなわち、従来のRF
プラズマCVD法によって作製されたa−C膜の表面を
フッ素を含むガスによってプラズマ放電処理しても、電
子写真装置内での帯電、現像、転写、クリーニングとい
う過酷な条件で耐久を続けていくうちに炭素とフッ素の
結合が切れて、表面のフッ素が除去され、その後に現れ
たダングリングボンドとオゾンが結合し、結果としてフ
ッ素によるプラズマ処理を行わない場合と同様に酸化物
が生成し、画像流れが発生してしまうことが判明した。
【0014】次に本発明者らは、a−C膜自体のバルク
特性に高撥水性の機能をもたせることで、耐久してもフ
ッ素が除去されない手法として、米国特許第4,55
9,289号明細書に開示されているようなa−C膜に
フッ素を含有させる方法を試みた。実際に当該明細書の
記載に基づいて電子写真感光体を作製し、評価を行った
ところ、初期の状態では確かに高温・高湿下での解像力
の増加がみられた。ついで、当該感光体を実際の電子写
真装置に組み込んで、加温手段なしに高温・高湿環境下
において通紙耐久を行ったところ、5万枚程度で画像流
れが発生してしまった。よってこの場合の電子写真感光
体も、加温手段なしで製品として用いるには必ずしも満
足できるレベルのものではないことが判明した。上記と
同様に、耐久試験後にXPSによって表面の元素を測定
したところ、炭素、フッ素、酸素が検出された。当該米
国特許明細書に開示されているフッ素を含むa−C膜
は、使用するガス種から考えて、膜中の終端子はフッ素
と水素が混在していると考えられる。XPSの結果から
考察すると、フッ素が残留していることから、成膜工程
中にフッ素を含有させたa−Cでは炭素とフッ素との結
合が強固になっていると考えられるが、炭素と水素の結
合に関してはそれほど強固ではなく、耐久によって水素
が抜け、生じたダングリングボンドに酸素が結合したも
のと考えられる。よって、先に述べた場合における結果
と同様、酸化物によって撥水性が低下したため、画像流
れが起きたと思われる。そこで本発明者らは、バルクと
して高撥水性の、フッ素を含有する非単結晶炭素膜(主
に非晶質炭素を表し、多結晶や微結晶を含んでいてもよ
い)を電子写真感光体の表面層として用い、その最表面
をさらにフッ素を含むガスでプラズマ放電処理を行っ
た。ここで得られた電子写真感光体について、加温手段
なしに耐久試験を行ったところ、先にテストしたどの電
子写真感光体に比べてもかなりの改善がみられた。さら
に当該電子写真感光体を耐久し続けたところ、全く画像
ボケが起こらず、5万枚の時点でも初期の特性を維持す
るなど、飛躍的に耐久性が向上することが判明した。
【0015】以上の原因について、詳しい検証はまだ行
えていないが、次のように推察される。すなわち、フッ
素を含有させた非単結晶炭素膜については、適度にフッ
素含有量を調節することによって、含有させない場合に
比べてバンドギャップの広い膜が得られる。一般にバン
ドギャップは結合力が強い場合には広くなっていくこと
が知られていることから、フッ素を含有させると、結合
力の強い膜になっているものと思われる。また、フッ素
を含有しない非単結晶炭素膜は、ダングリングボンドを
水素によって終端していると考えられるが、これをフッ
素を含むガスによるプラズマ処理した場合、水素がフッ
素に置換されるため、原子半径および炭素との結合長の
違いから、最表面近傍の結合は十分緩和せず、このこと
が耐久によってフッ素が脱落してしまう原因と考えられ
る。これに対して、フッ素含有非単結晶炭素膜をフッ素
化する場合、膜中ではフッ素原子による緩和が行われて
おり、さらに表面のダングリングボンドをフッ素が覆う
ため、表面近傍の結合は非常に安定しており、脱落しに
くいのではないかと思われる。このため、耐久しても表
面にダングリングボンドが生じにくく、オゾン生成物と
反応しにくくなった可能性がある。また、予想外の効果
として、フッ素を含有する非単結晶炭素膜をフッ素を含
むガスでプラズマ放電処理した表面層は、離型性が非常
に高く、転写されずに電子写真感光体表面に残留するト
ナーが非常に少ないことが判明した。この効果は、フッ
素を含有する非単結晶炭素膜をフッ素プラズマ処理しな
いもの、あるいはフッ素を含有しない非単結晶炭素膜や
それをフッ素プラズマ処理した膜のいずれにおいてもこ
れほど顕著ではなく、フッ素を含有する非単結晶炭素膜
をフッ素を含むガスでプラズマ放電処理した場合にのみ
際立った改善がみられることから、この組み合わせの時
に限って表面の結合のひずみが少なく、より表面の自由
エネルギーが減少することが原因ではないかと考えられ
る。一般に物質の付着しやすさは自由エネルギーの損失
で決まるが、表面の自由エネルギーが小さい物質上に
は、付着することで得られる自由エネルギー差が小さい
ため、物体が付着しにくいとされている。このことか
ら、本発明の組み合わせでは、表面に存在するひずみが
小さく、フッ素と炭素間の結合が理想的であり、表面の
自由エネルギーが極めて低いと考えられる。このため、
トナーは静電気力のみで付着しており、転写機構で電荷
が中和されるともはや電子写真感光体表面にとどまる力
がほとんど無くなり、転写効率が極めて高くなるものと
考えられる。
【0016】本発明は、かくして判明した事実に基づい
て完成されたものである。すなわち、本発明の電子写真
感光体は、導電性基体と、該基体上に少なくともシリコ
ン原子を母体とする非単結晶材料の光導電層と、該光導
電層の上に、少なくともフッ素原子を含む非単結晶炭素
の表面層とを有し、該表面層を、フッ素を含むガスを高
周波電力により分解したプラズマによって、エッチング
速度0.1〜50Å/secで少なくとも20Å以上エ
ッチングすることにより、該表面層の膜厚を100〜1
0000Åとし、フッ素原子が該表面層の表面を覆うよ
うに存在していることを特徴とする。この電子写真感光
体を用いれば高温・高湿環境下においても画像ボケや画
像流れが起こらず、この効果を長期にわたって安定的に
持続することが可能となる。また、この電子写真感光体
は離型性が非常に高いために、転写されずに電子写真感
光体上に残留するトナーが極めて少なく、廃トナーをほ
とんど排出しないばかりか、クリーニング工程を簡素化
することができ、環境への配慮、複写機本体のコストや
ランニングコストの削減、機内スペースの削減、小型化
への対応などに関して非常に有利である。本発明は、当
該電子写真感光体の製造方法を包含する。該方法は、排
気手段と原料ガス供給手段を備えた真空気密可能な堆積
室内に導電性の基体を設置し、少なくともシリコン原子
を含んだ原料ガスを高周波電力により分解し、該基体上
に少なくともシリコン原子を母材とする非結晶質材料か
らなる光導電層を形成し、該光導電層の上に、少なくと
も炭素とフッ素を含む原料ガスを高周波電力により分解
し、フッ素原子を含む非単結晶炭素からなる表面層を形
成し、さらに、該表面層を、フッ素を含むガスを高周波
電力により分解したプラズマを用いてエッチング速度
0.1〜50Å/secで少なくとも20Å以上エッチ
ングすることにより、該表面層の膜厚を100〜100
00Åとし、フッ素原子で該表面層の表面を被覆するこ
とを特徴とする。この方法により、上述した利点を有す
る電子写真感光体を効率よく製造できる。
【0017】本発明の効果は、フッ素を含む非単結晶炭
素膜を、フッ素を含むガスによるプラズマ放電処理をし
た場合にのみ達成され、これ以外のバルク組成をもつ膜
を、これ以外のガス組成のプラズマによって処理した場
合では本発明の効果は得られない。すなわち、この組み
合わせの場合にのみ、非単結晶炭素膜の炭素骨格とフッ
素−炭素間の結合状態が最適にマッチングし、本発明の
効果が特異的に得られる。本発明におけるフッ素を含む
非単結晶炭素膜としては、多結晶、微結晶、非晶質の形
態を取り得るが、非晶質が最も好ましい。当該非晶質
は、微結晶を含む非晶質であってもよい。本発明に用い
るフッ素含有非単結晶炭素膜では、フッ素の量が少なく
ても、前記プラズマ処理の前に炭素骨格のボンドの緩和
が生じているため、本発明の効果が得られるが、より好
ましくは、フッ素含有量を5原子%以上50原子%以下
にした方がよい。5原子%以上で本発明の効果が最大限
に得られる。また、50原子%を超えると膜の硬度が減
少しはじめるため、高耐久性を求める観点から50原子
%以下に設定するのが望ましい。本発明における上述し
たプラズマ処理はエッチングを伴うが、このエッチング
する膜厚については、20Å以上程度エッチングすれば
本発明の効果が得られ、さらに好ましくは100Å以上
エッチングすることによって十分な再現性と効果を得る
ことができる。ここでのエッチングレートは、フッ素含
有ガスの種類やガス流量、高周波パワーを変化させるこ
とで変化させることができる。エッチングレートを0.
