JP2014005509A - 高耐食性オーステナイト系ステンレス鋼及び溶接継手構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】粒界腐食抵抗をさらに増大でき、脆化を抑制できる高耐食性オーステナイト系ステンレス鋼を提供する。
【解決手段】高耐食性オーステナイト系ステンレス鋼は、質量%で、Cr17〜26%、Ni14〜24%、C0.001〜0.020%、Si0.1〜1.0%、Mn0.1〜2.0%、P0.030%未満、S0.015%以下、Mo0.001〜3.0%、N0.001〜0.04%、Ta0.01〜1.0%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、C1値及びC2値がC1値≧(20×C2値+24)の関係にあり、DSC値が15.1未満、DR値が12未満、SR値が20.0未満になっている。
【選択図】図8
【解決手段】高耐食性オーステナイト系ステンレス鋼は、質量%で、Cr17〜26%、Ni14〜24%、C0.001〜0.020%、Si0.1〜1.0%、Mn0.1〜2.0%、P0.030%未満、S0.015%以下、Mo0.001〜3.0%、N0.001〜0.04%、Ta0.01〜1.0%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、C1値及びC2値がC1値≧(20×C2値+24)の関係にあり、DSC値が15.1未満、DR値が12未満、SR値が20.0未満になっている。
【選択図】図8
Description
本発明は、高耐食性オーステナイト系ステンレス鋼及び溶接継手構造に係り、特に、原子力発電プラントの、厳しい腐食環境に曝され応力腐食割れが問題となる構造部材に適用するのに好適な高耐食性オーステナイト系ステンレス鋼及び溶接継手構造に関する。
沸騰水型原子力発電プラントの、原子炉に用いられる炉内構造物及び再循環系配管には、近年、SUS316L鋼といった炭素含有量の低い、耐応力腐食割れ性の高いオーステナイト系ステンレス鋼(低炭素ステンレス鋼)が用いられている。
しかしながら、これらの炉内構造物及び再循環系配管、特に、それらの機械加工が施された表面が残留した部位では、炉水に接する表面に引張残留応力が存在する位置で、炉水の酸化性環境の作用により、プラントの運転中に応力腐食割れを引き起こす損傷事例が顕在化しつつある。このような引張残留応力は、製造過程、特に、溶接施工時に、溶接金属部の凝固収縮により溶接部周辺に発生するほか、機械加工によって施工表面に発生することもある。
応力腐食割れは、材料、応力及び環境(水質)のすべての要因が重なった条件下で発生するとされている。それぞれの要因を緩和する対策が施行され、原子力プラントの構造部材の応力腐食割れに対する総合的なリスク低減を図っている。応力対策としては、溶接及び加工によって発生した引張応力の緩和もしくは圧縮応力化を指向して熱処理及び表面処理が提案され、提案の一部が実施されている。また、環境対策としては、炉水の、不純物低減、導電率及び溶存酸素量の厳格な管理が提案され、腐食電位の引き下げを指向する水素注入及び貴金属注入が適用されている。他方、材料対策としては、製造時にグラインダ研削などで生じた、構造部材の表面加工層を研磨によって除去するなどの、冷間加工の影響の低減が図られている。しかしながら、長期間にわたる健全性を担保するためには、耐食性に対してより一層の信頼性の高い材料が求められている。
従来から、高温水中での応力腐食割れ抑制のため、その素過程の一つである粒界腐食を抑制する方法が検討されてきた。例えば、Cr及びMoといった耐食性に有効な元素の含有量を最適化したり、Cの添加量を低減してCr炭化物の粒界析出によるCr欠乏領域の生成を防止したりしている。さらには、耐粒界腐食性に有害な元素であるP及びSの含有量を低減する手法がある。これらの知見の多くは既に実施されている。近年では、例えば、特開平6−122946号公報に記載されているように、低炭素ステンレス鋼の粒界腐食の要因としてラーベス相及びχ相の粒界析出を特定し、これらの析出を抑制する化学成分が提案されている。
近年、顕在化しつつある低炭素ステンレス鋼の応力腐食割れは、製造時における機械加工との関わりが指摘されている。強加工を受けた構造部材の表面で貫粒型の応力腐食割れも観察されるため、応力腐食割れに対して信頼性の高い材料を得るには粒界腐食抵抗だけでなく、基材そのものの耐食性向上も必要である。例えば、特開2006−291325号公報及び特開2009−161802号公報には、応力腐食割れへの機械加工の影響を想定し、Cr濃度を高くするなど化学成分組成を限定して応力腐食割れを抑制するオーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。特開2009−79240号公報では、固溶CならびにN濃度を低減したSCC進展速度の遅いオーステナイト系ステンレス鋼が記載されている。
基材そのものの一般的な耐食性が高いステンレス鋼として、化学プラント等で使用されている、Cr及びNi濃度の高い310Sステンレス鋼、Cr、Ni及びMo濃度の高い836Lステンレス鋼などがある。しかしながら、製造性及び経済性の懸念から、これらの材料の大型構造部材への適用は進んでいない。このようなCr及びMo濃度の高いステンレス鋼は、熱間加工性が304ステンレス鋼及び316ステンレス鋼に比べて低く、熱処理及び元素の添加によって脆化相を生成しやすい。また、Cr及びMo濃度の高いステンレス鋼は、粒界腐食に対して必ずしも高い抵抗を示すわけではない。例えば、25%Cr−20%Niの310ステンレス鋼では、Pの偏析、熱鋭敏化などによって粒界腐食が生じることがある。
この粒界腐食抵抗を微量元素の添加により改善したステンレス鋼が開発されている。このステンレス鋼は、例えば、特公平5−25945号公報、特開平5−263131号公報及び特開平6−306548号公報に記載されている。特公平5−25945号公報は、粒界腐食の原因となるP及びCと親和力の強いMoを0.5%までもしくはNbを0.1%まで添加することによって粒界応力腐食割れを低減させたステンレス鋼を開示している。使用済核燃料再処理設備のような、高温の硝酸溶液にさらされる環境で使用するのに好適な、粒界腐食の発生原因であるCを固着させるためにNbを添加したステンレス鋼が、特開平5−263131号公報及び特開平6−306548号公報などに開示されている。しかしながら、このようなMo及びNbの添加は脆化相の生成、さらには熱間加工性及び溶接性の低下を招くことがある。
原子炉内では、炉内構造物が中性子照射環境にさらされるため、長期間の使用で炉内構造物の材質が変化して応力腐食割れ感受性が上昇し、照射誘起応力腐食割れを生じる可能性が指摘されている。したがって、長期間使用される炉内構造物には、耐照射誘起応力腐食割れ性の高いステンレス鋼が求められている。応力腐食割れ感受性の上昇を引き起こす有力な要因の一つとして、放射線照射により粒界のSi及びP濃度が増加し、Cr濃度が低下する照射誘起偏析が考えられている。特開昭62−107047号公報では、304Lステンレス鋼においてSi及びP濃度を低減し照射誘起偏析による粒界の耐食性低下を防ぎ、C濃度を0.02%以下に低減しMoを1%まで添加することによりCr炭化物の生成を抑制したステンレス鋼が記載されている。特公平7−100842号公報では、304Lステンレス鋼及び316Lステンレス鋼に、Nb,Ta,Ti,Hf,Zrを添加することにより水素イオン照射に伴う粒界応力腐食割れ感受性を低下させることが説明されている。また、特開平5−59494号公報では、316Lステンレス鋼に、V,Nb,Ta,Ti,Hf,Zrを添加することにより電子線照射に伴う粒界のCr濃度を低下させることが開示されている。また、特開平8−165545号公報には、304L及び316Lステンレス鋼において、照射による硬化及び照射誘起偏析現象を加速するN、及び粒界偏析により粒界の耐食性を低下するPを低減したステンレス鋼が記載されている。
