JPH10130214A - グリシンの製造方法 - Google Patents

グリシンの製造方法

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JPH10130214A
JPH10130214A JP33311797A JP33311797A JPH10130214A JP H10130214 A JPH10130214 A JP H10130214A JP 33311797 A JP33311797 A JP 33311797A JP 33311797 A JP33311797 A JP 33311797A JP H10130214 A JPH10130214 A JP H10130214A
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裕児 松鵜
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Abstract

(57)【要約】 【課題】グリシン含有反応液の濃縮を2段で行い、しか
も二段目の気相部をパージして母液は反応工程へ循環す
ることで、高純度のグリシンを高単離収率で得る効率的
な循環プロセスを提供する。 【解決手段】グリコロニトリル、アンモニア、炭酸ガス
及び水を高温で反応させ、得られた反応液を濃縮して気
相部(アンモニア、炭酸ガスおよび水)を反応帯へ循環
し、液相部をさらに濃縮して気相部(ほとんど水からな
る)の一部をパージする。この濃縮液からグリシン結晶
を晶析して分離する。この残りの母液は反応帯へ循環す
る各工程からなるグリシンの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はグリコロニトリルか
らヒダントインを経由して直接グリシンを製造する方法
に関し、さらに詳しくは、グリコロニトリルとアンモニ
ア、炭酸ガスおよび水を反応させてグリシンを得る方法
に関する。グリシンは加工食品の食品添加剤や農薬、医
薬の原料として広く使用されている有用な化合物であ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、グリシンの製造方法としては、主
としてモノクロル酢酸のアミノ化法、ストレッカー法、
ヒダントイン法等が知られている。
【0003】ストレッカー法は青酸、ホルマリンからほ
ぼ定量的に合成できるグリコロニトリルとアンモニアを
反応させ、さらに水酸化ナトリウム等のアルカリで加水
分解してグリシンの金属塩をまず製造し、さらに硫酸等
の酸で脱塩してグリシンを製造する方法である。この方
法では硫酸ナトリウム等の加水分解後の中和塩の分離が
必要であり、また、その塩の処理が経済性を大きく損な
う。
【0004】一方、ヒダントイン法は青酸とホルムアル
デヒドから合成できるグリコロニトリルとアンモニア、
炭酸ガスを水の存在下に反応させ、ヒダントインを製造
し、その加水分解によりグリシンを製造する方法であ
る。加水分解において水酸化ナトリウム等のアルカリを
使用した場合にはストレッカー法と同様に硫酸ナトリウ
ム等の分離および処理が必要となる。このヒダントイン
法において、水酸化ナトリウム等のアルカリを使用しな
いで直接グリシンを得る方法(以下、ヒダントイン経由
直接法と言う)は硫酸ナトリウム等の副生を伴わず、公
害のない経済的なグリシンの製造方法である。
【0005】このようなヒダントイン経由直接法とし
て、例えば、シアン化水素とアルデヒドとアンモニアお
よび二酸化炭素を水溶媒中で100℃以上で加熱する方
法(USP3,536,726)、水媒体中シアン化水
素とホルムアルデヒドおよび炭酸アンモニウムを加熱す
る方法、(特開昭49−127915)、グリコロニト
リル、アンモニアおよび炭酸ガスを加熱しアンモニアと
炭酸ガスを除去した後、アルキルアミンあるいはアルキ
