JPH10246972A - 電子写真感光体及び電荷輸送層用塗液 - Google Patents

電子写真感光体及び電荷輸送層用塗液

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JPH10246972A
JPH10246972A JP4944997A JP4944997A JPH10246972A JP H10246972 A JPH10246972 A JP H10246972A JP 4944997 A JP4944997 A JP 4944997A JP 4944997 A JP4944997 A JP 4944997A JP H10246972 A JPH10246972 A JP H10246972A
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Japan
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phthalocyanine
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charge transport
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Application number
JP4944997A
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English (en)
Inventor
Yoshii Morishita
芳伊 森下
Takayuki Akimoto
孝幸 秋元
Megumi Matsui
恵 松井
Shigeru Hayashida
茂 林田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Showa Denko Materials Co Ltd
Original Assignee
Hitachi Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い感度、低い残留電位、良好な画像特性を
有する電子写真感光体及びその製造に用いられる電荷輸
送層用塗液を提供する。 【解決手段】 導電性基材上に、電荷輸送物質を含有す
る光導電層を設けた電子写真感光体において、電荷輸送
物質として下記一般式(I)で表される含フッ素ベンジ
ジン誘導体及び下記一般式(II)で表されるベンジジ
ン誘導体を含有する電子写真感光体、及び、これらの含
フッ素ベンジジン誘導体及びベンジジン誘導体を含有す
る電荷輸送層用塗液。 【化1】 (式中、R1はフルオロアルキル基又はフルオロアルコ
キシ基を示し、R2はハロゲン原子、アルキル基、アル
コキシ基、アリール基、フルオロアルキル基又はフルオ
ロアルコキシ基を示し、R3は水素原子、アルキル基又
はアルコキシ基を示し、mは0〜4の整数であり、nは
0〜5の整数であり、R4はハロゲン原子、アルキル基
又はアルコキシ基を示し、R5はアルキル基又はアルコ
キシ基を示し、pは0〜5の整数である。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性基材上に電
荷発生物質と特定の電荷輸送物質を含有する光導電層を
設けた電子写真感光体、更には、導電性基材上に特定の
電荷発生物質及び特定の電荷輸送物質を含有する光導電
層を設けた電子写真感光体、及び特定の電荷輸送物質を
含有する電荷輸送層用塗液に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の電子写真感光体として、アルミニ
ウム等の導電性基板の上に50μm程度のセレン(S
e)膜を真空蒸着法により形成したものがあるが、この
Se感光体は、波長500nm付近までしか感度を有し
ていない等の問題がある。
【0003】また、導電性基板の上に50μm程度のS
e層を形成し、この上に更に数μmのセレン−テルル
(Se−Te)合金層を形成した感光体がある。この感
光体は上記Se−Te合金のTeの含有率が高い程、分
光感度が長波長にまで伸びる反面、Teの添加量が増加
するにつれて表面電荷の保持特性が不良となり、事実
上、感光体として使用できなくなるという重大な問題が
ある。
【0004】また、アルミニウム基板の上に1μm程度
のクロロシアンブルー又はスクウアリリウム酸誘導体を
コーティングして電荷発生層を形成し、この上に絶縁抵
抗の高いポリビニルカルバゾール又はピラゾリン誘導体
とポリカーボネート樹脂との混合物を10〜20μmコ
ーティングして電荷輸送層を形成した、いわゆる複合二
層型の感光体もあるが、この感光体は700nm以上の
光に対して感度を有していないのが実状である。
【0005】近年、この複合二層型の感光体において、
上記欠点を改善した、即ち、半導体レーザー発振領域8
00nm前後に感度を有する感光体も多く報告されてい
る。こられのうちの多くは、電荷発生材料としてフタロ
シアニン顔料を用い、その膜厚0.5〜1μm程度の電
荷発生層上に、ポリビニルカルバゾール、ピラゾリン誘
導体又はヒドラゾン誘導体とポリカーボネート樹脂又は
ポリエステル樹脂との絶縁抵抗の高い混合物を、10〜
20μmコーティングして電荷輸送層を形成し、複合二
層型の感光体を形成している。
【0006】電荷輸送層に用いられる電荷輸送物質とし
ては、例えば特公昭55−42380号公報記載のヒド
ラゾン誘導体、特開昭62−237458号公報記載の
エナミン誘導体、特公昭59−9049号公報、特開昭
55−7940号公報、特公平6−64351号公報及
び特開平1−142641号公報記載のベンジジン誘導
体、特開昭58−198043号公報記載のスチルベン
誘導体、及び特公昭58−32372号公報及び特開昭
61−132955号公報記載のトリフェニルアミン誘
導体等が知られている。
【0007】ベンジジン誘導体としては、N,N,
N′,N′−テトラフェニルベンジジン、N,N′−ジ
フェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)ベン
ジジン、N,N,N′,N′−テトラキス(4−メチル
フェニル)ベンジジン、N,N′−ジフェニル−N,
N′−ビス(4−メトキシフェニル)ベンジジン、N,
N,N′,N′−テトラキス(4−メチルフェニル)ト
リジン等が知られているが、これらのベンジジン誘導体
は、比較的良好な電荷輸送能を有しているものの、有機
溶剤に対する溶解性が低く、また、比較的酸化されやす
いという欠点がある。つまり、有機溶剤及び/又は結合
剤に対する溶解度が低いために、電荷輸送層を形成する
ための塗布液を調製することが困難であったり、塗膜作
製時にベンジジン誘導体の結晶が析出してしまうことが
ある。また、目視では電荷輸送層を良好な塗膜として形
成できた場合でも、電荷輸送層中でこれらベンジジン誘
導体の微小な結晶が析出し、その結果として、画像特性
が劣ってしまうという欠点がある。
【0008】そこで、特開平5−6010号公報では、
有機溶剤に対する溶解性及びポリカーボネート樹脂等の
結合剤との相溶性に優れる新規な化合物である含フッ素
N,N,N′,N′−テトラアリールベンジジン誘導体
を用いた、感度が高く、良好な画像特性を有する電子写
真感光体が提案されている。しかし、その用途であるレ
ーザービームプリンター等では、高画質、高精細化が更
に進んでおり、更に感度が高く、残留電位が低く、良好
な画像特性を有する電子写真感光体が求められている。
【0009】また、これらの電荷輸送物質と組み合わせ
て用いられている電荷発生物質としては、無金属フタロ
シアニン、及び銅フタロシアニン、塩化アルミニウムフ
タロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、チタ
ニルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン等の金属
フタロシアニン等が挙げられる。
【0010】フタロシアニン類は、中心金属の種類によ
り吸収スペクトルや光導電性が異なるだけでなく、結晶
型によってもこれらの物性には差があり、同じ中心金属
のフタロシアニンでも、特定の結晶型のものが電子写真
感光体用に選択されて使用されている例がいくつか報告
されている。例えば、チタニルフタロシアニンには種々
の結晶型が存在し、その結晶型の違いによって帯電性、
暗減衰、感度等に大きな差があることが報告されてい
る。
【0011】特開昭59−49544号公報には、チタ
ニルフタロシアニンの結晶型としては、ブラッグ角(2
θ±0.2度)の9.2度、13.1度、20.7度、
26.2度、27.1度に強い回折ピークを与えるもの
が好適であることが示されており、エックス線回折スペ
クトル図が示されている。この結晶型のチタニルフタロ
シアニンを電荷発生材料として用いた感光体の電子写真
特性は、暗減衰(DDR):85%、感度(E1/2):
0.57lux・secである。
【0012】また、特開昭59−166959号公報に
は、チタニルフタロシアニンの蒸着膜をテトラヒドロフ
ランの飽和蒸気中に1〜24時間放置し、結晶型を変化
させて電荷発生層とすることが記載されている。この結
晶型の変化後のチタニルフタロシアニンのエックス線回
折スペクトルでは、ピークの数が少なく、かつ幅が広
く、ブラッグ角(2θ±0.2度)の7.5度、12.
6度、13.0度、25.4度、26.2度及び28.
6度に強い回折ピークを与えることが示されている。こ
の結晶型のチタニルフタロシアニンを電荷発生材料とし
て用いた感光体の電子写真特性は、暗減衰(DDR):
86%、感度(E1/2):0.7lux・secであ
る。
【0013】また、特開平2−198452号公報に
は、チタニルフタロシアニンの結晶型としては、ブラッ
グ角(2θ±0.2度)の27.3度に主たる回折ピー
クを有するものが高感度(1.7mJ/m2)であるこ
と、及び、その製造法として、チタニルフタロシアニン
を、水とo−ジクロロベンゼンとの混合液中で、60℃
で1時間、加熱撹拌することが示されている。
【0014】また、特開平2−256059号公報に
は、チタニルフタロシアニンの結晶型として、ブラッグ
角(2θ±0.2度)の27.3度に主たる回折ピーク
を有するものが高感度(0.62lux・sec)であ
ること、及び、その製造法として、チタニルフタロシア
ニンを室温下で1,2−ジクロロエタン中で撹拌するこ
とが示されている。
【0015】一方、2種以上のフタロシアニンを混合し
て用いる技術もいくつも提案されている。例えば、特開
昭62−194257号公報には、2種以上のフタロシ
アニンの混合物、例えば、チタニルフタロシアニンと無
金属フタロシアニンの混合物等を、電荷発生材料として
用いることが示されている。
【0016】また、特開平6−175382号公報に
は、チタニルフタロシアニン及び中心金属が3価の金属
であるハロゲン化金属フタロシアニンを含むフタロシア
ニン混合物を、アシッドペースティング法により水中に
沈殿させ、次いで、有機溶媒で処理することにより製造
され、CuKαのX線回折スペクトルにおいて、ブラッ
グ角(2θ±0.2度)の7.5度、22.5度、2
4.3度、25.3度及び28.6度に主な回折ピーク
を有する新規なフタロシアニン組成物が提案されてい
る。
【0017】また、特開平8−41373号公報には、
チタニルフタロシアニン及び中心金属が3価の金属であ
るハロゲン化金属フタロシアニンを含むフタロシアニン
混合物を、アシッドペースティング法により水中に沈殿
させ、次いで、有機溶剤で処理することにより製造さ
れ、CuKαのX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ
角(2θ±0.2度)の9.3度、13.1度、15.
