JPH10330887A - 耐リジング性および加工性に優れた高光沢ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

耐リジング性および加工性に優れた高光沢ステンレス鋼板およびその製造方法

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JPH10330887A
JPH10330887A JP13981097A JP13981097A JPH10330887A JP H10330887 A JPH10330887 A JP H10330887A JP 13981097 A JP13981097 A JP 13981097A JP 13981097 A JP13981097 A JP 13981097A JP H10330887 A JPH10330887 A JP H10330887A
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毅 横田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ステンレス鋼板の耐リジング性を、加工性お
よび光沢度と共に効果的に改善する。 【解決手段】 ステンレス鋼板の、圧延方向に垂直かつ
板面法線に平行な任意の面(RD面)内における結晶方
位分布を、下記式を満足する方位分布とする。 記 d{hkl}/t≦0.3 ここで、d{hkl}:{hkl}コロニーの板厚方向
の長さ (μm)t:板厚 (μm) ただし{hkl}コロニーとは、隣接する各結晶の板面
に垂直な方向の方位ベクトルが<hkl>方向から15°
以内の結晶粒群

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、耐リジング性お
よび加工性に優れた高光沢ステンレス鋼板に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】フェライト系ステンレス鋼は、耐応力腐
食割れ性に優れるだけでなく、安価なことから、各種厨
房器具、自動車部品などの分野で幅広く使用されてい
る。しかしながら、オーステナイト系ステンレス鋼に比
べると耐リジング性およびプレス加工性の面で劣るとい
う欠点があった。
【0003】一方、オーステナイト系ステンレス鋼は、
リジングはほとんど発生せず、また延性に富むことから
プレス加工性の点でも優れている。しかしながら、近
年、より厳しい加工が要求されるようになり、オーステ
ナイト系ステンレス鋼といえども加工後の肌あれや置き
割れといった問題が生じるようになっている。
【0004】ここに、ステンレス鋼は無塗装で使用され
る場合が多く、表面の光沢は非常に重要な製品特性であ
る。このため、ステンレス鋼とくにフェライト系ステン
レス鋼では、プレス加工性(実質的にはr値)だけでな
く、耐リジング性を向上させるために、多くの研究が続
けられてきた。
【0005】さて、リジングの発生機構は、板面内(N
D面)に圧延方向にバンド状に伸びたコロニーの存在を
仮定し、各コロニー間の塑性変形挙動の差によってリジ
ングが生じると考えられてきた。このような考え方の下
に、これまでのリジング対策は、ND面内の集合組織制
御に主眼が置かれていた。
【0006】例えば、特開平3−264625号公報には、フ
ェライト系ステンレス鋼にTi, Nbを複合添加し、(22
2)面と(200)面のX線積分強度比(222)/
(200)を5以上とすることによって優れた成形性が
得られる旨が、また特開昭53−48018 号公報には、(C
+N)を 0.030%以下にすると共に、Tiを適量添加し、
さらに熱延−焼鈍−冷延の各条件を制御することによっ
て、{554}<225>方位への集積が強まり、耐リ
ジング性およびプレス加工性が改善される旨が報告され
ている。しかしながら、これらの技術はいずれも、ND
面内の集合組織を改善あるいは制御しようとするに止ま
り、その他の面内の結晶方位分布については考慮が払わ
れていなかった。
【0007】また、発明者らも、特開平7−268461号公
報において、耐リジング性およびプレス加工性を改善す
る手段として、粗圧延を潤滑大圧下で行う方法を提案し
