JPH10133159A - 光導波路デバイス、進行波形光変調器および光導波路デバイスの製造方法 - Google Patents

光導波路デバイス、進行波形光変調器および光導波路デバイスの製造方法

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JPH10133159A
JPH10133159A JP9085579A JP8557997A JPH10133159A JP H10133159 A JPH10133159 A JP H10133159A JP 9085579 A JP9085579 A JP 9085579A JP 8557997 A JP8557997 A JP 8557997A JP H10133159 A JPH10133159 A JP H10133159A
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optical
groove
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隆史 吉野
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Abstract

(57)【要約】 【課題】基板と、基板の一方の主面側に形成されている
光導波路と、電極部分とを備えている光導波路デバイス
において、その動作速度を向上させること 【解決手段】光導波路デバイス8は、相対向する一対の
主面1a、1bを備えている基板1と、基板1の一方の
主面1a側に形成されている光導波路2と、電極部分
3、4とを備えている。少なくとも電極部分3、4の位
置において、基板1に、厚さが相対的に小さい薄肉部分
12が設けられている。好ましくは、肉薄部分12の厚
さが5μm以上、50μm以下であり、肉薄部分12以
外の基板1の厚さが150μm以上である。基板1の他
方の主面1b側からアブレーション加工や研削加工を施
すことによって、肉薄部分12を形成できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、進行波形光変調器等の光
導波路デバイス、およびその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】光通信分野においては、通信容量の飛躍
的な増大が予測されており、このために光伝送系の容量
の増大が必要である。現状では、1.6GB/秒の伝送
速度が実用化されつつあるが、光ファイバの伝送可能な
周波数帯域(約200THz)と比較すると、高々10
万分の一程度しか実用化されていない。伝送容量を飛躍
的に増大させるのに重要なことは、光変調技術を進展さ
せることである。
【0003】ニオブ酸リチウム(LiNbO3 )、タン
タル酸リチウム(LiTaO3 )、ガリウム砒素(Ga
As)を光導波路に適用した進行波形光変調器は、優れ
た特性を備えており、高能率で高帯域化を達成できる可
能性がある。ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム
は、強誘電体として非常に優れた材料であり、電気光学
定数が大きく、短い光路で光の制御が可能であるという
利点を有している。進行波形光変調器の変調速度を制限
する要因としては、速度不整合、分散および電極損失な
どが挙げられる。このうち、速度不整合および分散につ
いては、主として進行波形光変調器の構造によって決定
されるので、構造の解析および設計が重要である。一
方、電極損失については、材料の導電率や表皮効果が重
要である。
【0004】速度不整合について、更に説明する。進行
波形電極においては、光導波路中を進行する光と、電極
中を伝搬する電気信号(マイクロ波)との速度は、大き
く異なっている。結晶中を伝搬する光の速度をV0
し、マイクロ波の速度をVmとする。例えば、プレーナ
型電極を有するLiNbO3 光変調器の場合には、次の
ようになる。まず、LiNbO3 単結晶の屈折率は2.
14であり、光導波路中を進行する光の速度は、これに
反比例する。一方、マイクロ波の実効屈折率は、導体近
傍の誘電率の平方根によって与えられる。LiNbO3
単結晶の誘電率は、一軸性であり、Z軸方向が28、X
軸方向、Y軸方向が43である。従って、誘電率が1で
ある空気の影響を考慮しても、従来の構造のLiNbO
3 光変調器におけるマイクロ波の実効屈折率は約4とな
り、2.14の約1.9倍になる。従って、光波の速度
はマイクロ波の速度よりも約1.9倍大きい。
【0005】光変調帯域幅fmないし変調速度の上限
は、光波とマイクロ波との速度差の逆数に比例する。即
ち、fm=1/(V0 −Vm)が成立する。従って、電
極損失を0と仮定すると、帯域幅fm×電極長l=9.
2GHz・cmが限界となる。実際に、電極長l=2.
