JP3911819B2 - 多層中空成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、耐熱水性、耐薬品性、耐アルコールガソリン透過性、成形品外観、層間の接着性、衝撃性、表面平滑性などが均衡して優れ、かつ導電性を有する多層中空成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂の中空成形品は、例えば自動車のエンジンルーム内のダクト類を中心に、ポリアミド系樹脂を使用したブロー成形によって製造する技術や、チューブ類に飽和ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性ポリウレタンを使用した押出成形によって製造する技術が普及している。
【0003】
しかし、従来のポリアミド系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン樹脂および熱可塑性ポリウレタン樹脂などの熱可塑性樹脂からなる単層中空成形品では、耐熱性、耐熱水性、耐薬品性などが不十分であることから、適用する範囲が限定されてしまうため、耐熱性、耐熱水性、耐薬品性などを一層高めた製品が要求されている。
【0004】
特に自動車燃料チューブ用としては、ポリアミド樹脂、中でもポリアミド11やポリアミド12などの柔軟ポリアミド樹脂が広く用いられているが、ポリアミド樹脂を単独で使用した場合、環境汚染問題および燃費向上から要求されているアルコールガソリンの透過防止性に対しては十分ではないと言う懸念点が指摘されその改良が望まれている。
【0005】
またブロー中空成形体やチューブ成形体内を燃料などの非導電性液体が流れる用途においては、成形体が帯電する場合があり、これを抑制することも同時に求められている。
【0006】
一方、ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、PPS樹脂と略称する)は、耐熱性、耐熱水性、耐薬品性、難燃性および電気特性などが優れたエンジニアリングプラスチックであり、電気・電子部品、自動車部品などの用途に対し、その需要が高まりつつある。また、最近では、このPPS樹脂の特長を活かした管状成形体が、特公平2−200415号公報などに開示されている。
【0007】
かかるPPS樹脂製の中空成形体を用いれば上記耐熱性、耐熱水性、耐薬品性、および透過性の懸念は解決されると考えられるが、靱性面、特に自動車用途等ではしばしば要求される低温での靱性が不十分な場合があり、用途によってはその適用性に限界がある。
【0008】
そこで我々は、耐熱性、耐熱水性、耐薬品性、耐アルコールガソリン透過性に優れるPPS樹脂層と靱性に優れる他の熱可塑性樹脂および導電性樹脂組成物からなる層を積層することにより上記問題点を全て解決できると考え、検討を開始した。
【0009】
PPS樹脂と他の熱可塑性樹脂の積層構造体はこれまで検討がなされており、例えば特開昭59−145131号公報にはPPS管状体の表面に他の熱可塑性樹脂を被覆する方法が開示されている。しかし特開昭59−145131号公報には単にPPS樹脂製管状体の表面他の樹脂を積層することにより、PPSの特性が活かされ、かつ強度、コスト的に優れた管状体が得られると記載されているに過ぎず、層間接着性、低温靱性、導電性については何ら配慮されていない。
【0010】
また特開平7−299855号公報にはPPS層を含む多層チューブが開示され、PPS層表面をコロナ処理にて活性化し層間接着性を改良する方法が開示されている。しかし、コロナ処理の如き2次加工はコスト的に不利であり、好ましい方法とは言えない。また靱性面についても何ら配慮されていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した従来の多層中空成形品における問題点の改良を課題として検討した結果、達成されたものである。即ち本発明は、耐熱性、耐熱水性、耐薬品性、耐アルコールガソリン透過性、靱性、表面平滑性、層間の接着性などが均衡して優れ、かつ導電性を有する多層中空成形体に関するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、少なくとも3層以上の熱可塑性樹脂層から構成される多層中空成形体であって、
1層は(イ)ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる中間層であり、
中間層の外側の1層は(ロ)ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル樹脂、および熱可塑性ポリウレタン樹脂から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる層であり、
中間層の内側の1層は(ハ)導電性フィラーを必須成分として含有し、体積固有抵抗が1010Ω・cm以下である導電性樹脂組成物から構成され、
中間層(イ層)のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、その外側の層と同種の(ロ)熱可塑性樹脂を含有し、
かつ(ハ)層を構成する導電性樹脂組成物が、(F)ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、および飽和ポリエステル樹脂から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂40〜98重量%、(G)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体60〜2重量%、(H)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基を含有しないエラストマー58〜0重量%を配合した樹脂組成物100重量部に対し表面積(BET法)500m2/g以上のカーボンブラックである(I)導電性フィラーを1〜100重量部配合した導電性熱可塑性樹脂組成物であることを特徴とする多層中空成形体を提供する。
【0013】
更には(ロ)層を構成するポリアミド樹脂が、アミド基1個当たりの炭素数が8〜15の範囲である構造単位からなるポリアミド樹脂である上記の多層中空成形体を提供する。
【0014】
更には(イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂を100重量部に対し、(B)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体を1〜200重量部含有するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物である上記の多層中空成形体を提供する。
【0015】
更には(イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物中の(B)官能基含有オレフィン系共重合体が、α−オレフィンおよびα,βー不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とする(B1)エポキシ基含有オレフィン系共重合体である上記の多層中空成形体を提供する。
【0016】
更には(イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物中の(B1)エポキシ基含有オレフィン系共重合体が、α−オレフィン(1)とα,βー不飽和酸のグリシジルエステル(2)と更に下記一般式で示される単量体(3)を必須成分とするオレフィン系共重合体である上記の多層中空成形体を提供する。
【化2】
(ここで、R 1 は水素または低級アルキル基を示し、Xは−COOR 2 基、−CN基あるいは芳香族基から選ばれた基、またR 2 は炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
【0017】
更には(イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、(B)官能基を含有するオレフィン系共重合体として(B1)エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体と(B2)酸無水物基を含有するオレフィン系共重合体との少なくとも2種の官能基含有オレフィン系共重合体を必須成分として含有するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、(B1)と(B2)の重量%が(B1):(B2)=1〜99:99〜1(合計100重量%)である上記の多層中空成形体を提供する。