近年、ステンレス鋼の材料組織に着目して、耐応力腐食割れ性を向上させる手法が提案されている。結晶粒径に着目し、結晶の粗粒化もしくは細粒化を指向したものがある。例えば、特開平8−246106号公報及び特開平8−337853号公報には結晶の細粒化によって、特開2005−23343号公報には結晶の粗粒化によって、さらには特許第2897694号公報には結晶の単結晶化によって、応力腐食割れ及びその素過程の一つである粒界腐食を抑制できることがそれぞれ示されている。また、ステンレス鋼の粒界構造に着目して、耐食性に有効な構造を有する粒界の比率を増やすことにより、応力腐食割れの素過程の一つである粒界腐食の抑制を指向したものがある。例えば、特許第2983289号公報、特許第4176546号公報、特開2003−253401号公報、及び特開2005−15896公報には、オーステナイト系ステンレス鋼を対象に耐食性に有効な低エネルギー粒界(双晶粒界などの特殊粒界)の比率を増やすことにより耐粒界腐食性が向上することが記載されている。
特許第2983289号公報、特許第4176546号公報、特開2003−253401号公報及び特開2005−15896公報等に記載された材料組織を制御したオーステナイト系ステンレス鋼は、素材製造プロセスにおいて複雑かつ高度な制御が必要であるため製造可能な寸法が小さくなるほか、プラントの製造工程を考慮すると、成形加工及び溶接により当初の制御組織が維持されない恐れがあり、プラントへの適用のために解決すべき課題も多い。
また、Cr濃度の高いステンレス鋼にV,Nb,Ta,Ti,Hf,Zrを添加した場合における照射誘起偏析現象を報告した文献はほとんどない。このような元素の添加によって脆化相の生成、熱間加工性及び溶接性の低下を招く恐れがあるため、特に、大型構造物を製造する場合において熱間加工性及び溶接性を確保するためには、主要成分も含めて相安定性を踏まえたステンレス鋼の成分設計が必要である。
本発明の目的は、粒界腐食抵抗をさらに増大させることができ、脆化を抑制することができる高耐食性オーステナイト系ステンレス鋼及び溶接継手構造を提供することにある。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、質量%で、Crを17〜26%、Niを14〜24%、Cを0.001〜0.020%、Siを0.1〜1.0%、Mnを0.1〜2.0%、Pを0.030%未満、Sを0.015%以下、Moを0.001〜3.0%、Nを0.001〜0.04%、及びTaを0.01〜1.0%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
下記の(1)式で示されるC1値と下記の(2)式で示されるC2値がC1値≧20×C2値+24の関係にあり、下記の(3)式で示されるDSC値が15.1未満、下記の(4)式で示されるDR値が12未満及び下記の(5)式で示されるSR値が20.0未満であることにある。
C1値=Cr+Mo …(1)
C2値=15×C―2×Nb―Ta …(2)
DSC値=Cr−0.55×Ni+0.99×Mo …(3)
DR値=Cr−0.72×Ni+0.84×Mo …(4)
SR値=Cr−0.38×Ni+0.17×Mo+0.091×Mo×Ni+1.58×Si+0.31×Mn+1.2×Nb+1.7×Ta …(5)
ただし、(1)式〜(5)式に記載された各元素記号は各元素の質量%である。
下記の(1)式で示されるC1値と下記の(2)式で示されるC2値がC1値≧20×C2値+24の関係にあり、下記の(3)式で示されるDSC値が15.1未満、下記の(4)式で示されるDR値が12未満及び下記の(5)式で示されるSR値が20.0未満であることにある。
C1値=Cr+Mo …(1)
C2値=15×C―2×Nb―Ta …(2)
DSC値=Cr−0.55×Ni+0.99×Mo …(3)
DR値=Cr−0.72×Ni+0.84×Mo …(4)
SR値=Cr−0.38×Ni+0.17×Mo+0.091×Mo×Ni+1.58×Si+0.31×Mn+1.2×Nb+1.7×Ta …(5)
ただし、(1)式〜(5)式に記載された各元素記号は各元素の質量%である。
C1値≧20×C2値+24を満足するので、オーステナイト系ステンレス鋼の粒界腐食抵抗を向上させることができ、DSC値が15.1未満、DR値が12未満及びSR値が20.0未満であるので、オーステナイト系ステンレス鋼の脆化を抑制することができる。さらに、C2値が0以下になるようにTaが含まれており、炭素と結びつかない固溶Taが存在するので、粒界におけるCrの照射誘起偏析を抑制することができる。
上記した目的は、質量%で、Crを17〜26%、Niを14〜24%、Cを0.001〜0.020%、Siを0.1〜1.0%、Mnを0.1〜2.0%、Pを0.030%未満、Sを0.015%以下、Moを0.001〜3.0%、及びNを0.001〜0.04%を含有し、且つ0.01〜0.4%のNb及び0.01〜1.0%のTaのうち少なくとも1種を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
上記の(1)式で示されるC1値と上記の(2)式で示されるC2値がC1値≧20×C2値+24の関係にあり、上記の(3)式で示されるDSC値が15.1未満、上記の(4)式で示されるDR値が12未満、及び上記の(5)式で示されるSR値が20.0未満であり、下記の(6)式で示されるDL値が6.6を超えていることによっても達成できる。
DL値=Cr−0.94×Ni+1.4×Mo …(6)
ただし、(6)式に記載された各元素記号は各元素の質量%である。
上記の(1)式で示されるC1値と上記の(2)式で示されるC2値がC1値≧20×C2値+24の関係にあり、上記の(3)式で示されるDSC値が15.1未満、上記の(4)式で示されるDR値が12未満、及び上記の(5)式で示されるSR値が20.0未満であり、下記の(6)式で示されるDL値が6.6を超えていることによっても達成できる。
DL値=Cr−0.94×Ni+1.4×Mo …(6)
ただし、(6)式に記載された各元素記号は各元素の質量%である。
この特徴によれば、オーステナイト系ステンレス鋼における粒界腐食抵抗の向上、脆化の抑制及び粒界におけるCrの照射誘起偏析の抑制を図ることができ、DL値が6.6を超えているので、オーステナイト系ステンレス鋼の溶接割れを抑制することができる。粒界におけるCrの照射誘起偏析の抑制は、C2値が0以下になるようにTa及びNbの少なくとも一種が含まれており、炭素と結びつかない固溶Ta及び固溶Nbの少なくとも一種が存在することによって達成できる。
上記した目的は、質量%で、Crを17〜26%、Niを14〜24%、Cを0.001〜0.020%、Siを0.1〜1.0%、Mnを0.1〜2.0%、Pを0.030%未満、Sを0.015%以下、Moを0.4〜3.0%、及びNを0.001〜0.04%を含有し、且つ0.01〜0.4%のNb及び0.01〜1.0%のTaのうち少なくとも1種を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
上記の(1)式で示されるC1値と上記の(2)式で示されるC2値がC1値≧20×C2値+24の関係にあり、上記の(3)式で示されるDSC値が15.1未満、上記の(4)式で示されるDR値が12未満及び上記の(5)式で示されるSR値が20.0未満であることによっても達成できる。
上記の(1)式で示されるC1値と上記の(2)式で示されるC2値がC1値≧20×C2値+24の関係にあり、上記の(3)式で示されるDSC値が15.1未満、上記の(4)式で示されるDR値が12未満及び上記の(5)式で示されるSR値が20.0未満であることによっても達成できる。
