JPH10204586A - 耐応力腐食割れ性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼及びその製造方法 - Google Patents

耐応力腐食割れ性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼及びその製造方法

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JPH10204586A
JPH10204586A JP9008296A JP829697A JPH10204586A JP H10204586 A JPH10204586 A JP H10204586A JP 9008296 A JP9008296 A JP 9008296A JP 829697 A JP829697 A JP 829697A JP H10204586 A JPH10204586 A JP H10204586A
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austenitic
single crystal
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JP9008296A
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Kazutaka Okamoto
和孝 岡本
Yasuo Kondo
保夫 近藤
Akira Yoshinari
明 吉成
Junya Kaneda
潤也 金田
Yasuhisa Aono
泰久 青野
Hideyo Kodama
英世 児玉
Takahiko Kato
隆彦 加藤
Shigeo Hattori
成雄 服部
Yasutaka Iwata
安隆 岩田
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】安定な組織を有し、耐応力腐食割れ性,強度及
び照射脆化に優れた単結晶オーステナイト系ステンレス
鋼とその製造方法及びそれを用いた高い放射線環境下で
使用する原子炉炉心を提供する。 【解決手段】オーステナイト系ステンレス単結晶鋼に、
溶体化処理により均一化を図った後、再結晶化温度以下
の温度範囲で冷間加工または温間加工を施し、さらに再
結晶化温度以下の温度範囲で時効処理により析出物を分
散せしめるとともに、歪み取り焼鈍された単結晶ステン
レス鋼とその製造方法及びそれを用いた原子炉炉心。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は新規なオーステナイ
ト系ステンレス鋼に係わり、特に原子炉炉心及び核融合
炉の放射線照射環境下で使用するに好適な配管用または
構造用オーステナイト鋼とその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】オーステナイト系ステンレス鋼、特に高
クロム−ニッケル組成のステンレス鋼は、構造材料とし
て好適な特性を具備するほか、腐食環境下に対する抵抗
を有するため、原子炉内で使用する構造部品として多く
用いられている。しかし、軽水炉炉心のオーステナイト
鋼部材は使用中に被る長期の放射線照射により粒界型応
力腐食割れ(IGSCC)に対する感受性が増大する。
例えば、溶体化処理した固溶状態の該ステンレス鋼は放
射線損傷のない炉心外においては耐粒界型応力腐食割れ
を有するが、同じ材料が炉心内において高レベルの照
射、特に中性子照射量で0.5×1021n/cm2程度以上
の照射を受けた場合はそのような抵抗性が失われてい
く。このような割れは照射誘起応力腐食割れ(IASC
C)と称して近年古い原子炉で問題にされつつある。こ
の問題を解決する方法として、オーステナイト系ステン
レスの構成元素、例えば、N,P,Si,S,C,M
n,Cr,Niの含有量を調整するとともに、微量のT
i,Nbを添加する方法が特開昭63−303038号公報に開
示されている。一方、粒界型応力腐食割れを防止する方
法として、その発生源であり網目状に連結する粒界を排
除する単結晶化法がある。これには結晶構造がFCC構
造であるオーステナイト(γ)単相の単結晶鋼、母相は
オーステナイト相の単結晶であるが、結晶構造がBCC
構造である少量のフェライト(δ)相も含有する単結晶
鋼、またフェライト(α)相の単結晶中にγ相を分散し
た所謂2相ステンレス鋼の単結晶鋼がある。これらは特
開平3−264651号公報及び特開昭62−180038号公報に開
示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、特開昭62−18
0038号公報に開示された発明は、母相がBCC構造のα
相である単結晶鋼であり、α相はγ相に比較して照射損
傷による照射脆化が最も懸念される。
【0004】また、特開昭63−303038号公報に開示され
ている発明は、成分調整で粒界型応力腐食割れを防止し
ようとしているが、多結晶ステンレス鋼であり、粒界を
含む金属組織であるため、照射誘起で発生する上記の応
力腐食割れを本質的に防止することはできない。
【0005】また、特開平3−264651 号公報に開示され
た発明は、Ti,Nbを添加したものも含めγ単相の単
結晶鋼あるいは少量のδ相を含有するγ相の単結晶鋼で
あるが、該鋼は粒界強化がないため、市販SUS304,316
鋼及びそれらの低炭素(L)鋼に比較していずれも耐力が
低く、さらに該鋼は精密鋳造により作製されているた