1Å/sec乃至50Å/secの範囲にする条件下で
は、特にフッ素が表面を覆いながらダングリングボンド
を十分終端しており、炭素原子とフッ素原子との結合が
強固で歪みが少なく、耐久性が良好な表面が達成され
る。エッチングレートが0.1Å/sec以下になる条
件ではプラズマ中にほとんどフッ素ラジカルが存在して
おらず、表面のダングリングボンドを十分に終端できな
い場合がある。また、逆にエッチングレートが50Å/
sec以上になるような急激な条件になると膜のエッチ
ングが均一にされなくなり、表面のエッチングされやす
いところに集中的にエッチングが起こり、いわゆるポー
ラス状の部分が発生してしまう場合がある。このポーラ
ス状領域が発生すると、逆に吸湿しやすくなるため、撥
水性が低下してしまう傾向がある。本発明においては、
エッチング処理した後の表面層の膜厚は100〜100
00Åにすることが望ましい。100Å以下では機械的
強度が低下するために、たとえば電子写真複写機におい
てコピー用紙がジャムを起こした際などに電子写真感光
体に傷が入ってしまうことがある。一方、膜厚が100
00Åを超えると、表面層で吸収される光の量が増すた
め、感度の低下を引き起こすことになる。このため、複
写画像がかぶったり、濃度が薄くなったりする弊害を引
き起こす場合がある。
【0018】以下に図面を用いて本発明を具体的に説明
する。図1(a)は本発明の電子写真感光体の好適な一
例を説明するための模式的断面図である。図1(a)に
おいて、101は基体であり、102は非単結晶物質か
らなる電荷注入阻止層であり、103はシリコン原子を
母体とする非単結晶物質からなる光導電層であり、10
4はフッ素原子を含む非単結晶炭素からなる表面層であ
る。105はフッ素を含むガスをプラズマ放電分解して
104の非単結晶炭素をエッチングすることによってフ
ッ素原子が強固に結合した領域を示す。電荷注入阻止層
102は必須のものではなく、必要に応じて設けられる
ものである。本発明において、前記表面層104は、フ
ッ素を含有する非単結晶炭素を有する。当該表面層は、
炭素とフッ素を含むガス、炭素を含むガスとフッ素を含
むガスとの混合ガスなどの成膜用原料ガスを高周波によ
りグロー放電分解して形成できる。表面層としては透明
度が高い方が感度の低下が少なく好都合であるので、必
要に応じて水素、ヘリウム、アルゴンなどのガスが当該
原料ガスに適宜混合される。表面層形成の際の基板温度
は、室温から350℃の範囲で調整されるが、あまり基
板温度が高すぎるとバンドギャップが低下して透明度が
低下するため低めの温度設定が好ましい。表面層の形成
における、炭素およびフッ素供給用ガスとなり得る物質
としては、CH4,C26,C22,C24,C38
410などの炭化水素、CF4,CHF3,CH22
CH3F,C24,C2HF3,C26,C38,C410
などのフッ化炭化水素が主に挙げられ、そのほか、CH
ClF3,ClF3,SF6,F2,HFなどのフッ化ガ
ス、H2,He,Arなどの希釈ガスなどを組み合わせ
て使用できる。これらを適宜混合して使用できる。なか
でも、CH4またはC26と、CF4またはC24とを混
合させる組み合わせは、層作製時の取り扱い易さ、供給
効率の点から特に好ましい。CF4やC24は炭素とフ
ッ素とを含むが、エッチング性が高いガスであるためそ
のままでは成膜できず、水素により希釈することで成膜
可能となる。また、C 22,CH3Fは条件によって
は単独でもフッ素含有非単結晶炭素膜を作製可能であ
る。しかし、成膜条件のラチチュードを広げるためには
CH4やH2などで希釈することもできる。
【0019】表面層104の形成における高周波電力に
ついては、できるだけ高いほうが炭化水素やフッ化炭化
水素などの分解が十分に進むため好ましく、具体的には
原料ガスに対して10W/cc以上が好ましい。しか
し、あまり高くなると異常放電が発生してしまい、電子
写真感光体の特性を劣化させるので、異常放電が発生し
ない程度の電力に抑える必要がある。また、表面層10
4の形成における高周波の周波数に関しては、一般的に
RFと称される周波数帯からVHFと称される周波数帯
までの1〜450MHzの高周波が好適に使用でき、工
業的によく用いられる13.56MHzの高周波電源が
使用可能である。また、特に50〜450MHzのVH
F帯と呼ばれる周波数帯の高周波を用いた場合には、フ
ッ素含有非単結晶炭素膜の透明度をより高くすることが
でき、硬度をさらに向上させることができるためより好
ましい。一方、0.5GHz以上のマイクロ波帯の周波
数でフッ素含有非単結晶炭素膜を作製した場合、良好な
膜特性が得られる条件では膜厚ムラが非常に大きくなっ
てしまうため好ましくない。また、表面層104の形成
における放電空間の圧力については、炭化水素あるいは
フッ化炭化水素のように分解されにくいガスを用いて成
膜する場合には、気相中での分解種同士の衝突によって
ポリマライズしやすいため、できるだけ低圧が望まし
い。具体的には、1〜50MHzの高周波を用いた場合
には、好ましくは133Pa以下、より好ましくは80
Pa以下、最適には54Pa以下である。また、50〜
450MHzのVHF帯の高周波を用いた場合は、高真
空でも安定に放電を励起させることができるため、好ま
しくは13.3Pa以下、より好ましくは6.7Pa以
下、最適には1.3Pa以下である。特に放電空間の圧
力を1.3Pa以下にする場合には、フッ素含有非単結
晶炭素膜の透明度の向上が見られ、電子写真感光体の感
度を良好にする点で非常に好ましい。圧力の下限に関し
ては、放電が安定して立つ領域であればどれだけ低くし
てもよく、圧力の下限においても本発明の効果は十分に
得られる。
【0020】フッ素原子が膜中に結合した領域105を
形成するためには、フッ素含有非単結晶炭素の表面層1
04を形成した後にフッ素含有ガスを導入し、高周波電
力でプラズマを発生させて表面層104のエッチング処
理を行うことによって、表面層の膜中にフッ素原子を含
有させる。この時の高周波電力の周波数は1〜450M
Hzの範囲から任意の値を使用することができる。0.
