JPH10183332A - 光学薄膜の製造方法及び製造装置 - Google Patents

光学薄膜の製造方法及び製造装置

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JPH10183332A
JPH10183332A JP8344124A JP34412496A JPH10183332A JP H10183332 A JPH10183332 A JP H10183332A JP 8344124 A JP8344124 A JP 8344124A JP 34412496 A JP34412496 A JP 34412496A JP H10183332 A JPH10183332 A JP H10183332A
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film
vacuum vessel
water
sputtering
electrode
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JP8344124A
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English (en)
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Takeshi Kawamata
健 川俣
Hiroshi Ikeda
浩 池田
Nobuaki Mitamura
宣明 三田村
Tadashi Watanabe
正 渡邊
Nobuyoshi Toyohara
延好 豊原
Toshiaki Oimizu
利明 生水
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Olympus Corp
Original Assignee
Olympus Optical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スパッタリングによって金属フッ化膜を安定
して高速に成膜する。 【解決手段】 真空容器1内に金属フッ化物からなる膜
原料3を配置し、マグネトロンカソード5への交流電力
の印加でプラズマを発生させ、プラズマによって膜原料
3を加熱しながらスパッタリングする。測定手段13に
よって、真空容器1内の水の分圧を測定し、制御手段2
0によって真空容器1内の水の分圧を1×10-2Paの
範囲内に制御して、スパッタリングする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スパッタリング法
を用いて光学薄膜を高速で製造する方法及び装置に関
し、特に光学薄膜の物性や成膜速度をコントロールする
ことが可能な製造方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】反射防止膜やハーフミラー、エッジフィ
ルターなどの光学薄膜を形成する場合、手法の容易さや
成膜速度の速さなどの点から、真空蒸着法が多く用いら
れてきた。一方、近年になり、真空蒸着法に比較して自
動化、省力化、大面積基板への適用性などの点で有利な
スパッタリング法によるコーティングの要求が高まって
きた。
【0003】しかし、スパッタリング法は真空蒸着法と
比較して、成膜速度が遅いという欠点があった。スパッ
タリング法では、イオンがターゲットに衝突した際、タ
ーゲット内の原子間結合を切ってターゲットから原子を
飛び出させる必要があり、加速されたイオンのエネルギ
ーの一部が原子間結合を切ることに費やされてしまうた
めに、スパッタ収率が低くなり、その結果成膜速度が遅
くなるからである。又、スパッタリング法は、可視光の
吸収が生じる欠点も有している。光学薄膜として代表的
な低屈折率物であるMgF2 等のフッ化物をスパッタリ
ングすると、原子間結合が切れてMg等とFとに解離
し、膜中ではFが不足するためである。そして、これら
の欠点がスパッタリング法を光学薄膜に適用する上での
大きな障害となっていた。
【0004】特開平4−223401号公報には、光学
薄膜にスパッタリング法を適用した従来技術が記載され
ている。この方法はMgF2 をスパッタリングすると可
視光の吸収が生じるため、MgF2 にSiを添加したタ
ーゲットを用い、このターゲットをスパッタリングする
ことにより光吸収のほとんどない低屈折率膜を形成する
ものである。
【0005】しかしながら、この方法では2.8W/c
2 の高周波電力を投入しても、成膜速度は依然とし
て、最高で10nm/分以下であり、成膜速度が遅いと
いうスパッタリング法の欠点を解消できていない。すな
わち、このような成膜速度では、たとえば可視域に適用