た。この方法により、耐リジング性およびプレス加工性
をかなり改善することができるようになった。しかしな
がら、上記の効果は、再結晶の促進によって、ND面内
の集合組織を制御(特に{100}方位を減少させ{1
11}方位を増加)しようとするもので、RD面内の結
晶方位分布を最適に制御しようとするものではなかっ
た。
【0008】さらに、最近では、同一結晶方位の集合体
であるコロニーという概念を取り入れ、これによって組
織を制御しようとする試みがなされている。コロニーの
サイズを小さくすることによってリジングを改善する方
法として、従来、10〜30秒程度で行われている粗圧延の
パス間時間を長くする方法がある。
【0009】例えば、特開昭61−163216号公報では、Al
を0.08〜0.5 wt%添加したフェライト系ステンレス鋼の
粗圧延後段のパス間時間を15秒以上、60秒以内とし、さ
らに仕上げ圧延温度、巻取り温度および冷間圧延条件を
所定の範囲に規制する方法が開示されている。上記の構
成のうち、Al添加はα→γ変態およびAlN の析出を促進
させ、また粗圧延後段でパス間時間を長くすることは、
粗圧延での再結晶を促進させる効果があり、この時に結
晶方位のランダム化が起こり、最終的に製品板の{11
1}および{100}コロニーサイズが小さくなる結
果、リジングを改善できるとしている。ただし、結晶方
位がランダムなままではプレス加工性が得られないの
で、プレス加工性に必要は{111}方位は、その後の
冷間−焼鈍工程でAlN 析出による固溶Nの低減と大径ロ
ール圧延による剪断変形量の削減によって増加させよう
というのが、上記公報の技術思想である。
【0010】しかしながら、一旦、結晶方位をランダム
化させた鋼板では、その後の冷延−焼鈍工程だけで{1
11}方位をコロニー化させずに増加させるには限界が
あるため、耐リジング性に優れかつr値が 1.5を超える
ような超深絞りステンレス鋼板を得ることは難しかっ
た。また、特開昭61−163216号公報は、 SUS 430等の粗
圧延時に(α+γ)の2相組織となるステンレス鋼を対
象としているため、フェライト単相鋼には適用できない
という問題がある。さらに、粗圧延で2回以上もパス間
時間を長くとることは生産性の点から問題があり、また
スラブ加熱工程から冷間圧延工程までの全ての工程を厳
密に管理することは生産管理の点からも好ましくない。
【0011】また、特開昭61−163216号公報に関連して
同発明者らが記した「鉄と鋼第76年(1990)第9号」で
は、個々の結晶方位を測定してリジングの発生機構を解
明しようとする試みがなされている。すなわち、Al添加
SUS 430の粗圧延時のパス間時間を10秒(試片A)、30
秒(試片B)とした試片を作製し、ECP (Electoron
Channeling Pattern) 法により結晶方位分布を測定して
いる。その結果、リジング高さはパス間時間を30秒とし
た試片Bの方が低かった。その理由として、粗圧延後の
{100}<011>コロニーの板厚中心線に対する不
均一分布が挙げられている。また、ECP法による結晶
方位分布の測定結果では、粗圧延後および冷延焼鈍後の
コロニーのサイズと存在頻度は、リジング特性に優れる
試片Bの方が試片Aよりも低くなっていた。従って、粗
圧延のパス間時間を長くすることは、結晶方位のランダ
ム化をもたらし、リジング改善に寄与するとしている。
【0012】しかしながら、この論文では、本文中にも
記載されているように、再結晶板(冷延焼鈍後の板)の
結晶方位分布の細かい調査がされていないため、ND面
内のコロニーのサイズと存在頻度が低い方がリジング特
性は良好という示唆はあるものの、リジングとコロニー
との関係については明確にされていない。また、再結晶
板のリジングは幅方向に対して数百μm 〜数mmの幅を持
つことから、結晶方位の測定は幅方向にわたり少なくと
も数mm行う必要があるけれども、上記の論文では 250μ
m × 120μm の範囲でしか測定されておらず、リジング
とコロニーの関係を明確にするには測定領域が狭いとい
う重大な欠陥がある。
【0013】その他、リジングとコロニーとの関係を調
査した論文としては、「MaterialsScience Forum, Vol.
