JPH1046293A - 延性とリジング性の優れたフェライト系ステンレス鋼板 - Google Patents

延性とリジング性の優れたフェライト系ステンレス鋼板

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JPH1046293A
JPH1046293A JP19814296A JP19814296A JPH1046293A JP H1046293 A JPH1046293 A JP H1046293A JP 19814296 A JP19814296 A JP 19814296A JP 19814296 A JP19814296 A JP 19814296A JP H1046293 A JPH1046293 A JP H1046293A
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ductility
steel sheet
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JP19814296A
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Akio Yamamoto
章夫 山本
Shigeru Maeda
滋 前田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 延性とリジング性の優れたフェライト系ステ
ンレス鋼板を提供する。 【構成】 少なくともCrを重量%で10%以上23%以下を
含むフェライト系ステンレス鋼板において、鋼板の表面
から少なくとも全板厚の20%の深さまでの表層部のγポ
テンシャルが23%以下であり、かつ表面から全板厚の30
%の深さ以上の内層部のγポテンシャルが28%以上60%
以下であるようにする。ただし、γp = 189+ 470×[%
N]+ 420×[%C]+23×[%Ni] + 7×[%Mn] + 9×[%Cu]
−11.5×[%Cr] −11.5×[%Si] −52×[%酸可溶Al] −12
×[%Mo] 【効果】延性加工性を確保しつつリジング性を改善した
フェライト系ステンレス鋼板が提供できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リジングの極めて
軽微なフェライト系ステンレス鋼板に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】SUS430鋼を代表とするフェライト
系ステンレス鋼板は、澄んだ色調と冷延により高い平滑
性を具現化しやすいことから、厨房機器をはじめとする
家庭用品や建材、家電、自動車の部品に広く使用されて
いる。しかし、フェライト系ステンレス薄鋼板は、冷間
圧延を行なうと表面にRMSで1μm以下の微細な凹凸
が生じ、表面の平滑性を損ねることが認められいた。ま
た、プレス成形や引張加工を加えると圧延方向に平行な
凹凸の皺が発生し、甚だしい場合は波鉄板状に変形する
ことが認められていた。これらの凹凸は一般にローピン
グやリジング、リビング(以降、リジングと総称す
る。)と呼ばれており、SUS304鋼をはじめとする
オーステナイト系ステンレス鋼板にはないフェライト系
ステンレス鋼板の致命的欠陥と考えられている。これら
の凹凸は、色調や平滑性を損ね、それを回復するための
研磨処理を困難にするだけでなく、部品によっては密着
性を低下させるなど機能上の問題にも影響を及ぼすこと
があった。
【0003】リジングの原因は、必ずしも明確ではない
が、概ね次の様に考えられている。すなわち、鋳造時の
ひとつの粗大結晶粒は、熱延や焼鈍などの加工熱処理を
施され再結晶微細化する。しかし、微細化した粒の大半
がほぼ同様の結晶方位を有しているために、集合組織的
にはもとの粗大粒に相当する疑似的粗大粒を形成してい
るとみなす必要がある。従って、超粗大粒の薄鋼板と同
様の変形挙動をすることとなり、それぞれの疑似的粗大
粒の変形挙動の違いが凹凸となって表面に表れるのであ
る。
【0004】従来のリジング対策は、この推定機構に基
づいて、概ね次の3種類の考え方に基づいて具体策が実
行されてきた。もちろん多くの場合、それぞれを単独で
実施するのではなく、重畳することで効果の増大を図っ
てきた。 疑似的粗大粒のもととなる凝固結晶粒の微細化 疑似的粗大粒の集合組織的なランダム化 疑似的粗大粒の分解
【0005】の考え方は、疑似的粗大粒の微細化に通
