JPH10114040A - コンデンサ用二軸配向ポリエステルフイルム - Google Patents

コンデンサ用二軸配向ポリエステルフイルム

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JPH10114040A
JPH10114040A JP35322396A JP35322396A JPH10114040A JP H10114040 A JPH10114040 A JP H10114040A JP 35322396 A JP35322396 A JP 35322396A JP 35322396 A JP35322396 A JP 35322396A JP H10114040 A JPH10114040 A JP H10114040A
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JP
Japan
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film
capacitor
polyester
thickness
coating layer
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JP35322396A
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English (en)
Inventor
Shinichi Kinoshita
信一 木下
Yoshiki Sato
嘉記 佐藤
Yoshio Meguro
義男 目黒
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Diafoil Co Ltd
Original Assignee
Diafoil Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高度な電気的特性と長期耐湿熱性を同時に満足
でき、コンデンサ誘電体として優れた特性を有するコン
デンサ用二軸配向ポリエステルフイルムを提供する。 【解決手段】少なくとも片面に水溶性または水分散性の
樹脂からなる厚さ0.005μm〜1μmの塗布層を有
するコンデンサ用ポリエステルフイルムであって、フイ
ルムの長手方向の熱収縮応力が以下の(1)〜(3)式
を満足し且つ全厚さが1μm〜21μmであることを特
徴とするコンデンサ用二軸配向ポリエステルフイルム。 【数1】 S150 <200g/mm2 (1) S150 −S120 <100g/mm2 (2) Smax <500g/mm2 (3) (但し、S150 、S120 は、それぞれ150℃、120
℃におけるフイルムの単位断面積当たりの収縮応力値、
Smax は、150℃以上フイルムの融点以下の温度範囲
内での収縮応力値の最大値を示す。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンデンサ用二軸
配向ポリエステルフイルムに関するものであり、詳しく
は、電極金属層との密着性に優れ、高度な電気特性およ
び長期耐湿熱性を有する、コンデンサ用二軸配向ポリエ
ステルフイルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】二軸配向ポリエステルフイルムは、機械
的性質、耐熱性、電気的特性、耐薬品性など、各種の特
性を高度にバランス良く有し、コストパフォーマンスの
点で優れるため、磁気テープ用、包装用、製版用などの
産業用資材として広く使用されている。近時、電気機器
の小型化に伴い、小型化可能なポリエステルフイルムか
ら製造されたコンデンサの需要が増大している。
【0003】ところで、上記のコンデンサ用ポリエステ
ルフイルムには、次の様な良好な電気的特性が必要であ
る。すなわち、(1)耐電圧特性が良好であり、絶縁欠
陥が存在しないことが必要である。特に、フイルムの厚
さが薄い場合は、フイルムに存在する異物や厚さ斑など
により絶縁性が劣ることがある。(2)良好な誘電体特
性(誘電率や誘電損失など)が必要である。
【0004】しかも、上記の電気的特性は、常温から高
温まで広い温度範囲で良好であり、変化が少ないことが
必要である。すなわち、電気的特性が高温、高湿の条件
においても長時間に渡り安定であり、いわゆる長期耐湿
熱性が良好であることが必要となる。
【0005】上記の電気的特性を満足させるため、コン
デンサ用ポリエステルフイルムとして、塗布層を設けた
フイルムを使用する方法が提案されてきたが、その場合
でも、幾つかの問題点が存在する。すなわち、塗布層の
厚さがフイルム厚さに対して薄い場合は、フイルムの電
気的特性に対する塗布層の影響は小さいが、フイルムの
厚さが薄い場合は、全体に対する塗布層の厚さの割合が
高くなるため、塗布層の特性の影響も考慮しなければな
らない。
【0006】また、更に高度なコンデンサ特性を得るた
めには、金属蒸着工程においてフイルムが受ける熱ダメ
ージの影響を考慮する必要がある。すなわち、コンデン
サ用ポリエステルフイルムは、蒸着工程で熱的に過酷な
状態に曝されても、前記の電気的特性を保持し得ること
が必要である。
【0007】また、電気特性を悪化させる原因の他の一
つとして、コンデンサ製造工程で受ける熱によるフイル
ムの寸法変化により、端面電極(一般的にはメタリコ
ン)との接触が不良となる現象が挙げられる。斯かる現
象は、誘電損失の増大を起こし、コンデンサ特性に悪影
響を及ぼす。
【0008】しかしながら、塗布層を有する従来のコン
デンサ用フイルムは、誘電損失および交流耐電圧が必ず
しも良好ではなく、しかも、使用継続により静電容量が
相当に低下するという問題点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記実情に
鑑みなされたものであり、その目的は、高度な電気的特
性と長期耐湿熱性を同時に満足でき、コンデンサ誘電体
として優れた特性を有するコンデンサ用二軸配向ポリエ
ステルフイルムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
達成のために、鋭意検討を行った結果、塗布層を有する
ポリエステルフイルムであって、当該ポリエステルフイ
ルムが特定の寸法安定性の要件を満足する場合には、高
度な電気的特性と長期耐湿熱性を同時に満足でき、コン
デンサ誘電体として優れた特性を有することを見い出
し、本発明の完成に至った。
【0011】すなわち、本発明の第1の要旨は、少なく
とも片面に水溶性または水分散性の樹脂からなる厚さ
0.005μm〜1μmの塗布層を有するコンデンサ用
ポリエステルフイルムであって、フイルムの長手方向の
熱収縮応力が以下の(1)〜(3)式を満足し且つ全厚
さが1μm〜21μmであることを特徴とするコンデン
サ用二軸配向ポリエステルフイルムに存する。
【0012】
【数2】 S150 <200g/mm2 (1) S150 −S120 <100g/mm2 (2) Smax <500g/mm2 (3) (但し、S150 、S120 は、それぞれ150℃、120
℃におけるフイルムの単位断面積当たりの収縮応力値、
Smax は、150℃以上フイルムの融点以下の温度範囲
内での収縮応力値の最大値を示す。)
【0013】そして、本発明の第2の要旨は、少なくと
も片面に水溶性または水分散性の樹脂からなる厚さ0.
005μm〜1μmの塗布層を有するコンデンサ用ポリ
エステルフイルムであって、熱機械試験機(TMA)に
より測定した200℃におけるフイルム長手方向の寸法
変化率が−2.0〜+2.0%であり且つ全厚さが1.