ルアンモニウムハイドロオキシドで処理する方法(特開
昭53−28115)、グリコロニトリル、アンモニア
および炭酸ガスを加熱しアンモニアと炭酸ガスを除去し
た後、鉱酸で処理して加水分解する方法(特開昭53−
28116)等が知られている。USP3,536,7
26においては反応液からグリシンの大部分を分離した
残液(以下母液と略記する)を反応帯へ循環する方法も
知られている。
【0006】しかしながら、これらの方法は主として反
応成績の向上に重点をおいたものであり、アンモニア、
炭酸ガスの分離方法や反応液の濃縮方法、母液の循環方
法までを含めたグリシン製造を工業的に実施する方法ま
でを提供するものではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らが検討した
ところによると、ヒダントイン経由直接法において、グ
リシンを分離するために、得られた反応液から未反応の
炭酸ガスおよびアンモニアを分離、濃縮するに際し、母
液を反応器へ循環して得られた反応液は単に加熱すると
生成したグリシンが変化し収率が大幅に低下するのみな
らず、水への溶解度が極めて小さい2,5-ジケトピペラジ
ン等の副生物が大幅に増加して、グリシンとの分離が実
質上不可能となることを我々は見い出した。
【0008】さらには、水を含有したグリコロニトリル
またはグリコロニトリル水溶液を使用することはグリコ
ロニトリルの分解を少なくし、着色物質への副反応も抑
制されることも我々は見い出している。しかして、本発
明の反応は化学量論的にはグリコロニトリル1モルと水
1モルからグリシン1モルが生成する反応であり、水を
消費する反応であるが、反応によって消費される水の量
は少ない。したがって、グリコロニトリルの分解を抑制
する等の点から好ましい供給形態である含水グリコロニ
トリルまたはグリコロニトリル水溶液を使用した場合、
その含水量にほぼ見合う量の水が過剰となり、系内に蓄
積する。すなわち、過剰分に相当する水を系内からパー
ジする必要がある。
【0009】しかしながら、単に炭酸ガスおよびアンモ
ニアを含有する水あるいはグリシンを分離した母液を系
外へパージする方法は経済的でないばかりか水以外に炭
酸ガス、アンモニアあるいは母液中の有機物を系外へパ
ージすることは公害上好ましくない。
【0010】したがって、アンモニア、炭酸ガスあるい
は有機物を実質的に廃棄せず、高純度のグリシンを高収
率で製造する方法は工業的にグリシンを製造するにあた
り不可避である。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らはヒダントイ
ン経由直接法グリシン製造における効果的に反応液を濃
縮し、高収率でグリシンを製造する方法について鋭意検
討を行った結果、本発明に到達した。即ち、本発明はグ
リコロニトリル、炭酸ガス、アンモニアおよび水を反応
温度100〜200℃、反応圧力20〜100kg/c
で30分〜20時間反応させてグリシンを製造する
方法において、a)該グリコロニトリル、炭酸ガス、アン
モニアおよび水を反応帯へ供給し、反応させてグリシン
を含有する反応液を得る反応工程、b)該反応液を濃縮
し、炭酸ガス、アンモニアおよび水からなる気相部と液
相部(一次濃縮液)を得る一次濃縮工程、c)該気相部を
上記反応帯へ循環する炭酸アンモニウム循環工程、d)該
一次濃縮液をさらに濃縮し、水を主成分とする気相部
と、液相部(二次濃縮液)を得る二次濃縮工程、e)水を
主成分とする気相部の少なくとも一部を系外へパージす
る水パージ工程、f)該二次濃縮液よりグリシン結晶を晶
析せしめ、グリシン結晶を含有するスラリーを得る晶析
工程、g)該スラリーを固液分離し、グリシン結晶と母液
に分離する分離工程、h)該母液の少なくとも一部を前記
反応帯へ循環する母液循環工程を含むことを特徴とする
グリシンの製造方法である。
