JPH10213582A - 生体試料の濁りの除去方法 - Google Patents

生体試料の濁りの除去方法

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JPH10213582A
JPH10213582A JP3125797A JP3125797A JPH10213582A JP H10213582 A JPH10213582 A JP H10213582A JP 3125797 A JP3125797 A JP 3125797A JP 3125797 A JP3125797 A JP 3125797A JP H10213582 A JPH10213582 A JP H10213582A
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JP
Japan
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turbidity
reagent
ethoxilate
surfactant
reaction
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JP3125797A
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Kazuhiko Sato
一彦 佐藤
Akira Kimura
明 木村
Naoko Kawamura
菜穂子 河村
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Eiken Chemical Co Ltd
Original Assignee
Eiken Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明の目的は、血清や血漿等の血液試料の濁
りを速やかに除去する方法の提供である。 【構成】本発明は、2級直鎖アルコールエトキシレート
とともに溶解剤である多核フェノールエトキシレートを
用いる濁りの除去方法、ならびにこの方法を利用した血
液試料などの測定方法、そして測定用試薬である。 【効果】本発明は、少ない界面活性剤で優れた濁りの除
去効果を示す。また酵素的な反応のみならず免疫学的な
反応にも応用できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は血清等の生体試料の濁り
を除去する技術に関するものである。生体試料は、種々
の疾患の診断や健康状態を把握するための分析材料とし
て重要である。中でも血清や血漿のような血液試料につ
いては、酵素、基質、抗原、あるいは抗体といった幅広
い成分に対していろいろな原理に基づく測定が行われて
いる。酵素学的な反応、化学的な反応、あるいは免疫学
的な反応では、最終的に反応液の光学的な変化として測
定対象成分の存在を確認するものが多い。
【0002】具体的には、酵素学的な手法や、免疫学的
な分析手法の中でも均一系免疫分析と呼ばれるB/F分
離を行わない分析方法では、試料中に共存する多くの成
分の存在下で光学測定が行われる。たとえば免疫比濁法
と呼ばれる分析手法においては、血液試料を必要に応じ
て希釈後に試薬と直接混合して生じる濁りを光学的に追
跡することによって分析が行われる。また免疫成分を固
定したラテックスのような粒子状担体を利用した粒子凝
集反応法においても、免疫比濁法と同じように血清成分
の共存下で光学的な測定が行われる。このとき、試料中
に存在する濁りは光学測定を妨害することが知られてい
る。生体試料中に存在する濁りは、光学測定に検体ブラ
ンクの吸光度の増大による測定レンジの縮小につなが
る。また反応中の吸光度の変化量を追跡する場合には、
試料中の濁りが反応中に増減することによってブランク
のドリフトをもたらし正確な測定を困難とする。このよ
うな濁りによる光学測定の妨害は、吸光度測定のみなら
ず、散乱光、発光、あるいは蛍光といったその他の光学
測定においても同様の問題を引き起こす原因となる。
【0003】臨床化学分析で検体としてとりあげられる
主なものに、血清や血漿のような血液試料がある。血液
試料の濁りは、主として体内に吸収された脂肪成分の血
中濃度の上昇によって生じる。吸収された脂肪成分は、
カイロミクロンを形成し、これがリンパ管を経由して血
中に入りトリアシルグリセロールとなる。このトリアシ