0μm〜21μmであることを特徴とするコンデンサ用
二軸配向ポリエステルフイルムに存する。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のコンデンサ用二軸配向ポリエステルフイルム
(以下、単にフイルムと略記する)を構成するポリエス
テルは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステルとグリ
コールとを主たる出発原料として得られるポリエステル
であり、繰り返し構造単位の80モル%以上がエチレン
テレフタレート単位またはエチレン−2,6−ナフタレ
ート単位を有するポリエステルを指し、上記の範囲を逸
脱しない範囲内において、他の芳香族ジカルボン酸およ
び他のジオールから成るエステル単位を含有していても
よい。
【0015】前記ポリエステルを構成する他の芳香族ジ
カルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、フタ
ル酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例
えば、p−オキシエトキシ安息香酸など)等を使用する
ことが出来る。
【0016】前記ポリエステルを構成する他のグリコー
ル成分としては、例えば、ジエチレングリコール、プロ
ピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘ
キサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等を使用
することが出来る。
【0017】上記のポリエステルの極限粘度は、通常
0.45以上、好ましくは0.50〜1.0、更に好ま
しくは0.52〜0.80の範囲である。極限粘度が
0.45未満ではフイルム製造時の生産性が低下した
り、フイルムの機械的強度が低下するという問題が生ず
ることがある。一方、ポリマーの溶融押出安定性の点か
ら、極限粘度は1.0を超えないことが好ましい。
【0018】本発明においては、フイルム製造時のキズ
の発生を防止したり、フイルムに滑り性を与えて取扱い
性を向上させるため、ポリエステルに粒子を含有させ、
フイルム表面に適度な突起を形成させるのが好ましい。
上記の粒子の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カル
シウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、ア
ルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチ
ウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋
高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、およ
び、ポリエステル重合時に生成する析出粒子を挙げるこ
とが出来る。
【0019】本発明において、上記粒子の平均粒径は、
通常0.005〜5μm、好ましくは0.01〜3μm
の範囲である。平均粒径が5μmを超える場合は、過大
な粗面化によりフイルムの絶縁性が低下したり、フイル
ム表面から粒子が脱落して絶縁不良の原因となる等の問
題が生ずる。一方、平均粒径が0.005μm未満の場
合は、突起形成が不十分なため、フイルムの表面にキズ
が発生したり、フイルムの取扱い性が低下する。
【0020】また、上記粒子の含有量は、ポリエステル
に対し、通常0.01〜3重量%、好ましくは0.05
〜2重量%、更に好ましくは0.1〜1重量%である。
含有量が0.01重量%未満の場合は、フイルム表面の
突起が不足してフイルムの滑り性が不十分となる。一
方、粒子の含有量が3重量%を超える場合は、粒子の脱
落が起こり易くなったり、粒子が凝集して粗大突起を形
成し、絶縁欠陥などの問題が生ずる。
【0021】上記粒子は、フイルム中に2種類以上配合
してもよく、同種で粒径の異なる粒子を配合してもよ
い。この場合においても、粒子の平均粒径および合計の
含有量は上記の範囲を満足することが好ましい。
【0022】粒子は、ポリエステルの合成反応中に添加
してもポリエステルに直接添加してもよい。合成反応中
に粒子添加する場合は、エチレングリコール等に分散さ
せたスラリーとして添加する方法が好ましく、添加時期
は、ポリエステル合成の任意の段階でよい。
【0023】一方、ポリエステルに直接添加する場合
は、乾燥した粒子、または、水または沸点が200℃以
下の有機溶媒中に分散させたスラリーを使用し、2軸混
練押出機を使用してポリエステルに添加混合する方法が
好ましい。なお、添加する粒子は、必要に応じ、事前に
解砕、分散、分級、濾過などの処理を施してもよい。
【0024】粒子の含有量を調節する方法としては、上
記の方法で高濃度に粒子を含有するマスター原料を調製
し、これを実質的に粒子を含有しない原料と混合して粒
子含有量を調節する方法が有効である。
【0025】また、本発明のフイルムには、上記の粒子
以外の添加剤として、必要に応じ、帯電防止剤、安定
剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止
剤、着色剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤などを、コンデ
ンサ特性を悪化させない範囲内で含有させてもよい。
【0026】本発明のフイルムは、最終的に得られる特
性が本発明の要件を満足する限り、多層構造となってい
ても構わない。多層構造の場合、その一部の層はポリエ
ステル以外の樹脂からなる層であってもよい。
【0027】本発明のフイルムは、蒸着金属との密着性
を高めるため、少なくとも片面に樹脂から成る塗布層を
有する。塗布層を構成する樹脂としては、ポリエステル
系、ポリアミド系、ポリスチレン系、ポリアクリレート
系、ポリカーボネート系、ポリアリレート系、ポリ塩化
ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリビニルブチラー
ル系、ポリビニルアルコール系、ポリウレタン系などの
樹脂およびこれらの樹脂の共重合体や混合体などを挙げ
ることが出来る。これらの樹脂の中ではポリウレタン系
樹脂が好ましい。ポリウレタン系樹脂を使用した場合、
極めて高度な密着性と長期耐湿熱性を有するコンデンサ
用フイルムを得ることが出来る。
【0028】ポリウレタン系樹脂は、ポリマー主鎖にウ
レタン結合を有する高分子化合物であり、ポリオール、
ポリイソシアネート、鎖延長剤、架橋剤を原料として得
られる。
【0029】上記のポリオールの例としては、ポリオキ
シエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコー
ル、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエー
テル類、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンーブチ
レンアジペート、ポリカプロラクトン等のポリエステル
類、ポリカーボネート類、アクリル系ポリオール、ひま
し油などが挙げられる。
【0030】上記のポリイソシアネートの例としては、
トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネー
ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘ
キサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシア
ネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシア
ネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0031】本発明において、ポリイソシアネート原料
としては、耐熱性に優れる芳香族ポリイソシアネート及
び/又はイソホロンジイソシアネートを使用するのが好
ましい。そして、少なくとも、ポリウレタン樹脂中のイ
ソシアネート成分に占める芳香族ポリイソシアネート及
び/又はイソホロンジイソシアネートの割合は、通常5
0モル%以上、好ましくは70モル%以上とするのがよ
い。
【0032】また、上記の鎖延長剤または架橋剤の例と
しては、エチレングリコール、プロピレングリコール、
ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ヒド
ラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ト
リエチレンテトラミン、4,4’−ジアミノジフェニル
メタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンが
挙げられるが、架橋剤としては水も使用することが出来
る。
【0033】本発明において、塗布層に占めるポリウレ
タン樹脂の割合は、通常30重量%以上、好ましくは5
0重量%以上、更に好ましくは70重量%以上とするの
がよい。塗布層におけるポリウレタン系樹脂の含有量が
30重量%未満の場合は、コンデンサ用フイルムの密着
性と長期耐湿熱性の改良効果が十分ではない。
【0034】また、本発明において、塗布層は、ポリウ
レタン樹脂以外に、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹
脂、ビニル系樹脂などを塗布層の特性改良のために含有
していてもよい。特に、ポリエステル系樹脂は、ポリエ
ステルフイルムと塗布層との層間耐湿熱や密着性を改良
するために好ましく使用される。ただし、ポリエステル
系樹脂の塗布層中に占める割合は30重量%未満とする
のが好ましい
【0035】本発明において、塗布剤は、安全性の観点
から、水を媒体として調製され、従って、上記の樹脂
は、水溶性または水分散性の樹脂でなければならない。
なお、本発明において、塗布剤は、上記樹脂の水に対す
る溶解または分散助剤として有機溶剤を含有していても
よい。しかしながら、有機溶剤の使用量は、上記塗布剤
の安全衛生を損なわない範囲内に限定すべきである。
【0036】有機溶剤を含有しない塗布剤の場合は、上
記の樹脂としては、界面活性剤などによって強制分散化
される樹脂であってもよいが、ポリエーテル類の様な親
水性のノニオン成分や、四級アンモニウム塩の様なカチ
オン性基を有する自己分散型樹脂が好ましく、アニオン
性基を有する水溶性または自己分散型の樹脂が更に好ま
しい。
【0037】前記のアニオン性基を有する樹脂とは、ス
ルホン酸、カルボン酸、リン酸およびそれらの塩などの
アニオン性基を有する化合物を共重合やグラフト重合し
た樹脂である。アニオン性基の対イオンは、一般的に
は、アルカリ金属イオンとされるが、本発明において
は、コンデンサの長期耐湿熱性の観点から、アンモニウ
ムイオンを含むアミン系オニウムイオンから選択するの
が好ましい。
【0038】アニオン性基を有する樹脂のアニオン性基
含有量は、通常0.05〜10重量%の範囲とされる。
アニオン性基含有量が0.05重量%未満の場合は、樹
脂の水溶性または水分散性が劣ることがある。また、ア
ニオン性基量が10重量%を超える場合は、塗布層の耐
水性が劣ったり、塗布層が吸湿してフイルム同士が相互
にプロッキングしたり、フイルムと電極金属層との密着
性やコンデンサの長期耐湿熱が低下することがある。
【0039】なお、塗布剤中のアルカリ金属の含有量が
多くなると、コンデンサの長期耐湿熱性が悪くなること
がある。特に、コンデンサに直流電圧を印加しつつ高温
高湿下に置いた場合、コンデンサの静電容量の低下が激
しくなる。従って、必要に応じ、脱アルカリイオン処理
を行うのが好ましい。塗布剤中のアルカリ金属の含有量
は、固形分換算値として、好ましくは1000ppm以
下、更に好ましくは500ppm以下、特に好ましくは
200ppm以下とするのがよい。
【0040】また、本発明に使用する塗布剤には、耐ブ
ロッキング性、耐水性、耐溶剤性、機械的強度の改良の
ため、架橋剤として、メチロール化またはアルキロール
化した尿素系、メラミン系、グアナミン系、アクリルア
ミド系およびポリアミド系などの化合物、エポキシ系化
合物、アジリジン化合物、ブロックポリイソシアネー
ト、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジ
ルコ−アルミネート系カップリング剤、過酸化物、熱お
よび光反応性のビニル化合物、感光性樹脂などを含有し
てもよい。
【0041】また、耐ブロッキング性や滑り性改良のた
め、塗布剤中に、シリカ、シリカゾル、アルミナ、アル
ミナゾル、ジルコニウムゾル、カオリン、タルク、炭酸
カルシウム、リン酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリ
ウム、カーボンブラック、硫化モリブデン、酸化アンチ
モンゾル等の無機系微粒子、ポリスチレン、ポリエチレ
ン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル酸エステ
ル、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などの
有機系微粒子を含有していてもよい。更に、必要に応
じ、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、帯電防止剤、有機
系潤滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、
顔料などを含有していてもよい。
【0042】フイルムに塗布剤を塗布する方法として
は、「コ−ティング方式」(原崎勇次著、槙書店、19
79年発行)に示されるリバースロールコーター、グラ
ビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター
又はこれら以外の塗布装置を使用することが出来る。当
該塗布は、フイルム製造工程内で行ってもよいし、フイ
ルム製造後に塗布してもよい。特に、塗布厚さの均一性
や生産効率の点で、フイルム製造工程内で塗布する方法
が好ましい。
【0043】フイルム製造工程内で塗布する方法として
は、ポリエステル未配向フイルムに塗布剤を塗布し、逐
次または同時に二軸延伸する方法、一軸配向されたフイ
ルムに塗布し、更に一軸延伸方向と直角の方向に延伸す
る方法、または、二軸配向フイルムに塗布し、更に横方
向および/または縦方向に延伸する方法などが適用でき
る。
【0044】塗布層の厚さは、通常0.005〜1μm
の範囲、好ましくは0.01〜0.5μm、更に好まし
くは0.03〜0.1μmの範囲である。塗布層の厚さ
は、コンデンサ小型化の要請からも薄くすることが好ま
しい。特に、塗布層厚さが1μmを超える場合は、電気
的特性が悪化することがあり、塗布層の厚さが0.00
5μm未満の場合は、塗布ムラや塗布ヌケが生じる傾向
がある。
【0045】上記の様にして形成された塗布層は、その
表面の水滴接触角が60°以上であることが好ましい。
水滴接触角が60°未満の場合は、金属蒸着膜との耐水
接着性が劣ることがある。上記の水滴接触角は、塗布剤
の樹脂の親水基量、乳化剤量、親水性化合物量を適宜選
択することにより調節することが出来る。
【0046】また、上記の様に形成された塗布層は、表
面側から測定した中心線平均粗度(Ra)が0.005
〜0.5μmの範囲であることが好ましい。Raが0.
