JPH10259037A - 撥水性被膜およびその形成法 - Google Patents

撥水性被膜およびその形成法

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JPH10259037A
JPH10259037A JP9065699A JP6569997A JPH10259037A JP H10259037 A JPH10259037 A JP H10259037A JP 9065699 A JP9065699 A JP 9065699A JP 6569997 A JP6569997 A JP 6569997A JP H10259037 A JPH10259037 A JP H10259037A
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water
film
coating
repellent
substrate
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Tsutomu Minami
努 南
Yoshiyuki Kowada
善之 小和田
Seiji Tadanaka
清治 忠永
Hiroshi Inaba
博司 稲葉
Keiji Honjo
啓司 本城
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Central Glass Co Ltd
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Central Glass Co Ltd
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    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03CCHEMICAL COMPOSITION OF GLASSES, GLAZES OR VITREOUS ENAMELS; SURFACE TREATMENT OF GLASS; SURFACE TREATMENT OF FIBRES OR FILAMENTS MADE FROM GLASS, MINERALS OR SLAGS; JOINING GLASS TO GLASS OR OTHER MATERIALS
    • C03C17/00Surface treatment of glass, not in the form of fibres or filaments, by coating
    • C03C17/006Surface treatment of glass, not in the form of fibres or filaments, by coating with materials of composite character
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    • C03C17/009Mixtures of organic and inorganic materials, e.g. ormosils and ormocers
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03CCHEMICAL COMPOSITION OF GLASSES, GLAZES OR VITREOUS ENAMELS; SURFACE TREATMENT OF GLASS; SURFACE TREATMENT OF FIBRES OR FILAMENTS MADE FROM GLASS, MINERALS OR SLAGS; JOINING GLASS TO GLASS OR OTHER MATERIALS
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐久性にも優れた超撥水膜を手軽に容易な膜
形成手段で安価に効率よく得る 【解決手段】 基体上に、少なくともジメチルシリコン
アルコキシドからなる調製液を塗布液として成膜し、40
