JPH10180911A - 熱可塑性樹脂多層管状体およびその用途 - Google Patents

熱可塑性樹脂多層管状体およびその用途

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JPH10180911A
JPH10180911A JP9304221A JP30422197A JPH10180911A JP H10180911 A JPH10180911 A JP H10180911A JP 9304221 A JP9304221 A JP 9304221A JP 30422197 A JP30422197 A JP 30422197A JP H10180911 A JPH10180911 A JP H10180911A
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Norio Shimasaki
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 耐熱性、耐熱水性、塩化亜鉛および塩化カル
シュウムなどの耐薬品性、成形性および層間の密着性が
均衡して優れた熱可塑性樹脂多層管状体を提供し、特に
自動車用冷却系パイプおよび融雪または暖房用ヒーテン
グシステムなどの熱媒体循環パイプなどへの適用を可能
にする。 【解決手段】 本発明の熱可塑性樹脂多層管状体は、
(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対
し、(B)エポキシ基含有化合物0.1〜70重量部、
(C)ポリアミド樹脂10〜70重量部、および(D)
エポキシ基を含有しないエラストマ0〜70重量部を配
合したポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を内層側の
少なくとも一層とし、(E)ポリアミド樹脂100重量
部に対し、(F)繊維状および/または非繊維状充填材
0〜100重量部を配合したポリアミド樹脂またはポリ
アミド樹脂組成物を外層側の少なくとも一層とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱水性、耐不凍
液性、耐薬品性、耐熱性および成形性に優れ、かつ層間
の密着性に優れた熱可塑性樹脂多層管状体、およびこの
熱可塑性樹脂多層管状体を水または水溶液と直接接触さ
せて高温条件下でまたは長年月使用する用途、特に自動
車用冷却系パイプおよび融雪または暖房用ヒーテングシ
ステムなどの熱媒体循環パイプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリアミド樹脂は、機械的性質、耐熱
性、耐薬品性、および成形性などに優れているため、各
種機能部品として広く使用されているが、高温の水と直
接接触して長年月使用される場合には、耐久性において
必ずしも満足し得るものではなかった。
【0003】特に、自動車用冷却系パイプおよび融雪ま
たは暖房用ヒーテングシステムなどに使用される循環流
体は、冬期の凍結防止のためエチレングリコールを主体
とした冷却液が封入されるが、ポリアミド樹脂では前記
冷却液に対する耐久性が不十分であった。
【0004】また、ポリアミド樹脂のうちで汎用的に用
いられるナイロン6やナイロン66は、水およびカルシ
ウム、亜鉛などの金属のハロゲン化物と強く相互作用す
るため、その結果ナイロン6やナイロン66を成形して
得られた管状体は、前記金属ハロゲン化物との接触下に
おいて亀裂を生ずるという欠点を有していた。
【0005】したがって、ポリアミド樹脂の耐熱水性、
耐塩化亜鉛性、耐塩化カルシウム性などを向上させるこ
とを目的とした検討が従来から行われており、これまで
に銅化合物などの各種耐熱安定剤を添加する方法、特定
の芳香族環構造を有するポリアミドを用いる方法、およ
びエチレン系アイオノマーやフェノール樹脂を添加する
方法などが提案されているが、これらの方法はいずれも
ポリアミド樹脂の耐熱水性、耐塩化亜鉛性および耐塩化
カルシウム性を本質的に向上させるものではなく、その
効果はいまだに不十分であった。
【0006】一方、ポリフェニレンスルフィド樹脂(以
下PPS樹脂と略称する)は、耐熱性、耐熱水性、耐薬
品性、難燃性および電機特性などが優れていることか
ら、電気、電子部品、自動車部品などの各種用途に対
し、その需要が高まりつつある。
【0007】しかしながら、PPS樹脂は、成形温度が
高く、また樹脂の固化速度が速いため、特にブロー成形
および押出成形により良好な製品外観を有する成形品を
得るためには、金型温度を高温に設定する必要があり、
成形性、経済面であまり好ましいものではなかった。
【0008】そこで、ポリアミド樹脂の機械的性質、成
形性、経済性などの優れた特性と、PPS樹脂の優れた
耐熱性、耐熱水性、耐薬品性などの特性を併せ持つ成形
品を得るために、両材料を積層して管状体となすことが
考えられるが、PPS樹脂とポリアミド樹脂を単純に積
層したとしても、両材料間に密着性がないため、樹脂層
間で剥離が生じやすく、目的とする成形品を得ることが
できなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、耐熱
性、耐熱水性、塩化亜鉛および塩化カルシュウムなどの
耐薬品性、成形性および層間の密着性が均衡して優れた
熱可塑性樹脂多層管状体を提供すると共に、この熱可塑
性樹脂多層管状体の、水または水溶液と直接接触させて
高温条件下でまたは長年月使用する用途、特に自動車用
冷却系パイプおよび融雪または暖房用ヒーテングシステ
ムなどの熱媒体循環パイプなどへの適用を可能にするこ
とにある。
