JPH11309795A - 多層中空成形体 - Google Patents

多層中空成形体

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JPH11309795A
JPH11309795A JP11716098A JP11716098A JPH11309795A JP H11309795 A JPH11309795 A JP H11309795A JP 11716098 A JP11716098 A JP 11716098A JP 11716098 A JP11716098 A JP 11716098A JP H11309795 A JPH11309795 A JP H11309795A
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JP11716098A
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English (en)
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Atsushi Ishio
敦 石王
Norio Shimasaki
周夫 嶋▼さき▲
Kazuhiko Kobayashi
和彦 小林
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】バリヤー性、靱性、層間の接着性に優れ、更に
は導電性を有する熱可塑性樹脂製多層中空成形体を提供
する。 【解決手段】少なくとも2層以上の熱可塑性樹脂層から
構成される多層中空成形体であって、熱可塑性樹脂層の
内の少なくとも1層は(イ)ポリフェニレンスルフィド
樹脂を主構成成分とする組成物からなる層であり、熱可
塑性樹脂層の内の少なくとも1層は(ロ)ポリフェニレ
ンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂を主構成成分とす
る熱可塑性樹脂組成物からなる層であり、かつ(ロ)層
と接する(イ)層の表面に接着表面処理がなされてお
り、かつ(イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド
樹脂組成物が、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂と
(B)官能基を含有するオレフィン系共重合体を含有す
るポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であることを特
徴とする多層中空成形体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱性、耐熱水
性、耐薬品性、耐アルコールガソリン透過性、導電性な
どを有し、かつ靱性、層間の接着性に優れた多層中空成
形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】熱可塑性樹脂の中空成形品は、例えば自
動車のエンジンルーム内のダクト類を中心に、ポリアミ
ド系樹脂を使用したブロー成形によって製造する技術
や、チューブ類に飽和ポリエステル系樹脂、ポリアミド
樹脂、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性ポリウレタンを使
用した押出成形によって製造する技術が普及している。
【0003】しかし、従来のポリアミド系樹脂、飽和ポ
リエステル系樹脂、ポリオレフィン樹脂および熱可塑性
ポリウレタン樹脂などの熱可塑性樹脂からなる単層中空
成形品では、耐熱性、耐熱水性、耐薬品性などが不十分
であることから、適用する範囲が限定されてしまうた
め、耐熱性、耐熱水性、耐薬品性などを一層高めた製品
が要求されている。
【0004】特に自動車燃料チューブ用としては、ポリ
アミド樹脂、中でもポリアミド11やポリアミド12な
どの柔軟ポリアミド樹脂が広く用いられているが、ポリ
アミド樹脂を単独で使用した場合、環境汚染問題および
燃費向上から要求されているアルコールガソリンの透過
防止性に対しては十分ではないと言う懸念点が指摘され
その改良が望まれている。
【0005】またブロー中空成形体やチューブ成形体内
を燃料などの非導電性液体が流れる用途においては、成
形体が帯電する場合があり、これを抑制することも同時
に求められている。
【0006】一方、ポリフェニレンスルフィド樹脂(以
下、PPS樹脂と略称する)は、耐熱性、耐熱水性、耐
薬品性、難燃性および電気特性などが優れたエンジニア
リングプラスチックであり、電気・電子部品、自動車部
品などの用途に対し、その需要が高まりつつある。ま
た、最近では、このPPS樹脂の特長を活かした管状成
形体が、特公平2−200415号公報などに開示され
ている。
【0007】かかるPPS樹脂製の中空成形体を用いれ
ば上記耐熱性、耐熱水性、耐薬品性、および透過性の懸
念は解決されると考えられるが、靱性面、特に自動車用
途等ではしばしば要求される低温での靱性が不十分な場
合があり、用途によってはその適用性に限界がある。
【0008】そこで我々は、耐熱性、耐熱水性、耐薬品
性、アルコールガソリン透過性に優れるPPS樹脂層と
靱性に優れる他の熱可塑性樹脂および導電性樹脂組成物
からなる層を積層することにより上記問題点を全て解決
できると考え、検討を開始した。
【0009】PPS樹脂と他の熱可塑性樹脂の積層構造
体はこれまで検討がなされており、例えば特開昭59−
145131号公報にはPPS管状体の表面に他の熱可
塑性樹脂を被覆する方法が開示されている。しかし特開
昭59−145131号公報には単にPPS樹脂製管状
体の表面に他の樹脂を積層することにより、PPSの特
性が活かされ、かつ強度、コスト的に優れた管状体が得
られると記載されているに過ぎず、層間接着性、低温靱
性、導電性については何ら配慮されていない。
【0010】また特開平7−299855号公報にはP
PS層を含む多層チューブが開示され、PPS層表面を
コロナ処理にて活性化し層間接着性を改良する方法が開
示されている。しかし、我々の検討では、単にPPS樹
脂のみからなる層にコロナ処理を施し、他樹脂を積層し
たのでは、チューブとしての靱性を発現させることが困
難なばかりでなく、PPS層と他樹脂からなる層の層間
接着がかならずしも十分ではなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述した従来
の多層中空成形品における問題点の改良を課題として検
討した結果、特定の官能基を含有するオレフィン系共重
合体を特定量配合したPPS樹脂組成物の表面に接着表
面処理を施して、PPS以外の熱可塑性樹脂を積層する
ことにより、チューブとしての靱性を発現させることが
可能なばかりでなく、PPS層と他樹脂からなる層の層
間接着も向上することを見出し、本発明に到達した。
【0012】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は下記か
ら構成されるものである。
【0013】1.少なくとも2層以上の熱可塑性樹脂層
から構成される多層中空成形体であって、熱可塑性樹脂
層の内の少なくとも1層は(イ)ポリフェニレンスルフ
ィド樹脂を主構成成分とする組成物からなる層であり、
熱可塑性樹脂層の内の少なくとも1層は(ロ)ポリフェ
ニレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂を主構成成分
とする熱可塑性樹脂組成物からなる層であり、かつ
(ロ)層と接する(イ)層の表面に接着表面処理がなさ
れており、かつ(イ)層を構成するポリフェニレンスル
フィド樹脂組成物が、(A)ポリフェニレンスルフィド
樹脂100重量部に対し、(B)エポキシ基、酸無水物
基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステルか
ら選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するオレフィ
ン系共重合体を1〜200重量部含有するポリフェニレ
ンスルフィド樹脂組成物であることを特徴とする多層中
空成形体、 2.(ロ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂
以外の熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリ
エステル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、およびポリ
オレフィン樹脂から選ばれた少なくとも1種であること
を特徴とする上記1.記載の多層中空成形体、 3.(ロ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂
以外の熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂である上記1ま
たは2記載の多層中空成形体、 4.(イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂
組成物中の(B)官能基含有オレフィン系共重合体が、
α−オレフィンおよびα,βー不飽和酸のグリシジルエ
ステルを主構成成分とする(B)エポキシ基含有オレフ
ィン系共重合体である上記1〜3のいずれか記載の多層
中空成形体、 5.(イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂
組成物中の(B)官能基含有共重合体が、α−オレフィ
ン(1)とα,βー不飽和酸のグリシジルエステル
(2)と更に下記一般式で示される単量体(3)を必須
成分とするオレフィン系共重合体である上記1〜4のい
ずれか記載の多層中空成形体、
【化2】 (ここで、R1は水素または低級アルキル基を示し、X
は−COOR2基、−CN基あるいは芳香族基から選ば
れた基。またR2は炭素数1〜10のアルキル基を示
す) 6.(イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド樹脂
組成物が、更に(C)エポキシ基、酸無水物基、カルボ
キシル基及びその塩、カルボン酸エステル基を含有しな
いエラストマーを含有するポリフェニレンスルフィド樹
脂組成物であって、(A)ポリフェニレンスルフィド樹
脂100重量部に対し(C)エポキシ基、酸無水物基、
カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基を含
有しないエラストマーを1〜200重量部含有し、かつ
(B)官能基を含有する共重合体と(C)エポキシ基、
酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エ
ステル基を含有しないエラストマーの合計が(A)ポリ
フェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、200
重量部以下である上記1〜5いずれか記載の多層中空成
形体、 7.(ロ)層と接する(イ)層の表面になされる接着表
面処理が、紫外線照射処理、コロナ放電処理、サンディ
ング処理、プラズマ放電処理などの物理処理、或いは有
機溶剤や酸による化学処理から選ばれる少なくとも1種
の処理である上記1〜6いずれか記載の多層中空成形
体、 8.(ロ)層と接する(イ)層の表面になされる接着表
面処理が、コロナ放電処理である上記1〜7のいずれか
記載の多層中空成形体、 9.多層中空成形体を構成する各層の内の少なくとも1
層が、導電性熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴と
する上記1〜8のいずれか記載の導電性多層中空成形
体、 10.導電層が(D)導電性フィラーまたは導電性ポリ
マーを配合してなる導電性熱可塑性樹脂組成物からなる
ことを特徴とする9記載の導電性多層中空成形体、 11.(イ)ポリフェニレンスルフィド樹脂を主構成成
分とする組成物からなる層が導電層であることを特徴と
する上記9〜10いずれか記載の導電性多層中空成形
体、 12.導電層の抵抗値が107Ω/m以下である上記9
〜11いずれか記載の導電性多層中空成形体、 13.自動車燃料チューブとして用いることを特徴とす
る上記1〜12いずれか記載の多層中空成形体、 14.自動車エンジン冷却液チューブまたはパイプとし
て用いることを特徴とする上記1〜13いずれか記載の
多層中空成形体である。
【0014】
【発明の実施の形態】まず(ロ)層を構成するPPS樹
脂以外の熱可塑性樹脂を主構成成分とする熱可塑性樹脂
組成物について説明する。
【0015】(ロ)層を構成するPPS樹脂以外の熱可
塑性樹脂としては特に制限は無いが、その具体例として
は、飽和ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、四フッ
化ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリア
ミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポ
リカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリ
エーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポ
リエーテルエーテルケトン樹脂、熱可塑性ポリウレタン
樹脂、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、ポリアミドエ
ラストマ、ポリエステルエラストマなどが挙げられ、こ
れらは2種以上の混合物として使用しても良い。中で
も、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可
塑性ポリウレタン樹脂、およびポリオレフィン樹脂がよ
り好ましく用いられる。
【0016】ここで、ポリアミド樹脂とは、アミノ酸、
ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成
成分の原料とするポリアミドである。その主要構成成分
原料の代表例としては、6ーアミノカプロン酸、11ー
アミノウンデカン酸、12ーアミノドデカン酸、パラア
ミノメチル安息香酸などのアミノ酸、εーカプロラクタ
ム、ωーラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレ
ンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ヘキ
サメレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカ
メチレンジアミン、2,2,4ー/2,4,4ートリメ
チルヘキサメチレンジアミン、5ーメチルノナメチレン
ジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシリレンジア
ミン、1,3ービス(アミノメチル)シクロヘキサン、
1,4ービス(アミノメチル)シクロヘキサン、1ーア
ミノー3ーアミノメチルー3,5,5ートリメチルシク
ロヘキサン、ビス(4ーアミノシクロヘキシル)メタ
ン、ビス(3ーメチルー4ーアミノシクロヘキシル)メ
タン、2,2ービス(4ーアミノシクロヘキシル)プロ
パン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチ
ルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミ
ン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セ
バシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル
酸、2ークロロテレフタル酸、2ーメチルテレフタル
酸、5ーメチルイソフタル酸、5ーナトリウムスルホイ
ソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロ
イソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボ
ン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から
誘導されるポリアミドホモポリマまたはコポリマを各々
単独または混合物の形で用いることができる。
【0017】本発明において、とくに有用なポリアミド
樹脂としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリ
ヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテト
ラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメ
チレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチ
レンドデカミド(ナイロン612)、ポリドデカンアミ
ド(ナイロン12)、ポリウンデカンアミド(ナイロン
11)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロ
ン6T)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD
6)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げら
れる。
【0018】これらポリアミド樹脂の重合度にはとくに
制限がなく、98%濃硫酸溶液(ポリマー1g,濃硫酸
100ml)中、25℃で測定した相対粘度が、1.5
〜7.0の範囲、特に2.0〜6.5の範囲のものが好
ましい例として例示でき、或いはメタクレゾール中(ポ
リマー濃度0.5重量%)、25℃で測定した相対粘度
が1.0〜7.0の範囲、特に1.5〜5.0の範囲の
ポリアミド樹脂が例示できる。
【0019】熱可塑性ポリエステル樹脂としては、テレ
フタル酸などのジカルボン酸と脂肪族ジオールとから得
られるポリエステルが挙げられる。テレフタル酸以外の
ジカルボン酸としては、アゼライン酸、セバシン酸、ア
ジピン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、など
の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル
酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン
酸、またはシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジ
カルボン酸などが挙げられ、これらは単独であっても混
合物であっても良い。脂肪族ジオールとしては、エチレ
ングリコール、プロピレングリコール、1,4ーブタン
ジオール、トリメチレングリコール、1,4−シクロヘ
キサンジメタノールおよびヘキサメチレングリコールな
どが挙げられる。
【0020】本発明で使用する好ましい熱可塑性ポリエ
ステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポ
リプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレ
ート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロ
ヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキ
シレンジメチレンテレフタレート−エチレンテレフタレ
ート共重合体、ポリエチレンナフタレートなどが挙げら
れるが、中でも適度な機械的強度を有するポリブチレン
テレフタレートまたはテレフタル酸を60モル%以上、
好ましくは70モル%以上とドデカンジカルボン酸およ
び/またはイソフタル酸を含有するジカルボン酸成分と
1,4ーブタンジオール成分からなる共重合ポリエステ
ルが特に好ましく使用される。
【0021】これら熱可塑性ポリエステル樹脂の重合度
には特に制限無いが、例えば好ましく使用されるポリブ
チレンテレフタレート(以下PBT樹脂と略称する)お
よび共重合ポリエステルの場合、その重合度は、0.5
%オルトクロロフェノール溶液を25℃で測定した相対
粘度が0.5〜2.5の範囲、特に0.8〜2.0の範
囲のものが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレー
トの場合、0.5%オルトクロロフェノール溶液を25
℃で測定した極限粘度が0.54〜1.5の範囲、特に
0.6〜1.2の範囲のものが好ましい。
【0022】熱可塑性ポリウレタン樹脂とは、ポリイソ
シアネートとジオールからなる鎖状重合体であり、ポリ
イソシアネートの具体例としては、2,4−トリレンジ
イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メ
タキシレンジイソシアネート、および4,4’−ジフェ
ニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。ジオー
ルにはポリエステル型とポリエーテル型があり、前者の
具体例としては、フタル酸、アジピン酸、二量化リノイ
ン酸、マレイン酸などの有機酸と、エチレン、プロピレ
ン、ブチレン、ジエチレンなどのグリコールなどとから
なるものが、後者の具体例としては、ポリオキシプロピ
レングリコール、ポリ(オキシプロピレン)ポリ(オキ
シメチレン)グリコール、ポリ(オキシブチレン)グリ
コール、およびポリ(オキシテトラメチレン)グリコー