0 〜600 ℃で熱処理して基体上に透明シリカ膜を形成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超撥水性能を示す
ことはもとより、耐熱性や耐候性に優れた撥水性被膜お
よびその形成法に関し、車両用、船舶用、航空機用ある
いは建築用等の内外ウインドウガラスやミラーガラスや
装飾用ガラス、あるいは各種建築材や建装材など広く使
用可能である有用な撥水性被膜およびその形成法を提供
するものである。
【0002】
【従来の技術】最近、半導体分野ではもとより、ガラス
基板でなる窓材をはじめ、金属やプラスチツク等の各種
建築建装資材あるいは布地などの表面に撥水性を付与す
ることが行われ、種々その性能を向上せしめるような提
案、特に超撥水性を持たせる提案がなされている。
【0003】例えば、特公平7-86146 号公報には、撥水
撥油防汚性被膜及びその形成方法について、400nm 未満
の凹凸が形成された基体の表面に、少なくともシロキサ
ン結合を介してフッ素を含む化学吸着単分子膜が形成さ
れており、表面に400nm 未満の凹凸を持つ撥水撥油防汚
性被膜、ならびに基体表面に400nm 未満の凹凸を形成す
る工程と、一端にクロルシラン基(SiCln X3-n基、n=1,
2,3 、X は官能基)を有し、他の一端にフッ素炭素基を
有するクロロシラン系界面活性剤を溶かした非水系有機
溶媒中に、前記基体を浸漬し、前記活性剤よりなる化学
吸着単分子膜を基体表面に形成する工程を含む表面に40
0nm 未満の凹凸を持つ撥水撥油防汚性被膜の製造方法が
記載されている。
【0004】なかでも、前記凹凸形状は、サンドブラス
ト法、フッ酸を用いた化学エッチング法あるいは電解エ
ッチング法、サンドペ−パ−によるラビング法により形
成されるものであることが記載されている。
【0005】また例えば、特開平6-116430号公報には、
撥水撥油性フイルムとその製造方法について、プラスチ
ックフイルム上の少なくとも片面に微小な凹凸を形成し
た無機硬質膜、前記無機硬質膜上の微小な凹凸上にシロ
キサン結合を介して形成させたフッ素を含む化学吸着単
分子膜とからなる撥水撥油性フイルム、ならびに、プラ
スチックフイルムの少なくとも片面に無機硬質膜を形成
する工程と、前記無機硬質膜の表面を炭素およびフッ素
を含むガス中でプラズマ放電処理を行い、微小な凹凸を
形成する工程と、前記凹凸に形成した無機硬質膜表面を
少なくとも酸素を含むガスでプラズマ放電処理を行い、
凹凸表面を親水性にする工程と、凹凸に形成された無機
硬質膜を表面上に形成した前記プラスチックフイルムを
フッ化炭素基とクロロシリル基を含む化合物を、非水系
の溶媒に溶解した溶液に浸漬し、前記無機硬質膜の凹凸
表面にフッ素を含む化学吸着単分子膜をシロキサン結合
を介して形成させる工程とからなる撥水撥油性フイルム
の製造方法が記載されている。
【0006】なかでも、前記無機硬質膜の膜厚が0.02〜
10μm であること、および微小な凹凸の粗さが0.01〜0.
3 μm であることが記載されている。また例えば、特開
平6-340848号公報には、有機物塗膜について、Siに直接
結合たアルキル基を実質的に含まないポリシロキサン結
合を有し、ポリシロキサン結合のSiの含有量がSiO2とし
て20〜90重量%である非撥水性有機物塗膜が記載されて
いる。
【0007】また例えば、特開平7-197017号公報には、
撥水表面を有する固体およびその生成方法について、表
面の少なくとも一部に、大きい周期の凹凸構造が形成さ
れその凹凸構造が前記周期より小さい周期の凹凸構造を
含む多段凹凸構造を有し、その表面積増倍因子が5以上
である撥水表面を有する固体、ならびに固体表面に、機
械加工を施すことにより、電気めっき等の化学反応処理
を施すことにより、結晶を析出させあるいは粒子を凝集
させることによりそれぞれ撥水表面を有する固体を生成
する方法を記載している。
【0008】なかでも、前記多段凹凸構造は、固体表面
に、切削加工や研削加工や電解加工を含む機械加工、レ
−ザ加工含む電気的加工、電気分解や化学反応や拡散律
速凝集を含む化学的加工、リソグラフイ−、プラズマ加