この特徴によっても、オーステナイト系ステンレス鋼における粒界腐食抵抗の向上、脆化の著しい抑制及び粒界におけるCrの照射誘起偏析の抑制を図ることができる。粒界におけるCrの照射誘起偏析の抑制は、C2値が0以下になるようにTa及びNbの少なくとも一種が含まれており、炭素と結びつかない固溶Ta及び固溶Nbの少なくとも一種が存在することによっても達成できる。Moを0.4〜3.0%含んでいるので、オーステナイト系ステンレス鋼の、粒界鋭敏化及び照射環境下での照射誘起偏析をそれぞれ抑制することができ、耐食性を向上させることができる。
発明者らは、粒界腐食抵抗をさらに増大させることができ、脆化を抑制することができる高耐食性オーステナイト系ステンレス鋼について検討を行った。この検討結果に基づいて上記した本発明の特徴点を見出したのである。その検討内容を以下に説明する。
現行の原子力プラントの製造プロセスでは、製造時において原子力プラントの構造部材に対する機械加工は避けることができない。この機械加工時に構造部材に生じる加工表面が応力腐食割れの要因として考えられており、研磨による表面加工層除去、熱処理及びピーニングによる応力緩和もしくは応力圧縮化対策、水質改善対策を併せて実施することにより、応力腐食割れに対する総合的なリスク低減を図っている。
本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼そのものの応力腐食割れ発生感受性を低下させることにより、応力腐食割れに対する総合的なリスクのさらなる低減を図るものである。
応力腐食割れに対する万全な健全性を確保するため、Cr濃度を高くし、さらにMoを添加することにより、オーステナイト系ステンレス鋼自体の耐食性を従来のオーステナイト系ステンレス鋼よりも向上させる。さらに、粒界型応力腐食割れに対する施策も必要である。Cr炭化物析出に伴う粒界鋭敏化を抑制するために、C濃度の低減と共に鋭敏化抑制元素であるMo、もしくはC安定化元素であるNb及びTaの少なくとも1つを添加することが望ましい。Nb、Taは、また、オーステナイト相の平均原子直径に対して大きな直径を有する元素であり、放射線照射によって生じた空孔の粒界移動を妨げ、照射誘起偏析を抑制することができる。Nb,TaがCを安定化し、粒界腐食抵抗を高めるには、含有するC濃度に対応した一定濃度以上のNb,Taを含有する必要がある。また、粒界で欠乏することにより粒界耐食性を損なうCr及びこのCr欠乏を抑制するMoの濃度も、このNb、TaのC安定化による粒界腐食抵抗の向上に影響する。
ここで、発明者らは、以上のことを考慮し、本発明の高耐食性オーステナイト系ステンレス鋼の組成について検討した。
Cは、オーステナイト系ステンレス鋼の強度を確保する上で必要な元素であり、0.001%以上でその強度を確保することができる。0.020%を超えると、Cr炭化物の粒界析出による粒界鋭敏化が顕著となり、耐粒界腐食性が損なわれる。そこで、Cの含有量の範囲を0.001〜0.020%とした。
Siは、オーステナイト系ステンレス鋼の素材製造工程で脱酸材として必要な元素であり、0.1%以上で脱酸の効果を得ることができる。しかし、1.0%を超えると靭性が低下する。そこで、Siの含有量の範囲を0.1〜1.0%とした。
Mnは、オーステナイト系ステンレス鋼の素材製造工程で脱酸に有効な元素であり、0.1%以上で脱酸の効果を得ることができるが、2.0%を超えると耐食性が低下する。そこで、Mnの含有量の範囲を0.1〜2.0%とした。
Pは、オーステナイト系ステンレス鋼中の不純物元素であり、結晶粒界の耐食性を低下させ、溶接時の高温割れの原因となる。このため、Pの含有量は極力低減することが望ましい。しかし、Pの含有量を低減するには素材製造コストが高くなるため、経済性を考慮し、現行の通常の製造プロセスの水準である0.030%未満とした。
Sも、オーステナイト系ステンレス鋼中の不純物元素である。Sは、結晶粒界の耐食性を低下させ、溶接時の高温割れの原因となるので、Sの含有量は極力低減することが望ましく、その含有量は0.015%以下とした。
Crは、オーステナイト系ステンレス鋼の耐食性を向上するのに必要な元素であり、高温水環境では17%以上で耐食性向上の効果を得ることができる。しかし、Crの含有量が26%を超えると、熱間加工性を低下させ、経済性を損ねる。そこで、Cr含有量の範囲を17%〜26%とした。
Niは、オーステナイト系ステンレス鋼の耐食性の向上及びオーステナイト相の形成に有効な元素であり、14%以上でこれらの効果を得ることができる。Niの含有量が24%を超えると、オーステナイト相の安定度が増し、オーステナイト系ステンレス鋼の加工性及び溶接性を低下させるので、経済性を損ねる。そこで、Niの含有量の範囲を14%〜24%とした。
Moは、オーステナイト系ステンレス鋼の、粒界鋭敏化及び照射環境下での照射誘起偏析をそれぞれ抑制し、耐食性を向上させる作用を有する。Moを0.4%以上含有させることでその効果が得られるが、3.0%を超えると、金属間化合物が粒界析出し、耐粒界腐食性が劣化する。そこで、Moの含有量を3%以下にした。
Nは、オーステナイト系ステンレス鋼の強度を確保する上で必要な元素であり、0.001%以上で十分な強度を得ることができる。しかしながら、Nの含有量を0.04%よりも大きくすると、オーステナイト系ステンレス鋼の照射誘起応力腐食割れ感受性が増加する。このため、Nの範囲は0.001%〜0.04%にした。
Nb及びTaは、少量の含有量からCと炭化物を形成し、粒界鋭敏化を抑制する。さらに照射環境下でCrの照射誘起偏析を抑制し、オーステナイト系ステンレス鋼の耐食性を向上させる作用を有する。オーステナイト系ステンレス鋼の耐食性の向上が要求される場合には、Nb及びTaの少なくとも1つを0.01%以上含有させる。Nb及びTaの少なくとも1つを0.01%以上含むことによって、オーステナイト系ステンレス鋼の耐食性が向上する。Nbは0.4%を超えると、Taは1.0%を超えると、オーステナイト系ステンレス鋼の耐食性の向上が飽和する。そこで、Nb及びTaの少なくとも1つをオーステナイト系ステンレス鋼に含有させるとき、Nbの場合には0.01%〜0.4%の範囲で、Taの場合には0.01〜1.0%の範囲で含有させる。
Tiは、Nb及びTaと同様に少量の含有量からCと炭化物を形成し、オーステナイト系ステンレス鋼の粒界鋭敏化を抑制する。一方、Tiは、照射環境下でのCrの照射誘起偏析抑制効果がNb及びTaよりも小さく、Nb及びTaとともにオーステナイト系ステンレス鋼に多量に含ませると脆化相の析出を促進する。このため、Tiの含有量は0.02%以下とする。
Zrは、Nb及びTaと同様に少量の含有量からCと炭化物を形成し、オーステナイト系ステンレス鋼の粒界鋭敏化を抑制する。しかしながら、Nb及びTaとともに多量のZrをオーステナイト系ステンレス鋼に含ませると脆化相の析出を促進する。このため、Zrの含有量は0.02%以下まで含有してもよい。
本発明の高耐食性オーステナイト系ステンレス鋼は、上記した組成を有している。
発明者らは、オーステナイト系ステンレス鋼の粒界腐食抵抗の向上について、検討を行った。オーステナイト系ステンレス鋼の粒界でのCr欠乏に関わるC1値が、(1)式で表され、オーステナイト系ステンレス鋼に含まれるCr及びMoの各質量%を(1)式に代入することによって求められる。
C1値=Cr+Mo(質量%) …(1)
オーステナイト系ステンレス鋼内でのCr炭化物の形成に影響を与える固溶C濃度に関わるC2値が、(2)式で表され、オーステナイト系ステンレス鋼に含まれるC、Nb及びTaの各質量%を(2)式に代入することによって求められる。
オーステナイト系ステンレス鋼内でのCr炭化物の形成に影響を与える固溶C濃度に関わるC2値が、(2)式で表され、オーステナイト系ステンレス鋼に含まれるC、Nb及びTaの各質量%を(2)式に代入することによって求められる。
C2値=15×C―2×Nb―Ta(質量%) …(2)
(1)式及び(2)式に記載された各元素記号は各元素の質量%である。
(1)式及び(2)式に記載された各元素記号は各元素の質量%である。
