JPH10272541A - 冷延性とリジング性の優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents

冷延性とリジング性の優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法

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JPH10272541A
JPH10272541A JP8156897A JP8156897A JPH10272541A JP H10272541 A JPH10272541 A JP H10272541A JP 8156897 A JP8156897 A JP 8156897A JP 8156897 A JP8156897 A JP 8156897A JP H10272541 A JPH10272541 A JP H10272541A
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less
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ferritic stainless
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JP8156897A
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Akio Yamamoto
章夫 山本
Shigeru Maeda
滋 前田
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Nippon Steel Corp
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低コストで冷延性とリジング性の優れたフェ
ライト系ステンレス鋼板を製造する方法を提供する。 【解決手段】 重量%で、Cr:10%以上23%以下
を含むフェライト系ステンレス鋼板を連続鋳造、熱間圧
延、冷間圧延および焼鈍を含む工程で製造する方法にお
いて、最端部から少なくとも10mm以上多くとも50mm
以内の端部が(1)式で示されるγポテンシャルの値が
23%以下であり、幅方向中心部の(1)式で示される
γポテンシャルの値が28%以上である熱延鋼板を冷延
する。 γp =189+470×[%N]+420×[%C]+23×[%Ni] +7×[%Mn]+9×[%Cu]−11.5×[%Cr]−11.5 ×[%Si]−52×[%酸可溶Al]−12×[%Mo]・・・・・・(1) 【効果】 冷延による耳割れ等の歩留りの低下を抑制し
つつ、リジング性を改善したフェライト系ステンレス鋼
板を低コストで製造できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、SUS430鋼を
代表とするフェライト系ステンレス鋼板の製造方法に関
するものである。SUS430鋼をはじめとするフェラ
イト系ステンレス鋼板は、冷延を行なうと表面に微細な
凹凸が生じ、表面の平滑性を損なうことが認められてい
る。また、薄鋼板にプレス加工や引張加工を加えると、
圧延方向に平行な凹凸の皺が生じ、やはり表面の美観を
損ねることが認められている。これらの凹凸は一般にロ
ーピングやリジング、リビング(以降、リジングと総称
する。)と呼ばれており、SUS304鋼をはじめとす
るオーステナイト系ステンレス鋼板にはないフェライト
系ステンレス鋼板の致命的欠陥と考えられている。本発
明は、このようなリジングが極めて軽微で冷延性に優れ
たフェライト系ステンレス鋼板の製造方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】フェライト系ステンレス鋼板は、澄んだ
色調と冷延により高い平滑性を具現化しやすいことか
ら、厨房機器をはじめとする家庭用品や建材、家電、自
動車の部品に広く使用されている。しかし、フェライト
系ステンレス薄鋼板は冷間圧延を行なうと表面にRMS
