JPH10136809A - 養液栽培装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【課題】 固定培地耕栽培装置の栽培ベッド収容の培地
床に培養液が行き渡るようにし、作物の成育のむらが生
じるのを防止する。特に寒冷地における湛液栽培施設の
有効利用により、通年の作物栽培による収益性を向上さ
せる。 【解決手段】 防水シート４、滲液シート５、培地床
６、栽培容器を備えた栽培ベッド３を設け、遮蔽部材
９、既設の湛液栽培装置の液槽を使用する培養液貯留タ
ンク及び培養液加温手段を設ける培養液循環手段を備え
ている養液栽培装置を所要の勾配で傾斜させ、所要の高
さにする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、養液栽培装置に関
する。更に詳しくは、養液栽培の一つである固定培地耕
栽培に使用される装置において、培地床の培養液の浸潤
性が良好で、かつ安価に敷設することができる養液栽培
装置に関するものである。

【０００２】

【従来技術】養液栽培の一つである固定培地耕栽培に使
用される装置は、防水処理された樋状の栽培ベッドを傾
斜させて固定し、栽培ベッド内部には培地床を設けて、
培地床の上部に配置した栽培容器内の培地に苗を植生
し、培養液を培地床に間欠的に給液して作物を栽培する
ものである。

【０００３】また、湛液栽培も養液栽培の一つである。
この湛液栽培はバッシブ耕ともいわれ、地面に掘った溝
部に防水シートを敷いて湛液可能な液槽を形成し、液槽
には肥料を含んだ培養液を満たし、ここに所要数の筒状
の栽培用ポットを立てて、液槽上部を遮光フィルムで覆
った構造である。この湛液栽培には、肥料の無駄がな
く、培養液を動かさないので根の病気などが広がりにく
く、施設費用やランニングコストが安価であるなどの利
点があり、広く普及している。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記した従来
のものには次のような課題があった。すなわち、固定培
地耕栽培装置の栽培ベッドに収容して使用してある培地
床はある程度の浸潤性は備えているが、それ程大量に給
液されるわけではない培養液を培地床全体にむらなく行
き渡らせることは困難で、このため作物の生育にむらを
生じることがあった。

【０００５】一方、養液栽培においては寒い季節には培
養液を温めなければならない場合があるが、湛液栽培装
置はその構造上、培養液全体を加温する必要があるた
め、寒冷地ではその費用が多大となり、作物を栽培して
も採算がとりにくかった。このため、湛液栽培装置は、
寒冷地においては冬期は稼働していないのが一般的で、
施設費用などの回収も容易ではなかった。

【０００６】本発明は上記課題を解消するもので、養液
栽培装置である固定培地耕栽培装置の栽培ベッドに収容
して使用してある培地床に培養液がよく行き渡るように
して作物の生育のむらが生じるのを防止することを目的
とする。また、特に寒冷地において湛液栽培を行ってい
る施設において、その施設を有効に利用することによ
り、冬期においても稼働できるようにし、年間を通して
の作物の栽培による収益性を向上させることを目的とす
る。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に講じた本発明の手段は次のとおりである。第１の発明
にあっては、養液栽培装置であって、この装置は、所要
の勾配で傾斜させてあり、所要高さに設けられた樋状の
栽培ベッドと、当該栽培ベッドの内面に敷設してある防
水シートと、当該防水シートの上面に敷設してある滲液
シートと、当該滲液シートの上に設けてある培地床と、
当該培地床に載置してあり、上記培地床と通液可能な内
部には培地材が収容してある栽培容器と、上記栽培ベッ
ドの上部開口部を実質的に遮蔽する遮蔽部材と、培養液
を貯留するタンクと、当該タンク内の培養液を上記栽培
ベッド内の培地床に給液し、残液を回収する培養液循環
手段と、を備えている、養液栽培装置である。

【０００８】第２の発明にあっては、タンクとして、既
設の湛液栽培装置の液槽が使用されている、第１の発明
に係る養液栽培装置である。

【０００９】第３の発明にあっては、培養液循環手段
に、培養液を加温する加温する手段が設けてある、第１
または第２の発明に係る養液栽培装置である。

【００１０】栽培ベッドの勾配は特に限定はせず、例え
ば１／９０程度に設定されるが、培養液の給液量や栽培
ベッドの長さ、大きさにより適宜設定されるものであ
る。また、栽培ベッドの高さは限定するものではない
が、立ち作業または椅子に腰掛けた状態での作業がしや
すい高さに設定するのが望ましい。栽培ベッドの素材は
強度が十分であれば特に限定はしないが、例えば紙（紙
管を縦割りにしたものを使用する）、発泡プラスチッ
ク、合成樹脂、木、金属などを用いることが可能である
が、価格の面からは紙製のものが望ましい。防水シート
にはフィルムのようにごく薄い素材も含まれる。また、
その素材としては、例えば合成樹脂があげられるが、こ
れに限定するものではない。