ルグリセロールを中心とする血中脂質濃度の上昇が濁り
につながる。血液試料の濁りは、乳びとも呼ばれる。乳
びは高脂肪血症の患者血清や食物摂取後の血清に顕著に
現れ、血液成分の分析における正確性を損なう原因とな
ることがある。試料によってもたらされる脂質成分由来
の濁り以外にも、試料が試薬と接触することによって新
たに濁りが発生する現象も知られている。たとえば一部
の界面活性剤や金属イオンが、体液試料中に含まれる成
分との相互作用により新たな濁りを生じることが有り、
やはり光学測定の妨害につながる。本発明は、このよう
な光学測定を妨害する生体試料の濁りを除去するための
技術に関するものである。
【0004】
【従来の技術】生体試料の光学測定において、濁りの影
響を回避する方法には大きく分けて以下のような方法が
ある。 1)ブランクをとる 反応後の吸光度測定値から未反応試料の濁りによる吸光
度(ブランク値)を差し引くことによって、分析値から
濁りの影響を計算上は取り除くことができる。この方法
では、試料が2倍必要なうえに操作が煩雑である。2ポ
イントエンドと呼ばれる方法では、同一の試料に対して
反応の前後で光学測定を行うので試料を余分に用意する
必要は無い。しかしいずれの方法においても著しく濁っ
た試料ではブランクの上昇により十分な測定範囲が得ら
れず、測定レンジが狭くなることがある。更に濁りの程
度が一定であれば有効だが、比較的長い時間にわたって
濁りが増減する時には濁りの影響を除去できない。特に
トリグリセライドのように測定のための酵素反応にとも
なって濁りが消えていくケースでは、ブランクをとる方
法では対応が困難である。
【0005】2)検体希釈 検体を分析前に予め希釈し、濁りの程度を少なくしてお
くものである。言うまでもなく測定対象成分も希釈され
るため、感度を犠牲にする可能性につながるため効果に
は限界がある。
【0006】3)物理的な分離 濁りの原因物質である脂肪分をリンタングステン酸と塩
化マグネシウムのようなポリアニオンの添加により沈澱
させ遠心分離で除去する方法[ 1]、あるいは測定試料に
有機溶剤の混合物を加えて振出する事により除去する方
法[ 2]などがある。このような物理的な分離技術におい
ては、常に付加的な操作過程が求められる。また濁りと
ともに除去されてしまう成分の測定は不可能である。加
えて反応液に容量変化が生じるため正確な測定を行いに
くい。
【0007】4)酵素を添加 濁りの主原因である脂肪成分等を分解し、可溶化する加
水分解酵素を添加して濁りを除去する技術も公知である
[ 3][ 4]。酵素を組み合わせるために界面活性剤の使用
量を少なくする事ができる。しかしこの方法では利用す
る酵素の至適条件下でのみ効果を期待できる。更に脂質
を分解する酵素を用いると、脂質成分の測定においては
誤差の原因となるので使用範囲は限られてくる。
【0008】5)化学物質を添加 光学測定にあたり、非イオン性界面活性剤などの化学物
質を反応液に加えるものである。この種の試みについて
は多くの報告が有り、たとえば次に示すような非イオン
系の界面活性剤を中心とする各種化合物が濁りの除去に
有効であることが知られている。なおHLB価 (hydrop
hile lipophile balance value) は親水性親油性バラン
スとも言われ、界面活性剤の親水性と親油性を表す尺度
として用いられる値である。 ●ポリオキシエチレン化されたラウリン酸化合物[ 5] ●ポリエチレングリコールの脂肪酸エステルと溶解度改
良剤の組合せ[ 6] ●芳香族アルコール等の低分子有機化合物と界面活性剤
の組み合せ[ 7] ●アルカノールやアルキルアリールアルコールのポリエ
チレングリコールエーテルと、アルキルスルホネート等
の組み合せ[ 8] ●エステラーゼ等の酵素と特定構造を持つアルコールア
ミド脂肪酸エステルの組み合せ[ 3] ●HLB価10−13の非イオン性界面活性剤と、コラ
ン酸誘導体やオエレイルアルコールエトキシレイテッド
の組み合せ[ 9] ●HLB価11.5−14のポリオキシエチレンセカン
ダリーアルキルエーテルやポリオキシエチレン脂肪酸エ
ステル[10] ●HLB価4−14のポリエトキシル化トリグリセリド
と第2アルカンスルホネートの組み合せ[11] ●HLB価10−15の特定構造を持つポリオキシエチ
レン第1級アルキルエーテル[12] ●尿素誘導体[13] ●アルキルベンジルアンモニウム化合物と、ソルビトー