で1μm以下の凹凸が生じ、平滑性を損ねることが認め
られていた。また、プレス成形や引張加工を加えると圧
延方向に平行な凹凸の皺が発生し、甚だしい場合は波鉄
板状に変形することが認められていた。これらは、色調
や平滑性を損ね、それを回復するための研磨処理を困難
にするだけでなく、部品によっては密着性を低下させる
など機能上の問題にも影響を及ぼすことがあった。
【0003】リジングの原因は、必ずしも明確ではない
が、概ね次の様に考えられている。すなわち、鋳造時の
ひとつの粗大結晶粒は、熱延や焼鈍などの加工熱処理を
施され再結晶微細化する。しかし、微細化した粒の大半
がほぼ同様の結晶方位を有しているために、集合組織的
にはもとの粗大粒に相当する疑似的粗大粒を形成してい
るとみなす必要があるとされる。従って、超粗大粒の薄
鋼板と同様の変形挙動をすることとなり、それぞれの疑
似的粗大粒の変形挙動の違いが凹凸となって表面に表れ
るのである。
【0004】従来のリジング対策は、この推定機構に基
づいて、概ね次の3種類の考え方の基に具体策が実行さ
れてきた。もちろん多くの場合、それぞれを単独で実施
するのではなく、重畳することで効果の増大を図ってき
た。 疑似的粗大粒のもととなる凝固結晶粒の微細化 疑似的粗大粒の集合組織的なランダム化 疑似的粗大粒の分解
【0005】の考え方は、疑似的粗大粒の微細化に通
じるものであり、例えば特開昭50−123294号公
報に記載されているように、柱状晶の等軸晶化を狙った
電磁攪拌、凝固結晶粒の微細化を狙った凝固結晶核を導
入や鋳造温度の低下による急激な凝固が具体的な方策と
して実施されてきた。の考え方では、製造工程の中で
再結晶を促進させ(特開昭57−70234号公報)、
さらに複数回繰り返すべく熱間圧延温度(加熱、仕上
げ、捲取り温度など)、圧下率、焼鈍温度などの適正化
や、冷延再結晶回数の増加を狙った冷延時の中間焼鈍工
程の追加、熱間圧延時の伸び変形の他に幅広がり変形を
加えることを狙った粒内析出物やγ相の利用や熱延潤滑
の適正化が挙げられる。では、変態の導入を意図した
成分変更(特開平6−81036号公報)や特殊な熱工
程が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、の方法は、
鋳造時だけで対応が取れ次工程以降との干渉が少ないな
どの利点があるものの、この考え方を促進しようとする
とノズル詰まりやブレークアウトなどの鋳造障害を起こ
しやすくなるなどの欠点があった。
【0007】の方法は、圧延工程以降で実施可能な方
法であるので、鋳片の状況に応じて対応しやすい利点は
あるが、多くの工程が複雑に影響し合うなど製造工程の
設計が極めて困難な方法である。例えば、再結晶回数を
増加しようとすると工程が増えざるを得ないし、一つの
工程での再結晶を促進させようとすると他工程での再結
晶が不十分となったり、スラブの厚さや最終製品厚さに
よって最適工程が異なることから工程設計に自由度がな
くなる上に、スラブ毎に工程を変更さざるを得ないよう
な状況が生ずる。しかも、再結晶だけでは集合組織的な
ランダム化は不十分で、析出物の利用や圧下方法の工夫
が必要など、成分的にも製造技術的にも複雑になり、材
料の振り回しができないなど、隠れたコスト上昇要因が
潜在しているなど、多くの欠点を有していた。
【0008】の方法は、炭素鋼と同様に変態を利用す
ることから、鋳造組織の破壊には極めて有効であるが、
成分や熱工程が限定され、しかもフェライト系ステンレ
ス鋼板では最も一般的に用いられるSUS430鋼には
適用できないことから、特殊な鋼種にのみ適用可能な解
決方法である。しかも、変態相は一般に硬質であること
から、冷延時に耳割れ等の疵の発生を招きやすくしかも
延性や加工性などの機械的性質の劣化が免れなかった。
【0009】これに対して、本発明者らは熱間圧延での
リジング性改善効果の小さい板厚中心部はγポテンシャ
ルを高めγ相近辺に剪断的な歪を導入し、冷間圧延によ
って耳割れ等の疵を発生しやすい端部はγポテンシャル
を下げることで、冷延性とリジング性を改善したフェラ
イト系ステンレス鋼を発明した。
【0010】板幅中心部と端部に成分差を設けるには、
