JPH10207504A - 人工知能機械および人工知能機械システム - Google Patents

人工知能機械および人工知能機械システム

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JPH10207504A
JPH10207504A JP9007529A JP752997A JPH10207504A JP H10207504 A JPH10207504 A JP H10207504A JP 9007529 A JP9007529 A JP 9007529A JP 752997 A JP752997 A JP 752997A JP H10207504 A JPH10207504 A JP H10207504A
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vehicle
artificial intelligence
inference
data
intelligence machine
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JP9007529A
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Tomoo Matsuda
智夫 松田
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Komatsu Ltd
Original Assignee
Komatsu Ltd
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Publication date
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    • GPHYSICS
    • G05CONTROLLING; REGULATING
    • G05DSYSTEMS FOR CONTROLLING OR REGULATING NON-ELECTRIC VARIABLES
    • G05D1/00Control of position, course or altitude of land, water, air, or space vehicles, e.g. automatic pilot
    • G05D1/02Control of position or course in two dimensions
    • G05D1/021Control of position or course in two dimensions specially adapted to land vehicles
    • G05D1/0212Control of position or course in two dimensions specially adapted to land vehicles with means for defining a desired trajectory
    • G05D1/0221Control of position or course in two dimensions specially adapted to land vehicles with means for defining a desired trajectory involving a learning process

Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】周囲の環境を評価しつつ適切なタイミングで内
容の推論を行う。 【解決手段】記憶装置(第一層)2に記憶されたデータ
に基づいて人工知能機械20がとるべき目標の行動とそ
の外界の現状とを読み取り、当該目標の行動をとる際に
生じる不具合を予測し、この不具合予測を出力する自動
制御手段(第二層)5と、前記自動制御手段(第二層)
5から不具合予測が出力された場合に起動され、当該不
具合がなくなるための推論を行い、この推論結果を前記
記憶装置(第一層)2に記憶させる推論手段(第三層)
6と、前記記憶装置(第一層)2に記憶された前記推論
結果と前記自動制御手段(第二層)5の制御出力とに基
づいて、前記人工知能機械20を駆動する機械駆動手段
(身体部)9とを具える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、記憶装置に記憶さ
れたデータに基づいて所定の推論を行い、この推論結果
に応じた行動をとる人工知能機械および人工知能機械シ
ステムに関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】従来
より、情報通信ネットワークに接続され、このネットワ
ークを介して周辺の環境の実際の状態を計測したり、周
辺の状況に応じて行動を変えたりする人工知能機械を制
御する技術として様々なものが提案されてきている。
【0003】例えば、化学プラントでは、情報通信ネッ
トワークで結ばれた複数の計算機が多様な工程に組み込
まれており、あるものは自動制御で化学反応の温度や圧
力を調整し、あるいは生成物や排気ガスなどを測定する
ことにより、人工知能の手法で反応の促進状態を予測し
て自動制御系の目標値を自動的に変えたり、運転者に警
告を与えて自動制御の目標値を変更させたりするシステ
ムが実用化されている。
【0004】このように、人工知能の手法で構成される
機能を上位とし、この上位の人工知能機能によって下位
の自動制御系を調節するシステムは、化学プラントだけ
でなく、機械制御システム、交通システム、物流システ
ムなどにも使われており、制御システムを設計する立場
にいる当業者にとっては極めて当然で常識的なシステム
構成である。
【0005】これは、工学設計の技術思想の基礎となる
西欧哲学によれば、「理性(人工知能による推論)が肉
体(センサとアクチュエータからなる自動制御)を支配
する」という暗黙の前提が影響しているためと思われ
る。
【0006】しかし、現在の人工知能における推論に関
する分野には、「一般フレーム問題」という難題があ
る。この「一般フレーム問題」とは、推論すべき適切な
命題を適切な時期に与えることができれば正しく推論で
きるのに、人間が場面や状況を判断して行動するような
複雑な場面では、推論すべき命題を人工知能機械自身が
推論によって見つけ出す方法を採用すると、推論すべき
ことを見つけ出すまでに思考が堂々巡りになってしま
い、適切な結論に到達することが困難になるということ
である。
【0007】これに関して人工知能の研究専門家として
極めて著名なDr.Marvin Minskyの著書“The Society of
Mind”の6.14章では、「意識が働き始めるのは、
私たち自身の何かがうまく働かなくなったときであるこ
とが多い」として、人間の心の意識的な思考や推論が
「何かうまく行かないこと」が引き金となることが述べ
られている。
【0008】これは、本発明に至るヒントを与えてくれ
る着想ではあるが、上記文献で「うまく行かないことに
気付くのは別の意識的なプロセスである」とされている
ように、身体の感覚や手足を動かすアクチュエータ等か
らなる自動制御系は、従来通り意識的なプロセスの下位
システムとして位置づけられており、その基本構成にお
いて本発明そのものを示唆するものではない。
【0009】今日の制御工学の技術分野における当業者
が「自動制御」という言葉で示すものとしては、フィー
ドバック制御やフィードフォワード制御などの古典的な
制御理論を始め、線形代数学を用いた現代制御理論や適
応制御のほか、最近ではファジー理論を利用したファジ
ー制御などの様々な方式が実用化されており、これらは
各種の技術図書や大学の教科書などとして出版されてい
る。この実装手段として、電機設備、電子回路、PID
コントローラ、シーケンスコントローラ、デジタル計算
機などのほか、最近研究が盛んになってきたニューラル
ネットの技術を信号処理に利用することも当業者には容
易に考えつくことである。
【0010】これに対して、本出願で使用している「自
動制御」という言葉には、もう少し一般的な意味を持た
せている。それは、具体的には前出のDr. Marvin Minsk
y の著書“The Society of Mind ”の7.8章にある
「差分エンジン」と類似した広い概念であり、下記のよ
うな要件からなるものと説明することができる。
【0011】1)自動制御は、望ましい状態の記述を
「目標」として持っている必要がある。 2)自動制御
は、実際の状態の記述を「現状」として持っている必要
がある。 3)自動制御は、「目標」と「現状」の差違
によって活性化される「自動制御 機構」を持って
いる必要がある。
【0012】4)「自動制御機構」は、それが活性化さ
れる原因となった「目標」と「現状」 の差違を減
らすような働きをする必要がある。
【0013】この差分エンジンの考え方は、1978年
にノーベル賞を受賞したHerbert A. Simon(1916−) ら
によって一般問題解決器(GPS,General Problem So
lver)として再帰的な記号処理モデルとして定式化され
ているものを含む考え方である。 つまり、本出願にお
ける「自動制御」という言葉は、特定の制御方式や信号
処理方式や装置構成をいうのではなく、「目標」と「現
状」の差違を減らすように働く機能を持つように作られ
た装置全般を指す。
【0014】ところで、「目標と現状の差違を減らすよ
うに働く装置」であれば、どのような対象でも制御でき
るかというと、そうとは限らない。なぜならば、本出願
における「自動制御」という考え方でも、「現状」を必
要十分な程度まで掌握できないならば、自動制御は機能
しないのである。つまり、外界のありさまとしての「現
状」を、「目標」との差違が定義できるのに必要十分な
程度まで明確に記述できないのならば、「現状」が掌握
できないことになる。このような場合には「目標」と
「現状」の差違も定義できないため、結局、その差違を
減らすように自動制御を働かせることができないのであ
る。この「現状」を掌握する能力は「自動制御」に含ま
れないが、自動制御を的確に動作させるためには不可欠
である。自動制御の仕組みによって対象物を制御しよう
としてシステム全体を設計する場合には、かならずこの
「現状」掌握機能になんらかの仕組みを割り宛てておく
必要がある。
【0015】たとえば、整備された人工の環境である工
場やプラントにおける自動制御では、特定のセンサやセ
ンサ信号の組合せを予め決めておき、その決められた信
号の組合せによって外界(制御対象)の現状が必要十分
な程度に掌握されるようにシステムを設計すればよい。
【0016】ところが、知能自動車や建設機械などのよ
うに、予め定まっていない環境や状況に遭遇する機械を
制御する場合には、「現状」を必要十分な程度に掌握す
る機構は必要であるものの、現時点ではまだその要求を
完全に実現する技術は存在していない。具体的に言え
ば、災害現場などで無人建設機械の目の前にある凸凹の
ある大きな物体が、「破砕すべき岩石」なのか、「救出
すべき被災者」なのか、「踏みつぶすべき倒木の枝」な
のか、それとも「把持して積み上げるべき土壌」なのか
を識別できなければ、正しい行動をとることはできない
が、その識別は、現状では極めて困難である。
【0017】また、車両が自律走行する出発点から目標
点までの所定の経路を表現する方法として、米国特許4,
866,617 号(“Method of Guiding an Unmanned Vehicl
e ”)にみられるように、経路を座標点の点列で表現す
る方法があり、車両はそれら点列をひとつづつ辿ってい
くように自動制御される。
【0018】しかし、この方法で車両を誘導できるの
は、「経路上に障害物が存在しない場合」に限られる。
従って、車両の眼前に広がる「黒い影」を検出した場合
に、その部分が「単に汚れている」だけなのか、そこに
「大きな穴があいている」のか、「オイルなどが巻き散
らされていて車両の運行上で危険な状態」なのかについ
て、外界の「現状」を掌握することができなければ、車
両を適切に誘導させることはできない。
【0019】この場合に、車両の周囲全部を同時に観察
できるように、多数の外界センサを車両に搭載すること
も考えられる。
【0020】しかし、多数の外界センサを車両に搭載す
ることは経済的に困難である。
【0021】そこで、人間が興味のある方向を振り向い
て目をこらして観察するのと同様に、自律走行する車両
の視覚センサが、その時点で注目すべき場所や方向に向
くように指向性、注視点が変化されるように設計するこ
とが考えられる。
【0022】例えば、出発地点から車両が道路に出ると
きには、視覚センサの指向性と注視点を変化させ、進路
方向だけでなく合流する道路に他の車両がいないことを
確認すればよい。また、高速走行中は、視覚センサの指
向性と注視点を変化させ、遠くの前方を観察するととも
に並進ないしは近傍を走る車両の挙動に注意すればよ
い。また、目標地点の近くでは、視覚センサの指向性と
注視点を変化させ、目標地点の正確な位置を探すととも
に、停車するために道路から左右にハンドルをきって分
岐したり減速しても周囲の車両と接触事故を起こさずに
すむかどうかを確認すればよい。
【0023】このように、外界から確認し掌握すべき外
界の「現状」の範疇は、一定不変ではなく、その時々の
状況や場面によって常に変化しつづるものである。した
がって、外界の「現状」を必要十分に知った上で自動制
御しようとするならば、「現状」を把握することができ
る機構に対して指示を与え、時々刻々の状況に応じて知
るべき事項を取得する必要があるという問題がある。
【0024】このような問題に対して、従来の「狭義の
自動制御」では、たとえば工場プラントにみられるよう
に、センサ信号の意味づけや指向性や感度は、概ね一定
のままで環境のデータを計測しており、上記問題点とし
て指摘するように、状況に応じて対象を認識する必要性
について何ら具体的な解決策を与えるものではなかっ
た。
【0025】さて、人間の感覚知覚に相当するセンサか
らの情報にもとづいて推論(reasoning )を行う機能
は、一般に人工知能に分類される。
【0026】たとえば、対象物をCCDビデオカメラ等
で撮影して画像処理を行い、その色や形から対象物が何
であるかを推論し、もしその対象物が複数の積み木ブロ
ックであったときに、所定の積み姿になるように手順を
推論して積み木を積む作業を行うがごとき場合である。
【0027】今日、人工知能の技術は、多岐に渡って研
究が進められており、人工知能の研究分野は、「様々な
トピックスの集まりにすぎない」といわれるほどに多様
な課題が議論されている。例えば、いくつかの教科書や
文献をもとに人工知能の研究分野を列挙してみると下記
のような一覧表ができあがる。
【0028】 <哲学>哲学的基礎(philosophical foundations ) オントロジ(ontologies) 認知モデル(cognitive modeling) 知覚(perception) 信念(belief) 因果律(causality ) 発見(discovery ) 科学的発見(scientific discovery) 対話(discourse ) <数学>数学的基礎(mathematical foundations) 定理証明(theorem proving ) 制約充足(constraint satisfaction ) 決定理論(decision theory ) 決定木(decision trees) 探索(search) スケジューリング(scheduling) 計画(planning) 問題解決(problem solving ) 診断(diagnosis ) 計算論的複雑さ(computational complexity) 記述論理(description logics) <推論>自動推論(automated reasoning ) 常識推論(common sense reasoning) 定性推論(qualitative reasoning ) 時系列推論(temporal reasoning) 事例ベース推論(case-based reasoning) 非単調推論(nonmonotonic reasoning) 確率的推論(probabilistic reasoning ) 幾何・空間推論(geometric or spatial reasoning) <言語>文法(syntax) 機械翻訳(machine translation ) 自然言語処理(natural language processing ) 音声理解(speech understanding) <学習>機械学習(machine learning) 強化学習(reinforcement learning) <知識>情報抽出・記憶(information retrieval and
gathering ) 知識獲得(knowledge acquisition ) 知識表現(knowledge representation) <工学>AIアーキテクチャ(AI architectures) 設計(design) <分散>遺伝的アルゴリズム(genetic algorithms) ニューラル・ネットワーク(neural networks ) 人工生命(artificial life ) 分散AI(distributed AI) 擬似生物(lifelike characters ) ソフトウェア・エージェント(software agents ) ネットワーク・エージェント(network agents) マルチ・エージェント・システム(multiagent system
s) これらの人工知能の技術が、下記のような様々な応用分
野で利用されようとしている。
【0029】 障害者支援技術(enabling technologies ) 芸術や音楽(art and music ) CAI(computer-aided education) ロボティクス(robotics) エキスパート・システム(expert systems) マルチメディア(multimedia) ゲーム(game playing) 自動制御(control ) 音響処理(audition) 即応制御(reactive control) 実時間システム(real-time systems ) シミュレーション(simulation) 仮想現実(virtual reality ) ユーザ・インタフェース(user interfaces ) 自動モデル化(automated modeling) これらの応用分野のうちで、最近大きな成功を収めてい
るのが、特定の知識の分野に限定して知識を効率的に蓄
積したり引き出したりできるエキスパート・システム
(expert systems)である。
【0030】このエキスパートシステムでは、外界に関
する情報処理の上で初期的ながらも重要な外界の状況の
知覚は、人間が行っている場合が多い。
【0031】例えば、制御装置が高温の炉の温度をセン
サで検出して燃料や空気吹き込み量を自動調整するため
に推論を行う場合でも、センサから出力される信号は温
度や風量などに予め対応づけられているのが普通であ
り、状況に応じてセンサ信号と物理現象との対応関係を
変化させることは考えていない。つまり、エキスパート
システムでは、極めて複雑な外界を知覚する作業を人間
にやらせたり、意味づけを予め人間が行っても支障のな
い用途に適用されて、大きな成果を上げている。そのほ
かに人工知能技術の応用の成功例としては、インターネ
ットのブラウザで使われるデータ検索技術やハイパーテ
キストによる知識の蓄積や、日本人が英語のホームペー
ジを読むときに利用するテキストの機械翻訳機能などが
あげられる。
【0032】これらは確かに人工知能研究の輝かしい成
果であるが、これら従来の人工知能システムでは、推論
機能をシステムの上位側におき、自動制御(例えば車両
の加減速や操舵などの自動制御)は、この推論機能によ
って支配される下位システムであるという構成を前提と
するものである。
【0033】とりわけ、外界の状況変化に対応しようと
する人工知能システム、例えば知能自動車や無人建設機
械の人工知能システムでは、外界の状況変化に応じて、
推論機能自身が「いつ、何を、どのような観点から推論
すべきか」を決定する必要がある。
【0034】このように、「いつ、何を、どのような観
点から推論すべきか」を、上位の推論機構自身(また
は、さらに上位に、または並列に設けられた別の推論機
構)が行わねばならないため、「いつ、何を、どのよう
にして」という問いが永久に堂々巡りして答えが出ない
という問題が招来する。すなわち、ある瞬間に、ある命
題を推論しようとした場合に、「なぜ、いま、この観点
からその命題を推論せねばならない」という理由を合理
的に説明する答えを巡って推論しても、明確な回答は出
てこないということである。この場合、せいぜい「任務
を記述したファイルには、そうしろと書いてあるから」
という回答は期待されるものの、実際の所、センサの故
障や観察条件の不良などを含む環境認識の誤認の可能性
までも考慮した上で、全ての状況を予測して任務を記述
するファイルを作成することは不可能である。
【0035】以上のように、外界の状況変化に対応しよ
うとする人工知能システム、例えば知能自動車や無人建
設機械の人工知能システムの最上位に、推論の機能を持
たせる方式をとった場合には、推論機能を働かせること
によって多様性のある自然環境の中で行動をとることが
極めて困難となりかねない。
【0036】こうした最上位に推論機構を持つ伝統的な
人工知能の形式に対して、米国のDr. Brooksらが推論機
構を全く持たない人工知能の形式として、サブサンプシ
ョンアーキテクチャ(subsumption architecture) を提
唱して成功を収めている。
【0037】しかし、このシステムでは、外界からの刺
激に対応するセンサ信号の組合せによって直接的にアク
チュエータを動かす技術を採用しており、複雑な任務を
知識情報としてファイルまたはデータとして付与し、そ
の任務を達成するようにセンサで検出した外界の多様な
状況に応じてアクチュエータの動きを制御することは、
極めて困難である。
【0038】このように、伝統的な人工知能技術では、
推論機構をシステムの最上位に設けていたため推論の堂
々巡りが生ずるという問題が招来し、また、推論機能そ
のものを排除した人工知能技術では、達成可能な任務の
多様性がなくなるという問題が招来する。
【0039】さて、人工知能機械の実用上の問題点が、
さらにもう一つある。
【0040】それは、計算機技術や電子通信技術の最近
の急速な進歩によって、最新技術が極めて短時間に陳腐
化するということである。
【0041】ここ数年で急速に市場が拡大してきたイン
ターネットを例に取ると、その通信用のソフトウェアも
ハードウェアも数ケ月の単位で次々と高性能のものが出
現し、旧式のソフトウェアやハードウェアは、急速に存
在価値を喪失してゆく。そのため、自動車、物流機器、
工場設備、無人建機、長期間のリースで使用するOA機
器あるいはインテリジェントな建物のような原価償却期
間の長い商品を知能化する場合、そのソフトウェアやハ
ードウェアが数ケ月あるいは1,2年で陳腐化して競争
力を失う。ひどい場合には、広域に張り巡らされた情報
通信ネットワーク上を流れてくる最新式の情報を読みと
れなくなってしまうことも起こりうる。
【0042】このための対策として、従来から技術的な
規格を統一したり標準化することによって仕様を凍結
し、メンテナンス性や互換性を維持することにより機器
の共通性を維持することが行われてきた。
【0043】しかし、今日のように電子機器の性能が一
年ないし数ケ月で倍々に向上する時代において、むりや
り機器の仕様を規格や標準の名のもとに低い性能に凍結
すれば、その機器の製品分類そのものを不要にするよう