ルのポリエトキシ化トリエステルの組み合せ[14] ●アルキル置換されたアリール置換糖類[15] ●アルキルスルホン酸やアルキルスルホン酸[16] ●ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルやポリ
オキシエチレンアルキルエーテルの組み合せ[17]
【0009】これらの化合物には、蛋白質などの特殊な
原因に対してのみ有効性を持つもの[16]、また免疫反応
を妨害するために酵素学的な分析にしか利用できないも
の、あるいは逆に免疫学的な反応でのみ効果が得られる
もの[11]というように、利用範囲を限られているものが
ある。他にもリポプロテインリパーゼの作用を阻害する
ポリオキシエチレンアルキルエーテルのように、反応を
阻害するために組み合せられないケースが存在する。利
用範囲は、界面活性剤の構造的な特徴によっても制限さ
れることがある。たとえば、ポリオキシエチレングリコ
ール脂肪酸エステルのような脂肪酸エステル構造を持つ
界面活性剤は、中性脂肪や遊離脂肪酸の測定で試薬成分
として利用されるリポプロテインリパーゼの基質となり
うるので、その測定値に誤差を生じることがある。また
多くの界面活性剤は濁りの完全な除去のためには高い濃
度が必要である。ところが多量の界面活性剤は、泡立ち
の原因となるので測定操作に支障をきたすことがある。
界面活性剤の多用は粘性を高くするので分注精度を損な
う可能性が有り、また検体と混ざりにくくなるといった
不都合も生じ易い。特に脂質成分の酵素的な反応に用い
られる酵素には、十分な活性を引き出すために特殊な界
面活性剤が必要とされることが多い。ところが、酵素の
活性化に用いられる界面活性剤が濁りの除去に対する効
果を持つとは限らないので、結果として多種類の界面活
性剤が必要となり、全体として反応液中の界面活性剤の
使用増につながる。更に界面活性剤による濁りの除去作
用には緩慢なものが多く、光学測定の間も濁りが徐々に
消える減少が観察されることが有る。このような条件の
基で測定された値は、もはや正確なものとは言えない。
界面活性剤に頼った濁りの除去技術において、効果的な
対策がなかなか実現しない背景には次のような理由があ
る。一般的に濁りの除去に有効な非イオン性界面活性剤
は、HLB価が12以下のものが多い。HLB価が低い
ものでは曇点(後述)も低くなる傾向があるので、通常
の温度では水に溶けにくくなってしまう。つまり、濁り
の除去はできるものの非イオン性界面活性剤そのものの
濁りを生じることになる。この現象を避けるために非イ
オン性界面活性剤を溶解するための溶解剤を組み合わせ
る必要が有り、界面活性剤の使用量を抑制するのは困難
であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、少量
の添加で濁りの迅速な除去を可能とし、しかも酵素的な
反応から免疫学的な反応にいたる幅広い分析技術に応用
することができる新たな濁りの除去技術を提供すること
である。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、非イオン性界
面活性剤による生体試料生体試料の濁りの除去方法であ
って、第2級直鎖アルコールエトキシレートとともに多
核フェノールエトキシレートを用いる濁りの除去方法、
ならびにこの方法を利用した生体試料中の濁りの除去
剤、あるいは生体試料の光学的測定用試薬である。
【0012】本発明における第2級直鎖アルコールエト
キシレートは、濁りの除去作用を期待して用いる主剤で
ある。第2級直鎖アルコールエトキシレートとしては、
アデカトールSO−105、あるいはアデカトールSO
−120等(旭電化工業製、商品名)を示すことができ
る。これらの非イオン性界面活性剤は、酵素反応や免疫
学的な反応に影響を与えにくく、しかも少量で迅速な濁
りの除去を期待できる望ましい非イオン性界面活性剤で
ある。非イオン性界面活性剤に第2級直鎖アルコールエ
トキシレートを用いる場合、その使用量は自身の濁りの
除去能力、濁りの除去対象である試料の種類や濁りの質
によっても変動するが、一般的には血清等の血液試料1
μlに対して、40−1000μg、望ましくは80−4
00μgの量比で用いる。第2級直鎖アルコールエトキ
シレートは、単一で用いても良いし、必要に応じて複数
種を組み合わせる事もできる。複数種を混合すれば、混
