JPH10258325A - 複合磁性部材,その製造方法及びこの複合磁性部材を用いた電磁弁 - Google Patents
複合磁性部材,その製造方法及びこの複合磁性部材を用いた電磁弁Info
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- JPH10258325A JPH10258325A JP9047247A JP4724797A JPH10258325A JP H10258325 A JPH10258325 A JP H10258325A JP 9047247 A JP9047247 A JP 9047247A JP 4724797 A JP4724797 A JP 4724797A JP H10258325 A JPH10258325 A JP H10258325A
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Abstract
つ,耐応力腐食割れ性に優れた,複合磁性部材,その製
造方法及びこの複合磁性部材を用いた電磁弁を提供する
こと。 【解決手段】 強磁性部2と非磁性部3とを有し,非磁
性部3が内側方向へ収縮している中空形状の中間成形体
10を作製し,次いで,中間成形体10の引張残留応力
を除去する応力除去工程を行う。応力除去工程において
は,中間成形体10の内部にパンチ51を圧入して非磁
性部3を拡張させ,その後,パンチ51を挿入したまま
の状態で,非磁性部3における引張残留応力が圧縮残留
応力となるように,中間成形体10をしごき加工するこ
とが好ましい。また,応力除去工程としては,ショット
ピーニング処理を行うこともできる。
Description
て形成された複合磁性部材,その製造方法及びこの複合
磁性部材を用いた電磁弁に関する。
においては,強磁性部と非磁性部とを一体的に併せ持つ
部品が必要とされる。かかる強磁性部と非磁性部とを併
せ持つ部品としては,例えば,強磁性体である部品と非
磁性体である部品とを個々に製造し,その後これらを一
体的に接合して作製する方法がある。しかしながら,こ
の場合には,接合部分の耐久性や製造コスト等が問題と
なる。
号公報において示されたように,特に接続部を有さず一
体的に形成された部品において,強磁性部と非磁性部と
を連続して形成した複合磁性部材及びその製造方法が開
発されている。かかる複合磁性部材は,後述する実施形
態例に示すごとく,特殊な成分組成よりなるオーステナ
イト系合金鋼を用い,これに一定条件の冷間加工を施し
て加工誘起マルテンサイトを発生させて強磁性化し,次
いで所望の部分を加熱溶体化して非磁性化することによ
り得ることができる。
形状を有し,本体部側が強磁性部2であって,開口部側
が非磁性部3である複合磁性部材9を作製する場合に
は,まず後述する図3に示すごとく,オーステナイト系
合金鋼板101を複数回のプレス加工等を繰り返してU
字状部材106に冷間加工する。これにより,このU字
状部材106は,全体的に加工誘起マルテンサイトが発
生して強磁性となる。次いで,図10(a)に示すごと
く,U字状部材106の開口部側を高周波加熱装置98
を用いて溶体化焼き鈍しを行う。これにより,開口部側
は再びオーステナイト化して非磁性部3となる。
は,例えば強磁性部が磁束密度B4000(H=4000A
/mにおける磁束密度)が0.3T以上となり,非磁性
部が比透磁率μ=1.2未満となるような優れた特性を
示す。
合磁性部材9においては,次の問題がある。即ち,図1
1に示すごとく,上記従来の複合磁性部材9は,上記非
磁性部3における強磁性部2との境目近傍において,応
力腐食割れ99が発生しやすい。この原因は,次のよう
に考えられる。
とくマルテンサイトよりなる強磁性部2と,オーステナ
イトよりなる非磁性部3とよりなる。このオーステナイ
トとマルテンサイトとは,結晶構造の違いによって密度
が異なり,マルテンサイトの方が,同一重量のオーステ
ナイトの場合よりも3%ほど体積が大きい。
ーステナイトであった素材を用い,これをマルテンサイ
ト化して強磁性部2とし,次いでその一部分を再びオー