ずるものであり、例えば特開昭50−123294号公
報に記載されているように、柱状晶の等軸晶化を狙った
電磁撹拌、凝固結晶粒の微細化を狙った凝固結晶核の導
入や鋳造温度の低下による急激な凝固が具体的な方策と
して実施されてきた。の考え方では、製造工程の中で
再結晶を促進させ(特開昭57−70234号公報)、
さらに複数回繰り返すべく熱間圧延温度(加熱、仕上
げ、捲取り温度など)、圧下率、焼鈍温度などの適正化
や、冷延再結晶回数の増加を狙った冷延時の中間焼鈍工
程の追加、熱間圧延時の伸び変形の他に幅広がり変形を
加えることを狙った粒内析出物やγ相の利用や熱延潤滑
の適正化が挙げられる。では、変態の導入を意図した
成分変更(特開平6−81036号公報)や、特殊な熱
工程が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、の方法は、
鋳造時だけで対応が取れ次工程以降との干渉が少ないな
どの利点があるものの、この考え方を促進しようとする
とノズル詰りやブレークアウトなどの鋳造障害を起こし
やすくなるなどの欠点があった。の方法は、圧延工程
以降で実施可能な方法であるので、鋳片の状況に応じて
対応しやすい利点はあるが、多くの工程が複雑に影響し
合うなど製造工程の設計が極めて困難な方法である。例
えば、再結晶回数を増加しようとすると工程が増えざる
を得ないし、一つの工程での再結晶を促進させようとす
ると他工程での再結晶が不十分となったり、スラブの厚
さや最終製品厚さによって最適工程が異なることから工
程設計に自由度がなくなる上に、スラブ毎に工程を変更
せざるを得ないような状況が生ずる。しかも、再結晶だ
けでは集合組織的なランダム化は不十分で、析出物の利
用や圧下方法の工夫が必要など、成分的にも製造技術的
にも複雑になり、材料の振り回しができないなど、隠れ
たコスト上昇要因が潜在しているなど、多くの欠点を有
していた。の方法は、炭素鋼と同様に変態を利用する
ことから、鋳造組織の破壊には極めて有効であるが、成
分や熱工程が限定され、しかもフェライト系ステンレス
鋼板では最も一般的に用いられるSUS430鋼には適
用できないことから、特殊な鋼種にのみ適用可能な解決
方法である。しかも、変態相は一般に硬質であることか
ら、延性や加工性などの機械的性質の劣化が免れなかっ
た。
【0007】このように、これらの方法は相応に効果は
認められるものの不十分であったり、他の特性を劣化さ
せたり、制御が極めて困難であったり、あるいはコスト
的に不利であったりして、リジング現象を実用レベルで
解消するには至っていなかった。
【0008】本発明は、このような状況に鑑み、延性や
加工性などの機械的性質を劣化させることなく、かつ製
造工程が簡素で技術的にも容易である、リジング性を改
善したフェライト系ステンレス鋼板を提供するものであ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋳造時だ
けで対応が取れ次工程以降との干渉が少ない利点のある
上述のの方法を再検討した。その結果、鋳片の等軸晶
の割合を増加させると製品でのリジング性が向上すると
の従来知見の解釈が必ずしも正確ではないことが判明し
た。
【0010】すなわち、従来は鋳片の等軸晶の割合を増
加させることは、リジング性の良い等軸晶を増加し不良
の柱状晶を少なくすることで、リジング性向上に繋がっ
ているものと解釈されていたが、最終製品を板厚方向に
スライスしてリジング性を評価すると、むしろ等軸晶で
あった部分のリジング性の方が柱状晶であった部分のリ
ジング性より不良であることがわかったのである。しか
し、現実には等軸晶率の高い鋳片の方が、最終製品での
リジング性は良好であることには間違いはない。
【0011】本発明者らは、この原因を詳細に検討した
結果、次の考えに到達した。熱間圧延にあたっては、ス
ラブ表層部は圧延方向に延伸するだけでなく、厚さ方向
や部分的には幅方向にも剪断的な塑性変形を起こす。し
かし、スラブ中心部は単に圧延方向に延伸するだけで、
剪断的な変形は極めて小さい。このため、スラブの表層
部は柱状晶であってもこの剪断変形によって集合組織的
なランダム化が進行するが、スラブの中心部は等軸晶で
あっても単に圧延方向に延伸するだけであるので、集合
組織的なランダム化効果が小さいものと考えたのであ
る。
【0012】以上の知見から、鋳片の等軸晶率は高けれ
ば高いほど良いのではなく、限界があることを予測し
