JPH10259401A - 多層膜被覆粉体の製造方法 - Google Patents

多層膜被覆粉体の製造方法

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JPH10259401A
JPH10259401A JP6657397A JP6657397A JPH10259401A JP H10259401 A JPH10259401 A JP H10259401A JP 6657397 A JP6657397 A JP 6657397A JP 6657397 A JP6657397 A JP 6657397A JP H10259401 A JPH10259401 A JP H10259401A
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JP
Japan
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solid phase
film
powder
substrate
coating
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Application number
JP6657397A
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English (en)
Inventor
Takashi Shinko
貴史 新子
Katsuto Nakatsuka
勝人 中塚
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Nittetsu Mining Co Ltd
Original Assignee
Nittetsu Mining Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 効率的に、精度よく膜厚を制御でき、均一な
厚さの膜を形成することができる、粉体の基体表面に多
層の被覆被膜を形成した多層膜被覆粉体の製造方法を提
供する。 【解決手段】 溶液中にて粉体粒子を基体とし、該基体
表面に固相成分を析出させる被膜形成を繰り返すことに
より多層膜被覆粉体を製造する方法において、該溶液中
に溶解している固相成分が過飽和で、かつ、該基体表面
以外に固相が析出しない条件に固相成分析出速度を設定
することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は粉体粒子の表面を別
の物質で多層に被覆する技術、例えば、金属酸化物多層
膜被覆粉体等の製造方法に関するものであり、特に、カ
ラー磁性トナーやカラー磁性インキのカラー磁性材料原
料、またはカラー顔料粉体等とするために、該基体とな
る粉体表面に多層の均一な被膜を効率よく膜の厚さを制
御しながら製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】粉体を種々の用途に使用するために、そ
の粉体を別の物質で多層に被覆する技術が知られてい
る。例えば、物体の表面に保護や装飾のために膜を形成
する被覆技術には、塗着法、沈着法、スパッタリング、
真空蒸着法、電着法や陽極酸化法等多くの手段が知られ
ている。しかし、塗着法や沈着法では膜の厚みを均一に
することが困難であり、スパッタリングや真空蒸着法で
は膜厚の厚い被膜を得ることが困難である。また、電着
法や陽極酸化法は被処理物を電極とする関係上粉体の処
理には向かないという問題点を有している。種々の技術
分野における進歩に伴い、特異な性質を備えた粉体、特
に金属粉体或は金属化合物粉体を求める要望が増してお
り、粉体、特に金属粉体または金属化合物粉体だけが備
える性質の他に別の性質を合わせ持ち、複合した機能を
有する粉体が求められている。
【0003】例えば、カラー磁性トナーの原料磁性粉体
では、従来の黒い磁性トナーでは問題とならなかった磁
性金属粉体の色がそのままでは使用できないことにな
る。従来知られている粉体の保護のためとか、粉体が合
成樹脂などとの混合を容易にするためなどで、表面を改
質するために、粉体の表面に薄い金属酸化物の膜を形成
する手段によるものでは、このような分野の新しい要求
に耐えられるものではない。このような点から、従来の
粉体にはない、新しい構成の粉体を提供することが必要
である。上述のような新しい要求に応えられる複合した
性質を有し、複合した機能を果たし得る粉体、特に金属
または金属化合物粉体を提供するために、本発明者らは
先に、金属または金属化合物の基体の表面に、均一な
0.01〜20μmの厚みの、前記基体を構成する金属
とは異種の金属を成分とする金属酸化物膜を有する粉体
を発明した(特開平6ー228604号公報)。
【0004】この粉体において、前記の金属酸化物膜を
複数層設ける場合には、前記膜の各層の厚さを調整する
ことにより特別の機能を与えることができるものであっ
て、例えば、基体の表面に、屈折率の異なる被覆膜を、
光の4分の1波長に相当する厚さで設けるようにする
と、光はすべて反射される。この手段を鉄、コバルト、
ニッケルなどの金属粉末或は金属の合金粉末、或いは窒
化鉄の粉末などの磁性体を基体とするものに適用する
と、光を全反射して白色に輝く磁性トナー用磁性粉体を
得ることができる。さらに、その粉体の上に着色層を設
け、その上に樹脂層を設ければ、カラー磁性トナーが得
られることを開示している。また、本発明者らは前記の
粉体を更に改良し、金属酸化物膜単独ではなく、金属酸
化物膜と金属膜とを交互に複数層有するようにした粉体
も開示した(特開平7ー90310号公報)。これはカ
ラー磁性トナー等として優れた性質を有するものであ