な画期的な高性能の新製品が出現した場合に対処するこ
とができなくなる虞がある。
【0044】さらに、人工知能の先端的な研究分野で個
々のトピックス的な研究成果が次々と現れているという
現状の一方で、「人工知能機械の全体のアーキテクチ
ャ」が提案されるには至っていない。
【0045】これらの問題を解決するためには、従来の
当業者が暗黙の前提としてきた哲学的な技術思想にまで
たちかえって、人工知能機械としては拡張性が高く柔軟
性のあるアーキテクチャを発明考案することが求められ
る。
【0046】さて、情報通信ネットワークに接続されて
データ通信をする技術として、近年、LANやインター
ネットが急速に進歩している。
【0047】インターネット上では、テキストや静止画
像のみならず音声や動画像がやりとりされ始められてお
り、ここ数ケ月ではラジオ放送やテレビ放送も始まって
いる。通常の電話のみならずテレビ電話においてすら世
界中に張り巡らされた計算機ネットワークでやりとりで
きる状況である。
【0048】また、ネットワークの双方向性を生かして
電子カタログを用いた通信販売の電子取引や、世界の複
数の設計・生産拠点を結んだコンカレント設計なども一
部では実用化し初めている。さらに、異なる機種や異な
るOSを使っているユーザの計算機上に、正常に動作す
ることが保証されたプログラムを転送する技術も開発さ
れ、コンピュータグラフィクスや制御プログラムを送る
などの応用が始まっている。
【0049】また、交通の分野では、無線ネットワーク
によって道路の混雑状態を各自動車に伝達するシステム
が実用化されつつある。いずれは、家庭や職場に置かれ
たテレビのような計算機端末に対して情報通信ネットワ
ークを介してプログラムやデータを送ると、その送られ
た側の画面には、人工知能で人間の話を理解したり、人
間に自然言語で話しかけたりするシステムが開発され、
技術サポートや各種の通信販売のほか塾や家庭教師や家
庭医療などのサービスに利用されるものと期待されてい
る。
【0050】しかし、現状ではソフトウェアやハードウ
ェアの技術進歩が急速なうえ、確固たる人工知能のアー
キテクチャが提案されていないため、ユーザが最新型の
端末やソフトを導入したとしても早期に陳腐化してしま
い、特定の番組や特定の相手としか通信できない専用の
端末になってしまう可能性が高い。
【0051】交通や物流の分野では、さらに深刻な問題
がある。
【0052】すなわち、仮に最新技術を用いて人工知能
で走る自律自動車が完成したとする。 しかし、その1
年後には、その数倍の能力と速度を持つ計算機とソフト
を搭載した自律自動車が生産されることになり、さらに
1年後には、さらに最新型の自律自動車が新発売される
ことになる。この結果、自動車の寿命を5〜10年とし
ても、一時的に道路上には、何百倍も能力の異なる自律
自動車が混在することになる。
【0053】ここで、確固たるアーキテクチャをもって
相互の情報交換や交通管制が数十年にわたってメンテナ
ンス可能になっているのでなければ、これら世代の違う
自律自動車は、安全に道路上で協調動作することは不可
能であり、交通事故などの脅威にさらされることにな
る。
【0054】1台の機械の制御システムを複数の計算機
や複数の制御プロセスに分散して設計する場合に、シス
テムの内部で共通に利用されるデータを一カ所に保管し
ておくことは当業者ならよく使う方法である。これらの
データ共有化の手法は、データの規模や実現方式によっ
てデータベース、サーバ、共有メモリ、大域変数、外部
変数など様々な形式が使われている。特に、システムが
複雑になってくると、初期の単純な計算機がプログラム
やデータをメモリ上に混在させたり変数と処理を別々に
定義していたためにプログラムが読みにくくなってバグ
を発見しにくくなってしまったことへの反省から、カプ
セル化などの手法に見られるように「そのデータを読み
書きできるプログラムはデータといっしょにクラスで定
義されたものに限られる」というルールが適用されるよ
うになってきている。
【0055】1つのシステムを複数の計算機やプロセス
に分散させる場合、制御装置の内部変数や入出力装置の
データなどは、制御系の係数や運転指令の目標値、画像
データや音声データ、各種の動作プログラムが処理する
時間間隔やデータの性質が異なるゆえに、一般に別々の
データ格納装置に保管される。つまり、最近のシステム
では、様々なデータをシステム内部に分散して格納する
方式が一般的になったために、当初設計したシステムの
アーキテクチャに基づくデータの分散配置方法が、情報
通信ネットワークの最新のデータ形式に合わなくなって
しまうと、その最新のデータ形式で提供される全ての情
報を読みとれなくなってしまう虞がある。
【0056】こうしたデータ形式の陳腐化を防止するた
めにも、拡張性の高いアーキテクチャによるシステム構
造の明確化が必要である。
【0057】以上のように、従来技術では、推論の機能
をシステムの構成の最上位に設け、その推論の機能の下
位に自動制御を設ける構成をとっているため、推論すべ
きことがらを決定する場合に堂々巡りが起きてしまい、
周囲の環境を適切に評価しつつ適切なタイミングで適切
な内容の推論を行うことが困難であった。
【0058】本発明は、こうした問題点を解決すること
を第1の目的とするものである。
【0059】また、従来技術では、人工知能機械の全体
のアーキテクチャが不明瞭なうえに、まちまちであった
ため、最新技術を導入すると既存の人工知能機械との整
合性が低下するという問題があった。
【0060】本発明は、上記第1の目的に加えて、かか
る問題点を解決することを第2の目的とするものであ
る。
【0061】
【課題を解決するための手段および効果】そこで、上記
第1の目的を達成するために、本発明の第1発明では、
図1に示すように、記憶装置(第一層)2に記憶された
データに基づいて所定の推論を行い、この推論結果に応
じた行動をとる人工知能機械20において、前記記憶装
置(第一層)2に記憶されたデータに基づいて前記人工
知能機械20がとるべき目標の行動と当該人工知能機械
20の外界の現状とを読み取り、これら目標の行動と外
界の現状とに基づいて当該目標の行動をとるための制御
出力を発生する自動制御手段であって、当該目標の行動
をとる際に生じる不具合を予測し、この不具合予測を出
力する自動制御手段(第二層)5と、前記自動制御手段
(第二層)5から不具合予測が出力された場合に起動さ
れ、当該不具合がなくなるための推論を行い、この推論
結果を前記記憶装置(第一層)2に記憶させる推論手段
(第三層)6と、前記記憶装置(第一層)2に記憶され
た前記推論結果と前記自動制御手段(第二層)5の制御
出力とに基づいて、前記人工知能機械20を駆動する機
械駆動手段(身体部)9とを具えるようにしている。
【0062】第1発明の別の発明では、特に、前記自動
制御手段(第二層)5から出力される前記不具合予測の
データは、前記記憶装置(第一層)2の特定の領域に書
き込まれ、前記推論手段(第三層)6は、前記記憶装置
(第一層)2の特定の領域に書き込まれた前記不具合予
測データを読み出すことによって推論が起動されるよう
構成される。
【0063】第1発明のさらに別の発明では、特に、図
23に示すように、前記推論手段(第三層)6は、前記
人工知能機械20の外界を検出し、当該外界を表象する
記号を出力する知覚機能手段(知覚機能)7と、この知
覚機能手段7から加えられる記号出力Vに応じて推論を
行う推論機能手段(推論機能)8からなり、前記推論機
能手段(推論機能)8から前記知覚機能手段(知覚機
能)7に対して前記記号出力Vの選択肢nを予め与えて
おき、前記知覚機能手段(知覚機能)7は、知覚条件を
少なくとも1回変化させて(操作U)、外界を少なくと
も2回検出し、この結果、前記選択肢nの中から少なく
とも2回以上同じ記号出力を選択した場合に、この記号
出力Vを前記推論機能手段(推論機能)8に加えるよう
に、構成している。
【0064】また、さらに、第1の目的に加えて第2の
目的を達成するために、本発明の第2発明では、情報通
信ネットワーク1を介して外部と通信自在に接続され、
自己の記憶装置(第一層)2に記憶されたデータに基づ
いて所定の推論を行い、この推論結果に応じた行動をと
る人工知能機械20において、前記情報通信ネットワー
ク1を介して外部から入力される外部データと、前記人
工知能機械20の内部で取得される内部データとが記憶
される記憶装置(第一層)2と、前記記憶装置(第一
層)2に記憶されたデータに基づいて前記人工知能機械
20がとるべき目標の行動と当該人工知能機械20の外
界の現状とを読み取り、これら目標の行動と外界の現状
とに基づいて当該目標の行動をとるための制御出力を発
生する自動制御手段であって、当該目標の行動をとる際
に生じる不具合を予測し、この不具合予測を出力する自
動制御手段(第二層)5と、前記自動制御手段(第二
層)5から不具合予測が出力された場合に起動され、当
該不具合がなくなるための推論を行い、この推論結果を
前記記憶装置(第一層)2に記憶させる推論手段(第三
層)6と、前記記憶装置(第一層)2に記憶された前記
推論結果と前記自動制御手段(第二層)5の制御出力と
に基づいて、前記人工知能機械20を駆動する機械駆動
手段(身体部)9とを具えており、前記記憶装置(第一
層)2は、前記外部データを前記人工知能機械20内部
で使用する際に、前記内部データの形式に変換するとと
もに、前記内部データを前記情報通信ネットワーク1を
介して外部に出力する際に、前記外部データの形式に変
換するデータ変換手段を具えている。
【0065】ここで、自動制御手段(第2層)5の「自
動制御」とは、一般問題解決器を含む差動エンジンに似
た概念であって、「目標」と「現状」の差違を減らすよ
うに働く機能を持つように作られた装置の機能のことで
ある。
【0066】すなわち、制御動作に伴って両者を比較す
るたびに、「現状」として記述された知識データと「目
標」として記述された知識データの間の差違が前回より
も少ないと評価できる状態になるように、制御出力を発
生するものである。
【0067】また、推論手段(第三層)6は、具体的に
は、「知覚機能」を働かせながら推論を行う。「知覚機
能」は、例えば、本発明者の先願に係る特願平8−53
138号の図7における感受部、分別部と同様な機能の
ことであり、その内部状態の状態遷移は上記出願の図8
に示されている。上記出願の図7における記号推論が、
推論手段(第三層)6が行う推論に相当する。
【0068】本発明の第1発明は、西洋哲学における
「知性や自由意思が肉体を支配する」という思想にもと
づいて、思考や推理を担当する推論機能を、肉体の制御
や知覚を担当する自動制御機能の上位に配置していた従
来技術の考え方を根底から改めるという知見に基づきな
されたものである。
【0069】すなわち、本発明の第1発明は、現代の精
神分析において常識とされる深層心理あるいは潜在意識
というものが、顕在意識や知覚に影響を及ぼすという発
想に近いものである。
【0070】具体的には、蓄積された記憶や無意識の反
射的な行動や自律神経などの潜在意識に相当するデータ
ベースである記憶装置2と自動制御の機能5を上位と
し、それによって影響される顕在意識と知覚に相当する
推論機能6(知覚機能)を下位とするシステム構成をと
る。
【0071】本発明の第2発明は、この第1発明に加え
て、知能自動車、無人建設機械、物流機械、事務用及び
教育用の電子機器(いわゆるOA機器)、インテリジェ
ントな建物などのように、情報通信ネットワーク1に接
続されて長い年月にわたって使用される人工知能機械2
0を容易に陳腐化させない柔軟性の高い装置を設計する
ことにより、社会的な資産が長期間にわたり安定に蓄積
できるように図るとともに、これらの人工知能機械20
が短期間でゴミとして廃棄されることを防止することに
より、地球上の資源の有効活用を図ろうとするものであ
る。
【0072】すなわち、本発明による人工知能機械20
では、外部のネットワーク1との情報交換によって取得
したデータの形式を適宜変換して第一層2に蓄積される
と同時に、身体部9によって動作対象14(人間15や
他の移動機械16や地上もしくは車体に据え付けた機械
17や環境中にかかる物体18)の情報が第一層2のデ
ータベースに蓄えられる。ただし、ここでいうデータベ
ースとは、既に対象との関連づけがなされて概念化が終
わっていたりデータへの意味づけの処理が終わったテキ
ストや数値データの集まり(以下、これをシンボリック
・データsymbolic sign と呼ぶ)だけを蓄積して効率的
にデータを入出力する狭義のデータベースではなく、対
象物に似たものとして表現された絵や直接知覚された動
画像や静止映像や音声のように言語を用いた表現の形式
では概念化されていないセンサの直接出力を記録したデ
ータ(以下、これをアイコン・データ iconic signと呼
ぶ)と、対象物および対象情報ないしは対象物や対象情
報のありかを指し示すインデックス・データ index sig
n の3種類のデータを蓄積し、必要に応じた速度で読み
書きされ、また更新され続ける広義の記憶装置のことを
いう。
【0073】第二層5は、第一層2の広義のデータベー
スに蓄積された上記3種類のデータを「目標」ならびに
「現状」を記述したものとして読みとって広義の自動制
御のための制御出力を第一層2のデータベースに書き込
む。書き込まれたデータのうち、あるものはデータ変換
されて外部の情報通信ネットワーク1によって外部と情
報交換され、あるものは身体部9に伝えられてマンマシ
ン.インタフェースから人間15に対する映像や音声と
して出力されたり、移動機械16や据え付け機械17や
環境物体18を操作するアクチュエータを動かしたり、
車載した各種のセンサの指向性や感度を調整するアクチ
ュエータを操作したりする。また、あるデータは、第三
層6に対して概念化されたデータ10、すなわち上記シ
ンボリック・データ symbolic sign の形で第三層6の
推論機構へと出力される。
【0074】第二層5から第一層2経由で第三層6に上
記シンボリック・データ symbolicsignを送り込むこと
ができるので、第二層5の自動制御だけでは解決できな
い周囲環境などに関する現状把握や、複雑な推論を必要
とする計画立案などの知能的な演算操作を強制的に行わ
せることができる。すなわち、第二層5の自動制御が不
具合になったり、不具合が発生する可能性がある場合に
は(不具合予測)、その不具合が解決されるように下位
の推論機能たる第三層6を働かせるものである。
【0075】このことは、下位の第三層6にしてみれ
ば、「いつ、何を、どのようにして推論すればよいか」
という命題について、その指示を第二層5が与えてくれ
ることになり、推論のための推論という堂々巡りによる
効率低下を防止することができる。ちなみに、第三層6
における「知覚機能」とは、前述したように、本発明者
の先願に係る特願平8−53138号の図7における感
受部と分別部と同様な機能のことであり、その内部状態
の状態遷移は上記出願の図8に示されている。上記出願
の図7における記号推論が、推論手段(第三層)6が行
う推論に相当する。
【0076】この場合、特に、図23に示すように、知
覚機能7が推論機能8に対して出力すべき記号Vの選択
肢とその判断基準nについては、推論機能8が知覚機能
7に対して予め付与しておくものであり、未知の出力が
発生して混乱をきたす危険性はない。また、センサの故
障や観察条件の不良によって外界の認識を誤る可能性に
ついては、下記のようにして誤りを低減することができ
る。
【0077】すなわち、知覚機能7のうちの分別部44
が、記号出力Vとして出力すべき記号を選択する過程で
内部状態を変化させる際に、直接知覚と反射の信号11
を第一層2に対して出力する(操作U)。その信号によ
ってセンサが動かされたり、その間に人工知能機械20
の位置や観察条件が変化する結果、少なくても二度にわ
たる評価・確認が行われる。そして、出力すべき記号出
力Vが、この二度にわたる評価・確認の結果で異なって
いる場合には、記号出力Vを行わないようにすること
で、外界の認識を誤ってしまうことが未然に防止され
る。
【0078】以上のように、第2発明によれば、第一層
2では、外部の情報通信ネットワーク1を流れる標準化
された形式のデータと、人工知能機械20の内部で利用
できるデータとを相互に変換する機能をもつ。これによ
り、旧式の人工知能機械20が情報通信ネットワーク1
上を流れる新形式の標準データを読み書きしようとする
場合には、第1層2のうち、データ変換の部分だけを更
新するだけで済む。
【0079】逆にまた、最新式の人工知能機械20が情
報通信ネットワーク1上を流れる旧形式の標準データを
読み書きしようとする場合にも、第一層2のデータ変換
の部分だけを変換するだけで済む。
【0080】また、旧式の人工知能機械と最新式の人工
知能機械がデータ交換する場合には、相互に共通の標準
データに変換してデータ交換を行えばよい。
【0081】このように、第2発明によれば、こうした
データ交換によって、システムの陳腐化を防止すること
が容易となり、機器の早期陳腐化という従来技術の問題
を解決することができる。
【0082】また、第一層2、第二層5、第三層6は、
主に高速の計算機や記憶装置が主体であるため短期間に
新しい機器が開発されるのに対し、マンマシン・インタ
フェースやアクチュエータやセンサなどの身体部9は、
動作対象14の機械や人間の構造が長期間にわたって変
化しにくいことに伴って、その入出力装置も大きな変化
が起きにくい。
【0083】そこで、第1発明(および第2発明)で
は、これらの入出力に関わる部分を機械駆動手段(身体
部)9として、第一層2、第二層5、第三層6から独立
させ、この身体部9を長期間にわたって共通部品ないし
は保全部品として蓄積したり設計に再利用することがで
きるようにしている。この結果、人工知能機械20の製
造コストを抑制することができるだけでなく、既存の部
品を改良しつつ互換性を保ちながら優れた性能を持つ部
品を開発することが容易になる。
【0084】また、従来の当業者によって行われてきた
伝統的な自動制御では、データ入出力と記憶装置と通信
装置と自動制御装置本体の構成がまちまちであって、メ
ーカ間の互換性がなく、もし自動制御装置だけを最新型
の高性能な装置に置き換えようとしても困難であった。
【0085】これに対し、第2発明によれば、身体部9
と呼ばれる入出力装置のデータは第一層2の広義のデー
タベースとの間で交換されるとともに、外部の通信ネッ
トワーク1とのデータ交換も第一層2の広義のデータベ
ースとの間で行われ、自動制御に必要な入力及び出力デ
ータ(内部データ、外部データ)は、全て第一層2に格
納され、この第一層2を中継して自動制御が行われるこ
とになる。
【0086】すなわち、第二層たる自動制御装置5だけ
を高性能なものに変更する場合には、第一層2の広義の
データベースにあるデータを利用するように設計すれば
よい。 また、第二層5で自動制御する項目を増やす場
合には、既設の自動制御項目と並列に第一層2の広義の
データベースを利用した自動制御を実施すればよいため
拡張性の高いシステムを構築することができる。つま
り、第二層5の自動制御と単一の制御項目を処理するの
ではなく、多数かつ多様な自動制御を同時並行的に実施
することが可能である。
【0087】このため、たとえば人工知能機械20が人
工知能タクシーである場合には、第二層5は、指定され
た予定経路にそって車両の運転操舵を行う自動制御と、
乗客の客室の空気調整を乗客の好みに合わせて行う自動
制御と、乗客への観光案内やきまりきった会話などを行
う自動制御と、予め設定された手順や条件を満たした場
合に非定常的に行う交通管制システムとのデータ交換に
おいて特定の検索条件や特定のデータ報告、あるいは高
速走行中にほかの車両との接触事故が起きないように相
互に通信して操舵量を自動調整するなど、所定の手順に
従って実施出来る範囲の様々な問題の解決を広義の自動
制御によって実施することができる。
【0088】また、第1発明(および第2発明)によれ
ば、次のような効果が得られる。
【0089】すなわち、第二層5の自動制御だけでは解
決できない問題が発生すると、第二層5の自動制御はそ
の問題を解決するための手順ないしは調査項目を記述し
たデータを第一層2のデータベースの特定の領域に書き
込む。この特定の領域に書き込まれたデータにもとづい
て、第三層6の推論機能が起動される。
【0090】例えば、第二層5で車両の運転操舵を行う
自動制御のプロセスの動作について説明すれば、人工知
能タクシーが乗客を乗せていざ出発しようとするときに
道路上の交通の流れに合流しなければならないが、この
ときの外界の現状を確実に把握するには、指定された出
発点・走行経路・目標点の各データだけではなく、「視
野外の方向から他の車両が走行してこないかどうか」を
確認しなければならない。具体的には、それまで前方を
監視していた視覚センサを斜め後ろに向けてやり、後方
から走行してくる車両の有無を確認する必要がある。こ
うした車両の有無の確認処理は、その時々の道路状況や
交通状況に応じて観察すべき方向や距離を選んでやる必
要があり、必ずしも一義的ではないので、すべての制御
手順を予めプログラミングしておくことはできない。
【0091】このように、「なぜ(行動の目的)」、
「いつ(時期)」、「どのように(手段)」、「何を
(目標)」すれば良いかがわかっているにもかかわらず
(出発時の道路への合流)、予め定められた手順や問題
解決方法を実行する自動制御だけでは解決できない問題
が発生した場合には(不具合が予測される場合には)、
その解決を第三層6の推論機能にゆだねることができ
る。
【0092】このようにして、起動された第三層6の推
論機能は、「なぜ(行動の目的)」、「いつ(時
期)」、「どのように(手段)」、「何を(目標)」が
明確になっているため(出発時の道路への合流)、指定
された時期に、指定された手段で、指定された目標とし
ての行為を行い、行動の目的を終えた時点(道路へ合流
した時点)で、起動された推論の実行を終了することが
できる。
【0093】ここに、推論機構がシステムの最上位に設
定されている従来の人工知能システムでは、システム全
体の機能を維持するために推論機能の推論動作を常時継
続しなければならなかった。これに対して、本発明で
は、システムの機能を常時維持するのは第二層5の自動
制御であり、第三層6の推論機能は、指定された推論を
実施し終えたら次に起動するまでの間は機能を停止させ
ておくことができる。
【0094】従って、推論機能が堂々巡りをしてかえっ
て外界の変化やシステムの機能維持に対応できなかった
従来技術の欠点を除去することができる。
【0095】さて、ある瞬間に推論機構で実行できる推
論はただ1つだけである。なぜならば、推論の実行中に
はアクチュエータやセンサを調整して意識的に視野を変
える必要があるが、もし複数の推論を同時に行うとアク
チュエータやセンサの調整が干渉してしまい、どちらの
推論も中途半端になってしまう危険性があるからであ
る。この推論動作は、人間の心で言えば顕在意識による
思考に相当するので、一つの瞬間に2つ以上の意識的な
思考ができないのと同様である。ただし、人間の場合は
次々と雑念がわいて古い思考が中断し、優先度の高い思
考を先に処理することはできる。
【0096】これと同様に、第三層6の推論機構も、優
先度あるいは緊急度の高い推論動作が起動されると、そ
れまでの優先度や緊急度の低い推論動作の継続が一時的
に中断して後回しになる場合がある。また、優先度の高
い推論であってもその遂行中に優先度が低くなった場合
には、中止されて後回しにされていた別の推論動作に実
行権が渡される場合がある。
【0097】このように、本発明における推論動作で
は、従来技術における推論機構のような堂々巡りする仕
組みを持たせずに推論の目的を終了すると、その推論プ