される単層の反射防止膜を形成するのに10分以上を要
してしまい、工業的な利用は困難となっている。また、
本発明者の追実験によれば、上記公報の方法に従って、
板状のMgF2 にSiウエハーを載置したものをターゲ
ットとしスパッタリングしても、可視域で光吸収が実用
上問題ない程度であって、かつ屈折率が1.4以下とな
るような膜を形成することはできなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】これに対し本発明者
は、無機フッ化物からなる膜原料を載置した放電電極に
高周波を印加することで放電電極を負電位にすると共
に、前記高周波電力により膜原料上にプラズマを発生さ
せ、このプラズマにより膜原料の表面の温度を上昇させ
ながら、膜原料を正イオンによりスパッタリングするこ
とにより、膜原料の少なくとも一部を分子状態で跳びだ
させ、この分子状態の膜原料が基板に到達して基板上に
膜を形成することで、光吸収がないフッ化物膜を高速で
形成することができることを見いだしている。なお、こ
のようなスパッタリング法は基板を加熱する必要がない
ため、光学薄膜の連続的な製造において、加熱及び冷却
に要する時間をなくすことができ、これにより短いサイ
クルで連続的な製造ができるメリットを有するものであ
る。
【0007】ところが、このような高周波を使用したス
パッタリングにおいても、成膜速度がばらついたり、膜
質等の膜特性がばらつく問題を生じている。本発明はこ
のような従来の問題点を考慮してなされたものであり、
所望の特性を有した金属フッ化物膜をスパッタリング法
によって安定して高速に形成することが可能な光学薄膜
の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の請求項1の発明の製造方法は、真空容器内に配置した
金属フッ化物からなる膜原料をスパッタリングすること
により基板上に薄膜を形成する光学薄膜の製造方法であ
って、上記真空容器内の水の分圧が1×10-5〜1×1
-2Paの範囲内の所定値においてスパッタリングする
ことを特徴とするものである。
【0009】上記方法ではスパッタリング時の水の分圧
が、膜の光学特性や硬度、基板との密着性等の膜質や、
成膜速度に大きな影響を及ぼすことが鋭意研究の結果、
判明した。水(H2 O)がプラズマ中で解離して生成さ
れる水素(H)のイオンやラジカルの量により、プラズ
マ中の電子温度やイオン密度が大きく変わるからである
と考えられる。これに対し、本発明では、残留する水の
分圧を測定し、水の分圧が1×10-5〜1×10-2Pa
の範囲にあり、かつ、所定の値になった状態で、スパッ
タリングを行うため、膜質や成膜速度を安定化すること
ができる。なお、水の分圧が上述の範囲よりも少ないと
膜の光吸収が増加し、分圧が高いと膜の密着性が低くな
る問題点が発生する。
【0010】請求項2〜4の発明は、以上の方法をさら
に具体化したものであり、請求項2の発明は、真空容器
内の電極上に金属フッ化物からなる膜原料を載置し、こ
の電極に交流電圧を印加して膜原料の上方にプラズマを
発生させ、このプラズマによって膜原料を加熱しながら
スパッタリングすることにより、膜原料の少なくとも一
部を分子状態で跳び出させ、この分子状態の膜原料によ
り基板上に薄膜を形成する方法であって、上記真空容器
内を減圧排気することにより、真空容器内の水の分圧が
1×10-5〜1×10-2Paの範囲内の所定の値となっ
た後にスパッタリングすることを特徴とするものであ
る。
【0011】上記方法では、膜原料の温度をプラズマに
より上昇させておくことによりあらかじめ膜原料の原子
間の結合力を弱めておいて、イオンをターゲットに衝突
させるので、加速されたイオンのエネルギーの大部分が
スパッタリングに使われるためにスパッタ収率が高くな
り、その結果、従来法と比較して成膜速度を著しく早く
することができる。膜原料としては顆粒状のものを用い
ると良い。膜原料が顆粒状である場合、熱伝導が悪いこ
とや、多量に存在するエッジ部に電場、磁場が集中する
ことにより、容易に加熱することができるためである。
【0012】光学的な用途の薄膜の場合、薄膜の光吸収
が小さいことが望ましい。このためには、膜原料が所望
の薄膜と同じ組成の場合、跳び出す粒子の形態がばらば
らに解離して原子状となるよりも、分子状となるほうが
望ましい。解離したものでは必ずしも元通りには戻らな
いからである。本発明では膜原料の温度を上昇させてお
くことによって、熱振動により原子間結合力の強い箇所
と弱い箇所とを形成するため、跳び出す粒子の形態を分
子状にすることができる。ここでいう分子とは、単分子
のみではなくクラスター状に集合体をなす多分子をも含