る。
【0005】これらの粉体を製造するには、基体の上に
均一な厚さの金属酸化物膜を複数層設けることが必要で
あって、そのためには金属塩水溶液から金属酸化物また
はその前駆体である金属化合物を沈澱させることが難し
いので、本発明者らは、金属アルコキシド溶液中に前記
の基体を分散し、前記金属アルコキシドを加水分解する
ことにより、前記基体上に金属酸化物膜を生成させる方
法を開発した。この方法は、具体的には、金属アルコキ
シド溶液中に基体を分散し、前記金属アルコシドを加水
分解することにより、基体の表面に金属酸化物を生成さ
せて、金属酸化物膜を形成させ、それを乾燥することに
より、被覆膜を固化させるものである。更に、この工程
を繰り返すことことで、多層の金属酸化物膜を得てい
る。そして、その多層の金属酸化物膜の金属酸化物の種
類、膜厚等を変えることにより、その粉体の反射率を変
更することができる。その上下の金属酸化物膜の組合せ
をその反射率が最大になるように、選択すると、白色度
の高い粉体を得ることができることが判明している。
【0006】更に、本発明者らは多層膜の物質の組み合
わせおよび膜厚を制御することにより、多層膜の反射光
干渉波形を調製できることを見出し、染料や顔料を用い
ずとも、アクリル樹脂粒子や無機中空粒子などの比重
0.3〜2.8g/cm3 の基体の表面に複数の屈折率
の異なる薄い被覆膜(二酸化チタン膜、チタニア膜、ポ
リスチレン膜、金属銀膜等)を有する粉体により、着色
し流体中に分散して青、緑、黄色などの単色のカラーイ
ンキ用顔料およびプラスチック・紙用フィラーを設計す
ることができ、長期保存においても安定な色調の顔料粉
体を提供することを開示した(WO96/2826
9)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】前記の方法により、白
色をはじめとする鮮明に着色した粉体を得ることができ
るようになったが、しかしながら、電子写真法などにお
いては、より解像度が良くコントラストの高い画像を得
ることが必要となってきた。そこで電子写真複写機など
に使用されるカラー磁性トナーには、きれいな画像を形
成するためにはトナーの粒径を小さくして解像度を上げ
ることおよびトナー自身をより鮮明な色に着色すること
が要求されている。
【0008】しかし、上記の問題に関連して、例えば、
前記の金属アルコシドを加水分解することにより、カラ
ー多層膜被膜粉体を形成する際に、金属酸化物の析出速
度が速いと、金属酸化物微粒子核が基体の表面以外の液
相中に析出、成長し、逆に金属酸化物の析出速度を遅く
すると基体表面の固相膜の成長に時間がかかり、効率よ
く制御できず、工業的生産上効率よく、緻密でかつ均一
な厚さの金属酸化物被膜を形成するには満足できないと
いう問題を有している。
【0009】上記の公知技術には、現在までのところ、
工業的生産上効率よく膜厚を精密に制御する技術(組
成、時間などの被膜形成条件)は具現化されていないの
が現状である。従って、本発明の目的は、粉体粒子の基
体の表面に金属酸化物等の固相成分を析出することによ
り、被膜を形成する方法において、上述のような問題点
を解決し、効率的に、精度よく膜厚を制御でき、均一な
厚さの膜を形成することができる被膜形成条件を解明
し、優れたカラー磁性トナーやカラー磁性インキのカラ
ー磁性材料原料またはカラー顔料粉体等の、粉体の基体
表面に多層の被覆被膜を形成した多層膜被覆粉体の製造
方法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記の目的
を達成するために鋭意検討を重ねた結果、粉体粒子の基
体表面に金属酸化物等の固相成分を形成させる被膜形成
条件中、原料組成、固相析出速度および基体量などを制
御することにより、精度良く膜厚を制御でき、均一な厚
さの被膜を形成することができることを見い出し、本発
明を完成した。
【0011】すなわち、本発明は以下のとおりである。 (1) 溶液中にて、粉体粒子を基体とし、該基体表面
に固相成分を析出させる被膜形成を繰り返すことにより
多層膜被覆粉体を製造する方法において、該溶液中に溶
解している固相成分原料が過飽和で、かつ、該基体表面
以外に固相が析出しない条件に固相成分析出速度を設定
することを特徴とする多層膜被覆粉体の製造方法。 (2) 基体表面被膜の線成長速度を調和成長速度以下
に設定することを特徴とする前記(1)の多層膜被覆粉
体の製造方法。
【0012】(3) 固相成分析出速度の設定を、溶液
中固相成分原料濃度、溶液中固相成分析出体積量、基体
表面積、溶液中基体体積量、溶液雰囲気、固相成分析出
時間または固相成分析出触媒条件の設定により行うこと
を特徴とする前記(1)の多層膜被覆粉体の製造方法。 (4) 溶液中の固相成分析出体積量が該液体積量に対
し30 vol%以下であることを特徴とする前記(3)の
多層膜被覆粉体の製造方法。 (5) 溶液中基体体積量が該液体積量に対し30 vol
%以下であることを特徴とする前記(3)に記載の多層
膜被覆粉体の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の基体表面への被膜
形成方法について詳細に説明する。 1.基体表面における膜成長の速度 (1)固相微粒子核を全く析出させずに膜を形成する方
法 液中で粉体粒子を基体としてその表面に固相を析出し被
膜を形成する場合、液中で固相が形成され、単独の原料
から析出した固相のみからなる固相粒子として成長する
場合のギブスの自由エネルギーGLと液相から基体粒子
表面に固相が析出する場合のギブスの自由エネルギーG
Sとを比較すると、式(1)のように、基体粒子表面に
固相が析出する場合の方が小さい、すなわち熱力学的な