5mmの光変調器において、fm=40GHzという値
が報告されている。この動作速度の限界による影響は、
電極が長いほど、顕著になる。従って、広帯域であっ
て、高能率特性を有する光変調器の実現が強く望まれて
いる。
【0006】最近、光導波路型高速変調器や高速スイッ
チ等の光導波路デバイスにおいて、基板の上部の電極の
形状を特殊な形状としたり、ガラス堆積層を形成したり
することによって、光導波路の内部を進行する光と、外
部から印加される変調電圧との間での位相整合周波数を
数十GHzへと高広帯域化することが提案されている
(「O plus E」1995年5月号第91頁〜9
7頁、「LNを用いたEOデバイス」)。
【0007】この文献によれば、マイクロ波の速度は、
細い信号電極とアース電極とを結ぶ電気力線が通る領域
の誘電率の平均値によって決まるため、電極の厚さを大
きくし、SiO2 からなるバッファー層の厚さを大きく
することによって、変調速度が向上するとされている。
また、進行波電極は伝送経路であり、その特性インピー
ダンスを50Ωに近づける必要がある。これらの条件を
満足する設計として、せり出し形、ひさし形、溝堀り
形、シールド形といった種々の形態の電極およびバッフ
ァー層を形成することが提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような構
造の進行波形光変調器においては、基板の上部にバッフ
ァー層および複雑な形状の電極を形成する必要があるの
で、これらの製造プロセスが複雑であり、工程数が多
く、コストが高い。しかも、光導波路の部分と、複雑な
形状のバッファー層および電極との間で、高い位置合わ
せの精度を保持する必要がある。更に、加工ダメージに
よる加工変質層の生成によって、光屈折率等の特性が変
化し易く、光導波路デバイスのシュミレーションの結果
から見て特性が劣化し、光吸収特性や消光比特性が不十
分になる。
【0009】しかも、こうした困難な製造上の問題点を
解決できたとしても、依然として10GHz・cm以上
の高速変調は困難であった。
【0010】本発明の課題は、相対向する一対の主面を
備えている基板と、この基板の一方の主面側に形成され
ている光導波路と、電極部分とを備えている光導波路デ
バイスにおいて、その動作速度を向上させることであ
る。
【0011】更に、本発明の課題は、進行波形光変調器
において、高速変調を可能にするのと共に、こうした進
行波形光変調器を、少ない工程数で製造できるように
し、高精度の位置合わせを不要とし、加工ダメージによ
る加工変質層の生成も防止することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、相対向する一
対の主面を備えている基板と、この基板の一方の主面側
に形成されている光導波路と、電極部分とを備えている
光導波路デバイスであって、少なくとも電極部分の位置
において基板に厚さが相対的に小さい薄肉部分が設けら
れていることを特徴とする、光導波路デバイスに係るも
のである。
【0013】本発明者は、前記の課題を解決し、従来よ
りも高速で動作するような進行波形光変調器を提供する
べく研究を続けてきたが、この過程で、強誘電性基板の
裏面側から加工を施すことによって、少なくとも電極部
分の位置において強誘電性基板に厚さが相対的に小さい
薄肉部分を設けることを想到した。そして、この進行波
形光変調器を使用して各種のシュミレーションを実施
し、かつ変調実験を行ったところ、15GHz・cm以
上の極めて高速での変調が可能であることを見いだし、
本発明に到達した。
【0014】しかも、このような強誘電性基板の裏面側
に溝ないし凹部を形成することによって、肉薄部分を形
成することが可能であり、この際、溝ないし凹部を、後
述するように機械加工法またはアブレーション加工法に
よって、高速度でかつ高精度で形成できることを発見し
た。この結果、高い生産性をもって本発明の進行波形光
変調器を製造できることを確認した。
【0015】この際、肉薄部分の厚さは、変調速度を一
層高くする上で、50μm以下であることが好ましく、
20μm以下であることが一層好ましい。また、電極部
分について一定の強度を保持するために、肉薄部分の厚
さを5μm以上とすることが好ましい。
【0016】また、基板を取り扱う際に所定の強度が必
要であり、基板が薄すぎると、破損やクラックによって