た。そして、そのレベル以上のリジング性改善には、こ
れまでの考え方を組合わせても効果が極めて小さいだろ
うということ、および熱間圧延時の中心部分となる等軸
晶部分のリジング性改善を図る必要があることを考察し
た。
【0013】等軸晶であったとしても板厚中心部のリジ
ング性が不良である理由は、厚さ方向や幅方向への剪断
的な塑性変形がないためであると考察したことから、熱
間変形抵抗の異なる冶金的な異相を導入して圧延するこ
とを想起した。
【0014】熱間変形抵抗の異なる冶金的な異相には、
まず非金属介在物や析出物が挙げられる。しかし、これ
らはサイズや分布の制御が困難であったり、最終製品の
品質の著しい劣化を招く恐れがあることから、用いるこ
とはできない。本発明者らは、SUS430鋼は熱間圧
延の温度域では、わずかにγ相が析出していることに着
目した。SUS430鋼の場合、例えば1100℃では
γ相が10〜50%存在していることがCr−温度平衡
状態図から予想される。そして、γ相の熱間変形抵抗
は、α相の概ね1.5倍程度の値と推定されている。ま
た、γ相の導入には、従来よりNi、Mn、C、Nどの
添加で可能であることが知られている。
【0015】この考え方に従って、板厚全体にγ相を導
入することも考えられる。しかし、全体にγ相を導入し
ても、前述したような理由からリジング性の向上には効
果が小さいにも関わらず、材質的に硬質化し伸びが低下
するなど加工性の劣化が免れない。従って、できる限り
CやNなどの固溶成分の低い材料が好ましいのである。
この点からも、板厚中心部にのみγ相を導入することが
適切であると考えた。
【0016】本発明者らは、これらの知見から、熱間圧
延時に板厚中心部にγ相を多量に存在させた鋼を想起し
たのである。すなわち、本発明は、少なくともCrを重
量%で10%以上23%以下を含むフェライト系ステン
レス鋼板において、鋼板の表面から少なくとも全板厚の
20%の深さまでの表層部の下式で示されるγポテンシ
ャル(γp )が23%以下であり、かつ表面から全板厚
の30%の深さ以上の内層部のγp が28%以上60%
以下であることを特徴とする延性とリジング性の優れた
フェライト系ステンレス鋼板である。
【0017】ただし、 γp =189+470×[%N]+420×[%C]+
23×[%Ni]+7×[%Mn]+9×[%Cu]−
11.5×[%Cr]−11.5×[%Si]−52×
[%酸可溶Al]−12×[%Mo]
【0018】そして本発明のフェライト系ステンレス鋼
板の成分は、重量%で、C:0.08%以下、Si:
0.05%以上1.0%以下、Mn:0.05%以上
1.0以下、Cr:10%以上23%以下、酸可溶A
l:0.001%以上0.2%以下、N:0.06%以
下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるこ
とが好適である。
【0019】本発明では、板厚中心部のγ相を増加させ
るにあたって、添加元素の種類は問わない。しかし、γ
ポテンシャルを向上するための元素として容易に思い付
くNiの場合、大きなコスト増とならざるを得ない。ま
た、Cuの利用も容易であるが、偏析が生ずると熱間加
工性の改善は困難となる。この点から、MnとNおよび
Cを利用してγポテンシャルの増加を図ると、コスト的
にも熱間加工性の点からも優位である。
【0020】この考えに従って、主としてMnとNおよ
びCを利用した鋼組成を基本として、本発明のフェライ
ト系ステンレス鋼板は、表層部が重量%で、C:0.0
5%以下、Si:0.05%以上1.0%以下、Mn:
0.05%以上0.5%以下、Cr:10%以上23%
以下、酸可溶Al:0.001%以上0.2%以下、
N:0.015%以下を含有し、残部がFe及び不可避
的不純物からなり、内層部が重量%で、C:0.02%
以上0.08%以下、Si:0.05%以上1.0%以
下、Mn:0.05%以上1.0%以下、Cr:10%
以上23%以下、酸可溶Al:0.001%以上0.2
%以下、N:0.010%以上0.06%以下を含有
し、残部がFe及び不可避的不純物からなることが好適
である。
【0021】ところで、本発明鋼板は、基本成分がF
e、Crである、いわゆるSUS430鋼に準ずるフェ
ライト系ステンレス鋼板であるが、耐食性向上を目的と
して、Ni:2%以下、Mo:3%以下、Cu:1%以
下の1種または2種以上を添加することも可能である。
【0022】
【発明の実施の形態】次に、本発明の限定条件を示す。