ルなどが、それぞれ一般的に用いられる。
【0023】これらポリ熱可塑性ポリウレタンの重合度
には特に制限はないが、通常220℃、せん断速度10
/secにおける溶融粘度が1000〜100000ポ
イズのものが用いられる。
【0024】ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリ
プロピレン、およびポリメチルペンテンなどが挙げられ
る。
【0025】かかる(ロ)層を構成するPPS樹脂以外
の熱可塑性樹脂あるいはPPS樹脂以外の熱可塑性樹脂
を主構成成分とする熱可塑性樹脂組成物が、ヤング率1
8000kg/cm2 以下、更に好ましくは15000
kg/cm2 以下の熱可塑性樹脂あるいは熱可塑性樹脂
組成物であることは、チューブ成形体の耐キンク性の点
で好ましい。
【0026】また(ロ)層を構成するPPS樹脂以外の
熱可塑性樹脂組成物は、2種以上を併用してもよく、ま
た(イ)層の説明で述べる官能基含有オレフィン系共重
合体あるいは官能基を含有しないエラストマー類を含ん
でいても良い。
【0027】(ロ)層においてPPS樹脂以外の熱可塑
性樹脂を主構成成分とする熱可塑性樹脂組成物は基本的
にはPPS樹脂を含まないが、用途に応じて20重量%
未満の少量であれば、PPS樹脂を含んでも良い。
【0028】次に(イ)層を構成する(A)PPS樹脂
組成物について説明する。
【0029】(イ)を構成する(A)PPS樹脂とは、
下記構造式で示される繰り返し単位を
【化3】 70モル%以上、より好ましくは90モル%以上を含む
重合体であり、上記繰り返し単位が70モル%未満で
は、耐熱性が損なわれるので好ましくない。またPPS
樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満を、下記の構
造式を有する繰り返し単位等で構成することが可能であ
る。
【0030】
【化4】 本発明で用いられるPPS樹脂の溶融粘度は、溶融混練
が可能であれば特に制限はないが、通常50〜20,0
00ポイズ(320℃、剪断速度1,000sec-1)
のものが使用され、100〜5,000ポイズの範囲が
より好ましい。かかるPPS樹脂は通常公知の方法、即
ち特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子
量の小さな重合体を得る方法、あるいは特公昭52−1
2240号公報や特開昭61−7332号公報に記載さ
れる比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによっ
て製造できる。本発明において上記の様に得られたPP
S樹脂を空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素など
の不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機
溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミ
ン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物な
どの官能基含有化合物による活性化など種々の処理を施
した上で使用することももちろん可能である。 PPS
樹脂の加熱による架橋/高分子量化する場合の具体的方
法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下ある
いは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガス
との混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度にお
いて希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法が
例示できる。加熱処理温度は通常、170〜280℃が
選択され、好ましくは200〜270℃であり、時間は
通常0.5〜100時間が選択され、好ましくは2〜5
0時間であるが、この加熱処理温度および処理時間の両
者をコントロールすることにより目標とする粘度レベル
を得ることができる。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥
機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であって
もよいが、効率よくしかもより均一に処理するためには
回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好
ましい。
【0031】PPS樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気
下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法として
は、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、
加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜2
70℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2
〜50時間加熱処理する方法が例示できる。加熱処理の
装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼
付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均
一に処理するためには回転式あるいは撹拌翼付の加熱装
置を用いるのがより好ましい。
【0032】本発明で用いられるPPS樹脂は脱イオン
処理を施されたPPS樹脂であることが好ましい。かか
る脱イオン処理の具体的方法としては酸水溶液洗浄処
理、熱水洗浄処理および有機溶剤洗浄処理などが例示で
き、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用い
ても良い。
【0033】PPS樹脂を有機溶媒で洗浄する場合の具
体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、
洗浄に用いる有機溶媒としては、PPS樹脂を分解する
作用などを有しないものであれば特に制限はないが、例
えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジ
メチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルス
ルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・ス
ルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチ
ルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチ
ルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン
などのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、
トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタ
ン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲ
ン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブ
タノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピ
レングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレ
ングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベ
ンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶
媒などがあげられる。これらの有機溶媒のなかでN−メ
チルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、ク
ロロホルムなどの使用が好ましい。また、これらの有機
溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPP
S樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適
宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でP
PS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限は
なく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。
洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向がある
が、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得ら
れる。また有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は残留し
ている有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗
浄することが好ましい。
【0034】PPS樹脂を熱水で処理する場合の具体的
方法としては以下の方法が例示できる。すなわち熱水洗
浄によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現
するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であ
ることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の
水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧で或いは圧力容
器内で加熱、撹拌することにより行われる。PPS樹脂
と水との割合は、水の多いほうが好ましいが、通常、水
1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選
択される。
【0035】PPS樹脂を酸処理する場合の具体的方法
としては以下の方法が例示できる。すなわち、酸または
酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があ
