JPH10218996A - ポリカルボシランおよびシリコンカーバイド薄膜の製造方法 - Google Patents
ポリカルボシランおよびシリコンカーバイド薄膜の製造方法Info
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- JPH10218996A JPH10218996A JP2257997A JP2257997A JPH10218996A JP H10218996 A JPH10218996 A JP H10218996A JP 2257997 A JP2257997 A JP 2257997A JP 2257997 A JP2257997 A JP 2257997A JP H10218996 A JPH10218996 A JP H10218996A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 熱分解により炭素やケイ素といった不純物を
含まず、空気・湿気に対して安定で取り扱いの容易なポ
リカルボシラン、ならびに良質なSiC薄膜を簡便およ
び安全に製造する方法を提供すること。 【解決手段】 一般式(I)および一般式(II)で表さ
れるカルボシラン、および該カルボシランを用いたシリ
コンカーバインド薄膜の製造方法。 【化5】
含まず、空気・湿気に対して安定で取り扱いの容易なポ
リカルボシラン、ならびに良質なSiC薄膜を簡便およ
び安全に製造する方法を提供すること。 【解決手段】 一般式(I)および一般式(II)で表さ
れるカルボシラン、および該カルボシランを用いたシリ
コンカーバインド薄膜の製造方法。 【化5】
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主鎖が炭素とケイ
素から構成される高分子化合物のポリカルボシランおよ
びポリカルボシランの熱分解によりシリコンカーバイド
薄膜を製造する方法に関する。
素から構成される高分子化合物のポリカルボシランおよ
びポリカルボシランの熱分解によりシリコンカーバイド
薄膜を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】主鎖が炭素とケイ素から構成されるポリ
カルボシランは、熱分解により産業上有用なシリコンカ
ーバイドセラミクス(SiC)に転化する[R.M.ラ
イネ(R.M.Laine)ほか、ケミストリー オブ マテ
リアルズ(Chem.Mater)、第5巻、第260頁(199
3)]。中でも、パーメチルポリシランの熱転移反応に
よって得られたポリメチルシリレンメチレンを窒素雰囲
気下、1200℃で熱分解してβ−SiC繊維を得る方
法はYajima法としてよく知られている[S.ヤジ
マ(S.Yajima)ほか、ケミストリー レターズ(Chem.L
ett.)、第551頁(1976)]。
カルボシランは、熱分解により産業上有用なシリコンカ
ーバイドセラミクス(SiC)に転化する[R.M.ラ
イネ(R.M.Laine)ほか、ケミストリー オブ マテ
リアルズ(Chem.Mater)、第5巻、第260頁(199
3)]。中でも、パーメチルポリシランの熱転移反応に
よって得られたポリメチルシリレンメチレンを窒素雰囲
気下、1200℃で熱分解してβ−SiC繊維を得る方
法はYajima法としてよく知られている[S.ヤジ
マ(S.Yajima)ほか、ケミストリー レターズ(Chem.L
ett.)、第551頁(1976)]。
【0003】これまでに、このポリマー以外にもケイ素
上の置換基がメチル基、フェニル基、ヒドロ基のポリカ
ルボシランが合成され、熱分解によりSiCに転化する
ことがわかっている。しかしながら、得られるSiCの
収率と組成は置換基の種類によって大きく異なり、且
つ、通常は遊離した炭素やケイ素を不純物として含む。
このような不純物の混入は、SiC本来の性能を低下さ
せるために好ましくない。そこで、得られるSiCの炭
素とケイ素の組成比を1対1にすることを目指して、そ
の前駆体であるポリカルボシランにおける炭素とケイ素
の組成比を1対1に近づける試みがなされるようになっ
た。すべての置換基が水素で構成されたポリシリレンメ
チレン[−(SiH2 CH2 )n −]の合成はその典型
的な例である[H.J.ウ(H.J.Wu) ほか、マクロモレ
キュールズ(Macromolecules)、第25巻、1840頁
(1992)]。
上の置換基がメチル基、フェニル基、ヒドロ基のポリカ
ルボシランが合成され、熱分解によりSiCに転化する
ことがわかっている。しかしながら、得られるSiCの
収率と組成は置換基の種類によって大きく異なり、且
つ、通常は遊離した炭素やケイ素を不純物として含む。
このような不純物の混入は、SiC本来の性能を低下さ
せるために好ましくない。そこで、得られるSiCの炭
素とケイ素の組成比を1対1にすることを目指して、そ
の前駆体であるポリカルボシランにおける炭素とケイ素
の組成比を1対1に近づける試みがなされるようになっ
た。すべての置換基が水素で構成されたポリシリレンメ
チレン[−(SiH2 CH2 )n −]の合成はその典型
的な例である[H.J.ウ(H.J.Wu) ほか、マクロモレ
キュールズ(Macromolecules)、第25巻、1840頁
(1992)]。
【0004】このポリマーの合成方法としてはこれまで
に2つの方法が知られている。一つ目の方法は、1,3
−ジシラシクロブタンを白金系触媒で重合する方法であ
るが、この方法で得られたポリマーには、反応中に副次
的に生じる架橋反応のために多くの不溶物が含まれると
いった欠点がある。また、二つ目の方法は、ポリジクロ
ロシリレンメチレン[−(SiCl2 CH2 )n −]を
ベンゼン中で還元する方法であるが、この方法で当該ポ
リマーを合成した場合、重量平均分子量が3万程度で有
機溶媒に可溶なものが得られるものの、この反応が溶液
中での高分子反応であることから、得られるポリマーの
純度や単離操作等の面で問題がある。さらに、Si−H
結合は一般に加水分解されやすいことから、ケイ素上の
置換基がすべて水素で構成されるこのようなポリカルボ
シランは大気中での取扱いが容易でないと推察される。
に2つの方法が知られている。一つ目の方法は、1,3
−ジシラシクロブタンを白金系触媒で重合する方法であ