不良品が発生し易くなる。この点、本発明によれば、電
極部分の動作速度に影響する所定箇所のみに肉薄部分を
設け、他の部分は十分な強度を付与できる厚さとするこ
とができる。このため、基板の肉薄部分以外の部分の厚
さは、150μm以上とすることが好ましい。また、1
000μm以下が好ましい。
【0017】以下、肉薄部分の厚さと最大の3dB帯域
幅との関係を、表1に示す。表1から判るように、肉薄
部分の厚さが100μm以上である場合には、3dB帯
域幅は10GHz・cm程度であり、50μmである場
合には15GHz・cm程度であり、10μmで30G
Hz・cm程度であり、5μmである場合には100G
Hz・cm程度であって、変調速度が大幅に向上してい
る。なお、肉薄部分の厚さが3μmである場合には、ク
ラックが発生した。
【0018】
【表1】
【0019】こうした作用効果が得られた理由は、次の
ように考えられる。基板の裏面側に凹部ないし溝を形成
して電極部分を肉薄にすることによって、電極部分を通
過する変調波(マイクロ波)によって生成する電界は、
基板の裏面側の空気(溝ないし凹部中)にかなりリーク
する。この結果、変調波の位相速度が上昇し、従来は困
難であった領域での位相整合が可能になる。
【0020】進行波形光変調器においては、基板および
光導波路を、ニオブ酸リチウム単結晶、タンタル酸リチ
ウム単結晶およびニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウ
ム固溶体単結晶からなる群より選ばれた一種以上の単結
晶によって形成することが好ましい。また、基板の方位
は、Z、X、Yのいずれの方向でも良く、従来チタン拡
散による光導波路とその上への電極形成の手段を、その
まま採用できる。
【0021】さらに、基板方位による電界補正係数を計
算したところ結晶方位により大きな差が認められること
を見いだした。即ち、表2に示すように、Xカットもし
くはYカット方位の基板を用いる場合は肉厚を薄くする
ことにより、このデバイスの半波長電圧即ち駆動電圧が
低電圧化できるという長所がある。これに対し、Zカッ
ト方位の基板を使用すると肉厚が薄くなるのに伴い、半
波長電圧が大きくなることが短所となる。一般にZカッ
ト方位では、基板にDCドリフト対策のための酸化シリ
コンのバッファ層を形成する必要があるなどの問題点も
あり、XカットもしくはYカット方位の基板を用いた場
合の利点は大きい。
【0022】
【表2】
【0023】前記したアブレーション加工には各種レー
ザーを使用できるが、エキシマレーザーが特に好まし
い。アブレーション加工とは、エキシマレーザー光のよ
うな高エネルギーの光を加工対象の材質に照射すること
によって、光の当たった部分を瞬時に分解および気化さ
せ、目的の形状を得る加工方法である。エキシマレーザ
ーとは、波長が150〜300nmである紫外領域のレ
ーザー光であり、封入するガスの種類によって波長を選
択できるという特徴がある。
【0024】本発明者は、強誘電性基板の裏面側を加工
するのに際して、エキシマレーザーによるアブレーショ
ン加工技術や、液中アシストエッチング加工法等を検討
した。この結果、エキシマレーザーを使用したアブレー
ション加工によると、極めて高い生産性で肉薄部分を形
成できることを発見した。しかも、得られた肉薄部分お
よび溝ないし凹部について、著しい光学特性の安定性と
形状の安定性とが得られた。
【0025】ここで、光学特性の安定性については、ア
ブレーション加工では、光の照射された部分において、
基板の材質が瞬時に分解および気化するので、光が直接
には当たらない周辺部分には、熱・応力等の影響がほと
んどなく、このため肉薄部分に沿って加工変質層がまっ
たく生成しなかったものと考えられる。
【0026】アブレーション加工用の光源としては、基
板の材質の吸収端よりも短波長側の光を使用する必要が
ある。しかし、通常は、350nm以下の波長を有する
光が好ましい。特に、酸化物単結晶からなる基板を加工
する場合には、350nm以下の波長を有する光を使用
することによって、基板に対して照射された光が、極表
面層中で吸収されるために、表面層のみを分解し、基板
の内部には加工ダメージを与えない。
【0027】このようなアブレーション加工に好適な波
長領域は、加工対象となる結晶の光吸収端の位置によっ
て変動するため、一律には規定できない。しかし、一般