合比の調整によってHLB価の制御が可能である。なお
本発明で用いる第2級直鎖アルコールエトキシレートの
好ましいHLB価は8−13である。
【0013】本発明の多核フェノールエトキシレート
は、第2級直鎖アルコールエトキシレートの溶解剤とし
て利用するものである。濁りの除去能に優れる第2級直
鎖アルコールエトキシレートを選んだとき、水溶液の曇
点の低下により温度によっては濁りを生じることがあ
る。なお曇点(曇り点;cloud point)とは、透明であっ
た溶液が温度の変化により曇りを生じる温度を意味す
る。非イオン性界面活性の場合、水溶液の温度の上昇に
ともなってエチレンオキシド付加モル数に応じた一定の
温度で混濁し始める。このような現象を避けるために、
多核フェノールエトキシレートを溶解剤として組み合せ
る必要がある。これに対して第1級アルコールエトキシ
レート(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)やポリオ
キシエチレンアルキルフェニルエーテル等の界面活性剤
は、曇点の調整には有効なものの第2級直鎖アルコール
エトキシレートによる濁りの除去作用に対して阻害的に
働く。
【0014】多核フェノールエトキシレートとは、多数
のフェニル基を含むエトキシレート化合物である。これ
までに多くの報告が有る脂肪酸エステル系界面活性剤や
グリコールエーテル系界面活性剤とは異なった構造を持
つ。多核フェノールエトキシレートは、「アデカトール
PC」の商品名で旭電化工業から市販されている界面活
性剤である。この種の界面活性剤には様々な種類が市販
されているが、中でもHLB価が10−20のときに特
に優れた溶解能を示す。具体的にはアデカトールPC−
10(HLB価13.5)、アデカトールPC−8(H
LB価12.5)、あるいはアデカトールPC−5(H
LB価11.5)等が特に望ましい溶解剤である。
【0015】溶解剤は、言うまでもなく曇点の低下対策
として用いるものであるから、その量比は濁りを除去し
ようとする最終的な反応液の温度や主剤である第2級直
鎖アルコールエトキシレートの曇点によって経験的に設
定する。溶解剤は、単一であっても良いし、必要に応じ
て複数種を組み合わせる事もできる。
【0016】以上のような本発明による濁りの除去のた
めの第2級直鎖アルコールエトキシレートと溶解剤(以
下、この組み合わせを単に濁りの除去剤と呼ぶこともあ
る)とは、血清や血漿に代表される生体試料の光学的な
測定方法のための試薬に予め加えておく事ができる。本
発明において2種類以上の界面活性剤を混合するとき、
望ましい混合比としては最終的な反応液における曇点が
反応に必要な温度の3−10℃高くなるように配合す
る。曇点が反応に必要な温度よりも低い場合には界面活
性剤による濁りを生じる。また反応温度に対して不必要
に高い温度を設定するのは界面活性剤の使用量増につな
がるので望ましくない。具体的には、血液試料の分析に
は室温ないし37℃といった温度条件が一般に用いられ
ることから、本発明における望ましい曇点の設定範囲は
30℃−50℃と言うことができる。血液試料の酵素学
的な、あるいは免疫学的な分析においてもっとも一般的
な反応温度である37℃を例にとると、望ましい曇点は
40−43℃である。曇点は非イオン性界面活性剤があ
る溶液中に存在するときに固有の値である。複数種の非
イオン性界面活性剤を混合するときには、その混合比や
溶液に共存する他の成分によって変動する。したがって
最終的な反応条件の下で望ましい曇点を得ることができ
るように界面活性剤の使用量や混合比は経験的に設定す
るとよい。なお通常の血清に含まれる成分は曇点に影響
を与えにくいため、血清のような血液試料を分析材料と
するときには試薬中における曇点を望ましい値に設定す
れば十分である。本発明による濁りの除去剤を血清など
の検体中に存在させる方法としては、試薬中に必要量を
添加することによって反応液に供給するのが一般的であ
る。このとき、非イオン性界面活性剤の総量が2%より
多いと粘度が上昇して検体と混ざり難くなるといった不
都合が生じることがある。これらの試薬には反応液の酵
素学的な反応を行うためのものや、免疫学的な反応を行
うための成分、あるいは化学的な反応を行うための試薬
成分を含むものを挙げることができる。具体的な試薬を
以下に示す。また、界面活性剤は試薬中に添加するのが
