JP2004500438A - 高親和性のペプチド含有ナノ粒子 - Google Patents
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Abstract
本発明は、治療物の分野に関する。より詳細には、本発明は、所望の治療特性を有する粒子に関する。本発明は、生体分子標的に対する高い親和性を有する2つ以上のペプチド部分で各々が官能基化されたナノ粒子である、水溶性ポリマーナノ粒子に関し、このペプチドは、ナノ粒子ポリマーマトリックス構造または核に共有結合されている。このナノ粒子は、必要に応じて、標的化および/または送達を容易にするための1つ以上のエンハンサー分子をさらに含み得るか、またはこれらは、必要に応じて、ポリエチレングリコール(PEG)ベースの分子を含み得る。このPEG鎖は、リンカーまたはつなぎ鎖として役立ち得、一端がナノ粒子表面に結合し、そして他端が高親和性ペプチドで官能基化されている。
Description
【0001】
(発明の分野)
本発明は、治療物の分野に関する。より詳細には、本発明は、所望の治療特性を有する粒子に関する。
【0002】
(発明の背景)
特定のペプチドは、高い親和性および選択性で特定のタンパク質に結合し得、そして従って、種々の分離、診断、および治療用途において利用され得る。しかし、インビボで、ペプチドは、しばしば血流から迅速に清澄化される。従って、治療ペプチドならびに他の治療剤の循環時間を増加する方法が、所望される。1つの戦略において、ペプチド、タンパク質、および超分子複合体(例えば、リポソーム)は、その循環時間を増加するために、ポリエチレングリコール(PEG)分子を用いて官能基化されてきた。新しい治療構築物および送達方法が、望ましい。
【0003】
治療物のその意図される標的への結合強度の増加もまた、望ましい。バンコマイシンの場合、これは、バンコマイシン分子がオリゴマー(すなわち、二量体)を形成するオリゴマー形成を介して達成される(Raoら,Chem.Biol.,6(6):353−9 1999)。この二量体は、結合強度における実質的な増加を示す。多価の物質が例外的な結合性能を保有し得るので、その使用が、多くの研究者によって調査されている(S.Borman,Chemical&Engineering News,2000年10月9日、p.48−53)。
【0004】
インテグリンに結合するペプチド(例えば、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)配列を含むペプチド)は、ナノ粒子表面に物理的に吸着されるかまたはこのナノ粒子内に分散される治療分子の経口送達を増強する目的で、アルキルシアノアクリレートナノ粒子に結合される(欧州特許684814を参照のこと)。同様に、ナノ粒子は、診断用途のためにタンパク質で官能基化されている。
【0005】
治療腫瘍学における現在の研究の重要な領域は、抗脈管形成剤の開発に集中しており、この抗脈管形成剤は、血管の増殖を阻害または抑制することによって、腫瘍の脈管構造を標的する。RGD含有ペプチドは、インテグリンαvβ3レセプターを遮断し、そして新生血管内皮細胞のアポトーシスを迅速に開始することが示されている。さらに、これらは、いくつかの腫瘍細胞株の転移および腫瘍誘導性脈管形成を阻害することが示されている。αvβ3インテグリン結合に選択的な短循環RGD含有ペプチドが、開発されてきた(R.Haubnerら,J.Am.Chem.Soc.,118:7461−71,1997)。治療剤としての小さな循環ペプチドの利点は、その容易な合成、タンパク分解に対する耐性、および低い免疫原性である。
【0006】
ナノ粒子は、治療剤の送達のため、およびその表面に高親和性結合エレメントを提示するための両方において使用され得る。ナノ粒子は、水溶液中でのポリ(アミノ酸)成分の自発的凝集から形成される(米国特許第5904936号)。従って、形成されたこの粒子は、薬物送達の使用を示し、この薬物は、この粒子内にカプセル化されている。
【0007】
特定のタンパク質(例えば、インターロイキン、インターフェロン、および腫瘍壊死因子を含むサイトカイン)の毒性は、これらが系の広範にわたる様式で与えられる場合に、その投薬量を制限する。しかし、このタンパク質が、このタンパク質の活性が所望される組織において局所的に濃縮される場合、全身的な毒性は実質的に低減され得る。このことを達成するための1つの方法は、融合タンパク質の生成を介する方法であり、ここで、サイトカインは、腫瘍特異的抗体ドメインに融合される(Xiang J.,Hum Antibodies,1999,9,23−26)。この腫瘍特異的抗体は、腫瘍中の抗原に結合し、これによって系全体にわたる循環からこの融合タンパク質を除去し、そしてこれらを腫瘍内で濃縮する。治療タンパク質を特定の組織に濃縮するための他の方法は、価値がある。
【0008】
ブロックコポリマーは、インビボ使用のためのナノ粒子を形成するために有利に使用され得る。アルミニウムポルフィリン複合体は、種々の環状エーテルおよびエステル(エポキシド、ラクトン、およびラクチドを含む)を重合し、そして酸無水物または二酸化炭素と共にエポキシドのコポリマーを生成することが公知である(Inoue,S.,J.Macromol.Sci.1988,A25,571)。これらのポリマーの多くは、一般に、低い(存在する場合)毒性および免疫原性という所望の特徴の多くを有することが認識され、そしてこれらは、身体から迅速に清澄化される。さらに、この重合系の「生きた」性質は、狭い分子量分布のブロックコポリマーの調製を可能にする。ポリ( −カプロラクトン)co(エチレンオキシド)ジブロックコポリマー(Gan,Z.;Jiang,B.;Zhang,J.,J.Appl.Polym.Sci.1996,59,961)は、ナノ粒子を迅速に形成し、そして酵素分解を受けることが示されている(Gan,Z.;Jim,T.F.;Li,M.;Yuer,Z.;Wang,S.;Wu,C.,Macromolecules 1999,32,590)。ナノ粒子はまた、水溶液中でのポリ(アミノ酸)(PAA)ブロックコポリマーの自発的凝集から形成される(米国特許第5904936号)。PEG−PAAブロックコポリマー(PEGブロックは親水性であり、そしてPAAブロックは、疎水性のアミノ酸またはアミノ酸誘導体(例えば、β−ベンジル−L−アスパラギン酸)からなる)もまた、ナノ粒子を形成するために使用され、そしてさらに、低分子の送達における使用のために研究されている(Kwon,G.S.;Naito,M.;Yokoyama,M.;Okano,T.;Sakurai,Y.;Kataoka,K.;Pharm Res 1995,32,192;Y.Jeong,J.Cheon,S.Kim,J.Nah,Y.Lee.Y.Sung,T.AkaikeおよびC.Cho.,J.Controlled Release 1998,51,169)。
【0009】
重合は、ミクロエマルジョンおよび逆ミクロエマルジョンの分散相中で実施される(総説については、Antonietti,M.;およびBasten,R.;Macromol.Chem.Phys.1995,196,441を参照のこと);逆ミクロエマルジョンの分散水相中での親水性モノマーの重合の研究については、Holtzscherer,C.;およびCandau,F.;Colloids and Surfaces,1988,29,411を参照のこと)。ミクロエマルジョンの重合は、5nm〜50nmのサイズ範囲の粒子を生じ得る。
【0010】
ナノ粒子それ自体が生物活性を示すようなナノ粒子の改変は、望ましくあり得る。好ましくは、このようなナノ粒子は、構築が容易であるべきであり、意図される分子標的に強力かつ特異的に結合すべきであり、生態適合性であるべきであり、身体内で非毒性物質へと代謝されるべきであり、非免疫原性であるべきであり、そして血流からの所望でないクリアランスを回避するように設計されるべきである。循環時間は、通過サイズに一部影響を受け得る。RES系による取り込みを避けるために、50nm未満の粒子が好ましい。腎臓のクリアランスを避けるために、5nmより大きな粒子が好ましい。また、上記のように、循環時間はまた、この粒子の表面上のPEGの存在によって延長され得る。特定の治療物の標的された送達もまた、有益である。
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、生体分子標的に対する高い親和性を有する2つ以上のペプチド部分で各々が官能基化されたナノ粒子である、水溶性ポリマーナノ粒子に関し、このペプチドは、ナノ粒子ポリマーマトリックス構造または核に共有結合されている。このナノ粒子は、必要に応じて、標的化および/または送達を容易にするための1つ以上のエンハンサー分子をさらに含み得るか、またはこれらは、必要に応じて、ポリエチレングリコール(PEG)ベースの分子を含み得る。このPEG鎖は、リンカーまたはつなぎ鎖として役立ち得、一端がナノ粒子表面に結合し、そして他端が高親和性ペプチドで官能基化されている。本発明はさらに、これらのポリマーナノ粒子を合成する方法、およびこれらが使用され得る種々の用途に関する。本明細書中に開示される本発明のナノ粒子は、ペプチド官能基化ナノ粒子(PFN)と呼ばれる。
【0012】
本発明の粒子は、好ましくは、直径約5nm〜約1000nm、より好ましくは約5nm〜約100nmであり、そして最も好ましくは、5〜30nmである。この粒子サイズは、生理活性物質としてのそのインビボでの使用を可能にする。
【0013】
ナノ粒子当りの高親和性ペプチド(「HAP」)部分の数は、2〜約1000、好ましくは2〜100、および最も好ましくは、2〜30の範囲であり得る。ナノ粒子は、必要に応じて、さらに、1より多くの型の高親和性ペプチドからなり得る。本明細書中で使用される場合、ペプチドの「型」は、特定の分子構造のペプチドとして定義される。
【0014】
高親和性ペプチドの1つの型(本明細書中で、「1型ペプチド」と呼ぶ)は、治療的に有用なタンパク質またはタンパク質フラグメント(本明細書中では、「治療タンパク質」と呼ぶ)をこのナノ粒子に結合するように働く。高親和性ペプチドの別の型(本明細書中では、「2型ペプチド」と呼ぶ)は、本発明のポリマーナノ粒子を、所定の細胞型の表面上または特定の組織型中で発現される標的タンパク質に結合するように働く。
【0015】
ペプチド単独と比較する場合、本明細書中に開示されるペプチド官能基化ナノ粒子は、有利なことに、より長い循環時間を有し得る。さらに、PFNは、その標的により強力に結合し得、そしてより低い免疫原性を示し得る。このナノ粒子は、哺乳動物において無毒性の物質へと代謝される生物分解性成分からなる。
【0016】
本発明のさらなる利点は、相補的な特徴を有する複数の高親和性ペプチド型が、単一のナノ粒子内に組み込まれ得るということである。これは、例えば、1つまたは1つより多くの標的化ペプチドを使用して、治療ナノ粒子が、所望の細胞型、組織、または器官に標的されること;あるいは治療タンパク質が、所望の標的部位に送達されることを可能にし得る。
【0017】
本発明の1つの実施形態において、ナノ粒子コアは、疎水性/親水性ブロックコポリマーからなる。使用されるブロックコポリマーは、特定の条件下で、水性の系中でナノ粒子を自発的に形成する特性を有する。好ましくは、このブロックコポリマー鎖は、少なくとも2つの型の反復モノマーからなる。好ましいブロック形態は、AB型またはABA型である。「Aブロック」は、親水性であり、例えばポリエチレングリコールまたはポリアルキレンオキシドである。「Bブロック」は、疎水性および中性であり、例えば、ポリカプロラクトンである。狭い分子量分布を有するブロックコポリマーが好ましい。その分解性、生体適合性、十分に実証された合成、化学的性質の目的適合性(tailorability)、およびその架橋の容易さのために、ポリ(アミノ酸)(「PAA」)が、本発明における疎水性ビルディングブロックとして好ましい。これらは、同様に、親水性ブロックの形成において利用され得る。
【0018】
本発明の別の実施形態において、ナノ粒子コアは、架橋した親水性ビルディングブロックからなる。これらのナノ粒子は、最初に、ナノ粒子コアを、逆ミクロエマルジョンの分散した水相中でのこのビルディングブロックの架橋を介して形成することによって、作製される。この架橋可能な部分は、好ましくはアクリレートまたはアクリルアミドである。炭水化物誘導体は、好ましくはビルディングブロックとして使用される。
【0019】
本発明の1つの実施形態は、生体分子標的の分子認識のための方法に関する。より詳細には、この実施形態は、特定の生体分子標的に対する高い親和性を有する2型ペプチド配列からなるナノ粒子に関し、このペプチドは、親水性ポリマーまたはブロックコポリマーナノ粒子マトリックス分子に共有結合している。
【0020】
本発明の別の実施形態において、タンパク質治療剤(親水性タンパク質を含む)は、薬物送達用途のためのナノ粒子構築物に組み込まれる。より詳細には、この実施形態は、治療タンパク質を制御可能に放出するナノ粒子医薬に関する。この実施形態において、このナノ粒子は、3つの型の分子構築物からなる:ナノ粒子マトリックス分子、治療タンパク質に対する高い親和性を有する1型ペプチド配列、および治療タンパク質。この治療タンパク質−ペプチドの親和性は、使用におけるナノ粒子中の治療タンパク質の保持を可能にし、このタンパク質の循環時間を伸張する。治療タンパク質に高親和性で結合し得る1つ以上のペプチド型が、使用され得る。
【0021】
本発明のさらなる実施形態は、標的された細胞または組織型の付近に治療タンパク質を制御送達する方法を提供する。この実施形態のナノ粒子は、4つの型の分子構造からなる:ナノ粒子マトリックス分子、治療タンパク質に対する高い親和性を有する1型短ペプチド配列、特定の細胞上または特定の組織中で発現されるタンパク質に対する高い親和性を有する2型短ペプチド配列、ならびに治療タンパク質。従って、治療剤として投与される場合、治療タンパク質を含むナノ粒子は、標的化されたタンパク質を発現する組織または細胞の表面に濃縮する。
【0022】
(発明の詳細な説明)
用語「1つの(「a」および「an」)」は、本明細書中で使用される場合、「1つ以上の」を意味する。
【0023】
「水溶性」によって、本明細書中または添付の特許請求の範囲において、水中での10mg/mLより高い溶解度、そして好ましくは50mg/mLより高い溶解度を有することが意味される。
【0024】
高親和性分子からなるナノ粒子が提供される;このナノ粒子は、水溶性であり、そしてインビボ送達し得る。より詳細には、各ポリマーナノ粒子は、生体分子標的に対する高い親和性を有する2つ以上のペプチド部分で官能基化され、このペプチド部分は、ナノ粒子ポリマーマトリックス構造物に共有結合されている。本発明は、さらに、これらのポリマーナノ粒子を合成する方法、およびこれらが使用され得る種々の用途に関する。
【0025】
本発明のナノ粒子は、直径が約5nm〜約1000nmのサイズ範囲、より好ましくは約5nm〜約100nmであり得、そして最も好ましくは約5nm〜約30nmである。5〜30nmのサイズ範囲のナノ粒子は、腎臓のクリアランスおよび細網内皮系(RES)による取り込みを効率的に回避し得る。さらに、小さな粒子は、所望の細胞、組織、または器官標的に到達するために、有利に血流を抜け出し得る。
【0026】
ナノ粒子当たりのHAP部分の数は、2〜約1000、好ましくは2〜100、そして最も好ましくは2〜30の範囲であり得る。このナノ粒子は、必要に応じて、さらに、1つより多くの型の高親和性ペプチドからなり得る。本明細書中で使用される場合、ペプチド「型」は、特定の分子構造として定義される。
【0027】
本発明に従う高親和性ビルディングブロックとして使用されるペプチドは、一般に、10−4Mと10−9Mとの結合親和性を有する。この高親和性ペプチドは、目的のレセプターに対する公知のペプチドリガンドからなり得る。例えば、Phoenix Peptideのペプチドリガンド−レセプターライブラリー(http://www.phoenixpeptide.com/Peptidelibrarylist.htm)は、潜在的に治療的に有用なレセプターについての数千の既知ペプチドリガンドを含む。HAPは、例えば、ラクタム、ダラージン(dalargin)および他のエンケファリン、エンドルフィン、アンギオテンシンII、ゴナドトロピン放出ホルモン、トロンビンレセプターフラグメント、ミエリン、および抗原性ペプチドのような天然のペプチドである。本発明において有用な高親和性ペプチドビルディングブロックは、目的のタンパク質についてのペプチドライブラリーの高スループットスクリーニングを介して発見され得る(例えば、ファージディスプレイライブラリーまたはビーズ上で示される直線配列のライブラリー)。このようなスクリーニング方法は、当該分野で公知である(例えば、C.F.Barbas,D.R.Burton,J.K.Scott,G.J.Silverman,Phage Display,2001,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYを参照のこと)。この高親和性ペプチドは、改変されたアミノ酸または完全な合成アミノ酸からなり得る。
【0028】
この高親和性ペプチドの認識部分の長さは、約3〜約100アミノ酸で変化し得る。好ましくは、このペプチドの認識部分は、約3〜約15アミノ酸、そしてより好ましくは3〜10アミノ酸の範囲である。より短い配列が好ましい。なぜなら、15アミノ酸未満のペプチドは、より長いペプチド配列と比較して低免疫原性であり得るためである。小さなペプチドは、そのライブラリーが、迅速にスクリーニングされ得るというさらなる利点を有する。また、これらは、固体状態技術を使用して、より容易に合成され得る。
【0029】
ナノ粒子を作製するための、同じ分子構造または異なる分子構造の複数の高親和性ペプチド分子の使用は、このナノ粒子の結合活性を増加し得る。本発明において使用される場合、「高親和性」は、10−4Mより強い結合定数での、単一ペプチドの単一標的分子への結合を意味するが、「結合活性」は、2つ以上のこのようなペプチド単位の、細胞または分子複合体上の2つ以上の標的分子への結合を意味する。
【0030】
いくつかの実施形態における試薬および出発物質は、商業的に得られ得る。例えば、アミノ酸は、Sigma−Aldrich(Milwaukee,WI)、Pierce Chemical Company(Rockford,IL)、およびChemdex(www.chemdex.com)のような化学薬品卸業者から購入され得る。さらに、化学製品要覧および資源(例えば、http://pubs.acs.orq/chemcy/)は、出発物質を位置付けるために使用され得る。高親和性結合剤として使用されるべきペプチドは、多くの供給業者から購入され得、その1つはPeptide Biosynthesis(www.peptidebiosynthesis.com)である。
【0031】
ナノ粒子コアは、迅速に合成され、所望の時間スケールで身体内で分解され、無毒性であり、高親和性ペプチドでの容易な官能基化を可能にし、そして治療剤および他の治療物質のタンパク質の封入を可能にするように選択される。
【0032】
(I.ブロックコポリマーを含むPFN)
ナノ粒子コアがブロックコポリマーを含む場合、このブロックコポリマーは、疎水性ブロックおよび親水性ブロックを含む。この構造を有するポリマー材料は、本発明における使用に好ましい構造を有するナノ粒子の形成に従うことが知られている。この疎水性ブロックおよび親水性ブロックは、非毒性かつ非免疫原性であることが知られている物質を含み、この物質は、身体内での分解および浄化機構によって排除され(これらの特性を有するポリマーの総説については、Amass,W.,Amass,A.,Tighe,B.,Polymer International,1998,47,89を参照のこと)、そしてまた、ペプチド、タンパク質または薬学的因子で容易に官能基化されるナノ粒子の調製を可能にする。ペプチド官能基化ナノ粒子の調製のためにこれらの材料を合成することが必要である先行技術に対する利点、改良、改変が、本明細書中に記載される。
【0033】
1実施形態において、本発明において使用される疎水性/親水性ブロックコポリマーは、大部分がInoueによって開発されたアルミニウムポルフィリン化学を使用して合成され得る(Inoue,S.,J.Macromol.Sci.1988,A25,571;および本明細書中でアルミニウムポルフィリンリビング重合の総説について引用された参考文献を参照のこと)。アルミニウムポルイフィリン錯体は、種々の環式エーテルおよびエステル(エポキシド、ラクトン、およびラクチドを含む)を重合し、エポキシドと、酸無水物または二酸化炭素とのコポリマーを形成することが知られている(Inoue,同書)。これらのポリマーの多くは、一般に、(もしあったとしても)低い毒性および免疫原性の所望の特徴の多くを有することが認識されており、身体から容易に清浄化される。この重合系の「リビング(living)」性質に起因して、ブロックコポリマーが、調製され得る。
【0034】
アルミニウムポルフィリン化学を使用する合成の1つの例として、ポリ(ε−カプロラクトン)−コ(エチレンオキシド)ジブロックコポリマーが、反応スキーム1に示されるように調製され得(Gan,Z.;Jiang,B.;Zhang,J.,J.Appl.Polym.Sci.,1996,59,961)、酵素分解を引き起こすナノ粒子を容易に形成する(Gan,Z.;Jim,;T.F.;Li,M.;Yuer,Z.;Wang,S.;Wu,C.,Macromolecules,1999,32,590)。PEGは、PEGが付着される実体物の循環時間を増加し、免疫系成分とPEG化した実体物との相互作用を妨害するPEGの能力が当該分野で周知(well documented)であるため、好ましい親水性ブロックである。
【0035】
【化1】
ポリ(ε−カプロラクトン)コ(エチレンオキシド)ジブロックコポリマーの首尾一貫した合成は、ペプチド官能基化ナノ粒子の調製に使用され得る追加のコポリマーの調製のための有用なペンダントとして役立つ。ε−カプロラクトンのプロパンオキシド、1,2−ブテンオキシド、3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン(ラクチド)、またはエキレンオキシドと無水コハク酸との混合物による置換は、新規な親水性/疎水性ブロックコポリマーの調製のための経路(反応スキーム2)を提供する。
【0036】
【化2】
一旦、疎水性/親水性ブロックコポリマーが合成されると、それらは、活性因子、すなわちペプチド、タンパク質、または誘導体化ペプチドおよびタンパク質構造、ならびに薬学的化合物に容易に結合する官能基を含むことが有機合成の当業者に公知の技術によって改変され得る。カップリング反応は、化学選択的連結反応を使用することによって活性因子の特異点で起こるように設計される。この反応部分は、代表的にペプチドまたはタンパク質上に見られるアミン、アルコール、およびカルボキシルのような他の部分とよりむしろ、優先的に互いに反応する。種々の化学選択的反応が同定され、最近概説されており(Lemieux,G.A.,;Bertozzi,C.R.,Trends in Biotechnology,1998,16,506)、これらの戦略の多くが、現在の発明に使用され得る。幾つかの可能な化学選択的連結反応のうちの1つの有用性を証明する例として、上記スキームに記載されたポリマーの第1のブロック上に位置付けされた末端クロリドは、ナトリウムスルフヒドリドとの反応によってチオールに容易に転化される(March,J.Advanced Organic Chemistry 第4版,John Wiley & Sons,Inc.New York,1992,406〜407頁)(反応スキーム3)。
【0037】
【化3】
単離後、チオール含有ポリマーは、チオールのα−ブロモカルボニル官能基との高選択的反応によってペプチドに結合され(反応スキーム4)(例えば、Muir,T.W.;Williams,M.J.;Ginsberg,W.H.;Kent,S.B.H.,Biochemistry,1994,33,7701を参照のこと)、官能基が容易にリシン含有ペプチドに導入される(例えば、Dawson,P.E.;Kent,S.B.H.,J.Am.Chem.Soc.1993,115,7263を参照のこと)。
【0038】
【化4】
さらに、粒子形成後に架橋され得る官能基が、含まれ得る。好ましくは、架橋可能な部分は、粒子間架橋の発生を減少させるために疎水性ブロック内に含まれる。例えば、疎水性ブロックの形成の間における重合溶液中の少量の1,2−エポキシ−4−ペンタノンエチレンケタールの封入は、疎水性ブロック中に幾つかの環式ケタールを組み込む。次いで、これらのケタールは、酸性水に対する曝露の際に切断され得、ケトン官能基を再生する。次いで、このケトン官能基は、エチレンジアミンから形成される化合物のようなジ(アミノ−オキシ)含有化合物との反応によって架橋され得る(スキーム5)。
【0039】
【化5】
糖質「ブロック」由来のエポキシドまたは環式エステルのアルミニウムポルフィリンリビング重合(反応スキーム6)から作製された新規ポリマーが、使用され得る。これらのブロックコポリマーは、デキストラン/スチレンまたはデキストラン/アクリレートブロックコポリマーと同様の特性を有し、この合成は、Haddleton,D.M.;Ohno,K.,Biomacromolecules,2000,1,152で議論されている。しかし、このデキストラン/エポキシドまたはデキストラン/環式エステルは、非毒性であるとして一般に受容され、身体から排除される非毒性分解産物に分解され得るポリマーセグメントからなるというさらなる利点を有する。
【0040】
【化6】
上記デキストランコポリマーは、この点でナノ粒子を形成し得、本発明における使用のために、それらは、高親和性ペプチドまたはPEGリンカーに対する化学選択的連結を引き起こすか、またはブロックコポリマー鎖の架橋を容易にするために、最初に改変されなければならない。これを達成する1つの方法は、反応スキーム7に概略化した一連の反応を介する。このコポリマーは、まず、1,1’−カルボニルジイミダゾールと反応され、次いで、エチレンジアミンの添加によってデキストランブロックにアミン官能基が導入される。ブロモ無水酢酸によるさらなる改変は、デキストラン上のα−ブロモカルボニル基を脱離する。以前のように、この基は、ペプチドのシステイン残基またはチオール末端PEGの側鎖のようなチオールに化学選択的に連結され得る。有機合成、ペプチド合成、または生化学の当業者は、追加の官能基が、連結工程(例えば、ヒドラジド、アミノオキシ、チオセミカルバジド、α−アミノチオール、n−ヒドロキシスクシンイミド活性エステル、ハロゲン、トシレート、およびカルボジイミドで補助したエステルおよびアミド形成が挙げられるが、これらに限定されない)のために使用され得ることを理解する。
【0041】
【化7】
改変したブロックコポリマーは、反応スキーム4に示されるようなチオール含有分子と反応する。
【0042】
PEG−ポリカプロラクトンブロックの場合、粒子形成後に架橋され得る官能基が含まれ得る。好ましくは、この架橋可能な部分は、粒子間架橋の発生を減少させるために、疎水性ブロック内に含まれる。これは、例えば、重合混合物中の1,2−エポキシ−4−ペンタノンエチレンケタールの封入、脱保護、および上記のようなジ(アミノ−オキシ)含有化合物との架橋によって達成され得る。
【0043】
それらの分解性、生体適合性、周知の合成、化学的性質の変更性、それらが架橋され得る容易さのために、ポリ(アミノ酸)(「PAA」)は、本発明において、疎水性構築ブロックとして好ましい。さらに、それらは、さらに親水性ブロックを形成する際に使用され得る。
【0044】
PAAコアは、例えば、米国特許第5,904,936号において議論される標準的なアミノ酸連結方法を使用して合成され得る。しかし、’936で使用される重合方法は、広い分子量分布およびあまり理解されていない構造を生じ得る(Deming,T.J.,Nature 1997,390,386〜389;Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.1997,119,2759〜2760;およびそれらの文献に引かれている参考文献)。例えば、’936で議論されるように、ブロック構造は、それがより低い分子量のコロイド粒子形成するため、所望され得る。理論に束縛されることを望まないが、’936で使用される重合方法は、このような十分に規定されたブロック構造を有さず、むしろポリマー種の複合混合物を有する鎖を生成し得、このような構造は、安定なコロイド粒子を形成しない。従って、別個の構造を有する十分に特徴づけされたPAAを単離するために、Deming(前出Deming;Deming,T.J.,Macromolecules 1999,32,4500〜4502)によって最近開発されたリビング重合方法を使用する制御された重合スキームを介して、PAA鎖を合成することが有利であり得る。
【0045】
PAA疎水性ブロックおよびPEG親水性ブロック:この実施形態において、PAAブロックは、疎水性アミノ酸およびそれらの誘導体(例えば、Leu、lle、Val、Ala、Tyr、Phe、およびβ−ベンジル−L−アスパラギン酸)を含む。PEGは、幾つかの方法を使用して、ブロックに結合され得る。例えば、PEGは、ペプチド合成の当業者に公知であるカルボジイミドカップリング反応(G.T.Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego,1996)を介して、PAA(カルボン酸またはアミン末端のいずれか)に結合され得る。このPEGは、それが固相ペプチド合成に使用される樹脂上にある間、またはPAAがこの樹脂から切断された後に、PAAに結合され得る。あるいは、α−アミノ酸−N−カルボキシ無水物(NCA)の遷移金属媒介重合の使用は、それらの合成の間のPAAの末端基官能基化を可能にする(Curtin,S.A.,Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.,1999,121,7427〜7428)。この技術は、遷移金属錯体上でのPEG官能基化開始リガンドを使用することによってPAA−PEG化合物の合成の際に補助するために適応され得る。このPEG官能基化開始リガンドは、NCAの重合を開始し、PAA鎖に共有結合されたままであり、所望のブロック構築物を与える。
【0046】
PAA疎水性ブロックおよびPAA親水性ブロック:この実施形態において、ポリ(アミノ酸)鎖(「PAA」)は、疎水性アミノ酸および中性アミノ酸(例えば、Leu、Ile、Val、Ala、TyrおよびPhe)と、親水性アミノ酸(例えば、Glu、Asp、Lys、Arg、およびHis)のブロックからなる。好ましくは、イオン性アミノ酸は、カルボキシル官能基を有する側鎖を有する(Glu、Asp)。各ブロックのアミノ酸の型を、1つまたは2つのペプチドに限定することが望ましくあり得る。例えば、疎水性ブロックは、全体として、ロイシンからなり得るか、またはロイシンとバリンのランダムコポリマーであり得る。最も好ましくは、親水性ブロックは、全体としてGluからなるが、一方で、疎水性ブロックは、LeuとValとのコポリマーである。これらのPAAは、好ましくは、例えば、ABまたはABA型のブロックの形態である。