ステナイト化して非磁性部3とする。そのため,図10
(b)に示すごとく,非磁性部3のみが強磁性部2より
も体積が3%ほど減少する。その結果,非磁性部3にお
ける,強磁性部2との境目近傍には,引張残留応力が発
生する。この引張残留応力の発生が,耐応力腐食割れ性
を大きく低下させていると考えられる。
磁性化のための高周波加熱の後,複合磁性部材9の内側
に非磁性部3を拡開させるためのパンチ95を圧入し,
非磁性部3を塑性変形させて上記引張残留応力を除去す
る方法がある。しかしながら,図13に示すごとく,こ
の方法においては,上記非磁性部3の拡開する寸法が大
きくなり過ぎたり(a),小さくなりすぎたり(c)す
る場合があり,十分な残留応力制御が困難である。ま
た,これを図13(b)に示すごとく,常に最適な形状
にするためには,上記パンチ95の外形寸法を0.01
mm単位のレベルで調整する必要があり,非常に煩雑で
ある。
般的に,引張残留応力発生部分を焼き鈍す方法が有効で
ある。しかしながら,非磁性部3と強磁性部2との境目
近傍に発生する引張残留応力を完全に除去するには,全
体を焼き鈍し処理しなければならず,強磁性部が非磁性
部に変化してしまう。そのため,強磁性部の性能を維持
する必要がある複合磁性部材においては,これを適用す
ることはできない。
されたもので,強磁性部と非磁性部との性能を保持し,
かつ,耐応力腐食割れ性に優れた,複合磁性部材及びそ
の製造方法及びこの複合磁性部材を用いた電磁弁を提供
しようとするものである。
性部とを有し,該非磁性部が内側方向へ収縮している中
空形状の中間成形体を作製し,次いで,上記中間成形体
の引張残留応力を除去する応力除去工程を行うことを特
徴とする複合磁性部材の製造方法にある。
記中間成形体の引張残留応力を除去する応力除去工程を
行うことである。つまり,従来であれば,上記中間成形
体のままで複合磁性部材としていたが,本発明において
はこれにさらに応力除去工程を追加する。
とることができるが,少なくとも,上記引張残留応力を
緩和又は除去することが必要である。また,応力除去工
程を行った結果圧縮応力を残存させてもよい。具体的な
応力除去工程としては,後述するごとく,外部からの機
械的な応力を加える工程を取ることが好ましい。これに
より,上記複合磁性部材の磁気的特性を損なうことなく
引張残留応力を除去することが可能となる。
明の複合磁性部材の製造方法においては,上記中間成形
体に対して上記応力除去工程を行う。この応力除去工程
においては,上記中間成形体における引張残留応力を十
分に緩和又は除去する。それ故,引張残留応力に起因す
る応力腐食割れは確実に防止することができる。
非磁性部との性能を保持し,かつ,耐応力腐食割れ性に
優れた,複合磁性部材の製造方法を提供することができ
る。
ては,内部に中空部分を有していればよく,例えば底の
ない筒状,その他の有底形状をとることができる。特
に,請求項2の発明のように,上記中間成形体の上記中
空形状は,断面U字状であることが好ましい。この場合
には,後述する冷間加工を容易に行うことができる等の
利点がある。
ては,次の発明がある。即ち,請求項3の発明のよう
に,上記応力除去工程においては,上記中間成形体の内
部にパンチを圧入して上記非磁性部を拡張させ,その
後,上記パンチを挿入したままの状態で,上記非磁性部
における引張残留応力が圧縮残留応力となるように,上
記中間成形体をしごき加工することが好ましい。
記中間成形体の内部に上記パンチを圧入し,次いで,上
記しごき加工を行うことである。
く,オーステナイト系合金鋼を冷間加工して中空形状に
成形した後,一部分を高周波加熱することにより得られ
る。即ち,冷間加工により全体的に加工誘起マルテンサ
イトを発生させて強磁性とした後,一部分を溶体化焼き
鈍ししてオーステナイトに戻すことにより非磁性部を形
成することができる。
ては,上記のごとく非磁性部が内側方向に収縮した状態
となり,その強磁性部との境界近傍において引張残留応
力が発生した状態となっている。なお,中間成形体の外
径寸法は,上記しごき加工による厚み減少分を考慮して