好ましいが、血清などの検体中に直接添加してもよい。
なお本発明による濁りの除去が必要となる免疫学的な反
応とは、試料中で共存する他の成分存在下で光学測定を
しなければならない反応を意味する。具体的には、遊離
の抗体を試料中の抗原と反応させて生成する免疫複合体
の沈降物を光学的に捉える免疫比濁法(あるいは免疫比
ろう法)、抗体感作粒子の抗原による凝集を光学的に捉
える免疫学的粒子凝集反応法等である。あるいはこの他
にも、標識した免疫学的な活性物質がそのパートナーと
反応した時に標識の信号が変調する現象を利用したいわ
ゆる均一系免疫分析においても、本発明の濁りの除去方
法は有効である。
【0017】[酵素基質の測定用試薬] ・遊離コレステロール測定用試薬 ・総コレステロール測定用試薬 ・中性脂肪測定用試薬 ・遊離脂肪酸測定用試薬 ・リン脂質測定用試薬 ・グルコース測定用試薬 ・クレアチニン測定用試薬 ・ビリルビン測定用試薬
【0018】[酵素活性の測定用試薬] ・γグルタミルトランスフェラーゼ測定用試薬 ・グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ測定用
試薬 ・グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ測定用試
薬 ・乳酸脱水素酵素測定用試薬 ・アミラーゼ測定用試薬 ・クレアチンホスホキナーゼ測定用試薬
【0019】[抗原や抗体の免疫学的な測定] ・抗ストレプトリジンO抗体測定用試薬 ・C反応性蛋白質測定用試薬 ・イムノグロブリン測定用試薬 ・アルブミン測定用試薬
【0020】[化学的な反応による測定対象成分] ・クレアチニン測定用試薬 ・ビリルビン測定用試薬
【0021】これらの試薬の多くは、実際には単一では
なく2つ以上の溶液に分けた状態で利用される。また試
料の希釈が必要となる時には、試薬成分として希釈用の
溶液も利用される。本発明の非イオン性界面活性剤は、
これらの試薬を構成する複数の溶液のうちの1つだけに
添加しても良いし、全ての溶液に加えておく事もでき
る。本発明で用いる非イオン性界面活性剤は、濁りの除
去性能にpHや他の成分の影響を受けにくい一方で、他
の反応性分に対する影響も少ないので、任意の試薬と共
存させておく事が可能である。いずれにせよ、光学的な
測定を行うときの反応液中で濁りの除去に必要な濃度を
得られるように設計すれば良い。
【0022】本発明の試薬には、上記のような測定対象
成分と反応する試薬成分と、本発明による濁りの除去剤
の他に、以下のような成分を付加的に加える事ができ
る。
【0023】◆試薬の保存や反応に必要なpHを与える
緩衝剤 酵素的な反応や免疫学的な反応は、それぞれの反応に適
したpHで実施される。またpHは試薬の保存性能も左
右するため、各試薬に応じた緩衝剤を適宜選択して用い
ればよい。
【0024】◆試薬の反応性を高めるための添加剤 本発明の非イオン性界面活性剤を含む試薬には、測定に
必要な反応を促進するための反応促進剤を添加すること
ができる。反応促進剤には、酵素の活性発現に必要な金
属イオン、酵素活性を増強する界面活性剤、免疫複合体
の沈降を促進するポリエチレングリコール等を示すこと
ができる。
【0025】◆測定を妨害する成分の影響を防止するた
めの添加剤 酵素学的な反応系において多用される過酸化水素の発色
反応は、アスコルビン酸のような還元性成分の存在によ
り誤差を生じることが有る。この妨害作用は、アスコル
ビン酸酸化酵素でアスコルビン酸を酸化分解することで
抑止できることから、試薬に付加的に添加されることの
多い酵素である。一部の酵素では、酵素活性が金属イオ
ンによって抑制されることが知られているが、このよう
な酵素に対しては試薬に予めキレート剤を加えておくと
金属による抑制作用を防止することができる。
【0026】◆試薬の保存性を高める保存剤 本発明の試薬には、試薬の構成成分の安定性の改善を期
待して様々な公知の保存剤を組み合わせる事ができる。
酵素や抗体のようなタンパク成分は、血清アルブミンや
卵白アルブミンのような不活性タンパク質、動物血清、
あるいはアミノ酸等と共存させておくことで安定化され
ることが公知である。また酵素の場合には、基質や補酵
素の共存下で活性が高い水準で維持される。更に、溶液
状態でなく凍結乾燥により流通させる場合には、不活性
タンパクに加えて糖類の添加が安定性の維持や溶解性の