【0047】
PAA架橋:自発的な形成の後、ナノ粒子構造は、さらに、ブロックコポリマー鎖を架橋することによって安定化され得る。このような架橋は、ポリマー分野の当業者に一般に公知のいくつかの方法によって達成され得る。1つの方法は、鎖構造にアミン残基(例えば、PAA構造におけるリジン)を含むことである。アミン残基の割合は、ナノ粒子を形成する能力が、許容可能な程度を越えて減少しないように十分に低くあるべきである。次いで、これらのアミン残基は、例えば、試薬N−ヒドロキシ−スクシンイミドアクリレートを使用することによって、アクリレート部分で官能化され得る。自発的なナノ粒子形成に続いて、同じナノ粒子内の異なる鎖からのアクリレート官能基を、標準的なフリーラジカル重合技術を使用して、一緒に連結され得る。あるいは、グルタルアルデヒドまたは当該分野で周知の他の試薬(例えば、G Hermanson,Bioconjugation Techniques, Academic Press,San Diego,1996を参照のこと)がまた、鎖に含まれるアミン残基を架橋するために使用され得る。HAPをブロックコポリマー連結する場合のように、ブロックコポリマーに鎖の互いの架橋がまた、化学選択的結合対を使用して達成され得る(Lemieux,G.A.;Bertozzi,C.R.,Trends in Biotechnology,1998,16,506)。これらの試薬が、HAPの部分またはタンパク質に対して低い反応性のみを有するか、または反応性を有さない、化学選択的反応対が、好ましい。
【0048】
好ましくは、架橋は、粒子間反応を減少するために、ナノ粒子の表面から離れた、疎水性ブロックにおいて実施される。化学選択的反応対が使用される場合、ブロックコポリマー鎖は、レブリン酸官能化アミン末端またはリジン残基(この目的のために、合成の間疎水性ブロックに分散される)、およびアミノオキシ基を介してブロックコポリマーに含まれるケトン基を通して架橋され得る。
【0049】
ペプチド結合(attachment):2型高親和性ペチチドは、最も高い程度の生物学的活性のために、得られたナノ粒子の表面かまたはその近傍に位置すべきである。このペプチドを粒子の表面の近傍に配置するために、HAPは、好ましくは、ブロックコポリマー鎖の一方の末端または両方の末端に結合され得る。あるいは、HAPは、HAP分子を、ブロックコポリマー鎖に沿う1つ以上の残基に結合することによって組み込まれ得る。1つの実施形態において、構築物は、ABA型のものであり得、このBブロックは、疎水性ポリマーからなり、Aブロックは、親水性ブロックからなり、そしてこの高い親和性ペプチドは、親水性ポリマーブロックの末端に結合される。あるいは、高密度のペプチドが、ブロックコポリマー鎖に沿う複数の残基または中程度の分子への結合によって組み込まれ得る。好ましくは、これらのHAPは、親水性ブロックの自由末端に結合される。
【0050】
HAP分子は、ナノ粒子形成の前か、ナノ粒子が形成された後、ブロックコポリマー分子に直接結合され得るか、またはPEG−ブロックコポリマー分子を介して結合され得る。理論に束縛されることを望まないが、HAPが、ナノ粒子形成の前に、コポリマー鎖に結合される場合、コポリマーのコロイド分散系の自発的な、熱力学的に駆動された形成を乱す可能性を減少されるために、3〜10アミノ酸の短いHAP配列が、より長い配列とは反対に好ましい。このナノ粒子が、PEG鎖からなる場合、これらのペプチドは、粒子形成の前、その間、またはその後に、PEG分子の自由端に結合され得る。
【0051】
さらに、HAPのブロックコポリマーへの結合は、ペプチド合成の当業者に公知の標準的なカップリング技術を使用してコポリマー側鎖への結合を介して達成され得る(Jones,J.,前出;Bodanszky,M,Bodanszky,A.,前出)、例えば、これは、HAPのアミノ末端を、PAAのGluまたはAspのカルボン酸側鎖に結合することによって達成され得る。逆に、HAPのカルボン酸末端は、PAA中の、Lys、Arg、またはHisの窒素含有官能基に共有結合され得る。ここで、PAAまたは高親和性ペプチドのいずれかのカルボン酸末端は、活性化エステルに転換され(DCCまたは他の試薬を用いて)、そして反応パートナーのアミン官能基を用いて縮合される。
【0052】
これらのブロックコポリマーはまた、化学選択的連結反応を可能にする官能基を含むように、有機合成の当業者に公知の技術によって改変され得る (Lemieux,同書)。反応部分は、優先的に、ペプチドまたはタンパク質上に代表的に見出されるアミン、アルコールおよびカルボキシルのような他の部分よりはむしろ互いに反応する。いくつかの可能な化学選択的連結反応の1つの有用性を実証する例として、PAA上のチオール含有官能基(これは、システイン残基の組み込みによって含まれ得る)またはチオール末端PEGが、チオールとα−ブロモカルボニル官能基(例えば、Muir,T.W.;Williams,M.J.;Ginsberg,W.H.;Kent,S.B.H.Biochemistry,1994,33,7701を参照のこと)、官能基(これは、リジン含有ペプチドまたはタンパク質に容易に導入される)(例えば、Dawson,P.E.;Kent,S.B.H.J.Am.Chem.Soc.,1993,115,7263を参照のこと)との高度に選択的な反応によってペプチドに結合される。
【0053】
PEGは、ナノ粒子を生成するために使用されるブロックコポリマー中の親水性ブロックとして使用され得る。あるいは、これらのナノ粒子を生成するために使用されるブロックコポリマーは、他のポリマーからなり、例えば、親水性PAAブロックが使用され得る。後者の場合において、ナノ粒子形成の後、文献に十分に記載されるPEG化の利点のために、ナノ粒子表面をPEG鎖で官能化することが有益であり得る。以下に議論されるように、二官能性PEG鎖が、高親和性ペプチドをこの表面に連結するために使用され得るか、または一官能性PEG鎖が、表面を改変するために使用され得る。
【0054】
PEGは、優先的にヘテロ二官能性またはホモ二官能性であり、約1,000と約20,000との間の平均分子量である分子量を有する。
【0055】
この用途のために、両方の末端が同じ反応性部分を有して終結する二官能性PEGまたは2つの異なる反応性部分を有して終結するヘテロ二官能性PEGが、使用され得る。PEGの末端として使用され得る代表的な反応性基としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アミン、アルデヒド、−ハロ、カルボニル、アミノオキシ、ヒドラジド、チオール、ケトン、ハライド、およびエポキシド。二官能性PEGの場合において、2つの同一な基が、PEGの各末端に位置する。ヘテロ二官能性PEGは、PEGの各末端に位置する1つの固有な基を有する。次いで、PEGのナノ粒子への結合が、例えば、EDCのようなカルボジイミドを使用して、コポリマー鎖のカルボキシ末端をPEG鎖のアミノ末端に連結することによって達成され得る(G.T.Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press, San Diego,1996)。PEGがナノ粒子に結合された後、PEG鎖の一部分の反応性自由端が、HPA分子と反応し得る。
【0056】
HAPペプチドは、1つのポリペプチドのPEG末端に結合され得、引き続いてHAP−PEG分子が、PAAまたは他のPEG末端を介してナノ粒子に結合され得る。このHAPは、PEGへの結合の前に、その全体が形成され得るか、またはそれは、PEG末端への1つのアミノ酸の連続的な結合によって形成され得る。後者の方法を使用して、ナノ粒子に結合されるPEG末端は、固相ペプチド合成のために使用される樹脂に結合され得る。例えば、ジアミノPEGが出発物質として使用され得る。このポリマーは、この手順のために適切であることが見出され得る種々の樹脂(例えば、PEGA樹脂)に結合され得る(例えば、PEG−ペプチド結合体の例については、Auzanneau,F.I.;Meldal,M.;Bock,K.;J.Pept.Sci.1991,1,31を参照のこと)。次いで、このHAPは、固相ペプチド合成に使用される標準的な試薬および手順を使用して、未反応のPEG末端から生長される。好ましくは、これらの手順は、ペプチドのポリアミド骨格の調製のために、FMOCベースまたはBOCベースの保護基ストラテジーを使用し、そしてDCCを使用するか、またはTのカルボン酸活性化試薬を使用する。配列の完成の際に、このPEGは、基質樹脂から切断され、PEGを樹脂に結合するために使用されたPEG末端を再生する。切断剤の正確な性質が、ペプチドに存在する他の官能基および基質樹脂の同定によって決定される。トリチル官能化樹脂が使用される上に概略された好ましい例において、切断は、塩化メチレン中のTFAを使用して達成される。一旦自由になると、この末端は、必要ならば、ナノ粒子への結合を補助する所望の官能基への引き続く改変を受け得る。例えば、BOC−アミノオキシ酢酸への結合は、BOC保護基のTFAでの除去の後に、アミノオキシ官能化PEG末端を生じる。次いで、このアミノオキシ部分は、ブロックポリマー鎖またはナノ粒子上に存在するアルデヒドまたはケトン基と反応され得る。ペプチドの合成の間に助剤として使用される保護基は、合成の間のいくつかの段階で除去され得、それの除去の正確な手順位置が、使用される全体的な合成ストラテジーによって指示される。同様に、ペプチド側鎖基改変がまた、合成の間のいくつかの点で起こり得る。
【0057】
一旦所望のPEG−ペプチド種が、存在する末端官能基と共に合成されると、これは、ナノ粒子に結合される。このカップリング手順を補助するために、相補的(complimentary)反応対が、予め選択される(1つは、PEG−ペプチドのPEG末端として、他方は官能化ビルディングブロックとして(これは、ナノ粒子処方物に含まれる))。例えば、アミノオキシ基は、PEG末端に配置され得、そしてケトンまたはアルデヒドビルディングブロック、あるいはケトンまたはアルデヒドビルディングブロックを用いて合成されたアミノ酸が、ナノ粒子構造に組み込まれ得る。これらの2つの官能基は、互いと優先的に高収率で反応することが知られており(Lemieux、同書)、従ってPEG−ペプチド複合体をナノ粒子にカップリングする。議論されたものよりもあまり選択的ではない、他の既知の反応対がまた、使用され得、正確な選択が、合成的考察、毒物学的考察、経済的考察または他の考に基づく。
【0058】
循環を増加するためのPEG官能化:本発明の1つの実施形態において、ポリエチレングリコール(PEG)または他のポリアルキレンオキシド(PAO)が、ノナ粒子形成の前または後に、ブロックコポリマー鎖に結合され、その結果、それらは、ナノ粒子の表面に位置する。PEGがナノ粒子形成の前に結合される場合、それらの存在は、自発的なナノ粒子形成を干渉してはならない。このような干渉は、PEGの結合が、PEG−ブロックコポリマー分子を親水性にしすぎる場合に生じ得る。従って、PEG鎖がナノ粒子形成の前に結合される場合、PEG鎖および親水性コポリマーの分子量は、ノナ粒子形成が、適切な水溶液条件下で自発的に起こるように、十分低く維持されなくてはならない。このPEG鎖が、ナノ粒子形成の後に結合される場合、このような結合が、ナノ粒子構造の破壊を生じないように、注意しなければならない。このことが起こらないことを確実にするために使用され得る1つの方法は、PEG分子結合の前に、ナノ粒子構造内のコポリマー鎖を架橋することである。
【0059】
循環時間を増加させる目的のために使用されるPEGは、その末端にHAPを提供することを必要としない。従って、これらのPEG鎖は、単官能性であり得る;すなわち、1つの末端は、アミンのような反応性基で官能化され得、PEG鎖がこの部分を介して表面または分子に結合されることを可能にするが、他方の末端は、一般に生理学的条件に不活性であり、例えば、メトキシ基である。あるいは、二官能性PEG(これは、ブロックコポリマー鎖またはナノ粒子表面に一方の末端で結合され得る)は、循環時間を増加するために使用され得る。この場合、自由端(すなわち、コポリマーまたはナノ粒子に結合されない末端)は、当該分野で慣用的な方法を使用して、メトキシ基で「キャップされるか」または本質的に非反応性とされる。
【0060】
本発明において実施されるように、PEGは、リンカーとしてまたは循環時間を増加させるために使用される場合、PEGは線状であり、個々のPEG鎖の好ましい分子量は、1000〜50,000Daの分子量の範囲である。
【0061】
ブロックコポリマーからのナノ粒子の形成:一旦ペプチド官能化ブロックコポリマーが合成されると、標的化送達のためのナノ粒子が、以下のように形成され得る。ブロックコポリマー(このコポリマーのある割合は、2型ペプチド−官能化ブロックコポリマーで官能化され得る)は、水性緩衝液に添加される。例えば、2型ペプチド/ブロックコポリマーの希釈溶液は、水可溶性有機溶媒(例えば、DMF、THFなど)を含む水溶液中で調製される。次いで、水溶性有機溶媒が、透析または減圧下での蒸留のような方法によって水から除去される。
【0062】
(II.架橋された親水性ポリマーからなるPFN)
1つの実施形態において、重合可能な基を有する親水性ビルディングブロックが、安定なナノ粒子コアを形成するために使用される。これらのビルディングブロックは、逆マイクロエマルジョンの分散水相中で架橋される。1つの単一のビルディングブロックに結合された重合可能基の数は、例えば、1個〜3個の低分子量ビルディングブロックから、10個以上のポリマービルディングブロックの範囲であり得る。1より多い重合可能基を含むビルディングブロックは、架橋剤として機能し得、そしてゲル網目構造を可能にする。1、2またはそれより多い重合可能な基を有するビルディングブロックのセットから、異なる量および比率のビルディングブロックを使用することは、重合の際に、異なる可撓性(compliancy)のポリマー網目構造の形成を可能にする。
【0063】
例示的な架橋可能基としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アクリレート、アクリルアミド、ビニルエーテル、スチリル、エポキシド、マレイン酸誘導体、ジエン、置換ジエン、チオール、アルコール、アミン、ヒドロキシアミン、カルボン酸、無水カルボン酸、カルボン酸ハライド、アルデヒド、ケトン、イソシアネート、スクシンイミド、カルボン酸ヒドラジド、グリシジルエーテル、シロキサン、アルコキシシラン、アルキン、アジド、2’−ピリジルジチオール、フェニルグリオキサール、ヨード、マレイミド、イミドエステル、ジブロモプロピオネート、およびヨードアセチル。
【0064】
フリーラジカル重合:好ましい重合可能官能基は、アクリレート部分およびアクリルアミド部分である。このような部分は、フリーラジカル重合に対して反応性である。フリーラジカル重合は、UV光と光開始剤との組み合わせ、酸化還元対フリーラジカル開始剤、または熱および熱活性化開始剤によって容易に達成され得る。
【0065】
ナノ粒子コアを形成するために使用される例示的なモノマービルディングブロックとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アクリルアミド、アクリル酸ナトリウム、メチレンビスアクリルアミド、2,2−ビスアクリルアミド酢酸アンモニウム、2−アクリルアミドグリコール酸、メタクリル酸2−アミノエチル、オルニチンモノアクリルアミド、オルニチンジアクリルアミドナトリウム塩、N−アクリロイル(ヒドロキシメチル)−メチルアミン、ヒドロキシエチルアクリレート、N−(2−ヒドロキシプロピル)−アクリルアミド、2−スルホエチルメタクリレート、2−メタクリロイルエチルグルコシド、グルコースモノアクリレート、グルコール−1−(N−メチル)−アクリルアミド、グルコース−2−アクリルアミド、グルコース−1,2−ジアクリルアミド、マルトース−1−アクリルアミド、ソルビトールモノアクリレート、ソルビトールジアクリレート、スクロースジアクリレート、スクロースモノ(エチレンジアミンアクリルアミド)、スクロースジ(エチレンジアミンアクリルアミド)、スクロースジ(ジエチレントリアミンアクリルアミド)、カナマイシンテトラアクリルアミド、カナマイシンジアクリルアミド、デキストランマルチアクリルアミド(dextran multiacrylamide)、スクロースモノ(エチレンジアミンアクリルアミド)モノ(ジエチレントリアミンアクリルアミド)モノ(フェニルアラニン)ナトリウム塩、ならびに他のアクリレートまたはアクリルアミド誘導体化糖。
【0066】
好ましい実施形態において、ビルディングブロックの少なくともいくつかは、炭水化物である。炭水化物ビルディングブロックの場合、炭水化物領域は、通常、複数のヒドロキシル基から構成され、ここで少なくとも1つのヒドロキシル基は、少なくとも1つの重合可能基を含むように修飾される。
【0067】
炭水化物ビルディングブロックの炭水化物領域は、炭水化物または炭水化物誘導体を含み得る。例えば、この炭水化物領域は、以下から誘導され得る:単糖類(例えば、グルコース、リボース、アラビノース、キシロース、アロース、アルトロース、マンノース、グルコース、イドース、ガラクトース、フルクトースまたはタロース);二糖類(例えば、マルトース、スクロース、ラクトースまたはトレハロース);三糖類;多糖類(例えば、セルロース、デンプン、グリコーゲン、アルギネート、イヌリン、およびデキストラン);または修飾多糖類。他の代表的な炭水化物としては、ソルビタン、ソルビトール、キトサンおよびグルコサミンが挙げられる。炭水化物は、ヒドロキシル基に加えてアミン基を含み得、そしてこのアミン基またはヒドロキシル基は、架橋基、他の官能基またはそれらの組み合わせを含むように修飾または置換され得る。
【0068】
炭水化物ベースのビルディングブロックは、生物有機化学の分野で公知の標準的なカップリング技術によって、炭水化物前駆体(例えば、スクロース、ソルビタール(sorbital)、デキストランなど)から調製され得る(例えば、G Hermanson,Bioconjugation Techniques,Academic Press,San Diego,1996,pp27−40,155,183−185,615−617;およびS.Hanesian,Preparative Carbohydrate Chemistry,Marcel Dekker,New York,1997を参照のこと)。例えば、架橋可能基は、アクリロイルクロリドをアミン官能化糖に滴下することによって、炭水化物に容易に結合される。アミン官能化糖は、エチレンジアミン(または他のアミン)と1,1’−カルボニルジイミダゾール活性化糖との反応によって調製され得る。アミンを炭水化物に導入する他の反応もまた、使用され得、この多くは、Bioconjugation Techniques(前出)において概説される。
【0069】
炭水化物ベースのビルディングブロックはまた、フリーラジカル条件下において重合することが知られている部分で、炭水化物を部分的に(または完全に)官能化することによって調製され得る。例えば、メタクリルエステルは、炭水化物と無水メタクリル酸またはグリシジルメタクリレートとの反応によって、様々な置換レベルにおいて炭水化物上で置換され得る(Vervoort,L.;Van den Mooter,G.;Augustijins,P.;Kinget,R.International Journal of Pharmaceutics,1998,172,127−135)。
【0070】
炭水化物ベースのビルディングブロックはまた、化学酵素的方法(Martin,B.D.ら、Macromolecules,1992,25,7081)によって調製され得、例えばここで、Pseudomonas cepaciaは、ピリジン中におけるビニルアクリレートとの単糖類のエステル交換反応を触媒するか、またはアクリレートの直接付加による単糖類のエステル交換反応を触媒する(Piletsky,S.,Andersson,H.,Nicholls,Macromolecules,1999,32,633−633)。多数の誘導体化炭水化物は、炭水化物化学の分野の当業者に公知であるため、他の官能基が存在し得る。
【0071】
炭水化物ベースのビルディングブロックに加えて、アクリレート誘導体化ポリマービルディングブロックまたはアクリルアミド誘導体化ポリマービルディングブロックの他の例としては、ポリエチレングリコールベースの分子(例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート)が挙げられる。
【0072】
ポリアミドの形成:オリゴマーカチオン性ビルディングブロック(例えば、キトサンまたはポリリジン)は、多官能性アニオン(例えば、ポリ(アスパラギン酸))と架橋されて、本発明における使用のためのナノ粒子を形成し得る。
【0073】
化学選択的重合:化学選択的ビルディングブロックはまた、ナノ粒子を形成するために使用され得る。このストラテジーの代表的な例は、部分的に酸化されて、逆マイクロエマルジョン内に多数のアルデヒドを含む多糖類の使用であり得る。ジ(アミノ−オキシ)含有化合物(例えば、エチレンジアミンから作製される化合物(反応スキーム8))は、次いで、架橋剤として使用され得、酸化された糖のアルデヒドは、このアミノ−オキシ官能基と反応する。
(反応スキーム8)
【0074】
【化8】
逆マイクロエマルジョン中におけるナノ粒子コアの製造:ナノ粒子が親水性ビルディングブロックから構成される場合、PFNは、最初に、逆マイクロエマルジョンの分散された水相に可溶化された親水性モノマービルディングブロックの架橋によりナノ粒子コアを形成することによって、製造される。ナノ粒子コアの製造のための逆マイクロエマルジョンは、水性緩衝液または水、ビルディングブロック、有機溶媒、界面活性剤および開始剤を適切な割合で合わせることにより形成され、連続した油相に分散した界面活性剤安定化水性ナノ液滴(nanodroplet)の安定な相を生成する。安定な逆マイクロエマルジョンの組成は、当業者によって、公知の方法を使用して見出され得る。これらは、例えば、Microemulsion Systems,H.L.RosanoおよびM.Clausse編、NewYork,N.Y.:M.Dekker,1987,およびHandbook of Microemulsion Science and Technology,P.KumarおよびK.L.Mittel編、New York,N.Y.:M.Dekker,1999において考察される。本発明において、可溶化された親水性ビルディングブロックを含む水相は、1つ以上の可溶化界面活性剤を含む有機溶媒に添加されて、逆マイクロエマルジョンを形成する。
【0075】
分散した水相は、約5〜約65重量%、好ましくは約5〜約25重量%、最も好ましくは5〜15重量%可溶化された親水性ビルディングブロックを含む。最も好ましい組成物では、重合の後、得られるナノ粒子は、より高級なポリマーを含有するナノ粒子と比較してより親水性でありかつより可溶性であり、そして分解生成物の量は、より高級なポリマーを含有するナノ粒子と比較して少ない。理論に縛られることは望まないが、高い含水量のコアの使用はまた、最終用途における免疫原性を減少し得る。なぜなら、認識する免疫系成分の異種表面が少ないからである。高い含水量はまた、より可撓性のポリマーネットワークにわたって伸展性(compliancy)を提供する。従って、細胞表面レセプターに結合する場合、このナノ粒子は、細胞表面に適合し、より多くの表面レセプターを結合させ得る。より多くのレセプターの結合により、このナノ粒子はアンタゴニストとしてより良好に機能し得る。さらに、理論に縛られることを望まないが、PFN細胞表面範囲は、他の細胞シグナル伝達経路を阻害し得ると考えられる。
【0076】
逆マイクロエマルジョンの分散した水相のナノ液滴中のビルディングブロックの重合は、当業者に周知の標準的な手順に従う(例えば、Odian G.G.;Principles of Polymerization、第3版、Wiley,New York,1991;L.H.Sperling,Introduction to Physical Polymer Science,Chapter 1,1−21頁、John Wiley and Sons,New York,1986;およびR.B.SeymourおよびC.E.Carraher,Polymer Chemistry,Chapters 7−11,193−356頁,Dekker,New York,1981を参照のこと)。好ましくは、ビルディングブロックは、官能性/架橋可能基(例えば、アクリレートおよびアクリルアミド)を有し、フリーラジカル重合に対して感受性であり、そして重合は、UV開始剤とUV光の組み合わせ、酸化還元対フリーラジカル開始剤、または熱開始剤および熱によって誘導され得る。有機溶媒および非反応性界面活性剤は、重合後に除去され、架橋した水溶性のナノ粒子を生じる。
【0077】
分散した水相のナノ液滴のサイズは、用いられる水、界面活性剤および油相の相対量によって決定される。界面活性剤は、逆マイクロエマルジョンを安定化するために使用される。これらの界面活性剤は、架橋可能部分を含まず、これらはビルディングブロックではない。使用され得る界面活性剤としては、市販の界面活性剤、例えば、Aerosol OT(AOT)、ポリエチレンオキシ(n)ノニルフェノール(IgepalTM,Rhodia Inc.Surfactants and Specialties,Crandbrook,NJ)、ソルビタンエステル(モノオレイン酸ソルビタン(Span(登録商標)80)、モノラウリン酸ソルビタン(Span(登録商標)20)、モノパルミチン酸ソルビン酸(Span(登録商標)40)、モノステアリン酸ソルビタン(Span(登録商標)60)、トリオレイン酸ソルビタン(Span(登録商標)85)、およびトリステアリン酸ソルビタン(Span(登録商標)65)(これらは、例えば、Sigma(St Louis,MO)から入手可能である)を含む)が挙げられる。セスキオレイン酸ソルビタン(Span(登録商標)83)は、Aldrich Chemical Co.,Inc.(Milwaukee,WI)から入手可能である。使用され得る他の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標))化合物が挙げられる。共界面活性剤(cosurfactant)としては、以下が挙げられる:モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)20およびTween(登録商標)21)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)80およびTween(登録商標)80R)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)60およびTween(登録商標)61)、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)85)、およびトリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)65)(これらは、例えば、Sigma(St Louis,MO)から入手可能である)。他の代表的な市販の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオキシ(40)−ソルビトールヘキサオレイン酸エステル(Atlas G−1086,ICI Specialties,Wilmington DE)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB,Aldrich)、および直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS,Ashland Chemical Co.,Columbus,OH)が挙げられる。
【0078】
他の例示的な界面活性剤としては、以下が挙げられる:脂肪酸セッケン、アルキルホスフェートおよびジアルキルホスフェート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、1級アミン塩、2級アミン塩、3級アミン塩、4級アミン塩、n−アルキルキサンタン、n−アルキルエトキシル化スルフェート、ジアルキルスルホコハク酸塩、n−アルキルジメチルベタイン、n−アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル、n−アルキルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステル、ポリエチレンオキシソルビタンエステル、ソルビトールエステルおよびポリエチレンオキシソルビトールエステル。
【0079】
他の界面活性剤としては、脂質(例えば、リン脂質、糖脂質、コレステロールおよびコレステロール誘導体)が挙げられる。例示的な脂質としては、脂肪酸または脂肪酸を含む分子が挙げられ、ここでこの脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、パルミトイル酸、リノール酸、リノレン酸、およびアラキドン酸、ならびにそれらの塩(例えば、ナトリウム塩)が挙げられる。この脂肪酸は、例えば、酸官能性部分を含む小分子へのカップリング反応によってこの酸官能基をスルホネートに変換することによって、または当業者に公知の他の官能基の変換によって、修飾され得る。
【0080】
さらに、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、デンプンおよびそれらの誘導体は、本発明において、界面活性剤としての使用を見出し得る。
【0081】
カチオン性脂質(例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/クロリド(CTAB/CTAC)、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド/クロリド(DODAB/DODAC)、1,2−ジアシル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、1,2−ジアシル−3−ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、[2,3−ビス(オレオイル)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、および[N−(n’−N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]クオレステロール、ジオール(Dc−Chol))は、共界面活性剤として使用され得る。アルコール(例えば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノールおよびオクタノール)もまた、共界面活性剤として使用され得る。より長い炭素鎖を有する他のアルコールもまた使用され得る。