【0012】本発明の方法で使用するグリコロニトリル
は、そのまま使用することができるが水溶液として使用
し、水の割合がある程度多い方がグリコロニトリルの自
己分解を抑制することができることから、合成反応にお
けるグリシン収率が高く、着色物質への副生反応も抑制
されて好ましいことを我々は見い出した。しかしなが
ら、水の含有量が多すぎると、反応後水を分離するエネ
ルギーを多く必要とし好ましくない。したがって、グリ
コロニトリル水溶液を使用する場合、グリコロニトリル
濃度は30〜70wt%程度が好ましい。このようなグ
リコロニトリル水溶液は青酸と含水ホルマリンを原料と
して製造される方法が最も一般的で経済的な製造方法で
あるが、ホルマリン源としてパラホルムアルデヒドを水
に溶解しても使用することができる。なお、グリコロニ
トリルの生成反応は速く、たとえば、青酸をガスの形態
でホリマリン水溶液に吹き込んだり、青酸を液の形態で
ホルマリン水溶液と混合するだけで容易にグリコロニト
リルが生成する。反応温度は0〜80℃、反応時間は2
分〜5時間も行えば充分である。また、グリコロニトリ
ルは安定剤として用いられている硫酸やリン酸等を含有
していても使用することができる。
【0013】本発明で用いるアンモニアおよび炭酸ガス
はこれらをそのまま使用してもよいが、反応条件下でこ
れらの化合物(アンモニアや炭酸ガス)を生成する当業
者間で公知の化合物、たとえば、炭酸アンモニウムや重
炭酸アンモニウムを使用してもよい。また、これらを混
合して使用しても好ましい結果が得られる。
【0014】本発明の方法で用いるアンモニアの使用量
はグリコロニトリルに対し、1〜12モル倍であり、好
ましくは4〜9モル倍の範囲である。アンモニアの使用
量が1モル倍未満では反応が遅くなり、12モル倍を越
えると反応速度は速くなるが、副生成物が増加し、ま
た、反応圧力も高くなり好ましくない。 炭酸ガスの使
用量はアンモニアに対し1/3〜3モル倍である。炭酸
ガスの使用量がこの範囲では反応速度が速いだけでな
く、反応圧力も低くなり好ましい。
【0015】本発明で用いる水の使用量はアンモニアに
対し5〜15モル倍である。水の使用量が 5モル倍未
満ではグリシンの選択率が悪くなり、一定純度のグリシ
ンを得るためにはグリシンの晶析率は極端に低下する。
叉、15モル倍を越えて使用するとグリシンの選択率は
向上するが反応液中のグリシン濃度が低下し、晶析のた
めの濃縮コストが増大するだけでなく反応器容積も大き
くなり経済的でない。
【0016】本発明における反応温度は、低い方がグリ
シンの収率は向上するが反応速度が遅くなる。通常、1
00〜200℃、好ましくは140〜180℃、更に好
ましくは150〜170℃である。また、反応時間は通
常30分〜20時間、好ましくは1〜10時間である。
【0017】本発明における反応圧力は、特に制限はな
く、反応中に発生する圧力以上で反応を行うことも、ま
た、反応中に発生するアンモニア、炭酸ガスあるいは溶
媒の蒸気等を適宜抜き出しても反応を行うことができる
が、通常は20〜100kg/cm2 である。
【0018】本発明の方法で得られる反応終了後のグリ
シンを含有する反応液中には原料のグリコロニトリルは
実質的に残存していないが、グリシンの他にヒダントイ
ン酸、グリシルグリシン、ヒダントイン酸アミド、トリ
グリシン、ヒダントイン、2,5-ジケトピペラジン等の副
生成物が含有されている。これらの反応液から後述の晶
析法等によりグリシンが分離される。さらに、分離した
あとの母液と共に含有されるこれら副生成物を水、グリ
コロニトリル、炭酸ガスおよびアンモニアからなる系の
反応を行う反応帯へ循環することによりグリシン収率は
大幅に向上する。これは、これら副生成物とグリシンが
反応中は平衡に存在し、上記母液をかかる反応を行う反
応帯(以下反応器という)へ循環すると晶析等により分