め、配管などの長尺部材には適用するのは困難である。
【0006】本発明の目的は、安定な組織を有するとと
もに耐食性,耐応力腐食割れ性,強度及び照射脆化に優
れ、さらに大型化または長尺化されたオーステナイト系
ステンレス鋼及びその製造法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を
達成するために、粒界型応力腐食割れの発生源である網
目状に連結する粒界を排除したステンレス単結晶鋼の鋼
成分とその加工,熱処理方法から多くの実験を試みた結
果、前記ステンレス単結晶鋼に、すべり変形のみが起
き,原子の拡散が起こらないような温度範囲での塑性加
工を施し、再結晶化温度以下の温度範囲で時効熱処理を
施し析出物を微細に分散せしめることにより高強度及び
優れた耐応力腐食割れ性を示すことを知った。
【0008】本発明は、母相の化学成分が重量で、C:
0.2%以下,N:0.5%以下,Si:1%以下,P:
0.040%以下,S:0.030%以下,Mn:2.0
%以下,Ni:9〜21%,Cr:15〜26%及び
0.5% 以下の不可避不純物とFeであり、室温でオー
ステナイト単結晶相又はオーステナイト単結晶及び10
体積%以下のフェライト相を有するステンレス鋼におい
て、該ステンレス鋼の大型化または長尺化のために、溶
体化処理に続き冷間加工または温間加工を施し、その後
前記冷間加工または温間加工により導入された歪みを再
結晶化温度以下の温度範囲で回復せしめた後も、該オー
ステナイト相が単結晶性を有することを特徴とする耐応
力腐食割れ性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼に
ある。本発明は、母相の化学成分が重量で、C:0.2
%以下,N:0.5%以下,Si:1%以下,P:0.0
40%以下,S:0.030%以下,Mn:2.0%以
下,Mo:3%以下,Ni:9〜21%,Cr:15〜
26%及び0.5% 以下の不可避不純物とFeであり、
室温でオーステナイト単結晶相又はオーステナイト単結
晶及び10体積%以下のフェライト相を有するステンレ
ス鋼において、前述と同様の塑性加工後においてオース
テナイト相が単結晶性を有することを特徴とする。
【0009】本発明は、母相の化学成分が重量で、C:
0.2%以下,N:0.5%以下,Si:1%以下,P:
0.040%以下,S:0.030%以下,Mn:2%以
下,Ni:9〜21%及びCr:15〜26%,Nb,
Ta,ZrまたはTiの少なくとも一種を0.2〜3%
と、0.5%以下の不可避不純物とFeであり、室温で
オーステナイト単結晶相又はこれに10体積%以下のフ
ェライト相を有するステンレス鋼において、該ステンレ
ス鋼の大型化または長尺化のために、溶体化処理に続き
冷間加工または温間加工を施し、さらに母相の一層の強
化のために時効熱処理により析出物を微細に分散せしめ
た後も、該オーステナイト相が単結晶性を有することを
特徴とする耐応力腐食割れ性に優れたオーステナイト系
ステンレス鋼にある。
【0010】本発明は、上述の鋼にMo3%以下含むこ
とができる。
【0011】本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼
を溶融し一方向から凝固させオーステナイト母相を単結
晶とした後、該単結晶中のフェライト相を固溶する目的
で、1050〜1150℃の温度域で溶体化処理を行
い、その後急冷し、次に該ステンレス鋼の大型化または
長尺化のために、50%以上の加工率で、室温〜800
℃の温度範囲で単一スベリ領域での複数回の冷間加工ま
たは温間加工を施し、その後前記冷間加工または温間加
工により導入された歪みを再結晶化温度以下の温度範囲
で回復せしめた後も、該オーステナイト相が単結晶性を
有する耐応力腐食割れ性に優れたオーステナイト系ステ
ンレス鋼の製造方法にある。
【0012】本発明は、Nb,Ta,Zr,Tiのうち
一種以上を含むオーステナイト系ステンレス鋼を溶融し
一方向から凝固させオーステナイト母相を単結晶とした
後、該単結晶中のフェライト相及び上記金属を含む化合
物を分解,固溶する目的で、まず1050〜1150℃
の温度域で低融点の化合物、または1200〜1300℃の
温度域で高融点の化合物の二段階分解熱処理を行い急冷
し、次に該ステンレス鋼の大型化または長尺化のため
に、50%以上の加工率で、室温〜800℃の温度範囲
で単一スベリ領域での複数回の冷間加工または温間加工
を行い、次いで母相の一層の強化のために400〜80
0℃の温度範囲で時効熱処理を施し、析出物を微細分散
せしめた後も、該オーステナイト相が単結晶性を有する
耐応力腐食割れ性に優れたオーステナイト系ステンレス
鋼の製造する方法である。
【0013】圧延面法線が標準ステレオ三角形上で、
〈100〉〜〈110〉のライン上である場合、結晶は
加工に対して比較的安定で、変形時に単一のスベリ面で
滑る(変形時の結晶の回転がない)ことができる。加工
度が大きくなると他のスベリ系も活動するため、徐々に
結晶が回転し、更に加工度が大きくなると最終的にはス
ベリのみで単結晶が多結晶になってしまう。これは再結
晶のように原子の拡散を伴わない。従って、本発明では
1パスで大きな加工を加えるのではなくこの単一スベリ
が生じる領域での加工を少しずつ何度も繰り返すことで
達成されるものである。従って、単一スベリ領域での加
工は圧延面法線を標準ステレオ三角形上で〈100〉〜
〈110〉のライン近傍とする結晶方位にて加工するこ
とが好ましいものである。
【0014】本発明は、高温高圧純水にさらされ、原子