【0018】
更には(イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、更に(C)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、およびカルボン酸エステル基を含有しな いエラストマーを含有するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し(C)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基を含有しないエラストマーを1〜200重量部含有し、かつ(B)官能基を含有するオレフィン系共重合体と(C)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基を含有しないエラストマーの合計が(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、200重量部以下である上記の多層中空成形体を提供する。
【0019】
更には(イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、更に(D)アミド結合、エステル結合、ウレタン結合から選ばれる少なくとも1種の結合様式で結合された繰り返し単位を主構成単位とする熱可塑性樹脂を、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、5〜200重量部含有することを特徴とする上記の多層中空成形体を提供する。
【0020】
更には(D)アミド結合、エステル結合、ウレタン結合から選ばれる少なくとも1種の結合様式で結合された繰り返し単位を主構成単位とする熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂である上記の多層中空成形体を提供する。
【0021】
更には(イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に用いる(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、脱イオン化処理されたものであることを特徴とする上記の多層中空成形体を提供する。
【0022】
更に(ハ)層を構成する(F)熱可塑性樹脂がポリフェニレンスルフィド樹脂であり、かつ(B)官能基を含有するオレフィン系共重合体として(B1)エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体と(B2)酸無水物基を含有するオレフィン系共重合体との少なくとも2種の官能基含有オレフィン系共重合体を必須成分として含有するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、(B1)と(B2)の重量%が(B1):(B2)=1〜99:99〜1(合計100重量%)である上記の多層中空成形体を提供する。
【0023】
更に(イ)ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる中間層、(ロ)ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル樹脂、および熱可塑性ポリウレタン樹脂から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる最外層、および(ハ)導電性フィラー及び導電性ポリマーを必須成分として含有する導電性樹脂組成物からなる最内層の3層から構成される上記の多層中空成形体を提供する。
【0024】
更に多層中空成形体が、共押出成形法により製造された多層管状成形体である上記の多層中空成形体を提供する。
【0025】
更に多層中空成形体が、その全厚みが0.2mm以上3mm以下であり、かつ導電性を有する層の厚みが全厚みの1%以上50%以下である上記の多層中空成形体を提供する。
【0026】
更に燃料チューブとして用いることを特徴とする上記の多層中空成形体を提供する。
【0027】
【0028】
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の基本構成は、少なくとも3層以上の熱可塑性樹脂層から構成される多層中空成形体であって、
1層は(イ)ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる中間層であり、
中間層の外側の1層は(ロ)ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル樹脂、および熱可塑性ポリウレタン樹脂から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる層であり、
中間層の内側の1層は(ハ)導電性フィラーを必須成分として含有し、体積固有抵抗が1010Ω・cm以下である導電性樹脂組成物から構成され、
中間層(イ層)のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、その外側の層と同種の(ロ)熱可塑性樹脂を含有し、
かつ(ハ)層を構成する導電性樹脂組成物が、(F)ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、および飽和ポリエステル樹脂から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂40〜98重量%、(G)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体60〜2重量%、(H)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基を含有しないエラストマー58〜0重量%を配合した樹脂組成物100重量部に対し表面積(BET法)500m2/g以上のカーボンブラックである(I)導電性フィラーを1〜100重量部配合した導電性熱可塑性樹脂組成物であることを特徴とする多層中空成形体である。
【0030】
まず(ロ)層を構成する熱可塑性樹脂について説明する。
【0031】
(ロ)層を構成する熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル樹脂、および熱可塑性ポリウレタン樹脂から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる。
【0032】
ここで、ポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミドである。その主要構成成分の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、εーカプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ヘキサメレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン、2−メチルペンタメチレンジアミンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマまたはコポリマを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0033】
本発明において、有用なポリアミド樹脂としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。
【0034】
中でもアミド基1個当たりの炭素数が8〜15の範囲である構造単位からなるポリアミド樹脂が好適であり、更にアミノカルボン酸またはその誘導体をモノマーとするポリアミド樹脂は、より優れた低温靱性を得る意味で特に好ましい。かかるポリアミドとしてはポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ナイロン610、ナイロン6T/12などが例示できる。
【0035】
これらポリアミド樹脂の重合度にはとくに制限がなく、98%濃硫酸溶液(ポリマー1g、濃硫酸100ml)、25℃で測定した相対粘度が、1.5〜7.0の範囲、特に2.0〜6.5、更には2.5〜5.5の範囲のものが好ましい例として例示でき、或いはメタクレゾール中(ポリマー濃度0.5重量%)、25℃で測定した相対粘度が1.0〜7.0の範囲、特に1.5〜5.0の範囲のポリアミド樹脂が例示できる。