的に光導波路用途に使用される酸化物単結晶は、350
nm以下の波長の領域に光吸収端を有している。このた
め、例えば波長512nmのアルゴンレーザーを使用し
た場合には、良好なアブレーション加工は不可能であっ
た。この理由としては、基板の材質の吸収端よりも長波
長の光であるために、光が酸化物単結晶の内部まで透過
し、表面での吸収によるアブレーションが起こりにくい
からである。
【0028】アブレーション加工用の光の波長は、30
0nm以下とすることが一層好ましい。ただし、実用的
な観点からは、150nm以上とすることが好ましい。
また、現実の光源としては、エキシマレーザー光源の他
に、YAGの四次高調波(266nmのレーザー光)、
エキシマランプ等が、現在のところ実用的である。
【0029】アブレーション加工用の光照射装置として
は、いわゆる一括露光方式の装置と多重反射方式の装置
とが知られている。多重反射方式の場合には、マスクの
開孔率が小さい場合にも、光の利用率が高いという特徴
を有している。本発明においては、多重反射系によるア
ブレーション加工装置を使用することが一層好ましく、
これによって、1インチ以上の寸法を有するウエハーの
全体にわたって形成されたチッブパターンについて、短
時間で加工することができる。
【0030】ここで、エキシマレーザーについて更に説
明する。エキシマレーザーは、紫外線のパルス繰り返し
発振レーザーであり、ArF(波長193nm)、Kr
F(波長248nm)、XeCl(波長308nm)な
どの気体状の化合物が発振する紫外光を、光共振機によ
り方向性を揃えて取り出したものである。エキシマレー
ザーは、紫外線の短波長レーザーであるため、物質を構
成する原子や分子の結合をフォトンのエネルギーで分解
することができ、この化学的作用に基づいた応用が展開
されてきている。
【0031】エキシマレーザーを用いたアブレーション
加工は、例えば、ポリイミド等の微細加工のために孔を
開けるのに使用され、良好な形状の微細な孔の形成が可
能であることが報告されている。エキシマレーザーの応
用技術に関する文献としては、「O plus E」1
995年11月号、第64〜108頁の特集「実用期に
入ったエキシマレーザー」を挙げることができる。
【0032】本発明において、エキシマレーザーによっ
てリッジ型光導波路を形成する方法としては、次の三つ
の態様を挙げることができる。 (1)スポットスキャン加工。基板の裏面(他方の主
面)に対してレーザーの光軸が垂直となるように、スポ
ット状の光束を照射し、光束を一定方向に進行させる。
この結果、光束が通過した部分には溝が形成される。こ
うした方法であれば、加工後のエッチング加工によっ
て、加工堆積層を除去できる。また、スポット状の光束
の走査によって溝のパターンを形成しているので、任意
の平面的形状を有する肉薄部分を形成できる。
【0033】(2)一括転写加工。所定の転写パターン
を有するマスクを予め通過した光束を、基板の主面に直
接に照射し、光束を移動させることなく、所定の平面的
パターンの溝を形成する。こうした方法であれば、マス
クの平面的転写パターンを一括して基板上に転写してい
るので、加工能率が高く、かつ溝の平面的形状の再現性
が極めて良好である。ただし、大面積のレーザービーム
を発振させる必要があり、かつレーザービームを透過さ
せるためのマスクの作製精度を高くし、光学系の精度も
高くする必要がある。
【0034】(3)スリットスキャン加工。レーザー
を、細長いパターンのスリットを有するマスクに透過さ
せ、細長い長方形の平面的形状を有するレーザー光束を
得る。このスリット状の光束を、基板の裏面に照射し、
移動させる。この方法によれば、加工によって形成され
た溝の底面の形状が、特に滑らかになる。ただし、この
方法では、平面的に見て直線形状である溝しか形成でき
ない。
【0035】エキシマレーザーを使用したアブレーショ
ン加工法を使用した場合には、肉薄部分の裏面側の表面
(溝の底面)を平坦にする必要があるが、実際には1μ
m以下の精度での加工が可能であった。また、肉薄部分
の厚さも精密に制御する必要があるが、目標とする厚さ
に対して、0.5μm以下の精度での加工が可能であっ
た。こうした高精度での加工を実現するためには、レー
ザー干渉計によって肉薄部分の厚さを測定しながら、ア
ブレーション加工を行うことが好ましい。