【0082】
ナノ粒子コアの官能化:構成可能なビルディングブロックは、ナノ粒子を形成するために架橋され、このナノ粒子の表面は、2型高親和性ペプチドで官能化される。HAPは、ブロックコポリマーナノ粒子に関して本明細書中で先に考察されたように、直接かまたはリンカー分子を介してのいずれかで、ナノ粒子の表面に結合され得る。リンカーの配置において、高親和性ペプチドの一部または全ては、テザーの末端で「表示」される。従って、本発明の1つの適用において、PFNは、本明細書中で前述される様な生分解性なの粒子コアの表面で表示される高親和性ペプチドを構成する。
【0083】
本発明の別の実施形態において、PFNは、前述のナノ粒子コアの表面に、リンカー分子(このリンカーは、好ましくは、PEGを含む)を介して結合した高親和性ペプチドを構成する。
【0084】
これらの実施形態の各々について、ナノ粒子をいくつかのカップリングストラテジーを使用して官能化し、カップリングのために使用される異なる成分および反応性化学部分の両方の付加の順序を変えることが可能である。
【0085】
これらの成分が互いに結合する順序に関して、例えば、PEGを含むリンカー分子によって親水性ポリマーナノ粒子に結合した高親和性ペプチドを構成するPFNは、以下の様式で合成され得る:このナノ粒子コアは、初めに、二官能性PEG含有テザーと反応され、続いて、このPEGの一部の自由端が高親和性ペプチドで官能化される。あるいは、この高親和性ペプチドは、初めに、PEG含有テザーに結合され、続いて、他のPEG末端がこのナノ粒子コアに結合される。最後に、本発明の一実施形態において、高親和性ペプチドに結合したPEG含有テザーは、ポリアミノ酸のステップバイステップ型の固体支持体合成から誘導される。
【0086】
カップリング方法(単数または複数)に関して、高親和性ペプチドをナノ粒子コアにグラフト化し、そしてこのテザーとナノ粒子とを反応させるために、反応性部分のいくつかの組み合わせが選択され得る。一連の直交性の反応セットを使用して、いくつかのコアビルディングブロックおよび/またはテザーアームを変更する際、異なるペプチドを同じナノ粒子コアにグラフト化し、そして/または異なるエンハンサーをこのナノ粒子コアに十分に制御された割合でグラフト化することもまた可能である。直交反応性の対を使用する反応は、同時にかまたは連続的に行われ得る。
【0087】
反応条件が考慮される限り、水系でナノ粒子を官能化することが好ましい。ナノ粒子コアの合成の残留物である界面活性剤および油相は、溶媒洗浄(例えば、エタノールを使用して界面活性剤および油を可溶化し、同時にポリマーナノ粒子を沈殿させる);界面活性剤吸着ビーズ;透析を使用することによって、または水系(例えば、4M尿素)を使用することによって(別々にまたは組み合わせて)除去され得る。界面活性剤の除去のための方法は、当該分野で公知である。
【0088】
高親和性ペプチドは、ナノ粒子表面への結合を可能にする官能基を含まなければならない。好ましくは、必ずしも必要ではないが、この官能基は、カップリング反応を助けるために選択された化学選択性試薬の対の1つのメンバーである。(Lemieux,G.,Bertozzi,C.,Trends in Biotechnology,1998,16,506−513)。例えば、ナノ粒子表面(および/またはその表面にグラフト化したリンカー)が、α−カルボニル官能基を表す場合、このペプチドはスルフヒドリル部分を介して結合され得る。ペプチド構造中のスルフヒドリル部分は、システイン残基の含有によって達成され得る。
【0089】
カップリングはまた、ナノ粒子上の1級アミンまたはリンカー末端とペプチド上のカルボン酸との間で可能である。ペプチド構造中のカルボン酸は、直鎖ペプチドについて、その末端アミノ酸のいずれかで見出され得るか、またはアスパラギン酸またはグルタミン酸の含有によって見出され得る。カルボン酸がナノ粒子上にあり、かつ1級アミンがペプチドに属している反対の構成もまた、容易にアクセス可能である。多くの重合可能ビルディングブロックは、酸性部分を含み、この酸性部分は、それらの重合後に、ビーズの表面においてアクセス可能である。高親和性ペプチドについて、1級アミン官能基は、そのN末端(このペプチドが直鎖である場合)のいずれかで見出され得、そして/またはリジン残基の導入によって見出され得る。
【0090】
反応性化学対の別の例は、スルフヒドリルとマレイミド部分とのカップリングを含む。このマレイミド官能基は、当業者に公知の方法(例えば、G.T.Hermanson、Bioconjugate Techniques,Academic Press Ed.,1996に記載される方法)を用いて、他の通常の官能基(例えば、カルボン酸、アミン、チオールまたはアルコール)と(好ましくは市販の)短いリンカーとを反応させることによって、ペプチド、リンカーまたはナノ粒子の表面のいずれかに容易に導入され得る。高親和性ペプチドはまた、アミノ−オキシ官能基とアルデヒドまたはケトン部分との間の反応を用いて、ナノ粒子および/またはテザーに結合され得る。このアミノ−オキシ部分(ナノ粒子上にあるかまたはペプチド内にあるかのいずれかである)は、当業者に公知の一連の形質転換によって、他の通常の官能基(例えば、アミン)から初めて導入され得る。同じ様式で、アルデヒドまたはケトン含有粒子およびアルデヒド含有ペプチドは、公知の方法によって容易に合成される。
【0091】
この得られるペプチド官能化ナノ粒子は、直ちに使用され得るか、溶液として保存され得るか、または長期間の貯蔵のために凍結乾燥され得る。
【0092】
(III.エンハンサー分子の使用)
必要に応じて、ナノ粒子表面はまた、ペプチド以外の分子によって官能化され得る。「エンハンサー」と本明細書中で称されるこのような分子は、好ましくは、以下のカテゴリーの1つ以上に属する小分子から構成される:特定の細胞による取込みを増大する分子(例えば、特定の癌細胞による取込みを促進するために使用される葉酸)、特異的標的化に対する認識を提供する分子(例えば、単鎖多糖類)、PFNが蓄積する動物組織または植物組織におけるPFNの追跡を可能にする分子(例えば、色素、蛍光分子または放射性分子)、または有用な治療効果を提供する高親和性ペプチド以外の任意の分子。高親和性ペプチドと同様に、これらのエンハンサーは、PFNの表面に直接結合され得るか、またはリンカー分子の末端で表され得る。
【0093】
一般的に、ポリマーコア、PEG、エンハンサーおよびHAP成分の結合は、標準的な生体結合技術によって達成され得る。例えば、ペプチドのカルボキシ末端をコアのアミン末端に(またはその逆)結合するために、カルボジイミド(例えば、EDC)が使用され得る。コア上のアミノ基をペプチド上のアミノ機に結合するために、グルタルアルデヒドが使用され得る。これらの例は、限定的ではなく、当業者は、複数のカップリング試薬または方法から選択し得る(例えば、Jones,J.,Amino Acid and Peptide Synthesis,Oxford University Press,New York 1992;Bodanszky,M;Bodanszky,A.,ThePractice of Peptide Synthesis,Springer−Verlag,New York 1994;G.T.Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego,1996を参照のこと)。あるいは、化学選択性カップリング試薬の相補対が用いられ得、この対の一方のメンバーはPAAに組み込まれ、そしてこの対の他方のメンバーは、HAPに組み込まれる。実際に、このストラテジーが使用され、大きなポリペプチド配列の調製において成功している(Lemieux、同書)。また、末端官能化ポリペプチドの調製における新たな進歩(Curtin,S.A.Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.,1999,121,7427−7428)により、上記のカップリング化学の必要性を回避し、HAP末端コポリマー構造の直接合成が可能となり得る。
【0094】
(IV、タンパク質制御放出)
特定の実施形態において、本発明のナノ粒子は、治療ペプチドまたはタンパク質の制御放出に有用である。本発明のナノ粒子は、とりわけ、神経系、内分泌系、心臓血管系、血液循環系、呼吸器系、細網内皮細胞系、骨格系、骨格筋、平滑筋、免疫系、生殖系、および癌組織に作用するタンパク質またはタンパク質フラグメントから構成され得る。
【0095】
本発明において有意に使用され得るタンパク質は、限定しないが、ヒト身体によって天然に産生されるタンパク質、このようなタンパク質の組換え体、およびこのようなタンパク質の誘導体およびアナログ、ならびにレセプターの可溶性部分が挙げられる。例えば、サイトカイン(例えば、インターロイキンおよびインターフェロン)、ならびに成長因子、およびサイトカインおよび成長因子レセプターの可溶性画分が使用され得る。サイトカインはしばしば、低分子量糖タンパク質である。糖タンパク質は、一般的に、性質において親水性であるので、これらは、本発明における使用に特に受け入れられる。親水性タンパク質は、現在当該分野で公知のブロックコポリマーナノ粒子に望ましくない程度に組み込まれると予期される。なぜなら、親水性タンパク質は、ナノ粒子の外側の溶液中に残ることが熱力学的に好ましいからである。しかし、本発明において、高い親和性のペプチドは、親水性のタンパク質をブロックコポリマーに、続いてナノ粒子にまたはナノ粒子内に結合するのに役立つ。
【0096】
PAAブロックから形成される治療剤含有粒子:ブロックコポリマー(その少なくともいくらかが、1型ペプチド官能基化ブロックコポリマーである)が水溶液に添加される。DMFは、溶解を促進するために使用され得る。第2に、治療タンパク質は、水溶液中で溶解される。1型ペプチドは、溶液中でのナノ粒子の形成の前、その間、またはその後に治療タンパク質に非共有結合的に結合し得る。次いで、ブロックコポリマーは、DMFの除去とともにナノ粒子に自発的に合体する。最後の結果は、治療的価値のタンパク質の部分またはタンパク質のフラグメント(これらは、ナノ粒子によって少なくとも部分的に含まれるかまたは取り囲まれる)に構成されるナノ粒子の形成である。
【0097】
HAPで官能基化され、そして治療タンパク質で複合体化されたブロックコポリマー−ペプチドは、親和性ペプチドで官能基化されていないブロックコポリマーとは異なる構造を有し、異なって作用する。例えば、比較的親水性のタンパク質を用いて、ブロックコポリマー−タンパク質複合体は、ブロックコポリマー単独よりも大きく、親水性である。従って、1型ペプチドで官能基化されたブロックコポリマーに対する親水性ブロックのサイズを減少するかまたは全体的にその親水性ブロックを除去することが有利であり得る。
【0098】
高い親和性のペプチドは、ペプチド合成または有機化学の当業者によく知られた種々の方法によってPAAに接続され得る。例えば、HAPのカルボン酸末端は、ペプチド合成においてしばしば使用される活性化エステルまたはカルボジイミドカップリング化学の使用によってPAAのアミン末端に結合され得る。あるいは、化学選択的カップリング試薬の相補的な対が使用され得、対の1つのメンバーがPAAに組み込まれ、そして対の他のメンバーがHAPに組み込まれる。実際、この戦略は、大きなペプチド配列の調製において首尾良く使用されている。(Lemieux,G.,Bertozzi,C.,Trends in Biotechnology,1998,16,506−513およびそこに引用される参考文献)。Demingらの方法はHAPからPAAブロックを成長するために使用され得る(Curtin,S.A.,Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.,1999,121,7427−7428)(反応スキーム9)。この方法において、HAPは、NCAの重合のために開始リガンドとして作用してHAP−PAA材料を生じるように適切に官能基化される(HAPの反応性官能基の保護は、NCA重合の引き続く防止を妨げるのに必要であり得る)。HAPまたはPAAが保護状態で使用されて保護される場合、HAP−NCA材料の脱保護は、活性種を生成するために必要であり得る。
【0099】
(反応スキーム9):
【0100】
【化9】
ナノ粒子内の治療タンパク質の保持は、ペプチド親和性およびペプチド濃度によって制御され得る。ペプチド親和性/ペプチド濃度における最適は、おそらくある。ナノ粒子がタンパク質に非常に弱く結合する場合、タンパク質は、非常に迅速に放出される。結合が強すぎる場合、タンパク質は、所望されるよりも長くナノ粒子に隔離され得る。
【0101】
ポリカプロラクトンブロックから形成される治療剤含有粒子:類似の様式で、HAPをポリカプロラクトンに結合することが望ましくあり得る。これは、ペプチド合成または有機化学の当業者により多くの方法で達成され得る。例えば、ポリカプロラクトンの末端ヒドロキシルは、脱離基(例えば、アルコールとp−トルエンスルホニルクロライドとの反応から生じるもの)に変換され得る。得られるスルホンエステルは、HAPのアミンによって置換され得、HAPとポリカプロラクトンとの間に共有結合を生じる(反応スキーム10)。
【0102】
(反応スキーム10):
【0103】
【化10】
あるいは、ポリカプロラクトンブロックは、アルミニウムポルフィリンの使用により、適切に保護され官能基化されたHAPから成長され得る。この例は、HAPがその図に示される多糖類の代わりをすることを除いて、スキーム10に示されるスキームと類似のスキームを有する。保護基が除去された後、活性なHAP−ポリカプロラクトン物質が単離され得る。
【0104】
逆マイクロエマルジョンにおいて形成される治療剤含有粒子:タンパク質はまた、逆マイクロエマルジョン方法を使用して形成されるナノ粒子のコアに隔離され得る。この実施形態について、ナノ粒子が、タンパク質の活性を弱めることなしに、活性治療タンパク質の周りに形成されることが重要である。これは、本開示において先に議論されたように、逆マイクロエマルジョンの分散水相におけるナノ粒子の形成において化学選択的試薬を使用することによって達成され得る。この戦略の代表的な例は、逆エマルジョン内に多数のアルデヒドを含むように部分的に酸化された多糖類の使用である。ケトン官能基との高い親和性のペプチドはまた、溶液中に含まれる。ペプチドを含むケトンは、レブリン酸を用いたアミン末端(またはリジン残基側鎖)の官能基化によって形成され得る。HAPが結合する治療タンパク質もマイクロエマルジョンに含まれる。次いで、ジ(アミノ−オキシ)含有化合物(例えば、エチレンジアミンから形成される化合物(反応スキーム11))は、HAPを多糖類に結合することおよび多糖類コアを架橋することの両方のために使用される。従って、治療タンパク質を取り囲む架橋ネットワークが形成される。
【0105】
(反応スキーム11):
【0106】
【化11】
HAPの使用は、ナノ粒子コアにおけるタンパク質の保持を増加するために役立つ。このように、ナノ粒子内の治療タンパク質の保持は、ペプチド親和性、ペプチド濃度、およびネットワーク架橋密度によって制御される。
【0107】
(V.治療タンパク質の標的送達)
本発明の別の実施形態は、治療タンパク質を標的細胞または組織型の近位に制御送達するための方法を提供する。この実施形態のナノ粒子は、4つの型の分子構造(ナノ粒子マトリクス分子、治療タンパク質に対する高い親和性を有する1型ペプチド、特定の細胞または特定の組織で発現されるタンパク質に対する高い親和性を有する2型ペプチド、および治療タンパク質)から構成される。従って、治療剤として投与される場合、治療タンパク質を含むナノ粒子は、標的タンパク質を発現する組織または細胞表面に濃縮する。治療タンパク質−ペプチド親和性はまた、使用においてナノ粒子中の治療タンパク質の保持を可能にし、タンパク質の循環時間を延ばす。治療タンパク質に高い親和性であり得る1つ以上のペプチドが使用され得る。
【0108】
タンパク質は、ブロックコポリマー構造から製造されたナノ粒子および本明細中において先に議論されたような逆エマルジョンの分散相に形成されるナノ粒子の両方に含まれ得る。ブロックコポリマーナノ粒子構造および逆マイクロエマルジョンの分散相に形成されるナノ粒子の両方のための2型ペプチドを用いたナノ粒子表面官能化もまた、本開示において示される。
【0109】
(VI.PFN特質)
本発明において実施されるように、水溶性ペプチド官能基化ナノ粒子(PFN)は、それらを優れた治療候補にするいくつかの特質を有する。それらの小さなサイズのため、ナノ粒子は、生物活性な実在物としてインビボで(例えば、哺乳動物の体内において)使用され得る。インビボ適用において、ペプチド単独と比較して、本明細書中に開示されるPFNは、増加した親和性およびより長い循環時間を有利に有する。ナノ粒子は、体内において非毒性物質に代謝される。
【0110】
本発明のナノ粒子は、高い水含有量を有する。「高い水含有量」とは、ブロックコポリマーを含むPFNに関して、コアが、85重量%〜95重量%より多くの水を含み得、残りがポリマー材料であることを意味する。逆マイクロエマルジョンの分散水相において架橋される親水性ポリマーを含むPFNは、約35〜約95重量%の水、好ましくは約75〜約95重量%の水、そして最も好ましくは、85〜95重量%の水のコアを有する。従って、分解産物の量は、より高いポリマー濃度を有する粒子よりも少ない。高い水含有量のコアはまた、免疫原性を減少し得る。なぜなら、免疫系成分が相互作用する表面がより小さいからである。高い水含有量はまた、コンプライアンズを提供する。従って、細胞表面レセプターに付着する場合、ナノ粒子は、細胞表面に適合し得、より多くの表面レセプターが結合し得る。より多くのレセプターを結合することによって、ナノ粒子はアンタゴニストとしてより良く機能し得る。さらに、理論によって束縛されることは望まないが、PFN細胞表面範囲が他の細胞シグナル伝達経路を阻害し得ると考えられる。
【0111】
増加した治療性能は、PFNの多価構造から生じ得る。「多価」とは、ナノ粒子当たり2つ以上の高い親和性認識エレメントがあることを意味する。多価によって、ナノ粒子が同時に複数の点で結合し得る。多価はまた、標的分子の近位にペプチドの高い局所濃度を提供する。理論によって束縛されることは望まないが、この高い局所濃度は、結合した標的の割合を増加し得ると考えられる。
【0112】
さらに、本明細書中に概説されるPFN製造戦略は、表面の組成が所望の特性に従ってあつらえられ得る、多数の細かく調整されたヘテロ官能基化実体の製造を可能にする。コアビルディングブロックおよび/またはテザーアームのいくらかを変えることによって、異なるペプチドおよび/またはエンハンサー分子(例えば、PEG鎖、送達可能物(例えば、葉酸塩)または小さな治療分子)を一連のオルソゴナルな反応セット(アミン−酸、アミノオキシ−ケトンおよびブロモアセトアミド−スルフヒドリル)を利用することによって十分制御される比率においてナノ粒子につなげることが可能である。エンハンサーとしてのPEGの使用は、例えば、消化性酵素を結合されたペプチドから切断することを妨げるための立体的障害物を提供するか、またはPFNの表面近くに水和相を提供するか、またはPFNの免疫原性応答を最小化し、それらをステルス(stealthy)にする。
【0113】
本出願のさらなる利点は、1つより多くの型のペプチド分子が単一のナノ粒子に組み込まれ得ることである。これによって、例えば、治療ペプチドが、標的ペプチドを使用して、所望の細胞型、組織または器官に標的化され得る。
【0114】
本発明において開示されるナノ粒子の別の利点は、癌治療剤としてのそれらの有用性である。腫瘍において見出される漏出性の脈管構造によって、これらのナノ粒子は、腫瘍内の血流および濃縮物に残され得る。この効果(巨大分子因子について増加した透過性および保持(EPR)として記載される)は、固形腫瘍において普遍的に観測された(H.Maedaら、J.Controlled Release,2000,V65,p.271−284)。巨大分子についてのEPR効果に関する重要な機構は、保持であるが、低分子量の物質は、保持されないで、拡散によって循環する血液に戻される。従って、5〜100nmの直径のPFNは、固形腫瘍内に蓄積し得る。従って、本発明のナノ粒子は、標的に結合する前でさえ腫瘍内に自然に濃縮し、より高い効力およびより低い全身毒性を提供する。
【0115】
本発明のナノ粒子および分解産物は、非毒性であり、身体から排除されるように設計される。これらは、分解性の、好ましくは、炭水化物に基づくか、PAAに基づくか、またはPEGに基づくコアを有し得、分解の速度が糖の個性(identity)、架橋密度、および他の特徴によって制御される。従って、ナノ粒子は、体内で代謝され得、体内での望ましくない蓄積を妨げる。ナノ粒子は、注射(皮下、静脈、筋内、皮内、腹腔内、脳内、または非経口的)によって投与され得る。ナノ粒子はまた、鼻、肺、膣、眼への送達および経口摂取に適し得る。ナノ粒子は、投与のために薬学的に受容可能なキャリアに懸濁され得る。
【0116】
本発明のナノ粒子はまた、標的細胞または組織型の生物学的認識能力が理由で、その標的細胞または組織型を含む環境において分離および診断適用に有用である。
【0117】
(VIII.治療標的および治療適用)
特に本発明のナノ粒子が有利に使用され得る1つの領域は、癌の処置である。腫瘍は、タンパク質およびより大きな実体(例えば、ナノ粒子)が腫瘍内で濃縮し得る漏出性の脈管構造を有することが公知である。このようなタンパク質およびタンパク質フラグメントを使用する本発明のナノ粒子は、抗癌治療剤としての用途を見出し得る。例えば、上皮増殖因子レセプター(EFGr)の可溶性部分および脈管内皮増殖因子レセプター(VEGFr)の可溶性部分が使用され得る。腫瘍内のEGFrおよびVEGFrのようなレセプターの可溶性部分の放出は、EGFおよびVEGFが細胞表面のそれらのレセプターに結合し得る前に、増殖因子EGRおよびVEGFに結合することに役立ち得る。このような使用は、腫瘍の増殖を遅くし、腫瘍内の新脈管形成を遅くするのに役立ち得る。
【0118】
この技術の別の例示的な適用において、VEGF−2を心臓組織に送達するナノ粒子は、新たな心臓動脈の増殖を刺激するために使用され得、従って、心臓疾患の処置における治療剤として作用し得る。
【0119】
本発明において利用され得るさらなる活性剤は、インターロイキン(例えば、IL−2)およびコロニー刺激因子(例えば、GM−CSF)を含み、これらの両者は、免疫系、および腫瘍壊死因子を刺激するといわれている。
【0120】
いくつかの実施形態における試薬および開始物質は、Sigma−Aldrich(St Louise,MO and Milwaukee,WI)、Kodak(Rochester,NY)、Fisher(Pittsburgh,PA)、Pierce Chemical Company(Rockford,IL)およびCarbomer Inc.(Westborough,MA)、Radcure(Smyrna,GA)、およびPolysciences(Niles,IL)のような化学物質販売業者から商業的に得られ得る。PEG分子は、Shearwater Polymers(Huntsville、AL)から購入され得る。さらに、化学製品ディレクトリおよびリソース(例えば、<http://pubs.acs.org/chemcy/>を使用して開始物質を探し出し得る。
【0121】
高い親和性の結合剤として使用されるペプチドは、多くの供給源から購入され得、1つは、Peptide Biosynthesis(www.peptidebiosynthesis.com)である。
【0122】
(実施例)
(実施例1)
ポリ(エチレンオキシド−b−ε−カプロラクトン)(MW=1.5×104、総重量の15〜25%のポリ(エチレンオキシド)ブロック)を、Gan,Z;Jiang,B.;Zhang,J.J.Appl.Polym.Sci.1996,59,961の方法によって調製する。単離後、この生成物をTHF中に溶解して、NaSHの水溶液に添加する。一旦、NaSHとの反応が完了すれば、この溶液を、HClの添加によってヒュームフード中で中性のpHに酸性化し、そして全ての揮発性化合物を真空下で除去し、わずかに減少した容積のみの水溶液を残した。窒素の保護ブランケット下で、この生成物をTHF中に再度溶解すして、遠心分離して塩を除去した。THFの容積を真空下で低減させ、そして得られた溶液を、迅速に攪拌しているビーカーの脱気した水(これに添加されているTHFよりも10〜1000倍多い水を含む)に滴下して添加する。得られた溶液を真空下において、THFを除く。次いで、修飾したバージョンのArg−Gly−Asp−D Phe−Lys(末端リジン上にブロモアセトアミド官能基を有する)を(水相中でのこのペプチドの分散を補助するために最小量のDMF中に溶解して)、この水溶液中に添加する。ナノ粒子溶液を真空下で濃縮して、大きいリザーバの水に対して透析して、未反応のペプチドおよび塩副産物を除く。透析された溶液の凍結乾燥(炭水化物の凍結防止剤の添加後)によって、ペプチド−官能化ポリ(エチレンオキシド−b−ε−カプロラクトン)ナノ粒子を生じる。
【0123】
代替的な処方物において、1〜5%のεカプロラクトンブロックが1,2−エポキシ−4−ペンタノンエチレンケタールで置換され得る。ポリマーの合成および末端へのチオールの付加後、このポリマーをマイルドな酸性の水溶液に曝露することによって環状ケタールを除去する。次いでこのミセルを上記に概説したようにペプチドを用いて作製して官能基化する。ペプチドの添加後、ジアミノ−オキシ官能基化PEG(MW=5000)のような架橋剤を水溶液に添加して、ナノ粒子の内部を架橋する。次いで、この粒子を前と同様に精製および単離する。
【0124】
(実施例2)
Haddletonの手順(Haddleton,D.M.:Ohno,K.,Biomacromolecules,2000,1,152)に従って、β−シクロデキストランを、環開口し、そして修飾して保護ポリサッカライド(多糖類)(これは、未保護のまま残っている末端アノマーヒドロキシル基のみを有する)を得る。この化合物を、わずかに高い温度で真空下で乾燥した後、(5,10,15,20−テトラフェニルポルフィナート)アルムニウムエチルと反応させられて、活性な重合化開始種を得る。この種を用いてEndoの方法(Endo,M.;Aida,T.;Inoue,S.Macromolecules,1987,20,2982)によってε−カプロラクトンを重合化する。ポリサッカライド上の保護基の単離および加水分解後、このポリマーを、1,1’−カルボニルジイミダゾール含有DMFと3日間反応させる。次いで、エチレンジアミンを添加し、そしてこの反応をさらに2日間進行させる。次いで、この生成物を無水ブロモ酢酸と反応させる。この生成物を単離し、DMF中に溶解し、そして水溶液中に滴下して添加する。ミセル形成後、ペプチドArg−Gly−Asp−D Phe−Lys−Cysを、DMF中の溶液として水溶液に添加する。ナノ粒子溶液を真空下で濃縮して、大きいリザーバの水に対して透析して、未反応のペプチドおよび塩副産物を除去する。炭水化物の凍結防止剤の添加後、透析した溶液を凍結乾燥することによって、ペプチド官能基化したナノ粒子を得る。
【0125】
代替的な処方物において、1〜5%のε−カプロノラクトンブロックは、1,2−エポキシ−4−ペンタノンエチレンケタールによって置換され得る。ポリマーの合成後、このポリマーをマイルドな酸性水溶液に曝露して環状ケタールを除去し、そして上記のようにポリサッカライドを修飾する。次いでこのミセルを上記に概説したようにペプチドを用いて作製して官能基化する。ペプチドの添加後、ジアミノ−オキシ官能基化PEG(MW=5000)のような架橋剤を水溶液に添加して、ナノ粒子の内部を架橋する。次いで、この粒子を前と同様に精製および単離する。
【0126】
(実施例3)
二官能性のPEG(MW=5000,ブロモアセトアミド−官能基化)を、Demingの方法(Deming,T.J.,Nature 1997,390,386〜389;Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.1997,119,2759〜2760)によって合成したポリ(γ−ベンジルグルタメート11−コ−システイン1)ブロックコポリマーと反応させる。単離後、このポリマーを、DMFに溶解して、水溶液中に滴下して添加する。ミセル形成後、ペプチドArg−Gly−Asp−D Phe−Lys−Cysを、最少量のDMF中に溶解して、水相中のこのペプチドの分散を補助し、次いでこれを水溶液に加える。ナノ粒子溶液を真空下で濃縮し、そして大きいリザーバの水に対して透析して、未反応のペプチドおよび塩副産物を除去する。炭水化物の凍結防止剤の添加後、透析した溶液を凍結乾燥することによって、ペプチド官能基化したナノ粒子を得る。
【0127】
代替的な処方物において、10〜20%のγ−ベンジルグルタメートのポリ(γ−ベンジルグルタメート11−コ−システイン1)ブロックは、リジンによって置換され得る。ポリマーの合成後、このリジン残基をγベンジルグルタメートの存在下で選択的に脱保護する。次いでこのミセルを上記に概説したようにペプチドを用いて作製して官能基化する。ペプチドの添加後、1,3−ブタジエンジエポキシドをDMF中に溶解し、水溶液に加えて、ナノ粒子内部を架橋する。次いで、この粒子を前と同様に精製および単離する。
【0128】
(実施例4)
Demingの方法(Deming,T.J.,Nature 1997,390,386〜389;Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.1997,119,2759〜2760)を用いて、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート80−コ−ロイシン20)のコポリマーを、N−カルボキシアンヒドリドの重合化から調製する。HBr/酢酸でのグルタメートブロックの脱保護後、このブロックコポリマーを、DMFに溶解して、これを水溶液中に緩徐に添加してナノ粒子形成を誘導する。このグルタメートブロックのアミン末端は、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−水酸化エチルカルボジイミドの作用によって、ペプチドArg−Gly−Asp−D Phe−Lys−Cysのカルボキシル基末端(ここで側鎖アミンが光不安定性保護基によって保護される)に結合される。一旦カップリング反応が完了すれば、このペプチドを脱保護し、そしてこの反応混合物を大きいリザーバの水に対して透析して、未反応のペプチドおよび塩副産物を除去する。炭水化物の凍結防止剤の添加後、透析した溶液を凍結乾燥することによって、ペプチド官能基化したナノ粒子を得る。