5GHz以上のマイクロ波領域の周波数では逆にエッチ
ングの効果が大きすぎるため、表面層に前述したポーラ
ス領域が発生しやすく、所望の効果が得られにくい。ま
た、前記周波数の高周波電力は10Wから5000Wま
で、各々のエッチング速度に鑑み、適宜決定される。ま
た、表面層をエッチング処理する際の処理空間の圧力も
0.1Paから数百Paの範囲で適宜決定される。表面
層104をエッチング処理するについて使用する前記フ
ッ素含有ガスとしては、CF4,CHF3,C26,C3
8,C410などが挙げられる。これらの他、Cl
3,CHClF2,F2,SF6,HFなども用いること
が可能である。表面層104を上述したようにエッチン
グ処理する膜厚に関しては最小20Å以上あれば本発明
の効果は得られる。100Å以上エッチングすると、再
現性、均一性が向上しより好ましい。当該エッチングす
る膜厚は20Å以上であればどれだけエッチングしても
本発明の効果は得られるので任意に決めてよいが、制御
の容易性と工業的な生産性の点から、その上限は、10
00〜5000Åの程度が好ましい。表面層104をエ
ッチング処理する際のエッチング速度は0.1Å/se
c乃至50Å/secの範囲が好ましい。いずれにし
ろ、本発明の目的を達成すべく、表面を荒らさず、かつ
ポーラス状領域が発生することなくして、もっとも効果
的にフッ素原子が最表面に所望状態に結合した領域10
5が形成されるよう、適切なエッチング速度とすること
が必要である。
【0021】光導電層103は適宜のシリコン原子を主
体とした非単結晶質材料で構成することができる。光導
電層103の形成においては、いかなる周波数の高周波
電力、あるいはマイクロ波によるグロー放電プラズマで
も好適に使用できる。例えばこうしたグロー放電プラズ
マによりシリコン原子を含んだ原料ガスを分解して該層
は形成できる。図1(a)に示す例においては、光導電
層103は機能分離されていない単一の層からなり、少
なくともシリコン原子を含む非単結晶質材料で構成さ
れ、光導電性を示すものである。本発明の電子写真感光
体は、図1(a)に示す構成の他、 図1(b)の模式
的断面図に示す構成であってもよい。図1(b)に示す
構成は、図1(a)に示す構成の変形であり、図1
(a)の光導電層103を複数構成にしたものである。
すなわち、図1(b)に示す構成においては、光導電層
103は、少なくともシリコン原子を含む非晶質材料で
構成され、電荷輸送層106と、電荷発生層107の2
層が順次積層された構成をもつ。当該電子写真感光体に
光照射すると主として電荷発生層107で生成された電
荷が電荷輸送層106を通って電荷注入阻止層102に
入り、導電性基体101に至る。なお、電荷発生層10
7と電荷輸送層106の積層順は、図示されるものと
逆、つまり電荷発生層が導電性基体101側とされてい
てもよい。また、電荷注入阻止層102は省略しても構
わない。図1(a)乃至(b)のいずれの構成において
も、光導電層の膜厚は複写機本体が要求する帯電能、感
度および作製効率に応じて適宜設定されるが、通常は1
〜50μmの範囲とされる。これは帯電能、感度の点か
ら10μm以上、工業的生産性の観点からは50μm以
下が望ましいという点に基づいている。
【0022】図2は、本発明の電子写真感光体の製造に
使用できるプラズマCVD法による成膜装置の一例を模
式的に示した図である。この装置は大別すると、原料ガ
ス供給系2200、反応容器を有する堆積装置210
0、前記反応容器内を減圧するための排気系から構成さ
れている。図2において、2110は、反応容器を示
す。反応容器2110はカソード電極を兼ねる周囲壁2
111を有する。反応容器2110内には、基体211
2′(円筒状基体)を保持する円筒状基体ホルダー21
12が支持軸2113により支持されている。基体21
12′は、基体ホルダー2112および支持軸2113
を介してアースに接続されている。2113′は基体ホ
ルダー2112の内部に設けられた基体2112′を加
熱するためのヒーターである。カソード電極2111
(反応容器周囲壁)は、セラミック碍子によりアースか
ら絶縁されている。2120は、高周波電源であり、該
高周波電源は、マッチングボックス2115を介してカ
ソード電極2111に電気的に接続されている。211
8は、一端が反応容器2110に開口し他端が排気装置
(図示せず)にメインバルブ2118′を介して接続し
た排気管である。2117は排気管2118に接続した
リークバルブであり、2119は排気管2118に設け
られた真空計である。
【0023】2114は、原料ガスを反応容器2110
内に導入するための原料ガス導入管であり、該原料ガス
導入管は、複数のガス排出孔(図示せず)を備えてい
る。原料ガス導入管2114はガス配管2116に連通
されていて、該ガス配管2116は、補助バルブ226
0を介して原料ガス供給系2200に連通している。原
料ガス供給系2200は、原料ガスボンベ2221〜2
226、バルブ2231〜2236、圧力調整器226
1〜2266、流入バルブ2241〜2246、マスフ
ローコントローラー2211〜2216、流出バルブ2
251〜2256を有する。基体2112′は、使用目
的に応じた材質や形状を有するものであればよい。例え
ば、形状に関しては電子写真感光体を製造する場合には
円筒形が望ましいが、必要に応じて平板状や、その他の
形状であってもよい。また、材質に関しては、銅、アル
ミニウム、金、銀、白金、鉛、ニッケル、コバルト、
鉄、クロム、モリブデン、チタン、ステンレスおよびこ
れらの材料の2種類以上の複合材料、さらにはポリエス
テル、ポリエチレン、ポリカーボネイト、セルロースア
セテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化
ビニリデン、ポリスチレン、ガラス、石英、セラミック
ス、紙などの絶縁材料に導電性材料を被覆したものなど
が使用できる。
【0024】以下、図2に示す成膜装置を用いた、本発
明の電子写真感光体の作製方法の一例について説明す
る。反応容器2110内に成膜用の円筒状基体211
2′を設置し、不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)
により反応容器2110内を排気する。続いてヒーター
2113′により円筒状基体2112′の温度を20〜
500℃の所定の温度に制御する。次に電子写真感光体
形成用の各原料ガスをガス供給系2200より流量制御
しながら、反応容器2110内に導入する。排気速度を
調整することにより所定の圧力に設定する。以上の手順
によって成膜準備を完了した後、円筒状基体2112′
上に光導電層103の形成を行う。内圧が安定したとこ
ろで、高周波電源2120を所望の電力に設定して高周
波マッチングボックス2115を通じてカソード電極2
111に供給し反応容器2110内に高周波グロー放電
を生起させる。放電に用いる周波数は1〜50MHzの
RF帯、50〜450MHzのVHF帯が使用できる。
この他、装置形態が異なるが、光導電層の形成には2.