燃料の燃料棒による中性子照射を受ける原子炉炉心部材
に関するものであり、該部材は上記の化学組成を有し、
室温において体積率0〜10%のフェライト相と単結晶
のオーステナイト相からなり、該ステンレス鋼の大型化
または長尺化のために、溶体化処理の後、前述と同様の
冷間加工または温間加工を施し、その後前記冷間加工ま
たは温間加工により導入された歪みを回復せしめた後
も、該オーステイト相が単結晶性を有するオーステナイ
ト系ステンレス鋼であり、好ましくは室温で220MP
a以上の耐力を有することを特徴とする。
【0015】本発明は、上述の母相中に重量でNb,T
a,Zr及びTiの少なくとも一種を0.2〜3% 含有
し、上述の塑性加工後、さらに母相の一層の強化のため
に時効熱処理によりNb,Ta,Zr,Tiの添加金属
のうちの一種を含む金属間化合物などの化合物が微細に
分散し、室温で220MPa以上の耐力を有し、また該
オーステナイト相が単結晶性を有するオーステナイト系
ステンレス鋼からなる原子炉炉心にある。
【0016】本発明は、上述のオーステナイト系ステン
レス鋼からなることを特徴とする締結部品にある。
【0017】本発明は、上部格子板及び炉心支持板を備
えた原子炉炉心において、前記上部格子板の組立に使用
される締結部品及び前記炉心支持板に用いられる締結部
品,燃料支持金具及び周辺燃料支持金具が、前述のオー
ステナイト系ステンレス鋼からなる原子炉炉心にある。
【0018】本発明は、原子燃料を囲むシュラウドを備
えた原子炉炉心に関するものであり、該シュラウドの固
定に用いられる締結部品が、前述のオーステナイト相が
単結晶性を有するオーステナイト系ステンレス鋼からな
る原子炉炉心にある。
【0019】本発明は、中性子束計測案内管,チャンネ
ルファスナー及びB4C 型制御棒用ポイズン管を備えた
原子炉炉心に関するものであり、該中性子束計測案内
管,チャンネルファスナー用キャップスクリュー及びB
4C 型制御棒用ポイズン管が、前述のオーステナイト相
が単結晶性を有するオーステナイト系ステンレス鋼から
なる原子炉炉心にある。
【0020】本発明は、原子炉の健全性にとって不具な
損傷部を有する原子炉炉内構造物及び機器の補修施工方
法に関するものであり、該不具部の経年的成長の阻止及
び該不具部を含む周辺部の強度維持のために取られる補
修施工用ボルト締結治具に使用されるボルトが、上記の
化学組成を有し、室温において体積率で0〜10%のフ
ェライト相及び残部が全てオーステナイト相からなり、
該母相中に重量でNb,Ta,Zr及びTiの少なくと
も一種を0.2〜3% 含有し、該ステンレス鋼の大型化
または長尺化のために、溶体化処理の後、冷間加工また
は温間加工を施し、さらに母相の一層の強化のために時
効熱処理によりNb,Ta,Zr,Tiの添加金属のう
ちの一種を含む金属間化合物などの化合物が微細に分散
し、室温で220MPa以上の耐力を有し、また該オー
ステナイト相が単結晶性を有するオーステナイト系ステ
ンレス鋼であることを特徴とするボルト締結補修法であ
る。
【0021】本発明が解決しようとするオーステナイト
系ステンレス鋼の粒界型応力腐食割れは、非照射下での
溶接熱の影響による粒界の腐食鋭敏化あるいは中性子照
射下での照射誘起鋭敏化により、粒界が存在する限り発
生する。そこでオーステナイト鋼の単結晶化が応力腐食
割れに対し有効であるが、大型または長尺の単結晶を得
ることは一般に困難であり、例えば配管部材などの長尺
部材には適用できない。さて、上記粒界型応力腐食割れ
は、一般に粒界近傍でのCr欠乏相が主因と言われてい
る。本発明が解決しようとする課題は、該単結晶鋼の大
型化または長尺化である。すなわち単結晶化の後、溶体
化処理に続く冷間または温間加工により大型化または長
尺化し、その後Ni及びCrなどの構成元素の拡散が抑
制される温度範囲にて歪み取り焼鈍を施し、該単結晶鋼
の大型化または長尺化を図ることである。さらに、該単
結晶鋼はNb,Ta,Zr及びTiを添加し、溶体化処
理及び上記塑性加工後の時効熱処理により析出物微細分
散強化されていてもよい。この時、分布状態にある微細
析出物は、照射下で原子のはじき出し損傷で生成され、
格子中を移動する欠陥の消滅場所としての作用も有し、
欠陥の蓄積を防ぐことで母材の経年的脆化も抑止でき
る。また、上記塑性加工により導入された転位や、時効
熱処理により導入された微細析出物は、照射によって発
生するボイドをトラップし消滅させる核となるため、ス
エリング性能を向上させる。さらに、Nb,Ta,Zr
及びTiを添加した単結晶鋼については、過飽和に固溶
しているNb,Ta,Zr及びTiを一部そのまま固溶
状態に保持すると、照射誘起または照射加速析出が抑制
される。
【0022】次に示すように、本発明者は、オーステナ
イト系ステンレス単結晶鋼を塑性加工したステンレス鋼
を検討するとともに、該ステンレス鋼に対して、原子炉
炉内の腐食環境を模擬した高温高圧水環境下での応力腐
食割れ試験を実施し、合わせて引張試験と原子炉運転年
数20年相当の炉心での中性子照射損傷に相似する模擬
照射を実施して、耐応力腐食割れ,強度及び耐照射性に
優れていることを発見した。
【0023】本発明は、前述のオーステナイト単結晶相
又はオーステナイト単結晶相及び10体積%以下のフェ
ライト相を有するオーステナイト系ステンレス鋼におい
て、双方の相は冷間または温間加工により導入された加
工転位を有し、さらにオーステナイト相中には加工誘起
マルテンサイト変態が起こり始める温度TMS以下の温度
範囲では加工マルテンサイト相を有し、またTMS以上の