ロセスが終了するように作っているので、従来技術にお
けるマルチタスクの処理やタイムシェアリングのように
複数の複雑な推論動作を優先順位にしたがって、あるい
は時分割処理を行うことによって、短時間に多数の項目
の推論を効率的に行うことができる。
【0098】第1発明の別の発明では、第三層6に推論
機能8と知覚機能7をもたせており、ある推論プロセス
が起動されると、その推論プロセスに応じて知覚機能7
に対して記号出力Vの選択肢n(および基準)が、指定
されて知覚プロセスが起動される。この場合、一つの推
論プロセスは、複数の知覚プロセスを起動することがで
き、この推論プロセスが終了するとそれによって起動さ
れた知覚プロセスも同時に終了する。また、その推論プ
ロセスが他の優先順位の高い推論プロセスが起動された
ことによって一時的に停止された場合には、すでに起動
されていた知覚プロセスも一時的に停止される場合と継
続的に実施される場合がある。
【0099】例えば、「前方障害物を常に観察してい
る」推論プロセスAが動作していて、その推論プロセス
Aが「前方障害物を異なる位置について観察する」知覚
プロセスB(手前を監視)、C(中間距離の右を監
視)、D(中間距離の左を監視)、E(遠方を監視)を
起動したとする。そこへ、「燃料の残量を緊急に推論す
る」推論プロセスFが起動された場合には、それまでの
推論プロセスAは一時的に棚上げされ、優先度の高い推
論プロセスFが推論機構の実行権を握る。その時点で知
覚プロセスC(中間距離の右を監視)、D(中間距離の
左を監視)、E(遠方を監視)についても一時的に棚上
げすることができる。ただし、車両が進行しつづけてい
る場合には、前方の障害物に衝突するのは危険であるか
ら、知覚プロセスB(手前を監視)についてだけはその
まま稼働させておくようにする。
【0100】このようにして知覚プロセスB(手前を監
視)から「障害物発見」との記号出力Vが出された場合
には、緊急事態が発生したのであるから、それまで一時
棚上げされていた推論プロセスAの優先順位を上げて動
作を再開するとともに、それまで実行されていた推論プ
ロセスFを棚上げすることができる。
【0101】このように、第1発明の別の発明によれ
ば、推論機構についても従来のマルチタスクやリアルタ
イム制御のような効率の高いシステム構成を実現するこ
とができる。
【0102】また、第三層6の推論機能8で稼働する推
論プロセスが、知覚機能7で稼働する知覚プロセスを起
動するには、知覚プロセスの結果、出力すべき記号出力
Vの選択肢(と判断基準)nを、推論機能8から知覚機
能7に与えることが必要となる。したがって、知覚プロ
セスの結果、出力される記号出力Vは、それを受け取る
推論機能8にとっては、予め計画された選択肢のうちの
1つである。つまり、推論機能8は知覚機能7の知覚プ
ロセスの結果として意味不明の記号出力Vを受け取るこ
とがないので、外界の様子が変わっても推論動作は予め
計画した範囲の中で実行される。ただし、システム設計
者にとって全く未知の異常事態や予想外の故障の組合せ
が発生した場合には、推論機能8の推論結果として緊急
停止すべきことや情報通信ネットワークを介して発生し
つつある異常事態の映像などを交通管制システムに非定
常ながらも緊急情報として報告すべきことが結論付けら
れる。この結論は第一層2の広義のデータベースに格納
され、それを制御入力としていた第二層5の自動制御に
おける運転操舵の制御プロセスは、車両の非常停止の制
御を開始するとともに、同じ自動制御における非定常デ
ータ交換の制御プロセスでは異常事態の緊急映像を通信
ネットワークを通じて交通管制システムに報告すること
ができる。
【0103】以上のように、本発明の第1発明によれ
ば、推論を行う機能を広義の自動制御の下位に位置づけ
ているので、推論動作が堂々巡りしてシステム性能が低
下する欠点を取り除くことが可能となり、優先順位や緊
急度に応じて複数の推論を効率的に処理することが可能
となる。また、装置構成をハードウェア的にもソフトウ
ェア的にも明確なモジュール構成としたため、既存の人
工知能機械の再生産を行う際に、ハードウェアあるいは
ソフトウェアを最新型のものに入れ替えると同時に、そ
れまでに高い信頼性の確認された量産品のハードウェア
やソフトウェアモジュールを再利用することが容易であ
る。
【0104】さらに、推論機能から知覚機能に対して記
号出力の選択肢を予め付与するようにしているので、知
覚機能から推論機能に対して意味不明の記号出力が出さ
れることが防止され、推論動作を記述するプログラムや
機構を設計することが容易になる。
【0105】さらに、本発明の第2発明によれば、内部
データと外部データを共通の標準形式にデータに変換し
ているので、技術進歩に伴う装置設計の拡張性を高める
ことができ、製造済みの人工知能機械の急速な陳腐化を
防止することができる。
【0106】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明に係
る人工知能機械およびそのシステムの実施の形態につい
て説明する。
【0107】図2(a)は、本実施形態で想定している
人工知能機械としての知能自動車20が走行している様
子を示す図であり、道路60の側面または床または天井
に沿って設置されたアンテナもしくは漏洩同軸ケーブル
との間で無線通信を行うことにより情報通信ネットワー
ク1と接続された状態で、知能自動車20に搭載された
荷物や乗客が快適な状態で輸送されるように各種の管理
を行うとともに、搭載された各種のセンサを用いて指定
された出発点から所定の経路で希望する目標地点まで自
動的かつ安全に走行するように周囲の車両とのコミュニ
ケーションや外界の環境の観察を行いつつ障害の発生を
防止するとともに、所定の停止地点では荷物や乗客の乗
り降りを安全に実施させるようにしたものである。
【0108】ここで、こうした知能自動車システム全体
の概要について説明する。
【0109】本実施形態の知能自動車20は、交通管制
システム72(図15参照)と無線による情報通信ネッ
トワーク1で結ばれ、知能自動車専用に作られた道路
(専用の走行車線)である専用道路60を他の知能自動
車と協調しつつ自動走行制御される新型の交通システム
を構成する車両のことである。
【0110】本実施形態の知能自動車20そのものは、
運転モードを新交通システムの「自動運転」から「一般
道路用の有人走行」に切り換えることにより、従来どお
りの有人運転による普通の自動車として走行することも
可能である。このため、知能自動車20の左右折、ブレ
ーキ、後退などの表示を行う信号灯や前照灯およびクラ
クションなどの機能は、全て有人自動車と同等の機能性
能を持つものとする。これら車両間の右左折、ブレー
キ、後退、合流、分岐、警告などの意思表示手段として
の機能は、自動運転の場合にも使用される。
【0111】ただし、知能自動車20の専用道路60上
で「一般道路用の有人走行」を行うとすると、知能自動
車相互間の交通安全のための保護機能が働かなくなり、
交通管制システム72は事故防止のため有人運転車両の
現在位置の周辺の交通を規制することがある。これによ
って専用道路60の交通に一時的な混乱や能率低下が生
じるため、ほかの車両の利用者に経済的損失を与えるこ
とになる。したがって、専用道路60上で有人運転する
ことは緊急自動車としての権限を持つ場合を除き禁止さ
れる。仮に、緊急自動車の権限を持たない者が、故意な
いし不注意により有人の暴走運転を行って第三者に経済
的損失や精神的苦痛を与えた場合、すべての運行状態が
自動的に記録されるため、莫大な損害賠償を確実に請求
されることになる。
【0112】逆に、有人運転のために解放されている一
般道路上で、知能自動車20に自動運転させようとして
も、知能自動車は歩行者や自動車による不意の道路横断
に警戒して極めて低速でしか走れないし、道路が老朽化
していたり交通管制システム72がない場合には自己の
位置や車線の構造を誤解して対向車線に飛び出す危険も
ある。老人や子どもなどの歩行者や自転車やバイクなど
が気ままに走り回る一般道路の環境は、知能自動車20
には複雑過ぎて事故を起こしがちである。事故の責任
は、自動運転のモードで走行させた利用者自身が問われ
ることになる。したがって、一般道路では、普通の有人
運転で走行するほうが自動車の利用者自身にとっても効
率的で安全である。
【0113】さて、一般道路には、主要な交差点ごとに
交通信号機が配置されており、地域ごとに交通の流れを
管理しているが、交通信号機は特定の交差点における交
通の流れを司令する情報を有人運転の車両や歩行者に同
時に提供するためのに利用されるものであり、知能自動
車20の専用道路60では、歩行者も自転車も立ち入り
禁止であり、また有人運転の緊急自動車が走行したとし
てもその周囲にほかの車両が進入できないように規制さ
れるため、特定の交差点ごとに交通の流れを司令する交
通信号機は不要となる。このような理由から、知能自動
車20の専用道路60では、交差点には非常用や保安用
を除けば普通の意味での交通信号機は設置されていな
い。その代わりに、各知能自動車20ごとに交通管制シ
ステム72から個々の車両に向けてオリジナルできめこ
まかい交通管制司令が与えられる。
【0114】また、各知能自動車20は、交通管制シス
テム72のいわばセンサ的役割として交通渋滞の状況の
報告を行う義務がある。また、車両の周囲の局所的な状
況に基づいて経路計画を修正する場合にも、それを交通
管制システム72に報告する義務がある。このようなき
めこまかい双方向のデータ交換によって、知能自動車2
0の専用道路60上での交通安全と効率的な運用が可能
になる。
【0115】ところで、専用道路60上には交通信号が
ないため、タクシーあるいはバスとしての客車機能を持
つ知能自動車20の乗客は、なぜ車両が道路上で減速す
るのか、停止するのか、あるいはいつ突然動き出すの
か、わからないために不安を感じることがある。このた
め、各車両20には、個別の交通管制情報を乗客に知ら
せるためのマンマシン・インターフェースが装備され
(図1の身体部9参照)、画像や音声によって交通状況
を知らせる機能を持っている。
【0116】また、交通情況の音声アナウンスが頻繁す
ぎてやかましいと感じる乗客のために、乗客からの要求
が有った場合にのみ回答することもできる。
【0117】さらに、この機能を拡張して、交通情報を
答えるだけでなく、観光案内や簡単な世間話ができる程
度までマンマシン・インターフェースを高度化したり、
乗客の聞き取りにくい発音や難しい内容の質問を情報通
信ネットワーク1を介してサービスセンターに問い合わ
せたり、乗客が、車両に乗っていない第三者に対してテ
レビ電話をかける場合に情報通信ネットワーク1をデジ
タル通信線として提供することもできる。
【0118】タクシーとしての知能自動車20は、配車
センターから迎車司令を受けると、交通管制システム7
2より、現在位置から目標までの交通管制司令情報とし
て、各通過地点と各通過地点の走行速度、通過時刻の指
示をもらう。乗客を乗せたあとは、乗客より行き先きの
指示を受け、これを交通管制システム72に送り、現在
位置から目標までの交通管制司令情報をもらう。
【0119】乗合いバスとしての知能自動車20は、所
定の時刻表通りの運行ができるように、交通管制システ
ム72より、現在位置から目標までの交通管制司令情報
として各通過地点と各通過地点の走行速度、通過時刻の
指示をもらう。なお、道路が混雑していたり、乗客の乗
り降りに時間がかかりすぎてしまい、時刻表の予定時刻
よりも遅れそうな場合には、交通管制システム72に対
し優先通行を請求し、ほかの一般車両の通行の迂回や制
限を要望することができる。交通管制システム72で
は、特別かつ重要な事情があると認めた場合には、その
公共交通機関に優先通行の交通管制司令情報を与えると
共に、その区域で経路が干渉する可能性のある他の車両
にたいして通行の迂回や制限を含む新しい交通管制司令
情報を司令する。つまり、車両の側にしてみれば、交通
管制司令情報はいつでも変更されうるものと認識する必
要がある。
【0120】貨物トラックとしての知能自動車20は、
貨物の条件に応じて交通管制される。危険物や重量物を
運搬するものは速度や走行経路に厳しい制約が与えられ
るが、その一方で、その車両の経路には、なるべく他の
車両が干渉しないように他の車両の交通管制司令情報が
調整される。食料品や雑貨あるいは空荷の回送など緊急
性の薄い貨物トラックは、専用道路60の通行料や税金
などが低額なかわりにもっとも低い優先権にもとずく交
通管制司令情報を受けとることになる。ただし、生鮮食
料品や学校給食などのように鮮度が重要な荷物の場合に
は、有償で優先権を一時的に上げる要求を出すこともで
きる。貨物トラックの運行状況や荷物の温度や振動など
の管理データは、情報通信ネットワーク1を利用して商
業用のデータ通信として各企業の物流センターや事務所
に送られる。
【0121】救急車や消防車等、緊急自動車として出動
して自動運転される知能自動車20は、最高の優先権を
与えられる。すなわち、患者運搬等のその車両の運行条
件で許容される最高の速度と旋回角速度を出し切って最
短時間で目的地に到達するように、交通管制司令情報と
して各通過地点と各通過地点の走行速度、通過時刻の指
示をもらう。そして、その緊急自動車が通過する区域
で、経路が干渉する可能性のある他の車両に対して通行
の一時停止を含む新しい交通管制司令情報が司令され
る。緊急自動車が出動しているあいだ、情報通信ネット
ワーク1の利用に関する優先度も変更される。すなわ
ち、緊急自動車と警察、消防署、病院などとのデータ通
信やテレビ電話の優先度が高く設定されるので、その優
先度が高く設定されている区域での通信容量が不足した
場合には、バスの観光案内や個人用や商業用の通信が制
約される場合もあるこうした交通システムを実現するた
めのネットワークの構成を図15に例示する。
【0122】同図15に示すように、交通管制システム
と情報通信ネットワークは複数の階層構造となってい
る。
【0123】各車両20a、20b、20cは、最も小
さな単位の交通管制区域内(所轄区間)を走行する車両
であり、これら車両は、当該交通管制区域を所轄する交
通管制システム72と、情報通信ネットワーク1によっ
て通信自在に結ばれている。この情報通信ネットワーク
1は、交通管制システム72に接続された有線の情報通
信ネットワーク71と、この有線の情報通信ネットワー
ク71と各車両20a〜20cとの間で無線で通信が行
われる情報通信ネットワーク70とから成っている。
【0124】上記交通管制区域を所轄する交通管制シス
テム72は、上位の情報通信ネットワーク73を介して
さらに上位の交通管制システム74に繋がれている。こ
こには、企業用のシステム75も接続されている。この
接続方法としては、インターネットなど様々な様態が考
えられる。
【0125】上位の交通管制システム74は、さらに上
位の情報通信ネットワーク76を介してさらに上位の交
通管制システム77に接続され、同様に何階層かを経
て、情報通信ネットワーク79を介して、地方を管理す
る交通管制システム80に接続され(また企業用のシス
テム81に接続され)、さらに情報通信ネットワーク8
2を介して、広域を管理する交通管制システム83に接
続される(また企業用のシステム84に接続される)。
【0126】ここでは、説明を容易にするために管理す
るレベルごとに、別個の情報通信ネットワークがあるも
のとして説明したが、実際の接続においては必ずしも階
層的に配線する必要はない。情報通信ネットワーク1と
交通管制システム72だけでネットワークを構成しても
よい。
【0127】なお、各企業用のシステム75、78、8
1、84はそれぞれ論理的に関連する交通管制システム
と通信することができる。
【0128】人工知能機械である知能自動車20は、こ
うした外部の情報通信ネットワーク1(さらに、その上
位の情報通信ネットワーク)との間でデータ交換しなが
ら動作対象に働きかける機能を持っている。
【0129】図1は、本実施形態の人工知能機械(知能
自動車)20の構造を概念的に示している。
【0130】その構造は、大きくは、情報通信ネットワ
ーク1に対する通信機能と広義のデータベース(記憶装
置)の機能を有している第一層2と、前述したように広
義の意味における自動制御を行う第二層5と、対象認識
の機能を有し、推論を行う第三層6と、マンマシン・イ
ンタフェースとアクチュエータ操作とセンサ入力の機能
を有している身体部9とから構成されている。
【0131】ここで、第一層2、第二層5、第三層6
は、計算機やハードウェアで実現される機能であり、便
宜上3つの機能に分けて構築されることとして説明して
いるが、実際の人工知能機械を製造する場合には、これ
らの機能を1つの計算機やハードウェアにまとめてもよ
く、逆に複数のハードウェアに分散させてもよい。
【0132】人工知能機械(知能自動車)20は、それ
を取り巻く環境に存在する自然または電気制御されてい
ない人工の物体14のほか、自力で動き回るように制御
された移動機械16や、動き回る機能のない制御された
据え付け機械17や、自由に思考する能力を持つ人間1
5などを動作対象14とするものである。
【0133】以下、第一層2、第二層5、第三層6、身
体部9についてそれぞれ説明する。
【0134】第一層2を設ける目的は、人工知能機械た
る知能自動車20が、所定の任務を遂行するに必要な全
てのデータを一元管理することにある。
【0135】まず、自動制御を行う場合の第一層2の役
割について説明する。
【0136】自動制御の目標値は第一層2に格納されて
おかれる。その格納されるデータは、外部のネットワー
ク1からデータ交換で取得したものであったり、第二層
5の自動制御で演算した結果であったり、第三層6で行
われた推論結果であったり、第三層6の反射信号であっ
たり、身体部9からのデータ入力であったりと、その制
御内容に応じて多様である。
【0137】図4に示すように、第二層5で、直接的な
制御が行われる場合には、身体部9で検出されたセンサ
のデータは、リアルタイムでこの第一層2に格納される
ので、第二層5は、この第一層2に格納されているリア
ルタイムのセンサデータを入力として用いて自動制御を
行うことができる。
【0138】この場合、第二層5の自動制御出力は、再
び第一層2にリアルタイムで格納され、その制御出力は
リアルタイムで身体部9に読み込まれる。つまり、典型
的な自動制御の手順は、身体部9のセンサ→第一層2の
記憶装置→第二層5の自動制御装置→第一層2の記憶装
置→身体部9のアクチュエータという手順で、データが
流れて行く。
【0139】一方、図5は、第二層5で間接的な制御が
行われる場合を示している。例えば、モータ電流の制御
では数ミリ秒以下の単位で自動制御する必要があるが、
このような極めて高速性を要求する制御動作では、身体
部9自身の内部にハードウェアまたはソフトウェアを用
いた組込型の制御系19(一般にマイナーループとか反
射神経系と呼ばれるもの)を持たせておく。
【0140】この場合、身体部9からマイナーループの
組込み制御系19の動作状況が第一層2に格納され、第
二層5の自動制御装置は、これを読みとることで身体部
9に組込まれた組込み制御系19の動作を制御するため
の制御指令を出力して第一層2に格納する。そして、そ
の第一層2に格納された制御出力を身体部9が読み取る
ことで、身体部に組み込まれた組込み制御系19が動か
される。
【0141】さて、人工知能機械たる知能自動車20が
外部の情報通信ネットワーク1とデータを交換する場
合、第一層2を経由して行われる。
【0142】外部の情報通信ネットワーク1とデータ交
換されるデータ形式は、その情報通信ネットワーク1の
規約または事実上の標準(defact standard )とされて
いるものが使用され、これによってその情報通信ネット
ワーク1に接続された多数の機器の間でコミュニケーシ
ョンが可能になる。
【0143】一方、個々の知能自動車20では、製造さ
れた時期や製造メーカやその製品の形式や個々のオプシ
ョンの有無などによって内部のデータ構造は、まちまち
である。このため第一層2では、外部とのデータ交換に
使用される標準形式データと人工知能機械20の機構内
部ならびにそれを取り巻く外部環境に関するデータとを
変換する機能を持っている。
【0144】これによって、第二層5で自動制御を行う
場合には、「目標」となる情報を標準のデータ形式で情
報通信ネットワーク1から取り込み、このデータを個々
の人工知能機械20の内部で取り扱うに都合の良いデー
タ形式に変換したものを自動制御の「目標」として使用
することができる。
【0145】例えば、個々の知能自動車としての人工知
能機械20が走行すべき出発地点から目標地点までの走
行経路を示すひとまとまりのデータが、外部の交通管制
システム72から情報通信ネットワーク1を経由して標
準のデータ形式で第一層2に入力される。すると、第一
層2では、この標準形式のデータが、内部表現形式のデ
ータに変換される。第二層5では、この内部表現形式に
変換されたデータを読み出し、走行経路の「目標」とし
て取り扱うことにより自動制御を行うことができる。
【0146】また、知能自動車20に乗客が載ってい
て、その乗客に観光案内やきまりきった挨拶をする場合
には、音声や画像のデータを第一層2に蓄積しておき、
マンマシン・インターフェースとしての身体部9からの
情報(乗客の指示)に基づいて第二層5の自動制御装置
が観光案内の映像や説明を第一層2の蓄積データから適
宜選択することで、マンマシン・インターフェースとし
ての身体部9を用いて会話形式で返答すればよい。ここ
で、最新の交通状況や交通管制システム72への問い合
わせや地上側とのテレビ視聴を乗客が希望する場合に
は、第一層2が外部のデータを中継しデータ形式を内部
の形式に変換して、乗客にデータを提供すればよい。
【0147】また、知能自動車20が道路上にある落下
物や交通事故を発見した場合には、現場の映像の報告の
必要性の有無を交通管制システム72に問い合わせると
ともに、その結果、必要があれば現場を撮影して、これ
を標準のデータ形式に変換し、情報通信ネットワーク1
を経由して交通管制システム72に報告する。
【0148】この場合、第二層5の自動制御装置では、
異常事態があれば交通管制システム72に報告すること
を「目標」としているのに対して、事故や異常に遭遇し
たことが検出されると、「交通管制システム72に報告
していない異常事態が残っている」という「現状」との
差違が生ずるので、この「目標」と「現状」の差違を少
なくする行動がとられるように、制御が活性化される。
具体的には、まず、第二層5の自動制御装置より「交通
管制システム72へ報告する必要の有無」が問い合わせ
られ、この結果、報告不要であるならば、「報告すべき
異常事態はない」と第二層5は「現状」を解釈するの
で、「目標」と「現状」の差違はなくなる。また、報告
必要であるならば、その報告を実施することにより、
「目標」と「現状」の差違は解消される。
【0149】推論動作を行う第三層6は、とりたてて推
論すべき事項が無い場合には、何も推論を行わない。つ
まり、第二層5による自動制御がうまく機能している場
合には、あえて第三層6の推論機能を起動する必要はな
いのである。推論機能を行う第三層6が起動されるの
は、第二層5の自動制御装置から要請があった場合に限
られる。
【0150】第二層5の自動制御装置が、自動制御だけ
では問題解決が図れないとの結論に達した場合に、具体
的に「いつ何をどのように推論すればよいか」が明確に
読みとれるメッセージの情報を第三層6に送信する(図
1の破線参照)。ただし、第二層5から第三層6に対し
て直接的に情報を送った場合には、他の構成要素から状
況が掴みにくくなり、システム設計に特例が増えてシス
テムが複雑になり、拡張性を維持するための障害になり
やすい。そこで、第二層5から第三層6を起動するメッ