45GHzに代表されるマイクロ波を用いても構わな
い。放電エネルギーによって反応容器2110内に導入
させた各原料ガスが分解され、円筒状基体2112′上
に所定のシリコン原子を主成分とする非単結晶物質から
なる光導電層が形成される。所望の膜厚の形成が行われ
た後、高周波電力の供給を止め、ガス供給系の各バルブ
を閉じて反応容器2110への各原料ガスの流入を止
め、堆積膜の形成を終える。
【0025】次に光導電層103の上にフッ素含有非単
結晶炭素膜からなる表面層104を形成する。表面層と
してのフッ素含有非単結晶炭素膜の形成は、使用原料ガ
スの種類とその混合比、成膜時の圧力、高周波電力とそ
の周波数、成膜温度などが適切な値に設定することによ
り、従来のプラズマCVD法を用いて行うことができ
る。本発明における表面層104の形成は、基本的には
上述の操作を繰り返して、所定の成膜用原料ガスを反応
容器2110内に供給しグロー放電を開始すればよい。
例えば、所望の原料ガス、具体的にはCH4,C26
22,C24,C38,C410などの炭化水素、C
4,CHF3,CH22,CH3F,C24,C2
3,C26,C38,C410などのフッ化炭化水素、
CHClF3,ClF3,SF6,F2,HFなどのフッ化
ガス、H2,He,Arなどの希釈ガスなどを適宜組み
合わせ、マスフローコントローラーにより所定の流量、
所定の混合比になるように調整する。排気速度を調整し
て内圧を所定の値に設定した後、高周波電源2120か
らカソード電極2111に周波数1〜450MHzの高
周波電力を供給し、高周波グロー放電を生じさせる。放
電エネルギーによって、導入された各原料ガスが分解さ
れ、光導電層103上にフッ素を含む所定非単結晶炭素
膜からなる表面層104が形成される。次に表面層10
4の成膜に用いたガスを排気し、エッチングに用いるフ
ッ素を含むガス、具体的にはCF4,CHF3,C26
38,C410,ClF3,CHClF2,F2,S
6,HFのうちから選ばれたガス乃至またはこれらの
二種またはそれ以上の混合ガスを流量制御して反応容器
2110内に導入し、反応容器内が所望の圧力になるよ
うに排気速度を調整する。内圧が安定したところで周波
数1〜450MHzの高周波電力を印加し高周波グロー
放電を発生させる。この放電エネルギーによって反応容
器内に導入されたフッ素含有ガスが分解され、表面層1
04と反応することによってエッチングおよび最表面の
フッ素化が行われる。エッチング速度は0.1〜50Å
/secに調整し、エッチング量は20Å以上、より好
ましくは100Å以上とする。所望のエッチング処理が
行われた後、高周波電力の供給を止め、反応容器内への
各原料ガスの流入を止め、エッチング処理を終了する。
エッチング後の表面層104の膜厚は100〜1000
0Åとなるように条件を設定する。これにより、表面層
104の最表面に領域105が形成される。なお、上記
膜形成を行っている間は、円筒状基体2112′を不図
示の駆動装置によって所定の速度で回転させてもよい。
【0026】図3は、本発明の電子写真感光体の製造に
使用できる、図2とは別形態のプラズマCVD法による
成膜装置(量産型)の一例の模式図である。図3におい
て301は反応容器であり、真空気密化構造を有してい
る。302は一端が反応容器301内に開口し、他端が
排気装置(図示せず)に連通している排気管である。3
03は円筒状基体304′によって囲まれた放電空間を
示す。1〜450MHzから選ばれた周波数の高周波を
発生させる高周波電源305は、高周波マッチングボッ
クス306を介して電極307に電気的に接続されてい
る。円筒状基体304′はホルダー304にセットした
状態で回転軸309に設置され、必要に応じてモーター
310で回転できるようになっている。原料ガス供給系
(不図示)は、図2に示した2200と同様のものを用
いればよい。該原料ガス供給系は、バルブ312を介し
て反応容器301内に開口するガス導入管311に接続
されている。図3に示す成膜装置を使用する成膜は、図
2に示す装置の場合と同様の手法で行うことができる。
【0027】図4は電子写真装置の画像形成プロセスの
一例を示す概略図である。該電子写真装置において、電
子写真感光体401は矢印X方向に回転する。電子写真
感光体401の周辺には、主帯電器402、静電潜像形
成部位403、現像器404、転写紙供給系405、転
写帯電器406(a)、分離帯電器406(b)、クリ
ーナー407、搬送系408、除電光源409などが配
設されている。以下、図4に示す電子写真装置における
画像形成プロセスを説明する。電子写真感光体401は
高電圧を印加した主帯電器402により一様に帯電さ
れ、これに静電潜像部位、すなわちランプ410から発
した光が原稿台ガラス411上に置かれた原稿412に
反射し、ミラー413,414,415を経由し、レン
ズユニット417のレンズ418によって結像され、ミ
ラー416を経由し、導かれ投影された静電潜像が形成
される。この潜像に現像器404からネガ極性トナーが
供給されてトナー像が形成される。一方、転写紙供給系
405を通って、レジストローラー422によって先端
タイミングを調整され、電子写真感光体401方向に供
給される転写材Pは高電圧を印加した転写帯電器406
(a)と電子写真感光体401の間隙において背面か
ら、トナーとは逆極性の正電界を与えられ、これによっ
て電子写真感光体表面のネガ極性のトナー像は転写材P
に転写する。次いで、高圧AC電圧を印加した分離帯電
器406(b)により、転写材Pは転写搬送系408を
通って定着装置424に至り、トナー像が定着されて装
置外に搬出される。電子写真感光体401上に残留する
トナーはクリーニングユニット407のクリーニングブ
レード421によって回収され、残留する静電潜像は除
電光源409によって消去される。
【0028】
【実施例】以下に本発明を実施例を用いて具体的に説明
するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではな
い。
【0029】
【実施例1】図2に示したプラズマCVD成膜装置を用
いて、表1に示した条件により電荷注入阻止層および光
導電層をこの順序でアルミニウム製円筒状基体の表面に
形成し、ついで、表2に示した条件で表面層を形成し
た。ここでは電荷注入阻止層および表面層の形成を従来
の13.56MHzの高周波で行った。この表面層はフ
ッ素を20%含む非単結晶炭素膜であった。得られた電
子写真感光体の表面層に対して表3の条件でエッチング
を行い、フッ素終端処理を施した。本実施例ではエッチ
ングの際のエッチング速度を3Å/secとし、エッチ
ングする膜厚は300Åとした。かくして得られた電子
写真感光体について、以下に示す方法で評価を行った。
【0030】
【撥水性の評価】電子写真感光体の撥水性を評価するた
めに協和界面科学社製の接触角計(CA−S−ロール
型)により表面の接触角を純水で測定した。撥水性は、
下記の画像流れテストのための環境耐久の前後で2回測
定を行った。測定点をドラムの周方向に3点、軸方向に
5点の計15点とした。得られた結果を総合し、100
〜0点の点数を付けて評価した。下述する比較例1に示
す従来表面層での初期(耐久前)の値を50とし、耐久
後の比較でもこの初期の値を基準とする。50よりも大
きければ撥水性が良好であり、小さければ撥水性が劣る
ことを示す。評価結果は、以下の評価基準に基づいて表
6に示す。 ◎:100〜80点の場合(極めて優れた撥水性)、 ○:80〜60点の場合(良好な撥水性)、 △:60〜40点の場合(従来の表面層並みの撥水
性)、そして ×:40〜0点の場合(撥水性が劣り、実用上問題があ
る、または問題が生じる可能性あり)。
【0031】
【画像流れ(帯電器跡流れ)の評価】キヤノン株式会社
製のNP6060複写機の実験用に改造した複写機に電
子写真感光体をセットし、複写機を32℃88%の高温
・高湿環境に移し、ドラムヒーターをオフとし、キヤノ
ン製テストチャート(部品番号:FY9−9058)を
1万枚複写した。その後一旦複写機を止め、この状態で
環境を35℃90%に変更し、5時間放置することでオ
ゾン生成物を表面に十分に堆積・吸湿させた。この後再
び先ほどのチャートを1万枚複写し5時間複写機を止め
るという操作を繰り返し、10万枚まで耐久した。再び
5時間の休止を行い、休止後コピーした1枚目のチャー
ト上にあるラインアンドスペースの判別(16段階評