工、真空蒸着などとその組合せた加工によって形成し、
その周期が1mm以下10nm以上であることが記載されてい
る。
【0009】また例えば、特開平7-206475号公報には、
撥水性層担持部材について、表面上に複数個の凹部およ
び凸部を交互に繰り返し形成し、該表面を撥水性材料か
らなる撥水性膜により被覆した撥水性層担持部材におい
て、上記撥水性膜により被覆された凹部または凸部のピ
ッチが20μm から150 μm までの範囲にあり、該ピッチ
に対する凹部の深さまたは凸部の頂部を結ぶことによっ
て得られる仮想表面の表面粗さが500 μm 以下であるよ
うに凹部および凸部を形成した撥水性層担持部材が記載
されている。
【0010】なかでも、凹部または凸部をフォトリソグ
ラフィ−により四角錘状に形成したこと、ならびに凹部
または凸部を交互に繰り返し形成することによってフレ
ネルレンズにしたことが記載されている。
【0011】さらに他に例えば、特開平6-122838号公報
に記載のはっ水性塗料及びその塗装方法等、特開平6-34
5881号公報に記載の撥水性材料及びその製造方法等、特
開平7-26168 号公報に記載の超撥水性塗料の製造方法
等、特開平7-76797 号公報に記載の有機被膜及びその形
成方法等、特開平4-283268号公報に記載の含フッ素化合
物複合体等の塗料関連の提案がある。
【0012】またさらに例えば、日本化学会誌、1992,
(12),1511〜1514頁には、ゾル−ゲル法によるスポンジ
状アルミナ薄膜の調製について、硝酸アルミニウム九水
和物を用いてアルミナ薄膜を形成し、該アルミナ薄膜を
熱水中で処理したのち、焼成することで表面構造がスポ
ンジ状に変化し、100 〜200nm の細孔でかつ長さ50〜10
0nm 、幅5nm 前後の繊維状微粒子が連結した集合体から
構成されたスポンジ状アルミナ薄膜が記載されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】前述したような例え
ば、特公平7-86146 号公報に記載の撥水撥油防汚性被膜
及びその形成方法、特開平6-116430号公報に記載の撥水
撥油性フイルムとその製造方法、特開平7-197017号公報
に記載の撥水表面を有する固体およびその生成方法、な
らびに特開平7-206475号公報に記載の撥水性層担持部材
のいずれも、水滴に対する接触角が例えば約160 °程度
のものが得られてはいるものの、例えば不透明であると
か、あるいはその凹凸形状を形成するために酸やフッ素
によるエツチング、各種機械的加工、電気的加工、化学
的加工、フォトリソグラフイ−、プラズマ加工など複雑
な工程が必要であり、また薄膜に対しての処理が難しい
といった課題がある。
【0014】また、凹凸形状を利用している超撥水性膜
では、まず下地として凹凸形状を形成させた上で、撥水
層を被覆形成する必要があり、撥水層の被覆状態によっ
て必ずしも充分その性能を発揮し難い等の課題がある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、光学特性を損
なうことなく可視光透過率がガラス基板並み以上であ
り、かつ硬さも向上し、耐熱性あるいは耐候性等が優れ
たものとなり、建築建装用もしくは自動車用等の窓材、
各種膜付きガラス物品あるいは各種建築資材用等におい
て有用な撥水性被膜およびその形成法を提供するため
に、基体上、例えばガラス基板上に、特定の方法により
透明シリカ膜を形成し、そのシリカ膜自体の特性と表面
の特異な凹凸形状とによってもたらされる特性との相乗
効果を発現せしめたものであり、これにより優れた超撥
水性膜をもたらして格段にその性能を発揮するものとし
た。
【0016】このシリカ膜の表面の特異な凹凸形状は、
図1乃至図2に示すようになり、例えば表層表面におけ
る空隙の径の大きさが約200nm 乃至400nm 程度で、表面
形状は約100nm 乃至400nm ピッチの凹凸の中にさらに小
さい凹凸が形成される所謂フラクタルのような構造をし
ている。なかでも前記平均面粗さRa値が約10nm程度以
上、かつ表面積比 SR が約1.1 程度以上である。