【0036】
また、ここで使用する熱可塑性ポリエステル樹脂とは、テレフタル酸などのジカルボン酸と脂肪族ジオールとから得られるポリエステルをいう。テレフタル酸以外のジカルボン酸としては、アゼライン酸、セバシン酸、アジピン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、などの炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、またはシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸などが挙げられ、これらは単独であっても混合物であっても良い。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4ーブタンジオール、トリメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびヘキサメチレングリコールなどが挙げられる。
【0037】
本発明で使用する好ましい熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられるが、中でも適度な機械的強度を有するポリブチレンテレフタレートまたはテレフタル酸を60モル%以上、好ましくは70モル%以上とドデカンジカルボン酸および/またはイソフタル酸を含有するジカルボン酸成分と1,4ーブタンジオール成分からなる共重合ポリエステルが特に好ましく使用される。
【0038】
これら熱可塑性ポリエステル樹脂の重合度には特に制限無いが、例えば中でも好ましく使用されるポリブチレンテレフタレート(以下PBT樹脂と略称する)および共重合ポリエステルの場合、その重合度は、0.5%オルトクロロフェノール溶液を25℃で測定した相対粘度が0.5〜2.5の範囲、特に0.8〜2.0の範囲のものが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレートの場合、0.5%オルトクロロフェノール溶液を25℃で測定した極限粘度が0.54〜1.5の範囲、特に0.6〜1.2の範囲のものが好ましい。
【0039】
また、ここで使用する熱可塑性ポリウレタン樹脂とは、ポリイソシアネートとジオールからなる鎖状重合体であり、ポリイソシアネートの具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート、および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。ジオールにはポリエステル型とポリエーテル型があり、前者の具体例としては、フタル酸、アジピン酸、二量化リノイン酸、マレイン酸などの有機酸と、エチレン、プロピレン、ブチレン、ジエチレンなどのグリコールなどとからなるものが、後者の具体例としては、ポリオキシプロピレングリコール、ポリ(オキシプロピレン)ポリ(オキシメチレン)グリコール、ポリ(オキシブチレン)グリコール、およびポリ(オキシテトラメチレン)グリコールなどが、それぞれ一般的に用いられる。
【0040】
これらポリ熱可塑性ポリウレタンの重合度には特に制限はないが、通常220℃、せん断速度10/secにおける溶融粘度が1000〜100000ポイズのものが用いられる。
【0041】
【0042】
かかる(ロ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂組成物は、各樹脂に適した可塑剤などの添加剤を含んでいても良い。
【0043】
また(ロ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂あるいはポリフェニレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂を主構成成分とする熱可塑性樹脂組成物が、ヤング率18000kg/cm2以下、更に好ましくは15000kg/cm2以下の熱可塑性樹脂あるいは熱可塑性樹脂組成物であることは、チューブ成形体の耐キンク性の点で好ましい。
【0044】
【0045】
次に(イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物について説明する。
【0046】
かかるPPS樹脂とは、下記構造式で示される繰り返し単位を
【化3】
70モル%以上、より好ましくは90モル%以上を含む重合体であり、上記繰り 返し単位が70モル%未満では、耐熱性が損なわれるので好ましくない。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満を、下記の構造式を有する繰り返 し単位等で構成することが可能である。
【0047】
【化4】
本発明で用いられるPPS樹脂の溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に制限はないが、通常50〜20,000ポイズ(320℃、剪断速度1,000sec-1)のものが使用され、100〜5000ポイズの範囲がより好ましい。
【0048】
かかるPPS樹脂は通常公知の方法即ち特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法或は特公昭52−12240号公報 や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る 方法などによって製造できる。本発明において上記の様に得られたPPS樹脂を 空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減 圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン 、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など種々の処理を施した上で使用することももちろん可能である。
【0049】
PPS樹脂の加熱による架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望 する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法が例示できる。加熱処理温度は通常、170〜280℃が選択され、好ましくは200〜270℃であり、時間は通常0.5〜100時間が選択され、好ましくは2〜50時間であるが、この加熱処理温度途時間の両者をコントロールすることにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理ためには回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0050】
PPS樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜 100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法が例示できる。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理するためには回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0051】
本発明で用いられるPPS樹脂は脱イオン処理を施されたPPS樹脂であることが好ましい。かかる脱イオン処理の具体的方法としては酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理および有機溶剤洗浄処理などが例示でき、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いても良い。
【0052】
PPS樹脂を有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、洗浄に用いる有機溶媒としては、PPS樹脂を分解する作用 などを有しないものであれば特に制限はないが、例えばN−メチルピロリドン、 ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチル スルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒 、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル 系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。これらの有機溶媒のなかでN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどの使用 が好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である 。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。また有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
