JPH10156403A - 冷延薄鋼板の調質圧延方法 - Google Patents

冷延薄鋼板の調質圧延方法

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JPH10156403A
JPH10156403A JP31477696A JP31477696A JPH10156403A JP H10156403 A JPH10156403 A JP H10156403A JP 31477696 A JP31477696 A JP 31477696A JP 31477696 A JP31477696 A JP 31477696A JP H10156403 A JPH10156403 A JP H10156403A
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JP
Japan
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roll
rolling
peripheral speed
elongation
steel sheet
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JP31477696A
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Inventor
Yukihiro Matsuura
征浩 松浦
Kunio Goto
邦夫 後藤
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】調質圧延における、ブライトロールによるウェ
ット圧延の伸び率不安定を低減し、より少ない伸び率に
て安定した圧延をおこなう方法の提供。 【解決手段】ワークロールの径( 2R)と鋼帯の板厚
(t)との比 2R/tを 400以上とし、対になる二つの
ワークロールに下式で示される異周速率で0.05〜 3.0%
の範囲の差を付けて、異周速圧延することを特徴とす
る、焼鈍後の冷延鋼板のブライトロールによる湿式調質
圧延方法。またその際に、ワークロールと鋼帯のなす咬
み込み角度を上下非対称とし、高周速ロール側の咬み込
み角度を大きくするか、ワークロールに供給する潤滑剤
の量に関し、低周速側のロールに高周速側のロールによ
り多く供給するか、または、高周速側のロールの表面粗
さを低速側ロールより粗くすることによる、上記の調質
圧延方法。 異周速率={(VH /VL )− 1}× 100 ・・・ (1) ただし VH :高周速側ロール周速 VL :低周速側ロール周速

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、焼鈍された冷間圧
延鋼板を調質圧延する圧延方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】通常、冷延鋼板は焼鈍のままの状態では
降伏点伸びがあり、また焼鈍による変形もある。そこで
この降伏点伸びを消し、平坦や形状を修正し、さらに粗
さや光沢など表面の性状を改善する目的で、軽度の冷間
圧延、すなわち調質圧延が施される。調質圧延のような
軽度の圧延の場合、板厚の変化を精度よく知る目的で、
加工度は圧下率ではなく伸び率で計測される。
【0003】降伏点伸びは、残存すると鋼板を加工した
際にストレッチャーストレインといわれる表面欠陥を生
じ、成型品の商品価値を著しく低下させる。この降伏点
伸びを十分消去するため、また、調質圧延後に長期放置
しておくと再び降伏点伸びが現れてくるという、ひずみ
時効現象を十分抑止するため、調質圧延はある程度以上
の伸び率が必要である。しかし、焼鈍してもっとも軟化
した状態の鋼板に加工を加えることになるので、鋼板の
加工性を維持するには、できるだけ軽度の圧下率または
伸び率にとどめることが望ましい。
【0004】調質圧延は、最終製品としての鋼板の表面
を仕上げる役割がある。表面仕上げ状況は鋼板の用途に
より規制されるので、用いるロールの表面粗さもそれに
応じて選定される。通常、表面ブライト仕上げといわれ
る鋼板の場合、表面の粗さは中心線平均粗さ(Ra)の
値で 0.5μm 以下であり、ほぼそのまま転写されるロー
ル表面も同程度の粗さに研磨される。調質圧延のような
軽度の圧延においては、ロールの表面粗さが細かくなる