るが、この方法で得られたポリマーには、反応中に副次
的に生じる架橋反応のために多くの不溶物が含まれると
いった欠点がある。また、二つ目の方法は、ポリジクロ
ロシリレンメチレン[−(SiCl2 CH2 )n −]を
ベンゼン中で還元する方法であるが、この方法で当該ポ
リマーを合成した場合、重量平均分子量が3万程度で有
機溶媒に可溶なものが得られるものの、この反応が溶液
中での高分子反応であることから、得られるポリマーの
純度や単離操作等の面で問題がある。さらに、Si−H
結合は一般に加水分解されやすいことから、ケイ素上の
置換基がすべて水素で構成されるこのようなポリカルボ
シランは大気中での取扱いが容易でないと推察される。
【0005】一方、SiCはワイドバンドギャップの半
導体として知られており、その薄膜は、もっぱらプラズ
マCVD法によって製造されている。しかしながら、こ
の方法ではシラン系ガスを原料として使用する必要があ
り、多くの場合、それらは空気中で激しく燃え、時とし
て爆発するといった危険性をともなう。そのために、製
造にあたっては安全対策に充分な注意を払わなければな
らず、製造設備は自ずと複雑化し、メンテナンスにも多
くの労力を要する。また、コストも高い。これに対し
て、前述したような高分子化合物であるところのポリカ
ルボシランを原料とする熱分解法は、半導体としてのS
iCを簡便に得る方法として注目に値する。
導体として知られており、その薄膜は、もっぱらプラズ
マCVD法によって製造されている。しかしながら、こ
の方法ではシラン系ガスを原料として使用する必要があ
り、多くの場合、それらは空気中で激しく燃え、時とし
て爆発するといった危険性をともなう。そのために、製
造にあたっては安全対策に充分な注意を払わなければな
らず、製造設備は自ずと複雑化し、メンテナンスにも多
くの労力を要する。また、コストも高い。これに対し
て、前述したような高分子化合物であるところのポリカ
ルボシランを原料とする熱分解法は、半導体としてのS
iCを簡便に得る方法として注目に値する。
【0006】しかし、このような熱分解法によって得ら
れるSiCの純度は一般に悪く、通常、遊離の炭素やケ
イ素を不純物として含み、黒く着色している。このため
に、耐熱性のセラミクス材料としては使用できるもの
の、半導体としての用途には適さない。
れるSiCの純度は一般に悪く、通常、遊離の炭素やケ
イ素を不純物として含み、黒く着色している。このため
に、耐熱性のセラミクス材料としては使用できるもの
の、半導体としての用途には適さない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように、ポリカル
ボシランを熱分解することによりSiCを製造する方法
は極めて簡便かつ有益であるが、従来の技術では炭素や
ケイ素といった不純物の混入を避けることができず、熱
分解により得られたものは、SiC本来の特性を十分に
発揮できていなかった。
ボシランを熱分解することによりSiCを製造する方法
は極めて簡便かつ有益であるが、従来の技術では炭素や
ケイ素といった不純物の混入を避けることができず、熱
分解により得られたものは、SiC本来の特性を十分に
発揮できていなかった。
【0008】本発明の第一の目的は、熱分解により炭素
やケイ素のような不純物を含まないSiCを与え、且
つ、空気・湿気に対して安定で取り扱いが容易な新規な
ポリカルボシランを提供することにある。
やケイ素のような不純物を含まないSiCを与え、且
つ、空気・湿気に対して安定で取り扱いが容易な新規な
ポリカルボシランを提供することにある。
【0009】また、上述のように、これまでのところ、
半導体として使用できるような良質のSiC薄膜を簡便
に得る方法はなかった。
半導体として使用できるような良質のSiC薄膜を簡便
に得る方法はなかった。
【0010】本発明の第二の目的は、このような良質の
SiC薄膜を簡便、且つ、安全に製造する方法を提供す
ることにある。
SiC薄膜を簡便、且つ、安全に製造する方法を提供す
ることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上述したように、熱分解
によって炭素とケイ素の組成比が1対1のSiCを得る
ためには、ポリシリレンメチレンを前駆体として用いる
のが一つの方法である。しかし、従来の技術で当該ポリ
マーを合成した場合には前述のような問題が生じる。そ
こで、本発明者は、当該ポリマーを単離するのではな
く、熱分解の過程の中間体として生じさせることを検討
した結果、本発明の第一の態様として、次の良質のSi
C薄膜の製造に有用な新規ポリカルボシランを提供する
こととなった。
によって炭素とケイ素の組成比が1対1のSiCを得る
ためには、ポリシリレンメチレンを前駆体として用いる
のが一つの方法である。しかし、従来の技術で当該ポリ
マーを合成した場合には前述のような問題が生じる。そ
こで、本発明者は、当該ポリマーを単離するのではな
く、熱分解の過程の中間体として生じさせることを検討
した結果、本発明の第一の態様として、次の良質のSi
C薄膜の製造に有用な新規ポリカルボシランを提供する
こととなった。
【0012】該ポリカルボシランは、主鎖が炭素とケイ
素から構成されており、炭素の側鎖は水素、ケイ素の側
鎖はβ位が第3級炭素である炭化水素基から構成され、
一般式(I):
素から構成されており、炭素の側鎖は水素、ケイ素の側
鎖はβ位が第3級炭素である炭化水素基から構成され、
一般式(I):
【0013】
【化3】
【0014】(式中、R1 ,R2 ,R3 およびR4 は炭
化水素、nは1以上の整数を示す)で表される。
化水素、nは1以上の整数を示す)で表される。
【0015】次に、本発明者は、まず最初に側鎖が有機
置換基から構成されるポリカルボシランを合成し、それ
を熱処理することによってポリシリレンメチレンと類似
した特性を示すポリマーを得ようとも考えた。このため
には、熱分解の過程で効率よく脱離して遊離の炭素を生
じないような置換基を選択する必要がある。従来のポリ
カルボシランの中でこのような置換基を有するものはこ
れまでに報告例がなかった。本発明者は、β位で分岐し
た炭化水素基をこのような置換基として導入することを
考案した。
置換基から構成されるポリカルボシランを合成し、それ