設定しておくことが必要である。
に用いる上記パンチは,その外径を上記中間成形体の本
体部における内径と同等又は若干大きい径にしてあり,
中間成形体内に圧入することにより,該中間成形体の内
壁と密着するように構成してある。
における引張残留応力が圧縮残留応力に変化するために
必要なしごき率により行う。ただし,しごき率,即ち加
工度が高くなりすぎると非磁性部の比透磁率μが上昇し
て,その特性が低くなる。そのため,必要以上に加工度
が高くなりすぎないように注意することが必要である。
る。本発明の複合磁性部材の製造方法においては,上記
中間成形体を作製した後,該中間成形体内にパンチを圧
入する。これによって上記非磁性部は拡張されてパンチ
の外周に密着すると共に強磁性部もパンチの外周に密着
する。そのため,上記中間成形体における強磁性部及び
非磁性部の内径寸法に若干のばらつきがあっても,得ら
れる複合磁性部材の内径を一律に同一径に規制すること
ができる。
した状態でしごき加工を行う。これにより,上記強磁性
部と非磁性部とは,共に一定厚みまでしごき加工が加え
られ,外径寸法を同等にすることができる。また,この
ときのしごき加工の条件は,中間成形体内の引張残留応
力が圧縮残留応力に変化し,かつ,上記非磁性部の特性
が劣化しない加工度で行う。
成形体における非磁性部と強磁性部の特性を保持したま
ま,非磁性部の引張残留応力を圧縮残留応力に変化させ
ることができる。それ故,複合磁性部材における,引張
残留応力に起因する耐応力腐食割れ特性は,十分に向上
する。
き加工におけるしごき率は,2〜9%であることが好ま
しい。これにより,上記中間成形体における非磁性部と
強磁性部の特性を確実に保持したまま,非磁性部の引張
残留応力を圧縮残留応力に変化させることができる。
引張残留応力が圧縮残留応力に変化しないおそれがあ
る。また9%を超える場合には,非磁性部の比透磁率μ
が上昇し,その特性が劣化するおそれがある。尚,ここ
でしごき率とは,しごき加工前の素材厚みをt0 ,加工
後の厚みをtとしたとき,(t0 −t)/t0 ×100
により表す。
としては,次の発明がある。即ち,請求項5の発明のよ
うに,上記応力除去工程においては,上記中間成形体の
内側面または外側面の少なくとも一側面における引張応
力発生部分にショット粒を衝突させるショットピーニン
グ処理を行うこともできる。
上記引張残留応力を大幅に軽減又は除去することができ
る。それ故,製造コストを低く維持しつつ,耐応力腐食
割れ性を大幅に向上させることができる。さらにまた,
引張応力部分にショット粒を衝突させる方法のため中間
成形体の形状にとらわれず,引張残留応力を緩和させる
ことが可能となる。
る中間成形体を作るに当たっては,請求項6の発明のよ
うに,上記中間成形体は,素材を冷間加工することによ
り強磁性化させた後,所望部分のみを加熱することによ
り非磁性化させることにより作製することが好ましい。
この方法によれば,優れた磁気特性を有する上記中間成
形体を容易に作製することができる。
性部材としては,次の発明がある。即ち,請求項7の発
明のように,強磁性部と非磁性部とを有する中空形状の
複合磁性部材であって,該複合磁性部材は,請求項1〜
6のいずれか1項記載の製造方法により製造したことを
特徴とする複合磁性部材がある。この複合磁性部材は,
上記応力除去工程を施す製造工程により製造されるた
め,上記のごとく,非常に耐応力腐食割れ性に優れた,
耐久性の高いものとなる。
磁性部材の上記中空形状は,断面U字状とすることもで
きる。また,この場合には,請求項9の発明のように,
上記複合磁性部材は,有底部側に強磁性部を,開口端側
に非磁性部を有することが好ましい。これにより,その
製造過程における強磁性化及び非磁性化を容易に行うこ
とができる。
電磁弁としては,次の発明がある。即ち,請求項10の
発明のように,磁気回路形成用のコイルと,該コイルの
励磁により形成される磁気回路内に配設されたスリーブ
と,該スリーブ内に摺動可能に配置されたプランジャ
と,該プランジャと移動空間を介して配置されたステー