と、圧延中の伸び率が大きく変動する伸び率不安定を発
生しがちである。これはロールと板面との間の摩擦係数
が低下して、滑りが生じやすくなるためとされており、
圧下率または伸び率を大きくとることにより、圧延の安
定化がはかられる。
【0005】また、調質圧延の方法には、圧延用の潤滑
剤を供給しながら圧延するウエット(湿式)圧延法と、
潤滑油を用いないドライ(乾式)圧延法とがある。ドラ
イ圧延法は、より低い圧延伸び率で降伏点が消失し、低
伸び率での圧延を安定して行える利点がある。しかし、
大きな圧延荷重を必要とし、板厚が薄くなると圧延の伸
び率を大きくすることが困難になり、その上、焼鈍後の
鋼板表面に付着した金属粉などのがロール面に移転し
て、ロール疵といわれる表面疵を多発させやすい傾向に
ある。他方、ウエット圧延法は、同じロール径および同
じ荷重の圧延において伸び率を大きく取れる利点があ
り、さらに十分な潤滑剤を供給し濾過循環させることに
よって、付着していた炭化物や金属粉などを排除できる
ので、表面の清浄性のすぐれた圧延が可能となる。しか
し、板とロールの間の滑りが増すためロールの摩耗が大
きく、ロールを再研磨するまでの圧延量が少ない難点が
あり、しかも、ウエット圧延はロールの表面粗さを細か
くしたのと同様な影響をもたらし、伸び率を大きくとら
なければ安定した圧延ができない。
【0006】鋼板表面の美麗さをとくに必要とするブラ
イトロールによる調質圧延は、厳しく規制される表面の
清浄性の点からも、ウエット圧延が望ましい。しかし、
表面粗さの細かいブライトロールと、ウエット圧延との
二つを組み合わせた調質圧延になると、伸び率の安定し
た圧延をおこなうためには、降伏点の消去に必要な圧下
量を遥かに超えた伸び率の圧延をせざるを得なくなり、
鋼板の加工性を大きく劣化させる。その上、圧下率を増
すことは、圧延のエネルギーの増加、ロール摩耗による
ロール替え頻度の増加等、調質圧延のコストを増加させ
る要因となる。
【0007】ブライトロールによる調質圧延に関し、ウ
エット圧延の利点を効果的に活用する方法について、い
くつかの提案がある。たとえば、特開昭56-74303号公報
に提示された発明の方法は、圧延されるストリップの出
側の方からワークロールとバックアップロールの接触部
に向けて調質圧延油を噴射することにより、ロール疵発
生防止に必要な洗浄効果と湿り気をワークロール表面に
与え、かつ過剰なな調質圧延油をワークロールとバック
アップロールとの間で搾り取ってしまうものである。ま
た、特開昭57-75203号公報に提示された発明の方法は、
圧延されるストリップの出側のバックアップロール周面
に調質圧延油を塗布供給して、バックアップロールとワ
ークロールとの接触面に調質圧延油を保持させる一方、
ワークロールのストリップ入り側では、ロール周面に吸
引機能を有するブラシを接触させ、調質圧延油をできる
だけ除去しつつ圧延する。これに類した方法として、特
開昭60-227906 号公報には、ロール面に調質圧延油を塗
布するためのコーティングロールを有する塗油部と、ロ
ール表面清浄用のスクレーパーとの両方から構成された
塗油清浄機構を、ワークロールのストリップ入り側に設
置する方法の発明が示されている。
【0008】これらの方法は、いずれも調質圧延油をロ
ール面に供給してロールの清浄化をはかるとともに、ロ
ールとストリップ間に供給される圧延油をできるだけ少
なくし、ドライ圧延に近い条件を実現しようとするもの
である。しかしながら、圧延機の振動やロールの摩耗な
どにより、圧延時のロールとストリップ間の潤滑油の量
の安定した管理が必ずしも十分でなく、潤滑の過多や不
足が部分的に生じてブライト鋼板の表面光沢むらが発生
し、鋼板の商品価値を低下させるという問題が残されて
いる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ブラ
イトロールによりウェット圧延をおこなう場合の、伸び
率不安定を低減し、より少ない伸び率にて効果的に調質
圧延をおこなう方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、表面粗さ
がRa で 0.5μm 以下のブライトロールを用いる表面の
美麗な鋼板を対象とし、ウエット圧延にて必要最小限の
伸び率にて、安定かつ効率的な調質圧延がおこなえる圧
延条件を見いだすべく種々検討をおこなった。この場
合、焼鈍後に顕著な降伏点伸びを示す鋼板を対象とし
