JPH10128228A - 樹脂成形体の塗膜の剥離及び分離方法 - Google Patents

樹脂成形体の塗膜の剥離及び分離方法

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JPH10128228A
JPH10128228A JP3453997A JP3453997A JPH10128228A JP H10128228 A JPH10128228 A JP H10128228A JP 3453997 A JP3453997 A JP 3453997A JP 3453997 A JP3453997 A JP 3453997A JP H10128228 A JPH10128228 A JP H10128228A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ほぼ完全に塗膜を分離することができ、安価
で、繰り返し用いることが可能で、人体に害を及ぼすお
それのない樹脂成形体の塗膜の除去方法を提供する。 【解決手段】 表面に塗膜を有する樹脂成形体を、界面
活性剤を含有する水溶液、界面活性剤、界面活性剤を含
有するオイル、オイルのいずれかに浸漬させ、105〜
180℃で3分以上加熱処理する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂成形体の樹脂
の表面に形成された塗膜を剥離及び分離させる方法に関
する。特に、自動車のバンパーやグリル部分等の材料と
して用いられているポリプロピレン等の樹脂の耐候性や
装飾性を向上させるために塗装された塗膜は、樹脂から
剥がれにくく、樹脂のリサイクルの際の障害となってい
るため、このような塗膜を簡易に剥離及び分離させる方
法を提供する。
【0002】
【従来の技術】塗膜の付着した樹脂を再利用することに
は、次のような問題点、すなわち、(1)種々の色彩を
もつ塗膜に由来する粒状物質が樹脂中に点在することと
なり、リサイクルされた成形品の外観が悪化する、
(2)リサイクルされた成形品の表面が、塗膜に由来す
る粒状物質によってザラザラになり、光沢性が低下す
る、(3)リサイクルされた成形品中の塗膜に由来する
粒状物質がノッチ効果となり、物性が低下する、(4)
自動車部品の中でも高い物性(強度等)が要求される部
分には、リサイクル材を用いることができない、等の問
題点がある。特に物性については、バージン材と比べ
て、耐衝撃性(アイゾット衝撃値)が約50%に、引張
破壊伸びが約30%に低下することが知られている。
【0003】そこで、樹脂成形体の表面から塗膜を剥離
させる技術が検討されている。例えば、溶融濾過法、ブ
ラスト法、加水分解法、有機溶剤法、アルコール・有機
塩法等が、塗膜の剥離方法としてこれまで研究されてき
た。
【0004】溶融濾過法は、塗膜の付着した樹脂を加熱
・溶融し、液状となった樹脂と固体のままの塗膜とを、
金網で濾過して分離する方法である。この方法は、金網
が目詰まりしやすいため、効率が低いという欠点があ
る。
【0005】ブラスト法は、高速・高圧で射出された粉
体または水によって塗膜の表面に衝撃を加えると同時に
研削して、塗膜を剥離させて除去する方法である。この
方法は、剥離の効率が低く、また、対象物の表面に凹凸
があると、剥離が困難であるという欠点がある。
【0006】加水分解法は、塗膜の付着した樹脂を高温
の酸またはアルカリ水溶液中に投入し、熱硬化性樹脂塗
膜を酸またはアルカリを触媒として加水分解して除去す
る方法である。この方法は、酸またはアルカリの中和工
程が必要である等の欠点がある。特開平5−18502
4号公報には、ポリウレタン系塗料の塗膜を、加熱した
メタノールの水酸化ナトリウム飽和溶液に浸漬して、全
体を攪拌する技術が開示されている。
【0007】有機溶剤法は、有機溶剤中で塗膜を膨潤さ
せて接着界面を破壊することにより、塗膜を剥離させる
