JP2000221715A - 電子写真感光体 - Google Patents

電子写真感光体

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JP2000221715A
JP2000221715A JP33436899A JP33436899A JP2000221715A JP 2000221715 A JP2000221715 A JP 2000221715A JP 33436899 A JP33436899 A JP 33436899A JP 33436899 A JP33436899 A JP 33436899A JP 2000221715 A JP2000221715 A JP 2000221715A
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electrophotographic
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photoreceptor
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Tatsuji Okamura
竜次 岡村
Junichiro Hashizume
淳一郎 橋爪
Shigenori Ueda
重教 植田
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Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電子写真装置における繰り返し使用におい
て、加熱手段を設けずとも、高温高湿環境下での画像ボ
ケや画像流れといった画像欠陥の発生を抑える事がで
き、更には、小粒径での定着性の優れたトナーと用いた
場合でもクリーニング性が良く、トナーの融着を抑える
事ができ、更に、クリーニング性を向上させるため摩擦
力の上昇する電子写真プロセスにおいても、クリーニン
グ性が良く、トナーの融着を抑える事ができる電子写真
感光体を提供する。 【解決手段】 電子写真感光体の表面層として少なくと
も炭素、水素を含む非単結晶であり、JIS B0601 に
おける中心線平均表面粗さ(Ra)が 50Å〜5000Åの条件
を満たす第1の表面層と少なくともフッ素を含む非単結
晶炭素からなる第2表面層をこの順で積層させる事を特
徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、円筒状基体上に非
単結晶材料からなる堆積膜を形成してなる電子写真感光
体に関し、あらゆる電子写真プロセスにおいて、電子写
真感光体の加熱手段を設けずとも高温・高湿等過酷な環
境下において画像ボケ、画像流れが発生することなく、
更にはあらゆる環境下においてクリーニング不良や融着
が発生せず、長期間、高品質な画像を安定して提供する
ことが可能な電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】水素および/またはハロゲン(例えばフッ
素、塩素等)で補償された非単結晶シリコン(a-Si)等の
非単結晶堆積膜は高性能、高耐久、無公害な感光体とし
て提案され、実用化されている。a-Si感光体は他の感
光体と比ベ表面硬度が高く、半導体レーザー(600nm
〜700nm)等の波長光に高い感度を示し、しかも繰り
返し使用による電位特性の劣化もほとんど認められない
ことから、特に高速複写機やLBP(レーザープリンタ
ー)等の電子写真感光体として広く使用されている。
【0003】一方、近年の情報処理量の増加に伴い、高
速な複写機やLBPの需要は更に大きくなり、複写機1
台あたりのコピー量も著しく増大している。
【0004】こうした背景において、電子写真感光体の
耐久性および繰り返し使用による劣化の減少は以前に増
して求められるようになってきている。こうした要求に
応えるべく特にa-Si感光体の表面層の研究が様々に行
なわれており、特に近年ではa-Si感光体の表面層材料
として非単結晶炭素(a-C)膜が提案されている。
【0005】特開昭61-219961号公報には、表
面層として水素化非単結晶炭素と10〜40原子%の水
素原子で構成された材料を用いる技術が記載されてい
る。これらの技術により、電気的、光学的、光導電的特
性および使用環境特性、耐久性が向上し、更に、画像品
位の向上も可能になっている。
【0006】また、特開平6-317920号公報に
は、周波数 20 MHz〜 450 MHzの電磁波により生起
されるグロー放電で原料ガスを分解するプラズマCVD
法により炭素原子を母体とする非単結晶炭素系材料から
成る表面層の形成方法が開示されている。
【0007】これらのa-Si感光体を電子写真装置に応
用する際、帯電、除電、露光などの手段により感光体上
に電気的潜像を形成し、ついでその潜像を現像剤(トナ
ー)を用いて現像し、必要に応じて紙等の転写材にトナ
ー画像を転写した後、加熱、圧力、加熱・加圧あるいは
溶剤蒸気などにより定着し複写物を得る。また、感光体
上に残留する未転写トナーは、クリーニング工程により
回収され、廃トナーとして系外に排出される。
【0008】感光体の帯電および、除電手段としては、
ほとんどの場合コロナ帯電器(コロトロン、スコロトロ
ン)が利用されている。しかしコロナ放電に伴いオゾン
(O3)が発生し、空気中の窒素を酸化して窒素酸化物(N
X)等のコロナ放電生成物を生じさせ、更に、生成した
窒素酸化物等は空気中の水分と反応して硝酸等を生じさ
せ、感光体表面を低抵抗化させる。
【0009】このため、横方向の電荷保持能力が全面的
にあるいは部分的に低下して、画像ボケや画像流れ(感
光体表面電荷が面方向にリークして静電荷潜像パターン
が崩れるか、あるいは形成されない)と称される画像欠
陥を生じさせる原因となっている。
【0010】また、コロナ帯電器のシールド板内面に付
着したコロナ放電生成物は電子写真装置の稼働中のみな
らず夜間等の装置の休止中にも感光体表面を汚損するた
め、装置休止後の装置再稼働時に最初に出力される一枚
目、あるいは数百枚のコピーについて、上記の装置休止
中の帯電器開口に対応する領域に画像ボケ、画像流れが