【0053】
PPS樹脂を熱水で処理する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理 の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧で或いは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
【0054】
PPS樹脂を酸処理する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり 必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸はPPSを分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などがあげられる。中でも酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
【0055】
本発明の(イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂を構成成分として含有する熱可塑性樹脂組成物において、(C)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体を配合することは、優れた層間接着性、靱性、チューブとしての柔軟性などを得る意味のおいて望ましい。かかる官能基を含有するオレフィン系共重合体としては、エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種を含有するオレフィン系重合体が例示できる。
【0056】
エポキシ基含有ポリオレフィン系重合体としては、側鎖にグリシジルエステル、グリシジルエーテル、グリシジルジアミンなどを有するオレフィン系共重合体や、二重結合を有するオレフィン系共重合体の二重結合部分を、エポキシ酸化したものなどが挙げられ、中でもエポキシ基を有するモノマーが共重合されたオレフィン系共重合体が好適であり、特にα−オレフィンおよびα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とするオレフィン系共重合体が好適に用いられる。
【0057】
かかるα−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン1、デセン−1、オクテン−1などが挙げられ、中でもエチレンが好ましく用いられる。またこれらは2種以上を同時に使用することもできる。
【0058】
一方、α,β−不飽和酸のグリシジルエステルとは、一般式
【化5】
(ここでRは水素原子または低級アルキル基を示す)で示される化合物であり、具体的にはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジルなどが挙げられ、中でもメタクリル酸グリシジルが好ましく用いられる。
【0059】
かかるα−オレフィンおよびα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とするオレフィン系共重合体は、上記α−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルとのランダム、交互、ブロック、グラフト共重合体いずれの共重合様式であっても良い。
【0060】
α−オレフィンおよびα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とするオレフィン系共重合体におけるα,β−不飽和酸のグリシジルエステルの共重合量は、目的とする効果への影響、重合性、ゲル化、耐熱性、流動性、強度への影響などの観点から、0.5〜40重量%、特に3〜30重量%が好ましい。
本発明においてエポキシ基含有オレフィン系共重合体として、α−オレフィン(1)とα,β−不飽和酸のグリシジルエステル(2)に加え、更に下記一般式で示される単量体(3)を必須成分とするエポキシ基含有オレフィン系共重合体もまた好適に用いられる。
【0061】
【化6】
(ここで、R1 は水素または低級アルキル基を示し、Xは−COOR2 基、−CN基あるいは芳香族基から選ばれた基、またR2 は炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
かかるオレフィン系共重合体に用いられるα−オレフィン(1)とα,β−不飽和酸のグリシジルエステル(2)の詳細は(B)オレフィン系共重合体と同様である。
【0062】
一方単量体(3)の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、芳香環がアルキル基で置換されたスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、などが挙げられ、これらは2種以上を同時に使用することもできる。
【0063】
かかるオレフィン系共重合体は、α−オレフィン(1)とα,β−不飽和酸のグリシジルエステル(2)と単量体(3)のランダムまたは/および交互または/およびブロックまたは/およびグラフト共重合体、いずれの共重合様式であっても良く、例えばα−オレフィン(1)とα,β−不飽和酸のグリシジルエステル(2)のランダム共重合体に対し単量体(3)がグラフト共重合したような、2種以上の共重合様式が組み合わされた共重合体であっても良い。
【0064】
オレフィン系共重合体の共重合割合は、目的とする効果への影響、重合性、ゲル化、耐熱性、流動性、強度への影響などの観点から、α−オレフィン(1)/α,βー不飽和酸のグリシジルエステル(2)=60〜99重量%/40〜1重量%の範囲が好ましく選択される。また単量体(3)の共重合割合は、α−オレフィン(1)とα,β−不飽和酸のグリシジルエステル(2)の合計量95〜40重量%に対し、単量体(3)5〜60重量%の範囲が好ましく選択される。
【0065】
また本発明で好適に用いられる カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基、酸無水物基を含有するポリオレフィン系重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリブテン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリイソプレン、ブテン−イソプレン共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などのポリオレフィン系樹脂にマレイン酸無水物、琥珀酸無水物、フマル酸無水物、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル及びそのNa、Zn、K、Ca、Mgなどの塩、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチルなどが共重合されたオレフィン系共重合体などが挙げられ、より具体的にはエチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸n−プロピル共重合体、エチレン−アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸t−ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸n−プロピル共重合体、エチレン−メタクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン−メタクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸t−ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸イソブチル共重合体などのオレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、メタアクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸プロピル−アクリロニトリル共重合体、メタアクリル酸プロピル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル共重合体、メタアクリル酸ブチル−アクリロニトリル共重合体などの、(メタ)アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体およびそのNa、Zn、K、Ca、Mgなどの金属塩、エチレン−マレイン酸無水物共重合体、エチレン−ブテン−マレイン酸無水物共重合体、エチレン−ブテンーマレイン酸無水物共重合体、エチレン−マレイン酸無水物共重合体、プロピレン−マレイン酸無水物共重合体あるいは無水マレイン酸変性SBS、SIS、SEBS、SEPS、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などが例示できる。