発明者らは、(1)式で示されるC1値が、(2)式で示されるC2値を考慮し、C1≧(20×C2+24)を満足すれば、オーステナイト系ステンレス鋼が、Nb及びTaの少なくとも1つによるC安定化により高い粒界腐食抵抗が得られることを新たに見出した(図8参照)。
さらに、発明者らは、本発明の上記した組成を有するオーステナイト系ステンレス鋼(便宜的に本発明材という)の試験片、及び316Lステンレス鋼の試験片を用いて、Nb及びTaによるCrの照射誘起偏析の抑制を実験により確認した。これらの試験片に、照射温度300℃でNiイオンを5dpa照射し、Crの偏析量とC2値の関係を調べた。Niイオンの照射は、試験片への中性子照射の代用として行っている。316Lステンレス鋼はNb及びTaを含んでいない。Nb及びTaによるCrの照射誘起偏析の抑制効果を、図1を用いて説明する。(2)式で示されるC2値の負値は、Cと結合しない固溶Nbまたは固溶Taの、含有量に対応する量であり、図1のように、C2値が負値を示す場合、Niイオン照射後における本発明材の粒界Cr偏析量(低下量)は、316Lステンレス鋼の点線で示された粒界Cr偏析量(低下量)よりも小さくなった。このように、固溶Nb(Nb:0.01%〜0.4%)または固溶Ta(Ta:0.01〜1.0%)が存在する本発明材は、照射誘起Cr偏析を抑制することができる。上記のそれぞれの含有量の範囲でNb及びTaが固溶している本発明材でも同様な効果が得られる。
一方で、Cr及びMoのそれぞれの含有量を多くし、Nb,Taを添加するとオーステナイト系ステンレス鋼においてσ相が析出しやすくなり、材料が脆化するほか、σ相の析出は耐食性も低下させる。そこで、発明者らは、σ相に関わる相平衡の化学成分依存性について鋭意検討を行った。この結果、Cr含有量が多く、Moを添加した場合でもオーステナイト系ステンレス鋼が脆化せず、耐食性も向上できる組成範囲を見出した。
オーステナイト系ステンレス鋼の脆化を抑制するためには、オーステナイト系ステンレス鋼の製造過程で熱間鍛造及び圧延といった熱加工プロセスが行われる950〜1250℃の温度域(この温度域を熱加工プロセス温度領域という)において、速度論的に、望ましくは平衡論的にσ相を析出させないことが必要である。σ相の生成には2つのケースがあり、第1のケースはσ相がオーステナイト母相から析出する場合、第2のケースはσ相が析出もしくは晶出したδ−フェライト相から析出する場合である。オーステナイト母相と比べて、δ−フェライト相はCr及びMoの各濃度が高く、σ相も同じくCr及びMoの各濃度が高いので、δ−フェライト相が存在するとσ相は析出しやすくなる。
上記した組成を有するオーステナイト系ステンレス鋼において、σ相が析出するケースとして、以下に示す(A)、(B)及び(C)の3つのケースがある。(A)オーステナイト系ステンレス鋼の融点近傍で析出もしくは晶出したδ−フェライト相が平衡状態で熱加工プロセス温度域まで安定であり、σ相とδ−フェライト相が共存する温度域が存在する。(B)オーステナイト系ステンレス鋼の融点近傍で析出もしくは晶出したδ−フェライト相が平衡状態で熱加工プロセス温度領域まで安定である。熱加工プロセス中もδ−フェライト相が残留してCr及びMoの各濃度が高まり、温度が低下した状態での熱加工プロセス及び冷却中にオーステナイト母相ではなく、残留したδ−フェライト相からσ相が析出する。(C)オーステナイト系ステンレス鋼の熱加工プロセス温度域までσ相が安定な場合は、σ相がオーステナイト母相から析出する可能性がある。上記の3つのケースのうち、最もσ相が析出しやすいのはケースAであり、次にσ相が析出しやすいのはケースBである。
発明者らは、これらの3つのケースにおいて、σ相の析出を抑制できる対策を検討した。この検討の結果、発明者らは、ケースAのσ相の析出はDSC値を15.1未満にすることにより回避でき、ケースBのσ相の析出はDR値を12未満にすることにより回避でき、ケースCのσ相の析出はSR値を20.0未満にすることにより回避できるという新たな知見を得ることができた。これらの知見を以下に説明する。
融点近傍で析出もしくは晶出したδ−フェライト相が平衡状態で熱加工プロセス温度領域まで安定であり、σ相とδ−フェライト相が共存する温度域が存在する場合(ケースA)を回避するためには、下記の(3)式で示されるDSC値を15.1未満にする必要がある。
DSC値=Cr−0.55×Ni+0.99×Mo(質量%) …(3)
(3)式に記載された各元素記号は各元素の質量%である。
(3)式に記載された各元素記号は各元素の質量%である。
DSC値が15.1以上になるケース(Aケース)では、図2(A)に示すように、オーステナイト系ステンレス鋼において、σ相とδ−フェライト相が共存する温度域が存在している。両方の相が共存する温度域では、δ−フェライト相からσ相が析出しやすい。図2において、縦軸はオーステナイト系ステンレス鋼におけるσ相及びδ−フェライト相の存在率を示し、横軸はオーステナイト系ステンレス鋼の温度を示している。以下に述べる図3から図5のそれぞれの縦軸および横軸も、図2と同じである。
DSC値が15.1未満になると、図2(B)に示すように、σ相とδ−フェライト相が共存する温度域が無くなり、この温度域で生じるδ−フェライト相からσ相の析出を回避することができる。このため、オーステナイト系ステンレス鋼でのσ相の析出を大幅に抑制することができ、オーステナイト系ステンレス鋼の脆化を著しく抑制することができる。
融点近傍で析出もしくは晶出したδ−フェライト相が平衡状態で熱加工プロセス温度域まで安定である場合(ケースB)を回避するためには、下記の(4)式で示されるDR値を12未満にする必要がある。
DR値=Cr−0.72×Ni+0.84×Mo(質量%) …(4)
(4)式に記載された各元素記号は各元素の質量%である。
(4)式に記載された各元素記号は各元素の質量%である。
DR値が12以上になるケース(ケースB)では、図3(A)に示すように、オーステナイト系ステンレス鋼において、熱加工プロセス温度領域(950〜1250℃)の上限の温度(1250℃)より下方で熱加工プロセス温度領域の一部の温度領域に、安定なδ−フェライト相が存在する。このため、σ相が、オーステナイト系ステンレス鋼の製造過程における熱間鍛造及び圧延といった熱加工プロセスにおいて、熱加工プロセス温度領域で存在するδ−フェライト相から析出する。
DR値が12未満になると、図3(B)に示すように、熱加工プロセス温度領域でδ−フェライト相が存在しなくなる。このため、オーステナイト系ステンレス鋼に対して熱加工プロセスを実施したときに、σ相が熱加工プロセス温度領域に存在するδ−フェライト相から析出することを回避することができる。オーステナイト系ステンレス鋼でのσ相の析出を抑制することができ、オーステナイト系ステンレス鋼の脆化を抑制することができる。
DSC値を15.1未満にし、さらに、DR値を12未満にすることによって、DSC値を15.1未満にすることによって達成できるオーステナイト系ステンレス鋼の脆化抑制を、さらに促進させることができる。
オーステナイト系ステンレス鋼の熱加工プロセス温度域までσ相が安定な場合(ケースC)を回避するためには、下記の(5)式で示されるSR値を20.0未満にする必要がある。
SR値=Cr−0.38×Ni+0.17×Mo+0.091×Mo×Ni+1.58×Si+0.31×Mn+1.2×Nb+1.7×Ta(質量%) …(5)
(5)式に記載された各元素記号は各元素の質量%である。ケースCにおいて、熱加工プロセス後に速やかに冷却される肉厚の薄い構造部材では、構造部材の化学組成によっては、安定なσ相が熱加工プロセス温度域内に存在する状態を回避できることもある。
(5)式に記載された各元素記号は各元素の質量%である。ケースCにおいて、熱加工プロセス後に速やかに冷却される肉厚の薄い構造部材では、構造部材の化学組成によっては、安定なσ相が熱加工プロセス温度域内に存在する状態を回避できることもある。