【0010】なお、ポリアミド樹脂の機械的性質、成形
性、経済性などの優れた特性と、PPS樹脂の優れた耐
熱性、耐熱水性、耐薬品性などの特性を併せ持つ成形品
を得るために、両材料を積層して管状体となすことが考
えられるが、PPS樹脂とポリアミド樹脂を単純に積層
したとしても、両材料間に密着性がないため、樹脂層間
で剥離が生じやすく、目的とする成形品を得ることがで
きなかった。
【0011】本発明者らは、上記目的を達成するために
鋭意検討した結果、PPS樹脂に対し特定のオレフィン
系共重合体とポリアミド樹脂を特定量配合したPPS樹
脂組成物層と、ポリアミド樹脂層を積層した熱可塑性樹
脂多層管状体により、上記目的が効果的に達成できるこ
とを見出し、本発明に到達した。
【0012】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、次の
とおりである。
【0013】(1)(A)ポリフェニレンスルフィド樹
脂100重量部に対し、(B)エポキシ基含有化合物
0.1〜70重量部、(C)ポリアミド樹脂10〜70
重量部、および(D)エポキシ基を含有しないエラスト
マ0〜70重量部を配合したポリフェニレンスルフィド
樹脂組成物を内層側の少なくとも一層とし、(E)ポリ
アミド樹脂100重量部に対し、(F)繊維状および/
または非繊維状充填材0〜100重量部を配合したポリ
アミド樹脂またはポリアミド樹脂組成物を外層側の少な
くとも一層とすることを特徴とする熱可塑性樹脂多層管
状体。
【0014】(2)(A)ポリフェニレンスルフィド樹
脂が、脱イオン化処理されたものであることを特徴とす
る上記(1)記載の熱可塑性樹脂多層管状体。
【0015】(3)(B)エポキシ基含有化合物がエポ
キシ基含有重合体であることを特徴とする上記(1)ま
たは(2)記載の熱可塑性樹脂多層管状体。
【0016】(4)エポキシ基含有重合体がエポキシ基
含有オレフィン共重合体であることを特徴とする上記
(3)記載の熱可塑性樹脂管状体。
【0017】(5)エポキシ基含有オレフィン共重合体
が、α−オレフィンとα、β−不飽和酸のグリシジルエ
ステルを主構成成分とするエポキシ基含有変性オレフィ
ン系共重合体であることを特徴とする上記(4)記載の
熱可塑性樹脂管状体。
【0018】(6)(C)ポリアミド樹脂が、ナイロン
6、ナイロン66およびその共重合体から選ばれた少な
くとも1種であることを特徴とする上記(1)〜(5)
記載の熱可塑性樹脂多層管状体。
【0019】(7)(E)ポリアミド樹脂が、ナイロン
6、ナイロン66およびその共重合体から選ばれた少な
くとも1種であり、(C)ポリアミド樹脂と同種である
ことを特徴とする上記(1)〜(6)記載の熱可塑性樹
脂多層管状体。
【0020】(8)上記(1)〜(7)記載の熱可塑性
樹脂多層管状体からなることを特徴とする自動車用エン
ジン冷却系パイプ。
【0021】(9)上記(1)〜(7)記載の熱可塑性
樹脂多層管状体からなることを特徴とする融雪または暖
房用ヒーテングシステムの熱媒体循環パイプ。
【0022】また、本発明の熱可塑性樹脂多層管状体
は、自動車用冷却系パイプおよび融雪または暖房用ヒー
ティングシステムなどの熱媒体循環パイプの用途に適用
された場合に最良の効果を発揮する。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の熱可塑性樹脂多層
管状体の構成成分、構造および用途などについて具体的
に説明する。
【0024】本発明で使用する(A)PPS樹脂は、下
記構造式で示される繰り返し単位を70モル%以上、好
ましくは90モル%以上含む重合体であり、下記繰り返
し単位が70モル%未満では、耐熱性が損なわれるため
好ましくない。
【0025】
【化1】 PPS樹脂は、一般に特公昭45ー3368号公報に代
表される製造法により得られる比較的分子量の小さい重
合体と、特公昭52ー12240号公報に代表される製
造法により得られる、本質的に線状で比較的に高分子量
の重合体などがあり、前記特公昭45ー3368号公報
記載の方法で得られた重合体においては、重合後酸素雰
囲気下において加熱することにより、あるいは過酸化物
などの架橋剤を添加して加熱することにより高重合化し
て用いることも可能である。
【0026】本発明においては、いかなる方法により得
られたPPS樹脂を用いることも可能であるが、本質的
に線状で比較的高分子量の重合体が好ましく使用され
る。
【0027】また、PPS樹脂はその繰り返し単位の3
0モル%未満を、下記の構造式を有する繰り返し単位な
どで構成することも可能である。
【0028】
【化2】 本発明で用いる(A)PPS樹脂は、上記工程をへて生
成した後、酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理または有機
溶剤洗浄処理により、脱イオン化処理を施されたもので
あることが望ましい。
【0029】上記の酸水溶液洗浄処理を行なう場合は次
のとおりである。すなわち、本発明でPPS樹脂の酸水
溶液洗浄処理に用いる酸としては、PPS樹脂を分解す
る作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、
塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸など
が挙げられ、なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用
いられ得るが、硝酸のようなPPS樹脂を分解、劣化さ
せるものは好ましくない。
【0030】酸水溶液洗浄処理の方法としては、酸の水
溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必
要により適宜撹拌または加熱することも可能である。た
とえば、酢酸を用いる場合、pH4の水溶液を80〜9
0℃に加熱した中に、PPS樹脂粉末を浸漬し、30分
間撹拌することにより十分な効果が得られる。酸処理を
施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを物
理的に除去するため、水または温水で数回洗浄すること
が必要である。
【0031】洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹
脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸
留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。
【0032】また、熱水洗浄処理を行なう場合は次のと
おりである。すなわち、本発明において使用するPPS
樹脂を熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以
上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは1
50℃以上、特に好ましくは170℃以上にすることが
重要であり、100℃未満ではPPS樹脂の好ましい化
学的変性効果が小さいため好ましくない。
【0033】本発明の熱水洗浄処理によるPPS樹脂の
好ましい化学的変性の効果を発現するために、使用する
水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。
熱水処理の操作は、通常、所定量のPPS樹脂を投入
し、圧力容器内で加熱、撹拌することにより行なわれ
る。
【0034】PPS樹脂と熱水の割合は、熱水が多い方
が好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂
200g以下の浴比が選択される。
【0035】また、熱水処理の雰囲気としては、末端基
の分解は好ましくないので、これを回避するため不活性
雰囲気下とすることが好ましい。さらに、この熱水処理
操作を終えたPPS樹脂を、残留している成分を物理的
に除去するために温水で数回洗浄するのが好ましい。
【0036】さらに、有機溶媒洗浄処理の場合は次のと
おりである。すなわち、本発明でPPS樹脂の洗浄に用
いる有機溶媒としては、PPS樹脂を分解する作用など
を有しないものであれば特に制限はなく、例えばNーメ
チルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセ
ドアミド、1,3ージメチルイミダゾリジノン、ヘキサ
メチルホスホラスアミド、ピベラジノン類などの含窒素
極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、
スルホランなどのスルホキシド、スルホン系溶媒、アセ
トン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフ
ェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロ
ピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの
エーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリク
ロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、
モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタ
ン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン
系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタ
ノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレ
ングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレン
グリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコー
ル、フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシ
レンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。こ
れらの有機溶媒のうちでも、Nーメチルピロリドンアセ
トン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの
使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種
類または2種類以上の混合系で使用される。
【0037】有機溶媒による洗浄方法としては、有機溶
媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必
要により適宜撹拌または加熱することも可能である。
【0038】有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄
温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の
任意の温度が選択できる。ここで、洗浄温度が高くなる
ほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜1
50℃の洗浄温度で十分効果が得られる。
【0039】また、圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上
の温度で加圧下に洗浄することも可能である。洗浄時間
についても特に制限はなく、洗浄条件にもよるが、バッ
チ式洗浄の場合には、通常5分以上洗浄することにより
十分な効果が得られる。なお、連続式で洗浄することも
可能である。
【0040】重合により生成したPPS樹脂を有機溶媒
で洗浄するのみで十分であるが、本発明の効果をさらに
発揮させるためには、水洗浄または温水洗浄と組み合せ
るのが好ましい。また、Nーメチルピロリドンなどの高
沸点水溶性有機溶媒を用いた場合は、有機溶媒洗浄後、
水または温水で洗浄することにより、残存有機溶媒の除
去が容易に行なえるため好ましい。これらの洗浄に用い
る水は蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
【0041】本発明で用いられる(A)PPS樹脂の溶
融粘度は特に制限なく、配合する(B)エポキシ基含有
化合物および(C)ポリアミド樹脂との混練が可能であ
れば、いかなる溶融粘度のものでも用いることができる
が、通常は320℃、せん断速度10sec -1における溶
融粘度が100〜10,000ポイズのものが用いられ
る。
【0042】本発明で用いられる(B)エポキシ基含有
化合物としては、エチレングリコールのビスエポキシジ
シクロペンタジエチルエーテル、ブタジエンジエポキシ
ノイド等の脂肪族ジエポキシ化合物、ビスフェノールA
ジグリシジルエーテル等の芳香族ジエポキシ化合物、側
鎖または主鎖にエポキシ基を有するオレフィン系共重合
体のような重合体が挙げられ、中でもエポキシ基含有重
合体が好ましい。エポキシ基を有するオレフィン系共重
合体としては、具体的には側鎖にグリシジルエステル、
グリシジルエーテル、グリシジルアミンなどのグリシジ
ル基を有するオレフィン系共重合体や、二重結合含有オ
レフィン系共重合体の二重結合をエポキシ酸化したもの
などが挙げられる。
【0043】本発明では、エポキシ基含有オレフィン共
重合体のうち、α−オレフィンとα、β−不飽和酸のグ
リシジルエステルからなる共重合体が好ましく用いられ
る。
【0044】ここでいうα−オレフィンとしては、エチ
レン、プロピレンおよびブテンー1などが挙げられる。
【0045】また、α、β−不飽和酸のグリシジルエス
テルとは、一般的に下記一般式で表される化合物であ
り、具体的にはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グ
リシジルおよびエタクリル酸グリシジルなどが挙げら
れ、中でも特にメタクリル酸グリシジルが好ましく用い
られる。
【0046】
【化3】 (ただし、式中のRは水素原子または炭素数1〜6のア
ルキル基を示す。) かかる(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体は、
上記α−オレフィンとα、β−不飽和酸のグリシジルと
のランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれの共
重合様式であってもよい。
【0047】本発明のエポキシ基含有オレフィン系共重
合体におけるエポキシ基の含有量は1〜50重量%、好
ましくは3〜40重量%の範囲が好適である。1重量%
未満では目的とする効果が不十分であり、50重量%を
越えるとPPS樹脂との溶融混練時にゲルが生じ、押出
安定性、成形性、機械的強度などに悪影響を及ぼすため
好ましくない。
【0048】なお、エポキシ基含有オレフィン系共重合
体には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の
オレフィン系モノマ、たとえばアクリル酸メチル、メタ
クリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビ
ニルおよびビニルエーテルなどをさらに共重合せしめて
もよい。
【0049】本発明の(B)エポキシ基含有化合物の配
合量は、(A)PPS樹脂100重量部に対して、0.
1〜70重量部の範囲が選択され、特に3〜60重量部
の範囲がより好ましい。
【0050】(B)エポキシ基含有化合物の配合量が
0.1重量部未満では、溶融粘度が低く成形性が劣り、
70重量部を越えると、(A)PPS樹脂との溶融混練
時にゲルが生じ、押出安定性、成形性、機械的強度、お
よび耐熱性などに悪影響を及ぼすため好ましくない。
【0051】本発明において、PPS樹脂組成物に配合
される(C)ポリアミド樹脂、およびPPS樹脂組成物
との積層に用いられる(E)ポリアミド樹脂は、原則と
して同種であり、その具体例としては、ポリカプロアミ
ド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナ
イロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロ
ン46)、ポリヘキサメリレンセバカミド(ナイロン6
10)、ポリヘキサメリレンドデカミド(ナイロン61
2)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリウン
デカンアミド(ナイロン11)、ポリヘキサメチレンテ
レフタルアミド(ナイロン6T)、ポリキシリレンアジ
パミド(ナイロンXD6)およびこれらの混合物ないし
共重合体などが挙げられる。これらポリアミド樹脂の中
でも、ナイロン6、ナイロン66およびこれらの共重合
