JPH10134643A

JPH10134643A - 通電接着用絶縁電線

Info

Publication number: JPH10134643A
Application number: JP28442296A
Authority: JP
Inventors: Hirohiko Nakao; 裕彦中尾; Kazuharu Kobayashi; 一治小林; Sadamitsu Jumonji; 貞光十文字; Shigeru Amano; 茂天野; Yoshihisa Yamagai; 佳央山貝; Keiji Nakano; 恵司中野
Original assignee: Fujikura Ltd
Current assignee: Fujikura Ltd
Priority date: 1996-10-25
Filing date: 1996-10-25
Publication date: 1998-05-22

Abstract

(57)【要約】【課題】従来の通電接着用絶縁電線と同等の通電接着
条件で固着することができ、耐熱性、耐熱振動性に優れ
た製品を得ることのできる、新規な通電接着用絶縁電線
を提供すること。【解決手段】導体１直上もしくは絶縁層２を有した導
線上に、接着層３として塗布焼付けする熱可塑性樹脂
に、あらかじめ架橋剤を配合しておくことを特徴とす
る。架橋剤を配合した熱可塑性樹脂を塗布焼付けした通
電接着用絶縁電線を用いてコイルを作成した後、コイル
に通電して接着すると、熱可塑性樹脂は溶融接着すると
同時に架橋剤により架橋される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は通電接着用絶縁電線
に関し、特に通電接着性が良好で、かつ、耐熱性、耐熱
振動性に優れた製品を得ることのできる通電接着用絶縁
電線に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来より、自己融着性絶縁電線が知られ
ている。これは、ポリウレタン線やポリエステル線の上
に熱や溶剤で溶融接着する接着層を塗布焼付けしたもの
で、コイルを巻いた後加熱するか、アルコール系溶剤を
コイルに塗布する、またはコイルを溶剤に含浸し、線材
を固着させてコイルを形成することができる。すなわ
ち、自己融着性絶縁電線は、ワニスや絶縁塗料などを用
いたコイルの固着処理を、コイルを加熱したり溶剤に含
浸したりすることで代用することができる、あるいは、
絶縁電線同士がより堅固に固定されるため、耐振動性に
優れる、などの特徴を有する。

【０００３】この自己融着性絶縁電線の一種に、通電接
着用絶縁電線がある。これは、ポリアミド、フェノキシ
などの熱可塑性樹脂を、導体上もしくは絶縁層上に塗布
焼付けて接着層としたもので、コイルに巻回した後、こ
のコイルに通電することにより発生する熱によって絶縁
電線同士を固着させるものである。通電接着用絶縁電線
に用いられる熱可塑性樹脂は、通電接着の容易さから、
融点が８０℃から２００℃程度のものが使用されている
ことが多い。しかし、例えば自動車のクラッチなどのよ
うに、コイルに耐熱性、耐熱振動性が求められる場合、
従来の通電接着用絶縁電線を用いて製造されたコイルで
は、その要求を十分に満たすことはできなかった。ま
た、融点が２００℃以上の熱可塑性樹脂を通電接着用絶
縁電線に用いた場合には、通電電流を大幅にアップしな
ければ絶縁電線同士を通電接着することはできず、たと
え接着できたとしても、絶縁電線が層間短絡を起こす可
能性もあるため、コイルとしての信頼性に欠けていた。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記の点に鑑み、本発
明は、従来の通電接着用絶縁電線と同等の通電接着条件
で固着することができ、耐熱性、耐熱振動性に優れた製
品を得ることのできる、新規な通電接着用絶縁電線を提
供することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記の課題は、通電接着
用絶縁電線の接着層に用いる熱可塑性樹脂に、架橋剤を
あらかじめ配合しておくことによって解決することがで
きる。

【０００６】

【発明の実施の形態】以下、本発明について、図面を用
いて詳細に説明する。図１は、本発明の通電接着用絶縁
電線の一実施形態例を示した断面図である。導体１上
に、ポリウレタンやポリエステルなどの絶縁材料からな
る絶縁層２が設けられている。さらに、絶縁層２の上
に、熱可塑性樹脂などからなる接着層３が設けられて、
本発明の通電接着用絶縁電線となっている。絶縁層２
は、例えばポリウレタン、ポリエステルなど、導体に塗
布焼付け可能な絶縁材料から構成される。接着層３は、
熱可塑性樹脂を溶剤で希釈し、これに架橋剤を配合して
得られた塗料から構成される。

【０００７】本発明において、好適に用いることのでき
る上記熱可塑性樹脂の例として、ブチラール、ホルマー
ル、フェノキシ、ポリエステル、エポキシ、ポリアミド
などを挙げることができる。熱可塑性樹脂と架橋剤の好
適な組み合わせを例示すると、ブチラール、ホルマー
ル、ポリエステルには、架橋剤としてブロックイソシア
ネートが、エポキシには、架橋剤としてフェノール樹
脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート
が、ポリアミドには、架橋剤としてエポキシ樹脂が、フ
ェノキシには、架橋剤としてメラミン樹脂、尿素樹脂、
ブロックイソシアネートが、それぞれ挙げられる。

【０００８】上記熱可塑性樹脂と架橋剤の配合比は、重
量として８対１から２対１の範囲にあることが好まし
い。熱可塑性樹脂に、あらかじめ架橋剤を配合した場
合、架橋剤は、熱可塑性樹脂に混合されているだけなの
で、熱可塑性樹脂は、ほとんど架橋されていない。熱可
塑性樹脂を希釈する溶剤としては、例えばシクロヘキサ
ノン、クレゾール、キシレンなどの有機溶媒を好適に使
用することができる。この時、熱可塑性樹脂と溶剤の重
量比は１対２から１対１０の範囲にあることが好まし
い。