を熱処理することによってポリシリレンメチレンと類似
した特性を示すポリマーを得ようとも考えた。このため
には、熱分解の過程で効率よく脱離して遊離の炭素を生
じないような置換基を選択する必要がある。従来のポリ
カルボシランの中でこのような置換基を有するものはこ
れまでに報告例がなかった。本発明者は、β位で分岐し
た炭化水素基をこのような置換基として導入することを
考案した。
【0016】そこで、本発明における第二の態様とし
て、主鎖が炭素とケイ素から構成されるポリカルボシラ
ンであって、炭素の側鎖が水素、ケイ素の側鎖が水素お
よび水素とβ位が第3級炭素で構成された炭化水素基か
ら構成され、一般式(II):
て、主鎖が炭素とケイ素から構成されるポリカルボシラ
ンであって、炭素の側鎖が水素、ケイ素の側鎖が水素お
よび水素とβ位が第3級炭素で構成された炭化水素基か
ら構成され、一般式(II):
【0017】
【化4】
【0018】(式中、R1 ,およびR2 は炭化水素、l
およびmはそれぞれ零以上の整数でl+mはl、nは
1、pは1以上の整数を示す)で表される新規ポリカル
ボシランを提供する。
およびmはそれぞれ零以上の整数でl+mはl、nは
1、pは1以上の整数を示す)で表される新規ポリカル
ボシランを提供する。
【0019】また、SiCを半導体として使用するにあ
たっては、炭素とケイ素の組成比を1対1に近づける必
要がある。さもなくば、よい電気特性が得られない。本
発明者は、簡便な方法でこれを実現するために、前述の
高分子化合物を原料とする熱分解法に着目し、その改良
を検討した。そして、加熱により容易に脱離する置換基
から構成されたポリカルボシランを塗布等の方法により
任意の基板上に付着させ、それを熱分解することによっ
て基板上に薄膜を形成する方法を考案した。
たっては、炭素とケイ素の組成比を1対1に近づける必
要がある。さもなくば、よい電気特性が得られない。本
発明者は、簡便な方法でこれを実現するために、前述の
高分子化合物を原料とする熱分解法に着目し、その改良
を検討した。そして、加熱により容易に脱離する置換基
から構成されたポリカルボシランを塗布等の方法により
任意の基板上に付着させ、それを熱分解することによっ
て基板上に薄膜を形成する方法を考案した。
【0020】そこで、本発明の第3の態様として、シリ
コンカーバイド薄膜の製造方法であって、不活性ガス雰
囲気下、もしくは真空下において第一の態様のポリカル
ボシラン、もしくは第二の態様のポリカルボシランある
いはそれらの組合せで構成されたポリカルボシランを任
意の基板上で熱分解する製造方法を提供する。
コンカーバイド薄膜の製造方法であって、不活性ガス雰
囲気下、もしくは真空下において第一の態様のポリカル
ボシラン、もしくは第二の態様のポリカルボシランある
いはそれらの組合せで構成されたポリカルボシランを任
意の基板上で熱分解する製造方法を提供する。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明のポリカルボシラン
およびシリコンカーバイド薄膜の製造方法を、より詳細
に説明する。
およびシリコンカーバイド薄膜の製造方法を、より詳細
に説明する。
【0022】まず、本発明の第一の態様であるポリカル
ボシランについて説明する。このポリカルボシランは、
主鎖が炭素とケイ素から構成され、炭素の側鎖は水素、
ケイ素の側鎖はβ位が第3級炭素である炭化水素基から
構成され、一般式(I)(式中、R1 ,R2 ,R3 およ
びR4 は炭化水素、nは1以上の整数を示す)で表され
る。
ボシランについて説明する。このポリカルボシランは、
主鎖が炭素とケイ素から構成され、炭素の側鎖は水素、
ケイ素の側鎖はβ位が第3級炭素である炭化水素基から
構成され、一般式(I)(式中、R1 ,R2 ,R3 およ
びR4 は炭化水素、nは1以上の整数を示す)で表され
る。
【0023】ケイ素上の置換基としては、β位が第3級
炭素で構成された炭化水素基であれば何でもよいが、当
該ポリカルボシランの熱分解温度でガス化するものが取
り扱いやすく好適である。例えばイソブチル基、2−メ
チルブチル基、2−エチルブチル基、2−メチルペンチ
ル基などがあり、好ましくはイソブチル基、2−メチル
ブチル基、さらに好ましくイソブチル基である。
炭素で構成された炭化水素基であれば何でもよいが、当
該ポリカルボシランの熱分解温度でガス化するものが取
り扱いやすく好適である。例えばイソブチル基、2−メ
チルブチル基、2−エチルブチル基、2−メチルペンチ
ル基などがあり、好ましくはイソブチル基、2−メチル
ブチル基、さらに好ましくイソブチル基である。
【0024】このようなポリカルボシランは、相当する
置換基をもった1,3−ジシラシクロブタン誘導体の重
合により得ることができる。このモノマーの合成とその
重合は如何なる方法によってもよいが、ここでは、一例
として、実験室的に簡便な方法について記す。
置換基をもった1,3−ジシラシクロブタン誘導体の重
合により得ることができる。このモノマーの合成とその
重合は如何なる方法によってもよいが、ここでは、一例
として、実験室的に簡便な方法について記す。
【0025】まず、有機溶媒中、クロロメチルトリクロ
ロシランをあらかじめ調整しておいた所定の置換基のグ
リニャール試薬と反応させて、ケイ素上の2つの塩素を
所定の置換基に置き換える。この反応はいわゆるグリニ
ャール反応であることから、使用する有機溶媒はエーテ
ル系のものであれば、ジエチルエーテル、テトラヒドロ
フラン(THF)など何でもよいが、反応を円滑に進行
させるためにTHFが好適である。次いで、得られたク
ロロメチルクロロシラン誘導体を、有機溶媒中、金属マ
グネシウムにより環化させて1,3−ジシラシクロブタ
ン誘導体をモノマーとして得る。エーテル系の溶媒を用
いると反応が円滑に進行する。ここでの溶媒には、ジエ
チルエーテル、THFなどがあるが、THFが好適であ
る。得られたモノマーを、脱気下または不活性ガス雰囲
気下で、加熱重合すると目的のポリカルボシランが得ら
れる。この加熱重合するときの不活性ガス雰囲気の圧力
は何気圧でもよいが、取り扱い易さの観点から、大気圧
が好ましい。また、加熱温度は当該ポリカルボシランの
熱分解温度(320℃)以下であれば何度でもよいが、