むものであ。ターゲットから跳び出す分子の形態は、熱
による蒸発分子とほぼ同じになると考えることができ
る。本発明のように、膜原料を載置した電極に交流を印
加することにより、電極を負電位とし、膜原料を正イオ
ンによりスパッタリングすることは、一般的に知られて
いる高周波スパッタリングと同じ原理に基づくものであ
る。ここでいう交流とは、いわゆる13.56MHzの
高周波や数10KHzの中周波を含むものである。
【0013】請求項3の発明は、真空容器内の電極上に
金属フッ化物からなる膜原料を載置し、この電極に交流
電圧を印加して膜原料の上方にプラズマを発生させ、こ
のプラズマによって膜原料を加熱しながらスパッタリン
グすることにより、膜原料の少なくとも一部を分子状態
で跳び出させ、この分子状態の膜原料により基板上に薄
膜を形成する方法であって、上記スパッタリングを行う
に際し、真空容器内を減圧排気すると共に、真空容器内
の水の分圧が1×10-5〜1×10-2Paの範囲内の所
定の値となるように真空容器内に水を導入することを特
徴とするものである。
【0014】この方法では、真空容器内の減圧による水
の分圧の制御に加えて、真空容器内に水を積極的に導入
するため、水の分圧を正確に、且つ容易に制御すること
ができる。
【0015】請求項4の発明は、真空容器内の電極上に
金属フッ化物からなる膜原料を載置し、この電極に交流
電圧を印加して膜原料の上方にプラズマを発生させ、こ
のプラズマによって膜原料を加熱しながらスパッタリン
グすることにより、膜原料の少なくとも一部を分子状態
で跳び出させ、この分子状態の膜原料により基板上に薄
膜を形成する方法であって、上記真空容器内に水を導入
し、真空容器内の水の分圧が1×10-5〜1×10-2
aの範囲内の所定の値となるように制御しながらスパッ
タリングを行うことを特徴とする。
【0016】この方法では、スパッタリング中に常に、
真空容器内の水の分圧を制御するため、安定した環境下
で成膜することができる。
【0017】請求項5の発明の製造装置は、金属フッ化
物からなる膜原料が導入される真空容器と、この真空容
器内にプロセスガスを導入する手段と、上記膜原料が載
置される電極と、この電極に交流電圧を印加することに
よりプロセスガス中にプラズマを発生させる交流電源
と、真空容器内の水の分圧を測定する測定手段と、真空
容器内に水を導入する手段と、上記測定手段の出力に基
づいて真空容器内への水の導入量を制御する制御手段と
を備えていることを特徴とするものである。
【0018】この装置では、制御手段が真空容器内への
水の導入量を制御するため、薄膜の製造環境を調整する
ことが容易となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]図1はこの実施の形態に使用される薄
膜の製造装置を示す。真空容器としての真空槽1の上面
には、回転する基板2が配置されている。この基板2の
下方には、電極としてのマグネトロンカソード5上に載
置された石英製の皿4が設けられ、この皿4内に膜原料
であるMgF2 顆粒3が充填されている。14はMgF
2顆粒3と基板2との間に設けられたシャッタである。
【0020】マグネトロンカソード5は、マッチングボ
ックス6を介して高周波電源7と接続されて交流電力が
印加される。なお、マグネトロンカソード5の下面には
冷却水8が供給されており、その温度が一定になるよう
に制御されている。
【0021】真空槽1の側面には、プロセスガスを導入
するためのパイプ9,11が導入されている。パイプ9
は各種ガスを真空槽1内に供給し、パイプ11は水を供
給する。この供給を行うため、それぞれのパイプ9,1
1は流量制御を行うマスフローコントローラ10,12
にそれぞれ接続されている。さらに、このマスフローコ
ントローラ10.12は制御手段20に接続され、その
作動が制御手段20に制御されている。
【0022】これらに加えて、真空槽1の側面には、測
定手段としての四重極質量分析計13が取付けられてい
る。四重極質量分析計13は真空槽1内の全圧やプロセ
スガスの分圧を測定するものであり、差動排気装置も具
備している。この四重極質量分析計13の測定値は制御
手段20に出力され、制御手段20はこの測定値に基づ
いて、マスフローコントローラ10,12の作動を制御
する。
【0023】この実施の形態では、MgF2 顆粒は粒径
0.5〜1mmであり、高周波電源7は13.56MH
zの交流を出力し、マグネトロンカソード5の冷却水8
は20±0.5℃の水温に調整されている。
【0024】次にこの実施の形態によって薄膜を形成す
る方法について説明する。屈折率1.75のLa系の光
学ガラスである基板2をセットし、真空槽1内を排気す
る。排気中は、水の分圧を四重極質量分析計13により