た。
【0011】まず、モデル調質圧延機を用い、調質圧延
条件の影響を調査した結果、少ない伸び率で降伏点を消
失させるには、 (1)ウエットよりドライ、すなわち圧延
時の摩擦係数が高いこと、 (2)ロールの表面粗さが粗い
こと、 (3)ロール径が小さいこと、そして (4)板厚が厚
いこと、といった傾向にあるほど効果的であることが確
認された。これらは、鋼板表面のリューダース帯の密度
を高くする条件と、降伏点伸びを消失させる効果とが一
致していることを示しており、従来よりよく知られてい
る結果と同様であった。また、この降伏点消失効果を増
大させる対策は、いずれも圧延率低下に伴う伸び率不安
定化現象の低減に有効であり、降伏点伸びとして現れる
鋼板の特性が、軽度の冷間圧延における伸び率の不安定
現象と密接に関係していると考えられた。
【0012】しかし、表面がブライトであることを要求
される鋼板に対しては、当然ながらロールの表面粗さを
粗くはできず、ロールの径を小さくすることは鋼板の平
坦化など形状修正の目的には不利であり、ロール表面の
摩耗のために再研磨が必要になる期間がより短くなる難
点もある。その上、対象になる鋼板の板厚は、通常の冷
延鋼板よりも薄いものが多い。すなわち、従来おこなわ
れている範囲で調質圧延の条件を様々に変える限りにお
いては、ブライトロールによるウエット圧延の実施は圧
延が不安定になるため、鋼板の降伏点伸びを消去でき、
かつすぐれた加工性を維持できる最小限度にまで圧下率
を低下することは困難であると判断された。そこで、調
質圧延中の鋼板の、加工による変形の仕方が異なるよう
な圧延方法を種々検討した結果、いわゆる異周速圧延法
を適用すれば、圧下率の低下による不安定現象が解消で
きることを見い出したのである。
【0013】通常の板の圧延過程を模式的に書けば、そ
の圧延に平行な断面は図1のようになる。ここで圧延前
の圧延ロールの入り側の板厚をh0 、板の速度をv0
そして圧延された出側の板厚をh1 、板の速度をv1
し、幅広がりはないものとすれば、圧延前後で体積が一
定なので、 h0 ×v0 =h1 ×v1 ・・・・・ (2) すなわち、 v1 /v0 =h0 /h1 ・・・・・ (3) となる。圧延ロールの周速をVR とすれば、v0 <VR
<v1 であり、ロール周速と、板の通過速度と一致する
点を、中立点(N)という。すなわち通常の圧延におい
ては、圧延ロールの入り側では板の速度はロールの周速
より遅く、出側ではロール周速より早くなる。ところが
鋼板の表面は、ロールとの接触により拘束され、周速と
同じ速度で動くため、鋼板の表面近傍は、剪断変形をう
けることになる。この剪断変形の加工度は圧延による伸
び率より遥かに大きく、ここに微細なリューダース帯が
高密度に集中する。その結果、これらが調質圧延後の鋼
板の加工時の変形の起点となって、ストレッチャースト
レインを抑止し、しかも大きな変形は鋼板の表面近くに
限定されるため、鋼板全体としての加工性は損なわれな
い。
【0014】ところが、ブライトロールを用いてウエッ
ト圧延をおこなう場合、鋼板表面のロールとの接触によ
る拘束が大幅に低下して、剪断変形が少なくなり、板は
単純な圧縮変形を受けた状態に近くなる。そうなると軽
度の圧延の際には、引張り試験で見られる降伏点伸び現
象と同様な変形挙動を示し、圧延の伸び率不安定現象を
引き起こす。
【0015】図2は、調質圧延の伸び率に対するロール
の線荷重(ロールが鋼板に線で接していると仮定した場
合の単位長さに対する負荷)を測定した例を示したもの
である。図中の△印は、通常のブライトロールにてウエ
ット圧延した場合の結果で、伸び率が低い場合、同じ圧
延荷重にて伸び率が2つ以上の値をとる危険性があり、
これが伸び率不安定を引き起こしていると考えられる。
一つの圧延荷重により伸び率がただ一つに決定されるの
は、伸び率が約 3%を超えてからである。
【0016】図2の○印で示した測定値は、同じブライ
トロールを用いたウエット圧延を異周速圧延(異周速
率: 0.3%)、すなわち板に接して圧延する一対のロー
ルの回転速度、ないしは周速をずらして圧延をおこなっ
た結果である。この場合は圧延の伸び率が低い場合で
も、荷重に対する伸び率は一対一に対応している。
【0017】図3は、異周速圧延の様子を図1と同様に
して模式的に示したものである。ここでは、高周速側を
上ロール、低周速側を下ロールとして示すが、上下逆で