0度及び26.2度に主な回折ピークを有する新規なフ
タロシアニン組成物が提案されている。
【0018】これらの結晶型変換型フタロシアニン組成
物は、感度が高く、優れた特性を示す電荷発生材料を与
えるが、その用途であるレーザービームプリンター等で
は、高画質、高精細化が進んでおり、更に高感度な特性
を有する電子写真感光体が求められている。
【0019】また、特開平6−271786号公報で
は、CuKαのX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ
角(2θ±0.2度)の7.5度、24.2度及び2
7.3度に主な回折ピークを有するフタロシアニン組成
物及びその製造法が提案されており、更に高感度な特性
を示すことが記載されている。更に、特開平7−317
886号公報では、CuKαのX線回折スペクトルにお
いて、ブラッグ角(2θ±0.2度)の17.9度、2
4.0度、26.2度及び27.2度に主な回折ピーク
を有するフタロシアニン組成物及びその製造法が提案さ
れており、高感度でかつ繰り返し安定性に優れる特性を
示すことが記載されている。
【0020】このように、フタロシアニン類は、結晶型
の違いによって電子写真特性が大きく異なり、その結晶
型が電子写真感光体としての性能を左右する重要な因子
である。また、各種のフタロシアニン類のなかでも、2
種以上のフタロシアニンを用いて作製されるフタロシア
ニン組成物は、非常に感度が高く、優れた特性を示す電
荷発生材料を与える。しかし、電子写真感光体の用途で
あるレーザービームプリンター等では、高画質、高精細
化が更に進んでおり、更に感度が高く、残留電位が低
く、良好な画像特性を有する電子写真感光体が求められ
ている。
【0021】また、電荷発生物質と電荷輸送物質の組み
合わせによって暗減衰率、感度及び残留電位が大きく変
化することが知られており、それら特性のバランスがと
れた電子写真感光体を見出すためには、良好な電荷発生
物質と電荷輸送物質の組み合わせに関する検討が必要で
ある。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、光導電層中
で電荷輸送物質が析出することがなく、優れた画像特性
を示す電子写真感光体を提供することを目的とする。
【0023】また、本発明は、光導電層中で電荷輸送物
質が析出することがなく優れた画像特性を示すと共に、
また、高い感度及び低い残留電位を示す電子写真感光体
を提供することを目的とする。
【0024】また、本発明は、電子写真感光体の電荷輸
送層の形成に用いられる塗液であって、塗膜形成時や形
成後に電荷輸送物質が析出することがなく、優れた画像
特性と高い感度及び低い残留電位を示す電子写真感光体
を製造することのできる電荷輸送層用塗液を提供するこ
とを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、様々な電
荷輸送物質の組み合わせ、更に、様々な電荷発生物質及
び電荷輸送物質の組み合わせについて鋭意研究を行った
結果、導電性基材上に、電荷輸送物質として特定の複数
のベンジジン誘導体を用いた電子写真感光体、及び、電
荷発生物質として特定のフタロシアニン組成物を用い、
更に電荷輸送物質として特定の複数のベンジジン誘導体
を用いた電子写真感光体によって、上記課題を解決する
ことができることを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
【0026】即ち、本発明は、導電性基材上に、電荷発
生物質及び電荷輸送物質を含有する光導電層を設けた電
子写真感光体において、電荷輸送物質として下記一般式
(I)
【0027】
【化3】 (式中、R1は、炭素数1〜4のフルオロアルキル基又
は炭素数1〜4のフルオロアルコキシ基を示し、R
2は、各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアル
キル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数6〜20
のアリール基、炭素数1〜4のフルオロアルキル基又は
炭素数1〜4のフルオロアルコキシ基を示し、R3は、
各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は
炭素数1〜4のアルコキシ基を示し、mは0〜4の整数
であり、nは、各々独立に、0〜5の整数である。)で
表される含フッ素ベンジジン誘導体及び下記一般式(I
I)
【0028】
【化4】 (式中、R4は、各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1
〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を示
し、R5は、各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基又
は炭素数1〜4のアルコキシ基を示し、pは、各々独立
に、0〜5の整数である。)で表されるベンジジン誘導
体を含有することを特徴とする電子写真感光体を提供す
るものである。
【0029】また、本発明は、導電性基材上に、電荷発
生物質及び電荷輸送物質を含有する光導電層を設けた電
子写真感光体において、光導電層における電荷発生物質
として2種類以上のフタロシアニンからなるフタロシア
ニン組成物を用い、電荷輸送物質として請求項1記載の
一般式(I)で表される含フッ素ベンジジン誘導体及び
一般式(II)で表されるベンジジン誘導体を含有する
ことを特徴とする電子写真感光体を提供するものであ
る。
【0030】更に、本発明は、一般式(I)で表される
含フッ素ベンジジン誘導体及び、一般式(II)で表さ
れるベンジジン誘導体を電荷輸送物質として含有する電
荷輸送層用塗液を提供するものである。
【0031】
【発明の実施の形態】本発明に用いられる前記一般式
(I)で表される含フッ素ベンジジン誘導体は、例え
ば、下記一般式(III)
【0032】
【化5】 (式中、R3は上記と同じ意味を有し、Xはヨウ素又は
臭素を表す。)で表されるハロゲン化ビフェニル誘導体
と、下記一般式(IV)で表されるジフェニルアミン化
合物、又は下記一般式(IV)で表されるジフェニルア
ミン化合物
【0033】
【化6】 (式中、R1、R2、m及びnは、上記と同じ意味を有す
る。)との反応により製造することができる。
【0034】このハロゲン化ビフェニル誘導体とジフェ
ニルアミン化合物との反応は、例えば、次のようにして
好適に行うことができる。まず、上記のハロゲン化ビフ
ェニル誘導体と上記のジフェニルアミン化合物とを、銅
系触媒(銅粉末、酸化銅、ハロゲン化銅等の銅化合物)
及び塩基性化合物(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水
酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の炭
酸塩又は水酸化物)の存在下で、無溶媒又は有機溶媒存
在下で、180〜260℃で5〜30時間加熱撹拌す
る。得られた反応混合物を塩化メチレンやトルエンなど
の有機溶剤に溶解し、不溶物を分離し、溶剤を留去す
る。残留物をアルミナカラム等で精製し、ヘキサン、シ
クロヘキサン等で再結晶することにより、一般式(I)
で表される含フッ素ベンジジン誘導体を製造することが
できる。
【0035】上記のハロゲン化ビフェニル誘導体とジフ
ェニルアミン化合物との反応に用いられる銅系触媒とし
ては、例えば、銅粉末、酸化銅、ハロゲン化銅等の銅化
合物が挙げられ、塩基性化合物としては、例えば、炭酸
カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナ
トリウム等のアルカリ金属の炭酸塩又は水酸化物が挙げ
られる。また、反応溶媒として用いられる有機溶媒とし
ては、例えば、ニトロベンゼン、ジクロロベンゼン、キ
ノリン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−
2−ピロリドン、スルホラン等が挙げられる。
【0036】ハロゲン化ビフェニル誘導体、ジフェニル
アミン化合物、銅系触媒及び塩基性化合物の使用量は、
通常、化学量論量とすればよいが、好ましくは、ハロゲ
ン化ビフェニル誘導体1モルに対して、ジフェニルアミ
ン化合物2〜3モル、銅系触媒0.5〜2モル、塩基性
化合物1〜2モルの範囲で使用すればよい。
【0037】また、一般式(II)で表されるベンジジ
ン誘導体は、一般式(I)で表される含フッ素ベンジジ
ン誘導体の場合と同様にして、下記一般式(V)
【0038】
【化7】 (式中、R5は上記と同じ意味を有し、Xはヨウ素又は
臭素を表す。)で表されるハロゲン化ビフェニル誘導体
と、下記一般式(VI)
【0039】
【化8】 (式中、R4及びpは、上記と同じ意味を有する。)で
表されるジフェニルアミン化合物とを反応させることに
よって製造することができる。
【0040】前記一般式(I)中のR1及びR2が示す炭
素数1〜4のフルオロアルキル基及び炭素数1〜4のフ
ルオロアルコキシ基、R2が示すハロゲン原子及び炭素
数6〜20のアリール基、R2及びR3が示す炭素数1〜
4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基の具体
例としては、例えば下記のものが挙げられる。
【0041】ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原
子等が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチ
ル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル
基、n−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ
る。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エト
キシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基等が
挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル
基、トリル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナ
フチル基等が挙げられる。フルオロアルキル基として
は、例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリ
フルオロエチル基、1H,1H−ペンタフルオロプロピ
ル基、n−ヘプタフルオロプロピル基、1H,1H−ヘ
プタフルオロブチル基等が挙げられる。フルオロアルコ
キシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基、
2,2−ジフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフル
オロエトキシ基、1H、1H−ペンタフルオロプロポキ
シ基、ヘキサフルオロ−iso−プロポキシ基、1H,
1H−ヘプタフルオロブトキシ基、2,2,3,4,
4,4−ヘキサフルオロブトキシ基、4,4,4−トリ
フルオロブトキシ基等のフルオロアルコキシ基が挙げら
れる。
【0042】前記一般式(I)で表される含フッ素ベン
ジジン誘導体としては、具体的には、下記のNo.1〜
No.10の化合物等が挙げられる。
【0043】
【化9】
【0044】
【化10】 なかでも、No.3、4及び5の化合物が好ましく、特
にNo.3の化合物が好ましい。なお、これらの一般式
(I)で表される含フッ素ベンジジン誘導体は、1種単
独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】前記一般式(II)中のR4及びR5が示す
炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキ
シ基、R4が示すハロゲン原子の具体例としては、例え
ば下記のものが挙げられる。
【0046】アルキル基としては、例えば、メチル基、
エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−
ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。アルコ
キシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n
−プロポキシ基、iso−プロポキシ基等が挙げられ
る。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙
げられる。
【0047】また、前記一般式(II)で表されるベン
ジジン誘導体としては、具体的には、下記のNo.11
〜No.20の化合物等が挙げられる。
【0048】
【化11】
【0049】
【化12】 なかでも、No.13、14及び17の化合物が好まし
く、特にNo.13の化合物が好ましい。なお、これら
の一般式(II)で表されるベンジジン誘導体は、1種
単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】本発明の電子写真感光体の光導電層、及び
本発明の電荷輸送層用塗液中における前記一般式(I)
で表される含フッ素ベンジジン誘導体及び一般式(I
I)で表されるベンジジン誘導体の混合比率は、帯電
性、暗減衰率、感度等の電子写真特性の点から、含フッ
素ベンジジン誘導体/ベンジジン誘導体が10/90〜
90/10(重量比)とすることが好ましく、20/8
0〜80/20とすることがより好ましく、25/75
〜50/50とすることが特に好ましい。含フッ素ベン
ジジン誘導体/ベンジジン誘導体が10/90未満であ
ると、ベンジジン誘導体の割合が多くなり、電荷輸送層
を形成するための塗布液の調製が困難になったり、塗膜
作製時にベンジジン誘導体の結晶が析出してしまった
り、電荷輸送層中でベンジジン誘導体の微小な結晶が析
出してしまったりすることがある。また、90/10を
超えると、残留電位が高くなることがある。
【0051】本発明の電子写真感光体の光導電層中に含
有される電荷発生物質としては、特に制限はないが、2
種類以上のフタロシアニンからなるフタロシアニン組成
物を用いることが好ましい。フタロシアニン組成物とし
ては、2種類以上のフタロシアニンを含むフタロシアニ
ン混合物を、アシッドペースティング法による水中に沈
殿させ、次いで、有機溶剤中、又は芳香族系有機溶剤及
び水の混合溶媒中で処理することによって調製されるフ
タロシアニン組成物が好適に用いられる。
【0052】例えば、(a)チタニルフタロシアニン及
び(b)中心金属が3価の金属であるハロゲン化金属フ
タロシアニンを含むフタロシアニン混合物を、アシッド
ペースティング法により水中に沈殿させ、CuKαのX
線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2
度)27.2度に特徴的な回折ピークを有する沈殿物を
得た後、引き続きこの沈殿物を、有機溶剤中、又は芳香
族有機溶剤及び水の混合溶媒中で処理することによって
調製されるフタロシアニン組成物が好ましい。
【0053】なかでも好ましいフタロシアニン組成物と
しては、(1)(a)チタニルフタロシアニン及び
(b)中心金属が3価の金属であるハロゲン化金属フタ
ロシアニンを含むフタロシアニン混合物を、アシッドペ
ースティング法により水中に沈殿させ、CuKαのX線
回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2
度)の27.2度に特徴的な回折ピークを有する沈殿物
を得た後、引き続きこの沈殿物を、芳香族系有機溶剤及
び水の混合溶媒中で処理して得た、CuKαのX線回折
スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2度)の
7.5度、24.2度及び27.3度に主な回折ピーク
を有するフタロシアニン組成物、及び、(2)(a)チ
タニルフタロシアニン及び(b)中心金属が3価の金属
であるハロゲン化金属フタロシアニンを含むフタロシア
ニン混合物を、アシッドペースティング法により水中に
沈殿させ、CuKαのX線回折スペクトルにおいて、ブ
ラッグ角(2θ±0.2度)の27.2度に特徴的な回
折ピークを有する沈殿物を得た後、引き続きこの沈殿物
を、芳香族系有機溶剤及び水の混合溶媒中で処理して得
た、CuKαのX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ
角(2θ±0.2度)の17.9度、24.0度、2
6.2度及び27.2度に主な回折ピークを有するフタ
ロシアニン組成物が挙げられる。
【0054】一般に、フタロシアニン混合物とは、原料
に用いた2種以上のフタロシアニンの単なる物理的混合
物であり、フタロシアニン混合物のX線回折パターン
は、原料に用いたそれぞれのフタロシアニン単体のピー
クパターンの重ね合わせからなるものである。一方、本
発明に好適に用いられるフタロシアニン組成物とは、原
料に用いたフタロシアニンが分子レベルで混合したもの
であり、X線回折パターンは、原料に用いたそれぞれの
フタロシアニン単体のピークパターンの重ね合わせとは
異なるパターンを示すものである。
【0055】上記のフタロシアニン組成物の作製に使用
しうる(a)チタニルフタロシアニンとしては、特に制
限はなく、公知のものを使用することができ、また、例
えば、次のようにして作製したものを使用することもで
きる。
【0056】フタロニトリル18.4g(0.144モ
ル)をα−クロロナフタレン120ml中に加え、次に
窒素雰囲気下で四塩化チタン4ml(0.0364モ
ル)を滴下する。滴下後、昇温し、撹拌しながら200
〜220℃で3時間反応させた後、100〜130℃で
熱時濾過し、α−クロロナフタレン、次いでメタノール
で洗浄する。洗浄物を140mlのイオン交換水で加水
分解(90℃で1時間)し、溶液が中性になるまでこの
操作を繰り返し、メタノールで洗浄した後、100℃の
N−メチルピロリドンで十分に洗浄し、続いてメタノー
ルで洗浄する。このようにして得られた化合物を、60
℃で真空加熱乾燥して、チタニルフタロシアニンを得る
ことができる(収率46%)。
【0057】上記のフタロシアニン組成物の作製に使用
しうる(b)中心金属が3価の金属であるハロゲン化金
属フタロシアニンにおいて、中心金属としての3価の金
属としては、例えば、In、Ga、Al等が挙げられ、
ハロゲンとしては、例えば、Cl、Br等が挙げられ
る。また、フタロシアニン環にハロゲン等の置換基を有
していてもよい。これらの化合物は、公知の化合物であ
り、例えば、モノハロゲン化金属フタロシアニン及びモ
ノハロゲン化金属ハロゲンフタロシアニンの合成法は、
インノーガニック ケミストリー[Inorganic
Chemistry], 19, 3131(198
0)及び特開昭59−44054号公報等に記載されて
いる。
【0058】モノハロゲン化金属フタロシアニンは、例
えば、次のようにして製造することができる。
【0059】フタロニトリル78.2ミリモル及び三ハ
ロゲン化金属15.8ミリモルを、二回蒸留して精製し
たキノリン100ml中に入れ、0.5〜3時間加熱還
流した後、続いて、室温まで冷却した後、濾過する。得
られた固形分を、トルエン、アセトン、次いでメタノー
ルで洗浄し、更にこれをソックスレー抽出器を用いてメ
タノールで洗浄した後、60℃で真空加熱乾燥して、モ
ノハロゲン化金属フタロシアニンを得ることができる。
【0060】また、モノハロゲン化金属ハロゲンフタロ
シアニンは、例えば、次のようにして製造することがで
きる。
【0061】フタロニトリル156ミリモル及び三ハロ
ゲン化金属37.5ミリモルを混合し、300℃で溶融
してから、0.5〜3時間加熱し、モノハロゲン化金属
ハロゲンフタロシアニンの粗製物を得る。この粗製物を
ソックスレー抽出器を用いてα−クロロナフタレンで洗
浄して、モノハロゲン化金属ハロゲンフタロシアニンを
得ることができる。
【0062】フタロシアニン組成物の製造に用いられる
フタロシアニン混合物中の(a)チタニルフタロシアニ
ン及び(b)中心金属が3価のハロゲン化金属フタロシ
アニンの配合量は、帯電性、暗減衰率、感度等の電子写
真特性の点から、(a)チタニルフタロシアニンの配合
量が、(a)成分及び(b)成分の総量を100重量部
として、20〜95重量部とすることが好ましく、50
〜90重量部とすることがより好ましく、65〜90重
量部とすることが特に好ましく、75〜90重量部とす
ることが極めて好ましい。(a)成分の配合量が20重
量部未満であると、感度が低下することがあり、95重
量部を超えると、暗減衰率が低下することがある。
【0063】上記の好ましいフタロシアニン組成物の製
造に際しては、まず、上記(a)成分及び(b)成分を
含むフタロシアニン混合物を、アシッドペースティング
法により水中に沈殿させてアモルファス化する。このア
シッドペースティング法によるアモルファス化は、例え
ば、下記のようにして好適に行うことができる。
【0064】まず、フタロシアニン混合物1gを濃硫酸
に加えて、5〜25℃で撹拌した後、これを氷水で冷却
したイオン交換水1リットル中に約1時間、好ましくは
40分〜50分で滴下した後、濾過により沈殿物を回収
する。この後、沈殿物をイオン交換水で洗浄し、洗浄後
の洗浄水のpHが2〜5、好ましくはpHが3前後で、
かつ伝導率が5〜500μS/cmとなるまで沈殿物を
繰り返し洗浄し、次いで、メタノールで十分に洗浄した
後、60℃で真空加熱乾燥し、アモルファス粉末を得
る。
【0065】このようにして生成した上記(a)成分及
び(b)成分からなる沈殿物の粉末は、そのCuKαの
X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.