収率向上および副反応抑制の観点から300℃程度が好
ましい。加熱時間は、同様の観点から10時間程度が好
適である。
ロシランをあらかじめ調整しておいた所定の置換基のグ
リニャール試薬と反応させて、ケイ素上の2つの塩素を
所定の置換基に置き換える。この反応はいわゆるグリニ
ャール反応であることから、使用する有機溶媒はエーテ
ル系のものであれば、ジエチルエーテル、テトラヒドロ
フラン(THF)など何でもよいが、反応を円滑に進行
させるためにTHFが好適である。次いで、得られたク
ロロメチルクロロシラン誘導体を、有機溶媒中、金属マ
グネシウムにより環化させて1,3−ジシラシクロブタ
ン誘導体をモノマーとして得る。エーテル系の溶媒を用
いると反応が円滑に進行する。ここでの溶媒には、ジエ
チルエーテル、THFなどがあるが、THFが好適であ
る。得られたモノマーを、脱気下または不活性ガス雰囲
気下で、加熱重合すると目的のポリカルボシランが得ら
れる。この加熱重合するときの不活性ガス雰囲気の圧力
は何気圧でもよいが、取り扱い易さの観点から、大気圧
が好ましい。また、加熱温度は当該ポリカルボシランの
熱分解温度(320℃)以下であれば何度でもよいが、
収率向上および副反応抑制の観点から300℃程度が好
ましい。加熱時間は、同様の観点から10時間程度が好
適である。
【0026】次に本発明の第二の態様であるポリカルボ
シランについて説明する。このカルボシランは、主鎖が
炭素とケイ素から構成され、炭素の側鎖が水素、ケイ素
の側鎖が水素および水素とβ位が第3級炭素で構成され
た炭化水素基から構成され、一般式(II)(式中、R
1 ,およびR2 は炭化水素、lおよびmはそれぞれ零以
上の整数でl+mはl、nは1、pは1以上の整数を示
す)で表される。
シランについて説明する。このカルボシランは、主鎖が
炭素とケイ素から構成され、炭素の側鎖が水素、ケイ素
の側鎖が水素および水素とβ位が第3級炭素で構成され
た炭化水素基から構成され、一般式(II)(式中、R
1 ,およびR2 は炭化水素、lおよびmはそれぞれ零以
上の整数でl+mはl、nは1、pは1以上の整数を示
す)で表される。
【0027】ケイ素上の有機置換基としては、β位が第
3級炭素で構成された炭化水素基であれば何でもよい
が、当該ポリカルボシランの熱分解温度でガス化するも
のが取り扱いやすく好適である。例えば、イソブチル
基、2−メチルブチル基、2−エチルブチル基、2−メ
チルペンチル基等があり、好ましくはイソブチル基、2
−メチルブチル基、さらに好ましくイソブチル基であ
る。
3級炭素で構成された炭化水素基であれば何でもよい
が、当該ポリカルボシランの熱分解温度でガス化するも
のが取り扱いやすく好適である。例えば、イソブチル
基、2−メチルブチル基、2−エチルブチル基、2−メ
チルペンチル基等があり、好ましくはイソブチル基、2
−メチルブチル基、さらに好ましくイソブチル基であ
る。
【0028】このようなポリカルボシランは、すべての
ケイ素上にβ位が第3級炭素で構成された炭化水素基を
有するポリカルボシランを熱分解することにより得るこ
とができる。前駆体となるポリカルボシランは如何なる
方法で合成してもよいが、ここでは、一例として、実験
室的に簡便な方法について記す。
ケイ素上にβ位が第3級炭素で構成された炭化水素基を
有するポリカルボシランを熱分解することにより得るこ
とができる。前駆体となるポリカルボシランは如何なる
方法で合成してもよいが、ここでは、一例として、実験
室的に簡便な方法について記す。
【0029】本発明の第二の態様のポリカルボシラン
は、上述の第一の態様のポリカルボシランを熱分解する
ことにより合成することができる。真空中もしくは不活
性ガス雰囲気下、350〜500℃、好ましくは400
〜450℃で第一の態様のポリカルボシランを熱分解す
ると目的のポリカルボシランが得られる。
は、上述の第一の態様のポリカルボシランを熱分解する
ことにより合成することができる。真空中もしくは不活
性ガス雰囲気下、350〜500℃、好ましくは400
〜450℃で第一の態様のポリカルボシランを熱分解す
ると目的のポリカルボシランが得られる。
【0030】次に本発明の第三の態様であるシリコンカ
ーバイド薄膜について説明する。本発明のシリコンカー
バイド薄膜の製造方法は、不活性ガス雰囲気下、もしく
は真空下において第一の態様、もしくは第二の態様のポ
リカルボシランあるいはそれらの組合せで構成されたポ
リカルボシランを任意の基板上で熱分解する。
ーバイド薄膜について説明する。本発明のシリコンカー
バイド薄膜の製造方法は、不活性ガス雰囲気下、もしく
は真空下において第一の態様、もしくは第二の態様のポ
リカルボシランあるいはそれらの組合せで構成されたポ
リカルボシランを任意の基板上で熱分解する。
【0031】原料となるポリカルボシランを、任意の溶
剤に溶解もしくは分散、あるいはそのままの状態で、薄
膜を作製する任意の材質、形状、大きさの基板上に付着
させる。このときの溶剤は、ベンゼン、トルエン、キシ
レン、クロロベンゼン、ヘキサン、THF、アセトン、
クロロホルム、酢酸エチルなどがある。また、基板に
は、石英、サファイア、シリコン、ヒ化ガリウム、鉄、
銅、アルミナ、SiC、窒化ケイ素などがある。そし
て、その基板をアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で所定
の時間、原料ポリカルボシランの熱分解温度以上に加熱
する。これにより目的のSiC薄膜が所望の基板上に作
製される。不活性ガス雰囲気の圧力は何気圧でもよい
が、取扱い上、大気圧が好ましい。また、熱分解にとも
なって発生するガスを効率よく除去して副反応を抑制す
ることが重要であり、そのためには、不活性ガスをフロ
ーした方がよい。あるいは、不活性ガスの使用に換え
て、雰囲気を真空に保つことによっても同様の効果が得
られる。このときの真空度は数十ミリTorr程度の低
真空でもほとんど問題ない。雰囲気の圧力変化は、Si
C薄膜の生成にほとんど影響しない。加熱温度と時間
は、原料ポリカルボシランの種類によって異なる。すな
わち、第一の態様の炭化水素基の割合が多いポリカルボ
シランを原料に用いた場合、一度に高温まで昇温すると
解重合による揮発性低分子の生成が支配的となる。その
結果、ほとんどの原料が気化によって失われ、基板上に