Crは、10%未満ではステンレス鋼板としての基本的
な耐食性が不足するため、10%以上とした。また23
%を超えると延性や加工性が低下し、リジングの問題と
なる加工用途に用いられなくなるため23%以下とし
た。
【0023】本発明では、鋼板の表層部および内層部の
γポテンシャル値を、下記式に基づいて規定する。 γp =189+470×[%N]+420×[%C]+
23×[%Ni]+7×[%Mn]+9×[%Cu]−
11.5×[%Cr]−11.5×[%Si]−52×
[%酸可溶Al]−12×[%Mo]
【0024】表層部のγ相の少ない部分のγポテンシャ
ルの値は、低ければ低いほど延性や加工性向上に有効で
あり、しかも他の品質特性には特に問題を生じないた
め、特に下限は限定しない。しかし、23%を超える
と、中心部のγポテンシャルを高くした場合延性の低下
がみられるので23%以下とした。
【0025】中心部のγ相の多い部分のγポテンシャル
の値は、28%未満ではリジング改善効果がないので2
8%以上とし、60%を超えると相応にリジング性は向
上するが、表層のγポテンシャルを極限まで低下しても
延性や加工性が確保できなくなることから60%以下と
した。
【0026】表層部のγ相の少ない部分の厚さは、表面
から少なくとも全板厚の20%の深さまで確保しない
と、中心部のγポテンシャルを高くした場合延性の確保
ができない。一方、中心部のγ相の多い部分は、表面か
ら全板厚の30%の深さ以上の内層部を確保しないと、
熱間圧延で剪断的な変形によるリジング改善効果が得ら
れない内層部までγ層の少ない部分が入り込み、リジン
グ性改善ができない。すなわち、表面から全板厚の20
%の深さから30%の深さの間でγポテンシャルが変化
し、表層部が少γ相、中心部が多γ相とすることと限定
した。
【0027】Cは、平均値で0.08%を超えると延性
加工性が低下するため、0.08%以下とした。
【0028】Siは、0.05%未満では脱酸が不十分
となって非金属介在物が多量に残留する危険性がある。
他の方法で脱酸を確実に実施することは可能であるの
で、その場合には0.05%未満にしても問題はない
が、そのレベルまで低減するコストが掛かることから、
0.05%以上とした。一方、1.0%を超えると硬質
化し最終製品での加工性が劣化するだけでなく、熱間加
工性も劣化するため1.0%以下とした。
【0029】Mnは、0.05%未満では不可避不純物
であるSの固定が不十分となり表面疵の原因となるため
0.05%以上とした。しかし、1.0%を超えると表
層部のγポテンシャルを低い値に確保することが困難と
なり、γポテンシャル低下元素(Cr、Si、Al、M
o)の多量添加が必要となって延性加工性の大きな低下
を招くために1.0%以下とした。
【0030】酸可溶Alは0.001%未満では脱酸が
不十分となり、非金属介在物が多量に残留し加工性耐食
性を劣化させるため0.001%以上とした。しかし、
0.2%を超えると、延性が劣化するため0.2%以下
とした。
【0031】Nは、0.06%を超えると表層部のγポ
テンシャルを低い値に確保することが困難となり、γポ
テンシャル低下元素(Cr、Si、Al、Mo)の多量
添加が必要となって延性加工性の大きな低下を招くだけ
でなく、Cr窒化物の析出が多くなって加工性耐食性を
劣化させるため0.06%以下とした。
【0032】本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、
上記した成分組成からなることを基本とするものである
が、本発明の効果を有利に確保してγポテンシャルの増
加を低コストで達成し、熱間加工性の点からも優位であ
るためには、鋼板の表層部と内層部の成分をさらに特徴
付けることが好ましい。
【0033】まず、表層部においては、C:0.05%
以下、Mn:0.5%以下、N:0.015%以下とす
ることにより、γポテンシャルを低い値に確保すること
が容易となり、γポテンシャル低下元素(Cr、Si、
Al、Mo)の多量添加が不必要となって延性加工性の
大きな低下を招くこともなくなる。
【0034】一方、内層部においては、Cは0.02%
未満ではγポテンシャルの高い値への確保が困難となる
ため0.02%以上とし、0.08%を超えると延性加
工性が低下するため、0.08%以下とする。Mnは
1.0%以下で構わない。Nは、0.010%未満では
γポテンシャルを確保することが困難となるために0.