SR値が20.0以上になるケース(ケースC)では、図4(A)に示すように、オーステナイト系ステンレス鋼において、熱加工プロセス温度領域(950〜1250℃)の下限の温度(950℃)より上方で熱加工プロセス温度領域の一部の温度領域に、安定なσ相が存在する。このため、σ相がオーステナイト母相から析出する可能性がある。
SR値が20.0未満になると、図4(B)に示すように、熱加工プロセス温度領域でσ相が存在しなくなる。このため、オーステナイト系ステンレス鋼に対して熱加工プロセスを実施したときに、σ相がオーステナイト母相から析出することを回避することができる。オーステナイト系ステンレス鋼でのσ相の析出を抑制することができ、オーステナイト系ステンレス鋼の脆化を抑制することができる。
DSC値を15.1未満にし、さらに、SR値を20.0未満にすることによって、DSC値を15.1未満にすることによって達成できるオーステナイト系ステンレス鋼の脆化抑制を、さらに促進させることができる。なお、DSC値を15.1未満にし、DR値を12未満にし、さらに、SR値を20.0未満にすることによって、オーステナイト系ステンレス鋼の脆化を最も抑制することができる。
310Sステンレス鋼などのCr及びNiの各濃度が高いオーステナイト系ステンレス鋼では、溶接時に高温割れと呼ばれる溶接割れを生じやすく、特に、肉厚の厚い構造部材の溶接継手を作製する際に困難を生じる。溶接割れは、P及びSが凝固時に粒界に濃縮されて、粒界部の融点を低下させ、粒界の結合力を弱めるために生じるので、P及びSの各濃度を低減することによって、溶接割れ抵抗の向上が図られてきた。一方、現行の製鋼プロセスでは不純物、特にPを低減することは製造コストを高める要因である。
304Lステンレス鋼及び316Lステンレス鋼では、融点近傍でδ−フェライト相が析出または晶出し、このδ−フェライト相がP及びSを吸収することによって溶接割れを抑制している。しかし、上述のように、δ−フェライト相からσ相が析出することにより、オーステナイト系ステンレス鋼の脆化を招き、特に、Cr濃度が高いとσ相が析出しやすくなる。そこで、発明者らは、δ−フェライト相ならびにσ相に関わる相平衡の化学成分依存性について鋭意検討を行った結果、Cr及びNi濃度が高い場合でも溶接割れを抑制できる組成範囲を見出した。溶接割れを抑制するためには、(a)現行の通常製鋼プロセスで可能な範囲でP及びSのそれぞれの含有量を低減する、及び(b)オーステナイト系ステンレス鋼の融点近傍でδ−フェライト相が析出または晶出し、かつδ−フェライト相が平衡状態で熱加工プロセス温度域まで安定であることを回避することが必要である。溶接割れを抑制するためには、(a)及び(b)のいずれかの条件を満足すればよい。
(a)に関しては、P及びSのそれぞれの含有量を現行の通常製鋼プロセスで可能な範囲で低減し、Pを0.030%未満、Sを0.015%以下とする。
融点近傍でδ−フェライト相を析出または晶出させるためには、下記の(6)式で示されるDL値が6.6を超える必要がある。
DL値=Cr−0.94×Ni+1.4×Mo(質量%) …(6)
(6)式に記載された各元素記号は各元素の質量%である。δ−フェライト相が平衡状態で熱加工プロセス温度域まで安定であることを回避するためには、前述したように、(4)式で表されるDR値を12未満にする必要がある。
(6)式に記載された各元素記号は各元素の質量%である。δ−フェライト相が平衡状態で熱加工プロセス温度域まで安定であることを回避するためには、前述したように、(4)式で表されるDR値を12未満にする必要がある。
DL値が6.6以下になる場合には、図5(A)に示すように、オーステナイト系ステンレス鋼にδ−フェライト相が存在しない。このため、オーステナイト系ステンレス鋼を溶接すると、溶接割れが発生しやすくなる。DL値が6.6を超える場合には、図5(B)に示すように、オーステナイト系ステンレス鋼にδ−フェライト相が形成される。これにより、オーステナイト系ステンレス鋼を溶接しても、オーステナイト系ステンレス鋼における溶接割れの発生が抑制される。
粒界性格によって隣り合う結晶粒の結合性及び耐食性が異なることが知られている。加工熱処理によって、エネルギーの低い対応粒界の割合を増やし、ランダム粒界からなる粒界網を分断すると、腐食及び応力腐食割れは対応粒界を回避してエネルギーの高いランダム粒界に沿って進むことが多い。超音波探傷によるき裂の検出限界が2mm程度であることを考慮すると、発生した応力腐食割れの進展を、オーステナイト系ステンレス鋼製の構造部材の表面から深さ2mm以内で止めることができれば、検査上は応力腐食割れの発生を抑えたことになる。また、十分な厚さをもつ構造部材であれば強度上も問題がない。構造部材に対する表面強加工による加工影響層の深さは300〜400μmであり、観察されている粒内型応力腐食割れは深さ200〜300μmまで達しているものもある。さらに、構造部材の深部では粒界型応力腐食割れが進展するが、その進展を1.5mm程度以内で止めることができれば、全体でみると深さ2mm以内で止めたことになる。三次元分布を考慮したランダム粒界網の深さ方向長さを1.5mm以内とすることにより、ランダム粒界に沿った粒界型応力腐食割れを確率的に止めることができる。
上記の条件を満たすオーステナイト系ステンレス鋼を用いることにより、腐食性の高い環境及び照射環境で粒界腐食を抑制でき、応力腐食割れ発生に対するポテンシャルを低減できる。さらに、研磨による表面加工層除去、熱処理やピーニングによる応力緩和もしくは応力圧縮化対策、水質改善対策といった諸対策と併せて実施することにより、応力腐食割れに対する総合的なリスク低減を図り、長期間における原子力プラントの構造部材(例えば、炉構造物)の健全性を維持できる。
本発明によれば、オーステナイト系ステンレス鋼の粒界腐食抵抗を高め、照射誘起偏析を抑制することができ、脆化を抑制することができる。これにより、応力腐食割れを抑制でき、原子力プラントの構造部材の健全性を維持することができる。
本発明の実施例を以下に説明する。
本発明の実施例であるオーステナイト系ステンレス鋼の化学成分を表1に示す。表1において、本実施例のオーステナイト系ステンレス鋼は、材料番号4〜7及び11〜20で示される各化学成分を有している各オーステナイト系ステンレス鋼である。材料番号4〜7及び11〜20で示されるこれらの本実施例のオーステナイト系ステンレス鋼は、便宜的に、「本発明材」と記述されている。材料番号4〜7及び17〜20の各オーステナイト系ステンレス鋼は、0.01〜0.4%の範囲内のNbを含んでいる。材料番号11〜16および18〜20の各オーステナイト系ステンレス鋼は、0.01〜1.0%の範囲内のTaを含んでいる。
表1には、比較例である、材料番号1〜3,8〜10及び21〜23で示される各化学成分を有している各オーステナイト系ステンレス鋼が示されている。これらの比較例の各オーステナイト系ステンレス鋼は、便宜的に、「比較材」と記述されている。
表1に示された各本発明材及び各比較材について、表1に記載された化学成分を基に(1)〜(6)式により算出したC1値、C2値、DSC値、DR値、SR値及びDL値を表2に示す。
材料番号4〜7及び11〜20の各本発明材は、C1≧(20×C2+24)を満足し、DSC値が15.1未満、DR値が12未満、及びSR値が20.0未満である。さらに、材料番号4〜7、11〜15、18及び19の各本発明材は、DL値が6.6を超えている。ただし、材料番号16、17及び20の各本発明材のDL値は6.6未満になっている。
これに対し、材料番号1〜3,8〜10及び21〜23の各比較材は、C1≧(20×C2+24)を満足していなく、DL値が6.6を超えている。各比較材において、DSC値は材料番号1〜3を除いて15.1未満になっており、DR値は材料番号1〜3を除いて12未満になっており、さらに、SR値は材料番号2及び3を除いて20.0未満になっている。
表1に示された各本発明材及び各比較材は、インゴットを溶解後、加熱温度1200℃、加工下限温度950℃で熱間鍛造及び熱間圧延にて加工し、1090℃の固溶化熱処理を経て、厚さ30mmの板材に作製した。