生じやすい。このような画像流れは、帯電器の跡のよう
に見えることから帯電器跡流れと呼んでいる。
【0011】またa-Si感光体の場合は、表面硬度が他
の感光体に比ベて高いことが逆作用して、その感光体表
面に付着したコロナ放電生成物がいつまでも残留しやす
い。そこで、画像ボケや画像流れ現象を防止する方法と
して、以下の2つの方法が考えられた。
【0012】第一の方法は、感光体にその感光体自体を
加温するためのヒーターを内蔵したり、温風送風装置に
より温風を感光体に送風したりして感光体表面を加温
(30〜50℃)することにより相対湿度を低下させる方
法である。この方法は感光体表面に付着しているコロナ
放電生成物や水分を揮発させ、感光体表面の実質的な低
抵抗化を抑える処置であり、実用化されている。
【0013】第二の方法は、感光体表面の撥水性を向上
させることにより、初めからコロナ放電生成物を付着し
にくくし、それによって画像流れを防止する方法であ
る。従来技術としては、特開昭61-289354号公
報で、表面をフッ素を含んだガスでプラズマ処理したa-
C表面層が開示されている。また、特開昭61-278
859号公報にはa-Si感光層の上にa-C:Hからなる表
面層を持ち、自己バイアスを規定した電子写真感光体の
製造方法が開示されている。
【0014】一方、現像に関しては、通常10〜12μ
m程度の重量平均粒径のトナーがよく用いられている。
しかし、より精細な画質を要求される昨今においては、
トナーの小粒径化が必要となり、開発が進められてい
る。
【0015】転写材にトナー画像を定着させる能力は、
定着器内で転写材のトナー画像にいかに加熱するかにか
かっており、高速化にあたって、低融点トナーによって
定着性を高める技術が開発されている。
【0016】しかし定着性を向上させるとトナーがドラ
ム表面に融着しやすくなり、画像欠陥となって顕在化す
る恐れがある。そこで感光体にトナーが付着しにくくす
るために感光体の表面の滑り性を向上させると同時に、
付着してしてしまったトナーを機械的に削りとるための
クリーニング性を高める必要がある。
【0017】クリーニング手段としてはクリーニング能
力の高いブレード式クリーニング方式と、マグローラー
(磁気ブラシによるクリーニングローラー)等を併用する
形が広く用いられている。
【0018】トナーの小粒径化や高定着性等の変化ヘの
対応方法としては、ブレードの硬度を高めたり、ブレー
ドの押し当て圧を高くしたり、マグローラーの回転速度
や回転方向(感光体に対して順方向ないし逆方向)を変え
るなどの対策が考えられている。これらの対策により融
着やトナーのすり抜けを防いでいる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記で述べた
画像流れの防止方法として、ヒーターにより感光体表面
を30〜50℃に加温する方法は、複写機本体の消費電
力を増加させることになり、高速複写機においては一般
のオフィスの電源事情である100V/15Aの電力内
で稼働させることが難しくなる可能性がある。
【0020】更に、感光体を加熱するヒーターは、夜間
に帯電器から降り積もるオゾン生成物による再起動時の
一枚目ないし数百枚の画像流れを抑えるために夜間とい
えども切るわけにはいかず、近年の省エネおよびエコロ
ジーの観点から改善が望まれていた。
【0021】また、上記で述べた画像流れの防止方法の
うち、感光体表面の撥水性を向上させることにより初め
からコロナ放電生成物を付着しにくくする方法は、耐久
性の面でまだ改善の余地がある。したがって、従来の電
子写真装置においては、感光体の加熱手段を設けなくと
も良好な画像を提供し、なおかつ繰り返し使用による画
像性の変動をなくすという解決すべき課題があった。
【0022】また、前述の従来の技術により、感光体の
表面性の向上および電子写真装置のクリーニング性の向
上により電子写真画像は今まで以上の高画質を得ること
ができた。しかしながら、クリーニング性の向上により
感光体の表面の削れ量は今まで以上に増加してしまう可
能性がある。
【0023】特に、フッ素を含むa-C:F膜を表面層に
用いた場合、フッ素が膜中に含有されることにより表面
の滑り性は向上するが、a-C膜に比べ柔らかくなり削れ
やすくなってしまう。このため、繰り返し使用における
安定性に問題が発生する場合もあった。
【0024】したがって、クリーニング性を高めた電子
写真プロセスにおいても、ドラムの削れがなく、繰り返
し使用におけるさらなる安定性を達成するという解決す
べき課題があった。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の点に鑑
み、上述の電子写真感光体における上述した諸問題を解
決することを目的とするものである。
【0026】すなわち、本発明の第1の電子写真感光体
は、円筒状基体上にシリコン原子を母体とする非単結晶
材料からなる光導電層、少なくとも炭素、水素を含む非
単結晶材料からなる第1表面層、少なくともフッ素を含
む非単結晶炭素からなる第2表面層がこの順に形成さ
れ、前記第1表面層の硬度が前記第2表面層のそれより
大きく、前記第1表面層のJIS B0601 における中心
線平均表面粗さ(Ra)が 50Å〜 5000Å以下であること
を特徴としている。
【0027】上記第1表面層のダイナミック硬度は上記
第2表面層のそれより490N/mm2(50 kgf/mm2)以上
大きい、もしくはその1.5倍以上であることが好まし
い。
【0028】上記第1表面層の非単結晶材料には、ケイ
素が含まれてもよい。より好ましくは水素を含む非単結
晶炭素、更に好ましくは水素をH/(C+H)(原子比)で
10〜60%含有する非単結晶炭素が用いられる。
【0029】また、上記第2表面層には、好ましくはフ
ッ素をF/(C+F)(原子比)で6〜50%含有する非単
結晶炭素が用いられる。
【0030】本発明の第2の電子写真感光体は、第1の
発明の特徴の他に、第1表面層のダイナミック硬度が 2
940〜9810N/mm2(300〜1000 kgf/mm2)であり、前記
第2表面層のダイナミック硬度が 98〜4900N/mm2(10
〜500 kgf/mm2)であることを特徴としている。
【0031】本発明の第3の電子写真感光体は、第1ま