セージを直接送るのではなく、第二層5の出力を、第一
層2のデータベースの特定の場所に書き込むようにす
る。
【0151】その特定の場所とは、第三層6が「推論を
起動する必要があるかどうかを確認するために定期的
に、もしくは適宜覗きに来る場所」のことである。この
考え方を実現する方法として、「割り込みベクトル」、
「黒板」、「メールボックス」、「待ち行列」など様々
な手法を使用することができる。その「起動の要請を書
き込む場所」の中に書き込む内容として、「いつ、どの
ようにして、何を推論せよ」と具体的に記述することも
できるし、「〜を参照せよ」と参照すべき情報のありか
を示すポインタを渡すこともできる。いずれにせよ、第
三層6の推論機構が起動される段階では、「いつ、どの
ようにして、何を」推論すればよいかが明確に示される
ので、推論動作が堂々巡りになる危険性がない。
【0152】図6は、本実施形態で想定している知能自
動車20の透視斜視図であり、タクシーないしは小規模
な乗り合いバスとして利用される車両を例示している。
【0153】同図6に示すように、車両20の側面に
は、車体側の通信アンテナ22が配設され、このアンテ
ナ22を介して地上側の通信アンテナ21との間で、無
線通信が行われる。これらアンテナ21、22による通
信システムは、公共の交通信号用通信線や電話やケーブ
ルテレビのように、多様途で多目的の情報を通信する機
能を持つ。本実施形態では、漏洩同軸ケーブルを走行路
に沿って連続的に設置する態様を想定しているが、地上
側の通信アンテナ21は、携帯電話の基地のように間欠
的に設置することもできる。
【0154】車両20の上部には、上記アンテナ21、
22間の情報通信システムの通信系に不具合が生じた場
合に非常通信を行うための予備アンテナ23が配設され
ており、例えばタクシー無線のように各車両を運営する
企業が配車や管理などの特定の業務に使用するための業
務用通信アンテナ24が配設されている。
【0155】これらの通信装置によって、図1の第一層
2では、外部のネットワーク1との間でデータ交換が行
われる。
【0156】車両20の前部座席には、身体部9のマン
マシン・インターフェースとして、マイク、スピーカ、
乗客の表情を撮影するテレビ電話用のカメラが内蔵され
ているモニタースクリーン25、サービスパネル27が
配設されている。また、後部座席にも、同様なモニター
スクリーン26、サービスパネル28が配設されてい
る。また、車内を撮影する複数の防犯カメラ29、荷物
室41の内部の状況を監視する荷物室監視カメラ30が
配設されている。
【0157】車両20の前部の機械室31の上部には、
身体部9のセンサとして、車両現在位置を検出するため
のGPSアンテナ35(衛星による航法装置のアンテ
ナ)が配設されているとともに、前方を監視する中央視
覚センサ32が配設されている。また、車両20の前部
左右には、車両20の右側面を監視する右カメラ33
が、車両20の左側面を監視する左カメラ34が配設さ
れている。また、車両20の後部には、車体後方を監視
する後方視覚センサ36が配設されている。
【0158】また、推測航法により車両の現在位置を推
定するための方向検出器85、走行距離検出器86(図
17参照)が車両20の適宜箇所に配設されているとと
もに、推測航法の結果生じた車両20の現在位置の累積
誤差を、間欠的に補正するために、車両20の予定走行
路に沿って間欠的に配設された位置補正標識を検出する
標識検出器39が車両20の前部下方に配設されてい
る。
【0159】また、車両20には、車体の周囲の音を採
取する音響センサ40(車体後部のもの以外は図示せ
ず)が配設されているとともに、車両周囲のガスを検出
するガスセンサ、車両周囲の温度を検出する温度計、雨
が降ったことを検出する降雨センサ、車両周囲の電界強
度を検出することにより落雷が発生したことを検出する
落雷センサが(いずれも図示せず)、車両20の適宜箇
所に配設されている。これらセンサは、周囲のガスの臭
い、温度、降雨、落雷の状況を検出することにより、万
が一の事故や自然災害を避けるために設けられている。
【0160】車両20の前部の機械室31には、身体部
9のアクチュエータとして、車両駆動装置、ブレーキ、
自動ドアロックなどの各種の保安装置(いずれも図示せ
ず)が格納されているとともに、上記右カメラ33、左
カメラ34の駆動装置、上記中央視覚センサ32の駆動
装置が格納されている。また、前照灯37、ブレーキ
灯、右左折を表示する信号灯38を駆動するための駆動
装置も機械室31に格納されている。
【0161】以上のようにして、図1の身体部9のマン
マシン・インタフェース、アクチュエータ、センサが構
成されている。
【0162】つぎに、車両20が走行する予定走行経路
について説明する。
【0163】図7は、交通管制システム72の管制地域
50を示す図である。
【0164】すなわち、実際の地図の東の方向がX軸と
され、北の方向がY軸とされる。ただし、管制区域50
の集合が、全国規模になると地図は平面座標系ではな
く、地球の表面上の位置を表わすために経度と緯度から
なる座標系で表現する必要がある。
【0165】本実施形態では、説明の便宜のために、実
際の地図を2次元平面と想定して、多数の正六角形に分
割されたものとして各管制区域50を表現することにす
る。すなわち、同図17に示すように、ある1つの正六
角形の重心が2次元平面X−Yの原点(0、0)に重な
るように設けられ、その左右に隣接する六角形の重心が
X軸上に並ぶように、六角形群を配置していく。そし
て、X軸方向に沿った六角形群をY軸方向に層をなして
積み上げるようにしていくと、X軸に沿って層をなす六
角形と、その上下においてX軸方向に沿って層をなす六
角形とは、X軸方向に対して六角形の横方向の半分ずつ
左右にずれながら積み上がってゆく。
【0166】このため、2次元平面X−Yに並べられた
所定の正六角形を指定するには、X軸方向にm番目、Y
軸方向にn番目という表記が可能となる。たとえば、原
点の斜め右上にある正六角形は、{0.5 、1}と表記さ
れる。この表記法によれば、X−Y座標との間に線形な
関係が成立し、{m、n}と表記される正六角形と、そ
の中心位置をX−Y座標で表現した(Xmn、Ymn)との
間には、Xmn=am、Ymn=bn(ただし、a、bは定
数)という関係が成立する。
【0167】そこで、各正六角形の中心を原点とする局
所的な座標系x−yのx軸とy軸を、大局座標系X−Y
のX軸とY軸に対して平行に設けるとすると、両座標系
の関係は以下のように単純な平行移動の関係で表現する
ことができる。
【0168】X=Xmn+x、Y=Ymn+y このように、全体の大局座標系X−Yの座標位置(X、
Y)で表現したある特定の地点の座標は、その点(X、
Y)を含む正六角形の局所座標系x−yの座標位置
(x、y)で表現することができる。このことは、全国
を表す地図上で指定した特定の地点が、その地点を含む
正六角形の管理区域の中における局所的な座標系x−y
で表現できることを示している。
【0169】図8は、全国レベルの管理区域が複数の地
方レベルに分割されて管理される構造を表している。分
割された地方レベルは、さらに地域レベルに分割され、
それらがさらに所轄のレベルに分割される。この所轄の
レベルに分割されたものが、図7の正六角形の管制区域
50に相当する。
【0170】多くの場合、地方レベルは、交通管制を管
轄する中央省庁の支所などのほか都道府県や州など法律
や条例などの立法機能を持つ大きな地方公共団体の単位
であって、必要に応じて何層かの階層構造を持つことが
できる。
【0171】地域レベルは、特別区や市町村もしくはそ
れらを含む経済活動の地域である。以上は、政治、経
済、行政に基づく人間の社会的な活動の領域を表すもの
である。
【0172】これに対して所轄のレベルとは、実際の土
地を2次元平面としたときに、これを図7に示すよう
に、複数の正六角形に分割した技術上の区分であり、上
述したように各所轄を表わす正六角形の中における局所
座標(x、y)は、すべて大局座標(X、Y)に1対1
対応している。このように正六角形で区切られた平面ご
とに、個々の交通管制システム72が設けられる。従っ
て、中央省庁の支所などのほか都道府県や州や特別区や
市町村の境では、正六角形による分割した管制区域50
と実際の行政上の区分とが合致しないことがある。この
正六角形に分割する目安は、人口の密集の程度や交通渋
滞の発生の状態によって異なるが、概ね直径100km〜
0.1km 程度である。
【0173】図9は、1つの交通管制システム72が統
括する交通管制区域50の周囲に6つの観察区域51〜
56が配置されていることを示す図である。
【0174】すなわち、ある区域50を統括する交通管
制システム72は、その区域中を走行する車両20に対
して交通管制の指示を与える任務を持っているが、同時
に隣接する交通管制システム72´が管理する区域の中
にいる車両20´が自己の管制空間に入って来る前に先
だって管制計画を立案しなければならない必要があり、
また、その車両20´が自己の管理区域に入ったとたん
に交通管制の計画を急変しないように、調整をとる必要
があるので、周囲の観察区域51〜56についても監視
する任務を持っている。
【0175】各正六角形で表された交通管制区域50に
は、その区域を管理する交通管制システム72が設けら
れており、この交通管制システム72は周囲の区域を管
理する交通管制システムのみならず上位あるいは下位の
交通管制システムに接続され、交通管制のためのネット
ワークを構成している。ただし、フェリーや海底トンネ
ルや橋などの通行手段のない海や河では、自動車が交通
渋滞を起こすことはないので、あえて交通管制システム
を設ける必要はない。しかし、将来、埋め立てなどによ
って自動車の通行が生じると予測される場合には、その
地域に正六角形で表される交通管制区域を追加し、交通
管制システムを設けるようにすればよい。
【0176】また、一つの正六角形で表された交通管制
区域50が将来、交通量増大などの影響を受け、この区
域50を統括する交通管制システム72の負荷が高くな
り過ぎた場合には、この交通管制区域50を更に分割し
てもよい。分割方法としては、将来ふたたび細分化の階
層が増えた場合に座標計算を行い易く、交通管制区分の
分割がし易くなるような方法を採用することが望まし
い。
【0177】図10は、予定走行路Qをカバーする交通
管制システム(例えば広域レベルの交通管制システム8
3)から車両20に送られる概略の走行計画を示すデー
タを概念的に示す図である。
【0178】走行計画を示すデータは、下記のものを含
んでおり、これらは車両20が出発地点S(Xs、Ys)
から目標地点T(XT、YT)に向けて予定走行路Qに沿
って走行し始める際に、予め付与されるものであり、車
両20側がこの付与された走行計画に同意すれば、正式
な走行計画として走行が開始される。
【0179】1) 出発点Sと目標点Tの大局的な座標位
置(Xs、Ys)、(XT、YT) 2) 通過すべき正六角形の各交通管制区域50の名称
({m,n}という表記で表される) 3) 各交通管制区域50の管理状況のシリアル番号 4) 出発点Sを含む最初に通過する正六角形の交通管理
区域50内での多数の通過地点の座標 5) 上記各点を通過する際の目標速度と車体目標方向 6) 上記各点を通過する予定時刻 車両20側が上記概略の走行計画を受け取ると、その走
行計画を車両20に搭載した地図データと比較したり、
交通管制計画に不都合がないかどうかをその車両20を
管理する会社に問い合わせたりする処理が行われる。例
えば、受け取った走行計画にのっている通過すべき「あ
る正六角形の交通管制区域」の管理状況のシリアル番号
が、車載した地図データに記載されたものと異なってい
た場合があったり、交差点の配置や通過すべき位置補正
標識や、道路の登り下りの路線の大局座標位置が当日の
補修工事や事故処理で変更されている可能性がある。変
更等を知らずに誤った情報に基づいて、予定走行路Qを
示す点列に沿って走行すると危険な場合があるので、デ
ータに異常のある正六角形の交通管制区域50に車両2
0が到達する前に正しいデータをその交通管制区域50
を統括する交通管制システム72から受け取っておく必
要がある。
【0180】また、指定された経路が、会社のデータに
よると、天候や経済活動などのために所定の時間帯は通
らない方がよいことがわかっていたり、目標点で荷物や
乗客を降ろした後に次に向かうべき地点の映像情報を採
取しておく必要から、特定の地点を通過したい場合があ
る。この場合には、通過したくない場所や通りたい地点
を指定した上で、車両20から交通管制システムに対し
て再検討の申請を送ることができる。ただし、再検討の
申請を行う時点は、既に車両20は目標点に向けて走行
を開始する前であり、交通管制システムとしても緊急を
要する処理として扱わないので、回答がくるまでに時間
がかかることもあり得る。
【0181】そこで、通過したくない場所や通過したい
地点等、希望する経路がある場合には、最初の概略の走
行計画を受け取る前に、希望する経路を予め交通管制シ
ステムに申請しておけばよい。これにより、交通管制シ
ステムが概略の走行計画を送った後、車両側の希望に応
じて修正した走行計画を送り直すという二度手間を避け
ることができる。
【0182】図11は、正六角形の交通管制区域50内
の地図を示している。
【0183】同図11に示すように、地図に示される道
路の交差点としては、十字路、三叉路、ロータリー、立
体交差、優先道路への合流点、私有地への引き込み道
路、手動運転と自動運転の切換検査場などがあり、これ
ら交差点の座標位置は地図に記載されている。そして、
交差点を結ぶ道路の各地点の座標位置は、点列として地
図に記載されている。また、道路や交差点などに、位置
補正標識が設置されている場合には、その標識の座標位
置、方向、標識の特徴を表す記号、識別番号などの情報
が地図に記載される。この結果、地図上には、予定走行
経路Q上の各点の座標位置が示される。
【0184】また、制限速度や駐停車禁止の標識のよう
に変更されにくい規制標識の情報も地図に記載されてい
る。
【0185】これら地図情報は、知能自動車20を自動
的に走行させるために使用されるだけではなく、乗客に
対して現在位置、予定走行経路Q、交通状況を知らせる
ための基礎情報として使用される。例えば、この地図を
スクリーンに表示し、スクリーン上の所望の場所を乗客
に選択させ、その選択した地図上の位置に対応した情報
を画像、音声、音楽として提供することができる。
【0186】上記地図データは、各車両20がその管制
区域50内で走行を開始する前に、最新の情報によって
修正ないしは補正しておくことが望ましい。
【0187】車両20は、公知のDead-reckoning技術
(詳細は米国特許4,866,617号の第17式等を
参照)を用いたいわゆる推測航法により、方向検出器8
5や走行距離検出器86の出力に基づき車両20の現在
位置を推定演算しながら走行制御される。
【0188】推測航法では、車輪のスリップ、積算など
により、単位時間あたりの走行距離の計測結果や車輌の
方向の計測結果に誤差が含まれているため、長距離にわ
たって走行すると、推測された現在位置が、実際の位置
と相違してくる。
【0189】そこで、GPSアンテナ35を介して実際
の現在位置を計測し、推測航法により得られた現在位置
を、この実際の現在位置に置き換え、推測航法により推
測された現在位置の計測誤差を間欠的に補正している。
また、GPS以外にも、各種の能動的あるいは受動的な
標識を用いて現在位置を間欠的に補正する方法が既に公
知となっており、これらを適宜採用することができる。
【0190】図12は、車両20Aが走行する予定走行
経路P1、P2、P3…に沿って、走行路面60に間欠的
に位置補正用標識L1が敷設されているとともに、車両
20Aが走行する車線に対向する車線であって、車両2
0Bが走行する予定走行経路Pn1…に沿って、走行路面
60に間欠的に標識L2が敷設された様子を示してい
る。各標識L1、L2の正確な位置、設置の向き、および
属性は、予め車両20側に知らされている。ここで、属
性とは、例えば図13に示す標識Lであれば、Z字型の
標識2a、2b、2cの横幅V、奥行きの寸法W、これ
を標準化した型式番号、金属材料の幅dなどである。ま
た、図14に示す標識Lであれば、Z字型標識に平行に
設けられた識別用の線分62、63の本数、これら線分
の間隔、金属材料の幅などである。
【0191】これら標識Lの属性を適宜変化させること
により、状況に応じた識別を行わせることができる。例
えば、図13の標識Lを、高速走行する道路に設置する
場合には、線分の金属材料の幅dを広くして、車載した
金属センサが線分の金属材料の上を通過する時間を確保
して(61は車両20の走行経路を示している)、確実
に標識Lを検出させることができる。また、低速走行で
精密な位置決めを必要とする停止地点では、標識Lの横
幅Vを狭くしたり、奥行きの寸法Wを大きめにとること
により、位置補正の精度を高めることができる。
【0192】また、図14の標識Lの識別用の線分の数
を、例えば第一車線については1本(線分62だけ)、
第二車線については2本(線分62と線分63)と、車
線に応じて異ならせることにより現在通過中の車線を識
別させることができる。また、交差点の手前では、上記
識別用の線分の幅、間隔を、特別に規定された組合せに
することにより、走行地点に関する警告や確認を車両2
0側で簡単に行わせることができる。
【0193】車両20Aは、予定走行経路Q上の各点の
座標位置P1 、P2 、P3 …を、予め受け取っており、
これら点列のうちの最も近い点を暫定的な目標点とし
て、そこに向けて走行されるように制御される。
【0194】車両20Aが、上記暫定的な目標点に近づ
くと、目標点が自動的に次の点に切り換えられる。こう
して車両20Aは、通過予定地点の各座標位置P1 、P
2 、P3 …を順番にたどって進むことができる。位置補
正標識L1を敷設した地点と方向のデータは車両20に
保有されているので、現在位置において通過する可能性
のある標識L1を確定することができ、これによって現
在位置を間欠的に補正することができる。
【0195】図16は、第二層5が、第一層2のデータ
に基づき自動制御を行っている様子を概念的に示す図で
ある。ここでは説明を簡単にするため、車両20は、何
らの障害もなく、ただ予定された経路に沿って走行する
場合について説明する。予定走行経路上において他の車
両と干渉しそうになったり、道路上に障害物があったり
する場合については、何らかの障害が発生する場合につ
いては後述する。
【0196】第二層5は、第一層2の中の仮想の車両を
仮想の環境の中で自動制御する。
【0197】すなわち、第二層5は、第一層2に書き込
まれたデータそのものを、仮想的な外部環境のもとにあ
る仮想的な車体42であると見なして自動制御する。第
二層5にとって物理的な車両20の運動や、現実の周囲
環境のありさまは、「第一層2に書き込まれたデータ」
となっていない限り知ることはできない。また、本当の
物理的な車体の運動や現実の周囲環境のありさまがどう
なっていようとも、「第一層に書き込まれたデータ」が
存在するかぎり、第二層5はそのデータを用いて仮想的
な環境の中で仮想的な車両42を自動制御する。
【0198】第一層2の記憶装置には、外部のネットワ
ーク1、身体部9とのデータのやりとりによって、走行
すべき「目標」を示す仮想的な地図情報64と、走行の
「現状」を示す仮想的な自己の車体42、仮想的な標識
L´及び仮想的な道路60´が記憶、格納されている。
【0199】第二層5は、制御入力cとして上記「目
標」と「現状」のデータを読み込んで、「現状」の走行
が「目標」に合致するように、制御出力aを発生し、こ
れを第一層2の記憶装置に書き込む。第一層2の記憶装
置に書き込まれたデータは、身体部9に読み込まれて、
実際の車体20を動かすことになる。
【0200】実際の車両20、位置補正用標識Lの情報
は、身体部9から第一層2の記憶装置へ出力され、この
情報が仮想的な自己の車体42、仮想的な標識L´とな
って、走行の「現状」を再び表現することになる。
【0201】車両2を予定走行経路Qに沿って誘導走行
させるには まず、車両20の外部のネットワークとし
ての情報通信ネットワーク(所轄区間)1から予定走行
経路Qを示すデータが、第一層2に対して標準形式のデ
ータとして受信され、内部/外部の全てのデータを蓄え
る第二層2の記憶装置に蓄積される。
【0202】ここで、車両20にとって、走行路60
は、動作対象14のうちの環境物体18に相当し、位置
補正用標識Lは、据付機械17に相当する。自己の車両
20以外の他の車両は、移動機械16に相当する。車両
20を操舵する装置、走行させる駆動装置、各種センサ
は、身体部9に含まれる。また、推測航法に基づく現在
位置の演算、位置補正用標識Lの識別、標識Lによる自
己位置の補正などの各種演算も、広い意味でのセンサの
機能であると考えて、身体部9の機能に含めるものとす
る。
【0203】仮に車両20が電源を落とされて車庫に待
機している場合には、電源投入時の現在位置は、検出で
きないことが多い。この場合には、電源が落とされた車
両20の大まかな現在位置と方向を、動作対象14の人
間15が車両20に教示したり、あるいは手動で車両2
0を運転して、実際に位置補正用標識Lを通過させてや
ることで正確な現在位置を車両20に教示させてやる必
要がある。この場合に使われるマンマシン・インターフ
ェースの機能も身体部9に含まれる。
【0204】図17は、身体部9で行われる車両20の
走行制御の内容を示すブロック図である。
【0205】方向検出器85は、例えばレートジャイロ
であり、車両20の走行方向の変化分(角速度)が検出
され、これを積分することにより車両20の方向が検出
される。
【0206】走行距離検出器86では、車両20の車輪
の回転数が検出されることにより時々刻々移動する車両
20の走行距離が検出される。
【0207】標識検出器39では、予定走行経路Qに沿
って既知の場所に間欠的に設置された位置補正用標識L
が検出される。
【0208】車両推定位置演算回路88では、方向検出
器85および走行距離検出器86から時々刻々入力され
る方向および走行距離を示す信号に基づいて車両20の
位置が推定演算される。
【0209】車両位置補正演算回路89では、走行距離
検出器86、標識検出器39の出力に基づいて、位置補
正用標識Lを検出する毎に、車両推定位置演算回路88
が推定した車両20の位置の誤差範囲に設置されている
位置補正用標識Lの座標位置が補正標識座標メモリ90
から取り出され、この座標位置が車両推定位置演算回路
88に対して送られる。そして、車両推定位置演算回路
88では、位置補正用標識Lとの相対位置関係から車両
20の実際の位置が演算され、この実際の位置によっ
て、既に推定演算された車両の位置が補正される。
【0210】車両推定位置演算回路88からは、補正さ
れた現在位置の座標位置(xr、yr)(局所座標系x
−y)と車両20の現在の進行方向φが、走行指令演算
回路91に出力され、この走行指令演算回路91では、
予定走行経路Q上の各目標地点P1、P2、P3…の座標
位置(xp、yp)、各目標地点における車両20の進行
方向φpおよび各目標地点における車速vpを示すデータ
が記憶された走行コースメモリ94の記憶データと、上
記現在位置(xr、yr)および現在進行方向φとが突き
合わされて、車両20の操舵角と車両20の走行速度の
目標値が演算され、それぞれ操舵指令演算回路92、駆
動指令演算回路93に出力される。操舵指令演算回路9
2からは操舵指令が操舵機構に出力され、駆動指令演算
回路93からは駆動指令が駆動機構に出力され、この結
果、車両20は予定走行経路Q上の目標点P1、P2、P