【００１１】滲液シートは、培養液などの液体が滲みや
すいものであれば、その素材は特に限定しないが、例え
ば布、不織布、目の細かい網状のものなどである。培地
床は、栽培に好適な保水力を有し、通気性が良好なもの
であれば、その素材は限定しない。例えば、籾殻を焼い
て炭化させたくん炭、あるいはカルチライト（商標名：
大電株式会社）などの炭化物があげられる。栽培容器
は、筒状体または通液可能な底部を有するポット状のも
のなどであるが、これらに限定はされない。遮蔽部材
は、例えば、遮光性のフィルム、シート、板状体であ
り、その素材も合成樹脂、発泡プラスチック、木、金属
など様々であり、特に限定はしない。加温手段は、例え
ば電気ヒーター、ガスヒーターなどであるが、これらに
限定はしない。

【００１２】（作用）養液栽培装置の栽培容器に栽培す
る野菜などの苗を植生する。タンク内の培養液を培養液
循環手段によって、培地床に給液する。培養液は培地床
に吸収され、保液される。また、培地床の下側にある滲
液シートの作用により、培養液は広範囲にむらなく行き
渡る。そして、培養液は培地床から栽培容器内の培地材
に浸潤し、上記植生された苗に養分が給液されて苗は生
育する。また、余剰分の培養液は防水シート上を伝わっ
てタンク内に戻り、再度培地床に給液される。

【００１３】タンクとして、既設の湛液栽培装置の液槽
が使用されているものにあっては、タンクを別に用意す
る必要がない分、安価に敷設できる。培養液循環手段に
培養液を加温する加温手段が設けてあるものにあって
は、安価なランニングコストで培養液を加温して培地床
に給液できるので、特に寒冷地における冬期の栽培で採
算がとりやすくなる。また、湛液栽培の施設である液槽
を有効に利用することにより冬期の稼働が可能になるの
で、年間を通しての作物の栽培による収益性が向上す
る。

【００１４】

【発明の実施の形態】本発明を図面に示した実施の形態
に基づき、更に詳細に説明する。図１は本発明に係る養
液栽培装置の一実例を示す概略説明図、図２は作物栽培
時の栽培ベッド部分の構造を示す断面図である。養液栽
培装置は、夏期の作物栽培において使用した湛液栽培装
置の施設の一部である液槽１と誘引枠２を利用して形成
されている。液槽１は地面を溝状に掘って形成してあ
る。液槽１内には防水シート（図示省略）などを敷いて
防水処理が施してある。そして、液槽１内には適量の培
養液１０が入れられる。

【００１５】液槽１の上部には、作物の蔓を誘引する誘
引枠２が形成されている。誘引枠２は合成樹脂パイプ製
で、左右両側の地面から立ち上げてある所要数の立部材
２１と、液槽１の長さ方向に平行に設けられた所要数の
縦部材２２と、縦部材２２と水平方向において直角に設
けられた所要数の横部材２３を組み合わせた構造であ
る。誘引枠２の中段部分に設けてある縦枠部材２２に
は、板状に形成された支持横部材２４が各立部材２１と
の交差部ごとに水平に取り付けてある。支持横部材２４
の上部には発泡プラスチック製の受部材２５が設けてあ
る。

【００１６】各受部材２５の上には、栽培ベッド３が縦
部材２２と平行に所要数並設されており、各栽培ベッド
３は受部材２５の柔軟性により安定している。栽培ベッ
ド３は、紙管を縦割りにして樋状にし、所要長さに形成
してものである。なお、栽培ベッド３に使用される紙管
は、軽量かつ強度に優れ、断熱効果も良好で、安価に製
造できる利点がある。更には、発泡プラスチックなどと
比較して廃棄時の焼却処理が容易にできる利点もある。

【００１７】また、栽培ベッド３は１／９０の勾配で傾
斜させてある。栽培ベッド３の内面には合成樹脂製の防
水シート４が全長にわたり敷設されている（図２参
照）。更に、その上面には不織布で形成された滲液シー
ト５が同じく全長にわたり敷設されている。滲液シート
５の上面には、カルチライトを適量敷き詰めて、上面が
ほぼ平坦になるように形成された培地床６が設けてあ
る。また、この培地床６の上方には、培養液循環手段を
構成する給液管７１が栽培ベッド３のほぼ全長にわたり
設けてある。給液管７１の側壁部には給液孔７２が長さ
方向に一定の間隔で設けてある。

【００１８】培地床６の上面には、長さ方向に一定の間
隔で栽培容器である栽培ポット８が載置してある。栽培
ポット８の底部には、通液可能で作物の根部も通過可能
なシート部材で形成された底部材８１が設けてある。栽
培ポット８内部にはカルチライトが適量充填されて培地
８２が形成されている。また、栽培ベッド３の上部開放
部は、発泡プラスチックで形成された遮蔽部材９で遮蔽
されている。遮蔽部材９には、各栽培ポット８に対応す
る部分に挿通孔９１が設けてある。

