JP3179967B2 - 複合磁性部材の製造方法 - Google Patents

複合磁性部材の製造方法

Info

Publication number
JP3179967B2
JP3179967B2 JP13855894A JP13855894A JP3179967B2 JP 3179967 B2 JP3179967 B2 JP 3179967B2 JP 13855894 A JP13855894 A JP 13855894A JP 13855894 A JP13855894 A JP 13855894A JP 3179967 B2 JP3179967 B2 JP 3179967B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
magnetic member
composite magnetic
magnetic
ferromagnetic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP13855894A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH083643A (ja
Inventor
慎也 杉浦
利昭 寺田
桂三 竹内
義唯 片山
圭宏 谷村
聡 杉山
計 佐々木
勉 乾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Metals Ltd
Denso Corp
Original Assignee
Hitachi Metals Ltd
Denso Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Metals Ltd, Denso Corp filed Critical Hitachi Metals Ltd
Priority to JP13855894A priority Critical patent/JP3179967B2/ja
Publication of JPH083643A publication Critical patent/JPH083643A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3179967B2 publication Critical patent/JP3179967B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Articles (AREA)
  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、非磁性および強磁性部
分が連続して形成された複合磁性部材の製造方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】従来、一般のオーステナイト系のステン
レス鋼や高マンガン鋼等は、溶体化処理状態では非磁性
状態にあるが、室温において冷間加工を加えることによ
って加工誘起マルテンサイトが発生し、強磁性的性質を
持つようになることが知られている。しかしながら、こ
の様な現象によって得られる磁性化の程度は小さいもの
であり、実際に磁気回路部品に対して適用することは困
難である。
【0003】そのため、オーステナイト系ステンレス鋼
や高マンガン鋼の組成および加工法を適性化することに
より強磁性と非磁性をあわせ持つ部材を作り、磁気目盛
として利用できる材料が特開昭63−161146号公
報に示されている。これは準安定オーステナイト鋼を冷
間伸線してオーステナイトのマルテンサイト化により強
磁性化する。その後、局部を加熱溶体化し、もとのオー
ステナイトにもどすことにより非磁性化させ、その結果
強磁性、非磁性をあわせ持つ部材としたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開昭
63−161146号公報に開示した複合磁性部材にお
いては、通常の環境下においては、十分な強磁性部分を
非磁性部分と一体に形成することを可能にすることがで
きたが、いまだ温度に対する非磁性部分の対策は行われ
ておらず、極低温のような劣悪な温度環境の場合には、
非磁性部にはマルテンサイトが発生し、強磁性的性質を