価)、文字輪郭の判別によって画像流れ(特に帯電器跡
流れ)を総合的に判断し、4段階評価を行った。この評
価を5枚のコピーサンプルについて繰り返した。評価結
果は、以下の評価基準に基づいて表6に示す。 ◎:全くボケや帯電器跡がない場合、 ○:実用上問題がないが軽微な帯電器跡がわずかに認識
される場合、 △:文字の判別はできるが、ボケや帯電器跡が多少あ
り、実用上多少問題があると思われる場合、そして ×:全面ボケ画像あるいは帯電器跡があり、文字の判別
ができない場合。
【0032】
【クリーニング性の評価】電子写真感光体を、実験用に
改造したキヤノン株式会社製複写機NP6060の改造
機に搭載し、クリーニング性の評価を行った。プロセス
の条件として、弾性ゴムブレードを用い、ブレードの押
し当て圧を通常の50%の圧力に設定し、マグローラー
などのクリーニングローラーは用いず、クリーニング不
良が起こりやすい条件にした。この条件で、全面黒(以
下ベタ黒と称する)の原稿を用いて10万枚耐久した。
耐久後、ハーフトーン画像をコピーしてクリーニング不
良の有無を調べた。具体的には、A4のハーフトーン画
像において、ドラムの母線方向に平行な領域をとり、ク
リーニング不良による汚れの面積を5枚のコピーサンプ
ルから見積もった。同様の評価を5回行い、5枚のコピ
ーサンプルでの結果を得た。得られた結果は下述する比
較例1に示した従来表面層での同様の試験から求められ
た値との相対値で判定した。比較例1に示した従来表面
層での値を50とし、1〜100までの点数で評価し
た。50より小さければ従来表面層に比べてクリーニン
グ不良が少ないことを示し、50より大きければ従来表
面層に比べてクリーニングの程度が悪いことを示す。評
価結果は、以下の評価基準に基づいて表6に示す。 ◎:0〜20点の場合(極めて優れたクリーニング
性)、 ○:20〜40点の場合(良好なクリーニング性)、 △:40〜60点の場合(従来表面層並みのクリーニン
グ性)、そして ×:60〜100点の場合(クリーニング性が劣り、実
用上問題がある、または問題が生じる可能性あり)。
【0033】
【トナー融着の評価】実験用に改造したキヤノン株式会
社製の複写機NP6060の改造機に電子写真感光体を
セットして、融着に対して厳しい条件(融着の出やすい
条件)としてドラムヒーターを用い、感光体表面温度を
50℃とし、1%原稿(A4対角線方向に直線を引いた
だけの原稿)を用いて10万枚耐久した。耐久後、ハー
フトーン画像をコピーして融着の有無を調べた。具体的
には、同様にA4のハーフトーン画像において、感光体
の母線方向に平行な領域をとり、同領域に存在するトナ
ー融着による黒点の数を見積もり、5枚のコピーサンプ
ルでの結果を得た。得られた結果は下述する比較例1に
示した従来表面層での同様の試験から求められた値との
相対値で判定した。比較例1に示した従来表面層での値
を50とし、1〜100までの点数で評価した。50よ
り小さければ従来表面層に比べて融着が少ないことを示
し、50より大きければ従来表面層に比べて劣ることを
示す。評価結果は、以下の評価基準に基づいて表6に示
す。 ◎:0〜20点の場合(極めて優れた特性)、 ○:20〜40点の場合(良好な特性)、 △:40〜60点の場合(従来表面層並みの特性)、そ
して ×:60〜100点の場合(実用上問題がある、または
問題が生じる可能性あり)。
【0034】
【削れ耐久性の評価】この評価は、電子写真感光体の表
面を強制的に研磨して研磨量を調べることにより行っ
た。すなわち、電子写真感光体を、プロセススピード4
50mm/secで回転させ、それに平均粒度8μmの
SiC研磨テープ(富士フィルム製LT−C2000)
を接触させ、接触面の上から3φ、幅20mmの平行ピ
ンで片削れしないように抑え、荷重をかけて研磨した。
また研磨テープは1mm/sec程度で常に動かしてお
り、常に新しい面を供給して研磨力を一定に保ち、研磨
屑の影響が出ないように工夫した。このような強制的な
研磨を60分間行い、研磨試験前後での膜厚差を光学式
膜厚計(大塚電子製反射分光計MCPD−2000)に
て測定した。膜厚の変化はSiCからなる下述する比較
例1に示した従来表面層の削れ量との相対量で評価し
た。比較例1に示した従来表面層での値を50とし、1
〜100までの点数で評価した。50より小さければ従
来表面層に比べて削れが少ないことを示し、50より大
きければ従来表面層に比べて劣ることを示す。評価結果
は、以下の評価基準に基づいて表6に示す。 ◎:0〜20点の場合(極めて優れた削れ耐久性)、 ○:20〜40点の場合(良好な削れ耐久性)、 △:40〜60点の場合(従来表面層並みの削れ耐久
性)、そして ×:60〜100点の場合(削れ耐久性が劣り、実用上
問題がある、または問題が生じる可能性あり)。
【0035】
【比較例1】図2に示すプラズマCVD成膜装置を用い
て表1に示した条件により電荷注入阻止層および光導電
層をこの順序でアルミニウム製円筒状基体の表面上に形
成し、ついで表4に示した条件により表面層を形成し
た。ここでは電荷注入阻止層および表面層を従来の1
3.56MHzの高周波で形成した。この表面層は従来
から用いられているSiCからなる表面層である。表面
層のエッチングは行わなかった。このようにして得られ
た電子写真感光体について、実施例1と同様の評価を行
った。評価結果は表6に示す。
【0036】
【比較例2】図2に示すプラズマCVD成膜装置を用い
て表1に示した条件により電荷注入阻止層および光導電
層をこの順序でアルミニウム製円筒状基体の表面上に形
成し、ついで、表4に示した条件により表面層を形成し
た。ここでは電荷注入阻止層および表面層を従来の1
3.56MHzの高周波で形成した。この表面層は従来
から用いられているSiCからなる表面層である。この
表面層に対して表3の条件で13.56MHzのRF電
力でエッチングを行い、フッ素終端処理を行った。本比
較例では実施例1、比較例2と条件をそろえるためにエ
ッチングの際のエッチング速度を3Å/secとし、エ
ッチングする膜厚は300Åとした。このようにして得
られた電子写真感光体について、実施例1と同様に評価
をした。評価結果は表6に示す。
【0037】
【比較例3】図2に示すプラズマCVD成膜装置を用い
て表1に示した条件により電荷注入阻止層および光導電
層をこの順序でアルミニウム製円筒状基体の表面上に形
成し、ついで、表2に示した条件により表面層を形成し
た。ここでは電荷注入阻止層および表面層を従来の1
3.56MHzの高周波で形成した。この表面層はフッ
素を20%含む非単結晶炭素膜からなるものであった。
表面層のエッチングは行わなかった。このようにして得
られた電子写真感光体について、実施例1と同様に評価
を行った。評価結果は表6に示す。
【0038】
【比較例4】図2に示すプラズマCVD成膜装置を用い
て表1に示した条件により電荷注入阻止層および光導電
層をこの順序でアルミニウム製円筒状基体の表面上に形
成し、ついで、表5に示した条件により表面層を形成し
た。ここでは電荷注入阻止層および表面層を従来の1
3.56MHzの高周波で形成した。この表面層はフッ
素を含有しない非単結晶炭素膜からなるものであった。
この表面層に対して表3の条件で13.56MHzのR
F電力でエッチングを行い、フッ素終端処理を行った。
本比較例では実施例1と条件をそろえるためにエッチン
グの際のエッチング速度を3Å/secとし、エッチン
グする膜厚は300Åとした。このようにして得られた
電子写真感光体について、実施例1と同様に評価を行っ
た。評価結果は、表6に示す。
【0039】表6に示した結果から、本発明の電子写真
感光体は撥水性、画像流れ、クリーニング性、トナーの
融着特性のいずれもが大きく改善されていることが明ら
かとなった。また、削れに対する耐久性に関しても、従
来表面層である比較例1のSiCに比べて良好であり、
フッ素含有による硬度低下の弊害はほとんどないことが
判った。一方、エッチングによるフッ素終端を行わなか
った比較例3のフッ素含有非単結晶炭素表面層、フッ素
を含まない非単結晶炭素表面層をエッチングした比較例
4の表面層では、初期の撥水性は向上しているが、高温
・高湿耐久後の撥水性は低下してしまうことが判った。
これらは、耐久後の画像流れ特性、クリーニング性、融
着特性は比較例1に示した従来表面層に比べて改善が見
られたが、製品レベルとしては更に改善すべき余地があ