たは第2の発明の電子写真感光体を回転させ、帯電、露
光、現像、転写、クリーニングを順次繰り返す電子写真
プロセスを行なうことにより、第1表面層の一部が電子
写真感光体表面に露出することを特徴としている。
【0032】本発明の第4の電子写真感光体は、第1な
いし第3の発明のいずれかにおいて、少なくとも前記第
1表面層は周波数 1〜450 MHzの高周波を用いたプラ
ズマCVD法によって原料ガスを分解することにより形
成されることを特徴としている。第2表面層も同様の方
法で形成されることが好ましい。
【0033】
【発明の実施の形態】本発明者らは、電子写真感光体の
表面層として、少なくともフッ素を含有する非単結晶炭
素(a-C:F)膜を用いることにより、非単結晶炭化ケイ
素(a-SiC)膜や非単結晶炭素(a-C)膜を用いた従来の
電子写真感光体に比ベ表面の撥水性が向上し、感光体の
加熱手段を設けなくとも高温高湿環境下における画像ボ
ケや画像流れが発生しないことと、感光体表面の滑り性
が著しく向上し、電子写真装置におけるクリーニング性
が向上することを確認していた。
【0034】しかしながら、a-C:F膜はa-SiC膜およ
びa-C膜に比ベ比較的柔らかく、電子写真プロセスにお
いて削れやすく、そのまま用いるのには問題があった。
【0035】本発明者らは、こうしたa-C:F膜の利点
を何とか電子写真感光体の表面層として使いこなせない
か鋭意研究を重ねた結果、表面層を第1表面層および第
2表面層の2層構成にし、第1表面層のJIS B0601
における中心線平均表面粗さ(Ra)を 50Å〜5000Åの範
囲に制御することと、第2表面層にa-C:F膜を用いる
ことにより、繰り返し使用しa-C:F膜が削れを生じて
も表面の撥水性および滑り性が維持可能であることを見
出した。
【0036】以下、図面を用いて本発明を具体的に説明
する。
【0037】図1は、本発明の電子写真感光体の断面を
模式的に示したものである。図1-1、図1-2におい
て、101は円筒状基体、102は光導電層、104は
第1表面層、105は第2表面層を示している。図1-
3において、101は円筒状基体、102は光導電層、
103はバッファー層、104は第1表面層、105は
第2表面層を示している。
【0038】バッファー層103は光導電層102と第
1表面層104の材料的整合性を取るために設けること
ができ、両者の中間の材料組成とすることが望ましい。
更には光導電層102の組成から第1表面層104の組
成へ、バッファー層103の全層に渡って、あるいは一
部分において変化していてもよい。
【0039】本発明の第1表面層は炭素および水素から
なるa-C:H膜のいずれでも良いが、本発明の効果をよ
り顕著にするためにはa-C:H膜である。
【0040】本発明において第1表面層のa-C膜を作成
する場合、例えばCH4、C22、C24、C26、C3
8、C410等のガスおよびこれらのガスと水素ガスま
たはへリウム等の希釈ガスを混合させて分解してもよ
い。
【0041】更に本発明においては、第1の表面層の表
面粗さが重要となる。
【0042】本発明において第1表面層は、表面のJI
S B0601 における中心線平均表面粗さ(Ra)が 50Å〜
5000Å、好ましくは 100Å〜1000Åの範囲になるよう形
成されなければならない。
【0043】図1-2は、本発明の電子写真感光体を電
子写真装置に設置し長時間使用した後の断面を模式的に
示したものである。第2表面層はフッ素を多く含有して
おり、撥水性が高い反面、硬度的にはやや柔らかく、長
期間の使用中に摩耗してしまう可能性がある。
【0044】本模式図では第2表面層が摩耗した後の様
子を表している。本模式図では、第1表面層104に積
層された第2表面層105が第1表面層の凹部にほどよ
く積層され、電子写真プロセスにおいて第2表面層10
5が削れても第1表面層の凹部に第2の表面層が残存し
ていることを表している。
【0045】本発明者らの検討の結果、第1表面層の表
面粗さが、JIS B0601 における中心線平均表面粗さ
(Ra)50Å〜5000Å、好ましくは 100Å〜1000Åとした
場合に、残存する第2表面層の量が適正となり、十分に
画像流れを防止することを見いだした。
【0046】第1表面層の中心線平均表面粗さ(Ra)を
50Åより、好ましくは 100Åより大きくすることで、い
わゆる表面が平滑すぎて凹部に第2表面層が残存しにく
くなるということがなくなり、発明の効果が得られやす
くなる。
【0047】また、中心線平均表面粗さ(Ra)を 5000Å
より、好ましくは 1000Åより小さくすることで、程よ
く凹部に第2の表面層が残存させることができ、また、
電子写真プロセスで第2表面層が削れた後、更に部分的
に残存している第2表面層が削れやすくなってしまうこ
とを防ぐことができる。また、第1表面層の凸凹の影響
により電子写真プロセスにおけるクリーニングに及ばす
悪影響を避けることができる。
【0048】更に本発明においては、第1表面層の硬度
が重要となる。これは、電子写真プロセスにおいて第2
表面層が削れ、第1の表面層の一部が露出した後削れを
抑えるためである。具体的にはダイナミック硬度が 294
0〜9810N/mm2(300〜1000kgf/mm2)、好ましくは490
0〜9810N/mm2(500〜1000 kgf/mm2)、さらに好まし
くは 6860〜9810N/mm2(700〜1000 kgf/mm2)、であ
ることが望まれる。
【0049】ここで規定する、本発明におけるダイナミ
ック硬度とは、島津製作所社製のダイナミック硬度計
(型番DUH-201)を用いて測定されるものである。
なお、サンプル作成時には円筒状アルミ基体上にセット
した 7059 ガラス(コーニング社製)を用いた。
【0050】第1の表面層のダイナミック硬度を 2940
N/mm2(300 kgf/mm2)以上、好ましくは 4900N/m
2(500 kgf/mm2)以上、さらに好ましくは 6860N/m
2(700 kgf/mm2)以上とすることで、使用していくう
ちに筋状のムラ削れが発生することを防ぎ、部分的に第
2表面層の残存部分がなくなってしまい、長時間使用に
おける部分的な画像流れ等の弊害が発生してしまうとい