157-162 (1994), P.1137 」がある。この中では、EB
SD(Electoron Backscattering Diffraction)法によ
り 200μm 幅× 125μm 厚の範囲の測定がなされてい
る。しかしながら、この方法も測定範囲が狭いのに加
え、測定が5μm 間隔で行われているため、測定結果は
個々の結晶について行われたものではないという問題が
あった。
【0014】次に、鋼板表面の光沢に関しては、特開平
7−268485号公報に、(C+N+S+O)≦0.0100mass
%とすることによって、加工性および光沢度が向上する
ことが開示されている。しかしながら、C,N,S,O
を合計で0.0100mass%以下とすることは製鋼コストの大
幅なアップにつながる。
【0015】さらに、結晶方位分布を制御する技術とし
て、特開平6−100989号公報には、{112}<111
>、{113}<332>コロニーおよび{110}<
111>、{110}<112>、{110}<001
>コロニーの圧延方向の平均寸法 (dRD)および板幅方
向の平均寸法 (dTD)を小さくしてオーステナイト系ス
テンレス鋼の加工肌あれを改善しようとする方法が開示
されている。しかしながら、この技術は、連続鋳造法に
よって製造される鋳片を、熱延板板厚または最終製品厚
に近い板厚に仕上げるいわゆる薄肉鋳造法に適用される
もので、しかも結晶方位分布の制御もND面内の制御に
主眼を置いたものである。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来
の技術は、ND面内の集合組織を制御してリジングを改
善しようとするものであるが、一方で、コロニーのサイ
ズや鋼板内での分布はほとんど解明されておらず、コロ
ニーとリジングの関係は推測の域を出ていないのが現状
であった。
【0017】この発明は、上記の実情に鑑み開発された
もので、その目的は、リジングの発生機構を解きあか
し、それに基づいて耐リジング性およびプレス加工性に
十分優れる高光沢ステンレス鋼を、その製造方法と共に
提案するところにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、上記
の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、リジングは
RD面内の各結晶の塑性変形量の総和と強い相関があ
り、RD面内のコロニーサイズを板厚の30%以下に抑制
することによって、耐リジング性は勿論のこと、プレス
成形性さらには光沢度が格段に向上することの知見を得
た。この発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0019】すなわち、この発明は下記の構成を要旨と
するものである。 1.ステンレス鋼冷延板であって、圧延方向に垂直かつ
板面法線に平行な任意の面(RD面)内において、下記
式を満足する結晶方位分布を有することを特徴とする耐
リジング性および加工性に優れた高光沢ステンレス鋼
板。 記 d{hkl}/t≦0.3 ここで、d{hkl}:{hkl}コロニーの板厚方向
の長さ (μm)t:板厚 (μm) ただし{hkl}コロニーとは、隣接する各結晶の板面
に垂直な方向の方位ベクトルが<hkl>方向から15°
以内の結晶粒群
【0020】2.フェライト系ステンレス鋼冷延板であ
って、圧延方向に垂直かつ板面法線に平行な任意の面
(RD面)内において、下記式を満足する結晶方位分布
を有することを特徴とする耐リジング性および加工性に
優れた高光沢ステンレス鋼板。 記 d{hkl}/t≦0.3 , V{111}≧ 15 (vol
%) ここで、d{hkl}:{hkl}コロニーの板厚方向
の長さ (μm)t:板厚 (μm) V{hkl}:{hkl}コロニーの体積分率(vol%) ただし{hkl}コロニーとは、隣接する各結晶の板面
に垂直な方向の方位ベクトルが<hkl>方向から15°
以内の結晶粒群
【0021】3.上記1または2において、{hkl}
コロニーが、{001}コロニー,{110}コロニ
ー,{112}コロニーおよび{111}コロニーであ
る耐リジング性および加工性に優れた高光沢ステンレス
鋼板。
【0022】4.所定の成分組成に調製したステンレス
鋼用溶鋼を、スラブとし、スラブ加熱後、粗圧延および
仕上げ圧延からなる熱間圧延を施したのち、常法に従っ
て冷間圧延、ついで仕上げ焼鈍を施してステンレス鋼板
を製造するに際し、溶製段階における塩基度(CaO/Si
O2) を 0.8以上、3.2 以下にすると共に、スラブ抽出か
ら粗圧延終了までの時間を60秒以上 300秒以内とし、か
つ粗圧延工程において少なくとも1パスを、圧延温度:
970 〜1150℃、摩擦係数:0.30以下、圧下率:40〜75%
の条件下で行うことを特徴とする耐リジング性および加
工性に優れた高光沢ステンレス鋼板の製造方法。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、この発明を由来するに到っ
た実験結果について説明する。SUS 430 および SUS 304
相当組成の溶鋼を、塩基度:0.5 〜3.5 の条件で溶製
し、スラブとしたのち、1100℃に加熱後、5パスの粗圧
延および7パスの仕上げ圧延からなる熱間圧延を行い、
板厚:4.0 mmの熱延板とした。この時、粗圧延最終パス
の圧下率を35〜50%、圧延温度を1060℃、摩擦係数を0.