2度)の27.2度に明瞭な回折ピークを示す以外は、
ピークが幅広くなっており、明確にその値を規定できな
いものである。
【0066】なお、上記洗浄後の洗浄水のpHが5を超
えると、CuKαのX線回折スペクトルにおいて、ブラ
ッグ角(2θ±0.2度)の27.2度の特徴的なピー
ク強度が低下し、新たに6.8度に27.2度のピーク
強度より強いピークが生じ、この粉末を芳香族系有機溶
剤及び水の混合溶媒を用いて結晶変換を行っても、上記
のピーク特性を有する好ましいフタロシアニン組成物を
得られない傾向があり、また、洗浄後の洗浄水のpHが
2未満又は5を超える場合は、帯電性、暗減衰率、感度
等が劣る傾向がある。
【0067】次いで、上記で得られた沈殿物(アモルフ
ァル化したフタロシアニン)の粉末を、有機溶剤中で処
理することによって結晶型を変換し、CuKαのX線回
折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2度)の
7.5度、22.5度、24.3度、25.3度及び2
8.6度に主な回折ピークを有するフタロシアニン組成
物(1A)、又は、9.3度、13.1度、15.0度
及び26.2度に主な回折ピークを有するフタロシアニ
ン組成物(1B)が得られる。
【0068】前記の有機溶剤中で処理する結晶型変換時
に用いる有機溶剤としては、例えば、N−メチル−2−
ピロリドン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ピ
リジン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キ
シレン、o−ジクロロベンゼン等が挙げられる。この有
機溶剤中での結晶型変換処理は、例えば、沈殿物(アモ
ルファル化したフタロシアニン)5〜30重量部に有機
溶剤100重量部を加え、加熱温度80〜150℃、処
理時間2〜6時間、加熱処理すること等により行うこと
ができる。
【0069】なお、フタロシアニン混合物を濃硫酸に加
える際に、フタロシアニン混合物/濃硫酸の重量比を
0.015以下とすることにより、上記フタロシアニン
組成物(1A)が得られ、フタロシアニン混合物/濃硫
酸の重量比を0.02以上とすることにより、上記フタ
ロシアニン組成物(1B)が得られる。
【0070】また、上記で得られた沈殿物(アモルファ
ス化したフタロシアニン)の粉末を、芳香族系有機溶剤
及び水の混合溶媒中で処理することによって結晶型を変
換し、CuKαのX線回折スペクトルにおいて、ブラッ
グ角(2θ±0.2度)の7.5度、24.2度及び2
7.3度に主な回折ピークを有するフタロシアニン組成
物(2A)、又は、17.9度、24.0度、26.2
度及び27.2度に主な回折ピークを有するフタロシア
ニン組成物(2B)が得られる。
【0071】この芳香族系有機溶剤及び水の混合溶媒中
で処理する結晶型変換時に用いる有機溶剤としては、例
えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、o−ジクロロベ
ンゼン等が挙げられる。この時、芳香族系有機溶剤及び
水の使用割合は、芳香族系有機溶剤/水が1/99〜9
9/1(重量比)とすることが好ましく、95/5〜5
/95とすることがより好ましい。
【0072】この芳香族系有機溶剤及び水の混合溶媒中
での処理による結晶型変換の方法としては、例えば、4
0℃〜100℃、好ましくは60℃〜80℃の芳香族系
有機溶剤及び水の混合溶媒の総量100重量部を、沈殿
物(アモルファス化したフタロシアニン)1〜5重量部
に1時間以上接触させることにより行うことができる。
【0073】また、前記沈殿物と混合溶媒との接触方法
としては、加熱撹拌、又は粉砕及び加熱撹拌を同時に行
うことによって、電子写真感光体の電荷発生材料として
用いる場合に安定した電子写真特性を得ることができ
る。粉砕及び加熱撹拌を同時に行う方法としては、加熱
ミリング処理、ホモジナイジング、ペイントシェイキン
グ等が挙げられ、なかでも、より安定した電子写真特性
を得ることができる点から、加熱ミリング処理が好まし
い。
【0074】加熱ミリング処理等の粉砕処理に用いるメ
ディアとしては、例えば、ジルコニアビーズ等が好まし
く、このビーズ径としては、φ0.2〜3mmとするこ
とが好ましく、φ0.5〜2mmとすることがより好ま
しく、φ0.8〜1.5mmとすることが特に好まし
い。
【0075】なお、前記沈殿物と混合溶媒との接触方法
として、加熱撹拌を用いることにより、上記フタロシア
ニン組成物(2A)が得られ、粉砕及び加熱撹拌を同時
に行うことにより、上記フタロシアニン組成物(2B)
が得られる。
【0076】本発明の電子写真感光体は、導電性基材上
に、電荷輸送物質を含有する光導電層を設けた電子写真
感光体において、電荷輸送物質として前記本発明の複数
のベンジジン誘導体を含有する光導電層を設けたもので
ある。
【0077】本発明に用いられる導電性基材としては、
特に制限はなく、例えば、アルミニウム、アルミニウム
合金、鋼、鉄、銅等の金属からなる金属板、酸化スズ、
酸化インジウム、酸化クロム等の金属化合物からなる金
属化合物板、カーボンブラック、銀粒子等の導電性粒子
などを適当なバインダーと共にプラスチックの上に被覆
した基体、プラスチック、紙、ガラス等にアルミニウム
等を蒸着やスパッタリングして導電性を付与したものな
どが挙げられる。
【0078】また、これらの基材の形状としては、例え
ば、円筒状、シート等が挙げられるが、これらの形状、
寸法、表面粗度等には特に制限はない。
【0079】本発明の電子写真感光体における光導電層
は、有機光導電性物質である上記の電荷輸送物質及び電
荷発生物質を含む層であり、例えば、これらの有機光導
電性物質の被膜又は有機光導電性物質及び結合剤を含む
被膜などの単層型光導電層、及び電荷発生層及び電荷輸
送層からなる複合型光導電層等が挙げられる。本発明の
電子写真感光体の光導電層が上記の単層型光導電層であ
る場合、この光導電層中の有機光導電性物質として、少
なくとも上記の一般式(I)で表される含フッ素ベンジ
ジン誘導体及び一般式(II)で表されるベンジジン誘
導体が電荷輸送物質として含有されている。本発明の電
子写真感光体の光導電層が上記の複合型光導電層である
場合には、光導電層の電荷輸送層中に、少なくとも上記
の一般式(I)で表される含フッ素ベンジジン誘導体及
び一般式(II)で表されるベンジジン誘導体が電荷輸
送物質として含有されている。
【0080】本発明においては、電荷輸送物質として前
記本発明の特定の含フッ素ベンジジン誘導体及びベンジ
ジン誘導体を必須成分として用いることにより、画像特
性に優れ、感度が高く、かつ残留電位が低いなど、良好
な特性を示す電子写真感光体が得られる。また、必要に
応じて、上記電子写真特性等が低下しない範囲で、他の
電荷輸送物質を併用することができる。
【0081】必要に応じて上記含フッ素ベンジジン誘導
体及びベンジジン誘導体と併用することのできる電荷輸
送物質としては、電子写真感光体の電荷輸送物質として
通常用いられるものであれば特に制限はないが、例え
ば、高分子化合物では、ポリ−N−ビニルカルバゾー
ル、ハロゲン化ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビ
ニルピレン、ポリビニルインドロキノキサリン、ポリビ
ニルベンゾチオフェン、ポリビニルアントラセン、ポリ
ビニルアクリジン、ポリビニルピラゾリン等が挙げら
れ、低分子化合物のものでは、フルオレノン、フルオレ
ン、2,7−ジニトロ−9−フルオレノン、4H−イン
デノ(1,2,6)チオフェン−4−オン、3,7−ジ
ニトロ−ジベンゾチオフェン−5−オキサイド、1−ブ
ロムピレン、2−フェニルピレン、カルバゾール、N−
エチルカルバゾール、3−フェニルカルバゾール、3−
(N−メチル−N−フェニルヒドラゾン)メチル−9−
エチルカルバゾール、2−フェニルインドール、2−フ
ェニルナフタレン、オキサジアゾール、2,5−ビス
(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサ
ジアゾール、1−フェニル−3−(4−ジエチルアミノ
スチリル)−5−(4−ジエチルアミノスチリル)−5
−(4−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−フ
ェニル−3−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリ
ン、p−(ジメチルアミノ)スチルベン、2−(4−ジ
プロピルアミノフェニル)−4−(4−ジメチルアミノ
フェニル)−5−(2−クロロフェニル)−1,3−オ
キサゾール、2−(4−ジメチルアミノフェニル)−4
−(4−ジメチルアミノフェニル)−5−(2−フルオ
ロフェニル)−1,3−オキサゾール、2−(4−ジエ
チルアミノフェニル)−4−(4−ジメチルアミノフェ
ニル)−5−(2−フルオロフェニル)−1,3−オキ
サゾール、2−(4−ジプロピルアミノフェニル)−4
−(4−ジメチルアミノフェニル)−5−(2−フルオ
ロフェニル)−1,3−オキサゾール、イミダゾール、
クリセン、テトラフェン、アクリデン、トリフェニルア
ミン、これらの誘導体、4−N′,N′−ジフェニルア
ミノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾ
ン、4−N′,N′−ジトリルアミノベンズアルデヒド
−N,N−ジフェニルヒドラゾン、N,N,N′,N′
−テトラフェニルベンジジン、N,N′−ジフェニル−
N,N′−ビス(4−メトキシフェニル)ベンジジン、
N,N,N′,N′−テトラキス(4−メチルフェニ
ル)ベンジジン、1−ビス(4−ジエチルアミノフェニ
ル)−4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、これ
らの誘導体等が挙げられる。これらの電荷輸送物質の使
用量としては、上記の一般式(I)で表される含フッ素
ベンジジン誘導体及び一般式(II)で表されるベンジ
ジン誘導体の総量100重量部に対して、100重量部
以下とすることが好ましく、0〜80重量部とすること
がより好ましく、0〜50重量部とすることが更に好ま
しい。
【0082】また、本発明においては、光導電層が上記
の一般式(I)で表される含フッ素ベンジジン誘導体及
び一般式(II)で表されるベンジジン誘導体を必須電
荷発生物質として、2種類以上のフタロシアニンからな
る前記のフタロシアニン組成物を必須電荷発生物質とし
て含有することにより、画像特性に優れ、感度が高く、
かつ、残留電位が低いなど良好な特性を示す電子写真感
光体が得られる。なお、電荷発生物質についても、必要
に応じて、上記電子写真特性等が低下しない範囲で、他
の電荷発生物質を前記のフタロシアニン組成物と併用す
ることができる。
【0083】前記のフタロシアニン組成物と併用するこ
とのできる電荷発生物質(電荷を発生する有機顔料)と
しては、電子写真感光体に通常用いられるものであれば