り、必要により適宜撹拌または加熱することも可能であ
る。用いられる酸はPPSを分解する作用を有しないも
のであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン
酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢
酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン
酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカ
ルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン
酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル
酸などのジカルボン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪
酸などの無機酸性化合物などがあげられる。中でも酢
酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施された
PPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するた
め、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また
洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい
化学的変性の効果を損なわない意味で蒸留水、脱イオン
水であることが好ましい。
【0036】本発明の(イ)層を構成するPPS樹脂を
主構成成分として含有する熱可塑性樹脂組成物におい
て、(B)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及
びその塩、カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも
1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体を配合す
ることは、優れた層間接着性ともに、靱性、チューブと
しての柔軟性などを得る意味において必須である。
【0037】エポキシ基含有ポリオレフィン系重合体と
しては、側鎖にグリシジルエステル、グリシジルエーテ
ル、グリシジルジアミンなどを有するオレフィン系共重
合体や、二重結合を有するオレフィン系共重合体の二重
結合部分を、エポキシ酸化したものなどが挙げられ、中
でもエポキシ基を有するモノマーが共重合されたオレフ
ィン系共重合体が好適であり、特にα−オレフィンおよ
びα,βー不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分
とするオレフィン系共重合体が好適に用いられる。
【0038】かかるα−オレフィンの具体例としては、
エチレン、プロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテ
ン−1、ヘキセン1、デセン−1、オクテン−1などが
挙げられ、中でもエチレンが好ましく用いられる。また
これらは2種以上を同時に使用することもできる。
【0039】一方、α,βー不飽和酸のグリシジルエス
テルとは、一般式
【化5】 (ここでRは水素原子または低級アルキル基を示す)で
示される化合物であり、具体的にはアクリル酸グリシジ
ル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル
などが挙げられ、中でもメタクリル酸グリシジルが好ま
しく用いられる。
【0040】かかるα−オレフィンおよびα,βー不飽
和酸のグリシジルエステルを主構成成分とするオレフィ
ン系共重合体は、上記α−オレフィンとα,βー不飽和
酸のグリシジルエステルとのランダム、交互、ブロッ
ク、グラフト共重合体いずれの共重合様式であっても良
い。
【0041】α−オレフィンおよびα,βー不飽和酸の
グリシジルエステルを主構成成分とするオレフィン系共
重合体におけるα,βー不飽和酸のグリシジルエステル
の共重合量は、目的とする効果への影響、重合性、ゲル
化、耐熱性、流動性、強度への影響などの観点から、
0.5〜40重量%、特に3〜30重量%が好ましい。
本発明においてエポキシ基含有オレフィン系共重合体と
して、α−オレフィン(1)とα,βー不飽和酸のグリ
シジルエステル(2)に加え、更に下記一般式で示され
る単量体(3)を必須成分とするエポキシ基含有オレフ
ィン系共重合体もまた好適に用いられる。
【0042】
【化6】 (ここで、R1 は水素または低級アルキル基を示し、X
は−COOR2 基、−CN基あるいは芳香族基から選ば
れた1種また2種以上の基。またR2 は炭素数1〜10
のアルキル基を示す)
【0043】かかるオレフィン系共重合体に用いられる
α−オレフィン(1)とα,βー不飽和酸のグリシジル
エステル(2)の詳細は(B)オレフィン系共重合体と
同様である。
【0044】一方単量体(3)の具体例としては、アク
リル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロ
ピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチ
ル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、メ
タクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸
n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル
酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸
イソブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸アルキルエ
ステル、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチ
レン、芳香環がアルキル基で置換されたスチレン、アク
リロニトリル−スチレン共重合体、などが挙げられ、こ
れらは2種以上を同時に使用することもできる。
【0045】かかるオレフィン系共重合体は、α−オレ
フィン(1)とα,βー不飽和酸のグリシジルエステル
(2)と単量体(3)の共重合様式はランダム、交互、
ブロック、グラフト共重合体のいずれの共重合様式であ
っても良く、複数の共重合様式が混合したものであって
もよい。例えばα−オレフィン(1)とα,βー不飽和
酸のグリシジルエステル(2)のランダム共重合体に対
し単量体(3)がグラフト共重合したような、2種以上
の共重合様式が組み合わされた共重合体であっても良
い。
【0046】オレフィン系共重合体の共重合割合は、目
的とする効果への影響、重合性、ゲル化、耐熱性、流動
性、強度への影響などの観点から、α−オレフィン
(1)/α,βー不飽和酸のグリシジルエステル(2)
=60〜99重量%/40〜1重量%の範囲が好ましく
選択される。また単量体(3)の共重合割合は、α−オ
レフィン(1)とα,βー不飽和酸のグリシジルエステ
ル(2)の合計量95〜40重量%に対し、単量体
(3)5〜60重量%の範囲が好ましく選択される。
【0047】また本発明で好適に用いられる カルボキ
シル基及びその塩、カルボン酸エステル基、酸無水物基
を含有するポリオレフィン系重合体としては、ポリエチ
レン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−プロ
ピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン
−ヘキセン共重合体、ポリブテン、エチレン−プロピレ
ン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、
スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(S
BS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重
合体(SIS)、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリ
ロニトリル共重合体、ポリイソプレン、ブテン−イソプ
レン共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレ
ンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン
・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)
などのポリオレフィン系樹脂にマレイン酸無水物、琥珀
酸無水物、フマル酸無水物、アクリル酸、メタクリル
酸、酢酸ビニル及びそのNa、Zn、K、Ca、Mgな
どの塩、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アク
リル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピ
ル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタク
リル酸ブチルなどが共重合されたオレフィン系共重合体
などが挙げられ、より具体的にはエチレン−アクリル酸
メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合
体、エチレン−アクリル酸n−プロピル共重合体、エチ
レン−アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン−ア
クリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸t
−ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル共
重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチ
レン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタク
リル酸n−プロピル共重合体、エチレン−メタクリル酸
イソプロピル共重合体、エチレン−メタクリル酸n−ブ
チル共重合体、エチレン−メタクリル酸t−ブチル共重
合体、エチレン−メタクリル酸イソブチル共重合体など
のオレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、
アクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、メタア
クリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、アクリル
酸プロピル−アクリロニトリル共重合体、メタアクリル
酸プロピル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸ブ
チル−アクリロニトリル共重合体、メタアクリル酸ブチ
ル−アクリロニトリル共重合体などの、(メタ)アクリ
ル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−
(メタ)アクリル酸共重合体およびそのNa、Zn、
K、Ca、Mgなどの金属塩、エチレン−マレイン酸無
水物共重合体、エチレン−ブテン−マレイン酸無水物共
重合体、エチレン−ブテンーマレイン酸無水物共重合
体、エチレン−マレイン酸無水物共重合体、プロピレン
−マレイン酸無水物共重合体あるいは無水マレイン酸変
性SBS、SIS、SEBS、SEPS、エチレン−ア
クリル酸エチル共重合体などが例示できる。
【0048】上記(B)エポキシ基、酸無水物基、カル
ボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基から選ば
れる少なくとも1種の官能基を含有する熱可塑性樹脂の
配合量は、透過防止性、柔軟性、耐衝撃性、チューブ成
形性などの点から、(A)PPS樹脂100重量部に対
し、1〜200重量部の範囲が選択され、より好ましく
は1〜70重量部が選択されるが、バリヤー性と接着性
のバランスの観点から、1〜30重量部の範囲が最も好
ましく選択される。
【0049】また上記(B)エポキシ基、酸無水物基、
カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基から
選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する熱可塑性樹
脂体はその2種以上を併用しても良い。
【0050】更に(C)エポキシ基、酸無水物基、カル
ボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基を含有し
ないエラストマーを用いること、特に上記(B)エポキ
シ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボ
ン酸エステル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を
含有する熱可塑性樹脂と併用して用いることは、優れた
平滑性を有する管状体を得る上で、またより優れた機械
的強度、中空成形体成形性を得る上で有効である。
【0051】かかる、(C)エポキシ基、酸無水物基、
カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基を含
有しないエラストマーとしては例えば、ポリオレフィン
系エラストマ、ジエン系エラストマ、シリコーンゴム、
フッ素ゴム、ウレタンゴム、各種熱可塑性エラストマー
などが挙げられる。ポリオレフィン系エラストマの具体
例としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン
−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリ
ブテン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体などが
挙げられる。ジエン系エラストマの具体例としては、ス
チレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、ブタジ
エン−アクリロニトリル共重合体、ポリイソプレン、ブ
テン−イソプレン共重合体、SBS、SIS、SEB
S、SEPSなどが挙げられる。
【0052】中でもエチレン−プロピレン共重合体、エ
チレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエ
ン共重合体が特に好ましい。
【0053】かかる(C)エポキシ基、酸無水物基、カ
ルボキシル基を含有しないエラストマーは2種以上を併
用して用いても良い。
【0054】(C)エポキシ基、酸無水物基、カルボキ
シル基及びその塩、カルボン酸エステル基を含有しない
エラストマーを用いる場合、その好適な配合量は、アル
コールガソリン透過防止性、柔軟性、耐衝撃性、チュー
ブ成形性の点から、(A)PPS樹脂100重量部に対
し、1〜200重量部の範囲が選択され、より好ましく
は1〜70重量部が選択されるが、バリヤー性と接着性
のバランスの観点から、1〜30重量部の範囲が最も好
ましく選択される。
【0055】また(B)官能基を含有する熱可塑性樹脂
と併用して用いる場合には、特にアルコールガソリン透
過防止性の観点から、(B)官能基を含有する熱可塑性
樹脂と(C)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基
及びその塩、カルボン酸エステル基を含有しないエラス
トマーの合計が(A)PPS樹脂100重量部に対し、
1〜200重量部の範囲が選択され、より好ましくは1
〜70重量部が選択されるが、バリヤー性と接着性のバ
ランスの観点から、1〜30重量部の範囲が最も好まし
く選択される。
【0056】またエポキシ基、アミノ基、イソシアネー
ト基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ば
れた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシラン
の添加は、機械的強度、靱性、層間接着性及び中空体成
形性の向上に有効である。かかる化合物の具体例として
は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ
−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−
(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキ
シシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合
物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−
メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプ
ト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピ
ルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメト
キシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロ
ピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキ
シシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキ
シシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラ
ン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラ
ン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラ
ン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラ
ン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラ
ン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどの
イソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2
−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラ
ン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメト
キシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランな
どのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ヒドロ
キシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロ
ピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシ
ラン化合物などなどが挙げられ、中でもγ−グリシドキ
シプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロ
ピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシ
クロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキ
シ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピ
ルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメト
キシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロ
ピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキ
シシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロ
ピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチ
ル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプ
ロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキ
シシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキ
シシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラ
ン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラ
ン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラ
ン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラ
ン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラ
ン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどの
イソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、が特に好
ましい。
【0057】かかるアルコキシシラン化合物の添加量は
(A)PPS樹脂100重量部に対して、0.05〜5
重量部の範囲が選択され、0.1〜3重量部の範囲がよ
り好ましく選択される。
【0058】更に(イ)層を構成するPPS樹脂を主構
成成分とする熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を損
なわない範囲で、飽和ポリエステル樹脂、ポリスルホン
樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド
樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイ
ミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケ
トン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテル
エーテルケトン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリ
オレフィン樹脂、ABS樹脂、ポリアミドエラストマ、
ポリエステルエラストマなどの他の樹脂を含有しても良
い。
【0059】なお(イ)層においてPPS樹脂を主構成
成分とする熱可塑性樹脂組成物とは、(イ)層を構成す
る熱可塑性樹脂組成物中、PPS樹脂が少なくとも20
重量%以上、好ましくは50重量%以上を占めている熱
可塑性樹脂組成物を示す。
【0060】本発明の好ましい態様の一つは、多層中空
成形体を構成する各層の内の少なくとも1層が、導電性
熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする導電性多
層中空成形体である。
【0061】本発明において(イ)PPS樹脂を主構成
成分とする組成物からなる層が導電層であっても良く、
また(ロ)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂を主構成成分
とする熱可塑性樹脂組成物からなる層が導電層であって
も良く、またその両者が導電層であっても良い。また、
2層以上の(イ)PPS樹脂を主構成成分とする組成物
からなる層を含む多層中空成形体であって、その内の1
層或いは2層以上が導電層であっても良い。更には2層
以上の(ロ)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂を主構成成
分とする熱可塑性樹脂組成物からなる層を含む多層中空
成形体であって、その内の1層或いは2層以上が導電層
であっても良い。
【0062】かかる導電層を構成する導電性熱可塑性樹
脂組成物は(D)導電性フィラーまたは導電性ポリマー
を配合してなる導電性熱可塑性樹脂組成物であることが
好ましい。
【0063】導電性熱可塑性樹脂組成物に用いられる熱
可塑性樹脂は、PPS樹脂をはじめとして、飽和ポリエ
ステル樹脂、ポリスルホン樹脂、四フッ化ポリエチレン
樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹
脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネー
ト樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケト
ン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエ
ーテルケトン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリオ
レフィン樹脂、ABS樹脂、ポリアミドエラストマ、ポ
リエステルエラストマなどが挙げられ、これらは2種以
上の混合物として使用しても良い。中でも、PPS樹
脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可
塑性ポリウレタン樹脂、およびポリオレフィン樹脂がよ
り好ましく用いられ、かかる熱可塑性樹脂の詳細は
(イ)層および(ロ)層と同様であり、説明は省略す
る。
【0064】次に導電層を構成する導電性熱可塑性樹脂
組成物に好適に用いられる(D)導電性フィラーまたは
導電性ポリマーについて説明する。
【0065】導電性フィラーは、通常樹脂の導電化に用
いられる導電性フィラーであれば特に制限は無く、その
具体例としては、金属粉、金属フレーク、金属リボン、
金属繊維、金属酸化物、導電性物質で被覆された無機フ
ィラー、カーボン粉末、黒鉛、炭素繊維、カーボンフレ
ーク、鱗片状カーボンなどが挙げられる。
【0066】金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属
種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニ
ウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示で
きる。
【0067】金属繊維の金属種の具体例としては鉄、
銅、ステンレス、アルミニウム、黄銅などが例示でき
る。
【0068】かかる金属粉、金属フレーク、金属リボ
ン、金属繊維はチタネート系、アルミ系、シラン系など
の表面処理剤で表面処理を施されていても良い。
【0069】金属酸化物の具体例としてはSnO2(ア
ンチモンドープ)、In23(アンチモンドープ)、Z
nO(アルミニウムドープ)などが例示でき、これらは
チタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で
表面処理を施されていても良い。
【0070】導電性物質で被覆された無機フィラーにお
ける導電性物質の具体例としてはアルミニウム、ニッケ
ル、銀、カーボン、SnO2(アンチモンドープ)、I
23(アンチモンドープ)などが例示できる。また被
覆される無機フィラーとしては、マイカ、ガラスビー
ズ、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカー、
硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、ホウ酸アルミウ
ィスカー、酸化亜鉛系ウィスカー、酸化チタン酸系ウィ
スカー、炭化珪素ウィスカーなどが例示できる。被覆方
法としては真空蒸着法、スパッタリング法、無電解メッ
キ法、焼き付け法などが挙げられる。またこれらはチタ
ネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面
処理を施されていても良い。
【0071】カーボン粉末はその原料、製造法からアセ
チレンブラック、ガスブラック、オイルブラック、ナフ
タリンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラッ
ク、ランプブラック、チャンネルブラック、ロールブラ
ック、ディスクブラックなどに分類される。本発明で用
いることのできるカーボン粉末は、その原料、製造法は
特に限定されないが、アセチレンブラック、ファーネス
ブラックが特に好適に用いられる。またカーボン粉末
は、その粒子径、表面積、DBP吸油量、灰分などの特
性の異なる種々のカーボン粉末が製造されている。本発
明で用いることのできるカーボン粉末は、これら特性に
特に制限は無いが、強度、電気伝導度のバランスの点か
ら、平均粒径が500nm以下、特に5〜100nm、
更には10〜70nmが好ましい。また表面積(BET
法)は10m2/g以上、更には30m2/g以上が好ま
しく、500m2/g以上、更に800m2/g以上がよ
り好ましい。またDBP給油量は50ml/100g以
上、特に100ml/100g以上が好ましい。また灰
分は0.5%以下、特に0.3%以下が好ましい。
【0072】かかるカーボン粉末はチタネート系、アル
ミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されて
いても良い。また溶融混練作業性を向上させるために造
粒されたものを用いることも可能である。
【0073】中空体の最内層または最外層は、しばしば
表面の平滑性が求められる。かかる観点から、本発明で
用いられる導電性フィラーは、高いアスペクト比を有す
る繊維状フィラーよりも、粉状、粒状、板状、鱗片状、
或いは樹脂組成物中の長さ/直径比が200以下の繊維
状のいずれかの形態であることが好ましい。
【0074】本発明で用いられる導電性ポリマーの具体
例としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチ
レン、ポリ(パラフェニレン)、ポリチオフェン、ポリ
フェニレンビニレンなどが例示できる。
【0075】上記導電性フィラー及び/又は導電性ポリ
マーは、2種以上を併用して用いても良い。かかる導電
性フィラー、導電性ポリマーの中で、特にカーボンブラ
ックが強度、コスト的に特に好適に用いられる。
【0076】本発明で用いられる導電性フィラー及び/
又は導電性ポリマーの含有量は、用いる導電性フィラー
及び/又は導電性ポリマーの種類により異なるため、一
概に規定はできないが、導電性と流動性、機械的強度な
どとのバランスの点から、導電性熱可塑性樹脂組成物を
構成する主たる熱可塑性樹脂組成物100重量部に対
し、導電性フィラー及び/又は導電性ポリマーを1〜1
00重量部、より好ましくは1〜50重量部の範囲で配
合することが好ましい。
【0077】またかかる導電樹脂組成物は、十分な帯電
防止性能を得る意味で、多層中空成形体中の導電層の抵
抗値が107Ω/m以下であることが好ましく、106Ω
/m以下であることより好ましい。
【0078】さらに本発明で用いる各層を形成する熱可
塑性樹脂組成物には、目的、用途に応じ、本発明の範囲
を損なわない範囲で、繊維状および/または非繊維状充
填材を配合しても良い。かかる繊維状および/または非
繊維状充填材の具体例としては、ガラス繊維、ガラスミ
ルドファイバー、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸
化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、
アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベ
スト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、
ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、
マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、ア
スベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、
アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニ
ウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カル
シウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、
硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マ
グネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムな
どの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化
ホウ素、炭化珪素およびシリカなどの非繊維状充填剤が
挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれ
ら充填剤を2種類以上併用することも可能である。ま
た、これら繊維状および/または非繊維状充填材をイソ
シアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネ
ート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物な
どのカップリング剤で予備処理して使用することは、よ
り優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
【0079】かかる繊維状および/または非繊維状充填
材を用いる場合、その配合量は通常全組成物に対し、5
〜80wt%の範囲である。
【0080】さらに、本発明で用いる各層を形成する熱
可塑性樹脂組成物等には、ポリアルキレンオキサイドオ
リゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化
合物、有機リン化合物、N−ブチルベンゼンスルホンア
ミドなどのスルホンアミド系化合物、P−ヒドロキシ安
息香酸−2−エチルヘキシルなどの可塑剤、タルク、カ
オリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトン
などの結晶核剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ステ
アリン酸、ステアリン酸Ca、ステアリン酸Li、ステ
アリン酸Alなどの滑剤、顔料やカーボンなどの着色
剤、ゼオライト、炭酸Li、炭酸Ca、炭酸Baなどの
防食剤、その他酸化防止剤、熱安定剤、紫外線防止剤、
難燃剤、発泡剤、などの通常の添加剤を添加することが
できる。
【0081】本発明の各樹脂組成物の調製方法は特に制
限はないが、原料の混合物を単軸あるいは2軸の押出
機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロ
ールなど通常公知の溶融混合機に供給して融点より10
〜50℃高い温度で混練する方法などを代表例として挙
げることができる。原料の混合順序にも特に制限はな
く、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練す
る方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混
練し更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、ある
いは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機に
より溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材
料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。
また、少量添加剤成分を用いる場合には、他の成分を上
記の方法などで混練しペレット化した後、成形加工前に
添加して成形に供することももちろん可能である。
【0082】本発明の多層中空成形体の層構成として
は、(a) 外層(ロ)層/内層(イ)層、(b) 外
層(ロ)層/中間(ロ)層/内層(イ)層、(c) 外
層(ロ)層/内層導電性(イ)層、(d) 外層(ロ)
層/中間(ロ)層/内層導電性(イ)層、(e) 外層
(ロ)層/中間層(イ)層/内層導電(ロ)層、(f)
外層(ロ)層/中間導電(ロ)層/内層(イ)層、な
どが例示できるが、これらに限定されるものではない。
なお上記構成(b)、(d)での外層(ロ)層、中間
(ロ)層は組成の異なる、PPS樹脂以外の熱可塑性樹
脂を主構成成分とする熱可塑性樹脂組成物からなる層を
意味している。
【0083】次に本発明の必須要件の一つである接着表
面処理について説明する。接着表面処理の具体例として
は、紫外線照射処理、コロナ放電処理、サンディング処
理などの物理処理、或いは有機溶剤や酸による化学処理
が挙げられる。
【0084】コロナ放電処理は工業的に広く利用されて
おり、本発明においても一般に用いられている条件を採
用することができる。好ましい周波数としては、10〜
100kHzの範囲が選択される。周波数が10Hz未
満では安定な放電が維持し難く、100kHzを越える
と材料へのダメージが無視できなくなる場合が多い。電
圧としては、5〜70kVのピーク電圧が好ましい。こ
れ未満では放電が不安定となり易く、これを越えると材
料へのダメージが無視できなくなる場合が多い。電圧波
形は正弦波、三角波、矩形波などいずれでも良く特に制
限はない。
【0085】本発明における紫外線照射処理は、波長範
囲100〜400nmの範囲が好ましく、100〜30
0nmの紫外線を用いるのがより好ましい。照射量は用
いるPPS、相手材の種類にもよるが、通常2mW・h
r/cm2以上、好ましくは40〜60mW・hr/c
2以上である。
【0086】サンディング処理とは、硬質の微細粒子、
特に無機粒子による被着体表面の摩擦或いは、硬質の微
細粒子、特に無機粒子を高速で吹き付けるなどして、被
着体表面を粗面化する方法であり、10〜500μmの
アルミナ粒子を用いたサンドブラスト処理が具体的な方
法として挙げられる。
【0087】次にプラズマ放電処理方法としては、放電
用ガスとして窒素、アルゴン、あるいはその混合ガスな
どを用い、0.005〜8Torrの減圧状態で、周波
数0.1〜1000MHz、出力2〜400Wの高周波
電源を用いて処理する方法が例示できる。
【0088】化学処理とは、PPSまたはPPSが含有
するオレフィン系共重合体、エラストマーをエッチング
あるいは劣化させる処理あるいは表面に官能基を導入す
る処理であり、その具体例としては、ベンゼン、トルエ
ン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤あるいはクロ
ロホルム、四塩化炭素、塩化メチレンなどのハロゲン系
溶剤、過酸化水素などの過酸化物処理などの有機溶剤に
よる処理、硝酸、塩酸、硫酸、クロム酸溶液などの無機
酸による処理、塩化アルミ、塩化鉄のトルエンなどの溶
液による処理などが挙げられる。
【0089】中でもコロナ放電処理が安定した接着性を
得る上で好ましい。
【0090】次に、本発明の多層中空成形品の製造方法
の1例を多層管状成形体を例にして説明するが、もちろ
ん下記に限定されるものではない。即ち、まず(イ)P
PS樹脂を主構成成分とする組成物にて内層を形成し、
その表面(外層に接する面)に対して上記接着表面処理
を施す。次に内層側の外側に(ロ)PPS以外の熱可塑
性樹脂組成物を積層する。
【0091】また本発明の多層中空成形体は、十分な耐
熱水性、耐薬品性および特にチューブの場合の柔軟性を
得る観点から、その全厚みは0.2mm以上3mm以下
の範囲が選択される。
【0092】このようにして得られた本発明の多層中空
成形品は、耐熱性、耐熱水性、耐薬品性を有し、かつ靱
性、およびPPS樹脂組成物層と熱可塑性樹脂層との密
着強さが強固で優れており、ボトル、タンクおよびダク
トなどのブロー成形品、パイプ、チューブなどの押出成
形品として、自動車部品、電気・電子部品、および薬品
用途に有効であるが、特に本発明の多層管状成形体は、
上記特性を十分に発揮される燃料チューブ用途、特に自
動車などの内燃機関用途あるいは自動車エンジン冷却液
チューブまたはパイプに好ましく適用される。
【0093】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に
説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定される
ものではない。
【0094】また、以下の実施例における多層中空成形
体中の導電層の電気抵抗値、層間接着強度の評価および
接着表面処理は、次の方法により行った。
【0095】[多層中空成形体中の導電層の電気抵抗
値]導電層に導電性ペーストを塗布し、それを電極とし
て、タケダ理研工業(株)製 TR6877 Computin
g Digital Multimeterを用いて抵抗値を測定し、1m当
たりの抵抗値を計算した。
【0096】[接着強度]チューブを幅10mmの短冊
状に切削し、(イ)PPS樹脂組成物層と(ロ)PPS
樹脂以外の熱可塑性樹脂を主構成成分とする熱可塑性樹
脂組成物からなる層をお互いに180度方向に引張るこ
とにより、単位長さ当りの密着強度を測定した。
【0097】[接着表面処理] (1)コロナ放電処理:代表的条件 20kHz、45
kV (2)紫外線照射処理:代表的条件 波長184.9n
m/257.7nmの短波長紫外線を(110W2灯)
を用いた。
【0098】[参考例1(PPS樹脂の重合)]攪拌機
付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005
kg(25モル)、酢酸ナトリウム0.656kg(8
モル)およびN−メチル−2−ピロリドン(以下NMP
と略す)5kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に20
5℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反
応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン
3.756kg(25.55モル)ならびにNMP3.
7kgを加えて、窒素下に密閉し、270℃まで昇温
後、270℃で2.5時間反応した。冷却後、反応生成
物を温水で5回洗浄し、次に100℃に加熱されNMP
10kg中に投入して、約1時間攪拌し続けたのち、濾
過し、さらに熱湯で数回浄した。これを90℃に加熱さ
れたpH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、約1
時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になる
まで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時
間減圧乾燥してPPS樹脂(P−1)を得た。このPP
Sの数平均分子量は10500、全灰分量は0.07重
量%であった。
【0099】[実施例及び比較例で用いた材料] (B)官能基を含有するオレフィン系共重合体 B−1:α−オレフィンおよびα,βー不飽和酸のグリ
シジルエステルを主構成成分とするオレフィン系共重合
体 エチレン/グリシジルメタクリレ−ト=88/12(重
量%)共重合体 B−2:エチレン/グリシジルメタクリレ−ト(E/G
MA)=85/15(重量%)を主骨格とし、アクリロ
ニトリル/スチレン(AS)=30/70(重量%)を
グラフト共重合した重合体であって、(E/GMA)/
(AS)=70/30(重量%)共重合体 B−3:無水マレイン酸(0.5wt%)変性エチレン
プロピレンラバー (C)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びそ
の塩、カルボン酸エステル基を含有しないエラストマー C−1:エチレン/ブテン−1=82/18(重量%)
共重合体 C−2:エチレン/プロピレン共重合体 (D)導電性フィラー及び/又は導電性ポリマー D−1:カーボンブラック(ケッチェン・ブラック・イ
ンターナショナル(株)EC600JD、DBP吸油量
495ml/100g、BET法表面積 127
0m2 /g、平均粒径30nm、灰分0.2% (ロ)を構成するPPS樹脂以外の熱可塑性樹脂 ロ−1:ナイロン11(東レ(株)“リルサン”BES
N BK P20TL) ロ−2:ナイロン12(東レ(株)“リルサン”AES
N BK P20TL)、 ロ−3:ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)PB
T 1404X04) ロ−4:ポリウレタン樹脂(”エラストラン”E598
PNAT) ロ−5:ポリオレフィン樹脂(三井石油化学(株)”ハ
イゼックス”3000B) ロ−6:ナイロン6(東レ(株)“アミラン”CM10
56) [参考例2(PPS樹脂組成物の調製)]表1に示す各
配合材料を表1に示す割合でドライブレンドし、タンブ
ラーにて2分間予備混合した後、シリンダー温度300
〜320℃に設定した2軸押出機(スクリュー:ダルメ
ージ)で溶融混練し、ストランドカッターによりペレッ
ト化し、120℃で1晩乾燥した。
【0100】実施例1〜9、比較例1 上記でペレット化したPPS樹脂組成物を用い、まず通
常の押出成形法に従って内側層を成形し、その表面に接
着表面処理を施した後、外側層を積層して2層チューブ
を成形した。なおチューブの内径は6mmΦ、外径は8
mmΦ、内層側の肉厚0.3mm、外層側の肉厚0.7
mmとした。
【0101】比較例2 接着表面処理を施さないこと以外は、実施例2と同様に
チューブ成形評価を行った。
【0102】
【表1】 比較例1と実施例の比較から、(B)官能基含有オレフ
ィン系共重合体を配合したPPS樹脂組成物に接着表面
処理を施すことで、より優れた接着性が得られることが
わかる。
【0103】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の多層中空
成形体は、耐熱性、耐熱水性、耐薬品性、耐ガソホール
過性、あるいは導電性を有すると共に、チューブとして
の靱性、層間接着性に特に優れており、特に自動車など
の内燃機関用燃料チューブあるいは自動車エンジン冷却
液チューブまたはパイプに好ましく適用される。

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも2層以上の熱可塑性樹脂層から
    構成される多層中空成形体であって、熱可塑性樹脂層の
    内の少なくとも1層は(イ)ポリフェニレンスルフィド
    樹脂を主構成成分とする組成物からなる層であり、熱可
    塑性樹脂層の内の少なくとも1層は(ロ)ポリフェニレ
    ンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂を主構成成分とす
    る熱可塑性樹脂組成物からなる層であり、かつ(ロ)層
    と接する(イ)層の表面に接着表面処理がなされてお
    り、かつ(イ)層を構成するポリフェニレンスルフィド
    樹脂組成物が、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂1
    00重量部に対し、(B)エポキシ基、酸無水物基、カ
    ルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステルから選ば
    れる少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共
    重合体を1〜200重量部含有するポリフェニレンスル
    フィド樹脂組成物であることを特徴とする多層中空成形
    体。
  2. 【請求項2】(ロ)層を構成するポリフェニレンスルフ
    ィド樹脂以外の熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂、熱可
    塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、お
    よびポリオレフィン樹脂から選ばれた少なくとも1種で
    あることを特徴とする請求項1記載の多層中空成形体。
  3. 【請求項3】(ロ)層を構成するポリフェニレンスルフ
    ィド樹脂以外の熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂である
    請求項1または2記載の多層中空成形体。
  4. 【請求項4】(イ)層を構成するポリフェニレンスルフ
    ィド樹脂組成物中の(B)官能基含有オレフィン系共重
    合体が、α−オレフィンおよびα,βー不飽和酸のグリ
    シジルエステルを主構成成分とする(B)エポキシ基含
    有オレフィン系共重合体である請求項1〜3のいずれか
    記載の多層中空成形体。
  5. 【請求項5】(イ)層を構成するポリフェニレンスルフ
    ィド樹脂組成物中の(B)官能基含有共重合体が、α−
    オレフィン(1)とα,βー不飽和酸のグリシジルエス
    テル(2)と更に下記一般式で示される単量体(3)を
    必須成分とするオレフィン系共重合体である請求項1〜
    4のいずれか記載の多層中空成形体。 【化1】 (ここで、R1は水素または低級アルキル基を示し、X
    は−COOR2基、−CN基あるいは芳香族基から選ば
    れた基。またR2は炭素数1〜10のアルキル基を示
    す)
  6. 【請求項6】(イ)層を構成するポリフェニレンスルフ
    ィド樹脂組成物が、更に(C)エポキシ基、酸無水物
    基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エステル基
    を含有しないエラストマーを含有するポリフェニレンス
    ルフィド樹脂組成物であって、(A)ポリフェニレンス
    ルフィド樹脂100重量部に対し(C)エポキシ基、酸
    無水物基、カルボキシル基及びその塩、カルボン酸エス
    テル基を含有しないエラストマーを1〜200重量部含
    有し、かつ(B)官能基を含有する共重合体と(C)エ
    ポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、カ
    ルボン酸エステル基を含有しないエラストマーの合計が
    (A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対
    し、200重量部以下である請求項1〜5いずれか記載
    の多層中空成形体。
  7. 【請求項7】(ロ)層と接する(イ)層の表面になされ
    る接着表面処理が、紫外線照射処理、コロナ放電処理、
    サンディング処理、プラズマ放電処理などの物理処理、
    或いは有機溶剤や酸による化学処理から選ばれる少なく
    とも1種の処理である請求項1〜6いずれか記載の多層
    中空成形体。
  8. 【請求項8】(ロ)層と接する(イ)層の表面になされ
    る接着表面処理が、コロナ放電処理である請求項1〜7
    のいずれか記載の多層中空成形体。
  9. 【請求項9】多層中空成形体を構成する各層の内の少な
    くとも1層が、導電性熱可塑性樹脂組成物からなること
    を特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の導電性多層
    中空成形体。
  10. 【請求項10】導電層が(D)導電性フィラーまたは導
    電性ポリマーを配合してなる導電性熱可塑性樹脂組成物
    からなることを特徴とする請求項9記載の導電性多層中
    空成形体。
  11. 【請求項11】(イ)ポリフェニレンスルフィド樹脂を
    主構成成分とする組成物からなる層が導電層であること
    を特徴とする請求項9〜10いずれか記載の導電性多層
    中空成形体。
  12. 【請求項12】導電層の抵抗値が107Ω/m以下であ
    る請求項9〜11いずれか記載の導電性多層中空成形
    体。
  13. 【請求項13】自動車燃料チューブとして用いることを
    特徴とする請求項1〜12いずれか記載の多層中空成形
    体。
  14. 【請求項14】自動車エンジン冷却液チューブまたはパ
    イプとして用いることを特徴とする請求項1〜13いず
    れか記載の多層中空成形体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008087168A (ja) * 2006-09-29 2008-04-17 Toray Ind Inc 多層中空成形体

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