方法である。この方法は、有機溶剤の回収工程が必要で
あり、また、リサイクル材中に有機溶剤が残存する等の
問題点がある。
【0008】アルコール・有機塩法は、水とエタノール
と有機塩とからなる塗膜分解剤中に塗膜を投入し、有機
塩イオンを触媒として化学的に分解して除去する方法で
ある。対象塗膜は、メラミン樹脂である。この方法は、
分解剤の回収工程が必要である等の問題点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来の技
術には、低効率、複雑な工程、使用する薬品の安全面で
の懸念、排液処理の必要性、高コスト等の問題点があ
り、まだ実用化されるに至っていない。本発明の目的
は、従来の技術と比べて、高効率かつ低コストであり、
複雑な工程を要しない塗膜の剥離及び分離方法を提供す
ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の樹脂成
形体の塗膜の剥離及び分離方法は、表面に塗膜を有する
樹脂成形体を、液体中に浸漬させ、105〜180℃で
3分以上加熱処理することを特徴とする。請求項2に記
載の樹脂成形体の塗膜の剥離及び分離方法は、請求項1
に記載の方法であって、上記液体が、界面活性剤を含有
する水溶液からなることを特徴とする。請求項3に記載
の樹脂成形体の塗膜の剥離及び分離方法は、請求項1に
記載の方法であって、上記液体が界面活性剤からなるこ
とを特徴とする。請求項4に記載の樹脂成形体の塗膜の
剥離及び分離方法は、請求項1に記載の方法であって、
上記液体が、界面活性剤を含有するオイルからなること
を特徴とする。
【0011】請求項5に記載の樹脂成形体の塗膜の剥離
及び分離方法は、請求項1に記載の方法であって、上記
液体がオイルからなることを特徴とする。請求項6に記
載の樹脂成形体の塗膜の剥離及び分離方法は、請求項1
〜請求項5のいずれかに記載の方法であって、上記加熱
処理と同時に、または加熱処理の後に、攪拌処理を行な
うことを特徴とする。請求項7に記載の樹脂成形体の塗
膜の剥離及び分離方法は、請求項2〜請求項4のいずれ
かに記載の方法であって、上記界面活性剤が、ポリオキ
シアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン
アルキルアリールエーテル、及びそれらのリン酸エステ
ルまたは硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキル
エステルの中から選ばれる一種以上であることを特徴と
する。請求項8に記載の樹脂成形体の塗膜の剥離及び分
離方法は、請求項4または請求項5に記載の方法であっ
て、上記オイルがシリコンオイルであることを特徴とす
る。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明で用いられる樹脂成形体の
材質としては、例えば、変性ポリプロピレン、オレフィ
ン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。こ
のうち、変性ポリプロピレンは、例えばポリプロピレン
をエチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)
で変性したものであり、また、オレフィン系熱可塑性エ
ラストマーは、ハードセグメントがポリエチレンやポリ
プロピレンから成り、ソフトセグメントがEPDMから
成る熱可塑性のエラストマーである。
【0013】塗膜としては、例えば、ウレタン塗料等を
挙げることができる。具体的には、ポリオレフィン系樹
脂成形体の表面に酸変性塩素化ポリオレフィン系下塗り
塗料およびポリウレタン系上塗り塗料を多層に分けて塗
布したものや、ポリオレフィン系樹脂成形体の表面に酸
変形塩素化ポリオレフィン系下塗り塗料/ポリウレタン
系塗料の2成分をブレンドまたは化学的に結合した塗料
を塗布したものを挙げることができる。また、上塗り塗