【0129】
代替的な処方物において、10〜20%のロイシンのポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート80−コ−ロイシン20)ブロックは、リジンによって置換され得る。ポリマーの合成後、このリジンおよびグルタミン酸の残基を、HBr/酢酸およびトリフルオロ酢酸で脱保護する。次いでミセルを、ペプチド上の光不安定性基が架橋後に除去されること(次の工程で記載)以外は、上記に概説したようにペプチドを用いて作製して官能基化する。ペプチドの添加後、1,3−ブタジエンジエポキシドをDMF中に溶解し、水溶液に加えて、ナノ粒子内部を架橋し、そして光不安定性基を除去する。次いで、この粒子を前と同様に精製および単離する。
【0130】
(実施例5)
AB構造を有するPAAブロックコポリマー鎖は、分子量1000〜10,000Daを有するLeuおよびVal(Leu−Val)のランダムコポリマーの疎水性ブロック、ならびに分子量5,000〜20,000のGluからなる親水性ブロックからなる。従って、制御された重合化機構(例えば、Deming(前出)の手順に従う)を通じて、約6,000〜30,000Daの総分子量が形成される。Glu残基の酸性基は、メチル化を保たれ、そしてカルボキシル基末端は、次の工程における高い親和性のペプチドの付着を助けるように保護される。
【0131】
Leu−Ser−Trp−His−Pro−Glyからなるペプチドは販売されている。この配列を含むペプチドは、10−4M程度の結合定数でストレプトアビジンに結合することが示されている。このペプチドのカルボキシル基末端は、EDCカップリング(G.T.Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego,1996)を介してPAA鎖のアミノ末端に結合され、PAA−HAPを生じる。
【0132】
ナノ粒子を形成するために、PAA鎖およびPAA−HAP鎖の両方を水溶液に添加する。PAA−HAP鎖対PAA鎖の重量比は、1:1〜1:100の間である。1mLの水溶液(5〜7のpHを有し、そして10〜500mMのNaClを含有する)に対する1〜50mgのポリマー混合物の添加によって、自然なナノ粒子形成が生じる。
【0133】
(実施例6)
ブロックコポリマーが、酸性または塩基性の残基からなる親水性ブロックを有するPAAである場合、反応のpHは、親水性イオン化可能モノマーの少なくとも一部がイオン化されるように選択される。例えば、Leu/Glu鎖のアセンブリのために、水溶液は、3〜13のpHの範囲であり得、そして塩化ナトリウムが、溶液中に0.01〜0.5Mの濃度で含まれる。次いでこのブロックコポリマーは、自発的にナノ粒子に融合する。
【0134】
(実施例7)
実施例5または6のようなAB構造を有するPAAブロックコポリマー鎖を、制御された重合化機構(Deming、前出)によって形成する。Glu残基の酸性基は、メチル化を保たれ、そしてカルボキシル基末端は、次の工程における高い親和性のペプチドの付着を助けるように保護される。
【0135】
Arg−Gly−Asp配列からなるペプチドは販売されている。この配列を含むペプチドは、ナノモル程度の結合定数で特定のインテグリンに結合することが示されている。このペプチドのカルボキシル基末端は、EDCカップリング(G.T.Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego,1996)を介してPAA鎖のアミノ末端に結合され、PAA−HAPを生じる。
【0136】
粒子を形成するために、PAA鎖およびPAA−HAP鎖の両方を水溶液に添加する。PAA−HAP鎖対PAA鎖の重量比は、1:1〜1:100の間である。1mLの水溶液(5〜7のpHを有し、そして10〜500mMのNaClを含有する)に対する1〜50mgのポリマー混合物の添加によって、自然なナノ粒子形成が生じる。
【0137】
(実施例8)
85重量%の緩衝液(10mM PBS、15mM NaCl、pH7.2)、8重量% IMA(イヌリン マルチ−アクリルアミド)、6重量%AM(アクリルアミド)、および1重量%NOBA(ナトリウムオルニチンブロモアセトアミドアクリルアミド)からなる水相を調製する。イゲパル(Igepal) CO−210、イゲパル CO−720およびシクロヘキサンを1.0:1.3:9.0の重量比で混合することによって、オイル+界面活性剤相を調製する。3グラム(3g)の水相を30gのオイル+界面活性剤相と混合し、逆相マイクロエマルジョン(reverse microemulsion)の形成を行う。この逆相マイクロエマルジョンは、シクロヘキサンの連続相中に分散した、水相の界面活性剤安定化ナノ小滴を含む。次いで、光開始剤(例えば、イルガキュア(Irgacure)およびDarocur(Chiba))を、構築ブロックの重量100部に対して0.01部〜1部の重量の光開始剤で添加する。次いでこの逆相マイクロエマルジョンを脱気し、N2で再充填し、そして20分〜1時間UVランプを用いて照射し、この構築ブロックを重合化する(IMA、AM、NOBA)。一旦重合化が完了すれば、この逆相マイクロエマルジョンにエタノールを添加することによってナノ粒子を沈殿させる。残りの界面活性剤および溶媒を、透析およびクロマトグラフィーのような標準的な技術によって除去する。この時点で、ナノ粒子の水溶液を凍結乾燥し、水に容易に溶ける綿状の固体としてナノ粒子を残す。次いで、このナノ粒子を適切な水溶液中に組み込み得る。
【0138】
(実施例9)
81〜85重量%の緩衝液(10mM PBS、15mM NaCl、pH7.2)、8重量% IMMA(イヌリン マルチ−メタクリレート)、6重量%AM(アクリルアミド)、および1〜5重量%のDAA(ジアセトンアクリルアミド)からなる水相を調製する。イゲパル CO−210、イゲパル CO−720およびシクロヘキサンを1.0:1.3:9.0の重量比で混合することによって、オイル+界面活性剤相を調製する。3グラム(3g)の水相を30gのオイル+界面活性剤相と混合し、逆相マイクロエマルジョンの形成を行う。この逆相マイクロエマルジョンは、シクロヘキサンの連続相中に分散した、水相の界面活性剤安定化ナノ小滴を含む。この逆相マイクロエマルジョンに、10μLのUV光開始剤ストック溶液(95重量%トルエン、2.5重量%イルガキュア、および2.5重量%Darocur)を、添加する。この逆相マイクロエマルジョンを100mLのSchlenkチューブに移す。このチューブの内容物を水流吸引器で脱気する。このチューブの内容物を5分間吸引し、続いてこのチューブにN2ガスを1分再充填する。この吸引/充填工程を全部で3サイクル繰り返す。Schlenkチューブの内容物を攪拌して、UVランプを用いて1時間照射し、構築ブロックを重合化する(IMMA、AM、DAA)。重合化が完了した後、この溶液に9mLの純エタノールを直接添加することによってナノ粒子を沈殿させる。ナノ粒子含有ペレットを脱イオン水に再懸濁する。残りの界面活性剤および溶媒を、標準的技術(透析、クロマトグラフィーなど)によって除去する。この時点で、ナノ粒子の水溶液を凍結乾燥し得る。
【0139】
(実施例10)
81〜85重量%の水、14重量%のIMMA(イヌリン マルチ−メタクリレート)、および1〜5重量%のDAA(ジアセトンアクリルアミド)からなる水相を調製する。イゲパル CO−210、イゲパル CO−720およびシクロヘキサンを1.0:1.3:9.0の重量比で混合することによって、オイル+界面活性剤相を調製する。3グラム(3g)の水相を30gのオイル+界面活性剤相と混合し、逆相マイクロエマルジョンの形成を行う。この逆相マイクロエマルジョンは、シクロヘキサンの連続相中に分散した、水相の界面活性剤安定化ナノ小滴を含む。この逆相マイクロエマルジョンに、Eosin Yを含有する水溶液(ここで、光開始剤は0.001〜0.1重量%の単量体質量を示す)を添加する。この逆相マイクロエマルジョンを100mLのSchlenkチューブに移し、3サイクルの凍結融解、続いてこのチューブへの1分間のN2ガス再充填によって脱気する。Schlenkチューブの内容物を攪拌して、少なくとも100Wの可視光源を用いて、20分〜2時間照射し、この構築ブロックを重合化する。一旦重合化が完了すれば、この溶液に9mLの純エタノールを直接添加することによってナノ粒子を沈殿させる。ナノ粒子含有ペレットを脱イオン水に再懸濁する。残りの界面活性剤および溶媒を、標準的技術(透析、クロマトグラフィーなど)によって除去する。この時点で、ナノ粒子の水溶液を凍結乾燥し得る。
【0140】
(実施例11)
ポリエチレンイミン(平均分子量800kDa;「PEI」)を0.03g.mlで含有する塩基性緩衝液(pHの値が8〜10にわたる)の溶液を、ポリアクリル酸(平均分子量1.8kDa)を6.5mg/mLで含有する溶液に滴下して添加した。15分後、この系は平衡に達した。1つの酸性基(ポリアクリル酸由来)あたり10のアミノ基(PEI由来)の比によって、平均10nMの半径の、安定で狭い単分散のナノ粒子を得た。
【0141】
(実施例12)
85重量%の水および15重量%のイヌリンからなる水相を調製する。油+界面活性剤の相を、Igepal CO−210、Igepal CO−720およびシクロヘキサンを1.0:1.3:9.0の重量比で混合することによって、調製する。3gの水相を40gの油+界面活性剤の相と混合し、逆ミクロエマルジョンの形成を生じる。1gの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液をこの混合物に添加し、その結果、1のグルコースモノマーユニット(イヌリン由来)あたり最大1の過ヨウ素酸当量が存在する。インサイチュ酸化を約10分間進行させ、その後、カプセル化のためのタンパク質(例えば、インターロイキン−2)を添加する。ビス[(2−アミノ−オキシ)エチルアミド]−(1,3)−プロパンの、水性メタノール混合物(50/50容量)中の濃厚溶液(少なくとも1g/mL)を、このミクロエマルジョンに添加し、そして一晩反応させた(時間を最適化していない)。イヌリンのインサイチュ還元によって生成したアルデヒド官能基との、ビス[(2−アミノ−オキシ)エチルアミド]−(1,3)−プロパンの架橋によって得られるナノ粒子は、トラップされたインターロイキン−2を含む。これらを、エタノールの存在下での沈殿および遠心分離によって精製し、そして透析によって、過剰の未反応試薬から精製する。
【0142】
(実施例13)
先行の実施例に従って、85重量%の緩衝液(10mM PBS、15mM NaCl、pH7.2)、8重量%のIMMA(イヌリンマルチメタクリレート(inulin multi−methacrylate))、6重量%のAM(アクリルアミド)、0.3〜3.0重量%のNOBA(オルニチンブロモアセトアミドアクリルアミドナトリウム)、および0.3〜3.0重量%のDAA(ジアセトンアクリルアミド)からなる水相を用いて合成したナノ粒子を、水溶液に溶解する。1つの代表的な手順は、1〜5g/Lのナノ粒子を、1〜10容量%のメタノールを含む0.05M 2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2”−ニトリロトリエタノール緩衝液(pH8)に溶解することからなる。適切な量のチオ−およびN−ヒドロキシ−アミノ官能基化ポリエチレングリコール(平均分子量は代表的に2,000と20,000との間)を、この反応混合物に添加し、そしてこの反応物を一晩撹拌する(反応時間は最適化されていない)。ペプチドを、PEGと同時に、このナノ粒子に直接グラフトし得る。
【0143】
どの官能部分をペプチドに付着させたいかに依存して、異なるリンカーが使用され得る。2セットの反応が直交する限り、表面にグラフトされる2つの異なるペプチドの相対量を選択的に制御することが可能である。エチレン−ジアミンブロモアセトアミドまたは3−ブロモアクリルアミドプロパナールを、リンカー分子として選択し得る。これらのリンカー分子は、理想的には反応媒体中に存在する1当量のチオール反応性官能基に対して少なくとも1当量で、反応混合物に添加される。ペプチドがFPLCカラムの後にグラフトされる場合には、代表的な手順は、ペプチドをナノ粒子中1mg/mLの濃度で反応させることからなる。
【0144】
ペプチドH2N−WLWHPQFSSC−CO2Hをジチオール−PEG鎖の末端に、システイン残基のチオールとブロモアセトアミド部分との反応を介してグラフトすることにより、高い結合能力を有するナノ粒子が導かれる:等温滴定熱量測定は、ストレプトアビジンに対して遊離ペプチドに関して3×10−4Mの親和性結合を与え、一方でナノ粒子は、2つの型の結合部位を有することが見出された(1つの型は1.6(±0.9)×10−6Mの結合定数を有し、そして第2の型は、5.9(±4)×10−7Mの結合定数を有する)。従って、このナノ粒子は、未結合ペプチドと比較して、結合において実質的な改善を示す。
【0145】
(実施例14)
10重量%のIMMA(イヌリンマルチメタクリレート)、4重量%のDAA(ジアセトンアクリルアミド)および1重量%のNOBA(オルニチンブロモアセトアミドアクリルアミドナトリウム)の重合によって作製されるナノ粒子を、平均分子量6000の過剰のポリエチレングリコールジアミン(H2N−PEG6000−NH2)と反応させる。未反応H2N−PEG6000−NH2を、沈殿または他の任意の当該分野において公知の方法(例えば、FPLCのSCC)によって除去する。重炭酸緩衝液中の葉酸の溶液(1g/ml、pH6.6)を、水に懸濁させたアミノPEG−官能基化ナノ粒子に添加し(10mgナノ粒子/mL水溶液)、そして1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)および1当量のN−ヒドロキシスクシンイミドとカップリングさせる。ナノ粒子を、当該分野において公知の任意の方法(例えば、透析、遠心分離またはサイズ排除クロマトグラフィーであるが、これらに限定されない)によって、精製し得る。
【0146】
(実施例15)
Deming(Deming,T.J.,Nature 1997,390,386−389;Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.1997,119,2759−2760)の方法に従って、ポリ(ロイシン)(Mw=2200)を、ロイシンN−カルボキシ無水物の重合から調製する。この場合には、ニッケル重合触媒が、エリスロポエチンに対するHAPを用いて調製され、Curtin(Curtin,S.A.,Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.,1999,121,7427−7428)の方法に従って開始リガンドとして働く。この場合には、エリスロポエチンに対するHAPのアミン末端が、アリルオキシカルボニル(Alloc)保護基によって保護され、一方でエリスロポエチンに対するHAPの残りの部分は、ペプチド合成において通常使用される他の保護基を用いて保護される。ポリマーが単離された後に、エリスロポエチンに対するHAPを、側鎖の脱保護によって活性化形態に転換し、そしてDMFに溶解する。このDMF溶液を、エリスロポエチンの水溶液にゆっくりと添加する。得られる水溶液を透析して、DMFを除去する。
【0147】
代替の処方において、ポリ(ロイシン)ブロックの10〜20%のロイシンを、ランダムコポリマーとしてリジンで置換し得る。このポリマーの合成後、リジン残基をトリフルオロ酢酸で脱保護する。次いで、PAAブロックのリジン残基を、レブリン酸を用いて官能基化し、ケトンをPAAブロックに含める。次いで、エリスロポエチンに対するHAPを脱保護する。次いで、上に概説したように、エリスロポエチンの存在下でミセルを形成し、そしてDMFに溶解したジ−アミノ−オキシ官能基化PEG(Mw=5000)をこの水溶液に添加して、ナノ粒子の内部を架橋させる。次いで、前述のようにこの粒子を精製し、そして単離する。
【0148】
(実施例16)
AB構造を有し、そして各ブロックが、約10,000〜20,000Daであり、従って、20,000〜40,000Daの総分子量を有する、LEU/GLUブロックコポリマー鎖(PAA鎖)を、制御された重合機構(前出のDeming)を介して形成する。また、AB構造を有し、LEUブロックが、約10,000Da〜20,000Daであり、そしてGLUブロックが、1000Daと2000Daとの間であり、従って、11,000〜22,000Daの総分子量を有する、LEU/GLUブロックコポリマー鎖(PAA鎖)を、制御された重合機構(前出のDeming)を介して形成する。この第2の「短」鎖構造は、ペプチドカップリングのために使用される。GLU残基の酸基はメチル化されて維持され、そしてカルボキシ末端は保護されて、次の工程において高親和性のペプチドの付着を補助する。
【0149】
マイクロモル濃度〜ナノモル濃度の範囲の親和性定数でEPOに結合するヘキサマーペプチドを購入する。このペプチドのカルボキシル末端を、EDCカップリングを介して「短」LEU/GLU PAA鎖のアミン末端に結合させ(G.T.Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego,1996)、PAA−HAP鎖を生成する。
【0150】
次いで、100 gと5000 gとの間のブロックコポリマーを、10μgのEPOを含む100μLの水溶液に添加する。PAA−HAP対PAA鎖の重量比は、1:1と1:100との間である。EPOを、PAA−HAP鎖のペプチドに結合させる。この水溶液は、5と7との間のpHを有し、そして10mMと200mMとの間のNaClを含む。ナノ粒子形成は、自発的である。
【0151】
(実施例17)
85重量%の水および15重量%のIMMA(イヌリンマルチメタクリレート)からなる水相を調製する。3gの水相を、シクロヘキサン中の8.5重量%のIgepal CO−520からなる30gの油+界面活性剤の相と混合する。1gの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液をこの混合物に添加し、その結果、1のグルコースモノマーユニット(IMMA由来)あたり最大1の過ヨウ素酸当量が存在する。インサイチュ酸化を約10分間進行させ、その後、アルデヒド含有ペプチドを添加する。Arg−Gly−Asp−D Phe−Lys(これは、レブリン酸を末端リジンに含む)の改変バージョンを、ペプチドとして使用した。ビス−[2−((2−アミノ−オキシ)エチルアミド)エチル]アミンの濃厚水溶液(少なくとも1g/mL)を、このミクロエマルジョンに添加し、そして1時間反応させ、アルデヒド官能基とアミノ−オキシ部分とを架橋させる。
【0152】
Eosin Yの水溶液(ここで、光開始剤は、IMMA質量の0.001〜0.1重量%を占める)を、この逆ミクロエマルジョンに添加する。このミクロエマルジョンを撹拌し、そして少なくとも100Wの可視光源で20分間〜2時間照射して、重合したナノ粒子を形成する。
【0153】
(実施例18)
85重量%の水および15重量%のイヌリンからなる水相を調製する。2gの水相を、シクロヘキサン中8.5重量%のIgepal CO−520からなる30gの油+界面活性剤の相と混合する。1gの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液をこの混合物に添加し、その結果、1のグルコースモノマーユニット(イヌリン由来)あたり最大1の過ヨウ素酸当量が存在する。インサイチュ酸化を約10分間進行させる。このミクロエマルジョンに、インターロイキン−2(0.1〜5μg)の1gの水溶液を、十分な量のヘキサマーペプチド(レブリン酸(これは、アルデヒド官能基を含む)によって終結し、マイクロモル濃度〜ナノモル濃度の親和性定数でインターロイキン−2と結合する)の存在下で添加する。
【0154】
ビス−[2−((2−アミノ−オキシ)エチルアミド)エチル]アミンの水溶液を、このミクロエマルジョンに添加し、そして3時間反応させて、アルデヒド官能基とアミノ−オキシ部分とを架橋させる。インターロイキン−2/HAP複合体を含むナノ粒子を、当該分野において公知の方法によって精製する。
【0155】
(実施例19)
Deming(Deming,T.J.,Nature 1997,390,386−389;Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.1997,119,2759−2760)の方法に従って、ポリ(ロイシン)(Mw=2200)を、ロイシンN−カルボキシ無水物の重合から調製する。この場合には、ニッケル重合触媒が、インターロイキン−2に対するHAPを用いて調製され、Curtin(Curtin,S.A.,Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.,1999,121,7427−7428)の方法に従って開始リガンドとして働く。この場合には、インターロイキン−2のアミン末端が、アリルオキシカルボニル(Alloc)保護基によって保護され、一方でインターロイキン−2に対するHAPの残りの部分は、ペプチド合成において通常使用される他の保護基を用いて保護される。次いで、このHAP/ポリ(ロイシン)複合体を、保護されたペプチドArg−Gly−Asp−D Phe−Lysのカルボン酸末端に、DMF中の1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドの作用によってカップリングさせる。このDMFを減圧下で除去し、そして得られる固体を多量のクロロホルムで洗浄して、尿素副生成物を除去する。インターロイキン−2に対するHapおよびペプチドArg−Gly−Asp−D Phe−Lysの脱保護の後に、インターロイキン−2に対するHAP/ポリ(ロイシン)/ペプチドブロックコポリマーを、DMFに溶解し、そしてインターロイキン−2の水溶液に滴下する。得られる水溶液を透析して、DMFを除去する。
【0156】
代替の処方において、ポリ(ロイシン)ブロックの10〜20%のロイシンを、ランダムコポリマーとしてリジンで置換し得る。上記のような、このポリマーの合成後、リジン残基を脱保護する。次いで、PAAブロックのリジン残基を、レブリン酸を用いて官能基化し、ケトンをPAAブロックに含める。次いで、インターロイキン−2に対するHAPおよびArg−Gly−Asp−D Phe−Lysペプチドを脱保護する。次いで、上に概説したように、インターロイキン−2の存在下でミセルを形成し、そしてDMFに溶解したジ−アミノ−オキシ官能基化PEG(Mw=5000)をこの水溶液に添加して、ナノ粒子の内部を架橋させる。次いで、前述のようにこの粒子を精製し、そして単離する。
【0157】
(実施例20)
AB構造を有し、そしてLeuおよびValのランダムコポリマーからなる1,000〜10,000Daの間の分子量を有する疎水性ブロックを有し、そしてGluからなる約5,000と20,000との間の分子量を有する親水性ブロックを有し、従って、6,000〜30,000Daの総分子量を有する、(Leu−Val)/Gluブロックコポリマー鎖(PAA鎖)を、制御された重合機構(前出のDeming)を介して形成する。また、AB構造を有し、そしてLeuおよびValのランダムコポリマーからなる約1,000〜10,000Daの間の分子量を有する疎水性ブロックを有し、そしてGluからなる1,000Daと10,000Daとの間の分子量を有する親水性ブロックを有し、従って、2,000〜20,000Daの総分子量を有する、(Leu−Val)/Gluブロックコポリマー鎖(PAA鎖)を、制御された重合機構(前出のDeming)を介して形成する。この第2の「短」鎖構造は、ペプチドカップリングのために使用される。Glu残基の酸基はメチル化されて維持され、そしてカルボキシ末端は保護されて、次の工程において高親和性のペプチドの付着を補助する。
【0158】
EGFrの可溶性部分(本明細書中において「sEGFr」と定義される)に、好ましくはマイクロモル濃度〜ナノモル濃度の範囲の親和性定数で結合するペプチドを、購入する。購入するべき特定のペプチドは、例えば、ペプチドライブラリーのスクリーニングを介して見出される。使用されるペプチド配列は、EGFrに対してアゴニストではない。このペプチドのカルボキシル末端は、「短い」(Leu−Val)/Glu PAA鎖のアミン末端に、EDCカップリングを介して結合し(G.T.Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego,1996)、PAA高親和性ペプチド鎖を生成する。
【0159】
次いで、100μgと5000μgとの間のブロックコポリマーを、10μgのsEGFrを含む100μLの水溶液に添加する。PAA−ペプチド対PAA鎖の重量比は、1:1と1:100との間である。sEGFrを、PAA−ペプチド鎖のペプチドに結合させる。この水溶液は、5と7との間のpHを有し、そして10mMと200mMとの間のNaClを含む。ナノ粒子形成は、自発的である。
【0160】
本実施例において、EGFrに結合するペプチドは、1型ペプチドと2型ペプチドとの両方として働く。1型ペプチドとして、このペプチドは、sEGFrに結合するよう働き、このsEGFrをナノ粒子に組み込む。2型ペプチドとして作用する場合に、このペプチドは、sEGFrレセプターを過剰発現する腫瘍組織を標的化するよう働く。次いで、治療剤(すなわち、sEGFr)の放出が、腫瘍に集中された様式で起こる。そこで、sEGFrはEGFに結合し得る。このことは、EGFの腫瘍細胞表面EGFrへの結合を減少させ得、従って、腫瘍細胞の増殖を減少させ得る。
【0161】
(実施例21)
85重量%の水および15重量%のイヌリンからなる水相を調製する。2gの水相を、シクロヘキサン中8.5重量%のIgepal CO−520からなる30gの油+界面活性剤の相と混合する。1gの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液をこの混合物に添加し、その結果、1のグルコースモノマーユニット(イヌリン由来)あたり最大1の過ヨウ素酸当量が存在する。インサイチュ酸化を約10分間進行させる。エリスロポエチン(0.05〜2μg)を、十分な量のヘプタマーペプチド(レブリン酸(これは、アルデヒド官能基を含む)によって終結し、マイクロモル濃度〜ナノモル濃度の親和性定数でEPOと結合する)の存在下で添加する。
【0162】
ビス−[2−((2−アミノ−オキシ)エチルアミド)エチル]アミンの水溶液を、このミクロエマルジョンに添加し、そして3時間反応させて、アルデヒド官能基とアミノ−オキシ部分とを架橋させる。EPO/HAP複合体を含むナノ粒子を、当該分野において公知の方法によって精製し、そして過剰のジアミノ−オキシ−ポリエチレングリコールの存在下で、水溶液に再懸濁させる。ジアミノ−オキシ−ポリエチレングリコールの(ナノ粒子上の残りのアルデヒドとの)反応を、12時間進行させる。このナノ粒子を未反応ジアミノ−オキシ−ポリエチレングリコールからFPLCによって分離し、「標的」ペプチドArg−Gly−Asp−D Phe−Lys−レブリン酸のアルデヒド末端とカップリングさせ、そして透析によって精製する。
(発明の分野)
本発明は、治療物の分野に関する。より詳細には、本発明は、所望の治療特性を有する粒子に関する。
【0002】
(発明の背景)
特定のペプチドは、高い親和性および選択性で特定のタンパク質に結合し得、そして従って、種々の分離、診断、および治療用途において利用され得る。しかし、インビボで、ペプチドは、しばしば血流から迅速に清澄化される。従って、治療ペプチドならびに他の治療剤の循環時間を増加する方法が、所望される。1つの戦略において、ペプチド、タンパク質、および超分子複合体(例えば、リポソーム)は、その循環時間を増加するために、ポリエチレングリコール(PEG)分子を用いて官能基化されてきた。新しい治療構築物および送達方法が、望ましい。
【0003】
治療物のその意図される標的への結合強度の増加もまた、望ましい。バンコマイシンの場合、これは、バンコマイシン分子がオリゴマー(すなわち、二量体)を形成するオリゴマー形成を介して達成される(Raoら,Chem.Biol.,6(6):353−9 1999)。この二量体は、結合強度における実質的な増加を示す。多価の物質が例外的な結合性能を保有し得るので、その使用が、多くの研究者によって調査されている(S.Borman,Chemical&Engineering News,2000年10月9日、p.48−53)。
【0004】
インテグリンに結合するペプチド(例えば、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)配列を含むペプチド)は、ナノ粒子表面に物理的に吸着されるかまたはこのナノ粒子内に分散される治療分子の経口送達を増強する目的で、アルキルシアノアクリレートナノ粒子に結合される(欧州特許684814を参照のこと)。同様に、ナノ粒子は、診断用途のためにタンパク質で官能基化されている。
【0005】
治療腫瘍学における現在の研究の重要な領域は、抗脈管形成剤の開発に集中しており、この抗脈管形成剤は、血管の増殖を阻害または抑制することによって、腫瘍の脈管構造を標的する。RGD含有ペプチドは、インテグリンαvβ3レセプターを遮断し、そして新生血管内皮細胞のアポトーシスを迅速に開始することが示されている。さらに、これらは、いくつかの腫瘍細胞株の転移および腫瘍誘導性脈管形成を阻害することが示されている。αvβ3インテグリン結合に選択的な短循環RGD含有ペプチドが、開発されてきた(R.Haubnerら,J.Am.Chem.Soc.,118:7461−71,1997)。治療剤としての小さな循環ペプチドの利点は、その容易な合成、タンパク分解に対する耐性、および低い免疫原性である。
【0006】
ナノ粒子は、治療剤の送達のため、およびその表面に高親和性結合エレメントを提示するための両方において使用され得る。ナノ粒子は、水溶液中でのポリ(アミノ酸)成分の自発的凝集から形成される(米国特許第5904936号)。従って、形成されたこの粒子は、薬物送達の使用を示し、この薬物は、この粒子内にカプセル化されている。
【0007】
特定のタンパク質(例えば、インターロイキン、インターフェロン、および腫瘍壊死因子を含むサイトカイン)の毒性は、これらが系の広範にわたる様式で与えられる場合に、その投薬量を制限する。しかし、このタンパク質が、このタンパク質の活性が所望される組織において局所的に濃縮される場合、全身的な毒性は実質的に低減され得る。このことを達成するための1つの方法は、融合タンパク質の生成を介する方法であり、ここで、サイトカインは、腫瘍特異的抗体ドメインに融合される(Xiang J.,Hum Antibodies,1999,9,23−26)。この腫瘍特異的抗体は、腫瘍中の抗原に結合し、これによって系全体にわたる循環からこの融合タンパク質を除去し、そしてこれらを腫瘍内で濃縮する。治療タンパク質を特定の組織に濃縮するための他の方法は、価値がある。
【0008】