帯びてしまうという問題が生じていた。
【0005】そこで、本願発明は上記問題点を鑑みて得
られたものであり、極低温の如く劣悪な環境であって
も、十分な強磁性部分および非磁性部分が一体に形成さ
れた複合磁性部材の製法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで、我々発明者ら
は、まず通常環境下において、十分な強磁性または非磁
性特性を一体に有する複合磁性部材とはどのような物理
的特性が妥当であるかを検討し直した。その結果、複合
磁性部材を比透磁率μが1.2以下の非磁性とし、同時
に残部を、非磁性部と強磁性部の遷移領域および非磁
性、強磁性の特性を特に必要としない部分を除き磁束密
度B4000(磁界の強さが4000A/m を与えた場合の磁束密
度)が0.3T(0.3テスラ)以上の強磁性とする必
要があることを見出した。
【0007】そこで、まず上記特性を得るためには、室
温において安定したオーステナイトを発生させ、冷間加
工によってマルテンサイトを発生させて強磁性化する組
成とするとともに、かつ十分な磁気特性が得られるよう
にする組成を下記の如く鋭意研究により選択した。この
様な目的に適合する金属材料の組成は、重量でCが0.
6%以下、Crが12〜19%、Niが6〜12%、M
nが2%以下、Moが2%以下、Nbが1%以下、さら
に残部がFeおよび不純物によって構成され、平山の当
量Heq=〔Ni%〕+1.05〔Mn%〕+0.65
〔Cr%〕+0.35〔Si%〕+12.6〔C%〕が
20〜23%で、かつ ニッケル当量Nieq=〔Ni%〕+30〔C%〕+
0.5〔Mn%〕が9〜12%であり、かつ クロム当量Creq=〔Cr%〕+〔Mn%〕+1.5
〔Sl%〕+0.5〔Nb%〕が16〜19%であるこ
とが望ましい。
【0008】この様な金属材料の組成において、Cを
0.6%以下としたのは0.6%を越えても磁気的な特
性では満足できるが、炭化物量が増加して加工成形性が
低下するからである。またCrの量を12〜19%と
し、かつNiの量を6〜12%としたのは、これらの物
質の下限値を下回ると比透磁率がμ=1.2以下の非磁
性を示すことがなく、B4000が0.3T(0.3テス
ラ)以上を示さなくなるからである。またMnは2%を
越えると成形性能を低下させるようになり、従ってその
含有量の上限を2%とした。
【0009】さらに、MoとNbは必ずしも添加する必
要はないが、MoはMs点を低める効果があり、またN
bは材料強度を高める作用があり、目的に応じて単独ま
たは、複合で添加することができる。ここでMoが2%
を超えると、またNbが1%を超えると、加工成形が低
下するため、好ましくは、MoおよびNbの添加量の上
限をそれぞれ2%および1%とした。
【0010】この様に各元素の組成範囲を限定するのみ
ではまだ十分ではなく、これらの組成範囲内での組み合
わせによって目的とする磁気特性が得られる。このため
に、本発明では、平山の当量Heq=20〜23%、ニ
ッケルの当量Nieq=9〜12%、さらにクロムの当
量Creq=16〜19%とする。これらの条件が満足
させられない場合は、目的とする強磁性特性および非磁
性特性のいずれか一方のみしか満足することができな
い。
【0011】以下、これらの範囲に特定する根拠を説明
する。図1に平山の当量と溶体化処理後の非透磁率の関
係を示す。図1よりあきらかなように、平山の当量が大
きくなるに従い非透磁率は低下するとともに、平山の当
量Heq=20%より大きい場合、非透磁率μ=1.2
以下を満たすことができることから、平山の当量の下限
値を20%とした。
【0012】図2に冷間圧延した場合の圧延率と冷間加
工後の磁束密度の関係を示す。図2よりあきらかなよう
に、平山の当量が大きくなるとオーステナイトが安定化
し、その結果冷間加工による強磁性化が生じにくくな
り、磁束密度が低下することが分かった。この冷間加工
である冷間圧延ではHeq=23%を越えると圧延率を
大きくしてもB4000=0.3Tを達成することが困難と
なる。そこで本発明においては、平山の当量の上限値を
23%とした。
【0013】さらに、ニッケルの当量およびクロムの当
量を上述と同様の理由において、それぞれ9〜12%お
