JPH10119417A - インクジェット用記録シート - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 染料インクだけではなく顔料インクをも定着
させることができ、インク吸収能力が高く、印字部と非
印字部とで光沢感に差を生じさせないインクジェット用
記録シートを提供する。 【解決手段】 本発明のインクジェット用記録シート
は、インクジェットプリンタにより印字をするシートに
おいて、基材シート１上に無機質フィラーを主成分とす
るインク浸透層２が設けられ、インク浸透層２上に水溶
性樹脂を主成分とするインク膨潤層３が設けられたもの
である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はインクジェットプリ
ンタによる画像、文字を記録でき、特に多色記録に適し
ているインクジェット用記録シートに関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】インクジェットによる記録は、インクの
微細な液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙等の記
録シートに付着させ、画像や文字の記録を行うものであ
る。その記録装置は、高速、低騒音、多色化が容易で記
録パターンの融通性が大きく、さらに現像、定着が不要
なので、漢字を含め各種図形およびカラー画像等の記録
装置として急速に普及している。インクジェットにより
多色に記録される画像は、製版方式による多色印刷や、
カラー写真方式による印画と比較しても遜色がない。多
色インクジェット方式は写真技術よりも安価であるの
で、作成部数が少ない場合、フルカラー画像記録分野に
まで応用されつつある。

【０００３】インクジェット用の記録シートには通常の
印刷や筆記に使われる上質紙やコーテッド紙が利用され
てきたが、高速化あるいはフルカラー化等のインクジェ
ット記録装置の性能向上や用途の拡大に伴い、記録シー
トにもより高度な特性が要求されている。すなわち、記
録シートは、高濃度なインクで、色調が明るくて彩やか
に記録でき、インクの吸収が速くてインクドットが重な
った場合でもインクが流れ出したりしないこと、インク
ドットの横方向への拡散が必要以上に大きくなく、かつ
周辺が滑らかでぼやけないこと、記録画像が紫外線や空
気中の酸素または水に浸されても染料の抵抗性を低下さ
せないこと等の特性を最低限持つ必要がある。

【０００４】特公平4-19037号公報には、支持体上に、
カチオン性コロイダルシリカを含有するインク受理層を
設けることによって、耐水性および耐光性が高められた
記録シートが開示されている。同公報には、耐水性、耐
光性、インク吸収性、印字された画像の大きさについて
記載されているが、インク定着性は考慮されていない。

【０００５】一方、インク定着性を高めるため、基材シ
ート上に、水溶性樹脂樹脂を主成分に含むインク膨潤層
を設けた記録シートが市販されている。しかし、かかる
記録シートは、インク膨潤層に染料インクを定着させる
のとはできるが、顔料インクを定着させることはできな
い。この記録シートに顔料インクで印字すると、インク
の吸収が遅く、印字部分と印字していない部分とで光沢
感に違いが生じることがある。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明は前記の課題を
解決するためになされたもので、染料インクだけでなく
顔料インクをも定着させることができ、インク吸収能力
が高く、印字部分と非印字部分とで光沢感に差を生じさ
せないインクジェット用記録シートを提供することを目
的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明者等は鋭意研究を
重ねた結果、無機質フィラーを含むインク浸透層上に、
水溶性樹脂が含まれているインク膨潤層を設けることに
よって、インク膨潤層が顔料インクを定着できるように
なることを見いだし、本発明を完成させた。

【０００８】前記課題を解決するための本発明のインク
ジェット用記録シートは、図１に示すように、インクジ
ェットプリンタにより印字をするシートにおいて、基材
シート１上に無機質フィラーを主成分とするインク浸透
層２が設けられ、インク浸透層２上に水溶性樹脂を主成
分とするインク膨潤層３が設けられたものである。

【０００９】このインクジェット用記録シートの表面
に、顔料インクを付着させると、顔料インク中の溶剤が
インク膨潤層３を膨潤させ、溶剤とともに顔料がインク
浸透層２へ素早く浸透し、定着される。また染料インク
を付着させると、インク膨潤層３に浸透し、そこで定着
される。