【0066】
かかるオレフィン系共重合体の共重合様式には特に制限はなく、ランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体などいずれの共重合体様式であっても良い。
【0067】
上記(B)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体の配合量は、透過性、柔軟性、耐衝撃性、チューブ成形性などの点から、(A)PPS樹脂100重量部に対し、1〜200重量部の範囲が選択され、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは3〜50重量部の範囲が選択される。
【0068】
また上記(B)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体体はその2種以上を併用しても良い。特に、(B1)エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体と(B2)酸無水物基を含有するオレフィン系共重合体を併用することは、特に優れた靱性、層間接着性を得る意味で好ましい。(B1)エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体と(B2)酸無水物基を含有するオレフィン系共重合体の具体例は上記の通りである。
【0069】
かかる2種の官能基を含有するオレフィン系共重合体体を併用する場合、(B1)と(B2)の重量%は(B1):(B2)=1〜99:99〜1(合計100重量%)の範囲が選択され、特に(B1):(B2)=5〜50:95〜50(合計100重量%)の範囲がより好ましい。
【0070】
更に(C)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基を含有しないエラストマーを用いること、特に上記(B)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体と併用して用いることは、より優れた内面平滑性を有するを得る上で、またより優れた靱性、中空成形体成形性を得る上で有効である。
【0071】
かかる、(C)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基を含有しないエラストマーとしては例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ジエン系エラストーマ、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、各種熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。ポリオレフィン系エラストマーの具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリブテン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体などが挙げられる。ジエン系エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリイソプレン、ブテン−イソプレン共重合体、SBS、SIS、SEBS、SEPSなどが挙げられる。
【0072】
中でもエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体が特に好ましい。
【0073】
かかる(C)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基を含有しないエラストマーは2種以上を併用して用いても良い。
【0074】
(C)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基を含有しないエラストマーを用いる場合、その好適な配合量は、アルコールガソリン透過性、柔軟性、耐衝撃性、チューブ成形性の点から、(A)PPS樹脂100重量部に対し、1〜200重量部の範囲が選択され、5〜100重量部がより好適であり、10〜80重量部が更に好適である。
【0075】
また(B)官能基を含有するオレフィン系共重合体と併用して用いる場合には、特にアルコールガソリン透過性の観点から、(B)官能基を含有するオレフィン系共重合体と(C)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基を含有しないエラストマーの合計が(A)PPS樹脂100重量部に対し、200重量部以下が好ましく、100重量部以下、更に70重量部以下がより好ましい。
【0076】
また(E)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシランの添加は、機械的強度、靱性、層間接着性及び中空体成形性の向上に有効である。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などなどが挙げられ、中でもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、が特に好ましい。
【0077】
かかる(E)アルコキシシラン化合物の添加量は(A)PPS樹脂100重量部に対して、0.05〜5重量部の範囲が選択され、0.1〜3重量部の範囲がより好ましく選択される。
【0078】
また(D)アミド結合、エステル結合、ウレタン結合から選ばれる少なくとも1種の結合様式で結合された繰り返し単位を主構成単位とする熱可塑性樹脂の具体例としてはポリアミド樹脂、飽和ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂が例示できる。その詳細は(ロ)層と同様であり、説明は省略する。
【0079】
かかる(D)熱可塑性樹脂の配合量はアルコールガソリン透過性、柔軟性、耐衝撃性、チューブ成形性、層間接着性の点から、(A)PPS樹脂100重量部に対し、5〜200重量部の範囲が選択され、好ましくは10〜100重量部更に10〜70重量部の範囲がより好適に選択される。
【0080】
なお、(イ)層を構成するPPS樹脂組成物においては、(A)PPS樹脂に対し、(D)アミド結合、エステル結合、ウレタン結合から選ばれる少なくとも1種の結合様式で結合された繰り返し単位を主構成単位とする熱可塑性樹脂を1種以上配合することは、(イ)層と接する他の層との間の接着強度を高めるために極めて有効であるが、例えば(イ)PPS樹脂組成物層における(D)熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂であれば、(イ)層と接する他の層が、PPS樹脂あるいはポリアミド樹脂で構成されていることが、両樹脂層間に優れた密着強度を発現させるために好ましい条件である。さらに、(イ)層と接する他の層がポリアミド樹脂の場合、例えば(イ)PPS樹脂組成物における(D)熱可塑性樹脂がナイロン6であれば、(イ)層と接する他の層もナイロン6であることが、層間接着性の点でより好ましいが、ナイロン66、ナイロン11など他のポリアミド樹脂であっても接着性の向上効果を得ることができる。
【0081】