【0036】また、高精度の機械加工によっても、前記
した肉薄部分を形成することが可能であった。この場合
には切削加工法が最も好ましい。また、機械加工装置と
しては、スライシング装置のZ方向の位置精度を向上さ
せたものを好ましく使用できる。また、好ましくは、切
削歯を備えた回転体を使用する。
【0037】図1(a)は、加工前の進行波形光変調器
1を示す斜視図であり、図1(b)は、変調器1を裏面
1b側から見た斜視図である。変調器の主面1a側に
は、マッハツェンダー型の光導波路2が形成されてい
る。光導波路2は、一対の側面1d間に延びるように、
かつ側面1cに対して略平行な方向へと向かって延びる
ように、形成されている。光導波路2は、入出力部分2
a、2f、分岐点2b、2eおよび一対の分岐部分2
c、2dを備えている。一方の分岐部分2dを挟むよう
に、一対の対向電極部分3、4が形成されており、各電
極部分は、図示しない電源に接続されている。
【0038】次いで、図2(a)に示すように、レーザ
ー5を他方の主面1b側の所定箇所に照射し、レーザー
を矢印Aで示すように移動させて走査する。この結果、
図2(b)に示すように溝7が形成されてくる。最終的
には、図3(a)に示すように、基板1の他方の主面1
b側に、電極部分3、4の領域内で、細長い溝7が形成
される。この溝7は、例えば図3(b)に示すように、
傾斜した側面7bと底面7aとを備えている。そして、
溝7が存在する領域には肉薄部分12が形成される。
【0039】図2(a)、(b)においては、スポット
スキャン方式によるアブレーション加工を図示したが、
これと同様の溝7を、一括露光方式やスリットスキャン
方式によって形成することができる。
【0040】次いで、レーザーによる露光方式を種々変
更した実施態様について、図4(a)、(b)、(c)
を参照しつつ、発明する。図4(a)は、焦点固定方式
を採用した場合の溝の形態を示す。図2(a)において
は、基板1の他方の主面1b側にレーザー5Aを照射
し、一回の露光で溝8を形成し、これによって肉薄部分
12Aを形成している。この際、溝8のうち、他方の主
面1bに近い部分では焦点が合うために、主面1bに対
して略垂直な面が形成される。しかし、溝8の底面に近
づくのにつれて、焦点のズレが大きくなり、主面1bに
垂直な面に対して、溝8の側面8aが傾斜してくる。こ
の方法は、焦点距離の長いレンズを使用した場合のみ、
実施可能であり、また高出力のレーザーが必要である。
【0041】図4(b)は、焦点を段階的に調節しなお
して、複数回の露光を行う方式を採用した場合の溝9の
形態を示す。例えば、5B、5C、および5Dで示すよ
うに、焦点を3回調節しなおして、露光を行ったものと
する。この方式によれば、主面1bに対して略垂直な側
面9aの深さを大きくすることができる。溝9によって
肉薄部分12Bが形成される。ただし、やはり底面9c
の近傍の側面9bは、主面1bに対して略垂直な面に対
して傾斜するので、肉薄部分12Bの厚さは不均一にな
り易い。
【0042】図4(c)は、焦点の平面的位置を変更し
て複数回露光を行う方式を採用した場合の溝10の形態
を示す。最初は、5Eのように広い範囲にわたって露光
し、溝10の中央部分10cおよび周縁部分10aを形
成する。ここで,10aと10cとの深さはほぼ同じで
あり、かつ10aおよび10cの深さは、図4(a)に
示す溝8よりも小さいので、10aの側面は、主面1b
に対してほぼ垂直になる。次いで、中央部分10cに対
して、再び露光5Eを行い、中央部分10dを形成す
る。中央部分10dによって肉薄部分12Cが形成され
ている。この方式によれば、溝10の中央部分10dの
底面を平坦にすることができるので、12Cの厚さを一
定に制御し易い。しかし、露光工程数が多くなり、ま
た、基板の10aの部分も肉薄になるために、基板の強
度が低下し易くなる。
【0043】図5は、図4(a)の方式によって形成し
た溝8の横断面の形態を示す光学顕微鏡写真である。図
6は、図4(b)の方式によって形成した溝9を斜め方
向から見た形態を示す、光学顕微鏡写真である。図7
は、図4(c)の方式によって形成した溝10を斜め方
向から見た形態を示す、光学顕微鏡写真である。
【0044】
【実施例】以下、更に具体的な実験結果を説明する。 (実施例1)Xカットした3インチウエハー(LiNb
3 単結晶)からなる基板の他方の主面(裏面)側を削