【００１０】インク浸透層２に、無機質フィラーととも
にインク膨潤層３の成分と同質の成分が含まれているこ
とがこのましい。このように形成することで、インク、
特に顔料インクがより潤沢に、素早くインク浸透層２ま
で浸透する。またインク浸透層２の上にインク膨潤層３
を形成する際に、なじみが良くなり、形成されたインク
膨潤層３が剥げ落ちることがない。

【００１１】基材シート１は、紙または熱可塑性樹脂フ
ィルムのシート状物質である。紙は充填剤を含んでも、
含まなくても良い。熱可塑性樹脂フィルムには、例えば
ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメ
チルメタクリレート、酢酸セルロース、ポリエチレン、
ポリカーボネートのフィルムが挙げられる。これらのフ
ィルムは透明でも、不透明でも差し支えない。

【００１２】インク浸透層２に含まれる無機質フィラー
はコロイダルシリカゾルを塗布して乾燥させたものであ
る。コロイダルシリカは、粒径が１０〜２００ｎｍ、特
に５０〜１００ｎｍであるものが好ましく、カチオン性
コロイダルシリカであることが望ましい。アニオン性コ
ロイダルシリカでもインク吸収能力は満たされるが、印
字後のインクのマイグレーションを考慮するとカチオン
性コロイダルシリカの方がより好ましい。

【００１３】インク浸透層２の厚さは５〜５０μｍ、特
に１０〜３０μｍが望ましい。５μｍ未満の場合には顔
料インクの吸収が不十分になり、５０μｍを超えてもさ
ほど顔料インクの吸収能に向上がみられない。またイン
ク浸透層２が厚すぎると基材シート１の質感が保てなく
なる。

【００１４】インク膨潤層３は、主成分である水溶性樹
脂中に、固形物比で５０重量％以上のアセタール化ポリ
ビニルアルコールが含まれている。インク膨潤層３の厚
さは０．５〜５μｍ、特に１〜３μｍであることが好ま
しい。０．５μｍ未満の場合には、インク膨潤層３が染
料インクを十分に定着しにくくなる。５μｍを超える場
合には、インク膨潤層３を顔料インクが透過してインク
浸透層２に到達するまでに迅速性がなくなり、顔料イン
クが広がりにじみの原因になってしまう。

【００１５】

【実施例】本発明を適用したインクジェット用記録シー
トの実施例、および本発明を適用外のインクジェット用
記録シートの比較例を以下のとおり試作した。

【００１６】実施例 カチオン性コロイダルシリカゾル（日産化学社製スノー
テックス２０Ｌ）を８０部と、ポリビニルアルコール
（クラレ社製ＰＶＡ２０５）の２０％水溶液を２０部と
を混合して得られた溶液を塗工液とする。この塗工液の
乾燥後の厚さが１０μｍとなるような量を、基材シート
１としてのポリエステルフィルムの表面にワイアバーコ
ートで塗布した後、１２５℃のオーブンにて２分間乾燥
し、インク浸透層２を形成した。このインク浸透層２の
表面に、ポリビニルアルコール（クラレ社製ＰＶＡ２２
０）の１０％水溶液を塗工液とし、乾燥後の厚さが３μ
ｍとなるような量をワイアバーコートで塗布した後、１
２５℃のオーブンにて３分間乾燥し、インク膨潤層３を
形成した。以上により図１に示すとおり、基材シート１
上にインク浸透層２が形成され、その上がインク膨潤層
３で覆われた本発明のインクジェット用記録シートが試
作された。

【００１７】比較例１ ポリエステルフィルムからなる基材シートの表面に、ポ
リビニルアルコール（クラレ社製ＰＶＡ２２０）の１０
％水溶液を塗工液とし、乾燥後の厚さが１０μｍとなる
ような量をワイアバーコートで塗布した後、１２５℃の
オーブンにて３分間乾燥した。これにより基材シート
に、インク膨潤層のみが形成された記録シートが試作さ
れた。