【0017】すなわち、本発明は、基体上に形成した透
明シリカ膜でなり、接触角θが140°以上であることを
特徴とする撥水性被膜。ならびに、前記透明シリカ膜
が、少なくともジメチルシリコンアルコキシドからなる
調製液を塗布液として成膜してなる透明シリカ膜である
ことを特徴とする上述した撥水性被膜。
【0018】また、前記透明シリカ膜の表層面が、凹凸
形状をなすことを特徴とする上述した撥水性被膜。ま
た、前記凹凸形状が、JIS B 0601の計測法による平均面
粗さRa値が10nm以上、表面積比 SR が1.1 以上であるこ
とを特徴とする上述した撥水性被膜。
【0019】さらに、基体表面上に、少なくともジメチ
ルシリコンアルコキシドからなる調製液を塗布液として
塗布した後、熱処理することで、透明シリカ膜を形成す
ることを特徴とする撥水性被膜の形成法。
【0020】また、前記塗布液の溶媒が、ホルムアミド
あるいは水であることを特徴とする上述した撥水性被膜
の形成法。また、前記調製液が、調製液における2相分
離した液のアルコキシドリッチな層の液を塗布液として
用いることを特徴とする上述した撥水性被膜の形成法。
【0021】また、前記熱処理の温度が、400 ℃以上60
0 ℃以下であることを特徴とする上述した撥水性被膜の
形成法。さらにまた、前記基体が、透明ガラス基板であ
ることを特徴とする上述した撥水性膜の形成法にある。
【0022】
【発明の実施の形態】前記したように、基体上に形成し
た透明シリカ膜単層で撥水性被膜とするには、その表面
を図1乃至図2に示すように、空隙を有する特異な凹凸
形状の集合体状にし、かつ表面積を高めて、そのシリカ
膜自体が撥水層として働き、表層表面の特異な凹凸形状
を活かして相乗効果を発現せしめ、よりすぐれた超撥水
性膜をより安定した状態で得られるようにする。
【0023】透明シリカ膜は、ジメチルシリコンアルコ
キシドから少なくともなる塗布液で被膜を形成し、例え
ば約400 〜600 ℃程度で約1〜5分程度の熱処理をする
ことによって形成された透明シリカ膜であって、該透明
シリカ膜の表層表面をJIS B0601による計測法によって
求めると、中心線平均粗さを面拡張した平均粗さRa値が
約10nm以上、かつ表面積比 SR が約1.1 以上のものであ
る。
【0024】上記Ra値が10nm未満であれば、よりすぐれ
た超撥水性膜とはなり難くなり、該Ra値が極端に大きく
なれば膜としての性能、強度あるいは均一均質性等の特
性が悪化しおのずと限界があり、また表面積比 SR が1.
1 未満であれば、よりすぐれた超撥水性膜とはなり難く
なり、好ましくは表面積比 SR が約 1.1〜1.6 程度であ
り、約1.6 程度を超えれば、次第にヘイズ値が高くなっ
て透明性を失うようになるものである。
【0025】前記ジメチルシリコンアルコキシドとして
は、例えばジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエト
キシシランなどが挙げられる。また、ジメチルシリコン
アルコキシドから少なくともなる調製液としては、ホル
ムアミドまたは水を溶媒とし、モル比で約0.1 〜10程度
を加え、触媒として約0.1M〜5M程度の塩酸を約1ml〜5m
l 程度加え、約0.5 〜2 時間程度攪拌した後、2層分離
したアルコキシドリッチな層(上層部分)の液を塗布液
とした。なお、その各原料の添加混合する塗布液の調製
については、例えば後述する実施例1のようにする。
【0026】また、膜付けする塗布法としては、例えば
ディッピング法、スピンコート法、ノズルフローコート
法、スプレー法、リバースコート法、フレキソ法、印刷
法、フローコート法、ならびにこれらの併用等、既知の
塗布手段が採用し得るものである。
【0027】またさらに、前記透明シリカ膜を膜付けす
る際に、前処理を行うとさらに膜の塗布性が向上する。
前処理については、ガラス基板に対する塗布液の濡れ性
を向上させるために、トリメチルクロロシラン、ジメチ
ルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン等のシリル