り、ウエハーの厚さを300μmとした。次いで、チタ
ン拡散プロセスとフォトリソグラフィー法とによって、
ウエハーの一方の主面に、図1に示すような形態の光導
波路2および電極部分3、4を形成し、マッハツェンダ
ー型の進行波形光変調器を作製した。ただし、本実施例
1においては、ウエハー状の基板に加工を施している。
【0045】この主面にレジスト膜をコーティングし、
エキシマレーザー加工機にセットし、基板のオリフラ面
を基準にして、加工位置の位置合わせを行った。KrF
エキシマレーザーを光源として使用し、スポットスキャ
ン方式によって露光し、他方の主面側を加工した。照射
したスポットのサイズが、走査方向1.0mm、幅0.
2mmとなり、照射エネルギー密度が6J/cm2 とな
るように光学系を調整した。パルス幅15nsec、パ
ルス周波数600Hz、走査速度0.1mm/sec
で、電圧印加部分の裏面側を加工し、溝7を形成した。
【0046】長さ20mmの溝を形成するのに要した時
間は200秒であった。図3(b)において、作製した
溝7の横断面の形状は台形であり、溝7の入口の幅bは
100μmであり、深さcは290μmであり、底面の
幅aは50〜60μmであり、肉薄部分12の厚さdは
10μmであった。こうして作製したウエハーをダイシ
ングソー加工機で切断し、各進行波形光変調器に分割
し、光導波路の端面を光学研磨した。
【0047】溝7を形成しなかった光変調器の光挿入損
失は、1.55μmの波長で約6dBであり、溝7を形
成した光変調器の光挿入損失は約6dBであった。ま
た、溝7を形成しなかった光変調器について、3dB帯
域幅を測定した結果、5GHzであり、溝7を形成した
光変調器の3dB帯域幅は、15GHzであった。さら
に、溝7を形成しなかった光変調器について、半波長電
圧を測定したところ3.5Vであり、溝7を形成した光
変調器の半波長電圧は、3.0Vであった。
【0048】(実施例2)実施例1と同様にして、マッ
ハツェンダー型の進行波形光変調器を作製した。このウ
エハー形状の基板の主面に、レジスト膜をコーティング
し、マイクログラインダー加工機にセットした。基板の
オリフラ面を基準にして、加工位置の位置合わせを行っ
た。砥石としては、レジン系ボンドのダイヤモンド砥石
であって、粗さが♯5000番の砥石を使用した。回転
数を30000rpmとし、砥石の送り速度を0.1m
m/秒とし、電圧印加部分の裏面側を加工し、溝7を形
成した。
【0049】長さ20mmの溝を形成するのに要した時
間は、約5分であった。図3(b)において、作製した
溝7の横断面の形状は長方形であった。溝7の入口の幅
bは80〜100μmであり、深さcは295μmであ
り、底面の幅aは80〜100μmであり、肉薄部分の
厚さは5μmであった。こうして作製したウエハーをダ
イシングソー加工機で切断し、各進行波形光変調器に分
割し、光導波路の端面を光学研磨した。
【0050】溝7を形成しなかった光変調器の光挿入損
失は、1.55μmの波長で約6dBであり、溝7を形
成した光変調器の光挿入損失は約6dBであった。ま
た、溝7を形成しなかった光変調器について、3dB帯
域幅を測定した結果、5GHzであり、溝7を形成した
光変調器の3dB帯域幅は、50GHzであった。さら
に、溝7を形成しなかった光変調器について、半波長電
圧を測定したところ3.5Vであり、溝7を形成した光
変調器の半波長電圧は、2.6Vであった。
【0051】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、相
対向する一対の主面を備えている基板と、この基板の一
方の主面側に形成されている光導波路と、電極部分とを
備えている光導波路デバイスにおいて、その動作速度を
向上させることができる。また、進行波形光変調器にお
いて、高速変調を可能にするのと共に、こうした進行波
形光変調器を、少ない工程数で製造できるようにし、高
精度の位置合わせを不要とし、加工ダメージによる加工
変質層の生成も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、マッハツェンダー型の進行波形光変
調器1を概略的に示す斜視図であり、(b)は、進行波
形光変調器1を他方の主面1b側から見た斜視図であ
る。
【図2】(a)は、図1(b)の変調器をレーザーの照