表3は、現行の製鋼プロセスで作製された316Lステンレス鋼について、主要成分を除いた不可避不純物の濃度を示している。表1に示された各本発明材も、現行の通常製鋼プロセスを考慮したとき、表3に示された不可避不純物相当の不可避不純物を含んでいる。
固溶化熱処理を行った、表1に示す各本発明材及び各比較材に対し、室温、及び高温(288℃)のそれぞれで引張試験を行った。これらの引張試験結果を表4に示す。
さらに、材料番号1〜20の各オーステナイト系ステンレス鋼に対して、オーステナイト相粒界の内、Σ値が29以下となる粒界の比率が75%以上となる加工熱処理(粒界性格制御熱処理)を施した。粒界性格制御熱処理では、材料に、3〜10%の圧延加工を行った後、この圧延加工に引き続いて、950〜1200℃に保持後急冷の熱処理を施した。粒界性格制御熱処理を施した材料番号1〜20の各オーステナイト系ステンレス鋼に対して、室温、及び高温(288℃)のそれぞれで引張試験を行った。これらの引張試験結果を表5に示す。表5において、括弧付の材料番号は、粒界性格制御熱処理を施したことを意味している。脆化の原因となるσ相の析出しやすさを示すSDC値、DR値及びSR値のそれぞれの値が、表2で最も高くなっている材料番号3のオーステナイト系ステンレス鋼において延性が低下している。
表1に示す各本発明材及び各比較材のそれぞれの試験片を加熱して700±10℃で30分保持した後、水冷の熱処理を行い、この熱処理の後でそれらの試験片に対して65%硝酸による腐食試験を行った。この65%硝酸腐食試験では、各試験片を沸騰した65%硝酸溶液中に48時間浸漬させ、48時間の浸漬が終了した後、各試験片の、質量減で示される腐食度(g/m2/h)を測定した。65%硝酸腐食試験では、試験片のCr欠乏層、クロム炭化物及びσ相を硝酸で溶解し、粒界を腐食させた。上記のような腐食試験を5サイクル繰り返して行い、各試験片について5サイクルの腐食度の平均値を求めた。さらに、粒界性格制御熱処理を施した、材料番号1〜23の各オーステナイト系ステンレス鋼のそれぞれの試験片に対しても、上記した65%硝酸腐食試験を行った。
上記した各試験片に対する65%硝酸腐食試験結果を図6に示す。粒界性格制御熱処理を施した各試験片に対する65%硝酸腐食試験結果を図7に示す。316Lステンレス鋼相当の材料番号22の比較材と比較すると、Nb及びTaを添加していない材料番号1〜3の各比較材、及びCr含有量が少ない材料番号8〜10の各比較材での腐食度が大きくなっている。Nb及びTaと同じC安定化元素であるZrを含んだ材料番号8の比較材では、平均腐食度が顕著に大きくなっている。Taを含みCr含有量が多いオーステナイト系ステンレス鋼においても、Ta含有量が少ない場合には平均腐食度が大きくなる。
65%硝酸腐食試験を行った各本発明材及び各比較材のそれぞれの腐食試験結果を、C1値及びC2値でまとめた。この結果を図8に示す。NbもしくはTa原子1個にC原子1個が固着されるため、固着されないC原子数の指標を(2)式で示すC2値で表すことができ、粒界腐食の要因であるCr欠乏層形成と耐食性に関わるCrとMo濃度の指標を(1)式によって示されるC1値で表わすことができる。表1に示された全ての本発明材は、C1値が(20×C2+24)以上であって、平均腐食度が0.18g/(m2・h)以下であった。このような各本発明材は、粒界腐食抵抗が高められた。また、表1に示された全ての比較材は、C1値が(20×C2+24)未満であって、平均腐食度が0.18g/(m2・h)より大きくなった。
本発明材と比較材の一部について,高温水中ですきま付定ひずみ曲げ試験により応力腐食割れ試験を実施した。試験片は、溶体化処理後、973Kで1.8ksの熱処理を施した供試材からグラインダ研削表面を評価面として作製した。その試験片を治具に組み込んでグラファイトファイバウールによるすきまと1%の曲げひずみを付与した状態で、561K、入口導電率0.3×10−2μS/m、溶存酸素濃度8ppmの高温水中に1.8ks浸漬した。応力腐食割れ試験を実施した後に、試験片の長手方向に平行な中央断面を観察した結果を表6に示す。このような厳しい条件では、SUS316L相当の比較材22は試験片すべてに応力腐食割れが発生し、最大でき裂が深さ186μmに達した。Cr濃度が21.5%の本発明材16では試験片すべてに応力腐食割れが発生したものの、最大き裂深さは98μmと比較材22と比べて小さく、応力腐食割れ感受性が低減されていた。さらに、Cr濃度が25%の本発明材4、5、13、14では試験片すべてに応力腐食割れの発生は確認されず、応力腐食割れ感受性が極めて低いことが確認された。
表1に示した各本発明材及び各比較材のそれぞれの試験片に対してNiイオンを照射温度300℃で5dpa照射した。この照射後における各試験片のそれぞれのランダム粒界でのCr濃度を図9に示す。また、その照射後における各試験片のそれぞれのランダム粒界でのCr偏析量を図10に示す。イオン照射によって発生する損傷領域は試験片の表面近傍に限定され、深さ方向に損傷量の分布を有するため、イオン照射面から深さ0.6μmの位置を観察できるように、イオン研磨で研磨深さを制御しながら各試験片を薄膜化した。これらの薄膜試験片を、フィールドエミッション型電子銃及びエネルギー分散型X線分光装置を装備した透過電子顕微鏡により観察した。試験片の結晶粒界がランダム粒界であることを回折像による結晶方位解析で確認した後、試験片の粒界上の位置及び粒界から所定の距離離れた位置で、エネルギー分散型X線分光装置を用いて化学成分組成を分析した。粒界偏析が確認された場合には、粒界から序々に距離を置いて分析した化学組成に変化がなくなった位置での化学組成を基材の化学組成とし、粒界でのCr濃度及びCr偏析量を決定した。316Lステンレス鋼相当の材料番号22の比較材と比較すると、各本発明材は照射誘起偏析による粒界でのCr濃度の低下を抑制し、5dpa照射後も15%以上の粒界Cr濃度を示した。
原子力プラントの保全では、応力腐食割れによる損傷は定期点検時に目視または超音波探傷により検査される。超音波探傷によるき裂の検出限界が2mm程度であることを考慮すると、発生した応力腐食割れの進展を、原子力プラントの構造部材の表面から深さ2mm以内で止めることができれば、検査上は応力腐食割れの発生を抑えたことになる。また、超音波探傷による検査が必要とされる厚みのある構造部材では、深さ2mm程度のき裂は強度上問題ない。構造部材の表面加工により形成される加工影響層は表面から300〜400μmの範囲であり、これまで観察されている粒内型応力腐食割れの深さは深いものでも表面から200〜300μmの範囲である。このことから、深部での粒界型応力腐食割れを1.5mm程度に抑えれば、全体で深さ2mm以内に抑えることができる。
固溶化熱処理を施した材料番号5の本発明材の断面組織、及び加工熱処理によって粒界性格分布制御を施した材料番号5の本発明材の断面組織を、それぞれ、電子線後方散乱回折法によって解析した粒界性格分布の顕微鏡写真を、図11及び図12に示す。固溶化熱処理を施した材料番号5の本発明材の断面組織を便宜的に通常組織といい、粒界性格分布制御を施した材料番号5の本発明材の断面組織を便宜的に粒界性格分布制御組織という。ここで、粒界性格は、隣り合う結晶粒の結晶方位関係で決定されるΣ値を採用し、Σ値が1〜29までの粒界を対応粒界とし、それ以外の粒界をランダム粒界として取り扱った。図11及び図12において、黒線で示された粒界がランダム粒界であり、白色で示された粒界は対応粒界である。通常組織ではランダム粒界がネットワーク状に分布している(図11)が、粒界性格分布制御組織ではランダム粒界のネットワークが分断されている(図12)。粒界性格分布制御を施すため、固溶化熱処理材に対して2〜5%の冷間圧延後、1250〜1350Kで0.5〜50時間の熱処理からなる加工熱処理を実施した。