化剤で表面処理することが望ましい。前処理について
は、ジメチルシリコンアルコキシドから少なくともなる
コーティング液は、疎水性であり、前処理を行わない基
板では塗布液の濡れ性が悪くなるからである。
【0028】また、前記透明シリカ膜を成膜する際にお
ける熱処理については、成膜後膜が乾燥する前に熱処理
することが必要で、例えば約400 〜600 ℃程度で約1〜
5分間程度、好ましくは約500 〜600 ℃程度で約1〜2
分間程度である。該温度が400 ℃未満では、前記の特異
な凹凸形状が形成されず、600 ℃を超えて長時間熱処理
を行うと、撥水性の発現の要因である有機成分が燃焼し
てしまい、撥水性が発現し難いものとなる。
【0029】また、透明シリカ膜の膜厚としては、約40
nm以上300nm 以下程度が好ましい。40nm未満では、前記
の特異な凹凸形状が形成されず、300nm を超える膜厚で
は、焼成後に膜にクラックが発生する危険性が大きくな
ったり、膜の透明性が悪くなったりする場合がある。好
ましくは、約100 〜200nm の範囲がよい。
【0030】またさらに、得られた透明シリカ膜の評価
法としては、走査型電子顕微鏡(SEM )による約1万倍
および約3万倍程度で表層表面を上面視した写真観察、
ならびにサイクリックコンタクトモード原子間力顕微鏡
(CC-AFM)による表層表面を斜視した写真観察ならびに該
観察による該膜の中心線平均粗さRaを面拡張した平均粗
さRa値と表面積比 SR を求めて表示できるようにしたも
のである。(実施例1参照のこと) またさらに、撥水性能の評価方法の一つとしては、接触
角計を用い、該膜の大気中(約25℃)での水滴(水滴量
約10μl )に対する接触角θ(°)を測定することで行
った。その結果、接触角θは約140 °以上、好ましくは
接触角θが約150 °以上170 °以下程度であり、超撥水
性能を有するものであった。
【0031】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。ただし本発明は係る実施例に限定されるものではな
い。
【0032】各実施例の被膜の評価を下記の方法で行っ
た。 被膜形状観察:走査型電子顕微鏡(FE-SEM、日立S450
0 )倍率約1万倍および約3万倍。
【0033】被膜の表層表面の写真観察 走査型プローブ顕微鏡の原子間力顕微鏡(AFM )モー
ド(デジタルインスツルメント、Namo Scope-E、5μm
四方スキャン) 被膜の表層表面および断面を写真観察し、JIS B 0601で
定義されている中心線平均粗さRa値と表面積比 SR を求
めた。
【0034】 膜厚の測定:DEKTAK(Sloan社製、3030) にて測定した。 その他: クラック等の欠陥の有無。膜の各種試
験による耐久性。可視光透過率の変化等光学特性への
影響など、建築用、産業用ならびに自動車等車両用、船
舶用、航空機用などの窓材をはじめ、各種ガラス物品に
必要な事項を評価した。
【0035】実施例1 基板としては大きさ約100mmX100mm で、厚さ約2mm のフ
ロートガラス(組成はソーダーライムシリケート系)を
用い、コーティング面を酸化セリウムで充分に研摩し、
上水で水洗、イオン交換水でリンスした後、イソプロピ
ルアルコールまたはアセトンで払拭し、コーティング用
ガラス基板とした。
【0036】一方、コーティング溶液は以下の手順で調
製した。まず、ジメチルシリコンアルコキシドとして
は、ジメチルジエトキシシラン〔(CH3)2Si(OCH2CH3)2
を用い、溶媒としてはホルムアミド〔HCONH2〕を用い、
モル比でジメチルジエトキシシラン:ホルムアミド=
3:5の割合で混合し、これに2Mの塩酸1mlを添加
し、約30分撹拌した後静置して2層分離した液のアルコ
キシドリッチな上層の液をコーティング溶液として用い
た。
【0037】該コーティング溶液を先に準備したガラス
基板上にディップコーティングにより塗布した後、膜が
ウェットな状態のうちに約500 ℃で約1分間熱処理をし
てシリカ膜を形成した。なお、ディップコーティングす
る際の引き上げ速度は、約2mm/secとした。