モニタした。本実施の形態では、真空槽1内に水を導入
せず、真空排気により真空容器内の水の分圧が5.0×
10-5Paに到達したときにスパッタリングを開始し
た。
【0025】真空槽1に対し、プロセスガスとしてのO
2 ガスをパイプ9から4×10-1Paまで導入する。高
周波電源7から1.1kW程度の電力をマグネトロンカ
ソード5に供給し、MgF2 顆粒3の上部にプラズマを
発生させる。MgF2 顆粒3はこのプラズマにより加熱
され、カソード下面の冷却水8による冷却能とつりあっ
た温度に保持されるとともに、スパッタリングされる。
ここで、基板2を回転させ、シャッター14を開放する
ことにより、基板2上にMgF2 膜が形成される。そし
て、光学的膜厚が約130nmとなる27秒後にシャッ
ター14を閉じた。以上の操作を基板2を交換しながら
30回繰り返した。
【0026】成膜中のプラズマ発光スペクトルの波長を
検査したところ、Mg原子の他にMgF分子からの発光
が認められ、膜原料の少なくとも一部は分子状態で跳ん
でいることが確認された。薄膜の光学的膜厚を測定する
と、30個のサンプル全てが130±2nmの範囲にあ
り、成膜速度が非常に安定していることが確認できた。
【0027】次に、膜に粘着テープを貼り付けた後、9
0°方向に強く引き剥がすテープ剥離試験を実験した
が、30個のサンプル全てから、膜の剥離は生じなかっ
た。また、アルコールにより湿らせたレンズクリーニン
グ用ペーパーで強く擦った後、膜表面を肉眼で観察する
耐擦傷性試験を実施したが、30個のサンプル全てが傷
を生じなかった。膜の機械的特性も安定していることが
確認された。
【0028】次に、分光エリプソメトリーにより屈折率
nと吸収係数kを測定した。結果を図2、3に示す。3
0個のサンプル全ての屈折率nはいずれも1.38程
度、吸収係数kは10-4以下と低く、低屈折率光学膜と
して実用レベルにある。
【0029】この実施の形態では、水の分圧が5.0×
10-5Paになったときスパッタリングを開始した。図
4はスパッタリング開始時の水の分圧が1×10-5〜1
×10-2Paの範囲における成膜速度の関係を示す。同
図における成膜速度は分当たりに成膜される物理的膜厚
であり、光学的膜厚の成膜速度はこれに屈折率を乗ずる
ことによって算出できる。同図に示すように、水の分圧
と成膜速度とにリニアな相関が認められる。このことか
ら、水の分圧を一定にしなければ成膜速度がばらつくこ
とがわかる。また、成膜速度がばらつくと膜の機械的特
性等の膜質にもばらつきが発生する。これとは逆に、真
空排気により水の分圧が所定の値に到達した時にスパッ
タリングを開始することにより、成膜速度や膜質を一定
に保つことができる。
【0030】この場合、水の分圧が低くなると、次第に
膜の光吸収が大きくなりやすいという問題が発生し易く
なる。これは、プラズマ中のHイオンやラジカルの量が
少なくなると共に、電子密度が低くなってターゲット表
面の温度が低くなり、その結果、分子状態で跳び出すM
gF2 の割合が減少し、逆にMgとFとに解離し原子状
態で跳び出す粒子の数が増加するためと考えられる。特
に水の分圧が1×10 -5Pa以下の時には可視域での吸
収係数kが3×10-2以上と大きくなって、光学薄膜と
して使用するには不適格となる。一方、水の分圧が高く
なると膜の密着性が低くなる。これは、基板の表面に水
が吸着すること及び膜中に水分子が取り込まれ膜の密度
が低くなることによると考えられる。特に水の分圧が1
×10-2Pa以上の時、密着性が著しく低くなり、前述
のテープ剥離試験で膜が剥がれるため、実用上の問題が
生じる。
【0031】なお、この実施の形態では膜原料としてM
gF2 を用いたが、他のフッ化原料であるAlF3 、C
aF2 、SrF2 、LiF等、あるいはこれらの混合
物、これらとMgF2 の混合物等でも同様の結果が得ら
れた。また、膜原料の形態としては、必ずしも上記サイ
ズの顆粒に限らず、他のサイズのものでも良いし、ま
た、顆粒状のものに限らず、焼結した材料等を用いても
同様の結果が得られた。
【0032】[実施の形態2]この実施の形態では、図
1に示す装置を用い、排気時間を変化させて、スパッタ
リング開始前の水の分圧を2×10-5〜3×10-3Pa
の範囲の任意の値とした。すなわち、パイプ11から水
の分圧が5×10-3Paになるまで水を真空槽1内に導
入した後、パイプ9からN2 を1×10-1Paまで導入
した。投入電力を1.3kW、成膜時間33秒として、
基板2上を交換しつつ繰り返し50回成膜した。50個
のサンプルについて実施の形態1と同様にテープ剥離試
験及び耐擦傷性試験を実施したが、いずれも合格してお
り、膜の機械的特性が安定していることが確認された。