料としてメラミン、アルキド、水性塗料等を塗布しても
よい。塗膜の厚さは、任意であるが、概ね30〜50μ
mである。例えば、自動車のバンパーにウレタン塗料を
塗布する場合、約30μm程度である。
【0014】本発明で用いられる液体は、樹脂成形体の
樹脂を、腐食させずに膨潤または溶解させることのでき
るものであればよい。好ましくは、常圧で沸点が100
℃以上であり、180℃の高温でも変性しない液体であ
る。また、液体は、樹脂と塗膜の間の比重を有するもの
であれば、液体中で容易に樹脂と塗膜が分離するため、
好ましい。本発明で用いられる液体として、例えば、界
面活性剤を含有する水溶液、界面活性剤からなる液体、
界面活性剤を含有するオイル、オイルからなる液体を挙
げることができる。
【0015】界面活性剤を含有する水溶液としては、例
えば、ウレタン塗料からなる塗膜を剥離させる場合、ポ
リオキシアルキレンアルキルエーテルまたはポリオキシ
アルキレンアルキルアリールエーテルまたはそれらのリ
ン酸エステルまたは硫酸エステルを主成分とした0.0
01重量%以上の濃度の水溶液、ポリオキシエチレンラ
ウレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル(H
LBは9.5くらいの低いもの)を主成分とした0.0
01重量%以上の濃度の水溶液等が好ましく用いられ
る。なお、界面活性剤は、塗膜の種類に応じて選択され
る。
【0016】上記ポリオキシアルキレンアルキルエーテ
ルまたはポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテ
ルの化学式は、RO(CH2 CH2 O)n H(Rはアル
キルの炭素数が1〜20のアルキルまたはアルキルアリ
ール基であり、nは1〜10の整数である。)で表され
る。上記ポリオキシアルキレンアルキル(またはアルキ
ルアリール)エーテルのリン酸エステルの化学式は、R
O(CH2 CH2 O)n PO(OR’)(OH)(Rは
アルキルの炭素数が1〜20のアルキルまたはアルキル
アリール基であり、nは1〜10の整数であり、R’は
水素原子またはR(CH2 CH2 O)n で表される。)
で表される。
【0017】上記ポリオキシアルキレンアルキル(また
はアルキルアリール)エーテルの硫酸エステルの化学式
は、RO(CH2 CH2 O)n SO2 (OR’)(Rは
アルキルの炭素数が1〜20のアルキルまたはアルキル
アリール基であり、nは1〜10の整数であり、R’は
水素原子またはR(CH2 CH2 O)n で表される。)
で表される。
【0018】ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエ
ーテルのリン酸エステルは、例えば、「プライサーフA
210G」(第一工業製薬株式会社製)の商品名で、ポ
リオキシエチレンアルキルエーテルおよびアルキルエー
テルの硫酸エステルナトリウムの混合体は、「ナテラ」
(ライオン油脂株式会社製)の商品名で、ポリオキシエ
チレンラウリルエーテルの硫酸エステルは、「モア」
(花王株式会社製)の商品名で、各々市販されている。
なお、上記「ナテラ」は、水を含有するため、オイルと
混合して用いることはできない。ポリオキシエチレンラ
ウレート(HLBが9.5)は、「ニッサン・ノニオン
L−2」の商品名で市販されている。
【0019】水溶液中の界面活性剤の濃度は、0.00
1〜10重量%程度であり、好ましくは0.01〜3重
量%である。0.001重量%未満では、処理時間を1
50分としても塗膜の剥離が不十分であり、150分以
上処理すると大量処理するのに非効率であり、好ましく
ない。10重量%を超えても、剥離効果(時間、剥離
率)は、10重量%の場合と変わらない。界面活性剤の
コストの低減及び廃水処理の点から10重量%未満とす
るのが望ましい。
【0020】界面活性剤からなる液体としては、例え