ったことを防ぐことができる。また、9810N/mm2(100
0 kgf/mm2)以下にすることでムラ削れ等の発生がない
ことはもとより、環境条件によって発生するトナーの融
着を防ぐことができる。このため、ダイナミック硬度の
値は上記範囲内に入れることが望ましい。ダイナミック
硬度をこの範囲内に入れることで、たとえ第2表面層が
削れ、第1表面層の凸部が露出しても、その露出部は電
子写真感光体に想定される寿命の間、第1表面層の中心
線平均表面粗さ(Ra)において 50Å〜5000Å内、好まし
くは100Å〜1000Å内の値を保持し、本発明の効果を十
分に発揮することができる。
【0051】本発明において、第1表面層にa-C:H膜
を用いた場合、その膜中に含まれる水素原子の含有量は
H/(C+H)(原子比)で10〜60%、好ましくは40
〜55%であることが望まれる。この場合の第1表面層
の膜中の水素量を10原子%以上、好ましくは40%以
上とすることで、光学的バンドギャップが狭くなり感度
の面で適さなくなる、といったことを防ぐことができ
る。また、60%以下、好ましくは55%以下とするこ
とで、硬度が低下し削れが発生しやすくなる、といった
ことを防ぐことができる。
【0052】第1の表面層の光学的バンドギャップは一
般には1.2eV〜2.8eV程度の値であれば好適に用い
ることができ、感度の点からは1.6eV以上とすること
が更に望ましい。屈折率は1.5〜2.8程度であれば好
適に用いられる。1.6〜2.4であればより好ましい。
【0053】第1の表面層の膜厚は 50Åから 10000
Å、好ましくは 100Åから 2000Åである。50Åより厚
くすることで十分な機械的強度を得ることができる。10
000Å以下とすることで光感度の点での問題も発生しな
い。
【0054】いずれにしても、第1の表面層についてダ
イナミック硬度試験を行なった時の値は 2940〜9810N/
mm2(300〜1000 kgf/mm2)の範囲内、好ましくは 490
0〜9810N/mm2(500〜1000 kgf/mm2)の範囲内、さら
に好ましくは 6860〜9810N/mm2(700〜1000 kgf/mm
2)の範囲内であることが硬度、潤滑性の点で強く望まれ
る。
【0055】本発明において、第2表面層は炭素原子、
フッ素原子を含有する原料ガスを分解し形成されたa-
C:F膜であり、原料ガスとしては、例えば炭素原子含
有ガスとしてはCH4、C22、C24、C26、C3
8、C410等が挙げられる。
【0056】また、フッ素原子含有ガスとしてはC
4、C26、CHF3、ClF3、CHClF2、F2、C3
8、C410等のフッ素含有ガスが好適に用いられる。
a-C:F膜の形成において、代表的にはプラズマCVD
法が用いられ、CF4、C26等の炭素原子を含むフッ
素含有ガスを用いる場合、これらのガス単独で作成可能
であるが、水素ガスまたはへリウム等の希釈ガスおよび
CH4、C22、C24、C26、C38、C410等の
炭素含有ガスを混合させて分解してもよい。
【0057】本発明において、第2表面層の硬度も重要
となる。これは、第2表面層が電子写真プロセスにおい
て融着を防ぎ、長期間の使用によって削れた後も第1表
面層の凹部にほどよく残存させるためである。具体的に
はダイナミック硬度が 98〜4900N/mm2(10〜500 kgf/
mm2)、好ましくは 490〜4410N/mm2(50〜450 kgf/
mm2)、より好ましくは 981〜3920N/mm2(100〜400
kgf/mm2)であることが望まれる。
【0058】第2表面層のダイナミック硬度を 98N/m
2(10 kgf/mm2)以上、好ましくは 490N/mm2(50 k
gf/mm2)以上、さらに好ましくは 981N/mm2(100 kg
f/mm2)以上とすることで、使用していくうちに摩耗
し、第1表面層の凹凸部分に残留した第2表面層も削れ
てしまう、といったトラブルを防ぐことができ、本発明
の効果を得ることができる。
【0059】また、4900N/mm2(500 kgf/mm2)以
下、好ましくは 4410N/mm2(450 kgf/mm2)以下、さ
らに好ましくは 3920N/mm2(400 kgf/mm2)以下とす
ることで削れ等の弊害はもとより防ぐことができ、さら
に環境条件によって発生するトナーの融着を防ぐことが
できる。このため、ダイナミック硬度の値は上記の範囲
内に入れることが望ましい。
【0060】また、第2表面層のダイナミック硬度は第
1表面層のそれより小さくすることが好ましく、さら
に、第1表面層のダイナミック硬度は上記第2表面層の
それより 490N/mm2(50 kgf/mm2)以上大きい、もし
くはその1.5倍以上であることが好ましい。
【0061】これにより、第2表面層の摩耗により露出
した第1表面層が残存する第2表面層の周囲で摩耗によ
り後退することによる、第2表面層の剥落を防止するこ
とができる。
【0062】本発明において、第2表面層の膜中に含ま
れるフッ素原子の含有量はF/(C+F)(原子比)で6〜
50%、好ましくは30〜50%であることが望まし
い。フッ素量を6%未満にすると表面の撥水性が低下す
る場合がある。また、50%を超える場合硬度の低下と
それによるスジ削れ等の発生が起こることがある。
【0063】第2表面層の光学的バンドギャップは一般
には1.2eV〜2.8eV程度の値であれば好適に用いる
ことができ、感度の点からは1.6eV以上とすることが
更に望ましい。屈折率は1.8〜2.8程度であれば好適
に用いられる。
【0064】第2表面層の膜厚は 50Åから 10000Å、
好ましくは 100Åから 2000Åである。50Åより厚くす
ることで前述の第1表面層の凹部への入り込みおよび残
存が十分に行なえ、本発明の効果が十分に得られる。10
000Å以下とすれば光感度の点でも何ら問題は発生しな
い。
【0065】本発明の電子写真感光体は通常のプラズマ
CVD法により作成可能である。一般にプラズマCVD
法は装置依存性が大きいため、一律に本発明によるとこ
ろの第1表面層のa-C:H膜が得られる成膜条件を規定
することはできないが、一般的には、原料ガス種、キャ