も効果は同じである。図1に示した通常の同一周速のロ
ールによる圧延の場合、中立点Nは上下ロールとも鋼板
の圧延方向ないしは板の面に対し対称の位置にある。こ
れに対し、図3の異周速ロールによる圧延では、高速側
のロールに対する中立点NH はロールバイト、すなわち
圧延中の板のロールに咬み込まれている部分、の出側に
近く、低速側のロールに対する中立点NL は入り側に近
い方にずれる。このことは、通常の等速周速ロール圧延
の場合、剪断変形は鋼板の表面近傍に限られ、鋼板の中
心部は主として単なる圧縮変形であったのに対し、異周
速圧延では鋼板全体に剪断変形が加えられることを意味
する。その結果として、図2の○印で示したように、低
い伸び率においても、圧延荷重が決まれば一つの伸び率
が対応してくると考えられた。
【0018】そこで、異周速圧延を実際に調質圧延に適
用して、効果が十分に発揮できる限界を調査することに
した。高周速側のロール周速をVH 、低周速側のロール
周速をVL とすれば、異周速率は {(VH /VL )− 1}× 100 ・・・・・・ (1) で示される。しかし、異周速率を種々変えて圧延をおこ
なってみた結果、高周速ロール側の中立点NH が、ロー
ルバイトを外れてしまう条件になると、圧延が不安定に
なり、チャタリングと呼ばれる板の振動を発生するよう
になる。
【0019】図3において、異周速圧延中の中立点がロ
ールバイト内にあるためには、低周速側のロールの中立
点NL がロール入り側の板との接触点N0 より左側にあ
り、高周速側のロールの中立点NH が圧延された板のロ
ールから離れる点N1 より右にある必要がある。いま、
中立点NL がN0 の位置にあり、中立点NH がN1 の位
置にそれぞれある状態で異周速圧延をおこなうとすれ
ば、前出の(3) 式において、圧延される板の入り側の速
度v0 はVL 、圧延された板の出側の速度v1 はVH
それぞれ等しいので、 h0 ×VL =h1 ×VH ・・・・・・ (4) であり、上下ロールの周速比は VH /VL =h0 /h1 ・・・・・・ (5) となるが、これが上下の中立点のロールバイト内にある
ための限界である。したがって、異周速圧延において、
中立点がロールバイト内にあるためには、 1 <VH /VL <h0 /h1 ・・・・・ (6) でなければならない。
【0020】異周速圧延にて周速の差が大きくなりすぎ
ると、ロール出側での板の速度よりも、高周速側のロー
ル周速の方が速くなってしまう。ロールの周速に対する
被圧延材の出側の速度の増加比率を先進率というが、こ
の場合、高周速ロール側の先進率は負となり、中立点が
ロールバイトから外れ、 (6)式を満足できなくなって圧
延が不安定となる。
【0021】調質圧延の圧下率は、 {(h0 /h1 )− 1}× 100 ・・・・・・ (7) で示されるが、これは (1)式と同型であり、 (6)式との
対比からわかるように、異周速率は調質圧延の圧下率ま
たは伸び率よりも大きくできない。ことにC含有量の高
い硬い材料などを調質圧延する場合、圧下率を低くする
と、異周速圧延をおこなっても圧延の伸び率が不安定と
なりがちであった。異周速率を高くすれば圧延の伸び率
は安定するが (6)式の限界を超え、チャタリングを発生
しやすくなるのである。
【0022】異周速圧延の条件を変えて種々実験をおこ
なった結果では、 (6)式の限界を多少超える領域でも安
定して圧延できる場合があり、またロール替え直後の圧
延は安定してできるが、圧延距離が伸びると不安定にな
ることがあった。板圧延の先進率の測定方法として、ロ
ール表面にけがき線をを入れ、圧延により転写された板
のけがき線間隔とロール周長とを対比する、ロールけが
き法がある。圧延途中からチャタリングなど圧延不安定
現象を生じる場合の原因を明らかにするため、このロー
ルけがき法により先進率を測定してみた。その結果、ロ
ール替え直後の圧延では、高周速ロール側の先進率は正
であったが、同じロールで異周速率を一定として、同一
の伸び率の圧延をおこなっているにもかかわらず、圧延
不安定現象を生じた段階では、先進率が負になってい
た。
【0023】ロール替え直後に対し、しばらく圧延した
後で変化してくるもっとも大きな要因は、ロールの摩耗
による摩擦係数の低下である。そこで、摩擦係数に着目
し、(6)式の限界を超えても安定して異周速圧延ができ
る可能性について調査した結果、次のような手段が有効