よび16〜19%の範囲とした。ここで、脱酸元素とし
て通常Siを2%以下およびAlを0.5%以下や、他
の不純物元素が含有されているものであるが、これらは
複合磁性材料の特徴を損なうものではない。
【0014】さらに、我々は、低温下にて比透磁率が上
昇する原因が、オーステナイトからマルテンサイトへの
変化が起こり始める温度であるMs点温度よりも、極低
温度の温度が低くなることによって生じることに着目
し、例えば、上記組成の複合磁性部材の有するMs点温
度を−40℃以下にできれば、−40℃までの比透磁率
の上昇を抑制できるのではないかと判断した。
【0015】そのため本願発明では、低温環境下におい
て、複合磁性部材の非磁性特性が強磁性特性に変化する
ことを抑制するために、Ms点温度を従来よりさらに低
下させるべく、その手段として、オーステナイト結晶粒
の粒径を変化させる。即ち、オーステナイト結晶粒の結
晶粒が小さいほど、オーステナイトからマルテンサイト
への変態が生ずるMs点温度が低下することを、はじめ
て複合磁性部材に適用したのである。
【0016】図3にその概念図を示した。図3より明ら
かなように、オーステナイト結晶粒の結晶粒径とMs点
温度とは密接な関係があり、結晶粒径を所定の値におい
て、Ms点温度が急激に低下するのである。図4に複合
磁性部材を−40℃の低温下に保持したときの非透磁率
の変化を示した。
【0017】図4により結晶粒径が30μm以下となる
ように加熱条件を選択することにより、−40℃に保持
しても比透磁率がμ=1.2を越えないことを見出すこ
とができた。しかしながら、このような上記の複合部材
における部材の所望の条件を見いだすことはできたが、
いまだこの複合磁性部材を得るための製造方法に関して
は十分に満足する製造方法を得ることができない。
【0018】例えば、図5に示すようなカップ形状体1
0の製造を従来のプレスの絞り加工を連続的に行なった
が、このような加工工程を施したのみでは、本願発明に
おける磁束密度B4000を0.3T以上とすることを確実
に得ることができない。我々は、この原因を究明した結
果次の原因であることを見いだした。その説明を図6を
用いて説明する。
【0019】即ち、加工時に一度に歪みを付与すると、
材料温度が図6のA線に示すように、非磁性を示すオー
ステナイトから強磁性を示すマルテンサイトに変態する
限界温度であるMd点に達してしまう。そのため、Md
点に達したX点の後は、マルテンサイト発生に寄与しな
い歪みを付与する加工分αとなり、強磁性化の可能性が
あるにも関わらず有効歪分の寄与しかないことを見いだ
した。
【0020】そこで、我々は、加工工程における加工発
熱をできるだけ低減させるために、歪付与をできるだけ
分割し、各工程での加工発熱を最小限に押さえれば、上
記問題が解決できるのではないかと判断した。また、さ
らには加工時に発生する熱を予め除去するべく室温以下
に材料を冷却した後に、歪みを付与する加工を施すこと
により、さらなる強磁性化を図ることができるのではな
いかと判断した。
【0021】その詳細な説明を図6を用いて説明する。
即ち、準安定オーステナイト鋼の部品製造時における絞
りおよびしごきなどの加工工程をできるだけ多段階にす
ることで、図6のB線に示すように一度の歪付与を最適
化し、塑性加工による発熱を抑制させる加工を行った。
尚、図2においては、従来1回の加工工程を3回に分割
していることを示す。
【0022】このように多段階の加工工程に分割させる
ことにより、材料温度をMd点以下に維持したままで、
最終加工度に到達させることができるので、材料に対し
て十分な強磁性を付与することができる。さらに、各工
程の加工温度をあらかじめ冷却した後に、歪み加工を施
す加工工程を行ってもよい。
【0023】あらかじめ冷却させることによって、図6
のC線に示すように、Md点への到達を遅らせ、部品の
強磁性化レベルがB4000で0.3T以上とすることを容
易に可能とすることができる。これは、さらなる強磁性
化レベルの向上を狙い、加工工程で発生する熱の除去を
狙った素材の極低温(−196〜℃)での冷却を加え
る。この低温処理により、強磁性化に多工程を要せず、
より少ない加工工程であっても磁束密度B4000で目標レ