圧延法や鋳造法によるクラッド鋼板で達成することは可
能であるが、圧延法ではスラブの組み立てや界面の精整
処理には大きなコストが不可避であるし、鋳造法でも鋳
型内部の特殊な作業や界面の精整処理あるいは2種ノズ
ルのような特殊な設備が必要であり、やはり大きなコス
トが不可避である。
【0011】本発明は、このような状況に鑑み、作業工
程が簡略で特殊な設備が不要であり、その結果製造コス
トの低い冷延性とリジング性を改善したフェライト系ス
テンレス鋼板の製造方法を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】板幅中心部と端部に成分
差を設ける方法には、前述したような固相や液相でのク
ラッド化による方法がある。しかし、本発明に掛かる鋼
の場合、板幅中心部と端部の成分差はわずかなγポテン
シャルの差であるので、そのための元素の濃度差は必ず
しも大きい必要はない。わずかな濃度差を設けるために
は、必ずしも従来技術として確立されているクラッド化
による方法を取る必要はない。例えば、板圧延後の脱炭
やAlなどの拡散浸透処理によっても表層のγポテンシ
ャル低下は可能である。
【0013】ところが、端部の延性加工性を確保し、な
おかつ中心部のγポテンシャルを高くするためには、固
相での拡散が必要な処理では極めて長時間を要するだけ
でなく、濃度勾配が生ずることとなって、適切な材料の
造り込みができない。
【0014】そこで本発明者らは液相での攪拌を含めた
拡散を活用することで、板幅中心部にのみγポテンシャ
ル増加元素を注入することを想起した。すなわち、連続
鋳造中にγポテンシャルを低く保つ製品板表層部分の厚
さに相当する鋳片表層部が凝固した部位に、モールド上
部から溶鋼の潜熱で溶融する被覆材でγポテンシャル増
加元素を含む物質を包んだワイヤを注入したり、粒子を
打込むことを想起した。液相部分ではγポテンシャル増
加元素を含む物質が溶解し、直ちに液相部全体すなわち
鋳片の中心層に拡散する。しかし、固相部分には固相内
の拡散速度に応じた拡散しかしない。当然のことながら
固相内拡散は液相内拡散に比べて圧倒的に遅いことか
ら、事実上端部の固相部分にはγポテンシャル増加元素
は拡散せず低いγポテンシャルのまま凝固完了すること
になる。
【0015】この方法によれば、特殊な設備や工程を必
要とせず、鋳片の表層と内層に濃度差を設けることが可
能となる。γポテンシャルを増加させない表層部分の厚
さは、溶鋼で溶融するワイヤの被覆材の種類と厚さを変
えることで制御可能である。
【0016】本発明者らは、以上の知見から、鋳造時に
ワイヤにより鋳片幅中心部のγポテンシャルを増加させ
ることで熱問圧延時に板幅中心部にγ相を多量に存在さ
せリジング性を改善するとともに、逆に板幅端部はγ相
を低減して延性加工性を向上して耳割れ等の発生を抑制
した冷延性とリジング性の優れたフェライト系ステンレ
ス鋼板の製造方法を発明した。すなわち、本発明は、 (1)連続鋳造、熱間圧延、冷間圧延および焼鈍を含む工
程で、重量%で、Cr:10%以上23%以下を含むフ
ェライト系ステンレス鋼板を製造する方法において、最
端部から少なくとも10mm以上多くとも50mm以内の端
部が(1)式で示されるγポテンシャルの値が23%以
下であり、幅方向中心部の(1)式で示されるγポテン
シャルの値が28%以上である熱延鋼板を冷延すること
を特徴とする冷延性とリジング性の優れたフェライト系
ステンレス鋼板の製造方法。 γp =189+470×[%N]+420×[%C]+23×[%Ni] +7×[%Mn]+9×[%Cu]−11.5×[%Cr]−11.5 ×[%Si]−52×[%酸可溶Al]−12×[%Mo]・・・・・・(1)
【0017】(2)母溶鋼を重量%で、Cr:10%以上
23%以下を含み、(1)式で示されるγポテンシャル
の値が23%以下のフェライト系ステンレス鋼とし、次
いで連続鋳造中のモールド内またはモールド直下の中心
未凝固部分に、γポテンシャル増加元素を含むワイヤを
挿入し、未凝固部分の潜熱により挿入したワイヤを溶融
固溶させ鋳片内層部の(1)式で示されるγポテンシャ