離・除去したグリシン量だけ平衡が副生成物からグリシ
ン側に移行するという我々が発見した新規な知見による
と考えられる。
【0019】したがって、この母液を反応器へ循環(以
下、母液循環法と言う)することにより、結晶として単
離されたグリシンのグリコロニトリルに対する単離収率
は75%以上にも大幅に向上することを見い出した。母
液を循環しない場合はワンパスのグリシン収率が高くて
も、それから実際に結晶として単離したグリシン単離収
率はせいぜい60%程度である。
【0020】すなわち、少なくとも、上述した副生成物
は本発明で規定する反応条件下でグリシンに変換可能で
あると考えられる。
【0021】上述の条件下で得られた反応液、好ましく
は、母液循環法で得られた反応液は50〜200℃程
度、10mmHg〜30kg/cm2 程度でフラッシュ
および/または加熱して水を気化させ反応液を濃縮す
る。この時、通常、アンモニアおよび炭酸ガスも気化し
て反応液と分離される。即ち、炭酸ガス、アンモニアお
よび水からなる気相部と液相部に分離される。なお、空
気あるいは窒素等の不活性ガスを50〜200℃程度、
10mmHg〜30kg/cm2 程度で吹き込み、炭酸
ガスおよびアンモニアをストリッピングする方法で反応
液と分離してもよい。しかし、これら以外の方法で分離
しても本発明の方法を限定するものではない。なお、反
応液の濃縮は10秒〜20時間、好ましくは1分〜10
時間程度行われる。
【0022】炭酸ガスおよびアンモニアの分離が不十分
であると、濃縮液を晶析してグリシンを分離する工程に
おいてこれらが炭酸アンモニウムとして析出してグリシ
ン結晶に付着する。この結果、着色した母液のグリシン
結晶への付着量は高純度のグリシン結晶の場合よりも多
くなり多量のリンス水を必要とする。したがって、濃縮
液中の炭酸ガスおよびアンモニアの残存濃度は炭酸アン
モニウムに換算して10wt%以下になるように濃縮するこ
とが好ましい。
【0023】濃縮温度が50℃未満では分離した炭酸ガ
スおよびアンモニアの凝縮温度が低くなり好ましくな
い。また、濃縮における気相部の熱源を有効に利用する
ためには濃縮温度としては80℃以上、好ましくは12
0℃以上である。しかし、濃縮温度が200 ℃を越え
ると分離時において濃縮液の着色が著しく促進される。
したがって、好ましい濃縮温度は50〜200℃、さら
に好ましくは80〜180℃である。
【0024】濃縮時に生成する2,5-ジケトピペラジン等
副生物の生成速度はグリシン濃度の影響は少ないが、濃
縮時の濃縮温度の影響を大きく受ける。このように濃縮
した反応液を冷却し、グリシンを晶析分離した残りの母
液を反応器へ循環することによりグリシンの単離収率を
大幅に向上させることができる。しかしながら、これら
副生成物と純粋なグリシンの水溶液を単に加熱して濃縮
しても2,5-ジケトピペラジン等への副生量は母液循環で
得られた反応液を単に加熱した場合に比べ充分少ないと
いう事実から、濃縮時の副生成物の大幅な増加は母液を
循環する事によって反応液へ蓄積した副生物が加熱・濃
縮時に変化したものと考えられる。
【0025】後述するようにこれらの反応液へ蓄積した
副生物は炭酸ガスおよびアンモニアの存在する反応条件
下ではそのほとんどがグリシンに変換可能な有効な成分
である。しかしながら、濃縮時に条件によってはグリシ
ンとの分離が困難な副生物が大幅に増加する。このよう
な反応条件下と濃縮条件下の決定的な相違は炭酸ガスお
よびアンモニアの存在量であり、これは濃縮時に生成し
た副生物を前述の反応条件下で反応を行うと濃縮前の組
成にもどるということで確認された。
【0026】本発明において、反応液から分離した炭酸
ガスおよびアンモニアを再使用することは経済的であ
る。気化した炭酸ガス、アンモニアおよび水を濃縮温度
以下の温度で冷却して凝縮させ、水溶液として回収し、
反応器へ循環することが好ましい。例えば、空気や窒素