図5は成膜された膜の分光反射率の測定結果を示し、い
ずれも波長530nmで反射率が0.5%以下と優れた
反射特性を有し、単層の反射防止膜として使用できるこ
とが明らかとなった。
【0033】このような方法によれば、排気時間が異な
る等の理由により水の分圧が異なる場合でも、スパッタ
リングを開始する時には常に水の分圧を一定にすること
ができるので、成膜速度や膜質を一定に保つことが容易
となる。なお、この実施の形態では、単層反射防止膜を
成膜したが、TiO2 、Ta2 5 、ZrO2 等の高屈
折率層と組み合わせた多層構成の光学薄膜にも同様に適
用できる。
【0034】[実施の形態3]図6は、この実施の形態
3で使用する成膜装置を示し、図1と同一の要素は同一
の符号で対応させてある。真空層1の左右に基板2の供
給室18及び収納室19が連結されており、基板2は供
給室18から真空槽内1に供給され、真空槽1内の上部
を水平方向に移動しながら成膜され、収納室19に収納
されるようになっている。
【0035】真空槽1内の基板2の移動路下方には、2
基のマグネトロンカソード5が配置され、それぞれが4
00KHzの交流電源7aと接続されている。交流電源
7aは2基のマグネトロンカソード5に対して半周期ず
らして交流電力を印加するようになっている。
【0036】膜原料であるMgF2 顆粒3は、4インチ
×2.5インチの長方形の皿4に充填されており、この
皿4がマグネトロンカソード5上に載置されている。な
お、それぞれのマグネトロンカソード5の下面には冷却
水8が供給されて、冷却されている。
【0037】プロセスガスを導入するパイプ9,11は
真空槽1の上面から挿入されており、それぞれが制御手
段20によって制御されるマスフローコントローラ1
0,12に接続されている。この制御手段20には四重
極質量分析計13で測定した水の分圧が入力され、入力
された水の分圧に基づいてマスフローコントローラ1
0,12を制御する。なお、MgF2 顆粒3の上方に
は、開閉作動するシャッタ14が配置される。
【0038】この実施の形態では、真空槽1を排気し、
内部の水の分圧が2×10-5Pa以下になってからスパ
ッタリングを開始した。このスパッタリング中に四重極
質量分析計13によって、連続的に水の分圧を監視し、
マスフローコントローラ12にフィードバックし、水の
分圧が5×10-5Paになるように制御した。O2 ガス
をパイプ9から0.8Paの分圧となるように導入しな
がら、交流電源7aから600Wの電力をマグネトロン
カソード3に印加し、プラズマを発生させる。このプラ
ズマによりMgF2 は加熱され、約770℃となる。そ
の後、シャッター14を開放することにより、基板2上
にMgF2 膜が形成される。
【0039】この方法により、成膜時間を一定にして、
基板2を交換しつつ繰り返し20回成膜した。20個の
サンプルについて上述したテープ剥離試験及び耐擦傷性
試験を実施したが、いずれも合格であり、膜の機械的特
性が安定していることが確認された。また、膜の光学的
膜厚を測定すると、30個のサンプル全てが117±3
nmの範囲にあり、成膜速度も安定していることが確認
できた。
【0040】連続式の装置を単純に用いた場合、成膜室
は常に真空排気された状態で、成膜するので、後で成膜
される基板ほど成膜室の排気時間が長くなり、結果とし
ての水の分圧も低くなる。このため、成膜速度や膜質が
変化するが、この実施の形態では、スパッタリング中に
常に水の分圧を一定に制御するため、成膜速度や膜質を
一定に保つことが可能となっている。
【0041】以上のような実施の形態によって成膜され
た光学薄膜は、可視域で吸収がほとんどなく、屈折率が
1.38程度となる。従って、この光学薄膜は単層でも
十分な反射防止効果を有し、レンズや眼鏡等の光学機
器、ブラウン管等の表示素子、各種窓材等への反射防止
膜として使用することができる。また、高屈折率膜と組
み合わせた多層構成とすることにより、より高性能な反
射防止膜やハーフミラーやエッジフィルター等の光学薄
膜を形成することができる。さらに成膜に際して基板を
加熱する必要がないことから、基板の材質についての制
限がなくなる。
【0042】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、水の分圧が1
×10-5〜1×10-2Paの範囲内でスパッタリングを
行うため、膜質や成膜速度を安定化できる。請求項2の
発明は、膜原料を加熱してスパッタリングを行い、ま
た、水の分圧を所定の値にするため光吸収が小さい膜を
安定して得ることができる。請求項3の発明は、真空容
器内の減圧及び真空容器内への水の導入を行うため、さ
らに高速で成膜できるばかりでなく、水の分圧を正確に