3…に追従していく。これら操舵機構および駆動機構の
アクチュエータを操作する頻度は、1秒間に20回から
数秒に1回程度までの範囲である。
【0211】ただし、データ転送のタイミングが悪く
て、身体部9が必要とする瞬間に目標地点Pや標識Lの
情報を受け渡すことができないと、操舵を制御するCP
Uが目標値を与えられない状態になって暴走する危険が
あるので、所定の時刻tx以降に通過すべき目標地点P
と位置補正用標識Lの情報は、予め数点分をまとめて上
記所定の時刻txよりも前に、第一層2から身体部9の
補正標識座標メモリ90、走行コースメモリ94に読み
込んでおかれる。
【0212】なお、道路上に様々な型式や寸法の位置補
正用標識Lが存在する場合には、型式等のわかる認識番
号、設置された方向などのデータが補正標識座標メモリ
90に記憶され、このデータが位置補正用標識Lの種類
の識別に使用される。
【0213】また、第一層2には、車両内部で再利用さ
れる全てのデータを登録するために、車両20の現在位
置と目標地点等の情報に加えて、その“現在時刻t”も
登録される。これにより、最新情報のある時刻tと次に
データ更新される時刻t+1の間の時刻t+α(ただ
し、0<α<1)でデータを再利用すべくデータを読み
込んだ場合でも、データを補間して利用することができ
る。
【0214】ここで、身体部9が、第一層2の内部/外
部の全てのデータが蓄えられている記憶装置から読み込
むデータと、書き込むデータは、以下の通りである。さ
らに、走行中に車両20があらぬ方向に暴走する危険を
未然に防ぐために、走行計画上の車両20の進行方向ψ
pと実際の車両20の進行方向ψrとを相互にデータ交換
し、自己診断の機能を容易に付加できるようにする。
【0215】・身体部9が第一層2から読み込むデータ
(走行に必要な最低限の情報) <1>時刻x以降に通過すべき数回分の目標地点の座標
位置(xp,yp)と、各目標地点における進行方向ψp
と、各目標地点における車速υp <2>時刻x以降に通過すべき数回分の位置補正標識L
の認識番号と、その中心座標位置と、設置方向 <3>時刻xの精密な値 ・身体部9から第一層2へ書き込むデータ(走行中は数
秒未満の間隔で更新される) <1> 時刻tにおける車両20の現在位置の座標位置
(xr,yr)と、進行方向ψrと、車速υr <2>時刻tにおける目標地点の座標位置(xp,yp)
と、進行方向ψpと、車速υp <3>時刻tにおける位置補正標識Lの認識番号と、そ
の中心座標位置と、設置方向 <4>時刻tの精密な値 <5>身体部9の動作モード(エラーコードも含む) 図18(a)は、所轄区域の交通管制システム72から
情報通信ネットワーク1を介して、車両20に送られる
予定走行経路Qを示している。
【0216】すなわち、車両20が通過すべき目標地点
P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8,P9の各々
の座標位置(xp、yp)と、各目標地点における車速φ
pが与えられ、さらに位置補正用標識L1,L2,L3,L
4,L5の各々の座標位置(xL、yL)、設置方向、認識
番号が与えられる。
【0217】因みに、通過すべき目標地点Pn とつぎの
目標地点Pn +1との距離は、高速走行する場面におけ
る一般的な数値で10mから100 mの間であり、多
くの場合、直線路は、50m程度の間隔で、通過すべき
地点Pが指定される。また、通過すべき位置補正用標識
L上にも、通過すべき地点Pが指定される。交差点やカ
ーブでは、特により短い間隔で、通過すべき地点Pが指
定される。
【0218】位置補正用標識Lは、通常は50mから2
00 m程度の間隔で埋設されるが、多くの場合、高速
走行する直線路については、100 m程度の間隔で設
置され、交差点の出入口とカーブにも設置される。
【0219】このように数十m間隔のデータとして与え
られる通過すべき地点Pと座標Lのデータは、第一層2
の記憶装置に「目標経路Qのデータ」として格納され
る。
【0220】図18(b)は、時刻tにおいて身体部9
で、実際の車両20が制御された場合に、その結果が第
一層2の記憶装置に「実際の走行データ」として格納さ
れた様子を示している。
【0221】第二層5が、この「実際の走行データ」を
読み込んだときには、すでに最新の時刻tと次にデータ
更新される時刻t+1の間の時刻t+α(ただし、0<
α<1)になっている。そこで、第二層5は、時刻tに
おける実際の車両20の現在位置の座標位置Rt(xt,
yt)と、進行方向ψtと、車速υtのデータを用いて、
時刻t+αにおける仮想の車両42の推定座標位置Rt+
α(xtα,ytα)を求め、これを用いて制御を行う。
【0222】図18(c)は、上記「目標経路Qのデー
タ」と「実際の走行データ」とを利用して、第二層5
が、仮想の車両42を目標経路Qに沿って走行させるた
めに、車両20が走行すべき目標点の座標位置を細分化
する様子を示している。
【0223】例えば、仮想の車両42の推定位置が、地
点P4付近をすでに通過してしまい、地点P5付近にさし
かかりつつある場合には、第二層5は、地点P5以降の
走行目標点を細分化して、第一層2にこれを出力する。
この細分化されたデータは、図17の走行コースメモリ
94に格納され、身体部9で行われる実際の車両20の
走行制御に使用される。
【0224】地点P5,P6,P7,P8の間の細分化処理
は、以下の通りである。
【0225】まず、例えば50m間隔で指定された地点
P5とP6の間が、概ね0.5m間隔の点列P501,P50
2,P503〜P598,P599に、100 分割される。同様に、
地点P6,P7間についても、P601,P602,P603〜P6
98,P699と100分割され、地点P7、P8間は、P70
1,P702,P703〜P798,P799と100分割される。
【0226】このようにして細分化された点列は、身体
部9で実際の車両20を制御するための目標点の座標点
列となる。もちろん、その目標点の間隔は、0.5 m
に固定される必要はなく、車両20の旋回半径の1/50
から4倍程度の範囲内で選択するのが実用的である。
【0227】第二層5は、仮想の車両42の推定位置
が、地点P5付近であるという「現状」に基づいて、こ
れから通過すべき地点P5,P6,P7,P8地点にある標
識L1,L2,L3,L4,L5の各々の座標位置(xL、y
L)、設置方向、認識番号のデータを第一層2に出力す
る。すると、身体部9は、これらデータを図17の補正
標識座標メモリ90に記憶させ、身体部9はこの記憶デ
ータに基づいて実際の車両20を走行制御する。
【0228】このように、外部のネットワーク1から送
られた「目標経路Qのデータ」と、身体部9から送られ
た「実際の走行データ」とに基づいて、第二層5が「こ
れから通過すべき細分化した経路のデータ」を生成する
とともに、「これから通過すべき位置補正用標識のデー
タ」を生成し、これらが第一層2の記憶装置を介して身
体部9へと送られることで、実際の車両20が自動操舵
される。
【0229】つぎに、予定走行経路上において他の車両
と干渉しそうになったり、道路上に障害物があったりす
る等、何らかの障害が発生する場合の制御について説明
する。
【0230】図19は、図16と同様に、第二層5が、
第一層2のデータに基づき自動制御を行っている様子を
概念的に示しているとともに、第三層6が第一層2のデ
ータに基づき推論を行っている様子を概念的に示してい
る。
【0231】同図19に示すように、図16の場合と同
様に、第二層5は、「第一層2に書き込まれたデータ」
そのものを、仮想的な外部環境のもとにある仮想的な車
両42であると見なして、自動制御を行う。つまり、第
二層5にとって、物理的な実際の車両20の運動や、現
実の周囲環境のありさまは、「第一層2に書き込まれた
データ」となっていないかぎり知ることはできない。逆
に、実際の物理的な車両20の運動や現実の周囲環境の
ありさまがどうなっていようとも、「第一層2に書き込
まれたデータ」が存在するかぎり、第二層5はそのデー
タを用いて仮想的な環境の中で仮想的な車両42を自動
制御する。
【0232】このように仮想的な環境の中で仮想的な車
両42を自動制御するには、障害が発生する可能性のあ
る合流点はもちろんのこと、単に車両42が前進するだ
けの場合であっても、前方に故障車が止まっていないか
など、場面ごとに起き得る不具合が実際に起きていない
かどうか確認しておく必要がある。
【0233】すなわち、第一層2の記憶装置には、外部
のネットワーク1、身体部9とのデータのやりとりによ
って、走行すべき「目標」を示す仮想的な地図情報64
と、走行の「現状」を示す仮想的な自己の車体42、仮
想的な標識L´及び仮想的な道路60´が記憶、格納さ
れている。
【0234】第二層5は、制御入力cとして上記「目
標」と「現状」のデータを読み込んで、「現状」の走行
が「目標」に合致するように、制御出力a(制御指令
d)を発生し、これを第一層2の記憶装置に書き込む。
第一層2の記憶装置に書き込まれたデータは、身体部9
に読み込まれて、実際の車体20を動かすことになる。
【0235】実際の車両20、位置補正用標識Lの情報
は、身体部9から第一層2の記憶装置へ出力され、この
情報が仮想的な自己の車体42、仮想的な標識L´とな
って、走行の「現状」を再び表現することになる。
【0236】第二層5は制御出力aとして、不具合予測
eを出力し、これを第一層2の記憶装置に書き込む。
【0237】例えば、停車していた車両42が動き始め
る際には、「後方から車両がぶつかってくる危険性」や
「前に他の車が止まっている危険性」などの不具合の予
測が、第二層5において生成される。この不具合予測
は、必ずしもいわゆる人工知能的な手法で生成しなけれ
ばならないという制約はない。場面ごとに予測される不
具合を予めプログラムしておくことにより予測してもよ
く、またデータベース、テーブルに整理、記憶しておく
ことにより予測してもよい。要は、第二層5が仮想の環
境の中の仮想の車両42に対して制御指令dを発する場
合に、実際の空間の状況が仮想の環境に反映されていな
いために起こりうる危険性を列挙して第一層2の記憶装
置に書き込むことができる手法であればよい。
【0238】こうして第一層2の記憶装置に書き込まれ
た不具合の予測eは、第三層6によって外界調査指示h
として読み込まれ、第三層6による推論(外界の対象を
把握す推論)を経て、外界の調査報告iが、第一層2の
記憶装置に読み込まれる。
【0239】具体的には、例えば「それまで既知の情報
に基づき前方にいると思っていた他の車両43が、実際
には数秒遅れで後方から突進してきている」ことが、外
界調査報告iによって判明する。
【0240】以下、車両20が幹線道路へ進入する状況
を例にとり、具体的に説明する。
【0241】図20は車両20-1が幹線道路に進入しよ
うとしている場面を示している。
【0242】交通管制システム72からの情報による
と、車両1が進入しようとしている合流点のあたり(位
置A)に他の車両20-2が走行しているはずである。と
ころが、走行している他の車両20-2の位置を交通管制
システム72が把握する場合、前回報告を受けた位置に
基づいて最新位置を推定しなければならなく、ネットワ
ーク1からデータを読み取る時間間隔がゼロではないた
め、次に報告を受けるまでの間に他の車両20-2が交通
状況に応じて加速したり減速したり車線変更したりする
と、他の車両20-2の真の現在位置と予定位置との間に
誤差が生じてしまう。例えば、時速80キロで走行中に
交通渋滞で±10秒の誤差を生ずれば、車両20-2が実
際に存在する場所は±200mの誤差を生じる。
【0243】車両20-1では、こうした状況を不具合で
あると予測して、外界調査を行う。以下、図23のブロ
ック図、図25のフローチャートを併せ参照しつつ説明
する。
【0244】すなわち、第一層2の記憶装置にある「走
行地域の地図64」と「予定走行路Qの座標位置デー
タ、位置補正用標識データ」と、交通管制システム72
が管理している「近傍の車両20-2の走行情報」と、
「自己の車両20-1の現在位置」の情報が、制御入力c
として第二層5に入力される(ステップ301)。
【0245】つぎに、第二層5は、制御指令dとして
「次に通過すべき予定走行経路Q上の目標点Pと位置補
正用標識Lを算出せよ」を生成すると同時に、「“幹線
道路進入”を行うが、予定走行経路Qの付近に他の車両
が存在するので注意せよ」という不具合予測eを生成す
る(ステップ302)。
【0246】第二層5は、第一層2の記憶装置に上記制
御指令dと不具合予測eを出力する(ステップ30
3)。
【0247】ついで、この不具合予測eに応じて第一層
2の記憶装置から第三層6の推論機能8に対して外界調
査指示hとして、“図20の位置Aに存在する予定の他
の車両20-2が誤差範囲のどこに存在するのか確認せ
よ”との指示が出力される(ステップ304)。
【0248】この結果、第三層6の推論機能8が、外界
調査指示hにもとづいて外界を観察する。推論機能8が
外界を観察する処理を行う際に、後述するように、第三
層6の知覚機能7の分別部44と感受部45が使用され
る。この知覚機能7を使用した推論は、本発明者の提案
に係る特願平8−53138号の図6,図7及び図8に
具体的に示されている(ステップ305)。
【0249】そして、第三層6の推論機能8から、第一
層2の記憶装置に対して外界調査報告i(具体的には後
述する図22の結論1〜6のうちのいずれか)が出力さ
れる。この外界調査報告iのデータに基づいて、第一層
2の記憶装置の中の仮想的な他の車両43、仮想的な道
路60´の状況が、外界のありさまを反映して更新され
る(ステップ306)。
【0250】次に、図22、図26を参照して、上述し
た第三層6の推論機能8で行われるの処理を説明する。
【0251】推論機能8は、図21に示すように、まず
視野Aを観察する。
【0252】すなわち、車両20-1の視覚センサ32等
が視野Aに向けられ、車両前方の位置A(他の車両20
-2が存在するはずの予定位置)に他の車両20-2が存在
するか否かを観察する(ステップ101)。
【0253】もし、他の車両20-2が予定通り位置Aに
存在しているならば、すぐに自己の車両20-1の目前を
通過してしまうから、車両20-1としては徐々に加速し
て幹線道路に進入すれば問題はない。これが、他の車両
20-2が予定位置Aに存在していた場合の結論1であ
る。
【0254】ステップ101で、視野Aに他の車両20
-2が存在しないという判断がされると、つぎのステップ
202の判断に移行される。
【0255】上記ステップ101の判断を具体的に示し
たのが、図26である。
【0256】すなわち、推論機能8が受け取るべき記号
出力Vの選択肢、つまり「視野Aに他の車両20-2が存
在する」、「視野Aに他の車両20-2が存在しない」と
いう選択肢が決定されるとともに、その選択肢の判定基
準が決定される。これら選択肢と判定基準nは分別部4
4に与えられるものである。ここで、判定基準とは、例
えば、両眼ステレオや単眼画像の時間差分をとるなどの
公知の手法を用いて、視覚センサ32等の視野内に移動
物体が存在するか否かを判断する際に、その判断のため
の時間差分の値のしきい値、画像のズレ量のしきい値な
どのことである。同時に、推論機能8では、感受部45
に与えるべき好き嫌いの基準mが決定される。これは、
分別部44で「存在する」か「存在しない」かを判定し
始める前に、まず感受部45において判定準備ができた
かどうかを判断するために使用される。つまり、視覚セ
ンサ32等の画像が正常に受信されているか否かを判断
するための基準であり、正常に画像が受信されている場
合には、「好き」として、その画像に基づき「存在す
る」、「存在しない」の判断が開始されることになる
(ステップ401)。
【0257】こうして推論機能8から知覚機能7の分別
部44に対して上記決定された選択肢とその判定基準n
が出力される。また、知覚機能7の感受部45に対して
好き嫌いの基準mが出力される。これによって、知覚機
能7は、外界(視野A)を調べる動作を開始する(ステ
ップ402)。
【0258】ここで、外界からの刺激Tが身体部9のセ
ンサ9b(視覚センサ32等)に加わることにより発生
する直接出力S(視覚センサ32等の視野Aの画像の受
信信号)は、感受部45と分別部44に与えられてい
る。
【0259】感受部45は、直接出力Sを、好き嫌いの
基準mに照合して、その照合結果に応じて、好きか、嫌
いかを示す割り込み信号rを分別部44に出力する。分
別部44は、この好き嫌いの割り込み信号rを受けるこ
とによって、内部状態を遷移させる。
【0260】すなわち、図24に示すように、分別部4
4の内部状態が「観察停止状態」(ステップ201)か
ら、「感受状態」(ステップ202)に移行され、直接
出力Sが読み込まれる。さらに「起想状態」(ステップ
203)に移行され、記号出力Vが、選択肢の中から選
択される。この場合、分別部44は、視覚センサ32等
の画像受信信号(視野Aの画像)を画像処理し、これに
判定基準nを適用することによって、「視野Aに他の車
両20-2が存在する」、「視野Aに他の車両20-2が存
在しない」という記号出力Vの選択肢の中からいずれか
を選択する(ステップ403)。
【0261】このようにして分別部44が記号出力Vの
候補を決定すると、つぎに「試行状態」(ステップ20
4)に移行され、操作Uを発生して身体部9のアクチュ
エータ9a(視覚センサ32等の向きを変えるアクチュ
エータ)を駆動する。この結果、視覚センサ32等の視
点がわずかに変化される。ただし、分別部44から身体
部9のアクチュエータ9aを動かすための信号である操
作Uは、第三層6から身体部9に直接送られるのではな
く、第三層6から第一層2の記憶装置にデータが送ら
れ、そのデータを身体部9が読み込むことによって、身
体部9に送られるようにしている(ステップ404)。
【0262】つぎに、分別部44の内部状態は、「認識
状態」(ステップ205)に移行される。
【0263】すなわち、上記操作Uによって、視覚セン
サ32等の視点が変えられた後に、分別部44は、同様
に、視覚センサ32等の画像受信信号(視野Aの画像)
を画像処理し、これに判定基準nを適用することによっ
て、「視野Aに他の車両20-2が存在する」、「視野A
に他の車両20-2が存在しない」という記号出力Vの選
択肢の中からいずれかを選択する。この結果、2回選択
した記号出力Vの候補(「存在する」、「存在しな
い」)が同じものであるならば、分別部44は、その候
補を記号出力Vとして推論機能8に出力する。この結
果、分別部44の内部状態は、「認識状態」(ステップ
205)から、元の「観察停止状態」(ステップ20
1)に戻される。
【0264】逆に、2回選択した記号出力Vの候補が異
なっているならば、手順は再びステップ403に移行さ
れ、外界の観察が繰り返される(ステップ405)。
【0265】なお、車両20-1が走行している場合に
は、時間の経過に伴い視覚センサ32等の視点は変化す
るし、仮に車両20-1が停車している場合であっても、
外界は変化するので、操作Uを出力せずとも視覚センサ
32等の視点を変えて、外界を観察することが可能であ
る。
【0266】操作Uを出力して視覚センサ32等の視点
を強制的に変えなければならないのは、暗いトンネルや
倉庫に停車している場合のように、環境が変化しにくい
状況下である。
【0267】環境の変化の多い状況下では、操作Uを出
力する前に直接出力Sが変化してしまうので、操作Uを
出力しなくても「試行状態」(ステップ204)から
「認識状態」(ステップ205)に移行させることがで
きる。この「認識状態」では、再び記号出力Vの候補が
選択されることになり、その選択された候補が1回目に
選択した記号出力Vの候補と同じであれば、分別部44
は記号出力Vを推論機能8に向けて出力するとともに、
分別部44の内部状態は「観察停止状態」(ステップ2
01)に戻る。第2回目に選択した記号出力Vの候補
が、第1回目に選択した記号出力Vの候補と異なってい
れば、記号出力Vを出力することなく、分別部44の内
部状態は、「観察停止状態」(ステップ201)に戻さ
れる。
【0268】記号出力Vを受け取った推論機能8は、そ
の記号出力Vが「視野A(位置A)に他の車両20-2が
存在する」であるならば、上述したように結論1(図2
2参照)を最終的な推論結果とする。
【0269】しかし、受け取った記号出力Vが「視野A
(位置A)に他の車両20-2が存在しない」であるなら
ば、更に外界の状況を推論していく。
【0270】以下、同様にして、図21の視野B、視野
C、視野Dについて外界の状況が観察される。視野Cに
ついては位置C(進入路の車線)と位置E(進入路の車
線とは別の車線)の識別も行われる。
【0271】すなわち、図22のステップ102では、
車両20-1の視覚センサ32等が視野Bに向けられ、進
行方向の位置Bに他の車両20-2が存在するか否かが観
察される。ここで、上述した図26のステップ401か
ら406の処理が同様にして実行される。
【0272】この結果、「車両20-2が、予定よりも進
んでいる位置Bに存在している」との記号出力Vを推論
機能8が受け取ると、「他の車両20-2がすでに進入位
置を通過してしまっているから、車両20-1は速やかに
加速して幹線道路に進入してもよい」との結論2を最終
的な推論結果とする。
【0273】逆に、「視野B(位置B)に他の車両20
-2が存在しない」との記号出力Vを受け取ると、つぎの
ステップ103に移行される。
【0274】つぎのステップ103では、車両20-1の
視覚センサ32等が視野Cに向けられ、進行方向の位置
Cに他の車両20-2が存在するか否かが観察される。こ
こで、上述した図26のステップ401から406の処
理が同様にして実行される。
【0275】ここで、「視野Cの方向に他の車両20-2
が存在する」との記号出力Vを推論機能8が受け取った
場合には、他の車両20-2が、進入路の車線、これとは
別の車線のいずれを走行しているかに応じて、結論が異
なるので、これを識別するために、つぎのステップ10
4に移行される。
【0276】逆に、「視野Cに他の車両20-2が存在し
ない」との記号出力Vを受け取ると、他の視野Dを観察
すべく、つぎのステップ105に移行される。
【0277】ステップ104では、車両20-1の視覚セ
ンサ32等が視野Cに向けられ、位置C(進入路の車
線)、位置E(別車線)のいずれに他の車両20-2が存
在するかが観察される。ここで、上述した図26のステ
ップ401から406の処理が同様にして実行される。
【0278】この結果、「他の車両20-2が位置Eに存
在する」との記号出力Vを推論機能8が受け取ると、
「進入路の車線でない別の車線を他の車両20-2が走行
しているのであり、車両20-1が幹線道路にそのまま進
入しても衝突するおそれはない、車両1はそのまま幹線
道路に進入してもよい」との結論3を最終的な推論結果
として出力する。
【0279】逆に、「他の車両20-2が位置Cに存在す
る」との記号出力Vを推論機能8が受け取ると、「他の
車両20-2はもうすぐに通過してしまう。車両20-1は
一旦停止して他の車両20-2が通過した後に幹線道路に
進入すべきである」との結論4を最終的な推論結果とし
て出力する。
【0280】ステップ105では、車両20-1の視覚セ
ンサ32等が視野Dに向けられ、進行方向の位置Dに他
の車両20-2が存在するか否かが観察される。ここで、
上述した図26のステップ401から406の処理が同
様にして実行される。
【0281】この結果、「視野D(位置D)に他の車両
20-2が存在する」との記号出力Vを推論機能8が受け
取ると、「他の車両20-2は当分来ない。車両20-1が
幹線道路にそのまま進入しても衝突するおそれはない。
車両20-1は幹線道路に進入してもよい」との結論5を