タとを有し,上記コイルの励磁により上記プランジャを
上記ステータ側に移動させて流体の流路を開閉する電磁
弁において,上記スリーブは,請求項7〜9のいずれか
1項記載の複合磁性部材であって,該複合磁性部材の上
記非磁性部は上記プランジャと上記ステータとの間の上
記移動空間を周囲から囲うように配置されていることを
特徴とする電磁弁がある。
品として,流体通路の連通状態を制御するために用いら
れる。そのため,優れた耐久性等の性質が要求される。
この点において,本発明の電磁弁は,その主要部品であ
るスリーブとして,上記の製造方法により製造した優れ
た複合磁性部材を使用しているため,この要求を容易に
満足することができる。即ち,上記スリーブは,優れた
磁気特性を保持しつつ優れた耐応力腐食割れ性を示す。
それ故,この優れたスリーブを使用した電磁弁は,その
全体の耐久性等を大幅に改善することができる。
つき,図1〜図5を用いて説明する。本例の複合磁性部
材の製造方法は,図1に示すごとく,まず,強磁性部2
と非磁性部3とを有し,該非磁性部3が内側方向へ収縮
している断面U字状の中間成形体10を作製する。
中間成形体10の内部にパンチ51を圧入して非磁性部
3を拡張させる。その後,図2(a)(b)に示すごと
く,パンチ51を挿入したままの状態で,非磁性部3に
おける引張残留応力が圧縮残留応力となるように,中間
成形体10をしごき加工する。これにより,図2(c)
に示すごとく,複合磁性部材1を得る。
形体10の作製は,図3(a)に示すごとく,以下の特
定の成分組成よりなるオーステナイト系合金鋼板101
を用いて作製する。上記特定成分は,重量でCが0.6
%以下,Crが12〜19%,Niが6〜12%,Mn
が2%以下,さらに残部がFeおよび不可避不純物によ
って構成され,平山の当量Heq=〔Ni%〕+1.0
5〔Mn%〕+0.65〔Cr%〕+0.35〔Si
%〕+12.6〔C%〕が20〜23%で,かつ,ニッ
ケル当量Nieq=〔Ni%〕+30〔C%〕+0.5
〔Mn%〕が9〜12%であって,かつ,クロム当量C
req=〔Cr%〕+〔Mo%〕+1.5〔Si%〕+
0.5〔Nb%〕が16〜19%である。
く,上記鋼板101を深絞り加工して断面U字状体10
4(d)とし,次いで,図3(e)に示すごとく,ダイ
ス195を用いてこれにさらに複数回のしごき加工を加
えて,全体的に強磁性であるU字状部材106(f)を
得る。本例におけるU字状部材106のサイズは,内径
7.05mm,厚み0.86mmとしてある。
06の開口部側の部分を高周波加熱装置98を用いて溶
体化焼戻しを行う。これにより,強磁性部2と非磁性部
3とを連続的に併せ持つ中間成形体10が得られる。こ
のようにして得られた中間成形体10は,図1(a)及
び前述した図10(b)に示すごとく,非磁性部3が相
変態によって内方に収縮した状態となっている。具体的
には,非磁性部3の内径最小部は7.02mmとなって
いる。尚,強磁性部2の寸法は,上記U字状部材106
と同じ寸法のままである。
加工を行うための装置5について説明する。この装置5
は,図1,図2に示すごとく,上記圧入及びしごき加工
を行うためのパンチ51と,しごき加工用のダイス52
とを有する。パンチ51の外径は7.08mmとしてあ
り,中間成形体10の本体部の内径よりも0.03mm
大きくしてある。
mmとしてあり,中間成形体10のしごき代を0.06
mmに設定してある。即ち,しごき率が約7%となるよ
うに設定してある。
方には,上記パンチ51を中間成形体10内に圧入する
際に中間成形体10を支持するためのクッションプレー
ト53を設けてある。このクッションプレート53は,
500kgf/cm2 の背圧により支持されており,上
記圧入時に中間成形体10を確実に支持するように構成
されている。またクッションプレート53は,上記圧入
時にのみダイス52内に位置し,しごき加工時には,パ
ンチ51の移動に干渉しない位置に退避するように構成
されている。
された成形品をパンチ51から取り外すための左右一対
のノックアウト部54を設けてある。このノックアウト