ば、ウレタン塗料からなる塗膜を剥離させる場合、ポリ
オキシアルキレンアルキルフェニルエーテルのリン酸エ
ステル等が好ましく用いられる。
【0021】界面活性剤を含有するオイルとしては、例
えば、ウレタン塗料からなる塗膜を剥離させる場合、ポ
リオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルのリン酸
エステル等を含有するオイルが好ましく用いられる。オ
イルとしては、シリコンオイル等を用いることができ
る。シリコンオイルは、難燃性であるため、好ましい。
【0022】シリコンオイルとしては、引火点が300
℃以上で、比重が0.960〜0.970で、熱に安定
で、不揮発性のものが用いられる。例えば、東レ株式会
社製の「SRX−310」(引火点:300℃以上、比
重(25℃):0.968、粘度:100cSt、無色
透明)、東芝株式会社製の「YF−33」(引火点:3
00℃以上、比重(25℃):0.960、粘度:10
0cSt、茶褐色)、信越化学工業株式会社製の「KF
−96」(引火点:300℃以上、比重(25℃):
0.960〜0.970、粘度:100±5cSt、茶
褐色)等の市販のシリコンオイルを用いることができ
る。オイル中に界面活性剤を混入させることによって、
塗膜の剥離及び分離後に、樹脂に付着したオイルを容易
に洗浄することができる。
【0023】オイル中の界面活性剤の濃度は、好ましく
は0.5〜100重量%、より好ましくは5〜30重量
%である。含有率が0.5重量%未満であると、樹脂に
付着したオイルの除去が困難となる。オイルからなる液
体としては、上記界面活性剤を含有するオイルで用いら
れるオイルと同様のオイルが用いられる。
【0024】本発明の方法は、まず、廃材の成形体(例
えば、自動車のバンパー)を回収し、これを3mm角以
上に粗粉砕または大きく切断する。成形体をそのまま用
いることもできるが、その場合には刃物やレーザー光線
等によって塗膜にメッシュ状に切り傷を付け、剥がれ易
くしておく。
【0025】界面活性剤を含有する水溶液等の液体を調
製し、この液体に成形体を完全に浸るように入れ、10
5〜180℃で、3分以上、処理する。界面活性剤を含
有する水溶液を用いる場合、加熱温度は、好ましくは1
20〜160℃、より好ましくは145〜155℃であ
り、加熱時間は、好ましくは10〜90分、より好まし
くは15〜40分である。加熱の際、オートクレーブ等
で加圧する必要がある。水溶液の攪拌を行う場合には、
処理効率が高まるため、好ましい処理時間は10〜30
分である。
【0026】界面活性剤からなる液体を用いる場合、加
熱温度は、30〜180℃、好ましくは50〜160
℃、より好ましくは70〜100℃であり、加熱時間
は、1分以上、好ましくは5〜150分、より好ましく
は30〜60分である。常圧で加熱することが可能であ
り、オートクレーブ等は必要でない。バッチ式に限定さ
れず、連続運転が可能である。界面活性剤の攪拌を行う
場合には、処理効率が高まるため、好ましい処理時間は
5〜60分(プライサーフを用いた場合は5分、ニッサ
ンノニオンを用いた場合は60分)である。
【0027】界面活性剤を含有するオイルを用いる場
合、加熱温度は、30℃以上、好ましくは70〜160
℃、より好ましくは140〜155℃であり、加熱時間
は、1分以上、好ましくは5〜150分、より好ましく
は10〜15分である。常圧で加熱することが可能であ
り、オートクレーブ等は必要でない。バッチ式に限定さ
れず、連続運転が可能である。界面活性剤を含有するオ
イルの攪拌を行う場合には、処理効率が高まるため、好
ましい処理時間は5〜15分である。
【0028】オイルからなる液体を用いる場合、加熱温
度は、50℃以上、好ましくは70〜160℃、より好
ましくは140〜155℃であり、加熱時間は、1分以
上、好ましくは1〜150分、より好ましくは10〜1
