JPH1029177A - マスタスレーブマニプレータの制御方法および装置 - Google Patents

マスタスレーブマニプレータの制御方法および装置

Info

Publication number
JPH1029177A
JPH1029177A JP19976696A JP19976696A JPH1029177A JP H1029177 A JPH1029177 A JP H1029177A JP 19976696 A JP19976696 A JP 19976696A JP 19976696 A JP19976696 A JP 19976696A JP H1029177 A JPH1029177 A JP H1029177A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
slave
master
torque
deviation
change rate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP19976696A
Other languages
English (en)
Inventor
Kenji Hara
憲二 原
Kouzou Itou
硬三 伊藤
Kanji Hara
寛二 原
Teruya Maeda
曜也 前田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsui Engineering and Shipbuilding Co Ltd
Original Assignee
Mitsui Engineering and Shipbuilding Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsui Engineering and Shipbuilding Co Ltd filed Critical Mitsui Engineering and Shipbuilding Co Ltd
Priority to JP19976696A priority Critical patent/JPH1029177A/ja
Publication of JPH1029177A publication Critical patent/JPH1029177A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Manipulator (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡易な構成で操作性に優れているとともに、
低コスト、信頼性に優れた対称型バイラテラルマスタス
レーブマニプレータの制御方法を得る。 【解決手段】 マスタアームとスレーブアームとの位置
偏差δxが基準位置偏差δsの絶対値より小さい、スレ
ーブアームが対象物に接触していない空間モードにおい
ては、マスタ側の入力トルクを求めるためのバネ係数K
M1をスレーブ側のバネ係数KS1より小さくしてあり、マ
スタ側にダイナミックスの影響を小さくするようにして
ある。そして、スレーブアームが対象物に接触してδx
≧|δs|となる範囲においては、スレーブ側のバネ係
数KS1とマスタ側のバネ係数KM2とを等しくして、スレ
ーブ側の入力トルクとマスタ側の入力トルクとが一致す
るようにしてある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オペレータが操作
するマスタアーム(以下、単にマスタということがあ
る)の位置情報をスレーブアーム(以下、単にスレーブ
ということがある)に与えて追従させるマスタスレーブ
マニプレータの制御方法に係り、特にスレーブが対象物
と接触した際に対象物から受けた反力をマスタのオペレ
ータに力感覚としてフィートバックする機能を有するバ
イラテラル式のマスタスレーブマニプレータに関する。
【0002】
【従来の技術】マスタスレーブマニプレータシステム
(マスタスレーブマニプレータ装置)は、作業現場が原
子力施設の放射能の存在する場所や、海中、あるいは作
業現場が高温である等の悪環境であっても、オペレータ
が作業現場と離れた位置において必要な作業を行うこと
ができるばかりでなく、遠隔操作で人の健康診断や微細
な手術などを行えるところから、近年、急速に研究、開
発が進められている。そして、マスタスレーブマニプレ
ータ装置は、遠隔のスレーブをオペレータがマスタを介
して操作するため、スレーブが作業対象と干渉した際の
スレーブ側の過負荷を防止し、作業を円滑にするため
に、マスタを操作しているオペレータに実際に作業をし
ているような感覚を与える必要がある。そこで、スレー
ブ側の反力をオペレータがマスタを介して力覚として感
じとることができる、いわゆるバイラテラル式のマスタ
スレーブマニプレータが開発された。そして、従来のバ
イラテラルマスタスレーブマニプレータ制御方法は、対
称型、力逆送型、力帰還型が知られている。
【0003】対称型制御は、オペレータがマスタを操作
する際に、マスタの位置とマスタに追従するスレーブの
位置との偏差を求め、この偏差の大きさに応じてスレー
ブ側モータを制御してスレーブの位置制御を行うととも
に、マスタ側のモータを制御して偏差の大きさに応じて
力感覚を大きくするようにしている。また、力逆送型制
御は、マスタの位置とスレーブの位置との偏差を求め、
この偏差の大きさに応じてスレーブ側を制御してスレー
ブの位置調整を行うとともに、スレーブ側に設けたトル
ク検出器(力センサ)の検出信号をマスタ側にフィード
バックし、検出トルクの大きさに応じてオペレータの力
感覚(マスタを操作する力の感覚)を変えるようにマス
タ側モータを制御するようにしている。さらに、力帰還
型制御は、マスタの位置とスレーブの位置との偏差を求
め、この偏差の大きさに応じてスレーブ側モータを制御
してスレーブの位置調整を行うとともに、マスタ側とス
レーブ側とにトルク検出器を設け、両者の検出トルクの
偏差をマスタ側にフィードバックし、トルク偏差が零と
なるようにマスタ側のモータを制御するようにしてい
る。
【0004】上記のように、力逆送型と力帰還型とは、
トルクセンサを用いてスレーブの受けた対象物からの反
力をマスタ側にフィードバックするようにしており、対
称型より装置が高価になるとともに、制御が複雑とな
る。また、力帰還型のマスタスレーブシステムは、力の
フィードバックゲインを大きくすると、速度と位置のフ
ィードバックゲインも大きくなってシステムの発振を招
き易い。さらに、力逆送型は、スレーブのダイナミック
ス(慣性や粘性、弾性など)を消去できるが、マスタの
ダイナミックスが加わるために応答性が悪くなる。そし
て、対称型は、マスタに返る反力にマスタとスレーブと
のダイナミックスが加わり、応答性を悪化させる。
【0005】そこで、アームと環境との関係をインピー
ダンスによって規定し、アームと環境との動力学的相互
作用をインピーダンスの変化として捉えるインピーダン
ス制御が提案されている(例えば、館、榊:インピーダ
ンス制御型マスタ・スレーブ・システム(I)、日本ロ
ボット学会誌8巻6号、1990年6月)。しかし、イ
ンピーダンス制御は、制御が複雑で、システム構成が高
価となる。
【0006】一方、対称型制御は、前記の欠点がある
が、力センサを用いないためにシステムを比較的簡素に