【0038】その結果、得られた透明シリカ膜付きガラ
スの被膜について評価すると、被膜の水に対する接触角
は約158 °で超撥水性を示し、優れた撥水性能を示すも
のであり、高い接触角を比較的長時間保った。
【0039】また、被膜の形状については、前記AFM で
被膜の表層表面および断面を写真観察し、JIS B 0601で
定義されている中心線平均粗さRa値等を求めたところ、
表面が約200nm ピッチの凹凸形状で、表面粗さ(中心線
粗さ)が約10〜12nmの範囲内であり、また、表面積比 S
R は約1.2 であった。
【0040】またさらに、前記SEM でも被膜の表層表面
の写真観察を行ったところ、表面が約200nm 程度の凹凸
形状をしており、さらにその凹凸の中に微細な凹凸を形
成する、所謂フラクタルに似た表面形状を持つことが分
かった。
【0041】さらに、可視光透過率も約94%とガラス基
板のみの透過率92%よりも向上した。これは、透明シリ
カ膜の表面の空隙を有する特異な凹凸形状により、反射
率が低減したためである。しかも、該膜の反射色調がニ
ュートラルであり、耐久性に優れ、安定かつ確実に厄介
な工程もなく簡便な手段で効率よく得ることができ、建
築用、産業用ならびに自動車等車両用、船舶用、航空機
用などの窓材をはじめ、各種ガラス物品等に採用可能な
めざす所期の性能を有する撥水性被膜であった。
【0042】実施例2 基板およびコーティング液の組成は実施例1と同様と
し、準備したガラス基板を、トリメチルクロロシラン溶
液に浸漬し、風乾してトリメチルシリル化処理を行った
のち、被膜の成膜は、実施例1と同様にした。
【0043】その結果、実施例1の前処理を行わない場
合よりも膜に対するコーティング液の濡れ性が向上し
た。また、被膜の水に対する接触角は、約165 °であ
り、高い接触角を比較的長時間保った。また、被膜形状
についても、前記AFM ならびに前記SEM を実施例1と同
様に行い、表面が約200nm ピッチの凹凸形状で、表面粗
さ(中心線粗さ)が約10〜12nmの範囲内であり、また、
表面積比 SR は約1.2 であった。
【0044】しかも、該膜の可視光透過率も実施例1と
同様にガラス基板と同等もしくはそれ以上であって、そ
の反射色調がニュートラルであり、耐久性に優れ、安定
かつ確実に厄介な工程もなく簡便な手段で効率よく得る
ことができ、建築用、産業用ならびに自動車等車両用、
船舶用、航空機用などの窓材をはじめ、各種ガラス物品
に採用可能なめざす所期の性能を有する撥水性被膜であ
った。
【0045】実施例3 調製液の溶媒として水を用いた以外、実施例1と同様と
した。その結果、被膜の水に対する接触角は、約163 °
であり、高い接触角を比較的長時間保った。
【0046】また、被膜形状についても、実施例1や2
と同様であった。しかも、該膜の可視光透過率も実施例
1と同様にガラス基板同等もしくはそれ以上であって、
その反射色調がニュートラルであり、耐久性に優れ、安
定かつ確実に厄介な工程もなく簡便な手段で効率よく得
ることができ、建築用、産業用ならびに自動車等車両
用、船舶用、航空機用などの窓材をはじめ、各種ガラス
物品に採用可能なめざす所期の性能を有する撥水性被膜
であった。
【0047】比較例1 コーティング溶液として、メチルトリエトキシシラン
〔CH3Si(OCH2CH3)3 〕とイソプロピルアルコールをモル
比で、3:5となるように混合撹拌の後、2Mの塩酸を
1ml 加えて撹拌したものを用いた。なお、溶媒にイソプ
ロピルアルコールを用いた場合の混合溶液は、実施例1
〜3の場合とは異なり、2相分離しない均一な溶液であ
った。また、被膜のコーティングおよび焼成は、実施例
1と同様とした。
【0048】その結果、形成された被膜は、透明なシリ
カ膜であったものの、被膜の水に対する接触角は、約80
〜90°と撥水性能が実施例1〜3に比べて低く、必ずし
も所期の超撥水性能を有する撥水性被膜とは到底言い難
いものであった。
【0049】比較例2 コーティング液として、メチルトリエトキシシランとホ
ルムアミドをモル比で、3:5となるように混合撹拌の
後、2Mの塩酸を1ml 加えて撹拌したものを用いた。な