リアガス種、ガス混合方法、ガス導入方法、排気形態の
調整、圧力調整、電力調整、周波数調整、電力波形調
整、直流バイアス調整、基板温度調整、成膜時間の調
整、などを行なうことによって作成される堆積膜の特性
は大きく変わる。
【0066】したがって、本発明によるところの、特定
の条件下での第1表面層の表面粗さおよびダイナミック
硬度試験における押し込み硬さのコントロールも、これ
らのパラメーターを適宜調整することによって可能であ
る。
【0067】本発明者らの検討によると、特に周波数 1
〜450 MHzの高周波を用いたプラズマCVD法によっ
て原料ガスを分解することにより、本発明の第1表面層
が容易に作成可能であることが認められた。
【0068】特に周波数と第1表面層の表面粗さとの関
係に相関があることが実験により認められ、周波数が1
MHzより小さくなると、条件によっては第1表面層の
表面が平滑になりすぎ、上述の本発明の効果が得られに
くくなることがある。また、周波数が450 MHzより大
きい場合は、条件によっては表面の凸凹が大きくなり、
中心線平均表面粗さ(Ra)が 5000Åより大きくなってし
まうことがあるとわかった。
【0069】原料ガスを分解する周波数と表面粗さとの
関係がいかなるメカニズムで作用し本発明の表面粗さの
範囲に周波数 1〜450 MHz高周波が適しているかは現
在のところ明らかではないが、高周波の与えるエネルギ
ーと表面反応の違いによる堆積膜の成長過程の違いが関
係していると推測される。
【0070】高周波電力については、できるだけ高い方
が炭化水素の分解が十分に進むため好ましく、具体的に
は炭化水素の原料ガスに対して5W/cc以上が好ましい
が、あまり高くなると異常放電が発生することがあり、
電子写真感光体の特性を劣化させることがあるので、異
常放電が発生しない程度の電力に抑える必要がある。
【0071】放電空間の圧力については通常のRF(代
表的には 13.56 MHz)電力を用いる場合には 10Pa〜1
000Pa、VHF帯(代表的には 50〜450 MHz)を用いる
場合には 0.01Pa〜10Pa程度に保たれる。
【0072】また、基板温度は室温から350℃までに
調整されるが、あまり基板温度が高すぎるとバンドギャ
ップが低下して透明度が低下するため、より低めの温度
設定、好ましくは100℃〜300℃が望まれる。
【0073】本発明による光導電層102の作成方法は
シリコン原子を主体とした非単結晶質の膜であれば元よ
り、有機感光体、Se感光体、CdS感光体等何でも好適
に用いられる。シリコン原子を主体とした非単結晶質の
光導電層の作成条件としてはいかなる周波数の高周波電
力、あるいはマイクロ波によるグロー放電プラズマでも
好適に使用でき、このグロー放電プラズマによりシリコ
ン原子を含んだ原料ガスを分解して作成する。
【0074】図1に示す模式図においては光導電層は機
能分離されていない単一の層によりできており、少なく
ともシリコン原子を含む非品質材料で構成され光導電性
を示すものである。
【0075】また、図2に示したように光導電層202
が少なくともシリコン原子を含む非品質材料で構成され
光導電性を示す層206と、基体201からのキャリア
の注入を阻止する、下部阻止層207との2層に分かれ
ているものであってもよい。更に図3のように光導電層
302が少なくともシリコン原子と炭素原子を含む非晶
質材料で構成された電荷輸送層306と少なくともシリ
コン原子を含む非晶質材料で構成された電荷発生層30
7が順次積層された構成の機能分離型としたものであっ
てもよい。この電子写真感光体に光照射すると主として
電荷発生層307で生成されたキャリアーが電荷輸送層
306を通って導電性基体301に至る。
【0076】光導電層の膜厚に関しては1μm〜50μ
mまで、複写機本体が要求する帯電能、感度に応じて適
宜設定されるが、通常は帯電能、感度の点から10μm
以上、工業的生産性の観点からは50μm以下が望まし
い。
【0077】以下、本発明の電子写真感光体の作成方法
の一例を具体的に説明する。
【0078】図4は、本発明の電子写真感光体を作成す
るために供される、13.56 MHzの高周波電源を用いた
プラズマCVD法による堆積装置の一例を模式的に示し
た図である。
【0079】この装置は大別すると、堆積装置、反応容
器内を減圧するための排気装置(図示せず)から構成され
ている。反応容器401内にはアースに接続された導電
性受け台407の上に円筒状基体402が設置され、更
に円筒状被成膜基体の加熱用ヒーター403、原料ガス
導入管405が設置されている。
【0080】また、カソード電極406は導電性材料か
らなり、絶縁材料413によって絶縁されている。カソ
ード電極は高周波マッチングボックス411を介して 1
3.56MHzの高周波電源412が接続されている。
【0081】不図示の原料ガス供給装置の各構成ガスの
ボンベはバルブ409を介して反応容器401内のガス
導入管405に接続されている。
【0082】例えば表面を旋盤を用いて鏡面加工を施し
た基体402を補助基体404に取りつけ、反応容器4
01内の基体加熱用ヒーター403を包含するように取
りつける。
【0083】次に、原料ガス導入バルブ409を閉と
し、排気口415を介して排気装置により反応容器40
1を一旦排気した後、原料ガス導入バルブ409を開と
して加熱用の不活性ガス、一例としてアルゴンをガス供
給配管405より反応容器401に導入し、反応容器4
01内が所望の圧力になるように排気装置の排気速度お
よび加熱用ガスの流量を調整する。
【0084】その後、不図示の温度コントローラーを作
動させて基体402を基体加熱用ヒーター403により
加熱し、円筒状被成膜基体402の温度を20℃〜50
0℃の所定の温度に制御する。基体402が所望の温度
に加熱されたところで原料ガス導入バルブ409を閉
じ、反応容器401内ヘのガス流入を止める。
【0085】堆積膜の形成は原料ガス導入バルブ409
を開し、原料ガス導入管405から所定の原料ガス、例
えばシランガス、ジシランガス、メタンガス、エタンガ
スなどの材料ガスを、またジボランガス、ホスフィンガ
スなどのドーピングガスを不図示のミキシングパネルに
より混合した後に反応容器401内に導入する。次に、