ベル0.3T以上を満足させることができるのである。
【0024】また、この各工程の材料温度は、100℃
以内とすることがよい。その理由を図7を用いて説明す
る。それは、引張試験にて歪付与速度と加工温度の上昇
の関係を検討し、塑性加工による発熱をほとんど無視で
きる歪速度(1mm/min)にて恒温槽内で準安定オ
ーステナイト鋼の引張試験を行った。その結果、図7に
示すように100℃を境にマルテンサイト発生が生じな
くなることがわかった。そのため、100℃以上におい
ては、発生するマルテンサイト量が10%以下となって
しまう。
【0025】これで、磁気特性は満足させることができ
た。我々はさらに鋭意研究を行い、絞り工程後に10%
以上のしごき加工を加えることが応力腐食割れを防止す
ることができることを見いだした。これを図8を用いて
説明する。応力腐食割れの主要因は絞り加工で生じた円
周方向(図9参照)の引張の残留応力といわれている
が、このしごき加工を加えることで、この引張の残留応
力を大幅に低減させることができる。
【0026】即ち、図8に示されるように、10%のし
ごきで割れの生じない領域に達し、20%以上のしごき
加工では逆に完全に圧縮の残留応力に変えることができ
るのである。このサンプルを42%の塩化マグネシウム
試験で評価した結果、表1に示すように10%以上のし
ごき加工を加えたものでは割れが発生しなかったことに
おいても検証できる。
【0027】
【表1】
【0028】このしごき加工は当然ながら強磁性化の歪
付与にも非常に有効な手段で、強磁性化の一工程である
ことは言うまでもない。以上のように、第1の発明で
は、重量でCが0.6%以下、Crが12〜19%、N
iが6〜12%、Mnが2%以下、Moが2%以下、N
bが1%以下、さらに残部がFeおよび不可避不純物に
よって構成され、 平山の量Heq=〔Ni%〕+1.05〔Mn%〕+
0.65〔Cr%〕+0.35〔Si%〕+12.6
〔C%〕が20〜23%で、かつ ニッケル量Nieq=〔Ni%〕+30〔C%〕+
0.5〔Mn%〕が9〜12%であって、かつ クロム量Creq=〔Cr%〕+〔Mo%〕+1.5
〔Si%〕+0.5〔Nb%〕が16〜19%である組
成の材料の歪み付加を行う加工工程における材料温度が
100℃以内となるように、当該加工工程を多段階にす
ことにより、磁束密度B4000が0.3T以上の強磁性
部を付し、前記強磁性化部の一部を10秒以内で加熱溶
体化させ、結晶粒径30μm以下の非磁性部を付す
合磁性部材の製造方法を提供する。
【0029】第2発明では、重量でCが0.6%以下、
Crが12〜19%、Niが6〜12%、Mnが2%以
下、Moが2%以下、Nbが1%以下、さらに残部がF
eおよび不可避不純物によって構成され、 平山の量Heq=〔Ni%〕+1.05〔Mn%〕+
0.65〔Cr%〕+0.35〔Si%〕+12.6
〔C%〕が20〜23%で、かつ ニッケル量Nieq=〔Ni%〕+30〔C%〕+
0.5〔Mn%〕が9〜12%であって、かつ クロム量Creq=〔Cr%〕+〔Mo%〕+1.5
〔Si%〕+0.5〔Nb%〕が16〜19%である組
成の材料の歪み付加を行う加工工程における材料温度が
加工による発熱があっても100℃以内となるように、
前記材料を予め室温以下に冷却した後に前記加工工程
行うことによって、磁束密度B4000が0.3T以上の強
磁性部を付し、前記強磁性化部の一部を10秒以内で加
熱溶体化させ、結晶粒径30μm以下の非磁性部を付
複合磁性部材の製造方法を提供する。
【0030】第3の発明としては、重量でCが0.6%
以下、Crが12〜19%、Niが6〜12%、Mnが
2%以下、Moが2%以下、Nbが1%以下、さらに残
部がFeおよび不可避不純物によって構成され、 平山の量Heq=〔Ni%〕+1.05〔Mn%〕+
0.65〔Cr%〕+0.35〔Si%〕+12.6
〔C%〕が20〜23%で、かつ ニッケル量Nieq=〔Ni%〕+30〔C%〕+
0.5〔Mn%〕が9〜12%であって、かつ クロム量Creq=〔Cr%〕+〔Mo%〕+1.5
〔Si%〕+0.5〔Nb%〕が16〜19%である組
成の材料の歪み付加を行う加工工程における材料温度が
100℃以内となるように、当該加工工程を多段階にす