【００１９】上記給液管７１の基部（図１において左方
の高位置側）には、液槽１の液底部に沈めてあるポンプ
７３の送液管７４が接続されている。送液管７４の上部
には通過する培養液１０を加温する電熱ヒーター７５が
設けてある。また、栽培ベッド３の先端下部には、栽培
ベッド３内面側の滲液シート５まで貫通した排液管７６
が下方へ垂設されており、その先端部は液槽１内部に導
入されている。

【００２０】（作用）図を参照して本実施例の形態の作
用を説明する。養液栽培装置の栽培ポット８に栽培する
野菜などの苗１１を植生する。ポンプ７３を一定時間ご
とに作動させ、液槽１内の培養液１０を培地床６に間接
的に給液する。培養液１０は培地床６に吸収され、保液
される。また、培地床６の下側にある滲液シート５の作
用により、培養液１０は広範囲にむらなく行き渡る。そ
して、培養液１０は培地床６から栽培ポット８内の培地
８２に浸潤し、上記植生された苗１１に培養液１０が給
液されて苗１１は生育する。なお、滲液シート５は不織
布で形成されているので、成長した根部は通過しにく
く、絡むことがないので、栽培後の後処理が容易にでき
る。また、余剰分の培養液１０は防水シート４上を伝わ
って液槽１内に戻り、再度培地床６に給液される。

【００２１】本実施例の形態では、既設の湛液栽培装置
の液槽がそのまま使用するので、タンクを別に容易する
必要がない分、安価に敷設できる。また、施設の組み立
て、分解も比較的短時間で容易にできる。また、送液管
７４に設けてある電熱ヒーター７５を必要に応じて使用
すれば、培養液１０を安価なランニングコストで加温す
ることができるので、特に寒冷地における冬期の栽培で
採算がとりやすくなる。また、湛液栽培の施設である液
槽を有効に利用することにより、敷設の冬期の稼働が可
能になるので、年間を通しての作物の栽培による収益性
が向上する。なお、本発明は図示の実施例の形態に限定
されるものではなく、特許請求の範囲の記載内において
種々の変形が可能である。

【００２２】

【発明の効果】本発明は上記構成を備え、次の効果を有
する。 （ａ）養液栽培装置の栽培ベッドには、防水シートの上
面に滲液シートが敷設してあるので、培地床に給液され
た培養液はこの滲液シートを伝わり、培地を広範囲にむ
らなく行き渡らせることができる。従って、作物の生育
のむらが生じることを防止てきる。

【００２３】（ｂ）タンクとして、既設の湛液栽培装置
の液槽が使用されているものにあっては、タンクを別に
用意する必要がない分、安価に敷設できる。また、施設
の組み立て、分解も比較的短時間で容易にできる。

【００２４】（ｃ）培養液循環手段に、培養液を加温す
る加温手段が設けてあるものにあっては、安価なランニ
ングコストで培養液を加温して培地床に給液できるの
で、特に寒冷地における冬期の栽培で採算がとりやすく
なる。また、湛液栽培の施設である液槽を有効に利用す
ることにより、施設の冬期の稼働が可能になるので、年
間を通しての作物の栽培による収益性が向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る養液栽培装置の一実施例を示す概
略説明図。

【図２】作物栽培時の栽培ベッド部分の構造を示す断面
図。

【符号の説明】

１ 液槽 １０ 培養液 ２ 誘引枠 ２１ 立部材 ２２ 縦部材 ２３ 横部材 ２４ 支持横部材 ２５ 受部材 ３ 栽培ベッド ４ 防水シート ５ 滲液シート ６ 培地床 ７１ 給液管 ７２ 給液孔 ７３ ポンプ ７４ 送液管 ７５ 電熱ヒーター ７６ 排液管 ８ 栽培ポット ８１ 底部材 ８２ 培地 ９ 遮蔽部材 ９１ 挿通孔 １１ 苗

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 養液栽培装置であって、この装置は、 所要の勾配で傾斜させてあり、所要高さに設けられた樋
   状の栽培ベッドと、 当該栽培ベッドの内面に敷設してある防水シートと、 当該防水シートの上面に敷設してある滲液シートと、 当該防水シートの上に設けてある培地床と、 当該培地床に載置してあり、上記培地床と通液可能な内
   部には培地材が収容してある栽培容器と、 上記栽培ベッドの上部開口部を実質的に遮蔽する遮蔽部
   材と、 培養液を貯留するタンクと、 当該タンク内の培養液を上記栽培ベッド内の培地床に給
   液し、残液を回収する培養液循環手段と、 を備えていることを特徴とする、 養液栽培装置。
2. 【請求項２】 タンクとして既設の湛液栽培装置の液槽
   が使用されている、請求項１記載の養液栽培装置。
3. 【請求項３】 培養液循環手段に培養液を加温する加温
   手段が設けてある、請求項１または２記載の養液栽培装
   置。