自由エネルギーが低い安定な状態である膜になる方が優
先される。
【0014】
【数1】
【0015】ただし、基体表面に対する、液中から供給
される固相成分の量が一定量を超えると、液相中に固相
のみからなる、固相微粒子核が成長するために、これに
より析出する固相の大部分が消費され、膜に供給される
固相の量が急激に減少し所望の厚さの膜にならないこと
になる。この基体粒子表面の膜成長速度を本願発明で
は、線成長速度と呼び、液中で過剩な固相粒子が析出し
ない、すなわち析出する固相の量が丁度、膜の成長速度
と釣り合っている場合の膜の成長速度を調和成長速度と
定義する。
【0016】調和成長速度は、基体表面と析出する固相
の親和性あるいは、固相に覆われた(被膜が形成され
た)後の膜表面の固相と供給される固相の親和性に依存
することは前記のとおりであるが、その大きさを実測す
ることは困難であり、個々の被膜形成反応において実験
的に求めなければならない。またその親和性による依存
度は比較的小さく、むしろ固相の析出速度に依存する方
が大きい。このため、固相の析出速度を調整することに
より、調和成長速度で膜になるかあるいは逆に固相微粒
子核も形成されるかが決定される。
【0017】いま仮に基体粒子を半径Rの球とし、単位
時間当たりの線成長速度をvとし、この基体粒子に対す
る調和成長速度をVa とする。半径Rの基体では、ある
時間に単位時間あたり固相の析出重量Wt が求められ
る。固相の比重ρの場合には、その時間に単位時間あた
りに析出する固相の析出体積量は VS =Wt /ρであ
るから、その時間の膜の厚さをTt とすると、その時間
までに被覆された膜被覆粉体の表面積St から、調和成
長速度膜の以下の場合には、線成長速度vについて式が
成り立つ。
【0018】
【数2】
【0019】ただし、この場合、液中に基体粒子が適当
な量有り、析出する固相が拡散あるいは固相超微粒子の
移動により、原料が連続的に供給されるものとする。こ
こで、固相超微粒子とは、固相析出より形成される核
(数nm〜数十nm)である。これらの超微粒子は液中
に析出し、その後溶解あるいは衝突を繰り返しながら膜
を形成して行く原料である。一方、固相微粒子核とは数
百nm程度の、液相中で安定に存在し得る、固相のみか
らなる粒子を言う。そして、次の式(3)の関係が成り
立つ時、前記のように基体表面のみ固相が析出、即ち被
膜のみが形成される。
【0020】
【数3】
【0021】なお、この式は球形以外の、基体粒子にも
適用できる。ここで、表面積St はRに比例して増加す
るので、線成長速度を調和線成長速度以下にするために
は、単位時間当たり固相析出量VS を、基体粒子の小さ
い時には少なくし、逆に基体粒子径の大きい時には、比
較的多くできることを示している。(被膜が基体粒子に
対して厚い場合、粒度変化の影響は大きいが、被膜が薄
い場合には影響は少ない)。
【0022】一方、固相の析出速度VS は、反応の形式
により異なり一定ではない。例えば、比較的反応速度の
速い、加水分解反応や中和反応では通常反応開始からし
ばらくの間は指数関数的に速くなり、原料が消費され反
応が遅くなることにより減少する。しかし、重要な点
は、固相の析出量を制御し、線成長速度を調和線成長速
度以下にする事が、均一な膜形成のための必要条件であ
る。上記のことより、均一な膜を形成するには、固相の
析出速度が、調和線成長速度を超えないことが必要条件
である。
【0023】(2)実際の反応 しかし、実際の被膜形成反応では、前述の基本的な方法
とずれる事が多い。その例を以下に述べる。 ・基体粒子表面と固相および固相同志の間には親和性が
あり、親和性の善し悪しで、線成長速度を補正する必要
がある。 ・基体量が少ない希薄の場合には、固相析出速度をやや
遅くする必要がある。・物質によっては反応開始のため
のエネルギーが十分になるまでのタイムラグがあり、反
応開始がやや遅くなることがある。この場合、反応開始
時の反応活性をやや高めにする事が好ましい。
【0024】・僅かに固相の析出が過剩な場合には、液
中に析出した固相超微粒子が膜に取り込まれる事があ
る。この場合、固相超微粒子が膜の性状に悪影響を及ば
さないならば、この固相超微粒子の取り込み(オストワ
ルド・ライプニング現象)も加味して、固相析出速度を
やや過剩にすることができる。 ・また基体試料の形状が変われば、単純に放射状に成長
するのではないので、基体の形状に関する補正も必要で
ある。これらの因子を加味した固相析出量は実験的に決
定しておくことが肝要である。
【0025】(3)固相析出量の下限 逆に、線成長速度が遅く、析出する固相が少ない場合に
は、目的とする厚さの被膜が形成されない事がある。少
なくとも固相が析出し、液中で被膜を形成するために、
十分に過飽和な固相成分濃度でなければ、被膜は形成さ
れない。上記のことより、過飽和農度以上で調和線成長
速度以下の固相析出速度になるように、反応系を適当に
制御すれば均一な被膜が形成できる。
【0026】2.基体表面における被膜成長の限定要件 (1)一般的に、被膜成長速度は、被膜形成反応の出発
溶液の中の固相成分濃度と被覆される基体量に大きく依
存している。このうち特に、基体の表面積Sによるとこ
ろが大きい。一方、被膜形成反応の出発溶液中の基体の
重量Wに対しては、基体の密度(ρ)により、液相中へ
の充填重量が異なり、
【0027】
【数4】
【0028】となる。ここでVは基体の体積である。次
に所望の膜の厚さにするための固相成分原料の量を求め
る方法についで説明する。固相成分原料の重量M、固相
成分原料が完全に反応して固相になった場合の重量WM
とその密度ρM 、製膜すべき厚さTtotal と、更に固相
成分原料の分子量mo と固相成分の分子量ms 、完全な