2 とした。また、スラブ抽出から粗圧延終了までの時間
は 150秒および 350秒とした。その後、熱延板焼鈍を施
したのち、冷間圧延ついで仕上げ焼鈍(仕上げ焼鈍条件
SUS430:850 ℃×60秒、SUS304:1050℃×60秒) を施
して、板厚:0.7 mmの冷延焼鈍板とした。
【0024】かくして得られた冷延焼鈍板の結晶方位を
測定した。結晶方位の測定は、EBSD(Electron Bac
k Scattering Diffraction)法により、TD×ND=25
00μm ×700 μm の領域にわたって行い、結晶面の方位
ベクトルが<001>,<110>,<112>,<1
11>およびその他の方位から15°以内の結晶粒群をコ
ロニーとしてカラーマッピングし、板厚方向のコロニー
サイズおよび各コロニーの体積分率を求めた。結晶方位
分布とリジングの関係を調べるためには、このように幅
方向にmm単位で結晶方位を測定することが重要である。
なお、各方位は図1に図解したとおりである。
【0025】得られた測定データのうち、RD面の結晶
方位データを基に板厚方向の変形量を計算してみたとこ
ろ、実際のリジングのプロファイルとよく一致した。す
なわち、リジングは板厚方向の各結晶粒の塑性変形量の
総和として発生することが究明されたのである。従っ
て、従来考えられていた板面内 (ND面内) の結晶方位
分布よりもRD面内の結晶方位分布の制御がより重要と
なる。
【0026】図2に、上記鋼のリジング高さに及ぼすd
{hkl}/t(コロニーの板厚方向サイズと板厚との
比)の影響について調べた結果を示す。耐リジング性
は、d{hkl}/t≦0.3 で大きく改善されている。
【0027】また、図3には、耐リジング性およびr値
におよぼすd{hkl}/tおよびV{111}({1
11}コロニーの体積分率)の影響について調べた結果
を示す。図2同様、耐リジング性はd{hkl}/t≦
0.3 で大きく改善され、特に、V{111}≧15 vol%
のときはr値も格段に向上した。さらに、d{hkl}
/t≦0.3 を満たすものは光沢度も向上していた。な
お、これまでに、RD面内の結晶方位分布を制御して光
沢度を向上させようとする試みはなかった。
【0028】なお、r値、リジング高さおよび光沢度は
次の方法で測定した。 ・r値 JIS 13号B試験片を用い、15%の引張歪みを与えた後、
3点法により各方向のr値を求め、次式により平均値と
して表した。 r値=(rL +2rD +rC )/4 ただし、rL , D , C はそれぞれ、圧延方向、圧延
方向に対して45°の方向、圧延方向に対し90°の方向の
r値を表す。 ・リジング高さ 圧延方向から採取したJIS 5号試験片に、20%の引張歪
みを与えた後、表面粗度計によりリジング高さ(μm )
を測定した。 ・光沢度 JIS Z 8741の20度鏡面光沢(方法5)により測定した。
なお、ロールの粗度は板厚:4.0 〜1.0 mmまでがRa=0.