るとともに、前記加工工程の後、10%以上のしごき加
工を加えることにより、磁束密度B4000が0.3T以上
強磁性部を付し、さらに、前記強磁性化部の一部を1
0秒以内で加熱溶体化させ、結晶粒径30μm以下
非磁性部を付す複合磁性部材の製造方法を提供する。
【0031】
【作用および発明の効果】第1発明乃至第3発明による
複合磁性部材の製造方法を採用することによって、図1
乃至図8に示されるように、強磁性部および非磁性部を
一体に有する複合磁性部材を容易に得ることができる。
【0032】
【実施例】
【0033】
【実施例1〜8】 (第1乃至第8実施例)表2で実施例1〜8としてそれ
ぞれ示すような組成の合金を、真空誘導炉において溶解
した後、これを鋳造および圧延加工により厚さ1.2m
mの板1を作成し、加熱により950℃の焼鈍を加えて
軟化状態とした。
【0034】このようにして作製された実施例1〜8の
合金は、それぞれ室温にて、図5(a)乃至(c)に示
す絞り加工を行うことによって、図5(d)に示すカッ
プ形状体を得た。この時、合金に対しては、この合金の
温度の上昇を防ぎ、良好な強磁性を得るために、7工程
にわたって段階的に絞り加工を行うことによって、材料
自体の温度を100℃以下に保った。このようにして、
カップ形状体10を成形する。
【0035】そして、さらに図5(d)乃至(f)に示
すしごき加工によって、肉厚をしごき率(しごき前の厚
さtーしごき後の厚さt’)/しごき前の厚さt×10
0)を10%以上とするように加工を加えて、全体を強
磁性化した所望の円筒体20とした。尚、オーステナイ
トのマルテンサイト化による強磁性化の程度は加工のみ
ならずその材料温度に大きな影響を受け、加工温度の上
昇をさらに抑制することにより、強磁性化することが可
能である。
【0036】また、表2に示す組成等の材料を絞り加工
のみでカップ形状に加工すると、残留応力によって、応
力腐食割れや置き割れの懸念が考えられる。しかしなが
ら、本実施例においはて、さらにしごき加工を加えるこ
とにより、残留応力を低減させると共に、低減された残
留応力も複合磁性部材内の引張応力から圧縮応力に変化
させることができたため、残留応力等による応力腐食割
れ等が防止することができる。
【0037】なお、応力腐食割れ等を防ぐ有効な手段で
ある溶体化処理は冷間加工による強磁性部を非磁性とし
てしまう処理のため採用することはできない。次に、図
10に示す如く、強磁性化された円筒体20の中間部を
取り囲むように高周波コイル22を設定し、この円筒体
の胴部の一部分を局部的に加熱するとともに、温度約2
0℃の冷却液Wによる冷却によって、その一部を非磁性
化する。
【0038】この時、高周波加熱の条件としては、周波
数100kHz、プレート電圧6kV、プレート電流
2.1Aおよび加熱時間0.8secとした。この高周
波加熱による方法では、高周波電流によって材料中に発
生するうず電流を加熱源とするため、コイル形状、周波
数、電流電圧等を適正に抑制することにより、局部的な
溶融を伴わずに短時間での溶体化が比較的簡単に実現可
能であるだけではなく、加熱時間が数秒と短いため結晶
粒の粗大化を防ぐことができるのである。
【0039】すなわち、上記加工を施すことによって、
図10(b)に示す如く、円筒体20の3分割された領
域A〜Cの両側の領域AおよびCは強磁性特性を有する
ように設定され、その間のB部分が非磁性特性を有する
ように構成される。このように作製された実施例1〜8
の部材の強磁性部および非磁性部により、それぞれ磁気
特性測定用の試験片を採取し、この試験片それぞれの磁
気特性を直流磁気磁束計もしくは透磁率計によって測定
した。
【0040】その結果が表3で示される。これによって
目標を満足することのできる磁気特性および低温におい
ても非磁性を保つことのできる条件である結晶粒径30
μm以下の部材を得られることが確認された。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】また、上記実施例では、局部溶体化方法と
して、高周波加熱を用いたが、本願発明はこれに限られ
るものではなく、高周波加熱の如く、部材の非磁性化さ
せた箇所のみを特定して部材を溶融させることなく短時