薄膜が形成されない。この場合には、まず第一段階とし
て、側鎖の炭化水素基のみが脱離し、主鎖の解重合があ
まり生じない温度、320〜520℃、好ましくは40
0〜450℃で熱分解する。ほとんどの側鎖が脱離した
後に、第二段階として600℃以上、好ましくは1,0
00℃程度に昇温する。この第二段階の温度が600℃
以下だと側鎖の脱離効率が悪い。炭化水素基をもたない
ポリカルボシランは熱分解によりほとんど解重合しな
い。第二の態様のケイ素上の炭化水素基の割合が少ない
ポリカルボシランを原料に用いた場合には、一度に60
0℃以上、好ましくは1,000℃程度まで昇温して
も、原料はほとんど失われることなく、基板上に目的の
SiC薄膜が生成する。
剤に溶解もしくは分散、あるいはそのままの状態で、薄
膜を作製する任意の材質、形状、大きさの基板上に付着
させる。このときの溶剤は、ベンゼン、トルエン、キシ
レン、クロロベンゼン、ヘキサン、THF、アセトン、
クロロホルム、酢酸エチルなどがある。また、基板に
は、石英、サファイア、シリコン、ヒ化ガリウム、鉄、
銅、アルミナ、SiC、窒化ケイ素などがある。そし
て、その基板をアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で所定
の時間、原料ポリカルボシランの熱分解温度以上に加熱
する。これにより目的のSiC薄膜が所望の基板上に作
製される。不活性ガス雰囲気の圧力は何気圧でもよい
が、取扱い上、大気圧が好ましい。また、熱分解にとも
なって発生するガスを効率よく除去して副反応を抑制す
ることが重要であり、そのためには、不活性ガスをフロ
ーした方がよい。あるいは、不活性ガスの使用に換え
て、雰囲気を真空に保つことによっても同様の効果が得
られる。このときの真空度は数十ミリTorr程度の低
真空でもほとんど問題ない。雰囲気の圧力変化は、Si
C薄膜の生成にほとんど影響しない。加熱温度と時間
は、原料ポリカルボシランの種類によって異なる。すな
わち、第一の態様の炭化水素基の割合が多いポリカルボ
シランを原料に用いた場合、一度に高温まで昇温すると
解重合による揮発性低分子の生成が支配的となる。その
結果、ほとんどの原料が気化によって失われ、基板上に
薄膜が形成されない。この場合には、まず第一段階とし
て、側鎖の炭化水素基のみが脱離し、主鎖の解重合があ
まり生じない温度、320〜520℃、好ましくは40
0〜450℃で熱分解する。ほとんどの側鎖が脱離した
後に、第二段階として600℃以上、好ましくは1,0
00℃程度に昇温する。この第二段階の温度が600℃
以下だと側鎖の脱離効率が悪い。炭化水素基をもたない
ポリカルボシランは熱分解によりほとんど解重合しな
い。第二の態様のケイ素上の炭化水素基の割合が少ない
ポリカルボシランを原料に用いた場合には、一度に60
0℃以上、好ましくは1,000℃程度まで昇温して
も、原料はほとんど失われることなく、基板上に目的の
SiC薄膜が生成する。
【0032】このように、本発明によれば、不活性ガス
雰囲気下、真空下の如何を問わず簡便にSiC薄膜を作
製することができる。
雰囲気下、真空下の如何を問わず簡便にSiC薄膜を作
製することができる。
【0033】
【実施例】以下、本発明を実施例によってさらに具体的
に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0034】実施例1: (1−1)クロロメチルジイソブチルクロロシランの合
成 アルゴン雰囲気下、200mLの3つ口フラスコにイソ
ブチルブロミド(60g)、THF(150mL)およ
び金属マグネシウム片(11g)を仕込み、2時間、加
熱環流して撹拌した。得られたイソブチルマグネシウム
ブロミドの溶液を暖かく保ち、500mLの3つ口フラ
スコにTHF(100mL)と共に仕込んだクロロメチ
ルトリクロロシラン(40g)の中へ徐々に滴下した
(於室温)。滴下に1時間を要した。滴下終了後、室温
で一夜撹拌した。減圧下、THFを留去し、ヘキサン
(300mL)を加えた。ろ過後、ヘキサンを留去し、
減圧蒸留により目的物を得た。収率44%。沸点42℃
/0.6Torr。
成 アルゴン雰囲気下、200mLの3つ口フラスコにイソ
ブチルブロミド(60g)、THF(150mL)およ
び金属マグネシウム片(11g)を仕込み、2時間、加
熱環流して撹拌した。得られたイソブチルマグネシウム
ブロミドの溶液を暖かく保ち、500mLの3つ口フラ
スコにTHF(100mL)と共に仕込んだクロロメチ
ルトリクロロシラン(40g)の中へ徐々に滴下した
(於室温)。滴下に1時間を要した。滴下終了後、室温
で一夜撹拌した。減圧下、THFを留去し、ヘキサン
(300mL)を加えた。ろ過後、ヘキサンを留去し、
減圧蒸留により目的物を得た。収率44%。沸点42℃
/0.6Torr。
【0035】(1−2)1,1,3,3−テトライソブ
チル−1,3−ジシラシクロブタンの合成 アルゴン雰囲気下、200mLの3つ口フラスコにTH
F(50mL)と金属マグネシウム片(5.9g)を仕
込み、その中へクロロメチルジイソブチルクロロシラン
(25g)を徐々に滴下した。約10gを滴下後、40
℃で30分間撹拌すると加熱環流が始まった。残りの原
料を滴下後、2時間、加熱環流して撹拌した。室温まで
冷却した反応溶液に水(200mL)を加えて未反応の
金属マグネシウムを分解した。溶液を分液ロートに移
し、有機層を2回水洗した。炭酸カリウム上で乾燥後、
減圧蒸留により目的物を得た。収率65%。沸点87℃
/0.3Torr。
チル−1,3−ジシラシクロブタンの合成 アルゴン雰囲気下、200mLの3つ口フラスコにTH
F(50mL)と金属マグネシウム片(5.9g)を仕
込み、その中へクロロメチルジイソブチルクロロシラン
(25g)を徐々に滴下した。約10gを滴下後、40
℃で30分間撹拌すると加熱環流が始まった。残りの原
料を滴下後、2時間、加熱環流して撹拌した。室温まで
冷却した反応溶液に水(200mL)を加えて未反応の
金属マグネシウムを分解した。溶液を分液ロートに移
し、有機層を2回水洗した。炭酸カリウム上で乾燥後、
減圧蒸留により目的物を得た。収率65%。沸点87℃
/0.3Torr。
【0036】(1−3)ポリジイソブチルシリレンメチ