等の不活性ガスを使用してアンモニアおよび炭酸ガスを
ストリッピングにより分離した場合、これらの不活性ガ
スは凝縮した炭酸ガスおよびアンモニア水溶液と容易に
分離することができ好都合である。
【0027】本発明の方法では反応液を濃縮して分離し
た炭酸ガスおよびアンモニアを反応器へ循環し、さらに
は、濃縮液からグリシンを分離した母液も反応器へ循環
することが好ましい。しかしながら、グリコロニトリル
の供給形態としてグリコロニトリル水溶液を使用するこ
とが好ましいが、前述したように、本反応はグリコロニ
トリルに対し水を1モルだけ消費する反応であるのでグ
リコロニトリルに同伴する水は消費量に対して過剰とな
る。
【0028】本発明の方法においては好ましくは反応液
の濃縮工程を二段階で行うことによりこの過剰の水をよ
り効果的に系外へパージすることができる。すなわち、
一段目の濃縮工程において、水の気化をなるべく抑制し
て反応液中の少なくとも80wt%以上のアンモニアお
よび80wt%以上の炭酸ガスおよび10〜90wt%
の水を気化させ炭酸ガス、アンモニアおよび水からなる
気相部と液相部(一次濃縮液)を得る(以下、一次濃縮
という)。次いで二段目の濃縮工程において、反応液を
さらに濃縮し、アンモニアおよび炭酸ガス含有量の少な
い水を主成分とする気相部と液相部(二次濃縮液)を得
る(以下、二次濃縮という)。
【0029】この一次濃縮時の気相部(アンモニア、炭
酸ガスおよび水)は反応器へ循環され、二次濃縮時の気
相部(ほとんど水からなる)のうち、少なくとも前述し
た過剰の水に相当する量以上の水を系外へパージする。
なお、一次濃縮および二次濃縮時の温度と時間は前述し
たように選択することが好ましい。
【0030】本発明の方法における一次濃縮は具体的に
は、まず、得られた反応液を段数、たとえば 2〜30
段を有する蒸留塔あるいはストリッパーを使用して50
〜200℃程度、10mmHg〜30kg/cm2 程度
で蒸留し、反応液中の少なくとも80wt%以上、好ま
しくは90wt%以上、より好ましくは95wt%、さ
らに好ましくは98wt%以上のアンモニアおよび炭酸
ガスを反応液から分離する。また、同時に反応液中の1
0〜90wt%の水を気化させ濃縮する。この場合、反
応液中の水は少なくとも前述した過剰の水の量以上を一
次濃縮液に残すだけで充分であり、水の気化を10wt
%未満に抑制することは無駄であるだけでなく蒸留塔の
装置が高価になり好ましくない。したがって、通常、反
応液中の水の10〜90wt%、好ましくは20〜80
wt%を気化させ、グリシン濃度を 5〜35wt%、
好ましくは8〜33wt%にすることが好ましい。反応
液からアンモニア、炭酸ガスおよび水を気化させる割合
は蒸留塔あるいはストリッパーの理論段等を調節するこ
とにより任意に制御することができる。これらの分離し
た炭酸ガスおよびアンモニアは反応器へ循環し、反応に
供される。
【0031】本発明における、一次濃縮をさらに濃縮す
る二次濃縮方法は具体的には一次濃縮と同様であるが、
アンモニア、炭酸ガスと水の気化割合を調節する必要が
ないため、一次濃縮で使用する装置よりも簡単な装置で
充分である。単に50〜200℃程度、10mmHg〜
30kg/cm2 程度でフラッシュおよび/または加熱
するだけでもよい。
【0032】このような方法により、通常、一次濃縮液
中の水の10〜90wt%、好ましくは15〜80%を
気化させ、グリシン濃度を10〜40wt%、好ましく
は15〜35wt%にする。この時に分離された気相部
の水は少なくとも前述の過剰の水に見合う量以上を系外
へパージする。さらに残りは晶析後の固液分離における
リンス水として、あるいはグリシンの溶解用の水等とし
て利用すればよい。なお、一次濃縮時に窒素等の不活性
ガスでストリッピングする方法を使用してもよい。