であることを見出したのである。すなわち、(a) 圧延入
り側の鋼板のロール咬み込み角度に差を付け、高周速の
ロール側の角度を大きくする、(b) ワークロールへの潤
滑剤の供給量に差を付け、高周速のロール側を少なくす
る、(c) ロールの表面粗度に差を付け、高周速側のロー
ルの表面の方を粗くする。
【0024】咬み込み角度を変える (a)の方法は、流体
の性質から角度が大きいほど導入される潤滑剤の量が少
なくなり、摩擦係数が増す効果によるものである。な
お、この場合の咬み込み角度とは、ロール面と入り側の
鋼板面とが接する位置における両面の間の角度である。
同様な効果は、供給潤滑剤の量を変えても得られ、ま
た、ロールの表面粗さを粗くすることによっても得るこ
とができる。このように、低周速側よりも高周速側の摩
擦係数を大きくすることにより (6)式の限界を超えて
も、すなわち中立点がロールバイトを多少外れるような
条件まで異周速率を大きくとって圧延しても、安定して
圧延できるのである。そしてこれらの手段は、いずれも
(6)式の範囲内においても、圧延の安定性向上に有効で
あった。
【0025】ロールけがき法により、上述の (a)、
(b)、または (c)の方法により圧延をおこなった場合の
先進率を測定した結果では、先進率が負になるはずの条
件の圧延においても、正の値が得られた。これは、ロー
ル出側の板の速度が高速側ロールの周速よりも遅いにも
かかわらず、摩擦係数増大によりロールに接する鋼板表
面が拘束され、鋼板の表面近傍が剪断変形して、見かけ
上中立点がロールバイト内にあるようになり、これが圧
延を安定させたためと推定された。
【0026】以上のような検討結果から、種々の鋼板に
対しブライトロールによるウエット圧延の異周速圧延法
で、調質圧延を安定して実施するための限界条件を明ら
かにして、本発明の方法を完成させた。本発明方法の要
旨は次の通りである。
【0027】(1)ワークロールの径( 2R)と鋼帯の
板厚(t)との比 2R/tを 400以上とし、対になる2
つのワークロールの周速に下式で示される異周速率で0.
05〜3.0%の範囲の差を付けて、異周速圧延することを
特徴とする焼鈍後の冷延鋼板のブライトロールによる湿
式調質圧延方法。
【0028】 異周速率={(VH /VL )− 1}× 100 ・・・ (1) ただし VH :高周速側ロール周速 VL :低周速側ロール周速 (2)圧延機の板のパスラインをデフレクターロール等
により変えて、ワークロールと鋼帯のなす咬み込み角度
を上下非対称とし、高周速ロール側の咬み込み角度を大
きくすることを特徴とする上記(1)に記載の湿式調質
圧延方法。
【0029】(3)圧延中のワークロールに供給する潤
滑剤の量に差を付け、高周速側のロールに供給する量を
低周速側のロールに供給する量よりも少なくすることを
特徴とする上記(1)に記載の湿式調質圧延方法。 (4)ワークロールとして表面粗さRa が 0.5μm 以下
のブライトロールを使用し、上下のロールは粗さに差を
付け、高周速側のロールの表面粗さをより粗くすること
を特徴とする上記(1)に記載の湿式調質圧延方法。
【0030】本発明の方法を適用する鋼板は、深絞り用
や一般用の極低炭素ないしは低炭素鋼板、磨き帯鋼に属
する高炭素薄鋼板、フェライト系ステンレス鋼板など焼
鈍後調質圧延を必要とするものであればいずれでもよ
い。
【0031】対になったワークロールを異周速にする方
法は、ワークロールまたはバックアップロールの回転数
を変化させる機能を付与すればよいが、回転数を同一に
して駆動する場合であっても、ロールの径が異なるもの
を対にして実現できる。この場合、ワークロール駆動の
場合はワークロールの径を、バックアップロール駆動の
場合は、バックアップロールの径をそれぞれ差をつけて
用いればよく、本発明の範囲の異周速率であれば、通常
の同周速ロールの圧延の場合とほとんど変わらない状態
で圧延できる。
【0032】
【発明の実施の形態】本発明を実施する場合の調質圧延
のワークロールの直径 2Rは、圧延される板の厚さをt
とするとき、 2R/t≧ 400 ・・・・・・・・・ (8) を満足するものとする。これは、一つには調質圧延によ
り得られた鋼板の平坦度や形状は、この条件を満足する
ロール径の大きい場合の方が良好なためであり、もう一
つは異周速ロールによる調質圧延では、ロール径をこの