温度範囲では加工マルテンサイト相は1体積%以下とな
ることを特徴とする高強度で耐応力腐食割れ性に優れた
オーステナイト系ステンレス鋼にある。
【0024】また、本発明はMo3%以下、Nb,T
a,Zr及びTiの少なくとも1種を前述と同様に含有
することができ、加工マルテンサイト相が形成される場
合及びその製造方法に対しても同様である。
【0025】前述の本発明に係る単結晶オーステナイト
相を有するオーステナイト系ステンレス鋼は前述の原子
炉炉心及びその補修方法においても適用できるものであ
る。化学組成を調整したオーステナイト系ステンレス単
結晶鋼に、まず1050〜1150℃の温度範囲で溶体
化処理を施した後急冷し、50%以上の加工率で、室温
〜800℃の温度範囲で冷間加工または温間加工を施
し、その後前記冷間加工または温間加工により導入され
た歪みを再結晶化温度以下の400〜800℃の温度範
囲で除去する。また、Nb,Ta,Zr及びTiを添加
した単結晶鋼については、まず1050〜1150℃の
温度範囲で第一の溶体化処理を施した後急冷し、さらに
1200〜1300℃の温度範囲で第二の溶体化処理を
施した後急冷した後、50%以上の加工率で、室温〜8
00℃の温度範囲で冷間加工または温間加工を施し、次
いで400〜800℃の温度範囲で時効熱処理を施し、
析出物を微細に分散せしめる。この際、加工率は、該ス
テンレス鋼の大型化または長尺化を有効に行うために
も、50%以上が好ましく、特に50〜95%が好まし
い。さらに加工温度は、該ステンレス鋼が加工中に再結
晶を起こさないためにも、800℃以下が好ましい。歪
み取り焼鈍温度及び時効熱処理温度は、再結晶温度以下
の500〜750℃の温度範囲が好ましい。また、前記
歪み取り焼鈍は、各冷間加工または温間加工毎に行って
も良い。
【0026】以上のように、発生のメカニズムに関わら
ず、材料中の結晶粒界を除去することで、結晶粒界を起
点とする応力腐食割れを防止することができる。
【0027】Crはステンレス鋼表面に不動態皮膜を生
成させて耐食性を向上させる有効な元素として、15%
以上の添加が必要である。しかし26%以上を越える多
量のCrの添加は、単結晶の凝固過程でσ相が形成され
るので、材質が脆くなる。特に、オーステナイト相の安
定化を考慮し、Ni量に依存したオーステナイト相の安
定化の範囲内で15〜26%とし、特に、16〜20%
が好ましい。
【0028】Niは、オーステナイト相を安定にし、耐
食性を高めるために8%以上含有させる。高Ni量は、
例えば原子炉炉内に本発明が使用される時、同一の腐食
環境下では化学組成が相違することで他の部材との接触
部で電気化学反応が生じ、腐食を促進させることにな
る。原子炉炉内に多く使用されるSUS304,SUS316及びそ
れらのL材を考慮し、Cr量との関連から判断して重量
で8〜22%とし、特に、9〜15%が好ましい。
【0029】Si,Mnは脱酸剤として添加され、さら
にMnは脱硫剤として添加される。市販SUS304,SUS316
及びそれらのL材に準じてSiは重量で1%以下、Mn
は重量で2%以下含有させる。特に、Siは0.05〜
0.6%が好ましい。Mnは0.01〜1.5%、より0.
5〜1.5%が好ましい。
【0030】Moは一層の耐食性,固溶強化から必要な
成分である。しかし、3%を越える添加量は必要ではな
く、それ以上ではσ相の形成要因となりうる。2.0〜
3.0%が好ましい。
【0031】Cは、単結晶を作製するためには、鋳造の
際に炭化物の生成を極力防ぐ必要があり、Cの含有量は
少ないほうがよい。しかしながらCの上限が0.2% で
あれば、溶体化及び時効処理によりNb,Ta,Tiの
うち一種以上の金属炭化物を生成する。また0.2% 以
上では過剰炭化物の生成及び粗大化で強度的に伸びの低
下等が問題となる。さらにCは、一般に耐食性にとって
有害であり、原子炉炉内に多く使用されるSUS304,SUS3
16及びそれらのL材との溶接性を考慮すると、含有量は
少ないほうがよい。特に、0.02% 以下又は0.1〜
0.18%が好ましい。
【0032】Nb,Ta,Zr及びTiは、従来よりC
の安定化元素として知られており、溶接部あるいは40
0〜800℃の温度域に晒された場合に、ステンレス鋼
中に生成するCr炭化物の粒界析出を防止する。本発明
においては、上記の効果と共に、析出強化元素として必
要であり、時効熱処理により炭化物または金属間化合物
などの析出物を生成する。上記添加元素は、重量でN
b,Ta,Zr、及びTiよりなる群から選択される1
種以上の元素を0.2〜3% 含有することもできる。特
に、Nbは0.2〜1.0%、Ta0.5〜1.5%,Zr
0.2〜0.8%,Ti1.0〜2.0%が好ましい。
【0033】Nは、マトリックスに固溶し、強化に必要
であり、重量で0.5% 以下含むことができる。特に、
0.05〜0.3%が好ましい。しかしながら、Nの添加
量は、加工性を低下させる傾向があるため、本発明にお
いては添加しなくてもよい。また、本発明の鋼は、0.
5% 以下の不可避不純物を含有する。
【0034】オーステナイト相は、環境に対して安定な
組織であり、大型の単結晶を得るために必要である。オ
ーステナイト相にフェライト相が10%以下存在するこ
とができるが、全オーステナイト相とすることが望まし
い。また、加工誘起マルテンサイト変態が起こり始める
温度TMSは室温以下とするべく、材料組成を調整するこ
とが好ましい。つまり、次式 [Ni]eq=[Ni]+0.65[Cr]+0.98
[Mo]+1.05[Mn]+0.35[Si]+12.