ルの値を母溶鋼の値より5%以上増加させたスラブを再
加熱し熱間圧延することを特徴とする前記(1) 記載の冷
延性とリジング性の優れたフェライト系ステンレス鋼板
の製造方法。 γp =189+470×[%N]+420×[%C]+23×[%Ni] +7×[%Mn]+9×[%Cu]−11.5×[%Cr]−11.5 ×[%Si]−52×[%酸可溶Al]−12×[%Mo]・・・・・・(1)
【0018】(3)母溶鋼を重量%で、Cr:10%以上
23%以下を含み、(1)式で示されるγポテンシャル
の値が23%以下のフェライト系ステンレス鋼とし、次
いで連続鋳造中のモールド内に、γポテンシャル増加元
素を含む粒子を打込み、未凝固部分の潜熱により打込ん
だ粒子を溶融固溶させ鋳片内層部の(1)式で示される
γポテンシャルの値を母溶鋼の値より5%以上増加させ
たスラブを再加熱し熱間圧延することを特徴とする前記
(1) 記載の冷延性とリジング性の優れたフェライト系ス
テンレス鋼板の製造方法。 γp =189+470×[%N]+420×[%C]+23×[%Ni] +7×[%Mn]+9×[%Cu]−11.5×[%Cr]−11.5 ×[%Si]−52×[%酸可溶Al]−12×[%Mo]・・・・・・(1)
【0019】(4)(1)式で示されるγポテンシャルの
値を母溶鋼の値より増加させる鋳片幅中心部は、鋳片の
端部から10mm以上50mm以下を境界とする幅中心部で
あり、かつ増加後の(1)式で示されるγポテンシャル
の値が28%以上60%以下であることを特徴とする前
記(2) または(3) 記載の冷延性とリジング性の優れたフ
ェライト系ステンレス鋼板の製造方法。 γp =189+470×[%N]+420×[%C]+23×[%Ni] +7×[%Mn]+9×[%Cu]−11.5×[%Cr]−11.5 ×[%Si]−52×[%酸可溶Al]−12×[%Mo]・・・・・・(1)
【0020】(5)母溶鋼が重量%で、 C :0.08%以下、 Si:0.05%〜1.0%、 Mn:0.05%〜1.0%、 Cr:10%〜23%、 酸可溶Al:0.001%〜0.2%、N :0.06%以下 および残部Feと不可避不純物であることを特徴とする
前記(1) ,(2) ,(3) または(4) のいずれか1項に記載
の冷延性とリジング性の優れたフェライト系ステンレス
鋼板の製造方法。
【0021】本発明は基本成分がFe,Crであるいわ
ゆるSUS430鋼に準ずるフェライト系ステンレス鋼
板だけでなく、耐食性向上を目的としてMoやCu、N
iを添加したフェライト系ステンレス鋼板にも適用が可
能である。そこで、このMo,Cu,Ni含有フェライ
ト系ステンレス鋼板に適用した方法も実施態様として発
明した。すなわち、 (6)母溶鋼が重量%で、 C :0.08%以下、 Si:0.05%〜1.0%、 Mn:0.05%〜1.0%、 Cr:10%〜23%、 酸可溶Al:0.001%〜0.2%、N :0.06%以下、 さらに、 Ni:2%以下、 Mo:3%以下、 Cu:1%以下の内1種または2種以上 を含み残部Feと不可避不純物であることを特徴とする
前記(1) ,(2) ,(3) または(4) のいずれか1項に記載
の冷延性とリジング性の優れたフェライト系ステンレス
鋼板の製造方法。
【0022】
【発明の実施の形態】次に、本発明の限定条件を示す。
Crは、10%未満ではステンレス鋼板としての基本的
な耐食性が不足するため、10%を上限とした。また、
23%を超えると延性や加工性が低下しリジングの問題
となる加工用途に用いられなくなるため23%を上限と
した。
【0023】本発明の製造方法において、熱延鋼板の端
部のγポテンシャルの値は低ければ低いほど延性や加工
性向上に有効であり、しかも他の品質特性には特に問題
を生じないため、特に下限は限定しない。しかし、23
%を超えると板幅中心部のγポテンシャルを高くした場
合延性の低下がみられるので23%を上限とした。一
方、幅方向中心部のγポテンシャルは、28%未満では
リジング改善効果が認められないので28%を下限とし
た。逆に高ければ高いほどリジング性が改善するので上
限は限定しない。