お、溶媒にイソプロピルアルコールを用いた場合の混合
溶液は、実施例1〜3の場合とは異なり、2相分離しな
い均一な溶液であった。 被膜のコーティングおよび焼
成は、実施例1と同様とした。
【0050】その結果、形成された被膜は、透明なシリ
カ膜であったものの、被膜の水に対する接触角は、約80
〜85°と撥水性能が実施例1〜3に比べて低く、必ずし
も所期の超撥水性能を有する撥水性被膜とは到底言い難
いものであった。
【0051】
【発明の効果】本発明の撥水性被膜の形成法によれば、
安定かつ確実に厄介な工程もなく手軽に容易な特定の手
段をもって、格段に優れた透明シリカ膜であって、かつ
その膜自体が撥水性能を発現する被膜を、安価に効率よ
く高生産性で得ることができ、クラック等の欠陥がなく
かつ充分な可視光線透過率と耐久性、密着性、耐熱性な
らびに耐候性に優れるシリカ膜となるので、建築用、産
業用ならびに自動車等車両用、船舶用、航空機用などの
窓材をはじめ、各種の撥水性被膜に広く採用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の撥水性被膜における、SEM によって、
(a) 約1万倍および(b) 約3万倍で上面視した表層表面
の顕微鏡写真を示す図である。
【図2】本発明の撥水性被膜における、AFM によって5
μm 四方で上面斜視した表層表面の顕微鏡写真を示す図
である。なお、高さ方向のスケ−ル(0、100 、200 n
m)は、縦軸5μm と横軸5μmの四方(観察面積)にお
いて、表層表面の凹凸形状の凹凸(上下方向)の大きさ
を観察するためのものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 南 努 大阪府大阪狭山市大野台2丁目7番1号 (72)発明者 小和田 善之 大阪府豊中市新千里南町2−2−38−309 (72)発明者 忠永 清治 大阪府堺市中百舌鳥町6−998−3 (72)発明者 稲葉 博司 三重県松阪市大口町1510 セントラル硝子 株式会社硝子研究所内 (72)発明者 本城 啓司 三重県松阪市大口町1510 セントラル硝子 株式会社硝子研究所内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体上に形成した透明シリカ膜でなり、
    接触角θが140 °以上であることを特徴とする撥水性被
    膜。
  2. 【請求項2】 前記透明シリカ膜が、少なくともジメチ
    ルシリコンアルコキシドからなる調製液を塗布液として
    成膜してなることを特徴とする請求項1記載の撥水性被
    膜。
  3. 【請求項3】 前記透明シリカ膜の表層面が、凹凸形状
    をなすことを特徴とする請求項1乃至2記載の撥水性被
    膜。
  4. 【請求項4】 前記凹凸形状が、JIS B 0601の計測法に
    よる平均面粗さRa値が10nm以上、表面積比 SR が1.1 以
    上であることを特徴とする請求項1乃至3記載の撥水性
    被膜。
  5. 【請求項5】 基体表面上に、少なくともジメチルシリ
    コンアルコキシドからなる調製液を塗布液として塗布し
    た後、熱処理することで、透明シリカ膜を形成すること
    を特徴とする撥水性被膜の形成法。
  6. 【請求項6】 前記調製液における溶媒が、ホルムアミ
    ドあるいは水であることを特徴とする請求項5記載の撥
    水性被膜の形成法。
  7. 【請求項7】 前記調製液が、調製液において2相分離
    した液のアルコキシドリッチな層の液を塗布液として用
    いることを特徴とする請求項5乃至6記載の撥水性被膜
    の形成法。
  8. 【請求項8】 前記熱処理の温度が、400 ℃以上600 ℃
    以下であることを特徴とする請求項5乃至7記載の撥水
    性被膜の形成法。
  9. 【請求項9】 前記基体が、透明ガラス基板であること
    を特徴とする請求項5乃至8記載の撥水性被膜の形成
    法。
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