ることが判った。また、従来表面層材料であるSiCに
対してフッ素プラズマ処理を行った比較例2の表面層で
は、初期の撥水性のみ向上するものの、耐久後の撥水
性、画像流れ、クリーニング性、融着のいずれも全く改
善が見られなかった。また、削れに対する耐久性に関し
ては、比較例4の非単結晶炭素膜をエッチングした表面
層が最も優れており、比較例3のフッ素含有非単結晶炭
素が比較例1に示した従来表面層に比べてやや改善され
ており、比較例2のSiCをエッチングした表面層は比
較例1に示した従来表面層並みであった。
【0040】
【実施例2】図2に示すプラズマCVD成膜装置を用い
て表1に示した条件により電荷注入阻止層および光導電
層をこの順序でアルミニウム製円筒状基体の表面上に形
成し、ついで、表7に示した条件により表面層を形成
し、該表面層について、表8の条件でエッチングを施し
た。ここでは電荷注入阻止層および光導電層は従来の1
3.56MHzの高周波で成膜を行い、表面層形成とエ
ッチング処理には60MHzの高周波を用いた。表面層
形成時に導入するフッ素含有ガスの流量を変化させるこ
とにより、非単結晶炭素膜に含有されるフッ素量を調整
した。フッ素含有量はそれぞれ5.2,10.3,2
1.6,49.3%となった。エッチングの際のエッチ
ング速度は5Å/sec、エッチングする膜厚を200
Åとした。このようにして複数の電子写真感光体を作製
した。得られた電子写真感光体について、実施例1と同
様の評価を行った。評価結果は表9に示す。
【0041】
【比較例5】図2に示すプラズマCVD成膜装置を用い
て表1に示した条件により電荷注入阻止層および光導電
層をこの順序でアルミニウム製円筒状基体の表面上に形
成し、ついで、表7の条件により表面層を形成し、該表
面層について、表8の条件でエッチングを施した。ここ
では電荷注入阻止層および光導電層は従来の13.56
MHzの高周波で成膜を行い、表面層作製とエッチング
処理には60MHzの高周波を用いた。表面層形成時に
導入するフッ素含有ガスの流量を変化させることによ
り、非単結晶炭素膜に含有されるフッ素量を調整した。
フッ素含有量はそれぞれ2.7,55.4%となった。
エッチングの際のエッチング速度は5Å/sec、エッ
チングする膜厚を200Åとした。このようにして複数
の電子写真感光体を作製した。得られた電子写真感光体
について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果は
表9に示す。
【0042】表9に示した結果から、非単結晶炭素膜中
に含まれるフッ素量が5〜50%であるいずれの電子写
真感光体に関しても耐久前後の撥水性、画像流れ特性、
クリーニング性、融着特性が大きく改善しており、削れ
に対する耐久性においても全く問題のないことが判っ
た。一方、含有されるフッ素量が2.7%とした比較例
5の電子写真感光体においては撥水性、画像流れ特性、
クリーニング性、融着特性のいずれも比較例1に示した
従来表面層に比べれば改善が見られるものの、実施例2
と比較すると、本発明の効果を最大限に引き出すために
は5%以上含有させた方が好ましいことが判る。また、
含有されるフッ素量を55.4%とした場合には、撥水
性、画像流れ特性、クリーニング性、融着特性のいずれ
も大きく改善しているが、削れに対する耐久性を向上さ
せる方が望ましいことが判った。以上のことを総合する
と、フッ素含有非単結晶炭素膜に含まれるフッ素量は、
5%以上50%以下が望ましいことが判った。
【0043】
【実施例3】図2に示すプラズマCVD成膜装置を用い
て表1に示した条件により電荷注入阻止層および光導電
層をこの順序でアルミニウム製円筒状基体の表面上に形
成し、ついで、表10の条件により表面層を形成し、該
表面層について、表11の条件でエッチングを施した。
ここでは電荷注入阻止層および光導電層は従来の13.
56MHzの高周波で形成し、表面層形成とエッチング
処理には50MHzの高周波を用いた。本実施例ではエ
ッチングの際の高周波パワーを変化させ、エッチング速
度を0.1〜50Å/secまで変化させた。エッチン
グする膜厚はエッチング時間を調整することにより50
0Åとした。このようにして複数の電子写真感光体を作
製した。得られた電子写真感光体について、実施例1と
同様の評価を行った。得られた評価結果は表12に示
す。
【0044】
【比較例6】図2に示すプラズマCVD成膜装置を用い
て表1に示した条件により電荷注入阻止層および光導電
層を、この順序でアルミニウム製円筒状基体の表面上に
形成し、ついで、表10に示した条件で表面層を形成
し、該表面層について、表11の条件でエッチングを施
した。ここでは電荷注入阻止層および光導電層は従来の
13.56MHzの高周波で形成し、表面層形成とエッ
チング処理には50MHzの高周波を用いた。本比較例
ではエッチングの際の高周波パワーを変化させ、エッチ
ング速度を0.05Å/secおよび70Å/secま
で変化させた。エッチングする膜厚はエッチング時間を
調整することにより500Åとした。このようにして複
数の電子写真感光体を作製した。得られた電子写真感光
体について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果
は表12に示す。
【0045】表12に示した結果から、エッチング速度
が0.1〜50Å/secであるいずれの電子写真感光
体に対しても撥水性、画像流れ特性、クリーニング性、
融着特性が大きく改善しており、削れに対する耐久性も
比較例1に示した従来表面層に比べれば若干改善してい
ることが判明した。一方、エッチング速度を0.05Å
/secにした比較例6の電子写真感光体においては、
撥水性、画像流れ特性についての改善が見られなかっ
た。また、エッチング速度が70Å/secになると表
面が荒れてポーラス状になり、耐久後の撥水性、画像流
れ特性が改善せず、クリーニング性、融着特性とも、良
好な結果は得られなかった。これは表面が荒れすぎてい
るためと考えられる。
【0046】
【実施例4】図2に示すプラズマCVD成膜装置を用い
て表1に示した条件により電荷注入阻止層および光導電
層をこの順序でアルミニウム製円筒状基体の表面上に形
成し、ついで、表13に示した条件により表面層を形成
し、該表面層について、表14の条件でエッチングを施
した。ここでは電荷注入阻止層および光導電層は従来の
13.56MHzの高周波で形成し、表面層形成とエッ
チング処理には105MHzの高周波を用いた。エッチ
ングされる膜厚を500Åとした。エッチング処理のフ
ッ素源には、CF4,CHF3,C24,CHClF2
38,C410のそれぞれのガスを用いた場合の6本
の電子写真感光体を作製した。いずれのガス種において
も、エッチング速度は1〜10Å/secであり、本発
明の範囲内であった。このようにして作製した電子写真
感光体について、実施例1と同様の評価を行った。評価
結果は表15に示す。上記の6本の電子写真感光体の特
性は比較例1に示した従来表面層に比べて全て大きく改
善されていることが判った。よって、エッチング処理に
用いるガス種はいかなるフッ素系のガスであっても本発
明の効果が得られることが判明した。
【0047】
【実施例5】図2に示すプラズマCVD成膜装置を用い
て表1に示した条件により電荷注入阻止層および光導電
層をこの順序でアルミニウム製円筒状基体の表面上に形
成し、ついで、表16に示した条件により表面層を形成
した。ここでは電荷注入阻止層および光導電層は従来の
13.56MHzの高周波で成膜を行い、表面層形成に
は1〜450MHzの高周波を用いた。このようにして
得られた複数の電子写真感光体のそれぞれの表面層につ
いて、表3の条件でエッチングを行い、フッ素終端処理
を施した。エッチング速度は2〜8Å/secであり、
エッチングされる膜厚を500Åとした。このようにし
て作製した複数の電子写真感光体について、実施例1と
同様の評価を行った。この評価に加えて膜厚ムラの評価
もあわせて行った。膜厚は、大塚電子製反射分光計MC
PD−2000を用いて反射分光法により求めた。この
測定を軸方向に5点、円周方向に3点の計15点につい
て測定し、最大値と最小値の幅を求め、比較例1に示し
た従来表面層での値との相対値で比較した。比較例1に
示した従来表面層における、前述した幅の値を50と
し、膜厚ムラが全く無い状態を0として、0〜100ま