改善に有効である。
【0027】◆微生物の増殖を抑制する防腐剤 酵素成分、免疫成分、そしてこれらの保存のために加え
たタンパク質等は微生物の繁殖を招きやすい。したがっ
て、測定に必要な反応に影響を与えない防腐剤の添加が
必要である。このような防腐剤には、アジ化物、ミクロ
シド(アムレスコ製、商品名)、ファンギソン、ケーソ
ンCG(ロームアンドハース社製、商品名)、ホウ酸、
およびデヒドロ酢酸塩等が公知である。
【0028】
【作用】本発明の濁りの除去剤を構成する第2級直鎖ア
ルコールエトキシレートは、酵素反応のみならず、免疫
学的な反応にも影響を与えること無く効果的に生体試料
の濁りを除去するための主剤である。一方、溶解剤であ
る多核フェノールエトキシレートは、濁りの除去能は持
つものの単独では水溶液に溶解しにくい第2級直鎖アル
コールエトキシレートを可溶化する働きを持つ。濁りの
除去能を持つ界面活性剤を溶解剤とともに利用する技術
は公知であるが、本発明における多核フェノールエトキ
シレートは、公知の溶解剤に比べてはるかに少ない使用
量で非イオン性界面活性剤を可溶化する。そのため濁り
の除去能に優れながら溶解性の点で問題を持つ第2級直
鎖アルコールエトキシレートのような界面活性剤であっ
ても利用することができる。
【0029】
【発明の効果】本発明によれば、特定の溶解剤との組み
合わせにより、公知の界面活性剤の組み合わせでは期待
することができなかった強力で迅速な濁りの除去を実現
する。しかも優れた濁りの除去能を維持しつつ界面活性
剤の使用量を飛躍的に少なくすることが可能となる。界
面活性剤の使用量を抑制することで、各種の測定試薬に
おいて様々な効果をもたらすものである。具体的には、
たとえば次のような効果を期待することができる。ま
ず、試薬の泡立ちを最小限に抑えることができる。試薬
の泡立ちは試薬分注機構の液面センサーの誤動作につな
がるため歓迎されない現象である。しかし界面活性剤を
試薬に添加する限りは避けられないものと認識されてい
る。界面活性剤の使用量を低く抑えることができる本発
明では、結果として試薬の泡立ちも抑制される。しかも
本発明で溶解剤に利用する多核フェノールエトキシレー
トは、もともと泡切れの良い界面活性剤なので、泡を生
じにくいという点では非常に有利な試薬組成を実現して
いる。この他に界面活性剤の使用量が少ないことによっ
て試薬の粘度を水に近づけることができる。試薬の粘度
が高まると試薬の分注精度や試薬の混合に影響を与える
可能性があるが、本発明による試薬ではそのような心配
がない。続いて実施例に基づいて本発明を更に具体的に
説明する。
【0030】
【実施例】
1.本発明による濁りの除去方法 本発明に基づく濁りの除去用剤を、脂質成分による濁り
を持つ試料に加えて濁りの除去能を確認した。本発明に
基づく濁りの除去用剤は、HLB価が13以下の第2級
直鎖アルコールエトキシレートとしてSO−105およ
びSO−120(いずれも旭電化工業製、商品名)混合
物を、溶解剤である多核フェノールエトキシレートとし
てPC−10(旭電化工業製、商品名)とを含む組成物
とした。各成分の濃度は表1に示すとおりである。主剤
であるSO−105の使用量が大きくなるのにともなっ
て溶解剤であるPC−10使用量が大きくなっているの
は、主剤の溶解に必要な量で用いているためである。な
お表中の界面活性剤使用量は、試料1μL当たりのSO
−105とSO−120の合計量(μg)である。試料に
は、イントラリピッド(大塚製薬製、商品名)の10%
水溶液と強い濁りを示すヒト血清試料1例を用意した。
100μLの各血清試料に2.0mLの濁りの除去用剤を
加え、550nmにおける吸光度の変化を追跡した。測定
は30秒おきに行った。
【0031】
【表1】
【0032】結果は図1、図2に示すとおりである。試
料1μL当たり60μg以上の第2級直鎖アルコールエト
キシレートを多核フェノールエトキシレートとともに加
えると、速やかな濁りの除去が可能となることが明らか
である。特に80〜400μgでは、5分という短時間
のうちにほとんど完全に濁りを除去している。
【0033】2.溶解剤の比較/HLB価13.5 濁りの除去のための界面活性剤(主剤)に組み合せて用い
る溶解剤について、各種界面活性剤の比較を試みた。溶
解剤として用いる界面活性剤には、次のような化合物を
用意した。これらの化合物は、本発明による溶解剤であ