最終的な推論結果として出力する。
【0282】逆に、「視野D(位置D)に他の車両20
-2が存在しない」との記号出力Vを推論機能8が受け取
ると、誤差範囲の視野A、視野B、視野C、視野Dのい
ずれにも、他の車両20-2が存在しない状態であるの
で、「他の車両20-2は誤差範囲を越えて行方不明にな
っている。道路上で何らかの事故が起きた可能性がある
ので、車両20-1は一旦停止して交通管制システム72
から指示があるまで待機する」との結論6を最終的な推
論結果として出力する。
【0283】このようにして第三層6は、上記6つの結
論のうちのいずれかを生成し、これを推論結果として第
一層2の記憶装置に書き込む。
【0284】身体部9は、第一層2に書き込まれた推論
結果を読み出して、車両20-1が幹線道路に進入するタ
イミングに達した時点で、推論結果に応じた行動をとら
せるように、車両20-1を駆動制御する。
【0285】以上、本実施の形態では、知能自動車20
が幹線道路に進入する場合について説明したが、これ以
外にも以下のような場合について本発明を適用してもよ
い。
【0286】1)知能自動車20が1台で走行する場合 知能自動車20の基本的な機能は、「何かを運搬する」
ことにある。
【0287】以下では、人間や貨物などを運搬する作業
のうちで、最も複雑な動作を要求されるものの例とし
て、乗客とその荷物を丁寧かつ快適に輸送するタクシー
としての知能自動車20の運用例を示す。その基本的な
動作は、<乗客を迎えにゆく→乗客を乗せて走る→目的
地で乗客をおろす→待機する>という流れに沿ったもの
である。タクシー以外の用途であるバスなどの公共交通
機関、貨物トラック、緊急自動車についても、交通管制
や情報通信ネットワーク1の利用に関する優先度と積み
荷の取り扱い方が異なるものの、同様に適用することが
できる。
【0288】以下、各場面ごとの動作について説明す
る。
【0289】<1> 走行経路の指示と誘導 まず、空車で待機していたタクシー20に、配車センタ
ーから乗客を拾う場所の指示が入る。
【0290】この指示には、情報通信ネットワーク1あ
るいはデジタル式のタクシー無線が使われる。かかる指
示を受けると、タクシーとしての知能自動車20は、自
己の現在位置と進行しつつある方向に関する情報ととも
に乗客が待っている地点の情報を交通管制システム72
に報告し、現在位置から予定走行経路Q上の目標地点ま
での各通過地点、各通過地点における走行速度と通過時
刻の指示をもらう。乗客を乗せた後も、この動作を継続
して行う。つまり、タクシー20は、乗客から行き先き
の指示を受け、これに応じて交通管制システム72から
現在位置から目標地点までの交通管制司令情報を受け取
る。
【0291】なお、通過地点を記述するデータの形式に
はさまざまなものがあり、代表的なものが、前述したよ
うに、米国特許第4,866,617号の地点追従方式
(推測航法)によって、予定走行経路Qの通過地点の座
標位置と、位置補正用標識Lの座標位置を与えるという
方式である。この地点追従方式を基本にして、さらに交
通の安全性を高めるために主要な道路、交差点等の座標
位置データを予め車両20側が、磁気あるいは光を応用
した大容量記憶媒体に保有しておけば、仮にいずれかの
データに異常があった場合であっても早期に不具合を発
見することができる。
【0292】地点追従方式によって、走行すべき予定走
行経路Qが多数の地点の点列として記述されたならば、
知能自動車20は、これらの地点を一つずつ辿っていく
ことにより、自動的に目標地点に到達することができ
る。
【0293】他の車両による干渉、障害物による妨害等
がなく、ただ1台だけの知能自動車20が現在位置から
目標地点までの各通過地点を、予定された走行速度、通
過時刻で走行できるようにすることは、公知の自動制御
技術の範囲である。
【0294】<2> 目標地点への接近と接岸 タクシーとしての知能自動車20が、空車で客の待つ地
点に停車する場合であっても、客を乗せて目標地点に車
を着ける場合であっても、いずれも正確かつ親切に停車
しなければならない。例えば、タクシー乗り場がプラッ
トフォームのように一段高くなっているならば、車をプ
ラットフォームと平行に停車させ、隙間がないようにし
て乗客がタクシーに乗り易いようにする必要がある。
【0295】車両20を停車させる地点の座標位置が指
定されたならば、後は地点追従方式によって、特に障害
がない限り、その停車地点近くまで自動的に走行させる
ことができるのは、前述した通りである。
【0296】地点追従方式(推測航法)において車両2
0の自己位置を推定する手法としては、前述したよう
に、車両20の走行距離(車輪の回転数)と方向の検出
値を用いて自己の車両20の位置を演算していく、いわ
ゆるデドレコニング(dead-reckoning)の手法が一般的
に使用されるが、その手法を用いて長距離走行すると、
自己の車両20の演算位置に占める誤差が大きくなるこ
とが、知られているのは前述した通りである(例えばD
r. Johann Borenatein 著の技術専門書“Navigating Mo
bile Robotics”にもこの問題が指摘されている)。
【0297】このように地点追従方式(推測航法)によ
って目標地点に近くまで車両20を走行させることはで
きるものの、そのままでは車両20を横付けすべき実際
の目標地点を見つけて、正確に位置決めさせることがで
きない。
【0298】この目標地点への接近と接岸の段階では、
知能自動車20は、交通管制システム72から受け取っ
た大局的な通過座標点Pのデータに頼った走行方法を止
めて、車両20自身に車載したセンサを働かせて目標地
点を見つけ出す処理を行う。
【0299】最も原始的な方法は、推測航法によって走
行すべき予定走行路上の目標点近くの地点から車両20
が停止すべきタクシー乗降場までの間に、分岐経路を設
け、この分岐経路の路面にペンキ、電磁気的な反応をす
る物質あるいは電流を流した電線等で経路を表す線を描
き、上記予定走行路上の目標地点の近くの地点に車両2
0が到達したならば、車両20に搭載したセンサによっ
て上記ペンキなどで表された線を検出しつつ、分岐経路
を走行するように誘導する方法(ならい線誘導方式)が
挙げられる。このならい線誘導方式を、低速まで車両2
0を減速させた上で適用するのであれば、正確な位置決
めを行うための位置補正用標識Lと組み合わせて利用す
ることができる。
【0300】上記分岐経路についてならい線誘導方式を
適用する手法は、知能自動車20の専用道路に隣接し
て、専用の引込線や複数の並列に配置された停車用プラ
ットフォームを持つ物流倉庫や工場の中で、貨物トラッ
クを指定した位置に貨物トラックとしての知能自動車2
0を停車させるような場合に、有効な自動制御方法であ
る。
【0301】しかし、このように物理的に表された線に
正確に倣って車両を誘導する方法は、工場内の無人搬送
車のように低い速度で走る車両には適しているものの、
高速で走行する車両には適していない。これは、高速で
走行する車両を細い線に倣って走らせると、脱線したり
急激な操舵をしてしまうなど、極めて乗り心地の悪いも
のになりやすいからである。しかも、停車目標地点ある
いはその手前の地点に他の車両が駐停車していると、そ
の分岐経路の走行が妨げられるため、車両の行列ができ
てしまうという問題も招来する。
【0302】また、特定の停車地点に停車させるには、
分岐経路を示す線を描く必要があるため、停車地点の変
更が繁雑であり、変更に対して柔軟に対処できないとい
う問題がある。このことは、タクシーの乗客にとって希
望する地点で即座に下車することができないということ
を意味する。これでは、鉄道やバスの駅で下車した後で
荷物を抱えて目的地まで徒歩で歩かざるを得ないのと同
じことであり、わざわざタクシーを利用するメリットが
なくなってしまう。
【0303】そこで、知能自動車として高度な制御が要
求されるタクシーのような用途には、より高度で柔軟性
のある方法として、ごく最近に目標地点に停車した時に
撮影したその付近の映像を記録して、その画像中のいず
れの場所が目標なのかを示すポインタ情報とともに利用
することにより、目標地点に到達するための情報を表現
するという方法がある。
【0304】この映像とポインタ情報は、個々の知能自
動車20が保有してもよく、交通管制システム72やタ
クシー会社の情報センターなどに保管してそのデータを
情報通信ネットワーク1を介して利用してもよい。ま
た、乗客がすでにタクシーに乗っているのであれば、身
体部9のマンマシン・インターフェースを用いて乗客に
映像を見せながら、どこに停車してほしいのかを聞くこ
とも可能である。この場合、乗客が明確に停車地点を示
すことができないのであれば、情報通信ネットワーク1
を介して案内情報を提供したり、相談にのったり、ある
いは近くまで走行して目標を乗客に探してもらったりす
ることもできる。そのためには、乗客と会話しながら交
通管制システム72から交通管制司令情報としての通過
地点や各通過地点における走行速度と通過時刻の指示を
受ける処理を自動的に行う必要がある。
【0305】<3> 出発に伴う交通安全 乗客を拾ったタクシー20は、乗客の希望する目標地点
を交通管制システム72に報告し、これに応じて交通管
制司令情報として現在位置から目標地点までの各通過地
点および各通過地点における走行速度と通過時刻の指示
を受ける。混雑していない交通状態であれば、他の知能
自動車との干渉の危険を考慮せずに、1台だけで走るこ
とが許可される。
【0306】しかし、交通管制システム72、情報通信
ネットワーク1からの情報には、遅れやデータエラーは
つきものである。場合によっては道路の後方から突進し
てきた他の車両の現在位置の推定値に誤差があって、交
通管制システム72から、その車両がすでに通過したこ
とを示すデータが送られてくることもある。
【0307】そこで、一般道路を走る自動車の運転手
が、優先道路に進入するときに交通状態を確認するのと
同様に、専用道路を走る知能自動車20についても停止
状態から加速して有線道路に進入する前に、必ず交通状
況の確認が行われる。
【0308】すなわち、前述したのと同様に第二層5が
不具合予測eを出力することによって、道路前方に障害
物がないことを確認すると共に、進入しようとする専用
道路の走行線の後方を確認し、自車が加速し終えるまで
に他の車両の走行を妨害する危険がないことを確認し、
その確認後でなければ発進しないようにする。
【0309】<4> 走行に伴う交通安全 走行中は、急加速、急減速、急ハンドルを行わず、乗客
の要望に基づいて最短時間、最小コストで目的地に到達
できるタクシーが高性能であると評価される。知能自動
車のタクシー20の場合、乗客の要望に基づく最適な経
路はタクシー20から交通管制システム72に走行の計
画を送信することに応じて指示されるため、タクシー代
の正確な見積りを事前に乗客に提示するサービスが可能
である。 ただし、交通状況が変化して経路計画を変更
する場合があるので、見積もり額が若干変化することは
避けられない。タクシー会社側で独自の交通状況予測シ
ステムを持っている場合には、通過したい地点や現実的
な通過予定時刻を走行計画として送信することによって
最適で確実な交通管制司令情報を交通管制システム72
から受け取るようにしてもよい。
【0310】知能自動車20が急加速、急減速、急ハン
ドルを行わざるを得ないのは、交通管制システム72が
突然に交通管制司令情報を変更したために目の前の交差
点を曲がらざるを得なくなった場合に車線変更したり、
他の車両からの車線変更の警告を聞き逃したり、あるい
は突然に発生した事故に巻き込まれるのを回避するため
に行動をとる場合である。
【0311】こうした場合には、前述したのと同様に、
第二層5が不具合予測eを出力することによって、他の
車両の動きを観察、確認し、車間距離を守り、他の車と
の並進を避け、進路前方の障害を警戒すると共に、突然
に合流してくる車を警戒することができ、急加速、急減
速、急ハンドルを行わずに走行することができる。
【0312】<5> 到達に伴う交通安全 目標地点に近くなると、知能自動車20は、前方の路肩
に駐停車している車両が存在しないことを確認した上
で、減速して路肩に寄り始める。このとき減速する時期
が早すぎて数キロにもわたって低速走行すると、後続車
両の通行の妨げになったり、後続車両による追い越しを
受けたりするので、交通システム全体にとって交通事故
のリスクを高める危険性がある。一方、目標地点の直前
で急減速すると、後続車両に追突される危険がある。
【0313】そこで、自車20の減速にあわせて後続車
両が気づいて減速するように、交通管制システム72へ
の通報の他に、隣接車両だけに受信できる程度の強さの
電波、光、音などの媒体を用いた警報通信を行うように
する。これと併せて右左折、ブレーキの表示を行う信号
灯38を用いて、自車20が減速して路肩へ車線移動す
る予定であることを、隣接車両に警告するようにする。
【0314】混雑していない交通状態であれば、他の知
能自動車との干渉の危険を考慮せずに、1台だけで減速
したり車線変更することが許可されるので、このような
処理、操作を省略することができる。
【0315】しかし、交通管制システム72、情報通信
ネットワーク1からの情報に、遅れやデータエラーはつ
きものであり、例えば道路の後方から突進してきた他の
車両の現在位置の推定値に誤差があって、交通管制シス
テム72はその車両がすでに通過していると判断してい
ることもある。
【0316】したがって、早すぎて、かといって手遅れ
にならないうちに、分岐動作を開始する旨の上記警告を
自車の周囲に対して発することは、たとえ混雑していな
い交通状態であっても必要である。
【0317】<6> 乗客を快適に輸送する タクシーが乗客を快適に輸送するための基本的なサービ
スは、安全に早く確実に所定の料金で輸送することであ
る。
【0318】しかし、知能自動車のタクシーは人間が運
転する場合と異なり、不慣れな乗客にとっては不安な乗
り物である。例えば、つぎのような事態が予想される。
【0319】すなわち、乗客が乗り込んで行き先を告げ
るや否や、無言のままタクシーがいきなり発進して、勝
手に加減速を繰り返し、いったいどこに向かっているの
かもわからぬまま右へ左へハンドルをきって抜け道に周
り込み、ある時は大きく迂回をし、やっと到着したと思
ったら似た発音の別の場所である。そこで、「代金は銀
行口座から自動的に引き降ろされた」とアナウンスの合
成音が流れ、文句を言おうとしたら、「早く降りないと
料金を加算する」という警告文を聞かされる。しかたな
く行き先を変更して継続乗車しようとしても「すでに自
車配車システムが他の予約をとっているので、お前はこ
こで降りろ」と言われる。大きな荷物をタクシーのトラ
ンクから取り出したとたんに、タクシーは再び急発進し
てどこかへ行ってしまう。そこへ、突然どしゃ降りの大
粒の雨が降ってくる。
【0320】知能自動車の側にしてみれば、最初に乗客
が言った場所に安全に早く確実に所定の料金で輸送し、
次の客を長く待たせないように迎えの場所へ急行したの
であり、その点では高性能の機械と評価できる。
【0321】しかし、人間である我々としては、それが
いかに高性能な知能自動車といえども、このような乗客
とのコミュニケーションに欠けたタクシーには二度と乗
りたくないと思うだろうし、知人にも乗らないように薦
めるであろう。ついには知能自動車のタクシーには、全
く利用客が来なくなり、それまで設備投資が無駄になる
ことも予想される。
【0322】知能自動車のアプリケーションの中で最も
難しいのがタクシーであり、乗客とのコミュニケーショ
ンの巧妙さが誤解を防ぎ、乗客に快適さを感じさせ、つ
いにはタクシー会社に繁栄をもたらし、それまでの設備
投資を回収することができる。
【0323】以下、このような乗客とのコミュニケーシ
ョンを取り入れた知能自動車について説明する。
【0324】<7>乗客の要求を聞きいれる 無人の知能自動車20の車内では、犯罪行為が行われる
虞がある。そこで、車内での行為が犯罪を構成する証拠
になりうると知能自動車20が疑った場合に、防犯カメ
ラが作動され、そのカメラの映像と音声記録が自動的に
リアルタイムで警察に転送される。
【0325】また、車内の利用者が、行き先変更、経路
計画、現在の運行状況、概略の運賃、地方の天気情報な
どの説明を求めた場合に、その要求は、身体部9のマン
マシン・インターフェースを通じて受け入れられ、適宜
対処がなされる。この場合、乗車中に利用者が健康上の
異変を訴えた場合には、録音や合成音による自動応答で
はなく、人間の職員によってテレビ電話での対応がなさ
れる。
【0326】<8>交通管制による規制と変更 交通管制システム72が専用道路上を走行する多数の知
能自動車20の交通管制を行う場合、各車両20に優先
順位を割り当てた上で、それぞれの車両20ごとに交通
管制司令情報として、通過地点および各通過地点におけ
るの走行速度、通過時刻の指示が与えられる。
【0327】この場合、最も優先順位が高いのは、手動
運転の緊急自動車である。地震などの大災害により交通
機関などの社会基盤が被害を受けた場合には、手動運転
の緊急自動車が使われる。このような事態のときに、知
能自動車20はその緊急自動車の周囲を走行することが
許されない。なお、このとき無資格の民間人が勝手気ま
まに手動運転すると、それは社会の交通システムを混乱
させて人命をも危険に陥れたと判断される。その犯人
は、経済的被害を受けた被害者からすべての賠償請求に
対応する義務を負う。犯人の走行記録と被害者の被害記
録はすべてデータとして記録されており、刑事および民
事裁判の証拠となる。
【0328】二番目に優先順位が高いのは、自動運転の
緊急自動車20である。最短時間で目標地点に到達でき
るよう、他の知能自動車20の通行が制限される。ただ
し、緊急自動車同志の間でも、状況に応じた優先順位が
設定される。急病人を乗せたタクシーが低優先度の緊急
自動車として取り扱われる場合もある。
【0329】三番目に優先順位が高いのは、公共交通機
関である路線バス、危険物、生鮮食料品を運搬するトラ
ックである。乗客が急行料金の支払いに同意したタクシ
ーについても専用道路の特別利用料金を支払うことによ
って、この範疇の運行が許可される場合がある。ただ
し、いずれの場合も、運行時刻を厳密に守ることが義務
づけられる。
【0330】その他の民間車両と、緊急出動中でない官
用車は、すべて同格に扱われ、交通管制システム72が
専用道路上を走行する多数の知能自動車20の交通管制
を行う場合と同様の管制計画が立案されて、交通管制司
令情報として各通過地点および各通過地点における走行
速度、通過時刻の指示が与えられる。このようにして与
えられた交通管制司令情報は、常に変更される可能性が
ある。これは、突然に緊急自動車が出動命令を受けた
り、交通事故によって道路の通行が規制されたりするこ
とがあるからである。
【0331】交通管制司令情報の変更があると、車両の
流れが急変したり、中には出動命令を受けた緊急自動車
を避けるために進路を急変させる車両が現れるので、各
知能自動車20は、周囲の交通状況の監視だけでなく、
緊急自動車を避ける指示を含んだ交通管制司令情報を受
け、その情報に応じた行動をとる。
【0332】<9>異常事態を交通管制に報告するタク
シーが車内の異常を撮影した防犯カメラの映像と音声を
報告するのと同様に、バスやトラックにも防犯カメラが
搭載される。これによって車内での犯罪が抑止される。
【0333】また、知能自動車20が走行中に車外の映
像を撮像し、そのうち事故、交通状況に関する映像とデ
ータが交通管制システム72にリアルタイムで送られ
る。このようにして専用道路上を走行するすべての車両
20は、必要に応じて交通管制システム72の移動式モ
ニタカメラとして機能する。
【0334】ただし、車載したカメラの台数が少なく、
そのカメラを自車の最低限の安全運行のために使わざる
を得ないような機能が低くて余裕のない知能自動車20
については、必ずしも交通管制システム72からの交通
状況の取材要請に従う義務はない。
【0335】取材要請に応じたために運行予定が遅れた
知能自動車20(ただし、運行時刻が厳密に指定されて
いる車両には、極力、取材要請を行わない)は、緊急自
動車に準じた優先度の交通管制司令情報として、各通過
地点や各通過地点における走行速度、通過時刻の指示が
与えられるため、かえって効率的に最終目標に到達する
ことができる。
【0336】また、個々の知能自動車20で取得された
映像と各種のデータは、それぞれの企業にテレビ電話に
よりリアルタイムに電送されたり、車載の映像記録装置
に蓄積されてそれぞれの企業の情報資産となる。タクシ
ー会社であれば、乗客の行き先確認の際に映像で確認し
てもらうために、既に記録した映像が再利用される。こ
のために、種々の時間帯のデータを収集すべく、データ
収集用の知能自動車20が予め走行される。
【0337】2)知能自動車20が複数で走行する場合 図15に示すように、交通管制システム72、74、7
7、80、83は、それ自体一つの中央計算機で構成さ
れているのではなく、機能する目的が異なる多数の計算
機が地域別の階層を持ちつつ交通管制システムとしての
ネットワークを構成している。
【0338】この階層の最上位に近いあたりに、国(ま
たは経済圏)全体の緊急自動車の運行計画を立案する計
算機が存在する。優先度は低いものの、長距離観光バ
ス、長距離トラックなどの運行計画を立案する民間企業
の計算機は、全国レベルの交通管制システム83に対し
て交通の混雑状況、予想を問い合わせることができる。
【0339】全国規模の交通管制システム80の下に、
全国を5〜10個程度に分割した地方規模の交通管制シ
ステム80があり、特に地方経済の物流を管理してい
る。
【0340】地方レベルの交通管制システム80の下に
地域レベルの交通管制システム77があり、複数の地方
公共団体が参加し、地域間における交通を管理する計算
機が存在している。
【0341】地域レベルの交通管制システム77の下に
地区レベルの交通管制システム74があり、さらにその
下に所轄区間の交通管制システム72が存在している。
これら交通管制システム72、74には、複数の交差点
間での道路の交通管理を行う計算機が存在する。
【0342】いずれのレベルの交通管制システムにおい
ても、一の計算機が管理する地域は同一階層の他の計算
機と重複するように設計される。このため、特定の計算
機がたとえダウンしたとしても、他の計算機に格納され
たデータに基づいて交通管制が維持される。ただし、初
期の段階では、知能自動車20の新型交通システムは、
全国に広がっておらず、特定の実験地域おける公共交
通、物流、防災用のシステムとしてスタートすることに
なると予想される。そして全国に広がるまでには、何十
年もかかる大工事となる。
【0343】したがって、システムの陳腐化への対策が
要求される。前述したように、専用道路には、昔に生産
された知能自動車と最新型の知能自動車が混在して走行
することになる。また、交通管制システム72、情報通
信ネットワーク1についても全国一斉に最新型に切り変
えることはできず、旧式と最新型が混在することにな
る。全国に張り巡らされた携帯電話の交換網でも新旧の
混在が起きていくと予想されるが、同様なことは知能自
動車20の交通管制システム72、情報通信ネットワー
ク1においても発生する。
【0344】しかし、知能自動車20は携帯電話と違
い、乗客の生命、貨物の資産価値が事故によって失われ
る可能性がある。したがって、何十年にもわたる道路の
使用を考えれば、拡張性の高いアーキテクチャを採用す
ることが課題となる。
【0345】今日の一般道路における信号機による交通
の制御を観察すると、大渋滞で車が走れないのでない限
り、信号機は多数の車両をひとまとまりにして取り扱っ
ている。それが最も顕著に現れるのは、長い直線コース
の手前に信号機が設けられている場合である。