反応前後の固相成分原料と固相反応前後のモル比をmと
すると、析出する固相の量は、
【0029】
【数5】
【0030】となる。ここで、実際に析出した固相の体
積と膜の体積の関係は、原料からの固相成分の反応率P
M 、残存原料の割合をPR 、基体の表面積をSとする
と、次のようになる。
【0031】
【数6】
【0032】上記の式を等号にするためには、粒子の形
状や表面状態などによる、膜厚増加に対する体積増加係
数kを実験的にもとめておけば良い。
【0033】
【数7】
【0034】このようにして、所望の膜の厚さにするた
めの固相成分原料の量が求まる。しかし、反応速度は反
応形態あるいは反応条件により変化し、時間変化も大き
い。例えば、前述のように、最初指数関数的に反応が進
む場合でも、液中固相成分原料が消費されれば速度が急
速に落ちる。また、複数の反応の内の一つの反応に律速
され、一定速度で反応がゆっくり進むこともある。結局
のところ、実験的に調和線成長速度にみあった固相析出
速度を求めて、それ以下の線成長速度で被膜形成する事
が重要になる。
【0035】以下に実験的に求めた限界について述べ
る。 (2)調和線成長速度にみあった固相析出速度の限定に
関して、通常固相析出速度は、指数関数的に時間と共に
速くなり、液中に溶解している固相成分原料の消費と共
に低下する事は前述した。被膜形成に都合のいい固相析
出速度は、調和線成長速度を越えなければ良いが、通常
実験的には、加水分解などの場合、毎秒の固相析出体積
量で、反応溶媒体積量に対し、10-2 vol%/秒以下、
好ましくは5×10-3 vol%/秒以下、さらに好ましく
は10-3 vol%/秒以下であれば基体量に応じた被膜形
成が可能であり、上限を越えると、白濁して固相成分の
析出粒子核と基体の混合物になったり、被覆粉体同志の
固着が始まったり、酷い時には一斉に固化して寒天状に
なったりすることもある。
【0036】一方、10-6 vol%以上、好ましくは10
-5 vol%以上であれば、十分に膜厚が制御でき、均一な
膜被覆粉体が得られる。しかし、この下限以下では、例
え被覆される基体濃度を減らしたとしても、目的とする
十分な膜厚が得られない。なお、固相析出体積量が上記
の範囲中にあれば、液中に溶解している未反応の固相成
分原料の濃度は特に問題とならない。
【0037】(3)溶液中の固相成分析出量に関する限
定 溶液中の固相成分析出量に関する限定の際には、調和線
成長速度を越えなければ良い。通常実験的には、溶液中
の固相成分析出体積量で、反応溶液体積量に対し、30
vol%以下、好ましくは15 vol%以下、さらに好まし
くは10 vol%以下であれば基体量に応じた被膜形成が
可能である。上限を越えると、白濁して固相成分析出粒
子核と基体の混合物になったり、被覆粉体同志の固着が
始まったり、酷い時には一斉に固化して寒天状になった
りする事もある。なお、固相析出体積量が上記の範囲中
にあれば、液中に溶解している未反応の固相成分原料の
濃度は特に問題とならない。
【0038】(4)基体量の限定 実際には、被膜形成に都合の良い固相成分析出速度は、
調和線成長速度を越えなければ良いが、通常実験的に
は、基体の体積量で、反応溶液体積量に対し、30 vol
%以下、好ましくは10 vol%以下、さらに好ましくは
5 vol%以下であれば基体量に応じた被膜形成が可能で
ある。上限を越えると、白濁して固相成分析出粒子核と
基体の混合物になったり、被覆粉体同志の固着が始まっ
たり、酷い時には一斉に固化して寒天状になったりする
事もある。逆に0.01 vol%以上、好ましくは0.0
5 vol%以上、さらに好ましくは0.1 vol%以上であ
れば良い。下限以下より液中の基体量が少ないと固相の
析出が過剰になり易く、また固相成分析出量が固相成分
原料濃度の変化により急激に変化し制御できなくなる。
また膜厚が制御できたとしても得られる粉体の量が少な
くなる。
【0039】3.酸化物被膜の形成方法 (1)通常の加水分解速度の固相成分の原料を使用する
被膜形成方法 容器に通常の加水分解速度により酸化物が形成される固
相成分原料、水、溶媒、分散剤および基体を入れ混合す
る。これらの添加順序はどのようであっても良い。ま
た、被膜形成を行うために好適な、基体と固相成分原料
の量的関係は出発溶液中の固相成分原料重量Mと基体の
表面積Sに対して、0.01S≦M≦10Sが好まし
く、さらに好ましくは、0.05S≦M≦5Sである。
固相成分原料、水、溶媒、分散剤および基体を混合後、
2〜48時間被膜形成反応させる。被膜形成反応は反応
雰囲気中の湿度にも影響されるので、解放系の場合、湿
度は70%RH以下が好ましく、さらに好ましくは50
%RH以下である。特に、膜厚の精密制御を行うために
は、三口セパラブルフラスコのような容器にパーフェク
トシールのような軸封シールをして、周りの空気の出入
りの無い密閉系とすることが好ましい。空気中の水蒸気
の影響を除くために、キャリアガスとしてHe、Ar、
2 などの不活性ガスや乾燥空気を流す事が好ましい。
【0040】反応の温度は通常10〜90℃の範囲であ
るが、好ましくは15〜70℃の範囲である。10℃未
満ではアルコシドが凝固して溶解せず反応が起こらない
場合があり、90℃を超えて高くなると、固相析出が進
みすぎて制御できなくなり、共に不適である。しかし固
相の析出速度が、調和線成長速度を超えなければ、問題
はなく、また時間を短縮できるので、反応系によっては
40〜150℃、好ましくは、50〜100℃で加熱反
応させることが可能である。所定の条件で反応後、被覆
粉体を沈降して、上液を除き、さらに有機溶媒を添加し
て希釈洗浄を行う。有機溶媒はエタノール、イソプロパ
ノールなどのアルコール類、あるいはアセトンなどのケ