特に制限はなく、例えば、アゾキシベンゼン系、ジスア
ゾ系、トリスアゾ系、ベンズイミダゾール系、多環キノ
ン系、インジゴイド系、キナクリドン系、ペリレン系、
メチン系、α型、β型、γ型、δ型、ε型、χ型等の各
種結晶構造を有する無金属タイプ又は金属タイプのフタ
ロシアニン系などの電荷を発生することが知られている
顔料が挙げられる。
【0084】これらの顔料は、例えば、特開昭47−3
7534号公報、特開昭47−37544号公報、特開
昭47−18543号公報、特開昭47−18544号
公報、特開昭48−43942号公報、特開昭48−7
0538号公報、特開昭49−1231号公報、特開昭
49−105536号公報、特開昭50−75214号
公報、特開昭53−44028号公報、特開昭54−1
7732号公報等に開示されている。
【0085】また、特公平3−56470号公報及びヨ
ーロッパ特許第93,331B号公報等に開示されてい
る、τ、τ′、η及びη′型無金属フタロシアニンも使
用可能である。このようなものの他に、光照射により電
荷担体を発生する有機顔料はいずれも使用することがで
きる。これらの使用量としては、上記フタロシアニン組
成物の総量100重量部に対して、100重量部以下と
することが好ましく、特に0〜50重量部とすることが
好ましい。
【0086】本発明の光導電層において、前記のフタロ
シアニン組成物及び必要に応じて用いるその他の電荷発
生物質(電荷を発生する有機顔料)と、前記本発明の含
フッ素ベンジジン誘導体及びベンジジン誘導体並びに必
要に応じて用いるその他の電荷輸送物質とを混合して使
用する場合、即ち、単層型の光導電層を形成する場合に
は、電荷輸送物質総量/電荷発生物質総量が重量比で1
0/1〜2/1の割合で配合することが好ましい。
【0087】本発明における光導電層には、前記電荷発
生物質及び電荷輸送物質の他に、結合剤を配合すること
が好ましい。
【0088】結合剤としては、絶縁性で、通常の状態で
皮膜を形成できる樹脂並びに熱及び/又は光によって硬
化し、被膜を形成する樹脂であれば特に制限はなく、例
えば、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン
樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹
脂、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート共重合
体、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリホルマール樹
脂、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキサイド)、
ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹
脂、スチレン−アクリル系共重合体、ポリアクリル樹
脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、スチレン−ブタ
ジエン共重合体、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリ塩
化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル
−酢酸ビニル共重合体、ポリアクリルアミド樹脂、ポリ
ビニルカルバゾール、ポリビニルピラゾリン、ポリビニ
ルピレン等が挙げられる。これらの結合剤は、単独で、
又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0089】結合剤を配合する場合の配合量は、前記本
発明のフタロシアニン組成物及び必要に応じて用いるそ
の他の電荷発生物質と、前記本発明の含フッ素ベンジジ
ン誘導体及びベンジジン誘導体並びに必要に応じて用い
るその他の電荷輸送物質の総量100重量部に対して、
0〜500重量部とすることが好ましく、30〜500
重量部とすることがより好ましい。
【0090】また、本発明における光導電層に前記結合
剤を配合する場合には、必要に応じて、可塑剤、流動性
付与剤、ピンホール抑制剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤
等の添加剤を添加することができる。
【0091】可塑剤としては、例えば、ビフェニル、
3,3′,4,4′−テトラメチル−1,1′−ビフェ
ニル、3,3″,4,4″−テトラメチル−p−ターフ
ェニル、3,3″,4,4″−テトラメチル−m−ター
フェニル、ハロゲン化パラフィン、ジメチルナフタレ
ン、ジブチルフタレート等が挙げられる。
【0092】流動性付与剤としては、例えば、モダフロ
ー(モンサントケミカル社製、商品名)、アクロナール
4F(バズフ社製、商品名)等が挙げられる。
【0093】ピンホール抑制剤としては、例えば、ベン
ゾイン、ジメチルフタレート等が挙げられる。
【0094】酸化防止剤及び紫外線吸収剤としては、例
えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノー
ル、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒ
ドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,
3,5−トリアジン、1,3,5−トリメチル−2,
4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロ
キシベンジル)ベンゼン、2−(5−t−ブチル−2−
ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−
ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジ
ル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、アンチゲ
ンFR(大内新興化学社製、商品名)等が挙げられる。
【0095】これらの添加剤は、適宜選択して使用する
ことができ、その使用量も適宜決定することができる。
【0096】本発明の電子写真感光体における光導電層
が、電荷発生層及び電荷輸送層からなる複合型の光導電
層を形成している場合、電荷発生層には、好ましくは前
記のフタロシアニン組成物及び必要に応じて用いるその
他の電荷発生物質(電荷を発生する有機顔料)が含有さ
れ、電荷輸送層には、前記本発明の含フッ素ベンジジン
誘導体及びベンジジン誘導体からなる電荷輸送物質、及
び、必要に応じて用いるその他の電荷輸送物質が含有さ
れる。
【0097】電荷発生層には、前記した結合剤、前記し
た添加剤等を添加することができる。結合剤の配合量と
しては、前記のフタロシアニン組成物及びその他の電荷
発生物質の総量100重量部に対して、500重量部以
下とすることが好ましく、10〜300重量部とするこ
とがより好ましい。また、添加剤の配合量としては、前
記のフタロシアニン組成物及びその他の電荷発生物質の
総量100重量部に対して、5重量部以下とすることが
好ましく、0.1〜3重量部とすることがより好まし
い。
【0098】電荷輸送層には、前記した結合剤や添加剤
等を添加することができる。結合剤の配合量としては、
前記本発明の含フッ素ベンジジン誘導体及びベンジジン
誘導体並びに必要に応じて用いるその他の電荷輸送物質
の総量100重量部に対して、500重量部以下とする
ことが好ましく、50〜300重量部とすることがより
好ましい。なお、前記本発明の含フッ素ベンジジン誘導
体及びベンジジン誘導体並びに必要に応じて用いるその
他の電荷輸送物質が低分子量の化合物の場合には、結合
剤の配合量は、電荷輸送物質の総量100重量部に対し
て、50重量部以上含有させることが好ましい。添加剤
の使用量は、適宜決定することができる。通常、電荷輸
送物質総量100重量部に対して30重量部以下とする
ことが好ましく、1〜20重量部とすることがより好ま
しい。
【0099】本発明の電子写真感光体における光導電層
の厚さは、単層型光導電層の場合、5〜50μmとする
ことが好ましい。
【0100】光導電層を電荷発生層及び電荷輸送層の複
合型とする場合には、電荷発生層の厚さは、0.01〜
1μmとすることが好ましく、0.1〜0.5μmとす
ることがより好ましい。電荷発生層の厚さが0.01μ
m未満では、電荷発生層を均一に形成することが困難と
なる傾向があり、1μmを超えると、電子写真特性が低
下する傾向がある。また、複合型光導電層の電荷輸送層
の厚さは、5〜50μmとすることが好ましく、15〜
30μmとすることがより好ましい。電荷輸送層の厚さ
が5μm未満では、初期電位が低くなる傾向があり、5
0μmを超えると、感度が低下する傾向がある。
【0101】本発明の電荷輸送層用塗液は、前記本発明
の、一般式(I)で表される含フッ素ベンジジン誘導体
及び一般式(II)で表されるベンジジン誘導体を含有
するものである。
【0102】本発明の電荷輸送層用塗液は、前記本発明
の含フッ素ベンジジン誘導体及びベンジジン誘導体、必
要に応じて用いるその他の電荷輸送物質、上記した結合
剤、可塑剤、流動性付与剤、ピンホール抑制剤、酸化防
止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を、溶剤に均一に溶解さ
せることにより作製することができる。
【0103】本発明の電荷輸送層用塗液に使用される溶
剤としては、例えば、トルエン、キシレン、アニソール
等の芳香族系溶剤、シクロヘキサノン、メチルシクロヘ
キサノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、四塩化炭素
等のハロゲン化炭化水素系溶剤、テトラヒドロフラン、
1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン等のエーテ
ル系溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で又
は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0104】本発明の電荷輸送層用塗液に使用される溶
剤の使用量は、前記本発明の一般式(I)で表される含
フッ素ベンジジン誘導体、一般式(II)で表されるベ
ンジジン誘導体、必要に応じて用いるその他の電荷輸送
物質及び上記の結合剤、添加剤等の総量100重量部に
対して、250〜1000重量部とすることが好まし
い。この使用量が250重量部未満では、好ましい電荷
輸送層の厚さの上限である50μm以下の電荷輸送層を
形成することが困難となる傾向があり、1000重量部
を超えると、電荷輸送層の厚さの下限である5μm以上
の電荷輸送層を形成することが困難となる傾向がある。
【0105】本発明の電荷輸送層用塗液を調製するにあ
たり、上記の各成分を溶剤に均一に溶解させる方法とし