る多核フェノールエトキシレートPC−10と同じHL
B価13.5を持つものである。濁りの除去のための界
面活性剤として以下のような組成(基本組成)を持つ組
成物を用意し、これに比較のための溶解剤を各濃度で加
えて濁りの除去能に及ぼす影響を比較した。試料として
イントラリピッドの10%水溶液を用い、1と同じ操作
で濁りの除去能を測定した。 基本組成: 25mM EDTA−2Na 0.20% アデカトールSO−105 0.20% アデカトールSO−120 50mM リン酸緩衝液(pH7.0) 比較した溶解剤: ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル(アデ
カトールNP−700、旭電化工業製、商品名) ポリオキシエチレンセチルエーテル(NIKKOL BC−1
0TX、日本サーファクタント工業製、商品名) 第2級アルコールエトキシレート(アデカトールSO−
135、旭電化工業製、商品名)
【0034】代表的な結果を図3にまとめた。NP−7
00では急速に濁りを生じてしまうため、まったく使用
できない。BC−10Xでは濁りの除去が不十分で、む
しろ基本組成による濁りの除去を阻害している。SO−
135を用いた場合には、PC−10(本発明)の3倍
程度を用いれば濁りの除去はスムーズに進行する。ただ
し一般的な酵素反応を行う37℃では濁りを生じてしま
うためやはり利用できない。この濁りは曇点の低下が原
因と推測される。曇点の低下によって生じる界面活性剤
に起因する濁りは、微妙な温度の上下でも光学的な測定
値の変動につながるため測定値の信頼性を下げるもので
ある。以上の結果から、たとえ同程度のHLB価を持つ
ものであっても、化合物によって溶解剤としての性能に
大きな差を生じることが確認された。
【0035】3.溶解剤の比較/HLB価14.5 2と同様の操作で、以下の溶解剤について比較を試み
た。これらの化合物は、本発明による溶解剤である多核
フェノールエトキシレートPC−13と同じHLB価1
4.5を持つものである。 比較した溶解剤: ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(NIKKOL
TMGO−15、日本サーファクタント工業製、商品
名) 第2級直鎖アルコールエトキシレート(アデカトールS
O−145、旭電化工業製、商品名)
【0036】代表的な結果を図4にまとめた。本発明に
おいて溶解剤として利用しているPC−13と同じ使用
濃度では、いずれの界面活性剤も濁りの除去が不完全で
ある。同じ程度の濁りの除去能を得るには、PC−13
の2〜3倍の添加量が必要であった。この結果より、本
発明で利用している界面活性剤の組み合わせにより、全
体の界面活性剤使用量を低く押さえられることが明らか
である。
【0037】4.主剤の比較 ここまでは溶解剤の比較を行った。続いて、濁りを除去
するための界面活性剤(主剤)について比較を試みた。
すなわち先に試みた第2級直鎖アルコールエトキシレー
トSO−105とSO−120の混合物に代えて、Tr
itonX−114を用いて濁りの除去能を測定した。
実験に用いた組成物は以下のとおりである。試料には1
0%のイントラリピッド水溶液を用い、操作は1にした
がった。 組成: 25mM EDTA−2Na 0.20% TritonX−114 50mM リン酸緩衝液(pH7.0)
【0038】結果は図5に示した。溶解剤であるPC−
10の濃度が高ければTritonX−114を溶解で
きるが、濁りの除去は不完全である。他方、溶解剤を濁
りの除去が可能な濃度で用いるとTritonX−11
4の溶解が不完全となり濁りを生じてしまう。このよう
に、一般的な特徴が似ていても、化合物によってまった
く異なる挙動を示すことが確認された。すなわち本発明
による優れた濁りの除去性能は、特定の界面活性剤の組
み合わせに固有の効果であると言うことができる。
【0039】5.溶解剤の比較/非イオン性界面活性剤
以外との組み合せ 本発明の濁りの除去剤で主剤として機能しているの第2
級直鎖アルコールエトキシレートに対して、非イオン性
界面活性剤以外の溶解剤を組み合せて濁りの除去能を調
査した。非イオン性界面活性剤以外の溶解剤として、以
下の界面活性剤を用いた。溶解剤を変更する他は2の操
作にしたがった。 比較した溶解剤: サルコシネートLN (日本サーファクタント工業製、商品名、両性界面活性