5分である。常圧で加熱することが可能であり、オート
クレーブ等は必要でない。バッチ式に限定されず、連続
運転が可能である。オイルの攪拌を行う場合には、処理
効率が高まるため、好ましい処理時間は5〜15分であ
る。
【0029】液体を攪拌するには、例えば、1リットル
容量の処理タンクの液体中に直径5〜10cm程度のプ
ロペラを設置し、5rpm以上、好ましくは300〜5
00rpmで回転させる。攪拌しないと、液面から飛び
出た成形体の部分が処理されずに残るおそれがあり、攪
拌することによって、樹脂成形体の表面をまんべんなく
処理することができる。また、攪拌すると、粗粉砕され
た樹脂どうしがこすれあって、塗膜の剥離を促進した
り、樹脂の凹凸の中に入り込んだ塗膜が液流や摩擦によ
って剥離するという効果がある。
【0030】攪拌は、加熱処理後に行ってもよいが、加
熱処理と同時に行うのが効率的である。樹脂と塗膜の間
の比重を有する液体を用いた場合、攪拌処理後に静置す
ると、液体より比重の小さな樹脂は液体の上部に浮き、
液体より比重の大きな塗膜は液体の下部に沈むため、特
別な操作を加えることなく、両者を分離することができ
る。
【0031】自然冷却後、樹脂及び塗膜を回収する。界
面活性剤からなる液体を用いる場合、樹脂の回収の際、
界面活性剤の温度が下がり過ぎると、粘度が高くなり、
回収しづらいため、50℃以上で回収することが好まし
い。回収した樹脂を水洗し、その後、乾燥させる。乾燥
させた樹脂は、溶融させて押し出し切断し、ペレットと
してリサイクル用原料とする。
【0032】以上の操作によって、塗膜をほぼ100%
剥離させることができる。図1に、樹脂成形体の切断物
を処理する場合(A)と、粉砕物を処理する場合(B)
の処理の工程を示す。(A)に示すように、容器2中の
液体(界面活性剤を含有する水溶液)6に、塗膜3と樹
脂4からなる樹脂成形体5を浸漬させた後、蓋1で密封
し、オートクレーブ等で処理すると、塗膜3と樹脂4が
分離する。(B)は、粉砕物とした樹脂成形体7を用い
た場合の工程を示し、オートクレーブ等で処理すると、
塗膜8と樹脂9に分離する。液体として、界面活性剤、
界面活性剤を含有するオイル、オイルのいずれかを用い
た場合、蓋1で密封する必要はない。
【0033】図2に、攪拌しながら処理する場合の工程
を示す。容器11中の液体14には、粉砕物とした樹脂
成形体13が浸漬されると共に、攪拌子12で液体14
が攪拌されている。これをオートクレーブ等で処理する
と、樹脂成形体13は、塗膜16と樹脂15に分離され
る。
【0034】
【実施例】以下の実施例は、全て、樹脂成形体の樹脂が
変性ポリプロピレン(比重0.93)で、塗膜がウレタ
ン塗料(比重1.8)の例である。実施例1 実施例1は、界面活性剤を含有する水溶液を用いた例で
ある。自動車(普通自動車と軽自動車が半々位)のポリ
プロピレン製バンパー(変性ポリプロピレンからなる樹
脂にウレタン塗料を塗装したもの)の廃材を約5mm径
に粉砕したものを「プライサーフA210G」(商品
名、第一工業製薬株式会社製;比重1.11)の1%水
溶液(温度121℃)中に入れ、時間の経過によるウレ
タン塗料の塗膜の剥離の状態を観察した。その結果を表
1に示す。
【0035】実施例2 実施例2は、界面活性剤を含有する水溶液を用いた例で
ある。自動車(主に普通自動車)のポリプロピレン製バ
ンパー(変性ポリプロピレンからなる樹脂にウレタン塗
料を塗装したもの)の廃材を3×5cmに切断したテス
トピースをプライサーフA210G(第一工業製薬株式
会社製)の1%水溶液(温度121℃)中に入れ、時間
の経過によるウレタン塗料の塗膜の剥離の状態を観察し
た。その結果を表1に示す。なお、テストピースとして
8×10cmに切断したものを用い、塗膜の表面に2〜
3cmの格子状の傷を付けた他は、実施例2と同様に実
験したところ、30分で完全に剥離した。このことか
ら、格子状に傷を付けると効果的であることがわかる。