【００１８】比較例２ ポリエステルフィルムからなる基材シートの表面に、コ
ロイダルシリカゾル（日産化学社製スノーテックス２０
Ｌ）を８０部とポリビニルアルコール（クラレ社製ＰＶ
Ａ２０５）の２０％水溶液を２０部とを混合して得られ
た溶液を塗工液とし、乾燥後の厚さが１０μｍとなるよ
うな量をワイアバーコートで塗布した後、１２５℃のオ
ーブンにて２分間乾燥した。これにより基材シートに、
インク浸透層のみが形成された記録シートが試作され
た。

【００１９】上記実施例で試作されたインクジェット用
記録シート、および比較例１、比較例２で試作された記
録シートに、インクジェットプリンターで印字テストを
行い、性能評価をした。尚、印字テストに使用したプリ
ンターはヒューレットパッカード社製のDESK JET 660C
である。またこのプリンターに使用されるインクは顔料
インクである。

【００２０】各記録シート上のテスト印字を観察し、印
字部と非印字部との光沢感の差、印字の均一性を目視で
判定した。光沢感の差が見られないものを○、若干差の
あるものを△として下表に記載した。印字が均一なもの
を○、若干不均一なものを△とした。また印字濃度につ
いては、印字部を加重３００ｇ程度をかけた綿棒で擦過
し、その前後の印字濃度の比較を各例について３見本ず
つ行った。

【００２１】

【表１】

【００２２】上記表からわかるように、実施例の記録シ
ートは印字部と非印字部との光沢感の差、印字の均一性
が優れており、擦過前後の印字濃度も殆ど変化していな
い。しかし比較実施例１の記録シートは、擦過前後の印
字濃度変化はないが、印字部と非印字部との光沢感の差
があり、印字の均一性も劣る。また比較実施例２の記録
シートは、印字部と非印字部との光沢感の差、印字の均
一性が優れているが、擦過前後の印字濃度は大きく変化
している。

【００２３】

【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明の
インクジェット用記録シートは、コロイダルシリカを含
むインク浸透層上に水溶性樹脂を含むインク膨潤層を設
けられたことによって、インク膨潤層に付いた顔料イン
クがインク浸透層に浸透して素早く定着吸収され、また
染料インクもインク膨潤層で定着できる。このように顔
料インク、および染料インクもともに定着できるように
なり、記録シートとしての用途が広くなる。インク膨潤
層のみの記録シートでは、インクの付着量が多い場合に
印字部分が光沢を失ってしまうが、本発明のインクジェ
ット用記録シートでは、インクの吸収量が下層のインク
浸透層により確保できるため、印字部と非印字部との光
沢感には、差が生じることがない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を適用するインクジェット用記録シート
の一実施例を示す断面図である。

【符号の説明】

１は基材シート、２はインク浸透層、３はインク膨潤層
である。

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 インクジェットプリンタにより印字をす
   るシートにおいて、基材シート上に無機質フィラーを主
   成分とするインク浸透層が設けられ、該インク浸透層上
   に水溶性樹脂を主成分とするインク膨潤層が設けられて
   いることを特徴とするインクジェット用記録シート。
2. 【請求項２】 前記インク浸透層に該無機質フィラーと
   ともに該インク膨潤層の成分と同質の成分が含まれてい
   ることを特徴とする請求項１に記載のインクジェット用
   記録シート。
3. 【請求項３】 該記無機質フィラーがカチオン性コロイ
   ダルシリカであり、その粒径が１０〜２００ｎｍである
   ことを特徴とする請求項１または請求項２に記載のイン
   クジェット用記録シート。
4. 【請求項４】 前記インク浸透層の厚さが５〜５０μｍ
   であることを特徴とする請求項１または請求項２に記載
   のインクジェット用記録シート。
5. 【請求項５】 前記インク膨潤層の厚さが０．５〜５μ
   ｍであることを特徴とする請求項１または請求項２に記
   載のインクジェット用記録シート。
6. 【請求項６】 前記水溶性樹脂がアセタール化ポリビニ
   ルアルコールであって、該インク膨潤層に５０重量％以
   上含まれることを特徴とする請求項１または請求項２に
   記載のインクジェット用記録シート。