体が、耐熱性、成形性、および経済性の面で好ましく使
用される。
【0052】また、(C)と(E)のポリアミド樹脂は
同じ構造単位を有するものが好ましい。
【0053】(C)ポリアミド樹脂および(E)ポリア
ミド樹脂の重合度には特に制限がなく、1%の濃硫酸溶
液中、25℃で測定した相対粘度が、1.5〜7.0の
範囲、特に2.0〜6.5の範囲のものが好ましい。
【0054】(A)PPS樹脂組成物に配合される
(C)ポリアミド樹脂の配合割合は、(A)PPS樹脂
100重量部に対して、10〜70重量部の範囲が選択
され、特に15〜60重量部の範囲がより好ましい。
【0055】(C)ポリアミド樹脂の配合量が5重量部
未満では、層間の密着強度が不十分となり、70重量部
を越えると、(A)PPS樹脂本来の耐熱性がおよび耐
薬品性などの低下が起こるため好ましくない。
【0056】本発明においては、管状体の内層側の少な
くとも1層を形成する(A)PPS樹脂に、(B)エポ
キシ基含有化合物と(C)ポリアミド樹脂の両者を併用
して特定量配合することにより、外層側の少なくとも1
層を形成する(E)ポリアミド樹脂との間に強固な密着
強さが得られ、(B)エポキシ基含有化合物と(C)ポ
リアミド樹脂のいずれか一方をそれぞれ単独で配合した
としても、層間の実用的な密着強さを得ることができな
い。
【0057】本発明において、(D)エポキシ基を含有
しないエラストマは必須成分ではないが、必要に応じて
(A)PPS樹脂100重量部に対して70重量部を越
えない範囲で配合することが可能であり、通常10〜6
0重量部の範囲で配合することにより、より優れた表面
外観性を得ることができ、さらには成形性向上などの面
でも有効である。
【0058】かかる(D)エポキシ基を含有しないエラ
ストマとしては、例えばエチレンープロピレン共重合
体、エチレンーブテン共重合体、ポリブデン、エチレン
ープロピレンージエン共重合体、エチレンー酢酸ビニル
共重合体などのポリオレフィン系エラストマ、スチレン
ーブタジエン共重合体、ポリブタジエン、ブタジエンー
アクリロニトリル共重合体、ポリイソプレン、ブテンー
イソプレン共重合体などのジエン系エラストマ、および
エチレンーアクリル酸メチル共重合体、エチレンーアク
リル酸エチル共重合体、エチレンーアクリル酸イソプロ
ピル共重合体、エチレンーメタクリル酸メチル共重合
体、エチレンーメタクリル酸エチル共重合体などのアク
リル系エラストマなどが挙げられる。
【0059】また(D)エポキシ基を含有しないエラス
トマには、反応性を付与する意味で、アクリル酸や(メ
タ)アクリル酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸、
あるいは無水マレイン酸、無水メチルマレイン酸、無水
シトラコ酸などの不飽和カルボン酸無水物を変性剤成分
として共重合させてもよい。
【0060】本発明において、(F)繊維状および/ま
たは非繊維状充填材は必須成分ではないが、必要に応じ
て、(E)ポリアミド樹脂100重量部に対して100
重量部を越えない範囲で配合することが可能である。通
常は、10〜90重量部の範囲で(F)繊維状および/
または非繊維状充填材配合することにより、得られる熱
可塑性樹脂多層管状体の強度、剛性、耐熱性および寸法
安定性などの向上を図ることが可能である。
【0061】かかる(F)繊維状および/または非繊維
状充填材としては、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭化珪
素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊
維、金属繊維および炭素繊維などの繊維状充填材、ワラ
ステナイト、ゼオライト、セリサナイト、カオリン、マ
イカ、クレー、パイロフェライト、ベントナイト、アス
ベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、ア
ルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジリコニウ
ム、酸化チタンなどの金属化合物、炭酸カルシウム、炭
酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシ
ウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、窒化
ホウ素、炭化珪素およびシリカなどの非繊維状充填材な
どが挙げられ、これらは中空であってもよく、また2種
以上を併用することも可能であり、必要によりシラン系
およびチタン系などのカップリング剤で予備処理して使
用することもできる。
【0062】また、本発明で用いる(A)PPS樹脂、
(B)エポキシ基含有化合物、(C)ポリアミド樹脂、
(D)エポキシ基を含有しないエラストマからなる樹脂
組成物、およびこれと積層させる(E)ポリアミド樹脂
には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、結晶核
剤、離型剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止
剤、着色剤および難燃剤などの通常の添加剤および少量
の他種ポリマを添加することができる。
【0063】本発明において、(A)PPS樹脂に対し
て、(B)エポキシ基含有化合物、(C)ポリアミド樹
脂、(D)エポキシ基を含有しないエラストマを混合す
る方法、および(E)ポリアミド樹脂に対して、(F)
繊維状および/または非繊維状充填材を混合する方法に
ついては特に限定されるものではない。
【0064】たとえば、あらかじめ適当な混合機で混合