6[C] で規定されるNi当量[Ni]eqが26%以上である
ことが好ましい。
【0035】本発明の鋼は、室温で耐力200〜500
MPa,引張強さ500〜800MPaであり、特に耐
力250〜450MPa,引張強さ550〜650MP
aを持つものが好ましい。
【0036】本発明の鋼は、原子炉炉心だけでなく、水
冷却環境や水素が存在する環境で使用され、放射線照射
損傷を受ける構造部材に適用され、特に核融合炉第一壁
のブランケット冷却管およびシェルに適用される。ま
た、一般的に粒界が材料劣化の主因となりうる環境下で
使用される強度部材に適用されうる。
【0037】
【発明の実施の形態】
(実施例1)本発明に係わるオーステナイト系単結晶鋼
の作製方法の一実施例を図1を用いて説明する。図1の
装置構成は、溶湯1を作製する高周波溶解炉2,鋳型
3,本体4,セレクタ5,スタータ6を鋳込口7を備え
た鋳型過熱炉8で覆い、スタータ6は水冷チル9の上に
設置されている。水冷チル9の上に鋳型を固定し、鋳型
過熱炉8を用いて鋳型3を1560℃に過熱し、高周波
溶解炉2で、表1に示される析出強化元素を含有するオ
ーステナイト系ステンレス鋼を溶融して溶湯1とした
後、鋳込口7から鋳型3に鋳込んだ。鋳込み温度は15
60℃であり、鋳込み後溶湯1と1560℃に5分間保
持した後水冷チル9を下方10に下降させ、最終的に鋳
型3を鋳型過熱炉8から引き出すことで本体4中の溶湯
1を水冷チル9側より一方向凝固させた。このとき一方
向凝固が完了するまで鋳型過熱炉8は1560℃のまま
保持した。鋳型引き出し速度は、15cm/h一定とし、
本体4中の溶湯1は真空度8×10~3Torrの雰囲気に保
持した。鋳込み後は、スタータ6で多くの結晶が発生し
たが、鋳型3を下方10に引き出すにつれて、漸次凝固
が進行し、セレクタ5の中を凝固が進む間に1つの結晶
に選択されて本体4中の溶湯1の部分は単結晶となっ
た。
【0038】表1には本発明の8種類の単結晶鋼の分析
組成及びNi当量を示す。
【0039】
【表1】
【0040】次に各鋼種の溶体化処理工程を説明する。
SUS304,SUS316の0.01% 以下の低Cの組成を有する
No.S1及びS2の単結晶については、1050℃で2
時間溶体化処理を施し、体積率で5〜8%がフェライト
相及び残部が全てオーステナイト相となった。一方、N
b,Ta,Zr及びTi添加鋼のNo.S3〜S8につい
ては、粗大化した析出相を分解,固溶させるために、ま
ず第1段の溶体化処理を1150℃で60時間行い、析
出相を十分に分解し、さらに第2段溶体化処理を125
0℃で5時間行い、組織をより均一化させ、残存析出相
を断面占有率で1%以下となった。
【0041】次に上記8鋼種全てに対して上記溶体化処
理後、室温〜600℃の温度域で、圧延率で50から9
0%まで冷間または温間圧延を行い、さらにその加工工
程中または加工工程後に500〜700℃の温度域で歪
み取り焼鈍またはNb,Ta,Zr及びTi添加鋼につ
いては、時効熱処理を行った。このとき、圧延1パスあ
たり3〜5%の圧延率とし単一スベリ領域での塑性加工
とした。鋼種S2,S3及びS7に施した塑性加工及び
熱処理条件を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】表2に示した試料以外も含めて、全鋼種と
も上記塑性加工条件及び熱処理条件では、圧延による割
れは見られなかった。また、塑性加工を室温で行った試
料では、圧延後に加工誘起マルテンサイトが体積率で1
%以下確認された。特にNi当量の少ない鋼種S1及び
S4については、加工率が50%の場合、加工誘起マル
テンサイトが生成した。
【0044】試料Cの光学顕微鏡組織を観察した結果、
フェライト相がオーステナイト母相中に加工によって太
さ30μm以下の細長の伸ばされた状態で島状に分布し
ており、該母相には結晶粒界が全く見られず、単結晶性
を有していた。また図18に試料Cの圧延面のポールフ
ィギュア測定結果を示す。圧延面は{100}面が非常
にシャープに配向しており、単結晶性を有していること
が確認された。試料C以外の試料についても、同様にオ
ーステナイト母相は単結晶であった。さらにNbを含有
する試料Eについては、塑性加工に続く時効熱処理によ
り、結晶方向性を有する棒状のサブミクロンサイズの4
500×10~2個/μm2 以下の析出物がサブミクロン
間隔で分布し、面積率で約10%析出物を有しているこ
とが確認できた。EPMAおよびTEMによる分析か
ら、析出物は、C,Nb,Mo,Mn,Si等で構成さ
れており、さらにSPEED法により電解抽出したこれ
らの析出物を粉末X線回折により同定し、Fe2Nb 及
びFe2C で構成されていることがわかった。析出物の
形状は、大部分が直径が0.5μm 以下の円板状であっ
た。
【0045】また表3は、試料A〜Iに対して上記加工
及び熱処理を施し、平行部16mm,5mm径の引張試験用
試料を作製して、公称歪速度2.1×10~4(/秒)で引
張試験を行った結果である。
【0046】
【表3】
【0047】上記のプロセスで作製した厚さ15mm,幅
70mm,長さ120mmのオーステナイト鋼から厚さ2m
m,幅10mm,長さ50mmの試験片を準備し、応力腐食
割れ試験法として有効なCBB試験を市販のSUS316,SU
S304鋼およびそれらのL材と合わせて作製した。これら
試験片にはあらかじめ620℃,24時間の鋭敏化熱処
理が施された。
【0048】図2はCBB試験方法を示す斜視図であ
る。試験片11にすきまを付けるためのグラファイトフ
ァイバーウール12とともにホルダー13間にはさみつ
け、ボルト穴14にボルトを挿入し、ホルダー13間に
アールをつけて締めつけ、オートクレーブ中で応力腐食
割れ試験に供した。試験条件は288℃,85kg/cm2
の高温高圧純水(溶存酸素量8ppm )中で500時間浸
漬した。その後試験片を取り出し、試験片の断面観察か
ら割れ発生の有無を調べた。SUS316,SUS304鋼の低C材
には1〜2mm深さの割れが多数観察された。一方、本発
明の全てのステンレス鋼には全く割れは観察されず、高
い応力腐食割れ性を示した。
【0049】(実施例2)実施例1で作製したオーステ
ナイト系ステンレス単結晶鋼試料Eを用い、図3に示す