部54は,その外方に配設したスプリング545によっ
て進退可能に支承されている。
加工時に容易に外方へ後退させられるように,ダイス5
2の内方側にテーパ部541を設けてある。また,その
反対側には,しごき加工後に成形体の開口端部に係合す
るための略直角状の係合角部542を有する。
の非磁性部3の拡張及びしごき加工を行うに当たって
は,まず,図1(a)に示すごとく,中間成形体10を
ダイス52の中央に載置すると共にクッションプレート
5上に当接させてセットする。次いで,パンチ51を前
進させる。このとき,中間成形体10は,上記クッショ
ンプレート53によって支持されているため,パンチ5
1が中間成形体10内に圧入される。
磁性部2及び非磁性部3が共にパンチ51の外径寸法ま
で拡張される。次いで,クッションプレート53を退避
させると共にパンチ51をさらに前進させる。
間成形体10は,上記ノックアウト部54を外方に後退
させつつ,約7%のしごき率でしごき加工される。次い
で,図2(b)に示すごとく,しごき加工完了時におい
ては,ノックアウト部54がスプリング545の付勢力
によって再び内方へ前進する。
せることにより,ノックアウト部54の係合角部542
が成形体の開口端に当接し,さらにパンチ51を後退さ
せることにより,成形体がパンチ51から取り外され
る。得れた成形体は,図2(c)に示すごとく,複合磁
性部材1である。
は,強磁性部2と非磁性部3との外径,内径寸法が同じ
となり,引張残留応力も解消された状態となる。この残
留応力状態を測定した結果を図5に示す。図5は,横軸
に複合磁性部材の開口端からの距離を,縦軸に複合磁性
部材の内面における残留応力状態をとった。そして,し
ごき加工前の状態を符号Cにより示し,しごき加工後の
状態を符号Eにより示した。図5より知られるごとく,
しごき加工前に発生していた引張残留応力は十分に解消
され,応力腐食割れ性に有利な圧縮残留応力に変化して
いた。
気的特性について評価した。その結果,強磁性部2にお
ける強磁性レベルは,0.3T以上が十分に確保されて
おり,また非磁性部3における非磁性レベルは,比透磁
率μ1.2以下が十分に確保されていて,非常に良好で
あった。
力腐食割れ試験を行った。試験方法は,MgCl2 の沸
騰液に120分浸漬したのち割れの有無を観察すること
により行った。その結果,全く割れは発生せず,非常に
良好な応力腐食割れ性を示した。
製し,その後のしごき加工におけるしごき率を種々の条
件に変化させ,その影響を調べた。また,上記中間成形
体としては,実施形態例1と同一成分組成の材質(材質
E1)により作製したものと,平山の当量を20%から
21%に変更した成分組成の材質(材質E2)により作
製したものの2種類を準備して評価した。その他は,実
施形態例1と同様にした。
とく,ダイス52の内径を変化させてしごき代を0.0
2〜0.08mmまで変化させ,これにより,しごき率
を2.3%〜9.3%まで変化させた。次いで,それぞ
れのしごき率により上記実施形態例1と同様の方法によ
って得られた各複合磁性部材について,その磁気的特性
及び残留応力状態を測定すると共に,応力腐食割れ試験
を行った。
における比透磁率μを測定して評価した。また,この評
価は,季節的な変動をも考慮するため,22℃と40℃
との2種類の雰囲気温度下において行った。尚,強磁性
部の特性については,上記しごき加工によって特性が悪
化するおそれは理論上はなく,また実験においても確認
している。
す。同表より知られるごとく,材質E1の場合の一部
に,μが1.20を若干超えるものが発生はしたが,全
体的に目標であるμ=1.20以下をほぼ満足してお
り,非磁性部の特性は良好であると言える。
3の強磁性部2との境界部付近の残留応力を測定した。
また,この測定は,複合磁性部材の内面において行っ
た。測定結果を表3に示す。同表より知られるごとく,
いずれの材質,条件においても,引張残留応力が圧縮残
留応力に変化しており,非常に良好な状態となってい
た。
割れ試験を実施した。試験条件としては,実施形態例1
と同様である。また,この場合にも,季節要因を考慮し