トン類、エチレングリコールなどのエーテル類などで洗
浄する。これは反応を停止させるとともに、未反応物を
除去し、残った固相成分原料による被覆粉体同志の液架
橋による固着を防ぐためである。洗浄時に分散剤を添加
しても良い。なお、洗浄前に、必須ではないが、固相成
分の結合安定化のため放置して、熟成することが好まし
い。
【0041】洗浄後に粉体の乾燥を行う。基体自身が酸
化や熱変質を起こしやすい物については、真空あるいは
不活性ガス雰囲気内で、80〜300℃、好ましくは1
00〜250℃で乾燥する。一方、基体が酸化や熱変質
を起こし難い物は、80〜300℃、好ましくは100
〜250℃で空気中で乾燥することができる。但し、室
温から50℃までは、基体にかかわらず空気中で乾燥が
可能である。粉体の乾燥方法としては、洗浄した粉体を
広い面積のバットにまき広げる等して、粉体同志が固着
しないようにする。さらに別の方法としては、40〜7
0℃に加熱した板に、まき広げることもできる。また多
量の乾燥処理の場合には、チタニア被覆粉末にはスプレ
ードライヤーなどの噴霧乾燥機、加熱真空攪拌乾燥機あ
るいは回転式ドラムの真空連続乾燥機が好ましい。特
に、シリカ被覆粉体には、スプレードライヤーなどの噴
霧乾燥機、あるいは回転式ドラムの真空連続攪拌乾燥機
が適している。
【0042】乾燥された粉体は熱処理(焼成)すること
が好ましい。基体自身が酸化や熱変質を起こしやすい物
については、真空あるいは不活性ガス雰囲気内で、30
0〜1300℃、好ましくは300〜1000℃で熱処
理を行う。一方、基体が酸化や熱変質を起こしにくい物
は、300〜1300℃、好ましくは300〜1000
℃で空気中で熱処理することができる。熱処理すると、
被覆膜が相互に凝集・固着することが全く起こらず、か
つ熱処理により膜を構成する金属酸化物の密度が高めら
れて被覆粒子の粒径は小さくなり、膜の屈折率が上が
る。
【0043】(2)加水分解反応性の高い固相成分原料
から被膜を形成する方法 容器に溶媒と加水分解反応性の高い固相成分原料(例え
ば、金属エトキシド)、水、触媒、分散剤および基体を
入れ混合する。これらの固相成分原料と水と溶媒の混合
比は、前記(1)の通常の加水分解速度の固相成分原料
を使用する被膜形成方法の場合と同様である。これらの
添加順序は、溶媒に固相成分原料、分散剤および基体を
入れた混合溶液を作製した後、水、あるいは水、溶媒お
よび非水溶媒からなる混合溶液を5分〜5時間、好まし
くは15分〜3時間かけて添加する。
【0044】アルコキシドのような極めて加水分解反応
速度の高い原料は、空気中の湿度に影響されるので、解
放系の場合、湿度は70%以下であることが望ましく、
更に50%以下であることが望ましい。その他の条件に
ついては、前記(1)の通常の加水分解速度の原料を使
用する場合と同様であるが、反応時間は、水、あるいは
水、溶媒および非水溶媒からなる混合溶液の添加開始
後、0.5〜48時間である。反応温度は20〜60℃
が好ましい。洗浄は前記有機溶媒以外にpH8〜12の
アルカリ水(アンモニア水)でも良い。
【0045】(3)中和により被膜を形成する方法 中和により固相が析出する場合、塩類水溶液をアルカリ
溶液で中和し、被膜形成するか、あるいは尿素のように
加熱することにより、アンモニア(アルカリ)を分解溶
出させる(尿素法)ことにより、塩を中和し被膜形成す
る。反応温度は50〜100℃である。被膜形成後の粉
体は、蒸留水で十分に希釈洗浄し、洗浄後乾燥する。 (4)熱分解法により被膜を形成する方法 硫酸塩など加熱熟成により被膜を形成する固相成分原料
を用いて被膜形成する場合には、固相成分原料の水溶液
中に基体を分散した後、固相成分原料を熱分解して被膜
形成する。反応温度は50〜100℃である。
【0046】4.調和線成長速度および線成長速度の評
価法 固相析出量の測定により、調和線成長速度および線成長
速度を評価する具体的な方法について、一例として、シ
リカコート粉体のシリカコート膜厚(固相析出量)の時
間変化に基いての膜線成長速度曲線の作成例について述
べる。加水分解開始後一定時間毎にシリカコート粉体を
サンプリングし、各サンプルの皮膜成分の重量または光
学的に膜厚を測定し固相析出増加量を算出し、各サンプ
リング時の固相析出量を加水分解開始より加算した累積
固相析出量を求める。ただし、この場合の固相析出量
は、固相析出反応によって基体表面皮膜以外の液相中に
固相微粒子核が析出しない、上限の固相析出量である。
これを反応時間に対してプロットすると図1の曲線2の
様に表される。これらの各点をスムースに結んで引かれ
た曲線が膜線成長量分布曲線2である。
【0047】この膜線成長量分布曲線2の指数関数的膜
成長期の接線と反応時間軸との勾配から調和線成長速度
曲線1を求める。膜線成長量分布曲線2から調和線成長
速度曲線1を得るには、この膜線成長量分布曲線2を図
上微分することによって行われる。図1に描かれた膜線
成長量分布曲線2上にできるだけ多くの点の切線をと
り、その勾配から固相析出速度を求める。即ち、累積固
相析出量値を用いて数値微分を行うことである。このよ
うにして求めた固相析出速度を図2のように反応時間に
対してプロットして膜線成長速度分布曲線4を描くこと
ができる。なお、サンプリングの数を増やすことによっ
て誤差の少ない分布曲線を描くことができる。この膜線
成長速度分布曲線4のピークにおける固相析出速度が調
和線成長速度曲線(時間微分後)3である。
【0048】なお、上記は、基体表面に固相析出を行う
ため、固相成分原料等の添加を、反応開始時に一括添加
で行ったものである。しかし、目的とする膜厚に応じ
て、固相成分原料等を複数回に分けて、添加し、被膜を