005μm未満の場合は、フイルムの滑り性が不十分と
なることがあり、Raが0.5μmを超える場合は、表
面が粗れすぎて耐電圧特性や長期耐湿熱性が悪化するこ
とがある。上記の中心線平均粗度(Ra)の更に好まし
い範囲は0.01〜0.3μm、特に好ましい範囲は
0.02〜0.1μmである。
【0047】第1の要旨に係る本発明(第1発明)のフ
イルムは、高度な長期耐湿熱性を備えるため、フイルム
の長手方向の熱収縮応力が以下の(1)〜(3)式を満
足することが重要である。
【0048】
【数3】 S150 <200g/mm2 (1) S150 −S120 <100g/mm2 (2) Smax <500g/mm2 (3) (但し、S150 、S120 は、それぞれ150℃、120
℃におけるフイルムの単位断面積当たりの収縮応力値、
Smax は、150℃以上フイルムの融点以下の温度範囲
内での収縮応力値の最大値を示す。)
【0049】S150 が200g/mm2 以上の場合は、
フイルムの寸法安定性が劣るため、コンデンサとした際
の端面電極との接触不良が起こり易くなり、コンデンサ
とした際の電気特性が悪化する。また、S120 の大きさ
は特に制限されないが、通常10g/mm2 以上、好ま
しくは20g/mm2 以上である。本発明者らの知見に
よれば、前記のクーリングキャンとフイルムとの接触を
一層良好にするためには、フイルムにある程度の収縮応
力が作用するのが好ましい。斯かる条件により、熱ダメ
ージが極めて小さい状態での蒸着が可能となる。
【0050】また、(S150 −S120 )が100g/m
2 以上の場合は、上記と同様にコンデンサの電気特性
が悪化する。斯かる原因は、必ずしも明らかではないが
次の様に推定される。
【0051】すなわち、蒸着時の熱でフイルムがダメー
ジを受けない様にクーリングキャンとフイルムとを接触
させて走行させる際、120℃から150℃の間で収縮
応力の変化(S150 −S120 )が100g/mm2 以上
のフイルムの場合は、フイルムに温度ムラが生じた際、
不均一な収縮応力が発生する。斯かる収縮応力の不均一
により、フイルムに歪みや応力が残ったり、タルミやシ
ワが発生したりする。これが電気特性悪化の原因になる
と考えられる。従って、(S150 −S120 )が少ない、
換言すれば、収縮応力と温度との関係を示す曲線の傾き
が小さいことが必要である。上記の(S150 −S120 )
は、好ましくは80g/mm2 未満、更に好ましくは7
0g/mm2 未満である。
【0052】そして、第1発明によれば、上記の条件に
加え、150℃以上且つポリエステルの融点以下の温度
範囲内における収縮応力値の最大値Smax が500g/
mm2 未満の条件により、優れた長期耐湿熱性を得るこ
とが出来る。上記のSmax は、好ましくは400g/m
2 未満、更に好ましくは350g/mm2 未満であ
る。
【0053】一方、第2の要旨に係る本発明(第2発
明)のフイルムは、高度な長期耐湿熱性を備えるため、
熱機械試験機(TMA)により測定した200℃におけ
るフイルム長手方向の寸法変化率が−2.0〜+2.0
%であることが重要である。斯かる寸法変化率が上記の
範囲外の場合は、端面電極(一般的にはメタリコン)と
の機械的および電気的接触が不安定になる。
【0054】ところで、フイルムに金属蒸着を行う工程
では、フイルムを巻出し、一定の張力を掛けて走行させ
つつ蒸着する。従って、斯かる張力に対して充分な強度
(ヤング率)を持っていなければ、フイルムは、張力に
耐えられず、その結果、蒸着時の熱により大きなダメー
ジを受けることになる。本発明者らの知見によれば、上
記のダメージにより、蒸着フイルムの均一性が低下する
ため、コンデンサ製造時の歩留まりが低下したり、得ら
れたコンデンサの電気的特性や長期耐湿熱性が低下する
傾向にある。
【0055】そこで、上記の各発明においては、蒸着時
の熱によるダメージを受け難くして更に高度な長期耐湿
熱性を得るため、フイルムの長手方向の常温におけるヤ
ング率を4.5GPa以上、好ましくは5.0GPa以
上とするのがよい。また、本発明においては、蒸着時の
熱によるダメージを一層受け難くするため、フイルムの
長手方向の100℃におけるヤング率を1.0GPa以
上、好ましくは1.2GPa以上とするのがよい。
【0056】また、上記の各発明のフイルムは、無張力
下に180℃で3分間処理した後の長手方向の収縮率が
2.0%未満であることが好ましい。上記の長手方向の
熱収縮率が大きい場合は、コンデンサ製造時の熱を受け
る工程でフイルムが大きな寸法変化を起こし、生産性が
悪化したり、コンデンサの寿命が短縮する。
【0057】本発明のフイルムの全厚さは、1μm〜2
1μmであり、好ましくは2μm〜10μm、更に好ま
しくは3μm〜6μmである。全厚さが21μmを超え
る場合は、より高品質、より小型のコンデンサを得るこ
とが出来なくなる。一方、全厚さが1μm未満の場合
は、塗布層の厚さが占める割合が相対的に大きくなるた
め、電気的特性の改良効果が十分ではない。なお、ここ
で言う全厚さとは、塗布層とフイルムとの合計厚さを指
す。
【0058】本発明のフイルムは、例えば、次の製造法
によって得ることが出来る。先ず、ポリエステル原料お
よび使用する添加剤を押出装置に供給し、ポリエステル
の融点以上の温度で溶融混練した後、スリット状のダイ
から回転冷却ドラム上に溶融シートとして押し出す。そ
して、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度に
なる様に上記の溶融シートを急冷固化し、実質的に非晶
状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性
を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性
を高める必要があり、本発明においては静電密着法およ
び/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0059】静電密着法とは、通常、シートの上面側に
シートの流れと直交する方向に線状電極を張り、当該電
極に約5〜10kVの直流電圧を印加することによりシ