不図示のマスフローコントローラーによって、各原料ガ
スが所定の流量になるように調整する。
【0086】以上の手順によって成膜準備を完了した
後、円筒状被成膜基体402上に光導電層の形成を行な
う。内圧が安定したのを確認後、高周波電源412を所
望の電力に設定して高周波電力をマッチングボックス4
11を通じてカソード電極406に供給し高周波グロー
放電を生起させる。この放電エネルギーによって反応容
器401内に導入させた各原料ガスが分解され、円筒状
被成膜基体402上に所定の堆積膜が形成される。
【0087】所望の膜厚の形成が行なわれた後、高周波
電力の供給を止め、反応容器401ヘの各原料ガスの流
入を止めて堆積室内を一旦高真空に引き上げた後に層の
形成を終える。上記のような操作を繰り返し行なうこと
によって、例えば下部阻止層、光導電層は形成される。
【0088】次に、本発明の第1表面層を形成する。上
記も手順によって光導電層を所定の膜厚に作成した後、
一旦放電を止め、反応容器401内を排気した後、例え
ばa-C:H膜を作成する場合、原料ガス、例えばCH4
22、C24、C26、C 38、C410等のガスお
よび、場合によっては水素ガスまたはへリウム等の希釈
ガスを混合させてバルブ409を介して原料ガス導入管
405より反応容器401内に所定の流量を導入する。
【0089】後は先述の光導電層作成と同様の手順で膜
形成を行なう。第2の表面層のa-C:F膜の作成も原料
ガスを先に述ベたフッ素含有のガスを用いる以外は同様
の手順で作成する。
【0090】図5には、本発明を実施する別のプラズマ
CVD装置の模式図を示した。図5に示す装置は、反応
容器501内に円筒状基体502がカソード電極506
を中心としで同心円上に配置され、その囲まれた空間で
放電空間519を形成する。円筒状基体502は回転モ
ーター517の駆動により回転することにより、全周に
渡り膜形成される。更に本装置における高周波電源51
2は周波数を任意の値に変化させることができる電源と
なっている。
【0091】図4に示す装置と同様に加熱ヒーター50
3によりあらかじめ円筒状被成膜基体502を所定の温
度に加熱した後、同様の手順で各層の堆積膜形成を行な
うことにより、目的とする電子写真感光体を得るものと
なる。
【0092】
【実施例】以下に本発明を実施例を用いて具体的に説明
するが本発明は、これにより何ら限定されるものではな
い。
【0093】(実施例1)図4に示したプラズマCVD装
置を用いて表1に示した条件により円筒状Al基体上に
電荷注入阻止層、光導電層を順次積層した。成膜の手順
は前述した方法に従った。続いて表2に示した条件でa-
C:Hからなる第1表面層A〜Eを積層し、更に表3に
示した条件で第2表面層をそれぞれに積層し合計5本の
電子写真感光体を作成した。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】 更に、同様の手順で第1表面層まで形成した表面粗さ測
定用の電子写真感光体5本も同時に作成した。尚、後に
述べる方法で測定した第2方面層のダイナミック硬度は
1230N/mm2(125 kgf/mm2)であった。
【0097】(比較例1)図4に示したプラズマCVD装
置を用いて実施例1と同様に表1に示した条件により円
筒状Al基体上に電荷注入阻止層、光導電層を順次積層
した。続いて表4に示した条件でa-SiC:Hからなる表
面層を積層し電子写真感光体を作成した。
【0098】
【表4】 こうして作成した電子写真感光体は、次のように評価し
た。
【0099】・画像流れ 電子写真装置(キヤノン社製NP6060)のクリーニングブ
レードの材質および押し当て圧を改造した加速試験機に
電子写真感光体を設置し、ドラム加熱なし、気温32
℃、湿度80%の高温/高湿環境下においてキヤノン製
テストチャート(部品番号:FY 919 058)を2万枚複写
した。その後一旦複写機を止め、この状態で環境を気温
35℃、湿度90%に変更し、5時間放置した。
【0100】この後再び先ほどのチャートを2万枚複写
し5時間複写機を止めるという操作を繰り返し、合計1
0万枚まで耐久した。
【0101】こうして得られた画像の文字輪郭の判別に
より画像流れを判断し、5時間休止後からコピー画像が
何枚目で画像流れが回復するかを判定した。
【0102】・耐久後の表面層膜厚測定 上記の耐久を行なった電子写真感光体を複写機から取り
出し、分光反射計(大塚電子社製CL-3000R)を用い第
2表面層の膜厚を計算した。
【0103】・耐久後の表面の接触角測定上記の耐久を
行なった電子写真感光体表面に水滴を乗せドラムと水滴
の接触角の測定を行ない、耐久前の値と比較した。
【0104】・トナー融着の評価 電子写真装置(キヤノン社製NP6060)のクリーニングブ
レードの押し当て圧を1/3倍にし、かつ、ドラムの表
面温度を60℃に設定することにより、融着が発生しや
すい環境を作りだした。このように改造した加速試験機
に上記10万枚耐久後のドラムを設置し、1%原稿(A
4対角線方向に直線を引いただけの原稿)を用いて10
万枚耐久した。耐久後、ハーフトーン画像をコピーして
融着の有無を調ベた。具体的には、A4のハーフトーン
画像において、ドラムの母線方向に平行な領域をとり、
同領域に存在するトナー融着による黒点の数を見積も
り、5枚のコピーサンプルでの結果を得た。得られた結
果は従来表面層(比較例1で作成したドラム)での同様の
試験から求められた値との相対値で判定する。比較例1
で作成したドラムの値を50とし、1〜100までの点
数で評価した。50より小さければ従来表面層に比ベて
融着が少ないことを示し、50より大きければ従来表面
層に比ベて程度が悪いことを示している。
【0105】・表面粗さの測定 第1表面層まで形成した表面粗さ測定用電子写真感光体
を約2cm角に切り出し、大気中走査型プローブ顕微鏡
(Quesant社製Qscope Model 250)により表面を観
察し、得られたデータを解析しJIS B0601 における
中心線平均表面粗さ(Ra)を求めた。
【0106】・ダイナミック硬度 7059 ガラスに作成したサンプルを用いて、ダイナミッ
ク硬度(島津製作所社製DUH-201)により荷重9.