形成することができる(以下、複数回分式ともいう)。
複数回分式の場合、図3、4に示すように、例えば、固
相析出速度4が調和線成長速度を超えない量の原料を追
加することにより、1回の添加による製膜膜厚より厚い
膜を形成する事ができる。理論的には時間を無限にし、
添加を無限にすれば膜厚は、無限にできる。しかし工業
的に見合う時間では、膜厚は最大20μmが限界で、こ
れ以上は時間とコストが掛かり過ぎ、合理的ではない。
【0049】5.基体表面への被膜形成に関する他の条
件 本発明に用いられる、基体としては、特に限定されるも
のではなく、金属としては、鉄、ニッケル、クロム、チ
タン、アルミニウム等、どのような金属でもよいが、そ
の磁性を利用するものにおいては、鉄等磁性を帯びるも
のが好ましい。これらの金属は合金でも良く、前記の磁
性を有するものであるときには、強磁性合金を使用する
ことが好ましい。また、金属化合物としては、前記金属
の酸化物、例えば、鉄、ニッケル、クロム、チタン、ア
ルミニウム、ケイ素等の他カルシウム、マグネシウム、
バリウム等の酸化物、或はこれらの複合酸化物でも良
い。さらに、金属酸化物以外の金属化合物としては、金
属窒化物、金属炭化物、等をあげることができ、具体的
には鉄窒化物等を用いることがでる。
【0050】基体として、金属以外では、半金属、非金
属の化合物、特に、酸化物、炭化物、窒化物であり、シ
リカ、ガラスビーズ等を使用することができる。さら
に、樹脂粒子が好ましく、例えば、セルロースパウダ
ー、酢酸セルロースパウダー、ポリアミド、エポキシ樹
脂、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリウレタン、酢酸
ビニル樹脂、ケイ素樹脂、アクリル酸エステル、メタア
クリル酸エステル、スチレン、エチレン、プロピレンお
よびこれらのの誘導体の重合または共重合により得られ
る球状または粉砕の粒子などが挙げられる。本発明の基
体の粒径は、特に限定されず、目的に応じて適宜調製す
ることができるが、0.01μm〜数mmの範囲のもの
が好ましい。
【0051】基体の表面に被覆膜を構成する金属酸化物
としては、例えば、鉄、ニッケル、クロム、チタン、亜
鉛、アルミニウム、カドニウム、ジルコニウム、ケイ素
等の他カルシウム、マグネシウム、バリウム等の酸化物
を用いることができる。この金属酸化物の種類は、その
基体の表面に付与しようとする性質に応じてそれに適す
るものが選択される。金属酸化物を生成するに際して
は、その金属酸化物の成分である金属のアルコキシドの
溶液中に基体を分散し、金属アルコキシドを加水分解す
ることにより、前記基体の表面上にその金属の酸化物を
生成させる。この加水分解による金属酸化物の生成方法
は、いわゆるゾルーゲル法と呼ばれ、微細で比較的均一
な組成の酸化物が形成されるが、この方法を粉体に適用
することにより、均一な厚さでしかも厚い膜が得られ
る。金属アルコシドとしては、亜鉛、アルミニウム、カ
ドニウム、チタン、ジルコニウム、タンタル、ケイ素等
必要な金属酸化物に対応する金属のアルコキシドが選択
される。磁性トナー用の磁性粉体を作成するには表面の
金属酸化物として、チタン、ケイ素の酸化物を形成させ
る例が多く、この場合はケイ素またはチタンのアルコキ
シドが使用される。
【0052】本発明の多層膜被覆粉体の製造方法におい
て、粉体粒子を基体とし、この基体表面に固相成分を析
出させる上記の被膜形成を繰り返すことにより多層膜被
覆粉体を製造するが、各層の膜は、隣接する層を構成す
る金属酸化物膜が、同じ金属を組成とする金属酸化物膜
で構成されていても、また金属の種類が異なったもので
もよい。
【0053】本発明によらないで、相当に厚い層からな
る金属酸化物膜の層を1回の製膜で粉体の表面(あるい
は、既に既設の金属酸化物膜層を有する粉体の表面)に
被覆すると、前記のように、基体表面被膜の線成長速度
が調和成長速度以上になり易く、基体表面以外に固相が
析出し、固相成分析出粒子核と基体の混合物になった
り、被覆粉体同志の固着が始まったりする事もある。更
に、被覆せしめた金属酸化物層ゲルを乾燥する際にその
表面に固相成分析出粒子核が付着し、隣接する粉体の被
覆金属酸化物層ゲル表面に固着し、乾燥後前記隣接する
粉体が離れる際にどちらかの粉末上の被覆膜が破壊され
ることが起きる。このような被覆膜の破壊が生じた部分
では、例えばカラー磁性粉体の場合には反射率が低下
し、カラー磁性粉体の彩度が悪くなり、色調が変わる。
【0054】本発明は、その膜厚が固着が生じるような
膜厚となるような場合において、例えば、同一の金属酸
化物膜層の形成を2回以上に分けることにより、その固
着の問題を避けることができる。本発明のさらに強調す
べき特徴は、多層膜被覆粉体の製造方法において、上記
の被膜の形成工程を複数回に分けて行うことにより、同
一被膜を複層に形成する際、乾燥および熱処理は一回の
被膜の製膜の被覆工程毎に行うことが好ましいが、被覆
膜を被覆し、洗浄後乾燥および熱処理を行なわずに、そ
の上に被覆膜を順次被覆した後に行ってもよく、または
各種被膜を多層に形成する際、多層の被覆膜を順次被覆
した後、最終工程で乾燥および熱処理を行ってもよく、
隣接多層膜被覆粉体間で被覆膜の凝集・固着のない多層
膜被覆粉体が得られる。
【0055】本発明において、その複数回に分けて膜を
形成させる金属酸化物膜について、分けたその1回に形
成する膜の厚さとしては、0.005〜5.0μmの範
囲とすることが好ましい。複数回に分けて形成する金属
酸化物膜の合計の厚さとしては、前記したカラー磁性粉
体の場合、その干渉による反射率が良い金属酸化物層を
形成するためには、金属酸化物層を相当に厚い層、好ま
しくは0.01〜20μmの範囲、さらに好ましくは