ートに静電荷を与え、ドラムとの密着性を向上させる方
法である。また、液体塗布密着法とは、回転冷却ドラム
表面の全体または一部(例えばシート両端部と接触する
部分のみ)に液体を均一に塗布することにより、ドラム
とシートとの密着性を向上させる方法である。本発明に
おいては必要に応じ両者を併用してもよい。
【0060】次に、上記のシートを二軸方向に延伸して
フイルム化する。その際、延伸および熱処理条件を適切
な範囲にすることにより、前述の収縮特性を有するフイ
ルムが得られる。二軸延伸は次の様に行うことが出来
る。
【0061】先ず、前記未配向シートを一軸方向(縦方
向)にその複屈折率(Δn)が通常0.06以上、好ま
しくは0.08以上となる様に延伸する。延伸温度範囲
は70〜150℃、延伸倍率は2.5〜6倍の範囲と
し、温度と倍率を適宜組み合わせることにより、所望の
複屈折率となる様にする。一軸方向の延伸は一段階また
は二段階以上で行うことが出来る。
【0062】次に、一軸配向フイルムを、一旦ガラス転
移点以下に冷却するか、または、冷却することなく、例
えば、80〜150℃の温度範囲に予熱した後、二軸方
向、すなわち、一軸方向と直交する方向(横方向)に略
同温度の条件下で通常2.5〜5倍、好ましくは3.0
〜4.5倍に延伸を行い、二軸に配向したフイルムを得
る。
【0063】なお、一軸方向の延伸を2段階以上で行う
ことは、良好な厚さ均一性を達成出来るので好ましい。
また、横方向に延伸した後、更に縦方向(長手方向)に
再延伸する方法も可能であるが、何れにしても長手方向
の総合延伸倍率を3.5倍以上とすることが好適であ
る。
【0064】この様にして得られたフイルムを、1秒か
ら5分間、180℃〜240℃の温度範囲、好ましくは
200℃〜240℃の温度範囲で熱処理する。この際、
熱処理工程内または熱処理後に縦方向、横方向または両
方向に再延伸を行ってもよい。なお、熱処理後に再延伸
を行った場合は、再度、上記と同様に更に熱処理を行う
のが好ましい。
【0065】第1発明の要件である特定範囲の収縮応力
特性をフイルムに与える方法としては、フイルム延伸後
の熱処理工程で、縦方向、横方向または両方向に通常3
〜30%、好ましくは5〜20%の範囲で熱弛緩処理を
行う方法や、フイルムをオフラインで低張力下で熱弛緩
処理する方法などが挙げられる。
【0066】フイルムの熱処理温度を前記の温度範囲よ
り高くする方法を使用しても、収縮応力特性は改善され
るが、斯かる方法を使用すると、フイルムの電気的特
性、特に誘電損失特性が悪化するので好ましくない。す
なわち、熱処理温度が240℃を超えるとフイルム密度
が高くなり過ぎて高度な電気的特性が得られなくなる。
一方、180℃未満ではフイルムの熱収縮率が小さくな
らず、コンデンサ製造時に熱を受ける工程で寸法変化を
起こし、コンデンサの生産性を悪化させたり、耐電圧な
どのコンデンサ特性が低下する等の問題が生ずる。何れ
にしても、本発明においてはフイルムを弛緩しつつ18
0℃〜240℃の温度で熱処理することにより特定の収
縮応力特性を達成するのが好ましい。
【0067】第2発明の要件である特定の寸法変化率を
フイルムに与える方法としては、熱固定後にフイルムの
長手方向に熱弛緩処理を行う方法などが有効である。斯
かる熱弛緩処理は、フイルムの巾方向を拘束せず、かつ
0.01〜1kg/mm2 の走行張力下、160〜22
0℃の温度で、0.5〜20秒間行うのが好ましい。熱
弛緩処理に供するフイルムの幅は、走行張力を低く抑え
るためにも、処理を均一にするためにもフイルムの幅方
向の長さは500mm以上であることが好ましい。
【0068】塗布層を有するフイルムは、高温で接触方
式で熱処理すると塗布層が転着するため、非接触型の熱
弛緩処理装置を使用するのが好ましい。この理由で熱弛
緩処理は、加熱浮上型処理装置を使用して行うのが好ま
しい。
【0069】フイルムを加熱浮上させる媒体としては、
加熱された不活性気体特に加熱空気が好ましく使用され
る。この加熱浮上処理によれば、安定したフイルム走行
を保ちながら熱弛緩処理を効率よく行うことが出来る。
【0070】本発明においては、フイルムの電気的特性
を更に向上させるため、フイルム密度を1.3990g
/cm3 未満、好ましくは1.3980g/cm3 未満
とするのがよい。斯かる密度範囲は、上記した熱処理工
程の温度を適宜選択することにより達成することが出来
る。
【0071】本発明において、塗布層を設ける方法とし
ては、フイルム製造工程において一軸延伸フイルムに塗
布剤を塗布し、適当な乾燥を施した後または乾燥を施さ
ず直ちに、二軸方向に延伸し、熱処理を行う方法が好ま
しい。
【0072】上記方法によるならば、延伸と同時に塗布
層の乾燥が可能になると共に、塗布層の厚さを延伸倍率
に応じて薄くすることが出来、かつ、塗布層の厚さの均
一性が良好となり、しかも、フイルムと塗布層との密着
性も極めて強固とすることが出来る。また、上記方法
は、コスト的にも有利であり、コンデンサ誘電体用基材
として好適なフイルムを安価に製造することが出来る。
【0073】本発明における塗布層は、フイルムの片面
だけに設けてもよいが、両面に設けることが好ましい。
また、片面にのみ塗布した場合、その反対面には本発明
における塗布剤以外からなる塗布層を必要に応じて形成
し、本発明のフイルムに他の特性を付与することも出来
る。
【0074】なお、塗布剤のフイルムへの塗布性や接着
性を改良するため、塗布前にフイルム表面に化学処理や
放電処理を施してもよい。処理効率やコストや処理の簡
便さからコロナ放電処理を行うことが特に好ましい。ま
た、本発明のフイルムの塗布層の接着性などを改良する
ために、塗布層形成後に塗布層に放電処理を施すことも
出来る。
【0075】本発明のフイルムを使用してコンデンサを
製造する際、金属蒸着により電極を形成するために蒸着
する金属としては、アルミニウム、パラジウム、亜鉛、
ニッケル、金、銀、銅、インジウム、錫、クロム、チタ
ン等が挙げられるが、好ましい金属はアルミニウムであ
る。なお、上記の金属の酸化物も使用することが出来
る。
【0076】金属蒸着膜の厚さは10〜2000Åの範
囲が好ましく、蒸着の方法は、一般的には真空蒸着法に