構成できるとともに、高価なコンピュータを必要とせ
ず、安価なシステムを構築することができる。すなわ
ち、制御型においては、マスタの運動方程式と制御式と
が次の数式1と数式2のように表される。
【数1】
【数2】 また、スレーブの運動方程式と制御式および対象物の運
動方程式は、
【数3】
【数4】
【数5】
【0007】ただし、F0 はマスタへの操作力、F1
マスタの内部トルク、F2 はスレーブの内部トルク、F
e は対象物からスレーブへの反力、M0 は慣性フィード
バックゲイン、B0は粘性フィードバックゲイン、Kp
は位置のフィードバックゲイン、Xm はマスタの位置、
s はスレーブの位置である。また、Mは対象物の慣性
フィードバックゲイン、Bは対象物の粘性フィードバッ
クゲイン、Kは対象物の剛性フィードバックゲイン、δ
s は対象物との接触による位置偏差(歪み)を表す。
【0008】上記数式1〜数式5から、マスタに返る反
力は、
【数6】 となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来のいずれ
の制御方法も、マスタおよびスレーブの駆動機構によっ
て制御性能が左右させる。そして、減速機を用いないダ
イレクトドライブ式のマニプレータによれば、摩擦やガ
タによる影響がないことから、理論に近い制御が可能な
ため、新たな制御則を採用することにより操作性を向上
させることが期待できる。しかし、マニプレータが6軸
と多軸構造になると、それに適した軽量、コンパクト、
高トルクのDDモータが未だ開発されていないのが現状
である。そして、従来のマニプレータは、一般に減速比
が100程度と大きく、駆動摩擦が外乱として影響し、
対称型制御などの力センサを使用しない制御方法では、
理論どうりに制御をすることができず、操作性に劣る。
また、力センサを使用する場合は、力センサの校正(キ
ャリブレーション)や、センサ用の配線、取り付けな
ど、実際のマニプレータの設計上、大きな課題となり、
信号線が多い分、信頼性も低下する。しかも、演算が複
雑になる上、演算周期として高速性が要求されるため
に、制御コンピュータも高性能が要求され、システム全
体として高価となる問題があった。
【0010】そして、マスタへの力のフィードバックF
0 は、理想的には、対象物からスレーブへの反力Fe
けが力覚としてフィードバックさることが望ましい。と
ころが、対称型バイラテラルマスタスレーブマニプレー
タ装置においては、数式6に示されているように、マス
タに返る反力には、マスタとスレーブとの各々の運動に
対するダイナミックス(慣性と粘性)が加わり、応答性
が低下して高度な臨場感が得られず、操作性が損なわれ
る。従って、対称型マスタスレーブマニプレータ装置に
おける操作性を低下させる要因として、 (1)マスタとスレーブの各々の運動に対するダイナミ
ックスがマスタに返る反力に加わること。 (2)マスタとスレーブとの各々の重力の影響がマスタ
に加わること。 (3)マスタとスレーブとの各々の駆動軸の摩擦の影響
がマスタに加わること。 があげられる。
【0011】上記の操作性を悪化させる3つの要因のう
ち、(2)と(3)とは、対称型制御ばかりでなく、実
際のマニプレータに共通する一般的な要因である。そし
て、要因(2)の重力による影響は、図5(1)に示し
たように、マスタとスレーブとを同じ駆動力によって駆
動した場合、スレーブアームの位置(スレーブの位置)
S が常に重力の影響分だけマスタアームの位置(マス
タの位置)XM より下方になる。この重力による影響
は、マスタアーム、スレーブアームの形状、質量などに
よって異なってくるが、マスタアームとスレーブアーム
とのそれぞれに、公知の手法による重力補償機能をソフ
トウエアによって設けることによりほぼなくすことがで
きる。
【0012】また、要因(3)の粘性による影響は、図
5(2)に示したように、マスタに対して位相遅れを生
ずる。しかも、この位相遅れは、アームの動作が高速に
なればなるほど大きくなる。そして、要因(3)につい
ては、前記したようにダイレクト駆動方式を採用すれ
ば、摩擦がないため理想的であるが、現状では機械設計
上困難である。そして、駆動摩擦の大きさは、減速機の
種類と減速比、動力伝達機構(ベルト駆動であるかシャ
フト駆動であるか等)によって大きく異なる。また、モ
ータの慣性は、減速比の2乗で先端アームに慣性力とし
て影響する。
【0013】本発明は、前記従来技術の欠点を解消する
ためになされたもので、簡易な構成で操作性に優れてい
るとともに、低コスト、高信頼性が得られる対称型のバ
イラテラルマスタスレーブマニプレータの制御方法およ
び装置を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明は、スレーブが対象物に接触していない状
態の空間モード時においては、マスタの入力トルクをス
レーブの入力トルクより小さくし、マスタやスレーブの
慣性、粘性などのダイナミックスによる影響をオペレー
タがあまり感じないようにしている。すなわち、本発明
に係るマスタスレーブマニプレータの制御方法は、オペ
レータが操作するマスタアームと、このマスタアームの
動作に追従するスレーブアームとを有し、マスタアーム
の位置とスレーブアームの位置との偏差に応じてマスタ
アームの入力トルクを変えるとともに、スレーブアーム
の入力トルクを変えるマスタスレーブマニプレータの制
御方法において、前記偏差が設定値より小さい範囲の場
合、前記偏差に応じたマスタアームの入力トルクを、前
記スレーブアームの入力トルクより小さくした構成とな
っている。
【0015】偏差に応じたマスタアームの入力トルクと
スレーブアームの入力トルクとは、偏差が設定値以上の
ときに一致させるようにしてよい。また、偏差に応じた
マスタアームの入力トルクは、偏差が設定値以上のとき
に、スレーブアームの偏差に応じた入力トルクより大き
くすることができる。さらに、偏差に応じたスレーブア
ームの入力トルクは、偏差が設定値以上となったときの
偏差に対する入力トルクの変化率を、偏差が設定値より
小さいときの変化率より小さくしてもよい。
【0016】そして、本発明に係るマスタスレーブマニ
プレータ装置は、オペレータが操作するマスタアーム
と、このマスタアームの動作に追従するスレーブアーム
と、各アームのそれぞれに設けられ、減速機を介して各
アームを駆動する駆動モータとを有するマスタスレーブ
マニプレータ装置において、前記マスタアームの位置を
求めるマスタ位置検出手段と、前記スレーブアームの位
置を求めるスレーブ位置検出手段と、これら各位置検出
手段の検出信号に基づいて、マスタアームとスレーブア
ームとの位置偏差を求める偏差演算手段と、スレーブア
ームが対象物に接触したか否かの判断基準となる基準位
置偏差を設定する基準値設定手段と、前記偏差演算手段
が求めた位置偏差に応じた前記スレーブアームマの入力
トルクを演算するためのスレーブトルク変化率が設定さ
れるスレーブトルク変化率設定手段と、前記偏差演算手
段の求めた位置偏差が前記基準値設定手段に設定された
基準位置偏差より小さい範囲における位置偏差に対する
前記マスタアームの入力トルクを求めるためのマスタト
ルク変化率が前記スレーブトルク変化率よい小さく設定
されるマスタトルク変化率設定手段と、前記偏差演算手
段の求めた位置偏差と前記マスタトルク変化率設定手段