範囲とする方が安定して圧延ができるためである。な
お、ワークロールの直径は、大き過ぎれば薄ものの圧延
が困難になるので、上記の式を満足し、かつ通常使用さ
れる 150〜 800mm程度の範囲であればよい。
【0033】前述の (1)式で示される異周速率は、0.05
%未満では異周速圧延による効果が十分に得られず、ま
た、 3.0%を超える場合、先進率が正である場合はよい
が、負となる状態では、種々対策を講じても、圧延時の
チャタリングなど不安定性を排除できなくなる。従っ
て、異周速率を0.05〜 3.0%の範囲とする。
【0034】より安定した異周速圧延による調質圧延
は、高周速ロール側の咬み込み角度を大きくすることに
よって得られる。この場合、対になった二つのロールの
回転軸を含む平面に垂直で、かつロール面と平行な面を
通常の圧延のパスラインとするとき、圧延される板がワ
ークロールに初めて接する位置において、板面と通常の
パスラインとの間の角度が、低周速ロール側に 0.5゜以
上10゜以下の範囲で振れていることが望ましい。これは
振れる角度が 0.5゜未満の場合は、高周速ロール側の潤
滑剤の量を十分少なくする効果が小さくて摩擦係数を大
きくできず、10゜を超えると効果が飽和し、それ以上大
きくする意味がなくなるためである。
【0035】また、潤滑剤の供給量を変えて摩擦係数を
大きくする方法によっても、異周速圧延による調質圧延
をより安定におこなうことができる。この場合、望まし
いのは高周速ロール側の潤滑を供給しないドライとする
か、または供給してもごくわずかとし、低周速ロールの
潤滑剤は十分供給して、高周速ロール側に潤滑剤を供給
する場合でも、その 3倍以上供給することである。
【0036】本発明では、表面粗さがRa が 0.5μm 以
下のロールのによるブライト鋼板を対象とするが、高周
速側のロールの表面粗さを低周速側より粗くすることに
よってもより安定した異周速圧延が実施できる。この場
合、高周速ロールの表面粗さはRa : 0.1〜 0.5μm と
するのが好ましく、低周速ロールに対しRa で 0.1μm
以上の差を付けるのが望ましい。これは、Ra の差が
0.1μm 未満の場合、十分な効果が得られないためであ
る。また、高周速ロールのRa が 0.1μm 未満になる
と、摩擦係数が十分でなく、見かけの中立点がロールバ
イトを外れてしまい、 0.5μm を超える粗さになると、
ブライト鋼板とは言えなくなってしまう。
【0037】
【実施例】
〔実施例1〕表1に化学組成を示す鋼を用い、熱間圧延
し、板幅1500mmの種々の異なる板厚に冷間圧延して焼鈍
後、ロール径の種々異なる表面粗さRa が 0.3μm のブ
ライトロールを用いて、圧延速度は 300 m/min を基準
とし、潤滑剤を使用するウエット圧延により、通常の同
周速ロール、および異周速ロールによる調質圧延をおこ
なった。潤滑剤として、有機系潤滑油を 7%含む水溶液
を用い、上下ロールともに、ロールの幅方向の長さ 1cm
当たり0.35 L/min の量を供給しつつ圧延した。調質圧
延の伸び率は、いずれも 1.5%とした。圧延条件の評価
は、全長約3000m のコイルを圧延して、その間の伸び率
変動の多少、圧延された板の平坦度、およびロールの摩
耗について相対評価した。
【0038】
【表1】
【0039】表2に、試験に用いた鋼板の板厚、ロール
径および異周速率を示し、併せて圧延結果の評価も示
す。これらからわかるように、本発明の調質圧延方法に
よればブライトロールのウエット圧延にて、圧延の伸び
率が安定し、かつ平坦度の良好な鋼板を得ることができ
る。
【0040】
【表2】
【0041】〔実施例2〕C含有量0.55%のS55Cに相
当する鋼にて、幅1000mmの鋼板を冷間圧延して板厚0.50
mmとし、焼鈍後、直径 560mm、表面粗さRa : 0.2μm
のブライトロールにて調質圧延をおこなった。圧延速度
は 実施例1と同じく300 m/min とし、潤滑剤も実施例
1とほぼ同一の条件にて供給した。ワークロールの周速
を異周速率0%、 0.5%、 1.0%および 2.0%とし、圧
延の伸び率を 5%までの範囲で変えて調質圧延をおこな
い、伸び率と圧延線荷重との関係を調査した。結果を図
4に示す。
【0042】異周速比 0%、すなわち通常の同周速圧延
の場合、小さな伸び率の範囲にて引張り試験の上降伏点
に対応する大きな荷重を示した後、伸び率の変化が荷重