間で加熱できる方法であればよい。 (実施例9〜10)実施例9および10においては、合
金に対して歪みを付加する前に冷却する実施例を説明す
る。
【0044】実施例9および10の合金は、実施例1の
組成の合金を用いる。この組成の合金を真空誘導炉にお
いて溶解した後、これを鋳造および圧延加工により厚さ
1.2mmの板1を作成し、加熱により950℃の焼鈍
を加えて軟化状態とした。このようにして作製された実
施例5および6の合金は、それぞれ室温にて、図5
(a)乃至(c)に示す絞り加工を行うことによって、
図5(d)に示すカップ形状体を得た。この時、合金に
対しては、絞り加工を行う前に、実施例5においては、
ドライアイスを加えることによって−77℃に冷却した
液体メタノール中に合金を浸漬させることによって、こ
の合金を−77℃に冷却した。また、実施例6において
は、絞り加工を行う前に、合金を液体窒素中に浸漬させ
ることによって、−196℃に冷却した。
【0045】そして、これら合金の温度の上昇を防ぎ、
良好な強磁性を得るために、3工程にわたって段階的に
絞り加工を行うことによって、合金自体の温度を100
℃以下に保った。このようにして、カップ形状体10を
成形する。そして、さらに図5(d)乃至(f)に示す
しごき加工によって、肉厚をしごき率(しごき前の厚さ
tーしごき後の厚さt’)/しごき前の厚さt×10
0)を30%以上とするように加工を加えて、全体を強
磁性化した所望の円筒体20とした。
【0046】この結果を表4に示す。表4よりあきらか
なように、合金に対して絞り加工を付与する前に冷却さ
せることによってもまた、さらなる強磁性を有する部材
を得ることができた。また、歪みを付与する加工工程前
に冷却させることによって、よりすくない加工工程によ
ってもまた、十分な強磁性および非磁性を合わせ持つ複
合磁性部材を得ることができる。
【0047】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、平山の当量と比透磁率との関係を示す
特性図である。
【図2】図2は、圧延率と磁束密度との関係を示す特性
図である。
【図3】図3は、結晶粒径とマルテンサイトに変化する
温度との関係を示す関係図である。
【図4】図4は、結晶粒径と比透磁率との関係を示す関
係図である。
【図5】図5(a)乃至(f)は、本発明の複合磁性部
材の製造を説明する説明図である。
【図6】図6は、各加工方法における加工度と材料温度
との関係を示す特性図である。
【図7】図7は、材料温度とマルテンサイト量との関係
を示す特性図である。
【図8】図8は、しごき率と応力変化との関係を示す特
性図である。
【図9】図9は、円周方向を説明する説明図である。
【図10】図10(a)及び(b)は、本発明の複合磁
性部材の製造を説明する説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹内 桂三 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本 電装株式会社内 (72)発明者 片山 義唯 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本 電装株式会社内 (72)発明者 谷村 圭宏 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本 電装株式会社内 (72)発明者 杉山 聡 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本 電装株式会社内 (72)発明者 佐々木 計 東京都千代田区丸の内二丁目1番2号 日立金属株式会社内 (72)発明者 乾 勉 島根県安来市安来町2107−2 日立金属 株式会社安来工場内 (56)参考文献 特開 昭63−161146(JP,A) 特開 平2−57668(JP,A) 特開 平3−130348(JP,A) 特開 昭59−35652(JP,A) 特公 昭63−64517(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/12 C21D 9/00 C22C 38/00 302 C22C 38/00 303 C22C 38/48