し、押出機に供給して溶融混練しペレット化した後に、
これを成形機に直接供給する方法、および混合機でドラ
イブレンドしたものを成形機に直接供給する方法などが
挙げられるが、必ずしもこれに限らない。
【0065】本発明の熱可塑性樹脂多層管状体の製造方
法としては、通常の共押出法を採用することができ、例
えば2層管状体の場合、2台の押出機へ、上記PPS樹
脂組成物と、ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂組成
物とを別々に供給し、これら2種の溶融樹脂の別々に押
出された流れを共通のダイ内に圧力供給して、各々環状
の流れとなした後、ダイ内で合流させ、PPS樹脂組成
物を内層側に、ポリアミド樹脂を外層側に形成させ、つ
いでダイ外へ共押出して、通常公知のチューブ成形法、
ブロー成形法などを行うことにより、2層管状体を得る
ことができる。
【0066】また、3層の管状体の場合には、3台の押
出機を用いて上記と同様の方法にて3層にするか、また
は2台の押出機を用いて2種3層の管状体を得ることも
可能である。
【0067】本発明の多層管状体の層構成は、耐熱水
性、耐不凍液性、耐薬品性などの面から、PPS樹脂組
成物が内層を、成形性の面からポリアミド樹脂またはポ
リアミド樹脂組成物が外層を形成した2層構造が好まし
いが、必要に応じてPPS樹脂組成物とポリアミドまた
は樹脂組成物を種々組み合わせた3層および4層以上で
も良い 本発明において、PPS樹脂組成物と、ポリアミド樹脂
またはポリアミド樹脂組成物との層間に強固な密着強さ
を得るためには、両樹脂の成形温度をできる限り同一温
度に近付けて設定するのが好ましい。
【0068】PPS樹脂組成物の溶融温度に対し、ポリ
アミド樹脂の温度が極端に低いと、共押出の際にPPS
樹脂組成物の表面が固化する傾向となり、密着強さが低
下するため好ましくない。好ましい成形温度は、PPS
樹脂組成物が290〜310℃、ポリアミド樹脂が23
0〜290℃、より好ましくはPPS樹脂組成物が29
0〜300℃、ポリアミド樹脂が250〜290℃であ
る。
【0069】このようにして得られる本発明の熱可塑性
樹脂多層管状体は、耐熱水性、耐不凍液性、耐薬品性、
耐熱性、成形性および層間の密着性に優れていることか
ら、これらの特性を生かした用途、特に自動車用冷却系
パイプおよび融雪または暖房用ヒーテングシステムの熱
媒体循環パイプへ適用した場合に、その効果を最大限に
発揮することができる。
【0070】
【実施例】以下に、実施例を挙げて、本発明の構成およ
び効果をさらに詳細に説明する。
【0071】なお、以下に述べる実施例および比較例に
記された、熱可塑性樹脂多層管状体の表面外観、耐不凍
液性、耐塩化亜鉛性、および層間の密着強度は、以下の
方法により測定した。
【0072】PPS樹脂組成物と、ポリアミド樹脂また
はポリアミド樹脂組成物を、上記したチューブおよびブ
ロー成形法により、各々押出機内部で溶融混練し共押出
ダイに供給し、共押出ダイ内の接合部にて多層状に溶融
接合し、その先端のダイフェイスから多層管状体または
多層パリソンとして共押出す。これをチューブ成形の場
合は、サイジング装置で冷却固化させ外形φ16mm、
内径φ13mmの2層チューブを成形し、またブロー成
形の場合は、ブロー金型内で空気を吹き込み外径φ40
mm、長さ300mm、肉厚3mmの2層パイプを成形
し、得られた2層チューブおよびパイプの評価を次の方
法にしたがって行った。
【0073】[表面外観]2層チューブおよびパイプを
切断し、その内外表面の平滑性を観察し、良好な順に
「優(びびりなし)」、「良(びびり中)」、「可(び
びり大)」と等級付けした。
【0074】[耐不凍液性]30cm長の2層チューブ
およびパイプに50%エチレングリコール水溶液を入れ
て密封し、温度130℃で、1000時間処理した後、
パイプから試験片を作成し、引張強度および引張伸度を
測定し、未処理のものと比較してそれぞれの保持率を計
算し、保持率50%以上を○、50%以下を×とした。
【0075】[耐塩化亜鉛性]30cm長の2層チュー
ブおよびパイプ内に50%塩化亜鉛水溶液を入れて密封
し、温度80℃±3℃で、1000時間処理した後、ク
ラック発生の有無を目視で評価した。
【0076】[管状体層間の密着強度]2層チューブお
よびパイプを短冊状にカットし、短冊の端部のPPS樹
脂組成物層とポリアミド樹脂層を剥離させ、各層を引張
試験機のチャックに挟み、下記条件で180度剥離強さ
(gf/10mm)を測定した。
【0077】イ.密着強度:10mm/min ロ.テストピースサイズ:幅5mm、長さ100mm [参考例1(PPSの重合)]オートクレーブに硫化ナ
トリウム3.20kg(25モル、結晶水40%を含
む)、水酸化ナトリウム4g、酢酸ナトリウム三水和物
1.36kg(約10モル)およびNーメチルー2ーピ
ロリドン(以下NMPと略称する)7.9kgを仕込
み、撹拌しながら徐々に205℃まで昇温し、水1.3
6kgを含む留出水約1.5リットルを除去した。
【0078】残留混合物に1、4ージクロルベンゼン
3.75kg(25.5モル)およびNMP2.0kg
を加え、265℃で3時間加熱した。反応生成物を70
℃の温水で5回洗浄し、80℃で24時間減圧乾燥し
て、溶融粘度約1500ポイズ(320℃、剪断速度1
0sec -1)の粉末状PPS樹脂(P−1)約2kgを得
た。
【0079】同様な操作を繰り返し、以下に記載の実施
例に供した。
【0080】[参考例2(PPS樹脂の酸水溶液洗浄処
理)]参考例1で得られたPPS樹脂粉末約2kgを、
90℃に加熱されたpH4の酢酸水溶液20リットル中