での点数で評価した。50より大きければ従来表面層に
比べて膜厚ムラが悪いことを示し、50より小さければ
従来表面層より膜厚ムラが良好なことを示している。評
価結果は以下の評価基準に基づいて表17に示す。 ◎:0〜20点の場合(極めて膜厚ムラが少ない)、 ○:20〜40点の場合(膜厚ムラが少ない)、 △:40〜60点の場合(従来表面層並みの膜厚ムラが
ある)、そして ×:60〜100点の場合(膜厚ムラが大きく、実用上
問題が生じる場合がある)。
【0048】
【比較例7】図2に示すプラズマCVD成膜装置を用い
て表1に示した条件により電荷注入阻止層および光導電
層をこの順序でアルミニウム製円筒状基体の表面上に形
成し、ついで、表16に示した条件により表面層を形成
した。ここでは電荷注入阻止層および光導電層は従来の
13.56MHzの高周波で形成し、表面層形成には5
00MHzの高周波を用いた。このようにして得られた
電子写真感光体の表面層に対して、表3の条件でエッチ
ングを行い、フッ素終端処理を施した。エッチング速度
は5Å/secであり、エッチングされる膜厚を500
Åとした。このようにして作製した電子写真感光体につ
いて、実施例5と同様の評価を行った。評価結果は表1
7に示す。
【0049】表17の結果から、1〜450MHzの高
周波で作製した表面層をエッチング処理した電子写真感
光体では、いずれも改善が見られた。それに対し、表面
層を500MHz以上の周波数で作製しエッチングした
電子写真感光体においては、膜厚ムラが顕著になってき
ており、製品レベルを考えた場合さらに向上させる必要
があることが判った。
【0050】
【実施例6】図2に示すプラズマCVD成膜装置を用い
て表1に示した条件により電荷注入阻止層および光導電
層をこの順序でアルミニウム製円筒状基体の表面上に形
成し、ついで、表18に示した条件により表面層を形成
した。ここでは電荷注入阻止層および光導電層は従来の
13.56MHzの高周波で形成し、表面層形成には8
0MHzの高周波を用いた。表面層作製時には、成膜時
間を変化させることにより、膜厚が120Å、1100
Å、4000Å、8000Å、15000Åの計5本の
電子写真感光体を作製した。得られたそれぞれの電子写
真感光体の表面層について、表3の条件でエッチングを
行い、フッ素終端処理を施した。エッチング速度は3Å
/secとし、エッチング時間を調整することにより、
エッチングされる膜厚を20Å、100Å、1000
Å、3000Å、5000Åと変化させ、エッチング後
の表面層の膜厚を100Å、1000Å、3000Å、
5000Å、10000Åと変化させた。このようにし
て作製した電子写真感光体について、実施例1と同様の
評価を行った。評価結果は表19に示す。この評価に加
えて以下のように感度の評価、強制ジャム試験もあわせ
て行った。
【感度の評価】まず電子写真感光体の表面を一定の電位
に帯電させ、フィルターを用いて600nm以上の波長
域を除いたハロゲンランプ光を照射し、次に表面の明部
電位が所定の値になるように光量を調整し、その光量か
ら感度を求め、比較例1に示した従来表面層との相対値
をあらわす点数で求めた。従来表面層での感度を50、
従来表面層に比べて40%以上感度低下が生じている場
合を0とし、0〜100までの点数で評価した。50よ
り大きければ従来表面層に比べて感度が良好であること
を示し、50より小さければ従来表面層より感度が悪い
ことを示している。評価結果は以下の評価基準に基づい
て表19に示す。 ◎:100〜80点の場合(極めて感度が高い)、 ○:80〜60点の場合(感度が高い)、 △:60〜40点の場合(従来表面層並みの感度)、そ
して ×:40〜0点の場合(感度損失が大きく、実用上問題
がある)。
【強制ジャム試験】複写機を改造して強制的にジャムを
連続して10回引き起こし、その後にハーフトーン画像
を出して電子写真感光体表面の傷の有無を調べた。比較
例1に示した従来表面層における傷の個数を50とし、
傷が全くない場合を0として、0〜100までの点数で
評価した。50より小さければ従来表面層に比べて表面
層の強度が強く傷が付きにくいことを示し、50より大
きければ従来表面層に比べて傷が付きやすいことを示し
ている。評価結果は以下の評価基準に基づいて表19に
示す。 ◎:0〜20点の場合(極めて傷が付きにくい)、 ○:20〜40点の場合(傷が付きにくい)、 △:40〜60点の場合(従来表面層並みの強度)、そ
して ×:60〜100点の場合(傷付きやすく、実用上問題
が生じる場合がある)。
【0051】
【比較例8】図2に示すプラズマCVD成膜装置を用い
て表1に示した条件により電荷注入阻止層および光導電
層をこの順序でアルミニウム製円筒状基体の表面上に形
成し、ついで、表18に示した条件により表面層を形成
した。ここでは電荷注入阻止層および光導電層は従来の
13.56MHzの高周波で形成し、表面層作製には8
0MHzの高周波を用いた。表面層作製時には、成膜時
間を変化させることにより、膜厚が100Åと1150
0Åの2本の電子写真感光体を作製した。このようにし
て得られたそれぞれの電子写真感光体の表面層につい
て、表3の条件でエッチングを行い、フッ素終端処理を
施した。エッチング速度は3Å/secとし、エッチン
グ時間を調整することにより、エッチングされる膜厚を
50Å、500Åと変化させ、エッチング後の表面層の
膜厚を50Å、11000Åと変化させた。このように
して作製した電子写真感光体について、実施例6と同様
の評価を行った。評価結果を実施例6の結果と合わせて
表19に示す。
【0052】表19の結果から、表面層の膜厚が100
Åから10000Åであれば本発明の効果が得られるこ
とが判った。また、同時にエッチングする膜厚は20Å
以上あれば本発明の効果が十分に得られることが判っ
た。一方、表面層の膜厚が10000Å以上となると感
度の点で望ましくなく、100Å以下となると表面層と
しての強度が不足するため好ましくないことが判った。
【0053】
【実施例7】図2に示すプラズマCVD成膜装置を用い
て表1に示した条件により電荷注入阻止層および光導電
層をこの順序でアルミニウム製円筒状基体の表面上に形
成し、ついで、表2に示した条件により表面層を形成し
た。なお、電荷注入阻止層および光導電層の形成、およ
び表面層の形成には従来の13.56MHzの高周波を
用いた。このようにして得られた電子写真感光体の表面
層について、表3の条件でエッチングを行い、フッ素終
端処理を施した。エッチング速度は7Å/secであ
り、エッチングされる膜厚を500Åとした。このよう
にして作製した電子写真感光体をキヤノン株式会社製複
写機NP6060の実験用に改造した複写機に搭載し、
転写効率の評価を行った。すなわち、ハロゲンランプへ
の通電を止め、ドラム表面に光が当たらないように設定
することで、全面黒の複写物が生成される条件で、10
万枚耐久し、クリーニング機構によって回収される廃ト
ナーの重量を2万枚ごとに精密に測定した。10万枚耐
久後、供給したトナーの重量と回収された廃トナーの総
重量とを精密に測定した。転写効率は供給トナーに対す
る廃トナーの割合で求められる。得られた結果は比較例
1に示した従来表面層との相対値で示した。比較例1に
示した従来表面層における値を50、転写効率100%
を100とし、1〜100までの点数で評価した。50
より小さければ従来表面層に比べて転写効率が悪いこと
を示し、50より大きければ従来表面層に比べて転写効
率が高いことを示している。評価結果は以下の評価基準
に基づいて表20に示す。 ◎:100〜80点のもの(極めて優れた転写効率)、 ○:80〜60点のもの(良好な転写効率)、 △:60〜40点のもの(従来表面層並みの転写効
率)、そして、 ×:40〜0点のもの(転写効率が劣り、実用上問題が
ある、または問題が生じる可能性あり)。
【0054】
【比較例9】図2に示すプラズマCVD成膜装置を用い
て表1に示した条件により電荷注入阻止層および光導電
層をこの順序でアルミニウム製円筒状基体の表面上に形
成し、ついで、表2に示した条件により表面層を形成し
た。なお、電荷注入阻止層および光導電層の形成、およ
び表面層の形成には従来の13.56MHzの高周波を
用いた。この表面層に対してはフッ素プラズマによるエ
ッチング処理は行わなかった。このようにして作製した
電子写真感光体に対し、実施例7と同様の評価を行っ
た。評価結果は表20に示す。表20に示した結果か