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量でCが0.6%以下、Crが12〜
    19%、Niが6〜12%、Mnが2%以下、Moが2
    %以下、Nbが1%以下、さらに残部がFeおよび不可
    避不純物によって構成され、 平山の量Heq=〔Ni%〕+1.05〔Mn%〕+
    0.65〔Cr%〕+0.35〔Si%〕+12.6
    〔C%〕が20〜23%で、かつ ニッケル量Nieq=〔Ni%〕+30〔C%〕+
    0.5〔Mn%〕が9〜12%であって、かつ クロム量Creq=〔Cr%〕+〔Mo%〕+1.5
    〔Si%〕+0.5〔Nb%〕が16〜19%である組
    成の材料の歪み付加を行う加工工程における材料温度が
    100℃以内となるように、当該加工工程を多段階にす
    ことにより、磁束密度B4000(H=4000A/mに
    おける磁束密度)が0.3T以上の強磁性部を付し、前
    記強磁性化部の一部を10秒以内で加熱溶体化させ、結
    晶粒径30μm以下の非磁性部を付すことを特徴とす
    る複合磁性部材の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記非磁性部は、−40℃までの低温下
    にて透磁率μ=1.2を越えない非磁性部であるこ
    とを特徴とする請求項1記載の複合磁性部材の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 前記加工工程は絞りおよびしごきである
    ことを特徴とする請求項1記載の複合磁性部材の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 前記非磁性部は、前記強磁性部の一部を
    10秒以内で加熱し、溶融しない状態で溶体化させる
    とによって得られることを特徴とする請求項1記載の複
    合磁性部材の製造方法
  5. 【請求項5】 重量でCが0.6%以下、Crが12〜
    19%、Niが6〜12%、Mnが2%以下、Moが2
    %以下、Nbが1%以下、さらに残部がFeおよび不可
    避不純物によって構成され、 平山の量Heq=〔Ni%〕+1.05〔Mn%〕+
    0.65〔Cr%〕+0.35〔Si%〕+12.6
    〔C%〕が20〜23%で、かつ ニッケル量Nieq=〔Ni%〕+30〔C%〕+
    0.5〔Mn%〕が9〜12%であって、かつ クロム量Creq=〔Cr%〕+〔Mo%〕+1.5
    〔Si%〕+0.5〔Nb%〕が16〜19%である組
    成の材料の歪み付加を行う加工工程における材料温度が
    加工による発熱があっても100℃以内となるように、
    前記材料を予め室温以下に冷却した後に前記加工工程
    行うことによって、磁束密度B4000が0.3T以上の強
    磁性部を付し、前記強磁性化部の一部を10秒以内で加
    熱溶体化させ、結晶粒径30μm以下の非磁性部を付
    ことを特徴とする複合磁性部材の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記材料は、ドライアイスまたは液体窒
    素にて冷却されることを特徴とする請求項5記載の複合
    磁性部材の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記非磁性部は、−40℃までの低温下
    にて透磁率μ=1.2を越えない非磁性部であるこ
    とを特徴とする請求項5記載の複合磁性部材の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 前記加工工程は絞りおよびしごきである
    ことを特徴とする請求項5記載の複合磁性部材の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 前記非磁性部は、前記強磁性部の一部を
    10秒以内で加熱し、溶融しない状態で溶体化させる
    とによって得られることを特徴とする請求項5記載の複
    合磁性部材の製造方法
  10. 【請求項10】 重量でCが0.6%以下、Crが12
    〜19%、Niが6〜12%、Mnが2%以下、Moが
    2%以下、Nbが1%以下、さらに残部がFeおよび不
    可避不純物によって構成され、 平山の量Heq=〔Ni%〕+1.05〔Mn%〕+
    0.65〔Cr%〕+0.35〔Si%〕+12.6
    〔C%〕が20〜23%で、かつ ニッケル量Nieq=〔Ni%〕+30〔C%〕+
    0.5〔Mn%〕が9〜12%であって、かつ クロム量Creq=〔Cr%〕+〔Mo%〕+1.5
    〔Si%〕+0.5〔Nb%〕が16〜19%である組
    成の材料の歪み付加を行う加工工程における材料温度が
    100℃以内となるように、当該加工工程を多段階にす
    とともに、前記加工工程の後、10%以上のしごき加
    工を加えることにより、磁束密度B4000が0.3T以上
    強磁性部を付し、さらに、前記強磁性化部の一部を1
    0秒以内で加熱溶体化させ、結晶粒径30μm以下
    非磁性部を付すことを特徴とする複合磁性部材の製造方
    法。
  11. 【請求項11】 前記非磁性部は、−40℃までの低温
    下にて透磁率μ=1.2を越えない非磁性部である
    ことを特徴とする請求項10記載の複合磁性部材の製造
    方法。
  12. 【請求項12】 前記加工工程は、絞りおよびしごきで
    あることを特徴とする請求項10記載の複合磁性部材の
    製造方法。
  13. 【請求項13】 前記加熱溶体化の後、さらに、100
    ℃以上の温度で前記材料に対して、温間加工を行うこと
    で所望の形状とすることを特徴とする請求項10記載の
    複合磁性部材の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記非磁性部は、前記強磁性部の一部
    10秒以内で加熱し、溶融しない状態で溶体化させる
    ことによって得られることを特徴とする請求項10記載
    の複合磁性部材の製造方法
JP13855894A 1994-06-21 1994-06-21 複合磁性部材の製造方法 Expired - Fee Related JP3179967B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP13855894A JP3179967B2 (ja) 1994-06-21 1994-06-21 複合磁性部材の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP13855894A JP3179967B2 (ja) 1994-06-21 1994-06-21 複合磁性部材の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH083643A JPH083643A (ja) 1996-01-09
JP3179967B2 true JP3179967B2 (ja) 2001-06-25