に投入し、約30分間撹拌し続けた後ろ過し、ろ液のp
Hが7になるまで約90℃の脱イオン水で洗浄し、12
0℃で24時間減圧乾燥して粉末状とし、酸溶液洗浄処
理PPS樹脂(P−2)を得た。
【0081】[参考例3(PPS樹脂の熱水洗浄処
理)]参考例1で得られたPPS樹脂粉末約2kgと、
脱イオン水10リットルとをオートクレーブに仕込み常
圧で密封した後、175℃まで昇温し撹拌しながら約3
0分間保温した後冷却した。内容物を取り出してろ過
し、さらに、70℃の脱イオン水約10リットルの中に
PPS樹脂を浸漬、撹拌し、ろ過する操作を5回繰り返
した。その後120℃で24時間減圧乾燥して熱水洗浄
処理PPS樹脂(P−3)を得た。
【0082】[参考例4(PPS樹脂の有機溶媒洗浄処
理)]参考例1で得られたPPS樹脂粉末約2kgを、
100℃に加熱したNMP20リットル中に投入し、約
30分間撹拌した後ろ過し、続いて約90℃のイオン交
換水で洗浄した。このものを120℃で24時間減圧乾
燥してNMP洗浄処理PPS樹脂(P−4)を得た。
【0083】[実施例1]参考例2で得られた酸水溶液
洗浄処理PPS樹脂(Pー2)100重量部、相対粘度
4.2のナイロン6樹脂(東レ(株)製CM1046X
04)40重量部、エポキシ基含有オレフィン系共重合
体(変性オレフィン系共重合体)としてエチレン/グリ
シジルメタクリレート(E/GMA)=88/12(重
量%)共重合体40重量部を、ヘンシェルミキサでドラ
イブレンドした後、40mmφ単軸押出機のホッパーに
供給し、シリンダー温度300℃、スクリュ回転数80
rpmの条件で溶融混練を行ないペレット化した。
【0084】このペレット化したPPS樹脂組成物を、
130℃で4時間乾燥した後、通常の多層チューブ成形
方式により、30mmφ押出機に供給し、シリンダー温
度300℃にて溶融混練し、共押出ダイ内で内層を形成
させた。
【0085】一方、相対粘度4.2のナイロン6樹脂
(東レ(株)製CM1046X04)を、40mmφ押
出機に供給し、シリンダー温度280℃にて溶融混練
し、共押出ダイ内で外層を形成させた。
【0086】この2種のポリマーがダイ内で積層してで
きた2層管状体を市販のチューブ成形装置を使用して、
通常の方法により外径φ16mm、内径φ13mm、肉
厚1.5mmの2層チューブを成形した。
【0087】得られた2層チューブの肉厚は、外層1.
2mm、内層0.3mmであった。
【0088】得られた2層チューブの表面外観、耐不凍
液性、耐塩化亜鉛性、層間の密着強度を測定した結果を
表1に示す。
【0089】表1の結果から明らかなように、本実施例
で得られた2層チューブは、表面外観、耐不凍液性、お
よび耐塩化亜鉛性が均衡して優れ、さらに10mm幅当
り5.6kgの高い密着強度を有していた。
【0090】[実施例2〜9]内層を形成するPPS樹
脂組成物中のPPS樹脂、ポリアミド樹脂、変性オレフ
ィン系共重合体、エポキシ基を含有しないエラストマー
の種類および配合量と、外層を形成するポリアミド樹脂
の種類および配合量を、表1に示したように変更した以
外は、実施例1と同様の手順で成形を行ない、得られた
2層管状体の表面外観性、耐不凍液性、耐塩化亜鉛性、
層間の密着強度を測定した。
【0091】なお、ナイロン66としては東レ(株)製
CM3006を、エラストマーとしては三井石油化学
(株)製“タフマー”A4085(エチレン/ブテン−
1共重合体)を用いた。
【0092】
【表1】 表1の結果から明らかなように、PPS樹脂にポリアミ
ド樹脂、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体
(変性オレフィン系共重合体)、およびエラストマを併
用して配合すると、内層を形成するPPS樹脂組成物層
と、外層を形成するポリアミド樹脂層間に強固な密着強
さが認められ、配合するポリアミド樹脂の配合量が増加
するにつれ密着強度の向上が認められた。また、いずれ
の場合にも表面外観性、耐不凍液性、耐塩化亜鉛性が均
衡して優れており、高機能の管状体が得られた。
【0093】[比較例1〜3]実施例1において、PP
S樹脂組成物中のポリアミド樹脂またはエチレン/グリ
シジルメタクリレート共重合体をそれぞれ省略した以外
は、実施例1と同様に成形を行ない、得られた管状体を
同様に評価した(比較例1,2)。
【0094】この結果、表2に示したように、実用的な
層間の密着強さが得られなかった。
【0095】また、PPS樹脂組成物中のポリアミド樹
脂の添加量が多くなると(比較例3)、耐不凍液性、耐
塩化亜鉛性が低下する傾向となる。
【0096】[比較例4〜5]実施例例1〜7において
使用したナイロン6樹脂およびナイロン66樹脂から、
それぞれ単独でチューブ成形し、実施例1と同形状の肉
厚1.5mmの単層の管状体を成形した。
【0097】得られた管状体を実施例1と同様に評価し
た結果を表2に併せて示す。
【0098】表2の結果から明らかなように、それぞれ
ポリアミド樹脂単独で成形したものは、耐不凍液性、耐
塩化亜鉛性が不十分であるため好ましくない。
【0099】
【表2】 [実施例10〜13]PPS樹脂(P−2)にポリアミ
ド樹脂(ナイロン6樹脂またはナイロン66樹脂)、エ
チレン/グリシジルメタクリレート共重合体(変形オレ
フィン系共重合体)およびエポキシ基を含有しないエラ
ストマ(エチレン/ブテン−1共重合体)を、表3に示
した配合割合で配合し、実施例1と同様にペレット化し
た。
【0100】このペレット化したPPS樹脂組成物を、
130℃で4時間乾燥した後、通常のブロー成形方式に
より、30mmφ押出機に供給し、シリンダー温度29
5℃にて溶融混練し、共押出ダイ内で内層を形成させ