沸騰水型原子炉炉心用の各種構造部材を製造した。本原
子炉は蒸気温度286℃,蒸気圧力70.7atgで運転さ
れ、発電出力として500,800,1100MWの発
電が可能である。各名称は次のとおりである。51…ポ
イズンカーテン、52…炉心支持板、53…中性子束計
測案内管、54…制御棒、55…炉心シュラウド、56
…上部格子板、57…燃料集合体、58…上鏡スプレイ
ノズル、59…ベントノズル、60…圧力容器蓋、61
…フランジ、62…計測用ノズル、63…気水分離器、
64…シュラウドヘッド、65…給水入口ノズル、66
…ジェットポンプ、68…蒸気乾燥機、69…蒸気出口
ノズル、70…給水スパージャ、71…炉心スプレイ用
ノズル、72…下部炉心格子、73…再循環水入口ノズ
ル、74…バッフル板、75…制御棒案内管。
【0050】前述の上部格子板56はリム胴21,上記
フランジ22およびグリットプレート35を有し、これ
らにはSUS316鋼多結晶材の圧延材が用いられる。グリッ
トプレート35は互いに交叉しているだけで互いに固定
はされていない。また、炉心支持板52は同じくSUS316
鋼多結晶圧延材が用いられ、一枚の圧延板により製造さ
れ、燃料支持金具を取り付ける穴が設けられ、円周面で
炉容器に固定される。従っていずれも中性子照射を受け
る中心部では溶接部がない構造である。
【0051】図4は上部格子板の一部平面図である。図
5は図4のVII−VII切断の断面図および図6は図5のVI
II部分を拡大した断面図である。前述の本発明のオース
テナイト系ステンレス鋼を図6のボルト23に適用し
た。本発明のボルト23はリム胴21と上部フランジ2
2を固定するもので、切削加工によってネジを製造した
ものである。
【0052】図7は上部格子板の部分拡大図、図8は図
7のXの部分拡大図および図9は図7のXI部分拡大図で
ある。上部格子板56のグリッドプレート31とサポー
トプレート32を締め付け固定するボルトおよびナッ
ト、グリットプレート31とサポートプレート32およ
びサポートプレート32とグリットプレート35を締め
るボルト36およびナット37を上述と同様にオーステ
ナイト系ステンレス鋼で作製した。
【0053】図10は炉心支持板52の断面図であり、
炉心支持板には図11の燃料支持金具、図12の周辺燃
料支持金具等が取付けられ、また、図13のアイボルト
42およびワッシャー43も取付けられる。図13は、
図12のXVの拡大図である。これらの図11〜図13の
燃料支持金具,周辺燃料支持金具,アイボルト42およ
びワッシャー43を前述の本発明のオーステナイト系ス
テンレス鋼によって作製した。
【0054】図14は、チャンネルファスナ組立状態の
断面図である。チャンネルファスナは、燃料集合体57
の上部に取付けられ、ガード77,リーフスプリング7
8,キャップスクリュ79およびロックワッシャ80で
構成されている。ガード77およびリーフスプリング7
8は、ロックワッシャ80を介したキャップスクリュ7
9により、チャンネルボックス81上端コーナ部のチャ
ンネルクリップ82を通して上部タイプレート83のチ
ャンネルポスト84に取付けられる。これらのうち、キ
ャップスクリュ79を前述の本発明のオーステナイト系
ステンレス鋼によって作製した。
【0055】前記の本発明の方法で作製した部材を沸騰
水型原子炉中で生じる条件を模擬し、さらに中性子照射
量で1×1022n/cm2(>1MeV)まで照射した。そ
の結果、照射で誘起される応力腐食割れは、いずれのボ
ルト,ナット等にも観察されなかった。これにより、上
部格子板および炉心支持板を取り換えることなく40年
間の使用を可能にするものである。特に、前述した使用
箇所としてその中性子照射量が2×1022n/cm2 であ
る高い中性子照射を受ける部分で、ボルト,ナットの如
く高応力を受け、外部からその表面を直接観察できない
部材を耐応力腐食割れ性の高い部材によって構成するこ
とが重要である。
【0056】(実施例3)次に、本発明による補修例を
示す。
【0057】図14は沸騰水型原子炉炉心各種構造物
の、補修状態を示す。炉心シュラウド55に応力腐食割
れ等の損傷部を生じたため、機械的に保護および補強す
る補強板であるクランプ85を補修用ボルト86および
補修用ナット87で取付け、炉心シュラウド55を補修
した。この際、クランプ85,補修用ボルト86および
補修用ナット87は、本発明のオーステナイト系ステン
レス鋼を用いた。炉心シュラウド55とクランプ85と
の締結は、図15に示すように、テーパ無しボルト88
と補修用ナット87で締結した。また、図16に示すよ
うにテーパ付ボルト89,補修用ナット87,スリット
付スリーブ90で締結した。
【0058】この際、クランプ85,補修用ナット8
7,テーパ無しボルト88,テーパ付ボルト89および
スリット付スリーブ90は、本発明のオーステナイト系
ステンレス鋼を用いた。
【0059】本実施例によると、耐応力腐食割れ性に優
れた補修用部材を用い、沸騰水型原子炉炉心各種構造物
の補修を行ったことで、原子炉の長寿命化をはかること
ができ、さらにこれらの補修部材は周囲の材質と類似し
た組成であるので、高温純水中での電位を同等とする。
また本発明の方法で作製した単結晶加工材には微細に分
散した析出物が存在しており、これら析出物と母相との
界面は結晶粒界と同様に照射欠陥の消滅場所として働き
うることから、母相中の照射による欠陥の蓄積がより抑
えられ、いわゆる照射脆化,照射下クリープ等の抑制効
果も大きい。
【0060】本実施例では、ボルト,ナットおよびクラ
ンプを単結晶加工材としたが、上部格子板のグリッドプ
レート35,炉心支持板52,サポートプレート32お
よび中性子束計測案内管53を同じ材料の本発明のオー
ステナイト系ステンレス鋼で使用することも非常に有用
である。
【0061】
【発明の効果】本発明によれば、原子炉炉心のごとき放
射線照射環境下で使用されるオーステナイト系ステンレ
ス鋼で製造された構造部材に、照射で誘起される粒界型
の応力腐食割れを防止できるので、原子炉炉心構造部品
や核融合炉の第一壁、ブランケット構造部品を長寿命化
でき、原子炉としては40年間使用できるようにし、さ
らに核融合炉においては安全性,信頼性の向上に顕著な