25μm 、板厚:1.0 〜0.7 mmまでがRa=0.10μm のロー
ルを使用して行った。
【0029】次に、この発明のステンレス鋼の好適成分
組成範囲について述べる。この発明は、JISに規定さ
れる SUS 430以外にも以下の組成範囲を満足する全ての
フェライト系ステンレス鋼、さらにはオーステナイト系
ステンレス鋼に適用が可能である。
【0030】C≦0.100 mass% Cは、r値および耐食性を低下させる元素であり、0.10
0 mass%を超えるとその影響が顕著になるので、0.100
mass%以下とすることが好ましい。なお、実際的なCの
添加量は0.0005〜0.06mass%である。
【0031】Si≦1.0 mass% Siは、脱酸のために有効な元素であるが、過度の添加は
鋼板の硬質化と延性の低下を招くので、添加量は 1.0ma
ss%以下(望ましくは0.05〜0.70mass%)とするのが好
ましい。
【0032】Mn≦1.0 mass% Mnは、熱間加工性の改善や溶接部の靱性改善のために有
効な元素であり、この目的のためには 1.0mass%以下の
添加で十分であり、好ましくは0.05〜0.70mass%であ
る。
【0033】Cr:10〜35mass% Crは、ステンレス鋼としての耐食性を確保するために不
可欠な元素である。その量が10mass%未満では耐食性が
不足し、一方35mass%を超えると加工性が低下するので
その添加範囲は10〜35mass%(望ましくは14〜19mass
%)とするこのが好ましい。
【0034】S≦0.0100mass% Sは、耐食性を劣化させる元素であり、極力低下させる
ことが望ましい。特にSが0.0100mass%を超えると耐食
性が著しく劣化するので、0.0100mass%とするのが好ま
しい。より好ましくは0.0050mass%以下である。
【0035】その他にも、以下に述べる元素を適宜添加
することができる。Ti, Nb, V,Ta, Zr, BおよびAlの
うちから選んだ少なくとも1種を、2×(C+N)以
上、0.5 mass%以下添加するとV{111}を15 vol%
以上とすることが容易となる。というのは、これらの元
素はいずれも、C,Nと結合して炭窒化物を形成する
が、これらの炭窒化物は{111}方位の発達を促進さ
せる効果があるからである。
【0036】Mo, CuおよびNiのうちから選んだ少なくと
も1種を、 0.1〜5.0 mass%添加すると、耐リジング性
および加工性に加え、耐食性を一層向上させることが可
能となる。この目的のためには、少なくとも 0.1mass%
の添加を必要とするが、5.0mass%を超えて添加すると
加工性を大きく低下させるので、添加する場合には、0.
1 〜5.0 mass%の範囲とすることが好ましい。より好ま
しい範囲は 1.0〜3.0mass%である。
【0037】次に、コロニーサイズと板厚との関係を前
記の範囲に限定した理由について説明する。 d{hkl}/t≦0.3 図2に示したように、リジング高さは、板厚方向のコロ
ニーサイズを板厚の30vol %以下にすることによって大
きく改善される。これは、リジングが各結晶の塑性変形
量の総和として発生するためである。また、d{hk
l}/t≦0.3 の場合、板厚方向の変形が均一となるた
めに、加工性も向上する。さらに、d{hkl}/t≦
0.3 を満たすと、圧延変形時のオイルピットの減少と鋼
板表面の均一変形のために光沢度も向上する。そして、
d{hkl}/t≦0.2 のとき上記効果はより一層顕著
になる。なお、d{hkl}は、すべての方位のコロニ
ーを表すものであるが、主要な方位は{001},{1
10},{112},{111}であるので、この4つ
の方位について測定すれば事足りる場合がほとんどであ
る。
【0038】d{hkl}/t≦0.3 かつV{111}
≧15 vol% {111}方位が多ければ多いほどr値は向上するが、
同時に耐リジング性および光沢度を向上させるために
は、RD面内の結晶方位分布をd{hkl}/≦0.3 に