【0024】γポテンシャルの高い熱延板幅中心部と増
加させない端部との境界は、熱延板の端部から10mm未
満では、冷延時の耳割れ等の疵減少に大きな効果が認め
られず、50mmを超えるとその部分の機械的特性の違い
がその後の加工や品質に大きく悪影響を及ぼす可能性が
生ずる。
【0025】γポテンシャル増加元素を含むワイヤの挿
入や粒子の打込み後の固溶により増加させるスラブ幅中
心部のγポテンシャルの上昇幅は、5%未満ではリジン
グ改善効果が認められないので5%を下限とした。逆
に、大きければ大きいほど効果が大きいので上限は限定
しない。
【0026】第4の発明に於いて、スラブ幅中心部のγ
ポテンシャルの上昇幅が5%以上であればリジング改善
効果は認められるものの、スラブ幅中心部のγポテンシ
ャルの値が28%未満ではそのレベルが十分ではないの
で28%を下限とした。一方、その値は高いほどリジン
グ性が良好となるが、60%を超えると相応にリジング
性は向上するものの、材料としての延性や加工性が劣化
することから60%を上限とした。
【0027】また第4の発明に於いて、母溶鋼よりγポ
テンシャルを増加させる鋳片幅中心部と増加させない端
部との境界は、鋳片の端部から10mmないし50mmを超
えると熱延板の低γポテンシャルの幅を10mm以上50
mm以下にすることができないので、10mm以上50mm以
下と限定した。
【0028】第5および第6の発明の実施態様におい
て、Cは平均値で0.08%を超えると延性加工性が低
下するため、0.08%を上限とした。
【0029】Siは、0.05%未満では脱酸が不十分
となって非金属介在物が多量に残留する危険性がある。
他の方法で脱酸を確実に実施することは可能であるの
で、その場合には0.05%未満にしても問題はない
が、そのレベルまで低減するコストが掛かることから、
0.05%を下限とした。一方、1.0%を超えると硬
質化し、最終製品での加工性が劣化するだけでなく、熱
間加工性も劣化するため、1.0%を上限とした。
【0030】Mnは、0.05%未満では不可避不純物
であるSの固定が不十分となり表面疵の原因となるため
0.05%を下限とした。しかし、1.0%を超えると
表層部のγポテンシャルを低い値に確保することが困難
となり、γポテンシャル低下元素(Cr,Si,Al,
Mo)の多量添加が必要となって延性加工性の大きな低
下を招くために1.0%を上限とした。
【0031】酸可溶Alは0.001%未満では脱酸が
不十分となり、非金属介在物が多量に残留し加工性耐食
性を劣化させるため0.001%を下限とした。しか
し、0.2%を超えると、延性が劣化するために0.2
%を上限とした。
【0032】Nは、0.06%を超えると表層部のγポ
テンシャルを低い値に確保することが困難となり、γポ
テンシャル低下元素(Cr,Si,Al,Mo)の多量
添加が必要となって延性加工性の大きな低下を招くだけ
でなく、Cr窒化物の析出が多くなって加工性耐食性を
劣化させるために0.06%を上限とした。
【0033】第6の発明において、耐食性を確保するた
めに添加し得るNiは、γポテンシャルを高くする元素
であるが、耐食性が主として表面側で効果を発揮するこ
とを考えると表面部分に添加する必要がある。従って、
多量に添加すると表層部のγポテンシャルを高くするこ
ととなり、γポテンシャル低下元素(Cr,Si,A
l,Mo)の多量添加が必要となって延性加工性の大き
な低下を招くために、2.0%を上限とした。
【0034】Moは、逆にγポテンシャルを低下させる
元素であるが、多量に添加するといずれも硬質化し延性
を劣化させるために、3%を上限とした。
【0035】Cuは、Niと同様にγポテンシャルを高
くする元素であるが、耐食性が主として表面側で効果を
発揮することを考えると表面部分に添加する必要があ
る。従って、多量に添加すると表層部のγポテンシャル
を高くすることとなり、γポテンシャル低下元素(C
r,Si,Al,Mo)の多量添加が必要となって延性
加工性の大きな低下を招くために、1.0%を上限とし
た。
【0036】本発明方法による鋼は、端部と板幅中心部