【0033】次いで、二次濃縮液を、例えば、0〜80
℃程度に冷却してグリシン結晶を析出させる。この濃縮
液からグリシンを析出させる方法は当業者間で公知の方
法で行われ、例えば、冷却晶析法、蒸発晶析法、真空晶
析法等の晶析法が工業的に好ましく使用される。また、
晶析時に同時に濃縮操作が伴う方法、例えば、蒸発晶析
法、真空晶析法等を使用した場合、この濃縮時の水を系
外へパージできるので、前述した二次濃縮工程とグリシ
ン晶析工程を同時に行うことも可能である。
【0034】この晶析により得られたスラリーは、次い
で、汎用の分離器を使用してグリシン結晶と母液とに固
液分離される。この時の晶析率は40wt%以上が好ま
しい。この晶析率が40wt%に満たないとリサイクル
する母液量が増大し、その結果反応器が大きくなり、ま
た、晶析に伴う濃縮コストが増し経済的でない。しか
し、晶析率40wt%以上においても純度95wt%以
上のグリシンが得られる。結晶を晶析分離して残った母
液は反応器へ循環される。この時の母液の循環率は少な
くとも40wt%以上、好ましくは60wt%以上、さ
らに好ましくは80wt%以上100wt%以下であ
る。
【0035】なお、メタノール等の粗溶媒を濃縮液に添
加して晶析することも可能である。この場合には母液中
のメタノールを蒸留して分離し、回収したメタノールは
再使用される。
【0036】本発明において、濃縮コストを軽減するた
めにも、通常行われている多重効用缶で順次濃縮を行
い、更に、本発明の方法による二次濃縮における気相部
を系外へパージする方法を用いればさらに好ましい結果
が得られる。
【0037】このようにして得られたグリシン結晶を水
に溶解してグリシン水溶液とし、具体的には、活性炭あ
るいはイオン交換樹脂あるいは活性白土等で処理するこ
とで脱色され、さらに同様に晶析(再晶析)することに
より、より無色の(色相の改善された)高品質なグリシ
ンを得ることができる。
【0038】本発明における脱色処理は、上記の活性
炭、イオン交換樹脂等が用いられ活性炭としてはその原
料が石炭系、ピッチ系等の鉱物であっても、あるいは、
椰子殻等の植物であっても使用することができる。ま
た、その形状が粉末あるいは粒状であっても使用するこ
とができる。このような活性炭は市販品として例えば、
白鷺C(武田薬品)、ツルミコ−ル HC−30(ツル
ミ)、CPG、CAL(東洋カルゴン)、A−BAG
(呉羽化学)等が挙げられる。
【0039】また、イオン交換樹脂としては強塩基性陰
イオン交換樹脂、中塩基性陰イオン交換樹脂、弱塩基性
陰イオン交換樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽
イオン交換樹脂、無交換基のイオン交換樹脂のいずれを
使用してもよい。また、イオン交換樹脂のイオン型は塩
型でもよいがOH型あるいはH型が好ましい。
【0040】イオン交換樹脂はたとえば市販品として、
レバチットM500、MP500、MP500A、アン
バ−ライトIRA401、IRA402、IRA402
BL、IRA400T、IRA430、IRA68、I
RA93、IR116、IRC84、ダイアイオンSA
10A、SA11A、SA20A、SA21A、PA3
06、PA308、PA312等である。
【0041】本発明の方法における活性炭あるいはイオ
ン交換樹脂による粗グリシン水溶液の処理は通常の方法
で行われる。
【0042】たとえば、活性炭あるいはイオン交換樹脂
を流通方式で使用した場合、これらを適当な円筒形の容
器へ充填し、脱色される液を連続的に流通する方法が一
般的である。充填方法はこれらが有効に使用されるよう
に充填することが好ましい。充填長さ/直径で2以上2
0以下の範囲である。また、処理速度はSV(液空間速
度)で0.1〜20(1/Hr-1)の範囲で行うのが好
ましい。しかしながら、この範囲外であっても本発明の
方法を限定するものではない。