(イ)層においてポリフェニレンスルフィド樹脂組成物とは、樹脂成分中で上記ポリフェニレンスルフィド樹脂が、最大の重量割合を占めている熱可塑性樹脂組成物を示す。なお、ポリフェニレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂が同量の場合は、ポリフェニレンスルフィド樹脂が最大重量割合を占めるものとみなす。また化学構造が同じであれば分子量等が異なっていても同成分と見なすが、例えばオレフィン系共重合体であっても化学構造が異なるものは異種成分とみなす。
【0082】
次に(ハ)層を構成する導電性フィラーを必須成分として含有する導電性熱可塑性樹脂組成物について説明する。
【0083】
ここで用いられる(F)熱可塑性樹脂は、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、および飽和ポリエステル樹脂から選ばれた少なくとも1種である。
【0084】
かかる熱可塑性樹脂(F)の詳細は(イ)層および(ロ)層と同様であり、説明は省略する。
【0085】
またより優れた層間接着性を得るために、(F)熱可塑性樹脂が、(ハ)層と接する他の層を形成する樹脂の少なくとも1種と同種の樹脂であることが望ましい。
【0086】
また(G)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体を含有する熱可塑性樹脂を配合することは、より優れた靱性、更には層間接着性を得る意味で好ましい。かかる(G)官能基を含有するオレフィン系共重合体を含有する熱可塑性樹脂の具体例は(イ)層と同様であり省略する。但し、(ハ)層を構成する(F)熱可塑性樹脂がポリフェニレンスルフィド樹脂である場合、かつ(B)官能基含有オレフィン系共重合体として(B1)エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体と(B2)酸無水物基を含有するオレフィン系共重合体との少なくとも2種の官能基含有オレフィン系共重合体を併用することはより高い靱性を得る意味で特に好ましい。その際(B1)と(B2)の重量%は(B1):(B2)=1〜99:99〜1(合計100重量%)、さらには(B1):(B2)=30〜70:70〜30(合計100重量%)であることがより好ましい。
【0087】
更に(H)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステルを含有しないエラストマーの配合は、靱性と流動性のバランスを取る観点から有効である。かかる(H)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステルの具体例は(イ)層と同様であり省略する。
【0088】
(ハ)層を構成する導電性熱可塑性樹脂組成物中において、導電性フィラーまたは導電性ポリマー樹脂を除く樹脂成分中における各成分の配合割合は、(F)熱可塑性樹脂40〜98重量%、(G)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体重量60〜2重量%、(H)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基を含有しないエラストマー58〜0重量%の範囲が好ましく選択される。
【0089】
次に(I)導電性フィラーついて説明する。本発明に用いうる導電性フィラーは表面積(BET法)500m 2 /g以上のカーボンブラックである。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
更に800m2 /g以上がより好ましい。またDBP給油量は50ml/100g以上、特に100ml/100g以上が好ましい。また灰分は0.5%以下、特に0.3%以下が好ましい。
【0096】
かかるカーボン粉末はチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。また溶融混練作業性を向上させるために造粒されたものを用いることも可能である。
【0097】
中空体の最内層または最外層は、しばしば表面の平滑性が求められる。かかる観点から、本発明で用いられる導電性フィラーは、高いアスペクト比を有する繊維状フィラーよりも、粉状、粒状、板状、鱗片状、或いは樹脂組成物中の長さ/直径比が200以下の繊維状のいずれかの形態であることが好ましい。
【0098】
【0099】
【0100】
本発明で用いられる導電性フィラーの含有量は、用いる導電性フィラーの種類により異なるため、一概に規定はできないが、導電性と流動性、機械的強度などとのバランスの点から、樹脂組成物100重量部に対し、1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部の範囲が好ましく選択される。
【0101】
またかかる導電樹脂組成物は、十分な帯電防止性能を得る意味で、その体積固有抵抗が1010Ω・cm以下であることが好ましい。但し上記導電性フィラー、導電性ポリマーの配合は一般に強度、流動性の悪化を招きやすい。そのため目標とする導電レベルが得られれば、上記導電性フィラー、導電性ポリマーの配合量はできるだけ少ない方が望ましい。目標とする導電レベルは用途によって異なるが、通常体積固有抵抗が100Ω・cmを越え、1010Ω・cm以下の範囲である。
【0102】
さらに本発明で用いる各層を形成する熱可塑性樹脂組成物には、目的、用途に応じ、本発明の範囲を損なわない範囲
で、繊維状および/または非繊維状充填材を配合しても良い。かかる繊維状および/または非繊維状充填材の具体例としては、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素およびシリカなどの非繊維状充填剤が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら繊維状および/または非繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
【0103】
かかる繊維状および/または非繊維状充填材を用いる場合、その配合量は通常全組成物に対し、5〜80wt%の範囲である。
【0104】
さらに、本発明で用いる各層を形成する熱可塑性樹脂組成物には、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
【0105】
本発明の各樹脂組成物の調製方法は特に制限はないが、原料の混合物を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロー ルなど通常公知の溶融混合機に供給して融点より10〜50℃高い温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。原料の混合順序にも特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分を用いる場合には、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形加工前に添加して成形に供することももちろん可能である。
【0106】
【0107】
次に、本発明の多層中空成形品の製造方法の1例を多層管状成形体を例にして説明するが、もちろん下記に限定されるものではない。即ち、層の数もしくは材料の数の押出機より押し出された溶融樹脂を、一つの多層チューブ用ダイスに導入し、ダイス内もしくはダイスを出た直後に接着せしめることにより、多層チューブを製造することができる。また、一旦単層チューブを製造し、その内側あるいは外側に他の層を積層し、多層チューブを製造する方法によってもよい。
【0108】
なお、三層以上の多層構成からなる多層チューブを製造する場合には、押出機を適宜に増設してそれぞれの押出機を共押出ダイに接続し、多層状のパリソンを押出すことにより得られる。
【0109】
また本発明の多層中空成形体は、十分な耐熱水性、耐薬品性および特にチューブの場合の柔軟性を得る観点から、その全厚みは0.2mm以上3mm以下の範囲が好ましく選択されるが、その場合十分な導電性を有し、且つ柔軟性等を損なわないためには、導電性を有する層の厚みが全厚みの1%以上50%以下、特に3%以上20%以下であることが好ましい。
【0110】
このようにして得られた本発明の多層中空成形品は、耐熱性、耐熱水性、耐薬品性、靱性および成形品外観に優れると共に、特にPPS樹脂組成物層と熱可塑性樹脂層との密着強さが強固で優れかつ帯電防止性にも優れており、ボトル、タンクおよびダクトなどのブロー成形品、パイプ、チューブなどの押出成形品として、自動車部品、電気・電子部品、および薬品用途に有効であるが、特に本発明の多層管状成形体は、上記特性を十分に発揮される燃料チューブ用途、特に自動車などの内燃機関用途に好ましく適用される。