ては、特に制限はなく、例えば、振盪、ペイントシェー
カー、メカニカル撹拌、ホモジナイザー、ホモミキサー
等を用いて溶解させることができる。
【0106】導電性基材上に光導電層を形成して本発明
の電子写真感光体を製造する方法としては、光導電層が
単層型である場合には、上記の電荷発生物質、電荷輸送
物質、必要に応じて用いられる結合剤、添加剤等を上記
のような溶剤に溶解又は分散させて調製した光導電層用
塗液を導電性基材上に塗布し、乾燥する方法等が挙げら
れる。
【0107】光導電層用塗液を導電性基材上に塗布する
場合の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、浸
漬塗工法等が挙げられる。スピンコート法は、通常、光
導電層用塗液を用いて回転数が500〜4000rpm
でスピンコーティングして行われる。浸漬塗工法は、光
導電層用塗液に、導電性基板を浸漬することにより行わ
れる。
【0108】光導電層が電荷発生層及び電荷輸送層を有
する複合型の光導電層である場合には、前記のフタロシ
アニン組成物、必要に応じて用いるその他の電荷発生物
質及び必要に応じて添加する結合剤、添加剤等を上記溶
剤に均一に溶解又は分散させた電荷発生層用塗液、及
び、本発明の複数のベンジジン誘導体を含有する電荷輸
送層用塗液を調製し、上記と同様にして導電性基材上に
塗布し、乾燥して形成することができる。この場合、電
荷発生層と電荷輸送層は、どちらを上層としてもよく、
電荷発生層を二層の電荷輸送層で挟むようにすることも
できる。
【0109】本発明の電子写真感光体は、更に、導電性
基材のすぐ上に、薄い接着層又はバリア層を有していて
もよく、表面に保護層を有していてもよい。
【0110】
【実施例】以下、本発明の実施例及びその比較例によっ
て本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの
実施例に限定されるものではない。
【0111】製造例1 (フタロシアニン組成物(i)の結晶の作製)チタニル
フタロシアニン36g及び塩化インジウムフタロシアニ
ン12gからなるフタロシアニン混合物48gを、硫酸
2.4リットルに溶解し、室温で30分間撹拌した後、
これを氷水で冷却したイオン交換水48リットルに50
分間かけて滴下し、再沈させた。更に、冷却下で30分
間撹拌した後、濾過により沈殿物を分離した。
【0112】1回目の洗浄として、沈殿物に洗浄水とし
て、イオン交換水4リットルを加え、撹拌し、次いで、
濾過により沈殿物を回収した。同様に洗浄操作を更に4
回続けて行い、5回目の操作で、濾過した洗浄水(即ち
洗浄後の洗浄水)のpH及び伝導率を測定した(23
℃)。洗浄水のpHは3.4であり、伝導率は65.0
μS/cmであった。なお、pHの測定には、横河電機
社製モデルPH51を使用し、伝導率の測定は、柴田科
学器械工業社製モデルSC−17Aを使用した。
【0113】この後、メタノール4リットルで3回洗浄
した後、60℃で4時間真空加熱乾燥し、得られた沈殿
物を乾燥した。
【0114】得られた乾燥物のCuKαのX線回折スペ
クトルを測定した結果、ブラッグ角(2θ±0.2度)
の27.2度に明瞭なピークを示していた。このX線回
折スペクトルを図1に示す。なお、X線回折スペクトル
は、理学電機(株)製RAD−IIIAを使用して測定
した。
【0115】次いで、この乾燥物10gに1−メチル−
2−ピロリドン100mlを加え、150℃で1時間加
熱撹拌し、冷却後、濾過した後、メタノールで充分洗浄
して、60℃で4時間真空加熱乾燥し、フタロシアニン
組成物(i)の結晶を得た。得られたフタロシアニン組
成物(i)の結晶のCuKαのX線回折スペクトルを測
定した結果、ブラッグ角(2θ±0.2度)の7.5
度、22.5度、24.3度、25.3度及び28.6
度に主な回折ピークを示していた。このX線回折スペク
トルを図2に示す。
【0116】製造例2 (フタロシアニン組成物(ii)の結晶の作製)チタニ
ルフタロシアニン45g及び塩化インジウムフタロシア
ニン15gからなるフタロシアニン混合物60gを硫酸
1.2リットルに溶解したこと以外は、製造例1と同様
にして沈殿物の調製及びその洗浄、乾燥を行った。得ら
れた乾燥物のCuKαのX線回折スペクトルを測定した
結果、ブラッグ角(2θ±0.2度)の27.2度に明
瞭なピークを示していた。
【0117】得られた乾燥物10gに1−メチル−2−
ピロリドン100mlを加え、150℃で1時間加熱撹
拌し、冷却後、濾過した後、メタノールで充分洗浄し
て、60℃で4時間真空加熱乾燥し、フタロシアニン組
成物(ii)の結晶を得た。得られたフタロシアニン組
成物(ii)の結晶のCuKαのX線回折スペクトルを
測定した結果、ブラッグ角(2θ±0.2度)の9.3
度、13.1度、15.0度及び26.2度に主な回折
ピークを示していた。このX線回折スペクトルを図3に
示す。
【0118】製造例3 (フタロシアニン組成物(iii)の結晶の作製)製造
例2と同様にして、CuKαのX線回折スペクトルにお
いてブラッグ角(2θ±0.2度)の27.2度に明瞭
なピークを示す乾燥物を得た。この乾燥物2gにイオン
交換水140g及びトルエン50gを加え、60〜70
℃で5時間加熱撹拌し、遠心分離を行い、上澄み液を除
去後、メタノールで充分洗浄して、60℃で4時間真空
加熱乾燥し、フタロシアニン組成物(iii)の結晶を
得た。得られたフタロシアニン組成物(iii)のCu
KαのX線回折スペクトルを測定した結果、ブラッグ角
(2θ±0.2度)の7.5度、24.2度及び27.
3度に主な回折ピークを示していた。このX線回折スペ
クトルを図4に示す。
【0119】製造例4 (フタロシアニン組成物(iv)の結晶の作製)製造例
1と同様にして、CuKαのX線回折スペクトルにおい
てブラッグ角(2θ±0.2度)の27.2度に明瞭な
ピークを示す乾燥物を得た。この乾燥物10gに、イオ
ン交換水700g、トルエン250g及び1mmφジル
コニアビーズ1kgを加え、60〜70℃で5時間粉砕
及び加熱撹拌し、冷却後、濾過、遠心分離を行い、溶剤
を除去後、メタノールで充分洗浄して、60℃で4時間
真空加熱乾燥し、フタロシアニン組成物(iv)の結晶
を得た。得られたフタロシアニン組成物(iv)のCu
KαのX線回折スペクトルを測定した結果、ブラッグ角
(2θ±0.2度)の17.9度、24.0度、26.
2度及び27.2度に主な回折ピークを示していた。こ
のX線回折スペクトルを図5に示す。
【0120】実施例1 (電荷輸送層用塗液(1)の作製)前記例示化合物N
o.3の含フッ素ベンジジン誘導体6g、前記例示化合
物No.13のベンジジン誘導体6g、ポリカーボネー
ト共重合体BPPC(出光興産(株)製、重量平均分子
量=50,000)12g、テトラヒドロフラン105
gを配合し、メカニカル撹拌装置を用いて均一に溶解さ
せ、電荷輸送層用塗液(1)を作製した。
【0121】実施例2 (電荷輸送層用塗液(2)の作製)前記例示化合物N
o.3の含フッ素ベンジジン誘導体3g、前記例示化合
物No.13のベンジジン誘導体9g、ポリカーボネー
ト共重合体BPPC(出光興産(株)製、重量平均分子
量=50,000)12g、テトラヒドロフラン105
gを配合し、メカニカル撹拌装置を用いて均一に溶解さ
せ、電荷輸送層用塗液(2)を作製した。
【0122】実施例3 (電荷輸送層用塗液(3)の作製)実施例1において、
前記例示化合物No.3の含フッ素ベンジジン誘導体の
代わりに、前記例示化合物No.4の含フッ素ベンジジ
ン誘導体を用いた以外は、実施例1と同様にして、電荷
輸送層用塗液(3)を作製した。
【0123】比較例1 (電荷輸送層用塗液の作製)前記例示化合物No.1
3のベンジジン誘導体6g、ポリカーボネート共重合体
BPPC(出光興産(株)製、重量平均分子量=50,
000)18g、テトラヒドロフラン135gを配合
し、メカニカル撹拌装置を用いて均一に溶解させ、電荷
輸送層用塗液を作製した。
【0124】比較例2 (電荷輸送層用塗液の作製)前記例示化合物No.1
3のベンジジン誘導体9g、ポリカーボネート共重合体
BPPC(出光興産(株)製、重量平均分子量50,0
00)15g、テトラヒドロフラン120gを配合し、
メカニカル撹拌装置を用いて均一に溶解させ、電荷輸送
層用塗液を作製した。
【0125】比較例3 (電荷輸送層用塗液の作製)前記例示化合物No.1
3のベンジジン誘導体12g、ポリカーボネート共重合
体BPPC(出光興産(株)製、重量平均分子量=5
0,000)12g、テトラヒドロフラン105gを配
合し、メカニカル撹拌装置を用いて均一に溶解させ、電
荷輸送層用塗液を作製した。
【0126】比較例4 (電荷輸送層用塗液の作製)比較例3において、例示
化合物No.13のベンジジン誘導体の代わりに、例示
化合物No.3の含フッ素ベンジジン誘導体を用いた以
外は、比較例3と同様にして、電荷輸送層用塗液を作
製した。
【0127】実施例4 (電子写真感光体(A)の作製)アルコール可溶ポリア
ミド樹脂(M1276、日本リルサン(株)製商品名)
26.6重量部、メラミン樹脂(ML2000、日立化
成工業(株)製商品名、固形分50重量%)52.3重
量部及び無水トリメリット酸(和光純薬工業(株)製)
2.8重量部を、エタノール620重量部と1,1,2
−トリクロロエタン930重量部に溶解して塗布液を作
製した。
【0128】得られた塗布液を、浸漬塗工法により、ア
ルミニウム板(導電性基材、10mm×100mm×
0.1mm)上に塗布し、140℃で30分間乾燥し
て、厚さが0.3μmの下引き層を形成した。
【0129】次いで、製造例1で得られたフタロシアニ
ン組成物(i)の結晶1.5g、ポリビニルブチラール
樹脂(エスレックBL−S、積水化学(株)製商品名)
0.9g、メラミン樹脂(ML365W、日立化成工業
(株)製商品名)0.1g、2−エトキシエタノール5
0g及びテトラヒドロフラン50gを配合し、ボールミ
ルで分散して電荷発生層用塗液を作製した。得られた電
荷発生層用塗液を、浸漬塗工法により、上記アルミニウ
ム基板の下引き層上に塗布し、120℃で30分間乾燥
して、厚さが0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0130】次いで、実施例1で得られた電荷輸送層用
塗液(1)を、浸漬塗工法により、上記アルミニウム基
板の電荷発生層上に塗布し、120℃で30分間乾燥し
て、厚さが23μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感
光体(A)を作製した。
【0131】得られた電子写真感光体(A)の電子写真
特性(感度、残留電位、暗減衰率)を測定し、結果を表
1に示した。
【0132】なお、電子写真特性は、シンシア30HC
(緑屋電気(株)製)を使用し、コロナ帯電方式で感光
体を−650Vまで帯電させ、780nmの単色光を2
5ms感光体に露光し、測定を行った。上記の特性の定
義は、以下の通りである。 感度(E1/2):初期帯電電位−650Vを、露光0.