で異なる機構で集合組織的なランダム化が起こり、リジ
ングが改善される。端部は特に成分調整を行ない組織を
制御しなくとも、熱間圧延時の剪断変形(幅拡がりな
ど)により十分に集合組織的なランダム化が行われ、リ
ジング性は向上する。一方、板幅中心部は、圧延による
大きな剪断変形が期待できないので、圧延中のα相中に
硬質なγ相を比較的多量に存在させ、その硬度の差を利
用してミクロ的な剪断変形を加えることにより、集合組
織的なランダム化が行われ、リジング性は向上する。
【0037】このような機構によって、板の幅方向の成
分差を付けることにより、冷延性とリジング性の優れた
フェライト系ステンレス鋼板が製造可能となった。
【0038】
【実施例】表1に示した化学組成のフェライト系ステン
レス溶鋼を連続鋳造する際、SUS304鋼製の鋼管に
種々のγポテンシャル増加物質を詰めたワイヤをモール
ド上部から挿入して、あるいは種々のγポテンシャル増
加金属粒子をモールド上部から打込んで、190mm厚さ
の鋳片を製造した。この鋳片は通常の方法により4mmま
で熱間圧延し、熱延板焼鈍(Hot−AP)を施した
後、あるいは熱延板焼鈍を実施することなく脱スケール
を行ない、0.5mmまで冷延し、925℃−5min の最
終焼鈍を施した。リジング性は、最終冷延焼鈍板からJ
IS−5号試験片を切出して20%圧延方向に引張り、
圧延方向と直角方向に生じた縞状のうねりの高さで評価
した。高さ20μm以下を良と判定した。
【0039】表2に、連鋳スラブおよび熱延板の幅方向
の成分差の状況と冷延時の疵発生状況、冷延焼鈍板のリ
ジング性の値を合せて示した。なお、γポテンシャル
(γp)は前記(1)式に基づいて計算した。本発明方
法による冷延鋼板は、冷延時に耳割れ等の疵発生はな
く、リジング高さはいずれも20μm未満であった。
【0040】しかし、No.8,10の比較方法のよう
に、幅中心部のγポテンシャルの増加量が5%未満であ
ったり、板幅方向に成分差のない鋼板の場合、リジング
性が良いと耳割れを生じたり、冷延性が良いとリジング
改善効果が小さく、冷延性とリジング性の両立ができな
かった。
【0041】No.9は、粒子打込み深さが浅く幅方向
に広がったため端部の低いγポテンシャル部分がわずか
しか残存せず、リジング性の改善は認められたが、冷延
で端部が耳割れを起こした。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【発明の効果】本発明の方法により、冷延性とリジング
性の両立したフェライト系ステンレス鋼板の製造が可能
になった。従来、リジング性の良好な鋼板は冷延時に耳
割れを生じて歩留りを低下させたり、それを改善するた
めに複雑な焼鈍を実施せざるを得ず。強加工用途へのフ
ェライト系ステンレス鋼の適用が困難であった。本発明
方法による鋼板は、リジング性が良好で冷延時の疵発生
がなく歩留りが高いため、従来は耐食性からは必要ない
にも関わらずNiの多量に含有するオーステナイト系ス
テンレス鋼を用いざるを得なかった用途に適用すること
が可能となった。本発明の方法の効果は用途拡大に貢献
するとともに、枯渇の懸念が残るNiの温存など、地球
資源的にも寄与する。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22C 38/18 C22C 38/18 38/44 38/44

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、Cr:10%以上23%以下
    を含むフェライト系ステンレス鋼板を、連続鋳造、熱間
    圧延、冷間圧延および焼鈍を含む工程で製造する方法に
    おいて、最端部から少なくとも10mm以上多くとも50
    mm以内の端部が(1)式で示されるγポテンシャルの値
    が23%以下であり、幅方向中心部の(1)式で示され
    るγポテンシャルの値が28%以上である熱延鋼板を冷
    延することを特徴とする冷延性とリジング性の優れたフ