【０００９】溶剤で希釈した熱可塑性樹脂に架橋剤を配
合した塗料を、導体直上、あるいはポリウレタン、ポリ
エステルなどの絶縁材料からなる絶縁層を有した導線上
に、ほぼ均一な厚さになるよう塗布焼付けすることで、
通電接着用絶縁電線を得ることができる。この接着層
は、薄すぎると均一な皮膜を得ることが難しく、不必要
に厚すぎても、塗料を無駄に消費するので好ましくな
い。また、導体直上に、該塗料を直接塗布焼付けする場
合は、絶縁層を有した導線上に塗布焼付けする場合と比
較して、接着層を厚く仕上げることが望ましい。これ
は、塗布工程および焼付け工程を必要回数繰り返すこと
で行うことができる。該接着層の厚みは、導体に直接塗
布焼付けする場合は２０μｍから５０μｍ程度、絶縁層
を有した導線に塗布焼付けする場合は５μｍから４０μ
ｍ程度が好ましい。

【００１０】熱可塑性樹脂に架橋剤を配合した塗料を導
体直上、あるいは、絶縁層を有した導線上に塗布焼付け
した時、熱可塑性樹脂は、加熱条件にさらされる結果、
その一部分が架橋剤により架橋される。この架橋の度合
いを測る指標として、ゲル分率がある。本発明において
は、通電接着用絶縁電線の接着層のゲル分率は、０％か
ら５０％であることが好ましい。この通電接着用絶縁電
線を用いてコイルを作成した後、コイルに通電すること
で絶縁電線同士を接着させると、熱可塑性樹脂は溶融接
着すると同時に架橋剤により架橋される。これにより、
コイルの耐熱性、耐熱振動性を向上させることができ
る。

【００１１】

【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるもので
はない。（実施例１）フェノキシ樹脂（ユニオンカーバイト社
製、ＰＫＨＨ）をシクロヘキサノンに溶解させ、２０重
量％溶液とした。この溶液に、メラミン樹脂をフェノキ
シ樹脂に対して２０重量％配合し、通電接着用絶縁電線
の接着層に用いる塗料とした。この塗料を、直径０．７
ｍｍのポリエステル線上に、０．０１０ｍｍ厚になるよ
う塗布焼付けした。得られた電線を用いて、クラッチコ
イル（直径約１００ｍｍ、電線約２００ターン）を作成
した。（実施例２）メラミン樹脂をフェノキシ樹脂に対して４
０重量％配合した以外は、実施例１と同様の操作を行
い、クラッチコイルを作成した。

【００１２】（実施例３）メラミン樹脂をフェノキシ樹
脂に対して７０重量％配合した以外は、実施例１と同様
の操作を行い、クラッチコイルを作成した。（実施例４）ポリアミド樹脂（大日精化社製、ＰＡ−２
７）をシクロヘキサノンに溶解させ、２０重量％溶液と
した。この溶液に、エポキシ樹脂をポリアミド樹脂に対
して２０重量％配合し、通電接着用絶縁電線の接着層に
用いる塗料とした。この塗料を用いて、実施例１と同様
の操作を行い、クラッチコイルを作成した。

【００１３】（比較例１）フェノキシ樹脂（ユニオンカ
ーバイト社製、ＰＫＨＨ）をシクロヘキサノンに、２０
重量％溶液となるように溶解し、通電接着用絶縁電線の
接着層に用いる塗料とした。この塗料を用いて、実施例
１と同様の操作を行い、クラッチコイルを作成した。（比較例２）ポリアミド樹脂（大日精化社製、ＰＡ−２
７）をシクロヘキサノンに、２０重量％溶液となるよう
に溶解し、通電接着用絶縁電線の接着層に用いる塗料と
した。この塗料を用いて、実施例１と同様の操作を行
い、クラッチコイルを作成した。

【００１４】実施例１ないし４および比較例１、２で作
成したクラッチコイルに、それぞれ通電し、電線の接着
性について確認した。次に、１８０℃、２００時間の耐
熱試験を行った。最後に、コイルに、コイルの温度が１
２０℃となるようにしながら、加速度振動を２４時間加
えてコイルの外観をチェックする、耐熱振動性試験を行
った。結果を表１に示す。

【００１５】

【表１】

【００１６】実施例１から４で作成したコイルは、通電
接着性、耐熱性、耐熱振動性とも良好であり、クラッチ
コイルとして十分な性能を有していた。比較例１、２で
作成したコイルは、通電接着性は良好だったものの、耐
熱性、耐熱振動性に劣り、その性能はクラッチコイルと
して使用するには不十分であった。

【００１７】

【発明の効果】上述のごとく、本発明の通電接着用絶縁
電線は、熱可塑性樹脂に架橋剤を配合した塗料を導体上
または絶縁層上に塗布焼付けしたものであり、該通電接
着用絶縁電線を使用して作られたコイルは、耐熱性、耐
熱振動性に優れており、自動車のクラッチ用など、過酷
な条件下での使用に耐えることができる。また、本発明
の通電接着用絶縁電線は、従来の通電接着用絶縁電線と
同様な方法で製造することができ、従来品と同等な条件
で通電接着することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態例を示す断面図。

【符号の説明】

１…導体、２…絶縁層、３…接着層

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者天野茂静岡県沼津市双葉町９番１号株式会社フジクラ沼津工場内 (72)発明者山貝佳央静岡県沼津市双葉町９番１号株式会社フジクラ沼津工場内 (72)発明者中野恵司静岡県沼津市双葉町９番１号株式会社フジクラ沼津工場内

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】熱可塑性樹脂に架橋剤を配合した塗料を
塗布焼付けした、未架橋もしくは部分架橋の接着層を有
する通電接着用絶縁電線。