ら、フッ素含有非単結晶炭素膜をフッ素プラズマでエッ
チングしたときにのみ、転写効率が極めて向上すること
が判った。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
【0061】
【表7】
【0062】
【表8】
【0063】
【表9】
【0064】
【表10】
【0065】
【表11】
【0066】
【表12】
【0067】
【表13】
【0068】
【表14】
【0069】
【表15】
【0070】
【表16】
【0071】
【表17】
【0072】
【表18】
【0073】
【表19】
【0074】
【表20】
【0075】
【発明の効果】導電性基体と、該基体上に少なくともシ
リコン原子を母体とする非単結晶材料の光導電層と、該
光導電層の上に、少なくともフッ素原子を含む非単結晶
炭素の表面層とを有し、該表面層を、フッ素を含むガス
を高周波電力により分解したプラズマによって、エッチ
ング速度0.1〜50Å/secで少なくとも20Å以
上エッチングすることにより、該表面層の膜厚を100
〜10000Åとし、フッ素原子が該表面層の表面を覆
うように存在していることを特徴とする、本発明の電子
写真感光体は、高温・高湿環境下においても画像ボケや
画像流れが起こらず、この効果を長期にわたって安定的
に持続することができる。また、この電子写真感光体は
離型性が非常に高いために、転写されずに感光体上に残
留するトナーが極めて少なく、廃トナーをほとんど排出
しないばかりか、クリーニング工程を簡素化することが
でき、環境への配慮、複写機本体のコストやランニング
コストの削減、機内スペースの削減、小型化への対応な
どに関して非常に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の模式的断面図であ
り、(a)は単層型のものを示し、(b)は機能分離型
のものを示す。
【図2】プラズマCVD法による堆積膜形成装置の模式
図である。
【図3】プラズマCVD法による堆積膜形成装置の模式
図である。
【図4】電子写真装置の模式図である。
【符号の説明】 101 導電性基体 102 電荷注入阻止層 103 光導電層 104 表面層 105 エッチングによってフッ素が結合した領域 106 電荷輸送層 107 電荷発生層

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性基体と、該基体上に少なくともシ
    リコン原子を母体とする非単結晶材料の光導電層と、該
    光導電層の上に、少なくともフッ素原子を含む非単結晶
    炭素の表面層とを有し、該表面層を、フッ素を含むガス
    を高周波電力により分解したプラズマによって、エッチ
    ング速度0.1〜50Å/secで少なくとも20Å以
    上エッチングすることにより、該表面層の膜厚を100
    〜10000Åとし、フッ素原子が該表面層の表面を覆
    うように存在していることを特徴とする電子写真感光
    体。
  2. 【請求項2】 前記表面層が、1〜450MHzの高周
    波を用いたプラズマCVD法によって、原料ガスを分解
    することにより形成されたものである請求項1に記載の
    電子写真感光体。
  3. 【請求項3】 前記プラズマCVD法において使用する
    高周波が50〜450MHzの高周波である請求項2に
    記載の電子写真感光体。
  4. 【請求項4】 前記表面層に含まれるフッ素原子の量が
    5原子%乃至50原子%の範囲である請求項1乃至3の
    いずれかに記載の電子写真感光体。
  5. 【請求項5】 前記非単結晶炭素の表面層について、前
    記エッチング処理においてエッチングされるその膜厚が
    100Å以上である請求項1乃至4のいずれかに記載の
    電子写真感光体。
  6. 【請求項6】 前記光導電層の膜厚が1μm乃至50μ
    mである請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真感
    光体。
  7. 【請求項7】 前記フッ素を含むガスが、CF4,CH
    3,C26,ClF3,CHClF2,C38,C410
    の中から選ばれるガスを含有する請求項1乃至6のいず
    れかに記載の電子写真感光体。
  8. 【請求項8】 前記光導電層が、電荷発生層と電荷輸送
    層を有する請求項1乃至7のいずれかに記載の電子写真
    感光体。
  9. 【請求項9】 前記導電性基体と、前記光導電層との間
    に電荷注入阻止層を有する請求項1乃至8のいずれかに
    記載の電子写真感光体。
  10. 【請求項10】 前記光導電層と、前記表面層との間
    に、バッファ層を有する請求項1乃至9のいずれかに記
    載の電子写真感光体。
  11. 【請求項11】 排気手段と原料ガス供給手段を備えた
    真空気密可能な堆積室内に導電性の基体を設置し、少な
    くともシリコン原子を含んだ原料ガスを高周波電力によ
    り分解し、該基体上に少なくともシリコン原子を母材と
    する非結晶質材料からなる光導電層を形成し、該光導電
    層の上に、少なくとも炭素とフッ素を含む原料ガスを高
    周波電力により分解し、フッ素原子を含む非単結晶炭素
    からなる表面層を形成し、該表面層を、フッ素を含むガ
    スを高周波電力により分解したプラズマを用いてエッチ
    ング速度0.1〜50Å/secで少なくとも20Å以
    上エッチングすることにより、該表面層の膜厚を100
    〜10000Åとし、フッ素原子で該表面層の表面を被
    覆することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記高周波電力の周波数が1〜450
    MHzである請求項11に記載の電子写真感光体の製造
    方法。
  13. 【請求項13】 前記高周波電力の周波数が50〜45
    0MHzである請求項11に記載の電子写真感光体の製
    造方法。
  14. 【請求項14】 前記表面層の形成時に、該表面層中に
    含有せしめるフッ素原子の量を5原子%乃至50原子%
    の範囲にする請求項11乃至13のいずれかに記載の電
    子写真感光体の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記表面層をエッチングする膜厚を、
    100Å以上とする請求項11乃至14のいずれかに記
    載の電子写真感光体の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記光導電層の膜厚を1μm乃至50
    μmとする請求項11乃至15のいずれかに記載の電子
    写真感光体の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記フッ素を含むガスが、CF4,C
    HF3,C26,ClF3,CHClF2,C38,C4
    10の中から選ばれるガスを含有する請求項11乃至16
    のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
  18. 【請求項18】 前記光導電層が、電荷発生層と電荷輸
    送層を有する請求項11乃至17のいずれかに記載の電
    子写真感光体の製造方法。
  19. 【請求項19】 前記導電性基体と、前記光導電層との
    間に電荷注入阻止層を形成する工程を有する請求項11
    乃至18のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方
    法。
  20. 【請求項20】 前記光導電層と、前記表面層との間
    に、バッファ層を形成する工程を有する請求項11乃至
    19のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
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JP2008052304A (ja) * 2007-11-09 2008-03-06 Kyocera Corp 画像形成装置
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