に対応しない不安定な様相を呈する。これが圧延の伸び
率不安定現象の原因であり、4%を超える伸び率にしな
ければ、一つの荷重に対し一つの伸び率という安定した
状態にならない。これに対し、本発明の異周速圧延にす
れば、低い伸び率から荷重と対応しており安定した圧延
が可能である。
【0043】図5は、このときの圧延の伸び率チャート
の例であるが、従来の同周速圧延では伸び率 3%以下が
不安定で制御できない。これに対し本発明の方法では、
伸び率の低いところから高いところまで安定して変化し
ており、所要の低伸び率範囲でも、十分制御して圧延で
きることがわかる。
【0044】〔実施例3〕C含有量0.80%のSK3相当
の高炭素鋼を冷間圧延して幅1200mm、厚さ0.30mmとし、
焼鈍後、直径 560mm、表面粗さRa が 0.2μm のブライ
トロールにて調質圧延をおこなった。圧延速度、潤滑剤
等の圧延条件は実施例1と同じとした。デフレクターロ
ールの位置を上に上げ、通常のパスラインに対し、咬み
込み角度を3°に設定した。圧延の伸び率は 1.0%と
し、異周速率は 1.0%で、下ロールに対し上ロールの周
速を高速または低速にして両者を比較した。
【0045】いずれの場合にも、圧延の開始時点におい
ては伸び率の不安定現象は解消し、安定した圧延が可能
であった。しかし、上ロールを高周速にした場合、すな
わち咬み込み角度が大きい下側のロールを相対的に低速
とした場合は、圧延距離が 200kmを超えると不安定現象
が現れ、ロール替えの必要があった。これに対し、上ロ
ールを低周速にした場合は、圧延距離が 400kmを超えて
も安定した圧延が可能であった。
【0046】
【発明の効果】本発明方法によれば、調質圧延における
ブライトロールによるウェット圧延を、不安定現象を生
じることなく低い伸び率まで安定しておこなうことがで
き、さらに、径の大きいロールを適用できるので板の形
状性が向上する。伸び率低減による圧延荷重低減は、大
径ロールの適用と相まってロール替えの頻度を大幅に減
少でき、調質圧延の製造コストの低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】通常の等周速を圧延する場合の、板と圧延ロー
ルとの相対的関係を模式的に示した図である。
【図2】等周速ロール、または異周速ロールによる調質
圧延の圧延伸び率と、圧延荷重(線荷重)との関係の測
定結果を示す図である。
【図3】異周速圧延をおこなった場合の、板と圧延ロー
ルとの相対的関係を模式的に示した図である。
【図4】異周速率を変えた場合の、異周速ロールによる
調質圧延の圧延伸び率と、圧延荷重(線荷重)との関係
の測定結果を示す図である。
【図5】通常の等周速ロールによる圧延と、異周速ロー
ルによる圧延の、圧延中に伸び率を変化させた場合の伸
び率チャートを示す図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ワークロールの径( 2R)と鋼帯の板厚
    (t)との比 2R/tを 400以上とし、対になる二つの
    ワークロールの周速に下式で示される異周速率で0.05〜
    3.0%の範囲の差を付けて、異周速圧延することを特徴
    とする焼鈍後の冷延鋼板のブライトロールによる湿式調
    質圧延方法。 異周速率={(VH /VL )− 1}× 100 ・・・ (1) ただし VH :高周速側ロール周速 VL :低周速側ロール周速
  2. 【請求項2】圧延機の板のパスラインを変えて、ワーク
    ロールと鋼帯のなす咬み込み角度を上下非対称とし、高
    周速ロール側の咬み込み角度を大きくすることを特徴と
    する請求項1に記載の湿式調質圧延方法。
  3. 【請求項3】圧延中のワークロールに供給する潤滑剤の
    量に差を付け、高周速側のロールに供給する量を、低周
    速側のロールに供給する量よりも少なくすることを特徴
    とする請求項1に記載の湿式調質圧延方法。
  4. 【請求項4】ワークロールとして表面粗さRa が 0.5μ
    m 以下のブライトロールを使用し、上下のロールは粗さ
    に差を付け、高周速側のロールの表面粗さをより粗くす
    ることを特徴とする請求項1に記載の湿式調質圧延方
    法。
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