【0036】実施例3 実施例3は、界面活性剤を含有する水溶液を用いた例で
ある。自動車(主に軽自動車)のポリプロピレン製バン
パー(変性ポリプロピレンからなる樹脂にウレタン塗料
を塗装したもの)の廃材を3×5cmに切断したものを
プライサーフA210G(第一製薬工業株式会社製)の
1%水溶液中に入れ、時間の経過によるウレタン塗料の
塗膜の剥離の状態を観察した。その結果を表1に示す。
なお、テストピースとして8×10cmに切断したもの
を用いた他は実施例3と同様に実験した場合であって
も、15分経過時に完全に剥離した。
【0037】
【表1】 ×:剥離しないか、または一部剥離したものの塗膜が残
留した。 ○:完全に剥離した。 △:完全には剥離できないことがある。但し、指で塗膜
を引き剥がせば、完全に剥離する。
【0038】バージン材、本発明の方法で塗膜を剥離し
た後の樹脂成形体、塗膜の付着した樹脂成形体を、各々
溶融させてペレットとし、成形品を得たときの各物性
を、バージン材を100とした相対値で表2に示す。但
し、引張破壊伸びは、バージン材(400%以上)と比
べた値を示す。
【0039】
【表2】
【0040】実施例4 実施例4は、界面活性剤を含有する水溶液を用いた例で
ある。自動車(普通自動車8割と軽自動車2割)のポリ
プロピレン製バンパー(変性ポリプロピレンからなる樹
脂にウレタン塗料を塗装したもの)の廃材を3mm角以
上の大きさに切断したものを合計量で400ml程度
(重量で200g程度)、プライサーフA210G(第
一工業製薬株式会社製)の1%水溶液(温度121℃)
400ml中に入れた。これを直径7cmの攪拌子(プ
ロペラ)で400rpmで20分間攪拌したところ、ほ
ぼ100%塗膜を剥離させることができた。
【0041】実施例5 実施例5は、界面活性剤からなる液体を用いた例であ
る。200ミリリットルのビーカーに「プライサーフA
210G」(第一製薬工業株式会社製)50ミリリット
ルと樹脂成形体粉砕品10gを入れ、加熱機能付きスタ
ーラーで攪拌しながら、加熱した。温度が上昇し、13
0℃となったときに塗膜の一部が剥離し始め、145℃
で完全に剥離した。剥離後、攪拌を止めると、樹脂は上
部に浮き、塗膜はビーカーの底に沈澱した。樹脂を回収
し、水洗した後、乾燥させた。
【0042】なお、加熱の温度が158℃に達すると、
樹脂が溶融し、一度剥離した塗膜を包み込んでしまう。
したがって、加熱温度は、100〜158℃、好ましく
は130〜155℃とする必要がある。また、塗膜を剥
離させた樹脂を回収する際、界面活性剤の温度が下がり
過ぎると、粘度が高くなり、回収しづらくなるため、5
0℃以上の温度で回収することが望ましい。
【0043】実施例6 実施例6は、シリコンオイルからなる液体を用いた例で
ある。200ミリリットルのビーカーに、シリコンオイ
ル(信越化学工業株式会社製KF−96)50ミリリッ
トルと樹脂成形体の粉砕品10gを入れ、加熱機能付き
スターラーで攪拌しながら加熱した。温度を上昇させる
と、135℃で塗膜の一部が剥離し始め、145℃で完
全に剥離した。温度を140〜145℃に保った状態
で、更に粉砕品を5g加えたところ、1分以内に塗膜が
剥離した。攪拌を止めると、樹脂は上部に浮き、塗膜は
ビーカーの底に沈澱した。樹脂を回収し、付着したシリ
コンオイルを、界面活性剤及び希釈したエタノールで洗
浄した。なお、加熱の温度が158℃に達すると、樹脂
が溶融し、一度剥離した塗膜を包み込んでしまうため、
温度が上がり過ぎないように注意する必要がある。
【0044】実施例7 実施例7は、界面活性剤を含有するオイルを用いた例で
ある。200ミリリットルのビーカーに、シリコンオイ
ル(信越化学工業株式会社製KF−96)50ミリリッ
トル、界面活性剤(プライサーフA210G、第一製薬
工業株式会社製)10ミリリットル、樹脂成形体の粉砕
品10gを入れ、加熱機能付きスターラーで攪拌しなが