ブロックコポリマーは、インビボ使用のためのナノ粒子を形成するために有利に使用され得る。アルミニウムポルフィリン複合体は、種々の環状エーテルおよびエステル(エポキシド、ラクトン、およびラクチドを含む)を重合し、そして酸無水物または二酸化炭素と共にエポキシドのコポリマーを生成することが公知である(Inoue,S.,J.Macromol.Sci.1988,A25,571)。これらのポリマーの多くは、一般に、低い(存在する場合)毒性および免疫原性という所望の特徴の多くを有することが認識され、そしてこれらは、身体から迅速に清澄化される。さらに、この重合系の「生きた」性質は、狭い分子量分布のブロックコポリマーの調製を可能にする。ポリ( −カプロラクトン)co(エチレンオキシド)ジブロックコポリマー(Gan,Z.;Jiang,B.;Zhang,J.,J.Appl.Polym.Sci.1996,59,961)は、ナノ粒子を迅速に形成し、そして酵素分解を受けることが示されている(Gan,Z.;Jim,T.F.;Li,M.;Yuer,Z.;Wang,S.;Wu,C.,Macromolecules 1999,32,590)。ナノ粒子はまた、水溶液中でのポリ(アミノ酸)(PAA)ブロックコポリマーの自発的凝集から形成される(米国特許第5904936号)。PEG−PAAブロックコポリマー(PEGブロックは親水性であり、そしてPAAブロックは、疎水性のアミノ酸またはアミノ酸誘導体(例えば、β−ベンジル−L−アスパラギン酸)からなる)もまた、ナノ粒子を形成するために使用され、そしてさらに、低分子の送達における使用のために研究されている(Kwon,G.S.;Naito,M.;Yokoyama,M.;Okano,T.;Sakurai,Y.;Kataoka,K.;Pharm Res 1995,32,192;Y.Jeong,J.Cheon,S.Kim,J.Nah,Y.Lee.Y.Sung,T.AkaikeおよびC.Cho.,J.Controlled Release 1998,51,169)。
【0009】
重合は、ミクロエマルジョンおよび逆ミクロエマルジョンの分散相中で実施される(総説については、Antonietti,M.;およびBasten,R.;Macromol.Chem.Phys.1995,196,441を参照のこと);逆ミクロエマルジョンの分散水相中での親水性モノマーの重合の研究については、Holtzscherer,C.;およびCandau,F.;Colloids and Surfaces,1988,29,411を参照のこと)。ミクロエマルジョンの重合は、5nm〜50nmのサイズ範囲の粒子を生じ得る。
【0010】
ナノ粒子それ自体が生物活性を示すようなナノ粒子の改変は、望ましくあり得る。好ましくは、このようなナノ粒子は、構築が容易であるべきであり、意図される分子標的に強力かつ特異的に結合すべきであり、生態適合性であるべきであり、身体内で非毒性物質へと代謝されるべきであり、非免疫原性であるべきであり、そして血流からの所望でないクリアランスを回避するように設計されるべきである。循環時間は、通過サイズに一部影響を受け得る。RES系による取り込みを避けるために、50nm未満の粒子が好ましい。腎臓のクリアランスを避けるために、5nmより大きな粒子が好ましい。また、上記のように、循環時間はまた、この粒子の表面上のPEGの存在によって延長され得る。特定の治療物の標的された送達もまた、有益である。
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、生体分子標的に対する高い親和性を有する2つ以上のペプチド部分で各々が官能基化されたナノ粒子である、水溶性ポリマーナノ粒子に関し、このペプチドは、ナノ粒子ポリマーマトリックス構造または核に共有結合されている。このナノ粒子は、必要に応じて、標的化および/または送達を容易にするための1つ以上のエンハンサー分子をさらに含み得るか、またはこれらは、必要に応じて、ポリエチレングリコール(PEG)ベースの分子を含み得る。このPEG鎖は、リンカーまたはつなぎ鎖として役立ち得、一端がナノ粒子表面に結合し、そして他端が高親和性ペプチドで官能基化されている。本発明はさらに、これらのポリマーナノ粒子を合成する方法、およびこれらが使用され得る種々の用途に関する。本明細書中に開示される本発明のナノ粒子は、ペプチド官能基化ナノ粒子(PFN)と呼ばれる。
【0012】
本発明の粒子は、好ましくは、直径約5nm〜約1000nm、より好ましくは約5nm〜約100nmであり、そして最も好ましくは、5〜30nmである。この粒子サイズは、生理活性物質としてのそのインビボでの使用を可能にする。
【0013】
ナノ粒子当りの高親和性ペプチド(「HAP」)部分の数は、2〜約1000、好ましくは2〜100、および最も好ましくは、2〜30の範囲であり得る。ナノ粒子は、必要に応じて、さらに、1より多くの型の高親和性ペプチドからなり得る。本明細書中で使用される場合、ペプチドの「型」は、特定の分子構造のペプチドとして定義される。
【0014】
高親和性ペプチドの1つの型(本明細書中で、「1型ペプチド」と呼ぶ)は、治療的に有用なタンパク質またはタンパク質フラグメント(本明細書中では、「治療タンパク質」と呼ぶ)をこのナノ粒子に結合するように働く。高親和性ペプチドの別の型(本明細書中では、「2型ペプチド」と呼ぶ)は、本発明のポリマーナノ粒子を、所定の細胞型の表面上または特定の組織型中で発現される標的タンパク質に結合するように働く。
【0015】
ペプチド単独と比較する場合、本明細書中に開示されるペプチド官能基化ナノ粒子は、有利なことに、より長い循環時間を有し得る。さらに、PFNは、その標的により強力に結合し得、そしてより低い免疫原性を示し得る。このナノ粒子は、哺乳動物において無毒性の物質へと代謝される生物分解性成分からなる。
【0016】
本発明のさらなる利点は、相補的な特徴を有する複数の高親和性ペプチド型が、単一のナノ粒子内に組み込まれ得るということである。これは、例えば、1つまたは1つより多くの標的化ペプチドを使用して、治療ナノ粒子が、所望の細胞型、組織、または器官に標的されること;あるいは治療タンパク質が、所望の標的部位に送達されることを可能にし得る。
【0017】
本発明の1つの実施形態において、ナノ粒子コアは、疎水性/親水性ブロックコポリマーからなる。使用されるブロックコポリマーは、特定の条件下で、水性の系中でナノ粒子を自発的に形成する特性を有する。好ましくは、このブロックコポリマー鎖は、少なくとも2つの型の反復モノマーからなる。好ましいブロック形態は、AB型またはABA型である。「Aブロック」は、親水性であり、例えばポリエチレングリコールまたはポリアルキレンオキシドである。「Bブロック」は、疎水性および中性であり、例えば、ポリカプロラクトンである。狭い分子量分布を有するブロックコポリマーが好ましい。その分解性、生体適合性、十分に実証された合成、化学的性質の目的適合性(tailorability)、およびその架橋の容易さのために、ポリ(アミノ酸)(「PAA」)が、本発明における疎水性ビルディングブロックとして好ましい。これらは、同様に、親水性ブロックの形成において利用され得る。
【0018】
本発明の別の実施形態において、ナノ粒子コアは、架橋した親水性ビルディングブロックからなる。これらのナノ粒子は、最初に、ナノ粒子コアを、逆ミクロエマルジョンの分散した水相中でのこのビルディングブロックの架橋を介して形成することによって、作製される。この架橋可能な部分は、好ましくはアクリレートまたはアクリルアミドである。炭水化物誘導体は、好ましくはビルディングブロックとして使用される。
【0019】
本発明の1つの実施形態は、生体分子標的の分子認識のための方法に関する。より詳細には、この実施形態は、特定の生体分子標的に対する高い親和性を有する2型ペプチド配列からなるナノ粒子に関し、このペプチドは、親水性ポリマーまたはブロックコポリマーナノ粒子マトリックス分子に共有結合している。
【0020】
本発明の別の実施形態において、タンパク質治療剤(親水性タンパク質を含む)は、薬物送達用途のためのナノ粒子構築物に組み込まれる。より詳細には、この実施形態は、治療タンパク質を制御可能に放出するナノ粒子医薬に関する。この実施形態において、このナノ粒子は、3つの型の分子構築物からなる:ナノ粒子マトリックス分子、治療タンパク質に対する高い親和性を有する1型ペプチド配列、および治療タンパク質。この治療タンパク質−ペプチドの親和性は、使用におけるナノ粒子中の治療タンパク質の保持を可能にし、このタンパク質の循環時間を伸張する。治療タンパク質に高親和性で結合し得る1つ以上のペプチド型が、使用され得る。
【0021】
本発明のさらなる実施形態は、標的された細胞または組織型の付近に治療タンパク質を制御送達する方法を提供する。この実施形態のナノ粒子は、4つの型の分子構造からなる:ナノ粒子マトリックス分子、治療タンパク質に対する高い親和性を有する1型短ペプチド配列、特定の細胞上または特定の組織中で発現されるタンパク質に対する高い親和性を有する2型短ペプチド配列、ならびに治療タンパク質。従って、治療剤として投与される場合、治療タンパク質を含むナノ粒子は、標的化されたタンパク質を発現する組織または細胞の表面に濃縮する。
【0022】
(発明の詳細な説明)
用語「1つの(「a」および「an」)」は、本明細書中で使用される場合、「1つ以上の」を意味する。
【0023】
「水溶性」によって、本明細書中または添付の特許請求の範囲において、水中での10mg/mLより高い溶解度、そして好ましくは50mg/mLより高い溶解度を有することが意味される。
【0024】
高親和性分子からなるナノ粒子が提供される;このナノ粒子は、水溶性であり、そしてインビボ送達し得る。より詳細には、各ポリマーナノ粒子は、生体分子標的に対する高い親和性を有する2つ以上のペプチド部分で官能基化され、このペプチド部分は、ナノ粒子ポリマーマトリックス構造物に共有結合されている。本発明は、さらに、これらのポリマーナノ粒子を合成する方法、およびこれらが使用され得る種々の用途に関する。
【0025】
本発明のナノ粒子は、直径が約5nm〜約1000nmのサイズ範囲、より好ましくは約5nm〜約100nmであり得、そして最も好ましくは約5nm〜約30nmである。5〜30nmのサイズ範囲のナノ粒子は、腎臓のクリアランスおよび細網内皮系(RES)による取り込みを効率的に回避し得る。さらに、小さな粒子は、所望の細胞、組織、または器官標的に到達するために、有利に血流を抜け出し得る。
【0026】
ナノ粒子当たりのHAP部分の数は、2〜約1000、好ましくは2〜100、そして最も好ましくは2〜30の範囲であり得る。このナノ粒子は、必要に応じて、さらに、1つより多くの型の高親和性ペプチドからなり得る。本明細書中で使用される場合、ペプチド「型」は、特定の分子構造として定義される。
【0027】
本発明に従う高親和性ビルディングブロックとして使用されるペプチドは、一般に、10−4Mと10−9Mとの結合親和性を有する。この高親和性ペプチドは、目的のレセプターに対する公知のペプチドリガンドからなり得る。例えば、Phoenix Peptideのペプチドリガンド−レセプターライブラリー(http://www.phoenixpeptide.com/Peptidelibrarylist.htm)は、潜在的に治療的に有用なレセプターについての数千の既知ペプチドリガンドを含む。HAPは、例えば、ラクタム、ダラージン(dalargin)および他のエンケファリン、エンドルフィン、アンギオテンシンII、ゴナドトロピン放出ホルモン、トロンビンレセプターフラグメント、ミエリン、および抗原性ペプチドのような天然のペプチドである。本発明において有用な高親和性ペプチドビルディングブロックは、目的のタンパク質についてのペプチドライブラリーの高スループットスクリーニングを介して発見され得る(例えば、ファージディスプレイライブラリーまたはビーズ上で示される直線配列のライブラリー)。このようなスクリーニング方法は、当該分野で公知である(例えば、C.F.Barbas,D.R.Burton,J.K.Scott,G.J.Silverman,Phage Display,2001,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYを参照のこと)。この高親和性ペプチドは、改変されたアミノ酸または完全な合成アミノ酸からなり得る。
【0028】
この高親和性ペプチドの認識部分の長さは、約3〜約100アミノ酸で変化し得る。好ましくは、このペプチドの認識部分は、約3〜約15アミノ酸、そしてより好ましくは3〜10アミノ酸の範囲である。より短い配列が好ましい。なぜなら、15アミノ酸未満のペプチドは、より長いペプチド配列と比較して低免疫原性であり得るためである。小さなペプチドは、そのライブラリーが、迅速にスクリーニングされ得るというさらなる利点を有する。また、これらは、固体状態技術を使用して、より容易に合成され得る。
【0029】
ナノ粒子を作製するための、同じ分子構造または異なる分子構造の複数の高親和性ペプチド分子の使用は、このナノ粒子の結合活性を増加し得る。本発明において使用される場合、「高親和性」は、10−4Mより強い結合定数での、単一ペプチドの単一標的分子への結合を意味するが、「結合活性」は、2つ以上のこのようなペプチド単位の、細胞または分子複合体上の2つ以上の標的分子への結合を意味する。
【0030】
いくつかの実施形態における試薬および出発物質は、商業的に得られ得る。例えば、アミノ酸は、Sigma−Aldrich(Milwaukee,WI)、Pierce Chemical Company(Rockford,IL)、およびChemdex(www.chemdex.com)のような化学薬品卸業者から購入され得る。さらに、化学製品要覧および資源(例えば、http://pubs.acs.orq/chemcy/)は、出発物質を位置付けるために使用され得る。高親和性結合剤として使用されるべきペプチドは、多くの供給業者から購入され得、その1つはPeptide Biosynthesis(www.peptidebiosynthesis.com)である。
【0031】
ナノ粒子コアは、迅速に合成され、所望の時間スケールで身体内で分解され、無毒性であり、高親和性ペプチドでの容易な官能基化を可能にし、そして治療剤および他の治療物質のタンパク質の封入を可能にするように選択される。
【0032】
(I.ブロックコポリマーを含むPFN)
ナノ粒子コアがブロックコポリマーを含む場合、このブロックコポリマーは、疎水性ブロックおよび親水性ブロックを含む。この構造を有するポリマー材料は、本発明における使用に好ましい構造を有するナノ粒子の形成に従うことが知られている。この疎水性ブロックおよび親水性ブロックは、非毒性かつ非免疫原性であることが知られている物質を含み、この物質は、身体内での分解および浄化機構によって排除され(これらの特性を有するポリマーの総説については、Amass,W.,Amass,A.,Tighe,B.,Polymer International,1998,47,89を参照のこと)、そしてまた、ペプチド、タンパク質または薬学的因子で容易に官能基化されるナノ粒子の調製を可能にする。ペプチド官能基化ナノ粒子の調製のためにこれらの材料を合成することが必要である先行技術に対する利点、改良、改変が、本明細書中に記載される。
【0033】
1実施形態において、本発明において使用される疎水性/親水性ブロックコポリマーは、大部分がInoueによって開発されたアルミニウムポルフィリン化学を使用して合成され得る(Inoue,S.,J.Macromol.Sci.1988,A25,571;および本明細書中でアルミニウムポルフィリンリビング重合の総説について引用された参考文献を参照のこと)。アルミニウムポルイフィリン錯体は、種々の環式エーテルおよびエステル(エポキシド、ラクトン、およびラクチドを含む)を重合し、エポキシドと、酸無水物または二酸化炭素とのコポリマーを形成することが知られている(Inoue,同書)。これらのポリマーの多くは、一般に、(もしあったとしても)低い毒性および免疫原性の所望の特徴の多くを有することが認識されており、身体から容易に清浄化される。この重合系の「リビング(living)」性質に起因して、ブロックコポリマーが、調製され得る。
【0034】
アルミニウムポルフィリン化学を使用する合成の1つの例として、ポリ(ε−カプロラクトン)−コ(エチレンオキシド)ジブロックコポリマーが、反応スキーム1に示されるように調製され得(Gan,Z.;Jiang,B.;Zhang,J.,J.Appl.Polym.Sci.,1996,59,961)、酵素分解を引き起こすナノ粒子を容易に形成する(Gan,Z.;Jim,;T.F.;Li,M.;Yuer,Z.;Wang,S.;Wu,C.,Macromolecules,1999,32,590)。PEGは、PEGが付着される実体物の循環時間を増加し、免疫系成分とPEG化した実体物との相互作用を妨害するPEGの能力が当該分野で周知(well documented)であるため、好ましい親水性ブロックである。
【0035】
【化1】
ポリ(ε−カプロラクトン)コ(エチレンオキシド)ジブロックコポリマーの首尾一貫した合成は、ペプチド官能基化ナノ粒子の調製に使用され得る追加のコポリマーの調製のための有用なペンダントとして役立つ。ε−カプロラクトンのプロパンオキシド、1,2−ブテンオキシド、3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン(ラクチド)、またはエキレンオキシドと無水コハク酸との混合物による置換は、新規な親水性/疎水性ブロックコポリマーの調製のための経路(反応スキーム2)を提供する。
【0036】
【化2】
一旦、疎水性/親水性ブロックコポリマーが合成されると、それらは、活性因子、すなわちペプチド、タンパク質、または誘導体化ペプチドおよびタンパク質構造、ならびに薬学的化合物に容易に結合する官能基を含むことが有機合成の当業者に公知の技術によって改変され得る。カップリング反応は、化学選択的連結反応を使用することによって活性因子の特異点で起こるように設計される。この反応部分は、代表的にペプチドまたはタンパク質上に見られるアミン、アルコール、およびカルボキシルのような他の部分とよりむしろ、優先的に互いに反応する。種々の化学選択的反応が同定され、最近概説されており(Lemieux,G.A.,;Bertozzi,C.R.,Trends in Biotechnology,1998,16,506)、これらの戦略の多くが、現在の発明に使用され得る。幾つかの可能な化学選択的連結反応のうちの1つの有用性を証明する例として、上記スキームに記載されたポリマーの第1のブロック上に位置付けされた末端クロリドは、ナトリウムスルフヒドリドとの反応によってチオールに容易に転化される(March,J.Advanced Organic Chemistry 第4版,John Wiley & Sons,Inc.New York,1992,406〜407頁)(反応スキーム3)。
【0037】
【化3】
単離後、チオール含有ポリマーは、チオールのα−ブロモカルボニル官能基との高選択的反応によってペプチドに結合され(反応スキーム4)(例えば、Muir,T.W.;Williams,M.J.;Ginsberg,W.H.;Kent,S.B.H.,Biochemistry,1994,33,7701を参照のこと)、官能基が容易にリシン含有ペプチドに導入される(例えば、Dawson,P.E.;Kent,S.B.H.,J.Am.Chem.Soc.1993,115,7263を参照のこと)。
【0038】
【化4】
さらに、粒子形成後に架橋され得る官能基が、含まれ得る。好ましくは、架橋可能な部分は、粒子間架橋の発生を減少させるために疎水性ブロック内に含まれる。例えば、疎水性ブロックの形成の間における重合溶液中の少量の1,2−エポキシ−4−ペンタノンエチレンケタールの封入は、疎水性ブロック中に幾つかの環式ケタールを組み込む。次いで、これらのケタールは、酸性水に対する曝露の際に切断され得、ケトン官能基を再生する。次いで、このケトン官能基は、エチレンジアミンから形成される化合物のようなジ(アミノ−オキシ)含有化合物との反応によって架橋され得る(スキーム5)。
【0039】
【化5】
糖質「ブロック」由来のエポキシドまたは環式エステルのアルミニウムポルフィリンリビング重合(反応スキーム6)から作製された新規ポリマーが、使用され得る。これらのブロックコポリマーは、デキストラン/スチレンまたはデキストラン/アクリレートブロックコポリマーと同様の特性を有し、この合成は、Haddleton,D.M.;Ohno,K.,Biomacromolecules,2000,1,152で議論されている。しかし、このデキストラン/エポキシドまたはデキストラン/環式エステルは、非毒性であるとして一般に受容され、身体から排除される非毒性分解産物に分解され得るポリマーセグメントからなるというさらなる利点を有する。
【0040】
【化6】
上記デキストランコポリマーは、この点でナノ粒子を形成し得、本発明における使用のために、それらは、高親和性ペプチドまたはPEGリンカーに対する化学選択的連結を引き起こすか、またはブロックコポリマー鎖の架橋を容易にするために、最初に改変されなければならない。これを達成する1つの方法は、反応スキーム7に概略化した一連の反応を介する。このコポリマーは、まず、1,1’−カルボニルジイミダゾールと反応され、次いで、エチレンジアミンの添加によってデキストランブロックにアミン官能基が導入される。ブロモ無水酢酸によるさらなる改変は、デキストラン上のα−ブロモカルボニル基を脱離する。以前のように、この基は、ペプチドのシステイン残基またはチオール末端PEGの側鎖のようなチオールに化学選択的に連結され得る。有機合成、ペプチド合成、または生化学の当業者は、追加の官能基が、連結工程(例えば、ヒドラジド、アミノオキシ、チオセミカルバジド、α−アミノチオール、n−ヒドロキシスクシンイミド活性エステル、ハロゲン、トシレート、およびカルボジイミドで補助したエステルおよびアミド形成が挙げられるが、これらに限定されない)のために使用され得ることを理解する。
【0041】
【化7】
改変したブロックコポリマーは、反応スキーム4に示されるようなチオール含有分子と反応する。
【0042】
PEG−ポリカプロラクトンブロックの場合、粒子形成後に架橋され得る官能基が含まれ得る。好ましくは、この架橋可能な部分は、粒子間架橋の発生を減少させるために、疎水性ブロック内に含まれる。これは、例えば、重合混合物中の1,2−エポキシ−4−ペンタノンエチレンケタールの封入、脱保護、および上記のようなジ(アミノ−オキシ)含有化合物との架橋によって達成され得る。
【0043】
それらの分解性、生体適合性、周知の合成、化学的性質の変更性、それらが架橋され得る容易さのために、ポリ(アミノ酸)(「PAA」)は、本発明において、疎水性構築ブロックとして好ましい。さらに、それらは、さらに親水性ブロックを形成する際に使用され得る。
【0044】
PAAコアは、例えば、米国特許第5,904,936号において議論される標準的なアミノ酸連結方法を使用して合成され得る。しかし、’936で使用される重合方法は、広い分子量分布およびあまり理解されていない構造を生じ得る(Deming,T.J.,Nature 1997,390,386〜389;Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.1997,119,2759〜2760;およびそれらの文献に引かれている参考文献)。例えば、’936で議論されるように、ブロック構造は、それがより低い分子量のコロイド粒子形成するため、所望され得る。理論に束縛されることを望まないが、’936で使用される重合方法は、このような十分に規定されたブロック構造を有さず、むしろポリマー種の複合混合物を有する鎖を生成し得、このような構造は、安定なコロイド粒子を形成しない。従って、別個の構造を有する十分に特徴づけされたPAAを単離するために、Deming(前出Deming;Deming,T.J.,Macromolecules 1999,32,4500〜4502)によって最近開発されたリビング重合方法を使用する制御された重合スキームを介して、PAA鎖を合成することが有利であり得る。
【0045】
PAA疎水性ブロックおよびPEG親水性ブロック:この実施形態において、PAAブロックは、疎水性アミノ酸およびそれらの誘導体(例えば、Leu、lle、Val、Ala、Tyr、Phe、およびβ−ベンジル−L−アスパラギン酸)を含む。PEGは、幾つかの方法を使用して、ブロックに結合され得る。例えば、PEGは、ペプチド合成の当業者に公知であるカルボジイミドカップリング反応(G.T.Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego,1996)を介して、PAA(カルボン酸またはアミン末端のいずれか)に結合され得る。このPEGは、それが固相ペプチド合成に使用される樹脂上にある間、またはPAAがこの樹脂から切断された後に、PAAに結合され得る。あるいは、α−アミノ酸−N−カルボキシ無水物(NCA)の遷移金属媒介重合の使用は、それらの合成の間のPAAの末端基官能基化を可能にする(Curtin,S.A.,Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.,1999,121,7427〜7428)。この技術は、遷移金属錯体上でのPEG官能基化開始リガンドを使用することによってPAA−PEG化合物の合成の際に補助するために適応され得る。このPEG官能基化開始リガンドは、NCAの重合を開始し、PAA鎖に共有結合されたままであり、所望のブロック構築物を与える。
【0046】
PAA疎水性ブロックおよびPAA親水性ブロック:この実施形態において、ポリ(アミノ酸)鎖(「PAA」)は、疎水性アミノ酸および中性アミノ酸(例えば、Leu、Ile、Val、Ala、TyrおよびPhe)と、親水性アミノ酸(例えば、Glu、Asp、Lys、Arg、およびHis)のブロックからなる。好ましくは、イオン性アミノ酸は、カルボキシル官能基を有する側鎖を有する(Glu、Asp)。各ブロックのアミノ酸の型を、1つまたは2つのペプチドに限定することが望ましくあり得る。例えば、疎水性ブロックは、全体として、ロイシンからなり得るか、またはロイシンとバリンのランダムコポリマーであり得る。最も好ましくは、親水性ブロックは、全体としてGluからなるが、一方で、疎水性ブロックは、LeuとValとのコポリマーである。これらのPAAは、好ましくは、例えば、ABまたはABA型のブロックの形態である。
【0047】
PAA架橋:自発的な形成の後、ナノ粒子構造は、さらに、ブロックコポリマー鎖を架橋することによって安定化され得る。このような架橋は、ポリマー分野の当業者に一般に公知のいくつかの方法によって達成され得る。1つの方法は、鎖構造にアミン残基(例えば、PAA構造におけるリジン)を含むことである。アミン残基の割合は、ナノ粒子を形成する能力が、許容可能な程度を越えて減少しないように十分に低くあるべきである。次いで、これらのアミン残基は、例えば、試薬N−ヒドロキシ−スクシンイミドアクリレートを使用することによって、アクリレート部分で官能化され得る。自発的なナノ粒子形成に続いて、同じナノ粒子内の異なる鎖からのアクリレート官能基を、標準的なフリーラジカル重合技術を使用して、一緒に連結され得る。あるいは、グルタルアルデヒドまたは当該分野で周知の他の試薬(例えば、G Hermanson,Bioconjugation Techniques, Academic Press,San Diego,1996を参照のこと)がまた、鎖に含まれるアミン残基を架橋するために使用され得る。HAPをブロックコポリマー連結する場合のように、ブロックコポリマーに鎖の互いの架橋がまた、化学選択的結合対を使用して達成され得る(Lemieux,G.A.;Bertozzi,C.R.,Trends in Biotechnology,1998,16,506)。これらの試薬が、HAPの部分またはタンパク質に対して低い反応性のみを有するか、または反応性を有さない、化学選択的反応対が、好ましい。
【0048】
好ましくは、架橋は、粒子間反応を減少するために、ナノ粒子の表面から離れた、疎水性ブロックにおいて実施される。化学選択的反応対が使用される場合、ブロックコポリマー鎖は、レブリン酸官能化アミン末端またはリジン残基(この目的のために、合成の間疎水性ブロックに分散される)、およびアミノオキシ基を介してブロックコポリマーに含まれるケトン基を通して架橋され得る。
【0049】
ペプチド結合(attachment):2型高親和性ペチチドは、最も高い程度の生物学的活性のために、得られたナノ粒子の表面かまたはその近傍に位置すべきである。このペプチドを粒子の表面の近傍に配置するために、HAPは、好ましくは、ブロックコポリマー鎖の一方の末端または両方の末端に結合され得る。あるいは、HAPは、HAP分子を、ブロックコポリマー鎖に沿う1つ以上の残基に結合することによって組み込まれ得る。1つの実施形態において、構築物は、ABA型のものであり得、このBブロックは、疎水性ポリマーからなり、Aブロックは、親水性ブロックからなり、そしてこの高い親和性ペプチドは、親水性ポリマーブロックの末端に結合される。あるいは、高密度のペプチドが、ブロックコポリマー鎖に沿う複数の残基または中程度の分子への結合によって組み込まれ得る。好ましくは、これらのHAPは、親水性ブロックの自由末端に結合される。
【0050】
HAP分子は、ナノ粒子形成の前か、ナノ粒子が形成された後、ブロックコポリマー分子に直接結合され得るか、またはPEG−ブロックコポリマー分子を介して結合され得る。理論に束縛されることを望まないが、HAPが、ナノ粒子形成の前に、コポリマー鎖に結合される場合、コポリマーのコロイド分散系の自発的な、熱力学的に駆動された形成を乱す可能性を減少されるために、3〜10アミノ酸の短いHAP配列が、より長い配列とは反対に好ましい。このナノ粒子が、PEG鎖からなる場合、これらのペプチドは、粒子形成の前、その間、またはその後に、PEG分子の自由端に結合され得る。
【0051】
さらに、HAPのブロックコポリマーへの結合は、ペプチド合成の当業者に公知の標準的なカップリング技術を使用してコポリマー側鎖への結合を介して達成され得る(Jones,J.,前出;Bodanszky,M,Bodanszky,A.,前出)、例えば、これは、HAPのアミノ末端を、PAAのGluまたはAspのカルボン酸側鎖に結合することによって達成され得る。逆に、HAPのカルボン酸末端は、PAA中の、Lys、Arg、またはHisの窒素含有官能基に共有結合され得る。ここで、PAAまたは高親和性ペプチドのいずれかのカルボン酸末端は、活性化エステルに転換され(DCCまたは他の試薬を用いて)、そして反応パートナーのアミン官能基を用いて縮合される。
【0052】