効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例であるオーステナイト系ステン
レス単結晶鋼の製造装置の構成を示す断面図。
【図2】応力腐食割れ試験方法を示す斜視図。
【図3】本発明のオーステナイト鋼を用いた一実施例を
示す原子炉炉心を示す部分断面斜視図。
【図4】原子炉炉心の上部格子板の部分平面図。
【図5】図のVII部分の切断断面図。
【図6】図のVIII 部分の拡大図。
【図7】原子炉炉心の上部格子板部分拡大図。
【図8】図のX部拡大図。
【図9】図のXI部拡大図。
【図10】原子炉炉心の炉心支持板の断面図。
【図11】原子炉炉心の燃料支持金具の斜視図。
【図12】原子炉炉心の周辺燃料支持金具の断面図。
【図13】図のXV部拡大図。
【図14】チャンネルファスナ組立状態の断面図。
【図15】本発明による原子炉炉心のシュラウド不具合
部の補修方法。
【図16】本発明の実施例であるテーパ無しボルトを使
用した補修部断面図。
【図17】本発明の実施例であるテーパ付ボルトを使用
した補修部断面図。
【図18】ポールフィギュア測定結果を示す線図。
【符号の説明】
1…溶湯、2…高周波溶解炉、3…鋳型、4…本体、5
…セレクタ、6…スタータ、7…鋳込口、8…鋳型過熱
炉、9…水冷チル、10…下方、11…試験片、12…
グラファイトファイバーウール、13…ホルダー、14
…ボルト穴、21…リム胴、22…上部フランジ、2
3,33,36…ボルト、31,35…グリットプレー
ト、32…サポートプレート、34,37…ナット、4
2…アイボルト、43…ワッシャー、44…周辺燃料支
持金具、45…炉心支持ピン、51…ポイズンカーテ
ン、52…炉心支持板、53…中性子束計測案内管、5
4…制御棒、55…炉心シュラウド、56…上部格子
板、57…燃料集合体、58…上鏡スプレイノズル、5
9…ベントノズル、60…圧力容器蓋、61…フラン
ジ、62…計測用ノズル、63…気水分離器、64…シ
ュラウドヘッド、65…給水入口ノズル、66…ジェッ
トポンプ、68…蒸気乾燥機、69…蒸気出口ノズル、
70…給水スパージャ、71…炉心スプレイ用ノズル、
72…下部炉心格子、73…再循環水入口ノズル、74
…バッフル板、75…制御棒案内管、76…燃料棒、7
7…ガード、78…リーフスプリング、79…キャップ
スクリュ、80…ロックワッシャ、81…チャンネルボ
ックス、82…チャンネルクリップ、83…上部タイプ
レート、84…チャンネルポスト、85…クランプ、8
6…補修用ボルト、87…補修用ナット、88…テーパ
無しボルト、89…テーパ付ボルト、90…スリット付
スリーブ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G21C 7/10 G21C 7/10 C 17/10 17/10 C (72)発明者 金田 潤也 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 青野 泰久 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 児玉 英世 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 加藤 隆彦 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内 (72)発明者 服部 成雄 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内 (72)発明者 岩田 安隆 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量で、Ni:9〜21%及びCr:15
    〜26%を含有し、室温でオーステナイト単結晶相又は
    オーステナイト単結晶と若干のフェライト相を有するス
    テンレス鋼において、該オーステナイト相は溶体化処理
    後、冷間または温間加工され、単結晶組織を有すること
    を特徴とする耐応力腐食割れ性に優れたオーステナイト
    系ステンレス鋼。
  2. 【請求項2】重量で、C:0.2%以下,N:0.5%以
    下,Si:1%以下,P:0.040%以下,S:0.030
    %以下,Mn:2.0%以下,Ni:9〜21%及びC
    r:15〜26%を含有し、室温でオーステナイト単結
    晶相又はオーステナイト単結晶及び10%体積%以下の
    フェライト相を有するステンレス鋼において、該オース
    テナイト相は溶体化処理後、冷間または温間加工され、
    単結晶組織を有することを特徴とする耐応力腐食割れ性
    に優れたオーステナイト系ステンレス鋼。
  3. 【請求項3】重量で、C:0.2%以下,N:0.5%以
    下,Si:1%以下,P:0.040%以下,S:0.030
    %以下,Mn:2.0%以下,Ni:9〜21%及びC
    r:15〜26%を含有し、室温でオーステナイト単結
    晶相又はオーステナイト単結晶及び10体積%以下のフ
    ェライト相を有するステンレス鋼において、該オーステ
    ナイト相は溶体化処理後、冷間または温間加工され、単
    結晶性を有することを特徴とする耐応力腐食割れ性に優
    れたオーステナイト系ステンレス鋼。
  4. 【請求項4】重量で、C:0.2%以下,N:0.5%以
    下,Si:1%以下,P:0.040%以下,S:0.030
    % 以下,Mn:2%以下,Ni:9〜21%及びC
    r:15〜26%と、Nb,Ta,ZrまたはTiの少
    なくとも一種を0.2〜3%を含有し、室温でオーステ
    ナイト単結晶相又はオーステナイト単結晶及び10体積
    %以下のフェライト相を有するステンレス鋼において、
    該鋼は溶体化処理に続き冷間または温間加工され、時効
    熱処理による析出物が微細に分散した組織を有し、かつ
    前記オーステナイト相が単結晶組織を有することを特徴
    とする耐応力腐食割れ性に優れたオーステナイト系ステ
    ンレス鋼。
  5. 【請求項5】重量で、C:0.2%以下,N:0.5%以
    下,Si:1%以下,P:0.040%以下,S:0.030
    % 以下,Mn:2%以下,Mo:3%以下,Ni:9