て,22℃と40℃の2種類の雰囲気温度下において行
った。試験結果を表4に示す。同表より知られるごと
く,いずれの材質,条件においても良好であって,割れ
たものは一つもなかった。
工を2〜9%のしごき率で行うことにより,中間成形体
における強磁性部と非磁性部との特性を維持しつつ,応
力腐食割れ特性を格段に向上させた複合磁性部材を確実
に得ることができることがわかる。
成形体及び得られた複合磁性部材の中空形状をいずれも
断面U字状にした場合を例にとって説明したが,これら
が例えば底のない中空形状の場合であっても同様の効果
が得られる。
法により作製した複合磁性部材を電磁弁6の部品である
スリーブ7として適用した具体例について説明する。こ
の電磁弁6は,自動車等によく用いられるものであっ
て,油圧通路の連通状態を制御するためのものである。
磁性のステータ63に設けた流入孔652と流出孔65
0とにより構成される油圧通路の連通状態を,連通孔6
54を有する弁座656とこれに当接するボール66の
開閉によって,制御するものである。
能に配設されたシャフト65の先端部に設けられてお
り,該シャフト65は,プランジャ64に連結されてい
る。一方,上記ステータ63の先端側には,断面U字状
のスリーブ7が固定配設されている。このスリーブ7が
複合磁性部材である。そして,スリーブ7内に上記プラ
ンジャ64が摺動可能に配設されている。
は,図6に示したステータ63とプランジャ64との間
の移動空間Dの距離である。この移動空間Dは,上記シ
ャフト65の下端に配設したスプリング69の付勢力に
よって維持されている。また,スリーブ7の外方には,
これと同軸上にコイル61を配設してあり,さらにその
外方には,コイル61を囲うように強磁性のヨーク60
を配設してある。このヨーク60は,スリーブ7とステ
ータ63との両方に連結固定されている。
合磁性部材であって,本体部(有底部側)が強磁性部7
2であり,開口端側が非磁性部73になっている。そし
て,上記プランジャ64とステータ64との移動空間D
を設けた部分に,これを周囲から囲うように上記非磁性
部73が位置するように構成されている。
路を閉じる場合には,上記コイル61に電流を流してこ
れを励磁する。これにより,図6に示すごとく,強磁性
体である,ヨーク60,スリーブ7の強磁性部72,プ
ランジャ64,ステータ63,再びヨーク60と続く磁
気回路Lが形成される。この磁気回路Lの形成によっ
て,強磁性体であるプランジャ64とステータ63との
間に吸引力が発生し,スプリング69の付勢力に抗して
プランジャ64及びシャフト65が移動する。これによ
り,シャフト65の先端のボール66が弁座656に当
接して,油圧通路が遮断される。
ル61への通電を停止する。これにより,上記磁気回路
が消滅し,スプリング69の付勢力によってシャフト6
5及びプランジャ64が元の位置に復帰すると共にボー
ル66と弁座656との当接状態が解除される。その結
果,油圧通路が連通状態となる。
磁性部72の強磁性特性が低ければ強い磁気回路が形成
されないという問題があり,また,上記非磁性部73の
比透磁率が高すぎる場合には,上記移動空間Dを回避し
て非磁性部73を通過する磁気回路が形成されてしま
い,プランジャ64とステータ63との吸引力が発生し
ないという問題がある。
部72と非磁性部73の両方の特性が電磁弁6の性能を
左右する重要な要素となっている。また,電磁弁6は,
耐久性の高さも要求されるが,その特性の一つとしてス
リーブ7に応力腐食割れ等が起こりにくいことが要求さ
れる。
たスリーブ7は,上述した実施形態例1の方法により作
製している。そのため,強磁性部と非磁性部の優れた特
性を保持しつつ,耐応力腐食割れ性が大幅に改善されて
いる。それ故,このスリーブ7を用いた電磁弁6は,優
れた性能を示すと共に,優れた耐久性を示す。
様の方法により作製した中間成形体10を用い,これに
ショットピーニング処理を施して引張残留応力を除去し
た具体例である。また,本例の中間成形体10は,図
7,図8に示すごとく,開口端104側と底部105側