010%以上とし、0.06%を超えると中心部のγポ
テンシャルも高くなりすぎ、γポテンシャル低下元素
(Cr、Si、Al、Mo)の多量添加が必要となって
延性加工性の大きな低下を招くため0.06%以下とす
る。
【0035】また、本発明のフェライト系ステンレス鋼
板において、さらに耐食性を確保するために、Ni,M
o,Cuの1種以上を添加することができる。Niは、
γポテンシャルを高くする元素であるが、耐食性が主と
して表面側で効果を発揮することを考えると表面部分に
添加する必要がある。従って、多量に添加すると表層部
のγポテンシャルを高くすることとなり、γポテンシャ
ル低下元素(Cr、Si、Al、Mo)の多量添加が必
要となって延性加工性の大きな低下を招くため、2.0
%以下とした。Moは、逆にγポテンシャルを低下させ
る元素であるが、多量に添加するといずれも硬質化し延
性を劣化させるため、3%以下とした。Cuは、Niと
同様にγポテンシャルを高くする元素であるが、耐食性
が主として表面側で効果を発揮することを考えると表面
部分に添加する必要がある。従って、多量に添加すると
表層部のγポテンシャルを高くすることとなり、γポテ
ンシャル低下元素(Cr、Si、Al、Mo)の多量添
加が必要となって延性加工性の大きな低下を招くため、
1.0%以下とした。
【0036】本発明鋼板は、表層部と中心部で異なる機
構で集合組織的のランダム化が起こり、リジングが改善
される。表層部は、特に成分調整を行ない組織を制御し
なくとも、熱間圧延時の剪断変形により十分に集合組織
的なランダム化が行われ、リジング性は向上する。一
方、中心部は、圧延による剪断変形が期待できないの
で、圧延中にα相中に硬質なγ相を比較的多量に存在さ
せて、その硬度の差を利用してミクロ的な剪断変形を加
えることで、集合組織的なランダム化が行われ、リジン
グ性は向上する。この際、中心部にγ相を多量に添加す
るために、延性を損う方向に成分調整がなされる。従っ
て、材料全体の延性加工性確保のために、表層部は比較
的軟質化し大きな延性を保有できる。このような機構
で、板の厚さ方向に成分差を付けることにより、延性と
リジング性の優れたフェライト系ステンレス鋼板の提供
が可能となる。
【0037】
【実施例】表1に示した化学組成のフェライト系ステン
レス鋼の冷延焼鈍板(0.5mm厚さ)を製造した。いず
れもクラッド法によって120mm厚さのスラブを組み立
て、通常の方法により4mmまで熱間圧延し、表1に示す
種々の熱延板焼鈍を施した後、あるいは熱延板焼鈍を行
なうことなく脱スケールをおこない、0.5mmまで冷延
し925℃×5min の最終焼鈍を施した。その後、リジ
ング性と伸びを評価した。リジング性は、JIS−5号
試験片を20%圧延方向に引張り、圧延方向と直角方向
に生じた縞状のうねりの高さで評価した。なお、表1に
おいて各鋼Noの上段は表層部を、下段は内層部を示して
いる。
【0038】
【表1】
【0039】リジング性と延性の値を、表1に示す。本
発明鋼板は、リジング高さはいずれも20μm未満であ
り、圧延方向の延性はいずれも30%を超えた。しか
し、比較鋼である厚さ方向に成分差のない鋼板は、リジ
ング性が優れていると延性が30%未満と低く、逆に延
性が高いとリジング性が20μm以上と不良であり、延
性とリジング性が両立しなかった。また、中心部の高γ
ポテンシャル層が薄いと、延性も低い上にリジング改善
効果も認められなかった。
【0040】
【発明の効果】本発明により、リジング性と延性加工性
の両立したフェライト系ステンレス鋼板の提供が可能に
なった。従来、リジング性の良好な鋼板は延性加工性が
必ずしも良好でなく、延性加工性の良好な鋼板はリジン
グ性が不良であり、いずれも満足することが必要な強加
工用途へのフェライト系ステンレス鋼の適用が困難であ
った。本発明鋼板は、リジング性と延性加工性が共に良
好であるため、従来は耐食性からは必要ないにも関わら
ずNiを多量に含有するオーステナイト系ステンレス鋼
を用いざるを得なかった用途に、本発明による安価なフ