レンの合成と物性 パイレックス製アンプルに1,1,3,3−テトライソ
ブチル−1,3−ジシラシクロブタン(2g)を仕込
み、5×10-5Torrの真空下で2回の凍結融解によ
り脱気して封管した。このアンプルを300℃の高温槽
中に12時間放置した。室温まで冷却後、アンプルを開
封し、得られた固形物を熱トルエン(100mL)に溶
かした。その溶液をエタノール(200mL)に注下し
て再沈澱した。沈澱物をろ取し、60℃で48時間真空
乾燥することにより、空気・湿気に対して安定な目的の
ポリカルボシラン(1.44g、白色固体)を得た。収
率72%。
レンの合成と物性 パイレックス製アンプルに1,1,3,3−テトライソ
ブチル−1,3−ジシラシクロブタン(2g)を仕込
み、5×10-5Torrの真空下で2回の凍結融解によ
り脱気して封管した。このアンプルを300℃の高温槽
中に12時間放置した。室温まで冷却後、アンプルを開
封し、得られた固形物を熱トルエン(100mL)に溶
かした。その溶液をエタノール(200mL)に注下し
て再沈澱した。沈澱物をろ取し、60℃で48時間真空
乾燥することにより、空気・湿気に対して安定な目的の
ポリカルボシラン(1.44g、白色固体)を得た。収
率72%。
【0037】図1に得られたポリカルボシランの赤外吸
収スペクトルを示す。すなわち図1はポリジイソブチル
シリレンメチレンの赤外吸収スペクトルのグラフであ
り、縦軸は吸光度(無単位)、横軸は波数(cm-1)を
表している。2952、2924、2894、286
8、1463、1401、1380、1364、132
3、1220、1163、1093、1065、103
6、833、777、612、520cm-1にこの物質
に特徴的な吸収が観測される。
収スペクトルを示す。すなわち図1はポリジイソブチル
シリレンメチレンの赤外吸収スペクトルのグラフであ
り、縦軸は吸光度(無単位)、横軸は波数(cm-1)を
表している。2952、2924、2894、286
8、1463、1401、1380、1364、132
3、1220、1163、1093、1065、103
6、833、777、612、520cm-1にこの物質
に特徴的な吸収が観測される。
【0038】表1に得られたポリカルボシランの 1H,
13C,29Si−NMR化学シフトの値とその帰属を示
す。
13C,29Si−NMR化学シフトの値とその帰属を示
す。
【0039】
【表1】
【0040】以上の分析結果より、このポリカルボシラ
ンは、ケイ素上の側鎖が2つのイソブチル基で構成され
た一般式(I)の物質であることが確認できた。
ンは、ケイ素上の側鎖が2つのイソブチル基で構成され
た一般式(I)の物質であることが確認できた。
【0041】図2に熱重量分析の結果を示す。すなわ
ち、図2は、ポリジイソブチルシリレンメチレンを用い
て、窒素気流下、10℃/分の昇温速度で測定した熱重
量分析のグラフである。320℃あたりから重量が減少
しはじめ、520℃以上でほぼ一定となる。残さの重量
分率は900℃において18.7%であった。
ち、図2は、ポリジイソブチルシリレンメチレンを用い
て、窒素気流下、10℃/分の昇温速度で測定した熱重
量分析のグラフである。320℃あたりから重量が減少
しはじめ、520℃以上でほぼ一定となる。残さの重量
分率は900℃において18.7%であった。
【0042】赤外吸収スペクトル法により、熱分解の過
程でイソブテンガスが生じ、残さはSiCであることが
確認された。オージェ電子分光分析により求めた残さ中
の炭素とケイ素の組成比はほぼ1対1であった。これら
のことは、分子設計通りに、熱分解の中間体としてポリ
シリレンメチレンが生じ、これがさらに反応してSiC
に転化したことを示唆する。
程でイソブテンガスが生じ、残さはSiCであることが
確認された。オージェ電子分光分析により求めた残さ中
の炭素とケイ素の組成比はほぼ1対1であった。これら
のことは、分子設計通りに、熱分解の中間体としてポリ
シリレンメチレンが生じ、これがさらに反応してSiC
に転化したことを示唆する。
【0043】実施例2: (2)ポリ(シリレンメチレン−co−イソブチルシリ
レンメチレン)の合成と物性 上記(1−3)で得られたポリジイソブチルシリレンメ
チレン(130mg)を石英ボートに仕込み、アルゴン
気流下、420℃で30分間熱分解して目的のポリカル
ボシラン(35mg)を得た。収率60%。
レンメチレン)の合成と物性 上記(1−3)で得られたポリジイソブチルシリレンメ
チレン(130mg)を石英ボートに仕込み、アルゴン
気流下、420℃で30分間熱分解して目的のポリカル
ボシラン(35mg)を得た。収率60%。
【0044】得られた物質は、白色透明であり、420
℃では流動性を示したが、室温においては粘ちょうな液
体であった。室温の大気中で数時間放置しても何の変化
も示さず、安定であった。また、ヘキサン、トルエン、
ベンゼン、THF、クロロホルム等の有機溶媒に可溶で
あった。
℃では流動性を示したが、室温においては粘ちょうな液
体であった。室温の大気中で数時間放置しても何の変化
も示さず、安定であった。また、ヘキサン、トルエン、
ベンゼン、THF、クロロホルム等の有機溶媒に可溶で
あった。
【0045】図3に得られたポリカルボシランの赤外吸
収スペクトルを示す。すなわち図3はポリ(シリレンメ
チレン−co−イソブチルシリレンメチレン)の赤外吸
収スペクトルのグラフであり、縦軸は吸光度(無単
位)、横軸は波数(cm-1)を表している。2952、
2924、2892、2868、2120、1462、
1402、1380、1364、1327、1215、
1163、1091、1046、953、847、76
3cm-1にこの物質に特徴的な吸収が観測される。表2
に得られたポリカルボシランの 1H,13C,29Si−N
MR化学シフトの値とその帰属を示す。表中のRはイソ
ブチル基を示す。
収スペクトルを示す。すなわち図3はポリ(シリレンメ
チレン−co−イソブチルシリレンメチレン)の赤外吸
収スペクトルのグラフであり、縦軸は吸光度(無単
位)、横軸は波数(cm-1)を表している。2952、
2924、2892、2868、2120、1462、
1402、1380、1364、1327、1215、
1163、1091、1046、953、847、76
3cm-1にこの物質に特徴的な吸収が観測される。表2