射によって加工している状態を概略的に示す斜視図であ
り、(b)は、この加工が進行した状態を示す斜視図で
ある。
【図3】(a)は、加工後の変調器8を示す斜視図であ
り、(b)は、溝7の周辺部分の横断面を示す断面図で
ある。
【図4】(a)は、焦点固定方式を採用した場合の溝の
形態を示す模式図であり、(b)は、焦点を段階的に調
節しなおして、複数回の露光を行う方式を採用した場合
の溝9の形態を示す模式図であり、(c)は、焦点の平
面的位置を変更して複数回露光を行う方式を採用した場
合の溝10の形態を示す模式図である。
【図5】図4(a)の方式によって形成した溝8の横断
面の形態を示す光学顕微鏡写真である。
【図6】図4(b)の方式によって形成した溝9を斜め
方向から見た形態を示す、光学顕微鏡写真である。
【図7】図4(c)の方式によって形成した溝10を斜
め方向から見た形態を示す、光学顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 加工前の進行波形光変調器 1a 一方の主面
1b他方の主面(裏面) 2 マッハツェンダー型
の光導波路 3、4 一対の対向電極部分 5、5
A、5B、5C、5D、5E レーザー 7、8、9
溝 12、12A、12B 肉薄部分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 加藤 賢治 愛知県名古屋市瑞穂区須田町2番56号 日 本碍子株式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】相対向する一対の主面を備えている基板
    と、この基板の一方の主面側に形成されている光導波路
    と、電極部分とを備えている光導波路デバイスであっ
    て、少なくとも前記電極部分の位置において前記基板に
    厚さが相対的に小さい薄肉部分が設けられていることを
    特徴とする、光導波路デバイス。
  2. 【請求項2】前記基板および前記光導波路が、ニオブ酸
    リチウム単結晶、タンタル酸リチウム単結晶およびニオ
    ブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶からな
    る群より選ばれた一種以上の単結晶によって形成されて
    いることを特徴とする、請求項1記載の光導波路デバイ
    ス。
  3. 【請求項3】前記肉薄部分の厚さが5μm以上、50μ
    m以下であることを特徴とする、請求項1または2記載
    の光導波路デバイス。
  4. 【請求項4】前記肉薄部分以外の前記基板の厚さが15
    0μm以上、1000μm以下であることを特徴とす
    る、請求項3記載の光導波路デバイス。
  5. 【請求項5】前記基板の方位がXカットもしくはYカッ
    ト方位であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか
    一つの記載の光導波路デバイス。
  6. 【請求項6】請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記
    載の光導波路デバイスを製造するのに際して、前記基板
    の他方の主面側から加工を施すことによって前記肉薄部
    分を形成することを特徴とする、光導波路デバイスの製
    造方法。
  7. 【請求項7】アブレーション加工法によって前記肉薄部
    分を形成することを特徴とする、請求項6記載の光導波
    路デバイスの製造方法。
  8. 【請求項8】機械加工によって前記肉薄部分を形成する
    ことを特徴とする、請求項6記載の光導波路デバイスの
    製造方法。
  9. 【請求項9】請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記
    載の光導波路デバイスを備えている進行波形光変調器で
    あって、前記基板が強誘電性の電気光学単結晶からな
    り、前記電極部分が、前記光導波路中を伝搬する光を変
    調するための電圧を印加するための一対の電極であり、
    かつ前記電極部分に対して電力を供給する電力供給装置
    を備えていることを特徴とする、進行波形光変調器。
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