Family

ID=15224957

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP13855894A Expired - Fee Related JP3179967B2 (ja) 1994-06-21 1994-06-21 複合磁性部材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3179967B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE69713446T2 (de) * 1996-04-26 2003-08-07 Denso Corp Verfahren zum spannungsinduzierten Umwandeln austenitischer rostfreier Stähle und Verfahren zum Herstellen zusammengesetzter magnetischer Teile
US5944262A (en) * 1997-02-14 1999-08-31 Denso Corporation Fuel injection valve and its manufacturing method

Also Published As

Publication number Publication date
JPH083643A (ja) 1996-01-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7221474B6 (ja) 非磁性オーステナイト系ステンレス鋼及びその製造方法
JPH0711397A (ja) 複合磁性部材およびその製法およびこの複合磁性部材を用いた電磁弁
JP4399751B2 (ja) 複合磁性部材および複合磁性部材の強磁性部の製造方法ならびに複合磁性部材の非磁性部の形成方法
JP7329594B2 (ja) 高強度非磁性オーステナイト系ステンレス鋼及びその製造方法
US5821000A (en) Composite magnetic member and process for producing the member
US4540453A (en) Magnetically soft ferritic Fe-Cr-Ni alloys
JP2978427B2 (ja) 極低温用高Mn非磁性鋼及び製造方法
JP5139021B2 (ja) 軟磁性鋼材、並びに軟磁性鋼部品およびその製造方法
JP3179967B2 (ja) 複合磁性部材の製造方法
JP4223726B2 (ja) 冷間鍛造性と透磁率特性に優れた軟磁性鋼材および透磁率特性に優れた軟磁性鋼部品並びにその製造方法
KR102265212B1 (ko) 비자성 오스테나이트계 스테인리스강
JP4502889B2 (ja) 冷間鍛造性、切削加工性および交流磁気特性に優れた軟磁性鋼材、交流磁気特性に優れた軟磁性鋼部品ならびにその製造方法
JP2004225082A (ja) 高強度低透磁率オーステナイト系ステンレス鋼板および製造方法並びにボルト締結用座金の製造方法
KR20220010185A (ko) 비자성 오스테나이트계 스테인리스강
JP4646872B2 (ja) 軟磁性鋼材、並びに軟磁性部品およびその製造方法
JP2017166010A (ja) 準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯または鋼板
Tsukahara et al. Design of alloy composition in 5% Mn-Cr-C austenitic steels
JP4223727B2 (ja) 冷間鍛造性と磁気特性に優れた軟磁性鋼材および磁気特性に優れた軟磁性鋼部品並びにその製造方法
JP3213641B2 (ja) 複合磁性部材の製造方法
WO2012077631A1 (ja) 複合磁性材用素材及び複合磁性材
JP3561922B2 (ja) 軟磁性ステンレス鋼の製造方法
CN114502763A (zh) 具有非磁性特性的高强度线材及其制造方法
JPH11209854A (ja) 強磁性部と非磁性部を合わせ持つ複合磁性材料およびその製造方法
CN114981465A (zh) 非磁性奥氏体不锈钢
JP2023507592A (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20010321

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100413

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100413

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100413

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100413

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100413

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110413

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130413

Year of fee payment: 12

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees