JPH10158195A - 配位結合を利用した薬物−高分子複合体製剤の調製方法 - Google Patents
配位結合を利用した薬物−高分子複合体製剤の調製方法Info
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- JPH10158195A JPH10158195A JP35425296A JP35425296A JPH10158195A JP H10158195 A JPH10158195 A JP H10158195A JP 35425296 A JP35425296 A JP 35425296A JP 35425296 A JP35425296 A JP 35425296A JP H10158195 A JPH10158195 A JP H10158195A
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Abstract
化学結合ではなく、金属イオンを介して配位的に結合さ
せることにより、簡易な薬物−高分子複合体の調整方法
を提供する。 【効果】 キレート能を有する薬物、該薬物を包含し
た運搬体または診断薬と、キレート能を有する高分子材
料とを金属イオンの存在下にて混合することにより、薬
物−高分子複合体が容易に得られ、しかも薬効発現が極
めて顕著である。
Description
位結合による治療薬あるいは診断薬と高分子とからなる
薬物−高分子複合体製剤、および高分子との複合体化に
よる薬物の体内動態の修飾ならびにその徐放化とその作
用の増強に関する。
水溶液として投与しただけでは期待する薬効は得られな
い。そのため、薬物の生体内での安定性を高める(例え
ば、薬物の血中寿命の延長など)とともに、ある一定の
期間、薬物を徐々に放出できるように製剤化すること
(薬物の徐放化)が望ましい。また、生体内に投与され
た薬物のうちの、活性を保持したまま標的作用部位に到
達した薬のみが治療および診断効果を示し、残りの部分
は無効となるか、場合によっては不必要な部位に作用し
て副作用の原因となることが知られている。そこで、薬
物を標的部位に選択的に作用させること(薬物のターゲ
ティング)によって、薬物治療法を有効に行わせること
が必要である。これらの目的のために、現在、高分子材
料を用いた薬物のドラッグデリバリーシステム的な修飾
が行われている。診断薬に関しても同じことがいえる。
すなわち、診断を行なおうとする標的部位への薬物のタ
ーゲティングはその診断効果をさらに高めることにな
る。したがって、もしも薬物にターゲティング能を付与
することができるならば、治療薬の薬理作用ならびに診
断薬の効果を発現させるための薬物投与量を低下できる
とともに、多量投与による治療薬で特に問題となってい
る薬物の副作用の低減も期待できる。
態の修飾には、運搬体自身の体内での運命を知っておく
必要がある。例えば、生体に対する特別な親和性のない
合成および天然水溶性高分子の生体内分布はその分子量
ならびに電荷などの影響を強くうけること、糖鎖をもつ
水溶性高分子修飾によって薬物を特定臓器へ能動的ター
ゲティングできることなどが、これまでに報告されてい
る(例えば、Takakura,Y.など、Phar
m.Res,7巻、p339、1990、Yamaok
a,T.など、Drug Delivery、1巻、p
75,1993、およびTakakura,Y.など、
Adv.Drug Delivery Rev.,19
巻、p377、1996など)。また、薬物運搬体とし
てよく用いられているリポソームなどもその表面を水溶
性高分子で修飾することにより、生体内分布が変化する
ことが報告されている(例えば、Woodle,M.
C.など、Biochim.Biophys.Act
a,1113巻,p171、1992、および原 耕平
など、ターゲティング療法、医薬ジャーナル社、p12
5、1985など)。さらに、癌組織と正常組織との間
の解剖学的な違いを利用して、高分子化合物およびリポ
ソームなどの運搬体を用いた治療薬の癌組織への受動的
ターゲティングが試みられている(例えばMaeda,
H.など、Crit.Rev.Therap.Drug
Carrier Sys.,6巻,p193,198
9など)。
材料あるいはリポソームと薬物、あるいは薬物含有リポ
ソーム、薬物含有高分子ミセル、あるいは薬物含有高分
子微粒子と高分子材料とを適当に組み合わせることによ
って、薬物を特定部位へターゲティングすることができ
ると考えられる。すでに、これらの高分子材料と薬物、
あるいは高分子材料と上述の薬物包含運搬体との複合体
化に関しては、非常に多くの報告が出されている。しか
し、これまでの複合体調製においては、ほとんど必ず、
薬物と高分子材料との両者の間に化学的な結合反応が行
われているため、その化学反応の煩雑さ、ならびに化学
結合による薬物の活性低下の問題が常につきまとう。こ
のことが、高分子との複合体化によって薬物の有効性が
高められるという多くの報告があるにもかかわらず、そ
れらの企業化を遅らせている一つの原因と考えられる。
そこで、このような化学結合反応を行うことなく、より
簡便に薬物と高分子とを結合させ、複合体を調製する方
法が望まれていた。
分解吸収性の高分子材料を用いた治療薬の徐放化の報告
は多い(例えば、瀬崎 仁編集、医薬品の開発、第13
巻、薬物送達法、廣川書店、1988年など)。例え
ば、代表的な生体内分解吸収性高分子であるグリコール
酸−乳酸共重合体などの高分子材料と薬物とを混合し、
薬物を徐放する試みがある。しかし、それらの高分子が
油溶性であるため、相溶性の不足から、水溶性薬物の徐
放化には問題があった。そこでその一つの解決策とし
て、生体内にて分解吸収する高分子ハイドロゲルを薬物
徐放用マトリックスとして利用しようという試みが報告
されている(例えば、Gombotz,W.R.など、
Bioconjugate Chcm.,6巻,p33
2,1995など)。しかしながら、この場合の薬物の
徐放期間は、基本的にはハイドロゲル内における薬物の
自己拡散性により決定されるため、その徐放性を広範囲
にわたって変化させることは困難である。このため、特
に、注射可能な小さなサイズをもつ高分子ハイドロゲル
においては、薬物の徐放化は事実上、不可能となる。そ
こで、何らかの方法によってハイドロゲル内へ薬物を固
定化し、ハイドロゲルマトリックスの分解性を制御する
ことによって、分解に伴って放出される薬物の徐放をコ
ントロールするアプローチが現実的である。ハイドロゲ
ルへの薬物の固定化には化学結合法と物理結合法とがあ
るが、前者の方法では、放出された薬物にマトリックス
フラグメントが化学的に結合しているため、薬効発現の
点からは後者の固定化法のほうが好ましい。後者の物理
結合を介した薬物の固定化の一例としては、薬物とハイ
ドロゲルマトリックスとの間の静電的相互作用を利用す
る試みがあり、注射可能な粒子状ハイドロゲルマトリッ
クスからのタンパク質薬物の徐放化が報告されている
(Tabata,Y.など、Proc.4th Jap
an International SAMP Sym
posium,p25,1995)。
イオンを介した結合力(配位結合力)により物質を相互
作用させ、その相互作用の強弱によって物質を分離精製
しようとする金属アフィニティクロマトグラフィと呼ば
れる方法がある(例えば、Porath,J.など,N
ature,258巻,p598,1975など)。例
えば、ペプチド、タンパク質、あるいは核酸などは、そ
れ自体に金属イオンに対するキレート能をもつため、あ
らかじめ金属イオンにキレートさせておいたアフィニテ
ィカラムにそれらの物質を単に流すことによって物質は
担体に吸着する。次に、pHあるいはイオン強度の異な
る溶液をカラム内に流すことにより、吸着した物質は容
易に担体より脱着される。この場合、カラムと物質との
間のアフィニティは、物質と金属イオンとの組み合わせ
によって変化する。この方法により、すでに種々の生理
活性タンパク質などの分離精製が行われるとともに、脱
離された後のタンパク質の生物活性が保持されているこ
とが報告されている(例えば、Victor,G.な
ど,J.Biol.Chem.,252巻,p593
4,1977など)。
は、金属アフィニティ結合力を薬物の固定化とその徐放
に利用するという記載があるが、これは、水不溶性の高
分子ハイドロゲルに対するものであり、キレート能をも
つ水溶性の高分子物質を用いた応用(例えば、薬物の血
中寿命の延長、薬物のターゲティングなど)については
示唆されていない。さらに、この特許では、キレート能
をもつ高分子物質、薬物、および金属イオンの3者を同
時に混合する方法によって作製された高分子ハイドロゲ
ルをホモジェナイズすることによって、それらの体内へ
の注射投与が可能であるとの記述がある。しかしなが
ら、あらかじめ作製しておいた注射可能なサイズをもつ
高分子ハイドロゲル(例えば、粒子状、マイクロゲル
状、および流動性固体状の高分子ハイドロゲルなど)を
金属イオンの存在下にて薬物と混合することによって、
簡易に薬物が固定化された高分子ハイドロゲルの作製が
可能となることについては記載されていない。また、適
用できる薬物として、分子量が3,000以上の薬物、
例えば、ホルモン、酵素、インターフェロン誘導用のR
NAなどが挙げられているが、本発明においては、後述
するように、それらの薬物を含み、あるいはそれ以外の
治療薬、治療薬を包含した薬物運搬体、および診断薬に
対しても適用拡大が可能である。
作製することに関する報告があるが(例えば、Bona
ccorsi,F.など,Int.J.Polymer
icMater.,18巻,p165,1992な
ど)、得られたハイドロゲルへの薬物の固定化、および
その徐放化への応用については示唆されていない。
ペンタ酢酸(以下DTPAという)残基などのキレート
配位子をポリエチレングリコール、デキストラン、ある
いは血清アルブミンなどの水溶性高分子に導入し、ガド
リニウムなどをキレートさせた後、核磁気共鳴イメージ
(以下MRIという)の増感剤として利用するという報
告があり(例えば、Dessor,T.S.など、J.
Magnetic Resonance Imagin
g,4巻,p467,1994など)、すでに、配位結
合が診断薬分野に応用されている。しかしながら、これ
は単にMRI増感効果の高い金属イオンを水溶性高分子
に導入するという報告であり、これらの高分子−金属増
感剤に金属イオンを介して、さらに生理活性物質も結合
した薬物−増感性金属−高分子複合体を作製し、診断と
同時に治療にも利用しようということに関しては記載さ
れていない。
安定な薬物を高分子運搬体に化学結合させるのではな
く、金属イオンを介して配位的に結合させることによっ
て、薬物−高分子複合体の簡易な製法を提供する。これ
らの配位結合を利用して調製された薬物−高分子複合体
は、従来の化学結合法によって作製されてきた薬物−高
分子複合体と同様に、薬物の血中寿命の延長およびその
ターゲティング、ならびに薬物の徐放化を可能とする。
題点を解決するために鋭意検討した結果、キレート配位
子を有する高分子材料あるいはそれ自身でキレート能を
有する高分子材料と薬物とを金属イオンの存在下に単に
混合することにより、薬物と高分子との複合体を容易に
得ること、さらに、得られた複合体が薬物体内動態の修
飾ならびに薬物の徐放化などの特性を有し、従来の化学
結合法により作製されてきた薬物−高分子複合体と同様
に、薬効発現が極めて有利となることを見出し、本発明
を完成した。
発明の薬物−高分子複合体製剤は以下の方法によって得
ることができる。アミノ基あるいは水酸基をもつ高分子
のジメチルホルムアミド溶液にDTPA酸無水物を加
え、高分子にキレート能をもつDTPA残基を導入す
る。反応後、水に対する透析を行って高分子に結合して
いないDTPAを除去し、凍結乾燥により金属キレート
配位子のDTPA残基をもつ高分子を得る。次に、これ
らのDTPA残基導入高分子と金属イオンとを混合し、
室温にて撹拌する。混合物をゲル濾過することにより、
結合していない金属イオンを分離除去し、金属アフィニ
ティ結合力を有する水溶性の高分子を作製する。この水
溶性高分子をタンパク質薬物を含む水溶液内に投入す
る。得られた混合物をゲル濾過することにより、結合し
ていない薬物を分離除去し、水溶性のタンパク質薬物−
高分子複合体を得る。タンパク質薬物と金属イオンとを
同時にDTPA残基導入高分子と混合、室温にて撹拌す
ることによっても、同様に水溶性のタンパク質薬物−高
分子複合体を得ることができる。一方、DTPA残基を
もつ高分子を化学架橋すること、あるいはあらかじめ作
製しておいた架橋高分子ハイドロゲル粒子へDTPA残
基を導入することによって、金属キレート配位子を有す
る高分子ハイドロゲル粒子を作製する。これらの高分子
ハイドロゲル粒予を金属イオン水溶液に浸漬させること
によって、金属キレートを形成させた後、遊離金属イオ
ンを除去し、金属アフィニティ結合力を有する高分子ハ
イドロゲル粒子を作製する。次に、これらの高分子ハイ
ドロゲル粒子をタンパク質薬物を含む水溶液中に投入す
る。得られたハイドロゲルを水洗することにより、結合
していない薬物を分離除去し、タンパク質薬物が固定化
された高分子ハイドロゲル粒子を得る。
キレート能をもつ物質であれば、その分子量ならびに種
類に関係はない。例えば、抗ガン剤、抗菌剤、抗炎症剤
などの低分子治療薬、インターフェロン、インターロイ
キン、種々の酵素薬物、種々の分化因子、および増殖因
子などのぺプチドおよびタンパク質薬物、ムラミルジペ
プチドあるいはポリI−Cなどの免疫を賦活する作用を
もつ薬物、インターフェロン誘導用RNA、さらにプラ
スミドおよびアンチセンスDNAなどの遺伝子治療に用
いられる核酸薬物などを用いることができる。得られた
薬物−高分子複合体の安定性の点から、薬物としては高
分子量治療薬の使用が好ましい。また、治療薬単独では
なく、薬物を含有したリポソーム、高分子ミセル、ある
いは高分子微粒子などの薬物包含運搬体、ならびに超音
波造影剤、MRI増感剤などの診断薬に対しても本発明
の複合体調製方法は適用可能である。
限定されるものではないが、それ自身に金属に対するキ
レート能をもつポリエチレングリコール(以下PEGと
いう)、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ある
いは核酸などが挙げられる。しかしながら、もし高分子
材料がキレート能の弱い、あるいはそれをもたない場合
には、キレート配位子を分子内に積極的に導入すること
によって本発明の目的に用いることができる。キレート
能をもたないあるいは弱い高分子として、例えば、ポリ
ビニルアルコール、ポリアミノ酸、ポリアクリル酸、あ
るいは多糖類などが挙げられるが、これらの高分子は、
その側鎖に金属キレート残基を導入することによって本
発明に用いることができる。さらに、PEG分子の末端
に金属キレート残基を導入することによって、PEGの
末端のみを用いたシンプルな薬物との複合化も可能であ
る。本発明では、これらの高分子材料を水溶液のまま、
あるいは化学架橋により得られるハイドロゲルとの2つ
の形態で用いることができる。前者は薬物あるいは薬物
含有運搬体との複合体化に用いられ、それらの血中寿命
の延長ならびに特定臓器へのターゲティングなどを目的
としている。一方、後者は薬物の固定化のための担体と
して用いられる。あらかじめ作製しておいた生体内分解
吸収性の高分子材料からなる注射可能な形状をもつ高分
子ハイドロゲルに、金属アフィニティ結合力を利用する
とことによって薬物を固定化する。ハイドロゲル本体の
分解とともに、薬物は徐放化されていく。
配位子としては、カルボキシル基、カルボニル基、シア
ノ基、アミノ基、イミダゾール基、チオール基、あるい
は水酸基など、金属イオンを配位結合する化学構造をも
つものであれば、特に限定されるものではない。例え
ば、イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミ
ンテトラ酢酸(以下EDTAという)、DTPA、トリ
エチレンテトラミンヘキサ酢酸、N−ヒドロキシエチル
エチレンジアミノトリ酢酸、エチレングリコールジエチ
ルエーテルジアミンテトラ酢酸(以下EGDTAとい
う)、およびエチレンジアミンテトラプロピオン酸など
のコンプレクサン型配位子、ジエチレントリアミン、ト
リエチレンテトラミン、あるいはα−アミノ酸(グルタ
ミン酸、リジン、アスパラギン酸、シスチン、ヒスチジ
ン、およびチロシンなど)などが挙げられる。これらの
キレート配位子の高分子への導入反応については、種々
の方法が考えられる。例えば、水酸基を分子内にもつ高
分子の場合には、塩化シアヌル法、臭化シアン法、ある
いはエピクロルヒドリン法などで水酸基とキレート配位
子のアミノ基との間に化学結合を形成させる。また、多
糖類に対しては、これら以外に、過ヨウ素酸酸化法によ
る結合反応も有効である。水酸基をカルボニルイミダゾ
ールにより活性化した後、配位子のカルボキシル基ある
いはアミノ基と結合させることも可能である。カルボキ
シル基をもつ高分子では、カルボジイミド、N−ヒドロ
キシスクシンイミドとカルボジイミド、クロロ炭酸エチ
ルなどを用いたカルボキシル基と配位子のアミノ基との
間の結合反応、アミノ基をもつ高分子材料に対してはカ
ルボジイミドなどを用いた配位子のカルボキシル基との
間の結合反応、ならびに塩化シアヌルなどを用いた配位
子とアミノ基との間の結合反応なども、キレート配位子
の高分子材料への導入反応のために有用である。上述の
結合反応に加えて、DTPA酸無水物、およびEDTA
のアミノベンジルあるいはイソチオシアノベンジル誘導
体などは、混合するだけで容易に高分子のアミノ基ある
いは水酸基などと反応し、キレート配位子を高分子鎖に
導入することができるため好ましい。その他、キレート
能に優れた2、2’−ジピリジン、1、10−フェナン
トロリン残基の高分子への導入も有効である。以上のよ
うに、キレート能をもつ配位子残基を高分子鎖へ直接導
入する方法に加えて、キレート配位残基と高分子との間
にスペーサーを導入することもできる。例えば、まず、
アミノ基を両末端にもつ、N1,N1−ビス(3−アミ
ノプロピル)1、3−プロピルジアミン、ビス(3−ア
ミノプロピル)アミン、炭素鎖長の異なる脂肪族ジアミ
ン、あるいはリジンのエステル誘導体などを高分子鎖へ
導入しておく。その後、未反応の片末端アミノ基へキレ
ート配位子を導入し、スペーサーを介してキレート配位
子が導入された高分子材料を調製する。上述の例以外
に、分子両末端に水酸基、カルボキシル基などの化学反
応性官能基をもつ他のスペーサー分子を利用することも
可能であり、上述の反応を組み合わせることによって、
スペーサーを介在したキレート配位残基導入高分子を合
成できる。なお、配位子/高分子材料の配合比は特に限
定されるものではないが、1/1000から1/10の
配合比が好ましい。
れば、特に限定されるものではなく、2価あるいはそれ
以上の原子価をもつ遷移およびアルカリ土類金属など、
高分子に導入されたキレート配位残基と安定なキレート
を形成するものであればよい。金属キレートの安定性お
よびその毒性の観点から、銅、亜鉛、マンガン、あるい
は鉄などが好ましい。これらの金属の生体毒性に関して
は多くの報告(例えば、銅と衛生、財団法人日本銅セン
ター発行、あるいは糸川嘉則、Diabetes Fr
ontier、3巻,p425,1992など)があ
り、毒性のきわめて高いと考えられている銅のLD50
値は>4、000mg/kg(マウス経口)である。本
研究の目的に使用される銅の量は1〜1.5mg/kg
程度であり、文献値に比較して1/1000以下であ
る。ちなみに、日本人では毎日銅を0.78〜2.54
mg/kg摂取していることが知られており、使用金属
イオンの生体毒性は問題にならないと考えられる。それ
らの金属は塩化物、硫酸塩、あるいは酢酸塩などとして
薬物−高分子複合体の調製に使用される。
的に導入されたキレート配位子を有する高分子物質を金
属イオンと混合し金属キレートを形成させる条件は、特
に限定されるものではないが、用いる高分子物質の濃度
として0.1〜50wt%、混合温度としては4〜50
℃が望ましい。また、溶液のpHは3〜10が望まし
い。必要に応じて、水酸化ナトリウムあるいは塩化水素
水溶液を添加することによって反応水溶液のpHを調製
することができる。金属イオンの添加量はキレート配位
子に対して0.1〜10倍等量が望ましい。金属キレー
トを形成した金属アフィニティ結合力を有する高分子物
質と薬物との混合条件は、特に限定されるものではない
が、薬物の添加量は金属キレート形成配位子に対して1
〜10倍等量が望ましい。また、その混合温度としては
4〜50℃、溶液のpHは3〜10が望ましい。必要に
応じて、水酸化ナトリウムあるいは塩化水素水溶液を添
加することによって反応水溶液のpHを調製することが
できる。
び水不溶性のいずれでもよい。その形状も水溶液状、マ
イクロゲル状、粒子状、あるいは流動性固体状など、特
に限定されるものではない。とりわけ、前3者は、薬物
あるいは薬物含有運搬体の血中寿命の延長ならびにその
特定臓器へのターゲティングなどの用途に適している。
また、後2者の水不溶性の複合体は薬物の徐放化に適し
ている。すなわち、水不溶性の高分子担体に金属イオン
を介して固定化された薬物は、主に、担体自身の分解に
よって放出される。担体の分解とともに水可溶化された
高分子フラグメントとともに薬物が担体より遊離、放出
される。薬物の放出パターンは高分子担体の分解パター
ンにより制御できる。
まま用いてもよく、さらには緩衝液、生理食塩水、注射
用溶媒などの希釈剤に溶解、あるいは分散してAssa
yあるいは治療、診断に用いることもできる。さらに、
凍結乾燥後、使用時に希釈剤に溶解、あるいは分散して
から用いてもよい。
薬物−高分子複合体製剤は次の優れた特徴をもつ。 1)薬物と高分子とを単に混合するだけで複合体が作製
できる。 2)薬物と高分子とのアフィニティは薬物、金属イオ
ン、およびキレート配位子の3者の組み合わせによって
調節できる。 3)薬物単独に対してだけではなく、薬物と運搬体とか
らなる製剤に対しても適用可能である。
るが、本発明は以下の実施例に限定されるものではな
い。
00、東京化成工業株式会社製)を含む10mlのジメ
チルスルホキシド溶液中へ3.3,6.6,13.2,
26.5,66.2,および132.4mgのDTPA
酸無水物(株式会社同仁化学研究所製)と4.97mg
の4−ジメチルアミノピリジン(ナカライテスク株式会
社製)を加えた。この混合溶液を40℃、24時間、撹
拌し、プルランの水酸基へDTPA残基を導入した。反
応後、2日間の水に対する透析と凍結乾燥を行い、DT
PA残基導入プルランを得た。DTPA残基の導入率を
伝導度滴定より求めたところ、上述のDTPA酸無水物
の添加量の増加とともに、導入率は0.062,0.1
2,0.22,0.34,0.53,および0.73μ
mole/mgプルランと増加した。反応前後における
プルランの分子量変化をゲルパーミエーションクロマト
グラフィ(東ソー株式会社製、カラム:TSKgel3
000PWXL+TSKgel6000PWXL、カラ
ム温度:40℃、溶出液:0.2Mリン酸緩衝溶液(p
H6.8)、溶出速度:0.9ml/min、検出器:
示差屈折計)を用いて評価したところ、DTPA導入反
応によるプルランの分子量変化は認められなかった。こ
の結果は、DTPA酸無水物によるプルラン分子間の架
橋反応は生じておらず、この反応により側鎖にDTPA
残基の導入されたプルランが得られていることを示して
いる。
ル(以下PVAという、ユニチカ株式会社製、重量平均
分子量70,000、ケン化度99.8%)である以外
は、実施例1と同様の方法でDTPA残基導入PVAを
作製した。加えたDTPA酸無水物は6.6,13.
2,26.5,42.4,および53.0mgである。
DTPA残基導入率はDTPA酸無水物の添加量の増加
とともに、0.15,0.21,0.26,0.39,
および0.62μmole/mgPVAと増加した。D
TPA残基導入反応によるPVAの分子量変化は認めら
れなかった。
入プルラン(DTPA残基導入率:0.062μmol
e/mg)5mgを0.125mg/ml濃度の硫酸銅
水溶液へ溶解させた。30分間の撹拌の後、混合物をゲ
ル濾過し(Sephacryl−S200、0.5cm
内径,36cm長のカラム、溶出液PB、溶出速度0.
33ml/min)、遊離銅イオンを反応系から分離除
去した。銅イオンをキレートしているDTPA残基導入
プルランの銅キレート量および糖質量(プルラン量)
は、それぞれ、原子吸光法およびアンスロン−硫酸法に
よって定量した。溶出曲線によれば、プルランの溶出位
置と銅イオンの溶出位置が一致した。ゲル濾過後のDT
PA残基導入プルランの回収率は95%であり、銅イオ
ンのキレート結合率は1.20個/DTPA残基であっ
た。なお、DTPA残基の導入されていない元のプルラ
ンを同様に硫酸銅水溶液へ溶解させたところ、銅イオン
のプルランへの結合は認められなかった。このことは、
銅イオンが金属配位子であるDTPA残基を介してキレ
ートされていることを示している。
チン(ナカライテスク株式会社製、ポテトより精製)を
2mlの水へ投入後、80℃、数分間の撹拌により、ア
ミロぺクチン水溶液を調製した。この水溶液を400m
lのオリーブ油(和光純薬株式会社製)に加え、25
℃、450rpmに条件にて、1時間撹拌することによ
って、W/0型エマルジョンを調製した。次に、このエ
マルジョン中へアセトンを加え、アミロペクチンを沈澱
固化させた。粒子をアセトンにより遠心洗浄(25℃、
3、000rpm、10分間)することによってアミロ
ペクチン粒子を得た。このアミロペクチン粒子(66.
6mg)を10mmoleのエチレングリコールジグリ
シジルエーテル(デナコールEX−810、ナガセ化成
工業株式会社製)を溶解させたアセトン/1N水酸化ナ
トリウムの等量混合溶液10ml内へ投入した。30℃
にて、3時間、撹拌条件下、架橋反応を行わせた後、さ
らにアセトン/0.1N水酸化ナトリウムの等量混合溶
液10ml中で、40℃にて2時間、処理した。アセト
ン/水の等量混合溶液と、ジメチルスルホキシドにて粒
子を遠心洗浄し、最終的に架橋ハイドロゲル粒子をジメ
チルスルホキシド中にて膨潤させた。架橋ハイドロゲル
粒子の37℃、水中での膨潤操作前後の粒子径変化より
粒子の含水率を評価したところ、95.6%であった。
また、水膨潤時における粒子径は20〜100μmであ
った。膨潤架橋ハイドロゲル粒子を含むジメチルスルホ
キシド溶液中へ1.46mgのDTPA酸無水物および
10.0mgの4−ジメチルアミノピリジンを加え、4
0℃にて1、3、6、12、および24時間反応させ
た。反応終了後、架橋ハイドロゲル粒子を水にてよく遠
心洗浄した。架橋アミロペクチンハイドロゲル粒子への
DTPA残基の導入率を伝導度滴定より求めたところ、
DTPA残基導入率は反応時間の増加とともに、0.0
63,0.069,0.088,0.10,および0.
12μmole/mg乾燥粒子と増加した。ハイドロゲ
ルの含水率はDTPA残基の導入とともに95.6から
97.5%へと増加した。DTPA残基導入反応による
粒子径の変化はほとんど見られなかった。
もつ架橋アミロペクチンハイドロゲル粒子(DTPA残
基導入率:0.10μmole/mg乾燥ハイドロゲ
ル)の乾燥重量6mgを濃度の異なる硫酸銅水溶液へ浸
漬後、40℃にて、1時間、放置した。水溶液中の銅イ
オン濃度をキレート滴定により定量し、スキャッチャー
ド解析を行ったところ、ハイドロゲル粒子への銅イオン
のキレート率は1.50個/DTPA残基であった。
入プルラン(DTPA残基導入率:0.062μmol
e/mgプルラン)の5mg/ml濃度の水溶液へ、最
終濃度が10μg/mlとなるようにヒト遺伝子組み換
え型インターフェロンαA/D(以下IFNという)水
溶液を(2x107国際単位(IU)/100μgpr
otein/ml)投入した。次に、この混合水溶液へ
最終濃度が1.9mg/mlとなるように塩化亜鉛水溶
液を加えた。室温にて1時間撹拌し、IFNを亜鉛イオ
ンを介して配位結合にてDTPA残基導入プルランに結
合させた。反応前後におけるIFNの分子量変化をゲル
パーミエーションクロマトグラフィ(東ソー株式会社
製、カラム:TSKgel3000PWXL+TSKg
el6000PWXL.カラム温度:40℃、溶出液:
0.05Mリン酸緩衝溶液(pH6.8)+0.3M塩
化ナトリウム水溶液、溶出速度:0.9ml/min、
検出器:蛍光分光光度計(励起波長278nm、発光波
長348nm))を用いて評価した。コントロールとし
て、IFN、DTPA残基導入プルラン、およびIFN
とDTPA残基導入プルランとの混合物を用いた。その
結果を図1に示す。
TPA残基導入プルランとを混合することによって、I
FN自体の蛍光ピークが短時間側にシフトした。しかし
ながら、亜鉛イオンが存在しない場合には、IFNピー
クの移動は認められなかった。なお、DTPA残基導入
プルラン自身には蛍光吸収は見られなかった。亜鉛イオ
ンの代わりに銅イオンを用いて同様の検討を行ったが、
銅イオンの添加によるIFNピークの移動は認められな
かった。これらの結果は、亜鉛イオンを介してIFNと
DTPA残基導入プルランとが配位結合し、IFNの分
子サイズが大きくなっていること、また金属イオンの種
類によって、DTPA残基導入プルランとIFNとの配
位結合力が変化することを示している。この例が示すよ
うに、水溶性高分子とタンパク質とを単に水中で混ぜ合
わせることによって、金属イオンを介した配位結合を通
した複合体が容易に形成できることがわかる。
入PVA(DTPA残基導入率:0.15μmole/
mgPVA)5mg/ml濃度の水溶液へ、最終濃度が
10μg/mlとなるようにリゾチーム(以下Lyzと
いう,ナカライテスク株式会社製)水溶液を投入した。
次に、この混合水溶液へ最終濃度が1.9mg/mlと
なるように硫酸銅水溶液を加えた。室温にて1時間撹拌
し、銅イオンを介した配位結合にてLyzをDTPA残
基導入PVAに結合させた。反応前後におけるLyzの
分子量変化を実施例6に記載のゲルパーミエーションク
ロマトグラフィを用いて評価した。コントロールとし
て、Lyz、DTPA残基導入PVA、およびLyzと
DTPA残基導入PVAとの混合物を用いた。銅イオン
存在下にてLyzとDTPA残基導入PVAとを混合す
ることにより、Lyz自体の蛍光ピークが短時間側にシ
フトした。しかしながら、銅イオンが存在しない場合に
は、Lyzピークの移動は認められなかった。これらの
結果は、亜鉛イオンを介してLyzとプルランとが配位
結合により結合し、Lyzの分子サイズが大きくなって
いることを示している。以上のように、この場合にも、
DTPA残基導入PVAとタンパク質とを単に水中で混
ぜ合わせることによって、両者の複合体が形成できるこ
とがわかった。
A残基をもつ架橋アミロペタチンハイドロゲル粒子(D
TPA残基導入率:0.10μmole/mg乾燥ハイ
ドロゲル)の乾燥重量20mgを濃度の異なる硫酸銅水
溶液へ浸漬後、40℃にて1時間、放置した。その後、
ハイドロゲル粒子を水にてよく遠心洗浄し、キレートさ
れていない銅イオンを除去した。水溶液中の銅イオンを
キレート滴定により定量することによってハイドロゲル
粒子へキレートされた銅イオン量を評価したところ、
0.0005,0.001,0.006,および0.0
4μmole/mg乾燥ハイドロゲル粒子であった。銅
イオンをキレートさせたDTPA残基導入架橋アミロペ
クチンハイドロゲル粒子を1mg/ml濃度の牛血清ア
ルブミン(以下BSAという、和光純薬株式会社製)の
水溶液3.2ml中へ浸漬した。時間毎に上澄み中のタ
ンパクを定量することによってハイドロゲル粒子へのタ
ンパク質吸着を評価した。タンパク質はBio−rad
Protein Assay法により定量した。その
結果を図2に示す。
導入架橋アミロペクチンハイドロゲル粒子においては、
タンパク質の吸着量は時間および銅イオンキレート量の
増加とともに増加した。一方、銅イオンをキレートして
いないDTPA残基導入架橋アミロペクチンハイドロゲ
ル粒子へのタンパク質吸着は認められなかった。DTP
A残基を導入していない架橋アミロペクチンハイドロゲ
ル粒子に対しても、同様のタンパク質吸着を調べたが、
銅イオンの有無に関係なく、いずれのハイドロゲルにお
いてもタンパク質の吸着は認められなかった。以上の結
果より、金属イオンをキレート固定化したアミロペクチ
ンハイドロゲル粒子をタンパク質水溶液中へ浸漬するこ
とによって、タンパク質をハイドロゲル粒子へ結合でき
ることがわかった。
入プルラン(DTPA残基導入率:0.062μmol
e/mg)の15mg/ml濃度の水溶液へ、最終濃度
が100μg/mlとなるようにIFN水溶液(2x1
07国際単位(IU)/100μgprotein/m
l)を投入した。次に、この混合液へ最終濃度が18.
2mg/mlとなるように塩化亜鉛水溶液を加えた。室
温にて3時間撹拌し、IFNを亜鉛イオンを介して配位
結合にてDTPA残基導入プルランに結合させた。次
に、混合物のゲル濾過(Sephacryl−S20
0、0.5cm内径,36cm長のカラム、溶出液0.
01Mリン酸緩衝溶液+0.25N NaCl、溶出速
度0.33ml/min)を行い、遊離亜鉛イオンと遊
離IFNとをIFN−DTPA残基導入プルラン結合体
から分離除去した。IFN−プルラン結合体のタンパク
質量(IFN量)および糖質量(プルラン量)を、それ
ぞれ、Bio−Rad Protein Assay法
およびアンスロン−硫酸法にて定量したところ、プルラ
ンの回収率は95%であり、結合体へ結合されているタ
ンパク質量は、仕込みタンパク質量の56%であった。
IFN−プルラン結合体のIFN活性をin vitr
oにおけるその抗ウイルス活性から評価(Rubins
tein,S.など、J.Virol.,37巻、p7
55,1981)したところ、その活性は7.2x10
7IU/mg結合体であり、結合反応前後におけるIF
N活性の回収率は36%であった。
液100μlと200μlの0.5Mリン酸緩衝溶液
(pH7.5)とを混合した。この混合溶液中へ4μl
のNa125I(3.7GBq/ml 0.1MNaO
H solution,NENResearch Pr
oducts社製)を加えた。0.2mg/ml濃度の
クロラミンTの0.05Mリン酸緩衝溶液(pH7.
2)を200μl加えた後、室温にて2分間、IFNの
放射ラベル化反応を行った。次に、200μlの4mg
/ml二亜硫酸ナトリウムの0.5Mリン酸緩衝溶液
(pH7.2)を加えて反応を停止させた。陰イオン交
換樹脂(Dowex1−X8)を詰めたカラムに反応物
を通過させ、ラベル化されていない125I−を分離除
去した。このようにして得られた125Iラベル化遊離
IFN(最終濃度3.92μg/ml)を実施例1にお
いて作製したDTPA残基導入プルラン(DTPA導入
率:0.062μmole/mg)の6.53mg/m
l濃度の水溶液へ投入した。次に、この混合水溶液へ最
終濃度が370μg/mlとなるように塩化亜鉛あるい
は硫酸銅水溶液を加えた。室温にて3時間撹拌し、金属
イオンを介した配位結合によってIFNをDTPA残基
導入プルランに結合させた。125Iラベル化遊離IF
Nあるいは125Iラベル化IFN−DTPA残基導入
プルラン結合体をBalb/cマウス(9週齢、メス、
三匹/グループ)の尾静脈内へ投与した。投与30分後
に、血液、心臓、肺、胸腺、肝臓、牌臓、腎臓、胃腸
管、甲状腺、それ以外の部位、および尿、糞などを回収
し、それぞれの臓器の放射活性をガンマカウンターにて
計測した。コントロールとして金属イオンを加えていな
いDTPA残基導入プルランと125Iラベル化IFN
との混合物を用いた。結果を表1に示す。
は肝臓であった。亜鉛イオン存在下にてDTPA残基導
入プルランと混合したIFNでは、その肝臓への蓄積量
が遊離IFNに比較して有意に高くなっている。また、
亜鉛イオンがない状態における両者の混合は、IFNの
肝臓への蓄積には影響を与えなかった。肝臓以外の臓器
に関しては、遊離IFNとIFN−プルラン結合体との
間に大きな差は認められなかった。これらの結果は、肝
臓へIFNを移行させるプルランに金属配位結合を介し
てIFNを複合化することによって、肝臓へのIFNの
ターゲティングが達成できたことを示している。この優
れた肝臓ターゲティング能ハイドロゲルは化学結合によ
ってIFNとプルランとを結合させた場合と同様の結果
を示している。このことは、DTPA残基導入プルラン
とIFNとを、単に水溶液中で混ぜ合わせるだけで金属
配位結合を介してIFNがプルラン修飾され、その結
果、肝臓へのターゲティング効果が現れたことを示して
いる。しかしながら、金属イオンとして銅イオンを用い
た場合には、IFNの肝臓へのターゲティング効果は認
めらなかった。銅イオンの存在がゲルパーミエーション
クロマトグラフィのIFNピークを高分子量側にシフト
できなかったことを考えると、金属配位結合を介したI
FNとDTPA残基導入プルランとの結合は、用いる金
属イオンの種類に影響されることがわかる。
導入PVA(DTPA残基導入率:0.15μmole
/mgPVA)、タンパク質としてLyz、および銅イ
オンを用いる以外は実施例6と同様の方法で、銅イオン
を介したLyzとDTPA残基導入PVAとの結合体を
作製し、それらの結合体ならびに遊離Lyzの血液動態
を調べた。遊離Lyz、LyzとDTPA残基導入PV
Aとの混合物、銅イオンを介したDPTA−PVAとL
yzとの結合体の血中半減期は、それぞれ、約30、3
2、および800分間であった。このように、DTPA
残基導入PVAを銅イオン存在下にて混ぜ合わせるだけ
で、Lyzの血中半減期が有意に延長した。一方、銅イ
オンのない状態で両者を混合した場合には、Lyzの血
中半減期の有意な増加は見られなかった。化学結合法に
てLyz−PVA結合体を作製した場合にも、Lyzの
血中半減期の増加が見られたことから、Lyz分子が金
属イオンを介した配位結合とDTPA残基導入PVAに
よって修飾された結果、Lyzの血中動態が変化したと
考えられる。
PA残基をもつ架橋アミロペクチンハイドロゲル粒子
(DTPA残基導入率:0.10μmole/mg乾燥
ハイドロゲル)の乾燥重量10mgを2.5μM濃度の
硫酸銅水溶液2mlへ浸漬し、40℃1時間、放置し
た。その後、ハイドロゲル粒子を水にてよく遠心洗浄
し、キレートされていない銅イオンを除去し、凍結乾燥
した。水溶液中の銅イオンをキレート滴定により定量し
たところ、ハイドロゲル粒子ヘキレートされた銅イオン
量は、0.3μmole/mg乾燥ハイドロゲル粒子で
あった。次に、IFNの代わりにBSAを用いる以外、
実施例10と同様の方法にて125Iラベル化BSAを
調製した。この水溶液(1mg/ml濃度)の0.1m
lを乾燥ハイドロゲル粒子に滴下し、ゲル内へBSAを
含浸させた。これらの125Iラベル化BSA含浸銅イ
オンキレート架橋アミロペクチンハイドロゲル粒子を、
マウス背部皮下へ注射投与した後、ハイドロゲル粒子重
量とハイドロゲル粒子内に残存している放射活性を経時
的に測定した。ハイドロゲル粒子は時間とともにin
vivoで分解され、その残存重量は、注射1、4、
7、14日後で、それぞれ、90、73、40、0%で
あった。ハイドロゲル内に残存している放射活性は時間
とともに、85、67、43、0%と減少した。一方、
銅イオン処理していないDTPA残基をもつ架橋アミロ
ペクチンハイドロゲル粒子を用いて同様の検討を行った
ところ、その残存重量は、注射1、4、7、14日後
で、それぞれ、89、70、46、0%と、in vi
vo分解性に関しては、銅イオン処理ハイドロゲル粒子
群に比べて相違は見られなかった。しかしながら、残存
放射活性は、注射1日後に初期含浸量の20%まで低下
し、4日後にはその活性は認められなかった。以上のよ
うに、銅イオンを介して配位固定されたタンパク質は、
invivoにおいてもハイドロゲル粒子からはずれる
こととなく、ハイドロゲルの分解とともに、ハイドロゲ
ル粒子から徐放されたと考えられる。
子運搬体に、化学結合ではなく、金属イオンを介して配
位的に結合させることを特徴とする、簡易な薬物−高分
子複合体調製方法である。この調製方法に適用される薬
物は、治療薬、治療薬を包含した薬物運搬体、および診
断薬のいずれでもよい。キレート配位子を有する高分子
材料あるいはそれ自身でキレート能を有する高分子材料
と薬物とを金属イオンの存在下にて混合することによ
り、薬物と高分子との複合体が容易に得られること、さ
らに、得られた複合体が薬物の血中寿命の延長およびそ
のターゲティング、ならびに薬物の徐放化などを通し
て、従来の化学結合法によって作製されてきた薬物−高
分子複合体と同様に、薬効発現が極めて容易であり、本
発明の産業利用性は非常に大きいといえる。
A残基導入プルランとの混合によるIFN分子サイズの
変化を示す図である。
ロゲル粒子へのBSAの吸着を示す図である。
Claims (4)
- 【請求項1】キレート能を有する薬物とキレート能を有
する高分子物質または化学的に導入されたキレート配位
子を有する高分子物質とを金属イオンの存在下で混合す
ることを特徴とする、薬物−高分子複合体製剤の調製方
法。 - 【請求項2】キレート能を有する高分子物質が水溶性あ
るいはマイクロゲル状、粒子状、流動性固体状等の注射
可能な形状であることを特徴とする請求項1に記載の薬
物−高分子複合体製剤の調製方法。 - 【請求項3】キレート能を有する薬物含有リポソーム、
高分子ミセル、あるいは高分子微粒子などの薬物包含運
搬体と請求項1に記載の高分子物質とを金属イオンの存
在下で混合することを特徴とする、薬物−高分子複合体
製剤の調製方法。 - 【請求項4】キレート能を有する薬物を含有した超音波
造影剤あるいは核磁気共鳴増感剤などの診断薬と請求項
1に記載の高分子物質とを金属イオンの存在下で混合す
ることを特徴とする、薬物−高分子複合体製剤の調製方
法。
Priority Applications (1)
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JP35425296A JPH10158195A (ja) | 1996-11-28 | 1996-11-28 | 配位結合を利用した薬物−高分子複合体製剤の調製方法 |
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JP35425296A JPH10158195A (ja) | 1996-11-28 | 1996-11-28 | 配位結合を利用した薬物−高分子複合体製剤の調製方法 |
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---|---|
JPH10158195A true JPH10158195A (ja) | 1998-06-16 |
Family
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