81×10-4N(0.1gf)のときのダイナミック硬度
を測定した。圧子はダイヤモンド製の三角錐形状のもの
(稜角115度)を用いた。
【0107】以上の各実験で得られた結果を以下に示
す。
【0108】・画像流れ 5時間休止後の画像流れ回復に要する枚数を段階別にA
〜Dで判定し、実施例1で作成した5本のドラム、およ
び比較例1の各条件で作成したドラム1本ずつについて
の結果を第1表面層のダイナミック硬度の測定結果と共
に表5に示した。表5に示すように、実施例1で作成し
たすべてのドラムにおいて良好な結果が得られた。ま
た、第1表面層の硬度はいずれも第2表面層より硬いこ
とが明らかになった。
【0109】
【表5】 判定基準 50枚以内で回復 ・・・A 50〜100枚で回復 ・・・B 100〜300枚で回復 ・・・C 300枚で回復しない ・・・D ・耐久後の表面層膜厚測定 耐久前と10万枚耐久後の第2表面層の膜厚を測定し、
結果を表6に示した。
【0110】
【表6】 表6の結果で明らかなように、耐久試験中に電子写真プ
ロセスにより第2表面層は削れていることが分かる。
【0111】・耐久後の表面の接触角測定 耐久前の接触角を1とし、耐久後の接触角を相対比較し
た。
【0112】表7に示すように、実施例1で作成したド
ラムは耐久後のドラムにおいても接触角の低下はないこ
とがわかる。
【0113】
【表7】 ・トナー融着の評価 各ドラムの結果を表8に示した。融着の評価は先に示し
た方法で従来表面層のドラムとの相対比較で行ない、そ
の程度によりA〜Dのランクに分け、その結果を表に示
した。表8に示すように、各ドラムにおいて良好な結果
が得られた。
【0114】
【表8】 判定基準 10以下 ・・・A 10〜30 ・・・B 30〜50 ・・・C 50以上 ・・・D ・表面粗さの測定 第1表面層5種類の表面粗さの測定結果を表9に示し
た。表9に示すように、本発明の範囲の表面粗さである
ことが分かる。
【0115】
【表9】 以上示したように、各項目において本発明のドラムは良
好な結果が得られた。
【0116】このことは、耐久後(第2表面層が削れた
後)、第1表面層の凹部に第2表面層が残存しているこ
とが耐久後の接触角および耐久後のトナーの融着試験の
良好な結果を得ることと大きく関係している。実際耐久
を終えたドラム表面をESCA分析し、F原子が残存し
ていることを確認した。また、第1表面層の膜の一部が
表面に露出していることも同時に確認した。
【0117】(実施例2)図4の装置を用い、円筒状アル
ミ基体上に 7059 ガラス(コーニング社製)をセットし表
10に示す条件でサンプルを作成した。作成したサンプ
ルはダイナミック硬度計(島津製作所社製DUH-20
1)により硬さを測定した。
【0118】
【表10】 こうして得られたダイナミック硬度の値をもとに条件を
選定し、これらの条件にて硬さの異なる第1表面層を形
成する以外は実施例1と同様の条件にて電子写真感光体
を作成し、同様の評価を行なった。同時に、同様の手順
で第1表面層まで形成した表面粗さ測定用の電子写真感
光体も作成し、いずれの第1表面層の表面粗さも本件の
範囲内であることを確認した。
【0119】このようにして作成したドラムを 7059 サ
ンプルの硬さの値とあわせて表11に示した。
【0120】
【表11】 表11に示したように、第1表面層のダイナミック硬度
が 2940〜9810N/mm 2(300〜1000 kgf/mm2)の条件の
ドラムはいずれの項目においても良好な結果が得られ
た。
【0121】(実施例3)実施例2と同様に図4の装置を
用い、円筒状アルミ基体上に 7059 ガラス(コーニング
社製)をセットし表12に示す条件でサンプルを作成し
た。作成したサンプルはダイナミック硬度計(島津製作
所社製DUH-201)により硬さを側定した。
【0122】
【表12】 こうして得られたダイナミック硬度の値をもとに条件を
選定し、これらの条件にて硬さの異なる第2表面層を形
成する以外は実施例1と同様の条件にて電子写真感光体
を作成し、同様の評価を行なった。尚、第1表面層の条
件はBとした。
【0123】このようにして作成したドラムを 7059 サ
ンプルの硬さの値とあわせて表13に示した。
【0124】
【表13】 表13に示したように、第2表面層のダイナミック硬度
が 98〜4900N/mm2(10〜500 kgf/mm2)の条件のドラ
ムはいずれの項目においても良好な結果が得られた。
【0125】(実施例4)図5に示した別のプラズマCV
D装置を用い、実施例1と同様の条件で円筒状Al基体
上に電荷注入阻止層、光導電層を順次積層し、次いで表
14に示した条件により第1表面層の作成条件を変化さ
せた後、作成したドラムの表面粗さを測定した。
【0126】
【表14】 こうして得られた表面粗さの値をもとにドラムを選定
し、再びこれらのドラム上に実施例1と同様の第2表面
層を形成し、同様の評価を行ない、その結果を表面粗さ
の値とともに表15に示した。
【0127】同時にダイナミック硬度測定用に円筒状ア
ルミ基体上に 7059 ガラス(コーニング社製)をセット
し、表14の条件でサンプルを作成した。このサンプル
により測定したダイナミック硬度はいずれも第2表面層
の硬度よりも硬いことが確認された。
【0128】
【表15】 表15に示したように、第1表面層の中心線平均表面粗
さ(Ra)が 50〜5000Åの条件のドラムはいずれの項目に
おいても良好な結果が得られた。
【0129】(実施例5)図4の装置を用い、円筒状Al
基体上に結晶シリコンウエハーをセットし表16に示す
条件にてサンプルを作成した。作成したサンプルは、H
FS(水素前方散乱分析)により膜中の水素量を定量し
た。
【0130】
【表16】 こうして得られた分析結果をもとに条件を選定し、これ
らの条件にて第1表面層を形成する以外は実施例1と同
様の条件にて電子写真感光体を作成し、同様の評価を行
なった。尚、第1表面層の表面粗さ、及び、第1、第2
表面層の硬度は本件の範囲内であることを確認した。
【0131】表17に示したように、第1表面層の水素
含有最がH/(C+H)(原子比)で10〜60%である場
合において良好な結果が得られた。
【0132】
【表17】 (実施例6)図4の装置を用い、実施例6と同様に円筒状
Al基体状に結晶シリコンウエハーをセットし表18に
示す条件にてサンプルを作成した。作成したサンプル
は、ESCA分析により膜中のフッ素量を定量した。
【0133】
【表18】 こうして得られた分析結果をもとに条件を選定し、これ
らの条件にて第2表面層を形成する以外は実施例1と同
様の条件にて電子写真感光体を作成し、同様の評価を行
なった。なお、このときの第1表面層の作成条件は実施
例1のCの条件により作成した。第2表面層の硬度が第
1表面層より低いことは確認された。
【0134】表19に示したように、第2表面層のフッ
素含有量がF/(C+F)(原子比)で6〜50%である場