制御できる。請求項4の発明は、真空容器内の水の分圧
を常に制御するため、安定した環境下での成膜が可能と
なる。請求項5の発明は、制御手段が真空容器内への水
の導入を制御するため、以上の方法を確実に実施でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に使用する成膜装置の断面
図である。
【図2】実施の形態1の膜の屈折率特性図である。
【図3】実施の形態1の膜の吸収特性図である。
【図4】水の分圧と成膜速度との関係を示す特性図であ
る。
【図5】実施の形態2の膜の分光反射特性図である。
【図6】別の成膜装置の断面図である。
【符号の説明】
1 真空槽 2 基板 3 MgF2 顆粒 5 マグネトロンカソード 7a 交流電源 20 制御手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡邊 正 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 (72)発明者 豊原 延好 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 (72)発明者 生水 利明 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空容器内に配置した金属フッ化物から
    なる膜原料をスパッタリングすることにより基板上に薄
    膜を形成する光学薄膜の製造方法であって、 上記真空容器内の水の分圧が1×10-5〜1×10-2
    aの範囲内の所定値においてスパッタリングすることを
    特徴とする光学薄膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 真空容器内の電極上に金属フッ化物から
    なる膜原料を載置し、この電極に交流電圧を印加して膜
    原料の上方にプラズマを発生させ、このプラズマによっ
    て膜原料を加熱しながらスパッタリングすることによ
    り、膜原料の少なくとも一部を分子状態で跳び出させ、
    この分子状態の膜原料により基板上に薄膜を形成する方
    法であって、 上記真空容器内を減圧排気することにより、真空容器内
    の水の分圧が1×10 -5〜1×10-2Paの範囲内の所
    定の値となった後にスパッタリングすることを特徴とす
    る光学薄膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 真空容器内の電極上に金属フッ化物から
    なる膜原料を載置し、この電極に交流電圧を印加して膜
    原料の上方にプラズマを発生させ、このプラズマによっ
    て膜原料を加熱しながらスパッタリングすることによ
    り、膜原料の少なくとも一部を分子状態で跳び出させ、
    この分子状態の膜原料により基板上に薄膜を形成する方
    法であって、 上記スパッタリングを行うに際し、真空容器内を減圧排
    気すると共に、真空容器内の水の分圧が1×10-5〜1
    ×10-2Paの範囲内の所定の値となるように真空容器
    内に水を導入することを特徴とする光学薄膜の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 真空容器内の電極上に金属フッ化物から
    なる膜原料を載置し、この電極に交流電圧を印加して膜
    原料の上方にプラズマを発生させ、このプラズマによっ
    て膜原料を加熱しながらスパッタリングすることによ
    り、膜原料の少なくとも一部を分子状態で跳び出させ、
    この分子状態の膜原料により基板上に薄膜を形成する方
    法であって、 上記真空容器内に水を導入し、真空容器内の水の分圧が
    1×10-5〜1×10 -2Paの範囲内の所定の値となる
    ように制御しながらスパッタリングを行うことを特徴と
    する光学薄膜の製造方法。
  5. 【請求項5】 金属フッ化物からなる膜原料が導入され
    る真空容器と、この真空容器内にプロセスガスを導入す
    る手段と、上記膜原料が載置される電極と、この電極に
    交流電圧を印加することによりプロセスガス中にプラズ
    マを発生させる交流電源と、真空容器内の水の分圧を測
    定する測定手段と、真空容器内に水を導入する手段と、
    上記測定手段の出力に基づいて真空容器内への水の導入
    量を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする
    光学薄膜の製造装置。
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