ら加熱した。温度を上昇させると、135℃で塗膜の一
部が剥離し始め、145℃で完全に剥離した。温度を1
40〜145℃に保った状態で、更に粉砕品を5g加え
たところ、1分以内に塗膜が剥離した。攪拌を止める
と、樹脂は上部に浮き、塗膜はビーカーの底に沈澱し
た。樹脂を回収し、付着したシリコンオイルを、界面活
性剤及び希釈したエタノールで洗浄した。界面活性剤を
含有しないオイルを用いた実施例6と比べて、オイルの
除去が容易であった。
【0045】
【発明の効果】本発明の処理方法によって、塗膜は10
0%分離され、除去される。また、本方法で用いる液体
は、安価で、熱に安定であるため繰り返し用いることが
でき、不揮発性であるため人体に安全である。さらに、
本発明の処理方法によって得られる樹脂は、薬品によっ
て変性されず、バージン材と同等の物性をもつ材料とし
て、高い物性を要求される部品用に再利用することがで
きる。また、加熱処理時に液体を攪拌することによっ
て、剥離の効率が高まり、界面活性剤の使用量の節減や
処理時間の短縮を図ることができる。
【0046】液体として、オイルまたは界面活性剤また
はそれらの混合物を用いた場合、常圧で所定の温度に到
達させることができるため、オートクレーブ等の装置を
用いる必要がなく、連続運転が可能である。特にシリコ
ンオイルは、300℃までの高温に安定であり、常圧で
158℃の温度に達し得る。また、シリコンオイルは、
界面活性剤よりも粘度が小さいため、20℃以下の温度
でも容易に樹脂を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】樹脂成形体が樹脂と塗膜に分離する前後の状態
を示す図である。
【図2】液体の攪拌工程を示す図である。
【符号の説明】
1 蓋 2 容器 3 塗膜 4 樹脂 5 樹脂成形体 6 液体 7 樹脂成形体 8 塗膜 9 樹脂 11 容器 12 攪拌子 13 樹脂成形体 14 液体 15 樹脂 16 塗膜

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に塗膜を有する樹脂成形体を、液体
    中に浸漬させ、105〜180℃で3分以上加熱処理す
    ることを特徴とする樹脂成形体の塗膜の剥離及び分離方
    法。
  2. 【請求項2】 上記液体が、界面活性剤を含有する水溶
    液からなる請求項1に記載の樹脂成形体の塗膜の剥離及
    び分離方法。
  3. 【請求項3】 上記液体が界面活性剤からなる請求項1
    に記載の樹脂成形体の塗膜の剥離及び分離方法。
  4. 【請求項4】 上記液体が、界面活性剤を含有するオイ
    ルからなる請求項1に記載の樹脂成形体の塗膜の剥離及
    び分離方法。
  5. 【請求項5】 上記液体がオイルからなる請求項1に記
    載の樹脂成形体の塗膜の剥離及び分離方法。
  6. 【請求項6】 上記加熱処理と同時に、または加熱処理
    の後に、攪拌処理を行なう請求項1〜請求項5のいずれ
    かに記載の樹脂成形体の塗膜の剥離及び分離方法。
  7. 【請求項7】 上記界面活性剤が、ポリオキシアルキレ
    ンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルア
    リールエーテル、及びそれらのリン酸エステルまたは硫
    酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエステルの
    中から選ばれる一種以上である請求項2〜請求項4のい
    ずれかに記載の樹脂成形体の塗膜の剥離及び分離方法。
  8. 【請求項8】 上記オイルがシリコンオイルである請求
    項4または請求項5に記載の樹脂成形体の塗膜の剥離及
    び分離方法。
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