た。
【0101】また、ガラス繊維(長さ:3mm、φ:1
3μm)強化したナイロン6樹脂およびナイロン66樹
脂を、50mmφ押出機に供給し、シリンダー温度28
0℃にて溶融混練し、共押出ダイ内で外層を形成させ
た。
【0102】この2種のポリマがダイ内で積層してでき
た2層パリソンから、市販のブロー成形装置を使用し
て、通常の方法により外径φ40mm、長さ300m
m、肉厚3mmの二次元形状の2層パイプを成形した。
得られた2層パイプの肉厚は外層:2.7mm、内層:
0.3mmであった。
【0103】得られた2層パイプの層間の密着強度は、
表3に示したとおり、10mm幅当り2.0〜4.1k
gと高い値を示し、またこのパイプの内面平滑性、耐不
凍液性、および耐塩化亜鉛性は非常に優れたものであっ
た。
【0104】
【表3】 [比較例6〜7]実施例10〜13において、PPS樹
脂組成物中のポリアミド樹脂またはエチレン/グリシジ
ルメタクリレート共重合体をそれぞれ省略した以外は実
施例10〜13と同様に成形を行ない、得られた2層パ
イプを同様に評価した。
【0105】この結果は、表4に示したように、実用的
な層間の密着強さが得られなかった。
【0106】[比較例8〜9]実施例10〜13におい
て、外層として使用したガラス繊維強化ナイロン6樹脂
およびナイロン66樹脂を、それぞれ単独でブロー成形
し、実施例10〜13と同形状の肉厚3.0mmの単層
パイプを成形した。
【0107】得られた各単層パイプを、実施例10〜1
3と同様に評価した結果、表4に示したように、パイプ
内面の平滑性が悪く、耐不凍液性、耐塩化亜鉛性が不十
分であった。
【0108】
【表4】
【0109】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のPPS樹
脂組成物と、ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂組成
物とからなる熱可塑性樹脂多層管状体は、接着層を介在
させずとも層間の強固な密着性を持ち、さらに表面外観
性、耐熱性、耐不凍液性、塩化亜鉛、塩化カルシウムな
どに対する耐薬品性、成形性、および経済性などが均衡
して優れており、特に水または水溶液と直接接触して高
温条件下でまたは長年月使用される用途、特に自動車用
冷却系パイプや、融雪または暖房用ヒーテングシステム
などの熱媒体循環パイプに適用した場合に、その効果を
最大限に発揮することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08L 63/00 C08L 63/00 81/06 81/06 F16L 9/12 F16L 9/12 F28F 21/06 F28F 21/06

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)ポリフェニレンスルフィド樹脂
    100重量部に対し、(B)エポキシ基含有化合物0.
    1〜70重量部、(C)ポリアミド樹脂10〜70重量
    部、および(D)エポキシ基を含有しないエラストマ0
    〜70重量部を配合したポリフェニレンスルフィド樹脂
    組成物を内層側の少なくとも一層とし、(E)ポリアミ
    ド樹脂100重量部に対し、(F)繊維状および/また
    は非繊維状充填材0〜100重量部を配合したポリアミ
    ド樹脂またはポリアミド樹脂組成物を外層側の少なくと
    も一層とすることを特徴とする熱可塑性樹脂多層管状
    体。
  2. 【請求項2】 (A)ポリフェニレンスルフィド樹脂
    が、脱イオン化処理されたものであることを特徴とする
    請求項1記載の熱可塑性樹脂多層管状体。
  3. 【請求項3】 (B)エポキシ基含有化合物がエポキ
    シ基含有重合体であることを特徴とする請求項1または
    2記載の熱可塑性樹脂多層管状体。
  4. 【請求項4】 エポキシ基含有重合体がエポキシ基含
    有オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項3
    記載の熱可塑性樹脂管状体。
  5. 【請求項5】 エポキシ基含有オレフィン共重合体
    が、α−オレフィンとα、β−不飽和酸のグリシジルエ
    ステルを主構成成分とするエポキシ基含有変性オレフィ
    ン系共重合体であることを特徴とする請求項4記載の熱
    可塑性樹脂管状体。
  6. 【請求項6】 (C)ポリアミド樹脂が、ナイロン
    6、ナイロン66およびその共重合体から選ばれた少な
    くとも1種であることを特徴とする請求項1〜5のいず
    れか1項記載の熱可塑性樹脂多層管状体。
  7. 【請求項7】 (E)ポリアミド樹脂が、ナイロン
    6、ナイロン66およびその共重合体から選ばれた少な
    くとも1種であり、(C)ポリアミド樹脂と同種である
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の熱
    可塑性樹脂多層管状体。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれか1項記載の熱
    可塑性樹脂多層管状体からなることを特徴とする自動車
    用エンジン冷却系パイプ。
  9. 【請求項9】 請求項1〜7のいずれか1項記載の熱
    可塑性樹脂多層管状体からなることを特徴とする融雪ま
    たは暖房用ヒーテングシステムの熱媒体循環パイプ。
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