に得られたポリカルボシランの 1H,13C,29Si−N
MR化学シフトの値とその帰属を示す。表中のRはイソ
ブチル基を示す。
【0046】
【表2】
【0047】以上の分析結果より、このポリカルボシラ
ンは、すべての置換基が水素で構成されたシリレンメチ
レン単位とケイ素上の置換基の一つがイソブチル基で構
成されたイソブチルシリレンメチレン単位の組合せで主
鎖が構成され、一般式(II)で表すことができる物質で
あることが確認できた。
ンは、すべての置換基が水素で構成されたシリレンメチ
レン単位とケイ素上の置換基の一つがイソブチル基で構
成されたイソブチルシリレンメチレン単位の組合せで主
鎖が構成され、一般式(II)で表すことができる物質で
あることが確認できた。
【0048】次に、この物質の熱分解特性について記
す。この物質をアルゴン気流下、900℃で30分間熱
分解すると、炭素とケイ素の組成比がほぼ1対1のアモ
ルファスSiCが得られた。
す。この物質をアルゴン気流下、900℃で30分間熱
分解すると、炭素とケイ素の組成比がほぼ1対1のアモ
ルファスSiCが得られた。
【0049】実施例3: (3−1)上記(1−3)で得られたポリジイソブチル
シリレンメチレン(100mg)を細かく切断し、1.
5cm四方、1mm厚の石英基板上に一様に散布した。
これをアルゴンガスをフローしたチューブ型電気炉に仕
込み、420℃で30分間加熱した。原料のポリカルボ
シランから盛んにガスが発生し、その後、白色透明な流
体となった。この流体は表面張力により基板上に溜まっ
ていた。引き続いて温度900℃に昇温し、30分間加
熱後、室温に戻した。石英基板上に、淡い褐色を呈した
透明のSiC薄膜が形成された。
シリレンメチレン(100mg)を細かく切断し、1.
5cm四方、1mm厚の石英基板上に一様に散布した。
これをアルゴンガスをフローしたチューブ型電気炉に仕
込み、420℃で30分間加熱した。原料のポリカルボ
シランから盛んにガスが発生し、その後、白色透明な流
体となった。この流体は表面張力により基板上に溜まっ
ていた。引き続いて温度900℃に昇温し、30分間加
熱後、室温に戻した。石英基板上に、淡い褐色を呈した
透明のSiC薄膜が形成された。
【0050】(3−2)上記(2)で得られたポリ(シ
リレンメチレン−co−イソブチルシリレンメチレン)
のトルエン溶液(重量濃度10%)を作製した。このト
ルエン溶液をスピンコート法により1.5cm四方、1
mm厚の石英基板上に一様に塗布した。これをアルゴン
ガスをフローしたチューブ型電気炉に仕込み、900℃
で30分間加熱後、室温に戻した。石英基板上に、わず
かに褐色を呈した透明で均質なSiC薄膜(1ミクロン
厚)が形成された。
リレンメチレン−co−イソブチルシリレンメチレン)
のトルエン溶液(重量濃度10%)を作製した。このト
ルエン溶液をスピンコート法により1.5cm四方、1
mm厚の石英基板上に一様に塗布した。これをアルゴン
ガスをフローしたチューブ型電気炉に仕込み、900℃
で30分間加熱後、室温に戻した。石英基板上に、わず
かに褐色を呈した透明で均質なSiC薄膜(1ミクロン
厚)が形成された。
【0051】(3−3)上記(2)で得られたポリ(シ
リレンメチレン−co−イソブチルシリレンメチレン)
のトルエン溶液(重量濃度10%)をスピンコート法に
より1.5cm四方、1mm厚の石英基板上に一様に塗
布した。これをチューブ型電気炉に仕込み、100mm
Torrの真空下、900℃で30分間加熱後、室温に
戻した。石英基板上に、わずかに褐色を呈した透明で均
質なSiC薄膜(1ミクロン厚)が形成された。
リレンメチレン−co−イソブチルシリレンメチレン)
のトルエン溶液(重量濃度10%)をスピンコート法に
より1.5cm四方、1mm厚の石英基板上に一様に塗
布した。これをチューブ型電気炉に仕込み、100mm
Torrの真空下、900℃で30分間加熱後、室温に
戻した。石英基板上に、わずかに褐色を呈した透明で均
質なSiC薄膜(1ミクロン厚)が形成された。
【0052】(3−4)上記(2)で得られたポリ(シ
リレンメチレン−co−イソブチルシリレンメチレン)
のトルエン溶液(重量濃度10%)をスピンコート法に
より直径2cm、1mm厚の銅基板上に一様に塗布し
た。これをアルゴンガスをフローしたチューブ型電気炉
に仕込み、900℃で30分間加熱後、室温に戻した。
基板上に、透明で均質なSiC薄膜が形成された。
リレンメチレン−co−イソブチルシリレンメチレン)
のトルエン溶液(重量濃度10%)をスピンコート法に
より直径2cm、1mm厚の銅基板上に一様に塗布し
た。これをアルゴンガスをフローしたチューブ型電気炉
に仕込み、900℃で30分間加熱後、室温に戻した。
基板上に、透明で均質なSiC薄膜が形成された。
【0053】以下に、一例として、上記実施例(3−
1)および(3−2)で得られたSiC薄膜の分析結果
を示す。
1)および(3−2)で得られたSiC薄膜の分析結果
を示す。
【0054】赤外吸収スペクトルにおいては、SiCの
特性吸収帯である820cm-1を中心とするブロードな
吸収ピークのみが観測された。電子プローブマイクロア
ナリシス(EPMA)およびオージェ電子分光分析によ
り求めた炭素とケイ素の組成比は、ほぼ1対1であっ
た。粉末X線の回析パターンはアモルファス的であっ
た。これらの分析結果は、熱分解により得られたもの
が、炭素とケイ素の組成比がほぼ1対1のアモルファス
SiCであることを示唆している。
特性吸収帯である820cm-1を中心とするブロードな
吸収ピークのみが観測された。電子プローブマイクロア
ナリシス(EPMA)およびオージェ電子分光分析によ
り求めた炭素とケイ素の組成比は、ほぼ1対1であっ
た。粉末X線の回析パターンはアモルファス的であっ
た。これらの分析結果は、熱分解により得られたもの
が、炭素とケイ素の組成比がほぼ1対1のアモルファス
SiCであることを示唆している。
【0055】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の新規ポリ
カルボシランは空気・湿気に対して安定なために取り扱
いやすく、不活性ガス雰囲気下での熱分解により炭素と
ケイ素の組成比がほぼ1対1のSiCを与えることか