とが共に強磁性部2であり,これらの間の部分に非磁性
部3を設けたものである。
図7に示すごとく,中間成形体10を回転テーブル81
の中央部分にセットして行う。回転テーブル81は,そ
の中央部分にセット穴810を設けてあり,ここに中間
成形体10の底部105を挿入して中間成形体10を立
設させる。
ら,ノズル82よりショット粒83を発射させ,これを
中間成形体10の内側面及び外側面に衝突させる。本例
におけるショット粒83としては,SUS304の#3
00の粒子を用いた。また,ショット粒83の吹き出し
圧力は,エア圧力0.2〜0.5MPaとした。また,
ショットピーニング処理時間は,5〜30秒とした。
0への衝突状況を図8に示す。図8に示すごとく,ショ
ット粒83は,中間成形体10の内側面及び外側面に略
均一に衝突させる。そのため,引張残留応力発生部分に
おいてもショット粒83の衝突が行われる。なお,ショ
ット粒83の衝突場所を引張残留応力部分だけに限定し
てもよいが,本例においては,その周辺も含めて略均一
に衝突させた。
成形体10には,略均一に圧縮応力が付与される。その
ため,引張残留応力部分においては,次第に引張応力が
緩和されていく。これにより,ショットピーニング処理
を終えた中間成形体10は,引張残留応力が大幅に緩和
され,耐応力腐食割れ性が大幅に向上する。
は,上記中間成形体10のショットピーニング処理前後
の残留応力状態を測定した。測定位置は,図8において
符号Sにより示す部分の内周面側である。そして,測定
は,内周面表面から板厚方向に約120μmの深さまで
行った。
厚方向の深さを,縦軸に残留応力をとり,+側を引張応
力,−側を圧縮応力とした。また,ショットピーニング
前の状態を符号E41(記号●)で示し,ショットピー
ニング後の状態を符号E42(記号○)で示した。
ング前においては特に最表面側が高い引張残留応力状態
にあったが,ショットピーニング後には適度な圧縮応力
状態となっていた。この残留応力状態は,耐応力腐食割
れ性の向上に非常に有利な状態である。この結果から,
応力除去工程としてのショットピーニング処理は,複合
磁性部材の耐応力腐食割れ性を向上させる有効な手段で
あることがわかる。尚,本例によって得られる複合磁性
部材もまた実施形態例3で示されるような電磁弁に適用
することができる。さらにまた,その他の様々な用途に
も適用可能である。
置にセットした状態,(b)中間成形体の非磁性部を拡
張した状態,を示す説明図。
ごき加工している状態,(b)しごき加工が完了した状
態,(c)得られた複合磁性部材,を示す説明図。
を示す説明図。
を形成している状態を示す説明図。
応力状態を示す説明図。
理を示す説明図。
粒が衝突している状態を示す説明図。
変化を示す説明図。
性部を形成する方法,(b)非磁性部形成時の形状変化
状態,を示す説明図。
す説明図。
図。
部が,(a)広がりすぎた状態,(b)最適な状態,
(c)なお狭い状態,を示す説明図。
Claims (10)
- 【請求項1】 強磁性部と非磁性部とを有し,該非磁性
部が内側方向へ収縮している中空形状の中間成形体を作
製し,次いで,上記中間成形体の引張残留応力を除去す
る応力除去工程を行うことを特徴とする複合磁性部材の
製造方法。 - 【請求項2】 請求項1において,上記中間成形体の上
記中空形状は,断面U字状であることを特徴とする複合
磁性部材の製造方法。 - 【請求項3】 請求項1又は2において,上記応力除去
工程においては,上記中間成形体の内部にパンチを圧入
して上記非磁性部を拡張させ,その後,上記パンチを挿
入したままの状態で,上記非磁性部における引張残留応
力が圧縮残留応力となるように,上記中間成形体をしご
き加工することを特徴とする複合磁性部材の製造方法。 - 【請求項4】 請求項3において,上記しごき加工にお
けるしごき率は,2〜9%であることを特徴とする複合
磁性部材の製造方法。 - 【請求項5】 請求項1又は2において,上記応力除去
工程においては,上記中間成形体の内側面または外側面
の少なくとも一側面における引張応力発生部分にショッ
ト粒を衝突させるショットピーニング処理を行うことを