図11及び図12において上下方向を材料番号5の本発明材の深さ方向と捉えると、図中に記載しているようにランダム粒界が連続しているネットワークについて深さ方向の長さを求めることができる。10視野から各視野における深さ方向の最大長さを計測し、最大長さの分布の最頻値を求めると480μmであった。表6に示すようにこの材料番号5の本発明材を含む表1に示す本発明材を用いて応力腐食割れ試験を実施したが、厳しい試験条件としてみても深いき裂を得ることが難しかった。
そこで、材料番号21の比較材の化学成分において炭素量を0.06%に増やしたオーステナイト系ステンレス鋼を製作し、このオーステナイト系ステンレス鋼の試験片に同様に粒界性格分布制御を施した。粒界性格分布制御を施したその試験片を鋭敏化して応力腐食割れ試験を実施した。さらに、炭素量を0.06%に増やした上記オーステナイト系ステンレス鋼の、通常組織を有する別の試験片に対しても、同様な応力腐食割れ試験を行った。これらの応力腐食割れ試験の結果を表7に示す。
これらの試験結果を比較した。粒界性格分布制御を施して粒界性格分布制御組織を有する試験片では、最大き裂深さが、通常組織を有する試験片(最大き裂深さ:1180μm)に比べて小さく、870μmであった。また、応力腐食割れは概ねランダム粒界に沿って進展していた。この粒界性格分布制御組織を有する試験片のランダム粒界深さ方向における長さの最大値分布最頻値は460μmであった。この結果を考慮すると、ランダム粒界は3次元的に結合していて迂回して進展している。しかし、その深さは、本試験結果では高々最大値分布最頻値の2倍程度である。このため、き裂がその3倍に進展する確率は低く、き裂がその3倍に進展するためには長時間を要するといえる。
以上の結果によれば、このような粒界性格分布制御された組織が表面から2mm以上存在し、ランダム粒界が連続しているネットワークの深さ方向長さについて、その最大値分布最頻値の3倍の値が1.5mm以下であれば、粒界型応力腐食割れが1.5mm進展する確率はかなり低くなると考えられる。
表1に示す材料番号4〜7及び11〜20のオーステナイト系ステンレス鋼(本発明材)は、C1≧(20×C2+24)を満足しているので、C1≧(20×C2+24)を満足していない各比較材に比べて粒界腐食抵抗が向上する。材料番号4〜7及び11〜17の各本発明材は、DSC値が16未満、DR値が12未満、及びSR値が20.0未満であるので、前述の(A)、(B)及び(C)におけるそれぞれのσ相の析出の問題を解消することができ、オーステナイト系ステンレス鋼の脆化を著しく抑制することができる。材料番号4〜7及び17〜20の各本発明材が表1に示す含有量のNbを含んでおり、材料番号11〜16及び18〜20の各本発明材が表1に示す含有量のTaを含んでいるので、これらの本発明材は、粒界におけるCrの照射誘起偏析を抑制することができる。また、材料番号4〜7、11〜15、18及び19の各本発明材は、DL値が6.6を超えているので、オーステナイト系ステンレス鋼を溶接したときにおけるオーステナイト系ステンレス鋼の溶接割れを抑制することができる。材料番号16、17及び20の各本発明材は、DL値が6.6以下になっており、δ−フェライト相析出による溶接割れ抑制効果を得ることができないが、Cr濃度が低くなっている分、溶接割れが抑制できると推定される。
表1に示す本実施例の各オーステナイト系ステンレス鋼(本発明材)は、図13に示す沸騰水型原子力プラントの構造部材に適用することができる。この沸騰水型原子力プラントは、原子炉10を有しており、原子炉10で発生する蒸気の温度が286℃及び圧力が70.7atgになるように運転される。この沸騰水型原子力プラントは、発電出力が500MW、800MW及び1100MWとなる3つのタイプがある。
原子炉10は、原子炉圧力容器(以下、RPVという)11、炉心13、炉心シュラウド14、上部格子板15.炉心支持板16、ジェットポンプ17、シュラウドヘッド18、気水分離器19及び蒸気乾燥器20等を有する。上蓋12がRPV11の上端に取り付けられる。複数の燃料集合体23が装荷された各炉心13がRPV11内に配置され、RPV11内に配置された炉心シュラウド14で取り囲まれている。炉心13の上方に位置する上部格子板15が炉心シュラウド14の上端部に設置され、炉心13の下方に位置する炉心支持板16が炉心シュラウド14に設置される。シュラウドヘッド18が、上部格子板15の上方に配置されて炉心シュラウド14の上端に設置される。複数の気水分離器19が、シュラウドヘッド18に取り付けられて上方に向かって伸びている。これらの気水分離器19の上方に配置された蒸気乾燥器20が、RPV11内でRPV11に設置される。
炉心シュラウド14は、シュラウドサポートシリンダ25及び複数のシュラウドサポートレグ27を介してRPV11の底部に設置される。環状のバッフルプレート26が、RPV11とシュラウドサポートシリンダ25の間に配置され、これらに取り付けられる。複数のジェットポンプ17が、RPV11と炉心シュラウド14の間に形成された環状のダウンカマ30内に配置され、バッフルプレート26に設置される。複数の制御棒駆動機構ハウジング29が、RPV11の底部を貫通してRPV11に設置される。各制御棒駆動機構ハウジング29から炉心支持板16に向かって制御棒案内管31が伸びている。制御棒24が、炉心13内で燃料集合体23の相互間に挿入され、沸騰水型原子力プラントの運転時において制御棒案内管31内に引き抜かれる。制御棒案内管31の間には、炉内核計装案内管28が配置されている。
RPV11には給水入口ノズル21が形成されており、RPV11内に配置された給水スパージャ22が給水入口ノズル21に接続される。非常用炉心冷却系のスプレイスパージャ32も、RPV11内に設置されている。図示されていないが、RPV11内には、中性子源パイプが設置されている。
材料番号4〜7及び11〜20のいずれかの本発明材を用いて熱間圧延ないし熱間鍛造により所定の厚さと形状に成形し、溶体化処理を施して製造された鋼板及び管を使用し、切断、曲げ及び溶接等により、炉心シュラウド14、上部格子板15.炉心支持板16、ジェットポンプ17、シュラウドヘッド18、給水スパージャ22及びスプレイスパージャ32等を作製した。それぞれの溶接部に対しては、溶接後、余盛部の研削及び研磨を行った。また、必要に応じてピーニングによる残留応力圧縮化処理を行う。
沸騰水型原子力プラントの本発明材製の構造部材である炉内構造物、例えば、炉心シュラウド14の溶接継手部を、図14を用いて説明する。一方向に湾曲した板材である本発明材製の構造部材1が溶接金属部2で接合されている。構造部材1の溶接金属部2近傍の接水面に、内面機械加工及び溶接による引張残留応力に起因した応力腐食割れが発生するポテンシャルがある。しかしながら、前述した粒界腐食抵抗が向上し、脆化、及び粒界におけるCrの照射誘起偏析を抑制できる効果を生じる本発明材を構造部材1に用いているので、炉心シュラウド14での応力腐食割れの発生を抑制することができる。
図14に示す溶接継手部の構造は、図13において図示されていない再循環系配管(構造部材)に適用することができる。再循環系配管は、RPV11に接続されてジェットポンプ17に駆動水を供給する機能を有する。この再循環系配管を本発明材で構成し、再循環系配管の溶接継手部を図14に示す溶接継手部の構造にする。
図14に示す溶接継手部の構造の他の例を図15及び図16を用いて説明する。図15に示す溶接継手部について説明する。溶接するそれぞれの構造部材1の接水面に冷間加工を施し、引き続いて熱処理する加工熱処理により、接水面における粒界性格分布を変化させた。接水面から2mm以上の深さまで、ランダム粒界からなる連続粒界網の深さ方向の長さが1.5mm以下の粒界性格分布制御組織層3を形成することができた。粒界性格分布制御組織層3を接水面に形成した隣り合う構造部材1を溶接金属部2で接合した。