【0043】本発明で脱色処理に使用するグリシン水溶
液の濃度は任意に選ぶことができるが、取扱上、5〜3
0wt%が好ましい。この濃度未満だと脱色後のグリシ
ン水溶液の濃縮の用役費が増大する。また、この濃度を
越えると処理中の結晶の析出を防止するための保温が必
要となる。
【0044】また、これらによる脱色温度は特に制限は
ないが、20〜80℃程度で実施した限りにおいてはそ
の脱色能力に差は認められなかった。従って、本発明の
方法における脱色はグリシン水溶液の濃度に応じて20
〜80℃の範囲で行えばよい。
【0045】本発明の方法では活性炭、イオン交換樹脂
を組み合わせて使用することにより脱色効果は更に向上
する。
【0046】このようにして脱色処理したグリシン水溶
液は前述した晶析等の当業者間で公知の方法で純度の高
いグリシンを得ることができる。
【0047】本発明の方法は回分式でも、また、半流通
式、あるいは、流通式でも行うことができる。
【0048】
【実施例】本発明の方法を実施例により詳細に説明す
る。
【0049】実施例1 内容積10リットルの管型反応器、それに続く内容積3
リットルの濃縮器および高さ1.5m、直径15cmの
炭酸ガス・アンモニア吸収塔からなる製造装置を使用し
た。グリコロニトリル5.18wt%、アンモニア9.
3wt%、炭酸ガス12.03wt%を含有する水溶液
を1時間あたり2220g反応器へ供給し、反応温度1
50℃、また、反応圧力32kg/cm2で反応を行っ
た。グリコロニトリルは50wt%水溶液の形態を使用
し、1時間あたりの供給量は2.01モル、また、原料
組成はH2O/NH3/CO2/グリコロニトリル=45
/6/3/1モル比、平均滞留時間は5時間に相当す
る。定常になった時に反応液を 100℃、2時間の滞
留時間で濃縮(一次濃縮)し、グリシン濃度が27wt
%になるように加熱用のスチームを調節して濃縮した。
この気相部を冷却し凝縮させ1時間あたり1780gの
初期供給用の炭酸ガスおよびアンモニアを含む水溶液を
回収した。炭酸ガスおよびアンモニアの回収率はそれぞ
れ98wt%以上であった。
【0050】一方、得られた1時間あたり 440gの
濃縮液(一次濃縮液)にはグリシンが 117.5g含
有されていた。この濃縮液をグリシン濃度が30wt%
になるように 120℃で滞留時間15分で濃縮(二次
濃縮)し、この二次濃縮液を5℃で冷却して1時間あた
りグリシン結晶68g(0.89mol、純度 98.
2%)を分離した。この二次濃縮時における気相部の水
は系外へパージした。残った母液を分析した結果、グリ
コロニトリルに換算して合計で1時間あたり0.97m
ol のヒダントイン酸、グリシルグリシン、ヒダント
イン酸アミド、2,5-ジケトピペラジン、ヒダントイン、
トリグリシンおよびグリシンが含有されていた。このよ
うにして初期供給用の母液を調製した。
【0051】次いで、グリコロニトリルに換算した場合
の供給組成が同じになるようにこの母液と50wt%グ
リコロニトリル水溶液および回収した炭酸ガスおよびア
ンモニアを含む水溶液を反応器へ供給した。すなわち、
この母液と50wt%グリコロニトリル水溶液118g
(1.04mol)および回収した炭酸ガスおよびアン
モニアを含む水溶液を反応器へ供給し得られた反応液を
連続的に濃縮器を用い、130℃で滞留時間10分でグ
リシン濃度が27wt%になるように濃縮(一次濃縮)
した。分離された気相部を冷却し凝縮させ1時間あたり
1780gの循環用の炭酸ガスおよびアンモニアを水溶
液として回収し、反応器へ循環した。
【0052】一方、得られた1時間あたり440gの濃
縮液(一次濃縮液)をグリシン濃度が30wt%になる
ようにさらに130℃、10分で濃縮(二次濃縮)し、
この気相部の水43gをパージし、この二次濃縮液を5
℃で冷却して1時間あたりグリシン67g(純度98.