特徴とする複合磁性部材の製造方法。 - 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項において,
上記中間成形体は,素材を冷間加工することにより強磁
性化させた後,所望部分のみを加熱することにより非磁
性化させることにより作製することを特徴とする複合磁
性部材の製造方法。 - 【請求項7】 強磁性部と非磁性部とを有する中空形状
の複合磁性部材であって,該複合磁性部材は,請求項1
〜6のいずれか1項記載の製造方法により製造したこと
を特徴とする複合磁性部材。 - 【請求項8】 請求項7において,上記複合磁性部材の
上記中空形状は,断面U字状であることを特徴とする複
合磁性部材。 - 【請求項9】 請求項8において,上記複合磁性部材
は,有底部側に強磁性部を,開口端側に非磁性部を有す
ることを特徴とする複合磁性部材。 - 【請求項10】 磁気回路形成用のコイルと,該コイル
の励磁により形成される磁気回路内に配設されたスリー
ブと,該スリーブ内に摺動可能に配置されたプランジャ
と,該プランジャと移動空間を介して配置されたステー
タとを有し,上記コイルの励磁により上記プランジャを
上記ステータ側に移動させて流体の流路を開閉する電磁
弁において,上記スリーブは,請求項7〜9のいずれか
1項記載の複合磁性部材であって,該複合磁性部材の上
記非磁性部は上記プランジャと上記ステータとの間の上
記移動空間を周囲から囲うように配置されていることを
特徴とする電磁弁。
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EP01125301.0A EP1178123B1 (en) | 1996-04-26 | 1997-04-18 | Method of stress inducing transformation of austenite stainless steel and method of producing composite magnetic members |
EP97106468A EP0803582B1 (en) | 1996-04-26 | 1997-04-18 | Method of stress inducing transformation of austenite stainless steel and method of producing composite magnetic members |
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DE69713446T DE69713446T2 (de) | 1996-04-26 | 1997-04-18 | Verfahren zum spannungsinduzierten Umwandeln austenitischer rostfreier Stähle und Verfahren zum Herstellen zusammengesetzter magnetischer Teile |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN102692373A (zh) * | 2012-06-14 | 2012-09-26 | 华东理工大学 | 基于小冲杆测试技术的应力腐蚀敏感性评估装置 |
JP2014047389A (ja) * | 2012-08-31 | 2014-03-17 | Hitachi Ltd | 発電用ガスタービン用動翼と、熱処理方法 |
CN110242781A (zh) * | 2019-04-24 | 2019-09-17 | 福建大通互惠精密铸造有限公司 | 一种超级双相不锈钢5a材质蝶阀阀体及制造方法 |
-
1997
- 1997-02-13 JP JP04724797A patent/JP4014686B2/ja not_active Expired - Fee Related
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