0.02〜5.0μmの範囲の厚味とすることが好まし
い。粒径が制限されるなど特に薄い膜厚で可視光を干渉
反射させるためには0.02〜2.0μmの範囲とする
ことが好ましい。本発明の多層金属酸化物膜を有する粉
体に形成するその他の金属酸化物膜の各層の層厚は特に
限定されないが、0.01〜20μmの範囲とすること
が好ましく、さらに好ましくは0.02〜10μmであ
る。既に前記したように本発明の特徴ある製品であるカ
ラー磁性粉体の場合、その可視光域で反射率が良く薄い
金属酸化物膜層を形成するためには0.02〜5.0μ
mの範囲の厚みとすることが好ましい。
【0056】上記の方法で形成された基体表面への被覆
膜は、種々の金属酸化物膜または金属膜と組み合わせ
て、複数層設けることができる。特に、カラー磁性トナ
ーやカラー磁性インキのカラー磁性材料原料またはカラ
ー顔料粉体等のカラー粉体材料とする場合には、金属酸
化物膜は、他の金属酸化物膜または金属膜と組み合わせ
て複数層設ける必要がある。金属酸化物膜を2層以上設
けるためには、基体の表面に異種の金属酸化物の膜を形
成した後、その上に前記膜の金属酸化物と同じ、または
異なる金属酸化物の膜を順次形成するようにして作るこ
とができる。前記金属酸化物膜被覆粉体は、必要によ
り、前記金属酸化物膜の層の上に樹脂層を設けてもよ
い。このようにして形成した、表面に均一な厚さの膜を
有する粉体は、それを構成すべく選択した粉体の材質お
よび表面の膜の材質により、種々の性質を合わせ持つの
で、それぞれの用途に用いることができる。
【0057】
【実施例】以下、本発明を実施例によって本発明を更に
具体的に説明するが、勿論本発明の範囲は、これらに限
定されるものではない。
【0058】実施例1 第1層目:シリカコーティング カーボニル鉄粉(BASF製、平均粒径1.8μm、比
表面積0.7m2 /g)20gをエタノール200ml
中に分散し、容器をオイルバスで加熱して液の温度を2
0℃に保持した。これにシリコンエトキシド8gとアン
モニア水(29%)8gおよび水8gを添加し、攪拌し
ながら5時間反応させた。なお、この時のシリカコート
膜の調和成長速度は、1.2nm/min.であり、そ
れに対する固相析出量は、1.28×10-2g/mi
n.で、線成長速度は1.14nm/min.であっ
た。反応後エタノールで十分希釈洗浄し、濾過し、真空
乾燥機110℃で3時間乾燥し、回転式チューブ炉で6
50℃30分間加熱処理を施し、シリカ膜厚72nmの
シリカコート粉体Aを得た。
【0059】第2層目:チタニアコーティング 前記シリカコート粉体A 8gをエタノール250ml
中に分散し、容器をオイルバスで加熱して液の温度を2
0℃に保持した。これにチタンエトキシド3.0gを加
え、さらにエタノール30mlと水3.5gの混合溶液
を60分かけて滴下した後、5時間反応させた。なお、
この時のシリカコート膜の調和成長速度は、1.1nm
/min.であり、それに対する固相析出量は、1.3
×10-2g/min.で、線成長速度は1.0nm/m
in.であった。反応後エタノールで希釈洗浄し、バッ
ト上で乾燥し、次いで、真空乾燥機110℃で3時間乾
燥し、回転式チューブ炉で650℃30分間加熱処理を
施し、チタニア膜厚59nmのシリカ・チタニアコート
粉体Bを得た。得られたシリカ・チタニアコート粉体の
シリカ・チタニアの各膜厚は均一であり、分散状態は非
常に良かった。また反応液相中に、固相微粒子核の形成
は観られなかった。また、この粉体の分光反射曲線のピ
ーク波長は440nmであり、ピーク波長での反射率は
40%で、鮮やかなシアンであった。
【0060】実施例2(各層2回被覆の場合) 第1層目:シリカコーティング カーボニル鉄粉(BASF製、平均粒径1.8μm、比
表面積0.7m2 /g)20gをエタノール200ml
中に分散し、容器をオイルバスで加熱して液の温度を5
5℃に保持した。これにシリコンエトキシド6gとアン
モニア水(29%)8gおよび水8gを添加し、攪拌し
ながら2時間反応させた。なお、この時のシリカコート
膜の調和成長速度は、1.2nm/min.であり、そ
れに対する固相析出量は、1.2×10-2g/min.
で、線成長速度は1.1nm/min.であった。反応
後エタノールで十分希釈洗浄し、濾過し、シリカ膜厚4
1nmのシリカコート粉体Cを得た。これを洗浄後エタ
ノール200ml中に分散し,容器をオイルバスで加熱
して液の温度を55℃に保持した。これにシリコンエト
キシド6gとアンモニア水(29%)8gおよび水8g
を添加し、攪拌しながら2時間反応させた。なお、この
時のシリカコート膜の調和成長速度、1.2nm/mi
n.であり、それに対する固相析出量は、1.3×10
-2g/min.で、線成長速度は1.13nm/mi
n.であった。反応後エタノールで十分希釈洗浄して、
全シリカ膜厚85nmのシリカコート粉体Dを得た。
【0061】第2層目:チタニアコーティング 前記シリカコート粉体D 8gをエタノール250ml
中に分散し、容器をオイルバスで加熱して液の温度を5
5℃に保持した。これにチタンエトキシド3.0gを加
え、さらにエタノール30mlと水3.5gの混合溶液
を60分かけて滴下した後、3時間反応させた。なお、
この時のチタニアコート膜の調和成長速度は、1.1n
m/min.であり、それに対する固相析出量は、1.
25×10-2g/min.で、線成長速度は0.95n
m/min.であった。反応後エタノールで希釈洗浄し
て、チタニア膜厚38nmのシリカ・チタニアコート粉
体Eを得た。シリカ・チタニアコート粉体E 8gをエ
タノール250ml中に分散し、これにチタンエトキシ
ド2.5gを加え、さらにエタノール30mlと水3.