【0111】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0112】
また、以下の実施例における体積固有抵抗、密着強さおよびアルコールガソリン透過性、キンク性の評価は、次の方法により行った。
【0113】
[体積固有抵抗]導電性樹脂組成物ペレットを用い、樹脂温度=樹脂融点+40〜50℃、金型温度70〜150℃の条件下、厚み0.3cm、直径100mmの成形体を射出成形にて成形し、これをサンプルとした。測定には、タケダ理研工業(株)製 TR6877 Computing Digital Multimeterをもちいた。
【0114】
[接着強度]チューブを幅10mmの短冊状に切削し、隣接層をお互いに180度方向に引張ることにより、単位長さ当りの密着強度を測定した。
【0115】
[アルコールガソリン透過性]チューブを30cmにカットしたチューブの一端を密栓し、内部に市販レギュラーガソリンとメチルアルコールを85対15(重量比)に混合したアルコールガソリン混合物を入れ、残りの端部も密栓した。その後、全体の重量を測定し、試験チューブを40℃の防爆型オーブンにいれ、重量変化によりアルコールガソリン透過性を評価した。
【0116】
[キンク性]チューブを半径Rmmの円筒に巻き付け、その際チューブが折れず、かつ扁平したチューブの短径が元の50%以上である、最小円筒半径Rをもって評価した。最小円筒半径Rが小さいほどチューブとしての柔軟性に優れていることを示す。
【0117】
[参考例1(PPS樹脂の重合)]
攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、酢酸ナトリウム0.205kg(2.5モル)およびN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略す)5kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.719kg(25.3モル)ならびにNMP3.7kgを加えて、窒素下に密閉し、270℃まで昇温後、270℃で2.5時間反応した。冷却後、反応生成物を温水で5回洗浄しこれを80℃で24時間減圧乾燥してPPS(P−1)を2.45kg得た。
【0118】
上記と同様にして重合を行い、反応生成物を温水で5回洗浄し次に100℃に加熱されNMP10kg中に投入して、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、さらに熱湯で数回洗浄した。これを90℃に加熱されたpH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥してPPS(P−2)を得た。このPPSの数平均分子量は9200、全灰分量は0.07重量%であった。
【0119】
[実施例及び比較例で用いた配合材]
(B)官能基を含有するオレフィン系共重合体
B−1:α−オレフィンおよびα,βー不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とするオレフィン系共重合体 エチレン/グリシジルメタクリレ−ト=88/12(重量%)共重合体
B−2:エチレン/グリシジルメタクリレ−ト(E/GMA)=85/15(重量%)を主骨格とし、アクリロニトリル/スチレン(AS)=30/70(重量%)をグラフト共重合した重合体であって、(E/GMA)/(AS)=70/30(重量%)共重合体
B−3:無水マレイン酸(0.5wt%)変性エチレンプロピレンラバー
B−4:無水マレイン酸(0.5wt%)グラフト変性エチレン−ブテン共重合体
(C)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基を含有しないエラストマー
C−1:エチレン/ブテン−1=82/18(重量%)共重合体
C−2:エチレン/プロピレン共重合体
(D)アミド結合、エステル結合、ウレタン結合から選ばれる少なくとも1種の結合様式で結合された繰り返し単位を主構成単位とする熱可塑性樹脂
D−1:ナイロン11(東レ(株)“リルサン”BESN O TL)
D−2:ナイロン12(東レ(株)“リルサン”AESN O TL)
D−3:ナイロン6(東レ(株)“アミラン”CM1046X04)
D−4:ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)PBT 1400S)
D−5:ポリウレタン樹脂(“エラストラン”E598PNAT)
D−6:ナイロン11(東レ(株)“リルサン”BESN O P20)
(E)アルコキシシラン化合物
E−1:β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
(ロ)を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂
ロ−1:ナイロン11(東レ(株)“リルサン”BESN BK P20TL)
ロ−2:ナイロン12(東レ(株)“リルサン”AESN BK P20TL)、
ロ−3:ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)PBT 1404X04)
ロ−4:ポリウレタン樹脂(“エラストラン”E598PNAT)
ロ−5:ポリオレフィン樹脂(三井石油化学(株)“ハイゼックス”3000B)
ロ−6:ナイロン6(東レ(株)“アミラン”CM1056)
(I)導電性フィラー及び/又は導電性ポリマー
I−1:カーボンブラック(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株) EC600JD、DBP吸油量495ml/100g、BET法表面積1270m2 /g、平均粒径30nm、灰分0.2%
I−2:カーボンブラック(三菱化成工業(株)三菱導電性カーボンッブラック#3050、DBP吸油量180ml/100g、BET法表面積75m2 /g、灰分0.2%
[参考例2(イ層組成物の調製)]
表1に示す各配合材料を表1に示す割合でドライブレンドし、タンブラーにて2分間予備混合した後、シリンダー温度300〜320℃に設定した単軸押出機(スクリュー:ダルメージ)で溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化し、120℃で1晩乾燥した。
【0120】
[参考例3(ハ層組成物の調製)]
表2に示す各配合材料を表2に示す割合でドライブレンドし、タンブラーにて2分間予備混合した後、シリンダー温度を各熱可塑性樹脂の融点より30〜50℃高い温度に設定した2軸押出機で溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化し、80〜120℃で1晩乾燥した。かかるペレットを用い、体積固有抵抗測定用の成形体を成形した。
【0121】
実施例1〜12、比較例4
上記でペレット化した樹脂組成物を用い、3層チューブを成形した。
【0122】
成形装置としては、3台の押出機を有し、この3台の押出機から吐出された樹脂をアダプターによって集めてチューブ状に成形するダイス、チューブを冷却し寸法制御するサイジングダイ、および引取機からなるものを使用した。
【0123】
得られた3層チューブは、外径:8mm、内径:6mmで、外層厚み:0.75mm、中間層厚み0.15mm、内層厚み:0.1mmであった。この3層チューブの評価結果を表3〜4に示す。
【0124】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
比較例4と実施例の比較から判るように、本発明の構成により導電性及び耐アルコールガソリン透過性に優れたチューブ成形体が得られる。比較例4ではPPS組成物層を有していない。この場合耐アルコールガソリン透過性に劣るチューブとなる。
【0125】
実施例1と2の比較から判るように(C)官能基を含有しない熱可塑性樹脂の配合は、キンク性の向上に有効であるとともに、層間接着性、耐アルコールガソリン透過性の点でも比較的優れる。
【0126】
【0127】
実施例1、4の中間層と内層の層間接着強度から判るように、隣接層間に同種のナイロンを含有する方がより優れた接着性が得られる。
【0128】
また実施例1、8から判るように、(イ)層中の(B)、(C)成分も層間接着性の向上に寄与している。
【0129】