    ェライト系ステンレス鋼板の製造方法。 γp =189+470×[%N]+420×[%C]+23×[%Ni] +7×[%Mn]+9×[%Cu]−11.5×[%Cr]−11.5 ×[%Si]−52×[%酸可溶Al]−12×[%Mo]・・・・・・(1)
  2. 【請求項2】 母溶鋼を重量%で、Cr:10%以上2
    3%以下を含み、(1)式で示されるγポテンシャルの
    値が23%以下のフェライト系ステンレス鋼とし、次い
    で連続鋳造中のモールド内またはモールド直下の中心未
    凝固部分に、γポテンシャル増加元素を含むワイヤを挿
    入し、未凝固部分の潜熱により挿入したワイヤを溶融固
    溶させ鋳片内層部の(1)式で示されるγポテンシャル
    の値を母溶鋼の値より5%以上増加させたスラブを再加
    熱し熱間圧延することを特徴とする請求項1記載の冷延
    性とリジング性の優れたフェライト系ステンレス鋼板の
    製造方法。 γp =189+470×[%N]+420×[%C]+23×[%Ni] +7×[%Mn]+9×[%Cu]−11.5×[%Cr]−11.5 ×[%Si]−52×[%酸可溶Al]−12×[%Mo]・・・・・・(1)
  3. 【請求項3】 母溶鋼を重量%で、Cr:10%以上2
    3%以下を含み、(1)式で示されるγポテンシャルの
    値が23%以下のフェライト系ステンレス鋼とし、次い
    で連続鋳造中のモールド内に、γポテンシャル増加元素
    を含む粒子を打込み、未凝固部分の潜熱により打込んだ
    粒子を溶融固溶させ鋳片内層部の(1)式で示されるγ
    ポテンシャルの値を母溶鋼の値より5%以上増加させた
    スラブを再加熱し熱間圧延することを特徴とする請求項
    1記載の冷延性とリジング性の優れたフェライト系ステ
    ンレス鋼板の製造方法。 γp =189+470×[%N]+420×[%C]+23×[%Ni] +7×[%Mn]+9×[%Cu]−11.5×[%Cr]−11.5 ×[%Si]−52×[%酸可溶Al]−12×[%Mo]・・・・・・(1)
  4. 【請求項4】 (1)式で示されるγポテンシャルの値
    を母溶鋼の値より増加させる鋳片幅中心部は、鋳片の端
    部から10mm以上50mm以下を境界とする幅中心部であ
    り、かつ増加後の(1)式で示されるγポテンシャルの
    値が28%以上60%以下であることを特徴とする請求
    項2または3記載の冷延性とリジング性の優れたフェラ
    イト系ステンレス鋼板の製造方法。 γp =189+470×[%N]+420×[%C]+23×[%Ni] +7×[%Mn]+9×[%Cu]−11.5×[%Cr]−11.5 ×[%Si]−52×[%酸可溶Al]−12×[%Mo]・・・・・・(1)
  5. 【請求項5】 母溶鋼が重量%で、 C :0.08%以下、 Si:0.05%〜1.0%、 Mn:0.05%〜1.0%、 Cr:10%〜23%、 酸可溶Al:0.001%〜0.2%、N :0.06%以下 および残部Feと不可避不純物であることを特徴とする
    請求項1,2,3または4のいずれかに記載の冷延性と
    リジング性の優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造
    方法。
  6. 【請求項6】 母溶鋼が重量%で、 C :0.08%以下、 Si:0.05%〜1.0%、 Mn:0.05%〜1.0%、 Cr:10%〜23%、 酸可溶Al:0.001%〜0.2%、N :0.06%以下、 さらに、 Ni:2%以下、 Mo:3%以下、 Cu:1%以下の内1種または2種以上 を含み残部Feと不可避不純物であることを特徴とする
    請求項1,2,3または4いずれかに記載の冷延性とリ
    ジング性の優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104550791A (zh) * 2014-12-16 2015-04-29 张家港浦项不锈钢有限公司 铁素体不锈钢连铸方法

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