剤) ドデシル硫酸ナトリウム(陰イオン系界面活性剤)
【0040】結果は図6と図7に示したとおりである。
主剤に第2級直鎖アルコールエトキシレートを用いて
も、溶解剤に多核フェノールエトキシレートを組み合わ
せなければ濁りの除去が不完全であったり、あるいは主
剤を十分に溶解できないという不具合を生じることを確
認した。
【0041】引用文献 [ 1] Clin.Chem.,28,1153-1158;1983 [ 2] Clin.Chem.,29,120-125;1983 [ 3] 特公平1-51782 [ 4] 特開昭58-216699 [ 5] 特公昭58-15738 [ 6] 特公昭57-15340 [ 7] 特公昭62-11307 [ 8] 特公平1-17110 [ 9] 特公平2-24520 [10] 特開昭59-162454 [11] 特公平3-16620 [12] 特公平4-7832 [13] 特開平3-35166 [14] 特開平4-232460 [15] 特公平7-11519 [16] 特開平7-12807 [17] 特開平7-167856
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による濁りの除去方法をイントラリピッ
ド(10%水溶液)に対して実施した結果。縦軸は55
0nmにおける吸光度、横軸は時間(1目盛が30秒に対
応)である。
【図2】本発明による濁りの除去方法を濁りの強いヒト
血清に対して実施した結果。縦軸は550nmにおける吸
光度、横軸は時間(1目盛が30秒に対応)である。
【図3】種々の溶解剤(HLB価13.5)よるイント
ラリピッド(10%水溶液)における濁りの除去能を比
較した結果。縦軸は550nmにおける吸光度、横軸は時
間(1目盛が30秒に対応)である。
【図4】種々の溶解剤(HLB価14.5)よるイント
ラリピッド(10%水溶液)における濁りの除去能を比
較した結果。縦軸は550nmにおける吸光度、横軸は時
間(1目盛が30秒に対応)である。
【図5】主剤にTritonX−114を用い、イント
ラリピッド(10%水溶液)に対して濁りの除去を実施
した結果。縦軸は550nmにおける吸光度、横軸は時間
(1目盛が30秒に対応)である。
【図6】主剤に第2級直鎖アルコールエトキシレート
を、溶解剤にサルコシレートLNを用い、イントラリピ
ッド(10%水溶液)に対して濁りの除去を実施した結
果。縦軸は550nmにおける吸光度、横軸は時間(1目
盛が30秒に対応)である。
【図7】主剤に第2級直鎖アルコールエトキシレート
を、溶解剤にドデシル硫酸ナトリウムを用い、イントラ
リピッド(10%水溶液)に対して濁りの除去を実施し
た結果。縦軸は550nmにおける吸光度、横軸は時間
(1目盛が30秒に対応)である。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】非イオン性界面活性剤による生体試料の濁
    りの除去方法であって、第2級直鎖アルコールエトキシ
    レートを多核フェノールエトキシレートとともに用いる
    濁りの除去方法
  2. 【請求項2】生体試料が、血清または血漿から選択され
    た血液試料である請求項1の濁りの除去方法
  3. 【請求項3】第2級直鎖アルコールエトキシレートのH
    LB価が8−13である請求項1の濁りの除去方法
  4. 【請求項4】第2級直鎖アルコールエトキシレートが生
    体試料1μlあたり80−400μgで用いられる請求項
    1の濁りの除去方法
  5. 【請求項5】多核フェノールエトキシレートのHLB価
    が10−15である請求項1の濁りの除去方法
  6. 【請求項6】多核フェノールエトキシレートの添加によ
    って、最終的な反応液の曇点を30−50℃に調整する
    請求項1の濁りの除去方法
  7. 【請求項7】第2級直鎖アルコールエトキシレートと多
    核フェノールエトキシレートを含有する生体試料の濁り
    の除去剤
  8. 【請求項8】濁りを除去するための非イオン性面活性剤
    として第2級直鎖アルコールエトキシレートを溶解剤で
    ある多核フェノールエトキシレートとともに含有する生
    体試料成分の光学的測定用試薬
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