よるが、エレクトロプレーティング法、スパッタリング
法などの方法によってもよい。なお、金属蒸着層はフイ
ルムの両面に設けてもよい。また、金属蒸着後に蒸着金
属層の表面処理や他の樹脂による被覆処理を行ってもよ
い。
【0077】この様にして得られた金属蒸着フイルム
は、複数枚を重ね合わせて巻回するか、または、多数枚
積層してコンデンサ素子を製作し、常法に従って、例え
ば、熱プレス、テーピング、メタリコン、リード線付
け、電圧処理、両端面封止などを行うことにより、コン
デンサとすることが出来る。なお、上記の巻回には、両
面金属蒸着フイルムと本発明のフイルムを含む他のフイ
ルムとの巻回も含む。
【0078】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実
施例によって限定されるものではない。なお、実施例中
の評価方法は以下の通りである。実施例および比較例
中、「部」とあるのは「重量部」を示す。
【0079】(1)ポリマーの極限粘度[η](dl/
g):ポリマー1gをフェノール/テトラクロロエタン
=50/50(重量比)の混合溶媒100mlに溶解
し、30℃でポリマーの極限粘度を測定した。
【0080】(2)粒子の平均粒径(μm):遠心沈降
式粒度分布測定装置(島津製作所製商品「SA−CP3
型」)で測定した等価球形分布における積算体積分率5
0%の粒径を平均粒径とした。
【0081】(3)フイルムの密度(g/cm3 ):n
−ヘプタンと四塩化炭素との混合液による密度勾配管法
によりフイルムの密度測定した。なお、測定温度は25
℃で行った。
【0082】(4)フイルム厚さ(μm):10cm×
10cmの正方形に切り出したフイルム約100枚の総
重量を測定し、次式によりフイルム厚さを算出した。
【0083】
【数4】
【0084】(5)収縮応力特性:定荷重伸び試験機
((株)インテスコ製)を使用し、幅1cm、長さ20
cmの短冊状に切り出した試料について測定を行った。
15cmのチャック間に試料をセットし、23℃におけ
る初期荷重を25g/mm2 として測定を開始した。上
記試験機に付設の恒温槽の温度を23℃から、4℃/分
の速度で昇温し、発生する収縮応力と温度との関係を曲
線で描き、フイルムの初期断面積当たりの収縮応力を求
めた。
【0085】(6)寸法変化率(TMA伸長率):幅5
mm、測定長15mmのサンプルに約80g/mm2
なる様に荷重をかけて、常温から5℃/分の速度で昇温
し、200℃到達時の寸法変化率を測定した。測定は真
空理工(株)社製の熱機械試験機(TMA)TM−70
00を使用して行った。なお、伸長率を正、収縮率を負
として表記した。
【0086】(7)中心線平均粗さ(Ra)(μm):
表面粗さ測定機((株)小坂研究所製商品「SE−3
F」)を使用して次の様にして中心線平均粗さ(Ra)
を求めた。すなわち、得られたチャートのフイルム断面
曲線からその中心線の方向に基準長さL(2.5mm)
の部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をx軸、
振幅の方向をy軸として粗さ曲線y=f(x)で表した
とき、次式で与えられた値を〔μm〕で表した。中心線
平均粗さは、試料フイルム表面から10本の断面曲線を
求め、これらの断面曲線から求めた抜き取り部分の中心
線平均粗さの平均値で表した。なお、触針の先端半径は
2μm、荷重は30mgとし、カットオフ値は0.08
mmとした。
【0087】
【数5】
【0088】(8)ヤング率(GPa):引張試験機
((株)インテスコ製商品「インテスコモデル2001
型」)を使用し、温度23℃、湿度50%RHに調節さ
れた室内において、長さ300mm、幅25mmの試料
フイルムについて測定を行った。すなわち、10%/分
のひずみ速度で試料フイルムを引張り、引張応力−ひず
み曲線の初めの直線部分を使用して次式によって計算す
る。
【0089】
【数6】E=Δσ/Δε
【0090】ここに、Eはヤング率、Δσは引張応力−
ひずみ曲線の初めの直線部分の2点における応力値と引
張測定前の試料の平均断面積とから算出した単位断面積
当たりの応力値の差、Δεは同じ2点のひずみ値の差と
する。なお、平均断面積を求める際のフイルムの厚さは
重量法により求めた。すなわち、10cm×10cmの
正方形に切り出したフイルム100枚の合計重量とフイ
ルムの密度を使用して算出した。
【0091】(9)水滴接触角(゜):温度23℃、湿
度50%RH雰囲気下での試料フイルムと蒸留水との接
触角を接触角計(協和界面化学(株)社製商品「CA−
DT−A型」)を使用して測定した。接触角は、左右2
点、試料数3点で計6点測定し、平均値を求め接触角と
した。なお、水滴の直径は2mmとし、滴下後1分後の
数値を読み取った。
【0092】(10)耐電圧特性:JIS C−2319
に準じて測定を行った。すなわち、10kV直流耐電圧
試験機を使用し、23℃、50%RHの雰囲気下にて、
100V/秒の昇圧速度で上昇させ、フイルムが絶縁破
壊し短絡した時の電圧を読み取った。
【0093】(11)コンデンサの電気特性:以下の様に、
コンデンサを製造し、交流耐電圧、誘電損失の変化、静
電容量変化を測定した。
【0094】<コンデンサの製造>抵抗加熱型金属蒸着
装置を使用し、真空室の圧力を10-4Torr以下とし
てフイルム表面にアルミニウムを450Åの厚さに蒸着
した。蒸着は、フイルムの長手方向にマージン部を有す
るストライプ状に行った(蒸着部の幅8mmとマージン
部の幅1mmの繰り返し)。
【0095】上記の蒸着フイルムをマージン部および蒸
着部のそれぞれの中間でスリットし、左または右に幅
0.5mmのマージン部を有する4.5mm幅のテープ
状フイルムを得た。左マージン蒸着フイルムと右マージ
ン蒸着フイルムとの各1枚を非マージン側の蒸着部分が
各フイルムの幅方向にそれぞれ0.5mmはみ出す様に
ずらして重ね合わせて巻回し、巻回体を得た。
【0096】上記の巻回体を温度140℃、圧力50k
g/cm2 で5分間プレスした。プレス後の巻回体の両
端面にメタリコンを溶射し、リード線を付した後、液状
のビスフェノールA型エポキシ樹脂を含浸させ、粉末状
エポキシ樹脂を加熱溶融することにより、最低厚さ0.