制御しないと、板厚方向の塑性変形量の総和が場所ごと
で大きく異なり、r値は高いにもかかわらず、激しいリ
ジングが発生することになる。従って、r値の観点から
V{111}≧15 vol%とする必要があり、耐リジング
性および光沢度の観点からd{hkl}/t≦0.3 とす
る必要がある。なお、d{hkl}/t≦0.2 かつV
{111}≧20 vol%であればより好ましい。
【0039】なお、RD面内の結晶方位分布が上記要件
を満足すれば、耐リジング性および加工性優れた高光沢
フィライト系ステンレス鋼を得ることが可能であるが、
以下の製造方法と組み合わせれば、より容易かつより耐
リジング性および加工性優れた高光沢フィライト系ステ
ンレス鋼を得ることができるので、その点について説明
する。
【0040】溶製段階における塩基度:0.8 以上、3.2
以下 塩基度を 0.8以上、 3.2以下とし、以下の製造条件と組
み合わせると板厚方向の結晶方位分布をd{hkl}/
t≦0.3 に制御することが可能となる。その理由は、介
在物の形態および量が影響しているものと考えられるけ
れども、その詳細は不明である。塩基度が 0.8未満では
d{100}/t>0.3 となり易く、一方塩基度が3.2
を超えるとd{hkl}/t>0.3 となる。従って、塩
基度は 0.8以上、 3.2以下に限定した。好ましい範囲は
1.0以上、 2.5以下である。
【0041】粗圧延工程は、スラブ鋳込み組織の細粒化
を図り、結晶方位分布を制御するのに大変重要な役割を
果たす。この発明では、従来のようにND面内の結晶方
位分布を制御するのではなく、RD面内 (板厚方向すべ
ての) の結晶方位分布を制御するためにの粗圧延条件を
検討し、以下のような方法を見いだした。 スラブ抽出から粗圧延終了までの時間:60秒以上 300秒
以内 スラブ抽出から粗圧延終了までの時間が 300秒を超えた
場合、粗圧延時のスラブ表面と内部との温度差が大きく
なり、板厚方向のコロニー分布に影響を与える。すなわ
ち、 300秒を超えるとd{hkl}/t>0.3 となり、
耐リジング特性が劣化する。また、60秒未満で粗圧延を
終了させることは現行の設備では困難である。従って、
スラブ抽出から粗圧延終了までの時間は60秒以上 300秒
以内とした。なお、好ましくは 100秒以上 250秒以内で
ある。
【0042】また、上記の粗圧延工程において、少なく
とも1パスを以下の条件で行うことが肝要である。 圧延温度:970 〜1150℃ 圧延温度が、 970℃未満では潤滑を行ったとしても鋼板
表層部に歪みが集中するため、板厚中心部の結晶方位分
布の制御が困難になる。一方、圧延温度が1150℃を超え
ると回復が主体となるため{100}方位コロニーが残
りd{hkl}/t≦0.3 とすることが困難となり、加
工性および耐リジング性とも劣化する。従って、粗圧延
の圧延温度は 970〜1150℃にする必要がある。なお好ま
しい温度範囲は1000〜1080℃である。
【0043】圧下率:40〜75% RD面内の結晶方位分布をd{hkl}/t≦0.3 とす
るためには、粗圧延の1パス当たりの圧下率を40%以上
とする必要がある。一方、現状の設備では粗圧延の1パ
ス当たりの圧下率を75%超とすることは難しい。そこ
で、粗圧延の圧下率は40〜75%の範囲に限定した。なお
好ましい範囲は50〜60%である。
【0044】摩擦係数:0.30以下 粗圧延の摩擦係数が0.30を超えると、圧延による歪み分
布が表層部に偏るためRD面内の結晶方位分布をd{h
kl}/t≦0.3 とすることが困難となる。従って、粗
圧延の摩擦係数は0.30以下とする必要がある。好ましく
は0.20以下である。なお摩擦係数を低下させる方法は任
意の方法でよい。
【0045】
【実施例】表1に示す成分組成の鋼A〜Qを溶製し、ス
ラブとした後、1100℃に加熱後、5パスの粗圧延、7パ
スの仕上げ圧延からなる熱間圧延を行って板厚:4.0 mm
の熱延板とした。ここで、粗圧延の5パス目または6パ