これらのブロックコポリマーはまた、化学選択的連結反応を可能にする官能基を含むように、有機合成の当業者に公知の技術によって改変され得る (Lemieux,同書)。反応部分は、優先的に、ペプチドまたはタンパク質上に代表的に見出されるアミン、アルコールおよびカルボキシルのような他の部分よりはむしろ互いに反応する。いくつかの可能な化学選択的連結反応の1つの有用性を実証する例として、PAA上のチオール含有官能基(これは、システイン残基の組み込みによって含まれ得る)またはチオール末端PEGが、チオールとα−ブロモカルボニル官能基(例えば、Muir,T.W.;Williams,M.J.;Ginsberg,W.H.;Kent,S.B.H.Biochemistry,1994,33,7701を参照のこと)、官能基(これは、リジン含有ペプチドまたはタンパク質に容易に導入される)(例えば、Dawson,P.E.;Kent,S.B.H.J.Am.Chem.Soc.,1993,115,7263を参照のこと)との高度に選択的な反応によってペプチドに結合される。
【0053】
PEGは、ナノ粒子を生成するために使用されるブロックコポリマー中の親水性ブロックとして使用され得る。あるいは、これらのナノ粒子を生成するために使用されるブロックコポリマーは、他のポリマーからなり、例えば、親水性PAAブロックが使用され得る。後者の場合において、ナノ粒子形成の後、文献に十分に記載されるPEG化の利点のために、ナノ粒子表面をPEG鎖で官能化することが有益であり得る。以下に議論されるように、二官能性PEG鎖が、高親和性ペプチドをこの表面に連結するために使用され得るか、または一官能性PEG鎖が、表面を改変するために使用され得る。
【0054】
PEGは、優先的にヘテロ二官能性またはホモ二官能性であり、約1,000と約20,000との間の平均分子量である分子量を有する。
【0055】
この用途のために、両方の末端が同じ反応性部分を有して終結する二官能性PEGまたは2つの異なる反応性部分を有して終結するヘテロ二官能性PEGが、使用され得る。PEGの末端として使用され得る代表的な反応性基としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アミン、アルデヒド、−ハロ、カルボニル、アミノオキシ、ヒドラジド、チオール、ケトン、ハライド、およびエポキシド。二官能性PEGの場合において、2つの同一な基が、PEGの各末端に位置する。ヘテロ二官能性PEGは、PEGの各末端に位置する1つの固有な基を有する。次いで、PEGのナノ粒子への結合が、例えば、EDCのようなカルボジイミドを使用して、コポリマー鎖のカルボキシ末端をPEG鎖のアミノ末端に連結することによって達成され得る(G.T.Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press, San Diego,1996)。PEGがナノ粒子に結合された後、PEG鎖の一部分の反応性自由端が、HPA分子と反応し得る。
【0056】
HAPペプチドは、1つのポリペプチドのPEG末端に結合され得、引き続いてHAP−PEG分子が、PAAまたは他のPEG末端を介してナノ粒子に結合され得る。このHAPは、PEGへの結合の前に、その全体が形成され得るか、またはそれは、PEG末端への1つのアミノ酸の連続的な結合によって形成され得る。後者の方法を使用して、ナノ粒子に結合されるPEG末端は、固相ペプチド合成のために使用される樹脂に結合され得る。例えば、ジアミノPEGが出発物質として使用され得る。このポリマーは、この手順のために適切であることが見出され得る種々の樹脂(例えば、PEGA樹脂)に結合され得る(例えば、PEG−ペプチド結合体の例については、Auzanneau,F.I.;Meldal,M.;Bock,K.;J.Pept.Sci.1991,1,31を参照のこと)。次いで、このHAPは、固相ペプチド合成に使用される標準的な試薬および手順を使用して、未反応のPEG末端から生長される。好ましくは、これらの手順は、ペプチドのポリアミド骨格の調製のために、FMOCベースまたはBOCベースの保護基ストラテジーを使用し、そしてDCCを使用するか、またはTのカルボン酸活性化試薬を使用する。配列の完成の際に、このPEGは、基質樹脂から切断され、PEGを樹脂に結合するために使用されたPEG末端を再生する。切断剤の正確な性質が、ペプチドに存在する他の官能基および基質樹脂の同定によって決定される。トリチル官能化樹脂が使用される上に概略された好ましい例において、切断は、塩化メチレン中のTFAを使用して達成される。一旦自由になると、この末端は、必要ならば、ナノ粒子への結合を補助する所望の官能基への引き続く改変を受け得る。例えば、BOC−アミノオキシ酢酸への結合は、BOC保護基のTFAでの除去の後に、アミノオキシ官能化PEG末端を生じる。次いで、このアミノオキシ部分は、ブロックポリマー鎖またはナノ粒子上に存在するアルデヒドまたはケトン基と反応され得る。ペプチドの合成の間に助剤として使用される保護基は、合成の間のいくつかの段階で除去され得、それの除去の正確な手順位置が、使用される全体的な合成ストラテジーによって指示される。同様に、ペプチド側鎖基改変がまた、合成の間のいくつかの点で起こり得る。
【0057】
一旦所望のPEG−ペプチド種が、存在する末端官能基と共に合成されると、これは、ナノ粒子に結合される。このカップリング手順を補助するために、相補的(complimentary)反応対が、予め選択される(1つは、PEG−ペプチドのPEG末端として、他方は官能化ビルディングブロックとして(これは、ナノ粒子処方物に含まれる))。例えば、アミノオキシ基は、PEG末端に配置され得、そしてケトンまたはアルデヒドビルディングブロック、あるいはケトンまたはアルデヒドビルディングブロックを用いて合成されたアミノ酸が、ナノ粒子構造に組み込まれ得る。これらの2つの官能基は、互いと優先的に高収率で反応することが知られており(Lemieux、同書)、従ってPEG−ペプチド複合体をナノ粒子にカップリングする。議論されたものよりもあまり選択的ではない、他の既知の反応対がまた、使用され得、正確な選択が、合成的考察、毒物学的考察、経済的考察または他の考に基づく。
【0058】
循環を増加するためのPEG官能化:本発明の1つの実施形態において、ポリエチレングリコール(PEG)または他のポリアルキレンオキシド(PAO)が、ノナ粒子形成の前または後に、ブロックコポリマー鎖に結合され、その結果、それらは、ナノ粒子の表面に位置する。PEGがナノ粒子形成の前に結合される場合、それらの存在は、自発的なナノ粒子形成を干渉してはならない。このような干渉は、PEGの結合が、PEG−ブロックコポリマー分子を親水性にしすぎる場合に生じ得る。従って、PEG鎖がナノ粒子形成の前に結合される場合、PEG鎖および親水性コポリマーの分子量は、ノナ粒子形成が、適切な水溶液条件下で自発的に起こるように、十分低く維持されなくてはならない。このPEG鎖が、ナノ粒子形成の後に結合される場合、このような結合が、ナノ粒子構造の破壊を生じないように、注意しなければならない。このことが起こらないことを確実にするために使用され得る1つの方法は、PEG分子結合の前に、ナノ粒子構造内のコポリマー鎖を架橋することである。
【0059】
循環時間を増加させる目的のために使用されるPEGは、その末端にHAPを提供することを必要としない。従って、これらのPEG鎖は、単官能性であり得る;すなわち、1つの末端は、アミンのような反応性基で官能化され得、PEG鎖がこの部分を介して表面または分子に結合されることを可能にするが、他方の末端は、一般に生理学的条件に不活性であり、例えば、メトキシ基である。あるいは、二官能性PEG(これは、ブロックコポリマー鎖またはナノ粒子表面に一方の末端で結合され得る)は、循環時間を増加するために使用され得る。この場合、自由端(すなわち、コポリマーまたはナノ粒子に結合されない末端)は、当該分野で慣用的な方法を使用して、メトキシ基で「キャップされるか」または本質的に非反応性とされる。
【0060】
本発明において実施されるように、PEGは、リンカーとしてまたは循環時間を増加させるために使用される場合、PEGは線状であり、個々のPEG鎖の好ましい分子量は、1000〜50,000Daの分子量の範囲である。
【0061】
ブロックコポリマーからのナノ粒子の形成:一旦ペプチド官能化ブロックコポリマーが合成されると、標的化送達のためのナノ粒子が、以下のように形成され得る。ブロックコポリマー(このコポリマーのある割合は、2型ペプチド−官能化ブロックコポリマーで官能化され得る)は、水性緩衝液に添加される。例えば、2型ペプチド/ブロックコポリマーの希釈溶液は、水可溶性有機溶媒(例えば、DMF、THFなど)を含む水溶液中で調製される。次いで、水溶性有機溶媒が、透析または減圧下での蒸留のような方法によって水から除去される。
【0062】
(II.架橋された親水性ポリマーからなるPFN)
1つの実施形態において、重合可能な基を有する親水性ビルディングブロックが、安定なナノ粒子コアを形成するために使用される。これらのビルディングブロックは、逆マイクロエマルジョンの分散水相中で架橋される。1つの単一のビルディングブロックに結合された重合可能基の数は、例えば、1個〜3個の低分子量ビルディングブロックから、10個以上のポリマービルディングブロックの範囲であり得る。1より多い重合可能基を含むビルディングブロックは、架橋剤として機能し得、そしてゲル網目構造を可能にする。1、2またはそれより多い重合可能な基を有するビルディングブロックのセットから、異なる量および比率のビルディングブロックを使用することは、重合の際に、異なる可撓性(compliancy)のポリマー網目構造の形成を可能にする。
【0063】
例示的な架橋可能基としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アクリレート、アクリルアミド、ビニルエーテル、スチリル、エポキシド、マレイン酸誘導体、ジエン、置換ジエン、チオール、アルコール、アミン、ヒドロキシアミン、カルボン酸、無水カルボン酸、カルボン酸ハライド、アルデヒド、ケトン、イソシアネート、スクシンイミド、カルボン酸ヒドラジド、グリシジルエーテル、シロキサン、アルコキシシラン、アルキン、アジド、2’−ピリジルジチオール、フェニルグリオキサール、ヨード、マレイミド、イミドエステル、ジブロモプロピオネート、およびヨードアセチル。
【0064】
フリーラジカル重合:好ましい重合可能官能基は、アクリレート部分およびアクリルアミド部分である。このような部分は、フリーラジカル重合に対して反応性である。フリーラジカル重合は、UV光と光開始剤との組み合わせ、酸化還元対フリーラジカル開始剤、または熱および熱活性化開始剤によって容易に達成され得る。
【0065】
ナノ粒子コアを形成するために使用される例示的なモノマービルディングブロックとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アクリルアミド、アクリル酸ナトリウム、メチレンビスアクリルアミド、2,2−ビスアクリルアミド酢酸アンモニウム、2−アクリルアミドグリコール酸、メタクリル酸2−アミノエチル、オルニチンモノアクリルアミド、オルニチンジアクリルアミドナトリウム塩、N−アクリロイル(ヒドロキシメチル)−メチルアミン、ヒドロキシエチルアクリレート、N−(2−ヒドロキシプロピル)−アクリルアミド、2−スルホエチルメタクリレート、2−メタクリロイルエチルグルコシド、グルコースモノアクリレート、グルコール−1−(N−メチル)−アクリルアミド、グルコース−2−アクリルアミド、グルコース−1,2−ジアクリルアミド、マルトース−1−アクリルアミド、ソルビトールモノアクリレート、ソルビトールジアクリレート、スクロースジアクリレート、スクロースモノ(エチレンジアミンアクリルアミド)、スクロースジ(エチレンジアミンアクリルアミド)、スクロースジ(ジエチレントリアミンアクリルアミド)、カナマイシンテトラアクリルアミド、カナマイシンジアクリルアミド、デキストランマルチアクリルアミド(dextran multiacrylamide)、スクロースモノ(エチレンジアミンアクリルアミド)モノ(ジエチレントリアミンアクリルアミド)モノ(フェニルアラニン)ナトリウム塩、ならびに他のアクリレートまたはアクリルアミド誘導体化糖。
【0066】
好ましい実施形態において、ビルディングブロックの少なくともいくつかは、炭水化物である。炭水化物ビルディングブロックの場合、炭水化物領域は、通常、複数のヒドロキシル基から構成され、ここで少なくとも1つのヒドロキシル基は、少なくとも1つの重合可能基を含むように修飾される。
【0067】
炭水化物ビルディングブロックの炭水化物領域は、炭水化物または炭水化物誘導体を含み得る。例えば、この炭水化物領域は、以下から誘導され得る:単糖類(例えば、グルコース、リボース、アラビノース、キシロース、アロース、アルトロース、マンノース、グルコース、イドース、ガラクトース、フルクトースまたはタロース);二糖類(例えば、マルトース、スクロース、ラクトースまたはトレハロース);三糖類;多糖類(例えば、セルロース、デンプン、グリコーゲン、アルギネート、イヌリン、およびデキストラン);または修飾多糖類。他の代表的な炭水化物としては、ソルビタン、ソルビトール、キトサンおよびグルコサミンが挙げられる。炭水化物は、ヒドロキシル基に加えてアミン基を含み得、そしてこのアミン基またはヒドロキシル基は、架橋基、他の官能基またはそれらの組み合わせを含むように修飾または置換され得る。
【0068】
炭水化物ベースのビルディングブロックは、生物有機化学の分野で公知の標準的なカップリング技術によって、炭水化物前駆体(例えば、スクロース、ソルビタール(sorbital)、デキストランなど)から調製され得る(例えば、G Hermanson,Bioconjugation Techniques,Academic Press,San Diego,1996,pp27−40,155,183−185,615−617;およびS.Hanesian,Preparative Carbohydrate Chemistry,Marcel Dekker,New York,1997を参照のこと)。例えば、架橋可能基は、アクリロイルクロリドをアミン官能化糖に滴下することによって、炭水化物に容易に結合される。アミン官能化糖は、エチレンジアミン(または他のアミン)と1,1’−カルボニルジイミダゾール活性化糖との反応によって調製され得る。アミンを炭水化物に導入する他の反応もまた、使用され得、この多くは、Bioconjugation Techniques(前出)において概説される。
【0069】
炭水化物ベースのビルディングブロックはまた、フリーラジカル条件下において重合することが知られている部分で、炭水化物を部分的に(または完全に)官能化することによって調製され得る。例えば、メタクリルエステルは、炭水化物と無水メタクリル酸またはグリシジルメタクリレートとの反応によって、様々な置換レベルにおいて炭水化物上で置換され得る(Vervoort,L.;Van den Mooter,G.;Augustijins,P.;Kinget,R.International Journal of Pharmaceutics,1998,172,127−135)。
【0070】
炭水化物ベースのビルディングブロックはまた、化学酵素的方法(Martin,B.D.ら、Macromolecules,1992,25,7081)によって調製され得、例えばここで、Pseudomonas cepaciaは、ピリジン中におけるビニルアクリレートとの単糖類のエステル交換反応を触媒するか、またはアクリレートの直接付加による単糖類のエステル交換反応を触媒する(Piletsky,S.,Andersson,H.,Nicholls,Macromolecules,1999,32,633−633)。多数の誘導体化炭水化物は、炭水化物化学の分野の当業者に公知であるため、他の官能基が存在し得る。
【0071】
炭水化物ベースのビルディングブロックに加えて、アクリレート誘導体化ポリマービルディングブロックまたはアクリルアミド誘導体化ポリマービルディングブロックの他の例としては、ポリエチレングリコールベースの分子(例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート)が挙げられる。
【0072】
ポリアミドの形成:オリゴマーカチオン性ビルディングブロック(例えば、キトサンまたはポリリジン)は、多官能性アニオン(例えば、ポリ(アスパラギン酸))と架橋されて、本発明における使用のためのナノ粒子を形成し得る。
【0073】
化学選択的重合:化学選択的ビルディングブロックはまた、ナノ粒子を形成するために使用され得る。このストラテジーの代表的な例は、部分的に酸化されて、逆マイクロエマルジョン内に多数のアルデヒドを含む多糖類の使用であり得る。ジ(アミノ−オキシ)含有化合物(例えば、エチレンジアミンから作製される化合物(反応スキーム8))は、次いで、架橋剤として使用され得、酸化された糖のアルデヒドは、このアミノ−オキシ官能基と反応する。
(反応スキーム8)
【0074】
【化8】
逆マイクロエマルジョン中におけるナノ粒子コアの製造:ナノ粒子が親水性ビルディングブロックから構成される場合、PFNは、最初に、逆マイクロエマルジョンの分散された水相に可溶化された親水性モノマービルディングブロックの架橋によりナノ粒子コアを形成することによって、製造される。ナノ粒子コアの製造のための逆マイクロエマルジョンは、水性緩衝液または水、ビルディングブロック、有機溶媒、界面活性剤および開始剤を適切な割合で合わせることにより形成され、連続した油相に分散した界面活性剤安定化水性ナノ液滴(nanodroplet)の安定な相を生成する。安定な逆マイクロエマルジョンの組成は、当業者によって、公知の方法を使用して見出され得る。これらは、例えば、Microemulsion Systems,H.L.RosanoおよびM.Clausse編、NewYork,N.Y.:M.Dekker,1987,およびHandbook of Microemulsion Science and Technology,P.KumarおよびK.L.Mittel編、New York,N.Y.:M.Dekker,1999において考察される。本発明において、可溶化された親水性ビルディングブロックを含む水相は、1つ以上の可溶化界面活性剤を含む有機溶媒に添加されて、逆マイクロエマルジョンを形成する。
【0075】
分散した水相は、約5〜約65重量%、好ましくは約5〜約25重量%、最も好ましくは5〜15重量%可溶化された親水性ビルディングブロックを含む。最も好ましい組成物では、重合の後、得られるナノ粒子は、より高級なポリマーを含有するナノ粒子と比較してより親水性でありかつより可溶性であり、そして分解生成物の量は、より高級なポリマーを含有するナノ粒子と比較して少ない。理論に縛られることは望まないが、高い含水量のコアの使用はまた、最終用途における免疫原性を減少し得る。なぜなら、認識する免疫系成分の異種表面が少ないからである。高い含水量はまた、より可撓性のポリマーネットワークにわたって伸展性(compliancy)を提供する。従って、細胞表面レセプターに結合する場合、このナノ粒子は、細胞表面に適合し、より多くの表面レセプターを結合させ得る。より多くのレセプターの結合により、このナノ粒子はアンタゴニストとしてより良好に機能し得る。さらに、理論に縛られることを望まないが、PFN細胞表面範囲は、他の細胞シグナル伝達経路を阻害し得ると考えられる。
【0076】
逆マイクロエマルジョンの分散した水相のナノ液滴中のビルディングブロックの重合は、当業者に周知の標準的な手順に従う(例えば、Odian G.G.;Principles of Polymerization、第3版、Wiley,New York,1991;L.H.Sperling,Introduction to Physical Polymer Science,Chapter 1,1−21頁、John Wiley and Sons,New York,1986;およびR.B.SeymourおよびC.E.Carraher,Polymer Chemistry,Chapters 7−11,193−356頁,Dekker,New York,1981を参照のこと)。好ましくは、ビルディングブロックは、官能性/架橋可能基(例えば、アクリレートおよびアクリルアミド)を有し、フリーラジカル重合に対して感受性であり、そして重合は、UV開始剤とUV光の組み合わせ、酸化還元対フリーラジカル開始剤、または熱開始剤および熱によって誘導され得る。有機溶媒および非反応性界面活性剤は、重合後に除去され、架橋した水溶性のナノ粒子を生じる。
【0077】
分散した水相のナノ液滴のサイズは、用いられる水、界面活性剤および油相の相対量によって決定される。界面活性剤は、逆マイクロエマルジョンを安定化するために使用される。これらの界面活性剤は、架橋可能部分を含まず、これらはビルディングブロックではない。使用され得る界面活性剤としては、市販の界面活性剤、例えば、Aerosol OT(AOT)、ポリエチレンオキシ(n)ノニルフェノール(IgepalTM,Rhodia Inc.Surfactants and Specialties,Crandbrook,NJ)、ソルビタンエステル(モノオレイン酸ソルビタン(Span(登録商標)80)、モノラウリン酸ソルビタン(Span(登録商標)20)、モノパルミチン酸ソルビン酸(Span(登録商標)40)、モノステアリン酸ソルビタン(Span(登録商標)60)、トリオレイン酸ソルビタン(Span(登録商標)85)、およびトリステアリン酸ソルビタン(Span(登録商標)65)(これらは、例えば、Sigma(St Louis,MO)から入手可能である)を含む)が挙げられる。セスキオレイン酸ソルビタン(Span(登録商標)83)は、Aldrich Chemical Co.,Inc.(Milwaukee,WI)から入手可能である。使用され得る他の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標))化合物が挙げられる。共界面活性剤(cosurfactant)としては、以下が挙げられる:モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)20およびTween(登録商標)21)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)80およびTween(登録商標)80R)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)60およびTween(登録商標)61)、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)85)、およびトリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)65)(これらは、例えば、Sigma(St Louis,MO)から入手可能である)。他の代表的な市販の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオキシ(40)−ソルビトールヘキサオレイン酸エステル(Atlas G−1086,ICI Specialties,Wilmington DE)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB,Aldrich)、および直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS,Ashland Chemical Co.,Columbus,OH)が挙げられる。
【0078】
他の例示的な界面活性剤としては、以下が挙げられる:脂肪酸セッケン、アルキルホスフェートおよびジアルキルホスフェート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、1級アミン塩、2級アミン塩、3級アミン塩、4級アミン塩、n−アルキルキサンタン、n−アルキルエトキシル化スルフェート、ジアルキルスルホコハク酸塩、n−アルキルジメチルベタイン、n−アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル、n−アルキルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステル、ポリエチレンオキシソルビタンエステル、ソルビトールエステルおよびポリエチレンオキシソルビトールエステル。
【0079】
他の界面活性剤としては、脂質(例えば、リン脂質、糖脂質、コレステロールおよびコレステロール誘導体)が挙げられる。例示的な脂質としては、脂肪酸または脂肪酸を含む分子が挙げられ、ここでこの脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、パルミトイル酸、リノール酸、リノレン酸、およびアラキドン酸、ならびにそれらの塩(例えば、ナトリウム塩)が挙げられる。この脂肪酸は、例えば、酸官能性部分を含む小分子へのカップリング反応によってこの酸官能基をスルホネートに変換することによって、または当業者に公知の他の官能基の変換によって、修飾され得る。
【0080】
さらに、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、デンプンおよびそれらの誘導体は、本発明において、界面活性剤としての使用を見出し得る。
【0081】
カチオン性脂質(例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド/クロリド(CTAB/CTAC)、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド/クロリド(DODAB/DODAC)、1,2−ジアシル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、1,2−ジアシル−3−ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、[2,3−ビス(オレオイル)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、および[N−(n’−N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]クオレステロール、ジオール(Dc−Chol))は、共界面活性剤として使用され得る。アルコール(例えば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノールおよびオクタノール)もまた、共界面活性剤として使用され得る。より長い炭素鎖を有する他のアルコールもまた使用され得る。
【0082】
ナノ粒子コアの官能化:構成可能なビルディングブロックは、ナノ粒子を形成するために架橋され、このナノ粒子の表面は、2型高親和性ペプチドで官能化される。HAPは、ブロックコポリマーナノ粒子に関して本明細書中で先に考察されたように、直接かまたはリンカー分子を介してのいずれかで、ナノ粒子の表面に結合され得る。リンカーの配置において、高親和性ペプチドの一部または全ては、テザーの末端で「表示」される。従って、本発明の1つの適用において、PFNは、本明細書中で前述される様な生分解性なの粒子コアの表面で表示される高親和性ペプチドを構成する。
【0083】
本発明の別の実施形態において、PFNは、前述のナノ粒子コアの表面に、リンカー分子(このリンカーは、好ましくは、PEGを含む)を介して結合した高親和性ペプチドを構成する。
【0084】
これらの実施形態の各々について、ナノ粒子をいくつかのカップリングストラテジーを使用して官能化し、カップリングのために使用される異なる成分および反応性化学部分の両方の付加の順序を変えることが可能である。
【0085】
これらの成分が互いに結合する順序に関して、例えば、PEGを含むリンカー分子によって親水性ポリマーナノ粒子に結合した高親和性ペプチドを構成するPFNは、以下の様式で合成され得る:このナノ粒子コアは、初めに、二官能性PEG含有テザーと反応され、続いて、このPEGの一部の自由端が高親和性ペプチドで官能化される。あるいは、この高親和性ペプチドは、初めに、PEG含有テザーに結合され、続いて、他のPEG末端がこのナノ粒子コアに結合される。最後に、本発明の一実施形態において、高親和性ペプチドに結合したPEG含有テザーは、ポリアミノ酸のステップバイステップ型の固体支持体合成から誘導される。
【0086】
カップリング方法(単数または複数)に関して、高親和性ペプチドをナノ粒子コアにグラフト化し、そしてこのテザーとナノ粒子とを反応させるために、反応性部分のいくつかの組み合わせが選択され得る。一連の直交性の反応セットを使用して、いくつかのコアビルディングブロックおよび/またはテザーアームを変更する際、異なるペプチドを同じナノ粒子コアにグラフト化し、そして/または異なるエンハンサーをこのナノ粒子コアに十分に制御された割合でグラフト化することもまた可能である。直交反応性の対を使用する反応は、同時にかまたは連続的に行われ得る。
【0087】
反応条件が考慮される限り、水系でナノ粒子を官能化することが好ましい。ナノ粒子コアの合成の残留物である界面活性剤および油相は、溶媒洗浄(例えば、エタノールを使用して界面活性剤および油を可溶化し、同時にポリマーナノ粒子を沈殿させる);界面活性剤吸着ビーズ;透析を使用することによって、または水系(例えば、4M尿素)を使用することによって(別々にまたは組み合わせて)除去され得る。界面活性剤の除去のための方法は、当該分野で公知である。
【0088】
高親和性ペプチドは、ナノ粒子表面への結合を可能にする官能基を含まなければならない。好ましくは、必ずしも必要ではないが、この官能基は、カップリング反応を助けるために選択された化学選択性試薬の対の1つのメンバーである。(Lemieux,G.,Bertozzi,C.,Trends in Biotechnology,1998,16,506−513)。例えば、ナノ粒子表面(および/またはその表面にグラフト化したリンカー)が、α−カルボニル官能基を表す場合、このペプチドはスルフヒドリル部分を介して結合され得る。ペプチド構造中のスルフヒドリル部分は、システイン残基の含有によって達成され得る。
【0089】
カップリングはまた、ナノ粒子上の1級アミンまたはリンカー末端とペプチド上のカルボン酸との間で可能である。ペプチド構造中のカルボン酸は、直鎖ペプチドについて、その末端アミノ酸のいずれかで見出され得るか、またはアスパラギン酸またはグルタミン酸の含有によって見出され得る。カルボン酸がナノ粒子上にあり、かつ1級アミンがペプチドに属している反対の構成もまた、容易にアクセス可能である。多くの重合可能ビルディングブロックは、酸性部分を含み、この酸性部分は、それらの重合後に、ビーズの表面においてアクセス可能である。高親和性ペプチドについて、1級アミン官能基は、そのN末端(このペプチドが直鎖である場合)のいずれかで見出され得、そして/またはリジン残基の導入によって見出され得る。
【0090】