2秒後に半減させるために要する780nmの単色光の
照射エネルギー量である。 残留電位(VLt):同波長の20mJ/m2の単色光を
露光し、露光後t秒後に感光体の表面に残る電位であ
る。 暗減衰率(DDRt):感光体の初期帯電電位−650
Vと、初期帯電後暗所t秒放置後の表面電位Vtを用い
て、(Vt/650)×100と定義した。
【0133】実施例5 (電子写真感光体(B)の作製)実施例4において、製
造例1で得られた電荷発生物質(i)の代わりに、製造
例2で得られた電荷発生物質(ii)を用いた以外は、
実施例4と同様にして、電子写真感光体(B)を作製し
た。得られた電子写真感光体(B)の電子写真特性(感
度、残留電位、暗減衰率)を実施例4と同様にして測定
し、結果を表1に示した。
【0134】実施例6 (電子写真感光体(C)の作製)実施例4において、製
造例1で得られた電荷発生物質(i)の代わりに、製造
例3で得られた電荷発生物質(iii)を用いた以外
は、実施例4と同様にして、電子写真感光体(C)を作
製した。得られた電子写真感光体(C)の電子写真特性
(感度、残留電位、暗減衰率)を実施例4と同様にして
測定し、結果を表1に示した。
【0135】実施例7 (電子写真感光体(D)の作製)実施例4において、製
造例1で得られた電荷発生物質(i)の代わりに、製造
例4で得られた電荷発生物質(iv)を用いた以外は、
実施例4と同様にして、電子写真感光体(D)を作製し
た。得られた電子写真感光体(D)の電子写真特性(感
度、残留電位、暗減衰率)を実施例4と同様にして測定
し、結果を表1に示した。
【0136】実施例8 (電子写真感光体(E)の作製)実施例6において、実
施例1で得られた電荷輸送層用塗液(1)の代わりに、
実施例2で得られた電荷輸送層用塗液(2)を用いた以
外は、実施例6と同様にして、電子写真感光体(E)を
作製した。得られた電子写真感光体(E)の電子写真特
性(感度、残留電位、暗減衰率)を実施例4と同様にし
て測定し、結果を表1に示した。
【0137】実施例9 (電子写真感光体(F)の作製)実施例6において、実
施例1で得られた電荷輸送層用塗液(1)の代わりに、
実施例3で得られた電荷輸送層用塗液(3)を用いた以
外は、実施例6と同様にして、電子写真感光体(F)を
作製した。得られた電子写真感光体(F)の電子写真特
性(感度、残留電位、暗減衰率)を実施例4と同様にし
て測定し、結果を表1に示した。
【0138】実施例10 (電子写真感光体(G)の作製)実施例7において、実
施例1で得られた電荷輸送層用塗液(1)の代わりに、
実施例2で得られた電荷輸送層用塗液(2)を用いた以
外は、実施例7と同様にして、電子写真感光体(G)を
作製した。得られた電子写真感光体(G)の電子写真特
性(感度、残留電位、暗減衰率)を実施例4と同様にし
て測定し、結果を表1に示した。
【0139】実施例11 (電子写真感光体(H)の作製)実施例7において、実
施例1で得られた電荷輸送層用塗液(1)の代わりに、
実施例3で得られた電荷輸送層用塗液(3)を用いた以
外は、実施例7と同様にして、電子写真感光体(H)を
作製した。得られた電子写真感光体(H)の電子写真特
性(感度、残留電位、暗減衰率)を実施例4と同様にし
て測定し、結果を表1に示した。
【0140】比較例5 (電子写真感光体(a)の作製)実施例8において、実
施例2で得られた電荷輸送層用塗液(2)の代わりに、
比較例1で得られた電荷輸送層用塗液を用いた以外
は、実施例8と同様にして、電子写真感光体(a)を作
製した。得られた電子写真感光体(a)の電子写真特性
(感度、残留電位、暗減衰率)を実施例4と同様にして
測定し、結果を表1に示した。
【0141】比較例6 (電子写真感光体(b)の作製)実施例10において、
実施例2で得られた電荷輸送層用塗液(2)の代わり
に、比較例1で得られた電荷輸送層用塗液を用いた以
外は、実施例10と同様にして、電子写真感光体(b)
を作製した。得られた電子写真感光体(b)の電子写真
特性(感度、残留電位、暗減衰率)を実施例4と同様に
して測定し、結果を表1に示した。
【0142】比較例7 (電子写真感光体(c)の作製)実施例10において、
実施例2で得られた電荷輸送層用塗液(2)の代わり
に、比較例2で得られた電荷輸送層用塗液を用いた以
外は、実施例10と同様にして、電子写真感光体(c)
を作製した。しかし、得られた電子写真感光体(c)に
おいては、比較例2で作製した電荷輸送層用塗液を浸漬
塗工後、風乾時、電荷輸送層の全面に、例示化合物N
o.13のベンジジン誘導体と思われる白色結晶が析出
した。そのため、電子写真特性を評価することができな
かった。
【0143】比較例8 (電子写真感光体(d)の作製)実施例10において、
実施例2で得られた電荷輸送層用塗液(2)の代わり
に、比較例3で得られた電荷輸送層用塗液を用いた以
外は、実施例10と同様にして、電子写真感光体(d)
を作製した。しかし、得られた電子写真感光体(d)に
おいては、比較例3で作製した電荷輸送層用塗液を浸漬
塗工後、風乾時、電荷輸送層の全面に、例示化合物N
o.13のベンジジン誘導体と思われる白色結晶が析出
した。そのため、電子写真特性を評価することができな
かった。
【0144】比較例9 (電子写真感光体(e)の作製)実施例10において、
実施例2で得られた電荷輸送層用塗液(2)の代わり
に、比較例4で得られた電荷輸送層用塗液を用いた以
外は、実施例10と同様にして、電子写真感光体(e)
を作製した。得られた電子写真感光体(e)の電子写真
特性(感度、残留電位、暗減衰率)を実施例4と同様に
して測定し、結果を表1に示した。
【0145】
【表1】 表1から、本発明の電子写真感光体は、高い感度及び低
い残留電位を示すことがわかる。また、実施例4及び5
と、実施例6〜11との比較から、本発明の電子写真感
光体において、本発明の含フッ素ベンジジン誘導体及び
ベンジジン誘導体からなる電荷輸送物質を、チタニルフ
タロシアニンと中心金属が3価の金属であるハロゲン化
金属フタロシアニンとの混合物を用いてアモルファス化
及び結晶型変換を行うことによって得られたCuKαの
X線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2
度)の7.5度、24.2度及び27.3度、又はブラ
ッグ角(2θ±0.2度)の17.9度、24.0度、
26.2度及び27.2度に主な回折ピークを有するフ
タロシアニン組成物である電荷発生物質と組み合わせて
用いることにより、更に高い感度及び低い残留電位を示
す電子写真感光体が得られることがわかる。特に、実施
例7、10及び11からわかるように、電荷発生物質と
して、CuKαのX線回折スペクトルのブラッグ角(2
θ±0.2度)の17.9度、24.0度、26.2度
及び27.2度に主な回折ピークを有するフタロシアニ
ン組成物を用いた場合には、更に感度が高く、残留電位
が低いとともに、良好な暗減衰率を示す電子写真感光体
が得られている。
【0146】また、実施例6〜11の本発明の電子写真
感光体の特性結果と比較すると、含フッ素ベンジジン誘
導体のみ、又はフッ素を含有しないベンジジン誘導体の
みをを電荷輸送物質として用いた比較例5、6及び9で
は、感度及び暗減衰率共に良好な値が得られたが、露光
後の経過時間が短い場合の残留電位が高く、劣っている
ことがわかる。
【0147】一方、含フッ素ベンジジン誘導体は用いて
いないが、フッ素を含有しないベンジジン誘導体を量を
増やして作製した比較例7及び8の電子写真感光体で
は、先に記載したとおり、電荷輸送層中の例示化合物N
o.13のベンジジン誘導体と思われる白色結晶が電荷
輸送層の全面に析出したために、電子写真特性を評価す
ることができなかった。
【0148】実施例12、13及び比較例10、11 実施例1(実施例12)及び2(実施例13)並びに比
較例1(比較例10)及び2(比較例11)で作製した
電荷輸送層用塗液[電荷輸送層用塗液中の電荷輸送物質
実施例1:No.3+No.13、実施例2:No.