5mmの外装を形成し、静電容量0.1μFのフイルム
コンデンサとした。
【0097】<静電容量変化の測定(A法)>コンデン
サの電極間に60V/μmの直流電圧を印加しつつ温度
60℃、湿度95%RHの雰囲気下に1000時間放置
し、初期静電容量を基準値とする静電容量変化率を求め
た。すなわち、1000時間後の静電容量から初期静電
容量を差し引いた値を初期静電容量で除して百分率で表
記した。
【0098】<静電容量変化の測定(B法)>コンデン
サの電極間に60V/μmの直流電圧を印加しつつ温度
85℃、湿度85%RHの雰囲気下に500時間放置
し、初期静電容量を基準値とする静電容量変化率を求め
た。すなわち、500時間後の静電容量から初期静電容
量を差し引いた値を初期静電容量で除して百分率で表記
した。
【0099】<誘電損失の変化>未使用のコンデンサを
150℃の雰囲気下に24時間放置した後、放置前後の
誘電損失特性を比較した。誘電損失特性は、室温から1
60℃の温度範囲で昇温しつつ2℃毎に読み取り、誘電
損失が急激に立ち上がる温度および100〜160℃の
範囲で示す誘電損失の最大値により、以下の基準で評価
した。なお、測定は10回行った。
【0100】
【表1】 ランクA:150℃放置後も特性が殆ど変化しない。 ランクB:誘電損失が若干高くなるか、または、立ち上
がり温度が低くなる。 ランクC:誘電損失の変化が大きいか、または、数値の
バラツキが大きくなる。
【0101】<交流耐電圧>未使用のコンデンサの電極
間に1kHzの交流印可電圧Vを印加し、絶縁破壊が起
こるまでの時間tを測定した。印加電圧Vを変えて同様
の測定を行い、Vとtとの関係をプロットしたグラフか
らt=15時間となる印加電圧を読み取り交流耐電圧と
した。斯かる交流耐電圧を100℃と25℃で測定し、
両者の測定値を比較し、以下の基準で評価した。
【0102】
【表2】 ランクA:100℃でも交流耐電圧の低下は小さくて良
好。 ランクB:100℃で交流耐電圧やや低下するが実用上
問題ない。 ランクC:100℃での交流耐電圧の低下が大きくて実
用上問題がある。
【0103】実施例1 <塗布層用ポリウレタンの合成>テレフタル酸650
部、イソフタル酸650部、1,4−ブタンジオール4
80部、ネオペンチルグリコール450部を出発原料と
してポリエステルポリオールを得、これにアジピン酸3
20部、ジメチロールプロピオン酸270部を加え、カ
ルボキシル基含有ポリエステルポリオールを得た。この
ポリエステルポリオール1880部にトリレンジイソシ
アネート160部を加えて芳香族ポリエステルポリウレ
タン溶液を得た。得られた溶液をアンモニア水溶液中に
投入しつつ原料に含まれていた溶剤分を除去し、芳香族
ポリエステルポリウレタン水分散体(A)を得た。芳香
族ポリエステルポリウレタン水分散体(A)中の固形分
換算値のアルカリ金属含有量は、Na5.0ppm、K
1.8ppmであり、その他のアルカリ金属は検出限界
以下であった。
【0104】<原料ポリエステルの製造>ジメチルテレ
フタレート100部、エチレングリコール60部および
酢酸カルシウム1水塩0.09部を反応器に採り、加熱
昇温すると共にメタノールを留去してエステル交換反応
を行い、反応開始から4時間を要して230℃まで昇温
し、実質的にエステル交換反応を終了した。
【0105】次いで、粒径1.2μmのシリカ粒子0.
3部をエチレングリコールスラリーとして添加した。ス
ラリー添加後、更に、リン酸0.06部および三酸化ア
ンチモン0.04部を加え、徐々に反応系を減圧とし、
温度を高めて重縮合反応を4時間行い、極限粘度0.6
5のポリエステル(A)を得た。
【0106】<ポリエステルフイルムの製造>ポリエス
テル(A)を常法により乾燥して押出機に供給し、29
0℃で溶融してシート状に押出し、静電印加密着法を適
用して冷却ロール上で急冷し、未配向シートとした。得
られたシートを、ロール延伸法を使用して縦方向に84
℃で2.9倍延伸した後、更に72℃で1.25倍延伸
し一軸配向フイルムを得た。
【0107】上記の一軸配向フイルムの両面に、上述の
共重合ポリウレタン水分散体を塗布し、次いで、フイル
ムをテンターに導いて、横方向に110℃で4.1倍延
伸し、横方向に8%弛緩しつつ230℃で熱処理を行
い、塗布層の厚さ0.05μm、フイルムの厚さ5.0
μmの二軸配向フイルムを得た。得られたフイルムの特
性および当該フイルムを使用して製作した金属蒸着フイ
ルムコンデンサの特性を表3及び表4に示した。本実施
例の金属蒸着フイルムコンデンサは、耐電圧特性に優
れ、静電容量の変化の少なく長期耐湿熱性に優れてい
た。
【0108】実施例2 実施例1において、塗布剤用ポリエステルポリウレタン
の製造で使用したトリレンジイソシアネートの代わりに
4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを
使用した以外は、実施例1と同様にして脂肪族ポリエス
テルポリウレタン水分散体(B)を得た。
【0109】そして、実施例1において、塗布剤とし
て、芳香族ポリエステルポリウレタン(A)と脂肪族ポ
リエステルポリウレタン(B)との重量比が60部/4
0部の混合物を使用し、製膜時の熱処理工程での弛緩率
を10%に変更した以外は、実施例1と同様に操作して
フイルムを得た後、金属蒸着フイルムコンデンサを製作
した。フイルム及び金属蒸着フイルムコンデンサの特性
を表3及び表4に示した。
【0110】実施例3 塗布剤として共重合ポリエステル樹脂を以下の様に製造
した。すなわち、テレフタル酸ジメチル30部、イソフ
タル酸ジメチル70部、セバシン酸ジメチル15部、ジ
メチル−5−スルホイソフタレートナトリウム塩6部、
エチレングリコール80部を出発原料とし、触媒として
酢酸マンガン4水塩0.04部を加え、加熱昇温すると
共にメタノールを留去してエステル交換反応を行った。
反応開始から3時間を要して230℃まで昇温し、実質
的にエステル交換反応を終了させた。
【0111】次いで、この反応物にリン酸0.01部を
添加し、更に三酸化アンチモン0.04部を加えて重縮
合反応を行い、4時間後に極限粘度0.50の共重合ポ
リエステルを得た。得られた共重合ポリエステル20部
をテトラヒドロフラン80部に溶解させた液に、高速攪
拌下で水180部を加えた後、加温してテトラヒドロフ
ランを揮散させ、共重合ポリエステル水分散体(C)を
得た。
【0112】得られた水分散体(C)と実施例1で製造
したポリエステルポリウレタン分散体(A)とを混合
し、固形分として共重合ポリエステル/芳香族ポリエス
テルポリウレタンの重量比が10部/80部となる様に
混合し、且つ、架橋剤としてトリエチレングリコールジ
グリシジルエーテルを10部添加して塗布剤を得た。そ
して、実施例1において、上記の塗布剤を使用し、製膜
時の熱処理工程での弛緩率を10%に変更した以外は、
実施例1と同様に操作し、塗布厚さ0.05μm、フイ
ルム厚さ5.0μmのフイルムを得た後、金属蒸着フイ
ルムコンデンサを製作した。フイルム及び金属蒸着フイ
ルムコンデンサの特性を表3及び表4に示した。
【0113】実施例4 実施例1において、実施例2と同様の塗布剤を使用し、