図16に示す溶接継手部について説明する。従来の原子力用低炭素ステンレス鋼を母材4とし、この母材4の両側の表面にそれぞれライニング層5を形成して構造部材1Aを構成する。ライニング層5は、材料番号4〜7及び11〜20の各本発明材のいずれかを用いて形成される。隣り合う構造部材1Aは溶接金属部2により接合されている。構造部材1Aは、母材4が従来の原子力用低炭素ステンレス鋼であるが、接水面が本発明材を用いたライニング層5で形成されるので、本発明材の作用により溶接金属部2近傍での応力腐食割れを抑制することができる。
材料番号4〜7及び11〜20の各本発明材は、図17に示す改良型沸騰水型原子力プラントの構造部材にも適用できる。改良型沸騰水型原子力プラントの原子炉10Aは、図13に示す原子炉10においてジェットポンプ17及びバッフルプレート26をインターナルポンプ33に替えた構成を有する。原子炉10Aにおいても、原子炉10と同様に、炉心シュラウド14、上部格子板15.炉心支持板16、シュラウドヘッド18、給水スパージャ22、スプレイスパージャ32及びインターナルポンプ33等を、材料番号4〜7及び11〜17のいずれかの本発明材を用いて作製した。改良型沸騰水型原子力プラントのこれらの構造部材も、本発明材で生じる各効果により、応力腐食割れを抑制することができる。
図13に示す沸騰水型原子力プラント及び図17に示す改良型沸騰水型原子力プラントでは、本発明材で作製した各構造部材は、応力腐食割れによる材料損傷に対して裕度が向上しており、応力腐食割れ要因である応力及び水質に対する対策と組み合わせることにより、制御棒24及び燃料集合体23といった交換機器を除き、30年以上無交換で使用可能になることが見込まれる。
表1に示す本発明材であるオーステナイト系ステンレス鋼を用いることにより、沸騰水型原子力プラント及び改良型沸騰水型原子力プラントにおいて、腐食性の高い環境及び照射環境で構造部材の粒界腐食を抑制でき、応力腐食割れ発生に対するポテンシャルを低減できる。さらに、研磨による表面加工層除去、熱処理及びピーニングによる応力緩和もしくは応力圧縮化対策、水質改善対策といった諸対策と併せて実施することにより、応力腐食割れに対する総合的なリスク低減を図り、沸騰水型原子力プラント及び改良型沸騰水型原子力プラントのそれぞれの構造部材の健全性を維持できる。
各本発明材は、加圧水型原子力プラント等の他のタイプの原子力プラントの構造部材、さらには、開発中の次世代原子炉に対しても適用することができる。
本発明は、原子力プラントの構造部材に適用することができる。
1,1A…構造部材、2…溶接金属部、3…粒界性格分布制御組織層、4…母材、5…ライニング層、10,10A…原子炉、11…原子炉圧力容器、13…炉心、14…炉心シュラウド、15…上部格子板、16…炉心支持板、17…ジェットポンプ、18…シュラウドヘッド、19…気水分離器、20…蒸気乾燥器、21…給水入口ノズル、22…給水スパージャ、23…燃料集合体、24…制御棒、25…シュラウドサポートシリンダ、26…バッフルプレート、27…シュラウドサポートレグ、28…炉内計装案内管、29…制御棒駆動機構ハウジング、30…ダウンカマ、31…制御棒案内管、32…スプレイスパージャ、33…インターナルポンプ。
Claims (7)
- 質量%で、Crを17〜26%、Niを14〜24%、Cを0.001〜0.020%、Siを0.1〜1.0%、Mnを0.1〜2.0%、Pを0.030%未満、Sを0.015%以下、Moを0.001〜3.0%、Nを0.001〜0.04%、及びTaを0.01〜1.0%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
下記の(1)式で示されるC1値と下記の(2)式で示されるC2値がC1値≧20×C2値+24の関係にあり、下記の(3)式で示されるDSC値が15.1未満、下記の(4)式で示されるDR値が12未満及び下記の(5)式で示されるSR値が20.0未満であることを特徴とする高耐食性オーステナイト系ステンレス鋼。
C1値=Cr+Mo …(1)
C2値=15×C―2×Nb―Ta …(2)
DSC値=Cr−0.55×Ni+0.99×Mo …(3)
DR値=Cr−0.72×Ni+0.84×Mo …(4)
SR値=Cr−0.38×Ni+0.17×Mo+0.091×Mo×Ni+1.58×Si+0.31×Mn+1.2×Nb+1.7×Ta …(5)
ただし、(1)式〜(5)式に記載された各元素記号は各元素の質量%である。 - 質量%で、Crを17〜26%、Niを14〜24%、Cを0.001〜0.020%、Siを0.1〜1.0%、Mnを0.1〜2.0%、Pを0.030%未満、Sを0.015%以下、Moを0.001〜3.0%、及びNを0.001〜0.04%を含有し、且つ0.01〜0.4%のNb及び0.01〜1.0%のTaのうち少なくとも1種を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
下記の(1)式で示されるC1値と下記の(2)式で示されるC2値がC1値≧20×C2値+24の関係にあり、下記の(3)式で示されるDSC値が15.1未満、下記の(4)式で示されるDR値が12未満、及び下記の(5)式で示されるSR値が20.0未満であり、下記の(6)式で示されるDL値が6.6を超えていることを特徴とする高耐食性オーステナイト系ステンレス鋼。
C1値=Cr+Mo …(1)
C2値=15×C―2×Nb―Ta …(2)
DSC値=Cr−0.55×Ni+0.99×Mo …(3)
DR値=Cr−0.72×Ni+0.84×Mo …(4)
SR値=Cr−0.38×Ni+0.17×Mo+0.091×Mo×Ni+1.58×Si+0.31×Mn+1.2×Nb+1.7×Ta …(5)
DL値=Cr−0.94×Ni+1.4×Mo …(6)
ただし、(1)式〜(6)式に記載された各元素記号は各元素の質量%である。 - 質量%で、Crを17〜26%、Niを14〜24%、Cを0.001〜0.020%、Siを0.1〜1.0%、Mnを0.1〜2.0%、Pを0.030%未満、Sを0.015%以下、Moを0.4〜3.0%、及びNを0.001〜0.04%を含有し、且つ0.01〜0.4%のNb及び0.01〜1.0%のTaのうち少なくとも1種を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
下記の(1)式で示されるC1値と下記の(2)式で示されるC2値がC1値≧20×C2値+24の関係にあり、下記の(3)式で示されるDSC値が15.1未満、下記の(4)式で示されるDR値が12未満及び下記の(5)式で示されるSR値が20.0未満であることを特徴とする高耐食性オーステナイト系ステンレス鋼。
C1値=Cr+Mo …(1)
C2値=15×C―2×Nb―Ta …(2)
DSC値=Cr−0.55×Ni+0.99×Mo …(3)
DR値=Cr−0.72×Ni+0.84×Mo …(4)
SR値=Cr−0.38×Ni+0.17×Mo+0.091×Mo×Ni+1.58×Si+0.31×Mn+1.2×Nb+1.7×Ta …(5)
ただし、(1)式〜(5)式に記載された各元素記号は各元素の質量%である。 - 腐食環境に接する表面から少なくとも2mm以上の深さまで、Σ値29以下の粒界を除いたランダム粒界からなる連続粒界網の深さ方向の長さが1.5mm以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高耐食性オーステナイト系ステンレス鋼。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼で製作した構造部材を溶接して構成されたことを特徴とする溶接継手構造。
- 前記構造部材の表面に粒界性格分布制御組織層が形成されている請求項5に記載の溶接継手構造。
- 母材、及び前記母材の表面に設けられた、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼で構成されたライニング層を有する構造部材を溶接して構成されたことを特徴とする溶接継手構造。
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