実施例1、6から判るように、(ロ)層を構成する樹脂としてポリアミドを用いた場合、ナイロン6よりも、N11、N12の方が、キンク性、層間接着性、耐アルコールガソリン透過性の点でより有効である。
【0130】
実施例1と5の比較から判るように、より優れてキンク性、層間接着性を得る意味で、脱イオン処理を施されたPPSを用いることは有効である。
【0131】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の多層中空成形体は、耐熱性、耐熱水性、耐薬品性、耐アルコールガソリン透過性、チューブ内面平滑性、靱性、層間の接着性などが均衡して優れ、かつ導電性を有する高機能性能を有しており、特に自動車などの内燃機関用燃料チューブに好ましく適用される。
Claims (15)
- 少なくとも3層以上の熱可塑性樹脂層から構成される多層中空成形体であって、
1層は(イ)ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる中間層であり、
中間層の外側の1層は(ロ)ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル樹脂、および熱可塑性ポリウレタン樹脂から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる層であり、
中間層の内側の1層は(ハ)導電性フィラーを必須成分として含有し、体積固有抵抗が1010Ω・cm以下である導電性樹脂組成物から構成され、
中間層(イ層)のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、その外側の層と同種の(ロ)熱可塑性樹脂を含有し、
かつ(ハ)層を構成する導電性樹脂組成物が、(F)ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂および飽和ポリエステル樹脂から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂40〜98重量%、(G)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体60〜2重量%、(H)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基を含有しないエラストマー58〜0重量%を配合した樹脂組成物100重量部に対し表面積(BET法)500m2/g以上のカーボンブラックである(I)導電性フィラーを1〜100重量部配合した導電性熱可塑性樹脂組成物であることを特徴とする多層中空成形体。 - (ロ)層を構成するポリアミド樹脂が、アミド基1個当たりの炭素数が8〜15の範囲である構造単位からなるポリアミド樹脂である請求項1記載の多層中空成形体。
- (イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂を100重量部に対し、(B)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体を1〜200重量部含有するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物である請求項1または2記載の多層中空成形体。
- (イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物中の(B)官能基含有オレフィン系共重合体が、α−オレフィンおよびα,βー不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とする(B1)エポキシ基含有オレフィン系共重合体である請求項3記載の多層中空成形体。
- (イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、(B)官能基を含有するオレフィン系共重合体として(B1)エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体と(B2)酸無水物基を含有するオレフィン系共重合体との少なくとも2種の官能基含有オレフィン系共重合体を必須成分として含有するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、(B1)と(B2)の重量%が(B1):(B2)=1〜99:99〜1(合計100重量%)である請求項3〜5いずれか記載の多層中空成形体。
- (イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、更に(C)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、およびカルボン酸エステル基を含有しないエラストマーを含有するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し(C)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基を含有しないエラストマーを1〜200重量部含有し、かつ(B)官能基を含有するオレフィン系共重合体と(C)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基を含有しないエラストマーの合計が(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、200重量部以下である請求項3〜6いずれか記載の多層中空成形体。
- (イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、更に(D)アミド結合、エステル結合、ウレタン結合から選ばれる少なくとも1種の結合様式で結合された繰り返し単位を主構成単位とする熱可塑性樹脂を、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、5〜200重量部含有することを特徴とする請求項3〜7いずれか記載の多層中空成形体。
- (D)アミド結合、エステル結合、ウレタン結合から選ばれる少なくとも1種の結合様式で結合された繰り返し単位を主構成単位とする熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂である請求項8記載の多層中空成形体。
- (イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に用いる(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、脱イオン化処理されたものであることを特徴とする請求項1〜9いずれか記載の多層中空成形体。
- (ハ)層を構成する(F)熱可塑性樹脂がポリフェニレンスルフィド樹脂であり、かつ(B)官能基を含有するオレフィン系共重合体として(B1)エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体と(B2)酸無水物基を含有するオレフィン系共重合体との少なくとも2種の官能基含有オレフィン系共重合体を必須成分として含有するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、(B1)と(B2)の重量%が(B1):(B2)=1〜99:99〜1(合計100重量%)である請求項1〜10いずれか記載の多層中空成形体。
- (イ)ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる中間層、(ロ)ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル樹脂、および熱可塑性ポリウレタン樹脂から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる最外層、および(ハ)導電性フィラー及び導電性ポリマーを必須成分として含有する導電性樹脂組成物からなる最内層の3層から構成される請求項1〜11いずれか記載の多層中空成形体。
- 多層中空成形体が、共押出成形法により製造された多層管状成形体である請求項1〜12いずれか記載の多層中空成形体。
- 多層中空成形体が、その全厚みが0.2mm以上3mm以下であり、かつ導電性を有する層の厚みが全厚みの1%以上50%以下である請求項1〜13いずれか記載の多層中空成形体。
- 燃料チューブとして用いることを特徴とする請求項1〜14いずれか記載の多層中空成形体。
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