ェライト系ステンレス鋼を適用することが可能となっ
た。さらに、副次効果として枯渇が懸念されるNiの温
存という点にも寄与するものである。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくともCrを重量%で10%以上2
    3%以下を含むフェライト系ステンレス鋼板において、
    鋼板の表面から少なくとも全板厚の20%の深さまでの
    表層部の下式で示されるγポテンシャル(γp )が23
    %以下であり、かつ表面から全板厚の30%の深さ以上
    の内層部のγp が28%以上60%以下であることを特
    徴とする延性とリジング性の優れたフェライト系ステン
    レス鋼板。ただし、 γp =189+470×[%N]+420×[%C]+
    23×[%Ni]+7×[%Mn]+9×[%Cu]−
    11.5×[%Cr]−11.5×[%Si]−52×
    [%酸可溶Al]−12×[%Mo]
  2. 【請求項2】 重量%で、 C :0.08%以下、 Si:0.05%以上1.0%以下、 Mn:0.05%以上1.0以下、 Cr:10%以上23%以下、 酸可溶Al:0.001%以上0.2%以下、 N:0.06%以下 を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなること
    を特徴とする請求項1記載の延性とリジング性の優れた
    フェライト系ステンレス鋼板。
  3. 【請求項3】表層部が重量%で、 C :0.05%以下、 Si:0.05%以上1.0%以下、 Mn:0.05%以上0.5%以下、 Cr:10%以上23%以下、 酸可溶Al:0.001%以上0.2%以下、 N:0.015%以下 を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、 内層部が重量%で、 C :0.02%以上0.08%以下、 Si:0.05%以上1.0%以下、 Mn:0.05%以上1.0%以下、 Cr:10%以上23%以下、 酸可溶Al:0.001%以上0.2%以下、 N :0.010%以上0.06%以下 を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなること
    を特徴とする請求項1記載の延性とリジング性の優れた
    フェライト系ステンレス鋼板。
  4. 【請求項4】 重量%で、 C :0.08%以下、 Si:0.05%以上1.0%以下、 Mn:0.05%以上1.0以下、 Cr:10%以上23%以下、 酸可溶Al:0.001%以上0.2%以下、 N:0.06%以下 を含有し、さらに、 Ni:2%以下、 Mo:3%以下、 Cu:1%以下 の1種または2種以上を含有し、残部がFe及び不可避
    的不純物からなることを特徴とする請求項1又は2記載
    の延性とリジング性の優れたフェライト系ステンレス鋼
    板。
  5. 【請求項5】表層部が重量%で、 C :0.05%以下、 Si:0.05%以上1.0%以下、 Mn:0.05%以上0.5%以下、 Cr:10%以上23%以下、 酸可溶Al:0.001%以上0.2%以下、 N:0.015%以下 を含有し、さらに、 Ni:2%以下、 Mo:3%以下、 Cu:1%以下 の1種または2種以上を含有し、残部がFe及び不可避
    的不純物からなり、 内層部が重量%で、 C :0.02%以上0.08%以下、 Si:0.05%以上1.0%以下、 Mn:0.05%以上1.0%以下、 Cr:10%以上23%以下、 酸可溶Al:0.001%以上0.2%以下、 N :0.010%以上0.06%以下 を含有し、さらに、 Ni:2%以下、 Mo:3%以下、 Cu:1%以下 の1種または2種以上を含有し、残部がFeと不可避不
    純物からなることを特徴とする請求項1又は3記載の延
    性とリジング性の優れたフェライト系ステンレス鋼板。
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