反応性化学対の別の例は、スルフヒドリルとマレイミド部分とのカップリングを含む。このマレイミド官能基は、当業者に公知の方法(例えば、G.T.Hermanson、Bioconjugate Techniques,Academic Press Ed.,1996に記載される方法)を用いて、他の通常の官能基(例えば、カルボン酸、アミン、チオールまたはアルコール)と(好ましくは市販の)短いリンカーとを反応させることによって、ペプチド、リンカーまたはナノ粒子の表面のいずれかに容易に導入され得る。高親和性ペプチドはまた、アミノ−オキシ官能基とアルデヒドまたはケトン部分との間の反応を用いて、ナノ粒子および/またはテザーに結合され得る。このアミノ−オキシ部分(ナノ粒子上にあるかまたはペプチド内にあるかのいずれかである)は、当業者に公知の一連の形質転換によって、他の通常の官能基(例えば、アミン)から初めて導入され得る。同じ様式で、アルデヒドまたはケトン含有粒子およびアルデヒド含有ペプチドは、公知の方法によって容易に合成される。
【0091】
この得られるペプチド官能化ナノ粒子は、直ちに使用され得るか、溶液として保存され得るか、または長期間の貯蔵のために凍結乾燥され得る。
【0092】
(III.エンハンサー分子の使用)
必要に応じて、ナノ粒子表面はまた、ペプチド以外の分子によって官能化され得る。「エンハンサー」と本明細書中で称されるこのような分子は、好ましくは、以下のカテゴリーの1つ以上に属する小分子から構成される:特定の細胞による取込みを増大する分子(例えば、特定の癌細胞による取込みを促進するために使用される葉酸)、特異的標的化に対する認識を提供する分子(例えば、単鎖多糖類)、PFNが蓄積する動物組織または植物組織におけるPFNの追跡を可能にする分子(例えば、色素、蛍光分子または放射性分子)、または有用な治療効果を提供する高親和性ペプチド以外の任意の分子。高親和性ペプチドと同様に、これらのエンハンサーは、PFNの表面に直接結合され得るか、またはリンカー分子の末端で表され得る。
【0093】
一般的に、ポリマーコア、PEG、エンハンサーおよびHAP成分の結合は、標準的な生体結合技術によって達成され得る。例えば、ペプチドのカルボキシ末端をコアのアミン末端に(またはその逆)結合するために、カルボジイミド(例えば、EDC)が使用され得る。コア上のアミノ基をペプチド上のアミノ機に結合するために、グルタルアルデヒドが使用され得る。これらの例は、限定的ではなく、当業者は、複数のカップリング試薬または方法から選択し得る(例えば、Jones,J.,Amino Acid and Peptide Synthesis,Oxford University Press,New York 1992;Bodanszky,M;Bodanszky,A.,ThePractice of Peptide Synthesis,Springer−Verlag,New York 1994;G.T.Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego,1996を参照のこと)。あるいは、化学選択性カップリング試薬の相補対が用いられ得、この対の一方のメンバーはPAAに組み込まれ、そしてこの対の他方のメンバーは、HAPに組み込まれる。実際に、このストラテジーが使用され、大きなポリペプチド配列の調製において成功している(Lemieux、同書)。また、末端官能化ポリペプチドの調製における新たな進歩(Curtin,S.A.Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.,1999,121,7427−7428)により、上記のカップリング化学の必要性を回避し、HAP末端コポリマー構造の直接合成が可能となり得る。
【0094】
(IV、タンパク質制御放出)
特定の実施形態において、本発明のナノ粒子は、治療ペプチドまたはタンパク質の制御放出に有用である。本発明のナノ粒子は、とりわけ、神経系、内分泌系、心臓血管系、血液循環系、呼吸器系、細網内皮細胞系、骨格系、骨格筋、平滑筋、免疫系、生殖系、および癌組織に作用するタンパク質またはタンパク質フラグメントから構成され得る。
【0095】
本発明において有意に使用され得るタンパク質は、限定しないが、ヒト身体によって天然に産生されるタンパク質、このようなタンパク質の組換え体、およびこのようなタンパク質の誘導体およびアナログ、ならびにレセプターの可溶性部分が挙げられる。例えば、サイトカイン(例えば、インターロイキンおよびインターフェロン)、ならびに成長因子、およびサイトカインおよび成長因子レセプターの可溶性画分が使用され得る。サイトカインはしばしば、低分子量糖タンパク質である。糖タンパク質は、一般的に、性質において親水性であるので、これらは、本発明における使用に特に受け入れられる。親水性タンパク質は、現在当該分野で公知のブロックコポリマーナノ粒子に望ましくない程度に組み込まれると予期される。なぜなら、親水性タンパク質は、ナノ粒子の外側の溶液中に残ることが熱力学的に好ましいからである。しかし、本発明において、高い親和性のペプチドは、親水性のタンパク質をブロックコポリマーに、続いてナノ粒子にまたはナノ粒子内に結合するのに役立つ。
【0096】
PAAブロックから形成される治療剤含有粒子:ブロックコポリマー(その少なくともいくらかが、1型ペプチド官能基化ブロックコポリマーである)が水溶液に添加される。DMFは、溶解を促進するために使用され得る。第2に、治療タンパク質は、水溶液中で溶解される。1型ペプチドは、溶液中でのナノ粒子の形成の前、その間、またはその後に治療タンパク質に非共有結合的に結合し得る。次いで、ブロックコポリマーは、DMFの除去とともにナノ粒子に自発的に合体する。最後の結果は、治療的価値のタンパク質の部分またはタンパク質のフラグメント(これらは、ナノ粒子によって少なくとも部分的に含まれるかまたは取り囲まれる)に構成されるナノ粒子の形成である。
【0097】
HAPで官能基化され、そして治療タンパク質で複合体化されたブロックコポリマー−ペプチドは、親和性ペプチドで官能基化されていないブロックコポリマーとは異なる構造を有し、異なって作用する。例えば、比較的親水性のタンパク質を用いて、ブロックコポリマー−タンパク質複合体は、ブロックコポリマー単独よりも大きく、親水性である。従って、1型ペプチドで官能基化されたブロックコポリマーに対する親水性ブロックのサイズを減少するかまたは全体的にその親水性ブロックを除去することが有利であり得る。
【0098】
高い親和性のペプチドは、ペプチド合成または有機化学の当業者によく知られた種々の方法によってPAAに接続され得る。例えば、HAPのカルボン酸末端は、ペプチド合成においてしばしば使用される活性化エステルまたはカルボジイミドカップリング化学の使用によってPAAのアミン末端に結合され得る。あるいは、化学選択的カップリング試薬の相補的な対が使用され得、対の1つのメンバーがPAAに組み込まれ、そして対の他のメンバーがHAPに組み込まれる。実際、この戦略は、大きなペプチド配列の調製において首尾良く使用されている。(Lemieux,G.,Bertozzi,C.,Trends in Biotechnology,1998,16,506−513およびそこに引用される参考文献)。Demingらの方法はHAPからPAAブロックを成長するために使用され得る(Curtin,S.A.,Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.,1999,121,7427−7428)(反応スキーム9)。この方法において、HAPは、NCAの重合のために開始リガンドとして作用してHAP−PAA材料を生じるように適切に官能基化される(HAPの反応性官能基の保護は、NCA重合の引き続く防止を妨げるのに必要であり得る)。HAPまたはPAAが保護状態で使用されて保護される場合、HAP−NCA材料の脱保護は、活性種を生成するために必要であり得る。
【0099】
(反応スキーム9):
【0100】
【化9】
ナノ粒子内の治療タンパク質の保持は、ペプチド親和性およびペプチド濃度によって制御され得る。ペプチド親和性/ペプチド濃度における最適は、おそらくある。ナノ粒子がタンパク質に非常に弱く結合する場合、タンパク質は、非常に迅速に放出される。結合が強すぎる場合、タンパク質は、所望されるよりも長くナノ粒子に隔離され得る。
【0101】
ポリカプロラクトンブロックから形成される治療剤含有粒子:類似の様式で、HAPをポリカプロラクトンに結合することが望ましくあり得る。これは、ペプチド合成または有機化学の当業者により多くの方法で達成され得る。例えば、ポリカプロラクトンの末端ヒドロキシルは、脱離基(例えば、アルコールとp−トルエンスルホニルクロライドとの反応から生じるもの)に変換され得る。得られるスルホンエステルは、HAPのアミンによって置換され得、HAPとポリカプロラクトンとの間に共有結合を生じる(反応スキーム10)。
【0102】
(反応スキーム10):
【0103】
【化10】
あるいは、ポリカプロラクトンブロックは、アルミニウムポルフィリンの使用により、適切に保護され官能基化されたHAPから成長され得る。この例は、HAPがその図に示される多糖類の代わりをすることを除いて、スキーム10に示されるスキームと類似のスキームを有する。保護基が除去された後、活性なHAP−ポリカプロラクトン物質が単離され得る。
【0104】
逆マイクロエマルジョンにおいて形成される治療剤含有粒子:タンパク質はまた、逆マイクロエマルジョン方法を使用して形成されるナノ粒子のコアに隔離され得る。この実施形態について、ナノ粒子が、タンパク質の活性を弱めることなしに、活性治療タンパク質の周りに形成されることが重要である。これは、本開示において先に議論されたように、逆マイクロエマルジョンの分散水相におけるナノ粒子の形成において化学選択的試薬を使用することによって達成され得る。この戦略の代表的な例は、逆エマルジョン内に多数のアルデヒドを含むように部分的に酸化された多糖類の使用である。ケトン官能基との高い親和性のペプチドはまた、溶液中に含まれる。ペプチドを含むケトンは、レブリン酸を用いたアミン末端(またはリジン残基側鎖)の官能基化によって形成され得る。HAPが結合する治療タンパク質もマイクロエマルジョンに含まれる。次いで、ジ(アミノ−オキシ)含有化合物(例えば、エチレンジアミンから形成される化合物(反応スキーム11))は、HAPを多糖類に結合することおよび多糖類コアを架橋することの両方のために使用される。従って、治療タンパク質を取り囲む架橋ネットワークが形成される。
【0105】
(反応スキーム11):
【0106】
【化11】
HAPの使用は、ナノ粒子コアにおけるタンパク質の保持を増加するために役立つ。このように、ナノ粒子内の治療タンパク質の保持は、ペプチド親和性、ペプチド濃度、およびネットワーク架橋密度によって制御される。
【0107】
(V.治療タンパク質の標的送達)
本発明の別の実施形態は、治療タンパク質を標的細胞または組織型の近位に制御送達するための方法を提供する。この実施形態のナノ粒子は、4つの型の分子構造(ナノ粒子マトリクス分子、治療タンパク質に対する高い親和性を有する1型ペプチド、特定の細胞または特定の組織で発現されるタンパク質に対する高い親和性を有する2型ペプチド、および治療タンパク質)から構成される。従って、治療剤として投与される場合、治療タンパク質を含むナノ粒子は、標的タンパク質を発現する組織または細胞表面に濃縮する。治療タンパク質−ペプチド親和性はまた、使用においてナノ粒子中の治療タンパク質の保持を可能にし、タンパク質の循環時間を延ばす。治療タンパク質に高い親和性であり得る1つ以上のペプチドが使用され得る。
【0108】
タンパク質は、ブロックコポリマー構造から製造されたナノ粒子および本明細中において先に議論されたような逆エマルジョンの分散相に形成されるナノ粒子の両方に含まれ得る。ブロックコポリマーナノ粒子構造および逆マイクロエマルジョンの分散相に形成されるナノ粒子の両方のための2型ペプチドを用いたナノ粒子表面官能化もまた、本開示において示される。
【0109】
(VI.PFN特質)
本発明において実施されるように、水溶性ペプチド官能基化ナノ粒子(PFN)は、それらを優れた治療候補にするいくつかの特質を有する。それらの小さなサイズのため、ナノ粒子は、生物活性な実在物としてインビボで(例えば、哺乳動物の体内において)使用され得る。インビボ適用において、ペプチド単独と比較して、本明細書中に開示されるPFNは、増加した親和性およびより長い循環時間を有利に有する。ナノ粒子は、体内において非毒性物質に代謝される。
【0110】
本発明のナノ粒子は、高い水含有量を有する。「高い水含有量」とは、ブロックコポリマーを含むPFNに関して、コアが、85重量%〜95重量%より多くの水を含み得、残りがポリマー材料であることを意味する。逆マイクロエマルジョンの分散水相において架橋される親水性ポリマーを含むPFNは、約35〜約95重量%の水、好ましくは約75〜約95重量%の水、そして最も好ましくは、85〜95重量%の水のコアを有する。従って、分解産物の量は、より高いポリマー濃度を有する粒子よりも少ない。高い水含有量のコアはまた、免疫原性を減少し得る。なぜなら、免疫系成分が相互作用する表面がより小さいからである。高い水含有量はまた、コンプライアンズを提供する。従って、細胞表面レセプターに付着する場合、ナノ粒子は、細胞表面に適合し得、より多くの表面レセプターが結合し得る。より多くのレセプターを結合することによって、ナノ粒子はアンタゴニストとしてより良く機能し得る。さらに、理論によって束縛されることは望まないが、PFN細胞表面範囲が他の細胞シグナル伝達経路を阻害し得ると考えられる。
【0111】
増加した治療性能は、PFNの多価構造から生じ得る。「多価」とは、ナノ粒子当たり2つ以上の高い親和性認識エレメントがあることを意味する。多価によって、ナノ粒子が同時に複数の点で結合し得る。多価はまた、標的分子の近位にペプチドの高い局所濃度を提供する。理論によって束縛されることは望まないが、この高い局所濃度は、結合した標的の割合を増加し得ると考えられる。
【0112】
さらに、本明細書中に概説されるPFN製造戦略は、表面の組成が所望の特性に従ってあつらえられ得る、多数の細かく調整されたヘテロ官能基化実体の製造を可能にする。コアビルディングブロックおよび/またはテザーアームのいくらかを変えることによって、異なるペプチドおよび/またはエンハンサー分子(例えば、PEG鎖、送達可能物(例えば、葉酸塩)または小さな治療分子)を一連のオルソゴナルな反応セット(アミン−酸、アミノオキシ−ケトンおよびブロモアセトアミド−スルフヒドリル)を利用することによって十分制御される比率においてナノ粒子につなげることが可能である。エンハンサーとしてのPEGの使用は、例えば、消化性酵素を結合されたペプチドから切断することを妨げるための立体的障害物を提供するか、またはPFNの表面近くに水和相を提供するか、またはPFNの免疫原性応答を最小化し、それらをステルス(stealthy)にする。
【0113】
本出願のさらなる利点は、1つより多くの型のペプチド分子が単一のナノ粒子に組み込まれ得ることである。これによって、例えば、治療ペプチドが、標的ペプチドを使用して、所望の細胞型、組織または器官に標的化され得る。
【0114】
本発明において開示されるナノ粒子の別の利点は、癌治療剤としてのそれらの有用性である。腫瘍において見出される漏出性の脈管構造によって、これらのナノ粒子は、腫瘍内の血流および濃縮物に残され得る。この効果(巨大分子因子について増加した透過性および保持(EPR)として記載される)は、固形腫瘍において普遍的に観測された(H.Maedaら、J.Controlled Release,2000,V65,p.271−284)。巨大分子についてのEPR効果に関する重要な機構は、保持であるが、低分子量の物質は、保持されないで、拡散によって循環する血液に戻される。従って、5〜100nmの直径のPFNは、固形腫瘍内に蓄積し得る。従って、本発明のナノ粒子は、標的に結合する前でさえ腫瘍内に自然に濃縮し、より高い効力およびより低い全身毒性を提供する。
【0115】
本発明のナノ粒子および分解産物は、非毒性であり、身体から排除されるように設計される。これらは、分解性の、好ましくは、炭水化物に基づくか、PAAに基づくか、またはPEGに基づくコアを有し得、分解の速度が糖の個性(identity)、架橋密度、および他の特徴によって制御される。従って、ナノ粒子は、体内で代謝され得、体内での望ましくない蓄積を妨げる。ナノ粒子は、注射(皮下、静脈、筋内、皮内、腹腔内、脳内、または非経口的)によって投与され得る。ナノ粒子はまた、鼻、肺、膣、眼への送達および経口摂取に適し得る。ナノ粒子は、投与のために薬学的に受容可能なキャリアに懸濁され得る。
【0116】
本発明のナノ粒子はまた、標的細胞または組織型の生物学的認識能力が理由で、その標的細胞または組織型を含む環境において分離および診断適用に有用である。
【0117】
(VIII.治療標的および治療適用)
特に本発明のナノ粒子が有利に使用され得る1つの領域は、癌の処置である。腫瘍は、タンパク質およびより大きな実体(例えば、ナノ粒子)が腫瘍内で濃縮し得る漏出性の脈管構造を有することが公知である。このようなタンパク質およびタンパク質フラグメントを使用する本発明のナノ粒子は、抗癌治療剤としての用途を見出し得る。例えば、上皮増殖因子レセプター(EFGr)の可溶性部分および脈管内皮増殖因子レセプター(VEGFr)の可溶性部分が使用され得る。腫瘍内のEGFrおよびVEGFrのようなレセプターの可溶性部分の放出は、EGFおよびVEGFが細胞表面のそれらのレセプターに結合し得る前に、増殖因子EGRおよびVEGFに結合することに役立ち得る。このような使用は、腫瘍の増殖を遅くし、腫瘍内の新脈管形成を遅くするのに役立ち得る。
【0118】
この技術の別の例示的な適用において、VEGF−2を心臓組織に送達するナノ粒子は、新たな心臓動脈の増殖を刺激するために使用され得、従って、心臓疾患の処置における治療剤として作用し得る。
【0119】
本発明において利用され得るさらなる活性剤は、インターロイキン(例えば、IL−2)およびコロニー刺激因子(例えば、GM−CSF)を含み、これらの両者は、免疫系、および腫瘍壊死因子を刺激するといわれている。
【0120】
いくつかの実施形態における試薬および開始物質は、Sigma−Aldrich(St Louise,MO and Milwaukee,WI)、Kodak(Rochester,NY)、Fisher(Pittsburgh,PA)、Pierce Chemical Company(Rockford,IL)およびCarbomer Inc.(Westborough,MA)、Radcure(Smyrna,GA)、およびPolysciences(Niles,IL)のような化学物質販売業者から商業的に得られ得る。PEG分子は、Shearwater Polymers(Huntsville、AL)から購入され得る。さらに、化学製品ディレクトリおよびリソース(例えば、<http://pubs.acs.org/chemcy/>を使用して開始物質を探し出し得る。
【0121】
高い親和性の結合剤として使用されるペプチドは、多くの供給源から購入され得、1つは、Peptide Biosynthesis(www.peptidebiosynthesis.com)である。
【0122】
(実施例)
(実施例1)
ポリ(エチレンオキシド−b−ε−カプロラクトン)(MW=1.5×104、総重量の15〜25%のポリ(エチレンオキシド)ブロック)を、Gan,Z;Jiang,B.;Zhang,J.J.Appl.Polym.Sci.1996,59,961の方法によって調製する。単離後、この生成物をTHF中に溶解して、NaSHの水溶液に添加する。一旦、NaSHとの反応が完了すれば、この溶液を、HClの添加によってヒュームフード中で中性のpHに酸性化し、そして全ての揮発性化合物を真空下で除去し、わずかに減少した容積のみの水溶液を残した。窒素の保護ブランケット下で、この生成物をTHF中に再度溶解すして、遠心分離して塩を除去した。THFの容積を真空下で低減させ、そして得られた溶液を、迅速に攪拌しているビーカーの脱気した水(これに添加されているTHFよりも10〜1000倍多い水を含む)に滴下して添加する。得られた溶液を真空下において、THFを除く。次いで、修飾したバージョンのArg−Gly−Asp−D Phe−Lys(末端リジン上にブロモアセトアミド官能基を有する)を(水相中でのこのペプチドの分散を補助するために最小量のDMF中に溶解して)、この水溶液中に添加する。ナノ粒子溶液を真空下で濃縮して、大きいリザーバの水に対して透析して、未反応のペプチドおよび塩副産物を除く。透析された溶液の凍結乾燥(炭水化物の凍結防止剤の添加後)によって、ペプチド−官能化ポリ(エチレンオキシド−b−ε−カプロラクトン)ナノ粒子を生じる。
【0123】
代替的な処方物において、1〜5%のεカプロラクトンブロックが1,2−エポキシ−4−ペンタノンエチレンケタールで置換され得る。ポリマーの合成および末端へのチオールの付加後、このポリマーをマイルドな酸性の水溶液に曝露することによって環状ケタールを除去する。次いでこのミセルを上記に概説したようにペプチドを用いて作製して官能基化する。ペプチドの添加後、ジアミノ−オキシ官能基化PEG(MW=5000)のような架橋剤を水溶液に添加して、ナノ粒子の内部を架橋する。次いで、この粒子を前と同様に精製および単離する。
【0124】
(実施例2)
Haddletonの手順(Haddleton,D.M.:Ohno,K.,Biomacromolecules,2000,1,152)に従って、β−シクロデキストランを、環開口し、そして修飾して保護ポリサッカライド(多糖類)(これは、未保護のまま残っている末端アノマーヒドロキシル基のみを有する)を得る。この化合物を、わずかに高い温度で真空下で乾燥した後、(5,10,15,20−テトラフェニルポルフィナート)アルムニウムエチルと反応させられて、活性な重合化開始種を得る。この種を用いてEndoの方法(Endo,M.;Aida,T.;Inoue,S.Macromolecules,1987,20,2982)によってε−カプロラクトンを重合化する。ポリサッカライド上の保護基の単離および加水分解後、このポリマーを、1,1’−カルボニルジイミダゾール含有DMFと3日間反応させる。次いで、エチレンジアミンを添加し、そしてこの反応をさらに2日間進行させる。次いで、この生成物を無水ブロモ酢酸と反応させる。この生成物を単離し、DMF中に溶解し、そして水溶液中に滴下して添加する。ミセル形成後、ペプチドArg−Gly−Asp−D Phe−Lys−Cysを、DMF中の溶液として水溶液に添加する。ナノ粒子溶液を真空下で濃縮して、大きいリザーバの水に対して透析して、未反応のペプチドおよび塩副産物を除去する。炭水化物の凍結防止剤の添加後、透析した溶液を凍結乾燥することによって、ペプチド官能基化したナノ粒子を得る。
【0125】
代替的な処方物において、1〜5%のε−カプロノラクトンブロックは、1,2−エポキシ−4−ペンタノンエチレンケタールによって置換され得る。ポリマーの合成後、このポリマーをマイルドな酸性水溶液に曝露して環状ケタールを除去し、そして上記のようにポリサッカライドを修飾する。次いでこのミセルを上記に概説したようにペプチドを用いて作製して官能基化する。ペプチドの添加後、ジアミノ−オキシ官能基化PEG(MW=5000)のような架橋剤を水溶液に添加して、ナノ粒子の内部を架橋する。次いで、この粒子を前と同様に精製および単離する。
【0126】
(実施例3)
二官能性のPEG(MW=5000,ブロモアセトアミド−官能基化)を、Demingの方法(Deming,T.J.,Nature 1997,390,386〜389;Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.1997,119,2759〜2760)によって合成したポリ(γ−ベンジルグルタメート11−コ−システイン1)ブロックコポリマーと反応させる。単離後、このポリマーを、DMFに溶解して、水溶液中に滴下して添加する。ミセル形成後、ペプチドArg−Gly−Asp−D Phe−Lys−Cysを、最少量のDMF中に溶解して、水相中のこのペプチドの分散を補助し、次いでこれを水溶液に加える。ナノ粒子溶液を真空下で濃縮し、そして大きいリザーバの水に対して透析して、未反応のペプチドおよび塩副産物を除去する。炭水化物の凍結防止剤の添加後、透析した溶液を凍結乾燥することによって、ペプチド官能基化したナノ粒子を得る。
【0127】
代替的な処方物において、10〜20%のγ−ベンジルグルタメートのポリ(γ−ベンジルグルタメート11−コ−システイン1)ブロックは、リジンによって置換され得る。ポリマーの合成後、このリジン残基をγベンジルグルタメートの存在下で選択的に脱保護する。次いでこのミセルを上記に概説したようにペプチドを用いて作製して官能基化する。ペプチドの添加後、1,3−ブタジエンジエポキシドをDMF中に溶解し、水溶液に加えて、ナノ粒子内部を架橋する。次いで、この粒子を前と同様に精製および単離する。
【0128】
(実施例4)
Demingの方法(Deming,T.J.,Nature 1997,390,386〜389;Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.1997,119,2759〜2760)を用いて、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート80−コ−ロイシン20)のコポリマーを、N−カルボキシアンヒドリドの重合化から調製する。HBr/酢酸でのグルタメートブロックの脱保護後、このブロックコポリマーを、DMFに溶解して、これを水溶液中に緩徐に添加してナノ粒子形成を誘導する。このグルタメートブロックのアミン末端は、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−水酸化エチルカルボジイミドの作用によって、ペプチドArg−Gly−Asp−D Phe−Lys−Cysのカルボキシル基末端(ここで側鎖アミンが光不安定性保護基によって保護される)に結合される。一旦カップリング反応が完了すれば、このペプチドを脱保護し、そしてこの反応混合物を大きいリザーバの水に対して透析して、未反応のペプチドおよび塩副産物を除去する。炭水化物の凍結防止剤の添加後、透析した溶液を凍結乾燥することによって、ペプチド官能基化したナノ粒子を得る。
【0129】
代替的な処方物において、10〜20%のロイシンのポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート80−コ−ロイシン20)ブロックは、リジンによって置換され得る。ポリマーの合成後、このリジンおよびグルタミン酸の残基を、HBr/酢酸およびトリフルオロ酢酸で脱保護する。次いでミセルを、ペプチド上の光不安定性基が架橋後に除去されること(次の工程で記載)以外は、上記に概説したようにペプチドを用いて作製して官能基化する。ペプチドの添加後、1,3−ブタジエンジエポキシドをDMF中に溶解し、水溶液に加えて、ナノ粒子内部を架橋し、そして光不安定性基を除去する。次いで、この粒子を前と同様に精製および単離する。
【0130】
(実施例5)
AB構造を有するPAAブロックコポリマー鎖は、分子量1000〜10,000Daを有するLeuおよびVal(Leu−Val)のランダムコポリマーの疎水性ブロック、ならびに分子量5,000〜20,000のGluからなる親水性ブロックからなる。従って、制御された重合化機構(例えば、Deming(前出)の手順に従う)を通じて、約6,000〜30,000Daの総分子量が形成される。Glu残基の酸性基は、メチル化を保たれ、そしてカルボキシル基末端は、次の工程における高い親和性のペプチドの付着を助けるように保護される。
【0131】
Leu−Ser−Trp−His−Pro−Glyからなるペプチドは販売されている。この配列を含むペプチドは、10−4M程度の結合定数でストレプトアビジンに結合することが示されている。このペプチドのカルボキシル基末端は、EDCカップリング(G.T.Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego,1996)を介してPAA鎖のアミノ末端に結合され、PAA−HAPを生じる。
【0132】
ナノ粒子を形成するために、PAA鎖およびPAA−HAP鎖の両方を水溶液に添加する。PAA−HAP鎖対PAA鎖の重量比は、1:1〜1:100の間である。1mLの水溶液(5〜7のpHを有し、そして10〜500mMのNaClを含有する)に対する1〜50mgのポリマー混合物の添加によって、自然なナノ粒子形成が生じる。
【0133】
(実施例6)
ブロックコポリマーが、酸性または塩基性の残基からなる親水性ブロックを有するPAAである場合、反応のpHは、親水性イオン化可能モノマーの少なくとも一部がイオン化されるように選択される。例えば、Leu/Glu鎖のアセンブリのために、水溶液は、3〜13のpHの範囲であり得、そして塩化ナトリウムが、溶液中に0.01〜0.5Mの濃度で含まれる。次いでこのブロックコポリマーは、自発的にナノ粒子に融合する。
【0134】
(実施例7)
実施例5または6のようなAB構造を有するPAAブロックコポリマー鎖を、制御された重合化機構(Deming、前出)によって形成する。Glu残基の酸性基は、メチル化を保たれ、そしてカルボキシル基末端は、次の工程における高い親和性のペプチドの付着を助けるように保護される。
【0135】
Arg−Gly−Asp配列からなるペプチドは販売されている。この配列を含むペプチドは、ナノモル程度の結合定数で特定のインテグリンに結合することが示されている。このペプチドのカルボキシル基末端は、EDCカップリング(G.T.Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego,1996)を介してPAA鎖のアミノ末端に結合され、PAA−HAPを生じる。
【0136】
粒子を形成するために、PAA鎖およびPAA−HAP鎖の両方を水溶液に添加する。PAA−HAP鎖対PAA鎖の重量比は、1:1〜1:100の間である。1mLの水溶液(5〜7のpHを有し、そして10〜500mMのNaClを含有する)に対する1〜50mgのポリマー混合物の添加によって、自然なナノ粒子形成が生じる。
【0137】
(実施例8)
85重量%の緩衝液(10mM PBS、15mM NaCl、pH7.2)、8重量% IMA(イヌリン マルチ−アクリルアミド)、6重量%AM(アクリルアミド)、および1重量%NOBA(ナトリウムオルニチンブロモアセトアミドアクリルアミド)からなる水相を調製する。イゲパル(Igepal) CO−210、イゲパル CO−720およびシクロヘキサンを1.0:1.3:9.0の重量比で混合することによって、オイル+界面活性剤相を調製する。3グラム(3g)の水相を30gのオイル+界面活性剤相と混合し、逆相マイクロエマルジョン(reverse microemulsion)の形成を行う。この逆相マイクロエマルジョンは、シクロヘキサンの連続相中に分散した、水相の界面活性剤安定化ナノ小滴を含む。次いで、光開始剤(例えば、イルガキュア(Irgacure)およびDarocur(Chiba))を、構築ブロックの重量100部に対して0.01部〜1部の重量の光開始剤で添加する。次いでこの逆相マイクロエマルジョンを脱気し、N2で再充填し、そして20分〜1時間UVランプを用いて照射し、この構築ブロックを重合化する(IMA、AM、NOBA)。一旦重合化が完了すれば、この逆相マイクロエマルジョンにエタノールを添加することによってナノ粒子を沈殿させる。残りの界面活性剤および溶媒を、透析およびクロマトグラフィーのような標準的な技術によって除去する。この時点で、ナノ粒子の水溶液を凍結乾燥し、水に容易に溶ける綿状の固体としてナノ粒子を残す。次いで、このナノ粒子を適切な水溶液中に組み込み得る。