3+No.13、比較例1:No.13、比較例2:N
o.13]を、浸漬塗工法により、各々、アルミニウム
板(導電性基材、10mm×100mm×0.1mm)
上に塗布し、120℃で30分間乾燥して、厚さが23
μmの電荷輸送層を形成した。
【0149】各々、実施例1、2、比較例1、2で作製
した電荷輸送層用塗液を用いて実施例12、13及び比
較例10、11で形成した電荷輸送層は、いずれも、目
視では良好な膜質のものであった。しかし、比較例2で
作製した電荷輸送層用塗液を用いて形成した比較例11
の電荷輸送層では、浸漬塗工後、風乾時、電荷輸送層中
のNo.13のベンジジン誘導体と思われる白色結晶
が、電荷輸送層の全面に析出した。
【0150】次いで、実施例12、13及び比較例10
で形成した電荷輸送層について、上記アルミニウム板か
ら、電荷輸送層塗膜を剥離し、セイコー電子工業(株)
製示差走査熱量分析装置DSC−200を用いて、空気
中、昇温速度5℃/分の測定条件で、電荷輸送層塗膜の
熱分析を行った。電荷輸送層塗膜の示差走査熱量分析デ
ータを図6、図7及び図8に示す。
【0151】図6及び図7は、それぞれ、含フッ素ベン
ジジン誘導体No.3(25重量%)及びベンジジン誘
導体No.13(25重量%)を含有する電荷輸送層塗
膜(実施例12)及び含フッ素ベンジジン誘導体No.
3(12.5重量%)及びベンジジン誘導体No.13
(37.5重量%)を含有する電荷輸送層塗膜(実施例
13)の示差走査熱量分析データを示すグラフであり、
これらのグラフでは、電荷輸送層のガラス転移に由来す
ると思われる吸熱変化のみが観測され、本発明に用いら
れる含フッ素ベンジジン誘導体及びベンジジン誘導体
が、共に、電荷輸送層中で相分離していないことが示唆
された。つまり、電荷輸送層における電荷輸送物質の固
形分濃度が50重量%濃度であっても、本発明の2種類
のベンジジン誘導体が、共に、電荷輸送層中で相分離し
ていないことになる。
【0152】図8は、フッ素を含有しないベンジジン誘
導体No.13のみを25重量%含有する電荷輸送層塗
膜(比較例10)の示差走査熱量分析データを示すグラ
フであるが、この図8においても、同様に、電荷輸送層
のガラス転移に由来すると思われる吸熱変化のみが観測
され、25重量%濃度においては、ベンジジン誘導体N
o.13が電荷輸送層中で相分離していないことが示唆
された。しかし、前述のように、分素を含有しないベン
ジジン誘導体No.13のみを37.5重量%含有する
比較例11の電荷輸送層塗膜においては、浸漬塗工後、
風乾時、電荷輸送層中のNo.13のベンジジン誘導体
と思われる白色結晶が、電荷輸送層の全面に析出した。
【0153】実施例14、15及び比較例12 (電子写真感光体の画像特性及び繰り返し特性の評価)
各々、実施例1、2及び比較例1の電荷輸送層用塗液を
用いて作製した実施例7(実施例14)、10(実施例
15)及び比較例6(比較例12)の電子写真感光体の
繰り返し使用時における特性(帯電性、暗減衰率、残留
電位及び画像特性)の変化を調べる目的で、以下の評価
を行った。
【0154】電子写真特性評価装置シンシア99HC
(ジェンテック社製)を用いて、帯電〜暗減衰率の測定
〜除電〜帯電〜露光(残留電位の測定)〜除電を1サイ
クルとして、これを繰り返すことによって繰り返し使用
時における特性変化を調べ、その評価結果を表2に示し
た。
【0155】具体的には、感光体に−5kVのコロナ電
圧を印加し、帯電電位(V0)まで帯電させ、暗所1秒
放置後の表面電位(V1)から、暗減衰率[DDR1
(V1/V0)×100]を求めた。次いで、除電を行っ
た後、再び−5kVのコロナ電圧を印加し、帯電させ、
780nmの単色光(20mJ/m2)を露光し、露光
0.2秒後に感光体の表面に残る残留電位(VL0.2
を測定した。また、画像特性の評価は、画像評価装置
(負帯電、反転現像方式)を用いて、表面電位を−70
0V、バイアス電位を−600Vとして、かぶり、黒
点、白抜け、黒ベタ印刷時の画像濃度によって行った。
黒点、白抜けについては、目視による判定を行った。か
ぶり及び黒ベタの画像濃度は、マクベス反射濃度計(A
division of Kollmergen C
orporation社製)を用いて評価した。
【0156】
【表2】 表2から、電荷輸送物質として本発明の含フッ素ベンジ
ジン誘導体及びベンジジン誘導体を含有する本発明の電
子写真感光体(実施例14及び15)は、低い残留電
位、高い暗減衰率及び良好な画像特性を繰り返し使用後
も維持することがわかる。また、比較例12から、電荷
輸送物質として含フッ素ベンジジン誘導体を含まない電
子写真感光体は、暗減衰率及び感度や共に比確定良好な
値が得られたが、実施例14及び15と比較して、残留
電位が高いこと、画像特性が劣っていること、更に、繰
り返し使用時における画像特性の劣化が大きいことがわ
かる。
【0157】
【発明の効果】本発明によれば、光導電層中で電荷輸送
物質が析出することがなく、優れた画像特性を示すとと
もに、高い感度及び低い残留電位という優れた電子写真
特性を有する電子写真感光体を得ることができる。
【0158】また、本発明によれば、電子写真感光体の
電荷輸送層の形成に用いられる塗液であって、塗膜形成
時に電荷輸送物質が析出することがなく、優れた画像特
性と高い感度及び低い残留電位を示す電子写真感光体を
製造することのできる電荷輸送層用塗液を得ることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造例1において、フタロシアニン組成物
(i)の結晶の作製過程において得られた乾燥物のCu
KαのX線回折スペクトルである。
【図2】製造例1において作製されたフタロシアニン組
成物(i)の結晶のCuKαのX線回折スペクトルであ
る。
【図3】製造例2において作製されたフタロシアニン組
成物(ii)の結晶のCuKαのX線回折スペクトルで
ある。
【図4】製造例3において作製されたフタロシアニン組
成物(iii)の結晶のCuKαのX線回折スペクトル
である。
【図5】製造例4において作製されたフタロシアニン組
成物(iv)の結晶のCuKαのX線回折スペクトルで
ある。
【図6】実施例12において得られた電荷輸送層塗膜の
示差走査熱量分析データを示すグラフである。
【図7】実施例13において得られた電荷輸送層塗膜の
示差走査熱量分析データを示すグラフである。
【図8】比較例10において得られた電荷輸送層塗膜の
示差走査熱量分析データを示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 林田 茂 茨城県つくば市和台48 日立化成工業株式 会社筑波開発研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性基材上に、電荷発生物質及び電荷
    輸送物質を含有する光導電層を設けた電子写真感光体に
    おいて、電荷輸送物質として下記一般式(I) 【化1】 (式中、R1は炭素数1〜4のフルオロアルキル基又は
    炭素数1〜4のフルオロアルコキシ基を示し、R2は、
    各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル
    基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数6〜20のア
    リール基、炭素数1〜4のフルオロアルキル基又は炭素
    数1〜4のフルオロアルコキシ基を示し、R 3は、各々
    独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素
    数1〜4のアルコキシ基を示し、mは0〜4の整数であ
    り、nは、各々独立に、0〜5の整数である。)で表さ
    れる含フッ素ベンジジン誘導体及び下記一般式(II) 【化2】 (式中、R4は、各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1
    〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を示
    し、R5は、各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基又
    は炭素数1〜4のアルコキシ基を示し、pは、各々独立
    に、0〜5の整数である。)で表されるベンジジン誘導
    体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
  2. 【請求項2】 導電性基材上に、電荷発生物質及び電荷
    輸送物質を含有する光導電層を設けた電子写真感光体に
    おいて、光導電層における電荷発生物質として2種類以
    上のフタロシアニンからなるフタロシアニン組成物を用
    い、電荷輸送物質として請求項1記載の一般式(I)で
    表される含フッ素ベンジジン誘導体及び一般式(II)
    で表されるベンジジン誘導体を含有することを特徴とす
    る電子写真感光体。
  3. 【請求項3】 フタロシアニン組成物が、(a)チタニ
    ルフタロシアニン及び(b)中心金属が3価の金属であ
    るハロゲン化金属フタロシアニンを含むフタロシアニン
    混合物を、アシッドペースティング法により水中に沈殿
    させ、CuKαのX線回折スペクトルにおいて、ブラッ
    グ角(2θ±0.2度)の27.2度に特徴的な回折ピ
    ークを有する沈殿物を得た後、引き続きこの沈殿物を、
    芳香族系有機溶剤及び水の混合溶媒中で処理して得た、
    CuKαのX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角
    (2θ±0.2度)の7.5度、24.2度及び27.
    3度に主な回折ピークを有するフタロシアニン組成物で
    あることを特徴とする請求項2記載の電子写真感光体。
  4. 【請求項4】 フタロシアニン組成物が、(a)チタニ
    ルフタロシアニン及び(b)中心金属が3価の金属であ
    るハロゲン化金属フタロシアニンを含むフタロシアニン
    混合物を、アシッドペースティング法により水中に沈殿
    させ、CuKαのX線回折スペクトルにおいて、ブラッ
    グ角(2θ±0.2度)の27.2度に特徴的な回折ピ
    ークを有する沈殿物を得た後、引き続きこの沈殿物を、
    芳香族系有機溶剤及び水の混合溶媒中で処理して得た、
    CuKαのX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角
    (2θ±0.2度)の17.9度、24.0度、26.
    2度及び27.2度に主な回折ピークを有するフタロシ
    アニン組成物であることを特徴とする請求項2記載の電
    子写真感光体。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の一般式(I)で表される
    含フッ素ベンジジン誘導体及び、一般式(II)で表さ
    れるベンジジン誘導体を電荷輸送物質として含有する電
    荷輸送層用塗液。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007011315A (ja) * 2005-06-01 2007-01-18 Mitsubishi Chemicals Corp 電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置
JP2009116212A (ja) * 2007-11-09 2009-05-28 Kyocera Mita Corp 積層型電子写真感光体及び積層型電子写真感光体の製造方法
JP2014102502A (ja) * 2012-11-21 2014-06-05 Xerox Corp フルオロアシルアリールアミンを含む電荷輸送層

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