に設定してあるマスタトルク変化率とから、前記位置偏
差に応じた前記マスタアームの入力トルクを求めるマス
タトルク演算手段と、前記位置偏差演算手段の求めた位
置偏差と前記スレーブトルク変化率設定手段に設定され
たスレーブトルク変化率とから、前記位置偏差に応じた
前記スレーブアームの入力トルクを求めるスレーブトル
ク演算部と、を有する構成となっている。マスタトルク
変化率は、偏差演算手段の求めた位置偏差が基準位置偏
差より小さい範囲におけるトルク変化率がスレーブトル
ク変化率より小さい第1マスタトルク変化率と、位置偏
差が基準位置偏差以上におけるトルク変化率がスレーブ
トルク変化率と一致している第2マスタトルク変化率と
から構成できる。そして、この場合、マスタトルク演算
手段は、位置偏差が基準位置偏差より小さい範囲のと
き、第1マスタトルク変化率に基づいてスレーブトルク
演算手段の求めたスレーブ入力トルクより小さなマスタ
入力トルクを求めるとともに、位置偏差が基準位置偏差
以上のときに、第2マスタトルク変化率に基づいて、ス
レーブトルク演算手段の求めたスレーブ入力トルクと等
しいマスタ入力トルクを演算する。
【0017】さらに、スレーブトルク変化率は、位置偏
差が基準位置偏差より小さい範囲における位置偏差に応
じたスレーブ入力トルクを演算するための第1スレーブ
トルク変化率と、位置偏差が基準位置偏差以上における
位置偏差に応じたスレーブ入力トルクを演算するための
第2スレーブトルク変化率とから構成し、第2スレーブ
トルク変化率を第1スレーブトルク変化率より小さく設
定するとともに、マスタトルク変化率は、位置偏差が基
準位置偏差より小さい範囲における位置偏差に応じたマ
スタ入力トルクを演算するための第1マスタトルク変化
率と、位置偏差が基準位置偏差以上における位置偏差に
応じたマスタ入力トルクを演算するための第2マスタト
ルク変化率とからなり、第1マスタトルク変化率は第1
スレーブトルク変化率より小さく設定され、前記第2マ
スタトルク変化率は前記第2スレーブトルク変化率より
大きく設定し、マスタトルク演算手段は、位置偏差が基
準位置偏差より小さい範囲のときに、第1マスタトルク
変化率に基づいてスレーブトルク演算手段の求めたスレ
ーブ入力トルクより小さなマスタ入力トルクを求め、位
置偏差が基準位置偏差以上のときに、第2マスタトルク
変化率に基づいて、スレーブトルク演算手段の求めたス
レーブ入力トルクより大きなマスタ入力トルクを演算す
るようにできる。なお、駆動モータにはコアレスDCサ
ーボモータを使用し、減速機には遊星歯車減速機を用い
るとよい。
【0018】
【作用】スレーブが対象物に接触している場合、対象物
からスレーブに作用する反力が大きいために、慣性によ
るトルクや粘性によるトルクなどのダイナミックスは、
スレーブが対象物に接触していないときに比較して相対
的に小さくなる。すなわち、スレーブが対象物に接触し
ていない場合、マスタに返るダイナミックスが相対的に
大きくなり、これがオペレータに作用して臨場感を失わ
せて操作性を低下させる。すなわち、オペレータは、こ
のダイナミックスによる影響のため、スレーブが対象物
と接触していないにもかかわらずマスタに大きな操作力
を与える必要があり、対称型バイラテラルマスタスレー
ブシステムの操作性を損なう原因となる。そこで、本発
明においては、スレーブが対象物に接触していない場
合、マスタに与える入力トルク(力覚トルク)をスレー
ブの入力トルク(出力トルク)より小さくしてダイナミ
ックスの影響がオペレータに伝達しにくくしている。
【0019】すなわち、本発明においては、マスタの位
置とスレーブの位置との偏差(位置偏差)が設定値(基
準位置偏差)より小さな、スレーブが対象物と接触して
いない空間モードの場合、偏差に応じたマスタの入力ト
ルクをスレーブの入力トルクより小さくして、ダイナミ
ックスによる影響を感じなくともよい不感帯とした。そ
して、スレーブが対象物に接触することにより、マスタ
の位置とスレーブの位置との偏差が設定値以上になった
接触モードの場合に、対象物からの反力が大きくなって
ダイナミックスの影響をほぼ無視できるようになるの
で、マスタの入力トルクをスレーブの入力トルクと一致
させるように制御する。これにより、力帰還型やインピ
ーダンス制御のような複雑な制御を行うことなく操作性
に優れた対称型バイラテラルマスタスレーブマニプレー
タの制御を行うことができる。しかも、力センサなどを
必要としないところから、装置の構造の簡素化が図れ、
信号線も少なくできるため、低コストで信頼性の高い装
置を得ることができる。
【0020】また、位置偏差が基準位置偏差より大きい
領域において、マスタの入力トルクをスレーブの入力ト
ルクより大きくすると、スレーブによる作業対象が例え
ば人体などの柔らかなものである場合に、オペレータの
受ける力覚がスレーブが対象物から受ける反力より大き
くなり、スレーブが柔らかい対象物を潰すなどの操作ミ
スを避けることができる。
【0021】さらに、本発明においては、駆動モータと
して低慣性のコアレスDCサーボモータを採用し、モー
タの慣性による影響を小さくするようにしている。ま
た、減速機は、最も摩擦が少ないと考えられる遊星歯車
減速機を採用し、減速比を抑えた機構で構成した。すな
わち、従来の産業ロボットにおいては、位置決め精度を
重視するところから、一般にバックラッシュが大きい遊
星歯車減速機を採用されていなかった。しかし、本発明
の対象であるマスタスレーブ装置の場合、絶対位置制度
はさほど重要でなく、むしろ力制御や追従性が重要であ
る点に鑑みて遊星歯車減速機を採用することにより、従
来に比較して摩擦の影響を改善するようにしている。そ
して、本発明においては、重力の影響をソフトウエアに
よる重力補償機能によって除くとともに、コアレスDC
モータと遊星歯車減速機を用いて慣性と粘性とによる影
響を小さくしたことにより、図5(3)に示したよう
に、スレーブの追従性を大幅に改善でき、操作性を向上
することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明に係るマスタスレーブマニ
プレータの制御方法および装置の好ましい実施の形態
を、添付図面に従って詳細に説明する。
【0023】図2は、本発明に係るマスタスレーブマニ
プレータ装置の概略構成図である。図2において、マス
タマニプレータ10Mとスレーブマニプレータ10Sと
は、同様に構成してあって、コアレスDCサーボモータ
からなる駆動モータ12M、12Sの駆動力が遊星歯車
減速機14M、14Sを介してマスタアーム16Mとス
レーブアーム16Sとに伝達されるようにしてある。マ
スタアーム16Mとスレーブアーム16Sとは、同一の
形状、構造(異なっていてもよい)に形成してあり、そ
れぞれ図示しない複数の関節を有する多関節アームであ
って、先端部にマニプレータ(図示せず)が設けてあ
る。そして、それぞれのアーム16M、16Sの各関節
には、先端側の関節を駆動するための駆動モータが設け
てある。
【0024】これらの関節に配設した駆動モータ12
M、12Sには、ロータリエンコーダ18M、18Sが
取り付けてある。このロータリエンコーダ18M、18
は、モータ12M、12Sの回転に伴ってパルス信号を
出力するようになっており、後述するようにこの出力パ
ルスからマスタアーム16Mとスレーブアーム16Sと
の位置を求めるようになっていて、位置検出手段を構成
している。そして、ロータリエンコーダ18M、18S
の検出信号に基づいて求められたマスタアーム16Mと
スレーブアーム16Sとの位置は、減算器などから構成
した偏差演算部(偏差演算手段)20に入力され、マス
タとスレーブとの位置偏差が求められるようになってい
る。また、偏差演算部20の求めた位置偏差は、駆動モ
ータ12M、12Sの駆動電流を制御する情報としてマ
スタマニプレータ10Mとスレーブマニプレータ10S
とに与えるようになっており、マスタマニプレータ10
Mとスレーブマニプレータ10Sとが対称型のバイラテ
ラルマスタスレーブマニプレータ装置を構成している。
【0025】マスタマニプレータ10M側とスレーブマ
ニプレータ10S側とには、詳細を後述するゲイン設定
関数部22M、22Sが設けてあって、本図に図示しな
いマスタ入力トルク演算部とスレーブ入力トルク演算部
とがゲイン設定関数部22M、22Sに設定されている
ゲイン関数に基づいて、偏差演算部20の求めた位置偏
差に応じたマスタマニプレータ10Mの入力トルク(力
覚トルク)とスレーブマニプレータ10Sの入力トルク
(駆動トルク)とを求め、この求めた入力トルクに応じ
て駆動モータ12M、12Sの駆動電流を算出するよう
になっている。
【0026】図3は、スレーブマニプレータ10S側の
各関節軸のそれぞれを制御する制御ループの一例を示す
ブロック図であり、マスタマニプレータ10M側も同様
に構成してある。そして、以下においては、1つの関節
を制御する場合を説明する。
【0027】図3において、上位コンピュータ30は、
例えばパーソナルコンピュータから構成してあって、装
置の全体をコントロールするようになっている。そし
て、スレーブマニプレータ10Sの関節軸に設けた駆動
モータ12Sと上位コンピュータ30との間には、スレ
ーブアーム16Sを制御するためのインターフェース部
32が介在させてある。
【0028】上位コンピュータ30は、軸を回転させる
トルク指令を駆動モータ12Sの駆動電流値として出力
する電流指令部34を有するとともに、後述する第1ス
レーブトルク変化率により求めるスレーブ入力トルクの
上下限を制限するための第1電流制限部36、第2スレ
ーブトルク変化率により求めるスレーブ入力トルクの上
下限を制限する第2電流制限部38が設けてある。ま
た、上位コンピュータ30には、スレーブ側のゲイン設
定関数部22Sが設けてあるとともに、本図に図示しな
いマスタ側のゲイン設定関数部が設けてある。このゲイ
ン設定関数部22Sは、ゲインテーブル40、第1バネ
係数設定器42、第2バネ係数設定器44とから構成し
てある。
【0029】第2バネ係数設定機44とともにスレーブ
トルク変化率設定手段を構成している第1バネ係数設定
器42には、詳細を後述するように、マスタとスレーブ
とのアームの位置偏差δxの絶対値が予め定めた基準位
置偏差(設定値)δsより小さい範囲におけるスレーブ
入力トルクを求めるためのスレーブトルク変化率として
のアームのバネ係数(剛性)が設定されるようになって
いる。さらに、第2バネ係数設定器44には、位置偏差
δxが基準位置偏差δs以上におけるアームのバネ係数
(スレーブトルク変化率)が設定されるようになってい
る。なお、マスタ側のマスタトルク変化率設定手段とな
る図示しない第1バネ係数設定器には、後述するよう
に、スレーブ側の第1バネ係数設定器40に設定される
バネ係数より小さなマスタトルク変化率としてのバネ係
数が設定される。
【0030】上位コンピュータ30は、さらに、基準値
設定手段であるバネ切替位置設定部46、ダンパ電流制
限部48、マス電流制限部50、ダンパ係数設定部5
2、マス係数設定部54、指令位置出力部56、原点設
定部58を備えている。
【0031】バネ切替位置設定部46は、入力トルクを
求める際に、第1バネ係数設定器42に設定されたバネ
係数を使用すべきか、第2バネ係数設定器46に設定さ
れたバネ係数を使用すべきかを定める前述した基準位置
偏差δsが設定されるようになっている。すなわち、ス
レーブアーム22Sが図示しない対象物と接触していな
い空間モードにあるか、スレーブアーム22Sが対象物
に接触している接触モードにあるかの判断基準が設定さ
れる。
【0032】また、ダンパ電流制限部48は、ダンパ係
数設定部52に設定されたアーム関節部の粘性トルクを
発生させるゲインに基づくダンパ要素によるトルクの上
限を設定するようになっている。そして、マス電流制限
部50は、マス係数設定部54に設定されたアームの慣
性トルクを発生させるゲインに基づくマス要素によるト
ルクの上限を設定するようになっている。さらに、指令
位置出力部56は、マスタアーム16Mの位置に対応し
たスレーブアーム16Sの目標位置を出力するようにな
っており、また原点設定部58はインターフェース部3
2に設けてあるカウンタ60の初期値を設定するように
なっている。このカウンタ60は、ロータリエンコーダ
18Sの出力パルスを計数してスレーブアーム16Sの
位置情報を出力する。
【0033】インターフェース部32は、上位コンピュ
ータ30の指令位置出力部56の出力した指令位置が書
き込まれる指令位置設定器62と、この指令位置設定器
62に書き込まれた指令位置とカウンタ60が求めたス
レーブアーム16Sの位置との偏差を演算する偏差演算
器(偏差演算手段)64とを有している。また、インタ
ーフェース部32には、偏差演算器64の出力側に速度
演算器66と、スレーブトルク演算部を構成しているバ
ネ要素演算器68とが設けてある。速度演算器66は、
偏差演算器64が出力するマスタアーム16Mとスレー
ブアーム16Sとの位置偏差を微分してスレーブアーム
16Sの移動速度(関節の回転速度)を求め、出力側に
接続してある加速度演算器70とダンパ要素演算器72
とに演算結果を出力するようになっている。
【0034】一方、バネ要素演算器68は、上位コンピ
ュータ30のゲインテーブル40に設定されている図4
(1)に示した比例ゲインを読み出すとともに、偏差演
算器64の出力した位置偏差δxの大きさを、バネ切替
位置設定部46に設定されている基準位置偏差δsと比
較し、第1バネ係数設定器42または第2バネ係数設定
器44に設定されているバネ係数と比例ゲインとを用
い、図4(2)に示したように、位置偏差δxに対応し
たスレーブ入力トルクが得られる駆動モータ12Sの電
流値を演算して電流制限器74に出力するようになって
いる。この電流制限器74には、バネ要素演算器68の
求めた駆動電流を、上位コンピュータ30の第1電流制
限部36と第2電流制限部38とに設定されている制限
電流と比較し、バネ要素演算器68が出力した電流値が
第1電流制限部36または第2電流制限部38に設定さ
れている上下限値を超える場合、第1電流制限部36ま
たは第2電流制限部38に設定されている電流値を出力
し、スレーブマニプレータ10Sの出力トルクが異常に
大きくなるのを防止している。
【0035】ダンパ要素演算器72は、速度演算器66
の求めたアーム移動速度(または回転速度)と、上位コ
ンピュータ30のダンパ係数設定器52に設定してある
ダンパ係数とを用いてスレーブアーム16Sの粘性に基
づくトルクに対応したモータ16Sの駆動電流を演算し
て出力する。また、加速度演算器70は、速度演算器6
6の出力したアーム速度(または回転速度)をさらに微
分してスレーブアーム16Sの加速度(または回転加速
度)を求めてマス要素演算器78に入力するようになっ
ている。このマス要素演算器78は、加速度演算器70
の出力したアーム加速度と、上位コンピュータ30に設
けたマス係数設定器54に設定されたゲインとによっ
て、スレーブアーム16Sの慣性トルクに対応したモー
タ12Sの駆動電流を求めて出力する。これらマス要素
演算器78とダンパ要素演算器72とは、制御を安定さ
せるためのもので、急激な動作指令に対して応答緩和に
よってアームのオーバーシュートを避けたり、振動の抑
制などの緩衝効果をもたらすような指令方向と逆方向の
電流値を出力するようになっている。
【0036】インターフェース部32には、ダンパ要素
演算器72の出力側に設けたダンパ電流制限器80と、
マス要素演算器78の出力側に接続したマス電流制限器
82とを有している。これらの電流制限器80、82
は、それぞれ上位コンピュータ30に設けたダンパ電流
制限部48とマス電流制限部50とに接続してあって、
ダンパ要素演算器72、マス要素演算器78の求めた電
流値が電流制限部48、50に設定してある上限値を超
える場合に、これらの電流制限部48、50に設定して
ある電流値を加算器76に出力するようにしてある。
【0037】加算器76の出力側には、上位コンピュー
タ30の電流指令部34の出力信号が入力する加算器8
4が設けてある。そして、この加算器84の出力電流
は、保護電流制限器86、パルス幅変調器(PWM器)
88を介して駆動モータ12Sに与えられるようになっ
ている。保護電流制限器86は、駆動モータ12Sを保
護するためのもので、モータ12Sに出力された電流値
が最大出力の50%を超える状態が一定時間以上継続す
ると作動し、モータ12Sに供給する電流を最大出力の
50%に制限する。この制限は、保護電流制限器86に
リセットコマンドを転送することにより、または加算器
84の出力した電流値がモータ12Sの最大出力の50
%以下である状態が所定時間継続した場合に解除され
る。
【0038】上記のごとく構成した実施の形態の作用
は、次のとおりである。
【0039】上位コンピュータ30に設けたスレーブ側
ゲイン設定関数部22Sの第1バネ係数設定器42には
図1(1)に示したバネ係数KS1が設定され、第2バネ
係数設定器44には同図(1)に示したバネ係数KS2
設定される。そして、この実施例においては、KS1=K
S2にしてある。また、上位コンピュータ30に設けたマ
スタ側ゲイン設定関数部22Mの第1バネ係数設定器に
は図1(2)に示したKM1が設定してあり、第2バネ係
数設定器には同図(2)に示したKM2が設定してある。
そして、この実施例においては、KM1<KS1にしてあ
る。さらに、上位コンピュータ30のバネ切替位置設定
部46には、インターフェース部32のバネ要素演算部
68が第1バネ係数設定器42に設定したバネ係数を使
用してトルクを求めるか、第2バネ係数設定器に設定さ
れたバネ係数を使用してトルクを求めるかの判断をなす
ための基準位置偏差δsが設定してある。
【0040】オペレータがマスタマニプレータ10Mの
マスタアーム16Mを駆動モータ12Mを介して操作す
ると、上位コンピュータ30は、マスタ側のモータ12
Mに供給された駆動電流値と等しい電流値を電流指令部
34を介してスレーブ側インターフェース部32の加算
器84に与え、保護電流制限器86、PWM器88を介
してマスタ側と等しい駆動電流をスレーブ側駆動モータ
12Sに供給してスレーブアーム16Sを駆動する。駆
動モータ12Sが駆動されると、その回転数がロータリ
エンコーダ18Sのよって検出され、ロータリエンコー
ダ18Sの出力パルスがインターフェース部32のカウ
ンタ60に入力する。カウンタ60は、入力したパルス
を計数し、レーブアーム16Sの位置情報として偏差演
算器64に出力する。
【0041】上位コンピュータ30の指令位置出力部5
6は、スレーブアーム16Sの位置を求めたと同様にし
て求めたマスタアーム16Mの位置を、スレーブアーム
16Sの目標位置としてインターフェース部32の指令
位置設定器62に出力する。そして、偏差演算器64
は、入力された指令位置とカウンタ60の位置情報とか
ら、マスタアーム16Mとスレーブアーム16Sとの位
置偏差δxを求めて速度演算器66とバネ要素演算器6
8とに送出する。バネ要素演算器68は、偏差演算器6
4の出力した位置偏差δxをバネ切替位置設定部46に
設定してある基準位置偏差δsと比較し、−δs<δx
<δsであるかを判断する。そして、バネ要素演算器6
8は、−δs<δx<δsである場合、図1(1)に示
した第1バネ係数KS1と比例ゲインとを用いてスレーブ
アーム16Sの入力トルクのうち、バネ要素によるトル
クTS に相当する電流値を求め、電流制限器74を介し
て加算器76に入力する。また、バネ要素演算器68
は、δx≦−δsまたはδx≧δsである場合、すなわ
ちδx≧|δs|である場合、図1(1)に示したバネ
係数KS2と比例ゲインとを用いてバネ要素によるトルク
に相当する電流値を演算して加算器76に入力する。
【0042】なお、上部コンピュータ30の第1電流制
限部36には、δx=±δsであるときのバネ要素によ
るトルク+TS0または−TS0に相当する電流値が設定し
てあって、インターフェース部32の電流制限器74
は、バネ要素演算器68がKS1を用いて求めた電流値が
+TS0に相当する電流値より大きい場合、または−TS0
に相当する値より小さい場合には、+TS0または−TS0
に相当する電流値を加算器76に出力するようになって
いる。
【0043】一方、マスタ側インターフェース部(図示
せず)の偏差演算器は、上位コンピュータ30の指令位
置出力部を介して入力されたスレーブアーム16Sの位
置とマスタアーム16Mの位置との位置偏差δxを演算
してバネ要素演算器に入力する。マスタ側バネ要素演算
器は、−δs<δx<δsが成立するかを調べ、この式
が成立している、スレーブアーム16Sが対象物に接触
していない空間モードである場合、図1(2)に示した
バネ係数KM1と比例ゲインとによりマスタアーム16M
の入力トルクのうち、バネ要素に基づくトルクに相当す
るトルクTM を演算する。
【0044】ただし、δx<|δs|の範囲におけるマ
スタ側のバネ係数KM1は、図1に示してあるように、ス
レーブ側のバネ係数KS1より小さく設定してあって、バ
ネ係数KM1による最大トルクTM0がスレーブ側の最大ト
ルクTSMより十分小さな値となるようにしてあり、マス
タ側は位置偏差δxによる負荷をあまり感じないように
してある。これにより、マスタ側は、δx<|δs|の
範囲において、すなわちスレーブが対象物に接触してい
ない空間モードにおいては、加速トルク等のダイナミッ
クスが感じにくくなり、ダイナミックスの影響を受ける
ことなく動作指令ができ、操作性を向上することができ
る。
【0045】マスタ側のバネ要素演算器は、スレーブア
ーム16Sが図5(3)に示したように、例えば時刻t
において対象物に接触し、δx≧|δs|となって接触
モードとなると、第2バネ係数KM2を用いて求めたトル
クに相当する電流値を出力する。この実施例において
は、KM2=KS2に設定してあり、δx≧|δs|の範囲
において、マスタ側のバネ要素演算器の出力する電流値
がスレーブ側のバネ要素演算器68の出力する電流値と
等しくなるようになっている。すなわち、マスタ側の入
力トルクは、δx=δsとなるとTM =TS0となり、δ
x≧|δs|の範囲において、スレーブ側の入力トルク
と等しくなる。
【0046】他方、マスタ側とスレーブ側とのダンパ要
素演算器72は、それぞれ速度演算器66の出力するマ
スタアーム速度とスレーブアーム速度とを受け取って、
粘性によるトルクに相当する指令と逆方向の電流値を求
め、ダンパ電流制限器80を介して加算器76に出力す
る。また、マスタ側とスレーブ側のマス要素演算器78
は、加速度演算器70の求めたアーム加速度に基づいて
慣性トルクに相当する指令と逆方向の電流値を求めて加
算器76に出力する。そして、加算器76は、バネ要素
演算器68、ダンパ要素演算器72、マス要素演算器7
8の求めた電流値を加え合わせて加算器84に送る。加
算器84は、上位コンピュータ30の電流指令部34の
出力した電流値に加算器76の出力した電流値を加算し
て駆動モータ12の駆動電流を求めて出力する。
【0047】図6は、他の実施例を示したものである。
この実施例においては、マスタ側およびスレーブ側の第
1バネ係数設定器42と第2バネ係数設定器44とに設
定されるバネ係数が異なっている。すなわち、δx<|
δs|の範囲におけるトルクを求めるための、スレーブ
側の第1バネ設定器42に設定されるバネ係数KS1は、
δx≧|δs|において用いられるバネ係数KS2より位
置偏差δxに対するトルク変化率が大きくなるようにし
てある。また、マスタ側のδx<|δs|の範囲で使用
するバネ係数KM1は、前記の実施例と同様にスレーブ側
のバネ係数KS1より小さく設定してある。しかし、マス
タ側のδx≧|δs|において使用するバネ係数K
M2は、スレーブ側のバネ係数KS2より大きくしてある。
【0048】これにより、スレーブアーム16Sが対象
物に接触していないδx<|δs|の範囲における空間
モードにおいては、前記したようにマスタ側がダイナミ
ックスの影響をあまり受けることがなく、操作性を向上
することができる。一方、スレーブアーム16Sが対象
物に接触してδx≧|δs|となる接触モードにおいて
は、マスタ側は、スレーブアーム16Sが対象物から受
ける反力以上のトルクを必要とし、オペレータはスレー
ブが接触した剛性以上の高剛性を感じることになる。こ
のため、スレーブマニプレータ10Sによって人の遠隔
診断や手術を行う場合等、スレーブマニプレータ10S
が取り扱う対象物が柔らかい場合に、対象物に必要以上
力が作用するのを防ぐことができる。すなわち、この実
施例によれば、バネ係数を変えるだけで、インピーダン
ス制御のような複雑な制御をすることなく、柔らかい対
象物を容易に遠隔操作することができる。
【0049】なお、図6(2)に示した±TMmは、バネ
要素によるトルクの調整できる限界を示したもので、こ
のトルクに相当する電流値が上位コンピュータ30のマ
スタ側第2電流制限部に設定される。また、図6(2)
の2点鎖線に示したように、マスタ側のバネ要素演算器
は、δx=δsとなったときにTM =TS0を出力し、δ
x>|δs|の場合に2点鎖線で示したKM2にを用いた
トルクを演算してそれに相当する電流値を出力するよう
にしてもよい。そして、前記実施例においては、第2バ
ネ係数設定器44にバネ係数KS2、KM2を設定した場合
について説明したが、これらのバネ係数(勾配)を有す
る位置偏差とトルクとの関係を示す直線の式として設定
してもよい。さらに、前記実施例においては、バネ係数
設定器42、44にそれぞれ1つずつのバネ係数を設定
する場合について説明したが、それぞれに複数のバネ係
数を設定し、バネ要素演算器68にバネ係数の選択信号
を与えて選択させるようにしてもよい。また、位置偏差
と入力トルクとを対応させたテーブルを設け、テーブル
から入力トルクを読み出すようにしてもよい。
【0050】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれ
ば、マスタの位置とスレーブの位置との偏差(位置偏
差)が設定値(基準位置偏差)より小さなスレーブが対
象物と接触していない空間モードの場合、偏差に応じた
マスタの入力トルクをスレーブの入力トルクより小さく
して、ダイナミックスによる影響を感じなくともよい不
感帯とすることにより、力帰還型やインピーダンス制御
のような複雑な制御を行うことなく操作性に優れた対称
型バイラテラルマスタスレーブマニプレータの制御を行
うことができる。しかも、力センサなどを必要としない
ところから、装置の構造の簡素化が図れ、信号線も少な
くできるため、低コストで信頼性の高い装置を得ること
ができる。
【0051】また、位置偏差が基準位置偏差より大きい
スレーブが対象物に接触している接触モードにおいて、
マスタの入力トルクをスレーブの入力トルクより大きく
したことにより、スレーブによる作業対象が例えば人体
などの柔らかなものである場合に、オペレータの受ける
力覚がスレーブが対象物から受ける反力より大きくな
り、スレーブが柔らかい対象物を潰すなどの操作ミスを
避けることができる。さらに、本発明においては、駆動
モータとして低慣性のコアレスDCサーボモータを採用
し、減速機として最も摩擦が少ないと考えられる遊星歯
車減速機を採用したことにより、慣性や粘性による影響
を低減できて操作性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係るマスタスレーブマニプレータ
の制御方法の説明図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るマスタスレーブマニ
プレータ装置の概略構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るマスタスレーブマニ
プレータ装置のスレーブ側制御ループのブロック図であ
る。
【図4】実施の形態に係るゲインテーブルの説明図とバ
ネ要素演算器の作用の説明図である。
【図5】マスタアームとスレーブアームとの動作を説明
する図である。
【図6】他の実施の形態に係るマスタスレーブマニプレ
ータの制御方法の説明図である。
【符号の説明】 10M マスタマニプレータ 10S スレーブマニプレータ 12M、12S 駆動モータ 14M、14S 遊星歯車減速機 16M マスタアーム 16S スレーブアーム 18M、18S、60 位置検出手段(ロータリエンコ
ーダ、カウンタ) 20、64 偏差演算手段(偏差演算部、偏差演算
器) 42 スレーブトルク変化率設定手段(第1
バネ係数設定器) 44 スレーブトルク変化率設定手段(第2
バネ係数設定器) 68 スレーブトルク演算手段(バネ要素演
算器) 42 スレーブトルク変化率設定手段(第1
バネ係数設定器) KS1 第1スレーブトルク変化率(バネ係
数) KS2 第2スレーブトルク変化率(バネ係
数) KM1 第1マスタトルク変化率(バネ係数) KM1 第2マスタトルク変化率(バネ係数)
フロントページの続き (72)発明者 前田 曜也 岡山県玉野市玉3丁目1番1号 三井造船 株式会社玉野事業所内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 オペレータが操作するマスタアームと、
    このマスタアームの動作に追従するスレーブアームとを
    有し、マスタアームの位置とスレーブアームの位置との
    偏差に応じてマスタアームの入力トルクを変えるととも
    に、スレーブアームの入力トルクを変えるマスタスレー
    ブマニプレータの制御方法において、前記偏差が設定値
    より小さい範囲の場合、前記偏差に応じたマスタアーム
    の入力トルクを、前記スレーブアームの入力トルクより
    小さくしたことを特徴とするマスタスレーブマニプレー
    タの制御方法。
  2. 【請求項2】 前記偏差に応じたマスタアームの入力ト
    ルクとスレーブアームの入力トルクとは、前記偏差が前
    記設定値以上のときに一致させたことを特徴とする請求
    項1に記載のマスタスレーブマニプレータの制御方法。
  3. 【請求項3】 前記偏差に応じた前記マスタアームの入
    力トルクは、前記偏差が前記設定値以上のときに、前記
    スレーブアームの前記偏差に応じた入力トルクより大き
    くしたことを特徴とする請求項1に記載のマスタスレー
    ブマニプレータの制御方法。
  4. 【請求項4】 前記偏差に応じた前記スレーブアームの
    入力トルクは、前記偏差が前記設定値以上となったとき
    の偏差に対する入力トルクの変化率を、前記偏差が前記
    設定値より小さいときの変化率より小さくしたことを特
    徴とする請求項3に記載のマスタスレーブマニプレータ
    の制御方法。
  5. 【請求項5】 オペレータが操作するマスタアームと、
    このマスタアームの動作に追従するスレーブアームと、
    各アームのそれぞれに設けられ、減速機を介して各アー
    ムを駆動する駆動モータとを有するマスタスレーブマニ
    プレータ装置において、 前記マスタアームの位置を求めるマスタ位置検出手段
    と、 前記スレーブアームの位置を求めるスレーブ位置検出手
    段と、 これら各位置検出手段の検出信号に基づいて、マスタア
    ームとスレーブアームとの位置偏差を求める偏差演算手
    段と、 スレーブアームが対象物に接触したか否かの判断基準と
    なる基準位置偏差を設定する基準値設定手段と、 前記偏差演算手段が求めた位置偏差に応じた前記スレー
    ブアームマの入力トルクを演算するためのスレーブトル
    ク変化率が設定されるスレーブトルク変化率設定手段
    と、 前記偏差演算手段の求めた位置偏差が前記基準値設定手
    段に設定された基準位置偏差より小さい範囲における位
    置偏差に対する前記マスタアームの入力トルクを求める
    ためのマスタトルク変化率が前記スレーブトルク変化率
    よい小さく設定されるマスタトルク変化率設定手段と、 前記偏差演算手段の求めた位置偏差と前記マスタトルク
    変化率設定手段に設定してあるマスタトルク変化率とか
    ら、前記位置偏差に応じた前記マスタアームの入力トル
    クを求めるマスタトルク演算手段と、 前記位置偏差演算手段の求めた位置偏差と前記スレーブ
    トルク変化率設定手段に設定されたスレーブトルク変化
    率とから、前記位置偏差に応じた前記スレーブアームの
    入力トルクを求めるスレーブトルク演算部と、 を有することを特徴とするマスタスレーブマニプレータ
    装置。
  6. 【請求項6】 前記マスタトルク変化率は、前記偏差演
    算手段の求めた位置偏差が前記基準位置偏差より小さい
    範囲におけるトルク変化率が前記スレーブトルク変化率
    より小さい第1マスタトルク変化率と、前記位置偏差が
    前記基準位置偏差以上におけるトルク変化率が前記スレ
    ーブトルク変化率と一致している第2マスタトルク変化
    率とからなり、 前記マスタトルク演算手段は、前記位置偏差が前記基準
    位置偏差より小さい範囲の場合、前記第1マスタトルク
    変化率に基づいて前記スレーブトルク演算手段の求めた
    スレーブ入力トルクより小さなマスタ入力トルクを求め
    るとともに、前記位置偏差が前記基準位置偏差以上の場
    合に、前記第2マスタトルク変化率に基づいて、前記ス
    レーブトルク演算手段の求めたスレーブ入力トルクと等
    しいマスタ入力トルクを演算する、 ことを特徴とする請求項5に記載のマスタスレーブマニ
    プレータ装置。
  7. 【請求項7】 前記スレーブトルク変化率は、前記位置
    偏差が前記基準位置偏差より小さい範囲における位置偏
    差に応じたスレーブ入力トルクを演算するための第1ス
    レーブトルク変化率と、前記位置偏差が前記基準位置偏
    差以上における位置偏差に応じたスレーブ入力トルクを
    演算するための第2スレーブトルク変化率とからなり、
    第2スレーブトルク変化率は第1スレーブトルク変化率
    より小さく設定してあり、 前記マスタトルク変化率は、前記位置偏差が前記基準位
    置偏差より小さい範囲における位置偏差に応じたマスタ
    入力トルクを演算するための第1マスタトルク変化率
    と、前記位置偏差が前記基準位置偏差以上における位置
    偏差に応じたマスタ入力トルクを演算するための第2マ
    スタトルク変化率とからなり、前記第1マスタトルク変
    化率は前記第1スレーブトルク変化率より小さく設定さ
    れ、前記第2マスタトルク変化率は前記第2スレーブト
    ルク変化率より大きく設定されているとともに、 前記マスタトルク演算手段は、前記位置偏差が前記基準
    位置偏差より小さい範囲のときに、前記第1マスタトル
    ク変化率に基づいて前記スレーブトルク演算手段の求め
    たスレーブ入力トルクより小さなマスタ入力トルクを求
    め、前記位置偏差が前記基準位置偏差以上のときに、前
    記第2マスタトルク変化率に基づいて、前記スレーブト
    ルク演算手段の求めたスレーブ入力トルクより大きなマ
    スタ入力トルクを演算する、 ことを特徴とする請求項5に記載のマスタスレーブマニ
    プレータ装置。
  8. 【請求項8】 駆動モータはコアレスDCサーボモータ
    からなり、前記減速機は遊星歯車減速機であることを特
    徴とする請求項5ないし7のいずれか1に記載のマスタ
    スレーブマニプレータ装置。
JP19976696A 1996-07-10 1996-07-10 マスタスレーブマニプレータの制御方法および装置 Pending JPH1029177A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP19976696A JPH1029177A (ja) 1996-07-10 1996-07-10 マスタスレーブマニプレータの制御方法および装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP19976696A JPH1029177A (ja) 1996-07-10 1996-07-10 マスタスレーブマニプレータの制御方法および装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH1029177A true JPH1029177A (ja) 1998-02-03