【0346】信号が青になると車両の一団が解き放たれ
たように直線コースに入り込む。交差点のどちらの方向
の信号も赤になると、車両の流れは一時途絶える。これ
を上空から観察すると、直線コースを走行する車両はい
くつかの群れに分かれており、その群れのなかで一列の
縦横に並んだり、相互に位置を入替え、前後左右の距離
を調整し、あるいは急行する車両に道を譲ったりしてい
る。
【0347】すなわち、道路上の車両の群れは、断続的
に続いているものの、個々の車両については「互いに隣
接する車同士の協調動作」を行っているに過ぎない。
【0348】有人の車両では、車両の運転者の自律性が
著しく高度であるために、交差点の信号機の点滅を調整
して適当な大きさの車両の群れのかたまり(クラスタと
呼ぶ)を生成し、その中で車両同士の自律による協調を
行わせている。
【0349】すなわち、信号機を使用して交通の流れを
制御する方式では、車両は赤信号で停車しなければなら
ず、信号の手前で減速し、信号で停止し、信号通過後に
再び加速する動作を行うことが原因となって、道路上に
は車両のクラスタが生成される。人間による運転では、
クラスタにおける車両同士の協調のための意思疎通は、
人間の視覚と聴覚を用いた通信手段によって行われる。
つまり、左右折、ブレーキ灯などの信号のほか、手、ク
ラクションによる合図、車体の移動による意思表示であ
る。これら相手の車両の合図と運動から相手の意思が推
測される。つまり、人間の知覚機能と推論機能を用いて
相互に意思を推測し合うことができる。
【0350】こうした合図、運動による意思表示では、
複雑な情報を正確に伝達して交渉することは困難である
が、人間にとって容易な伝達方法であり、伝達すべき情
報が少ないので、短時間に交渉が終わるという点で、ク
ラスタにおける協調を実現するのに十分実用的である。
【0351】逆に、人間の運転による自動車では、隣接
し合う自動車同士が電話し合って直接的に「言葉」を交
して交渉することは、困難である。これは、一台の車は
周囲の何台もの車と同時に交渉しなければならず、その
同時に交渉する関係は長い鎖のように道路上の車両に次
々と関連を持つため、特定の相手と交渉しただけでは調
整がつかないのである。また、このような複雑な交渉
を、例えば携帯電話で行ったとすれば、運転そのものが
おろそかになって事故を起こす虞がある。このように、
人間の運転による自動車では「言葉」による交渉は適し
ていない。
【0352】さらに、自分の自動車の周囲を取り巻くク
ラスタを構成している複数の車両に働きかけて、共通す
る行動規範、情報を変更するように要求するなどという
ことは、人間の運転による自動車では、全く現実的でな
い。これは、走行中の車の運転者が個人的に持っている
共通の情報、行動規範を臨時かつ的確に訂正させること
は技術的に不可能であるし、人間は「あかの他人」の命
令など聞こうとしない性質を持っているからである。
【0353】専用道路上を走行する複数の知能自動車2
0を協調動作させるためには、知能自動車20の特性
が、上述した従来の人間の運転者の特性と大きく異なる
ことに注意しなければならない。
【0354】以下、かかる協調動作機能を実現する方法
を述べ、それぞれについて「クラスタを作る→編隊動作
をする→クラスタを解散する」という動作を行う場合に
ついて説明する。
【0355】<1>複数台の協調動作の分類 本実施形態の知能自動車20の制御装置は、前述したよ
うに、情報通信ネットワーク1に接続された第一層2
と、この第一層2のデータベースの情報を用いて与えら
れた任務を遂行する自動制御を行う第二層5と、概念を
表わす記号Vを用いて推論する推論機能8、環境を認識
して概念を表わす信号Vを生成する知覚機能7とからな
る第三層6とを中心にして構成されている。
【0356】第一の協調動作の実現方法は、情報通信ネ
ットワーク1に接続されたデータベース(第一層2)に
格納されている交通管制システム72からの司令の情報
を、第二層5で行われる自動制御の「目標」として利用
する方法である。
【0357】この第一層2に格納された司令情報は、交
通管制システム72側がそれを発行する段階において、
その地域を走行する知能自動車20が協調できるように
計画された臨時の交通規制の情報である。
【0358】したがって、交通量が十分に少なくて必要
以上の車間距離が確保できる場合には、各知能自動車2
0は交通管制システム72からの司令の情報にしたがっ
て走行するだけで、計画どおり自動走行ができる。
【0359】何十年にも亘って使用される新型の交通シ
ステムでは、初期の数年間は交通量が少ないので、あた
かも特別な臨時列車の運行のように、知能自動車20一
台ごとについて交通管制システム72側で予め計算した
交通管制司令情報(各通過地点および各通過地点におけ
る走行速度、通過時刻の指示)に基づいて知能自動車2
0は走行される。ただし、新型の交通システムが実用化
されて数年を経て交通量が増えてくると、知能自動車2
0一台ごとについて交通管制システム72側で予め上記
計算を行ったとしても、交通量が多いために車両間の干
渉がおき、計画通りの精密な運行が困難となる。
【0360】そこで、交通管制システム72は、交通管
制地域内の特定の区間の中でほぼ同じ経路の走行を予定
している何台かの知能自動車20をクラスタとして取り
扱い、その区間を走行中、クラスタの内部で起こり得る
進路変更に伴う左右の並べ替え、車間距離等の司令を、
知能自動車20に対して送るのである。
【0361】第二の協調動作の実現方法は、概念を表わ
す記号Vを用いて推論する推論機能8を利用して、知能
自動車20同士で交渉するという方法である。
【0362】すなわち、推論機能8によって車両同士が
干渉する危険を互いに認識した複数の知能自動車20の
間で、交渉を行って干渉を回避しつつ、自己の車両が走
行すべき走行経路を確保しようとするものである。
【0363】この交渉は、記号Vを用いて推論すること
によって行われるものであり、記号Vのやり取りは、予
めコード体系を取り決めた通信方式によって行われる。
身体部9に接続されたセンサから出力される信号をコー
ド化して第一層2のデータベースに格納したり、情報通
信ネットワーク1を利用して知能自動車20同士が通信
する方法を用いることができる。
【0364】なお、この交渉は、互いに相手の車両を発
見し、通信を安定に継続して行うことができ、通信相手
と自己の車両が干渉する相対位置関係になったときに限
りに行われる。これは、遠く離れ、自己の走行経路と干
渉する危険のない場合に、交渉を行うことは無意味だか
らである。
【0365】第三の協調動作の実現方法は、自己の車両
の環境を示すセンサ信号を用いて知能自動車20同士で
協調するという方法である。
【0366】この方法は、センサ信号のやりとりは行わ
ずに、自己の車両周囲の環境を示すセンサ信号を用いる
だけで、見かけ上、複数の知能自動車20同士の協調動
作を行うというものである。
【0367】以下、上記第一の協調動作実現の方法(計
画された所与の任務の遂行)、第二の協調動作実現の方
法(記号を用いた個体間の交渉)、第三の協調動作実現
の方法(環境に反応する見かけ上の協調)について個々
に説明する。
【0368】<2>第一の協調動作実現の方法(計画さ
れた所与の任務の遂行) まとまって走行する知能自動車の集団(クラスタ)に対
して交通管制システム72が集団行動を指令すると、そ
のクラスタは見かけ上まとまって行動する。これは、車
両間で交渉や連絡がなくでも、個々の知能自動車20が
与えられた指示に従って任務(misson)を果たすからで
ある。
【0369】a.団体旅行のバスツアーの例 団体旅行のバスツアーのように数台の大型車両がひとま
とまりで国内の広い地域を移動する場合には、次々と個
々の地域を通過するたびにそれぞれを所轄する交通管制
システムの都合でバラバラの経路を指示されることがな
いよう特別の管理が必要である。
【0370】広域を管理する上位の交通管制システム8
3が、その団体旅行のバスツアーを“広域を移動する知
能自動車の集団”と認定した場合には、その“知能自動
車の集団”が、次々と下位の管制システムが管理する地
域を通過するのを監視し、それぞれの地域ごとにまとま
って走行するに必要十分な優先順位を与えるように各地
域の所轄の交通管制システムに依頼が出される。
【0371】ただし、交通安全のためには、上位のシス
テムからの依頼よりも各所轄の交通管制システムの現場
の判断が重要であるため、指示された優先順位があまり
高くない場合には、「その同じ優先順位で緊急自動車を
運行する」などの判断が各所轄の交通管制システムにお
いてなされる。
【0372】大規模災害など国家規模での危機を乗り切
るために緊急自動車の集団を大挙して広域移動させる場
合には、広域の交通管制システム83から、下位の各地
域の所轄の交通管制システムに対して極めて高い優先度
の依頼が発行される。
【0373】b.特定の走行区間内に限った一括運用管
理 所轄の交通管制システム72が管理する走行区間(例え
ば交差点と交差点の間で道が分岐していない直線コー
ス)の同一経路を、複数の車両が同一時刻に走行せよと
の指示がなされたならば、その指示を受けた知能自動車
20同士が道を奪い合って危険である。
【0374】また、個々の知能自動車20ごとに若干づ
つ違う経路と時刻を指示したとしても、車両の位置計測
誤差、走行実績の誤差のために、車両同士がニアミスを
起こしてしまうこともある。
【0375】そこで、これらニアミスを起こしそうに接
近する可能性のある車両同士は、特定の走行区間内に限
って、“知能自動車の集団”(クラスタ)として管理さ
れる。 例えば、5台の車が次の交差点でも同じ方向に
進む計画がある場合には、これら5台の車に対して「互
いに車間距離をとり、並進を避けて走るように」との指
示が出される。
【0376】また、クラスタの中で次の交差点で右折ま
たは左折する車両が存在する場合には、その車が次の交
差点で減速しても、集団の中の後続の車が追突しないよ
うに、各車の経路だけではなく、車両間の相対的な運動
に関する指令が出される。
【0377】また、特定の走行区間の途中に、タクシー
の停車目標点がある場合には、集団の中の後続の車がそ
のタクシーに追突しないように、各車の経路だけでな
く、車両間の相対的な運動に関する指令が出される。
【0378】このように、交通管制システム72から各
知能自動車20に対して、各知能自動車20が互いに矛
盾した危険な行動をとらないように、指令が与えられ
る。
【0379】c.規制区域内での走行制限 大規模な災害によって特定の交通管制システム72が所
轄する狭い地域が通行不能になった場合には、その地域
を通過する予定の知能自動車20に対して、階層の上位
に位置する地方ないしは広域を管理する上位の交通管制
システム83、80から迂回経路の計画が与えられる。
【0380】但し、災害の被害が甚大であり、迂回経路
によっても所定の交通量を確保できない場合には、各知
能自動車20の通行の優先度に応じて通行許可と経路指
示が与えられる。例えば、低い優先度しか与えられない
車両(例えば行楽地へむかう観光バス)は、途中で停止
を命じられるか、あるいは最初から運行許可が与えられ
ないことになる。
【0381】知能自動車20に既に通行許可が与えら
れ、交通管制司令情報(各通過地点および各通過地点に
おける走行速度、通過時刻の指示)が与えられていたに
もかかわらず、その予定走行経路上で交通事故が発生し
たり、優先度が高い緊急自動車を通す必要が生じた場合
には、交通管制システム72は、その地域内に存在する
知能自動車20に対して緊急事態発生に伴う交通管制司
令情報として、車両の速度を抑制するように司令する。
【0382】これは、各車両20に、新しい交通管制司
令情報を生成するまでの数秒の間に、各車両が高速走行
することに起因して状態が激変してしまうことを防止す
るためである。
【0383】また、各車両20で新しい交通管制司令情
報を書き替えるに要する時間は、数十分の一以下のわず
かな時間であるが、この直後に車両間でニアミスが発生
したり、運転状態が急変したりして事故が起きることを
防止するためにも各車両20に対して減速が命じられ
る。
【0384】交通量が多いときに、各車両20が減速す
ると交通渋滞が起きるのが一般的である。このため、交
通管制システム72から、隣接する交通管制システムに
対して、交通管制システム72が管轄する地域を避け、
別の地域に迂回する経路を走行するようにとの指示を出
すよう、依頼がなされる。このようにして、混雑してい
る地域に進入する車両が制限され、交通渋滞が広がるこ
とが防止される。
【0385】<3>第二の協調動作実現の方法(記号を
用いた個体間の交渉) 高速で走行する車両20に対して、特定の座標位置を特
定の時刻に通過するように指令を与えたとしても、車両
20の位置推定誤差、路面の状況、道路の混雑状況など
によって、実際には、その特定の座標位置を特定の時刻
に通過できないことが多い。
【0386】例えば、時速80キロで走行中に、指定さ
れた地点を通過するのに交通渋滞で±10秒の遅れが生
じたとすれば、交通管制システム72が計画していた地
点と実際の車両の位置との間には、±200m以上の誤
差(前後の幅にして400m以上に相当)が生じてしま
う。通常、この速度で走行する場合には、概ね80m程
度の車間距離を取っているので、400mもの誤差範囲
には5台程度の車両が含まれてしまう。このため、交通
管制システム72からの指示を、「鵜呑み」にしてしま
うと、前後左右にいる車両を、いわば“人違い”してし
まう虞がある。停車するのが後ろの車両であると判断し
ていたのに、直前の車両が突然に停車してしまうことに
なり、事故を招来する虞がある。
【0387】そこで、各車両20は、こうした事態を招
かぬように、前後左右の車両と通信によって連絡を取っ
て、互いに身元を確認し合う処理を行う。
【0388】この結果、交通管制システム72から告げ
られたのと違う車両が近くに存在していることが確認で
きたならば、互いに危険であるから、その旨が直ちに交
通管制システム72に対して報告される。
【0389】報告を受けた交通管制システム72は、異
常のある車両20の現在位置、現在時刻の正確な値を再
確認した後、正しい運行の指示を車両に与え直す。この
ようにして、車両20同士の前後左右の関係を正しく補
正することができる。
【0390】車両20同士の通信は、情報通信ネットワ
ーク1を用いてもよく、局所的な通信(電波、光、音な
どを用いて明確な符号化をしたもの)を利用してもよ
い。この局所的な通信Fが行われている様子を図2
(a)に示す。
【0391】情報通信ネットワーク1を使用する場合に
は、個々の車両に固有の認識番号(いわゆるID番号)
が必要とされる。情報通信ネットワーク1によれば、高
速で品質のよい通信が可能となる。ただし、実際には、
遠方の車両のID番号を、近くの車両のID番号と誤っ
て通信してしまう危険がある。
【0392】一方、局所的な通信は、音ならば数m、光
なら十数m、電波でも数十mの範囲でしか確実な通信を
行うことができない。
【0393】しかし、明らかに近くに存在する車両とし
か通信することができないので、「人違い」をする危険
は少ない。
【0394】従って、通信の相手の車両のID番号を確
認するためには、局所通信を使用し、こうして確認でき
た相手の車両とデータ交換するためには、高速の情報通
信ネットワーク1を使用するのが実用的である。とりわ
け、特定の走行区間でクラスタを構成した直後には、点
呼を行って「人違い」の車両が存在しているか否か、逆
に予定していた車両が「迷子」になっていないかどう
か、確認する必要があり、こうした場合に局所通信が使
用される。
【0395】a.追い越したい場合に、隣接車両の協力
を得る緊急自動車が高い優先度を与えられて先行する車
両を追い抜く場合には、追い抜かれる側の車両20に
は、予め交通管制システム72から「特定のID番号の
緊急自動車が追い抜く予定であるから、協力するよう
に」との司令が与えられている。
【0396】その上で、専用道路上を急行してきた緊急
自動車は、前方を塞いで走行している車両20を発見す
ると、先行する車両20に対して走行路を譲るようにと
の依頼を通信によって与える。こうして依頼を受けた車
両20は、減速して路肩に寄った場合に危険が生じない
か否か外界を観察する。この場合、第二層5が不具合予
測eを出力することによって、第三層6による観察が行
われる。この結果、「危険が無い」と判断した場合に
は、依頼を発した緊急自動車に対して速やかに追い越す
ように督促するとともに、自らは、減速しながら路肩に
よって緊急自動車を通過させ、その状況を交通管制シス
テム72に報告する処理を行う。
【0397】逆に「危険がある」と判断した場合には、
依頼を発した緊急自動車に対し追い越すのを一時待つよ
うに回答するとともに、自らは減速しながら路肩によっ
て緊急自動車を通過させるのに適切な地点を探しつつ、
その状況を交通管制システム72に報告する処理を行
う。
【0398】また、緊急自動車からの追い越しの依頼を
受けていない隣接車両が原因で、緊急自動車に道を譲れ
ない状況であれば、交通管制システム72から、それら
追い越しの依頼を受けていない車両に対して、道を譲る
ようにとの走行指令が発せられる。
【0399】このようにして、各車両20は、走行に関
する基本的な任務を交通管制システム72から受けつつ
周囲の状況に対応するとともに、自車だけの判断では対
応しきれない場合には、交通管制システム72による調
整を受けることになる。
【0400】b.車線変更したい場合に、隣接車両の同
意を得る 2車線の走行区間で、複数の車両20がクラスタを構成
して走行し始めたとき、次の交差点で右折する予定の車
両20が左側の車線を走行していたとする。この場合、
その右折すべき車両が次の交差点の直前で左車線から急
に車線を変更するのは危険であるので、なるべく早い時
期に周囲の車両の協力を得て、車線変更を完了しておく
必要がある。
【0401】個々の車両20は、クラスタを構成してい
る他の車両20の情報(ID番号、クラスタ中での相対
位置、クラスタ内の順位、次の交差点までの各車両の運
動の計画)を受領する。
【0402】ここで、クラスタ内の順位とは、クラスタ
のリーダ、構成員であることを識別するための順位であ
る。リーダは、クラスタの代表としてクラスタ全体の運
動の記述に使用される車両のことである。リーダ以外の
他のクラスタ構成員の運動は、リーダの位置が局所的な
座標系の原点とされ、この原点に対する座標位置(リー
ダに対する相対位置)をもって記述される。
【0403】すなわち、個々の車両20は、交通管制シ
ステム72から、通過すべき地点、時刻を指定されてい
るが、ある瞬間の実際の位置には、数百m程度の誤差が
ある。よって、この交通管制システム72から与えられ
たデータに基づき、全て車両の運動を個々の車両の自由
裁量に任せるのは交通管制上、危険であるため、クラス
タの中でリーダを中心とした相対運動をさせるのであ
る。
【0404】例えば、6台の車両20からなるクラスタ
があり、このクラスタの中で次の交差点で右折する予定
の3番目の車両20-3が左側の車線を走行しており、こ
の車両20-3の右車線に移動したい位置に2番目と4番
目の車両20-2、20-4が存在しているものとする。こ
の場合には、2番目と4番目の車両20-2、20-4がそ
れぞれ前後に移動して3番目の車両20-3を間に入れて
やるように、リーダを中心とした相対運動が実行され
る。
【0405】クラスタ中の各車両20は、お互いの運動
の予定を互いに知っており、このような動きを自動的に
行う条件は揃っている。
【0406】ただし、旧式の制御装置をもっている車両
では、このような自動的な動きができるほど高性能では
ないため、交通管制システム72からそれぞれの車両に
指示が出されることによって同様の車線変更がなされ
る。
【0407】この点、高度な制御装置を持つ車両20で
は、交通管制システム72からの指示が降りてくる前の
段階で、自己の車両20が動くべき方向の安全確認を開
始することができるので、迅速に車線変更をすることが
できる。
【0408】知能自動車20を用いた新しい交通システ
ムが導入されて長期間経過すれば、専用道路上の交通量
が増えて渋滞が起こりがちであるが、新しい高性能な制
御装置を持った車両20が増えることにより、交通管制
システム72からの指示が速やかに反映されて交通整理
の能率が上がり、さらに車速を上げたり、クラスタ間の
距離を短くすることができるので、単位時間あたりに通
過できる車両台数を数倍に増やすことも可能となる。
【0409】c.道路を緊急離脱したい場合に、隣接車
両に警告する クラスタを構成している車両20が、まもなく目標点に
到達する寸前、もしくは左右折する直前であって、大き
く減速してクラスタから離脱する必要がある場合にも、
できる限り早い時点で、クラスタの他の車両20の走行
を妨害しない相対位置に移動する必要がある。これを実
現するための車両間の位置を調整する方法と手順は、基
本的には、上述した車線変更の場合と同じである。
【0410】しかし、走行中の車両20が突然の故障し
た場合には、緊急に減速して停車しなければならない。
緊急事態では、1秒の何分の1かの遅れが大惨事を招く
場合があり、緊急事態が発生してしまってから交通管制
システム72がクラスタ内の各車両20の位置関係を調
整しようとしても、それまでに数秒の時間が浪費されて
いることもあり、結局、手遅れになってしまう虞があ
る。
【0411】そこで、隣接する車両20の異常を早めに
発見するために、互いの車両20に異常が発生している
かを確認し合う処理がなされる。これは、クラスタを構
成する車両20同士で、内部の診断情報を交換し合うこ
とで実現される。
【0412】ここで、交通システムの初期の知能自動車
は、データを交換しても解釈する能力が低いので、少な
い情報しか共用することできない虞がある。しかし、後
年の高性能車両20は、データの解釈能力が高くなるの
で、多くのデータを交換することができ、隣接する車両
20の異常を、より早く発見することができ、回避方
法、回避経路を探索する時間の余裕が生まれるので、安
全に運行することが期待される。
【0413】<4>第三の協調動作実現の方法(環境に
反応する見かけ上の協調) 大きな速度差のある車両20の間では、相互間の距離が
十分近くなるのは一瞬にすぎない。このため、前述した
局所的な通信によって、互いの車両の「身元」確認のた
めに、IDを交換することができず、正確な現在位置、
行動の予定などを情報交換することができない。
【0414】したがって、交通管制システム72から互
いの車両20の概略位置の情報を得ていたとしても、時
速数十キロで数百mずつの位置誤差を有したまま走行し
ているので、わずかの時間(数秒)の間、互いの実際の
位置関係を知ることができないために衝突事故を起こす
虞がある。
【0415】よって、各車両20は、自己の車両と大き
な速度差のある車両が近くに存在する可能性がある場合
には、自己の車両のセンサによって、大きな速度差のあ
る車両の存在を検出する処理を実行する。
【0416】この結果、大きな速度差のある車両の走行
路と自己の車両の走行路が干渉することが検出された場
合には、車両間の速度差が大きく衝突するまでわずか
(数秒もない)であり、車両相互間で情報交換のために
IDを交換する余裕がないので、交通管制システム72
に調整を求めることなく、また車両相互間で通信によっ
て交渉することもなく、自己の車両20の判断で、その
大きな速度差のある車両との衝突を回避する行動をと
る。 a.高速走行車線に、低速の車両が加速して合流する 停車している知能自動車20が発進し、専用道路を走行
している他の車両20とともに高速で走行させるには、
加速のための十分な時間的な余裕が必要である。
【0417】ここで、一般の有人車両で手動運転をして
いる場合に、かかる合流を行う際に人間は、高速走行路