5gの混合溶液を60分かけて滴下した後、前記の反応
条件で3時間反応させた。なお、この時のチタニアコー
ト膜の調和成長速度は、1.1nm/min.であり、
それに対する固相析出量は、0.89×10-2g/mi
n.で、線成長速度は0.68nm/min.であっ
た。反応後エタノールで十分希釈洗浄し、濾過し、真空
乾燥機110℃で3時間乾燥し、回転式チューブ炉で6
50℃30分間加熱処理を施し、全チタニア膜厚64n
mのシリカ・チタニアコート粉体Fを得た。得られたシ
リカ・チタニアコート粉体のシリカ・チタニアの各膜厚
は均一であり、分散状態は非常に良かった。また反応液
相中に、固相微粒子核の形成は観られなかった。また、
この粉体の分光反射曲線のピーク波長は555nmであ
り、ピーク波長での反射率は40%で、鮮やかな緑色で
あった。
【0062】比較例1 第1層目:シリカコーティング BASF製カーボニル鉄粉(平均粒径1.8μm)16
gをエタノール400ml中に分散し、容器をオイルバ
スで加熱して液の温度を55℃に保持した。これにシリ
コンエトキシド16gとアンモニア水(29%濃度)1
6gを添加し、攪拌しながら5時間反応させた。なお、
この時のシリカコート膜の調和成長速度は、1.2nm
/min.であり、それに対する固相析出量は、2.2
×10 -2g/min.で、線成長速度は0.8nm/m
in.であったが、大部分が液中で微粒子となった。反
応後エタノールで希釈洗浄し、ろ過し、真空乾燥機で1
10℃3時間乾燥した。乾燥後回転式チューブ炉を用い
て加熱処理を650℃で30分間施こし、シリカコート
粉体Gを得た。また、膜厚は50nmであった。
【0063】第2層目:チタニアコーティング このシリカコート粉体Gに対しエタノール500mlを
添加して、そのエタノール中に分散し、容器をオイルバ
スで加熱して液の温度を55℃に保持した。これにチタ
ンエトキシド7.2gを加え、さらにエタノール30m
lと水3.6gの混合溶液を30分間かけて滴下した
後、5時間反応させた。なお、この時のシリカコート膜
の調和成長速度は、1.1nm/min.であり、それ
に対する固相析出量は、2.5×10-2g/min.
で、線成長速度は0.8nm/min.であったが、大
部分が液中で微粒子となった。反応後エタノールで希釈
洗浄し、ろ過し、真空乾燥機で110℃3時間乾燥し
た。乾燥後、回転式チューブ炉を用いて加熱処理を65
0℃で30分間施し、シリカ・チタニアコート粉体Hを
得た。また、膜厚は39nmであった。その結果、得ら
れた粉体は分散性が悪く、粒子表面にも粒子相互の結着
に原因したものと考えられる欠けた箇所がいくつもみら
れ、シリカ・チタニアコート膜の形成は不均一になり、
反応液相中に、固相微粒子核の形成が観られた。得られ
た粉体の分光反射曲線のピーク波長は390nmであ
り、ピーク波長での反射率は22%で、暗い青色であっ
た。
【0064】
【発明の効果】本発明の方法により、基体の表面以外の
液相中に固相微粒子核が析出・成長する事がなく、また
基体表面の固相膜の成長も適度な時間で行われ、工業的
生産上効率よく、緻密でかつ均一な厚さの被膜を有する
分散性の良好な多層膜被覆粉体の製造が可能になった。
【0065】
【図面の簡単な説明】
【図1】累積膜成長量と調和線成長速度との関係を示す
図。
【図2】図1より求めた累積膜成長量からの固相析出速
度の時間変化と調和線成長速度との関係を示す図。
【図3】固相成分原料の添加を複数回分式で行った場合
の累積膜成長量と調和線成長速度との関係を示す図。
【図4】図3より求めた累積膜成長量からの固相析出速
度の時間変化と調和線成長速度との関係を示す図。
【符号の説明】
1 調和線成長速度曲線Va 2 膜線成長量分布曲線 3 調和線成長速度曲線(時間微分後)Va 4 膜線成長速度分布曲線V

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶液中にて、粉体粒子を基体とし、該基
    体表面に固相成分を析出させる被膜形成を繰り返すこと
    により多層膜被覆粉体を製造する方法において、該溶液
    中に溶解している固相成分原料が過飽和で、かつ、該基
    体表面以外に固相が析出しない条件に固相成分析出速度
    を設定することを特徴とする多層膜被覆粉体の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 基体表面被膜の線成長速度を調和成長速
    度以下に設定することを特徴とする請求項1に記載の多
    層膜被覆粉体の製造方法。
  3. 【請求項3】 固相成分析出速度の設定を、溶液中固相
    成分原料濃度、溶液中固相成分析出体積量、基体表面
    積、溶液中基体体積量、溶液雰囲気、固相成分析出時間
    または固相成分析出触媒条件の設定により行うことを特
    徴とする請求項1に記載の多層膜被覆粉体の製造方法。
  4. 【請求項4】 溶液中の固相成分析出体積量が該液体積
    量に対し30 vol%以下であることを特徴とする請求項
    3に記載の多層膜被覆粉体の製造方法。
  5. 【請求項5】 溶液中基体体積量が該液体積量に対し3
    0 vol%以下であることを特徴とする請求項3に記載の
    多層膜被覆粉体の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015141400A (ja) * 2014-01-30 2015-08-03 株式会社リコー トナー、現像剤、現像剤収容容器、及び画像形成装置
WO2022080487A1 (ja) * 2020-10-16 2022-04-21 住友金属鉱山株式会社 鉄(Fe)-ニッケル(Ni)系合金粉の製造方法

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JP2015141400A (ja) * 2014-01-30 2015-08-03 株式会社リコー トナー、現像剤、現像剤収容容器、及び画像形成装置
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