Family

ID=16413269

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP19976696A Pending JPH1029177A (ja) 1996-07-10 1996-07-10 マスタスレーブマニプレータの制御方法および装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH1029177A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002307336A (ja) * 2001-04-17 2002-10-23 Keio Gijuku マスタスレーブ装置、制御方法及びコンピュータープログラム
KR20150007020A (ko) * 2013-07-10 2015-01-20 삼성전자주식회사 수술 로봇 시스템 및 그 제어 방법
KR20150027618A (ko) * 2013-09-04 2015-03-12 삼성전자주식회사 수술 로봇 및 수술 로봇 제어 방법
JP2021091020A (ja) * 2019-12-09 2021-06-17 株式会社デンソーウェーブ 主従ロボットの制御装置
JP7335026B1 (ja) * 2022-08-23 2023-08-29 リバーフィールド株式会社 手術ロボット、及び手術ロボットの制御ユニット

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002307336A (ja) * 2001-04-17 2002-10-23 Keio Gijuku マスタスレーブ装置、制御方法及びコンピュータープログラム
KR20150007020A (ko) * 2013-07-10 2015-01-20 삼성전자주식회사 수술 로봇 시스템 및 그 제어 방법
KR20150027618A (ko) * 2013-09-04 2015-03-12 삼성전자주식회사 수술 로봇 및 수술 로봇 제어 방법
JP2021091020A (ja) * 2019-12-09 2021-06-17 株式会社デンソーウェーブ 主従ロボットの制御装置
JP7335026B1 (ja) * 2022-08-23 2023-08-29 リバーフィールド株式会社 手術ロボット、及び手術ロボットの制御ユニット
WO2024042623A1 (ja) * 2022-08-23 2024-02-29 リバーフィールド株式会社 手術ロボット、及び手術ロボットの制御ユニット

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US4661032A (en) Bilateral master-slave manipulator control device
JPH0144476B2 (ja)
JPH0443744B2 (ja)
JPH1029177A (ja) マスタスレーブマニプレータの制御方法および装置
JP4524729B2 (ja) 遠隔操縦ロボットの制御装置
JP3080791B2 (ja) マニプレータの直接教示用補助装置
JP2624830B2 (ja) バイラテラルマスタスレーブマニピュレータ
JPH0683453A (ja) ロボット関節の負荷補償制御方法
JP2645866B2 (ja) マニピュレータの制御方法および装置
JP2552977B2 (ja) 力フィードバック型多軸操作装置
JP2507449B2 (ja) 冗長関節を有するマスタ・スレ―ブマニピュレ―タ及び該マニピュレ―タの制御方法
JPH0428507B2 (ja)
JP4513071B2 (ja) ロボットの制御装置
JP3063863B2 (ja) マニピュレ−タの操作装置
JPH0938877A (ja) ダイレクトティーチング制御装置
JPS60118478A (ja) 関節形ロボツトの位置制御装置
JP2000084878A (ja) ロボットの制御装置
JPH02106288A (ja) マスタマニピュレータ
JPH0655467A (ja) マスタスレーブ運動体制御装置
JPH1142577A (ja) ロボットの制御方法および装置
JPH0239805B2 (ja)
JPH0378643B2 (ja)
JPH02218566A (ja) 操作形マニピュレータ
JP2001022446A (ja) サーボ制御装置
JPH08229858A (ja) マスタスレーブマニピュレータの制御方法およびその装置

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20051017

A131 Notification of reasons for refusal

Effective date: 20051207

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

A02 Decision of refusal

Effective date: 20060405

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02