    〜21%及びCr:15〜26%と、Nb,Ta,Zr
    またはTiの少なくとも一種を0.2〜3% を含有し、
    室温でオーステナイト単結晶相又はオーステナイト単結
    晶及び10体積%以下のフェライト相を有するステンレ
    ス鋼において、該鋼は溶体化処理に続き冷間または温間
    加工され、時効熱処理による析出物が微細に分散した組
    織を有し、かつ該オーステナイト相が単結晶組織を有す
    ることを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れたオーステ
    ナイト系ステンレス鋼。
  6. 【請求項6】重量で、Ni:9〜21%及びCr:15
    〜26%を含有し、室温でオーステナイト単結晶相を有
    するステンレス鋼の製造方法において、前記鋼を溶体化
    処理後、単一スベリ領域での複数回の冷間加工または温
    間加工を行い、次いで歪み取り焼鈍を施すことを特徴と
    する耐応力腐食割れ性に優れたオーステナイト系ステン
    レス鋼の製造方法。
  7. 【請求項7】重量で、C:0.2%以下,N:0.5%以
    下,Si:1%以下,P:0.040%以下,S:0.030
    % 以下,Mn:2%以下,Mo:3%以下、Ni:9
    〜21%及びCr:15〜26%を含有し、室温でオー
    ステナイト単結晶相又はオーステナイト単結晶及び10
    体積%以下のフェライト相を有するステンレス鋼の製造
    方法において、前記鋼を溶体化処理後、単一スベリ領域
    での複数回の冷間加工または温間加工を行い、次いで歪
    み取り焼鈍を施すことを特徴とする耐応力腐食割れ性に
    優れたオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法。
  8. 【請求項8】重量で、C:0.2%以下,N:0.5%以
    下,Si:1%以下,P:0.040%以下,S:0.030
    % 以下,Mn:2%以下,Mo:3%以下、Ni:9
    〜21%及びCr:15〜26%と、Nb,Ta,Zr
    またはTiの少なくとも一種を0.2〜3% を含有し、
    室温でオーステナイト単結晶相又はオーステナイト単結
    晶及び10体積%以下のフェライト相を有するステンレ
    ス鋼の製造方法において、前記鋼を溶体化処理後、単一
    スベリ領域での複数回の冷間加工または温間加工を行
    い、次いで時効熱処理を施すことを特徴とする耐応力腐
    食割れ性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼の製造
    方法。
  9. 【請求項9】重量で、C:0.2%以下,N:0.5%以
    下,Si:1%以下,P:0.040%以下,S:0.030
    % 以下,Mn:2%以下,Mo:3%以下,Ni:9
    〜21%及びCr:15〜26%と、Nb,Ta,Zr
    またはTiの少なくとも一種を0.2〜3% を含有し、
    室温でオーステナイト単結晶相又はオーステナイト単結
    晶及び10体積%以下のフェライト相を有するステンレ
    ス鋼の製造方法において、前記鋼を1050〜1150
    ℃の温度範囲で第一の溶体化処理を施し、1200〜1
    300℃の温度範囲で第二の溶体化処理を施した後、室
    温〜800℃の温度範囲で単一スベリ領域での複数回の
    冷間加工または温間加工を行い、次いで400〜800
    ℃の温度範囲で時効熱処理を施すことを特徴とする耐応
    力腐食割れ性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼の
    製造方法。
  10. 【請求項10】高温高圧純水にさらされ、中性子照射を
    受ける原子炉炉心部材において、該部材は請求項1から
    5のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼よ
    りなることを特徴とする原子炉炉心部材。
  11. 【請求項11】締結部材により結合された上部格子板及
    び炉心支持板,原子燃料を囲み締結部材によって固定さ
    れるシュラウド,該燃料を支持する燃料支持金具,中性
    子束計測案内管,チャンネルボックスを燃料体に固定す
    るチャンネルファスナー及びB4C 型制御棒用ポイズン
    管を備えた原子炉炉心において、前記上部格子板の締結
    部品,前記炉心支持板の締結部品,前記燃料支持金具,
    前記中性子束計測案内管,前記チャンネルファスナー用
    キャップスクリュー及び前記B4C 型制御棒用ポイズン
    管の少なくとも一つが請求項1から5のいずれかに記載
    のオーステナイト系ステンレス鋼からなることを特徴と
    する原子炉炉心。
  12. 【請求項12】原子炉炉内構造物及び機器の損傷部に損
    傷のないオーステナイト系ステンレス鋼よりなる部材を
    当接し、オーステナイト系ステンレス鋼よりなるボルト
    及びナットによって固定する損傷部の補修施工方法にお
    いて、前記部材,ボルト及びナットが請求項1から5の
    いずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼よりな
    ることを特徴とする補修施工方法。
  13. 【請求項13】重量で、Ni:9〜21%及びCr:1
    5〜26%を含有するオーステナイト系ステンレス鋼に
    おいて、該鋼中には、フェライト相がオーステナイト単
    結晶相中に10体積%以下有し、かつ双方の相は冷間ま
    たは温間加工により導入された加工転位を有し、オース
    テナイト相中に加工誘起マルテンサイト変態が起こり始
    める温度TMS以下で加工マルテンサイト相を有し、また
    MS以上で加工マルテンサイト相は1体積%以下の体積
    率となることを特徴とする高強度で耐応力腐食割れ性に
    優れたオーステナイト系ステンレス鋼。
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