合において良好な結果が得られた。
【0135】
【表19】 (実施例7)感光層の層構成が電荷輸送層、電荷発生層の
機能分離型である以外は実施例1と同様の条件でドラム
を作成し同様の評価を行なった。その結果、層構成が電
荷輸送層、電荷発生層の機能分離型であってもすべての
項目において良好な結果が得られたことを確認した。
【0136】
【発明の効果】本発明によって、電子写真感光体の表面
層として、JIS B0601 における中心線平均表面粗さ
(Ra)50Å〜5000Åである、少なくとも炭素、水素を含
む非単結晶材料からなる第1表面層に少なくともフッ素
を含む非単結晶炭素からなる第2表面層を積層させるこ
とにより、電子写真装置における繰り返し使用時におい
て、以下の効果を得ることができた。
【0137】まず、加熱手段を設けずとも、高温高湿環
境下での画像ボケや画像流れといった画像欠陥の発生を
実用上無視できるまで抑制可能とした。
【0138】更には、小粒径で定着性の優れたトナーを
用いた場合でもクリーニング性が良く、トナーの融着を
実用上無視できるまで抑制可能とした。
【0139】更に、クリーニング性をより向上させるた
めの摩擦力の上昇が結果的にもたらすクリーニング性能
の劣化とトナーの融着を実用上無視できるまで抑制可能
とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の断面を模式的に示し
たものであり、図1-1は本発明の電子写真感光体の最
も基本的な構成を製造時の状態で断面を模式的に示した
ものであり、図1-2は本発明の電子写真感光体を電子
写真装置に設置し長時間使用した後の断面を模式的に示
したものであり、図1-3は本発明の電子写真感光体に
おいて、光導電層102と第1表面層104の材料的整
合性を取るためにバッファー層103を設けたものであ
る。
【図2】本発明の電子写真感光体において、光導電層2
02が光導電性を示す層206と、基体201からのキ
ャリアの注入を阻止する、下部阻止層207との2層に
分かれているものである。
【図3】本発明の電子写真感光体において、光導電層3
02を電荷輸送層306と電荷発生層307が順次積層
された構成の機能分離型としたものである。
【図4】本発明の電子写真感光体を形成するための堆積
装置の一例であり、13.56 MHzの高周波電源を用いた
プラズマCVD法による堆積装置を模式的に示した図で
ある。
【図5】本発明の電子写真感光体を形成するための堆積
装置の別の一例であり、周波数を任意の値に変化させる
ことができる高周波を用いたプラズマCVD法による堆
積装置を模式的に示した図である。
【符号の説明】
101・・・円筒状基体 102・・・光導電層 103・・・バッファー層 104・・・第1表面層 105・・・第2表面層 201・・・円筒状基体 202・・・光導電層 203・・・バッファー層 204・・・第1表面層 205・・・第2表面層 207・・・下部阻止層 301・・・円筒状基体 302・・・光導電層 303・・・バッファー層 304・・・第1表面層 305・・・第2表面層 306・・・電荷輸送層 307・・・電荷発生層 401・・・反応容器 402・・・円筒状基体 403・・・加熱用ヒーター 404・・・補助基体 405・・・原料ガス導入管 406・・・カソード電極 407・・・導電性受け台 409・・・バルブ 410・・・真空計 411・・・マッチングボックス 412・・・高周波電力 413・・・絶縁材料 415・・・排気口 501・・・反応容器 502・・・円筒状基体 503・・・加熱用ヒーター 504・・・補助基体 506・・・カソード電極 507・・・導電性受け台 511・・・マッチングボックス 512・・・高周波電力 513・・・絶縁材料 515・・・排気口 517・・・回転モーター 518・・・回転軸 519・・・放電空間
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C23C 16/505 C23C 16/505

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 円筒状基体上にシリコン原子を母体とす
    る非単結晶材料からなる光導電層、少なくとも炭素およ
    び水素を含む非単結晶材料からなる第1表面層、少なく
    ともフッ素を含む非単結晶炭素からなる第2表面層がこ
    の順に形成され、前記第1表面層の硬度が前記第2表面
    層のそれより大きく、前記第1表面層のJIS B060
    1における中心線平均表面粗さ(Ra)が50Å〜500
    0Åであることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 【請求項2】前記第1表面層のダイナミック硬度が29
    40〜9810N/mm2(300〜1000kgf/mm2)
    であり、前記第2表面層のダイナミック硬度が98〜4
    900N/mm2(10〜500kgf/mm2)であることを
    特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 【請求項3】前記第1表面層は、水素をH/(C+H)(原
    子比)で10〜60%含有する非単結晶炭素であり、第
    2表面層はフッ素をF/(C+F)(原子比)で6〜50%
    含有する非単結晶炭素であることを特徴とする請求項1
    または2に記載の電子写真感光体。
  4. 【請求項4】前記電子写真感光体を回転させ、帯電、露
    光、現像、転写、クリーニングを順次繰り返す電子写真
    プロセスを行なうことにより、第1表面層の一部が電子
    写真感光体表面に露出することを特徴とする請求項1な
    いし3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  5. 【請求項5】少なくとも前記第1表面層は周波数1〜4
    50MHzの高周波を用いたプラズマCVD法によって
    原料ガスを分解することにより形成される請求項1ない
    し4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  6. 【請求項6】少なくとも前記第2表面層は周波数1〜4
    50MHzの高周波を用いたプラズマCVD法によって
    原料ガスを分解することにより形成される請求項1ない
    し5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009185336A (ja) * 2008-02-06 2009-08-20 Yamaguchi Prefecture 非晶質炭素膜及びその成膜方法

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