4%)を分離した。この時得られた母液は全量反応器に
循環した。(なお、この母液の組成は上記初期供給用母
液組成とほぼ等しい。)この量はグリシン収率として8
5%に相当する。この操作を300時間行ったが、グリ
シンの単離収率は90%まで増加する傾向を示した。こ
れはグリシンと遅い平衡関係にあり、グリシンに変換可
能な副生成物の蓄積によるものと考えられる。
【0053】比較例1 実施例4において濃縮を一段で行った、すなわち、得ら
れた反応液を濃縮して、その気相部を冷却しそのまま反
応器へ循環した。回収液中のアンモニア濃度および炭酸
ガス濃度が大幅に低下した。したがって、新たに炭酸ア
ンモニウム水溶液を連続的に追加し、1時間あたり約6
0g、すなわち、単離したグリシンとほぼ同重量の炭酸
アンモニア水溶液を系外へパージして廃棄する必要があ
り、経済上および公害上、好ましくないことがわかる。
【0054】実施例2 実施例4においてこの80〜150時間に得られたグリ
シン結晶を水で溶解し、活性炭およびイオン交換樹脂で
脱色した結果、全く着色していないグリシン溶液が得ら
れた。さらにこれを濃縮・晶析し、着色のない純度99
%以上のグリシン結晶を得た。
【0055】
【発明の効果】本発明の方法を用いることにより、反応
系内に蓄積したグリシンに変換可能な化合物が濃縮時に
グリシンと分離困難な副生物になることが抑制でき、ま
た、効果的に不用な水をパージする経済的循環プロセス
が可能となり、ヒダントイン経由のグリシン製造を工業
的に極めて有利な方法に向上させたものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 加藤 寛 大阪府高石市高砂1丁目6番地三井東圧化 学株式会社 (72)発明者 日合 淳彦 大阪府高石市高砂1丁目6番地三井東圧化 学株式会社

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】グリコロニトリル、炭酸ガス、アンモニア
    および水を反応温度100〜200℃、反応圧力20〜
    100kg/cmで30分〜20時間反応させてグリ
    シンを製造する方法において、 a)該グリコロニトリル、炭酸ガス、アンモニアおよび水
    を反応帯へ供給し、反応させてグリシンを含有する反応
    液を得る反応工程、 b)該反応液を濃縮し、炭酸ガス、アンモニアおよび水か
    らなる気相部と液相部(一次濃縮液)を得る一次濃縮工
    程、 c)該気相部を上記反応帯へ循環する炭酸アンモニウム循
    環工程、 d)該一次濃縮液をさらに濃縮し、水を主成分とする気相
    部と、液相部(二次濃縮液)を得る二次濃縮工程、 e)水を主成分とする気相部の少なくとも一部を系外へパ
    ージする水パージ工程、 f)該二次濃縮液よりグリシン結晶を晶析せしめ、グリシ
    ン結晶を含有するスラリーを得る晶析工程、 g)該スラリーを固液分離し、グリシン結晶と母液に分離
    する分離工程、 h)該母液の少なくとも一部を前記反応帯へ循環する母液
    循環工程、 を含むことを特徴とするグリシンの製造方法。
  2. 【請求項2】請求項1記載のg)分離工程で得られたグリ
    シン結晶を水に溶解し、脱色することを特徴とするグリ
    シンの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2005162649A (ja) * 2003-12-02 2005-06-23 Asahi Kasei Chemicals Corp グリシンの製造方法
CN1305836C (zh) * 2003-10-14 2007-03-21 重庆三峡英力化工有限公司 甘氨酸的制备方法

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