【0138】
(実施例9)
81〜85重量%の緩衝液(10mM PBS、15mM NaCl、pH7.2)、8重量% IMMA(イヌリン マルチ−メタクリレート)、6重量%AM(アクリルアミド)、および1〜5重量%のDAA(ジアセトンアクリルアミド)からなる水相を調製する。イゲパル CO−210、イゲパル CO−720およびシクロヘキサンを1.0:1.3:9.0の重量比で混合することによって、オイル+界面活性剤相を調製する。3グラム(3g)の水相を30gのオイル+界面活性剤相と混合し、逆相マイクロエマルジョンの形成を行う。この逆相マイクロエマルジョンは、シクロヘキサンの連続相中に分散した、水相の界面活性剤安定化ナノ小滴を含む。この逆相マイクロエマルジョンに、10μLのUV光開始剤ストック溶液(95重量%トルエン、2.5重量%イルガキュア、および2.5重量%Darocur)を、添加する。この逆相マイクロエマルジョンを100mLのSchlenkチューブに移す。このチューブの内容物を水流吸引器で脱気する。このチューブの内容物を5分間吸引し、続いてこのチューブにN2ガスを1分再充填する。この吸引/充填工程を全部で3サイクル繰り返す。Schlenkチューブの内容物を攪拌して、UVランプを用いて1時間照射し、構築ブロックを重合化する(IMMA、AM、DAA)。重合化が完了した後、この溶液に9mLの純エタノールを直接添加することによってナノ粒子を沈殿させる。ナノ粒子含有ペレットを脱イオン水に再懸濁する。残りの界面活性剤および溶媒を、標準的技術(透析、クロマトグラフィーなど)によって除去する。この時点で、ナノ粒子の水溶液を凍結乾燥し得る。
【0139】
(実施例10)
81〜85重量%の水、14重量%のIMMA(イヌリン マルチ−メタクリレート)、および1〜5重量%のDAA(ジアセトンアクリルアミド)からなる水相を調製する。イゲパル CO−210、イゲパル CO−720およびシクロヘキサンを1.0:1.3:9.0の重量比で混合することによって、オイル+界面活性剤相を調製する。3グラム(3g)の水相を30gのオイル+界面活性剤相と混合し、逆相マイクロエマルジョンの形成を行う。この逆相マイクロエマルジョンは、シクロヘキサンの連続相中に分散した、水相の界面活性剤安定化ナノ小滴を含む。この逆相マイクロエマルジョンに、Eosin Yを含有する水溶液(ここで、光開始剤は0.001〜0.1重量%の単量体質量を示す)を添加する。この逆相マイクロエマルジョンを100mLのSchlenkチューブに移し、3サイクルの凍結融解、続いてこのチューブへの1分間のN2ガス再充填によって脱気する。Schlenkチューブの内容物を攪拌して、少なくとも100Wの可視光源を用いて、20分〜2時間照射し、この構築ブロックを重合化する。一旦重合化が完了すれば、この溶液に9mLの純エタノールを直接添加することによってナノ粒子を沈殿させる。ナノ粒子含有ペレットを脱イオン水に再懸濁する。残りの界面活性剤および溶媒を、標準的技術(透析、クロマトグラフィーなど)によって除去する。この時点で、ナノ粒子の水溶液を凍結乾燥し得る。
【0140】
(実施例11)
ポリエチレンイミン(平均分子量800kDa;「PEI」)を0.03g.mlで含有する塩基性緩衝液(pHの値が8〜10にわたる)の溶液を、ポリアクリル酸(平均分子量1.8kDa)を6.5mg/mLで含有する溶液に滴下して添加した。15分後、この系は平衡に達した。1つの酸性基(ポリアクリル酸由来)あたり10のアミノ基(PEI由来)の比によって、平均10nMの半径の、安定で狭い単分散のナノ粒子を得た。
【0141】
(実施例12)
85重量%の水および15重量%のイヌリンからなる水相を調製する。油+界面活性剤の相を、Igepal CO−210、Igepal CO−720およびシクロヘキサンを1.0:1.3:9.0の重量比で混合することによって、調製する。3gの水相を40gの油+界面活性剤の相と混合し、逆ミクロエマルジョンの形成を生じる。1gの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液をこの混合物に添加し、その結果、1のグルコースモノマーユニット(イヌリン由来)あたり最大1の過ヨウ素酸当量が存在する。インサイチュ酸化を約10分間進行させ、その後、カプセル化のためのタンパク質(例えば、インターロイキン−2)を添加する。ビス[(2−アミノ−オキシ)エチルアミド]−(1,3)−プロパンの、水性メタノール混合物(50/50容量)中の濃厚溶液(少なくとも1g/mL)を、このミクロエマルジョンに添加し、そして一晩反応させた(時間を最適化していない)。イヌリンのインサイチュ還元によって生成したアルデヒド官能基との、ビス[(2−アミノ−オキシ)エチルアミド]−(1,3)−プロパンの架橋によって得られるナノ粒子は、トラップされたインターロイキン−2を含む。これらを、エタノールの存在下での沈殿および遠心分離によって精製し、そして透析によって、過剰の未反応試薬から精製する。
【0142】
(実施例13)
先行の実施例に従って、85重量%の緩衝液(10mM PBS、15mM NaCl、pH7.2)、8重量%のIMMA(イヌリンマルチメタクリレート(inulin multi−methacrylate))、6重量%のAM(アクリルアミド)、0.3〜3.0重量%のNOBA(オルニチンブロモアセトアミドアクリルアミドナトリウム)、および0.3〜3.0重量%のDAA(ジアセトンアクリルアミド)からなる水相を用いて合成したナノ粒子を、水溶液に溶解する。1つの代表的な手順は、1〜5g/Lのナノ粒子を、1〜10容量%のメタノールを含む0.05M 2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2”−ニトリロトリエタノール緩衝液(pH8)に溶解することからなる。適切な量のチオ−およびN−ヒドロキシ−アミノ官能基化ポリエチレングリコール(平均分子量は代表的に2,000と20,000との間)を、この反応混合物に添加し、そしてこの反応物を一晩撹拌する(反応時間は最適化されていない)。ペプチドを、PEGと同時に、このナノ粒子に直接グラフトし得る。
【0143】
どの官能部分をペプチドに付着させたいかに依存して、異なるリンカーが使用され得る。2セットの反応が直交する限り、表面にグラフトされる2つの異なるペプチドの相対量を選択的に制御することが可能である。エチレン−ジアミンブロモアセトアミドまたは3−ブロモアクリルアミドプロパナールを、リンカー分子として選択し得る。これらのリンカー分子は、理想的には反応媒体中に存在する1当量のチオール反応性官能基に対して少なくとも1当量で、反応混合物に添加される。ペプチドがFPLCカラムの後にグラフトされる場合には、代表的な手順は、ペプチドをナノ粒子中1mg/mLの濃度で反応させることからなる。
【0144】
ペプチドH2N−WLWHPQFSSC−CO2Hをジチオール−PEG鎖の末端に、システイン残基のチオールとブロモアセトアミド部分との反応を介してグラフトすることにより、高い結合能力を有するナノ粒子が導かれる:等温滴定熱量測定は、ストレプトアビジンに対して遊離ペプチドに関して3×10−4Mの親和性結合を与え、一方でナノ粒子は、2つの型の結合部位を有することが見出された(1つの型は1.6(±0.9)×10−6Mの結合定数を有し、そして第2の型は、5.9(±4)×10−7Mの結合定数を有する)。従って、このナノ粒子は、未結合ペプチドと比較して、結合において実質的な改善を示す。
【0145】
(実施例14)
10重量%のIMMA(イヌリンマルチメタクリレート)、4重量%のDAA(ジアセトンアクリルアミド)および1重量%のNOBA(オルニチンブロモアセトアミドアクリルアミドナトリウム)の重合によって作製されるナノ粒子を、平均分子量6000の過剰のポリエチレングリコールジアミン(H2N−PEG6000−NH2)と反応させる。未反応H2N−PEG6000−NH2を、沈殿または他の任意の当該分野において公知の方法(例えば、FPLCのSCC)によって除去する。重炭酸緩衝液中の葉酸の溶液(1g/ml、pH6.6)を、水に懸濁させたアミノPEG−官能基化ナノ粒子に添加し(10mgナノ粒子/mL水溶液)、そして1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)および1当量のN−ヒドロキシスクシンイミドとカップリングさせる。ナノ粒子を、当該分野において公知の任意の方法(例えば、透析、遠心分離またはサイズ排除クロマトグラフィーであるが、これらに限定されない)によって、精製し得る。
【0146】
(実施例15)
Deming(Deming,T.J.,Nature 1997,390,386−389;Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.1997,119,2759−2760)の方法に従って、ポリ(ロイシン)(Mw=2200)を、ロイシンN−カルボキシ無水物の重合から調製する。この場合には、ニッケル重合触媒が、エリスロポエチンに対するHAPを用いて調製され、Curtin(Curtin,S.A.,Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.,1999,121,7427−7428)の方法に従って開始リガンドとして働く。この場合には、エリスロポエチンに対するHAPのアミン末端が、アリルオキシカルボニル(Alloc)保護基によって保護され、一方でエリスロポエチンに対するHAPの残りの部分は、ペプチド合成において通常使用される他の保護基を用いて保護される。ポリマーが単離された後に、エリスロポエチンに対するHAPを、側鎖の脱保護によって活性化形態に転換し、そしてDMFに溶解する。このDMF溶液を、エリスロポエチンの水溶液にゆっくりと添加する。得られる水溶液を透析して、DMFを除去する。
【0147】
代替の処方において、ポリ(ロイシン)ブロックの10〜20%のロイシンを、ランダムコポリマーとしてリジンで置換し得る。このポリマーの合成後、リジン残基をトリフルオロ酢酸で脱保護する。次いで、PAAブロックのリジン残基を、レブリン酸を用いて官能基化し、ケトンをPAAブロックに含める。次いで、エリスロポエチンに対するHAPを脱保護する。次いで、上に概説したように、エリスロポエチンの存在下でミセルを形成し、そしてDMFに溶解したジ−アミノ−オキシ官能基化PEG(Mw=5000)をこの水溶液に添加して、ナノ粒子の内部を架橋させる。次いで、前述のようにこの粒子を精製し、そして単離する。
【0148】
(実施例16)
AB構造を有し、そして各ブロックが、約10,000〜20,000Daであり、従って、20,000〜40,000Daの総分子量を有する、LEU/GLUブロックコポリマー鎖(PAA鎖)を、制御された重合機構(前出のDeming)を介して形成する。また、AB構造を有し、LEUブロックが、約10,000Da〜20,000Daであり、そしてGLUブロックが、1000Daと2000Daとの間であり、従って、11,000〜22,000Daの総分子量を有する、LEU/GLUブロックコポリマー鎖(PAA鎖)を、制御された重合機構(前出のDeming)を介して形成する。この第2の「短」鎖構造は、ペプチドカップリングのために使用される。GLU残基の酸基はメチル化されて維持され、そしてカルボキシ末端は保護されて、次の工程において高親和性のペプチドの付着を補助する。
【0149】
マイクロモル濃度〜ナノモル濃度の範囲の親和性定数でEPOに結合するヘキサマーペプチドを購入する。このペプチドのカルボキシル末端を、EDCカップリングを介して「短」LEU/GLU PAA鎖のアミン末端に結合させ(G.T.Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego,1996)、PAA−HAP鎖を生成する。
【0150】
次いで、100 gと5000 gとの間のブロックコポリマーを、10μgのEPOを含む100μLの水溶液に添加する。PAA−HAP対PAA鎖の重量比は、1:1と1:100との間である。EPOを、PAA−HAP鎖のペプチドに結合させる。この水溶液は、5と7との間のpHを有し、そして10mMと200mMとの間のNaClを含む。ナノ粒子形成は、自発的である。
【0151】
(実施例17)
85重量%の水および15重量%のIMMA(イヌリンマルチメタクリレート)からなる水相を調製する。3gの水相を、シクロヘキサン中の8.5重量%のIgepal CO−520からなる30gの油+界面活性剤の相と混合する。1gの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液をこの混合物に添加し、その結果、1のグルコースモノマーユニット(IMMA由来)あたり最大1の過ヨウ素酸当量が存在する。インサイチュ酸化を約10分間進行させ、その後、アルデヒド含有ペプチドを添加する。Arg−Gly−Asp−D Phe−Lys(これは、レブリン酸を末端リジンに含む)の改変バージョンを、ペプチドとして使用した。ビス−[2−((2−アミノ−オキシ)エチルアミド)エチル]アミンの濃厚水溶液(少なくとも1g/mL)を、このミクロエマルジョンに添加し、そして1時間反応させ、アルデヒド官能基とアミノ−オキシ部分とを架橋させる。
【0152】
Eosin Yの水溶液(ここで、光開始剤は、IMMA質量の0.001〜0.1重量%を占める)を、この逆ミクロエマルジョンに添加する。このミクロエマルジョンを撹拌し、そして少なくとも100Wの可視光源で20分間〜2時間照射して、重合したナノ粒子を形成する。
【0153】
(実施例18)
85重量%の水および15重量%のイヌリンからなる水相を調製する。2gの水相を、シクロヘキサン中8.5重量%のIgepal CO−520からなる30gの油+界面活性剤の相と混合する。1gの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液をこの混合物に添加し、その結果、1のグルコースモノマーユニット(イヌリン由来)あたり最大1の過ヨウ素酸当量が存在する。インサイチュ酸化を約10分間進行させる。このミクロエマルジョンに、インターロイキン−2(0.1〜5μg)の1gの水溶液を、十分な量のヘキサマーペプチド(レブリン酸(これは、アルデヒド官能基を含む)によって終結し、マイクロモル濃度〜ナノモル濃度の親和性定数でインターロイキン−2と結合する)の存在下で添加する。
【0154】
ビス−[2−((2−アミノ−オキシ)エチルアミド)エチル]アミンの水溶液を、このミクロエマルジョンに添加し、そして3時間反応させて、アルデヒド官能基とアミノ−オキシ部分とを架橋させる。インターロイキン−2/HAP複合体を含むナノ粒子を、当該分野において公知の方法によって精製する。
【0155】
(実施例19)
Deming(Deming,T.J.,Nature 1997,390,386−389;Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.1997,119,2759−2760)の方法に従って、ポリ(ロイシン)(Mw=2200)を、ロイシンN−カルボキシ無水物の重合から調製する。この場合には、ニッケル重合触媒が、インターロイキン−2に対するHAPを用いて調製され、Curtin(Curtin,S.A.,Deming,T.J.,J.Am.Chem.Soc.,1999,121,7427−7428)の方法に従って開始リガンドとして働く。この場合には、インターロイキン−2のアミン末端が、アリルオキシカルボニル(Alloc)保護基によって保護され、一方でインターロイキン−2に対するHAPの残りの部分は、ペプチド合成において通常使用される他の保護基を用いて保護される。次いで、このHAP/ポリ(ロイシン)複合体を、保護されたペプチドArg−Gly−Asp−D Phe−Lysのカルボン酸末端に、DMF中の1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドの作用によってカップリングさせる。このDMFを減圧下で除去し、そして得られる固体を多量のクロロホルムで洗浄して、尿素副生成物を除去する。インターロイキン−2に対するHapおよびペプチドArg−Gly−Asp−D Phe−Lysの脱保護の後に、インターロイキン−2に対するHAP/ポリ(ロイシン)/ペプチドブロックコポリマーを、DMFに溶解し、そしてインターロイキン−2の水溶液に滴下する。得られる水溶液を透析して、DMFを除去する。
【0156】
代替の処方において、ポリ(ロイシン)ブロックの10〜20%のロイシンを、ランダムコポリマーとしてリジンで置換し得る。上記のような、このポリマーの合成後、リジン残基を脱保護する。次いで、PAAブロックのリジン残基を、レブリン酸を用いて官能基化し、ケトンをPAAブロックに含める。次いで、インターロイキン−2に対するHAPおよびArg−Gly−Asp−D Phe−Lysペプチドを脱保護する。次いで、上に概説したように、インターロイキン−2の存在下でミセルを形成し、そしてDMFに溶解したジ−アミノ−オキシ官能基化PEG(Mw=5000)をこの水溶液に添加して、ナノ粒子の内部を架橋させる。次いで、前述のようにこの粒子を精製し、そして単離する。
【0157】
(実施例20)
AB構造を有し、そしてLeuおよびValのランダムコポリマーからなる1,000〜10,000Daの間の分子量を有する疎水性ブロックを有し、そしてGluからなる約5,000と20,000との間の分子量を有する親水性ブロックを有し、従って、6,000〜30,000Daの総分子量を有する、(Leu−Val)/Gluブロックコポリマー鎖(PAA鎖)を、制御された重合機構(前出のDeming)を介して形成する。また、AB構造を有し、そしてLeuおよびValのランダムコポリマーからなる約1,000〜10,000Daの間の分子量を有する疎水性ブロックを有し、そしてGluからなる1,000Daと10,000Daとの間の分子量を有する親水性ブロックを有し、従って、2,000〜20,000Daの総分子量を有する、(Leu−Val)/Gluブロックコポリマー鎖(PAA鎖)を、制御された重合機構(前出のDeming)を介して形成する。この第2の「短」鎖構造は、ペプチドカップリングのために使用される。Glu残基の酸基はメチル化されて維持され、そしてカルボキシ末端は保護されて、次の工程において高親和性のペプチドの付着を補助する。
【0158】
EGFrの可溶性部分(本明細書中において「sEGFr」と定義される)に、好ましくはマイクロモル濃度〜ナノモル濃度の範囲の親和性定数で結合するペプチドを、購入する。購入するべき特定のペプチドは、例えば、ペプチドライブラリーのスクリーニングを介して見出される。使用されるペプチド配列は、EGFrに対してアゴニストではない。このペプチドのカルボキシル末端は、「短い」(Leu−Val)/Glu PAA鎖のアミン末端に、EDCカップリングを介して結合し(G.T.Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego,1996)、PAA高親和性ペプチド鎖を生成する。
【0159】
次いで、100μgと5000μgとの間のブロックコポリマーを、10μgのsEGFrを含む100μLの水溶液に添加する。PAA−ペプチド対PAA鎖の重量比は、1:1と1:100との間である。sEGFrを、PAA−ペプチド鎖のペプチドに結合させる。この水溶液は、5と7との間のpHを有し、そして10mMと200mMとの間のNaClを含む。ナノ粒子形成は、自発的である。
【0160】
本実施例において、EGFrに結合するペプチドは、1型ペプチドと2型ペプチドとの両方として働く。1型ペプチドとして、このペプチドは、sEGFrに結合するよう働き、このsEGFrをナノ粒子に組み込む。2型ペプチドとして作用する場合に、このペプチドは、sEGFrレセプターを過剰発現する腫瘍組織を標的化するよう働く。次いで、治療剤(すなわち、sEGFr)の放出が、腫瘍に集中された様式で起こる。そこで、sEGFrはEGFに結合し得る。このことは、EGFの腫瘍細胞表面EGFrへの結合を減少させ得、従って、腫瘍細胞の増殖を減少させ得る。
【0161】
(実施例21)
85重量%の水および15重量%のイヌリンからなる水相を調製する。2gの水相を、シクロヘキサン中8.5重量%のIgepal CO−520からなる30gの油+界面活性剤の相と混合する。1gの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液をこの混合物に添加し、その結果、1のグルコースモノマーユニット(イヌリン由来)あたり最大1の過ヨウ素酸当量が存在する。インサイチュ酸化を約10分間進行させる。エリスロポエチン(0.05〜2μg)を、十分な量のヘプタマーペプチド(レブリン酸(これは、アルデヒド官能基を含む)によって終結し、マイクロモル濃度〜ナノモル濃度の親和性定数でEPOと結合する)の存在下で添加する。
【0162】
ビス−[2−((2−アミノ−オキシ)エチルアミド)エチル]アミンの水溶液を、このミクロエマルジョンに添加し、そして3時間反応させて、アルデヒド官能基とアミノ−オキシ部分とを架橋させる。EPO/HAP複合体を含むナノ粒子を、当該分野において公知の方法によって精製し、そして過剰のジアミノ−オキシ−ポリエチレングリコールの存在下で、水溶液に再懸濁させる。ジアミノ−オキシ−ポリエチレングリコールの(ナノ粒子上の残りのアルデヒドとの)反応を、12時間進行させる。このナノ粒子を未反応ジアミノ−オキシ−ポリエチレングリコールからFPLCによって分離し、「標的」ペプチドArg−Gly−Asp−D Phe−Lys−レブリン酸のアルデヒド末端とカップリングさせ、そして透析によって精製する。
Claims (25)
- ポリマーコア構造体を有するポリマーナノ粒子であって、ここで、該ポリマーコアは、疎水性/親水性ブロックコポリマーを含み、そして、該ナノ粒子は、該ポリマーコアに共有結合された少なくとも2個のペプチド部分により機能化され、該ペプチド部分は、生体分子に対して高い親和性を有し、かつ1型ペプチド、2型ペプチド、およびそれらの混合物からなる群から選択され、そして該ナノ粒子は、高い含水量を有することによって特徴付けられる、ポリマーナノ粒子。
- 前記ブロックコポリマーが、ポリ(アミノ酸)を含む、請求項1に記載のポリマーナノ粒子。
- 請求項2に記載のポリマーナノ粒子であって、前記ポリ(アミノ酸)が、以下:
疎水性アミノ酸、中性アミノ酸、またはこれらの任意の2種のランダムコポリマーから構成される疎水性ブロック;および
親水性アミノ酸から構成される親水性ブロック、
を含む、ポリマーナノ粒子。 - 請求項1に記載のポリマーナノ粒子であって、ここで、前記ブロックコポリマーが、ポリ(アミノ酸)疎水性ブロックおよびポリエチレングリコール親水性ブロックを含む、ポリマーナノ粒子。
- 請求項1に記載のポリマーナノ粒子であって、ここで、前記ブロックコポリマーが、ポリカプロラクトン疎水性ブロックおよびポリエチレングリコール親水性ブロックを含む、ポリマーナノ粒子。
- ポリマーコア構造体を有するポリマーナノ粒子であって、ここで、該ポリマーコアは、架橋された親水性ポリマーを含み、そして該ナノ粒子は、該ポリマーコアに共有結合された少なくとも2個のペプチド部分により機能化され、該ペプチド部分は、生体分子に対して高い親和性を有し、かつ1型ペプチド、2型ペプチド、およびそれらの混合物からなる群から選択され、そして該ナノ粒子は、高い含水量を有することによって特徴付けられる、ポリマーナノ粒子。
- 請求項6に記載のポリマーナノ粒子であって、ここで、前記親水性ポリマーは、架橋された親水性ビルディングブロックを含み、該親水性ビルディングブロックの少なくともいくつかは、炭水化物である、ポリマーナノ粒子。
- 請求項7に記載のポリーナノ粒子であって、ここで、前記炭水化物は、グルコース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、フルクトースまたはタロースのような単糖類;マルトース、スクロース、ラクトース、またはトレハロースのような二糖類;三糖類;セルロース、デンプン、グリコーゲン、アルギネート、イヌリン、およびデキストランのような多糖類;修飾された多糖類;ソルビタン;ソルビトール;キトサン;またはグルコサミンから誘導される、ポリーナノ粒子。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリマーナノ粒子であって、ここで、前記ペプチド部分は、1型ペプチドである、ポリマーナノ粒子。
- 少なくとも1個の1型ペプチド部分および少なくとも2個の2型ペプチド部分を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリマーナノ粒子。
- 前記1型ペプチド部分に非共有的に結合された治療用タンパク質をさらに含み、そして該治療用タンパク質は、該ナノ粒子内に少なくとも部分的に取り囲まれている、請求項9または10に記載のポリマーナノ粒子。
- 前記ペプチド部分が、2型ペプチドである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリマーナノ粒子。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリマーナノ粒子であって、前記ペプチド部分の少なくとも1個が、Arg−Gly−Asp−D Phe−LysおよびArg−Gly−Asp−D Phe−Lys−Cysからなる群から選択される、ペプチド配列を含む、ポリマーナノ粒子。
- 請求項1〜13のいずれか1項に記載のポリマーナノ粒子であって、前記ナノ粒子ポリマーコア構造体に共有結合された少なくとも1種のエンハンサー分子をさらに含む、ポリマーナノ粒子。
- 請求項1〜14のいずれか1項に記載のポリマーナノ粒子であって、前記ナノ粒子ポリマーコア構造体に共有結合された少なくとも1種のポリエチレングリコール分子をさらに含む、ポリマーナノ粒子。
- 前記ペプチド部分が、ポリマー分子に直接的に共有結合されている、請求項1〜15のいずれか1項に記載のポリマーナノ粒子。
- 前記ペプチド部分が、リンカー分子によってポリマー分子に共有結合されている、請求項1〜16のいずれか1項に記載のポリマーナノ粒子。
- 前記リンカー分子が、ポリエチレングリコール鎖である、請求項17に記載のポリマーナノ粒子。
- 生体分子標的の分子認識のための方法であって、該方法は、ポリマーコア構造体を有するポリマーナノ粒子に該生体分子標的を曝露する工程を包含し、該ポリマーコアが疎水性/親水性ブロックコポリマーまたは架橋された親水性ポリマーを含み、そして該ナノ粒子は、該ナノ粒子ポリマーコア構造体に共有結合された少なくとも2種のペプチド部分によって機能化され、該ペプチド部分の少なくとも1種は、2型ペプチドであり、そして該ナノ粒子は、高い含水性を有することによって特徴付けられる、
方法。 - 周囲に治療用タンパク質を制御可能に放出するための方法であって、該方法は、ポリマーコア構造体を有するポリマーナノ粒子を周囲に投与する工程を包含し、該ポリマーコアは、疎水性/親水性ブロックコポリマーまたは架橋された親水性ポリマーを含み、そして該ナノ粒子は、以下:
i)該ナノ粒子ポリマーコア構造体に共有結合された少なくとも2種の1型ペプチド部分であって、該治療用タンパク質に対して高い親和性を有する、ペプチド部分;および
ii)該ペプチド部分に非共有結合的に結合され、そして該ナノ粒子内に少なくも部分的に取り囲まれた治療用タンパク質、
を含み、そして該ナノ粒子は、高い含水性を有することによって特徴付けられる、方法。 - 標的化された細胞または組織型の近傍への治療用タンパク質の制御された送達のための方法であって、該方法は、該標的化された細胞または組織型を含む周囲に、ポリマーコア構造体を有するポリマーナノ粒子を投与する工程を包含し、ここで、該ポリマーコアは、疎水性/親水性ブロックコポリマーまたは架橋された親水性ポリマーを含み、該ナノ粒子は、以下:
i)各々が該標的化された細胞または組織型に対して高い親和性を有する、該ナノ粒子ポリマーコア構造体に共有結合された少なくとも2種の2型ペプチド部分;
ii)該治療用タンパク質に対して高い親和性を有する、該ナノ粒子ポリマーコア構造体に共有結合された少なくとも1種の1型ペプチド部分;および
iii)該1型ペプチド部分に非共有結合的に結合され、そして該ナノ粒子内に少なくとも部分的に取り囲まれた治療用タンパク質、
を含み、そして該ナノ粒子は、高い含水性を有することによって特徴付けられる、方法。 - ペプチド官能基化ポリマーナノ粒子を合成するための方法であって、該ナノ粒子は、高い含水量を有することによって特徴付けられ、該方法は、以下:
親水性ビルディングブロックを含む水相を、少なくとも1種の界面活性剤を含む有機溶媒に添加する工程であって、該ビルディングブロックは、架橋可能な基を有する疎水性モノマーを含む、工程;
該ビルディングブロックを共有結合で架橋するために、該ビルディングブロックの該架橋可能な基を反応させて、親水性ポリマーナノ粒子を生成する、工程;
界面活性剤および該有機溶媒を取り除く、工程;
該ナノ粒子を含む溶媒に2型ペプチド部分を添加する工程であって、該ペプチド部分は、該ナノ粒子に結合するための官能基を含む、工程;および
該ペプチドとナノ粒子とを共有結合させるために、該ペプチド部分と該ナノ粒子とを反応させる、工程、
を包含する、方法。 - 請求項22に記載の方法であって、前記水相は、治療用タンパク質および1型ペプチド部分をさらに含み、該1型ペプチド部分は、前記ビルディングブロックに結合するための官能基を含み、かつ該治療用タンパク質に対して高い親和性を有する、方法。
- 請求項22または23に記載される方法であって、前記親水性ビルディングブロックの少なくともいくつかは、炭水化物を含む、方法。
- 請求項24に記載の方法であって、前記炭水化物は、グルコース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、フルクトースまたはタロースのような単糖類;マルトース、スクロース、ラクトース、またはトレハロースのような二糖類;三糖類;セルロース、デンプン、グリコーゲン、アルギネート、イヌリン、およびデキストランのような多糖類;修飾された多糖類;ソルビタン;ソルビトール;キトサン;またはグルコサミンから誘導される、方法。
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