ス目については、圧下率、圧延温度、摩擦係数を表2に
示す条件とした。熱間圧延後、冷間圧延を施して板厚:
0.7 mmの冷延板としたのち、 830〜1100℃で仕上げ焼鈍
を施して製品板とした。かくして得られた冷延焼鈍板の
d{hkl}の最大値、V{111}、r値、リジング
および光沢度について調べた結果を表2に併記する。な
お、結晶方位分布は、EBSD法により各結晶の結晶方
位をRD面について幅:2500μm 、板厚:700 μm の範
囲にわたって測定した。また、r値、リジング高さおよ
び光沢度は前記と同じ方法で測定した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】同表から明らかなように、この発明に従い
得られたステンレス鋼板はいずれも、比較例に比べて高
r値、高耐リジング性を示し、加えて光沢度も極めて良
好であった。
【0049】
【発明の効果】かくして、この発明によれば、耐リジン
グ性は勿論のこと、加工性および光沢度に優れたステン
レス鋼板を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】各方位の説明図である。
【図2】リジング高さとd{hkl}/tとの関係を示
した図である。
【図3】耐リジング性およびr値に及ぼすd{hkl}
/tおよびV{111}の影響を示した図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ステンレス鋼冷延板であって、圧延方向
    に垂直かつ板面法線に平行な任意の面(RD面)内にお
    いて、下記式を満足する結晶方位分布を有することを特
    徴とする耐リジング性および加工性に優れた高光沢ステ
    ンレス鋼板。 記 d{hkl}/t≦0.3 ここで、d{hkl}:{hkl}コロニーの板厚方向
    の長さ (μm)t:板厚 (μm) ただし{hkl}コロニーとは、隣接する各結晶の板面
    に垂直な方向の方位ベクトルが<hkl>方向から15°
    以内の結晶粒群
  2. 【請求項2】 フェライト系ステンレス鋼冷延板であっ
    て、圧延方向に垂直かつ板面法線に平行な任意の面(R
    D面)内において、下記式を満足する結晶方位分布を有
    することを特徴とする耐リジング性および加工性に優れ
    た高光沢ステンレス鋼板。 記 d{hkl}/t≦0.3 , V{111}≧ 15 (vol
    %) ここで、d{hkl}:{hkl}コロニーの板厚方向
    の長さ (μm)t:板厚 (μm) V{hkl}:{hkl}コロニーの体積分率(vol%) ただし{hkl}コロニーとは、隣接する各結晶の板面
    に垂直な方向の方位ベクトルが<hkl>方向から15°
    以内の結晶粒群
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、{hkl}
    コロニーが、{001}コロニー,{110}コロニ
    ー,{112}コロニーおよび{111}コロニーであ
    る耐リジング性および加工性に優れた高光沢ステンレス
    鋼板。
  4. 【請求項4】 所定の成分組成に調製したステンレス鋼
    用溶鋼を、スラブとし、スラブ加熱後、粗圧延および仕
    上げ圧延からなる熱間圧延を施したのち、常法に従って
    冷間圧延、ついで仕上げ焼鈍を施してステンレス鋼板を
    製造するに際し、 溶製段階における塩基度(CaO/SiO2) を 0.8以上、3.2
    以下にすると共に、スラブ抽出から粗圧延終了までの時
    間を60秒以上 300秒以内とし、かつ粗圧延工程において
    少なくとも1パスを、圧延温度:970 〜1150℃、摩擦係
    数:0.30以下、圧下率:40〜75%の条件下で行うことを
    特徴とする耐リジング性および加工性に優れた高光沢ス
    テンレス鋼板の製造方法。
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