製膜時の熱処理工程での弛緩率を10%、熱処理温度を
210℃に変更した以外は、実施例1と同様に操作し、
塗布厚さ0.04μm、フイルム厚さ5.0μmのフイ
ルムを得た後、金属蒸着フイルムコンデンサを製作し
た。フイルム及び金属蒸着フイルムコンデンサの特性を
表3及び表4に示した。
【0114】実施例5 実施例1において、製膜時の熱処理工程での弛緩率を3
%に変更した以外は、実施例1と同様に操作し、フイル
ムを得た。その後、更に、走行させつつ長手方向の張力
を1kg/cm2 とし、幅方向は拘束せず、温度200
℃の空気を5秒間上下から吹きつけて、いわゆる加熱浮
上熱処理を行い、次いで70℃以下に冷却してから巻き
取り、塗布厚さ0.04μm、フイルム厚さ5.0μm
のフイルムを得た後、金属蒸着フイルムコンデンサを製
作した。フイルム及び金属蒸着フイルムコンデンサの特
性を表3及び表4に示した。
【0115】比較例1 実施例1において、塗布剤の塗布を行わない以外は、実
施例1と同様にしてフイルムを得た後、金属蒸着フイル
ムコンデンサを製作した。フイルム及び金属蒸着フイル
ムコンデンサの特性を表3及び表4に示した。本比較例
の金属蒸着フイルムコンデンサは、実施例1と比較して
耐湿熱性に劣っていた。
【0116】比較例2 実施例1において、製膜時の熱処理工程での弛緩率を3
%に変更した以外は、実施例1と同様に操作し、塗布厚
さ0.04μm、フイルム厚さ5.0μmのフイルムを
得た後、金属蒸着フイルムコンデンサを製作した。フイ
ルム及び金属蒸着フイルムコンデンサの特性を表3及び
表4に示した。本比較例の金属蒸着フイルムコンデンサ
は交流耐電圧に劣っていた。
【0117】比較例3 実施例1において、熱処理時の弛緩を行わない以外は、
実施例1と同様に操作し、塗布厚さ0.04μm、フイ
ルム厚さ5.0μmのフイルムを得た後、金属蒸着フイ
ルムコンデンサを製作した。フイルム及び金属蒸着フイ
ルムコンデンサの特性を表3及び表4に示した。本比較
例の金属蒸着フイルムコンデンサは交流耐電圧に劣って
いた。
【0118】比較例4 実施例1において、製膜時のフイルムの熱処理温度を2
42℃とし、当該温度での弛緩処理を行わず、後段の徐
冷却ゾーンで4%の弛緩を行った以外は、実施例1と同
様に操作し、塗布厚さ0.04μm、フイルム厚さ5.
0μmのフイルムを得た後、金属蒸着フイルムコンデン
サを製作した。フイルム及び金属蒸着フイルムコンデン
サの特性を表3及び表4に示した。
【0119】
【表3】
【0120】
【表4】 (*:静電容量変化はA法で測定した)
【0121】実施例6 実施例1と同様にして製造されたポリエステル(B)
(平均粒径1.2μmのシリカ粒子含有量:0.2重量
%、固有粘度:0.66)を使用し、実施例1と同様に
操作して未配向シートを得た。次いで、得られたシート
を、縦方向に90℃で4.2倍延伸した後、上述の芳香
族ポリエステルポリウレタン水分散体(A)をフイルム
の両面に塗布し、横方向に110℃で3.9倍延伸し、
215℃で熱処理を行い、塗布層の厚さ0.05μm、
フイルムの厚さ4μmの二軸配向フイルムを得た。得ら
れたフイルムを幅方向に拘束せずに加熱浮上処理に供
し、200℃の加熱空気で浮上させながら、走行張力
0.5kg/cm2 で4.5秒間処理し、70℃以下に
冷却した後に巻き取った。得られたフイルムの特性およ
び当該フイルムを使用して製作した金属蒸着フイルムコ
ンデンサの特性を表5及び表6に示した。本実施例の金
属蒸着フイルムコンデンサは、耐電圧特性に優れ、長期
耐湿熱性に優れていた。
【0122】比較例5 実施例6において、塗布液を塗布しない以外は、実施例
6と同様にしてポリエステルフイルムを得た後、金属蒸
着フイルムコンデンサを製作した。フイルムの特性およ
び金属蒸着フイルムコンデンサの特性を表5及び表6に
示した。
【0123】比較例6 実施例6において、浮遊型熱処理を施さない以外は、実
施例6と同様にしてポリエステルフイルムを得た後、金
属蒸着フイルムコンデンサを製作した。フイルムの特性
および金属蒸着フイルムコンデンサの特性を表5及び表
6に示した。
【0124】実施例7〜10及び比較例7〜10 実施例6において、浮遊型熱処理の条件を表5に示す通
りに変更した以外は、実施例6と同様にしてポリエステ
ルフイルムを得た後、金属蒸着フイルムコンデンサを製
作した。フイルムの特性および金属蒸着フイルムコンデ
ンサの特性を表5及び表6に示した。
【0125】実施例11 比較例6において、横方向に延伸した後の熱処理温度を
245℃した以外は、比較例6と同様にしてポリエステ
ルフイルムを得た後、金属蒸着フイルムコンデンサを製
作した。フイルムの特性および金属蒸着フイルムコンデ
ンサの特性を表5及び表6に示した。
【0126】
【表5】
【0127】
【表6】 (*:静電容量変化はB法で測定した)
【0128】
【発明の効果】本発明のフイルムは、電極金属層との密
着性に優れ、金属蒸着してフイルムコンデンサの誘電体
として使用した際に、高度な電気特性と長期耐湿熱性を
与え、コンデンサの長期信頼性向上に寄与することが出
来、その工業的価値は高い。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI // B29K 67:00 B29L 9:00

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも片面に水溶性または水分散性
    の樹脂からなる厚さ0.005μm〜1μmの塗布層を
    有するコンデンサ用ポリエステルフイルムであって、フ
    イルムの長手方向の熱収縮応力が以下の(1)〜(3)
    式を満足し且つ全厚さが1μm〜21μmであることを
    特徴とするコンデンサ用二軸配向ポリエステルフイル
    ム。 【数1】 S150 <200g/mm2 (1) S150 −S120 <100g/mm2 (2) Smax <500g/mm2 (3) (但し、S150 、S120 は、それぞれ150℃、120
    ℃におけるフイルムの単位断面積当たりの収縮応力値、
    Smax は、150℃以上フイルムの融点以下の温度範囲
    内での収縮応力値の最大値を示す。)
  2. 【請求項2】 少なくとも片面に水溶性または水分散性
    の樹脂からなる厚さ0.005μm〜1μmの塗布層を
    有するコンデンサ用ポリエステルフイルムであって、熱
    機械試験機(TMA)により測定した200℃における
    フイルム長手方向の寸法変化率が−2.0〜+2.0%
    であり且つ全厚さが1μm〜21μmであることを特徴
    とするコンデンサ用二軸配向ポリエステルフイルム。
JP35322396A 1995-12-22 1996-12-16 コンデンサ用二軸配向ポリエステルフイルム Pending JPH10114040A (ja)

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JP21863596 1996-08-20
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