の後ろの方から他の車両が走ってこないかどうかを必ず
確認する作業を行っている。また、高速で走行している
車両側の人間も、路肩や加速車線から他の車両が走行路
に入ろうとしていないかどうかを常に警戒する作業を行
っている。このように、人間が手動で運転する場合に
は、同時に多くのことに気を配ることができるので、周
囲の地形、道路、建物の様子からみて、どのあたりから
車両が飛び込んで来そうかを想像することができる。
【0418】しかし、知能自動車の能力は、人間の環境
認識能力に比べてはるかに劣っているため、どこに他の
車両が存在しているかを推論することは容易なことでは
ない。 ただし、初期の性能の低い制御装置を持つ知能
自動車に較べて、十数年も後に開発される高性能の制御
装置を持つ知能自動車では、どこに他の車両が存在して
いるのかを推論する能力が高くなるので、このような合
流の場面での安全性を高めることができると期待され
る。
【0419】現段階において、低速の知能自動車20が
走行車線に加速して合流する場合に、合流すべき走行路
の後方から他の車両が来ないかどうかを確認する最も確
実な方法は、まず交通管制システム72に、合流すべき
地点の誤差の範囲内に他の車両が走行していないかどう
かを問い合わせることである。これは、前述した図25
のステップ301の処理に相当する。この結果、その誤
差範囲内に他の車両が走行していることが判別される
と、走行路への進入は、一時見合せられる。
【0420】上記合流すべき地点の誤差範囲内に他の車
両が走行していないと判別された場合でも、交通管制シ
ステム72の故障、間違いを考慮して、自己の車両20
のセンサによって合流すべき地点に他の車両が存在して
いるか否かを確認する処理が実行される。この確認処理
は、前述した図25のステップ305の「外界調査」に
相当する。
【0421】こうして自己の車両20による確認処理が
なされた後に、その確認結果(これは図22の結論1〜
結論6に相当する)に応じて、走行路に進入して加速を
開始する行動をとる。このとき、自己の車両20の現在
位置、速度、加速度、この報告の時刻等が交通管制シス
テム72に報告される。一方、知能自動車20が走行路
を走行中の場合を想定すると、自己の車両20としては
他の車両がいずれの場所から進入してくるか正確な位置
を判別することはできない。
【0422】しかし、走行路に進入しようとする車両の
現在位置は、誤差を含むとはいえ、交通管制システム7
2において把握されている。
【0423】そこで、交通管制システム72は、上記走
行路に進入しようとする車両の現在位置のデータに基づ
き、この走行路に進入する車両と干渉する可能性のある
走行路上の車両20に対して、干渉についての警戒の情
報を提供する。
【0424】この結果、この警戒情報を受け取った走行
中の車両20は、走行路に進入しようとしている車両か
ら自己の車両20が容易に発見されるように、直ちに前
照灯、フォグランプ等の前方を照射する照明灯を点灯さ
せたり、点滅させたり、照明の強弱の切替えを繰り返す
行動をとる。夜間は、前方の安全確認と乗客の不安感を
なくすために、前照灯を点灯させて走行しているため、
これを点滅させたり、照明の強弱の切替えを繰り返す行
動がとられる。
【0425】b.駐停車中の車両に、前後への接近の了
解を得る それまで走行してきた車両20-1が目的地の直近に来る
と減速して路肩ないしは停車用のプラットフォーム等に
停車する準備を開始する。
【0426】ところが、この場合、目的地あるいはその
数m手前に他の車両20-2が停止していることがある。
【0427】ここで、この目的地に停車している車両2
0-2が電源投入されており、交通管制システム72と交
信しているのであれば、すでに後方から停車すべく近づ
いてくる車両20-1の存在は認識しており、この車両2
0-1と衝突しないように調整されている。
【0428】しかし、目的地に停車している車両20-2
の電源が投入されていないと、交通管制システム72側
では、この車両20-2の現在位置は全く把握できず、停
車しようとしている車両20-1との衝突を調整できない
場合がある。
【0429】このように車両20-2の電源が投入されて
いない場合とは、たとえば車両20-2が企業の物流セン
タ、工場、ホテルの駐車場等の私有地に入ってしまった
場合のように、公共の道路の安全運行に責任を持つべき
交通管制システム72が管理する区域に存在しない場合
である。電源が落ち、停車している状態だけではなく、
車両20-2が私有地の入り口を目標点にして停車した後
に、電源を投入したまま企業側が私有地の中で自動運転
から手動運転に切り換え走行している状態でも、交通管
制システム72は、車両20-2の現在位置を把握できな
い。
【0430】よって、車両20-2が電源を落とし停止な
いしは手動運転で走行しているときは、その車両は「交
通管制上、無登録」と認識される。なお、車両20-2が
自動運転によって停止しているときは、その停止位置は
交通管制システム72で把握されているので、その車両
は「交通管制上、登録」と認識される。
【0431】そこで、車両20-1が目標点の直近に来て
路肩ないしは停車用のプラットホーム等に停車しようと
したときに、車両20-1が他の車両20-2の存在を認識
し、かつその車両20-2は交通管制システム72の登録
上、「無登録」であるとされている場合には、その車両
20-2は電源を落とし停止ないしは手動運転にて走行し
ている可能性がある。
【0432】このため、停車しようとする車両20-1が
前方に「交通管制上、無登録」の車両20-2を認識した
時点で、この無登録車両20-2がたとえ前後に突然動い
たとしても衝突しない程度に接近して停止する行動がと
られる。ここで、人間が車両20-2を手動運転している
のであれば、電源が投入されており、相手の車両20-2
との間でID番号の交換ができるので、局所通信手段に
て相手の車両20-2のID番号を問い合わせる処理を実
行する。この場合、相手の車両20-2のマンマシン・イ
ンターフェースを介して人間の運転者に対して、現在の
場所から移動する意思があるか否かが聞き出され、この
結果が停車しようとする車両20-1に伝えられる。
【0433】この結果、手動運転の車両20-2を現在の
場所から移動する意思があれば、後方の知能自動車20
-1 は一旦停止して待機する。手動運転の車両20-2を
移動させる意思がなければ、知能自動車20-1 は交通
管制システム72と乗客に対して新たな停車位置を打診
する。ここで、交通管制システム72が停車位置の変更
を了解したのに乗客が納得しない場合には、情報通信シ
ステム1を介してテレビ電話にて知能自動車20-1 の
乗客と手動運転の車両20-2 の運転者との間で相談さ
せる。
【0434】c.対向車との、側面ないしは正面衝突を
避ける 知能自動車20の専用道路は、通常、上りと下りが別の
車線であり、反対車線に飛び込むことがない限り、正面
衝突は起きないはずである。
【0435】また、交通管制システム72によって交差
点での右折、左折が管理されているので側面衝突も起き
ないはずである。
【0436】しかし、実際には、各瞬間における高速走
行車両20の位置が正確に把握できずに数百mもの位置
誤差を含んでしまう。
【0437】したがって、交通量が多く、車間距離がと
れない場合に各車両20の位置に誤差が生じてしまう
と、交差点での車両同士の干渉が予測される。
【0438】そこで、安全を優先して、交差点では、減
速ないしは一旦停止をする行動をとることにより車両2
0の正確な位置を交通管制システム72に掌握させるよ
うにする。
【0439】交通管制システム72の応答が遅く、この
交通管制システム72から何の指示もないまま進行する
と衝突するおそれがある場合には、優先道路を走行する
側の車両20が通過するまでの間、優先順位の低い道路
を走行する車両20は待機するようになされる。この場
合、いずれの道路が優先であるか否かが予め決められて
いる場合と、通常の交通信号のように一定時間ごとに切
り替わる場合とがある。
【0440】優先道路でない方の道路を通過している車
両20が交差点にさしかかり、交通管制システム72か
ら「そのまま進行せよとの明示的な司令」を受け取って
いる場合には、道路の優先性は無視して進行することが
認められる(人間の運転する自動車が、赤信号の交差点
で警官による交通整理に従って進行する場合と同様であ
る)。ただし、同じ場面で上記「そのまま進行せよとの
明示的な司令」を受け取っていない場合には、交通管制
システム72が故障ないしは応答が遅れている可能性が
あるので、交差点の前で減速ないしは一旦停止する行動
をとり、優先道路を走行してくる他の車両20が存在し
ていないことを自車のセンサで確認する処理がなされ
る。
【0441】公共の専用道路から分岐して企業などの私
有地に設けられた専用の私道では、交通管制システム7
2は交通整理を行わない。こうした私道は、個人所有で
あるために、道幅も公共の専用道路より狭い上に、人間
の手動運転に切り替えるまでの間は、自動で運転しなけ
ればならない。このため、車両20は、交通管制なしに
自己の車両20搭載のセンサの検出結果のみに基づき、
徐行しながら走行しなければならない。
【0442】この場合、狭い道で対向車が存在したとし
ても交通管制システム72による調整は期待できないの
で、自己の車両20搭載のセンサにより相手の車両を発
見して衝突する十分手前で減速ないしは一旦停止するよ
う行動がとられる。局所通信により、安全に「すれ違
い」ができるように相手側の車両と交渉してもよい。ま
た、相手の車両から自己の車両20を発見し易くするよ
うに、照明を明滅してもよい。
【0443】以上、本実施の形態では、人工知能機械が
知能自動車20である場合を想定して説明したが、本発
明の人工知能機械としては、これに限定されることな
く、以下に掲げる各種機械に同様に適用することができ
る。
【0444】図2(b)は、人工知能機械が無人建設機
械である場合の概略構成を示している。
【0445】すなわち、無人建設機械であるパワーショ
ベル1004、ブルドーザ1005は、この無人建設機
械搭載の無線通信装置を介して情報通信ネットワーク1
00と通信を行うとともに、無人建設機械搭載の各種の
センサを用いることによって、周囲の作業者、通行人、
有人運転の車両1008に危害を及ぼさないよう注意を
払いつつ、土砂、コンクリートブロック等の対象物10
06に対して所定の土木作業を実施する。また、無人建
設機械同士の通信は、情報通信ネットワークを用いても
よく、矢印Fにて示すように局所的な通信(電波、光、
音などを用いて明確な符号化をしたもの)を利用しても
よい。
【0446】図3(a)は、人工知能機械が物流機器で
ある場合の概略構成を示している。すなわち、物流機器
であるフォークリフト1010、無人台車1011は、
この物流機器搭載の無線通信装置を介して情報通信ネッ
トワーク1009と通信を行うとともに、物流機器搭載
の各種のセンサを用いることによって周囲の作業者、通
行人、有人運転の車両に危害を及ぼさない注意を払いつ
つ、荷物1012、設備1013等の対象物に対して所
定の輸送作業を行う。また、物流機器同士の通信は、情
報通信ネットワークを用いてもよく、矢印Fにて示すよ
うに局所的な通信(電波、光、音などを用いて明確な符
号化をしたもの)を利用してもよい。また、一定の設備
(1013)については情報通信ネットワーク1009
と有線通信Gにて情報交換させてもよい。
【0447】図3(b)は、人工知能機械が事務用ある
いは教育用の電子機器(OA機器)である場合の概略構
成を示している。
【0448】すなわち、これら電子機器は、この電子機
器搭載の有線もしくは無線の通信装置を介して情報通信
ネットワーク1014と通信を行うとともに、この電子
機器搭載の視覚センサ(例えばカメラ1015、101
6)、音響センサ、臭いセンサ、温度センサ、ガスセン
サ及び個人識別センサ1017の指向性、感度等をアク
チュエータにより調節して、これらセンサを介してユー
ザとの間でコミュニケーションをとりつつ、ユーザが希
望する処理を実行する。
【0449】例えば、情報通信ネットワーク1014の
外部に学習塾の本部を接続し、情報通信ネットワーク1
014を介して各家庭に設置された人工知能機械として
電子機器を、ユーザの家庭教師として機能させる実施が
考えられる。
【0450】また、情報通信ネットワーク1014の外
部に企業の本社・支社・営業所・研究所・各種の事務所
を接続し、情報通信ネットワーク1014を介して各事
務所に設置された人工知能機械としての電子機器を、ユ
ーザの相手となる事務所の事務担当者として機能させる
実施が考えられる。
【0451】図3(c)は、人工知能機械が建物(家
屋、ビル)である場合の概略構成を示している。
【0452】すなわち、人工知能機械である家屋101
9、ビル1020は、これら建物搭載の有線もしくは無
線の通信装置を介して情報通信ネットワーク1018と
通信を行ない、内部にいる人間、荷物、設備等の必要に
応じた空調等の制御、防犯管理、データの管理などを行
うとともに、建物に組み込まれた視覚センサ、音響セン
サ、臭いセンサ、温度センサ、ガスセンサ及び個人識別
センサの指向性、感度等をアクチュエータにより調節し
て、これらセンサを介してユーザとの間でコミュニケー
ションをとりつつ、ユーザが希望する管理を実行する。
【0453】例えば、情報通信ネットワーク1018の
外部に地域の電力供給基地を接続し、夏場の昼間などの
ように電力が不足してくると電力単価が変動して高くな
る代わりに、夜間の電力が安くなる契約であれば、夜間
の電力を熱、水素などのエネルギー形態に変換して蓄積
し、昼間の電力ピーク時に消費するよう人工知能機械と
しての建物を機能させる実施が考えられる。
【0454】また、ビル内の暖房装置を利用した自家発
電装置、屋上の太陽光発電装置などの小規模自家発電装
置を自家運転して、ビル管理のコストを削減すると同時
に、地域全体の電力需要の逼迫を防止するよう機能させ
てもよい。
【0455】また、夜間の事務所内に人間がいるかどう
かを自動的に検出し、不要な照明、空調を止めることに
よって、エネルギーの無駄を防止してもよい。
【0456】また、ビル内に自動的にパトロールするロ
ボットを配置して、夜間、無人で警備させてもよい。こ
の場合、不審者がロボットにより発見されたならば、そ
の移動経路をセンサによって検出して、追跡することに
より不審者の顔写真を暗視カメラでビデオ撮影し、その
撮影結果を情報通信ネットワーク1018を通じてビル
の外部に接続された集中警備センターに通報することが
考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、人工知能機械が知能自動車である場合
のシステム構成を示す図である。
【図2】図2(a)、(b)は人工知能機械の適用例を
示す概略図である。
【図3】図3(a)、(b)、(c)は人工知能機械の
適用例を示す概略図である。
【図4】図4は図1に示す第二層で行われる直接的な制
御を説明する図である。
【図5】図5は図1に示す第二層で行われる間接的な制
御を説明する図である。
【図6】図6は実施形態で想定している知能自動車の透
視斜視図である。
【図7】図7は交通管制システムの管制区域を示す図で
ある。
【図8】図8は全国レベルの管理区域が複数の地方レベ
ルに分割されて管理される構造を説明する概念図であ
る。
【図9】図9は一つの交通管制システムが統括する交通
管制区域の周囲に複数の観察区域が配置されていること
を示す図である。
【図10】図10は予定走行路をカバーする交通管制シ
ステムから知能自動車に送られる概略の走行計画を概念
的に示す図である。
【図11】図11は正六角形の交通管制区域内の地図を
示す図である。
【図12】図12は知能自動車が走行する走行路面を示
す図である。
【図13】図13は知能自動車の位置補正用標識の構造
を例示する図である。
【図14】図14は知能自動車の他の位置補正用標識の
構造を例示する図である。
【図15】図15は交通管制システムの階層構造を示す
図である。
【図16】図16は、図1に示す第二層が、第一層のデ
ータに基づき自動制御を行っている様子を概念的に示す
図である。
【図17】図17は、図1に示す身体部で行われる知能
自動車の走行制御の内容を示すブロック図である。
【図18】図18(a)、(b)、(c)は、所轄区域
の交通管制システムから情報通信ネットワークを介して
知能自動車に送られる予定走行経路を示す図である。
【図19】図19は、図1に示す第二層が、第一層のデ
ータに基づき自動制御を行い、第三層が第一層のデータ
に基づき推論を行っている様子を概念的に示す図であ
る。
【図20】図20は知能自動車が幹線道路に進入してい
る場面を示す図である。
【図21】図21は知能自動車が幹線道路に進入する際
の視野を示す図である。
【図22】図22は、第三層の推論機能で行われる処理
を説明するフローチャートである。
【図23】図23は知能自動車の第三層の構造を説明す
るために用いた図である。
【図24】図24は第三層の知覚機能の分別部の遷移状
態を示す状態遷移図である。
【図25】図25は知能自動車が所定の行動がとるまで
の処理の手順を示すフローチャートである。
【図26】図26は第三層の推論機能で行われる処理を
説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1 情報通信ネットワーク 2 第一層(記憶装置) 5 第二層(自動制御手段) 6 第三層(推論手段) 9 身体部(機械駆動手段) 20 知能自動車(人工知能機械)

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 記憶装置に記憶されたデータに基づ
    いて所定の推論を行い、この推論結果に応じた行動をと
    る人工知能機械において、 前記記憶装置に記憶されたデータに基づいて前記人工知
    能機械がとるべき目標の行動と当該人工知能機械の外界
    の現状とを読み取り、これら目標の行動と外界の現状と
    に基づいて当該目標の行動をとるための制御出力を発生
    する自動制御手段であって、当該目標の行動をとる際に
    生じる不具合を予測し、この不具合予測を出力する自動
    制御手段と、 前記自動制御手段から不具合予測が出力された場合に起
    動され、当該不具合がなくなるための推論を行い、この
    推論結果を前記記憶装置に記憶させる推論手段と、 前記記憶装置に記憶された前記推論結果と前記自動制御
    手段の制御出力とに基づいて、前記人工知能機械を駆動
    する機械駆動手段とを具えた人工知能機械。
  2. 【請求項2】 前記目標の行動をとる際に生じる不具
    合は、前記人工知能機械の外界の現状が不明であるとい
    う不具合である請求項1記載の人工知能機械。
  3. 【請求項3】 前記自動制御手段から出力される前
    記不具合予測のデータは、前記記憶装置の特定の領域に
    書き込まれ、 前記推論手段は、前記記憶装置の特定の領域に書き込ま
    れた前記不具合予測データを読み出すことによって推論
    が起動されるものである請求項1記載の人工知能機械。
  4. 【請求項4】 前記推論手段は、 前記人工知能機械の外界を検出し、当該外界を表象する
    記号を出力する知覚機能手段と、当該知覚機能手段から
    加えられる記号出力に応じて推論を行う推論機能手段と
    からなり、 前記推論機能手段から前記知覚機能手段に対して前記記
    号出力の選択肢を予め与えておき、 前記知覚機能手段は、 知覚条件を少なくとも1回変化させて外界を少なくとも
    2回検出し、この結果、前記選択肢の中から少なくとも
    2回以上同じ記号出力を選択した場合に、この記号出力
    を前記推論機能手段に加えるようにした、 請求項1記載の人工知能機械。
  5. 【請求項5】 情報通信ネットワークを介して外部
    と通信自在に接続され、自己の記憶装置に記憶されたデ
    ータに基づいて所定の推論を行い、この推論結果に応じ
    た行動をとる人工知能機械において、 前記情報通信ネットワークを介して外部から入力される
    外部データと、前記人工知能機械の内部で取得される内
    部データとが記憶される記憶装置と、 前記記憶装置に記憶されたデータに基づいて前記人工知
    能機械がとるべき目標の行動と当該人工知能機械の外界
    の現状とを読み取り、これら目標の行動と外界の現状と
    に基づいて当該目標の行動をとるための制御出力を発生
    する自動制御手段であって、当該目標の行動をとる際に
    生じる不具合を予測し、この不具合予測を出力する自動
    制御手段と、 前記自動制御手段から不具合予測が出力された場合に起
    動され、当該不具合がなくなるための推論を行い、この
    推論結果を前記記憶装置に記憶させる推論手段と、 前記記憶装置に記憶された前記推論結果と前記自動制御
    手段の制御出力とに基づいて、前記人工知能機械を駆動
    する機械駆動手段とを具えた人工知能機械。
  6. 【請求項6】 前記記憶装置は、前記外部データを
    前記人工知能機械内部で使用する際に、前記内部データ
    の形式に変換するとともに、前記内部データを前記情報
    通信ネットワークを介して外部に出力する際に、前記外
    部データの形式に変換するデータ変換手段を具えている
    請求項5記載の人工知能機械。
  7. 【請求項7】 情報通信ネットワークを介して外部
    と通信自在に接続され、自己の記憶装置に記憶されたデ
    ータに基づいて所定の推論を行い、この推論結果に応じ
    た行動をとる人工知能機械において、 前記情報通信ネットワークを介して外部から入力される
    外部データと、前記人工知能機械の内部で取得される内
    部データとが記憶され、かつ前記外部データを前記人工
    知能機械内部で使用する際に、前記内部データの形式に
    変換するとともに、前記内部データを前記情報通信ネッ
    トワークを介して外部に出力する際に、前記外部データ
    の形式に変換するデータ変換手段を具えている記憶装置
    と、 前記記憶装置に記憶されたデータに基づいて前記人工知
    能機械がとるべき目標の行動と当該人工知能機械の外界
    の現状とを読み取り、これら目標の行動と外界の現状と
    に基づいて当該目標の行動をとるための制御出力を発生
    し、この制御出力を前記記憶装置に書き込む自動制御手
    段であって、当該目標の行動をとる際に生じる不具合を
    予測し、この不具合予測を前記記憶装置の特定の領域に
    書き込む自動制御手段と、 前記記憶装置の特定の領域に書き込まれた前記不具合予
    測のデータを読み出すことによってに起動され、当該不
    具合がなくなるための推論を行い、この推論結果を前記
    記憶装置に書き込む推論手段と、 前記記憶装置に書き込まれた前記推論結果と前記制御出
    力とに基づいて、前記人工知能機械を駆動する機械駆動
    手段とを具えた人工知能機械。
  8. 【請求項8】 前記人工知能機械は、前記情報通信
    ネットワークを介して、さらに他の人工知能機械と相互
    に通信自在に接続され、かつ統括制御装置と通信自在に
    接続されており、これら複数の人工知能機械は、前記統
    括制御装置によって統括制御されるものである請求項7
    記載の人工知能機械システム。
JP9007529A 1997-01-20 1997-01-20 人工知能機械および人工知能機械システム Withdrawn JPH10207504A (ja)

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