ら、良質のSiCを得るための前駆体として利用するこ
とができる。
カルボシランは空気・湿気に対して安定なために取り扱
いやすく、不活性ガス雰囲気下での熱分解により炭素と
ケイ素の組成比がほぼ1対1のSiCを与えることか
ら、良質のSiCを得るための前駆体として利用するこ
とができる。
【0056】また、本発明によれば、不活性ガス雰囲気
下もしくは比較的低い真空下での熱処理により、炭素と
ケイ素の組成比がほぼ1対1のSiC薄膜を簡便に作製
することができる。SiC薄膜の作製方法としてこれま
で実質的に唯一であったプラズマCVD法と比較した場
合、本発明は原料に危険性をともなうシラン系ガスを必
要としないために安全性に優れ、さらに、製造プロセス
が塗布と熱処理の2工程のみからなるきわめて単純なも
のであることから製造設備を大幅に簡素化できる利点が
ある。また、大面積化にも比較的容易に対応できるもの
と思われる。
下もしくは比較的低い真空下での熱処理により、炭素と
ケイ素の組成比がほぼ1対1のSiC薄膜を簡便に作製
することができる。SiC薄膜の作製方法としてこれま
で実質的に唯一であったプラズマCVD法と比較した場
合、本発明は原料に危険性をともなうシラン系ガスを必
要としないために安全性に優れ、さらに、製造プロセス
が塗布と熱処理の2工程のみからなるきわめて単純なも
のであることから製造設備を大幅に簡素化できる利点が
ある。また、大面積化にも比較的容易に対応できるもの
と思われる。
【図1】実施例1で合成された本発明のポリカルボシラ
ンの赤外吸収スペクトルを示す図である。
ンの赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図2】実施例1で合成された本発明のポリカルボシラ
ンの熱重量分析のグラフである。
ンの熱重量分析のグラフである。
【図3】実施例2で合成された本発明のポリカルボシラ
ンの赤外吸収スペクトルを示す図である。
ンの赤外吸収スペクトルを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古川 一暁 東京都新宿区西新宿三丁目19番2号 日本 電信電話株式会社内
Claims (3)
- 【請求項1】 主鎖が炭素とケイ素から構成されるポリ
カルボシランであって、炭素の側鎖は水素、ケイ素の側
鎖はβ位が第3級炭素から構成された炭化水素基から構
成され、一般式(I): 【化1】 (式中、R1 ,R2 ,R3 およびR4 は炭化水素、nは
1以上の整数を示す)で表されることを特徴とするポリ
カルボシラン。 - 【請求項2】 主鎖が炭素とケイ素から構成されるポリ
カルボシランであって、炭素の側鎖は水素、ケイ素の側
鎖が水素および水素とβ位が第3級炭素で構成された炭
化水素基から構成され、一般式(II): 【化2】 (式中、R1 ,およびR2 は炭化水素、lおよびmはそ
れぞれ零以上の整数でl+mはl、nは1、pは1以上
の整数を示す)で表されることを特徴とするポリカルボ
シラン。 - 【請求項3】 不活性ガス雰囲気下、もしくは真空下に
おいて請求項1もしくは2に記載のポリカルボシラン、
あるいはそれらの組み合わせで構成されたポリカルボシ
ランを任意の基板上で熱分解してシリコンカーバイド薄
膜を得ることを特徴とするシリコンカーバイド薄膜の製
造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2257997A JPH10218996A (ja) | 1997-02-05 | 1997-02-05 | ポリカルボシランおよびシリコンカーバイド薄膜の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2257997A JPH10218996A (ja) | 1997-02-05 | 1997-02-05 | ポリカルボシランおよびシリコンカーバイド薄膜の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10218996A true JPH10218996A (ja) | 1998-08-18 |
Family
ID=12086781
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2257997A Pending JPH10218996A (ja) | 1997-02-05 | 1997-02-05 | ポリカルボシランおよびシリコンカーバイド薄膜の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH10218996A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100824274B1 (ko) * | 2006-11-17 | 2008-04-24 | 주식회사 티씨케이 | 표면에 세라믹이 코팅된 금속 및 그 제조방법 |
KR100824273B1 (ko) * | 2006-11-17 | 2008-04-24 | 주식회사 티씨케이 | 표면에 세라믹이 코팅된 금속 및 그 제조방법 |
KR100927548B1 (ko) | 2008-01-29 | 2009-11-20 | 주식회사 티씨케이 | 표면에 세라믹이 코팅된 금속 및 그 제조방법 |
-
1997
- 1997-02-05 JP JP2257997A patent/JPH10218996A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100824274B1 (ko) * | 2006-11-17 | 2008-04-24 | 주식회사 티씨케이 | 표면에 세라믹이 코팅된 금속 및 그 제조방법 |
KR100824273B1 (ko) * | 2006-11-17 | 2008-04-24 | 주식회사 티씨케이 | 표면에 세라믹이 코팅된 금속 및 그 제조방법 |
KR100927548B1 (ko) | 2008-01-29 | 2009-11-20 | 주식회사 티씨케이 | 표면에 세라믹이 코팅된 금속 및 그 제조방법 |
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